説明

7−(6’−メチルフェニルアゾ)−1−アセトアミド−3,6−ジスルホ−8−ヒドロキシナフタレンを含む、ケラチン繊維を脱色し同時に染色するための組成物

【課題】ケラチン繊維、特に毛髪などヒトのケラチン繊維を脱色し同時に染色するための、濃い地色に特に適し、長期間良好な安定性を示し、有彩色で堅牢なカラーリングを可能にする新規な組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ケラチン繊維を脱色し同時に染色するための、7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよびその付加塩から選択される少なくとも1種の染料、少なくとも1種の過酸化塩、および少なくとも1種のアルカリ剤を含む組成物、この組成物を使用してケラチン繊維を脱色し同時に染色するための方法、ならびにケラチン繊維を脱色し同時に染色するためのこの組成物の使用に関する。
本発明による組成物は、濃い色の毛髪に特に適している。この組成物は長期間、安定性を改善し、有彩色の堅牢な染色を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよびその付加塩から選択される少なくとも1種の染料、少なくとも1種の過酸化塩、および少なくとも1種のアルカリ剤を含む、ケラチン繊維、特に毛髪などヒトのケラチン繊維を脱色し同時に染色するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人が毛髪の色を大きく変えたい場合、特に元の色より明るい色にしたい場合、毛髪を脱色し、必要なら染めることがしばしば必要である。これにはいくつかの方法がある。
【0003】
最初の方法は、アンモニア水および過酸化水素水をベースとする淡色化用製品を使用することにある。このような製品は、場合によっては、毛髪を淡色化し、同時に染色することができる染料を含んでいることがある。しかしこのような製品の淡色化性能はまだ限られており、特に天然のまた/あるいは染色した濃い地色に使用する場合そうである。
【0004】
第二の方法は、過硫酸塩などの過酸化塩およびアルカリ剤をベースにし、より強く淡色化するために使用の際、過酸化水素を添加する淡色化組成物を毛髪に塗布することにある。このタイプの製品は、非常に満足でき、濃い地色に、より適しているが、非常に限られた範囲の色合いにしかならない。したがって、第2段階で毛髪に染色用製品を塗布することにより、得られた色調を修正することが必要である。この2段階法は比較的長くかかるという欠点がある。
【0005】
この欠点を克服するために、これらの淡色化製品に染料を添加することは既知の慣例である。この方法では、毛髪の繊維を染色し同時に脱色することができる。淡色化レベルは相当あるので、天然のまた/あるいは染色した地色に特に適している。しかし、この強い酸化条件下において安定な染料の数は非常に限られており、このため、得られる色合いの種類が非常に限定される。さらに、この不安定さは、塗布中に色合いが幾分速く変化することに反映され、これは比較的再現性の乏しい結果を招く。
【0006】
さらに、外部の作用因子、特に光線およびシャンプーに関するこのような染料の堅牢度は、十分ではない。
【0007】
このような強酸性媒質中で安定である、アントラキノン、アゾ、トリアリルメタン、チアジン、キノン、およびニトロタイプの直接染料は、米国特許第5,688,291号、国際出願公開WO 02/074 270号および実用新案ドイツ特許第203,03,559号において提出されている。しかし、これらの染料は、色度、堅牢度、および塗布時における安定性の点で不十分である。
【特許文献1】米国特許第5,688,291号
【特許文献2】国際出願公開WO 02/074 270号
【特許文献3】実用新案ドイツ特許203,03,559号
【特許文献4】FR-2 586 913号
【非特許文献1】the CTFA Dictionary 7th edition、1997年、the Cosmetic、Toiletry and Fragrance Association in USA
【非特許文献2】Walter Nolls's 「Chemistry and Technology of Silicones」(1968)-Academic Press
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ケラチン繊維、特に毛髪などヒトのケラチン繊維を脱色し同時に染色するための、濃い地色に特に適した、長期間良好な安定性を示し、有彩色で堅牢なカラーリングを可能にする、新規な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、その1つの主題が、
- 7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよびその付加塩から選択される少なくとも1種の染料と、
- 少なくとも1種の過酸化塩と、
- 少なくとも1種のアルカリ剤とを含む、
ケラチン繊維を脱色し同時に染色するための組成物である、本発明で実現される。
【0010】
本発明による組成物は、濃い色の毛髪を脱色し同時に染色するのに特に適している。この組成物は、改善された安定性を長期間にわたり示し、有彩色のカラーリングを可能にする。さらに、本発明による適当な濃度の染料で、淡い色合いを得ることができる。
【0011】
このカラーリングは、シャンプー、摩擦、光線、悪天候、汗、およびパーマネントなど、毛髪が受けることがある様々な攻撃因子に強い。これはまた、強力で、美的であり、さらに選択性が低い、すなわち敏感度の異なる毛もしくは頭髪の様々な部分間にわずかな違いしか生じない。
【0012】
本発明の主題はまた、本発明による組成物を使用してケラチン繊維を脱色し同時に染色するための方法、および本方法を実施するためのマルチコンパートメント装置である。
【0013】
本発明のもう1つの主題は、ケラチン繊維を脱色し同時に染色するための、本発明による組成物の使用である。
【0014】
7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよびその付加塩は、直接アゾ染料である。
【0015】
一般に、本発明との関連において使用することができる7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンの付加塩は、特に有機または無機塩基との付加塩、具体的にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩およびアルカノールアミンなどの有機アミンの塩から選択される。
【0016】
本発明との関連において有用である前記染料は、7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンのナトリウム塩およびそれらの混合物から選択されることが好ましい。本発明に関連して有用である前記染料は、Supramine Red 3BAとしても知られ、その構造は下記の通りであるアシッドレッド35、
【0017】
【化1】

【0018】
その構造が下記の通りであるアシッドレッド55、
【0019】
【化2】

【0020】
およびその付加塩から選択されることがより好ましい。
【0021】
本発明による組成物中の7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよび/またはその付加塩の濃度は、一般に、組成物の総重量に対して0.0001重量%と10重量%との間、好ましくは0.001重量%と8%との間、さらに好ましくは0.01重量%と5重量%との間である。
【0022】
本発明において有用な過酸化塩は、例えばアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩および過酸化物、ならびにそれらの混合物から選択される。過硫酸塩およびそれらの混合物が、またより優先的に過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウム、ならびにそれらの混合物が優先的に使用される。
【0023】
本発明による組成物中の過酸化塩の濃度は、組成物の総重量に対して一般に10重量%と70重量%との間、好ましくは20重量%と60重量%との間である。
【0024】
本発明の組成物において有用なアルカリ剤は、例えば尿素、アンモニウム塩、例として塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、または硝酸アンモニウム;リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはバリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のケイ酸塩、リン酸塩または炭酸塩、およびそれらの混合物から選択される。前記アルカリ剤は、塩化、ケイ酸、および炭酸アンモニウムおよびそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0025】
本発明による組成物中のアルカリ剤濃度は、組成物の総重量に対して一般に0.01重量%と40重量%との間、好ましくは0.1重量%と30重量%との間である。
【0026】
本発明による組成物は、粉末状およびペースト状でもよい。本発明の組成物は、ペースト状が有利である。
【0027】
本発明による組成物がペースト状である場合、この組成物はまた、少なくとも1種の不活性有機液相を含む。
【0028】
本発明では、「液相」という用語は、それ自体の重量の影響下で、室温、一般に15℃〜40℃で、大気圧で流動することができるいかなる相も意味する。
【0029】
挙げることのできる不活性な液相の例には、式C10nH((20n)+2)(式中nは3〜9、好ましくは3〜7の範囲である)のポリデセン、脂肪族アルコールまたは脂肪酸のエステル、糖のC12〜C24脂肪酸エステルまたはジエステル、環状エーテルまたは環状エステル、シリコーン油、鉱物油および植物油、またはそれらの混合物が含まれる。
【0030】
式C10nH[(20n)+2](nは3〜9の範囲)の化合物は、米国化粧品工業会(Cosmetic, toiletry and Fragrance Association)のCTFA辞書、第7版(1997年)の「ポリデセン」という名称に、また米国および欧州におけるINCIの同一名に該当する。これらは、ポリ-1-デセンの水添生成物である。
【0031】
このような化合物のうち、本発明に従って好ましい化合物は、その化学式中のnが3〜7の範囲のものである。
【0032】
挙げることのできる例には、Silkflo(登録商標)366NF ポリデセン(Silkflo 366 NF Polydecen)の名でアモコケミカル社により販売されている製品、Nexbase(登録商標)2002FG、2004FG、2006FGおよび2008FGの名でフォータム社により販売されている製品が含まれる。
【0033】
脂肪族アルコールまたは脂肪酸のエステルに関して、挙げることのできる例には、下記のものが含まれる。
- 直鎖または分枝の飽和低級(C1〜C6)モノアルコールとC12〜C24の一官能性脂肪酸とのエステル。これらの脂肪酸は、直鎖または分枝で、飽和または不飽和の脂肪酸である場合があり、特にオレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、カカオ酸(cocoate)、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリン酸、アラキドン酸、またはそれらの混合物、特にオレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、パルミトステアリン酸などから選択される。これらのエステルのうち、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルおよびステアリン酸オクチルドデシルが特により好ましく使用される。
- 直鎖または分枝のC3〜C8モノアルコールとC8〜C24の二官能性脂肪酸とのエステル。これらの脂肪酸は直鎖または分枝で、飽和または不飽和の脂肪酸である場合があり、例えばセバシン酸ジイソプロピルとしても知られるセバシン酸のイソプロピルジエステルである。
- 直鎖または分枝C3〜C8のモノアルコールとC2〜C8二官能性脂肪酸のエステル。これらの脂肪酸は直鎖または分枝で飽和または不飽和の脂肪酸である場合があり、例えばアジピン酸ジオクチル、マレイン酸ジカプリルがある。
- 三官能価酸のエステル。例えば、クエン酸トリエチル。
【0034】
糖のC12〜C24脂肪酸エステルおよびジエステルに関しては、「糖」という用語は、いくつかのアルコール官能基を含み、アルデヒドまたはケトン官能基を有しまたは有さず、少なくとも4個の炭素原子を含む化合物を意味する。このような糖は、単糖、オリゴ糖、または多糖であってよい。
【0035】
本発明に従って使用できる糖として、例えばショ糖(またはサッカローズ)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、乳糖、およびそれらの誘導体、特に、メチル誘導体、例えばメチルグルコースなどのアリル誘導体を挙げることができる。
【0036】
本発明に従って使用することができる糖の脂肪酸エステルは、上記の糖と直鎖または分枝で、飽和または不飽和のC12〜C24脂肪酸とのエステル、あるいはそれらのエステル混合物を含む群から特に選択することができる。
【0037】
エステルは、モノ、ジ、トリ、テトラエステル、ポリエステル、およびそれらの混合物から選択してよい。
【0038】
これらのエステルは、例えばオレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、カカオ酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル、アラキドン酸エステル、またはそれらの混合物、例えば混合オレオパルミチン酸エステル、オレオステアリン酸エステルまたはパルミトステアリン酸エステルなどから選択してよい。
【0039】
より具体的には、モノおよびジエステル、特にショ糖、グルコース、メチルグルコースのモノまたはジオレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレオパルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、またはオレオステアリン酸のモノまたはジエステルを使用するのが好ましい。
【0040】
例えば、Glucate(商標)DOの名称でアマーコル社(Amerchol)により販売されている製品を挙げることができ、これはジオレイン酸メチルグルコースである。
【0041】
糖と脂肪酸のエステルまたはエステル混合物の例として、以下のものも挙げることができる。
【0042】
- F160、F140、F110、F90、F70、およびSL40の名でクロデスタ(Crodesta)社により販売されている製品。それぞれモノエステル73%およびジエステル、トリエステル合わせて27%、モノエステル61%およびジエステル、トリエステル、テトラエステル合わせて39%、モノエステル52%およびジエステル、トリエステル、テトラエステル合わせて48%、モノエステル45%およびジエステル、トリエステル、テトラエステル合わせて55%、ならびにモノエステル39%およびジエステル、トリエステル、テトラエステル合わせて61%とモノアウリン酸スクロースから生成されるパルミトステアリン酸スクロースの名称である。
- Ryoto Sugar Eesters、(参考として)B370などの名称で販売されている製品。モノエステル20%とジ-トリ-ポリエステル80%から生成されるベヘン酸スクルースに相当する。
- Tegosoft(登録商標)PSEの名称で、Goldschmidt社により販売されているモノ-ジ-パルミトステアリン酸スクロース。
【0043】
環状エーテルおよび環状エステルに関しては、特に適しているものは、Y-ブチルラクトン、ジメチルイソソルビド、またはジイソプロピルイソソルビドである。
【0044】
シリコーン油も、不活性有機液相として使用することができる。
【0045】
より具体的には、適切なシリコーン油は、25℃で10,000mPa.s以下の粘度を有する液体不揮発性シリコーン油であり、シリコーンの粘度は、ASTM基準445付録Cに従って測定される。
【0046】
シリコーン油は、Walter Nollの「Chemistry and Technology of silicones」(1968年) アカデミック出版により詳細に定義不活性な有機液相されている。
【0047】
本発明に従って使用することができるシリコーン油のうち、特に挙げることができる例には、DC-200 Fluid-5mPa.s、DC-200 Fluid-20mPa.s、DC-200Fluid-350mPa.s、DC-200 Fluid-1000mPa.sおよびDC-200 Fluid-10 000mPa.sの名称でダウコーニング社により販売されているシリコーン油が含まれる。
【0048】
鉱物油、例えば液体パラフィンも、有機液相として使用してよい。
【0049】
植物油、特にアボカド油、オリーブ油、または液体ホホバワックスも使用に適していることがある。
【0050】
不活性な直鎖有機液相は、式C10nH((20n)+2)(nは3〜9、好ましくは3〜7)のポリデセン、脂肪族アルコールまたは脂肪酸のエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0051】
本発明の特定の一実施形態によると、不活性有機液相の含有量は、無水ペーストの重量に対して5重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜50重量%、より好ましくは15重量%〜45重量%である。
【0052】
本発明の特定の一実施形態によると、本発明による組成物は無水物である。
【0053】
本発明の文脈では、組成物が、組成物の総重量に対して、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の水分を有するとき、組成物は無水である。
【0054】
本発明のもう1つの特定の実施形態によると、本発明による組成物はまた、過酸化水素も含む。
【0055】
本発明による、過酸化水素を含む組成物のpHは、一般に3〜11である。7〜11であることが好ましい。
【0056】
本発明による組成物は、通常、化粧品に使用されている様々な添加物も使用してよい。。
【0057】
したがって、本発明による組成物はまた、無機または有機増粘剤、特に会合性または非会合性の、アニオン性、カチオン性、ノニオン性または両性増粘ポリマー、粘土などの充填剤、ビニルピロリドなどのバインダ、潤滑剤、例えばステアリン酸ポリオールまたはステアリン酸アルカリ金属またはアルカリ土類金属、親水性または疎水性シリカ、顔料、本発明のもの以外の染料、艶消剤、例えば酸化チタン、あるいはアニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性、または双性イオン界面活性剤、酸化防止剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、緩衝剤、分散剤、塗膜形成剤、保存剤、乳白剤、ビタミン、香料、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性または双性イオンポリマー、セラミド、および品質改良剤、例えば揮発性または非揮発性の改質または非改質シリコーンを含んでよい。
【0058】
本発明による組成物が、過酸化水素を含む場合、炭酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムなど酸素の放出を抑制するための薬剤も含んでよい。
【0059】
上記で定義した添加剤および酸素の放出を抑制する薬剤は、組成物の総重量に対してそれぞれ0.01重量%と40重量%との間、好ましくは0.1重量%と30重量%との間の量で存在してよい。
【0060】
言うまでもなく、当業者は、本発明の組成物による本来の有利な特性が、予定している添加により悪影響を、または本質的な悪影響を受けないように、このまたはこれらの添加される化合物の選択に気をつけるものとする。
【0061】
本発明に従って脱色し同時に染色する方法は、上記で定義した本発明による、過酸化水素を含む組成物をケラチン繊維に塗布することにある。
【0062】
本発明の主題はまた、少なくとも2種の組成物を含み、それらを混合することによって、上記で定義した、本発明に従って過酸化水素を含む組成物が生じることを特徴とする、マルチコンパートメント装置でもある。
【0063】
本発明の特定の一実施形態によると、本発明による装置は、適切な染料媒質中に上記で定義した少なくとも1種の染料を含む組成物(A)の入った第一コンパートメント、上記で定義した少なくとも1種の過酸化塩および少なくとも1種のアルカリ剤を含む無水組成物(B)の入った第2コンパートメント、ならびに過酸化水素水組成物(E)の入った第3コンパートメントを含む。
【0064】
本発明の他の特定の実施形態によると、本発明によるこの装置は、上記で定義した少なくとも1種の染料、上記で定義した少なくとも1種の過酸化塩および少なくとも1種のアルカリ剤を含む無水組成物(C)の入った第1コンパートメント、および過酸化水素水組成物(E)の入った第2コンパートメントを含む。
【0065】
本発明の他の特定の実施形態によると、本発明による装置は、上記で定義した少なくとも1種の過酸化塩および少なくとも1種のアルカリ剤を含む無水組成物(B)の入った第一コンパートメント、適切な染色媒体中に、上記で定義した少なくとも1種の染料および過酸化水素を含む組成物(D)の入った第2コンパートメントを含む。
【0066】
組成物(A)および(D)に適した染色媒体は、一般に、水、または水と十分に水溶性ではない化合物を溶解させるための少なくとも1種の有機溶媒とからなる。挙げることのできる有機溶媒の例には、エタノールやイソプロパノールなどのC1〜C4の低級アルコール;グリセロール;グリコールおよびグリコールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、および芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール、またはフェノキシエタノール、類似の製品、およびそれらの混合物が含まれる。
【0067】
溶媒は、染料組成物の総重量に対して好ましくは約1重量%と40重量%との間、より好ましくは約5重量%と30重量%との間の比率で存在してよい。
【0068】
「ブースタ」としても知られる組成物(A)は、酸性、中性、またはアルカリのpHで調製することができ、pHはおそらく約3〜12、好ましくは約4〜11の範囲である。。
【0069】
組成物(D)は、7未満のpHであることが好ましく、酸性のpHの場合この組成物中の過酸化水素の安定性が確保される。
【0070】
組成物(A)および(D)は、様々な形状、例えば液状、クリーム状、またはゲル状、またはケラチン繊維を染色するのに適した他のどんな形状であってもよい。
【0071】
無水組成物(B)および(C)は、粉末状またはペースト状であってよい。後者の場合、組成物は、上記で定義した不活性有機液相も含む。
【0072】
過酸化水素水組成物(E)は、7未満のpHであることが好ましく、酸性のpHの場合この組成物中の過酸化水素の安定性が確保される。
【0073】
組成物(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)は、上記で定義したような、化粧品に通常使用される様々な添加物も含んでもよい。
【0074】
組成物(E)および(D)は、上記で定義した、酸素の放出を抑制するための薬剤も含んでもよい。
【0075】
本発明による装置は、本出願人名義の特許FR-2 586 913に記載されている装置など、所望の混合物を毛髪に塗布するための手段を備えていてもよい。
【0076】
この装置を使用して、上記で定義した本発明による方法によりケラチン繊維を脱色し同時に染色することが可能である。
【0077】
本発明の主題はまた、ケラチン繊維を脱色し同時に染色するための、上記で定義した本発明による組成物の使用でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下の実施例は、事実上限定することなく、本発明を例示するためのものである。
【実施例】
【0079】
アシッドレッド35をアルコール水溶液(80/20)中に3.5g%の濃度に溶解する。こうしてブースタAが得られる。
【0080】
この溶液を、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アンモニウム混合物4.2%が存在する過硫酸ナトリウム、過硫酸カルシウムおよび過硫酸マグネシウム混合物51.5%を含むPlatime Precision B脱色粉末組成物と、40体積%の過酸化水素水組成物からなる酸化剤Eとを含む混合物に、使用直前に加える。脱色粉末B/酸化剤E/ブースタA混合物の比率は、それぞれ1/2/0.5である。
【0081】
この混合物の一部を、白毛髪90%含む1gの毛髪の束、および2.7gの天然の栗色の毛髪の束に直ちに塗布する。
【0082】
20分後に、残りの混合物を白毛髪90%含む1gの天然の毛髪の束および2.7gの天然の栗色の毛髪の束に塗布する。
【0083】
すべての場合、条件は同じである。1gの毛髪に対して10gの組成物を使用する。
【0084】
30分の放置時間後、毛髪の束をすすぎ、次にシャンプーし、再びすすぎ、乾燥させる。
【0085】
その結果を以下の表に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
白毛髪を90%含む天然の毛髪は、ここでは、起こりうる色合いの変化を悪化させるために使用した。
【0088】
混合物を直後に塗布する場合も、時間をおいて塗布する場合も同じ色合いが得られることが分かる。
【0089】
これらの結果は、本発明による組成物が長時間安定であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を脱色し同時に染色するための組成物であって、
- 7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよびその付加塩から選択される少なくとも1種の染料と、
- 少なくとも1種の過酸化塩と、
- 少なくとも1種のアルカリ剤と
を含む組成物。
【請求項2】
前記染料が、7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンのナトリウム塩およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記染料が、アシッドレッド35、アシッドレッド55、およびそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
7-(6'-メチルフェニルアゾ)-1-アセトアミド-3,6-ジスルホ-8-ヒドロキシナフタレンおよび/またはその付加塩の濃度が、組成物の総重量に対して0.0001重量%と10重量%との間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記過酸化塩が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩および過酸化物、およびそれらの混合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
過酸化塩の濃度が、組成物の総重量に対して10重量%と70重量%との間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルカリ剤が、尿素、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、およびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のケイ酸塩、リン酸塩または炭酸塩、およびそれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アルカリ剤の濃度は、組成物の総重量に対して0.01重量%と40重量%との間である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の不活性有機液相も含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記不活性有機液相が、式C10nH[(20n)+2](nは3〜9の範囲である)のポリデセン、脂肪族アルコールもしくは脂肪酸のエステル、糖のC12〜C24脂肪酸エステルもしくはジエステル、環状エーテルもしくは環状エステル、シリコーン油、鉱物油および植物油、またはそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
不活性有機液相の濃度は、組成物の総重量に対して5重量%と60重量%との間である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
無水であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
過酸化水素も含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ケラチン繊維を脱色し同時に染色する方法であって、請求項13で定義された組成物をケラチン繊維に塗布することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2006−160739(P2006−160739A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−349966(P2005−349966)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】