説明

APAF−1阻害剤化合物

式(I)の2,5−ピペラジンジオンの誘導体はアポトーシス性ペプチダーゼ活性化因子1(Apaf−1)阻害剤であり、従って、これらはアポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態の予防および/または治療用の活性医薬成分として有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシス細胞死に起因する疾患の予防および/もしくは治療、またはアポトーシス細胞死に起因する変性性プロセスの予防のための化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスまたはプログラム細胞死は、細胞恒常性の維持に関与する複雑な生理学的現象である。アポトーシスは、その健康維持における重要な役割により、多様な細胞制御機構によって制御されている。多くの症状はアポトーシス障害に基づくものである。従って、過剰なアポトーシス細胞死は、組織機能性(例えば、心筋梗塞の場合、心筋細胞死)に影響を及ぼし得る一方、過剰に阻害されたアポトーシスは、無制御の細胞生存(例えば、腫瘍過程)を引き起こす。アポトーシスを制御している細胞成分は、健康な細胞内では一定の動的平衡状態にある。アポトーシス性カスパーゼのよく特徴付けられた少なくとも二つの活性化経路が存在する。その一つである外因性経路は、細胞外シグナル伝達により活性化され、特定の膜受容体の関与を必要とする。内因性経路は、細胞ストレス、毒物、放射線、酸化剤、Ca2+過負荷、DNA損傷に対応し;癌遺伝子に応答して活性化され、ミトコンドリア不安定化に関与する。ある病態生理学的状態(例えば、移植される器官の細胞内の酸素欠乏、有害物質による処置)では、アポトーシスが増加し、過剰な数の細胞が死滅し、患部組織の機能が損なわれ、所望によりその生存を脅かす。
【0003】
分子的なアポトーシス誘導機構は、アポトーシスのエフェクターとしても公知のカスパーゼと称されるプロテアーゼの活性により、タンパク質を活性化させることに関与している。カスパーゼの活性化を可能にするためには、アポトソームと称される分子複合体の形成が必要である。アポトソームは、シトクロムc、プロカスパーゼ−9およびアポトーシスプロテアーゼ活性化因子1(Apaf−1)により形成される。Apaf−1阻害は、アポトソーム複合体の形成を阻害し、アポトーシス阻害(カスパーゼ3活性化により測定)をもたらすことが示されている。アポトーシスが低酸素(空気酸素濃度の低下)により、または化学的化合物により誘導される細胞アッセイでは、細胞生存率の増加は、細胞がアポトーシス阻害剤によって予め処理された場合に観察されている。
【0004】
同様に、器官の除去および移植の過程中、その細胞は低酸素状態に晒され、細胞死がもたらされて器官の生存能および機能を損なう場合がある。従って、例えば移植に提供される全角膜の70%のみが、移植に好適となる。これは角膜貯蔵中にアポトーシス細胞死が生じる事実によるものである。同様の状況が腎臓および心臓移植中に生じる。緩衝化された無菌環境のみを提供する器官輸送用の溶液が市販されているが、これらはアポトーシス細胞死を防止するいずれの活性分子も含んでいない。
【0005】
アポトーシスに関与する機構の研究によって、異なる潜在的な薬理学的標的を識別することが可能となっている。従って、転写因子、キナーゼ、ミトコンドリア膜の透過化の制御因子、およびカスパーゼファミリーの阻害剤等の、異なるレベルのアポトーシスカスケードにて作用する阻害剤が設計されている。
【0006】
アポトソームの形成は、アポトーシスカスケードと、続くカスパーゼの活性化における重要なステップであるため、Apaf−1活性化の阻害は、研究されている他の薬理学的標的よりもアポトーシス阻害に対してより大きい影響を有し得る。科学文献には、Apaf−1阻害の治療的意義が示されている。従って、パーキンソン病の動物モデルにおけるアデノウイルスを用いたApaf−1ドミナントネガティブの形質導入は、アデノウイルスを用いたカスパーゼ−1ドミナントネガティブの形質導入よりも有効であった。
【0007】
国際公開第WO2007060524号には、アポトーシス阻害剤としての以下の式の[1,4]ジアゼパン−2,5−ジオンの誘導体化合物が記載されている。
【0008】
【化1】

【0009】
国際公開第WO2008009758号には、抗癌療法のための、または酵素UBC13に関与する代謝経路、転写因子NF−kBに関与する代謝経路、もしくはPCNAもしくはRAD6に関与する代謝経路に関連した疾病の治療および/もしくは予防のための、医薬組成物の製剤中に使用できるUBC13−UEV相互作用阻害剤としての以下の式の化合物が記載されている。それらは本発明のものと構造的に同様と見なすことができるが、異なる使用を有する。
R−(CR−CO−N(R)−C(R)−CO−NH
【0010】
従って、新しいApaf−1阻害剤化合物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、APAF−1阻害活性を有する、式(I)の2,5−ピペラジンジオンの新しい誘導体化合物を提供する。
【0012】
従って、本発明の第一の態様は、式(I)の化合物、およびその薬学的に許容可能な塩に関する:
【化2】

(式中、
R1およびR2は、−H、−C1−5アルキル、−C2−5アルケニル、−(CH0−3−シクロアルキル、−(CH1−3−複素環、−(CH0−3−アリール、−(CH0−3−ヘテロアリール、−(CH1−2−CH(アリール)、−(CH1−2−CH(アリール)(ヘテロアリール)および−(CH1−2−CH(ヘテロアリール)から独立して選択され、
R3は、−H、−C1−5アルキル、−C2−5アルケニル、−(CH0−3−シクロアルキル、−(CH1−3−複素環、−(CH1−3−アリール、−(CH1−3−ヘテロアリール、−(CH1−3−CONR5R6、−(CH1−2−CH(アリール)、−(CH1−2−CH(アリール)(ヘテロアリール)および−(CH1−2−CH(ヘテロアリール)から独立して選択され、
R4は、−H、−C1−5アルキル、−(CHR7)1−3−CO−NR5R6、−(CHR7)1−3−CO−OR5、−(CH1−3−NR5R6、−(CH1−3−CO[NCHR7CO]NHおよび−(CH1−3−CO[NCHR7CO]OR5から独立して選択され、
nは、1および2から選択される整数であり、
mは、1、2および3から選択される整数であり、
R5およびR6は、−H、−C1−5アルキルおよび−(CH0−3−アリールから独立して選択され、
R7は、−H、−C1−5アルキル、−(CH1−3−アリールおよび−(CH1−3−ヘテロアリールから選択され、従ってmが1よりも大きい場合、R7置換基は、互いに同じであってもまたは異なっていてもよく、
ここでC1−5アルキル、C2−5アルケニル、シクロアルキルおよび複素環基は、所望によりハロゲン、OR5、OCF、SH、SR5、NR5R6、NHCOR5;COOH、COOR5、OCOR5、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される一つまたは数個の置換基で置換されてもよく、
アリールおよびヘテロアリール基は、所望によりハロゲン、CF、OR5、OCF、SH、SR5、NH、NHCOR5;NO、CN、COR5、COOR5、OCOR5、CONR5R6、−(CH0−3NR5R6、SONH、NHSOCH、C1−5アルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される一つまたは数個の置換基で置換されてもよく、
複素環およびヘテロアリール基は、所望により第二級窒素原子上にてC1−5アルキル、シクロアルキルまたは−(CH0−3−アリールで置換されてもよく、
但し、R2が2−(4−フルオロフェニル)エチルであり、R4が−CH−CO−NHであり、かつnが1であるとき:
−R1が2−(4−フルオロフェニル)エチルの場合、R3は2−(4−メトキシフェニル)エチル、2−(2−ピリジル)エチルまたは2−(2,4−ジクロロフェニル)エチルではなく、
−R1が2−(2,4−ジクロロフェニル)エチルの場合、R3は2−(4−メトキシフェニル)エチルまたは2−(2−ピリジル)エチルではない)。
【0013】
本発明の特定の態様によれば、R1は、−C1−5アルキルまたは−(CH0−3−アリールである。
【0014】
本発明の別の特定の態様によれば、R2は、−C1−5アルキル、−(CH0−3−アリール、−(CH0−3−ヘテロアリールまたは−(CH1−2−CH(アリール)である。
【0015】
本発明の別の特定の態様によれば、R3は、−H、−C1−5アルキル、−(CH1−3−複素環、−(CH1−3−アリールまたは−(CH1−3−ヘテロアリールである。
【0016】
本発明の別の特定の態様によれば、R4は、−H、−(CHR7)1−3−CO−NR5R6、−(CHR7)1−3−CO−OR5または−(CH1−3−CO[NCHR7CO]NHである。
【0017】
本発明の別の特定の態様によれば、nは、1である。
本発明の別の特定の態様によれば、mは、1である。
本発明の別の特定の態様によれば、R5は、−Hまたは−C1−5アルキルである。
本発明の別の特定の態様によれば、R6は、−Hである。
本発明の別の特定の態様によれば、R7は、−H、−C1−5アルキル、−(CH1−3−アリールまたは−(CH1−3−ヘテロアリールである。
【0018】
本発明の第二の態様は、活性医薬成分としての使用のための、特に、アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態の予防および/または治療における使用のための式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩に関し、ここでアポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態は、器官または細胞の保存、特に移植または保全;細胞毒性、特に化学薬品により、または放射線、音響性外傷、やけどのような物理的因子により、または肝炎ウイルス感染のような生物学的因子により仲介される細胞毒性の予防;心臓発作または脳梗塞のような低酸素状態による病状;眼科手術に起因する傷害、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症または緑内障のような眼科病状;アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病または筋萎縮性多発性硬化症のような神経変性疾患;糖尿病、特にランゲルハンス島の保存または例えば腎毒性のような糖尿病関連の細胞毒性;変形性関節症;関節炎;炎症またはAIDS関連のCD4Tリンパ球枯渇のような免疫不全から選択される。
【0019】
本発明の別の態様は、アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態、特に前述した病状のうちの一つの予防および/または治療に意図される医薬の製造のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態、特に前述した病状のうちの一つに罹患しているまたは罹患し易い個人または器官の予防および/または治療方法に関し、該方法は、治療的有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、十分な量の薬学的に許容可能な賦形剤と一緒に前記個人または器官に投与することを含む。
【0021】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容可能な塩、特に実施例としてまたは中間体として記載されている式(I)の化合物が好ましい。
【0022】
本発明の化合物は、単独で、またはアポトーシスの増加に関連した病理学的および/もしくは生理学的状態の予防および/もしくは治療に有用な一種以上の化合物との組み合わせで使用することができ、前記アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態は、器官または細胞の保存、特に移植または保全;細胞毒性、特に化学薬品により、または放射線、音響性外傷、やけどのような物理的因子により、または肝炎ウイルス感染のような生物学的因子により仲介される細胞毒性の予防;心臓発作または脳梗塞のような低酸素状態による病状;眼科手術に起因する傷害、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症または緑内障のような眼科病状;アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病または筋萎縮性多発性硬化症のような神経変性疾患;糖尿病、特にランゲルハンス島の保存または例えば腎毒性のような糖尿病関連の細胞毒性;変形性関節症;関節炎;炎症またはAIDS関連のCD4Tリンパ球枯渇のような免疫不全等である。
【0023】
用語「C1−5アルキル」は、単独でまたは組み合わせで、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0024】
用語「C2−5アルケニル」は、単独でまたは組み合わせで、2〜5個の炭素原子を有し、かつ一つ以上の不飽和結合を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0025】
用語「シクロアルキル」は、単独でまたは組み合わせで、飽和または部分的に飽和であり、かつ炭素および水素原子のみからなる3〜7員の安定な単環基を指す。シクロアルキルの例は、以下である:シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、シクロヘプチル。
【0026】
用語「複素環」は、単独でまたは組み合わせで、窒素、酸素および硫黄から選択される一つまたは数個のヘテロ原子を含む、5〜10個の結合からなる飽和または部分的に飽和の複素環を意味する。本発明の目的において、複素環は、縮合環系を含み得る単環または二環であってもよい。複素環基の例は、テトラヒドロフラニル(THF)、ジヒドロフラニル、ジオキサニル、モルホリル、ピペラジニル、ピペリジニル、1,3−ジオキソラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピロリジル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル等である。
【0027】
用語「アリール」は、単独でまたは組み合わせで、炭素環原子を含む単環または多環式芳香族環系を指す。好ましいアリールは、所望によりハロゲン、CF、OH、OR5、OCF、SH、SR5、NH、NHCOR5;NO、CN、COR5、COOR5、OCOR5、CONR5R6、−(CH0−3NR5R6、SONH、NHSOCH、C1−5アルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される一つまたは数個の、好ましくは1〜3個の置換基を有する、例えばフェニルまたはナフチルのような5〜10員の単環または二環式芳香族環系である。
【0028】
用語「ヘテロアリール」は、単独でまたは組み合わせで、少なくとも一つの環がO、SおよびNから選択されるヘテロ原子を含む、芳香族または部分芳香族複素環を指す。従って、ヘテロアリールは、例えばアリール、シクロアルキル、および芳香族ではない複素環等の他の種類の環に縮合されたヘテロアリールを含む。ヘテロアリール基の例としては:ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾニル、フリル、チエニル、ピリミジル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、イソベンジルフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、テトラヒドロベンゾチオフェニル等が挙げられる。
【0029】
「所望により一つまたは数個の置換基で置換された」という表現は、基が非置換、または一つもしくは数個の置換基、好ましくは1、2、3もしくは4個の置換基で置換されてもよいことを意味するが、但し前記基が、置換され易い1、2、3または4位を有することを条件とする。
【0030】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、遊離塩基または遊離酸の効率および生物学的性質を保存し、かつ生物学的意味または任意の他の意味において違和感を生じない塩を意味する。
【0031】
本発明によれば、式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容可能な塩は、それらのAPAF−1阻害活性によって、アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態の予防および/または治療に有用である。
【0032】
特に定義されない限り、本明細書に使用されている全ての技術用語および科学用語は、本発明の分野の当業者により通常理解されるものと同一の意味を有する。本発明に記載されるものと類似したまたは等価な方法および材料を、本発明の実践にて使用することができる。本記載および請求項を通して、単語「含む」およびその変形は、他の技術的特徴、添加物、成分、ステップまたは関与する化合物の立体異性体を排除することを意図するものではない。当業者には、本発明の他の目的、利点および特徴が、一部は本記載から、一部は本発明の実践から推測できるであろう。
【0033】
式(I)の化合物は、有機合成の任意の当業者に公知である以下の異なる方法、特に以下のスキームに示す一般的プロセスにより調製することができる。調製方法の出発物質は商業的に入手可能であり、または文献の方法により調製することができる。特に示さない限り、基R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7の意味は、一般式(I)に定義されているものである。
【0034】
式(I)の化合物は、以下に記載する方法およびスキームにより得ることができる。
方法A
スキーム1
【化3】

【0035】
方法Aによれば、フルオレンメチルオキシカルボニル基を脱保護した後、固体支持体に結合したアミンIIをアシル化剤III(Xは脱離基、例えばハロゲンを表し、YはOHまたはハロゲンを表す)でアシル化する。Yがハロゲン、例えばクロロアセチルクロリドを表す場合、反応は、トリエチルアミン等の塩基の存在化で行われてもよい。Yが−OH、例えばブロモ酢酸を表す場合、反応は好適なカップリング剤、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドの存在下で行われてもよい。両方の場合において、反応はN,N−ジメチルホルムアミドまたは塩化メチレン等の樹脂を膨潤可能な不活性溶媒中にて室温で、または反応時間を最小にするようマイクロ波照射の下で行われてもよい。次いで、アミンIVaを、塩基として第三級アミンを使用して結合させる。反応は、室温でまたはマイクロ波照射の下で行われてもよい。
【0036】
カルボン酸VI(PGは、アリル等の保護基を表す)を、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールとの組み合わせ等のカップリング剤を使用して、アミンVと反応させてアミドVIIを得る。次いで、塩基およびN,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド等の溶媒を使用してMichael反応によりアミンIVbを付加させて、トリフルオロ酢酸、ジクロロメタンおよび水の混合物を使用して樹脂から切断した後、中間体VIIIを得る。中間体VIIIを環化させ(中間体IX)、塩基性媒体中で脱保護して中間体酸Xを得る。
【0037】
代替的に、中間体Xはスキーム2に従って固相中で調製されてもよく、ここでアミンV’は、NaBHCN等の還元剤を使用したTHF−AcOH中でのグリオキシレートを用いた還元的アミノ化反応、または代替的に塩基として第三級アミンを使用したブロモアセテートまたはブロモアセトアミドを用いたアルキル化により、アミンIVaから調製され得る。続いて、これを酸VIと結合させてアミドVII’を得る。次いで、アミンIVbを加え、Michael反応と、続くインサイチューでの環化により中間体エステルIXを生成し、これを塩基性処理することにより化合物Xを得る。
【0038】
スキーム2
【化4】

【0039】
スキーム3
式Iの化合物の取得
【化5】

【0040】
式Iaの化合物は、中間体Xから、例えばHATUとHOBTとの組み合わせ等のカップリング剤の存在下、上記に示した方法論に従って得られた固体支持体VaまたはVa’に結合したアミンとのカップリングにより得ることができる。式Ibの化合物は、出発固体支持体(IIb)が例えばクロロトリチル樹脂等の、アミノ基の代わりにハロゲン基を有する固相の場合に、樹脂から切断した後に酸を得ることを除いて、化合物Iaの合成と同様にして得ることができる。エステルIcは、例えば、硫酸等の酸媒体中のメタノールを使用する等、有機合成における通常のエステル化方法により、対応する酸Ibをエステル化して合成することができる。Ibの場合、IbはエステルIcを鹸化することにより得ることができる。式Idの化合物は、中間体Xを第一級アミンIVcと反応させることにより得ることができる。
【0041】
式Iの化合物を得るための代替的戦略は、アミンIIを式XIのアミノ酸でアシル化することにより行われてもよい(方法B)。
【0042】
方法B
【化6】

【0043】
本発明の分野の当業者に明らかなように、方法Aのステップを、方法Bのステップのいくつかと組み合わせて、式Iの化合物を得ることが可能である。
【0044】
代替的に、以下に記載するスキームに示すように式IeおよびIfの化合物を得ることが可能である。
【0045】
スキーム3
【化7】

【0046】
酸Xに結合されるペプチドXIIIおよび擬ペプチドXIVは、標準的なペプチド合成反応によって得ることができる。従って、アミンIIa(Z=NH)または塩化物IIb(Z=Cl)樹脂を、好適なカップリング剤を使用して、好適に保護されたアミノ酸(XII)と反応させてもよい。所望により、アミンを脱保護する前に、プロセスを連続的に繰り返してペプチドXIIIを得てもよい。次いで、カルボン酸XをXIIIと反応させて、化合物Ieを得る。
【0047】
アミノ酸単位(XIII)をグリシン単位と組み合わせることにより(以下の方法AまたはB)、擬ペプチドXIVを得、擬ペプチドXIVは、上述した方法と同様にしてIfの獲得をもたらす。
【0048】
使用した第一級アミンIVa、IVbおよびIVcは、商業的に入手可能であり、または公知の方法(March, Advanced Organic Chemistry, 1991, Ed. John Wiley & Sons)、もしくは例えば、以下に記載するスキームを用いて得ることができる。
【0049】
【化8】

【0050】
スキーム4
アミンは、アルコールおよびフタルイミドカリウムから出発して、溶媒としてのテトラヒドロフラン中、例えば、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)およびトリフェニルホスフィンの存在下、Mitsunobu反応と、続くヒドラジン水和物による解放により得ることができる(Mitsunobu, J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 679-680)。
【0051】
N−置換グリシンVおよびXIは、例えば対応するグリシンを、NaBH、NaBHCNまたはNaBH(AcO)等の還元剤を使用して、好適なアルデヒドにより還元的アミノ化し(スキーム5)、またはエステルをアミンR−NHで求核置換する(スキーム6)等、以下に示すいくつかの方法により合成することができる。
【0052】
スキーム5
【化9】

【0053】
スキーム6
【化10】

【実施例】
【0054】
略語:
AcOEt 酢酸エチル
ブライン 飽和NaCl溶液
DCM ジクロロメタン
DIC N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド
Eq. モル当量
EtN トリエチルアミン
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
IPA イソプロピルアルコール
HATU 2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HRMS 高分解能質量分析法
MeOH メタノール
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
RP 逆相
rt 室温
tr 保持時間
UV 紫外線
TFA トリフルオロ酢酸
【0055】
以下の実施例は、本発明をより深く説明する役割を果たすが、これらは本発明を限定するものと見なすべきではない。
【0056】
本文献で使用した命名法は、Excelバージョン12のためのChemdrawにおけるCFW_CHEMICAL_NAME機能に基づく。
【0057】
一般的データ:
ラップ・ポリメーレ(Rapp Polymere GmbH)(ドイツ)から獲得したポリスチレンAM RAM樹脂を使用して化合物を合成した。反応においては、HS501デジタルIKA Labortechnik撹拌機を使用し、ポリエチレンディスクを有するポリスチレン注射器を使用した。マイクロ波により行った反応では、10mlガラス反応器を有するCEM Discoverモデルを使用した。
【0058】
生成物は、以下により分析した:
・方法A:X−Terra C18(15×0.46cm、5μm)逆相カラムを用いたHewlett Packard Series 1100(UV検出器1315A)機器を使用したRP−HPLCによる。UV検出に使用した波長は、210nmであった。CHCN−HOと0.1% TFAとの1ml/分における混合物を移動相として使用した。20%〜70%(10分)および70%〜100%(8分)のCHCNの勾配を用いて分析を行った。
【0059】
・方法B:可変波長UV検出器と質量分析計モデル1100 VLとを備えたAgilent 1100 HPLC機器を使用して生成物を分析した。UV検出に使用した波長は210nmであった一方、MS検出器は正エレクトロスプレーイオン化モードで作動され、100〜1300m/zの走査が行われた。クロマトグラフ分離に関しては、使用したカラムは、50℃に設定されたKromasil 100 C18(4.0×40mm、3.5μm)であり、5μlが注入された。溶離のために、以下に記載する二つの溶媒勾配のうちの一つに従った:7分で5〜100% B、7〜8.5分で5%B。移動相の流速は、1.4ml/分である。溶媒Aは、水中0.2%ギ酸からなる一方、Bはアセトニトリル中0.2%ギ酸である。
【0060】
・方法C:一列のダイオードを有する検出器と、質量分析計モデルEMD1000とを備えたWaters HPLC−UV−MS機器を使用した。UV検出に使用した波長は210nmであった一方、MS検出器は正エレクトロスプレーイオン化モードで作動され、100〜1000m/zの走査を行った。クロマトグラフ分離に関しては、使用したカラムは、50℃に設定されたKromasil C18(2.1×50mm、3.5μm)であり、2μlを注入した。溶離のために以下の勾配に従った:5〜100%B、0〜5分、100%B、5〜6.5分、5%B、6.5〜8分。移動相の流速は、0.5ml/分である。
【0061】
Waters直交加速飛行時間質量分析計モデルLCT Premier XEに結合したWaters Acquity UPLC機器を使用して、UPLC−HRMSにより高分解能質量分析法を行った。Waters Acquity C18カラム(10×2.1mm、1.7μm)によりクロマトグラフ分析を行った。
【0062】
CHCN−HOと20mMギ酸との0.3ml/分における混合物を移動相として使用した。CHCNの50%〜100%の6分間の勾配を用いて分析を行った。
【0063】
中間体VI
VI:(Z)−2−ブテン二酸アリルエステル
1.8mlのアリルアルコール(26mmol、1.3eq.)を、無水マレイン酸(20mmol)の2gのクロロホルム溶液に加えた。反応混合物を還流下で5時間撹拌した。得られた溶液を1N HClで処理し、クロロホルムで抽出した。有機抽出物を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた残留物を油形態の中間体VIとして同定した(純度95%、収率85%)。
【0064】
中間体X
X.1:2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)酢酸
【化11】

【0065】
2gのFmoc−Rink Amide AMポリスチレン樹脂(0.61mmol/g樹脂、1.22mmol)および12mlの20%ピペリジンのDMF中の混合物を、マイクロ波反応器内にて35℃で2分間撹拌した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。樹脂をブロモ酢酸(III、840mg、5eq.)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(1.15ml、5eq.)のDMF(12ml)溶液で処理した。反応混合物をマイクロ波反応器内にて60℃で2分間撹拌した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。2,4−ジクロロフェネチルアミン(IVa、1.035ml、5eq.)およびトリエチルアミン(0.85ml、5eq.)の12mlのDMF溶液を樹脂に加え、縣濁液をマイクロ波で活性化して90℃で2分間撹拌した。上澄みを除去し、反応を同一条件で繰り返した。得られた樹脂Vを濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。次いで、樹脂を(Z)−2−ブテン二酸アリルエステル(VI、957mg、5eq.)、HOBT(825mg、5eq.)およびDIC(770μL、5eq.)のDCM:DMF(2:1、123ml)溶液で処理した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、濾過した。樹脂を乾燥し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。次いで、3,3−ジフェニルプロピルアミン(IVb、1.29g、5eq.)およびトリエチルアミン(0.85ml、5eq.)の12mlのDMF溶液を樹脂に加え、縣濁液を室温で3時間撹拌した。樹脂を濾過し、反応を同一の温度で16時間繰り返した。上澄みを除去し、樹脂を乾燥し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。60:40:2 TFA/DCM/水混合物(20ml)を用いて室温で30分間処理することにより、固相からの切断を行った。反応混合物を濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、得られた残留物を20mlのジオキサンで還流下にて1.5時間処理することにより環化を行った(HPLCにより反応を監視)。次いで、4N水酸化ナトリウムとアリルアルコールの1:2溶液(9ml)を加え、混合物を還流下で45分間撹拌した。粗反応生成物を1N塩酸で酸性化し、溶媒を蒸発させた。得られた溶液を酢酸エチル(3×50ml)で抽出し、有機抽出物を飽和NaCl溶液(2×100ml)で洗浄し;これらを無水MgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させて450mgの所望の生成物を得た(X、純度70%、210nmでの収率95%)。HRMS(M+H)292912の計算値、539.1504、実測値、539.1514。
【0066】
以下の化合物は、異なるアミンを使用して、上記の実施例に記載した方法と同様の方法に従って調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
X.13:2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−3,6−ジオキソ−1−(4−(トリフルオロメチル)ベンジル)ピペラジン−2−イル)酢酸
【化12】

【0069】
ステップ1 中間体V’
7.55mLのEtNと、2.50g(27mmol)のブロモアセトアミドとを、5g(41mmol)の2−(2−ピリジル)エチルアミンの300mLのジオキサン溶液に加える。得られた混合物を一晩加熱還流する。溶液を乾燥する迄蒸発させ、溶離液としてAcOEt:MeOH:NH(10:1:0.01)の混合物を使用してシリカゲル中で精製して2.39gの中間体V’を得る。方法B:tr:0.261、m/z:180。
【0070】
ステップ2:中間体VII’
4.90mLのEtNと、3.24g(24mmol)のHOBTと、4.60g(24mmol)のEDCと、ステップ1の生成物とを、100mLのDMF中の2.31g(16.0mmol)のマレイン酸モノエチルエステルからなる溶液に加える。形成された縣濁液を撹拌下にて室温で18時間保つ。次いで、これを水で処理し、AcOEtを加え、有機相を分離し、水性相をAcOEtでもう一回抽出する。有機相を貯め、飽和NaHCO溶液およびブラインで連続して洗浄する。続いてこれを無水NaSO上で乾燥し、溶媒を濾過し、減圧下で蒸発させる。実施例VII’.13と同定された1.5gの化合物が得られる。方法B:tr:1.094、m/z:306。
【0071】
ステップ3:中間体IX
0.8mL(5.89mmol)のEtNと1.5gの中間体VII’.13(4.91mmol)とを、2−チオフェニルエチルアミン(0.63mL、5.4mmol)の40mLのジオキサン溶液に加え、得られた溶液を還流下で18時間撹拌する。溶液を乾燥する迄蒸発させ、溶離液としてAcOEt:MeOH:NHの(10:1:0.01)混合物を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体IX.13エチル(2−(3,6−ジオキソ−4−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)−1−(2−(チオフェン−2−イル)エチル)ピペラジン−2−イル)アセテート)と同定された510mgの油を得る。方法A:tr:2.289、m/z:416。
【0072】
以下の中間体は、中間体IX.13と同様にして調製された:
【0073】
【表2】



【0074】
ステップ4:中間体X
1.6mLの1N LiOHの溶液を、550mg(1.32mmol)の中間体IX.13の15mLのMeOH:THF混合物(1:3)中の溶液に加え、室温にて撹拌下で一晩放置した。次いで、これをAcOEt中で希釈し、水で洗浄し、水性相を1N HCl溶液でpH=7迄酸性化し、AcOEtで抽出する。最後に、有機相を貯め、無水NaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させる。中間体X.13と同定された330mgの無色油が得られる。
方法B:tr:1.768、m/z:388
以下の中間体を中間体X.13と同様にして調製した:
【0075】
【表3】


【0076】
式Iaの化合物
a)Ia.1.2:N−(2−アミノ−2−オキソエチル)−N−(2,4−ジクロロフェネチル)−2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド
【化13】

【0077】
酸X.1(100mg、1.1eq.)、HOBt(40mg、1.5eq.)、HATU(105mg、1.5eq.)およびDIPEA(95μL、3eq.)を、樹脂Va(0.61mmol/g樹脂、0.17mmol)と好適なアミンとの懸濁液に加え、2:1 DCM:DMF溶液(3ml)で予め膨潤させた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。樹脂を乾燥し、DMF(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDCM(3×3ml)で洗浄し、続いて60:40:2 TFA/DCM/水(5ml)の混合物を用いて室温で30分間処理した。樹脂を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させて、73mgの所望の化合物(Ia.1.2、収率51%、純度91%)を得た。HRMS(M+H)393914の計算値、767.1725、実測値、767.1741。
【0078】
【表4】



【0079】
b)Ia.2.1:N−(2−アミノ−2−オキソエチル)−N−(2,4−ジクロロフェネチル)−2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(4−フルオロベンジル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド
【化14】

【0080】
酸X.2(100mg、1eq.)を2−(4−フルオロベンジルアミノ)アセトアミド(IVc、28μL、1eq.)、DIC(85μL、3eq.)およびトリエチルアミン(80μL、3eq.)の2mLのDCM溶液に加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。粗反応生成物をNaOHで中和し、DCMで抽出した。有機抽出物を飽和塩化ナトリウムで乾燥し、これらを無水MgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させて96mgの所望の化合物Ia.2.1を得た。
方法A:tr:13.239、m/z:681
以下の中間体を、化合物1a.2.1と同様にして調製した:
【0081】
【表5】

【0082】
式Ibの化合物
a)Ib.1.2 2−(N−(2,4−ジクロロフェネチル)−2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド)酢酸
【化15】

【0083】
ブロモ酢酸(275mg、5eq.)およびDIPEA(345μl、5eq.)のDMF(3ml)溶液を200mgの2−クロロトリチルクロリド樹脂(1.6mmol/g Cl/g樹脂、0.17mmol)に加え、縣濁液を室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過し、DMF(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDCM(3×3ml)で洗浄した。次いで、樹脂をメタノール(3ml)により10分間処理して未処理Cl原子を除去した。上澄みを除去し、残留物をDCM(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDMF(3×3ml)で洗浄した。次いで、2,4−ジクロロフェネチルアミン(IVa、340μL、5eq.)およびトリエチルアミン(280μL、5eq.)の3mLのDMF溶液を樹脂に加え、縣濁液を室温で3時間撹拌した。濾過し、DMF(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDCM(3×3ml)で洗浄した後、HOBT(40mg、1.5eq.)、2:1 DCM:DMF(3ml)中のHATU(105mg、1.5eq.)およびDIPEA(95μL、3eq.)の存在下で酸X(100mg、1.1eq.)を樹脂に加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、濾過した。樹脂を乾燥し、DMF(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDCM(3×3ml)で洗浄した。最後に、樹脂を5:95 TFA:DCM(5ml)の混合物を用いて、室温で30分間処理して粗反応生成物を得、これを濾過した。濾液の溶媒を減圧下で除去して60mgの所望の化合物(Ib.1.2、収率42%、純度91%)を得た。HRMS(M+H)393814の計算値、768.1576、実測値、768.1573。
【0084】
【表6】

【0085】
式Icの化合物
Ic.1.2.メチル2−(N−(2,4−ジクロロフェネチル)−2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド)アセテート
【化16】

【0086】
酸Ib.1.2(30mg、1eq.)、メタノール(7.5ml)およびHSO(20μl、1eq.)の混合物を室温で15時間反応させた。粗反応生成物をNaOHで中和し、DCMで抽出した。有機抽出物を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水MgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させて22mgの所望の化合物Ic.1.2(収率72%、純度86%)を得た。HRMS(M+H)403914の計算値、782.1722、実測値、782.1216。
【0087】
【表7】


















【0088】
式Idの化合物
Id.1.2 N−(2,4−ジクロロフェネチル)−2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド
【化17】

【0089】
酸X.1(100mg、1eq.)を2,4−ジクロロフェネチルアミン(IVc、28μL、1eq.)、DIC(85μL、3eq.)およびトリエチルアミン(80μL、3eq.)の2mLのDCM溶液に加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。粗反応生成物をNaOHで中和し、DCMで抽出した。有機抽出物を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水MgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させて96mgの所望の化合物Id.1.2(収率73%、純度89%)を得た。HRMS(M+H)373614の計算値、710.1511、実測値、710.1522。
【0090】
【表8】

【0091】
【表9】
















【0092】
式Ieの化合物
Ie.1 6−アミノ−2−(2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド)ヘキサンアミド
【化18】

【0093】
Rinkアミド−Fmoc樹脂(II、500mg、0.305mmol)を5mLのDMF中20%ピペリジンによりマイクロ波反応器内で60℃にて2分間撹拌して脱保護した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。次いで、5mLのDMF中のHOBT(82mg、2eq.)およびDIC(96μL、2eq.)を使用してFmoc−L−Lys(Boc)−OHアミノ酸(XI、286mg、2eq.)を樹脂に結合させた。混合物を室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。5mLのDMF中20%ピペリジンを用いてFmoc基を20分間除去した後、樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。続いて樹脂を酸X(181mg、1.1eq.)、HATU(348mg、3eq.)、HOBT(123mg、3eq.)およびDIPEA(0.313ml、6eq.)の5mLのDMF溶液で処理した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。樹脂を乾燥し、DMF(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDCM(3×3ml)で洗浄し、続いて80:20:2.5:2.5 TFA/DCM/水/トリイソプロピルシラン(5ml)の混合物を用いて室温で30分間処理した。樹脂を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。得られた残留物を順相クロマトグラフィーにより、ジクロロメタン−メタノール−アンモニア混合物の勾配を用いて精製して、15mgの所望の化合物(Ie.1、収率8%、純度100%)を得る。MS(M+H)354112の計算値、666.26、実測値、666.40。
【0094】
式Ifの化合物
If.1.2 6−アミノ−2−(2−(N−(2,4−ジクロロフェネチル)−2−(4−(2,4−ジクロロフェネチル)−1−(3,3−ジフェニルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2−イル)アセトアミド)アセトアミド)ヘキサンアミド
【化19】

【0095】
Rinkアミド−Fmoc樹脂(II、800mg、0.42mmol)を、8mLのDMF中20%ピペリジンにより、マイクロ波反応器内で60℃にて2分間撹拌して脱保護した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。Fmoc−L−Lys(Boc)−OHアミノ酸(XII、497mg、2eq.)を、8mLのDMF中のHOBT(143mg、2eq.)およびDIC(165μL、2eq.)を使用して樹脂に結合させた。混合物を室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。Fmoc基を8mLのDMF中20%ピペリジンで20分間除去した後、樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。樹脂をブロモ酢酸(III、295mg、4eq.)およびDIC(0.33ml、4eq.)の1:2 DMF:DCM(8ml)溶液で処理し、混合物を室温で20分間撹拌した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄した。2,4−ジクロロフェネチルアミン(IVd、0.32ml、4eq.)およびトリエチルアミン(0.295ml、4eq.)の12mLのDMF溶液を樹脂に加え、縣濁液を室温で3時間撹拌した。上澄みを除去し、反応を同一条件下で繰り返した。樹脂を濾過し、DMF(3×15ml)、イソプロピルアルコール(3×15ml)およびDCM(3×15ml)で洗浄して樹脂XIVを得、これを酸X(274mg、2eq.)、HATU(116mg、1.6eq.)、HOBTおよびDIPEA(0.295ml、3.2eq.)の8mLのDMF溶液で処理した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。樹脂を乾燥し、DMF(3×3ml)、イソプロピルアルコール(3×3ml)およびDCM(3×3ml)で洗浄し、続いて80:20:2.5:2.5 TFA/DCM/水/トリイソプロピルシラン(5ml)の混合物で室温にて30分間処理した。樹脂を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。得られた残留物を半分取RP−HPLCにより、アセトニトリル−水混合物の勾配を用いて精製して128mgの所望の化合物(If.1.2、収率34%、純度99%)を得た。HRMS(M+H)455014の計算値、895.2675;実測値、895.2648。
【0096】
薬理学的実施例
インビトロでのアポトソーム形成阻害アッセイ
昆虫細胞中で生成された組換えApaf−1(rApaf−1)を、アッセイ緩衝液(20mM Hepes−KOH pH 7.5、10mM KCl、1.5mM MgCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1mM DTT、0.1mM PMSF)中の評価される化合物の存在下(濃度10μMにて)または不在下(対照として)にて30℃で15分間インキュベートした。最終的なrApaf−1濃度は40nMであった。次いで、dATP/Mg(シグマ(Sigma))および精製ウマシトクロムc(シグマ)を加えて、各々100μMおよび0.1μMの最終濃度を達成した。これを30℃で60分間インキュベートし、次いで、大腸菌中で生成された組換えカスパーゼ−9(rプロカスパーゼ−9、最終濃度0.1μM)を加え、これを30℃で10分間インキュベートした後、カスパーゼ−9蛍光発生基質Ac−LEDH−afc(最終濃度50μM)を加えた。全アッセイ容積は200μLであった。Wallac 1420 Workstation(λexc=390nm、λem=510nm)内にて37℃でのafc放出によりカスパーゼ活性を連続的に監視した。
【0097】
実施例に記載したいくつかの化合物の活性値を、Apaf−1阻害の百分率として表される以下の表に示す。
【0098】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、およびその薬学的に許容可能な塩:
【化1】

(式中、
R1およびR2は、−H、−C1−5アルキル、−C2−5アルケニル、−(CH0−3−シクロアルキル、−(CH1−3−複素環、−(CH0−3−アリール、−(CH0−3−ヘテロアリール、−(CH1−2−CH(アリール)、−(CH1−2−CH(アリール)(ヘテロアリール)および−(CH1−2−CH(ヘテロアリール)から独立して選択され、
R3は、−H、−C1−5アルキル、−C2−5アルケニル、−(CH0−3−シクロアルキル、−(CH1−3−複素環、−(CH1−3−アリール、−(CH1−3−ヘテロアリール、−(CH1−3−CONR5R6、−(CH1−2−CH(アリール)、−(CH1−2−CH(アリール)(ヘテロアリール)および−(CH1−2−CH(ヘテロアリール)から選択され、
R4は、−H、−C1−5アルキル、−(CHR7)1−3−CO−NR5R6、−(CHR7)1−3−CO−OR5、−(CH1−3−NR5R6、−(CH1−3−CO[NCHR7CO]NHおよび−(CH1−3−CO[NCHR7CO]OR5から選択され、
nは、1および2から選択される整数であり、
mは、1、2および3から選択される整数であり、
R5およびR6は、−H、−C1−5アルキルおよび−(CH0−3−アリールから独立して選択され、
R7は、−H、−C1−5アルキル、−(CH1−3−アリールおよび−(CH1−3−ヘテロアリールから選択され、mが1よりも大きい場合、R7置換基は、互いに同じであってもまたは異なっていてもよく、
ここで、C1−5アルキル、C2−5アルケニル、シクロアルキルおよび複素環基は、所望によりハロゲン、OH、OR5、OCF、SH、SR5、NH、NR5R6、NHCOR5;COOH、COOR5、OCOR5、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される一つまたは数個の置換基で置換されてもよく、
アリールおよびヘテロアリール基は、所望によりハロゲン、CF、OH、OR5、OCF、SH、SR5、NH、NHCOR5;NO、CN、COR5、COOR5、OCOR5、CONR5R6、−(CH0−3NR5R6、SONH、NHSOCH、C1−5アルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される一つまたは数個の置換基で置換されてもよく、
複素環およびヘテロアリール基は、所望により第二級窒素原子にてC1−5アルキル、シクロアルキルまたは−(CH0−3−アリールで置換されてもよく、
但し、R2が2−(4−フルオロフェニル)エチルであり、R4が−CH−CO−NHであり、かつnが1であるとき:
−R1が2−(4−フルオロフェニル)エチルの場合、R3は2−(4−メトキシフェニル)エチル、2−(2−ピリジル)エチルまたは2−(2,4−ジクロロフェニル)エチルではなく、
−R1が2−(2,4−ジクロロフェニル)エチルの場合、R3は2−(4−メトキシフェニル)エチルまたは2−(2−ピリジル)エチルではない)。
【請求項2】
R1が−C1−5アルキルまたは−(CH0−3−アリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が−C1−5アルキル、−(CH0−3−アリール、−(CH0−3−ヘテロアリールまたは−(CH1−2−CH(アリール)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R3が−H、−C1−5アルキル、−(CH1−3−複素環、−(CH1−3−アリールまたは−(CH1−3−ヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R4が−H、−(CHR7)1−3−CO−NR5R6、−(CHR7)1−3−CO−OR5または−(CH1−3−CO[NCHR7CO]NHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
mが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
R5が−Hまたは−C1−5アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R6が−Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R7が−H、−C1−5アルキル、−(CH1−3−アリールまたは−(CH1−3−ヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
活性医薬成分としての使用のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態の予防および/または治療における使用のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態が、器官または細胞の保存、特に移植または保全;細胞毒性、特に化学薬品により、または放射線、音響性外傷、やけどのような物理的因子により、または肝炎ウイルス感染のような生物学的因子により仲介される細胞毒性の予防;心臓発作または脳梗塞のような低酸素状態による病状;眼科手術に起因する傷害、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症または緑内障のような眼科病状;アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病または筋萎縮性多発性硬化のような神経変性疾患;糖尿病、特にランゲルハンス島の保存または例えば腎毒性のような糖尿病関連の細胞毒性;変形性関節症;関節炎;炎症またはAIDS関連のCD4Tリンパ球枯渇のような免疫不全から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態の予防および/または治療を意図する医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項15】
アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態が、器官または細胞の保存、特に移植または保全;細胞毒性、特に化学薬品により、または放射線、音響性外傷、やけどのような物理的因子により、または感染もしくは肝炎のような生物学的因子により仲介される細胞毒性の予防;心臓発作または脳梗塞のような低酸素状態による病状;眼科手術に起因する傷害、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症または緑内障のような眼科病状;アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病または筋萎縮性多発性硬化症のような神経変性疾患;糖尿病、特にランゲルハンス島の保存または例えば腎毒性のような糖尿病関連の細胞毒性;変形性関節症;関節炎;炎症またはAIDS関連のCD4Tリンパ球枯渇のような免疫不全から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態に罹患しているまたは罹患し易い個人または器官の予防および/または治療の方法であって、治療的有効量の請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、十分な量の薬学的に許容可能な賦形剤とともに、前記個人または器官に投与することを含む、方法。
【請求項17】
アポトーシスの増加に関連した病理学的および/または生理学的状態が、器官または細胞の保存、特に移植または保全;細胞毒性、特に化学薬品により、または放射線、音響性外傷、やけどのような物理的因子により、または感染もしくは肝炎のような生物学的因子により仲介される細胞毒性の予防;心臓発作または脳梗塞のような低酸素状態による病状;眼科手術に起因する傷害、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症または緑内障のような眼科病状;アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病または筋萎縮性多発性硬化症のような神経変性疾患;糖尿病、特にランゲルハンス島の保存または例えば腎毒性のような糖尿病関連の細胞毒性;変形性関節症;関節炎;炎症またはAIDS関連のCD4Tリンパ球枯渇のような免疫不全から選択される、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2013−500314(P2013−500314A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522195(P2012−522195)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/ES2010/000349
【国際公開番号】WO2011/012746
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(501048446)ラボラトリオス・サルバト・ソシエダッド・アノニマ (8)
【氏名又は名称原語表記】LABORATORIOS SALVAT, S.A.
【Fターム(参考)】