説明

BiOCl顔料を含む顔料混合物

【課題】強くて変化し得る隠蔽力又は可変の透明性及び/又は強化された金属光沢にすぐれ、それぞれの適用系に容易に混入できて系中で安定であり、系中でBiOCl/着色剤又はBiOCl/充填剤の眼に見える分離が実質的に起らない、BiOCl顔料を含む顔料混合物を提供することにあった。
【解決手段】本発明は少くとも2つの成分からなる分散体又は粉体状の顔料混合物に関する。成分Aは粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆のBiOCl顔料を表わし、成分Bは真珠光沢の顔料,薄片状、針状又は球形の染料又は充填剤を表わす。本発明はさらに、ラッカー、絵の具、印刷インク、合成物質、コーティング用粉末、プラスチックシート中への前記顔料混合物の使用、種子精製用ならびに化粧用組成物への使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、成分Aが粉体状又は分散体状のBiOCl顔料を含み、成分Bが真珠光沢のある顔料,薄片状、針状又は球状の着色剤及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分からなる分散体状又は粉状の顔料混合物に関し、さらにはまたペンキ、塗料、印刷インク、プラスチック、粉体塗料、プラスチックフィルム中、種子の仕上げ用への上記混合物の使用、特に化粧組成物中への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
BiOCl顔料は高屈折率(n=2.15)を有し、真珠様又は金属銀の光沢を有するので、ペンキ、塗料、プラスチック中、特に化粧製品中に用いられる。金属性の銀光沢又は真珠光沢に加えて、装飾製品の消費者は従来以上の機能性を期待し、したがって外観に対する要求をかつてなく大きくしている。ドイツ特許10 03 377、米国特許US2,975,053、ドイツ特許DE24 11 966、ヨーロッパ特許EP0 496 686B1及びDE43 05 280A1に開示されているBiOCl顔料は、いずれも、変化し得る隠蔽力、十分な金属性光沢、吸収色、干渉色及び/又は光拡散効果を持っていないという欠点がある。
【0003】
本発明の目的は、強くて変化し得る隠蔽力又は可変の透明性及び/又は強化された金属光沢にすぐれ、それぞれの適用系に容易に混入できて系中で安定であり、系中でBiOCl/着色剤又はBiOCl/充填剤の眼に見える分離が実質的に起らない、BiOCl顔料を含む顔料混合物を提供することにあった。さらに、化粧品物質中において化粧落し、化粧および皮膚感覚が市販製品と比較して改善されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許10 03 377号明細書
【特許文献2】米国特許US第2,975,053号明細書
【特許文献3】ドイツ特許DE第24 11 966号明細書
【特許文献4】ヨーロッパ特許EP第0 496 686B1号明細書
【特許文献5】DE第43 05 280A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
(発明の開示)
驚いたことに、上述の欠点の全くない顔料混合物が見出された。本発明の顔料混合物は、成分Aが粉体又は分散体状の被覆又は被覆されていないBiOCl顔料を含み、成分Bが特に雲母、SiO2、ガラス、Al23、TiO2、グラファイト又はポリマーの薄片をベースとする真珠光沢顔料,薄片状、針状又は球状の着色剤及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分からなる。
【0006】
成分BをBiOCl顔料と混合すると、適用系に対して向上した金属性の光沢を与えることが可能となり、色彩効果が向上し、目新らしい色彩効果が得られる。同時に、この顔料混合物は、実質的に見えない状態から強力な隠蔽まで変化させることができる、すなわちコントロールできる隠蔽力にすぐれている。加えて、最終製品の機能性が改善される。本発明の顔料混合物を含む組成物は、すぐれた皮膚感、高い皮膚親和性、長期使用性、変化し得る隠蔽力、望ましければ金属性の光沢、最終製品中への混合の申し分のない容易さ、及び比較的高い光安定性を有する。
【0007】
この発明はしたがって少くとも2つの成分からなる顔料混合物に関するものであり、ここで成分Aは粉体状又は分散体状の、被覆されているか又は被覆されていないBiOCl顔料を含み、成分Bは真珠光沢の顔料,薄片状、針状又は球状の着色剤及び/又は充填剤を含む。
【0008】
本発明はまた、本発明の顔料混合物のペンキ、塗料、有価証券印刷用インクを含む印刷インク、プラスチック、プラスチックフィルム、種子の仕上げ用の粉体コーティング及び特に化粧用組成物中への使用に関する。
【0009】
粉体状のBiOCl顔料は成分Bといかなる割合ででも混合することができる。成分Aの成分Bに対する割合は好ましくは1:90から90:1であり、特に好ましくは1:50から50:1、さらに好ましくは1:20から20:1である。
【0010】
BiOCl顔料は市場入手可能であり、例えばMerck KGaA(ドイツ)により、商標名Biron、Bital、Bicrona、Mibiron、及びNailsynの名で提供されている。多様な製造の可能性のため、光沢のないものから光沢のあるものまで、透明なものから隠蔽までの異なる光学性質を有するBiOCl顔料を得ることができる。個々の粒子のサイズ(大きさ)は1−100μm、好ましくは1−40μm、特に好ましくは2−35μmである。使用するBiOCl顔料は被覆されていてもよいし又は被覆されていなくてもよい。被覆されたBiOCl顔料の場合は、被覆物は好ましくは、例えば、TiO2、TiO2亜酸化物、Fe23及びそれらの混合物又は天然産や合成由来の有機又は無機着色剤である。好ましい顔料混合物は、Fe23、カルミンレッド(carmine red)、ベルリンブルー(Berlin blue)又は酸化クロムグリーン(chromium Oxide Green)で被覆したBiOCl顔料を含む。
【0011】
分散体としては、BiOClは好ましくは最初ニトロセルロースラッカー又はひまし油とのペースト状とし、次いで成分Bと混合する。粉体又は分散体状の本発明の顔料混合物は、良好な分散性、pH安定性、熱安定性および最終製品の貯蔵安定性にすぐれている。
【0012】
ひまし油又はニトロセルロースラッカーとのペーストの他に、水、極性又は非極性の油、ポリオール、親水性や疎水性の溶媒、揮発性物質又は非揮発性物質中の分散体も同様に好適である。
【0013】
望ましい顔料混合物は、特に、BiOCl顔料(成分A)の他に着色剤として1つ以上の真珠光沢顔料(成分B)を含む。使用する真珠光沢顔料は、特に、例えば合成又は天然の雲母、タルク、絹雲母、カオリン、又は他の硅酸塩物質などのフィロ硅酸塩からつくられた薄片状の、透明又は半透明の基体をベースとする顔料であり、このものは例えばTiO2、亜酸化チタン、オキシ窒化チタン、擬板チタン石、Fe23、Fe34、FeOOH、SnO2、Cr23、ZnO、CuO、NiOなどの着色又は無色の金属酸化物や他の金属酸化物で、単独又は混合物の形で一層又は多層に被覆されている。
【0014】
真珠光沢顔料は、例えばドイツ特許又は特許出願14 67 468、19 59 998、20 09 566、22 14 454、22 15 191、22 44 298、23 13 331、25 22 572、31 37 808、31 37 809、31 51 343、31 51 354、31 51 355、32 11 602、32 35 017、38 42 330及び44 45 394に開示されており、例えば商標名Colorona、Timiron、Dichrona、Microna及びSoloronの名でMerck KGaA(ドイツ ダルムシュタット)から市販されている。
【0015】
特に望ましい顔料製剤はTiO2、Fe23、TiO2亜酸化物、TiO2/Fe23、Fe34、FeOOH又はFeOOH/TiO2雲母顔料を含む。TiO2、グラファイト、Fe23、TiO2及び/又はFe23で被覆したSiO2又はAl23薄片がより一層好ましい。
【0016】
さらに好適な薄片形の顔料は、特に、1つ以上の金属酸化物の層(1、2、3、5又は7層)で被覆されているSiO2薄片、Al23、グラファイト、ポリマー又はTiO2薄片又はガラス薄片をベースとする真珠光沢顔料である。
【0017】
また成分Bとして好適なものは、例えばDE−A196 18 563、DE−A196 18 566、DE−A196 18 569、DE−A197 07 805、DE−A197 07 806及びDE−A197 46 067に開示されている多積層(以下「多層」とする)顔料である。これらのものは雲母(合成又は天然)、SiO2薄片、ガラス薄片、Al23薄片、TiO2薄片又はポリマー薄片からなる薄片状の透明、着色又は無色のマトリックスをベースとしており、一般に0.3−5μm、特に0.4−2.0μmの厚さを有する。他の2つの寸法の大きさは通常1−250μm、好ましくは2−100μm、特に好ましくは5−40μmである。この多層顔料は金属酸化物(少くとも2種)で被覆されたマトリックス(基体)からなる。
【0018】
例えば雲母、SiO2薄片、ガラス薄片又はAl23薄片などの基体薄片の複数の層での被覆は、高屈折率層と低屈折率層が交互からなる層構造が形成するように実施する。この多層顔料は好ましくは2、3、4、5、6又は7層、特に好ましくは3、4又は5層を含む。好適な高屈折率金属酸化物は、例えば二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、鉄−チタン酸化物(チタン酸鉄)及び/又は酸化クロム、特にTiO2及び/又はFe23である。使用する低屈折率金属酸化物はSiO2及びAl23である。しかしながら、MgF2又は有機ポリマー(例えばアクリレート)もこの目的に使用できる。基体薄片は、例えばWO93/08237(湿式化学コーティング)又はDE−A196 14 637(CVD法)に記載のようにして被覆することができる。
【0019】
望ましい多層顔料は次の構造を有する:
基体+Fe23層+SiO2層+Fe23層、
基体+Fe23層+SiO2層+TiO2層、
基体+TiO2層+SiO2層+Fe23層、
基体+TiO2層+SiO2層+TiO2/Fe23層、
基体+TiO2/Fe23層+SiO2層+TiO2/Fe23層、
基体+TiO2層+SiO2層+Cr23層、
基体+TiO2層+SiO2層+TiO2層。
【0020】
外側の金属酸化物層の代りに金属の半透明層を使用することも可能である。この目的に適する金属は、例えばCr、Ti、Mo、W、Al、Cu、Ag、Au又はNiである。
【0021】
特定の色彩効果を達成させるため、ナノメータサイズ範囲の微粉砕粒子を高−又は低−屈折率層中に追加配合することができる。この目的に適当なのは、例えば粒子サイズが10−250nm範囲の微粉砕TiO2又は微粉砕炭素(カーボンブラック)であることがわかった。このタイプの粒子の光散乱性質により、目標とした方法で光沢や隠蔽力を修正できるようになる。
【0022】
成分B中の真珠光沢又は多層の顔料はまた、光安定性、耐候性ならびに化学安定性を改善するため又は各種媒体中への融和性(適合性)を増進させるために保護層を設けることもできる。適当な後続のコーティング法又は処理法は、例えばDE22 15 191、DE31 51 354、DE32 35 017又はDE33 34 598に記載されている。追加使用される物質の量は、多層顔料の約0.1−5重量%、好ましくは0.5−3.0重量%となるに過ぎない。
【0023】
本発明の顔料混合物用の成分Bとして適当なものは、当業者には公知のすべての薄片状、針状や球状の着色剤または充填剤であって0.001−20μm、好ましくは0.01−5μmの粒子サイズを有するものである。本発明の顔料混合物は着色剤として吸収顔料を、充填剤として薄片状又は球状の粉体を含むものが好ましい。
【0024】
特に好適なのは、雲母をベースとし、合成又は天然由来の有機及び/又は無機の染料で被覆した薄片状の基体である。
【0025】
球状着色剤には、特に、TiO2、BaSO4、着色又は被覆したSiO2、CaSO4、酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、例えばカルミン、ベルリンブルー、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、及びイソインドリン顔料などの合成又は天然由来の有機及び無機着色顔料が含まれる。球状の着色剤のうちではSiO2が望ましい。SiO2ビーズは被覆してもよいし被覆しなくてもよい。SiO2ビーズは好ましくはTiO2、Fe23、FeOOH、Fe34、ベルリンブルー又は酸化クロムグリーンで1層以上に被覆される。例えばSiO2でつくった球形の粒子は、TiO2/Fe23,SiO2,TiO2/Fe23被覆又はTiO2,SiO2,TiO2被覆を有するのが好ましい。
【0026】
多層被覆SiO2ビーズのうち、異なる屈折率の金属酸化物を交互に3、5又は7層被覆したものが特に望ましい。粒子サイズが1−30μmの球状SiO2粒子は、例えば商標名Ronasphere及びMicronasphereの名でMerck KGaAから市場入手できる。
【0027】
針状の顔料は、好ましくはZnO、Fe23、着色ガラス繊維、α−FeOOH、例えばアゾ顔料、β−フタロシアニン Cl Blue 15:3、Cromophtal Yellow 8GN(Ciba−Geigy)、Irgalith Blue PD56(Ciba−Geigy)、アゾメチン銅コンプレックス Cl Yellow 129又はIrgazine Yellow 5GT(Ciba−Geigy)などの有機着色顔料である。
【0028】
BiOCl含量基準で0.01−10重量%、好ましくは0.01−5重量%、特に好ましくは0.01−3重量%の量のUV(紫外線)安定剤を本発明の顔料混合物に加えることは多くの場合望ましい。特に好適なUV安定剤は、例えばEusolex 4360(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの商標名Eusolex(Merck KGaA)の名で市販されているものである。同様に適当なのは、例えばEusolex T−2000又はEusolex T−Aquaなど微粉砕したTiO2をベースとする、粉状又は分散体状の有機及び無機の光防護フィルターである。
【0029】
本発明の顔料混合物は簡単で取扱いが容易である。この顔料混合物は、粉体又は分散体の形で簡単な攪拌混合によって使用系中に混入できる。顔料の複雑な粉砕や分散は必要でない。
【0030】
本発明の顔料混合物は、ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる。
【0031】
本発明の顔料混合物はさらに、この混合物が入れられているX線カテーテル管を医者がX線スクリーンで容易に見えるようにするのに適している。この顔料混合物によってこの管は柔軟性と平滑性を失わない。
【0032】
着色しようとする使用系中の顔料混合物濃度は、系の全固体含量基準で一般に0.1−70重量%、好ましくは0.1−50重量%、特には1.0−20重量%である。この濃度は一般に特定の用途によって変わる。
【0033】
本発明の顔料混合物をプラスチック組成物をベースとして0.01−50重量%、好ましくは0.01−25重量%、特に好ましくは0.1−7重量%の量で含むプラスチックは、しばしば特定の金属光沢にすぐれている。
【0034】
塗料分野においては、本発明の顔料混合物は塗料分散体をベースとして0.1−30重量%、好ましくは1−10重量%の量で使用される。BiOCl顔料と成分Bとの混合比は所望の効果によって異なる。BiOCl顔料は好ましくは成分Bに対して10:1−1:10の割合で使用される。雲母をベースとする真珠光沢顔料しか含まない仕上り品と比較すると、本発明にしたがう顔料混合物を含む仕上り品は極めて高い金属光沢を有する。
【0035】
本発明の顔料混合物はまた装飾化粧品やケア化粧品中に有利に使用できる。成分Bと組合せた高光沢のBiOCl分散体は、好ましくはペースト中、特に口紅や爪マニキュア中に用いられる。粉体の形で、フレーク状の、不規則な形のBiOCl顔料を含む本発明の混合物は、特にアイシャドー、ルージュ、化粧スティック及びすべてのタイプのメーキャップパウダー中に使用される。装飾化粧品中では、本発明の顔料混合物は、特に皮膚へのパウダーの均一な付着を可能にし、皮膚感覚や光拡散しわ隠蔽効果に改善をもたらす。さらに、皮膚接着性が改善され、プレス(pressing)中のクラック(ひび割れ)が防止される。さらにまた、化粧用組成物中の本発明顔料混合物は、剥離(化粧おとし)又は付着(化粧)及び分布(のび)、透明から隠蔽まで変化し得る隠蔽力及び/又はつやなしからつやありまでの光沢における改善を示す。
【0036】
BiOCl顔料と成分B(特に例えば酸化クロム、ウルトラマリン(Ultramarine)、例えばDE−A198 42 134に開示されている被覆又は非被覆の球形SiO2又はTiO2顔料などの天然又は合成由来の有機及び無機着色顔料や染料)との使用濃度及び混合比は、使用媒体や達成しようとする効果によって異なる。粉体又は分散体状のBiOCl顔料と他の顔料又は染料との混合はいかなる割合でも起り得るが、好ましくはこの割合は1:10から10:1である。使用濃度はマニキュアで1重量%から、パウダーコンパクトで70重量%にわたる。BiOCl顔料と球状充填剤(例えばSiO2)との混合物中では、この濃度は組成物中0.01−70重量%とすることができる。例えばマニキュア、口紅、パウダーコンパクト、シャンプー、ルースパウダーやゲルなどの化粧製品は、特に関心事の光沢及び/又は色彩効果がすぐれている。口紅と爪マニキュアでは、この顔料混合物は特に分散体の形で使用される。口紅に使用するには、好ましくは70%顔料混合物ペーストが使用される。
【0037】
爪マニキュアは、トルエンやホルムアルデヒドを含まないチキソトロピックなニトロセルロースペースト顔料混合物を含むのが好ましい。このニトロセルロースペーストは一般に40−75重量%のニトロセルロースと25−60重量%の顔料混合物を含む。爪マニキュア中の金属性銀光沢は、本発明の顔料混合物によって従来の爪マニキュアと較べて著しく向上させることができる。さらに、本発明の顔料混合物は入浴添加剤や練り歯磨中に使用できる。
【0038】
例えばクラビア印刷、オフセット印刷又はスクリーン印刷用のペンキや印刷インクのバインダー系の着色において、又は例えば濃厚に着色させたペースト、顆粒、ペレットなどの形態の印刷インク用前駆物質として、BiOCl顔料と例えばTiO2、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄及び有機の「着色顔料」などの球状の着色剤とからなる顔料混合物が特に好適であることが証明された。この顔料混合物は、一般に2−35重量%、好ましくは5−25重量%、特に好ましくは8−20重量%の量で印刷インク中に混入される。オフセット印刷インクは、顔料混合物を40重量%まで又はそれ以上の量で含んでいてよい。例えば顆粒、ペレット、ブリケットなどの形状の印刷インク用前駆物質は、バインダーと添加剤の他に95重量%までの本発明顔料混合物を含む。成分Aと成分Bの混合比は1:10から10:1の範囲にあるのが好ましい。本発明の顔料混合物を含む印刷インクはきれいな色合いを示し、また粘性値が良好のため一層良く印刷できる。
【0039】
本発明はしたがって、本発明の顔料混合物を含む組成物にも関する。
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、限定するものでない。
【実施例】
【0040】
(実施例)
実施例1
真珠光沢顔料10%及びBiron(R) MTU5%を含む長もちする口紅
【0041】
【表1】

【0042】
調合:
相Bの全成分を一緒に溶融して全部が溶融完了するまで攪拌する。相Aの真珠光沢顔料及びBiOCl顔料を攪拌混入する。徐々に相Cを加え、この組成物を攪拌して約60℃に冷却し、2段階で細い棒状の容器中に注入する。この組成物は爆発防止装置中で調合しなければならない。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Les Colorants Wackherr
(3)Dow Corning
(注):(R)は商標名を示す。以下同じ。
【0043】
実施例2
ルージュ:
【0044】
【表2】

【0045】
調合:
相Aの各構成要素を一緒にし、予備混合して篩分(100μm)する。続いてバインダーを滴下攪拌する。粉を40−50バールでプレスする。
供給元:
(1) Merck KGaA
(2) Dow Corning
実施例3
5%の真珠光沢顔料及び14.30%のBiron Silver COを含む口紅:
【0046】
【表3】

【0047】
調合:
相Bの各構成要素を75℃まで加熱して溶融する。相Aの顔料を加え、全体をよく攪拌する。次いでこの口紅組成物を65℃に加熱した鋳造装置で15分間攪拌し、香をつける。この均一なメルトを55℃にあらかじめ加熱した鋳造モールド中に注入する。続いてモールドを冷却し、鋳造物を冷いままはずす。口紅を室温まで加熱後、簡単にフレーム処理する。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Paramelt
(3)Henry Lamotte
(4)Haarmann & Reimer
実施例4
アイシャドー:
【0048】
【表4】

【0049】
調合:
相Aの各構成要素を一緒にして63μm以下に篩分する。続いて相Bを加え、この粉末混合物に激しく攪拌しながら溶融相Cを滴下添加する。粉体を40−50バールでプレスする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Huber
(3)Amerchol
(4)Croda
(5)H.E.Wagner
実施例5
30%の真珠光沢顔料と10%のBiron(R)粉末を含むリップパウダー:
【0050】
【表5】

【0051】
調合:
相Aの各構成要素を一緒にして予備混合する。続いてこの粉体混合物に攪拌しながらBの溶融相を滴下添加する。この粉体を40−50バールでプレスする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Henkel KGaA
(3)Dow Corning
実施例6
クリーム状アイシャドー:
【0052】
【表6】

【0053】
調合:
約80℃において全体が溶融するまで相Bを加熱後、65℃に冷却する。次いで攪拌しながら相Aの各構成要素を加え、仕上がったアイシャドーを液状にある間にパックする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Croda
(3)Huls AG
(4)ISP Europe
実施例7
爪マニキュア:
【0054】
【表7】

【0055】
調合:
BiOCl分散体及び顔料を爪マニキュアベースに攪拌しながら連続的に加える。この混合物を引続き1000rpmでさらに10分間攪拌する。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)International Lacquers
実施例8
アイシャドー:
【0056】
【表8】

【0057】
調合:
相Aの各構成要素を一緒にして63μm以下に篩分する。続いて相Bを加え、さらにこの粉体混合物に激しく攪拌しながら溶融した相Cを滴下添加する。得られた粉体を40−50バールでプレスする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Huber
(3)Amerchol
(4)Croda
(5)H.E.Wagner
実施例9
真珠光沢顔料30%及びBiron(R)粉末10%を含むリップパウダー:
【0058】
【表9】

【0059】
調合:
相Aの構成要素を一緒にして予混合する。続いてこの粉体混合物に攪拌しながら相Bの溶融物を滴下添加する。粉体を40−50バールでプレスする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Henkel KGaA
(3)Dow Corning
実施例10
パウダーコンパクト:
【0060】
【表10】

【0061】
調合:
相Aの各構成要素を一緒にして予備混合して篩分(100μm)する。続いて相Bを溶解したバインダー中に滴下攪拌して均一な分布が得られるまで攪拌する。次いでパックしてプレスする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Elf Atochem
(3)Heterene
(4)Brooks
(5)Croda
実施例11
2 ウェイ ケーキ メークアップ:
【0062】
【表11】

【0063】
調合:
相Aの各構成要素を一緒にして予備混合し、篩分(100μm)する。相Bの構成要素を混合して全体が溶解するまで加熱する。均一な分布が得られるまで相Bを相Aに加え、パックする。
供給元:
(1)Merck KGaA
(2)Elf Atochem
(3)Cognis
(4)Nikko
(5)Croda

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aが粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料を含み、成分Bが真珠光沢のある顔料,薄片状、針状又は球形の着色剤,及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分を含むことを特徴とする分散体状又は粉体状の顔料混合物。
【請求項2】
成分AがFe23、カルミンレッド、ベルリンブルー又は酸化クロムグリーンで被覆されているBiOCl顔料を含むことを特徴とする、請求項1記載の顔料混合物。
【請求項3】
成分Bが雲母、Fe23、ガラス、TiO2、SiO2、Al23、ポリマー又はグラファイト薄片をベースとする真珠光沢のある顔料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の顔料混合物。
【請求項4】
前記真珠光沢のある顔料が多積層顔料であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の顔料混合物。
【請求項5】
成分Bが、Fe23、SiO2、Fe23被覆,TiO2/Fe23、SiO2、TiO2/Fe23被覆又はTiO2、SiO2、TiO2被覆を有する多積層顔料を含むことを特徴とする、請求項4に記載の顔料混合物。
【請求項6】
成分Bが、合成又は天然由来の有機及び/又は無機の染料、被覆した雲母薄片、被覆又は非被覆の球形のSiO2、カーボンブラック、有機着色顔料及び/又は無機着色顔料を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の顔料混合物。
【請求項7】
前記BiOCl顔料がニトロセルロース又はひまし油分散体の形態であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の顔料混合物。
【請求項8】
前記成分A及び成分Bが90:1から1:90までの割合で混合されていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の顔料混合物。
【請求項9】
さらにUV安定剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の顔料混合物。
【請求項10】
請求項1に記載の顔料混合物をペンキ、塗料、印刷インク、プラスチック、粉体塗料、プラスチックフィルム中、種子仕上げ用、ボタンペースト、宝石装飾物中及び化粧用組成物中に使用すること。
【請求項11】
請求項1に記載の顔料混合物を含む組成物。

【公開番号】特開2012−193380(P2012−193380A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152099(P2012−152099)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2001−520786(P2001−520786)の分割
【原出願日】平成12年8月16日(2000.8.16)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】