説明

AM受信回路

【課題】簡素な回路構成でもトラッキングエラーを効果的に抑制できるAM受信回路を提供する。
【解決手段】アンテナコイル30と可変容量ダイオード32とを含むアンテナ同調回路102と、発振コイル40と可変容量ダイオード44とを含む発振側回路104と、を備え、可変容量ダイオード44のC−V特性は、容量Cを対数表示した場合において印加電圧が高くなるにつれて容量の減少変化の勾配が減少する非直線性を示す領域を含み、可変容量ダイオード32のC−V特性は、容量Cを対数表示した場合において可変容量ダイオード44よりも直線性が高いものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AM受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
AM受信回路では、アンテナ同調回路及びRF(ラジオ周波)増幅回路において受信信号の受信周波数に同調させて処理を行うと共に、受信周波数よりも中間周波数(455kHz)分高い発振周波数を局部発振回路で発生させて、スーパーへテロダイン方式により受信信号の処理が行われている。局部発振回路において発振周波数が正しくなければ、トラッキングエラーが発生して、受信感度の劣化を招くおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献1には、図6に示すように、発振コイル10と、発振コイル10の両端間に接続されたパディングコンデンサ12と可変容量ダイオード14とからなる第1直列回路と、発振コイル10の両端間に接続されたパディングコンデンサ16と可変容量ダイオード18とからなる第2直列回路と、可変容量ダイオード14の両端間又は発振コイル10の両端間に接続された受信幅調整用コンデンサ20とを備えるAM受信回路の局部発振回路が開示されている。
【0004】
ここで、パディングコンデンサ12の容量をパディングコンデンサ16の容量より大きくすることによって、トラッキング誤差周波数を全周波数帯域に亘って小さくすることができ、PLL周波数シンセサイザ方式のAM受信回路に適した局部発振回路を構成することを可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−281614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のAM受信回路用の局部発振回路では、トラッキングエラーにより感度劣化を防ぐために複雑な回路構成を必要としたり、余分に補正用の可変容量ダイオードが必要となったりして製造コストの上昇を招いている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンテナコイルと、第1の可変容量ダイオードと、を含むアンテナ同調回路と、発振コイルと、第2の可変容量ダイオードと、を含む発振側回路と、を備え、前記第2の可変容量ダイオードのC−V特性は、容量Cを対数表示した場合において印加電圧が高くなるにつれて容量の減少変化の勾配が減少する非直線性を示す領域を含み、前記第1の可変容量ダイオードのC−V特性は、容量Cを対数表示した場合において前記第2の可変容量ダイオードよりも直線性が高いことを特徴とするAM受信回路である。
【0008】
受信周波数帯域内において、前記発振側回路における発振周波数fOSC、前記アンテナ同調回路におけるアンテナ同調周波数fS、及び、受信回路の中間周波数fIF、がトラッキングエラーΔfに対して、
【数1】

を満たす領域において、前記第2の可変容量ダイオードは前記非直線性を示すことが好適である。
【0009】
具体的には、前記第2の可変容量ダイオードが前記非直線性を示す領域は、前記アンテナ同調周波数fSが1000kHz以上1400kHz以下の領域とすることが好適である。
【0010】
より具体的な回路構成は以下のように構成することが好適である。前記アンテナ同調回路は、前記アンテナコイルの両端が前記第1の可変容量ダイオードとコンデンサとの直列回路を介して接続され、前記発振側回路は、前記発振コイルの両端が前記第2の可変容量ダイオードとパディングコンデンサとの直列回路を介して接続され、前記第1の可変容量ダイオードと前記コンデンサとの接続点と、前記第2の可変容量ダイオードと前記パディングコンデンサとの接続点と、が抵抗を介して接続されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より簡素なAM受信回路の回路構成によりトラッキングエラーを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態におけるAM受信回路100は、図1に示すように、アンテナ同調回路102及び発振側回路(OSC同調回路)104を含んで構成される。アンテナ同調回路102は、アンテナコイル30、可変容量ダイオード32、コンデンサ34及び受信幅調整用コンデンサ36を含んで構成される。発振側回路104は、発振コイル40、パディングコンデンサ42、可変容量ダイオード44及び可変容量コンデンサ46を含んで構成される。アンテナ同調回路102及び発振側回路104は、抵抗50,52により接続される。
【0013】
アンテナ同調回路102は、アンテナコイル30と、可変容量ダイオード32,コンデンサ34及び受信幅調整用コンデンサ36とを共振させることで、空間からアンテナ同調周波数fSを有する信号を受信するために用いられる。アンテナコイル30の両端は、可変容量ダイオード32及びコンデンサ34の直列回路を介して接続される。また、アンテナコイル30の両端は、受信幅調整用コンデンサ36を介して接続される。すなわち、可変容量ダイオード32及びコンデンサ34の直列回路と、受信幅調整用コンデンサ36と、が並列に接続される。
【0014】
発振側回路104は、所定の発振周波数fOSCの信号を発生させる回路である。発振コイル40の両端は、パディングコンデンサ42と、可変容量ダイオード44及び可変容量コンデンサ46の並列回路と、の直列回路により接続される。
【0015】
アンテナ同調回路102の可変容量ダイオード32とコンデンサ34との接続点と、発振側回路104のコンデンサ42と可変容量ダイオード44との接続点と、は抵抗50及び抵抗52の直列回路により接続される。抵抗50と抵抗52との接続点から出力端子OUTが引き出される。
【0016】
中間周波数fIFは、発振周波数fOSC−アンテナ同調回路で実際に受信される周波数faで表される。また、受信時のトラッキング誤差Δfは、アンテナ同調回路で実際に受信される周波数faとアンテナ同調周波数fSとの差で表され、具体的には数式(1)で表すことができる。
【0017】
【数2】

【0018】
図2は、印加電圧VRに対する容量Cの変化を対数表示したグラフである。図2に示すように、発振側回路104の可変容量ダイオード44の容量Cは、印加電圧VRに対して容量Cを対数表示した場合において非直線的な曲線Aで表される変化を示す。すなわち、印加電圧VRが高くなるにつれて急激に容量Cは低下し、さらに印加電圧VRが高くなると徐々に容量Cの低下の勾配が小さくなる。そのため、印加電圧VRに高周波信号が重畳されると、可変容量ダイオード44の平均容量CAは図3に示すような変化をみせる。可変容量ダイオード44のC−V曲線が下に凸の非直線的な変化を示す場合、容量Cを対数表示した場合に非直線性が高い領域では、容量Cを対数表示した場合に直線性が高い場合(図2:ラインB,図3:ラインb)にくらべて高周波信号の振幅に対する平均容量CAはラインaに示すように上に凸の変化をする。
【0019】
図2のラインBに示すように、可変容量ダイオードのC−V曲線が、容量Cを対数表示した場合において直線性を示す場合の平均容量CBに対して、実際の可変容量ダイオードの容量Cの変化の平均容量CAは容量差ΔCを生ずる。図4は、印加電圧VRに対する容量値CAに対する容量差ΔCの割合の変化を示したものである。
【0020】
本実施の形態におけるAM受信回路100は、可変容量ダイオード44のこの非直線性を利用してトラッキングエラーを抑制する。一般的に、AM受信回路100のアンテナ同調周波数fSとトラッキングエラーΔfとの関係は、図5の破線で示すように、周波数fSが600kHz,1000kHz,1400kHzでトラッキングエラーΔfが0となる3次関数となる。
【0021】
そこで、受信周波数帯域内の高周波側の数式(2)が成立する領域(図5では1000kHz以上1400kHz以下の領域)で容量差ΔCが大きくなる可変容量ダイオード44を発振側回路104に適用する。一方、アンテナ同調回路102の可変容量ダイオード32は、可変容量ダイオード44よりC−V曲線の直線性が高く、かつ、可変容量ダイオード44に近い容量を示すものとする。
【0022】
【数3】

【0023】
これによって、図5の実線で示すように、数式(2)が成立する周波数帯においてトラッキングエラーΔfを抑制することができる。一般的なAM受信回路では、アンテナ同調周波数fSが1000kHz以上1400kHz以下の周波数帯域で数式(2)が成立するように回路が構成されるので、この周波数帯域においてトラッキングエラーΔfを抑制することができる。
【0024】
なお、本発明の技術的思想の適用範囲は本実施の形態に限定されるものではない。例えば、アンテナ同調回路や発振側回路は本実施の形態の構成に限定されるものではなく、受信周波数帯域内の高周波側の数式(2)が成立する領域において、直線性が高い可変容量ダイオードに比べて高周波を印加した際の平均容量値の容量差ΔCが大きくなる可変容量ダイオードを発振側回路に適用することによって様々な回路で同様の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態におけるAM受信回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における発振側回路の可変容量ダイオードのC−V特性を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における発振側回路の可変容量ダイオードへ高周波信号が印加された場合の平均容量の変化を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における発振側回路の可変容量ダイオードの容量差ΔCと容量値CAとの比の印加電圧に対する変化を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるAM受信回路のトラッキングエラーの抑制作用を示す図である。
【図6】従来のAM受信回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
10 発振コイル、12 パディングコンデンサ、14 可変容量ダイオード、16 パディングコンデンサ、18 可変容量ダイオード、20 受信幅調整用コンデンサ、30 アンテナコイル、32 可変容量ダイオード、34 コンデンサ、36 受信幅調整用コンデンサ、40 発振コイル、42 パディングコンデンサ、44 可変容量ダイオード、46 可変容量コンデンサ、50,52 抵抗、100 AM受信回路、102 アンテナ同調回路、104 発振側回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルと、第1の可変容量ダイオードと、を含むアンテナ同調回路と、
発振コイルと、第2の可変容量ダイオードと、を含む発振側回路と、を備え、
前記第2の可変容量ダイオードのC−V特性は、容量Cを対数表示した場合において印加電圧が高くなるにつれて容量の減少変化の勾配が減少する非直線性を示す領域を含み、
前記第1の可変容量ダイオードのC−V特性は、容量Cを対数表示した場合において前記第2の可変容量ダイオードよりも直線性が高いことを特徴とするAM受信回路。
【請求項2】
請求項1に記載のAM受信回路であって、
受信周波数帯域内において、前記発振側回路における発振周波数fOSC、前記アンテナ同調回路におけるアンテナ同調周波数fS、及び、受信回路の中間周波数fIF、がトラッキングエラーΔfに対して
【数1】

を満たす領域において、前記第2の可変容量ダイオードは前記非直線性を示すことを特徴とするAM受信回路。
【請求項3】
請求項2に記載のAM受信回路であって、
前記第2の可変容量ダイオードが前記非直線性を示す領域は、前記アンテナ同調周波数fSが1000kHz以上1400kHz以下の領域であることを特徴とするAM受信回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のAM受信回路であって、
前記アンテナ同調回路は、前記アンテナコイルの両端が前記第1の可変容量ダイオードとコンデンサとの直列回路を介して接続され、
前記発振側回路は、前記発振コイルの両端が前記第2の可変容量ダイオードとパディングコンデンサとの直列回路を介して接続され、
前記第1の可変容量ダイオードと前記コンデンサとの接続点と、前記第2の可変容量ダイオードと前記パディングコンデンサとの接続点と、が抵抗を介して接続されていることを特徴とするAM受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−182406(P2008−182406A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13558(P2007−13558)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】