説明

AC信号受信装置及び地上デジタルテレビジョン放送受信装置

【課題】緊急情報の待機状態での消費電力を削減することを可能とするAC信号受信装置及び地上デジタルテレビジョン放送受信装置を提供することである。
【解決手段】地上デジタルテレビジョン放送のAC信号を受信するAC信号受信装置100は、高速フーリエ変換された信号から出力される分散パイロット信号を補間する補間部24と、高速フーリエ変換信号から出力されるAC信号を、補間部から補間出力された分散パイロット信号を基準として等化する等化部21と、を有する同期検波部20と、高速フーリエ変換された信号から出力される前記AC信号を遅延検波する遅延検波部30と、同期検波部の検波出力と前記遅延検波部の検波出力とを切り替える切替部40と、切替部で前記遅延検波部の検波出力を選択した時には、前記同期検波部の全部又は一部の動作を停止するよう制御する制御部60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、緊急地震速報などの緊急情報を含むAC信号を受信するためのAC信号受信装置及び地上デジタルテレビジョン放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上デジタルテレビジョン放送において緊急地震速報を送受信する技術が開発され、緊急地震速報の起動信号を低消費電力で待ち受け、緊急地震速報が発せられると、該速報を迅速に受信し、受信機のユーザに確実に伝達することが可能となっている。
緊急地震速報は、地震直後の小さな揺れをとらえて大きな揺れの前に震度や震源などを予測して発表する気象庁のサービスである。
【0003】
ところで、日本の地上デジタル放送の伝送方式には、映像や音声などの本線信号を送るキャリア以外にAC(Auxiliary Channel)と呼ばれるキャリアがある。このACは、映像符号化やインターリーブの処理を行わないため遅延時間が少なく,DBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)変調を用いていることから雑音や干渉に強い特長がある。
【0004】
また、地上デジタルテレビジョン放送における部分受信セグメントを用いたワンセグサービス(以下、単にワンセグと称する)で、ACを利用して緊急地震速報を伝送する方式が開発されており、AC信号に地震動警報情報として伝送される。
【0005】
一方、緊急警報放送の場合に、待機消費電力を抑えて動作し、受信機の電源が入っていない受信機を起動して受信機に知らせるしくみは、知られている。例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial、ARIB規格STD‐B31)方式の地上デジタルテレビジョン受信機は、受信機の電源が入っていない場合に、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control: 伝送制御)キャリアに格納される緊急警報放送用起動フラグを検出する伝送制御信号受信回路を備えることにより、緊急警報放送用起動フラグが1(緊急警報放送あり)のとき、受信機の電源を投入し、受信機に緊急警報放送の視聴を促すことができる。同様なことが、ワンセグにおけるACキャリア及びそれに含まれる地震動警報情報の開始フラグを利用した緊急地震速報の視聴にも応用可能である。
このような受信機において、TMCC信号のフレーム同期信号に基づくタイミングで、例えばフレーム単位の間欠動作を行うことによって、消費電力を節約できる。すなわち、TMCC又はACに含まれる起動フラグを少なくとも1フレームごとに間欠動作で監視し、起動フラグを検出したらACデータをデコードし、警告を発生し、画面上に表示又は音声出力などする。
【0006】
ところで、ワンセグでACを利用して緊急地震速報を受信可能な携帯電話機などの携帯端末では、1フレームごとに間欠受信して起動フラグの監視を間欠的に行い、電池の消費電力を節約できるが、それだけでは十分とは言えない。つまり、携帯端末における待機状態での低消費電力化を図る必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−109622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地上デジタルテレビジョン放送受信装置では、一般的に、放送局から送られてくる地上デジタル放送信号を受信した後、伝送路上で生じる波形歪みを補正する波形等化が行われる。波形等化は、補間処理を行って、地上デジタル放送信号に間欠的に挿入されているSP信号を補間することによって全データシンボル分のSP信号を生成し、伝送路推定信号を得て、全データシンボルの振幅及び位相の歪みを補正する。
【0009】
しかしながら、 補間回路は、通常FIRフィルタが用いられており、必要な特性を得るには、多数の乗算器と加算器が必要となり、消費電力が大きくなる。このように、SPを用いた伝送路推定ではシンボル方向およびキャリア方向の補間を行うため回路規模が大きく消費電力が増えるという問題がある。特に、ワンセグのACを用いた緊急地震速報を受信可能な携帯端末では、待機状態での消費電力を削減するために間欠動作をする場合には非常に問題である。
【0010】
本発明は、緊急情報の待機状態での消費電力を削減することを可能とするAC信号受信装置及び地上デジタルテレビジョン放送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態のAC信号受信装置は、地上デジタルテレビジョン放送のAC信号を受信するAC信号受信装置であって、
高速フーリエ変換された信号から出力される分散パイロット信号を補間する補間部と、前記高速フーリエ変換信号から出力されるAC信号を、前記補間部から補間出力された前記分散パイロット信号を基準として等化する等化部と、を有する同期検波部と、
前記高速フーリエ変換された信号から出力される前記AC信号を遅延検波する遅延検波部と、
前記同期検波部の検波出力と前記遅延検波部の検波出力とを切り替える切替部と、
前記切替部で前記遅延検波部の検波出力を選択した時には、前記同期検波部の全部又は一部の動作を停止するよう制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のAC信号受信装置を示すブロック図。
【図2】図1の動作を説明するフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態のAC信号受信装置を示すブロック図。
【図4】本発明の第3の実施形態の地上デジタルテレビジョン放送受信装置を示すブロック図。
【図5】従来例のAC信号受信装置の概略ブロック図。
【図6】図5における検波部を説明する概略図。
【図7】FFT部の出力における信号配置を説明する図。
【図8】SPの補間を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図5は従来例のAC信号受信装置の概略ブロック図である。
図5に示すように、アンテナ1に受信されたOFDM信号は、チューナ2に入力され、チューナ2によって所定チャンネルのOFDM信号が選択されて中間周波数(IF)帯に変換される。チューナ2の出力は、アナログ/デジタル変換部 (A/D変換部)3によってデジタル信号に変換される。A/D変換部3の出力は、IQ復調部4により複素ベースバンド信号に変換され、高速フーリエ変換 (FFT)部5に供給される。FFT部5は、高速フーリエ変換(FFT)演算を行い、複素ベースバンド信号を時間軸上データから周波数軸上のデータに変換する。すなわち、FFT部5の出力は、図7に示したような信号配置となっており、検波部20に供給される。検波部20の出力は、誤り訂正部6に供給され、誤り訂正部6により誤り訂正の復号処理、すなわち伝送中に生じた誤りが訂正されたAC信号が復調データとして出力される。
【0014】
図6は図5の検波部20を説明する概略図である。検波部20は、SP信号による伝送路推定を用いた波形等化を行っている。すなわち、FFT部5の出力の中で、図8に示した分散パイロット(SP)信号は、SPメモリ23及び補間部24で構成される伝送路推定部22により、シンボル方向及びキャリア方向に補間(内挿)され伝送路特性を推定する。等化部21は、補間部24により補間されたSP信号を基準として、ACシンボルの振幅等化及び位相等化を行う。なお、補間部24は、一般的にFIRフィルタが用いられており、必要な特性を得るには、多数の乗算器と加算器が必要となり、消費電力が大きくなる。
【0015】
このように、SP信号を用いた伝送路推定ではシンボル方向およびキャリア方向の補間を行うため回路規模が大きく消費電力が増えるという問題がある。特に、待機状態での消費電力を削減するために間欠動作(間欠的な受信動作)を行う場合には間欠動作回数の増大に伴い電力消費の点で大きな問題となる。
【0016】
図7において、データシンボルは、映像や音声などの情報データを伝送するものであり、例えば64QAMで変調される。付加情報(TMCC:Transmission and Multiplexing Configuration Control・AC:Auxiliary Channel)シンボルは、例えば、変調方式やインタリーブなどの伝送パラメータ情報や、付加情報を伝送するものであり、差動BPSK(Binary Phase Shift keying:2相位相変調)により特定のキャリア(周波数スロット)にて伝送される。分散パイロット(SP:Scattered Pilot)シンボルは、周波数及び時間方向に分散して伝送される無変調信号であり、受信装置における伝送路特性推定や同期再生などに用いられる。ACシンボルには、同期信号,構成識別,地震動警報情報などが含まれている。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態のAC信号受信装置を示すブロック図である。従来例と同じ部分の説明は省略する。
図1において、AC信号受信装置100は、アンテナ1と、チューナ2と、A/D変換部3と、IQ復調部4と、FFT部5と、同期検波部20と、遅延検波部30と、切替部40と、TMCC検出部7と、誤り訂正部8と、AC検出部9と、誤り訂正部10と、S/N検出部50と、制御部60と、を備えている。
【0018】
同期検波部20は、同期検波用の等化部21と、伝送路推定部22とを備える。伝送路推定部22は、SPメモリ23と、補間部24とを備えている。
また、遅延検波部30は、遅延検波用の等化部31と、1シンボル遅延部32と、を備える。
【0019】
図1に示すように、アンテナ1に受信された地上デジタルテレビジョン放送信号としてのOFDM信号は、チューナ2に入力され、チューナ2によって所定チャンネルのOFDM信号が選択されて中間周波数 (IF)帯に変換される。チューナ2の出力は、アナログ/デジタル変換部(A/D変換部)3によってデジタル信号に変換される。A/D変換部3の出力は、IQ復調部4に供給され、準同期直交検波されて複素ベースバンド信号に変換される。IQ復調部4の出力は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transfer)部5に供給される。
【0020】
FFT部5は、高速フーリエ変換を行う時間軸上の範囲を規定するFFT窓に基づいて高速フーリエ変換演算を行い、上記複素ベースバンド信号を時間軸上のデータから周波数軸上のデータに変換する。すなわち、FFT部5の出力は、同期検波部20内の等化部21に供給される。
【0021】
また、FFT部5の出力の中で、データシンボルの等化用基準信号である分散パイロット(SP)信号は、SPメモリ23に所定のシンボル数分記憶され、補間部24により時間方向及び周波数方向にシンボルごとにフィルタリングされて所期の離散配置になるように補間される。
【0022】
同期検波用の等化部21は、補間部24により補間出力されたSP信号を用いて、全時間及び全周波数における伝送路特性を推定し、この伝送路特性に応じた復調方法でデータシンボルの振幅等化及び位相等化を行う。等化部21の出力は、切替部40を通してAC検出部9に供給され、AC信号が検出されて誤り訂正部10に供給され、誤り訂正部10により誤り訂正の復号処理、すなわち伝送中にAC信号に生じた誤りが訂正されてACデータとして出力される。
【0023】
また、FFT部5の出力の中で、付加情報(AC・TMCC)信号は、1シンボル遅延部32と等化部31とからなる遅延検波部30に供給される。付加情報(AC・TMCC)信号は、図7に示すように、特定周波数に連続的に配置されており、差動BPSK変調されているため、1シンボル遅延部32の出力である1シンボル前の付加情報(AC・TMCC)信号を基準として、遅延検波用の等化部31にて等化される。遅延検波部30内の等化部31の遅延検波出力は、TMCC検出部7に供給されて復調され、更に誤り訂正部8で誤り訂正された後、TMCCデータとして出力される。出力されたTMCCデータは、受信装置各部に供給されて、受信装置各部におけるキャリア変調パラメータ、誤り訂正パラメータなどの設定に用いられる。
【0024】
付加情報(AC・TMCC)信号は、受信装置の復調処理を簡易にするために差動BPSKで変調されており、本来は1シンボル前の信号を基準として等化するものである。しかし、図1に示すように、データシンボルの等化用基準信号であるSP信号の補間出力を用いて、AC・TMCC信号を等化してもBPSKの信号点は復調できるため、切替部40からのどちらの等化出力を用いても受信S/Nを検出することが可能である。等化部21又は31の等化出力は、S/N検出部50に供給される。
【0025】
なお、図7の信号配置はTMCCデータから導かれるため、TMCCデータが判らないとACデータも復調(映像)データ(図4参照)も復調することができない。TMCC信号の復調には遅延検波が行われており、AC信号の遅延検波と兼用になっている。従って、1シンボル遅延部32と等化部31で構成される遅延検波部30は常に動作していることが必要である。しかしながら、消費電力の低減の観点から、緊急情報の受信時には地上デジタルテレビジョン放送信号の間欠受信に加えて、電力消費の大きいSP補間による同期検波部の全部又は一部を停止できることが望ましい。そこで、切替部40とS/N検出部50を設けて、同期検波部20の出力と遅延検波部30の出力とをS/Nの検出信号に応じて切り替えられるようにしている。
【0026】
S/N検出部50は、図示しない例えば分散検出部と平均部を備え、等化部21又は31の等化出力について、所定の基準信号点(例えばBPSK基準信号点)からの分散値をそれぞれ求め、検出された各分散値を周波数方向と時間軸方向のいずれか一方向もしくは両方向に平均して、受信信号の受信品質を示すS/N値(受信品質信号)を生成できる。
【0027】
制御部60は、通常は補間部24の出力を等化部21に供給して得られる等化出力(同期検波出力)を切替部40が選択するよう制御を行うが、AC信号検出(或いは起動フラグ監視)を間欠的に行うための間欠動作を実行する時には、1シンボル遅延部32の出力を等化部31に供給して得られる等化出力(遅延検波出力)を切替部40が選択するように制御するとともに、同期検波部20に対して動作を停止するよう制御を行う。これにより、遅延検波部30での間欠動作による消費電力の低減に加えて同期検波部20側での無駄な電力消費を低減することができる。なお、このとき、間欠動作時における同期検波部20の全部(等化部21,SPメモリ23及び補間部24)を動作停止する代わりに、同期検波部20の一部(例えば伝送路推定部22又は補間部24のみ)の動作を停止するように制御を行ってもよい。
【0028】
また、同期検波用の等化部21と遅延検波用の等化部31とは、ハードウェア的には同様な構成となっている。すなわち、等化部21では、SP信号を基準としてそのSP信号の歪みに相当する歪み補正を、FFT部5からの周波数方向の受信信号に対して行うものであり、等化部31では1シンボル前の信号を基準としてその1シンボル前の信号の歪みに相当する歪み補正をFFT部5からの周波数方向の受信信号に対して行うものであり、等化部の構成としては両者とも同等な構成となる。ただし、SP信号を基準とする場合は、周波数方向及び時間方向に間欠的に送信されるSP信号を全データシンボルに対して補間することによって生成してやる必要がある。
【0029】
次に、図1の動作を、図2のフローチャートを参照して説明する。AC信号受信装置100は、AC信号による緊急地震速報を受信する専用の緊急情報受信装置であるとして説明する。
まず、ステップS1において、受信装置の電源がオンされると、チューナ2、A/D変換部3、IQ復調部4、FFT部5、同期検波部20、遅延検波部30、切替部40、TMCC検出部7、誤り訂正部8、AC検出部9、誤り訂正部10、S/N検出部50、及び制御部60が少なくとも動作状態とされる。
【0030】
この状態では、TMCC検出部7及び誤り訂正部8が動作してTMCCデータが検出され(ステップS2)、受信装置各部に供給される。同時に、この状態では、ステップS3に示すように切替部40によって遅延検波部30の出力が選択され、その遅延検波出力はAC検出部9に供給される。 このとき、切替部40からの遅延検波出力は受信品質検出部としてのS/N検出部50に供給されており、S/N検出部50で検出された受信品質検出信号であるS/N検出信号が制御部60に供給される。
【0031】
制御部60は、ステップS4において、S/N検出部50からのS/N検出信号を閾値と比較して、S/N検出信号の良否を判定し、その判定結果に基づいて切替部40の切り替えを制御する。
制御部60は、ステップS4でS/N検出信号が閾値以上のときは切替部40の出力として遅延検波部30の検波出力を選択し続ける(ステップS5)と同時に、同期検波部20の動作を停止するように制御する(ステップS6)。同期検波部20の動作停止とは、同期検波部20の全部又は一部への電源供給を停止することである。
【0032】
また、制御部60は、ステップS4でS/N検出信号が閾値より小さいときは同期検波部20の検波出力を選択するよう切替部40を切り替えると同時に、同期検波部20の動作停止を解除するよう制御する(ステップS7)。
【0033】
受信S/Nが良好の場合(ステップS5及びS6のとき)は遅延検波出力が、或いは受信S/Nが悪い場合(ステップS7のとき)は同期検波出力が、AC検出部9に供給されて、ACデータの検出が行われ、誤り訂正部10にてACデータに対して誤り訂正を行った後、ACデータに含まれる緊急速報情報に基づき図示しない警告発生部から警告を発生する(ステップS8〜ステップS10)。
【0034】
具体的には、ACデータに含まれる構成識別を少なくとも1フレームごとに間欠動作で監視し、構成識別を検出したらACデータをデコードし、地震動警報情報を読み取って表示部の画面上に表示又は音声出力などして警告を発生する。
【0035】
FFT部5の出力の中で、付加情報(AC・TMCC)信号は、図7に示すように、特定キャリアに連続的に配置されており、差動BPSK変調されているため、1シンボル遅延部32の出力である1シンボル前の付加情報信号を基準として、等化部31にて等化すなわち遅延検波される。このとき制御部60は伝送路推定部22に動作を停止するよう制御を行うため、同期検波部20の一部である消費電力の大きな補間部24が少なくとも動作停止し消費電力を下げることができる。
【0036】
第1の実施形態によれば、緊急情報を含んだAC信号を受信する受信装置の低消費電力化のために、待ち受け状態での間欠動作時におけるAC信号の検出を遅延検波に切り替えることによって、消費電力の大きな補間回路を含む同期検波部の動作を停止し消費電力を削減することが可能となる。これは、特に携帯端末のような電池を電源として用いるモバイル受信機器において有用である。
【0037】
[第2の実施形態]
図3は本発明の第2の実施形態のAC信号受信装置を示すブロック図である。図1と同一部分には同一符号を付して説明する。
図3に示すAC信号受信装置100Aが、図1のAC信号受信装置100と異なる点は、図1における同期検波部20内の伝送路推定部22のSPメモリ23の一部を、遅延検波部用の1シンボル遅延部としても使用できるように構成したものである。これは、1シンボル遅延部はデータを1シンボル期間記憶させる機能を有するものであり、メモリで構成されるものであるからである。
【0038】
図3に示す1シンボル遅延部26はSPメモリ25と合わせて、図1に示す伝送路推定部22を構成するSPメモリ23と同等の機能を有するものであり、制御部60が伝送路推定部22及び等化部21による同期検波部を選択した場合は、1シンボル遅延部26は伝送路推定部22の一部として動作する。
【0039】
また、間欠動作を行う時には、制御部60が1シンボル遅延部26の出力を等化部31に供給することによって得られる遅延検波出力を選択するように切替部40を制御するとともに、等化部21,SPメモリ25及び補間部24の動作を停止するよう制御を行う。なお、このときも、間欠動作時における同期検波部の全部(等化部21,SPメモリ25及び補間部24)を動作停止する代わりに、同期検波部の一部(例えばSPメモリ25又は補間部24のみ)の動作を停止するように制御を行ってもよい。特に消費電力の大きな補間部24を少なくとも動作停止するように制御することが好ましい。
【0040】
なお、間欠動作を行う時だけでなく低消費電力でAC信号受信装置を動作させたい時にも、制御部60が1シンボル遅延部26の出力を等化部31に供給することによって得られる遅延検波出力を選択するように切替部40を制御しても良い。
【0041】
第2の実施形態によれば、遅延検波用に用いる1シンボル遅延部26を、同期検波用のSPメモリの一部として兼用するので、回路規模を縮小することが可能となる。結果として例えば携帯端末の構成においてさらに小型軽量化を図ることが可能となる。
【0042】
[第3の実施形態]
図4は本発明の第3の実施形態の地上デジタルテレビジョン放送受信装置を示すブロック図である。図1及び図5と同一部分には同一符号を付して説明する。
図4に示す地上デジタルテレビジョン放送受信装置200は、主要部が図1に示すAC信号受信装置100と同様であり、図1のAC信号受信装置100に対して出力部としての誤り訂正部6が追加され、同期検波部20内の等化部21で等化された出力が誤り訂正され復調(映像)データとして出力される。誤り訂正部6の後段には、通常の地上デジタルテレビジョン放送受信装置と同様に復号部としてのTSデコーダ(図示略)と、更にその後段に配置されて映像データ及び音声データをそれぞれ復号する映像デコーダ及び音声デコーダ(図示略)と、映像データを表示する表示部(図示略)と、更に表示部に映像データを表示させる指示をする操作ボタン(図示略)と、を備えている。また、AC信号受信装置のAC信号受信動作を予め可又は不可に設定する設定部(図示略)をさらに備えている。設定部(図示略)は、操作部(図示略)の一部に設定ボタンとして設けてもよいし、或いは、表示部(図示略)の画面上に設定メニューの設定項目の1つとして設けてもよい。
【0043】
なお、地上デジタルテレビジョン放送受信装置は、図1のAC信号受信装置100に代えて、図3に示すAC信号受信装置100Aを備えた構成としてもよい。
【0044】
このような構成においては、地上デジタルテレビジョン放送受信装置200の使用者が緊急情報を含むAC信号の受信動作を可とする設定を設定部に対して行うことができる。
【0045】
また、使用者がリモコンなどの映像表示用の操作ボタンを操作することによって、表示部に対してTV映像表示を指示すると、制御部60の制御によって切替部40が同期検波部20を選択し、その等化データは誤り訂正部6で誤り訂正されて復調(映像)データとして出力され、図示しないTSデコーダへ送出される一方、同期検波された等化データはAC検出部9にも送られ、AC信号の検出、誤り訂正、緊急情報の警告発生を行うことも可能となる。
【0046】
使用者が映像表示用の操作ボタンを操作しないときには、AC信号の受信可設定に基づき、AC信号の受信動作ルーチン(図2に示したステップS2〜ステップS10と同様なステップ) に従って低消費電力での動作が実行される。
【0047】
第3の実施形態によれば、緊急情報受信装置であるAC受信装置を搭載した地上デジタルテレビジョン受信装置において、(1)テレビを見ているときに緊急情報が有った場合には、同期検波出力に基づくAC検出が行われることで、緊急情報受信が可能となり、(2)テレビを見ていないとき(テレビが主電源のみオンで待機電源の状態にあり、テレビ表示用電源はオンしていないとき)に緊急情報が有った場合には、専用の緊急情報受信装置としてのAC信号受信装置と同様の緊急情報受信動作が行われ、図1又は図2の実施形態と同様な低消費電力効果が得られる。
【0048】
尚、以上述べた本発明の実施形態のAC信号受信装置は、AC信号による緊急地震速報のフォーマットを受信する受信装置に広く応用することが可能である。例えば、受信装置は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に備えさせることができる。地上デジタルテレビジョン放送受信装置としてはワンセグ受信の携帯端末に限らず、据え置き型の地上デジタルテレビジョン放送受信装置に対して適用して待機電源状態での緊急情報待ち受け時の消費電力を低減できる効果がある。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
2…チューナ、5…FFT部、7…TMCC検出部、9…AC検出部、20…同期検波部、21…等化部、22…伝送路推定部、24…補間部、30…遅延検波部、31…等化部、32…1シンボル遅延部、40…切替部、50…S/N検出部、60…制御部、100,100A…AC信号受信装置、200…地上デジタルテレビジョン放送受信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタルテレビジョン放送のAC信号を受信するAC信号受信装置であって、
高速フーリエ変換された信号から出力される分散パイロット信号を補間する補間部と、前記高速フーリエ変換信号から出力されるAC信号を、前記補間部から補間出力された前記分散パイロット信号を基準として等化する等化部と、を有する同期検波部と、
前記高速フーリエ変換された信号から出力される前記AC信号を遅延検波する遅延検波部と、
前記同期検波部の検波出力と前記遅延検波部の検波出力とを切り替える切替部と、
前記切替部で前記遅延検波部の検波出力を選択した時には、前記同期検波部の全部又は一部の動作を停止するよう制御する制御部と、
を具備したことを特徴とするAC信号受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、AC信号受信装置が間欠動作を行う時は、前記切替部を制御して、前記遅延検波部の検波出力を選択し、前記同期検波部の全部又は一部の動作を停止するよう制御することを特徴とする請求項1に記載のAC信号受信装置。
【請求項3】
前記地上デジタルテレビジョン放送信号の受信品質を検出する受信品質検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記受信品質検出部からの検出結果に応じて、前記切替部を切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のAC信号受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記受信品質検出部からの品質検出信号が閾値以上のときは前記切替部の出力として前記遅延検波部の検波出力を選択し、品質検出信号が閾値より小さいときは前記同期検波部の検波出力を選択するよう前記切替部を制御することを特徴とする請求項3に記載のAC信号受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のAC信号受信装置を備えたことを特徴とする地上デジタルテレビジョン放送受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−70079(P2012−70079A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211138(P2010−211138)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】