説明

B細胞の機能調節のための方法

本発明は一般的に、細胞の機能の調節のための方法に関する。より具体的には、本発明は本明細書に定義されるIDOを介したトリプトファン代謝物(そのようなIDOを介したトリプトファン代謝物の特定の例には、3-ヒドロキシキヌレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、ピコリン酸、キノリン酸、およびトラニラストが含まれる)を利用してB細胞の機能、例えばB細胞の増殖を調節する方法に関する。本発明の方法は、抗体産生、自己免疫状態、ならびにB細胞の増殖および新形成のような、異常な、望ましくない、または不適切なB細胞機能によって特徴づけられる状態の治療および/または予防にとりわけ有用である。関連する局面では、本発明は上記の化合物の投与を介して関節リウマチを治療および/または予防する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は一般的に、細胞の機能の調節のための方法およびそれに役立つ薬剤に関する。より具体的には、本発明は構造式(I)の化合物を利用してB細胞の機能、例えばB細胞の増殖を調節する方法に関する。本発明の方法は、自己免疫状態およびB細胞新形成のような異常な、望ましくない、または不適切なB細胞機能によって特徴づけられる状態の治療および/または予防にとりわけ有用である。関連する局面では、本発明は構造式(I)の化合物の投与を介して関節リウマチを治療および/または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
本明細書において著者が参照する刊行物の書誌事項の詳細は、本説明の最後にアルファベット順に集められている。
【0003】
本明細書における先行技術への言及は、オーストラリアにおいて先行技術が公の一般的知識の一部を構成すると容認または示唆するものではなく、そのように解釈してはならない。
【0004】
「自己免疫疾患」は、免疫系がねらいを誤り、実際にはそれが保護するように設計されている1つまたは複数の器官を攻撃する一群の疾病をさす。自己免疫疾患の約75%は女性に起こり、妊娠可能年令に最も頻繁に見られる。
【0005】
免疫系は、体を防御し、細菌、ウイルス、および他の侵襲性微生物によって引き起こされた感染を除去するように通常は働く細胞および細胞成分の複雑なネットワークである。自己免疫疾患にかかると、免疫系は、そのヒト自身の体の細胞、組織、および器官を標的として、誤って自己を攻撃する。標的部位の免疫系の細胞および分子の集合は、広く炎症と呼ばれる。
【0006】
自己免疫疾患には多くの異なる種類があり、それぞれが異なるやり方で体に影響を与える。例えば、自己免疫反応は、多発性硬化症ではミエリンに向けられ、クローン病では消化管に向けられる。関節リウマチは関節の結合組織に対する免疫反応の開始で特徴づけられる。全身性エリテマトーデス(狼瘡)のような他の自己免疫疾患では、影響される組織および器官は、その疾患を持つ個体間で異なる場合がある。狼瘡に罹患した1人のヒトは皮膚と関節が影響を受けるが、別のヒトは皮膚、腎臓、および肺に影響を受けるといった可能性がある。最終的には、免疫系による特定の組織への障害は、I型糖尿病における膵臓のインスリン産生細胞の破壊のように、永続的である可能性がある。
【0007】
自己免疫疾患の引き金は多様であり、免疫性、遺伝性、ウイルス、薬剤誘発性、およびホルモン性を含み、これらが単独または組み合わさったものである。現在のところ、多くの個々の機序が同定されているが、それらがどのようにして免疫ネットワークと相互作用をしてそのような異常な反応を誘導するかということは、おそらく状況または疾患状態によって異なり、大部分は未解明である。最終的に自己寛容の破壊を誘導することが示されている機序には、以下が含まれる:
(1) ウイルスによる体細胞組織の感染
(2) 特定の薬剤の細胞表面への結合による、変化した自己抗原の発生
(3) 一部の抗体の細菌抗原と自己抗原決定基の交叉反応
(4) 体内で新しく露出した抗原の発生
(5) ホルモンの影響、および
(6) 自己を認識する免疫ネットワークの崩壊。
【0008】
自己免疫疾患はしばしば慢性であり、ケアとモニタリングが一生必要となる。現在、治癒できる自己免疫疾患は少ない。
【0009】
自己免疫疾患によって誘導された炎症反応の管理が可能な場合もある。例えば、狼瘡または関節リウマチでは、免疫抑制剤が免疫系による標的組織の破壊を遅らせるまたは停止させることがたまにできる。このために使用される薬剤には、コルチコステロイド(プレドニゾン)、メトトレキセート、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびシクロスポリンが含まれる。残念ながら、これらの薬剤は、免疫系が感染と戦う能力も抑制するので、他の潜在的に重篤な副作用を持つ。しかし、疾患が寛解しても、患者は薬剤を中止できることはまれである。薬剤を中止した時に疾患が再開する可能性と、免疫抑制のような治療の長期的副作用とのバランスをとる必要がある。
【0010】
関節リウマチは結合組織の進行性の消耗性の炎症性疾患である。この疾患に最も影響を受けやすいのは関節である。この疾患は、急性期とそれに引き続く寛解期によって特徴づけられる。この全身性疾患が関与する他の器官には、肺、目、皮膚、および神経系が含まれる。この疾患の経過には差があるが、活動性の進行性のタイプでは、通常は感染または治療の合併症のために、死に至る場合がある。この疾患の原因ははっきり分からないが、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の感染が滑膜Bリンパ球の活性化を引き起こし、異常なIgG抗体を産生する可能性があると示唆されている。このIgGの新規のFc領域に対する免疫応答は、リウマチ因子の産生である可能性があり、これによって滑液中で免疫複合体が形成される可能性がある。
【0011】
関節リウマチは通常は自由に可動する関節に影響を与えるが、骨の端は関節軟骨で覆われており、関節包と呼ばれる線維組織のカプセルによって合わさっている。この関節包は外側の靭帯の層と内側の滑液を分泌する滑膜の層から構成されており、滑液は関節の潤滑剤として働く。関節リウマチでは、免疫複合体の形成が炎症反応を開始および増幅し、滑膜の障害および細胞溶解が引き起こされる。補体断片C3aおよびC5aはアナフィラトキシンおよび化学走性の特性を持つ。アナフィラキシー活性は肥満細胞および単球によるヒスタミンの局所的放出を誘導し、関節の腫脹、発赤、および疼痛のような症状を引き起こす。化学走性因子はその部位への貪食細胞の流入を誘導する。これらの細胞は刺激されライソゾーム酵素の関節腔への放出を行なう可能性があり、これによってさらに滑膜の炎症および増殖反応が進行する。
【0012】
炎症が悪化すると、TおよびB細胞も検出される可能性があり、その相互作用は免疫グロブリンの継続的生産を保証する場合があるので、この免疫複合体症候群の悪循環が継続する。循環リンパ球は高内皮静脈と呼ばれる小静脈から関節組織に入り得る。急性エピソードの際には、滑膜の増殖中の細胞が成長して関節活性になり、パンヌスを形成する。パンヌスは関節腔に浸潤し得る血管化した線維性瘢痕組織から構成され、炎症を関節軟骨に広げる。放出された加水分解酵素は軟骨を侵食し、関節破壊および他の合併症を引き起こす可能性がある。IL-1および単球由来腫瘍壊死因子を含め、滑膜細胞を活性化し得る物質がいくつかある。または、神経系も神経ペプチドサブスタンスPの放出で関与する可能性があり、この物質は滑膜細胞の増殖を刺激する可能性がある。サブスタンスPは通常は疼痛シグナルの伝達に関与しているが、感覚神経により関節組織中に放出されると、リウマチ性滑膜細胞からプロスタグランジンおよびコラゲナーゼの放出を刺激する。これらの結果はIL-1およびTNFでも得られる。
【0013】
したがって、異常な免疫細胞の機能によって特徴づけられる自己免疫疾患のような疾患の治療のための新規の手段を開発する必要が継続している。ステロイドおよび免疫抑制に基づく治療法に代わる治療および/または予防の方法の開発は、現行の治療法に伴う可能性のある副作用の重篤性を考慮すると、非常に価値がある。
【0014】
N-[3,4-ジメトキシンナモイル]-アントラニル酸(2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、トラニラスト、TNLとしても知られる)は、肥満細胞の脱顆粒の阻害剤としてもともと同定された抗アレルギー剤である[Zampini P et. al., 1983(非特許文献1)]。本発明に至るまでの研究において、IDOを介するトリプトファン代謝物またはその誘導体、特に構造式(I)

の化合物がB細胞の機能をダウンレギュレーションすると決定されたが、ここでR1およびR2は水素原子またはC1〜C4アルキル基からなる群より独立して選択され、R3およびR4は各々水素原子または合わせて別の化学結合を形成し、各Xはヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基、もしくはC1〜C4アルコキシ基からなる群より独立して選択されるか、または2つのX基がアルキルまたはアルコキシ基の場合にはこれらが相互に結合し環を形成し、nは1から3の整数である。これらの分子は、関節リウマチの治療にも特に効果的である。
【0015】
B細胞機能をダウンレギュレーションする手段の解明はB細胞免疫応答を選択的に調節する手段を提供するので、これらの所見は非常に重要である。これは、異常なB細胞応答によって特徴づけられる状態の治療のような、様々な状況における用途を持つ。したがって、本発明は、全ての免疫細胞の機能のダウンレギュレーションに向けられた従来の免疫抑制に伴う副作用を避けるやり方で、B細胞機能を選択的にダウンレギュレーションする強力な手段を提供することになる。
【0016】
【非特許文献1】Zampini P et. al., 1983
【発明の開示】
【0017】
発明の概要
本明細書および請求の範囲において、文脈上別の解釈が必要な場合を除き、「含む」という用語および「含んでいる」というような活用形は、記載された整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を含むが、他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を排除はしない意味を持つと解釈される。
【0018】
本発明の1つの局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩をB細胞に接触させる段階を含む、B細胞の機能をダウンレギュレーションする方法に関する。
【0019】
本発明の別の局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩をB細胞に接触させる段階を含む、B細胞の増殖をダウンレギュレーションする方法に関する。
【0020】
この好ましい態様では、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類におけるB細胞の機能をダウンレギュレーションする方法が提供される。
【0021】
より具体的には、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類におけるB細胞の増殖をダウンレギュレーションする方法が提供される。
【0022】
本発明の別の局面は、IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の有効量の拮抗剤を哺乳類に投与する段階を含む、IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体に阻害されるB細胞機能を、哺乳類においてアップレギュレーションする方法に関する。
【0023】
本発明の別の局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞活性で特徴づけられる状態の治療および/または予防のための方法に関する。
【0024】
より具体的には、上記B細胞機能のダウンレギュレーションに充分な時間および条件下で、有効量のトラニラストを哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる状態の治療および/または予防のための方法が提供される。
【0025】
好ましくは、本発明は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる自己免疫状態の治療および/または予防のための方法に関する。
【0026】
本発明の関連する局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類において炎症性の関節疾患を治療および/または予防する方法に関する。
【0027】
本発明のさらに別の局面は、異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる状態の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関するが、ここで化合物の投与はB細胞の機能をダウンレギュレーションする。
【0028】
本発明のさらに別の局面は、異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる状態の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0029】
本発明のさらに別の局面は、炎症性関節疾患の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0030】
本発明のさらに別の局面は、本発明の方法において使用される、IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩またはその拮抗剤に関する。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明はIDOを介したトリプトファン代謝物またははその誘導体、特に構造式(I)の化合物がB細胞の機能、特にB細胞の増殖をダウンレギュレーションするという驚くべき決定に部分的に根拠を置いている。これらの所見と一貫して、および関連する局面では、IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、特に構造式(I)の化合物は、関節リウマチを伴う自己免疫応答のダウンレギュレーションに特に有効である。これらの所見により、異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる状態の治療または予防のための手段を合理的にデザインすることができるようになった。そのような状態の例には、関節リウマチのような自己免疫状態が含まれる。
【0032】
したがって、本発明の1つの局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩をB細胞に接触させる段階を含む、B細胞の機能のダウンレギュレーションのための方法に関する。
【0033】
「IDOを介したトリプトファン代謝物」への言及は、IDO酵素系を介したトリプトファンの代謝にしたがって生成する任意の分子への言及であると理解されるべきである。そのような代謝物の例には、3-ヒドロキシキヌレン酸(3-HKA)、3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)、ピコリン酸(PA)、キノリン酸(QA)が含まれるがこれらに限定されない。本発明はさらに、トラニラストのようなIDOを介したトリプトファン代謝物の誘導体の使用も含むと理解されるべきである。N-[3,4-ジメトキシンナモイル]-アントラニル酸(2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、トラニラスト、TNL)は、肥満細胞の脱顆粒の阻害剤として元々同定された抗アレルギー剤である(Zampini P et al., 1983)。本発明によると、3-HAAの合成誘導体であるこの分子が、B細胞の機能をダウンレギュレーションする作用を示すことが決定された。
【0034】
1つの好ましい態様では、IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は構造式(I)

の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩であるが、ここでR1およびR2は水素原子またはC1〜C4アルキル基からなる群より独立して選択され、R3およびR4は各々水素原子または合わせて別の化学結合を形成し、各Xはヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基、もしくはC1〜C4アルコキシ基からなる群より独立して選択されるか、または2つのX基がアルキルまたはアルコキシ基の場合にはこれらが相互に結合し環を形成し、nは1から3の整数である。
【0035】
構造式(I)の化合物のカルボキシル基は、芳香環の2、3、または4位の位置で良い。好ましくはカルボキシル基は2位にある。
【0036】
好ましくはR1およびR2の少なくとも1つは水素原子である。より好ましくはR1およびR2の両方が水素原子である。
【0037】
好ましくはR3およびR4は合わせて化学結合を形成する。不飽和結合を持つそのような化合物は、EまたはZ幾何異性体である。
【0038】
好ましくはnは1または2であり、同一の場合も異なる場合もある各々のXは、ハロゲン、C1〜C4アルキル基、またはC1〜C4アルコキシ基から選択される。好ましくはXはハロゲンおよびC1〜C4アルコキシ基から選択される。より好ましくはnは2であり、両方のXはC1〜C4アルコキシ基からなる群より選択され、特にXは共にメトキシである。
【0039】
本発明に有用な特に好ましい構造式(I)の化合物は、構造式(II):

の化合物であって、Xおよびnは構造式(I)に定義されている。
【0040】
構造式(II)の化合物の例には、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸
が含まれる。
【0041】
本発明で使用するために特に好ましい構造式(II)の化合物は、2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト、TNL)である。
【0042】
別の好ましい態様では、IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(III)

の化合物またはその薬学的に許容される塩であるが、ここで
XはNおよびCR6からなる群より選択され:
-------は一重または二重結合を表し;
R1はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルからなる群より選択され;
R2はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1とR2が合わせて置換されていてもよい融合フェニル環を形成し;
R3はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、およびハロからなる群より選択され;
R4はH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、および

からなる群より選択され;
R5はC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12からなる群より選択され;
R6はH、C1〜4アルキル、OH、およびC1〜4アルコキシからなる群より選択され;
R7、R8、R9、およびR10はそれぞれ独立してHおよびC1〜4アルキル、またはR7とR8が合わせてオキソ基を形成する、もしくはR7とR9が結合を形成し;
R11はCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキル、およびCH2N(C1〜4アルキル)2からなる群より選択され;
R12はH、C1〜4アルキル、およびC(O)Hからなる群より選択され;ならびに
R13はH、C1〜4アルキル、および置換されていても良いフェニルで、ここで置換されていても良いフェニルは1つまたは複数のC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキル、およびN(C1〜4アルキル)2である。
【0043】
好ましくは、構造式(III)の化合物は3-HKA、3HAA、PA、またはQAである。
【0044】
本明細書で使用される「C1〜C4アルキル」という用語は、1から4つの炭素原子を持つ直鎖または分岐アルキル基を指す。そのような基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルが含まれる。
【0045】
本明細書では「C2〜C4アルケニル」という用語は、2から4つの炭素原子および1つまたは2つの二重結合を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。そのような基の例には、ビニル、プロペニル、ブテニル、およびブタジエニルが含まれる。
【0046】
本明細書では「C1〜C4アルコキシ」という用語は、1から4つの炭素原子を持つ直鎖または分岐アルキル基で置換されたヒドロキシル基を指す。そのような基の例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシが含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、および臭素原子をさす。
【0048】
適当な薬学的に許容される塩には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸のような薬学的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマール酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチルスルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、および吉草酸のような薬学的に許容される有機酸の塩が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
塩基性塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムのような薬学的に許容される陽イオンが含まれるがこれらに限定されない。
【0050】
塩基性の窒素含有基は塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチルのような低級ハロゲン化アルキル;硫酸ジメチルおよびジエチルのような硫酸ジアルキル;およびその他のような薬剤で、四級化(quarternised)することができる。
【0051】
構造式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は公知であり、当技術分野で公知の方法によって調製できる。内容が参照として本明細書に組み入れられるUS 3,940,422を参照されたい。
【0052】
3-ヒドロキシアントラニル酸、キノリン酸、ピコリン酸、キヌレニン、キサンツレン酸、およびキヌレン酸のような構造式(III)の化合物は、特殊化学品の会社から購入できる。または、構造式(III)の化合物は当技術分野で公知の合成技術を用いて、合成することもできる。例えば、3-メトキシアントラニル酸および8-メトキシキヌレン酸は、それぞれ3-ヒドロキシアントラニル酸およびキサンツレン酸から、例えばジアゾメタンを用いて水酸基のメチル化によって調製できる。または、構造式(III)の化合物は酵素変換によっても調製でき、例えば3-ヒドロキシキヌレン酸は、キヌレン酸をキヌレン酸ヒドロキシラーゼ(EC 1.14.992)によって酸化し、その後、キヌレン酸-7,8-ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.18)により再芳香族化することによって調製できる。
【0053】
構造式(I)、(II)、および(III)のいくつかの化合物は、不斉中心を持ち、そのために複数の立体異性体として存在することができることも認識される。したがって本発明は、1つまたは複数の不斉中心で実質的に純粋な異性体型である化合物、例えば、約95%または97% eeのような約90% ee以上、または99% ee、ならびにそのラセミ混合物を含む混合物にも関する。そのような異性体は、例えばキラル中間体を用いた不斉合成、またはキラル分割によって、調製できる。
【0054】
本発明を1つの理論または作用機序に限定することなく、構造式(I)の化合物は、経口活性のある抗アレルギー化合物である。本発明の特に好ましい化合物は、N-[3,4-ジメトキシンナモイル]-アントラニル酸、または(2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸という化学名のいずれかで公知であり、トラニラストと呼ばれる場合もある。さらに、C18H17NO5という化学式によって、およびリザベンという商標でも知られている。N-[3,4-ジメトキシンナモイル]-アントラニル酸の構造を以下に示す:

【0055】
「B細胞」(「Bリンパ球」としても知られる)という用語は、細胞表面に免疫グロブリン分子を発現し、活性化すると抗体を分泌する細胞に最終分化する免疫細胞を指すと理解されるべきである。したがって、これには例えば、従来のB細胞、CD5 B細胞(B-1細胞および移行期CD5 B細胞としても知られる)が含まれる。「B細胞」という用語は、B細胞変異体も含むと理解されるべきである。「変異体」には、遺伝的に修飾された細胞のような、自然にまたは非自然的に修飾されたB細胞が含まれるが、これらに限定されない。「B細胞」という用語は、B細胞像へのコミットメントを示すB細胞にも及ぶと理解されるべきである。これらの細胞は、発生の任意の分化段階で良く、表面免疫グロブリン分子を発現するとは限らない可能性がある。B細胞コミットメントは、免疫グロブリン遺伝子の再構成の開始によって特徴づけられるか、またはCD45R、MHCII、CD10、CD19、およびCD38の細胞表面発現のような他の何らかの表現型または機能的特徴によって特徴づけられる、コミットメントのより早期の段階に対応する可能性がある。様々な分化段階にあるB細胞の例には、初期B細胞前駆細胞、初期プロB細胞、後期プロB細胞、プレB細胞、未成熟B細胞、成熟B細胞および形質細胞が含まれる。
【0056】
B細胞の「機能」という用語は、B細胞が発生の任意の分化段階で果たす能力を持つ、任意の1つまたは複数の機能的活性を指すと理解すべきである。これには、例えば、増殖、分化、免疫グロブリン遺伝子の再構成、免疫グロブリの合成および分泌、ならびに抗原提示が含まれる。好ましくは、対象となる機能はB細胞の増殖である。この点では、B細胞群の拡大を予防することにより、直接的影響があり、さらに実際上、抗原提示および免疫グロブリン分泌のようなB細胞の機能的終点のダウンレギュレーションが得られる。したがって、B細胞数の調節は、B細胞関連の抗原提示または抗体分泌の程度および効果を調節するための非常に貴重かつ有効な手段を提供する。別の好ましい態様では、機能はB細胞の増殖に対する同時の変化のいかんを問わず、抗体産生である。
【0057】
本発明は別の局面では、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩をB細胞に接触させる段階を含む、B細胞の増殖をダウンレギュレーションする方法に関する。
【0058】
好ましいIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、上記の構造式(I)、(II)、および(III)の化合物であり、特にトラニラスト、3-HKA、3-HAA、PA、およびQAである。
【0059】
本発明にしたがって調節する対象となる細胞は、単離されたB細胞、または単離された組織のような細胞群の一部を形成するB細胞で良いことを理解するべきである。B細胞が哺乳類中で局在している、すなわち単離されておらず、そのためインビボで本方法を実行することが必要となる場合がある。対象細胞が、単離されているかまたはされていない細胞群または組織の一部である場合は、本方法はその群の全てのB細胞の機能、またはその群のB細胞のサブグループのみの機能を調節する可能性がある。同様に、哺乳類の生物学的機能または発生の調節においては、本調節は全身または局所的なB細胞の機能の調節という面で実行できるということを理解するべきである。さらに、どのような手法を利用するかに関わらず、B細胞の機能の変化の細胞への影響は、環境内での全ての細胞か、または細胞のサブグループのみで見られる可能性がある。
【0060】
「調節」という用語は、哺乳類のB細胞の機能的活性をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションすることを指すと理解されるべきである。この場合の「ダウンレギュレーション」とは、活性の1つまたは複数の局面を予防、低下(例、鈍化)、または阻害することを指し、この場合の「アップレギュレーション」はその逆の意味を持つと理解するべきである。
【0061】
本発明の方法にしたがって治療されるB細胞は、エクスビボまたはインビボに存在すると理解する必要がある。「エクスビボ」というのは、対象の体から細胞が取り出され、その活性の調節がインビトロで開始することを意味する。例えば、細胞は、異常なB細胞活性で特徴づけられる自己免疫状態の病因の任意の1つまたは複数の局面を研究するためのモデルとして使用されるB細胞である可能性がある。好ましい態様では、対象細胞はインビボに存在する。
【0062】
この好ましい態様では、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類におけるB細胞機能をダウンレギュレーションする方法が提供される。
【0063】
より具体的には、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類におけるB細胞の増殖をダウンレギュレーションする方法が提供される。
【0064】
本方法の好ましい態様では、IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、もしくは(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特にトラニラスト、3-HKA、3-HAA、PA、およびQAまたはその薬学的に許容される塩である。
【0065】
本明細書で使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、霊長類、家畜(例、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験動物(例、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、ペット(例、イヌ、ネコ)、および捕獲された野生動物(例、キツネ、カンガルー、シカ)を含む。好ましくは哺乳類はヒトまたは実験動物である。さらに好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0066】
好ましい方法は、B細胞の機能をダウンレギュレーションすることであるが、特定の状況では、この活性のアップレギュレーションを誘導することが望ましい場合もある。例えば、特定の条件下では、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体の投与は、適切な全身療法である可能性がある。したがって、そのような療法の副作用は、特定の細胞群または特定の組織部位におけるB細胞機能の望ましくないダウンレギュレーションである場合がある。1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体の投与を中止することによって状況を修正することができなければ、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体の拮抗剤を(例えば、部位を指定して)投与することが望ましい場合がある。別の例では、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体を用いた治療において、哺乳類に導入されたがその機能的活性を遅延または停止する必要のある化合物の機能を阻害するために、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体の拮抗剤の使用が必要になる可能性がある。したがって、「1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体により阻害されるB細胞の機能」という言葉は、哺乳類のB細胞の機能の少なくともいくらかが、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の効果のために、阻害、低下、または減速した機能を示すことを意味すると理解するべきである。
【0067】
したがって、本発明の別の局面は、IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の有効量の拮抗剤を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類においてIDOを介したトリプトファン代謝物に阻害されるB細胞機能をアップレギュレーションする方法に関する。
【0068】
「IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の拮抗剤」という用語は、IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の細胞機能阻害活性を直接または間接的に阻害、減速、またはダウンレギュレーションする任意の蛋白性または非蛋白性分子をさすと理解するべきである。本発明で使用するために適した拮抗剤の同定は、当業者に周知の方法を利用して日常的に実行できる。
【0069】
本発明の別の局面は、疾患状態、または他の望ましくない状態、またはそのような状態の開始に対する素因の治療および/または予防に関する本発明の使用に関する。より具体的には、異常なまたは望ましくないB細胞の増殖のような、異常なまたは望ましくないB細胞の機能によって特徴づけられる疾患状態の治療に関する。本発明を理論または作用機序に制限することなく、本発明の方法にしたがって治療できる状態には、自己免疫状態、急性および慢性臓器拒絶反応、ならびにB細胞新形成が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
自己免疫状態では、本発明の方法にしたがって治療できる状態には以下が含まれるがこれらに限定されない。
【0071】
(i) 関節リウマチ
滑膜の炎症にB細胞が重要であり、治療標的としての可能性があることが示されている(Takemura et al., J. Immunol. 2001; 167(8): 4710-4718; Silverman et al., Arthritis Res. Ther. 2003; 5(Suppl 4): S1-S6; Looney et al., Curr. Opin. Rheumatol. 2004; 16:180-185; Oligino et al., Arthritis Res. Ther. 2003; 5(Suppl 4): S7-S11; Silverman et al., Arthritis Rheum. 2003; 48(6): 1484-1492; Gorman et al., Arthritis Res. Ther. 2003; 5(Suppl 4): S17-S21)。骨髄は、骨内膜性骨形成を誘導するB細胞に富む病変を生成することにより関節リウマチに関与する(Hayer et al., Bone Miner. Res. 2004, 19(6):990-998)。関節リウマチに対するB細胞の寄与は、リタキシマブによりB細胞を枯渇すると治療効果が大きいことを示す臨床試験のデータで検証されている(Edwards et al., N. Engl. J. Med. 2004; 350(25): 2572-2581)。
【0072】
(ii) 多発性硬化症
過去には、研究は主に多発性硬化症におけるT細胞の寄与に注目してきたが、最近この疾患過程においてB細胞の潜在的役割が明らかになってきた(Archelos et al., Ann. Neurol. 2000; 47(6): 694-706; Iglesias et al., Glia 2001; 36(2): 220-234; Hemmer et al., Nat. Rev. Neurosci. 2002; 3(4): 291-301; Hemmer et al., Curr. Opin. Neurol. 2002; 15(3): 227-231; Qin et al., Int. MS J. 2003; 10(4): 110-120; Burgoon et al., Front. Biosci. 2004; 1(9): 786-496; Alter et al., J. Immunol. 2003; 170: 4497-4505)。B細胞が仲介する免疫応答は、多発性硬化症において中枢神経系における炎症反応の初期の事象である(Qin et al., Lab. Invest. 2003; 83(7): 1081-1088; Haubold et al., Ann. Neurol. 2004, 56(1): 97-107)。B細胞の寄与は、主に脱髄を通して起きる可能性がある(Svensson et al., Eur. J. Immunol. 2002; 32(7): 1939-1946)。トラニラストは多発性硬化症において炎症反応と脱髄の両方を阻害する可能性がある。
【0073】
(iii) 全身性エリテマトーデス
B細胞は全身性エリテマトーデス(SLE)の発病に中心的な役割を果たしている(Looney et al. 2004、上記;Chan et al., Immunol. Rev. 1999; 169: 107-121; Looney et al., Arthritis. Rheum. 2004; 50(8): 2580-2589; Anolik et al., Curr. Opin. Rheumatol. 2004; 16(5): 505-512; Looney et al., Lupus 2004; 13(5): 381-390; Baker et al., Autoimmun. Rev. 2004; 3(5): 368-375; Higuchi et al., J. Immunol. 2002; 168(1): 9-12; Desai-Mehta et al., J. Clin. Invest. 1996; 97(9): 2063-2073)。B細胞の抗体非依存性の役割は、マウスの狼瘡で示されている(Chan et al., J. Immunol. 1999; 163(7): 3592-3596; Chan et al., J. Exp. Med. 1999; 189(10): 1639-1648)。これは、リタキシマブで治療された患者において、実質的な血清反応がなくても疾患活動性が有意に改善したことによって確認された(Looney et al., 2004、上記)。リタキシマブでSLEがうまく治療できることは、本疾患においてB細胞を標的とすることの価値を示す(Looney et al., 2004、上記)。
【0074】
(iv) 乾癬性関節炎
抗原に活性化されたB細胞が乾癬性関節炎における慢性滑膜炎の発生に関与するという証拠がある(Gerhard et al., Z. Rheumatol. 2002, 61(6): 718-727)。
【0075】
(v) 炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)の2つの主な形態は、クローン病と潰瘍性大腸炎である。結腸上皮細胞に対する循環抗体の存在は、クローン病および潰瘍性大腸炎で報告されている(Hibi et al., Clin. Exp. Immunol. 1983; 54(1): 163-168; Takahashi et al., J. Clin. Invest. 1985; 76(1): 311-318; Sadlack et al., Cell 1993; 75(2): 253-261)。IBDの発病が、B細胞上でのCD40リガンド(CD40L)の異所性発現を通して、主にB細胞機構によって起きる可能性があるという証拠がある(Kawamura et al., J. Immunol. 2004; 172(10): 6388-6397)。B細胞上のCD40Lの同様な異所性発現は、狼瘡様疾患を誘導する可能性があり、SLEにおいてB細胞によるCD40Lの発現は増加している(Desai-Mehta et al., 1996、上記)。IBDとSLEの関係を記述する報告がいくつかあり、これはIBDとSLEの両方とも、主に調節異常を起こしたB細胞によって誘導される可能性を支持する(Ishikawa et al., J. Dermatol. 1995; 22(4): 289-291; Kritikos et al., Eur. J. Gastroenterol. Hepatol. 1998; 10(5): 437-439)。クローン病のマウスモデルにおける炎症の発生に、B細胞が、制御性T細胞を阻害することによって重要な役割を果たす可能性があることも、示されている(Olson et al., J. Clin. Invest. 2004; 114(3): 389-398)。
【0076】
(vi) I型糖尿病
非肥満糖尿病マウスにおけるT細胞を介した自己免疫性I型糖尿病の発症において、B細胞は抗原提示細胞として非常に重要な役割を果たしている(Noorchashm et al., Diabetes 1997; 46(6): 941-946; Noorchashm et al., J. Immunol. 1999; 163(2): 743-750; Greeley et al., J. Immunol. 2001; 167(8): 4351-4357; Akashi et al., Int. Immunol. 1997; 9(8): 1159-1164; Serreze et al., J. Exp. Med. 1996; 184(5): 2049-2053; Serreze et al., J. Immunol. 1998; 161(8): 3912-3918; Chiu et al., Diabetes 2001; 50(4): 763-770; Silveira et al., Eur. J. Immunol. 2002; 32(12): 3657-3666; Serreze et al., Curr. Dir. Autoimmun. 2003; 6:212-227; Silveira et al., J. Immunol. 2004; 172(8): 5086-5094)。自己免疫性糖尿病におけるT細胞とB細胞の協働は、B細胞の機能をダウンレギュレーションできるトラニラストのような薬剤が有効となることを示す。またB細胞に対する介入がこの疾患の後期に有用な可能性を示す証拠もある(Kendall et al., Eur. J. Immunol. 2004; 34(9): 2387-2)。初期の診断および適切な予防措置の困難であるヒトのI型糖尿病の治療に重要な可能性がある。
【0077】
(vii) 乾癬
現在では乾癬はT細胞を介する疾患と考えられている(Morel et al., J. Autoimmun. 1992; 5(4): 465-477; Bachelez et al., J. Autoimmun. 1998; 11(1): 53-62; Boyman et al., J. Exp. Med. 2004; 199(5): 731-736)。非関節炎乾癬の患者の病変組織において、B細胞浸潤の上昇が報告されている(Griffiths C.E. J. Eur. Acad. Dermatol. Venerol. 2003; 17(Suppl 2); 1-5)。乾癬とクローン病の間には関連がある(Sarwal et al., N. Engl. J. Med. 2003; 349(2): 125-138)。B細胞はクローン病の病態に関与しており、乾癬の発症に寄与する可能性がある(Olson et al., 2004、上記)。
【0078】
(viii) グレーブス病、橋本甲状腺炎、および自己免疫性甲状腺炎
B細胞はグレーブス病と橋本甲状腺炎の病態に関与している(Hasselbalch, Immun. Lett. 2003; 88(1): 85-86; Nielsen et al., Eur. J. Immunol., 2004; 34(1): 263-272)。
【0079】
(ix) 全身性硬化症
強皮症においてはB細胞のホメオスタシスの異常および記憶B細胞の活動亢進の増加が見られるが、これは強皮症の治療においてB細胞が標的になる可能性を示す(Sato et al., Arthritis Rheum. 2004; 50(6): 1918-1927; Asano et al., Am. J. Pathol. 2004; 165(2): 641-650)。
【0080】
(x) 慢性免疫性血小板減少性紫斑病
慢性免疫性血小板減少性紫斑病の治療においては、B細胞の枯渇が有用である(Stasi et al., Blood 2001; 98(4): 952-927; Cooper et al., Br. J. Haematol. 2004; 125(2): 232-239; Ahmad et al., Am. J. Hematol. 2004; 77(2): 171-176)。
【0081】
(xi) 他の自己免疫性疾患
シェーグレン症候群多発性神経障害(Levine and Pestronk, Neurology 1999; 52(8): 1701-1704)、ヴェーゲナー肉芽腫症(Specks et al., Arthritis Rheum. 2001; 44(12): 2836-2840)、緩慢性リンパ腫に伴う寒冷凝集素病(Cohen et al., Leuk. Lymphoma 2001; 42(6): 1405-1408; Berensen et al., Blood 2004; 103(8): 2925-2928)、特発性膜性神経障害(Ruggenenti et al., J. Am. Soc. Nephrol. 2003; 14(7): 1851-1857)、II型混合型クリオグロブリン血症(Zaja et al., Blood 2003; 101(10): 3827-3834)、後天性第VIII因子インヒビター(Wiestner et al., Blood 2002; 100(9): 3426-3428; Stasi et al., Blood 2004; 103(12): 4424-4428)、フルダラビン関連免疫性血小板減少性紫斑病(Hedge et al., Blood 2002; 100(6); 2260-2262)、難治性皮膚筋炎(Levine, Arthritis Rheum. 2002; 46 Suppl. 9): S488、尋常性天疱瘡(Depuy et al., Arch. Dermatol. 2004; 140(1): 91-96)、および重症筋無力症(Zaja et al., Neurology 2000; 55(7): 1062-1063; Wylam et al., J. Pediatr. 2003; 143(5): 674-677; Gajra et al., Am. J. Hematol 2004; 77(2): 196-197)においても、B細胞枯渇療法は有効である。
【0082】
本発明の方法にしたがって治療できる可能性のある非自己免疫疾患には、以下のものが含まれる:
【0083】
(i) 慢性移植片拒絶反応
慢性拒絶反応の主要な要素は抗体を介するので、B細胞を阻害する薬剤は、抗体の産生を低下させる可能性がある(Pescovitz M.D. 2004、上記)。ミコフェノール酸モフェチルおよびシロリムスは、移植片の受容者においてB細胞の増殖を抑制し、新抗原に対する抗体形成を減少させる(Kimball et al., Transplantation 1995; 60(12): 1379-1383; Pescovitz et al., Am J. Transplant. 2003; 3(4): 497-500)。
【0084】
(ii) B細胞リンパ腫
抗CD20モノクローナル抗体リタキシマブは、非ホジキンリンパ腫における標準治療であり、緩慢性および濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、原発性皮膚B細胞性リンパ腫、急性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、HIV関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、およびホジキン病を含む他のいくつかのB細胞悪性腫瘍に使用されてきた(Boye et al., Ann. Oncol. 2003; 14(4): 520-535; Avivi et al., Br. J. Cancer 2003; 89(8): 1389-1394; Rastetter et al., Annu. Rev. Med. 2004; 55: 477-503)。これはリンパ腫の治療におけるトラニラストの単独での、または標準的化学療法との併用の役割を示す。
【0085】
(iii) 移植片対宿主病(GVHD)
GVHDは本疾患におけるB細胞の病原性の役割によって特徴づけられる(Ratanatharathorn et al., Biol. Blood Marrow Transplant 2003; 9(8): 505-511)。
【0086】
(iv) 急性移植片拒絶反応
急性移植片拒絶反応においては浸潤性のB細胞が重要な役割を果たす(Sarwal et al., 2003、上記;Krukemeyer et al., Transplantation 2004; 78(1): 65-70)。B細胞MHCクラスIIを介する抗原提示は急性同種移植片拒絶反応の発病に寄与している(Akashi et al., 1997、上記)。
【0087】
したがって、本発明の別の局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞活性によって特徴づけられる状態の治療および/または予防のための方法に関する。
【0088】
好ましくはIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、または(III)の化合物、特にトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである。
【0089】
より具体的には、B細胞の機能をダウンレギュレーションするために充分な時間および条件下で、有効量のトラニラストを哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞の機能によって特徴づけられる状態の治療および/または予防のための方法が提供される。
【0090】
好ましくは、B細胞の機能は、B細胞の増殖である。
【0091】
「異常なまたは望ましくない」B細胞の機能に特徴づけられる状態というのは、正常でないか、生理学的には正常であるが望ましくないという点で不適切である、B細胞の機能をいう。そのような状態の例には、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、I型糖尿病、乾癬、グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、全身性硬化症、慢性免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性多発性神経障害、ヴェーゲナー肉芽腫症、緩慢性リンパ腫に伴う寒冷凝集素症、特発性膜性神経障害、II型混合型クリオグロブリン血症、後天性第VIII因子インヒビター、フルダラビン関連免疫性血小板減少性紫斑病、難治性皮膚筋炎、尋常性天疱瘡、重症筋無力症のような自己免疫状態、ならびに非自己免疫状態である移植片対宿主疾患、急性および慢性の移植片拒絶反応、敗血症ショック、インスリン抵抗性、アポトーシス状態、または多発性骨髄腫、B細胞性慢性リンパ性白血病、および他のB細胞性新形成のような新形成状態が含まれるがこれらに限定されない。対象の機能は、望ましくない免疫グロブリン分泌または望ましくない抗原提示の片方または両方に対応する可能性があることを理解すべきである。したがって、後者の場合、状態は、その効果がB細胞の抗原提示に連結している望ましくないT細胞応答によって関連づけられる可能性がある。したがって、例えば対象のB細胞群の拡大をダウンレギュレーションすることによって、B細胞の抗原提示レベルをダウンレギュレーションすることで、望ましくないT細胞応答がダウンレギュレーションできる可能性がある。
【0092】
IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、B細胞新形成の治療のための化学療法もしくは放射線療法、または自己免疫状態の治療のための免疫抑制療法もしくは抗炎症療法のような他の治療法と組み合わせて使用される可能性もある。
【0093】
好ましくは、本発明は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる自己免疫状態の治療および/または予防のための方法に関する。
【0094】
好ましくはIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、または(III)の化合物、特にトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである。
【0095】
好ましくは、状態は関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、I型糖尿病、乾癬、急性移植片拒絶反応、慢性移植片拒絶反応、グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、全身性硬化症、慢性免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性多発性神経障害、ヴェーゲナー肉芽腫症、緩慢性リンパ腫に伴う寒冷凝集素症、特発性膜性神経障害、II型混合型クリオグロブリン血症、後天性第VIII因子インヒビター、フルダラビン関連免疫性血小板減少性紫斑病、難治性皮膚筋炎、尋常性天疱瘡、および重症筋無力症、GVHD、敗血症ショック、インスリン抵抗性、およびアポトーシス状態である。
【0096】
より好ましくは、B細胞の機能は、B細胞の増殖である。
【0097】
関連する局面において、驚くべきことにIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩、特に構造式(I)の化合物が、関節リウマチの治療において特に好都合であることが分かった。本発明を1つの理論または作用機序に制限することなく、関節リウマチにおいて、対象化合物は実際のところ単にB細胞の機能をダウンレギュレーションするだけでなく、細胞レベルでより広く作用するため、この特定の疾患および全ての形態の炎症性関節疾患の両方を治療するために非常に有効な手段を提供すると考えられている。事実、トラニラストによる治療後に、被験体は非治療動物と比較して、臨床スコアの低下、足の腫脹レベルの低下、ならびに滑膜炎、軟骨損失、および骨侵食のレベルの低下を示した。
【0098】
したがって、本発明の関連する局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における炎症性関節疾患の治療および/または予防のための方法に関する。
【0099】
好ましくはIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、または(III)の化合物、特にトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである。
【0100】
「炎症性関節疾患」という用語は、骨格関節領域に局在化した組織の炎症によって特徴づけられる疾患状態をさすと理解すべきである。この組織には、関節を構成する骨の向かい合う表面を覆う、軟骨性、線維性および軟部(滑膜)組織が含まれる。「関節」という用語は、3種類の関節、すなわち、可動結合、半関節、および不動結合の関節をさすと理解されるべきである。対象の炎症は、任意の原因または病因の結果でよく、関節リウマチという自己免疫状態の結果の炎症には限定されない。しかし好ましい態様では、炎症性関節疾患は関節リウマチである。
【0101】
したがって、本発明の関連する局面は、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における関節リウマチの治療および/または予防のための方法に関する。
【0102】
好ましくはIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、または(III)の化合物、特にトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである。
【0103】
「有効」量は、少なくとも部分的に、望ましい反応を得るため、または治療する特定の状態の、開始を遅らせるもしくは進行を阻害する、または開始もしくは進行を停止するために必要な量をいう。量は治療する個体の健康および肉体的状態、治療する個体の分類群、望ましい保護の程度、組成物の製剤、医学的状態の評価、ならびに他の関連する因子によって異なる。量は、日常的な試験を通して決定できる比較的広い範囲に入ると期待される。
【0104】
「治療」および「予防」という用語は、最も広い文脈で考える必要がある。「治療」という用語は、被験体が完全に回復するまで治療されることを必ずしも意味しない。同様に、「予防」は被験体が最終的に疾患状態にならないことを必ずしも意味しない。したがって、治療および予防には、特定の状態の症状の改善、特定の状態の発症リスクの予防もしくは低下が含まれる。例えば、関節リウマチにおいては、これには、必ずしも全ての関節ではない一部の関節の炎症の改善または予防が含まれる可能性がある。これは、例えば、対象化合物が一部の関節に局所投与されるが全ての罹患関節には投与されない場合に起こり得る。「予防」という用語は、特定の状態の重症度または開始を低下させることと考えられる。「治療」でも、既存の状態の重症度を低下させる可能性がある。
【0105】
薬学的組成物の形態でのIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、もしくはその薬学的に許容される塩、またはその拮抗剤(本明細書では「調節剤」とよぶ)の投与は、任意の従来の方法で実行できる。薬学的組成物の調節剤は、特定の症例に依存する量が投与された時に、治療活性を示すと考えられる。変動は、例えば、ヒトまたは動物、ならびに選択された調節剤に依存する。広い範囲の用量が適用できる可能性がある。患者を考えると、例えば、1日に体重1キログラム当たり、約0.1 mgから約1 mgの調節剤が投与できる。投与方法は、最適な治療応答を得るために調節できる。例えば、毎日、毎週、毎月、または他の適当な間隔でいくつかに分割して投与するか、または状況の緊急性に応じて比例的に用量を低下させても良い。
【0106】
調節剤は経口、静脈内(水溶性で)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、または坐剤経路または植え込み(例、徐放分子を用いて)のような、都合の良い方法で投与できる。調節剤は、酸付加塩、または例えば、亜鉛、鉄、および同様のものと共に金属錯体(本出願の目的のためには塩と考える)のような薬学的に許容される非毒性塩の形態で投与できる。そのような酸付加塩の実例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、および同様のものである。活性成分が錠剤の形態で投与される場合には、錠剤は、トラガカント、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;アルギン酸のような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤が含まれる可能性がある。
【0107】
調節剤は、任意の蛋白性および非蛋白性分子と連結、結合、または会合していても良い。例えば、本発明の1つの態様では、調節剤は局所領域に対するターゲティングを可能にする分子と会合している可能性がある。
【0108】
投与経路には、呼吸器、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、髄腔内、大脳内、鼻腔内、輸注、経口、直腸、点滴、パッチ、および植え込みが含まれるがこれらに限定されない。
【0109】
これらの方法にしたがって、本発明に明示される薬剤を1つまたは複数の他の化合物または分子と共に投与することができる。「共に投与」というのは、同一の製剤で、もしくは同一もしくは異なる経路を介して2つの異なる製剤で同時に投与する、または同一もしくは異なる経路で順次投与することを意味する。例えば、対象薬剤は、効果を増強するために、作動性の薬剤とともに投与できる。「順次」投与というのは、2種類の分子の投与の間が、秒単位、分単位、時間単位、または日単位で差があることを意味する。これらの分子は、任意の順序で投与できる。
【0110】
本発明のさらに別の局面は、異常なまたは望ましくないB細胞の機能によって特徴づけられる状態の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0111】
好ましくは、B細胞の機能は、B細胞の増殖または抗体産生である。
【0112】
好ましくは、状態は多発性硬化症、クローン病、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、I型糖尿病、乾癬、急性移植片拒絶反応、慢性移植片拒絶反応、グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、全身性硬化症、慢性免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性多発性神経障害、ヴェーゲナー肉芽腫症、緩慢性リンパ腫に伴う寒冷凝集素症、特発性膜性神経障害、II型混合型クリオグロブリン血症、後天性第VIII因子インヒビター、フルダラビン関連免疫性血小板減少性紫斑病、難治性皮膚筋炎、尋常性天疱瘡、および重症筋無力症、移植片対宿主病、敗血症ショック、インスリン抵抗性、およびアポトーシス状態である
【0113】
本発明のさらに別の局面は、炎症性関節疾患の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0114】
好ましくは炎症性関節疾患は関節リウマチである。
【0115】
好ましくはIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、または(III)の化合物、特にトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである。
【0116】
本発明のさらに別の局面は、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0117】
好ましくはIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体は、構造式(I)、(II)、または(III)の化合物、特にトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである。
【0118】
本発明では、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の投与は、単独で、または上記に明示される1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、もしくはその薬学的に許容される塩またはその拮抗剤、および1つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含む薬学的組成物として、のいずれかが考えられる。薬剤は、活性成分と呼ばれる。
【0119】
注射での使用に適した薬学的形態には、無菌の水溶液(水溶性の場合)もしくは分散、無菌の注射用溶液もしくは分散の即時調合のための無菌粉末を含み、またはクリームもしくは局所適用に適した他の形態である可能性がある。製造および保管の条件下で安定であり、細菌および真菌のような微生物の汚染活動に対して保護する必要がある。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、および同様のもの)、その適当な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒である可能性がある。適当な流動度は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合は必要な粒子サイズの維持、またはスーパーファクタント(superfactant)の使用によって維持できる。微生物の活動の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同様のもののような、様々な抗菌剤または抗真菌剤によって可能になる。多くの場合、例えば糖または塩化ナトリウムのような等張剤を含むことが望ましい。注射用組成物の吸収の延長は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる薬剤を組成物中に使用することによって可能になる。
【0120】
無菌の注射溶液は、上記に列挙される様々な他の成分とともに、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を取り込み、その後フィルター滅菌することによって、調製できる。一般に、分散は、基本分散媒および上記に列挙される他の必要な成分を含む無菌溶媒中に、様々な滅菌済活性成分を取り込むことによって調製できる。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の場合は、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これによって活性成分にそれまでに無菌濾過した溶液から得られる任意の追加の所望の成分を加えたものの粉末が得られる。
【0121】
活性成分が適切に保護されれば、これを例えば、不活性な希釈剤もしくは同化できる食用キャリアと共に経口投与するか、またはハードもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入するか、または圧縮して錠剤にするか、または食事の食物に直接組み入れることができる。経口投与の場合には、活性化合物を賦形剤に組み込み、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、オブラート、および同様のものの形態で使用できる。そのような組成物および調製物は、活性化合物を少なくとも重量で1%含むべきである。もちろん組成物および調製物の割合は変動する可能性があり、都合よく単位重量の約5から約80%の間で良い。そのような治療に有用な組成物における活性化合物の量は、適当な用量が得られるようなものになる。本発明にしたがう好ましい組成物または調製物は、経口投与単位が活性化合物を約0.1μgおよび2000 mgの間で含むように調製される。
【0122】
錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル、および同様のものは、以下に列挙する成分も含む可能性がある:ゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸、および同様のもののような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ならびにスクロース、ラクトース、またはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香料のような香料を添加できる。投与単位がカプセルの場合には、上記のタイプの材料に加えて、液体のキャリアを含む可能性がある。コーティングとして、または投与単位の物理的形態を修飾するために、他の様々な材料が存在する可能性がある。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、シェラック、糖、または両方でコートされる場合がある。シロップまたはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロース、保存料としてメチルおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーまたはオレンジ香料のような香料を含む可能性がある。もちろん、任意の用量単位を調製するために使用する任意の材料は、薬学的に純粋であり、使用する量においては実質的に無毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放調製物および製剤中に取り込まれる場合がある。
【0123】
本発明のさらに別の局面は、本発明の方法において使用される、上記に明示されるIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、もしくはその薬学的に許容される塩、またはその拮抗剤に関する。
【0124】
本発明は以下の非限定的実施例によりさらに明示される。
【0125】
実施例1
確立したコラーゲン誘導関節炎に対するトラニラストの効果
材料および方法
II型コラーゲンの調製
ウシCIIは以前に記述されたようにして(9)調製され、0.1 M酢酸中で4℃で一晩撹拌することによって可溶化された。
【0126】
マウスの免疫
8〜12週齢のオスDBA/1マウス(各群7〜8匹)をCFA (Difco Laboratories, West Moseley, UK)中に乳化したウシCII (200μg/マウス)によってi.d.免疫した。免疫後14日目から、関節炎の兆候についてマウスを毎日検査し、関節炎の1日目から治療を開始した。この研究は、地元のEthical Review Process Committee および英国内務省によって承認された。
【0127】
関節炎の治療
トラニラストは1% NaHCO3中で70℃に加熱することによって溶解し、100、200、または400 mg/kg/日でi.p.注射した。
【0128】
関節炎の臨床評価
関節炎の発症は、実験期間を通じて毎日評価された。関節炎の臨床的重症度は以下のように分類された:0=正常、1=わずかな腫脹および/または紅斑、および2=顕著な浮腫性腫脹。各足の評価をしたため、各動物についての最高の臨床スコアは8である。後ろ足の腫脹はノギスを用いて記録した。全ての臨床評価は盲検下で行われた。
【0129】
関節炎の組織学的評価
治療期間の終わりにマウスを屠殺し、瀉血し、その関節を組織学用に処理した。関節炎の臨床的証拠を示す最初の足を除去、固定、脱灰し、包埋後に切片を作製してヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。矢状断を盲検下で鏡検し、関節は以下のように分類された:0=正常;1=軟骨の損失または骨侵食のない軽度の滑膜炎、2=いくらかの侵食を伴う中等度または重度の滑膜炎だが正常な関節の構造は完全、3=広汎な侵食を伴う重度の滑膜炎で正常な関節の構造が失われている。
【0130】
結果
確立したコラーゲン誘導関節炎を持つマウスに、10日間にわたり100、200、または400 mg/kg/日のトラニラストを腹腔内注射した。対照には溶媒のみを注射した。治療期間の間、臨床スコアを評価し、ノギスを用いて足の腫脹をモニターした。トラニラストは用量依存的に臨床スコアを低下させることが観察され、400 mg/kg/日では臨床スコアの最大の抑制が見られた(図1)。また、トラニラストは足の腫脹を用量依存的に低下させることが観察された(図2)。10日間の治療期間の終わりに、マウスを屠殺し、関節を組織学用に処理した。組織学的評価は本実施例に記載のようにして盲検下で行われた。対照マウスと比較して、トラニラストで治療したマウスでは滑膜炎、軟骨損失、および骨侵食のレベルが低下していた。これは200または400 mg/kgのトラニラストで治療された群において観察された有意に低下した組織学的スコアに反映されていた(表1)。
(表1)トラニラストはコラーゲン誘導関節炎の組織学的重症度を低下させる

【0131】
DBA/1マウスは関節炎を誘導するためにフロイント完全アジュバントに入れたウシII型コラーゲンで免疫した。臨床的疾患の発症後に、マウスを異なる治療群に無作為に割り付け、100、200、または400mg/kg/日(i.p.)のトラニラストまたは溶媒対照を投与した。治療は10日間継続し、その時点でマウスを屠殺し、足を組織学用に処理した。関節は、盲検下で組織学的に分類された。
【0132】
実施例2
FACS分析を用いたB細胞の増殖の検出
材料および方法
B細胞の精製
全ての遠心は1500 rpmで5分間行われた。
【0133】
B細胞は、ラット抗マウスIgMマイクロビーズおよびMACSシステムを用いてマウスの脾臓から調製された。
【0134】
8〜12週齢のオスDBA/1マウスから3つの脾臓が除去された。単細胞浮遊液は細胞ふるいにより調製された。
【0135】
赤血球は、5 mlの赤血球溶解緩衝液(Sigma)の添加と5分間のインキュベーションにより溶血させた。5 ml RPMIを細胞浮遊液に添加し、2回の洗浄後、トリパンブルー(Sigma)を用いて生細胞を計数した。
【0136】
細胞は90μl/10 x 106細胞でIMAG緩衝液(BD)に再懸濁され、10 x 106細胞につき10μlラット抗マウスIgMマイクロビーズ(MACS)が添加された。
【0137】
細胞-ビーズの懸濁液は、15分間冷蔵庫でインキュベーションされた。
【0138】
ミニMACSカラム(約7 x 107細胞につき1つ)を磁石(MACS)に入れ、0.5 ml MACS緩衝液を用いて重力流により洗浄した。
【0139】
カラムは0.5 ml IMAG緩衝液を用いて3回洗浄された。
【0140】
カラムを磁石から取り出した。各カラムに2 ml IMAG緩衝液を添加し、B細胞はプランジャーを用いて溶液を押して取り出した。
【0141】
細胞は、グルタミン添加2 ml 完全RPMI(10% FCS、1% Pen/Strep、50μM 2-メルカプトエタノール、1 mMピルビン酸ナトリウム)中で、LPS (20μg/ml)、および100〜25μg/mlトラニラスト、または溶媒(DMSO)の存在下で、1 x 106細胞/mlの濃度で48時間培養された。
【0142】
各ウェルに20μM BrdU (Sigma)が添加され、一晩インキュベーションされた。
【0143】
細胞はピペッティングにより採集し、BrdU単独(非常に感度が高いが、細胞表面の染色はできない)、またはCD40、CD19、およびBrdU(感度は落ちるが、共局在決定が可能)のいずれか用にFACSチューブ内で染色した。
【0144】
BrdU単染色プロトコール
ペレットはPBS中の1%ホルムアルデヒドに室温で5分間再懸濁し、2 ml PBSで洗浄した。
【0145】
氷冷した70%エタノールをペレットに加え(撹拌を伴う)、-20℃で最低一晩(通常は週末を越す)インキュベーションした。
【0146】
細胞は2 ml PBS中で2回洗浄し、沈殿を0.2 mgペプシンを入れた1 ml 2N HCl (pH 1.5)中で、室温で1時間再懸濁した(撹拌を伴う)。細胞は時々穏やかに撹拌して混合した。
【0147】
細胞の沈殿に1 ml 0.1M ホウ砂を添加し、遠心後に2 ml PBSで細胞を2回洗浄した。
【0148】
沈殿を2 ml PBSに再懸濁し(撹拌による)、室温で15分間インキュベートして細胞からペプシン/ホウ砂を浸出させた。
【0149】
細胞を2 ml PBS、1% FCS、0.1%アジ化ナトリウム中で洗浄した。
【0150】
PBS、1% FCS、0.1%アジ化ナトリウムで1:10に希釈したDNAse結合マウス抗BrdU-FITC抗体(BD) 100μlを細胞沈殿に添加し、暗所で室温で30分間インキュベートした。
【0151】
4 ml PBSを細胞に添加して洗浄した。
【0152】
沈殿を100μl 1%ホルムアルデヒド-PBS中に再懸濁した。
【0153】
染色のFACS解析はBD LSRフローサイトメーターで行われた。
【0154】
CD40、CD19、およびBrdU染色プロトコール
細胞を2 ml PBSで2回洗浄し、2.5μl抗CD40-RPE (ImmunoKontact)および5μl抗CD19-PerCP-CY5.5 (BD)を添加した100μl PBS/1% FCS、0.1%アジ化ナトリウム中に再懸濁した。細胞を暗所で室温で30分間インキュベートした。
【0155】
細胞に4 ml PBSを添加して洗浄し、沈殿を0.5 mlの氷冷した0.15M NaCl中に再懸濁した。
【0156】
1.2 mlの氷冷95%エタノールを穏やかに撹拌しながらチューブに添加し、細胞を氷上で30分間インキュベートした。
【0157】
2 ml PBSをチューブに添加し、細胞を洗い、沈殿を1 ml 1%ホルムアルデヒド-PBSに再懸濁した。細胞は室温で30分間インキュベートした。
【0158】
細胞を沈殿させ、10μlの抗BrdU DNAse (BD)を含む100μl PBS、1% BSA、0.1%アジ化ナトリウム中に再懸濁し、暗所で室温で30分間インキュベートした。
【0159】
4 ml PBSを添加して細胞を洗浄し、100μl 1%ホルムアルデヒド-PBS中に再懸濁した。
【0160】
染色のFACS解析はBD LSRフローサイトメーターで行われた。
【0161】
CD40の刺激
CD40の刺激のためには、20μgのアジドを含まない抗マウスCD40を用いてLPS刺激(96穴プレート中で200μl)と同様に細胞を増殖させた。
【0162】
結果
B細胞の増殖に対するトラニラストの影響を評価するために試験が行なわれた。B細胞はLPSおよび1μg〜100μgトラニラストと共にインビトロで培養した。細胞はBrdUと共に培養し、FACs解析により取り込みを測定した。LPSはB細胞の75%において増殖(BrdU標識)を誘導した。トラニラストは用量依存的に増殖を阻害した(図3)。観察された最大の増殖阻害は100μg/mlのトラニラストによる75%だった。
【0163】
実施例3
B細胞増殖の[3H]による検出
材料および方法
B細胞の増殖と刺激 - FACSと同様
【0164】
全ての遠心は1500rpmで5分間行われた。
【0165】
B細胞は、ラット抗マウスIgMマイクロビーズおよびMACSシステムを用いてマウスの脾臓から調製された。
【0166】
8〜12週齢のオスDBA/1マウスから3つの脾臓が除去された。単細胞浮遊液は細胞ふるいにより調製された。
【0167】
赤血球は、5 mlの赤血球溶解緩衝液(Sigma)の添加と5分間のインキュベーションにより溶血させた。5 ml RPMIを細胞浮遊液に添加し、2回の洗浄後、トリパンブルー(Sigma)を用いて生細胞を計数した。
【0168】
細胞は90μl/10 x 106細胞でIMAG緩衝液(BD)に再懸濁され、10 x 106細胞につき10μlラット抗マウスIgMマイクロビーズ(MACS)が添加された。
【0169】
細胞-ビーズの懸濁液は、15分間冷蔵庫でインキュベーションされた。
【0170】
ミニMACSカラム(約7 x 107細胞につき1つ)を磁石(MACS)に入れ、0.5 ml MACS緩衝液を用いて重力流により洗浄した。
【0171】
カラムは0.5 ml IMAG緩衝液を用いて3回洗浄された。
【0172】
カラムを磁石から取り出した。各カラムに2 ml IMAG緩衝液を添加し、B細胞はプランジャーを用いて溶液を押して取り出した。
【0173】
細胞のトリチウムパルスおよび収集
細胞は、グルタミン添加200μl 完全RPMI(10% FCS、1% Pen/Strep、50μM 2-メルカプトエタノール、1 mMピルビン酸ナトリウム)中で、LPS (20μg/ml)、アジドを含まない抗CD40モノクローナル抗体(10μg/ml)、またはアジドを含まない抗IgMモノクローナル抗体のF(ab’)2断片(20μg/ml)および100〜6.25μg/mlトラニラスト、または溶媒(DMSO)の存在下で、1 x 106細胞/mlの濃度で96穴プレート中で48時間培養された。
【0174】
1μCi 3[H]チミジンを各ウェルに添加し、一晩インキュベートした。細胞はSkatonセルハーベスターを用いてあらかじめ湿らせたフィルターマット上に採集した。フィルターマットは750Wの電子レンジで2分間乾燥させた。プレートシーラーを用いて乾燥したフィルターマットをバッグに封入し、角を切断した。10 mlのシンチレーション液をバッグに入れ、フィルターマット上に均等に広げた。バッグを再封入し、Wallac 1205プレートリーダーで読み取った。
【0175】
結果
3[H]チミジンの取り込みを用いてインビトロでのB細胞の増殖に対するトラニラストの影響が評価された。B細胞はLPS、抗CD40、または抗IgM抗体のいずれかで活性化され、最高100μg/mlのトラニラストを添加した。細胞は3[H]チミジンと共に培養し、取り込みを評価した。LPSは、B細胞におけるチミジンの取り込みを92倍(図4)および91倍(図5)増加させたが、これはトラニラストによって用量依存的に阻害された。100μg/mlのトラニラストにより最高の99%の阻害が観察された。抗CD40抗体は、チミジンの取り込みを238倍(図4)、および81倍(図5)増加させた。やはりトラニラスト治療により用量依存的な阻害が観察され、100μg/mlのトラニラストで最高の97%の増殖阻害が観察された。抗IgM抗体はB細胞増殖を60倍(図5)増加させた。トラニラストは抗IgMに誘導される増殖を用量依存的に阻害し、評価された全ての用量で有効だった。
【0176】
実施例4
確立したコラーゲン誘導関節炎に対するトラニラストおよび3-ヒドロキシアントラニル酸の効果
材料および方法
試薬
II型コラーゲンは、記述されるようにして(Williams, R.O. 2004, Methods Mol. Med. 98:207-216)ウシ軟骨から精製され、酢酸(0.1M)またはトリス緩衝液(0.05Mトリス、0.2M NaCl、pH 7.4を含む)中で4℃で一晩撹拌しながら可溶化した。トラニラストはAngiogen Pharmaceuticals Pty. Ltdにより合成された。インビボの試験用には、トラニラストは1%炭酸水素ナトリウム中で70℃で1時間加熱することによって、最大濃度10 mg/mlに溶解した。冷却すると、乳濁液が形成された。インビトロの試験用には、トラニラストはジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解された。3-ヒドロキシ-アントラニル酸(3-HAA)はSigma (Poole, UK)から購入し、PBSに溶解した。
【0177】
関節炎の誘導および評価
オスDBA/1マウス(8〜12週齢)はフロイント完全アジュバント(CFA; Difco、West Molesley、UK)に乳濁化したウシII型コラーゲン(200μg)を尾の付け根の皮内に免疫した。関節炎は、以下のスコアリングシステムを用いて臨床的にモニターした:0=正常、1=わずかな腫脹および/または紅斑、および2=顕著な浮腫性腫脹。各足を評価し、各マウスの最高スコアは8となった。さらに、ノギスを用いて足の腫脹を測定した。
【0178】
関節炎の組織学的評価は、以下のスコアリングシステムを用いて、脱灰したヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片上で、盲検下で行われた:0=正常、1=軟骨/骨の侵食のない最小限の滑膜炎、2=わずかな侵食を伴う滑膜炎だが関節の構造は維持されている、3=重度の滑膜炎および侵食で正常な関節の構造が失われている。この研究は、地元の倫理評価プロセス委員会および英国内務省によって承認された。
【0179】
血清の抗コラーゲン抗体レベル
ELISAプレート(Nunc、Uxbridge、UK)は2%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックしたトリス緩衝液(0.05Mトリス、0.2M NaCl、pH 7.4を含む)中に一晩溶解した2μg/mlのウシCIIでコートし、その後、連続希釈した被験血清とインキュベートした。標準試料は各プレートに入れられた。結合した総IgG、IgG1、またはIgG2aは、HRP結合ヒツジ抗マウスIgG、IgG1、またはIgG2aとインキュベーションした後、TMB基質とインキュベーションして検出した。光学密度は450 nmで測定された。
【0180】
T細胞応答の解析
トラニラスト治療および対照マウスから、鼠径リンパ節を切り出した。または、鼠径リンパ節は未治療の関節炎マウス(関節炎の1〜5日目)から取り出し、トラニラストをインビトロで添加した。いずれの場合も、LNCは、II型コラーゲン(50μg/ml)の存在下または非存在下で、FCS (10% v/v)、2-メルカプトエタノール(20μM)、L-グルタミン(1% w/v)、ペニシリン(100U/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を含むRPMI1640中で培養された。分泌されたサイトカイン(IFN-γ、IL-5、TNFα、およびIL-10)は72時間後にELISAにより測定した。簡単に述べると、96穴のELISAプレートをそれぞれの採集用抗体でコートし、ウシ血清アルブミン(2% w/v)でブロック後、LNC培養上清(希釈なし(neat))と4℃で一晩インキュベーションした。洗浄後、ビオチン化した検出用抗体を用いて結合したサイトカインを検出した。適当な組み換えサイトカインの既知の濃度を用いて標準曲線を作製し、培養上清中に存在するサイトカインの濃度は標準曲線を参照して見積もられた。
【0181】
BおよびT細胞の精製および増殖
単細胞浮遊液は、脾臓から細胞ろ過器を通して切り刻んで調製し、塩化アンモニウム溶液(Sigma、St Louis、MO、米国)を用いて赤血球を溶解した。製造元(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)のガイドラインにしたがってB細胞は抗IgM MACSマイクロビーズを用いてポジティブ濃縮し、T細胞は抗CD4 MACSマイクロビーズおよびMACSシステムを用いてポジティブ濃縮した。純度はフローサイトメトリー解析により評価した(B細胞>90% CD19+、T細胞>90% CD4+)。細胞は上記のように、平底の96穴プレート中で、200μlの完全RPMI中で5 x 105 細胞/mlの濃度で72時間培養した。B細胞は抗CD40モノクローナル抗体(10μg/ml、BD)で刺激し、T細胞は5μg/mlのプレートに結合した抗CD3 (BD)、5μg/mlの可溶性抗CD28 (BD)で刺激した。トラニラスト、3-HAA、または溶媒(DMSO)は記述された濃度で培養液とインキュベーションされた。刺激の48時間後に、100μlの培養培地を採取し、細胞は18時間、各ウェルあたり1μCi 3Hチミジンを用いてパルスした。その後細胞を採集し、プレートの取り込みを評価した。各アッセイは最低3回行われた。示されたデータは1つの代表的な実験のものであり、培養液中の3重アッセイの平均±SDとして表現されている。IFN-γ、IL-10、およびIL-5レベルは上述のようにELISAによって培養培地で評価された。
【0182】
統計解析
適切な場合、群平均は一元分散分析、およびその後ダネットの多重比較検定で解析した。
【0183】
結果
トラニラストはコラーゲン誘導関節炎の発症を阻害する
抗関節炎の可能性を評価するために、トラニラストはCFA中のII型コラーゲンで免疫された日から、DBA/1マウスに注射された(200 mg/kg/日)。28日目までに、溶媒で治療された7匹のマウスのうち5匹(71%)で中程度の重症度の関節炎(臨床スコア2.8±0.6)を発症したが、7匹のトラニラスト治療マウスでは1匹(14%) のみが軽症の関節炎(臨床スコア1)を発症した。治療および対照マウスの血清の解析では、トラニラスト治療マウスにおいて抗コラーゲンIgG1にもIgG2aにも変化は見られなかった。
【0184】
トラニラストは確立した関節炎の重症度を低下させる
トラニラストが確立したCIAを治療する能力が試験された。マウスはCFA中のII型コラーゲンで免疫された。臨床的関節炎の1日目(関節炎が最初に観察された日)にマウスは異なる治療群に無作為に割り付けされ、トラニラスト(100 mg/kg/日、200 mg/kg/日、または400 mg/kg/日)または溶媒単独を10日間にわたって投与された。2つの別々の実験で、トラニラスト治療マウスにおいて、臨床スコアと足の腫脹の両方の用量依存的な低下が観察された(図6)。トラニラスト治療マウスと対照マウスの間の有意差は、3日目から治療期間の終わり(10日目)まで観察された。10日目にマウスを屠殺し、関節炎の臨床的証拠を最初に示した足を組織学用に処理した。関節は、炎症および関節の侵食の重症度について盲検下で調べた。やはり、トラニラスト治療マウスにおいて、関節炎の組織学的重症度においても明らかな用量依存的な低下が見られた(図6)。
【0185】
対照および治療マウスの血清は、抗II型コラーゲンIgG1およびIgG2aのレベルについて分析されたが、いずれの群間でも差は観察されなかった。血清はIL-10産生についても分析されたが、トラニラストの治療後には、循環IL-10レベルの用量依存的な上昇が検出された(図7)。
【0186】
実験の終わりに、対照および治療マウスから得られた排膿性(鼠径)LNCがII型コラーゲンの存在下および非存在下で72時間培養された。IFN-γおよびIL-5産生がELISAで測定された。IFNγの産生は400 mg/マウスのトラニラストを投与されたマウスにおいて有意に低下していることが分かった(図8)。しかし、コラーゲンで再刺激すると、群間の差は有意ではなくなり、これはトラニラストが一旦システムから除去されると、T細胞の抗原刺激に対して応答する能力が正常に回復することを示した。IL-5産生はトラニラストによる治療によって影響を受けなかった。
【0187】
トラニラストによる治療が中止した時、何が起きるかを確立することは明らかに興味深い。疾患が再燃するのか、そしてもしそうならば、それは治療中止の直後に起きるのだろうか? したがって、関節炎マウスの集団をトラニラスト(400 mg/kg/日)により関節炎の1〜5日に治療した(図9)。その後治療を中止し、さらに7日間マウスのモニターを行なった。以前と同様に、治療期間中には関節炎の重症度が劇的に低下した。5日目に治療を停止すると、9日目から関節炎の増悪が観察されたが、関節炎の重症度は対照群のレベルには達しなかった。
【0188】
トラニラストはインビトロでBおよびT細胞の増殖を阻害する
トラニラストの抗炎症活性の潜在的な機構を探るために、治療濃度におけるトラニラストの抗増殖活性が、BおよびT細胞の両方に対して、その天然のアナログである3-HAAと比較された(図10)。精製したB(図10A)およびT(図10B)細胞の活性化は、それぞれ抗CD40、および抗CD3/CD28によって誘導され、増殖は3H-チミジンの取り込みによって評価された。トラニラストと3-HAAのいずれも用量依存的にBおよびT細胞の増殖を阻害した。各薬剤のIC50が計算された。B細胞の増殖阻害に対するトラニラストと3-HAAのIC50はそれぞれ73.09μMおよび64.66μMだった。しかし、T細胞の増殖阻害のIC50はトラニラストが27.99μM、3-HAAが100.12μMだった。トラニラストと3-HAAの治療は共に用量依存的にT細胞によるIFN-γ産生を低下させた(図10C)。反対に、トラニラストは用量依存的にIL-10産生を阻害したが(図10D)、3-HAAはT細胞によるIL-10産生を増加させ、これはトラニラストが3-HAAと比べて追加の機構で作用する可能性を示す。
【0189】
実施例5
トラニラストによる抗II型コラーゲン抗体産生の阻害
以前の実施例では、リポ多糖類、抗CD40 mAbまたは抗IgM抗体によってインビトロで刺激されたB細胞に対してトラニラストが強力な抗増殖効果を持つことが示された。したがって、トラニラストがインビボで抗体応答を阻害し、関節リウマチ、グレーブス病、橋本甲状腺炎、シェーグレン症候群、および全身性エリテマトーデスを含む、抗体が病原性の役割を果たしている自己免疫疾患の、治療に有用であるかどうかという問題を扱った。
【0190】
材料および方法
メスDBA/1マウス(10週齢)は1日目に、0.05Mトリス/0.2M NaCl、pH 7.4に溶解した100μgのウシII型コラーゲンで腹腔内に免疫した。トラニラストは70℃で1時間加熱することにより1%炭酸水素ナトリウムに溶解した(10 mg/ml)。冷却後、乳濁液が形成された。トラニラストは2〜3日毎に、400 mg/kgの用量で3週間にわたり(1日目に開始)腹腔内投与された。対照は、溶媒のみを投与された。各群6匹のマウスがいた。
【0191】
28日目に、マウスを瀉血し、血清中の抗II型コラーゲンIgG1およびIgG2aを以下のようにしてELISAで測定した。
【0192】
1. 0.2M NaCl/0.05Mトリス、pH 7.4に溶解したDEAE精製したウシII型コラーゲン(5μg/ml)を用いてポリスチレンのマイクロタイタープレート(Immulon 2、Dynatech Laboratories)を4℃で一晩コートした。
【0193】
2. プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、PBSに溶解したBSA (2% w/v)を用いて室温で1時間ブロックした。
【0194】
3. Tween 20 (0.05% v/v)を含むPBSで洗浄した後、血清をPBS/Tweenで連続希釈してプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。
【0195】
4. PBS/Tweenで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG1または抗マウスIgG2a-HRP結合物(1/1000)と室温で2時間インキュベートして、結合したIgGを検出した。
【0196】
5. TMB基質を使用して呈色反応を進行させる。4.5N H2SO4を用いて反応を停止する。
【0197】
6. マイクロタイタープレートリーダー上で450 nmでプレートを読み取った。
【0198】
結果
試験中に対照群のマウスが1匹死亡し、瀉血できなかった。トラニラスト治療群と比較して、対照群では抗II型コラーゲンIgG1のレベルが有意に高かった(P=0.03;マンホイットニー検定)。コラーゲン特異的IgG2a抗体は検出されなかった。各マウスの光学密度および終点の力価は、表2に示されている。
(表2)トラニラスト治療と対照のマウスにおける抗II型コラーゲンIgG1のレベル

【0199】
当業者は本明細書に記述された発明が、具体的に記述されたもの以外の改変および修飾を受けることを認識するだろう。本発明はそのような改変および修飾を全て含むと理解するべきである。本発明はまた、本明細書に言及または示された全ての段階、特徴、組成物、および化合物を、個々にまたは全体として、ならびに段階または特徴の任意の2つまたはそれ以上のすべての組み合わせを含む。









【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】トラニラストの腹腔内投与による、確立したコラーゲン誘導関節炎(CIA)の改善を表すグラフである。関節炎を誘導するために、DBA/1マウスをフロイント完全アジュバントに入れたウシII型コラーゲンで免疫した。臨床的疾患の開始後に、マウスを異なる治療群に無作為に割り付け、100、200、または400mg/kg/日のトラニラストまたは溶媒対照を投与した。臨床スコアは、実施例に記述される臨床スコアリングシステムを用いて、治療期間の全体に渡って評価された。各マウスの可能な最高スコアは8である。各治療群には7〜10匹のマウスがいた。
【図2】トラニラストの投与による、確立したCIAの改善を表すグラフである。関節炎を誘導するために、DBA/1マウスをフロイント完全アジュバントに入れたウシII型コラーゲンで免疫した。臨床的疾患の開始後に、マウスを異なる治療群に無作為に割り付け、100、200、または400mg/kg/日(i.p.)のトラニラストまたは溶媒対照を投与した。足の腫脹は治療期間の全体に渡って評価された。各治療群には7〜10匹のマウスがいた。
【図3】トラニラストによるB細胞の増殖阻害を表すグラフである。B細胞はLPSおよび1〜100μg/mlのトラニラストを用いてインビトロで活性化した。増殖はBrdUの取り込みを用いて評価し、FACs解析により検出した。LPSは72%の細胞の増殖を誘導した。トラニラストは用量依存的に増殖を阻害し、最大で75%の阻害を示した。
【図4】LPSおよび抗CD40により誘導されたB細胞の増殖がトラニラストによって阻害されることを示すグラフである。B細胞はインビトロでLPSまたは抗CD40抗体および6.25〜100μg/mlのトラニラストによって活性化された。LPSおよび抗CD40はそれぞれ3[H]チミジンの取り込みを92倍および258倍に上昇させた。100μg/mlおよび50μg/mlのトラニラストは、LPSまたは抗CD40により誘導されたB細胞の増殖を有意に阻害し、100μg/mlの用量ではそれぞれ99%および97%阻害した。
【図5】LPSおよび抗CD40および抗IgMによって誘導されたB細胞の増殖がトラニラストによって阻害されることを示すグラフである。B細胞はインビトロでLPSまたは抗CD40抗体または抗IgM抗体、および12.5〜100μg/mlトラニラストによって活性化された。増殖は3[H]チミジンの取り込みを用いて評価された。LPS、抗CD40、および抗IgMはそれぞれ チミジンの取り込みを91倍、81倍、および60倍に上昇させた。37.5μg/mlのトラニラストはLPSまたは抗CD40によって誘導されたB細胞の増殖を有意に阻害したが、試験した全ての用量は抗IgMに誘導された増殖を阻害した。100μg/mlのトラニラストで観察された最大の阻害は、96%(LPS)、91%(抗CD40)、および98%(抗IgM)だった。
【図6】3,4-DAAを用いた確立したCIAの治療を表すグラフである。CBA/1マウスにCFAに入れたII型コラーゲンを免疫し、関節炎の発症をモニターした。関節炎の1日目から、マウスの腹腔内に3,4-DAAを毎日注射した。足の厚みはノギスを用いて測定した。臨床的スコアリングシステムは次の通りである:0=正常、1=わずかな腫脹および/または紅斑、および2=顕著な浮腫性腫脹。各足の評価を行なったので、マウス1匹の最高スコアは8となった。関節炎の組織学的評価は、以下のスコアリングシステムにより、ヘマトキシリンおよびエオシン染色切片を用いて行われた:0=正常、1=軟骨/骨の侵食のない最小限の滑膜炎、2=わずかな侵食を伴う滑膜炎だが関節の構造は維持されている、3=重度の滑膜炎および侵食で正常な関節の構造が失われている。各グループに14匹のマウスがいた(データは2つの別々の実験からプールされた)。*、P<0.05(対照群と比較して)。
【図7】3,4-DAAによる治療がインビボでIL-10レベルの上昇を引き起こすことを示すグラフである。確立したCIAを持つマウスを3,4-DAAまたは溶媒(n=7)で10日間治療し(図6)、その後採血した。血清中のIL-10はELISAによって測定した。
【図8】確立したCIAを持つマウスを3,4-DAAまたは溶媒対照で10日間治療した様子を表すグラフである。その後マウスを屠殺し、排膿性(鼠径)リンパ節細胞をII型コラーゲンの存在下および非存在下で72時間培養した。IFN-γおよびIL-5産生をELISAで測定したところ、400 mg/kgの3,4-DAAを投与されたマウスで有意に低下していることが分かった。しかし、コラーゲンで再刺激したときの各群間の差は有意ではなく、薬剤の非存在下ではT細胞が抗原刺激に応答する能力が回復したことを示した。
【図9】治療の中止後4日で関節炎が再燃したことを表すグラフである。確立したCIAを持つマウス(n=6)を関節炎の1日目から5日目まで3,4-DAA(400 mg/kg/日)で治療し、関節炎の臨床的重症度を12日目までモニターした。関節炎は約9日目に再燃していることが分かる。
【図10】3,4-DAAおよび3-HAAがインビトロでBおよびT細胞の増殖を阻害することを表すグラフである。精製されたBおよびT細胞を、様々な用量の3,4-DAAまたは3-HAAの存在下で、それぞれ抗CD40 (a)、または抗CD3/抗CD28 (b)で72時間刺激した。3,4-DAAおよび3-HAAのいずれも、3H-チミジンの取り込みで評価されるBおよびT細胞の増殖を、用量依存的に阻害した。3,4-DAAおよび3-HAAのいずれの治療も、T細胞によるIFN-γの産生を用量依存的に低下させた(c)。3,4-DAAは用量依存的にIL-10およびIL-5産生を阻害したが(d、e)、3-HAAはT細胞によるIL-10およびIL-5の産生を上昇させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩をB細胞に接触させる段階を含む、B細胞の機能をダウンレギュレーションする方法。
【請求項2】
有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類においてB細胞の機能をダウンレギュレーションする方法。
【請求項3】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が以下の構造式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2に記載の方法であって:

ここでR1およびR2は水素原子またはC1〜C4アルキル基からなる群より独立して選択され、R3およびR4は各々水素原子または合わせて別の化学結合を形成し、各Xはヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基、もしくはC1〜C4アルコキシ基からなる群より独立して選択されるか、または2つのX基がアルキルまたはアルコキシ基の場合にはこれらが相互に結合し環を形成し、nは1から3の整数である方法。
【請求項4】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が構造式(II)

の化合物であってXおよびnは請求項3に定義されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
構造式(II)の化合物が、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、
から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
構造式(II)の化合物が2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト)である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法であって:

ここで、
XはNおよびCR6からなる群より選択され:
-------は一重または二重結合を表し;
R1はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルからなる群より選択され;
R2はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1とR2が合わせて置換されていてもよい融合フェニル環を形成し;
R3はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、およびハロからなる群より選択され;
R4はH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、および

からなる群より選択され;
R5はC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2、およびNHR12からなる群より選択され;
R6はH、C1〜4アルキル、OH、およびC1〜4アルコキシからなる群より選択され;
R7、R8、R9、およびR10はそれぞれ独立してHおよびC1〜4アルキル、またはR7とR8が合わせてオキソ基を形成する、もしくはR7とR9が結合を形成し;
R11はCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキル、およびCH2N(C1〜4アルキル)2からなる群より選択され;
R12はH、C1〜4アルキル、およびC(O)Hからなる群より選択され;および
R13はH、C1〜4アルキル、および置換されていても良いフェニルで、ここで置換されていても良いフェニルは1つまたは複数のC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキル、およびN(C1〜4アルキル)2である方法。
【請求項8】
構造式(III)の化合物が、3-ヒドロキシキヌレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、ピコリン酸、またはキノリン酸である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
B細胞の機能がB細胞の増殖である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
B細胞の機能が抗体産生である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
B細胞機能のダウンレギュレーションに充分な時間および条件下で、有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる状態の治療および/または予防のための方法。
【請求項12】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(I)の化合物であるかまたはその薬学的に許容される塩である、請求項11記載の方法であって:

ここでR1およびR2は水素原子またはC1〜C4アルキル基からなる群より独立して選択され、R3およびR4は各々水素原子または合わせて別の化学結合を形成し、各Xはヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基、もしくはC1〜C4アルコキシ基からなる群より独立して選択されるか、または2つのX基がアルキルまたはアルコキシ基の場合にはこれらが相互に結合し環を形成し、nは1から3の整数である方法。
【請求項13】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が構造式(II)

の化合物であって、Xおよびnは請求項12に定義されている、請求項12記載の方法。
【請求項14】
構造式(II)の化合物が、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、
から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
構造式(II)の化合物が2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト)である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項11記載の方法であって:

ここで、
XはNおよびCR6からなる群より選択され:
-------は一重または二重結合を表し;
R1はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルからなる群より選択され;
R2はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1とR2が合わせて置換されていてもよい融合フェニル環を形成し;
R3はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、およびハロからなる群より選択され;
R4はH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、および

からなる群より選択され;
R5はC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2、およびNHR12からなる群より選択され;
R6はH、C1〜4アルキル、OH、およびC1〜4アルコキシからなる群より選択され;
R7、R8、R9、およびR10はそれぞれ独立してHおよびC1〜4アルキル、またはR7とR8が合わせてオキソ基を形成する、もしくはR7とR9が結合を形成し;
R11はCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキル、およびCH2N(C1〜4アルキル)2からなる群より選択され;
R12はH、C1〜4アルキル、およびC(O)Hからなる群より選択され;および
R13はH、C1〜4アルキル、および置換されていても良いフェニルで、ここで置換されていても良いフェニルは1つまたは複数のC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキル、およびN(C1〜4アルキル)2である方法。
【請求項17】
構造式(III)の化合物が、3-ヒドロキシキヌレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、ピコリン酸、またはキノリン酸である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
B細胞の機能がB細胞の増殖である、請求項11〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
B細胞の機能が抗体産生である、請求項11〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
状態が自己免疫状態である、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
自己免疫状態が、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、クローン病、炎症性腸疾患、I型糖尿病、乾癬、シェーグレン症候群、グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、全身性硬化症、慢性免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性多発性神経障害、ヴェーゲナー肉芽腫症、緩慢性リンパ腫に伴う寒冷凝集素症、特発性膜性神経障害、II型混合型クリオグロブリン血症、後天性第VIII因子インヒビター、フルダラビン関連免疫性血小板減少性紫斑病、難治性皮膚筋炎、尋常性天疱瘡、または重症筋無力症である請求項20記載の方法。
【請求項22】
状態が非自己免疫状態である、請求項18または19記載の方法。
【請求項23】
非自己免疫状態が、移植片対宿主疾患、急性もしくは慢性の移植片拒絶反応、敗血症ショック、インスリン抵抗性、アポトーシス状態、または新形成状態である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
新形成状態がB細胞新形成である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
B細胞新形成が、B細胞性慢性リンパ性白血病、不活性および濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、多発性骨髄腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、HIV関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、またはホジキン病である請求項24記載の方法。
【請求項26】
有効量の1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における炎症性関節疾患の治療および/または予防のための方法。
【請求項27】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項26に記載の方法であって:

ここでR1およびR2は水素原子またはC1〜C4アルキル基からなる群より独立して選択され、R3およびR4は各々水素原子または合わせて別の化学結合を形成し、各Xはヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基、もしくはC1〜C4アルコキシ基からなる群より独立して選択されるか、または2つのX基がアルキルまたはアルコキシ基の場合にはこれらが相互に結合し環を形成し、nは1から3の整数である方法。
【請求項28】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が構造式(II)

の化合物であって、Xおよびnは請求項27に定義されている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
構造式(II)の化合物が、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、
から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
構造式(II)の化合物が2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト)である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項26記載の方法であって:

ここで、
XはNおよびCR6からなる群より選択され:
-------は一重または二重結合を表し;
R1はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルからなる群より選択され;
R2はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1とR2が合わせて置換されていてもよい融合フェニル環を形成し;
R3はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、およびハロからなる群より選択され;
R4はH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、および

からなる群より選択され;
R5はC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2、およびNHR12からなる群より選択され;
R6はH、C1〜4アルキル、OH、およびC1〜4アルコキシからなる群より選択され;
R7、R8、R9、およびR10はそれぞれ独立してHおよびC1〜4アルキル、またはR7とR8が合わせてオキソ基を形成する、もしくはR7とR9が結合を形成し;
R11はCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキル、およびCH2N(C1〜4アルキル)2からなる群より選択され;
R12はH、C1〜4アルキル、およびC(O)Hからなる群より選択され;および
R13はH、C1〜4アルキル、および置換されていても良いフェニルで、ここで置換されていても良いフェニルは1つまたは複数のC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキル、およびN(C1〜4アルキル)2である方法。
【請求項32】
構造式(III)の化合物が、3-ヒドロキシキヌレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、ピコリン酸、またはキノリン酸である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
炎症性関節疾患が関節リウマチである、請求項26〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の有効量の拮抗剤を哺乳類に投与する段階を含む、IDOを介したトリプトファン代謝物に阻害されるB細胞機能を、哺乳類においてアップレギュレーションする方法。
【請求項35】
異常なまたは望ましくないB細胞の機能で特徴づけられる状態の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項36】
炎症性関節疾患の治療のための薬剤の製造における、1つまたは複数のIDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
B細胞の機能がB細胞の増殖である、請求項35記載の使用。
【請求項38】
B細胞の機能が抗体産生である、請求項35項記載の使用。
【請求項39】
状態が自己免疫状態である、請求項35、37、または38のいずれか一項記載の使用。
【請求項40】
自己免疫状態が、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、クローン病、炎症性腸疾患、I型糖尿病、乾癬、シェーグレン症候群、グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、全身性硬化症、慢性免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性多発性神経障害、ヴェーゲナー肉芽腫症、緩慢性リンパ腫に伴う寒冷凝集素症、特発性膜性神経障害、II型混合型クリオグロブリン血症、後天性第VIII因子インヒビター、フルダラビン関連免疫性血小板減少性紫斑病、難治性皮膚筋炎、尋常性天疱瘡、または重症筋無力症である請求項39記載の使用。
【請求項41】
状態が非自己免疫状態である、請求項35、37、または38のいずれか一項記載の使用。
【請求項42】
非自己免疫状態が、移植片対宿主疾患、急性もしくは慢性の移植片拒絶反応、敗血症ショック、インスリン抵抗性、アポトーシス状態、または新形成状態である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
新形成状態がB細胞新形成である、請求項42記載の使用。
【請求項44】
B細胞新形成が、B細胞性慢性リンパ性白血病、不活性および濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、多発性骨髄腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、HIV関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、またはホジキン病である請求項43記載の使用方法。
【請求項45】
炎症性関節疾患が関節リウマチである、請求項36記載の使用。
【請求項46】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項35〜45のいずれか一項記載の使用であって:

ここでR1およびR2は水素原子またはC1〜C4アルキル基からなる群より独立して選択され、R3およびR4は各々水素原子または合わせて別の化学結合を形成し、各Xはヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基、もしくはC1〜C4アルコキシ基からなる群より独立して選択されるか、または2つのX基がアルキルまたはアルコキシ基の場合にはこれらが相互に結合し環を形成し、nは1から3の整数である方法。
【請求項47】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が構造式(II)

の化合物であって、Xおよびnは請求項46に定義されている、請求項46記載の使用。
【請求項48】
構造式(II)の化合物が、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、
から選択される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
構造式(II)の化合物が2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト)である、請求項47記載の使用。
【請求項50】
IDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体が下記の構造式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項35〜45のいずれか一項記載の使用であって:

ここで、
XはNおよびCR6からなる群より選択され:
-------は一重または二重結合を表し;
R1はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルからなる群より選択され;
R2はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1とR2が合わせて置換されていてもよい融合フェニル環を形成し;
R3はH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、およびハロからなる群より選択され;
R4はH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、および

からなる群より選択され;
R5はC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2、およびNHR12からなる群より選択され;
R6はH、C1〜4アルキル、OH、およびC1〜4アルコキシからなる群より選択され;
R7、R8、R9、およびR10はそれぞれ独立してHおよびC1〜4アルキル、またはR7とR8が合わせてオキソ基を形成する、もしくはR7とR9が結合を形成し;
R11はCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキル、およびCH2N(C1〜4アルキル)2からなる群より選択され;
R12はH、C1〜4アルキル、およびC(O)Hからなる群より選択され;および
R13はH、C1〜4アルキル、および置換されていても良いフェニルで、ここで置換されていても良いフェニルは1つまたは複数のC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキル、およびN(C1〜4アルキル)2である使用。
【請求項51】
構造式(III)の化合物が、3-ヒドロキシキヌレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、ピコリン酸、またはキノリン酸である、請求項50記載の使用。
【請求項52】
請求項1〜34のいずれか一項記載の方法で使用される、IDOを介したトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項53】
代謝物が構造式(I)、(II)、または(III)の化合物である、請求項52記載のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体。
【請求項54】
代謝物がトラニラスト、3-HLA、3-HAA、PA、またはQAである、請求項53記載のIDOを介したトリプトファン代謝物またはその誘導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−520587(P2008−520587A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541581(P2007−541581)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001754
【国際公開番号】WO2006/053390
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507160540)アンジオゲン ファーマシューティカルズ ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】