Brachyspirapilosicoli72kDa外膜タンパク質及び診断及び治療のためのその使用
本発明は、Brachyspira pilosicoli 72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)及びそのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する。本発明はまた、Brachyspira pilosicoli感染症(腸内スピロヘーター感染症)を予防(ワクチン接種)または治療処置するためのこれらの配列の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には腸スピロヘーター感染症の分野に関する。特定的には本発明は、Brachyspira pilosicoliのBpmp−72と命名された72kDaの外膜タンパク質の新規なアミノ酸配列及び該タンパク質をコードしているポリヌクレオチド配列に関する。より特定的には本発明は、トリのような動物種及びヒトのBrachyspira pilosicoli感染症(“腸スピロヘーター感染症”)の予防(“ワクチン接種”)及び治療処置におけるこれらの配列の使用に関する。本発明はまた、B.pilosicoliがコロニー化した動物及びヒトの血清学及び分子生物学に基づく診断に関する。本発明は更に、B. pilosicoli治療薬のスクリーニングに関する。最後に、本発明は本出願に記載したヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に由来の予防、治療及び診断用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸スピロヘーター感染症またはスピロヘーター性下痢としても知られる腸スピロヘーター感染症(IS)は、ブタや採卵用メンドリ及びブロイラー産生用メンドリの生産量を抑制する重大な疾患である。ISの原因は、大腸の腸スピロヘーターBrachyspira(正式にはSerpulina) pilosicoli感染である。このスピロヘーターはまた、イヌのような他の多くの動物種及びヒトにも感染する。ブタの関連疾患が最も理解され研究されている。
【0003】
オーストラリアの養豚産業では感染率が確認されていないが、ヨーロッパ及びスカンジナビアの調査では飼育されているブタの30%以上が感染していると示唆されている。関連疾患は、間欠的な下痢及び成長の遅れを伴う大腸炎/盲腸炎である。ブタの罹患による経済的重要度は明らかではないが、ブタ赤痢よりも症状が軽いにしても全般的に感染率がはるかに高いので、軽視できるものではない。
【0004】
B.pilosicoliはまた成鶏にも広く感染している。オーストラリアの最近の調査では、ブロイラー産生用メンドリの43%及び採卵用メンドリの68%から腸スピロヘーターが回収され、B.pilosicoliはこれらのメンドリのサブセットの44%に含まれているスピロヘーターであった。感染群は非感染群よりも平均で14%水分の多い糞便を排泄していた。この試験で単離したB.pilosicoliをブロイラー産生用メンドリに感染させた実験では、産卵の開始が有意に遅延し、産卵の持続的な減少となった。採卵用メンドリ群だけでなく、ブロイラー産生群でも産卵量が減少し、これは全ブロイラー産業にかなりの打撃となる。これらの問題のコストを査定することは難しいが、オーストラリアではこの産業は重要である。鶏肉産業は25億ドルの小売価格に相当する鶏肉を生産しており、鶏卵産業は3億4千万ドルの価格の鶏卵を生産している。
【0005】
イヌ及びその他の動物種に対するB.pilosicoliの病原体機能はまだしっかりと確認されていないが、いくつかの他の要因次第では健康に多少の影響を与えるであろうと考えられる。B.pilosicoliはまた、開発途上国の多くの人々に感染する。先進国の感染は主として免疫低下個体及び同性愛男性に限定される。この感染が高齢者及び/または免疫低下個体のスピロヘーター血症の原因として記録されている。これらのヒト集団グループのB.pilosicoliの病原的影響の完全範囲はいまだ調査中である。
【0006】
B.pilosicoli感染を抑制する手段を開発するための研究は少ない。豚舎でISが問題であることが確認されると、常套的には動物を抗生物質で治療するが、治療をやめると病気が再発し易い。しかしながら、ニワトリの病気は十分に解明されていないので、養鶏産業が感染の抑制を特に試みることはなかった。
【0007】
ブタのISを抑制するワクチンの使用に関する研究の記録が一つだけ存在する。この自原的バクテリンは感染防御に成功しなかった(Hampson DJ,Robertson ID,La T,Oxberry SL & Pethick DW(2000)Influences of diet and vaccination on colonization of pigs by the intestinal spirochaete Brachyspira(Serpulina)pilosicoli.Veterinary Microbiology 74:75−84)。しかしながら、大腸粘膜に対するスピロヘーターの特異的エンドオン付着が存在するので、適当なワクチン誘導免疫の使用によってコロニー化を抑制または防止できる可能性は高いと考えられる。
【0008】
本発明は、B.pilosicoliのこれまでに同定されたことのない新規なアミノ酸配列及び該配列をコードしているポリヌクレオチド配列を提供する。
【発明の開示】
【0009】
我々は、本文中でB.pilosicoli膜タンパク質72(Bpmp−72)と呼ぶ新規なアミノ酸配列、並びに、腸スピロヘーター感染症に関連する診断、予防及び治療の目的に特に適したそのアミノ酸フラグメントを同定した。我々はまた、Bpmp−72アミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチド配列を同定した。
【0010】
従って本発明は、配列2に示した配列を含むBpmp−72アミノ酸配列または該配列に実質的に相同のアミノ酸配列または配列2のアミノ酸配列のフラグメントを提供する。本発明の1つの好ましい実施態様では、配列3−配列22から選択されるBpmp−72アミノ酸配列のフラグメントが提供される。
【0011】
本発明はまた、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列(配列1)またはその相同配列を提供する。好ましくは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列が、(a)配列1に示すヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド配列、(b)配列1に示すポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントに選択的にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列、(c)遺伝コードの結果として(a)または(b)に定義の配列に縮重であるポリヌクレオチド配列、または、(d)上記の項(a)、(b)または(c)の配列に相補的なポリヌクレオチド配列、から選択される。
【0012】
また、本発明のポリヌクレオチド配列にハイブリダイズできる検出可能に標識されたヌクレオチド配列も提供される。このような配列は例えば、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列のコーディング領域または非コーディング領域にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含む。本発明はまた、配列24及び配列27−配列37に示すようなBpmp−72アミノ酸配列をコードしているB.pilosicoliゲノムDNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【0013】
本発明によって提供されるベクターは、本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含有するであろう。好ましくはベクターがクローニングベクターまたは発現ベクターである。ベクターが発現ベクターである場合、ベクターは主として、発現コントロール配列に作動可能に結合したBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含む。
【0014】
また、本発明のポリヌクレオチド配列によって、または、上記に記載のベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた細胞が提供される。好ましい細胞は、細菌、酵母、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞またはブタ細胞の組織培養物などである。
【0015】
本発明は更に、(a)上記に記載の細胞をBpmp−72アミノ酸配列が発現し得る条件下で培養する段階と、(b)発現したBpmp−72アミノ酸配列を回収する段階とを含むBpmp−72アミノ酸配列の製造方法を提供する。この手順に、(c)Ni−キレート化カラムでアミノ酸配列をクロマトグラフィー分離する段階、及び、(d)ゲル濾過によってアミノ酸配列を精製する段階を付加してもよい。
【0016】
本発明はまた、本発明のBpmp−72アミノ酸配列に特異的な標識及び非標識のモノクローナル及びポリクローナル抗体を提供し、また、本発明のモノクローナル抗体を産生する不死細胞系を提供する。本発明の抗体製造は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列をキャリアータンパク質にコンジュゲートする段階と、(b)アジュバントに混合した段階(a)のBpmp−72アミノ酸配列フラグメント−キャリアータンパク質コンジュゲートで宿主細胞を免疫する段階と、(c)免疫した宿主動物からBpmp−72特異的抗体を採取する段階とを含む。
【0017】
本発明は更に、生物サンプル中のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の有無を検出する方法を提供する。方法は、(a)安定なハイブリダイズ条件下で本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブまたはプライマーに生物サンプルを接触させる段階と、(b)プローブまたはプライマーとサンプル中のヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖を検出する段階とを含む。
【0018】
本発明は、サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を測定する方法を提供する。方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列を含有する疑いのあるサンプルとBpmp−72アミノ酸配列に特異的に結合する抗体とを反応複合体の形成が可能な条件下で接触させる段階と、(b)反応複合体の形成を検出する段階とを含み、反応複合体の形成の検出がサンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を示す指標となる。
【0019】
本発明はまた、生物サンプル中の腸スピロヘーター感染症抗体の検出方法を提供する。方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを準備する段階と、(b)該アミノ酸配列を生物サンプルと共に抗体抗原複合体の形成が可能な条件下でインキュベートする段階と、(c)抗体抗原複合体を検出する段階と、を含む。
【0020】
これに対応して、生物サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列のレベルのin vitro測定方法が提供される。方法は、(a)上述の方法に従って生物サンプル中の反応複合体の形成を検出する段階と、(b)形成された反応複合体の量を測定する段階とを含み、この量が生物サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列のレベルに対応する。
【0021】
更に、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する動物宿主の疾患の治療処置をin vitroモニターする方法が提供される。方法は、このような治療処置を受けている動物宿主からいくつかの異なる時点に採取した一連の生物サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列のレベルを上述の手順で測定する段階を含む。
【0022】
本発明の目的はまた、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患の変調医薬を製造するために、本発明のポリヌクレオチド配列、及び、本発明のBpmp−72アミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチドにハイブリダイズできるアンチセンス核酸配列を使用することである。
【0023】
更に、本発明は、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する腸スピロヘーター感染症を予防、軽減または治療するための、ワクチンを非限定例とする医薬または治療用の組成物または薬剤を提供する。これらは、(a)少なくとも1つの本文中に記載のBpmp−72アミノ酸配列または少なくとも1つの本文中に記載のBpmp−72ヌクレオチド配列または上記配列の1つに特異的に結合する抗体と、(b)1種類または複数の医薬に許容される担体及び/または希釈剤とを含む。
【0024】
本発明は更に、治療に使用するための本発明のポリヌクレオチド、アミノ酸配列及び/または抗体を提供する。また、腸スピロヘーター感染症を特徴とする状態の治療方法が提供される。方法は、治療が必要な動物に有効量の本発明のポリヌクレオチド、アミノ酸配列または抗体を投与する段階を含む。更に、本発明は、腸スピロヘーター感染症を予防するかまたは少なくとも最小限に抑えるために動物を予防的に処置する方法を提供する。方法は、有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体またはこれらの生物分子を1種類以上含む医薬組成物を動物に投与する段階を含む。
【0025】
更に本発明は、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の生物活性をBpmp−72ヌクレオチドまたはアミノ酸配列との直接的または間接的相互作用を介して変調し得る薬物のスクリーニング方法を提供する。これらの方法によって同定された物質は腸スピロヘーター感染症の治療方法に使用し得る。
【0026】
本発明はまた、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に感染した疑いのある動物をスクリーニングするため、または、動物がB.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染していることを確認するためのキットを提供する。このキットは、適当な容器に包装されたBpmp−72ポリヌクレオチド配列の一部分に相補的な少なくとも1つのポリヌクレオチドをその使用説明書と共に含む。代替形態として、本発明は、(a)B.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染している疑いのある宿主動物をスクリーニングするため、または、(b)宿主動物がB.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染していることを確認するためのキットを提供する。キットは、適当な容器に包装されたBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントまたは上記配列に結合する抗体をその使用説明書と共に含む。
【0027】
本発明の別の特徴及び利点は、添付図面を参照しながら進める以下の記載の閲覧から当業者に明らかであろう。
【0028】
概論
本文中に記載の発明が明確に記載した変更及び修正以外の変更及び修正の対象となり得ることは当業者に理解されよう。本発明はこのような変更及び修正のすべてを包含すると理解されたい。本発明はまた、明細書で個別的にまたは集合的に言及または指示した段階、特徴、組成物及び化合物のすべてを包含し、また、任意の2つ以上の段階または特徴のいずれかの組合せをすべて包含する。
【0029】
本発明の範囲は本文中に記載した特定実施態様によって限定されない。これらの実施態様は例示目的で示しただけである。機能的に等価の生成物、組成物及び方法は明らかに本文中に記載の本発明の範囲内である。
【0030】
本明細書に含まれているヌクレオチド及びアミノ酸配列情報を内包する配列認識番号(配列No.)は、明細書の末尾にまとめて示すが、これはプログラムPatent In Version 3.2を使用して作成したものである。配列表のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の各々は配列識別子の付いた数値指標<201>によって識別される(例えば、<201>1、<201>2、など)。各ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の長さ、配列型及び起原生物はそれぞれ数値指標欄<211>、<212>及び<213>に与えられた情報によって示されている。明細書中で言及したヌクレオチド及びアミノ酸配列は、配列識別子の付いた数値指標欄<400>に与えられた情報(例えば、<400>1、<400>2、など)によって定義されている。
【0031】
本文中に引用したすべての刊行物(特許、特許出願、雑誌記事、実験便覧、書物またはその他の文献)の開示はその全体が参照によって本発明に含まれるものとする。いずれの参考文献についても、それらが先行技術を構成するとも、または、本発明の関連分野の当業者の一般常識の一部であるとも認めていない。
【0032】
本文中に使用した“由来の”及び“に由来の”という用語は、特定の完全体(integer)が特定のソースから得られることを意味しているが、該ソースから必ずしも直接的に得られなくてもよい。
【0033】
本明細書を通じて、文脈から別の解釈が必要な場合を除いて、“含む”という用語または“含む(主語が単数)”もしくは“含んでいる”のようなその変形は、所定の完全体または完全体グループが含まれることを意味するが、その他の完全体または完全体グループを排除しないことは理解されよう。
【0034】
本文中に使用したその他の選択用語の定義は発明の詳細な説明の項に示したが、これらの定義は明細書全体に通用する。本文中に使用した他の科学的及び技術的用語は異なる定義がない限り本発明の所属分野の当業者が共通に理解する意味と同義である。
本発明は、その変形及びフラグメントも含めたBpmp−72アミノ酸配列及び該配列をコードしているポリヌクレオチド配列の同定に関する。
【0035】
Bpmp−72アミノ酸配列は、B.pilosicoliラムダバクテリオファージゲノムライブラリーをスクリーニングすることによってB.pilosicoliから単離された。このスクリーニングプロセスによって6つのクローンが見出され、AHP1−6と命名された。これらのクローンはいずれも、見掛け分子量34kDaの共通タンパク質を産生し、これらのタンパク質はいずれも吸収された超免疫ブタ血清と強力に反応した。1つのクローンの配列決定によれば、29.4kDaのコーディング容量をもつ783塩基対の部分的読取り枠(ORF)が同定された。この部分的ORFは、B.pilosicoliの72kDa外膜タンパク質のカルボキシ末端部分をコードしているであろう。
SWISS−PROTデータベースでBpmp−72の相同性サーチを行うと、このタンパク質とTreponema phagedenis及びTreponema pallidumのTreponemal膜タンパク質B(TmpB)とが約5%相同であることが確認された。これらのタンパク質は、外膜と結合し、ポーリンとしてまたは巨大分子の輸送タンパク質として機能し得る。Bpmp−72ヌクレオチドをGenBankヌクレオチドデータベースに比較しても他の細菌遺伝子との強力な相同性は判明しなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の解析から、B.pilosicoliゲノムDNAの1009塩基対のインサートが判明した(図3)。インサートDNAの配列解析から、推定ATG開始コドンとTAA終結コドンとをもつ塩基1−783の783塩基対の潜在的な部分的ORFが判明した。残りの遺伝子を更にクローニングして配列決定すると、Bpmp−72のコーディング配列が1,692ヌクレオチドのサイズであることが判明した。潜在的シャイン・ダルガーノリボソーム結合部位(AGGAG)及び推定−10(TAATAT)及び−35(TTGAAA)プロモーター領域がATG開始コドンの上流で同定された。72kDaの外膜タンパク質をコードしている遺伝子配列を分子量72kDaの外膜タンパク質と命名した(Bpmp−72)。
【0038】
翻訳されたポリペプチドは564アミノ酸(aa)残基から構成され、予測分子量62.1kDaを有していた(図4)。推定されたサイズは、天然型Bpmp−72タンパク質のウェスタンブロットで観察されたサイズと有意な違いを有していた。Bpmp−72の推定コーディング容量と天然型Bpmp−72外膜タンパク質との分子量の違いの原因は、アシル化、メチル化、アセチル化、リン酸化及び硫酸化のような翻訳後修飾にあると考えられる。
【0039】
アミノ酸配列の解析から、翻訳されたポリペプチドのC−末端に118残基の領域が存在することが判明し、これは保存されたリシンモチーフ(LysM)ドメインに相同であった。このドメインは、細菌細胞壁を分解する酵素で初めて同定されたがその後多くの他の細菌タンパク質にも存在することが証明された遍在タンパク質モジュールである。LysMドメインは細菌細胞表面タンパク質の最も普遍的なモジュールの1つである。LysMドメインを有している他の細菌タンパク質、例えば、ブドウ球菌(Staphlococci)のIgG結合タンパク質及び大腸菌(E.coli)のインチミンは細菌性病因に関与する。
【0040】
Bpmp−72アミノ酸配列
本発明によって提供される全長Bpmp−72アミノ酸配列は約564個のアミノ酸(aa)残基を有しており、B.pilosicoli外膜タンパク質をコードしているであろう。タンパク質の推定分子量は62,081Daである。
【0041】
本発明のBpmp−72アミノ酸配列は、本文中に示したアミノ酸配列、例えば配列2−配列22を有している。また、保存性アミノ酸置換で修飾されたBpmp−72アミノ酸配列、並びに、それらのアナローグ、フラグメント及び誘導体を包含する。
【0042】
本発明の好ましい形態では、本文中に記載したような単離Bpmp−72アミノ酸配列が提供される。より望ましくは、実質的に純粋な形態のBpmp−72アミノ酸配列が提供される。
【0043】
“単離された”という用語は、自然状態で付随している成分から分離されたBpmp−72アミノ酸配列を表すために使用されている。更に、少なくとも約60−75%のサンプルが1つのBpmp−72アミノ酸配列を示すときにはBpmp−72アミノ酸配列が“実質的に精製”されている。実質的に精製されたBpmp−72アミノ酸配列は、典型的には約60−90%W/W、より一般的には約95%のBpmp−72アミノ酸配列サンプルを含み、好ましくは約99%以上純粋であろう。タンパク質の純度または均質性は当技術分野で公知のいくつかの手段によって表すことができ、例えば、タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、次いでゲル染色によってBpmp−72アミノ酸配列の単一バンドを可視化するとよい。ある種の目的には、HPLCまたは本願でも使用した当技術分野で公知の他の手段を使用することによってより高い分解能が得られる。
【0044】
本発明の好ましいBpmp−72アミノ酸配列は、天然型全長Bpmp−72アミノ酸配列の1つまたは複数の生物学的特性(例えば、in vivo、in vitroまたは免疫学的特性)を有しているであろう。非機能性のBpmp−72アミノ酸配列も、例えばBpmp−72のアンタゴニストとして有用であり得るので本発明の範囲に包含される。野生型に比べたアナローグ、フラグメントまたは誘導体の生物学的特性は例えば生物学的アッセイを用いて決定され得る。
【0045】
アナローグ、フラグメント及び誘導体を含めたBpmp−72アミノ酸配列は、合成的に(例えば、公知の固相または溶液相ペプチド合成法を使用して)作製できる。好ましくは固相合成法を使用する。あるいは、本発明のBpmp−72アミノ酸配列は後述するような公知の遺伝子操作技術を使用して作製できる。また別の実施態様では、Bpmp−72アミノ酸配列がブタ、ニワトリ、ヒト及びイヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ及び魚などの動物の血漿、糞便、血清または尿を非限定例とする生物流体から精製できる(例えば、イムノアフィニティ精製によって)。
【0046】
Bpmp−72アミノ酸配列のアナローグ
Bpmp−72アミノ酸配列のアナローグは、1つまたは複数のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されているがこの置換によって分子の生物学的活性が実質的に変質されないアミノ酸配列を含む。
【0047】
本発明の文脈で、アナローグ配列は、少なくとも20、50、100または200個のアミノ酸に関するアミノ酸レベルで配列2に示したアミノ酸配列に少なくとも60、70、80または90%相同、好ましくは少なくとも95または98%相同のBpmp−72アミノ酸配列を含意する。特に、相同性は典型的にはタンパク質の機能に必須であることが判っている配列の領域について考察されるべきであり、隣接の必須でない配列は考慮するに及ばない。特に好ましい本発明のアミノ酸配列は、配列3−配列22に示したアミノ酸配列の1つまたは複数に60または70%以上、より好ましくは80−90%以上の相同性を有している連続的配列を含む。
【0048】
相同性を類似性(即ち、類似の化学的特性/機能を有しているアミノ酸残基)として考えることもできるが、本発明の文脈では相同を配列一致として表すほうが好ましい。Bpmp−72アミノ酸配列に関して“実質的な相同”または“実質的な一致”という用語が使用されたとき、これらの用語は、問題のBpmp−72アミノ酸配列が天然産生のBpmp−72アミノ酸配列の全長またはその一部分に少なくとも約70%の一致、通常は少なくとも約80%の一致、好ましくは少なくとも約90%または95%の一致を示すことを表す。
【0049】
本発明の極めて好ましい形態では、Bpmp−72アミノ酸配列アナローグが配列2で示したBpmp−72アミノ酸配列または配列3−配列22で示した配列に80%以上のアミノ酸配列一致を示すであろう。本発明の範囲内のBpmp−72アミノ酸配列アナローグの例は、(a)1つまたは複数のアスパラギン酸残基がグルタミン酸で置換された配列2のアミノ酸配列、(b)1つまたは複数のイソロイシン残基がロイシンで置換された配列2のアミノ酸配列、(c)1つまたは複数のグリシンまたはバリン残基がアラニンで置換された配列2のアミノ酸配列、(d)1つまたは複数のアルギニン残基がヒスチジンで置換された配列2のアミノ酸配列、あるいは、(e)1つまたは複数のチロシンまたはフェニルアラニン残基がトリプトファンで置換された配列2のアミノ酸配列を含む。
【0050】
Bpmp−72アナローグのスクリーニング
ポリペプチドのアナローグをスクリーニングするために様々なスクリーニング技術が当技術分野で公知である。多様な化学物質ライブラリーが利用可能である。従って本発明は、Bpmp−72アミノ酸配列のアナローグを得るために、より詳細に後述するように、多年の研究で作製された合成化合物のライブラリー、天然化合物のライブラリー及び組合せライブラリーなどのようなライブラリーのスクリーニングを考察する。1つの実施態様では、本発明はBpmp−72特異的抗体に結合するアナローグを選択するためのかかるライブラリーのスクリーニングを考察する。
【0051】
Bpmp−72アミノ酸配列のフラグメント
アナローグに加えて、本発明はBpmp−72アミノ酸配列のフラグメントを考察する。Bpmp−72アミノ酸配列フラグメントは、少なくとも約5−7個の連続アミノ酸、しばしば少なくとも約7−9個の連続アミノ酸、典型的には少なくとも約9−13個の連続アミノ酸、最も好ましくは少なくとも約20−30個またはそれ以上の連続アミノ酸から成るアミノ酸残基連鎖である。好ましいBpmp−72アミノ酸配列フラグメントは配列3−配列22に示すような配列を包含する。
【0052】
本発明の極めて好ましい形態では、フラグメントがBpmp−72アミノ酸配列に特徴的なリガンド結合免疫活性及び/またはその他の生物学的活性を示す。より好ましくはフラグメントが天然型のBpmp−72アミノ酸配列に存在する免疫エピトープに一致する免疫エピトープを有している。
【0053】
本文中で使用した“エピトープ”という用語は、ポリペプチドの抗原決定基を表す。エピトープは3つのアミノ酸を該エピトープに特有の空間的コンホメーションで含み得る。一般に、エピトープは少なくとも5個のアミノ酸、もっと普通には少なくとも8−10個のアミノ酸から構成されている。このようなアミノ酸の空間的コンホメーションの決定方法は当技術分野で公知である。
【0054】
Bpmp−72アミノ酸配列誘導体
本発明によって“Bpmp−72アミノ酸配列誘導体”が提供される。これらは、一次構造が実質的に相同であるが化学的及び/または生化学的修飾または普通は存在しないアミノ酸を含んでいるBpmp−72アミノ酸配列、そのアナローグまたはフラグメントを包含する。このような修飾は、当業者に容易に理解されるように、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、標識(例えば、放射性ヌクレオチドによる標識)及び種々の酵素的修飾、などを包含する。
【0055】
本発明の1つの形態では、誘導体化に適した化学的部分が水溶性ポリマーから選択される。選択されたポリマーは、ポリマーに結合したタンパク質が生理的環境のような水性環境で沈殿しないように水溶性でなければならない。最終製品を製造して治療に使用するため、医薬に許容されるポリマーが好ましい。当業者は、ポリマー/タンパク質コンジュゲートが治療に使用されるかについて考察し、使用される場合には所望の用量、循環時間、タンパク質分解耐性やその他の要因について考察し、これらの考察に基づいて所望のポリマーを選択できるであろう。本発明のタンパク質及びペプチドについては本文中に示したアッセイを使用して確認できる。
【0056】
水溶性ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、及び、デキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリビニルアルコールから成るグループから選択するとよい。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水安定性なので製造には有利であろう。
【0057】
本発明の別の形態では、例えばBpmp−72アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシル末端に1つまたは複数の抗体フラグメント(例えばFcフラグメント)を融合させることによって動物宿主体内の半減期を延長するようにアミノ酸配列を修飾し得る。
【0058】
Bpmp−72アミノ酸配列を標識形態で提供する必要がある場合、アミノ酸配列を標識する種々の方法が当技術分野で公知であり、例えば、32Pのような放射性同位体、標識アンチリガンド(例えば、抗体)に結合するリガンド、フルオロホア、化学発光剤、酵素、標識リガンドへの特異的結合相手として作用できるアンチリガンドが包含される。ラベルの選択は、必要な感度、安定性要件及び入手可能な計器類に左右される。アミノ酸配列の標識方法は当技術分野で公知である[例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);及び、Ausubel,F.,Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Seidman,J.G.,Smith,J.A.,Struhl,K.Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Associates/Wiley Intersciences,New York(2001)参照]。
【0059】
本発明のBpmp−72アミノ酸配列が可溶性である場合には、固相支持体、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、カラム充填材料(例えば、セファロースビーズ)、磁気ビーズ、グラスウール、プラスチック、金属、ポリマーゲル、セルまたはその他の支持体に配列を結合させるとよい。このような支持体は例えばビーズ、ウェル、浸漬棒または膜の形態を有し得る。
【0060】
本発明はまた、Bpmp−72アミノ酸配列及びフラグメントを含む融合ポリペプチドを提供する。即ち、Bpmp−72アミノ酸配列が2つ以上のBpmp−72アミノ酸配列の融合物、または、1つのBpmp−72アミノ酸配列と類縁タンパク質との融合物であってもよい。同様に、誘導体タンパク質の特性または活性の組合せを示す異種融合物を構築することもできる。例えば、リガンド結合性ドメインまたは他のドメインが異なる融合ポリペプチドまたはフラグメント間で“交換”されてもよい。このような同種または異種融合ポリペプチドは例えば、強度または結合特異性の変質を示すであろう。融合相手は、免疫グロブリン、細菌性ベータ−ガラクトシダーゼ、trpE、プロテインA、ベータ−ラクタマーゼ、アルファアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及び酵母のアルファ接合因子などである。
【0061】
修飾されたBpmp−72アミノ酸配列は、慣用の技術を使用して合成し得る。すなわち、修飾ポリヌクレオチド配列によってコードし組換え核酸方法を使用することにより産生し得る。修飾ポリヌクレオチド配列も慣用の技術によって作製し得る。融合タンパク質は典型的には、組換え核酸方法によって作製するかまたは化学合成し得る。
【0062】
Bpmp−72ポリヌクレオチド
本発明によれば、単離されたまたは実質的に純粋なBpmp−72ポリヌクレオチド配列が提供される。該配列は、Bpmp−72アミノ酸配列またはそのアナローグ、フラグメントもしくは誘導体をコードしている。本発明による好ましいBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、配列1で示す配列またはそのフラグメントを含む。
【0063】
“Bpmp−72ポリヌクレオチド配列”は、一本鎖形態または二重鎖ヘリックスのリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;“RNA分子”)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン;“DNA分子”)のリン酸エステル高分子形態を表す。二重鎖のDNA−DNA、DNA−RNA及びRNA−RNAヘリックスが可能である。特定の二重鎖DNA分子の構造を検討するとき、本文中では、DNAの非転写ストランド(即ち、mRNAに相同な配列を有するストランド)に沿って5’から3’の方向だけで配列を示す標準協約に従って配列を記述する。
【0064】
“単離された”または“実質的に純粋な” Bpmp−72ポリヌクレオチドは、天然型B.pilosicoliゲノム配列に天然に付随する他の細胞成分から実質的に分離された配列を意味する。この用語は、その天然産生環境から取出されたBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含意し、また、組換えられたもしくはクローニングされたBpmp−72ポリヌクレオチド配列単離物及び化学的に合成された変異体もしくは異種系によって生合成された変異体を包含する。
【0065】
1つの実施態様で本発明は、Bpmp−72アミノ酸配列を発現するBpmp−72ポリヌクレオチド配列を提供する。より詳細には、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列が、(a)配列1に示すポリヌクレオチド配列またはそのフラグメント、(b)(a)に定義したポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列またはハイブリダイズ可能なそのフラグメント、及び、(c)上記ポリヌクレオチド配列のいずれかによってコードされているアミノ酸配列の発現をコードしているポリヌクレオチド配列、から成るグループから選択される。
【0066】
相同的Bpmp−72ポリヌクレオチド配列
本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、天然のBpmp−72ポリヌクレオチド配列に由来するか実質的に類似である配列、または、天然のBpmp−72ポリヌクレオチド配列またはその一部分と実質的相同性を有している配列を包含する。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド配列(またはその相補ストランド)と(適当なヌクレオチド挿入または欠失を伴って)最適に位置合せされたときに、少なくとも約60%のヌクレオチド塩基、一般的には少なくとも約70%、より一般的には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95−98%のヌクレオチド塩基にヌクレオチド配列一致が存在するならば、別のポリヌクレオチド配列に“実質的に相同”(または“実質的に類似”)である。
【0067】
あるいは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で別のBpmp−72ポリヌクレオチド(またはその相補ストランド)、ストランドまたはその相補鎖にハイブリダイズするときに実質的な相同または一致が存在する。選択的ハイブリダイゼーションは、低、中または高緊縮性条件下で行うことができるが、好ましくは高緊縮性条件下で行う。典型的には、少なくとも約14ヌクレオチドの連鎖にわたって少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、極めて好ましくは少なくとも約90%の一致が存在するときに選択的ハイブリダイゼーションが生じるであろう。記載したような相同性比較は、もっと長い連鎖で行ってもよく、いくつかの実施態様では、しばしば少なくとも約9ヌクレオチド、一般的に少なくとも約20ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36以上のヌクレオチドを含む連鎖で行う。
【0068】
このように、本発明のポリヌクレオチド配列は、本文中の配列表に示した配列に対して好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、もっと好ましくは少なくとも90%の相同性を有している。さらに好ましくは、少なくとも95%、いっそう好ましくは少なくとも98%の相同性が存在する。ヌクレオチドの相同性比較は後述のポリペプチドと同様にして行うとよい。好ましい配列比較プログラムは、GCG Wisconsin Bestfitプログラムである。
【0069】
本発明の文脈では、相同配列は少なくとも20、50、100、200、300、500または819ヌクレオチドの範囲の核酸レベルで配列1に示したヌクレオチド配列に少なくとも60、70、80または90%一致、好ましくは少なくとも95または98%一致するヌクレオチド配列を含むと理解される。特に、相同性は一般にタンパク質の機能に必須であることが判っている連続アミノ酸配列をコードしている配列の領域に関して考察されるべきであり、必須でない隣接の配列を考慮する必要はない。
【0070】
本発明の別の好ましいBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、配列3−配列22の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列に50、60または70%を上回る相同性、より好ましくは80、90、95または97%を上回る相同性を有している連続配列を包含する。
【0071】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列フラグメント
本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列フラグメントは、好ましくは少なくとも15ヌクレオチドの長さ、より好ましくは少なくとも20、30、40、50、100または200ヌクレオチドの長さであろう。一般的に、ポリヌクレオチド配列の長さが短いほど、選択的ハイブリダイゼーションを得るために高い相同性が必要である。従って、本発明のポリヌクレオチド配列が約30未満のヌクレオチドから構成されている場合には、本文中の配列表に示したポリヌクレオチド配列に対する一致パーセンテージが75%以上、好ましくは90%または95%以上であるのが好ましい。逆に、本発明のポリヌクレオチド配列が例えば50または100以上のヌクレオチドから構成される場合には、本文中の配列表に示したポリヌクレオチド配列に対する一致パーセンテージがもっと低い値でもよく、例えば50%以上、好ましくは60または75%以上でよい。
【0072】
Bpmp−72プローブ配列
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列に由来のプローブ配列が本発明の範囲内で考察される。これは本文中に開示した特定配列から簡便に作製できる。プローブは、Bpmp−72ポリヌクレオチドの全部または一部分にわたって該配列に特異的にハイブリダイゼーションできる任意の適当な長さでよい。
【0073】
相同度が高いほど、使用できるハイブリダイゼーションの緊縮性が高い。従って、1つの実施態様では、相同Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を同定するために低緊縮性ハイブリダイゼーション条件を使用するようにプローブを設計するのが好ましい。代替的な実施態様では、中度のハイブリダイゼーション条件を使用するようにプローブを設計する。より好ましくは高緊縮性条件を使用する。本文中の実験で示したように、Bpmp−72プローブ配列は配列1に示すようなポリヌクレオチド配列に中度の緊縮性条件下でハイブリダイズするであろう。より好ましくは高緊縮性条件下でハイブリダイズするであろう。
ハイブリダイゼーションの緊縮性が、当業者に容易に理解されるような塩基組成、相補ストランドの長さ及びハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数に加えて、塩濃度、温度または有機溶媒のような条件によって左右されることを当業者は認識している。緊縮性温度条件は一般的に30℃以上、典型的には37℃以上、好ましくは45℃以上の温度を含むであろう。緊縮性塩条件は、通常は1000mM未満、典型的には500mM未満、好ましくは200mM未満であろう。しかしながら、パラメーターの組合せはいずれかの単一パラメーターの測定値よりもはるかに重要である。緊縮性ハイブリダイゼーション条件の一例は、65℃及び0.1×SSC(1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム,pH7.0)である。
【0074】
好ましくはプローブ配列が、配列1に由来の少なくとも約8個の連続ヌクレオチド、または好ましくは約15個の連続ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約25個のヌクレオチドを有しており、少なくとも約40ヌクレオチドの最小サイズを有し得る。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を検出するための特に好ましいオリゴヌクレオチドプローブは、配列3−配列18及び実施例に示すオリゴヌクレオチド配列を含む。
【0075】
本発明のプローブは、ラベルまたはリポーター分子に付着した単離ポリヌクレオチドを含んでいてもよく、配列類似性を有している他のポリヌクレオチドを単離するために標準方法によって使用し得る。プローブを作製し標識する技術に関しては、例えば、Sambrookら,(1989)前出、または、Ausubelら,(2001)前出を参照するとよい。
【0076】
合成オリゴヌクレオチドまたは他のポリヌクレオチド配列を含む本発明のプローブはまた、天然産生または組換え操作した一本鎖または二重鎖のポリヌクレオチドから得てもよく、あるいは、化学的に合成されてもよい。プローブはニックトランスレーション、クレノウ埋戻し反応または当技術分野で公知の他の方法によって標識し得る。
【0077】
Bpmp−72プライマー配列
本発明はまたBpmp−72プライマー配列を提供する。増幅反応に使用されるプライマーは最大増幅効率を得るためには一本鎖であるのが好ましいが、二重鎖でもよい。二重鎖の場合、プライマーを先ずストランド分離処理して、その後に伸長産物の作製に使用する。プライマーは、重合誘導剤の存在下でBpmp−72伸長産物の合成をプライムすべく十分な長さを有していなければならない。プライマーの正確な長さは温度、バッファ及びヌクレオチド組成のような多くの要因に従属するであろう。
【0078】
オリゴヌクレオチドプライマーは典型的には12−20個またはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、より少数のヌクレオチドを含有してもよい。好ましくはプライマーが、配列3−配列18に示した配列から選択される。
【0079】
オリゴヌクレオチドプライマーは、慣用のホスホトリエステル法及びホスホジエステル法またはその全自動化実施態様のような何らかの適当な方法によって作製できる。このような全自動化実施態様の1つでは、ジエチルホスホラミダイトを出発材料として使用し、Beaucageら,(1981)Tetrahedron Letters,22:1859−1862に記載されたようにして合成し得る。修飾された固体支持体の上でオリゴヌクレオチドを合成する1つの方法が米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0080】
アンチセンス核酸及びリボザイム
本発明はまた、翻訳レベルでBpmp−72アミノ酸配列の発現を妨害するために使用できるアンチセンスヌクレオチド及びリボザイムの作製に及ぶ。この方法では、特異的mRNAの翻訳をブロックするためにアンチセンス核酸及びリボザイムを使用し、該mRNAをアンチセンス核酸でマスキングするかまたはリボザイムで開裂する。
【0081】
アンチセンス核酸は、特異的mRNA分子の少なくとも一部分に相補的なDNAまたはRNA分子である[Weintraub.(1990)Sci.Am.,262:40−46;Marcus−Sekura,(1988)Anal.Biochem.,172:289−295参照]。これらは細胞内部でmRNAにハイブリダイズし、二重鎖分子を形成する。細胞は、この二重鎖形態に複合化したmRNAを翻訳しない。従って、アンチセンス核酸はmRNAがタンパク質として発現することを妨害する。約15ヌクレオチドのオリゴマー及びAUG開始コドンにハイブリダイズする分子が特に効率的であろう。その理由は、それらが合成し易くまたそれらを感染細胞に導入するときにもっと大きい分子よりも問題が生じ難いからである。アンチセンス方法は多くの遺伝子のin vitro発現を阻止するために使用されてきた[Hamborら,(1988)J.Exp.Med.,168:1237−1245]。
【0082】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに多少似通った方法で他の一本鎖RNA分子を特異的に開裂する能力を有しているRNA分子である。リボザイムは、ある種のmRNAがそれ自体のイントロンを切除する能力を有しているという観察から発見された。研究者らは、これらのRNAのヌクレオチド配列を修飾することによって、RNA分子中の特異的ヌクレオチド配列を認識しそれを開裂する分子を作製することに成功した[Cech,(1988)J.Am.Med.Assoc.,260:3030−3034]。それらは配列特異的なので特定配列をもつmRNAだけを失活させる。
【0083】
研究者らは2つのタイプのリボザイム、テトラヒメナ型及び“ハンマーヘッド”型を同定した。テトラヒメナ型リボザイムは4塩基の配列を認識し、“ハンマーヘッド”型は11−18塩基の配列を認識する。認識配列が長いほど、リボザイムの発生がターゲットmRNA種内に限定され易い。従って、特異的mRNA種を失活させるためにはハンマーヘッド型リボザイムのほうがテトラヒメナ型リボザイムよりも好ましい。また、18塩基認識配列はもっと短い認識配列よりも好ましい。
【0084】
従って、本文中に記載のBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、Bpmp−72アミノ酸配列のmRNAに対するアンチセンス分子及びそのmRNAを開裂するリボザイムを作製しこれによってBpmp−72ポリヌクレオチド配列の発現を阻害するために使用し得る。
【0085】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の単離
精製形態または非精製形態のB.pilosicoliの標本をBpmp−72ポリヌクレオチド配列を単離する出発点として利用できる。このような標本は主として血液、組織材料、糞便などのような動物サンプルから、Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.,p280−281(1982)に記載された技術のような様々な技術によって選択的に抽出される。
【0086】
抽出したサンプルが精製されていないときは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を単離する前にサンプルの細胞または細菌細胞膜を開くために有効な量の試薬でサンプルを処理し、(1つまたは複数の)核酸の(1つまたは複数の)ストランドを露出及び/または分離させるとよい。
【0087】
B.pilosicoliゲノム材料を遊離した後、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を増幅及び/または単離するためにいくつかの方法が存在する。このような方法の詳細はSambrookら,(1989)前出またはAusubelら,(2001)前出、から得られる。
【0088】
PCRは恐らく、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を最初に増幅するために使用できるよく知られた方法の1つであり、本発明でも好ましく使用される。増幅される特異的Bpmp−72ポリヌクレオチド配列は長い分子の一部分でもよく、または、最初から特異的配列が完全核酸を構成するような独立分子として存在してもよい。増幅される配列が最初から純粋形態で存在する必要はない。配列は、B.pilosicoliの全DNAに含まれているような複合混合物の小部分であってもよい。
【0089】
PCRプロセスでは、適量のデオキシリボヌクレオチド三リン酸dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを個別にまたはプライマーと一緒に合成混合物に添加し、得られた溶液を約90−100℃で約1−10分間、好ましくは1−4分間加熱する。この加熱期間の後、溶液は冷やされる。プライマーハイブリダイゼーションにはこの溶液が好ましい。冷却した混合物に、プライマー伸長反応を惹起するために適当な補佐物質(本文中では“重合剤”と呼ぶ)を添加し、当技術分野で公知の条件下で反応を生じさせる。重合剤が熱安定性ならば重合剤を他の試薬と一緒に添加してもよい。この合成(または、増幅)反応は、室温から重合剤が機能しない高温までの温度範囲で生じ得る。従って、例えば重合剤としてDNAポリメラーゼを使用するときは、温度は一般に約40℃以下である。反応を室温で行うのが最も簡便である。
【0090】
新しく合成したBpmp−72ストランド及びその相補核酸ストランドは上述のハイブリダイズ条件下で二重鎖分子を形成するであろう。このハイブリッドを次の段階のプロセスで使用する。
【0091】
変性、アニーリング及び伸長産物合成の段階をターゲットBpmp−72ポリヌクレオド配列が検出に必要な程度に増幅するまで必要回数繰り返す。産生された特異的Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の量は指数関数的に累積するであろう。このような増幅反応はPCR.A Practical Approach,ILR Press,Eds.M.J.McPherson,P.Quirke & G.R.Taylor,1992、により詳細に記載されている。
【0092】
Bpmp−72ポリヌクレオチド増幅産物は放射性プローブを使用しないでサザンブロット分析によって検出し得る。このようなプロセスでは、例えば、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の核酸配列を極めて低いレベルで含有しているDNAの少量サンプルを増幅し、サザンブロット法または同様のドットブロット分析を使用して分析する。高レベルの増幅シグナルによって非放射性プローブまたはラベルの使用が容易になる。あるいは、増幅産物を検出するために使用するプローブを本文中に記載するように直接的または間接的に検出可能に標識することもできる。
【0093】
本発明の方法によって増幅した配列を更に、溶液中でまたは固体支持体に結合させた後で、PCR、オリゴマー制限[Saikiら,(1985),Bio/Technology,3:1008−1012]、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析[Connerら,(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:278]、オリゴヌクレオチド結合アッセイ[Landgrenら,(1988),Science,241:1007]、などのような特異的DNA配列の検出に常用の方法のいずれかによって評価、検出、クローニング、配列決定などができる。
複数の代替的増幅方法が文献に記載されておりこれらも本発明に使用できる。これらの代替的増幅系の非限定例は、自立性配列複製、核酸配列に基づく増幅(これは逆転写及びT7 RNAポリメラーゼを使用し、そのサイクリングスキームをターゲットするために2つのプライマーを組込む)である。あるいは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を結合活性化転写またはリガーゼ連鎖反応または修復鎖反応核酸増幅技術によって増幅することもできる。
【0094】
Bpmp−72ポリヌクレオチド構築物及びベクター
別の実施態様によれば、本発明はBpmp−72アミノ酸配列の作製方法を提供する。該方法は、(a)本文中に記載のような細胞をBpmp−72アミノ酸配列が発現する条件下で培養する段階と、(b)発現したBpmp−72配列を回収する段階とを含む。この手順にまた、(c)当技術分野で公知の適当な手段のいずれかを使用してアミノ酸配列をクロマトグラフィー処理する段階、及び/または、アミノ酸配列にタンパク質精製処理を行う段階を付け加えてもよい。
【0095】
Bpmp−72アミノ酸配列を発現できる細胞を産生するために、好ましくは本発明のポリヌクレオチド配列を組換えベクターに取込ませ、次いでこのベクターを原核性または真核性の宿主細胞に導入する。
【0096】
本発明によって提供されるベクターは典型的には、所望のアミノ酸配列をコードしているBpmp−72ポリヌクレオチド配列と、好ましくはアミノ酸コーディング配列に作動可能に連結された転写及び翻訳開始の調節配列とを含むであろう。このような発現ベクターの例は、Sambrookら,(1989)前出またはAusubelら,(2001)前出に記載されている。多くの有用なベクターが当技術分野で公知であり、このようなベクターは、Stratagene,New England Biolabs,Promega Biotechなどから得ることができる。
【0097】
発現ベクターはまた、例えば、複製起点または自律複製配列及び発現調節配列、プロモーター、エンハンサー、及び、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写終了配列、及び、mRNA安定化配列のような必要なプロセシング情報部位を含み得る。また、同一の種または類縁の種の分泌ポリペプチドからの分泌シグナルを適宜含ませてもよく、これらは、タンパク質が細胞膜を透過及び/または細胞膜に滞留できるようにしてその機能的トポロジーに到達させるかまたは細胞から分泌させる。このようなベクターは、例えばSambrookら,(1989)前出またはAusubelら,(2001)前出に記載されている当技術分野で公知の標準組換え技術を用いて作製できる。
適当なプロモーター及び他の必要なベクター配列は宿主体内で機能できるように選択されるであろう。これらの配列は、適当な場合には外膜リポタンパク質遺伝子と天然に結合している配列を含み得る。
【0098】
trp、lac及びファージプロモーター、tRNAプロモーター、解糖酵素プロモーターのようなプロモーターは原核細胞宿主中で使用し得る。有用な酵母プロモーターは、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリーレートキナーゼ、または、エノラーゼもしくはグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼのような他の解糖酵素、マルトース及びガラクトースの利用を担当する酵素などに対するプロモーター領域を含む。酵母発現に使用するための適当なベクター及びプロモーターは、Hitzemanら,欧州特許公開EP73,675Aに詳細に記載されている。適当な非天然型哺乳類プロモーターは、SV40由来の初期及び後期プロモーターまたはマウスのモロニー白血病ウイルス、トリ肉腫ウイルス、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルスまたはポリオーマに由来のプロモーターなどであろう。更に、遺伝子の多数コピーが作製されるように構築物を適当なエンハンサー及び他の発現コントロール配列用の増幅可能な遺伝子(例えば、DHFR)に接合してもよい。
【0099】
このような発現ベクターは自律複製するであろうが、当技術分野で公知の方法によって宿主細胞のゲノムに挿入することによって複製させてもよい。
【0100】
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカー、すなわちベクターによって形質転換された宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードしている遺伝子を含有している可能性が大きい。この遺伝子の存在はインサートを発現する宿主細胞だけを確実に増殖させる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒物、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートなどに耐性を与えるタンパク質、(b)栄養要求性欠損を相補するタンパク質、または、(c)複合培地から利用できない臨界栄養素を供給するタンパク質、をコードしている遺伝子であり、例えばバチルス属(Bacilli)のD−アラニンラセマーゼをコードしている遺伝子がある。適切な選択可能マーカーの選択は宿主細胞に従属し、種々の宿主細胞に適したマーカーは当技術分野で公知である。
【0101】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を含有しているベクターをin vitro転写し、得られたRNAを当技術分野で公知の方法例えば注入によって宿主細胞に導入できる。または、ベクターを当技術分野で公知の方法で宿主細胞に直接的に導入することもできる。方法は細胞宿主の種類次第で違っており、例えば、電気穿孔;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたはその他の物質を使用するトランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;感染(ベクターがレトロウイルスゲノムのような感染物質であるとき);及びその他の方法がある。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の宿主細胞内導入には、特に上記のような方法を含む当技術分野で公知の方法のいずれかを使用するとよい。
【0102】
本発明はまた、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。好ましい宿主細胞は、酵母、繊維性真菌類、植物細胞、昆虫、両生類、鳥類、細菌、哺乳類細胞及び組織培養したヒト細胞、などである。このような宿主細胞の代表例は、大腸菌、Pseudomonas、Bacillus、Streptomyces、酵母、CHO、R.1.1、B−W、L−M、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10及びSf9細胞から成るグループから選択される。
【0103】
本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、ベクターまたは他の発現ベクターに入れたBpmp−72ポリヌクレオチド配列またはその部分を適合性の原核性または真核性の宿主細胞中で発現させることによって量産できる。最も常用の原核細胞宿主は、大腸菌(Echerichia coli)の菌株であるが、枯草菌(Bacillus subtilis)またはPseudomonasのような他の原核細胞も使用し得る。常用の哺乳類宿主細胞系の例は、VERO及びHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び、W138、BHK及びCOS細胞系であるが、その他にも適当な細胞系が存在することが当業者には理解されよう。
【0104】
また、Bpmp−72アミノ酸配列のコーディング配列の機能的近傍に発現調節配列を挿入する相同的組換えイベントによってBpmp−72アミノ酸配列をより高度に発現するようにin vitro修飾したBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含有する哺乳類細胞が提供される。
【0105】
Bpmp−72アミノ酸配列に対する抗体
本発明によれば、組換えまたは化学合成によって産生されたBpmp−72アミノ酸配列及びそのフラグメントまたは他の誘導体またはアナローグ(融合タンパク質を含む)は、Bpmp−72アミノ酸配列を認識する抗体を発生させる免疫原として使用し得る。このような抗体の非限定例は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fabフラグメント及びFab発現ライブラリーである。
【0106】
分子は、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体のような免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用できるとき“抗原性”である。抗原性アミノ酸配列は、少なくとも約5個、好ましくは少なくとも約10個のアミノ酸を含有している。分子の抗原性部分は、抗体またはT細胞受容体を認識する免疫優性部分であってもよく、または、免疫感作用キャリアー分子に抗原性部分をコンジュゲートすることによって分子に抗体を発生させるために使用される部分であってもよい。抗原性である分子はそれ自体が免疫原性である必要はない。即ち、キャリアーなしで免疫応答を誘発できる必要はない。
【0107】
“抗体”は特異的エピトープに結合する抗体及びそのフラグメントのような免疫グロブリンのいずれかである。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びキメラ抗体を包含する。キメラ抗体については米国特許第4,816,397号及び第4,816,567号により詳細に記載されている。抗体という用語はまた、Fab、F(ab’)2及びF(v)のような抗体(一本鎖抗体を含む)の抗原結合部分を包含する。従って、本文中で使用した様々な文法的形態の“抗体分子”という用語は、完全形(intact)の免疫グロブリン分子及び抗体結合部位を含有している免疫グロブリン分子の免疫活性部分の双方を考察している。“抗体結合部位”は、抗原と特異的に結合するH鎖及びL鎖の可変領域及び超可変領域から成る抗体分子の構造部分である。
【0108】
代表的な抗体分子は、完全形の免疫グロブリン分子、実質的に完全形の免疫グロブリン分子、及び、免疫グロブリン分子のパラトープ含有部分、例えば当技術分野でFab、Fab’、F(ab’)2及びF(v)として公知の部分である。このような部分は本文中に記載の治療方法に好ましく使用される。
【0109】
抗体分子のFab及びF(ab’)2部分はそれぞれ、当技術分野で公知の方法によって実質的に完全形の抗体分子をパパイン及びペプシンでタンパク質分解反応させることによって作製できる。例えば、Theofilopolousらの米国特許第4,342,566号参照。Fab’抗体分子部分も当技術分野で公知であり、2つのH鎖部分を連結しているジスルフィド結合をメルカプトエタノールで還元し、次いで得られたタンパク質メルカプタンをヨードアセトアミドのような試薬でアルキル化することによってF(ab’)2部分から作製される。本発明では完全形抗体分子を含有している抗体が好ましい。
【0110】
多様な文法的形態の“モノクローナル抗体”という表現は、特定抗原と免疫反応できる抗体結合部位を一種類しか有していない抗体を意味する。従ってモノクローナル抗体は典型的には、該抗体が免疫反応するいかなる抗原に対しても単一の結合親和性を示す。従ってモノクローナル抗体は、各々が異なる抗原に免疫特異的な複数の抗体結合部位を有している抗体分子、例えば、バイスペシフィック(キメラ)モノクローナル抗体を含有し得る。
【0111】
“アジュバント”という用語は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を意味する。アジュバントは、抗原を緩やかに放出する組織デポーとして機能でき、また、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化物質として機能できる[Hoodら,Immunology,p.384,Second Ed.,Benjamin/Cummings,Menlo Park,California(1984)]。アジュバントの非存在下の抗原単独による一次抗原投与は体液性または細胞性の免疫応答の誘発に成功しないことがしばしば生じるであろう。アジュバントの非限定例は、完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバント、サポニン、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リソレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール及び潜在的に有用なヒトアジュバント例えばBCG(Bacille Calmette Guerin)及びCorynebacterium parvumである。医薬的に許容されるアジュバントが好ましい。
【0112】
Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナローグに対するポリクローナル抗体を産生するために当技術分野で公知の様々な手順を使用し得る。抗体産生のためには、Bpmp−72アミノ酸配列またはその誘導体(例えば、フラグメントまたは融合タンパク質)を注射することによって、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを非限定例とする種々の宿主動物を免疫する。1つの実施態様では、Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを免疫原性キャリアー、例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートさせる。宿主の種次第では、免疫応答を増強するために、フロインドアジュバント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リソレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールを非限定例とする種々のアジュバント及びBCG(bacille Calmette−Guerin)やCorynebacterium parvumなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを使用し得る。
【0113】
Bpmp−72アミノ酸配列、または、そのフラグメント、アナローグもしくは誘導体に対するモノクローナル抗体を作製するためには、連続培養細胞系によって抗体分子を産生させる技術のいずれかを使用し得る。これらの非限定例は、Kohlerら,(1975)Nature,256:495−497によって最初に開発されたハイブリドーマ技術、トライオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術[Kozborら,(1983)Immunology Today,4:72]、及び、ヒトモノクローナル抗体を産生させるEBVハイブリドーマ技術[Coleら,(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp.77−96,Alan R.Liss,Inc.]などである。不死の抗体産生細胞系は、腫瘍原性DNAによるBリンパ球の直接形質転換またはエプスタイン・バールウイルスによるトランスフェクションのような融合以外の技術によって創製できる。例えば、米国特許第4,341,761号、第4,399,121号、第4,427,783号、第4,444,887号、第4,451,570号、第4,466,917号、第4,472,500号、第4,491,632号及び第4,493,890号を参照するとよい。
【0114】
本発明の追加の実施態様では、最新技術を使用してモノクローナル抗体を無菌動物で産生できる。本発明によれば、ニワトリまたはブタの抗体を使用でき、これらの抗体は、ニワトリもしくはブタのハイブリドーマを使用することによってまたはB細胞をEBVウイルスでin vitro形質転換することによって得ることができる。実際、本発明によれば、Bpmp−72アミノ酸配列に特異的なマウス抗体分子に由来の遺伝子を適当な生物活性の抗体分子に由来の遺伝子とスプライシングすることによって“キメラ抗体”を産生するために開発された技術[Morrisonら,(1964)J.Bacteriol.,159−870;Neubergerら,(1984)Nature,312:604−608;Takedaら,(1985)Nature,314:42−454]を使用できる。このような抗体は本発明の範囲内である。腸の疾患または障害(前出)の治療にはこのようなキメラ抗体の使用が好ましい。何故ならばこのような抗体はそれ自体の免疫応答、特にアレルギー性応答を誘発することが異種間抗体よりもはるかに少ないからである。
【0115】
本発明によれば、一本鎖抗体産生用に記載された技術(米国特許第4,946,778号)をBpmp−72アミノ酸配列特異的一本鎖抗体の産生に応用できる。本発明の追加の実施態様は、Fab発現ライブラリー構築用に記載された技術[Huseら,(1989)Science,246:1275−1281]を利用して、Bpmp−72アミノ酸配列またはその誘導体もしくはアナローグに対して所望の特異性を有しているモノクローナルFabフラグメントを迅速かつ容易に同定できる。
【0116】
抗体分子のイディオタイプを含有している抗体フラグメントは公知の技術によって作製できる。このようなフラグメントの非限定例は例えば、抗体分子のペプシン消化によって生じるF(ab’)2フラグメント、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生じるFab’ フラグメント、及び、抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって生じるFabフラグメントである。
【0117】
抗体産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当技術分野で公知の技術、例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA、“サンドイッチ”イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位体ラベルの使用)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体固定アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどによって行うことができる。1つの実施態様では、第一抗体のラベルを検出することによって抗体結合を検出する。別の実施態様では、第一抗体への第二抗体または試薬の結合を検出することによって第一抗体を検出する。また別の実施態様では、第二抗体を標識する。イムノアッセイ中の結合を検出するために多くの手段が当技術分野で公知であり、これらは本発明の範囲内である。例えば、Bpmp−72アミノ酸配列の特異的エピトープを認識する抗体を選択するためには、形成されたハイブリドーマを試験して、該エピトープを含有しているBpmp−72アミノ酸配列フラグメントに結合する産物の有無を検査すればよい。特定の動物種からBpmp−72アミノ酸配列に特異的な抗体を選択するためには、該動物種の細胞によって発現されているかまたは細胞から単離されたBpmp−72アミノ酸配列への陽性結合に基づいて選択できる。
【0118】
診断
別の実施態様によれば、本発明は、Bpmp−72アミノ酸配列及び/または該配列に由来の抗体及び/またはBpmp−72ポリヌクレオチド配列を使用する、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の存在を検出する診断及び予後観察方法を提供する。
【0119】
診断及び予後観察方法は一般に、ニワトリまたはブタのような動物から得られた生物サンプルを使用して行う。“サンプル”は、動物から採取したB.pilosicoliのポリヌクレオチドまたはポリペプチドのようなBrachyspira種を含有する疑いのある組織または流体のサンプルを意味しており、その非限定例は、血漿、血清、糞便サンプル、組織及びin vitro細胞培養成分のサンプルである。
【0120】
ポリペプチド/抗体に基づく診断
本発明はサンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を検出する方法を提供する。該方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列を含有する疑いのあるサンプルを、抗体とBpmp−72アミノ酸配列とを含む反応複合体が形成できる条件下でBpmp−72アミノ酸配列に特異的に結合する抗体(好ましくは固体支持体に結合されている)に接触させる段階と、(b)サンプル中の抗体とBpmp−72アミノ酸配列とを含む反応複合体の形成を検出する段階とを含み、反応複合体の検出がサンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を示す指標となる。
【0121】
好ましくは、この方法に使用される抗体が、アフィニティ精製ポリクローナル抗体、より好ましくはmAbに由来する。更に、本発明に使用される抗体分子はFab、Fab’、F(ab’)2もしくはF(v)部分または完全抗体分子の形態であるのが好ましい。
【0122】
上記方法に基づくB.pilosicoliのようなBrachyspira種の特に好ましい検出方法は、ELISA、ラジオイムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ並びにモノクローナル及び/またはポリクローナル抗体を使用するサンドイッチアッセイのような免疫酵素アッセイである。
【0123】
このような手順のうちでも特に有用な3つの手順では、検出可能ラベルで標識されたBpmp−72アミノ酸配列(またはそのフラグメント)、検出可能ラベルで標識された抗体Ab1、または、検出可能ラベルで標識された抗体Ab2を利用する。この手順を以下の等式によって要約する。式中の星印は、粒子が標識されていることを表し、“AA”はBpmp−72アミノ酸配列を表す。
A.AA*+Ab1=AA*Ab1
B.AA+Ab1*=AAAb1*
C.AA+Ab1+Ab2*=Ab1AAAb2*
当業者はこのような手順及びそれらの使用に精通しており、従って、本発明の範囲内で使用し得る。“競合”手順である手順Aは米国特許第3,654,090号及び第3,850,752号に記載されている。手順Bは公知の競合アッセイ技術の代表である。手順Cは“サンドイッチ”手順であり、米国特許RE31.006及び第4,016,043号に記載されている。“二重抗体”または“DASP”手順のようなまた別の手順も知られている。
【0124】
どの場合にも、Bpmp−72アミノ酸配列が1つまたは複数の抗体または結合相手と共に複合体を形成し、複合体の一方の構成要素は検出可能ラベルで標識されている。複合体が形成されたという事実及び所望の場合にはその量は、ラベル検出に応用できる公知の方法によって判定できる。
【0125】
上記の記載より、Ab2の特性がAb1と反応することであるというのは理解されよう。その理由は、1つの哺乳動物種で感作されたAb1が別の種で抗体Ab2を感作する抗原として使用されるからである。例えば、抗原としてウサギ抗体を使用し、ヤギの体内でAb2を感作する。従ってAb2はヤギで感作された抗ウサギ抗体であろう。本明細書及び特許請求の範囲では、Ab1を第一抗体と呼び、Ab2を第二抗体または抗Ab1抗体と呼ぶ。
これらの研究で最も多く使用されたラベルは放射性元素、酵素、紫外光線に照射されると蛍光を発する化学物質、などである。
【0126】
複数の蛍光材料が公知であり、ラベルとして使用できる。これらの例は、フルオレセイン、ローダミン及びオーラミンを含む。特定の検出材料はヤギに産生させイソチオシアナートによってフルオレセインにコンジュゲートした抗ウサギ抗体である。
【0127】
また、Bpmp−72アミノ酸配列またはそれらの結合相手を放射性元素または酵素で標識してもよい。放射性ラベルは現在入手可能な計測手段のいずれかによって検出できる。好ましい同位体は、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I及び188Reから選択するとよい。
【0128】
酵素ラベルも有用であり、現在利用されている比色法、分光光度法、蛍光分光光度法、電流測定法またはガス測定法のいずれかによって検出できる。酵素を、カルボジイミド、ジイソシアナート、グルタルアルデヒドなどの架橋分子と反応させることによって選択された粒子にコンジュゲートする。これらの手順で使用できる多くの酵素が公知であり、利用できる。好ましい酵素は、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼである。代替的標識材料及び方法の開示例として米国特許第3,654,090号、第3,850,752号及び第4,016,043号を挙げることができる。
【0129】
本発明はまた、生物サンプル中の腸スピロヘーター感染症の抗体を検出する方法を提供する。該方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを用意する段階と、(b)生物サンプルを該アミノ酸配列と共に抗体抗原複合体が形成できる条件下でインキュベートする段階と、(c)該アミノ酸配列を含む抗体抗原複合体が形成された否かを判断する段階とを含む。
【0130】
本発明の別の実施態様では、生物サンプル中のBpmp−72抗体のレベルをin vitro評価する方法が提供される。該方法は、(a)上述の方法に従って生物サンプル中の反応複合体の形成を検出する段階と、(b)形成された反応複合体の量を評価する段階とを含み、この反応複合体の量が生物サンプル中のBpmp−72抗体のレベルに対応する。
【0131】
更に、動物宿主体内のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患の治療処置をin vitroモニターする方法が提供される。該方法は、このような治療処置を受けている動物宿主から種々の時点に採取した一連の生物サンプル中のBpmp−72抗体のレベルを評価する段階を含む。
【0132】
核酸に基づく診断
本発明は更に、生物サンプル中のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の有無を検出する方法を提供する。該方法は、(a)適正なハイブリダイズ条件下で生物サンプルを本発明のBpmp−72ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドプローブまたはプライマーに接触させる段階と、(b)プローブまたはプライマーとサンプル中の核酸との間に形成された二重鎖を検出する段階とを含む。
【0133】
本発明の1つの実施態様によれば、B.pilosicoliのようなBrachyspira種の検出は、公知の技術を使用して生物サンプルからBpmp−72ポリヌクレオチド配列を直接的に増幅し、次いでBpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出することによって行う。
【0134】
本発明の1つの形態では、ターゲット核酸配列をPCRによって増幅し、次いで上述の特異的方法のいずれかを使用して検出する。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出する他の有用な診断技術の非限定例は、(1)対立遺伝子特異的PCR、(2)一本鎖コンホメーション解析、(3)変性用勾配ゲル電気泳動、(4)RNアーゼ保護アッセイ、(5)大腸菌mutSタンパク質のようなヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質の使用、(6)対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、及び、(7)蛍光in situハイブリダイゼーションなどである。
【0135】
上記方法に加えて、慣用のプローブテクノロジーによってBpmp−72ポリヌクレオチド配列を検出してもよい。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出するためにプローブを使用するとき、所望の場合には血液または血清のような分析すべき生物サンプルに核酸抽出処理を施す。サンプルのポリヌクレオチド配列を様々なやり方、例えば、変性、制限消化、電気泳動またはドットブロット法で処理してターゲット配列の検出が容易になるように準備する。サンプルのポリヌクレオチド配列のターゲット領域は通常は、プローブのターゲティング配列とハイブリッドを形成するために少なくとも部分的に一本鎖でなければならない。配列が天然に一本鎖であるときは変性が不要であろう。しかしながら、配列が二重鎖であるならば、配列を変性することが必要であろう。変性は当技術分野で公知の種々の技術によって行うことができる。
【0136】
サンプルポリヌクレオチド配列及びプローブをプローブ中のターゲット配列とサンプル中の推定Bpmp−72ポリヌクレオチド配列との安定なハイブリッド形成が促進される条件下でインキュベートする。擬陽性を防止するために好ましくは高緊縮性条件を使用する。ハイブリッドが得られたならば、得られたハイブリッドの検出を一般には標識プローブを使用して行う。あるいは、プローブを標識せず、標識されているリガンドとの特異的結合によって直接的または間接的に検出することも可能である。適当なラベル並びにプローブ及びリガンドの標識方法は当技術分野で公知であり、例えば、公知の方法(例えば、ニックトランスレーション、ランダムプライミングまたはキナーゼ処理)によって取込ませる放射性ラベル、ビオチン、蛍光基、化学発光基(例えば、ジオキセタン、特に励起されたジオキセタン)、酵素、抗体などがある。この基礎的スキームの変更は当業者に公知であり、検出すべきハイブリッドを外来材料から分離し易くするような変更及び/または標識部分からのシグナルを増幅するような変更がある。
【0137】
また、本発明の核酸プローブアッセイにBpmp−72ポリヌクレオチド配列を検出できる核酸プローブカクテルを使用することも本発明の範囲内で考察できる。従って、1つの例では、細胞サンプル中のBpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出するために、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列に相補的な2つ以上のプローブを使用する。具体的には、異なるプローブの数は2、3または5種類の異なる核酸プローブ配列である。
【0138】
核酸アレイ−“DNAチップ”テクノロジー
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列(好ましくはプローブの形態)はまた、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種を検出するために固相支持体に固定してもよい。あるいは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列が、B.pilosicoliのようなBrachyspira種から複数の異なる遺伝子を同時に検出するために使用できるDNA分子ライブラリーの一部を形成してもよい。本発明の別の代替形態では、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を他のポリヌクレオチド配列(例えば、他の細菌またはウイルスに由来)と共に固体支持体に固定し、固体支持体に結合したB.pilosicoliのようなBrachyspira種及び/または他のポリヌクレオチド配列の存在を同定できるようにしてもよい。
【0139】
DNA分子の固定ライブラリーを作製する技術は当技術分野の文献に記載されている。一般に、従来技術の大抵の方法は、例えば固体基板の種々の不連続位置に種々の配列の順列を形成するマスキング技術を使用した一本鎖核酸分子ライブラリーの合成を記載している。米国特許第5,837,832号は、超大規模集積テクノロジーに基づいてシリコン基板に固定したDNAアレイを製造する改良方法を記載している。具体的には米国特許第5,837,832号は、基板の空間的に規定された位置に特定のプローブセットを合成するための“タイリング”と呼ばれる戦略を記載しており、これは本発明の固定DNAライブラリーを作製するために使用できる技術である。米国特許第5,837,832号はまた、同じく使用可能なもっと初期の技術の参考文献を提供している。このように、ポリヌクレオチド配列プローブは基板の表面でin situに合成し得る。
【0140】
あるいは、固体基板から離れて一本鎖分子を合成し、予め合成した配列の各々を固体基板の不連続位置に付着させてもよい。例えば、ピンまたは圧電デバイスを備えたロボットデバイスを使用してポリヌクレオチド配列を基板に直接的にプリントしてもよい。
【0141】
ライブラリー配列は典型的には、固体基板上のまたは固体基板中の不連続領域に固定される。基板は、基板の内部に固定することが可能な多孔質基板でもよく、または、実質的に非多孔質でもよく、その場合には、ライブラリー配列が典型的には基板の表面に固定される。固体基板はポリペプチドが直接的または間接的に結合できるいかなる材料から製造されてもよい。適当な固体基板の例は、平坦ガラス、シリコンウェーハ、マイカ、セラミックス、及び、例えばポリスチレン、ポリメタクリレートなどのプラスチックのような有機ポリマーである。また、ニトロセルロース膜またはナイロン膜のような半透膜を使用することも可能であり、これらは広く出回っている。半透膜をガラスのようなもっと強固な固体表面に取り付けてもよい。場合によっては金、白金または他の遷移金属のような金属層で表面をコートしてもよい。適当な固体基板の特定例は、市販のBioCoreTMチップ(Pharmacia Biosensors)である。
【0142】
好ましくは固体基板が一般には剛性または半剛性の表面をもつ材料である。好ましい実施態様では、基板の少なくとも1つの表面が実質的に平坦であろうが、いくつかの実施態様では、異なるポリマー用の合成領域を例えば隆起領域または腐食溝などによって物理的に分離するのが望ましいこともあろう。また、固体基板が50−100μmの不連続区域で高密度のDNA配列付着に適しているのが好ましい。この場合、10000〜40000ドット/cm−2の密度を与える。
【0143】
固体基板をセクションに分割するのが便利である。これは、ホトエッチングのような技術によって、または、疎水性インキ例えばテフロン基剤のインキ(Cel−line,USA)を塗布することによって行うとよい。
【0144】
ライブラリーの異なる構成員の各々を配置する不連続位置は例えば円形、長方形、楕円形、楔形などの適当な形状を有し得る。
ポリヌクレオチド配列を基板に付着させるには共有結合または非共有結合を利用し得る。ポリヌクレオチド配列は、ライブラリー配列が結合している分子の層を介して基板に付着し得る。例えば、ポリヌクレオチド配列をビオチンで標識し、基板をアビジン及び/またはストレプトアビジンでコートする。ビオチン化ポリヌクレオチド配列の使用によって得られる利点は、固体基板への結合効率を容易に測定できることである。ポリヌクレオチド配列はある種の固体基板には結合し難いので、固体基板(例えばガラスの場合)と核酸配列との間に化学的インターフェースを設けることがしばしば必要である。適当な化学的インターフェースの例はヘキサエチレングリコールである。別の例はポリリシンでコートしたガラスの使用である。この場合ポリリシンはアフィニティリガンドを導入するために標準手順によって化学的に修飾される。カップリング剤を使用して固体基板の表面に分子を付着させる別の方法が当技術分野で公知である。例えば、国際特許WO98/49557参照。
【0145】
相補的ポリヌクレオチド配列が固定核酸ライブラリーに結合したことは、固定したポリヌクレオチド配列の光学特性値の変化(即ち、臭化エチジウムの使用)またはフルオロホアで標識したポリペプチドのような標識核酸の使用などの種々の手段によって判断できる。ラベルの使用が不要な他の検出技術は、音響光学法、反射測定法、偏光解析法、表面プラスモン共鳴法(国際特許WO97/49989参照)のような光学技術である。
【0146】
従って本発明は、少なくとも1種類の本発明のポリヌクレオチド、好ましくは異なる2種類以上の本発明のポリヌクレオチド配列が固定された固体基板を提供する。好ましい実施態様では固体基板が更に、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列以外の遺伝子に由来のポリヌクレオチド配列を含む。
【0147】
治療的使用
本発明はまた予防薬または治療薬として使用できる。これらはニワトリ及びブタのような動物の体内の体液性及び細胞性応答を刺激し、これによってB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種のコロニー化を防御する目的で使用し得る。B.pilosicoliのようなBrachyspira種の自然感染は、Bpmp−72に対する循環抗体価を誘発する。従って、Bpmp−72アミノ酸配列またはその部分は、腸スピロヘーター感染症を防御するために全身的または経口的に投与される予防薬または治療薬の基剤を形成する可能性を有している。
【0148】
従って1つの実施態様で本発明は、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合された治療有効量でBpmp−72アミノ酸配列もしくはそのフラグメント、または、該アミノ酸配列に結合する抗体もしくは本文中に記載のポリヌクレオチド配列を提供する。
本文中に使用した“治療有効量”という表現は、動物宿主の活性、機能及び応答の臨床的に有意な不全を少なくとも約15%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%軽減し、最も好ましくはこのような不全を防止するために十分な量を意味する。あるいは、治療有効量は、動物宿主の状態の臨床的に有意な改善を生じさせるために十分な量を意味する。
【0149】
“医薬的に許容される”という表現は、生理的に寛容であり、典型的には、動物に投与されたときにアレルギー反応または同様の不都合な反応、例えば胃の不調などを生じさせない分子完全体及び組成物を表す。“担体”という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒介物を表す。このような医薬担体は、滅菌液体、例えば水、及び、石油、動物もしくは植物に由来するかまたは合成した油であり、ピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などがある。水または生理的塩類溶液、デキストロース及びグリセロールの水溶液が、特に注射液用担体として好ましく使用される。適当な医薬担体は、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,(1990)に記載されている。
【0150】
本発明のより特定的な形態では、治療有効量のBpmp−72アミノ酸配列またはそのアナローグ、フラグメントもしくは誘導産物、または、これらに対する抗体を、医薬的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/または担体と共に含む医薬組成物が提供される。また、ヒアルロン酸を用いてもよい。このような組成物は、種々のバッファ含量(例えば、トリス−HCl、アセテート、ホスフェート)、pH及びイオン強度の希釈剤と、界面活性剤及び可溶化剤(例えば、トゥイーン80、Polysorbate80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ亜硫酸水素ナトリウム)、保存剤(例えば、チメルソール、ベンジルアルコール)のような添加剤及び増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含む。材料はポリ乳酸、ポリグリコール酸などのような高分子化合物の微粒状調製物に組み込んでもよく、または、リポソームに組み込んでもよい。また、ヒアルロン酸を用いてもよい。このような組成物は、本発明のタンパク質及び誘導体の物理的状態、安定性、in vivo放出速度、及び、in vivoクリアランス速度に影響を与える。例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435−1712頁参照。該文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。組成物は液体形態に調製してもよく、または、凍結乾燥形態のような乾燥粉末として調製してもよい。
【0151】
投与
本発明に従って提供される医薬組成物が当技術分野で公知のいずれかの手段によって投与できることは理解されよう。好ましくは、投与すべき医薬組成物を、注射、経口、または、肺、鼻腔経路で投与する。Bpmp−72アミノ酸配列または該配列に由来の抗体はより好ましくは静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内または皮下への投与経路によって運搬される。あるいは、適正に配合されたBpmp−72アミノ酸配列または該配列に由来の抗体は鼻腔または経口投与によって投与できる。
【0152】
ポリヌクレオチド主体の治療方法
本発明はまた、B.pilosicoliに関連する疾患を変調する医薬を製造するために本発明のポリヌクレオチド配列、並びに、本発明のBpmp−72アミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチド配列にハイブリダイズ可能なアンチセンス及びリボザイムポリヌクレオチド配列を使用することについて述べている。
【0153】
治療方法に使用するアンチセンス構築物またはリボザイムをコードしているポリヌクレオチド配列は望ましくは無被覆の核酸構築物として直接的に投与される。細菌細胞による無被覆核酸構築物の取込みはいくつかの公知のトランスフェクション技術、例えば、トランスフェクション補佐物質の使用を含む技術によって増進される。これらの補佐物質の例は、カチオン性物質(例えば、リン酸カルシウム及びDEAE−デキストラン)及びリポフェクタント(例えば、lipofectamTM及びtransfectamTM)である。典型的には、核酸構築物をトランスフェクション補佐物質と混合して組成物を製造する。
【0154】
あるいは、アンチセンス構築物またはリボザイムを医薬的に許容される担体または希釈剤と合せて医薬組成物を製造してもよい。適当な担体及び希釈剤は、例えば、リン酸塩緩衝生理的塩類溶液のような等張性塩類溶液である。非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮的に投与するように組成物を配合し得る。
【0155】
記載の投与経路は単なる指針であり、当業者は特定の動物及び状態に最適の投与経路及び薬用量を容易に決定できるであろう。
【0156】
薬物スクリーニングアッセイ
本発明はまた、Bpmp−72アミノ酸配列に結合する物質を同定するための適当なアッセイを提供する。更に、Bpmp−72アミノ酸配列を妨害する物質を同定するための適当なアッセイが提供される。また、in vitro予備アッセイで同定された候補物質の完全形細胞に対する効果を全細胞アッセイで試験するアッセイも提供される。
【0157】
1つのタイプのアッセイでは、Bpmp−72アミノ酸配列に結合する物質を同定するために、固体支持体に固定させたBpmp−72アミノ酸配列を非固定の候補物質に接触させ、Bpmp−72アミノ酸配列と候補物質との互いの結合の有無及び/または結合の程度を定量する段階を含む。あるいは、候補物質を固定し、Bpmp−72アミノ酸配列を非固定にしてもよい。
【0158】
好ましい1つのアッセイ方法では、Bpmp−72アミノ酸配列をアガロースビーズのようなビーズに固定する。この方法は典型的には、細菌、酵母またはより高等な真核細胞系中で成分をGST−融合タンパク質として発現させ、グルタチオン−アガロースビーズを使用して粗細胞抽出物からGST−融合タンパク質を精製する。次に、固定Bpmp−72アミノ酸配列に対する候補物質の結合を定量する。このタイプのアッセイはGSTプルダウンアッセイとして当技術分野で知られている。この場合にも、候補物質を固定し、Bpmp−72アミノ酸配列を非固定にしてもよい。
【0159】
また、このタイプのアッセイは、例えばNi−NTAアガロース及びヘキサヒスチジン標識成分といった、成分の一つを固定するための異なるアフィニティ精製系を使用して行うことも可能である。
【0160】
候補物質へのBpmp−72アミノ酸配列の結合は、当技術分野に公知の多様な方法によって定量し得る。例えば、非固定成分を標識する(例えば、放射性ラベル、エピトープタグ、または、酵素−抗体複合体)。あるいは、免疫検出技術によって結合を定量してもよい。例えば、反応混合物をウェスタンブロット処理し、非固定成分を検出する抗体でブロットをプローブする。ELISA法を使用してもよい。
【0161】
候補物質は典型的には、1−1000nmol/ml、より好ましく1−100nmol/mlの最終濃度まで添加する。抗体の場合、使用される最終濃度は典型的には100−500μg/ml、より好ましくは200−300μg/mlである。
【0162】
従って本発明は、薬物をBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントに接触させ、(i)該薬物とBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントとの間の複合体の存在、または、(ii)Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントとリガンドとの間の複合体の存在、を当技術分野で公知の方法によって検定する段階を含む薬物のスクリーニング方法を提供する。このような競合結合アッセイでは典型的にはBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを標識する。タンパク質:タンパク質複合体中に存在するBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントから遊離Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを分離すると、遊離(即ち、複合体を形成していない)ラベルの量が、Bpmp−72アミノ酸配列に対する被験薬物の結合またはBpmp−72アミノ酸配列:リガンド結合に対する被験薬物による妨害をそれぞれ表す尺度となる。
【0163】
別の薬物スクリーニング技術は、Bpmp−72アミノ酸配列に適当な結合アフィニティを有している化合物の高スループットスクリーニングを提供する。これは1984年9月13日公開のGeysenのPCT出願公開WO84/03564に詳細に記載されている。簡単に説明すると、多数の異なる小ペプチド試験化合物をプラスチックピンまたは他の何らかの表面のような固体基板上に合成する。ペプチド試験化合物をBpmp−72アミノ酸配列と反応させて洗浄する。次いで、結合したBpmp−72アミノ酸配列を当技術分野で公知の方法で検出する。
【0164】
本発明はまた、Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントに対する結合に関して、Bpmp−72アミノ酸配列に特異的に結合し得る抗体と試験化合物とを競合させる競合的薬物スクリーニングアッセイの使用を考察する。この方法では、抗体を使用して、Bpmp−72アミノ酸配列の1つまたは複数の抗原決定基を共有するペプチドの存在を検出することができる。
【0165】
キット
本発明はまた、B.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染した疑いのある動物をスクリーニングするため、または、動物がB.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染していることを確認するためのキットを提供する。該キットは、適当な容器に包装されたBpmp−72ポリヌクレオチド配列に相補的な少なくとも1つのポリヌクレオチド配列をその使用説明書と共に含んでいる。
【0166】
本発明の別の実施態様では、感染疑惑のある動物体内のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の有無を判定するため、または、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の感染を定量的に測定するために専門家の使用に好適なキットが作製される。上述の試験技術と同様に、このようなキットの1つのクラスは、標識Bpmp−72アミノ酸配列またはその結合相手、例えば該配列に特異的な抗体を少なくとも含み、また、例えば、“競合”、“サンドイッチ”、“DASP”などの選択された方法による指示を含むであろう。キットはまた、バッファ、安定剤などのような周辺試薬を含有し得る。
【0167】
従って、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の存在を証明するための検査キットを作製し得る。キットは、
(a)本発明のBpmp−72アミノ酸配列またはその特異的結合相手を検出可能ラベルに直接的または間接的に付着させることによって得られた少なくとも1つの標識された免疫化学的に反応性の所定量の成分と、
(b)他の試薬類と、
(c)該キットの使用指示と、
を含む。
【0168】
より詳細には、診断用検査キットが、
(a)イムノソルベントを形成するために一般に固相に結合されるかあるいは適当なタグに結合された既知量の上述のようなBpmp−72アミノ酸配列(またはその結合相手)、または、複数のこのような目的物質と、
(b)必要ならば他の試薬類と、
(c)該検査キットの使用指示と、
を含む。
【0169】
変形実施態様では、所定のプロトコル(例えば、“競合”、“サンドイッチ”、“二重抗体”、など)に従って操作する検査キットを作製し上述の目的に使用する。該検査キットは、
(a)Bpmp−72アミノ酸配列を検出可能ラベルに結合させることによって得られた標識成分と、
(b)1種または複数の追加の免疫化学試薬と、
(c)Bpmp−72アミノ酸配列とその特異的結合相手との間の免疫化学反応の1つまたは複数の成分を検出及び/または定量するプロトコルの実行指示と、
を含み、
前記(b)の免疫化学試薬の少なくとも1つが、
(i)標識成分(a)に結合し得るリガンド、
(ii)標識成分(a)の結合相手に結合し得るリガンド、
(iii)定量すべき成分の少なくとも1つに結合し得るリガンド、または、
(iv)定量すべき成分の少なくとも1つの少なくとも1つの結合相手に結合し得るリガンド
から成るグループから選択されたリガンドまたは固定リガンドである。
【0170】
本発明の最良実施方法
本発明のその他の特徴を以下の非限定実施例でより十分に説明する。しかしながら、この詳細な記載は本発明を例示する目的のみで含まれることを理解されたい。上記の広範囲な発明の開示を制限すると理解してはならない。
【0171】
以下の実施例で明白に記載していない分子クローニング、免疫学及びタンパク質化学の方法は文献に報告されており、当技術分野に公知である。当技術分野に周知の慣用の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術を記載した概説書は、例えば、 Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);Glover ed., DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I & 11,MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.(1985);及びAusubel,F., Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Seidman,J.G.,Smith,J.A., Struhl,K.Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Associates/Wiley Intersciences, New York (2001)、などである。
【実施例1】
【0172】
Brachyspira pilosicoliの72kDa外膜タンパク質をコードしている遺伝子の同定及びキャラクタリゼーション
方法
スクリーニング用ポリクローナル抗体(AHPS)の産生
Brachyspira hyodysenteriae B78T、Brachyspira intermedia PWS/AT、Brachyspira innocens B256T、Brachyspira murdochii 56−150T、Brachyspira aalborgi 513T及び大腸菌JM109の1012細胞を含有している細胞懸濁液(9.0ml)に、Brachyspira pilosicoli菌株1648で超免疫したブタの血清(1.0ml)を添加した。連続完全撹拌(continuous end−to−end mixing)を伴ってスラリーを4℃で一夜インキュベートした。細胞に吸収された抗体を、4℃、5,000×gで20分間遠心することによって除去した。上清を取り出して、B.hyodysenteriae B78T、B.intermedia PWS/AT、B.innocens B256T、B.murdochii 56−150T、Br.aalborgi 513T及び大腸菌JM109の1012細胞を含有している混合細胞ペレットをこの上清に再懸濁させた。連続完全撹拌を伴ってスラリーを4℃で一夜インキュベートした。細胞に吸収された抗体を、4℃、5,000×gで20分間遠心することによって再度除去した。吸収プロセスを更に2回繰り返した。最終吸収プロセス後、吸収された超免疫ブタ血清(AHPS)をアリコート(50μl)に分け、−80℃で保存した。
【0173】
ゲノムライブラリーのスクリーニング
AB.pilosicoli P43/6/78ゲノムライブラリーは、部分的に制限した高分子量DNA(2−3kb)をラムダバクテリオファージのアームに結合し、GigapackII抽出物(Stratagene)を使用してファージ粒子をパッケージすることによって作製した。得られたファージライブラリーを大腸菌中で増幅し、標準プラーク−リフト法を使用して希釈AHPSでイムノスクリーニングした。3回のイムノ−スクリーニングサイクル後に4つのクローン(AHP1−4と命名)をプラスミドとして切り出した。
【0174】
大腸菌中の72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)をコードしている遺伝子の発現
組換えプラスミドを内包した大腸菌クローンを、カナマイシン(50mg/L)を補充したLB寒天プレートに画線培養し、37℃で一夜インキュベートした。単一コロニーを使用して、カナマイシン(50mg/l)、PMSF(1mM)及びIPTG(1mM)を補充したLBブロス(10ml)に接種した。ブロス培養物を振盪しながら37℃で12時間インキュベートした。各培養物のアリコート(1.0ml)を2,500×gで15分間遠心し、3回洗浄した。洗浄プロセスでは、細胞ペレットをリン酸塩緩衝生理的塩類溶液(PBS)(1ml)に再懸濁させ、2,500×gで15分間遠心した。洗浄した細胞ペレットをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びウェスタンブロット法に備えてPBS(100μl)に再懸濁させた。
【0175】
Bpmp−72タンパク質のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
タンパク質のSDS−PAGE解析には不連続トリス−グリシンバッファ系を使用する電気泳動分離を用いた。タンパク質サンプルのアリコート(30μl)を10μlの4×サンプル処理バッファ(250mMのトリス−HCl(pH6.0)、8%(w/v)のSDS、200mMのDTT、40%(v/v)のグリセロール及び0.04%(w/v)のブロモフェノールブルー)と混合した。サンプル(10μl)をゲルのウェルに充填する直前にサンプルを5分間煮沸した。ゲルは積層ゲル(125mMのトリス−HCl pH6.8、4%w/vのアクリルアミド、0.15%w/vのビス−アクリルアミド及び0.1%w/vのSDS)と分離ゲル(375mMのトリス−HCl pH8.8、4%w/vのアクリルアミド、0.31%w/vのビス−アクリルアミド及び0.1%w/vのSDS)から構成した。0.1%(v/v)のTEMED及び0.05%(w/v)の新しく調製した硫酸アンモニウム溶液を添加することによってこれらのゲルを重合させ、mini−Protean二層スラブセル(Bio−Rad)に流し込んだ。サンプルを室温(RT)、150Vでブロモフェノールブルーの色素の最前部がゲルの底部に到達するまで処理した。分子量の推定値を得るために予め染色した分子量標準をサンプルと並列に電気泳動にかけた。電気泳動後直ちにゲルをウェスタンブロット用のニトロセルロース膜に電気転移させた。
【0176】
ウェスタンブロット分析
Towbin転移バッファ系を使用し、SDS−PAGEゲルから分離したタンパク質をニトロセルロース膜に電気泳動転移させた。電気泳動後、転移バッファ(25mMのトリス、192mMのグリシン、20%v/vのメタノール,pH8.3)中でゲルを15分間平衡させた。mini−Proteanトランスブロット装置(Bio−Rad)を使用してゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜(Promega)に移した。ゲルホルダーを製造業者の指示通りに組立てた後、30V、4℃で電気泳動転移を一夜行った。分離されたタンパク質を含んでいる新しく転移されたニトロセルロース膜を、5%(w/v)の脱脂粉乳を含有している10mlのトリス緩衝生理的塩類溶液(TBS)によって室温で1時間ブロックした。膜をTBS(0.1%(v/v)トゥイーン20(TBST))で洗浄し、次いで10mLのAHPS(TBSTで5,000倍に希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。TBSTで5分間ずつ3回洗浄した後、膜をTBSTで5,000倍に希釈した10mLのヤギ抗ブタIgG(完全分子)−HRPと共に室温で1時間インキュベートした。10mLのDAB基質溶液(0.5mg/mlの3,3’−ジアミノベンジジン、0.003%w/vの過酸化水素、TBS)で膜を発色させた。膜を蒸留水で洗浄することによって発色反応を停止させた。次に膜を乾燥し、プレゼンテーション用に調べた。
【0177】
B.pilosicoliインサートの配列決定
ABI 373A DNAシークエンサー(PE Applied Biosystems)を使用して直接的にB.pilosicoliのゲノムインサートを配列決定するためにプラスミドAHP1を選択した。QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を製造業者の指示通りに使用して大腸菌細胞からファージミドを精製した。初期インサート配列は、市販のT3及びT7オリゴヌクレオチドを使用しこれらをインサートの両端に隣接するベクター領域にアニーリングすることによって得られた。残りのオリゴヌクレオチドは、上流インサート配列の3’−OH端に基づいて設計した(表2)。“TA”は、オリゴヌクレオチドを使用するPCRの最適なアニーリング温度を表す。
【0178】
【表2】
【0179】
各配列決定反応は、ファージミド(300ng)、プライマー(4pmol)、及び、ABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)のアリコート(10μl)中で行った。サイクリング条件は、まずは変性段階を96℃で2分間行った。次いで、96℃で10秒の変性、プライマーの溶融温度(表2)で5秒のアニーリング、及び、60℃で4分間のプライマー伸長を25サイクルとした。120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)を含有する95%(v/v)エタノール溶液で沈殿させることによって配列決定産物から残留ダイターミネーターを除去し、真空乾燥した。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。
【0180】
Bpmp−72配列の完成
配列決定ベクターへのゲノムDNAフラグメントのクローニング
B.pilosicoli P43/6/78から精製した染色体DNAをHinDIIIで完全消化した。簡単に説明すると、染色体DNA(2μg)とpTrcHisプラスミド(1μg)(Invitrogen)とを別々に、20UのHinDIII(New England Biolabs)を含有している1×HinDIIIバッファ中で37℃で一夜インキュベートした。UltraClean PCR Clean−up Kit(Mo Bio Laboratories)を製造業者の指示通りに使用して制限産物を精製した。制限したB.pilosicoliゲノムDNA(100ng)を、直鎖化したpTrcHisベクターのアリコート(100ng)と共に1UのT4 DNAリガーゼ(Promega)を含有している30mMのTris−HCI(pH 7.8)、10mMのMgCl2、10mMのDTT及び1mMのATPに入れて14℃で16時間インキュベートした。このライゲーション反応の生成物をpTrc−PILと命名した。ベクター再環化陰性対照としてゲノムDNA非含有の等しいライゲーション反応も行った。すべてのライゲーション反応はすべて全容量20μlで行った。
【0181】
ライゲーションDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅
使用したプライマーは、pTrcHisのHinDIIIクローニング部位に隣接する相補配列にアニールするpTrcHis−F(5’−CAATTTATCAGAGAATCTGTGTG−3’)(配列26)、及び、B.pilosicoliの部分的ORFの5’末端の相補配列にアニールするAHP−Rev(5’−TCGCTTGCAGTTTGAGGAGTG−3’)(配列27)であった。Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し、50μlの全容量中のPCRによってライゲーションDNAを増幅した。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、0.05UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMのプライマー対(pTrcHis−F,AHP−Rev)及びpTrc−PIL(2μl)から構成した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで、94℃で30秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、及び、68℃で4分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ(40mMのTris−アセテート、1mMのEDTA)中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0182】
Bpmp−72のORF伸長部の配列決定
pTrc−PILのPCRで得られた増幅産物をUltraClean PCR Clean−up Kitを製造業者の指示通りに使用して精製した。PCR産物の配列決定は、pTrcHis−F及びAHP−Revプライマーを使用して重複で行った。各配列決定反応は、PCR産物(50ng)、プライマー(2pmol)及びABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)から成る容量10μlで行った。サイクリング条件は、96℃で2分間の変性段階、次いで96℃で10秒間の変性、120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)による55℃で5秒間のプライマーアニーリングを25サイクルとし、真空乾燥した。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。 SeqEd v1.0.3及びVector NTI version6を使用して配列結果を編集し、コンパイルして、比較した。
【0183】
Bpmp−72の残りのORFの配列決定
pTrc−PILのPCR増幅を上記のように繰り返した。使用したプライマーは、pTrcHis−F及びAHP−Rev2(5’−TGGATTTTGAAGCTATTGCTC−3’)(配列28)であった。配列28は、伸長したB. pilosicoliの部分的ORFの5’−末端で相補配列にアニールする。 Bpmp−72 ORFの残りの未知領域の配列決定は、pTrcHis−F及びAHP−Rev2プライマーを使用して上記同様に行った。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。SeqEd v1.0.3及びVector NTI version6を使用して配列結果を編集し、コンパイルして、比較した。
【0184】
仮定Bpmp−72 ORF配列の解析
配列結果をSeqEd v1.0.3(PE Applied Biosystems)を使用して編集しコンパイルした。ヌクレオチド配列は、Vector NTI version 6(InforMax)及びUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group programを使用して解析した。
【0185】
演繹された仮定読取り枠(ORF)を、National Center of Bioinformatics(NCBI)から入手可能な全配列データベースに対する相同性探索に使用した。
【0186】
Brachyspira種のBpmp−72のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析
82のBrachyspiraのゲノムDNA:48株のB.hyodysenteriae、18株のB.pilosicoli、12株のB.intermedia、8株のB.murdochii、4株のB.innocens、2株の“Brachyspira canis”、1株のBrachyspira alvinipulli及び1株のB.aalborgiに由来の72kDaの外膜タンパク質をコードしている遺伝子のPCR検出のためにBpmp−72 ORFの913及び1692bpの領域にアニールした2つのプライマーを設計し最適化した。使用したプライマーは、B.pilosicoli ORFに隣接する相補配列にアニールするAHP−F4(5’−CAAGTAATAGCTAAAGGTGATG−3’)(配列29)及びAHP−R783(5’−TTACTGTTGTGCTTGAGTAGTG−3’)(配列30)であった。Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し全容量50μlで遺伝子をPCR増幅した。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、0.05UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMのプライマー対(AHP−F4、AHP−R783)、及び、2.5μ1の精製染色体鋳型DNAから構成した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで94℃で30秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、及び、68℃で2分間のプライマー伸長を25サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ(40mMのTris−アセテート、1mMのEDTA)中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0187】
他のB.pilosicoli菌株中に存在するBpmp−72の配列決定
B.pilosicoli菌株のBpmp−72のPCR
鋳型配列決定用Bpmp−72のPCR増幅のために2つのプライマー、即ち、Bpmp−72 ORFの98塩基対上流にアニールしたAHP−98F(5’−CGTTTAGCTGAACTTGAAGCTATG−3’)(配列31)及びORFから178塩基対下流にアニールしたAHP+1890R(5’−GTAATGCTCTGTCTTAATCAT−3’)(配列32)を設計し、最適化した。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し全容量50μlで行った。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、0.05UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMのプライマー対(AHP−L1,AHP−R1)及び2.5μ1の精製染色体鋳型DNAから構成した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで94℃で30秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリン、及び、68℃で4分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ(40mMのTris−アセテート、1mMのEDTA)中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0188】
B.pilosicoli菌株由来のBpmp−72の配列決定
6つのB.pilosicoli菌株由来のPCR産物をUltraClean PCR Clean−up Kitを製造業者の指示通りに使用して精製した。PCR産物の配列決定は、AHP−98F、AHP+1890R及びAHP+1012R(5’−TATCGCTTGCAGTTTGAGGAG−3’)(配列33)プライマーを使用して重複で行った。各配列決定反応は、PCR産物(50ng)、プライマー(2pmol)及びABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)から成る容量10μlで行った。サイクリング条件は、96℃で2分間の変性段階、次いで96℃で10秒間の変性、55℃で5秒間のプライマーアニーリング、及び60℃で4分間のプライマー伸長を25サイクルとした。120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)を含有する95%(v/v)エタノールで沈殿させることによって配列決定産物から残留ダイターミネーターを除去し、真空乾燥した。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。 SeqEd v1.0.3及びVector NTI version6及びClustalXを使用して配列結果を編集し、コンパイルして、比較した。
【0189】
結果
大腸菌中の72kDa外膜タンパク質をコードしている組換えファージミドの単離及びキャラクタリゼーション
B.pilosicoliバクテリンで超免疫したブタの血清を上述のようにして(B.pilosicoli以外の)Brachyspira種の全細胞及び大腸菌全細胞に吸収させた。吸収された血清(AHPS)をB.pilosicoliの外膜抽出物に対してウェスタンブロット分析すると、AHPは72kDaの見掛け分子量をもつタンパク質と優先的に反応することが判明した(図1)。 B.pilosicoliラムダZAPゲノムライブラリーのスクリーニングから6つのクローンが得られたので、AHP1−6と命名した。これらのクローン全部が見掛け分子量34kDaの共通タンパク質を産生した。これらのタンパク質のすべてがAHPSと強力に反応した(図2)。1つのクローンの配列決定で29.4kDaのコーディング容量をもつ783塩基対の部分的ORFが同定された。この部分的ORFはB.pilosicoliの72kDaの外膜タンパク質のカルボキシ末端部分をコードしていると考えられる。
【0190】
読取り枠の配列解析
モチーフ及び保存ドメイン
表2に示したプライマーを使用してAHP1プラスミドを配列決定すると B.pilosicoliゲノムDNAの1009塩基対のインサートが判明した。インサートDNAを配列解析すると、推定ATG開始コドンとTAA終結コドンとをもつ塩基1−783までの783塩基対の潜在的な部分的OFRが判明した(図3)。残りの遺伝子を更にクローニングして配列決定すると、Bpmp−72のコーディング配列が1,692ヌクレオチドのサイズであることが判明した。潜在的なシャイン・ダルガーノリボソーム結合部位(AGGAG)と−10(TAATAT)及び−35(TTGAAA)の推定プロモーター領域がATG開始コドンの上流で同定された。72kDaの外膜タンパク質をコードしている遺伝子配列を分子量72kDaの外膜タンパク質(Bpmp−72)と命名した。
【0191】
翻訳されたポリペプチドは、予想分子量62.1kDaの564アミノ酸(aa)残基から構成されていた。推定されたサイズは、天然型Bpmp−72タンパク質のウェスタンブロットで観察されたサイズとは有意に違っていた。 Bpmp−72の仮定コーディング容量と天然型Bpmp−72外膜タンパク質との分子量の違いは恐らく、アシル化、メチル化、アセチル化、リン酸化及び硫酸化のような翻訳後修飾が原因であろう。アミノ酸配列の解析によって、翻訳されたポリペプチドのC末端の118残基領域の存在が判明した。これは保存されたリシンモチーフ(LysM)ドメインに相同であった。このドメインは、細菌細胞壁を分解する酵素で初めて同定され、それ以来多くの他の細菌性タンパク質に存在することが判明した遍在タンパク質モジュールである。LysMドメインは細菌細胞の表面タンパク質に最も多いモジュールの1つである。LysMドメインを有している他の細菌性タンパク質、例えば、ブドウ球菌IgGの結合タンパク質及び大腸菌のインチミンは細菌病因論に関与する。
【0192】
Brachyspira種に存在するBpmp−72遺伝子の配列決定
48株のB.hyodysenteriae、18株のB.pilosicoli、12株のB.intermedia、8株のB.murdochii、4株のB.innocens、2株の“B.canis”、2株のB.alvinipulli及び1株のB.aalborgiに由来のゲノムDNAをBpmp−72−特異的PCRを使用して増幅した。Bpmp−72遺伝子はB.pilosicoliの全部の菌株に存在していたが、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.murdochii、B.innocens、“B.canis”、B.alvinipulliまたはB.aalborgiのどの菌株にも存在していなかった。存在するBpmp−72遺伝子の配列決定のためにB.pilosicoliの6つの菌株を選択した。表3及び4は、B.pilosicoli菌株のBpmp−72遺伝子間の相同レベルのまとめである。
【0193】
6つのB.pilosicoti菌株のBpmp−72遺伝子はヌクレオチドレベルで99.8−100%の相同性を示した(表3)。全部の菌株が1,692bpの遺伝子を有しており、これは564アミノ酸のタンパク質に翻訳される。B.pilosicoliの異なる菌株間の高い相同レベルは、Bpmp−72が種の内部で高度に保存された遺伝子座であることを示唆する。
【0194】
【表3】
【0195】
6つのB.pilosicoli菌株のBpmp−72遺伝子はアミノ酸レベルで99.3−100%の相同性を示した(表4)。全部の菌株が1,692bpの遺伝子を有しており、これは564アミノ酸のタンパク質に翻訳される。B.pilosicoliの異なる菌株間の高い相同レベルは、Bpmp−72が種の内部で高度に保存された遺伝子座であることを示唆する。
【0196】
【表4】
【実施例2】
【0197】
Brachyspira pilosicoliの組換え72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)のクローニング、発現及び精製
方法
プラスミド抽出
pTrcHisプラスミド(Invitrogen)を含ませた大腸菌JM109クローンを、グリセロール予製保存液(stock storage)からアンピシリン(100mg/1)補充ルリア−ベルタニ(LB)寒天プレートに画線培養し、37℃で16時間インキュベートした。単一コロニーをアンピシリン(100mg/1)補充LBブロス(10ml)に接種し、ブロス培養物を振盪しながら37℃で12時間インキュベートした。完全一夜培養物を5,000×gで10分間遠心し、細胞に含まれていたプラスミドを製造業者の指示通りに使用したQlAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)で抽出した。精製したプラスミドをDynaquant DNAフルオロメーター(Hoefer)を使用して定量し、TEバッファで希釈することによってDNA濃度を100μg/mlに調整した。精製したpTrcHisプラスミドを−20℃で保存した。
【0198】
ベクター調製
100mMのTris−HCI(pH7.5)、50mMのNaCl、10mMのMgCl2、1mMのDTT及び100μg/mlのBSA中に5UのEcoR1(New England Biolabs)及び5UのXho1(New England Biolabs)を含有している全容量100μl中の精製pTrcHisプラスミド(1μg)を37℃で一夜消化した。消化反応物(2μl)を1×TAEバッファ中、1%(w/v)のアガロースゲルに90Vで1時間電気泳動させることによって制限されたベクターを検証した。電気泳動したDNAを臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、紫外(UV)光を使用して観察した。
【0199】
直鎖化したpTrcHisベクターを、UltraClean PCR Clean−up Kit(Mo Bio Laboratories)を製造業者の指示通りに使用して精製した。精製した直鎖状ベクターを蛍光計で定量し、TEバッファで希釈することによってDNA濃度を50μg/mlに調整した。精製した制限ベクターを−20℃で保存した。
【0200】
インサート調製
プライマー設計
Bpmp−72遺伝子の種々の位置を増幅するために3対のプライマーを設計した。プライマー配列及び得られた遺伝子のクローン化部分を表5に示す。全部のプライマー配列が、得られたアンプリコンの付着末端を直鎖化pTrcHisベクターに結合させ得る末端制限酵素部位を含んでいた。順方向プライマーは、末端Xho1制限酵素部位がpTrcHisの発現カセットとインフレームになるように設計した。逆方向プライマーは、pTrcHisベクターのEcoR1クローニング部位に結合後に未熟翻訳終結コドンが形成されないように設計した。Amplify 1.2(University of Wisconsin)を使用してプライマーを試験し、理論的アンプリコン配列をpTrcHisベクター配列の適正位置に挿入した。ベクターNTI version 6(InforMax)を使用してキメラpTrcHis発現カセットの推定された翻訳を実行させ、Bpmp−72インサートが正しい読取り枠に存在することを確認した。
【0201】
【表5】
【0202】
Bpmp−72インサートの増幅
Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し、100μlの全容量中でBpmp−72インサートをPCR増幅した。簡単に説明すると、増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、1UのTaq DNAポリメラーゼ、0.1UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMの適正プライマー対(AHP−F1−Xho1/AHP−R783−EcoR1、AHP−F1−Xho1/AHP−R223−EcoR1またはAHP−F4−Xho1/AHP−R783−EcoR1)、及び、2.5μlの染色体鋳型DNAとから構成した。染色体DNAは、200μlのTE中に10μlの凍結B.pilosicoli95/1000菌株(ブタから単離したWestern Australian field strain)を再懸濁させ、1分間煮沸することによって調製した。煮沸した細胞を20,000×gで5分間遠心し、上清を集めてPCR鋳型として使用した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで94℃で30秒間の変性、50℃で15秒間のアニーリング、及び、68℃で2分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0203】
正しいサイズのPCR産物の存在を確認した後、上述のようにUltraClean PCR Clean−up Kitを使用してRCR反応物を精製した。
【0204】
Bpmp−72インサートの制限酵素消化
精製したPCR産物(50μl)を、100mMのTris−HCI(pH7.5)、50mMのNaCl、10mMのMgCl2、1mMのDTT及び100μg/mlのBSA中の1UのEcoR1及び1UのXho1によって全容量100μlで37℃で一夜消化した。消化したインサートDNAをUltraClean PCR Clean−up Kitを使用して精製した。精製した消化インサートDNAをTEバッファ(50μl)を使用するクリーンアップカラムから溶出させ、蛍光計で定量し、TEバッファで希釈してDNA濃度を20μg/mlに調整した。精製した制限インサートDNAを直ちにベクター結合に使用した。
【0205】
pTrcHisベクターへのBpmp−72インサートのライゲーション
ライゲーション反応はいずれも全容量20μlで行った。Xho1/EcoR1−直鎖化pTrcHis(100ng)を、Xho1/EcoR1制限したBpmp−72インサート(20ng)と共に、1UのT4 DNAリガーゼ(Promega)を含有している30mMのTris−HCI(pH7.8)、10mMのMgCl2、10mMのDTT及び1mMのATP中、14℃で16時間インキュベートした。ベクター再環化の陰性対照とするためにBpmp−72インサートDNAを含まないライゲーションの結合反応も使用した。
【0206】
pTrc−Bpmp−72結合物による大腸菌細胞の形質転換
コンピテント大腸菌BL21 StarTM(DE3) pLys One ShotRTM(Invitrogen)細胞を−80℃の保存から氷上で解凍し、5μlの一夜ライゲーション反応物(25ngのpTrcHisベクターに等価)を収容している氷冷した1.5mlのマイクロ遠心管に移した。ベンチ上で各管の底部を穏やかに叩いて管を混合し、30分間氷上に維持した。次に管を42℃の水浴に45秒間入れることによって細胞に熱ショックを与え、その後に管を氷上に戻して2分間維持した。形質転換した細胞をLBブロス(1ml)に回収し、穏やかに撹拌しながら37℃で1時間維持した。回収した細胞を2,500×gで5分間処理して採取し、細胞を新しいLBブロス(50μl)に再懸濁させた。再懸濁させた細胞の全量(50μl)をアンピシリン含有(100mg/l)のLB寒天プレートに滅菌ガラス棒を使用して均等に拡げた。プレートを37℃で16時間インキュベートした。
【0207】
大腸菌中のpTrc−Bpmp−72インサートのPCRによる検出
12の単一形質転換体コロニーを各構築物ごとに新しいアンピシリン(100mg/l)含有LB寒天プレートに画線培養し、37℃で16時間インキュベートした。各形質転換イベントから得られた単一コロニーをTEバッファ(50μl)に再懸濁させ、1分間煮沸した。煮沸した細胞のアリコート(2μl)をPCR鋳型として使用した。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、1UのTaq DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP、0.5μMのpTrcHis−Fプライマー(配列6)及び0.5μMのpTrcHis−Rプライマー(5’−TGCCTGGCAGTTCCCTACTCTCG−3’)(配列38)から構成した。サイクリング条件は、94℃で4分間の初期鋳型変性段階、次いで、94℃で30秒間の変性、60℃で15秒間のアニーリング、及び、72℃で30分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0208】
直接配列解析によるpTrc−Bpmp−72読取り枠の検証
正しいサイズのPCR産物を産生した各構築物あたり2つの形質転換体クローンをアンピシリン(100mg/l)含有LBブロス(10ml)に接種し、振盪しながら37℃で12時間インキュベートした。完全一夜培養物を5,000×gで10分間遠心し、細胞が含有していたプラスミドを前述のようにQIAprep Spin Miniprep Kitを使用して抽出した。精製したプラスミドを蛍光計で定量した。
【0209】
双方の精製プラスミドを、pTrcHis−F及びpTrcHis−Rプライマーを使用するpTrcHis発現カセットの全自動化直接配列決定で処理した。配列決定反応の各々は、プラスミドDNA(200ng)、プライマー(2pmol)及びABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)から成る容量10μlで行った。サイクリング条件は、96℃で2分間の変性段階、次いで96℃で10秒間の変性、60℃で4分間のプライマーのアニーリング及び伸長を組合せた段階を25サイクルとした。残留ダイターミネーターは、120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)を含有する95%(v/v)エタノールで沈殿させることによって配列決定産物から除去し、真空乾燥した。各プライマーを使用してプラスミドの配列決定を重複で行った。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサー(PE Applied Biosystems)を使用して解析した。ライゲーションに成功したプラスミドを、pTrc−Bpmp−72(完全タンパク質)、pTrc−Bpmp−72N(N−末端部分)及びpTrc−Bpmp−72C(C−末端部分)と命名した。
【0210】
組換えHis6−Bpmp−72Cの大規模発現
Bpmp−72の34kDaの組換えC末端部分を大規模産生に選択しその後にワクチンとして使用した。大腸菌BL21中のpTrc−Bpmp−72Cの単一コロニーを250ml容の円錐フラスコに入れたアンピシリン(100mg/1)含有LBブロス(50ml)に接種し、振盪しながら37℃で16時間インキュベートした。アンピシリン(100mg/l)を補充したLBブロス(1L)を収容している2L容の円錐フラスコに、一夜培養物(10ml)を接種し、37℃で、細胞の光学密度が600nmで0.5になるまで(約3−4時間)インキュベートした。次にIPTGを最終濃度1mMまで加えて培養物を誘発し、細胞を振盪しながら37℃に戻した。5時間の誘発後、培養物を250ml容の遠心ボトルに移し、ボトルを4℃、5,000×gで20分間遠心した。上清を廃棄し、各ペレットを10mlのNi−NTA変性用溶菌バッファ(100mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCI、8Mの尿素、pH8.0)に再懸濁させた。再懸濁した細胞を−20℃で一夜保存した。
【0211】
組換えHis6−Bpmp−72Cの大規模精製
−20℃保管庫から細胞懸濁液を取り出し、氷上で解凍した。次に細胞溶解液を氷上で30秒間ずつ3回超音波処理した。毎回の超音波処理の間に1分間の氷上インキュベーションを挿入した。溶解した細胞を4℃、20,000×gで10分間遠心することによって清澄化し、上清を1mlのベッドボリュームのNi−NTAアガロース樹脂(Qiagen)を収容している15ml容のカラムに移した。His6で標識された組換えタンパク質を完全撹拌を伴って4℃に1時間維持して樹脂に結合させた。次に樹脂を50mlのNi−NTA変性用洗浄バッファ(100mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCI、8Mの尿素、pH6.3)で洗浄した後、30mlのNi−NTA変性用溶出バッファ(100mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCl、8Mの尿素、pH4.5)で溶出させた。溶出液の3つの10ml画分を集めて4℃で保存した。各溶出液のアリコート(30μl)を4×サンプル処理バッファ(10μl)で処理し、5分間煮沸した。サンプルをSDS−PAGE処理し、クーマシーブリリアントブルーG250(Sigma)で染色した。染色したゲルを蒸留水で1時間平衡させ、2枚のセルロースシートに挟んで室温で一夜乾燥した。
【0212】
精製した組換えHis6−Bpmp−72Cの透析及び凍結乾燥
溶出したタンパク質をプールし、分子量カットオフ(MWCO)3,500Daの水和透析管(Spectrum)に移した。プールした溶出液のアリコート(200μl)を採取し、Biorad Protein Assay(Biorad)を製造業者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を2lの蒸留水に4℃で撹拌しながら透析した。透析バッファを12時間毎に8回交換した。透析したタンパク質を透析管から50ml遠心管(最大容量40ml)に移し、管を−80℃で一夜維持した。管をMAXI凍結乾燥機(Heto)に入れ、凍結乾燥して乾固した。次に、凍結乾燥したタンパク質をPBSで濃度2mg/mlに再水和し−20℃で保存した。
【0213】
結果
組換えpTrc−Bpmp−72ベクターの構築
表6は、大腸菌中でBpmp−72タンパク質の種々の部分を発現させる構築物を示す。クローン化インサートの作製に使用したプライマー対は表5に示した。これらのプライマーはBpmp−72の所定部分を増幅し、Bpmp−72タンパク質全体またはそのN−末端部分またはC−末端部分を発現させる。種々のインサートをpTrcHis発現ベクターにクローニングすると、それぞれ6,081、5,518及び5,171bpのサイズの組換えベクターpTrc−Bpmp−72,pTrc−Bpmp−72N及びpTrc−Bpmp−72Cが得られた。 pTrcHis構築物のヌクレオチド配列決定は、全部の構築物で発現カセットが正しいフレームに存在することを検証した。pTrcHis発現カセットの予測された翻訳は、組換えHis6−Bpmp−72タンパク質(66.3kDa)、His6−Bpmp−72N(46.9kDa)、His6−Bpmp−72(34.6kDa)と天然型Bpmp−72リポタンパク質(62.1kDa)の推定アミノ酸配列が等しいことを示した。pTrcHis構築物の完全プラスミドマップを図4に示す。
【0214】
【表6】
【0215】
組換えBpmp−72Cの発現及び精製
十分な量のワクチン接種用組換えタンパク質を作製するために、pTrc−Bpmp−72Cを含有する選択された組換えクローンの大規模発現を行った。ヘキサ−ヒスチジン(4kDa)と融合した組換えBpmp−72Cタンパク質は、見掛け分子量34kDaの主要タンパク質を産生した(図5)。ラムダバクテリオファージゲノムライブラリーの初期スクリーニングに使用したAHPSは天然型Bpmp−72及び組換えHis6−Bpmp−72Cの双方に反応した(図5)。
【0216】
変性条件下でアフィニティクロマトグラフィーによって行ったHiS6−Bpmp−72組変え抗原の精製は成功であった。大規模精製したHis6−Bpmp−72Cの6つの複製バッチのSDS−PAGEは、組換え抗原が90%以上純粋であり、タンパク質の発現が恒常的であることを示した(図6)。この発現プロトコルを使用して2mg/Lという組換えタンパク質の収率が恒常的に得られた。透析及び凍結乾燥後、安定な組換えHis6−Bpmp−72C抗原の産生に成功した。
【実施例3】
【0217】
Brachyspira pilosicoliの組換え72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)のカルボキシ末端部分を使用するニワトリのワクチン接種
方法
1グループ15羽の2つのニワトリグループをB.pilosicoliの72kDaタンパク質の34kDaの組換えC−末端部分(His6−Bpmp−72C)で全身的及び経口的に免疫感作し、次いでB.pilosicoliで抗原投与して、ワクチン接種がB.pilosicoliのコロニー化を防御したか否かを判定した。第三グループの15羽のメンドリにはワクチンを接種しないで対照とした。45羽のトリ全部を一室で個別のケージに収容した。3つのグループをそれぞれ、
i)グループA:ワクチン非接種;
ii)グループB:組換えタンパク質(100μg)をアジュバントと共に筋肉内投与し、次いで3週後に1mgの溶解タンパク質を?嚢チューブで注入;
iii)グループC:組換えタンパク質(1mg)をアジュバントと共に筋肉内投与し、次いで3週後に1mgの溶解タンパク質を?嚢チューブで注入、
と命名した。二回目のワクチン接種の2週後に全部のトリにB.pilosicoliのニワトリ菌株(Csp1)を経口で抗原投与した。
【0218】
ニワトリ及び免疫感作プロトコル
34kDaの組換えBpmp−72のC−末端部分(His6−Bpmp−72C)を等量のフロインド不完全アジュバントで乳化し、グループB及びCの各15羽のメンドリの胸筋に筋肉内注射した。(ISA Brown産卵メンドリ:各トリはほぼ18週齢及び体重1.5kg)。グループBのトリの各々には、100μgのタンパク質を全容量1mlで与えた。グループCのトリの各々には、1mgのタンパク質を全容量1mlで与えた。グループAのトリにはワクチン接種しなかった。一回目のワクチン接種の3週後、グループB及びCの全部のトリに2mlのリン酸塩緩衝生理的塩類溶液に入れた1mgのタンパク質を?嚢に直接投与した。グループAのトリにはワクチン接種しなかった。経口ワクチン接種の2週後に、2mlの指数関数的対数増殖期(〜109細胞/ml)のB.pilosicoliを全部のトリの?嚢に直接与えた。抗原投与を連続3日間繰り返した。トリを個別にケージに入れた。
【0219】
一回目のワクチン接種の前、二回目のワクチン接種の直前、初日の抗原投与の前、及び、5週後に、翼静脈から採血することによって血清を採取した。血清をELSAで試験しワクチン抗原に対する抗体の存在を調べた。また、B.pilosicoliの細胞抽出物に対してウェスタンブロット分析した。全部のトリの糞便スワブを週に三回採取し、培養した。実験的感染の5週後に頚椎脱臼によってトリを死亡させた。死後、小腸及び結腸の掻取り組織を集めて、ELISA及びウェスタンブロット分析によって特異的免疫グロブリン含量を検査した。
【0220】
スピロヘーター培養物
糞便から採取したスワブを5%(v/v)繊維素除去ヒツジ血液、スペクチノマイシン(400μg/ml)、コリスチン(25μg/ml)及びバンコマイシン(25μg/ml)を含有しているTrypticase Soy寒天プレートで画線培養した。これらのプレートを好気性環境中、37℃で7日間インキュベートした。弱いベータ−溶血及び顕微鏡観察形態に基づいてスピロヘーターがB.pilosicoliであることを同定した。単離物のサブセットを継代培養し、種特異的PCRを使用してB.pilosicoliであることを確認した。
【0221】
ELISA(血清)
マイクロタイタープレート(Immulon 4HBX,Dynex)のウェルに、炭酸塩バッファ(pH9.6)中の100μlの精製His6−Bpmp−72C(1μg/ml)をコートし、4℃で一夜インキュベートした。150μlのPBS−BSA(1%w/v)によって室温で撹拌しながらプレートを1時間ブロックし、次いで150μlのPBST(0.05%v/v)で3回洗浄した。
【0222】
ニワトリ血清を100μlのPBST−BSA(0.1%w/v)で200倍に希釈し、撹拌しながら室温で2時間インキュベートした。プレートを(上述のように)洗浄した後、PBSTで80,000倍に希釈した100μlのヤギ抗ニワトリIgG(完全分子)−HRPを加えた。室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、100μlのTMB基質を加えた。室温で10分間発色させた後、50μlの1Mの硫酸を加えて停止させた。各ウェルの450nmの吸光度を読み取った。
【0223】
ELISA(粘膜)
小腸及び結腸の15cm2の切片から掻取り標本を採取した。1%(w/v)のBSA、2mMのPMSF,1mMのEDTA及び0.2%(w/v)のナトリウムアジドを含有している1mlのPBSに掻取り標本を再懸濁させた。懸濁液を十分に混合し、20,000×gで10分間遠心した。上清を除去し、PBSTで2倍に希釈し、100μlをELISAに使用した。ELISAは上述の血清ELSAと同様にして行った。
【0224】
ウェスタンブロット分析
超音波処理し清澄化したB.pilosicoli細胞懸濁液のアリコート(50mg)を7cmの分取ウェルに充填し、12.5%(w/v)SDS−PAGEゲルに電気泳動させ、ニトロセルロース膜に電気転移させた。膜をTBS−脱脂乳(5%w/v)でブロックし、マルチプローブ装置(Biorad)に取り付けた。ウェルを100μlの希釈したニワトリ血清プール(200倍)または粘膜上清(2倍)と共に室温で2時間インキュベートした。ウェルをTBST(0.1%v/v)で3回洗浄した後、100μlのヤギ抗−ニワトリIgG(完全分子)−HRP(10,000倍)と共に室温で1時間インキュベートした。装置から膜を取り外し、TBSTで3回洗浄した。10mlのDAB溶液(5mg/ml、0.0003%v/v過酸化水素、TBS)中で発色させ、十分な発色が生じた後で膜を水道の流水で洗浄した。膜を乾燥し、プレゼンテーション用に調べた。
【0225】
結果
ワクチン接種に対する血清学的応答
ニワトリの全身性血清学的(ELISA)応答を図7−9に示す。対照トリ(グループA)には循環抗体が存在せず、実験感染後に発色したものはなかった(図7)。ワクチン接種したトリの全部ではないが大抵には実験感染後の循環抗体が増加しないことが観察された(図8及び図9)。100μgのタンパク質でワクチン接種したトリ(グループB)の6羽が控え目な一次応答を示し、残りのトリはワクチンに十分な応答を示さなかった(図8)。対照的に、1mgのタンパク質でワクチン接種したトリ(グループC)の11羽が良好な一次全身性応答を示し、このグループの残りの4羽はワクチン接種に対して控え目な応答しか示さなかった。これらのトリのうち、3羽を除く全部が経口ブースト後に応答増加を示した(図9)。
【0226】
B.pilosicoli抽出物に対するワクチン接種ニワトリのウェスタンブロット分析を図10及び11に示す。グループ毎に各プール3羽から成る5つの血清プールを示す。ウェスタンブロットは、(34kDaサブユニットでワクチン接種したにもかかわらず)これらの応答が天然型72kDaタンパク質特異的であることを示す。また、グループC(1mg)がグループB(100μg)よりも強力に応答する傾向があることを示す。
ワクチン接種及び抗原投与に対するニワトリの粘膜性ELISA応答(死後にサンプル収集)を図12に示す。対照トリは感染しているにもかかわらず局部的応答を全く示さなかった。100μgのワクチン接種グループ(グループB)では1羽(27)だけが小腸及び結腸の双方で良好な局部的抗体応答を示した。このグループの別の4羽のトリ(23、24、34及び35)は結腸で控え目な局部的応答を示した。1mgのワクチンを接種したグループ(グループC)では2羽のトリ(40及び48)が小腸に良好な局部的応答を示し、6羽のトリ(36、38、40、41、43及び50)は結腸に良好な局部的応答を示した。
【0227】
高い粘膜抗体価を有しているトリから得られた粘膜抽出物のウェスタンブロット分析を図13に示す。全部のトリの局部的抗体応答は天然型72kDaに対する応答であった。これらの結果は、?嚢への経口ワクチン接種(加えてその後の実験的抗原投与)が胃腸管の深部に局部的応答を誘発できることを示す。しかしながら、経口ワクチン接種は結腸(及び小腸)で検出可能な局部的応答の誘発に恒常的に成功することはできない。
【0228】
B.pilosicoilコロニー化の防御
3つのグループのトリの糞便培養物のB.pilosicoilに関する結果をまとめて表7に示す。3つのグループの個々のトリの結果をそれぞれ表8−10に示す。継代培養した単離物の全部が、16S rRNA遺伝子をターゲットとする種特異的PCRによってB.pilosicoilであると確認された。
【0229】
【表7】
【0230】
感染後(pi)9日目までに、対照グループではコロニー化率80%に発達し、これに比べて2つのワクチン接種グループでは7%及び0%であった(表6)。その後、対照グループのコロニー化率は低下に転じたが、30日の期間で平均45%を維持した。対照的に、双方のワクチン接種グループのコロニー化率は経時的に増加する傾向を示し、最大コロニー化率はグループBで感染30日後の60%、グループCで感染25日後の40%であった。感染30日後の3つのグループのコロニー化率は同等であった。しかしながら、全期間を通じて、対照グループのコロニー化率は双方のワクチン接種グループを著しく有意に上回っていた。
【0231】
表8は、ワクチン接種しなかったニワトリの個々のB.pilosicoilの経口抗原投与後のコロニー化結果を示す。糞便スワブの培養によってコロニー化を定量した(−)記号は培養陰性を表し、(+)は培養陽性を表す。表9は、ワクチン接種した(100μg筋肉内に加えて1mg経口)ニワトリの個々のB.pilosicoilの経口抗原投与後のコロニー化結果を示す。糞便スワブの培養によってコロニー化を定量した。(−)記号は培養陰性を表し、(+)は培養陽性を表す。表10は、ワクチン接種した(1mg筋肉内に加えて1mg経口)ニワトリの個々のB.pilosicoilの経口抗原投与後のコロニー化結果を示す。糞便スワブの培養によってコロニー化を定量した。(−)記号は培養陰性を表し、(+)は培養陽性を表す。
15羽全部の対照ニワトリがコロニー化を生じ、陽性スワブが実験期間中に3〜6回、サンプリングされた。(実行できる11のうち、平均で4.53回のサンプリング)。
グループBの結果は、14羽のトリがある時点までコロニー化を示し、1〜3回のサンプリング(平均で1.87回のサンプリング)で陽性を示した。グループCでは、14羽のトリがある時点までコロニー化を示し、1〜5回の間のサンプリング(平均で1.6回のサンプリング)で陽性を示した。これらの結果は、ワクチン接種したトリの全感染度が対照トリよりも小さいこと、及び、コロニー化防御に関しては双方のワクチン接種計画が同様の結果を生じたことを強調する。
【0232】
コロニー化に関する全身または結腸の抗体応答を個々のトリで比較するとき、恒常的な図は浮かんでこない。対照グループは、感染に対する局部的または全身的な抗体をほとんど生じなかった。2日目以後にコロニー化を生じたグループBの4羽のトリ(21、24、29及び30)を考察すると、それらのトリの抗体価はもっと短期間にコロニー化を生じた同グループの他のトリよりも低い値ではなかった。コロニー化を生じなかったトリ(26)は、同グループの他のトリと同様の抗体価を有していた。対照的にグループCでは、2日目以後にコロニー化した3羽のトリ(37、46及び49)は結腸抗体応答が少なく、これらのうちで、トリ37は良好な全身性抗体応答を有していたが、トリ46及び49は有していなかった。コロニー化を生じなかったトリ(40)は、全身性抗体応答は控え目であったが結腸抗体応答は良好であった。このワクチン接種グループでは、コロニー化の少ないトリほど結腸抗体価が高い傾向が見られた。
【0233】
総合的に、この実験は、ワクチン接種プロトコルが循環中及び結腸内でBpmp−72特異的抗体の抗体価を誘発することを証明する。この場合、1mgのタンパク質による筋肉内ワクチン接種は、100μgを使用するよりも良好な応答を生じる。双方のワクチン接種プロトコルはB.pilosicoilのコロニー化を明らかに遅延させ、(特に感染9日後の対照トリの感染ピークに比べて)コロニー化の持続期間を短縮し、また、コロニー化を生じたトリの個体数も減少させた。対照トリで高いコロニー化率が維持されていれば、この違いはいっそう顕著であったかもしれない。これらの結果は、Bpmp−72が、ニワトリ並びにブタ、イヌのような他の動物種及びヒトのB.pilosicoilのコロニー化を防御する有効な手段として開発できることを示唆する強力な根拠を提供する。
【0234】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】吸収された超免疫ブタ血清(AHPS)のB.pilosicoli外膜タンパク質によるウェスタンブロット分析。レーン1,分子量マーカー;レーン2,B.pilosicoli 95/1000。72kDaタンパク質(Bpmp−72)を矢印で示す。
【図2】吸収された超免疫ブタ血清(AHPS)のB.pilosicoliの先端欠失72kDa外膜タンパク質を発現している大腸菌細胞によるウェスタンブロット分析。レーン1−分子量マーカー;レーン2−AHP1;レーン3−AHP2;レーン4−AHP3;レーン5−AHP4;レーン6−AHP5;レーン7−AHP6;レーン8−B.pilosicoli 95/1000外膜タンパク質。34kDa先端欠失タンパク質を矢印で示す。
【図3】Bpmp−72のヌクレオチド配列。
【図4】pTrcHis E.coli発現ベクターにクローニングされたBpmp−72遺伝子(図中Omp−72として示す)の種々の領域のベクター図。pTrc−Bpmp−72(A;6,081bp)、pTrc−Bpmp−72N(B;5,518bp)及びpTrc−Bpmp−72C(C;5,171bp)構築物が完全Bpmp−72、Bpmp−72のN−末端部分及びBpmp−72のC−末端部分をそれぞれ発現する。全部のベクターを同じベクター主鎖から構築し、違いは発現カセットにクローニングされたBpmp−72領域だけである。
【図5】天然型Bpmp−72(図中Omp−72として示す)及びBpmp−72の組換えC−末端部分(His6−Bpmp−72C)のウェスタンブロット分析。レーン1−分子量マーカー;レーン2−精製His6−Bpmp−72C;レーン3−B.pilosicoli95/1000由来の天然型Bpmp−72C;レーン4−B.pilosicoli Csp1由来の天然型Bpmp−72C。矢印は天然型及び組換えBpmp−72タンパク質の位置を示す。
【図6】N−NTAクロマトグラフィーを使用して精製した組換えHis6Bpmp−72の種々のバッチのSDS−PAGE分析。組換えタンパク質の全部のバッチを同じ方法で発現させ精製した。レーン1−分子量マーカー;レーン2−9−精製His6−Bpmp−72Cバッチ1−6。組換えHis6−Bpmp−72Cタンパク質を矢印で示す。
【図7】組換えHis6−Bpmp−72Cでワクチン接種しなかったニワトリのB.pilosicoli抗原投与の前及び後の全身性抗体価(ELISA)。循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用してELISAによって検出した。
【図8】組換えHis6−Bpmp−72Cでワクチン接種しB.pilosicoli抗原投与した後のニワトリの全身性抗体価(ELISA)。全部のトリに100μgのタンパク質を筋肉内投与し、次いで1mgを経口ブーストした。循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用しELISAによって検出した。
【図9】組換えHis6−Bpmp−72Cでワクチン接種しB.pilosicoli抗原投与した後のニワトリの全身性抗体価(ELISA)。全部のトリに1mgのタンパク質を筋肉内投与し、次いで1mgを経口ブーストした。循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用しELISAによって検出した。
【図10】100μgの組換えHis6−Bpmp−72Cの筋肉内投与及び 1mgのタンパク質の経口投与を順次行ってワクチン接種したニワトリからプールした血清のウェスタンブロット分析。各サンプリング時点で3羽のニワトリから血清をプールした。使用した抗原は、抗原投与に使用したB.pilosicoli菌株の全細胞抽出物であった。レーン1−実験A1のワクチン接種ニワトリ(陽性対照);レーン2−4−ニワトリ21−23;レーン5−7−ニワトリ24−26;レーン8−10−ニワトリ27−29;レーン11−13−ニワトリ30−32;レーン14−16−ニワトリ33−35。3つのサンプルの各々はワクチン接種前、抗原投与前、抗原投与後に順次採取した血清である。分子量マーカーをkDaで示す。B.pilosicoliの天然型72kDaタンパク質を矢印で示す。
【図11】1mgの組換えHis6−Bpmp−72Cの筋肉内投与及び1mgのタンパク質の経口投与を順次行ってワクチン接種したニワトリからプールした血清のウェスタンブロット分析。各サンプリング時点で3羽のニワトリから採取した血清をプールした。使用した抗原は、抗原投与に使用したB.pilosicoli菌株の全細胞抽出物であった。レーン1−実験A1のワクチン接種ニワトリ(陽性対照);レーン2−4−ニワトリ36−38;レーン5−7−ニワトリ39−41;レーン8−10−ニワトリ42−44;レーン11−13−ニワトリ45−47;レーン14−16−ニワトリ48−50。3つのサンプルの各々はワクチン接種前、抗原投与前、抗原投与後に順次採取した血清である。分子量マーカーをkDaで示す。B.pilosicoliの天然型72kDaタンパク質を矢印で示す。
【図12】組換えHis6−Bpmp−72Cをワクチン接種し次いでB.pilosicoliで抗原投与したニワトリの小腸及び結腸の粘膜性抗体価(ELISA)。トリ1−19はワクチン非接種、トリ21−35は100μgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与、トリ36−50は1mgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与した。 循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用しELISAによって検出した。
【図13】組換えHis6−Bpmp−72Cをワクチン接種し次いでB.pilosicoliを抗原投与したニワトリの粘膜抗体のウェスタンブロット分析。抗原投与に使用したB.pilosicoli菌株の全細胞抽出物を抗原として使用した。レーン1−3,小腸抗体;レーン4−17,結腸抗体:レーン1,ニワトリ27;レーン2,ニワトリ40;レーン3,ニワトリ48;レーン4−5,ニワトリ23−24;レーン6,ニワトリ27;レーン7−9,ニワトリ34−36;レーン10−13,ニワトリ38−41;レーン14−15,ニワトリ43−44;レーン16,ニワトリ48;レーン17,ニワトリ50;レーン18,実験A1のワクチン接種ニワトリ(陽性対照)。ニワトリ21−35には100μgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与した。ニワトリ36−50には1mgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与した。分子量マーカーはkDaで示す。B.pilosicoliの天然型72kDaタンパク質(Bpmp−72)を矢印で示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には腸スピロヘーター感染症の分野に関する。特定的には本発明は、Brachyspira pilosicoliのBpmp−72と命名された72kDaの外膜タンパク質の新規なアミノ酸配列及び該タンパク質をコードしているポリヌクレオチド配列に関する。より特定的には本発明は、トリのような動物種及びヒトのBrachyspira pilosicoli感染症(“腸スピロヘーター感染症”)の予防(“ワクチン接種”)及び治療処置におけるこれらの配列の使用に関する。本発明はまた、B.pilosicoliがコロニー化した動物及びヒトの血清学及び分子生物学に基づく診断に関する。本発明は更に、B. pilosicoli治療薬のスクリーニングに関する。最後に、本発明は本出願に記載したヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に由来の予防、治療及び診断用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸スピロヘーター感染症またはスピロヘーター性下痢としても知られる腸スピロヘーター感染症(IS)は、ブタや採卵用メンドリ及びブロイラー産生用メンドリの生産量を抑制する重大な疾患である。ISの原因は、大腸の腸スピロヘーターBrachyspira(正式にはSerpulina) pilosicoli感染である。このスピロヘーターはまた、イヌのような他の多くの動物種及びヒトにも感染する。ブタの関連疾患が最も理解され研究されている。
【0003】
オーストラリアの養豚産業では感染率が確認されていないが、ヨーロッパ及びスカンジナビアの調査では飼育されているブタの30%以上が感染していると示唆されている。関連疾患は、間欠的な下痢及び成長の遅れを伴う大腸炎/盲腸炎である。ブタの罹患による経済的重要度は明らかではないが、ブタ赤痢よりも症状が軽いにしても全般的に感染率がはるかに高いので、軽視できるものではない。
【0004】
B.pilosicoliはまた成鶏にも広く感染している。オーストラリアの最近の調査では、ブロイラー産生用メンドリの43%及び採卵用メンドリの68%から腸スピロヘーターが回収され、B.pilosicoliはこれらのメンドリのサブセットの44%に含まれているスピロヘーターであった。感染群は非感染群よりも平均で14%水分の多い糞便を排泄していた。この試験で単離したB.pilosicoliをブロイラー産生用メンドリに感染させた実験では、産卵の開始が有意に遅延し、産卵の持続的な減少となった。採卵用メンドリ群だけでなく、ブロイラー産生群でも産卵量が減少し、これは全ブロイラー産業にかなりの打撃となる。これらの問題のコストを査定することは難しいが、オーストラリアではこの産業は重要である。鶏肉産業は25億ドルの小売価格に相当する鶏肉を生産しており、鶏卵産業は3億4千万ドルの価格の鶏卵を生産している。
【0005】
イヌ及びその他の動物種に対するB.pilosicoliの病原体機能はまだしっかりと確認されていないが、いくつかの他の要因次第では健康に多少の影響を与えるであろうと考えられる。B.pilosicoliはまた、開発途上国の多くの人々に感染する。先進国の感染は主として免疫低下個体及び同性愛男性に限定される。この感染が高齢者及び/または免疫低下個体のスピロヘーター血症の原因として記録されている。これらのヒト集団グループのB.pilosicoliの病原的影響の完全範囲はいまだ調査中である。
【0006】
B.pilosicoli感染を抑制する手段を開発するための研究は少ない。豚舎でISが問題であることが確認されると、常套的には動物を抗生物質で治療するが、治療をやめると病気が再発し易い。しかしながら、ニワトリの病気は十分に解明されていないので、養鶏産業が感染の抑制を特に試みることはなかった。
【0007】
ブタのISを抑制するワクチンの使用に関する研究の記録が一つだけ存在する。この自原的バクテリンは感染防御に成功しなかった(Hampson DJ,Robertson ID,La T,Oxberry SL & Pethick DW(2000)Influences of diet and vaccination on colonization of pigs by the intestinal spirochaete Brachyspira(Serpulina)pilosicoli.Veterinary Microbiology 74:75−84)。しかしながら、大腸粘膜に対するスピロヘーターの特異的エンドオン付着が存在するので、適当なワクチン誘導免疫の使用によってコロニー化を抑制または防止できる可能性は高いと考えられる。
【0008】
本発明は、B.pilosicoliのこれまでに同定されたことのない新規なアミノ酸配列及び該配列をコードしているポリヌクレオチド配列を提供する。
【発明の開示】
【0009】
我々は、本文中でB.pilosicoli膜タンパク質72(Bpmp−72)と呼ぶ新規なアミノ酸配列、並びに、腸スピロヘーター感染症に関連する診断、予防及び治療の目的に特に適したそのアミノ酸フラグメントを同定した。我々はまた、Bpmp−72アミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチド配列を同定した。
【0010】
従って本発明は、配列2に示した配列を含むBpmp−72アミノ酸配列または該配列に実質的に相同のアミノ酸配列または配列2のアミノ酸配列のフラグメントを提供する。本発明の1つの好ましい実施態様では、配列3−配列22から選択されるBpmp−72アミノ酸配列のフラグメントが提供される。
【0011】
本発明はまた、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列(配列1)またはその相同配列を提供する。好ましくは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列が、(a)配列1に示すヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド配列、(b)配列1に示すポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントに選択的にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列、(c)遺伝コードの結果として(a)または(b)に定義の配列に縮重であるポリヌクレオチド配列、または、(d)上記の項(a)、(b)または(c)の配列に相補的なポリヌクレオチド配列、から選択される。
【0012】
また、本発明のポリヌクレオチド配列にハイブリダイズできる検出可能に標識されたヌクレオチド配列も提供される。このような配列は例えば、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列のコーディング領域または非コーディング領域にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含む。本発明はまた、配列24及び配列27−配列37に示すようなBpmp−72アミノ酸配列をコードしているB.pilosicoliゲノムDNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【0013】
本発明によって提供されるベクターは、本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含有するであろう。好ましくはベクターがクローニングベクターまたは発現ベクターである。ベクターが発現ベクターである場合、ベクターは主として、発現コントロール配列に作動可能に結合したBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含む。
【0014】
また、本発明のポリヌクレオチド配列によって、または、上記に記載のベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた細胞が提供される。好ましい細胞は、細菌、酵母、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞またはブタ細胞の組織培養物などである。
【0015】
本発明は更に、(a)上記に記載の細胞をBpmp−72アミノ酸配列が発現し得る条件下で培養する段階と、(b)発現したBpmp−72アミノ酸配列を回収する段階とを含むBpmp−72アミノ酸配列の製造方法を提供する。この手順に、(c)Ni−キレート化カラムでアミノ酸配列をクロマトグラフィー分離する段階、及び、(d)ゲル濾過によってアミノ酸配列を精製する段階を付加してもよい。
【0016】
本発明はまた、本発明のBpmp−72アミノ酸配列に特異的な標識及び非標識のモノクローナル及びポリクローナル抗体を提供し、また、本発明のモノクローナル抗体を産生する不死細胞系を提供する。本発明の抗体製造は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列をキャリアータンパク質にコンジュゲートする段階と、(b)アジュバントに混合した段階(a)のBpmp−72アミノ酸配列フラグメント−キャリアータンパク質コンジュゲートで宿主細胞を免疫する段階と、(c)免疫した宿主動物からBpmp−72特異的抗体を採取する段階とを含む。
【0017】
本発明は更に、生物サンプル中のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の有無を検出する方法を提供する。方法は、(a)安定なハイブリダイズ条件下で本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブまたはプライマーに生物サンプルを接触させる段階と、(b)プローブまたはプライマーとサンプル中のヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖を検出する段階とを含む。
【0018】
本発明は、サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を測定する方法を提供する。方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列を含有する疑いのあるサンプルとBpmp−72アミノ酸配列に特異的に結合する抗体とを反応複合体の形成が可能な条件下で接触させる段階と、(b)反応複合体の形成を検出する段階とを含み、反応複合体の形成の検出がサンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を示す指標となる。
【0019】
本発明はまた、生物サンプル中の腸スピロヘーター感染症抗体の検出方法を提供する。方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを準備する段階と、(b)該アミノ酸配列を生物サンプルと共に抗体抗原複合体の形成が可能な条件下でインキュベートする段階と、(c)抗体抗原複合体を検出する段階と、を含む。
【0020】
これに対応して、生物サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列のレベルのin vitro測定方法が提供される。方法は、(a)上述の方法に従って生物サンプル中の反応複合体の形成を検出する段階と、(b)形成された反応複合体の量を測定する段階とを含み、この量が生物サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列のレベルに対応する。
【0021】
更に、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する動物宿主の疾患の治療処置をin vitroモニターする方法が提供される。方法は、このような治療処置を受けている動物宿主からいくつかの異なる時点に採取した一連の生物サンプル中のBpmp−72アミノ酸配列のレベルを上述の手順で測定する段階を含む。
【0022】
本発明の目的はまた、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患の変調医薬を製造するために、本発明のポリヌクレオチド配列、及び、本発明のBpmp−72アミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチドにハイブリダイズできるアンチセンス核酸配列を使用することである。
【0023】
更に、本発明は、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する腸スピロヘーター感染症を予防、軽減または治療するための、ワクチンを非限定例とする医薬または治療用の組成物または薬剤を提供する。これらは、(a)少なくとも1つの本文中に記載のBpmp−72アミノ酸配列または少なくとも1つの本文中に記載のBpmp−72ヌクレオチド配列または上記配列の1つに特異的に結合する抗体と、(b)1種類または複数の医薬に許容される担体及び/または希釈剤とを含む。
【0024】
本発明は更に、治療に使用するための本発明のポリヌクレオチド、アミノ酸配列及び/または抗体を提供する。また、腸スピロヘーター感染症を特徴とする状態の治療方法が提供される。方法は、治療が必要な動物に有効量の本発明のポリヌクレオチド、アミノ酸配列または抗体を投与する段階を含む。更に、本発明は、腸スピロヘーター感染症を予防するかまたは少なくとも最小限に抑えるために動物を予防的に処置する方法を提供する。方法は、有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体またはこれらの生物分子を1種類以上含む医薬組成物を動物に投与する段階を含む。
【0025】
更に本発明は、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の生物活性をBpmp−72ヌクレオチドまたはアミノ酸配列との直接的または間接的相互作用を介して変調し得る薬物のスクリーニング方法を提供する。これらの方法によって同定された物質は腸スピロヘーター感染症の治療方法に使用し得る。
【0026】
本発明はまた、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に感染した疑いのある動物をスクリーニングするため、または、動物がB.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染していることを確認するためのキットを提供する。このキットは、適当な容器に包装されたBpmp−72ポリヌクレオチド配列の一部分に相補的な少なくとも1つのポリヌクレオチドをその使用説明書と共に含む。代替形態として、本発明は、(a)B.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染している疑いのある宿主動物をスクリーニングするため、または、(b)宿主動物がB.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染していることを確認するためのキットを提供する。キットは、適当な容器に包装されたBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントまたは上記配列に結合する抗体をその使用説明書と共に含む。
【0027】
本発明の別の特徴及び利点は、添付図面を参照しながら進める以下の記載の閲覧から当業者に明らかであろう。
【0028】
概論
本文中に記載の発明が明確に記載した変更及び修正以外の変更及び修正の対象となり得ることは当業者に理解されよう。本発明はこのような変更及び修正のすべてを包含すると理解されたい。本発明はまた、明細書で個別的にまたは集合的に言及または指示した段階、特徴、組成物及び化合物のすべてを包含し、また、任意の2つ以上の段階または特徴のいずれかの組合せをすべて包含する。
【0029】
本発明の範囲は本文中に記載した特定実施態様によって限定されない。これらの実施態様は例示目的で示しただけである。機能的に等価の生成物、組成物及び方法は明らかに本文中に記載の本発明の範囲内である。
【0030】
本明細書に含まれているヌクレオチド及びアミノ酸配列情報を内包する配列認識番号(配列No.)は、明細書の末尾にまとめて示すが、これはプログラムPatent In Version 3.2を使用して作成したものである。配列表のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の各々は配列識別子の付いた数値指標<201>によって識別される(例えば、<201>1、<201>2、など)。各ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の長さ、配列型及び起原生物はそれぞれ数値指標欄<211>、<212>及び<213>に与えられた情報によって示されている。明細書中で言及したヌクレオチド及びアミノ酸配列は、配列識別子の付いた数値指標欄<400>に与えられた情報(例えば、<400>1、<400>2、など)によって定義されている。
【0031】
本文中に引用したすべての刊行物(特許、特許出願、雑誌記事、実験便覧、書物またはその他の文献)の開示はその全体が参照によって本発明に含まれるものとする。いずれの参考文献についても、それらが先行技術を構成するとも、または、本発明の関連分野の当業者の一般常識の一部であるとも認めていない。
【0032】
本文中に使用した“由来の”及び“に由来の”という用語は、特定の完全体(integer)が特定のソースから得られることを意味しているが、該ソースから必ずしも直接的に得られなくてもよい。
【0033】
本明細書を通じて、文脈から別の解釈が必要な場合を除いて、“含む”という用語または“含む(主語が単数)”もしくは“含んでいる”のようなその変形は、所定の完全体または完全体グループが含まれることを意味するが、その他の完全体または完全体グループを排除しないことは理解されよう。
【0034】
本文中に使用したその他の選択用語の定義は発明の詳細な説明の項に示したが、これらの定義は明細書全体に通用する。本文中に使用した他の科学的及び技術的用語は異なる定義がない限り本発明の所属分野の当業者が共通に理解する意味と同義である。
本発明は、その変形及びフラグメントも含めたBpmp−72アミノ酸配列及び該配列をコードしているポリヌクレオチド配列の同定に関する。
【0035】
Bpmp−72アミノ酸配列は、B.pilosicoliラムダバクテリオファージゲノムライブラリーをスクリーニングすることによってB.pilosicoliから単離された。このスクリーニングプロセスによって6つのクローンが見出され、AHP1−6と命名された。これらのクローンはいずれも、見掛け分子量34kDaの共通タンパク質を産生し、これらのタンパク質はいずれも吸収された超免疫ブタ血清と強力に反応した。1つのクローンの配列決定によれば、29.4kDaのコーディング容量をもつ783塩基対の部分的読取り枠(ORF)が同定された。この部分的ORFは、B.pilosicoliの72kDa外膜タンパク質のカルボキシ末端部分をコードしているであろう。
SWISS−PROTデータベースでBpmp−72の相同性サーチを行うと、このタンパク質とTreponema phagedenis及びTreponema pallidumのTreponemal膜タンパク質B(TmpB)とが約5%相同であることが確認された。これらのタンパク質は、外膜と結合し、ポーリンとしてまたは巨大分子の輸送タンパク質として機能し得る。Bpmp−72ヌクレオチドをGenBankヌクレオチドデータベースに比較しても他の細菌遺伝子との強力な相同性は判明しなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の解析から、B.pilosicoliゲノムDNAの1009塩基対のインサートが判明した(図3)。インサートDNAの配列解析から、推定ATG開始コドンとTAA終結コドンとをもつ塩基1−783の783塩基対の潜在的な部分的ORFが判明した。残りの遺伝子を更にクローニングして配列決定すると、Bpmp−72のコーディング配列が1,692ヌクレオチドのサイズであることが判明した。潜在的シャイン・ダルガーノリボソーム結合部位(AGGAG)及び推定−10(TAATAT)及び−35(TTGAAA)プロモーター領域がATG開始コドンの上流で同定された。72kDaの外膜タンパク質をコードしている遺伝子配列を分子量72kDaの外膜タンパク質と命名した(Bpmp−72)。
【0038】
翻訳されたポリペプチドは564アミノ酸(aa)残基から構成され、予測分子量62.1kDaを有していた(図4)。推定されたサイズは、天然型Bpmp−72タンパク質のウェスタンブロットで観察されたサイズと有意な違いを有していた。Bpmp−72の推定コーディング容量と天然型Bpmp−72外膜タンパク質との分子量の違いの原因は、アシル化、メチル化、アセチル化、リン酸化及び硫酸化のような翻訳後修飾にあると考えられる。
【0039】
アミノ酸配列の解析から、翻訳されたポリペプチドのC−末端に118残基の領域が存在することが判明し、これは保存されたリシンモチーフ(LysM)ドメインに相同であった。このドメインは、細菌細胞壁を分解する酵素で初めて同定されたがその後多くの他の細菌タンパク質にも存在することが証明された遍在タンパク質モジュールである。LysMドメインは細菌細胞表面タンパク質の最も普遍的なモジュールの1つである。LysMドメインを有している他の細菌タンパク質、例えば、ブドウ球菌(Staphlococci)のIgG結合タンパク質及び大腸菌(E.coli)のインチミンは細菌性病因に関与する。
【0040】
Bpmp−72アミノ酸配列
本発明によって提供される全長Bpmp−72アミノ酸配列は約564個のアミノ酸(aa)残基を有しており、B.pilosicoli外膜タンパク質をコードしているであろう。タンパク質の推定分子量は62,081Daである。
【0041】
本発明のBpmp−72アミノ酸配列は、本文中に示したアミノ酸配列、例えば配列2−配列22を有している。また、保存性アミノ酸置換で修飾されたBpmp−72アミノ酸配列、並びに、それらのアナローグ、フラグメント及び誘導体を包含する。
【0042】
本発明の好ましい形態では、本文中に記載したような単離Bpmp−72アミノ酸配列が提供される。より望ましくは、実質的に純粋な形態のBpmp−72アミノ酸配列が提供される。
【0043】
“単離された”という用語は、自然状態で付随している成分から分離されたBpmp−72アミノ酸配列を表すために使用されている。更に、少なくとも約60−75%のサンプルが1つのBpmp−72アミノ酸配列を示すときにはBpmp−72アミノ酸配列が“実質的に精製”されている。実質的に精製されたBpmp−72アミノ酸配列は、典型的には約60−90%W/W、より一般的には約95%のBpmp−72アミノ酸配列サンプルを含み、好ましくは約99%以上純粋であろう。タンパク質の純度または均質性は当技術分野で公知のいくつかの手段によって表すことができ、例えば、タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、次いでゲル染色によってBpmp−72アミノ酸配列の単一バンドを可視化するとよい。ある種の目的には、HPLCまたは本願でも使用した当技術分野で公知の他の手段を使用することによってより高い分解能が得られる。
【0044】
本発明の好ましいBpmp−72アミノ酸配列は、天然型全長Bpmp−72アミノ酸配列の1つまたは複数の生物学的特性(例えば、in vivo、in vitroまたは免疫学的特性)を有しているであろう。非機能性のBpmp−72アミノ酸配列も、例えばBpmp−72のアンタゴニストとして有用であり得るので本発明の範囲に包含される。野生型に比べたアナローグ、フラグメントまたは誘導体の生物学的特性は例えば生物学的アッセイを用いて決定され得る。
【0045】
アナローグ、フラグメント及び誘導体を含めたBpmp−72アミノ酸配列は、合成的に(例えば、公知の固相または溶液相ペプチド合成法を使用して)作製できる。好ましくは固相合成法を使用する。あるいは、本発明のBpmp−72アミノ酸配列は後述するような公知の遺伝子操作技術を使用して作製できる。また別の実施態様では、Bpmp−72アミノ酸配列がブタ、ニワトリ、ヒト及びイヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ及び魚などの動物の血漿、糞便、血清または尿を非限定例とする生物流体から精製できる(例えば、イムノアフィニティ精製によって)。
【0046】
Bpmp−72アミノ酸配列のアナローグ
Bpmp−72アミノ酸配列のアナローグは、1つまたは複数のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されているがこの置換によって分子の生物学的活性が実質的に変質されないアミノ酸配列を含む。
【0047】
本発明の文脈で、アナローグ配列は、少なくとも20、50、100または200個のアミノ酸に関するアミノ酸レベルで配列2に示したアミノ酸配列に少なくとも60、70、80または90%相同、好ましくは少なくとも95または98%相同のBpmp−72アミノ酸配列を含意する。特に、相同性は典型的にはタンパク質の機能に必須であることが判っている配列の領域について考察されるべきであり、隣接の必須でない配列は考慮するに及ばない。特に好ましい本発明のアミノ酸配列は、配列3−配列22に示したアミノ酸配列の1つまたは複数に60または70%以上、より好ましくは80−90%以上の相同性を有している連続的配列を含む。
【0048】
相同性を類似性(即ち、類似の化学的特性/機能を有しているアミノ酸残基)として考えることもできるが、本発明の文脈では相同を配列一致として表すほうが好ましい。Bpmp−72アミノ酸配列に関して“実質的な相同”または“実質的な一致”という用語が使用されたとき、これらの用語は、問題のBpmp−72アミノ酸配列が天然産生のBpmp−72アミノ酸配列の全長またはその一部分に少なくとも約70%の一致、通常は少なくとも約80%の一致、好ましくは少なくとも約90%または95%の一致を示すことを表す。
【0049】
本発明の極めて好ましい形態では、Bpmp−72アミノ酸配列アナローグが配列2で示したBpmp−72アミノ酸配列または配列3−配列22で示した配列に80%以上のアミノ酸配列一致を示すであろう。本発明の範囲内のBpmp−72アミノ酸配列アナローグの例は、(a)1つまたは複数のアスパラギン酸残基がグルタミン酸で置換された配列2のアミノ酸配列、(b)1つまたは複数のイソロイシン残基がロイシンで置換された配列2のアミノ酸配列、(c)1つまたは複数のグリシンまたはバリン残基がアラニンで置換された配列2のアミノ酸配列、(d)1つまたは複数のアルギニン残基がヒスチジンで置換された配列2のアミノ酸配列、あるいは、(e)1つまたは複数のチロシンまたはフェニルアラニン残基がトリプトファンで置換された配列2のアミノ酸配列を含む。
【0050】
Bpmp−72アナローグのスクリーニング
ポリペプチドのアナローグをスクリーニングするために様々なスクリーニング技術が当技術分野で公知である。多様な化学物質ライブラリーが利用可能である。従って本発明は、Bpmp−72アミノ酸配列のアナローグを得るために、より詳細に後述するように、多年の研究で作製された合成化合物のライブラリー、天然化合物のライブラリー及び組合せライブラリーなどのようなライブラリーのスクリーニングを考察する。1つの実施態様では、本発明はBpmp−72特異的抗体に結合するアナローグを選択するためのかかるライブラリーのスクリーニングを考察する。
【0051】
Bpmp−72アミノ酸配列のフラグメント
アナローグに加えて、本発明はBpmp−72アミノ酸配列のフラグメントを考察する。Bpmp−72アミノ酸配列フラグメントは、少なくとも約5−7個の連続アミノ酸、しばしば少なくとも約7−9個の連続アミノ酸、典型的には少なくとも約9−13個の連続アミノ酸、最も好ましくは少なくとも約20−30個またはそれ以上の連続アミノ酸から成るアミノ酸残基連鎖である。好ましいBpmp−72アミノ酸配列フラグメントは配列3−配列22に示すような配列を包含する。
【0052】
本発明の極めて好ましい形態では、フラグメントがBpmp−72アミノ酸配列に特徴的なリガンド結合免疫活性及び/またはその他の生物学的活性を示す。より好ましくはフラグメントが天然型のBpmp−72アミノ酸配列に存在する免疫エピトープに一致する免疫エピトープを有している。
【0053】
本文中で使用した“エピトープ”という用語は、ポリペプチドの抗原決定基を表す。エピトープは3つのアミノ酸を該エピトープに特有の空間的コンホメーションで含み得る。一般に、エピトープは少なくとも5個のアミノ酸、もっと普通には少なくとも8−10個のアミノ酸から構成されている。このようなアミノ酸の空間的コンホメーションの決定方法は当技術分野で公知である。
【0054】
Bpmp−72アミノ酸配列誘導体
本発明によって“Bpmp−72アミノ酸配列誘導体”が提供される。これらは、一次構造が実質的に相同であるが化学的及び/または生化学的修飾または普通は存在しないアミノ酸を含んでいるBpmp−72アミノ酸配列、そのアナローグまたはフラグメントを包含する。このような修飾は、当業者に容易に理解されるように、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、標識(例えば、放射性ヌクレオチドによる標識)及び種々の酵素的修飾、などを包含する。
【0055】
本発明の1つの形態では、誘導体化に適した化学的部分が水溶性ポリマーから選択される。選択されたポリマーは、ポリマーに結合したタンパク質が生理的環境のような水性環境で沈殿しないように水溶性でなければならない。最終製品を製造して治療に使用するため、医薬に許容されるポリマーが好ましい。当業者は、ポリマー/タンパク質コンジュゲートが治療に使用されるかについて考察し、使用される場合には所望の用量、循環時間、タンパク質分解耐性やその他の要因について考察し、これらの考察に基づいて所望のポリマーを選択できるであろう。本発明のタンパク質及びペプチドについては本文中に示したアッセイを使用して確認できる。
【0056】
水溶性ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、及び、デキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリビニルアルコールから成るグループから選択するとよい。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水安定性なので製造には有利であろう。
【0057】
本発明の別の形態では、例えばBpmp−72アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシル末端に1つまたは複数の抗体フラグメント(例えばFcフラグメント)を融合させることによって動物宿主体内の半減期を延長するようにアミノ酸配列を修飾し得る。
【0058】
Bpmp−72アミノ酸配列を標識形態で提供する必要がある場合、アミノ酸配列を標識する種々の方法が当技術分野で公知であり、例えば、32Pのような放射性同位体、標識アンチリガンド(例えば、抗体)に結合するリガンド、フルオロホア、化学発光剤、酵素、標識リガンドへの特異的結合相手として作用できるアンチリガンドが包含される。ラベルの選択は、必要な感度、安定性要件及び入手可能な計器類に左右される。アミノ酸配列の標識方法は当技術分野で公知である[例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);及び、Ausubel,F.,Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Seidman,J.G.,Smith,J.A.,Struhl,K.Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Associates/Wiley Intersciences,New York(2001)参照]。
【0059】
本発明のBpmp−72アミノ酸配列が可溶性である場合には、固相支持体、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、カラム充填材料(例えば、セファロースビーズ)、磁気ビーズ、グラスウール、プラスチック、金属、ポリマーゲル、セルまたはその他の支持体に配列を結合させるとよい。このような支持体は例えばビーズ、ウェル、浸漬棒または膜の形態を有し得る。
【0060】
本発明はまた、Bpmp−72アミノ酸配列及びフラグメントを含む融合ポリペプチドを提供する。即ち、Bpmp−72アミノ酸配列が2つ以上のBpmp−72アミノ酸配列の融合物、または、1つのBpmp−72アミノ酸配列と類縁タンパク質との融合物であってもよい。同様に、誘導体タンパク質の特性または活性の組合せを示す異種融合物を構築することもできる。例えば、リガンド結合性ドメインまたは他のドメインが異なる融合ポリペプチドまたはフラグメント間で“交換”されてもよい。このような同種または異種融合ポリペプチドは例えば、強度または結合特異性の変質を示すであろう。融合相手は、免疫グロブリン、細菌性ベータ−ガラクトシダーゼ、trpE、プロテインA、ベータ−ラクタマーゼ、アルファアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及び酵母のアルファ接合因子などである。
【0061】
修飾されたBpmp−72アミノ酸配列は、慣用の技術を使用して合成し得る。すなわち、修飾ポリヌクレオチド配列によってコードし組換え核酸方法を使用することにより産生し得る。修飾ポリヌクレオチド配列も慣用の技術によって作製し得る。融合タンパク質は典型的には、組換え核酸方法によって作製するかまたは化学合成し得る。
【0062】
Bpmp−72ポリヌクレオチド
本発明によれば、単離されたまたは実質的に純粋なBpmp−72ポリヌクレオチド配列が提供される。該配列は、Bpmp−72アミノ酸配列またはそのアナローグ、フラグメントもしくは誘導体をコードしている。本発明による好ましいBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、配列1で示す配列またはそのフラグメントを含む。
【0063】
“Bpmp−72ポリヌクレオチド配列”は、一本鎖形態または二重鎖ヘリックスのリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;“RNA分子”)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン;“DNA分子”)のリン酸エステル高分子形態を表す。二重鎖のDNA−DNA、DNA−RNA及びRNA−RNAヘリックスが可能である。特定の二重鎖DNA分子の構造を検討するとき、本文中では、DNAの非転写ストランド(即ち、mRNAに相同な配列を有するストランド)に沿って5’から3’の方向だけで配列を示す標準協約に従って配列を記述する。
【0064】
“単離された”または“実質的に純粋な” Bpmp−72ポリヌクレオチドは、天然型B.pilosicoliゲノム配列に天然に付随する他の細胞成分から実質的に分離された配列を意味する。この用語は、その天然産生環境から取出されたBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含意し、また、組換えられたもしくはクローニングされたBpmp−72ポリヌクレオチド配列単離物及び化学的に合成された変異体もしくは異種系によって生合成された変異体を包含する。
【0065】
1つの実施態様で本発明は、Bpmp−72アミノ酸配列を発現するBpmp−72ポリヌクレオチド配列を提供する。より詳細には、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列が、(a)配列1に示すポリヌクレオチド配列またはそのフラグメント、(b)(a)に定義したポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列またはハイブリダイズ可能なそのフラグメント、及び、(c)上記ポリヌクレオチド配列のいずれかによってコードされているアミノ酸配列の発現をコードしているポリヌクレオチド配列、から成るグループから選択される。
【0066】
相同的Bpmp−72ポリヌクレオチド配列
本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、天然のBpmp−72ポリヌクレオチド配列に由来するか実質的に類似である配列、または、天然のBpmp−72ポリヌクレオチド配列またはその一部分と実質的相同性を有している配列を包含する。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド配列(またはその相補ストランド)と(適当なヌクレオチド挿入または欠失を伴って)最適に位置合せされたときに、少なくとも約60%のヌクレオチド塩基、一般的には少なくとも約70%、より一般的には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95−98%のヌクレオチド塩基にヌクレオチド配列一致が存在するならば、別のポリヌクレオチド配列に“実質的に相同”(または“実質的に類似”)である。
【0067】
あるいは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で別のBpmp−72ポリヌクレオチド(またはその相補ストランド)、ストランドまたはその相補鎖にハイブリダイズするときに実質的な相同または一致が存在する。選択的ハイブリダイゼーションは、低、中または高緊縮性条件下で行うことができるが、好ましくは高緊縮性条件下で行う。典型的には、少なくとも約14ヌクレオチドの連鎖にわたって少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、極めて好ましくは少なくとも約90%の一致が存在するときに選択的ハイブリダイゼーションが生じるであろう。記載したような相同性比較は、もっと長い連鎖で行ってもよく、いくつかの実施態様では、しばしば少なくとも約9ヌクレオチド、一般的に少なくとも約20ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36以上のヌクレオチドを含む連鎖で行う。
【0068】
このように、本発明のポリヌクレオチド配列は、本文中の配列表に示した配列に対して好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、もっと好ましくは少なくとも90%の相同性を有している。さらに好ましくは、少なくとも95%、いっそう好ましくは少なくとも98%の相同性が存在する。ヌクレオチドの相同性比較は後述のポリペプチドと同様にして行うとよい。好ましい配列比較プログラムは、GCG Wisconsin Bestfitプログラムである。
【0069】
本発明の文脈では、相同配列は少なくとも20、50、100、200、300、500または819ヌクレオチドの範囲の核酸レベルで配列1に示したヌクレオチド配列に少なくとも60、70、80または90%一致、好ましくは少なくとも95または98%一致するヌクレオチド配列を含むと理解される。特に、相同性は一般にタンパク質の機能に必須であることが判っている連続アミノ酸配列をコードしている配列の領域に関して考察されるべきであり、必須でない隣接の配列を考慮する必要はない。
【0070】
本発明の別の好ましいBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、配列3−配列22の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列に50、60または70%を上回る相同性、より好ましくは80、90、95または97%を上回る相同性を有している連続配列を包含する。
【0071】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列フラグメント
本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列フラグメントは、好ましくは少なくとも15ヌクレオチドの長さ、より好ましくは少なくとも20、30、40、50、100または200ヌクレオチドの長さであろう。一般的に、ポリヌクレオチド配列の長さが短いほど、選択的ハイブリダイゼーションを得るために高い相同性が必要である。従って、本発明のポリヌクレオチド配列が約30未満のヌクレオチドから構成されている場合には、本文中の配列表に示したポリヌクレオチド配列に対する一致パーセンテージが75%以上、好ましくは90%または95%以上であるのが好ましい。逆に、本発明のポリヌクレオチド配列が例えば50または100以上のヌクレオチドから構成される場合には、本文中の配列表に示したポリヌクレオチド配列に対する一致パーセンテージがもっと低い値でもよく、例えば50%以上、好ましくは60または75%以上でよい。
【0072】
Bpmp−72プローブ配列
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列に由来のプローブ配列が本発明の範囲内で考察される。これは本文中に開示した特定配列から簡便に作製できる。プローブは、Bpmp−72ポリヌクレオチドの全部または一部分にわたって該配列に特異的にハイブリダイゼーションできる任意の適当な長さでよい。
【0073】
相同度が高いほど、使用できるハイブリダイゼーションの緊縮性が高い。従って、1つの実施態様では、相同Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を同定するために低緊縮性ハイブリダイゼーション条件を使用するようにプローブを設計するのが好ましい。代替的な実施態様では、中度のハイブリダイゼーション条件を使用するようにプローブを設計する。より好ましくは高緊縮性条件を使用する。本文中の実験で示したように、Bpmp−72プローブ配列は配列1に示すようなポリヌクレオチド配列に中度の緊縮性条件下でハイブリダイズするであろう。より好ましくは高緊縮性条件下でハイブリダイズするであろう。
ハイブリダイゼーションの緊縮性が、当業者に容易に理解されるような塩基組成、相補ストランドの長さ及びハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数に加えて、塩濃度、温度または有機溶媒のような条件によって左右されることを当業者は認識している。緊縮性温度条件は一般的に30℃以上、典型的には37℃以上、好ましくは45℃以上の温度を含むであろう。緊縮性塩条件は、通常は1000mM未満、典型的には500mM未満、好ましくは200mM未満であろう。しかしながら、パラメーターの組合せはいずれかの単一パラメーターの測定値よりもはるかに重要である。緊縮性ハイブリダイゼーション条件の一例は、65℃及び0.1×SSC(1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム,pH7.0)である。
【0074】
好ましくはプローブ配列が、配列1に由来の少なくとも約8個の連続ヌクレオチド、または好ましくは約15個の連続ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約25個のヌクレオチドを有しており、少なくとも約40ヌクレオチドの最小サイズを有し得る。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を検出するための特に好ましいオリゴヌクレオチドプローブは、配列3−配列18及び実施例に示すオリゴヌクレオチド配列を含む。
【0075】
本発明のプローブは、ラベルまたはリポーター分子に付着した単離ポリヌクレオチドを含んでいてもよく、配列類似性を有している他のポリヌクレオチドを単離するために標準方法によって使用し得る。プローブを作製し標識する技術に関しては、例えば、Sambrookら,(1989)前出、または、Ausubelら,(2001)前出を参照するとよい。
【0076】
合成オリゴヌクレオチドまたは他のポリヌクレオチド配列を含む本発明のプローブはまた、天然産生または組換え操作した一本鎖または二重鎖のポリヌクレオチドから得てもよく、あるいは、化学的に合成されてもよい。プローブはニックトランスレーション、クレノウ埋戻し反応または当技術分野で公知の他の方法によって標識し得る。
【0077】
Bpmp−72プライマー配列
本発明はまたBpmp−72プライマー配列を提供する。増幅反応に使用されるプライマーは最大増幅効率を得るためには一本鎖であるのが好ましいが、二重鎖でもよい。二重鎖の場合、プライマーを先ずストランド分離処理して、その後に伸長産物の作製に使用する。プライマーは、重合誘導剤の存在下でBpmp−72伸長産物の合成をプライムすべく十分な長さを有していなければならない。プライマーの正確な長さは温度、バッファ及びヌクレオチド組成のような多くの要因に従属するであろう。
【0078】
オリゴヌクレオチドプライマーは典型的には12−20個またはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、より少数のヌクレオチドを含有してもよい。好ましくはプライマーが、配列3−配列18に示した配列から選択される。
【0079】
オリゴヌクレオチドプライマーは、慣用のホスホトリエステル法及びホスホジエステル法またはその全自動化実施態様のような何らかの適当な方法によって作製できる。このような全自動化実施態様の1つでは、ジエチルホスホラミダイトを出発材料として使用し、Beaucageら,(1981)Tetrahedron Letters,22:1859−1862に記載されたようにして合成し得る。修飾された固体支持体の上でオリゴヌクレオチドを合成する1つの方法が米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0080】
アンチセンス核酸及びリボザイム
本発明はまた、翻訳レベルでBpmp−72アミノ酸配列の発現を妨害するために使用できるアンチセンスヌクレオチド及びリボザイムの作製に及ぶ。この方法では、特異的mRNAの翻訳をブロックするためにアンチセンス核酸及びリボザイムを使用し、該mRNAをアンチセンス核酸でマスキングするかまたはリボザイムで開裂する。
【0081】
アンチセンス核酸は、特異的mRNA分子の少なくとも一部分に相補的なDNAまたはRNA分子である[Weintraub.(1990)Sci.Am.,262:40−46;Marcus−Sekura,(1988)Anal.Biochem.,172:289−295参照]。これらは細胞内部でmRNAにハイブリダイズし、二重鎖分子を形成する。細胞は、この二重鎖形態に複合化したmRNAを翻訳しない。従って、アンチセンス核酸はmRNAがタンパク質として発現することを妨害する。約15ヌクレオチドのオリゴマー及びAUG開始コドンにハイブリダイズする分子が特に効率的であろう。その理由は、それらが合成し易くまたそれらを感染細胞に導入するときにもっと大きい分子よりも問題が生じ難いからである。アンチセンス方法は多くの遺伝子のin vitro発現を阻止するために使用されてきた[Hamborら,(1988)J.Exp.Med.,168:1237−1245]。
【0082】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに多少似通った方法で他の一本鎖RNA分子を特異的に開裂する能力を有しているRNA分子である。リボザイムは、ある種のmRNAがそれ自体のイントロンを切除する能力を有しているという観察から発見された。研究者らは、これらのRNAのヌクレオチド配列を修飾することによって、RNA分子中の特異的ヌクレオチド配列を認識しそれを開裂する分子を作製することに成功した[Cech,(1988)J.Am.Med.Assoc.,260:3030−3034]。それらは配列特異的なので特定配列をもつmRNAだけを失活させる。
【0083】
研究者らは2つのタイプのリボザイム、テトラヒメナ型及び“ハンマーヘッド”型を同定した。テトラヒメナ型リボザイムは4塩基の配列を認識し、“ハンマーヘッド”型は11−18塩基の配列を認識する。認識配列が長いほど、リボザイムの発生がターゲットmRNA種内に限定され易い。従って、特異的mRNA種を失活させるためにはハンマーヘッド型リボザイムのほうがテトラヒメナ型リボザイムよりも好ましい。また、18塩基認識配列はもっと短い認識配列よりも好ましい。
【0084】
従って、本文中に記載のBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、Bpmp−72アミノ酸配列のmRNAに対するアンチセンス分子及びそのmRNAを開裂するリボザイムを作製しこれによってBpmp−72ポリヌクレオチド配列の発現を阻害するために使用し得る。
【0085】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の単離
精製形態または非精製形態のB.pilosicoliの標本をBpmp−72ポリヌクレオチド配列を単離する出発点として利用できる。このような標本は主として血液、組織材料、糞便などのような動物サンプルから、Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.,p280−281(1982)に記載された技術のような様々な技術によって選択的に抽出される。
【0086】
抽出したサンプルが精製されていないときは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を単離する前にサンプルの細胞または細菌細胞膜を開くために有効な量の試薬でサンプルを処理し、(1つまたは複数の)核酸の(1つまたは複数の)ストランドを露出及び/または分離させるとよい。
【0087】
B.pilosicoliゲノム材料を遊離した後、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を増幅及び/または単離するためにいくつかの方法が存在する。このような方法の詳細はSambrookら,(1989)前出またはAusubelら,(2001)前出、から得られる。
【0088】
PCRは恐らく、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を最初に増幅するために使用できるよく知られた方法の1つであり、本発明でも好ましく使用される。増幅される特異的Bpmp−72ポリヌクレオチド配列は長い分子の一部分でもよく、または、最初から特異的配列が完全核酸を構成するような独立分子として存在してもよい。増幅される配列が最初から純粋形態で存在する必要はない。配列は、B.pilosicoliの全DNAに含まれているような複合混合物の小部分であってもよい。
【0089】
PCRプロセスでは、適量のデオキシリボヌクレオチド三リン酸dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを個別にまたはプライマーと一緒に合成混合物に添加し、得られた溶液を約90−100℃で約1−10分間、好ましくは1−4分間加熱する。この加熱期間の後、溶液は冷やされる。プライマーハイブリダイゼーションにはこの溶液が好ましい。冷却した混合物に、プライマー伸長反応を惹起するために適当な補佐物質(本文中では“重合剤”と呼ぶ)を添加し、当技術分野で公知の条件下で反応を生じさせる。重合剤が熱安定性ならば重合剤を他の試薬と一緒に添加してもよい。この合成(または、増幅)反応は、室温から重合剤が機能しない高温までの温度範囲で生じ得る。従って、例えば重合剤としてDNAポリメラーゼを使用するときは、温度は一般に約40℃以下である。反応を室温で行うのが最も簡便である。
【0090】
新しく合成したBpmp−72ストランド及びその相補核酸ストランドは上述のハイブリダイズ条件下で二重鎖分子を形成するであろう。このハイブリッドを次の段階のプロセスで使用する。
【0091】
変性、アニーリング及び伸長産物合成の段階をターゲットBpmp−72ポリヌクレオド配列が検出に必要な程度に増幅するまで必要回数繰り返す。産生された特異的Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の量は指数関数的に累積するであろう。このような増幅反応はPCR.A Practical Approach,ILR Press,Eds.M.J.McPherson,P.Quirke & G.R.Taylor,1992、により詳細に記載されている。
【0092】
Bpmp−72ポリヌクレオチド増幅産物は放射性プローブを使用しないでサザンブロット分析によって検出し得る。このようなプロセスでは、例えば、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の核酸配列を極めて低いレベルで含有しているDNAの少量サンプルを増幅し、サザンブロット法または同様のドットブロット分析を使用して分析する。高レベルの増幅シグナルによって非放射性プローブまたはラベルの使用が容易になる。あるいは、増幅産物を検出するために使用するプローブを本文中に記載するように直接的または間接的に検出可能に標識することもできる。
【0093】
本発明の方法によって増幅した配列を更に、溶液中でまたは固体支持体に結合させた後で、PCR、オリゴマー制限[Saikiら,(1985),Bio/Technology,3:1008−1012]、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析[Connerら,(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:278]、オリゴヌクレオチド結合アッセイ[Landgrenら,(1988),Science,241:1007]、などのような特異的DNA配列の検出に常用の方法のいずれかによって評価、検出、クローニング、配列決定などができる。
複数の代替的増幅方法が文献に記載されておりこれらも本発明に使用できる。これらの代替的増幅系の非限定例は、自立性配列複製、核酸配列に基づく増幅(これは逆転写及びT7 RNAポリメラーゼを使用し、そのサイクリングスキームをターゲットするために2つのプライマーを組込む)である。あるいは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を結合活性化転写またはリガーゼ連鎖反応または修復鎖反応核酸増幅技術によって増幅することもできる。
【0094】
Bpmp−72ポリヌクレオチド構築物及びベクター
別の実施態様によれば、本発明はBpmp−72アミノ酸配列の作製方法を提供する。該方法は、(a)本文中に記載のような細胞をBpmp−72アミノ酸配列が発現する条件下で培養する段階と、(b)発現したBpmp−72配列を回収する段階とを含む。この手順にまた、(c)当技術分野で公知の適当な手段のいずれかを使用してアミノ酸配列をクロマトグラフィー処理する段階、及び/または、アミノ酸配列にタンパク質精製処理を行う段階を付け加えてもよい。
【0095】
Bpmp−72アミノ酸配列を発現できる細胞を産生するために、好ましくは本発明のポリヌクレオチド配列を組換えベクターに取込ませ、次いでこのベクターを原核性または真核性の宿主細胞に導入する。
【0096】
本発明によって提供されるベクターは典型的には、所望のアミノ酸配列をコードしているBpmp−72ポリヌクレオチド配列と、好ましくはアミノ酸コーディング配列に作動可能に連結された転写及び翻訳開始の調節配列とを含むであろう。このような発現ベクターの例は、Sambrookら,(1989)前出またはAusubelら,(2001)前出に記載されている。多くの有用なベクターが当技術分野で公知であり、このようなベクターは、Stratagene,New England Biolabs,Promega Biotechなどから得ることができる。
【0097】
発現ベクターはまた、例えば、複製起点または自律複製配列及び発現調節配列、プロモーター、エンハンサー、及び、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写終了配列、及び、mRNA安定化配列のような必要なプロセシング情報部位を含み得る。また、同一の種または類縁の種の分泌ポリペプチドからの分泌シグナルを適宜含ませてもよく、これらは、タンパク質が細胞膜を透過及び/または細胞膜に滞留できるようにしてその機能的トポロジーに到達させるかまたは細胞から分泌させる。このようなベクターは、例えばSambrookら,(1989)前出またはAusubelら,(2001)前出に記載されている当技術分野で公知の標準組換え技術を用いて作製できる。
適当なプロモーター及び他の必要なベクター配列は宿主体内で機能できるように選択されるであろう。これらの配列は、適当な場合には外膜リポタンパク質遺伝子と天然に結合している配列を含み得る。
【0098】
trp、lac及びファージプロモーター、tRNAプロモーター、解糖酵素プロモーターのようなプロモーターは原核細胞宿主中で使用し得る。有用な酵母プロモーターは、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリーレートキナーゼ、または、エノラーゼもしくはグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼのような他の解糖酵素、マルトース及びガラクトースの利用を担当する酵素などに対するプロモーター領域を含む。酵母発現に使用するための適当なベクター及びプロモーターは、Hitzemanら,欧州特許公開EP73,675Aに詳細に記載されている。適当な非天然型哺乳類プロモーターは、SV40由来の初期及び後期プロモーターまたはマウスのモロニー白血病ウイルス、トリ肉腫ウイルス、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルスまたはポリオーマに由来のプロモーターなどであろう。更に、遺伝子の多数コピーが作製されるように構築物を適当なエンハンサー及び他の発現コントロール配列用の増幅可能な遺伝子(例えば、DHFR)に接合してもよい。
【0099】
このような発現ベクターは自律複製するであろうが、当技術分野で公知の方法によって宿主細胞のゲノムに挿入することによって複製させてもよい。
【0100】
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカー、すなわちベクターによって形質転換された宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードしている遺伝子を含有している可能性が大きい。この遺伝子の存在はインサートを発現する宿主細胞だけを確実に増殖させる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒物、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートなどに耐性を与えるタンパク質、(b)栄養要求性欠損を相補するタンパク質、または、(c)複合培地から利用できない臨界栄養素を供給するタンパク質、をコードしている遺伝子であり、例えばバチルス属(Bacilli)のD−アラニンラセマーゼをコードしている遺伝子がある。適切な選択可能マーカーの選択は宿主細胞に従属し、種々の宿主細胞に適したマーカーは当技術分野で公知である。
【0101】
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を含有しているベクターをin vitro転写し、得られたRNAを当技術分野で公知の方法例えば注入によって宿主細胞に導入できる。または、ベクターを当技術分野で公知の方法で宿主細胞に直接的に導入することもできる。方法は細胞宿主の種類次第で違っており、例えば、電気穿孔;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたはその他の物質を使用するトランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;感染(ベクターがレトロウイルスゲノムのような感染物質であるとき);及びその他の方法がある。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の宿主細胞内導入には、特に上記のような方法を含む当技術分野で公知の方法のいずれかを使用するとよい。
【0102】
本発明はまた、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。好ましい宿主細胞は、酵母、繊維性真菌類、植物細胞、昆虫、両生類、鳥類、細菌、哺乳類細胞及び組織培養したヒト細胞、などである。このような宿主細胞の代表例は、大腸菌、Pseudomonas、Bacillus、Streptomyces、酵母、CHO、R.1.1、B−W、L−M、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10及びSf9細胞から成るグループから選択される。
【0103】
本発明のBpmp−72ポリヌクレオチド配列は、ベクターまたは他の発現ベクターに入れたBpmp−72ポリヌクレオチド配列またはその部分を適合性の原核性または真核性の宿主細胞中で発現させることによって量産できる。最も常用の原核細胞宿主は、大腸菌(Echerichia coli)の菌株であるが、枯草菌(Bacillus subtilis)またはPseudomonasのような他の原核細胞も使用し得る。常用の哺乳類宿主細胞系の例は、VERO及びHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び、W138、BHK及びCOS細胞系であるが、その他にも適当な細胞系が存在することが当業者には理解されよう。
【0104】
また、Bpmp−72アミノ酸配列のコーディング配列の機能的近傍に発現調節配列を挿入する相同的組換えイベントによってBpmp−72アミノ酸配列をより高度に発現するようにin vitro修飾したBpmp−72ポリヌクレオチド配列を含有する哺乳類細胞が提供される。
【0105】
Bpmp−72アミノ酸配列に対する抗体
本発明によれば、組換えまたは化学合成によって産生されたBpmp−72アミノ酸配列及びそのフラグメントまたは他の誘導体またはアナローグ(融合タンパク質を含む)は、Bpmp−72アミノ酸配列を認識する抗体を発生させる免疫原として使用し得る。このような抗体の非限定例は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fabフラグメント及びFab発現ライブラリーである。
【0106】
分子は、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体のような免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用できるとき“抗原性”である。抗原性アミノ酸配列は、少なくとも約5個、好ましくは少なくとも約10個のアミノ酸を含有している。分子の抗原性部分は、抗体またはT細胞受容体を認識する免疫優性部分であってもよく、または、免疫感作用キャリアー分子に抗原性部分をコンジュゲートすることによって分子に抗体を発生させるために使用される部分であってもよい。抗原性である分子はそれ自体が免疫原性である必要はない。即ち、キャリアーなしで免疫応答を誘発できる必要はない。
【0107】
“抗体”は特異的エピトープに結合する抗体及びそのフラグメントのような免疫グロブリンのいずれかである。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びキメラ抗体を包含する。キメラ抗体については米国特許第4,816,397号及び第4,816,567号により詳細に記載されている。抗体という用語はまた、Fab、F(ab’)2及びF(v)のような抗体(一本鎖抗体を含む)の抗原結合部分を包含する。従って、本文中で使用した様々な文法的形態の“抗体分子”という用語は、完全形(intact)の免疫グロブリン分子及び抗体結合部位を含有している免疫グロブリン分子の免疫活性部分の双方を考察している。“抗体結合部位”は、抗原と特異的に結合するH鎖及びL鎖の可変領域及び超可変領域から成る抗体分子の構造部分である。
【0108】
代表的な抗体分子は、完全形の免疫グロブリン分子、実質的に完全形の免疫グロブリン分子、及び、免疫グロブリン分子のパラトープ含有部分、例えば当技術分野でFab、Fab’、F(ab’)2及びF(v)として公知の部分である。このような部分は本文中に記載の治療方法に好ましく使用される。
【0109】
抗体分子のFab及びF(ab’)2部分はそれぞれ、当技術分野で公知の方法によって実質的に完全形の抗体分子をパパイン及びペプシンでタンパク質分解反応させることによって作製できる。例えば、Theofilopolousらの米国特許第4,342,566号参照。Fab’抗体分子部分も当技術分野で公知であり、2つのH鎖部分を連結しているジスルフィド結合をメルカプトエタノールで還元し、次いで得られたタンパク質メルカプタンをヨードアセトアミドのような試薬でアルキル化することによってF(ab’)2部分から作製される。本発明では完全形抗体分子を含有している抗体が好ましい。
【0110】
多様な文法的形態の“モノクローナル抗体”という表現は、特定抗原と免疫反応できる抗体結合部位を一種類しか有していない抗体を意味する。従ってモノクローナル抗体は典型的には、該抗体が免疫反応するいかなる抗原に対しても単一の結合親和性を示す。従ってモノクローナル抗体は、各々が異なる抗原に免疫特異的な複数の抗体結合部位を有している抗体分子、例えば、バイスペシフィック(キメラ)モノクローナル抗体を含有し得る。
【0111】
“アジュバント”という用語は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を意味する。アジュバントは、抗原を緩やかに放出する組織デポーとして機能でき、また、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化物質として機能できる[Hoodら,Immunology,p.384,Second Ed.,Benjamin/Cummings,Menlo Park,California(1984)]。アジュバントの非存在下の抗原単独による一次抗原投与は体液性または細胞性の免疫応答の誘発に成功しないことがしばしば生じるであろう。アジュバントの非限定例は、完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバント、サポニン、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リソレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール及び潜在的に有用なヒトアジュバント例えばBCG(Bacille Calmette Guerin)及びCorynebacterium parvumである。医薬的に許容されるアジュバントが好ましい。
【0112】
Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナローグに対するポリクローナル抗体を産生するために当技術分野で公知の様々な手順を使用し得る。抗体産生のためには、Bpmp−72アミノ酸配列またはその誘導体(例えば、フラグメントまたは融合タンパク質)を注射することによって、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを非限定例とする種々の宿主動物を免疫する。1つの実施態様では、Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを免疫原性キャリアー、例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートさせる。宿主の種次第では、免疫応答を増強するために、フロインドアジュバント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リソレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールを非限定例とする種々のアジュバント及びBCG(bacille Calmette−Guerin)やCorynebacterium parvumなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを使用し得る。
【0113】
Bpmp−72アミノ酸配列、または、そのフラグメント、アナローグもしくは誘導体に対するモノクローナル抗体を作製するためには、連続培養細胞系によって抗体分子を産生させる技術のいずれかを使用し得る。これらの非限定例は、Kohlerら,(1975)Nature,256:495−497によって最初に開発されたハイブリドーマ技術、トライオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術[Kozborら,(1983)Immunology Today,4:72]、及び、ヒトモノクローナル抗体を産生させるEBVハイブリドーマ技術[Coleら,(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp.77−96,Alan R.Liss,Inc.]などである。不死の抗体産生細胞系は、腫瘍原性DNAによるBリンパ球の直接形質転換またはエプスタイン・バールウイルスによるトランスフェクションのような融合以外の技術によって創製できる。例えば、米国特許第4,341,761号、第4,399,121号、第4,427,783号、第4,444,887号、第4,451,570号、第4,466,917号、第4,472,500号、第4,491,632号及び第4,493,890号を参照するとよい。
【0114】
本発明の追加の実施態様では、最新技術を使用してモノクローナル抗体を無菌動物で産生できる。本発明によれば、ニワトリまたはブタの抗体を使用でき、これらの抗体は、ニワトリもしくはブタのハイブリドーマを使用することによってまたはB細胞をEBVウイルスでin vitro形質転換することによって得ることができる。実際、本発明によれば、Bpmp−72アミノ酸配列に特異的なマウス抗体分子に由来の遺伝子を適当な生物活性の抗体分子に由来の遺伝子とスプライシングすることによって“キメラ抗体”を産生するために開発された技術[Morrisonら,(1964)J.Bacteriol.,159−870;Neubergerら,(1984)Nature,312:604−608;Takedaら,(1985)Nature,314:42−454]を使用できる。このような抗体は本発明の範囲内である。腸の疾患または障害(前出)の治療にはこのようなキメラ抗体の使用が好ましい。何故ならばこのような抗体はそれ自体の免疫応答、特にアレルギー性応答を誘発することが異種間抗体よりもはるかに少ないからである。
【0115】
本発明によれば、一本鎖抗体産生用に記載された技術(米国特許第4,946,778号)をBpmp−72アミノ酸配列特異的一本鎖抗体の産生に応用できる。本発明の追加の実施態様は、Fab発現ライブラリー構築用に記載された技術[Huseら,(1989)Science,246:1275−1281]を利用して、Bpmp−72アミノ酸配列またはその誘導体もしくはアナローグに対して所望の特異性を有しているモノクローナルFabフラグメントを迅速かつ容易に同定できる。
【0116】
抗体分子のイディオタイプを含有している抗体フラグメントは公知の技術によって作製できる。このようなフラグメントの非限定例は例えば、抗体分子のペプシン消化によって生じるF(ab’)2フラグメント、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生じるFab’ フラグメント、及び、抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって生じるFabフラグメントである。
【0117】
抗体産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当技術分野で公知の技術、例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA、“サンドイッチ”イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位体ラベルの使用)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体固定アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどによって行うことができる。1つの実施態様では、第一抗体のラベルを検出することによって抗体結合を検出する。別の実施態様では、第一抗体への第二抗体または試薬の結合を検出することによって第一抗体を検出する。また別の実施態様では、第二抗体を標識する。イムノアッセイ中の結合を検出するために多くの手段が当技術分野で公知であり、これらは本発明の範囲内である。例えば、Bpmp−72アミノ酸配列の特異的エピトープを認識する抗体を選択するためには、形成されたハイブリドーマを試験して、該エピトープを含有しているBpmp−72アミノ酸配列フラグメントに結合する産物の有無を検査すればよい。特定の動物種からBpmp−72アミノ酸配列に特異的な抗体を選択するためには、該動物種の細胞によって発現されているかまたは細胞から単離されたBpmp−72アミノ酸配列への陽性結合に基づいて選択できる。
【0118】
診断
別の実施態様によれば、本発明は、Bpmp−72アミノ酸配列及び/または該配列に由来の抗体及び/またはBpmp−72ポリヌクレオチド配列を使用する、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の存在を検出する診断及び予後観察方法を提供する。
【0119】
診断及び予後観察方法は一般に、ニワトリまたはブタのような動物から得られた生物サンプルを使用して行う。“サンプル”は、動物から採取したB.pilosicoliのポリヌクレオチドまたはポリペプチドのようなBrachyspira種を含有する疑いのある組織または流体のサンプルを意味しており、その非限定例は、血漿、血清、糞便サンプル、組織及びin vitro細胞培養成分のサンプルである。
【0120】
ポリペプチド/抗体に基づく診断
本発明はサンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を検出する方法を提供する。該方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列を含有する疑いのあるサンプルを、抗体とBpmp−72アミノ酸配列とを含む反応複合体が形成できる条件下でBpmp−72アミノ酸配列に特異的に結合する抗体(好ましくは固体支持体に結合されている)に接触させる段階と、(b)サンプル中の抗体とBpmp−72アミノ酸配列とを含む反応複合体の形成を検出する段階とを含み、反応複合体の検出がサンプル中のBpmp−72アミノ酸配列の存在を示す指標となる。
【0121】
好ましくは、この方法に使用される抗体が、アフィニティ精製ポリクローナル抗体、より好ましくはmAbに由来する。更に、本発明に使用される抗体分子はFab、Fab’、F(ab’)2もしくはF(v)部分または完全抗体分子の形態であるのが好ましい。
【0122】
上記方法に基づくB.pilosicoliのようなBrachyspira種の特に好ましい検出方法は、ELISA、ラジオイムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ並びにモノクローナル及び/またはポリクローナル抗体を使用するサンドイッチアッセイのような免疫酵素アッセイである。
【0123】
このような手順のうちでも特に有用な3つの手順では、検出可能ラベルで標識されたBpmp−72アミノ酸配列(またはそのフラグメント)、検出可能ラベルで標識された抗体Ab1、または、検出可能ラベルで標識された抗体Ab2を利用する。この手順を以下の等式によって要約する。式中の星印は、粒子が標識されていることを表し、“AA”はBpmp−72アミノ酸配列を表す。
A.AA*+Ab1=AA*Ab1
B.AA+Ab1*=AAAb1*
C.AA+Ab1+Ab2*=Ab1AAAb2*
当業者はこのような手順及びそれらの使用に精通しており、従って、本発明の範囲内で使用し得る。“競合”手順である手順Aは米国特許第3,654,090号及び第3,850,752号に記載されている。手順Bは公知の競合アッセイ技術の代表である。手順Cは“サンドイッチ”手順であり、米国特許RE31.006及び第4,016,043号に記載されている。“二重抗体”または“DASP”手順のようなまた別の手順も知られている。
【0124】
どの場合にも、Bpmp−72アミノ酸配列が1つまたは複数の抗体または結合相手と共に複合体を形成し、複合体の一方の構成要素は検出可能ラベルで標識されている。複合体が形成されたという事実及び所望の場合にはその量は、ラベル検出に応用できる公知の方法によって判定できる。
【0125】
上記の記載より、Ab2の特性がAb1と反応することであるというのは理解されよう。その理由は、1つの哺乳動物種で感作されたAb1が別の種で抗体Ab2を感作する抗原として使用されるからである。例えば、抗原としてウサギ抗体を使用し、ヤギの体内でAb2を感作する。従ってAb2はヤギで感作された抗ウサギ抗体であろう。本明細書及び特許請求の範囲では、Ab1を第一抗体と呼び、Ab2を第二抗体または抗Ab1抗体と呼ぶ。
これらの研究で最も多く使用されたラベルは放射性元素、酵素、紫外光線に照射されると蛍光を発する化学物質、などである。
【0126】
複数の蛍光材料が公知であり、ラベルとして使用できる。これらの例は、フルオレセイン、ローダミン及びオーラミンを含む。特定の検出材料はヤギに産生させイソチオシアナートによってフルオレセインにコンジュゲートした抗ウサギ抗体である。
【0127】
また、Bpmp−72アミノ酸配列またはそれらの結合相手を放射性元素または酵素で標識してもよい。放射性ラベルは現在入手可能な計測手段のいずれかによって検出できる。好ましい同位体は、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I及び188Reから選択するとよい。
【0128】
酵素ラベルも有用であり、現在利用されている比色法、分光光度法、蛍光分光光度法、電流測定法またはガス測定法のいずれかによって検出できる。酵素を、カルボジイミド、ジイソシアナート、グルタルアルデヒドなどの架橋分子と反応させることによって選択された粒子にコンジュゲートする。これらの手順で使用できる多くの酵素が公知であり、利用できる。好ましい酵素は、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼである。代替的標識材料及び方法の開示例として米国特許第3,654,090号、第3,850,752号及び第4,016,043号を挙げることができる。
【0129】
本発明はまた、生物サンプル中の腸スピロヘーター感染症の抗体を検出する方法を提供する。該方法は、(a)Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを用意する段階と、(b)生物サンプルを該アミノ酸配列と共に抗体抗原複合体が形成できる条件下でインキュベートする段階と、(c)該アミノ酸配列を含む抗体抗原複合体が形成された否かを判断する段階とを含む。
【0130】
本発明の別の実施態様では、生物サンプル中のBpmp−72抗体のレベルをin vitro評価する方法が提供される。該方法は、(a)上述の方法に従って生物サンプル中の反応複合体の形成を検出する段階と、(b)形成された反応複合体の量を評価する段階とを含み、この反応複合体の量が生物サンプル中のBpmp−72抗体のレベルに対応する。
【0131】
更に、動物宿主体内のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患の治療処置をin vitroモニターする方法が提供される。該方法は、このような治療処置を受けている動物宿主から種々の時点に採取した一連の生物サンプル中のBpmp−72抗体のレベルを評価する段階を含む。
【0132】
核酸に基づく診断
本発明は更に、生物サンプル中のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の有無を検出する方法を提供する。該方法は、(a)適正なハイブリダイズ条件下で生物サンプルを本発明のBpmp−72ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドプローブまたはプライマーに接触させる段階と、(b)プローブまたはプライマーとサンプル中の核酸との間に形成された二重鎖を検出する段階とを含む。
【0133】
本発明の1つの実施態様によれば、B.pilosicoliのようなBrachyspira種の検出は、公知の技術を使用して生物サンプルからBpmp−72ポリヌクレオチド配列を直接的に増幅し、次いでBpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出することによって行う。
【0134】
本発明の1つの形態では、ターゲット核酸配列をPCRによって増幅し、次いで上述の特異的方法のいずれかを使用して検出する。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出する他の有用な診断技術の非限定例は、(1)対立遺伝子特異的PCR、(2)一本鎖コンホメーション解析、(3)変性用勾配ゲル電気泳動、(4)RNアーゼ保護アッセイ、(5)大腸菌mutSタンパク質のようなヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質の使用、(6)対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、及び、(7)蛍光in situハイブリダイゼーションなどである。
【0135】
上記方法に加えて、慣用のプローブテクノロジーによってBpmp−72ポリヌクレオチド配列を検出してもよい。Bpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出するためにプローブを使用するとき、所望の場合には血液または血清のような分析すべき生物サンプルに核酸抽出処理を施す。サンプルのポリヌクレオチド配列を様々なやり方、例えば、変性、制限消化、電気泳動またはドットブロット法で処理してターゲット配列の検出が容易になるように準備する。サンプルのポリヌクレオチド配列のターゲット領域は通常は、プローブのターゲティング配列とハイブリッドを形成するために少なくとも部分的に一本鎖でなければならない。配列が天然に一本鎖であるときは変性が不要であろう。しかしながら、配列が二重鎖であるならば、配列を変性することが必要であろう。変性は当技術分野で公知の種々の技術によって行うことができる。
【0136】
サンプルポリヌクレオチド配列及びプローブをプローブ中のターゲット配列とサンプル中の推定Bpmp−72ポリヌクレオチド配列との安定なハイブリッド形成が促進される条件下でインキュベートする。擬陽性を防止するために好ましくは高緊縮性条件を使用する。ハイブリッドが得られたならば、得られたハイブリッドの検出を一般には標識プローブを使用して行う。あるいは、プローブを標識せず、標識されているリガンドとの特異的結合によって直接的または間接的に検出することも可能である。適当なラベル並びにプローブ及びリガンドの標識方法は当技術分野で公知であり、例えば、公知の方法(例えば、ニックトランスレーション、ランダムプライミングまたはキナーゼ処理)によって取込ませる放射性ラベル、ビオチン、蛍光基、化学発光基(例えば、ジオキセタン、特に励起されたジオキセタン)、酵素、抗体などがある。この基礎的スキームの変更は当業者に公知であり、検出すべきハイブリッドを外来材料から分離し易くするような変更及び/または標識部分からのシグナルを増幅するような変更がある。
【0137】
また、本発明の核酸プローブアッセイにBpmp−72ポリヌクレオチド配列を検出できる核酸プローブカクテルを使用することも本発明の範囲内で考察できる。従って、1つの例では、細胞サンプル中のBpmp−72ポリヌクレオチド配列の存在を検出するために、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列に相補的な2つ以上のプローブを使用する。具体的には、異なるプローブの数は2、3または5種類の異なる核酸プローブ配列である。
【0138】
核酸アレイ−“DNAチップ”テクノロジー
Bpmp−72ポリヌクレオチド配列(好ましくはプローブの形態)はまた、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種を検出するために固相支持体に固定してもよい。あるいは、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列が、B.pilosicoliのようなBrachyspira種から複数の異なる遺伝子を同時に検出するために使用できるDNA分子ライブラリーの一部を形成してもよい。本発明の別の代替形態では、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列を他のポリヌクレオチド配列(例えば、他の細菌またはウイルスに由来)と共に固体支持体に固定し、固体支持体に結合したB.pilosicoliのようなBrachyspira種及び/または他のポリヌクレオチド配列の存在を同定できるようにしてもよい。
【0139】
DNA分子の固定ライブラリーを作製する技術は当技術分野の文献に記載されている。一般に、従来技術の大抵の方法は、例えば固体基板の種々の不連続位置に種々の配列の順列を形成するマスキング技術を使用した一本鎖核酸分子ライブラリーの合成を記載している。米国特許第5,837,832号は、超大規模集積テクノロジーに基づいてシリコン基板に固定したDNAアレイを製造する改良方法を記載している。具体的には米国特許第5,837,832号は、基板の空間的に規定された位置に特定のプローブセットを合成するための“タイリング”と呼ばれる戦略を記載しており、これは本発明の固定DNAライブラリーを作製するために使用できる技術である。米国特許第5,837,832号はまた、同じく使用可能なもっと初期の技術の参考文献を提供している。このように、ポリヌクレオチド配列プローブは基板の表面でin situに合成し得る。
【0140】
あるいは、固体基板から離れて一本鎖分子を合成し、予め合成した配列の各々を固体基板の不連続位置に付着させてもよい。例えば、ピンまたは圧電デバイスを備えたロボットデバイスを使用してポリヌクレオチド配列を基板に直接的にプリントしてもよい。
【0141】
ライブラリー配列は典型的には、固体基板上のまたは固体基板中の不連続領域に固定される。基板は、基板の内部に固定することが可能な多孔質基板でもよく、または、実質的に非多孔質でもよく、その場合には、ライブラリー配列が典型的には基板の表面に固定される。固体基板はポリペプチドが直接的または間接的に結合できるいかなる材料から製造されてもよい。適当な固体基板の例は、平坦ガラス、シリコンウェーハ、マイカ、セラミックス、及び、例えばポリスチレン、ポリメタクリレートなどのプラスチックのような有機ポリマーである。また、ニトロセルロース膜またはナイロン膜のような半透膜を使用することも可能であり、これらは広く出回っている。半透膜をガラスのようなもっと強固な固体表面に取り付けてもよい。場合によっては金、白金または他の遷移金属のような金属層で表面をコートしてもよい。適当な固体基板の特定例は、市販のBioCoreTMチップ(Pharmacia Biosensors)である。
【0142】
好ましくは固体基板が一般には剛性または半剛性の表面をもつ材料である。好ましい実施態様では、基板の少なくとも1つの表面が実質的に平坦であろうが、いくつかの実施態様では、異なるポリマー用の合成領域を例えば隆起領域または腐食溝などによって物理的に分離するのが望ましいこともあろう。また、固体基板が50−100μmの不連続区域で高密度のDNA配列付着に適しているのが好ましい。この場合、10000〜40000ドット/cm−2の密度を与える。
【0143】
固体基板をセクションに分割するのが便利である。これは、ホトエッチングのような技術によって、または、疎水性インキ例えばテフロン基剤のインキ(Cel−line,USA)を塗布することによって行うとよい。
【0144】
ライブラリーの異なる構成員の各々を配置する不連続位置は例えば円形、長方形、楕円形、楔形などの適当な形状を有し得る。
ポリヌクレオチド配列を基板に付着させるには共有結合または非共有結合を利用し得る。ポリヌクレオチド配列は、ライブラリー配列が結合している分子の層を介して基板に付着し得る。例えば、ポリヌクレオチド配列をビオチンで標識し、基板をアビジン及び/またはストレプトアビジンでコートする。ビオチン化ポリヌクレオチド配列の使用によって得られる利点は、固体基板への結合効率を容易に測定できることである。ポリヌクレオチド配列はある種の固体基板には結合し難いので、固体基板(例えばガラスの場合)と核酸配列との間に化学的インターフェースを設けることがしばしば必要である。適当な化学的インターフェースの例はヘキサエチレングリコールである。別の例はポリリシンでコートしたガラスの使用である。この場合ポリリシンはアフィニティリガンドを導入するために標準手順によって化学的に修飾される。カップリング剤を使用して固体基板の表面に分子を付着させる別の方法が当技術分野で公知である。例えば、国際特許WO98/49557参照。
【0145】
相補的ポリヌクレオチド配列が固定核酸ライブラリーに結合したことは、固定したポリヌクレオチド配列の光学特性値の変化(即ち、臭化エチジウムの使用)またはフルオロホアで標識したポリペプチドのような標識核酸の使用などの種々の手段によって判断できる。ラベルの使用が不要な他の検出技術は、音響光学法、反射測定法、偏光解析法、表面プラスモン共鳴法(国際特許WO97/49989参照)のような光学技術である。
【0146】
従って本発明は、少なくとも1種類の本発明のポリヌクレオチド、好ましくは異なる2種類以上の本発明のポリヌクレオチド配列が固定された固体基板を提供する。好ましい実施態様では固体基板が更に、Bpmp−72ポリヌクレオチド配列以外の遺伝子に由来のポリヌクレオチド配列を含む。
【0147】
治療的使用
本発明はまた予防薬または治療薬として使用できる。これらはニワトリ及びブタのような動物の体内の体液性及び細胞性応答を刺激し、これによってB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種のコロニー化を防御する目的で使用し得る。B.pilosicoliのようなBrachyspira種の自然感染は、Bpmp−72に対する循環抗体価を誘発する。従って、Bpmp−72アミノ酸配列またはその部分は、腸スピロヘーター感染症を防御するために全身的または経口的に投与される予防薬または治療薬の基剤を形成する可能性を有している。
【0148】
従って1つの実施態様で本発明は、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合された治療有効量でBpmp−72アミノ酸配列もしくはそのフラグメント、または、該アミノ酸配列に結合する抗体もしくは本文中に記載のポリヌクレオチド配列を提供する。
本文中に使用した“治療有効量”という表現は、動物宿主の活性、機能及び応答の臨床的に有意な不全を少なくとも約15%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%軽減し、最も好ましくはこのような不全を防止するために十分な量を意味する。あるいは、治療有効量は、動物宿主の状態の臨床的に有意な改善を生じさせるために十分な量を意味する。
【0149】
“医薬的に許容される”という表現は、生理的に寛容であり、典型的には、動物に投与されたときにアレルギー反応または同様の不都合な反応、例えば胃の不調などを生じさせない分子完全体及び組成物を表す。“担体”という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒介物を表す。このような医薬担体は、滅菌液体、例えば水、及び、石油、動物もしくは植物に由来するかまたは合成した油であり、ピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などがある。水または生理的塩類溶液、デキストロース及びグリセロールの水溶液が、特に注射液用担体として好ましく使用される。適当な医薬担体は、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,(1990)に記載されている。
【0150】
本発明のより特定的な形態では、治療有効量のBpmp−72アミノ酸配列またはそのアナローグ、フラグメントもしくは誘導産物、または、これらに対する抗体を、医薬的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/または担体と共に含む医薬組成物が提供される。また、ヒアルロン酸を用いてもよい。このような組成物は、種々のバッファ含量(例えば、トリス−HCl、アセテート、ホスフェート)、pH及びイオン強度の希釈剤と、界面活性剤及び可溶化剤(例えば、トゥイーン80、Polysorbate80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ亜硫酸水素ナトリウム)、保存剤(例えば、チメルソール、ベンジルアルコール)のような添加剤及び増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含む。材料はポリ乳酸、ポリグリコール酸などのような高分子化合物の微粒状調製物に組み込んでもよく、または、リポソームに組み込んでもよい。また、ヒアルロン酸を用いてもよい。このような組成物は、本発明のタンパク質及び誘導体の物理的状態、安定性、in vivo放出速度、及び、in vivoクリアランス速度に影響を与える。例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435−1712頁参照。該文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。組成物は液体形態に調製してもよく、または、凍結乾燥形態のような乾燥粉末として調製してもよい。
【0151】
投与
本発明に従って提供される医薬組成物が当技術分野で公知のいずれかの手段によって投与できることは理解されよう。好ましくは、投与すべき医薬組成物を、注射、経口、または、肺、鼻腔経路で投与する。Bpmp−72アミノ酸配列または該配列に由来の抗体はより好ましくは静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内または皮下への投与経路によって運搬される。あるいは、適正に配合されたBpmp−72アミノ酸配列または該配列に由来の抗体は鼻腔または経口投与によって投与できる。
【0152】
ポリヌクレオチド主体の治療方法
本発明はまた、B.pilosicoliに関連する疾患を変調する医薬を製造するために本発明のポリヌクレオチド配列、並びに、本発明のBpmp−72アミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチド配列にハイブリダイズ可能なアンチセンス及びリボザイムポリヌクレオチド配列を使用することについて述べている。
【0153】
治療方法に使用するアンチセンス構築物またはリボザイムをコードしているポリヌクレオチド配列は望ましくは無被覆の核酸構築物として直接的に投与される。細菌細胞による無被覆核酸構築物の取込みはいくつかの公知のトランスフェクション技術、例えば、トランスフェクション補佐物質の使用を含む技術によって増進される。これらの補佐物質の例は、カチオン性物質(例えば、リン酸カルシウム及びDEAE−デキストラン)及びリポフェクタント(例えば、lipofectamTM及びtransfectamTM)である。典型的には、核酸構築物をトランスフェクション補佐物質と混合して組成物を製造する。
【0154】
あるいは、アンチセンス構築物またはリボザイムを医薬的に許容される担体または希釈剤と合せて医薬組成物を製造してもよい。適当な担体及び希釈剤は、例えば、リン酸塩緩衝生理的塩類溶液のような等張性塩類溶液である。非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮的に投与するように組成物を配合し得る。
【0155】
記載の投与経路は単なる指針であり、当業者は特定の動物及び状態に最適の投与経路及び薬用量を容易に決定できるであろう。
【0156】
薬物スクリーニングアッセイ
本発明はまた、Bpmp−72アミノ酸配列に結合する物質を同定するための適当なアッセイを提供する。更に、Bpmp−72アミノ酸配列を妨害する物質を同定するための適当なアッセイが提供される。また、in vitro予備アッセイで同定された候補物質の完全形細胞に対する効果を全細胞アッセイで試験するアッセイも提供される。
【0157】
1つのタイプのアッセイでは、Bpmp−72アミノ酸配列に結合する物質を同定するために、固体支持体に固定させたBpmp−72アミノ酸配列を非固定の候補物質に接触させ、Bpmp−72アミノ酸配列と候補物質との互いの結合の有無及び/または結合の程度を定量する段階を含む。あるいは、候補物質を固定し、Bpmp−72アミノ酸配列を非固定にしてもよい。
【0158】
好ましい1つのアッセイ方法では、Bpmp−72アミノ酸配列をアガロースビーズのようなビーズに固定する。この方法は典型的には、細菌、酵母またはより高等な真核細胞系中で成分をGST−融合タンパク質として発現させ、グルタチオン−アガロースビーズを使用して粗細胞抽出物からGST−融合タンパク質を精製する。次に、固定Bpmp−72アミノ酸配列に対する候補物質の結合を定量する。このタイプのアッセイはGSTプルダウンアッセイとして当技術分野で知られている。この場合にも、候補物質を固定し、Bpmp−72アミノ酸配列を非固定にしてもよい。
【0159】
また、このタイプのアッセイは、例えばNi−NTAアガロース及びヘキサヒスチジン標識成分といった、成分の一つを固定するための異なるアフィニティ精製系を使用して行うことも可能である。
【0160】
候補物質へのBpmp−72アミノ酸配列の結合は、当技術分野に公知の多様な方法によって定量し得る。例えば、非固定成分を標識する(例えば、放射性ラベル、エピトープタグ、または、酵素−抗体複合体)。あるいは、免疫検出技術によって結合を定量してもよい。例えば、反応混合物をウェスタンブロット処理し、非固定成分を検出する抗体でブロットをプローブする。ELISA法を使用してもよい。
【0161】
候補物質は典型的には、1−1000nmol/ml、より好ましく1−100nmol/mlの最終濃度まで添加する。抗体の場合、使用される最終濃度は典型的には100−500μg/ml、より好ましくは200−300μg/mlである。
【0162】
従って本発明は、薬物をBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントに接触させ、(i)該薬物とBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントとの間の複合体の存在、または、(ii)Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントとリガンドとの間の複合体の存在、を当技術分野で公知の方法によって検定する段階を含む薬物のスクリーニング方法を提供する。このような競合結合アッセイでは典型的にはBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを標識する。タンパク質:タンパク質複合体中に存在するBpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントから遊離Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントを分離すると、遊離(即ち、複合体を形成していない)ラベルの量が、Bpmp−72アミノ酸配列に対する被験薬物の結合またはBpmp−72アミノ酸配列:リガンド結合に対する被験薬物による妨害をそれぞれ表す尺度となる。
【0163】
別の薬物スクリーニング技術は、Bpmp−72アミノ酸配列に適当な結合アフィニティを有している化合物の高スループットスクリーニングを提供する。これは1984年9月13日公開のGeysenのPCT出願公開WO84/03564に詳細に記載されている。簡単に説明すると、多数の異なる小ペプチド試験化合物をプラスチックピンまたは他の何らかの表面のような固体基板上に合成する。ペプチド試験化合物をBpmp−72アミノ酸配列と反応させて洗浄する。次いで、結合したBpmp−72アミノ酸配列を当技術分野で公知の方法で検出する。
【0164】
本発明はまた、Bpmp−72アミノ酸配列またはそのフラグメントに対する結合に関して、Bpmp−72アミノ酸配列に特異的に結合し得る抗体と試験化合物とを競合させる競合的薬物スクリーニングアッセイの使用を考察する。この方法では、抗体を使用して、Bpmp−72アミノ酸配列の1つまたは複数の抗原決定基を共有するペプチドの存在を検出することができる。
【0165】
キット
本発明はまた、B.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染した疑いのある動物をスクリーニングするため、または、動物がB.pilosicoliのようなBrachyspira種に感染していることを確認するためのキットを提供する。該キットは、適当な容器に包装されたBpmp−72ポリヌクレオチド配列に相補的な少なくとも1つのポリヌクレオチド配列をその使用説明書と共に含んでいる。
【0166】
本発明の別の実施態様では、感染疑惑のある動物体内のB.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の有無を判定するため、または、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の感染を定量的に測定するために専門家の使用に好適なキットが作製される。上述の試験技術と同様に、このようなキットの1つのクラスは、標識Bpmp−72アミノ酸配列またはその結合相手、例えば該配列に特異的な抗体を少なくとも含み、また、例えば、“競合”、“サンドイッチ”、“DASP”などの選択された方法による指示を含むであろう。キットはまた、バッファ、安定剤などのような周辺試薬を含有し得る。
【0167】
従って、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種の存在を証明するための検査キットを作製し得る。キットは、
(a)本発明のBpmp−72アミノ酸配列またはその特異的結合相手を検出可能ラベルに直接的または間接的に付着させることによって得られた少なくとも1つの標識された免疫化学的に反応性の所定量の成分と、
(b)他の試薬類と、
(c)該キットの使用指示と、
を含む。
【0168】
より詳細には、診断用検査キットが、
(a)イムノソルベントを形成するために一般に固相に結合されるかあるいは適当なタグに結合された既知量の上述のようなBpmp−72アミノ酸配列(またはその結合相手)、または、複数のこのような目的物質と、
(b)必要ならば他の試薬類と、
(c)該検査キットの使用指示と、
を含む。
【0169】
変形実施態様では、所定のプロトコル(例えば、“競合”、“サンドイッチ”、“二重抗体”、など)に従って操作する検査キットを作製し上述の目的に使用する。該検査キットは、
(a)Bpmp−72アミノ酸配列を検出可能ラベルに結合させることによって得られた標識成分と、
(b)1種または複数の追加の免疫化学試薬と、
(c)Bpmp−72アミノ酸配列とその特異的結合相手との間の免疫化学反応の1つまたは複数の成分を検出及び/または定量するプロトコルの実行指示と、
を含み、
前記(b)の免疫化学試薬の少なくとも1つが、
(i)標識成分(a)に結合し得るリガンド、
(ii)標識成分(a)の結合相手に結合し得るリガンド、
(iii)定量すべき成分の少なくとも1つに結合し得るリガンド、または、
(iv)定量すべき成分の少なくとも1つの少なくとも1つの結合相手に結合し得るリガンド
から成るグループから選択されたリガンドまたは固定リガンドである。
【0170】
本発明の最良実施方法
本発明のその他の特徴を以下の非限定実施例でより十分に説明する。しかしながら、この詳細な記載は本発明を例示する目的のみで含まれることを理解されたい。上記の広範囲な発明の開示を制限すると理解してはならない。
【0171】
以下の実施例で明白に記載していない分子クローニング、免疫学及びタンパク質化学の方法は文献に報告されており、当技術分野に公知である。当技術分野に周知の慣用の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術を記載した概説書は、例えば、 Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);Glover ed., DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I & 11,MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.(1985);及びAusubel,F., Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Seidman,J.G.,Smith,J.A., Struhl,K.Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Associates/Wiley Intersciences, New York (2001)、などである。
【実施例1】
【0172】
Brachyspira pilosicoliの72kDa外膜タンパク質をコードしている遺伝子の同定及びキャラクタリゼーション
方法
スクリーニング用ポリクローナル抗体(AHPS)の産生
Brachyspira hyodysenteriae B78T、Brachyspira intermedia PWS/AT、Brachyspira innocens B256T、Brachyspira murdochii 56−150T、Brachyspira aalborgi 513T及び大腸菌JM109の1012細胞を含有している細胞懸濁液(9.0ml)に、Brachyspira pilosicoli菌株1648で超免疫したブタの血清(1.0ml)を添加した。連続完全撹拌(continuous end−to−end mixing)を伴ってスラリーを4℃で一夜インキュベートした。細胞に吸収された抗体を、4℃、5,000×gで20分間遠心することによって除去した。上清を取り出して、B.hyodysenteriae B78T、B.intermedia PWS/AT、B.innocens B256T、B.murdochii 56−150T、Br.aalborgi 513T及び大腸菌JM109の1012細胞を含有している混合細胞ペレットをこの上清に再懸濁させた。連続完全撹拌を伴ってスラリーを4℃で一夜インキュベートした。細胞に吸収された抗体を、4℃、5,000×gで20分間遠心することによって再度除去した。吸収プロセスを更に2回繰り返した。最終吸収プロセス後、吸収された超免疫ブタ血清(AHPS)をアリコート(50μl)に分け、−80℃で保存した。
【0173】
ゲノムライブラリーのスクリーニング
AB.pilosicoli P43/6/78ゲノムライブラリーは、部分的に制限した高分子量DNA(2−3kb)をラムダバクテリオファージのアームに結合し、GigapackII抽出物(Stratagene)を使用してファージ粒子をパッケージすることによって作製した。得られたファージライブラリーを大腸菌中で増幅し、標準プラーク−リフト法を使用して希釈AHPSでイムノスクリーニングした。3回のイムノ−スクリーニングサイクル後に4つのクローン(AHP1−4と命名)をプラスミドとして切り出した。
【0174】
大腸菌中の72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)をコードしている遺伝子の発現
組換えプラスミドを内包した大腸菌クローンを、カナマイシン(50mg/L)を補充したLB寒天プレートに画線培養し、37℃で一夜インキュベートした。単一コロニーを使用して、カナマイシン(50mg/l)、PMSF(1mM)及びIPTG(1mM)を補充したLBブロス(10ml)に接種した。ブロス培養物を振盪しながら37℃で12時間インキュベートした。各培養物のアリコート(1.0ml)を2,500×gで15分間遠心し、3回洗浄した。洗浄プロセスでは、細胞ペレットをリン酸塩緩衝生理的塩類溶液(PBS)(1ml)に再懸濁させ、2,500×gで15分間遠心した。洗浄した細胞ペレットをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びウェスタンブロット法に備えてPBS(100μl)に再懸濁させた。
【0175】
Bpmp−72タンパク質のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
タンパク質のSDS−PAGE解析には不連続トリス−グリシンバッファ系を使用する電気泳動分離を用いた。タンパク質サンプルのアリコート(30μl)を10μlの4×サンプル処理バッファ(250mMのトリス−HCl(pH6.0)、8%(w/v)のSDS、200mMのDTT、40%(v/v)のグリセロール及び0.04%(w/v)のブロモフェノールブルー)と混合した。サンプル(10μl)をゲルのウェルに充填する直前にサンプルを5分間煮沸した。ゲルは積層ゲル(125mMのトリス−HCl pH6.8、4%w/vのアクリルアミド、0.15%w/vのビス−アクリルアミド及び0.1%w/vのSDS)と分離ゲル(375mMのトリス−HCl pH8.8、4%w/vのアクリルアミド、0.31%w/vのビス−アクリルアミド及び0.1%w/vのSDS)から構成した。0.1%(v/v)のTEMED及び0.05%(w/v)の新しく調製した硫酸アンモニウム溶液を添加することによってこれらのゲルを重合させ、mini−Protean二層スラブセル(Bio−Rad)に流し込んだ。サンプルを室温(RT)、150Vでブロモフェノールブルーの色素の最前部がゲルの底部に到達するまで処理した。分子量の推定値を得るために予め染色した分子量標準をサンプルと並列に電気泳動にかけた。電気泳動後直ちにゲルをウェスタンブロット用のニトロセルロース膜に電気転移させた。
【0176】
ウェスタンブロット分析
Towbin転移バッファ系を使用し、SDS−PAGEゲルから分離したタンパク質をニトロセルロース膜に電気泳動転移させた。電気泳動後、転移バッファ(25mMのトリス、192mMのグリシン、20%v/vのメタノール,pH8.3)中でゲルを15分間平衡させた。mini−Proteanトランスブロット装置(Bio−Rad)を使用してゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜(Promega)に移した。ゲルホルダーを製造業者の指示通りに組立てた後、30V、4℃で電気泳動転移を一夜行った。分離されたタンパク質を含んでいる新しく転移されたニトロセルロース膜を、5%(w/v)の脱脂粉乳を含有している10mlのトリス緩衝生理的塩類溶液(TBS)によって室温で1時間ブロックした。膜をTBS(0.1%(v/v)トゥイーン20(TBST))で洗浄し、次いで10mLのAHPS(TBSTで5,000倍に希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。TBSTで5分間ずつ3回洗浄した後、膜をTBSTで5,000倍に希釈した10mLのヤギ抗ブタIgG(完全分子)−HRPと共に室温で1時間インキュベートした。10mLのDAB基質溶液(0.5mg/mlの3,3’−ジアミノベンジジン、0.003%w/vの過酸化水素、TBS)で膜を発色させた。膜を蒸留水で洗浄することによって発色反応を停止させた。次に膜を乾燥し、プレゼンテーション用に調べた。
【0177】
B.pilosicoliインサートの配列決定
ABI 373A DNAシークエンサー(PE Applied Biosystems)を使用して直接的にB.pilosicoliのゲノムインサートを配列決定するためにプラスミドAHP1を選択した。QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を製造業者の指示通りに使用して大腸菌細胞からファージミドを精製した。初期インサート配列は、市販のT3及びT7オリゴヌクレオチドを使用しこれらをインサートの両端に隣接するベクター領域にアニーリングすることによって得られた。残りのオリゴヌクレオチドは、上流インサート配列の3’−OH端に基づいて設計した(表2)。“TA”は、オリゴヌクレオチドを使用するPCRの最適なアニーリング温度を表す。
【0178】
【表2】
【0179】
各配列決定反応は、ファージミド(300ng)、プライマー(4pmol)、及び、ABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)のアリコート(10μl)中で行った。サイクリング条件は、まずは変性段階を96℃で2分間行った。次いで、96℃で10秒の変性、プライマーの溶融温度(表2)で5秒のアニーリング、及び、60℃で4分間のプライマー伸長を25サイクルとした。120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)を含有する95%(v/v)エタノール溶液で沈殿させることによって配列決定産物から残留ダイターミネーターを除去し、真空乾燥した。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。
【0180】
Bpmp−72配列の完成
配列決定ベクターへのゲノムDNAフラグメントのクローニング
B.pilosicoli P43/6/78から精製した染色体DNAをHinDIIIで完全消化した。簡単に説明すると、染色体DNA(2μg)とpTrcHisプラスミド(1μg)(Invitrogen)とを別々に、20UのHinDIII(New England Biolabs)を含有している1×HinDIIIバッファ中で37℃で一夜インキュベートした。UltraClean PCR Clean−up Kit(Mo Bio Laboratories)を製造業者の指示通りに使用して制限産物を精製した。制限したB.pilosicoliゲノムDNA(100ng)を、直鎖化したpTrcHisベクターのアリコート(100ng)と共に1UのT4 DNAリガーゼ(Promega)を含有している30mMのTris−HCI(pH 7.8)、10mMのMgCl2、10mMのDTT及び1mMのATPに入れて14℃で16時間インキュベートした。このライゲーション反応の生成物をpTrc−PILと命名した。ベクター再環化陰性対照としてゲノムDNA非含有の等しいライゲーション反応も行った。すべてのライゲーション反応はすべて全容量20μlで行った。
【0181】
ライゲーションDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅
使用したプライマーは、pTrcHisのHinDIIIクローニング部位に隣接する相補配列にアニールするpTrcHis−F(5’−CAATTTATCAGAGAATCTGTGTG−3’)(配列26)、及び、B.pilosicoliの部分的ORFの5’末端の相補配列にアニールするAHP−Rev(5’−TCGCTTGCAGTTTGAGGAGTG−3’)(配列27)であった。Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し、50μlの全容量中のPCRによってライゲーションDNAを増幅した。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、0.05UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMのプライマー対(pTrcHis−F,AHP−Rev)及びpTrc−PIL(2μl)から構成した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで、94℃で30秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、及び、68℃で4分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ(40mMのTris−アセテート、1mMのEDTA)中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0182】
Bpmp−72のORF伸長部の配列決定
pTrc−PILのPCRで得られた増幅産物をUltraClean PCR Clean−up Kitを製造業者の指示通りに使用して精製した。PCR産物の配列決定は、pTrcHis−F及びAHP−Revプライマーを使用して重複で行った。各配列決定反応は、PCR産物(50ng)、プライマー(2pmol)及びABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)から成る容量10μlで行った。サイクリング条件は、96℃で2分間の変性段階、次いで96℃で10秒間の変性、120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)による55℃で5秒間のプライマーアニーリングを25サイクルとし、真空乾燥した。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。 SeqEd v1.0.3及びVector NTI version6を使用して配列結果を編集し、コンパイルして、比較した。
【0183】
Bpmp−72の残りのORFの配列決定
pTrc−PILのPCR増幅を上記のように繰り返した。使用したプライマーは、pTrcHis−F及びAHP−Rev2(5’−TGGATTTTGAAGCTATTGCTC−3’)(配列28)であった。配列28は、伸長したB. pilosicoliの部分的ORFの5’−末端で相補配列にアニールする。 Bpmp−72 ORFの残りの未知領域の配列決定は、pTrcHis−F及びAHP−Rev2プライマーを使用して上記同様に行った。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。SeqEd v1.0.3及びVector NTI version6を使用して配列結果を編集し、コンパイルして、比較した。
【0184】
仮定Bpmp−72 ORF配列の解析
配列結果をSeqEd v1.0.3(PE Applied Biosystems)を使用して編集しコンパイルした。ヌクレオチド配列は、Vector NTI version 6(InforMax)及びUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group programを使用して解析した。
【0185】
演繹された仮定読取り枠(ORF)を、National Center of Bioinformatics(NCBI)から入手可能な全配列データベースに対する相同性探索に使用した。
【0186】
Brachyspira種のBpmp−72のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析
82のBrachyspiraのゲノムDNA:48株のB.hyodysenteriae、18株のB.pilosicoli、12株のB.intermedia、8株のB.murdochii、4株のB.innocens、2株の“Brachyspira canis”、1株のBrachyspira alvinipulli及び1株のB.aalborgiに由来の72kDaの外膜タンパク質をコードしている遺伝子のPCR検出のためにBpmp−72 ORFの913及び1692bpの領域にアニールした2つのプライマーを設計し最適化した。使用したプライマーは、B.pilosicoli ORFに隣接する相補配列にアニールするAHP−F4(5’−CAAGTAATAGCTAAAGGTGATG−3’)(配列29)及びAHP−R783(5’−TTACTGTTGTGCTTGAGTAGTG−3’)(配列30)であった。Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し全容量50μlで遺伝子をPCR増幅した。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、0.05UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMのプライマー対(AHP−F4、AHP−R783)、及び、2.5μ1の精製染色体鋳型DNAから構成した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで94℃で30秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、及び、68℃で2分間のプライマー伸長を25サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ(40mMのTris−アセテート、1mMのEDTA)中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0187】
他のB.pilosicoli菌株中に存在するBpmp−72の配列決定
B.pilosicoli菌株のBpmp−72のPCR
鋳型配列決定用Bpmp−72のPCR増幅のために2つのプライマー、即ち、Bpmp−72 ORFの98塩基対上流にアニールしたAHP−98F(5’−CGTTTAGCTGAACTTGAAGCTATG−3’)(配列31)及びORFから178塩基対下流にアニールしたAHP+1890R(5’−GTAATGCTCTGTCTTAATCAT−3’)(配列32)を設計し、最適化した。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し全容量50μlで行った。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、0.05UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMのプライマー対(AHP−L1,AHP−R1)及び2.5μ1の精製染色体鋳型DNAから構成した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで94℃で30秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリン、及び、68℃で4分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ(40mMのTris−アセテート、1mMのEDTA)中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0188】
B.pilosicoli菌株由来のBpmp−72の配列決定
6つのB.pilosicoli菌株由来のPCR産物をUltraClean PCR Clean−up Kitを製造業者の指示通りに使用して精製した。PCR産物の配列決定は、AHP−98F、AHP+1890R及びAHP+1012R(5’−TATCGCTTGCAGTTTGAGGAG−3’)(配列33)プライマーを使用して重複で行った。各配列決定反応は、PCR産物(50ng)、プライマー(2pmol)及びABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)から成る容量10μlで行った。サイクリング条件は、96℃で2分間の変性段階、次いで96℃で10秒間の変性、55℃で5秒間のプライマーアニーリング、及び60℃で4分間のプライマー伸長を25サイクルとした。120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)を含有する95%(v/v)エタノールで沈殿させることによって配列決定産物から残留ダイターミネーターを除去し、真空乾燥した。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサーを使用して解析した。 SeqEd v1.0.3及びVector NTI version6及びClustalXを使用して配列結果を編集し、コンパイルして、比較した。
【0189】
結果
大腸菌中の72kDa外膜タンパク質をコードしている組換えファージミドの単離及びキャラクタリゼーション
B.pilosicoliバクテリンで超免疫したブタの血清を上述のようにして(B.pilosicoli以外の)Brachyspira種の全細胞及び大腸菌全細胞に吸収させた。吸収された血清(AHPS)をB.pilosicoliの外膜抽出物に対してウェスタンブロット分析すると、AHPは72kDaの見掛け分子量をもつタンパク質と優先的に反応することが判明した(図1)。 B.pilosicoliラムダZAPゲノムライブラリーのスクリーニングから6つのクローンが得られたので、AHP1−6と命名した。これらのクローン全部が見掛け分子量34kDaの共通タンパク質を産生した。これらのタンパク質のすべてがAHPSと強力に反応した(図2)。1つのクローンの配列決定で29.4kDaのコーディング容量をもつ783塩基対の部分的ORFが同定された。この部分的ORFはB.pilosicoliの72kDaの外膜タンパク質のカルボキシ末端部分をコードしていると考えられる。
【0190】
読取り枠の配列解析
モチーフ及び保存ドメイン
表2に示したプライマーを使用してAHP1プラスミドを配列決定すると B.pilosicoliゲノムDNAの1009塩基対のインサートが判明した。インサートDNAを配列解析すると、推定ATG開始コドンとTAA終結コドンとをもつ塩基1−783までの783塩基対の潜在的な部分的OFRが判明した(図3)。残りの遺伝子を更にクローニングして配列決定すると、Bpmp−72のコーディング配列が1,692ヌクレオチドのサイズであることが判明した。潜在的なシャイン・ダルガーノリボソーム結合部位(AGGAG)と−10(TAATAT)及び−35(TTGAAA)の推定プロモーター領域がATG開始コドンの上流で同定された。72kDaの外膜タンパク質をコードしている遺伝子配列を分子量72kDaの外膜タンパク質(Bpmp−72)と命名した。
【0191】
翻訳されたポリペプチドは、予想分子量62.1kDaの564アミノ酸(aa)残基から構成されていた。推定されたサイズは、天然型Bpmp−72タンパク質のウェスタンブロットで観察されたサイズとは有意に違っていた。 Bpmp−72の仮定コーディング容量と天然型Bpmp−72外膜タンパク質との分子量の違いは恐らく、アシル化、メチル化、アセチル化、リン酸化及び硫酸化のような翻訳後修飾が原因であろう。アミノ酸配列の解析によって、翻訳されたポリペプチドのC末端の118残基領域の存在が判明した。これは保存されたリシンモチーフ(LysM)ドメインに相同であった。このドメインは、細菌細胞壁を分解する酵素で初めて同定され、それ以来多くの他の細菌性タンパク質に存在することが判明した遍在タンパク質モジュールである。LysMドメインは細菌細胞の表面タンパク質に最も多いモジュールの1つである。LysMドメインを有している他の細菌性タンパク質、例えば、ブドウ球菌IgGの結合タンパク質及び大腸菌のインチミンは細菌病因論に関与する。
【0192】
Brachyspira種に存在するBpmp−72遺伝子の配列決定
48株のB.hyodysenteriae、18株のB.pilosicoli、12株のB.intermedia、8株のB.murdochii、4株のB.innocens、2株の“B.canis”、2株のB.alvinipulli及び1株のB.aalborgiに由来のゲノムDNAをBpmp−72−特異的PCRを使用して増幅した。Bpmp−72遺伝子はB.pilosicoliの全部の菌株に存在していたが、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.murdochii、B.innocens、“B.canis”、B.alvinipulliまたはB.aalborgiのどの菌株にも存在していなかった。存在するBpmp−72遺伝子の配列決定のためにB.pilosicoliの6つの菌株を選択した。表3及び4は、B.pilosicoli菌株のBpmp−72遺伝子間の相同レベルのまとめである。
【0193】
6つのB.pilosicoti菌株のBpmp−72遺伝子はヌクレオチドレベルで99.8−100%の相同性を示した(表3)。全部の菌株が1,692bpの遺伝子を有しており、これは564アミノ酸のタンパク質に翻訳される。B.pilosicoliの異なる菌株間の高い相同レベルは、Bpmp−72が種の内部で高度に保存された遺伝子座であることを示唆する。
【0194】
【表3】
【0195】
6つのB.pilosicoli菌株のBpmp−72遺伝子はアミノ酸レベルで99.3−100%の相同性を示した(表4)。全部の菌株が1,692bpの遺伝子を有しており、これは564アミノ酸のタンパク質に翻訳される。B.pilosicoliの異なる菌株間の高い相同レベルは、Bpmp−72が種の内部で高度に保存された遺伝子座であることを示唆する。
【0196】
【表4】
【実施例2】
【0197】
Brachyspira pilosicoliの組換え72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)のクローニング、発現及び精製
方法
プラスミド抽出
pTrcHisプラスミド(Invitrogen)を含ませた大腸菌JM109クローンを、グリセロール予製保存液(stock storage)からアンピシリン(100mg/1)補充ルリア−ベルタニ(LB)寒天プレートに画線培養し、37℃で16時間インキュベートした。単一コロニーをアンピシリン(100mg/1)補充LBブロス(10ml)に接種し、ブロス培養物を振盪しながら37℃で12時間インキュベートした。完全一夜培養物を5,000×gで10分間遠心し、細胞に含まれていたプラスミドを製造業者の指示通りに使用したQlAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)で抽出した。精製したプラスミドをDynaquant DNAフルオロメーター(Hoefer)を使用して定量し、TEバッファで希釈することによってDNA濃度を100μg/mlに調整した。精製したpTrcHisプラスミドを−20℃で保存した。
【0198】
ベクター調製
100mMのTris−HCI(pH7.5)、50mMのNaCl、10mMのMgCl2、1mMのDTT及び100μg/mlのBSA中に5UのEcoR1(New England Biolabs)及び5UのXho1(New England Biolabs)を含有している全容量100μl中の精製pTrcHisプラスミド(1μg)を37℃で一夜消化した。消化反応物(2μl)を1×TAEバッファ中、1%(w/v)のアガロースゲルに90Vで1時間電気泳動させることによって制限されたベクターを検証した。電気泳動したDNAを臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、紫外(UV)光を使用して観察した。
【0199】
直鎖化したpTrcHisベクターを、UltraClean PCR Clean−up Kit(Mo Bio Laboratories)を製造業者の指示通りに使用して精製した。精製した直鎖状ベクターを蛍光計で定量し、TEバッファで希釈することによってDNA濃度を50μg/mlに調整した。精製した制限ベクターを−20℃で保存した。
【0200】
インサート調製
プライマー設計
Bpmp−72遺伝子の種々の位置を増幅するために3対のプライマーを設計した。プライマー配列及び得られた遺伝子のクローン化部分を表5に示す。全部のプライマー配列が、得られたアンプリコンの付着末端を直鎖化pTrcHisベクターに結合させ得る末端制限酵素部位を含んでいた。順方向プライマーは、末端Xho1制限酵素部位がpTrcHisの発現カセットとインフレームになるように設計した。逆方向プライマーは、pTrcHisベクターのEcoR1クローニング部位に結合後に未熟翻訳終結コドンが形成されないように設計した。Amplify 1.2(University of Wisconsin)を使用してプライマーを試験し、理論的アンプリコン配列をpTrcHisベクター配列の適正位置に挿入した。ベクターNTI version 6(InforMax)を使用してキメラpTrcHis発現カセットの推定された翻訳を実行させ、Bpmp−72インサートが正しい読取り枠に存在することを確認した。
【0201】
【表5】
【0202】
Bpmp−72インサートの増幅
Taq DNAポリメラーゼ(Biotech International)及びPfu DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し、100μlの全容量中でBpmp−72インサートをPCR増幅した。簡単に説明すると、増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、1UのTaq DNAポリメラーゼ、0.1UのPfu DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、0.5μMの適正プライマー対(AHP−F1−Xho1/AHP−R783−EcoR1、AHP−F1−Xho1/AHP−R223−EcoR1またはAHP−F4−Xho1/AHP−R783−EcoR1)、及び、2.5μlの染色体鋳型DNAとから構成した。染色体DNAは、200μlのTE中に10μlの凍結B.pilosicoli95/1000菌株(ブタから単離したWestern Australian field strain)を再懸濁させ、1分間煮沸することによって調製した。煮沸した細胞を20,000×gで5分間遠心し、上清を集めてPCR鋳型として使用した。サイクリング条件は、94℃で5分間の初期鋳型変性段階、次いで94℃で30秒間の変性、50℃で15秒間のアニーリング、及び、68℃で2分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0203】
正しいサイズのPCR産物の存在を確認した後、上述のようにUltraClean PCR Clean−up Kitを使用してRCR反応物を精製した。
【0204】
Bpmp−72インサートの制限酵素消化
精製したPCR産物(50μl)を、100mMのTris−HCI(pH7.5)、50mMのNaCl、10mMのMgCl2、1mMのDTT及び100μg/mlのBSA中の1UのEcoR1及び1UのXho1によって全容量100μlで37℃で一夜消化した。消化したインサートDNAをUltraClean PCR Clean−up Kitを使用して精製した。精製した消化インサートDNAをTEバッファ(50μl)を使用するクリーンアップカラムから溶出させ、蛍光計で定量し、TEバッファで希釈してDNA濃度を20μg/mlに調整した。精製した制限インサートDNAを直ちにベクター結合に使用した。
【0205】
pTrcHisベクターへのBpmp−72インサートのライゲーション
ライゲーション反応はいずれも全容量20μlで行った。Xho1/EcoR1−直鎖化pTrcHis(100ng)を、Xho1/EcoR1制限したBpmp−72インサート(20ng)と共に、1UのT4 DNAリガーゼ(Promega)を含有している30mMのTris−HCI(pH7.8)、10mMのMgCl2、10mMのDTT及び1mMのATP中、14℃で16時間インキュベートした。ベクター再環化の陰性対照とするためにBpmp−72インサートDNAを含まないライゲーションの結合反応も使用した。
【0206】
pTrc−Bpmp−72結合物による大腸菌細胞の形質転換
コンピテント大腸菌BL21 StarTM(DE3) pLys One ShotRTM(Invitrogen)細胞を−80℃の保存から氷上で解凍し、5μlの一夜ライゲーション反応物(25ngのpTrcHisベクターに等価)を収容している氷冷した1.5mlのマイクロ遠心管に移した。ベンチ上で各管の底部を穏やかに叩いて管を混合し、30分間氷上に維持した。次に管を42℃の水浴に45秒間入れることによって細胞に熱ショックを与え、その後に管を氷上に戻して2分間維持した。形質転換した細胞をLBブロス(1ml)に回収し、穏やかに撹拌しながら37℃で1時間維持した。回収した細胞を2,500×gで5分間処理して採取し、細胞を新しいLBブロス(50μl)に再懸濁させた。再懸濁させた細胞の全量(50μl)をアンピシリン含有(100mg/l)のLB寒天プレートに滅菌ガラス棒を使用して均等に拡げた。プレートを37℃で16時間インキュベートした。
【0207】
大腸菌中のpTrc−Bpmp−72インサートのPCRによる検出
12の単一形質転換体コロニーを各構築物ごとに新しいアンピシリン(100mg/l)含有LB寒天プレートに画線培養し、37℃で16時間インキュベートした。各形質転換イベントから得られた単一コロニーをTEバッファ(50μl)に再懸濁させ、1分間煮沸した。煮沸した細胞のアリコート(2μl)をPCR鋳型として使用した。増幅混合物は、1×PCRバッファ(1.5mMのMgCl2含有)、1UのTaq DNAポリメラーゼ、0.2mMの各dNTP、0.5μMのpTrcHis−Fプライマー(配列6)及び0.5μMのpTrcHis−Rプライマー(5’−TGCCTGGCAGTTCCCTACTCTCG−3’)(配列38)から構成した。サイクリング条件は、94℃で4分間の初期鋳型変性段階、次いで、94℃で30秒間の変性、60℃で15秒間のアニーリング、及び、72℃で30分間のプライマー伸長を30サイクルとした。PCR産物を1×TAEバッファ中の1.5%(w/v)アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム溶液(1μg/ml)で染色し、UV光を使用して観察した。
【0208】
直接配列解析によるpTrc−Bpmp−72読取り枠の検証
正しいサイズのPCR産物を産生した各構築物あたり2つの形質転換体クローンをアンピシリン(100mg/l)含有LBブロス(10ml)に接種し、振盪しながら37℃で12時間インキュベートした。完全一夜培養物を5,000×gで10分間遠心し、細胞が含有していたプラスミドを前述のようにQIAprep Spin Miniprep Kitを使用して抽出した。精製したプラスミドを蛍光計で定量した。
【0209】
双方の精製プラスミドを、pTrcHis−F及びpTrcHis−Rプライマーを使用するpTrcHis発現カセットの全自動化直接配列決定で処理した。配列決定反応の各々は、プラスミドDNA(200ng)、プライマー(2pmol)及びABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Mix(4μl)(PE Applied Biosystems)から成る容量10μlで行った。サイクリング条件は、96℃で2分間の変性段階、次いで96℃で10秒間の変性、60℃で4分間のプライマーのアニーリング及び伸長を組合せた段階を25サイクルとした。残留ダイターミネーターは、120mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)を含有する95%(v/v)エタノールで沈殿させることによって配列決定産物から除去し、真空乾燥した。各プライマーを使用してプラスミドの配列決定を重複で行った。配列決定産物をABI 373A DNAシークエンサー(PE Applied Biosystems)を使用して解析した。ライゲーションに成功したプラスミドを、pTrc−Bpmp−72(完全タンパク質)、pTrc−Bpmp−72N(N−末端部分)及びpTrc−Bpmp−72C(C−末端部分)と命名した。
【0210】
組換えHis6−Bpmp−72Cの大規模発現
Bpmp−72の34kDaの組換えC末端部分を大規模産生に選択しその後にワクチンとして使用した。大腸菌BL21中のpTrc−Bpmp−72Cの単一コロニーを250ml容の円錐フラスコに入れたアンピシリン(100mg/1)含有LBブロス(50ml)に接種し、振盪しながら37℃で16時間インキュベートした。アンピシリン(100mg/l)を補充したLBブロス(1L)を収容している2L容の円錐フラスコに、一夜培養物(10ml)を接種し、37℃で、細胞の光学密度が600nmで0.5になるまで(約3−4時間)インキュベートした。次にIPTGを最終濃度1mMまで加えて培養物を誘発し、細胞を振盪しながら37℃に戻した。5時間の誘発後、培養物を250ml容の遠心ボトルに移し、ボトルを4℃、5,000×gで20分間遠心した。上清を廃棄し、各ペレットを10mlのNi−NTA変性用溶菌バッファ(100mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCI、8Mの尿素、pH8.0)に再懸濁させた。再懸濁した細胞を−20℃で一夜保存した。
【0211】
組換えHis6−Bpmp−72Cの大規模精製
−20℃保管庫から細胞懸濁液を取り出し、氷上で解凍した。次に細胞溶解液を氷上で30秒間ずつ3回超音波処理した。毎回の超音波処理の間に1分間の氷上インキュベーションを挿入した。溶解した細胞を4℃、20,000×gで10分間遠心することによって清澄化し、上清を1mlのベッドボリュームのNi−NTAアガロース樹脂(Qiagen)を収容している15ml容のカラムに移した。His6で標識された組換えタンパク質を完全撹拌を伴って4℃に1時間維持して樹脂に結合させた。次に樹脂を50mlのNi−NTA変性用洗浄バッファ(100mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCI、8Mの尿素、pH6.3)で洗浄した後、30mlのNi−NTA変性用溶出バッファ(100mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCl、8Mの尿素、pH4.5)で溶出させた。溶出液の3つの10ml画分を集めて4℃で保存した。各溶出液のアリコート(30μl)を4×サンプル処理バッファ(10μl)で処理し、5分間煮沸した。サンプルをSDS−PAGE処理し、クーマシーブリリアントブルーG250(Sigma)で染色した。染色したゲルを蒸留水で1時間平衡させ、2枚のセルロースシートに挟んで室温で一夜乾燥した。
【0212】
精製した組換えHis6−Bpmp−72Cの透析及び凍結乾燥
溶出したタンパク質をプールし、分子量カットオフ(MWCO)3,500Daの水和透析管(Spectrum)に移した。プールした溶出液のアリコート(200μl)を採取し、Biorad Protein Assay(Biorad)を製造業者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を2lの蒸留水に4℃で撹拌しながら透析した。透析バッファを12時間毎に8回交換した。透析したタンパク質を透析管から50ml遠心管(最大容量40ml)に移し、管を−80℃で一夜維持した。管をMAXI凍結乾燥機(Heto)に入れ、凍結乾燥して乾固した。次に、凍結乾燥したタンパク質をPBSで濃度2mg/mlに再水和し−20℃で保存した。
【0213】
結果
組換えpTrc−Bpmp−72ベクターの構築
表6は、大腸菌中でBpmp−72タンパク質の種々の部分を発現させる構築物を示す。クローン化インサートの作製に使用したプライマー対は表5に示した。これらのプライマーはBpmp−72の所定部分を増幅し、Bpmp−72タンパク質全体またはそのN−末端部分またはC−末端部分を発現させる。種々のインサートをpTrcHis発現ベクターにクローニングすると、それぞれ6,081、5,518及び5,171bpのサイズの組換えベクターpTrc−Bpmp−72,pTrc−Bpmp−72N及びpTrc−Bpmp−72Cが得られた。 pTrcHis構築物のヌクレオチド配列決定は、全部の構築物で発現カセットが正しいフレームに存在することを検証した。pTrcHis発現カセットの予測された翻訳は、組換えHis6−Bpmp−72タンパク質(66.3kDa)、His6−Bpmp−72N(46.9kDa)、His6−Bpmp−72(34.6kDa)と天然型Bpmp−72リポタンパク質(62.1kDa)の推定アミノ酸配列が等しいことを示した。pTrcHis構築物の完全プラスミドマップを図4に示す。
【0214】
【表6】
【0215】
組換えBpmp−72Cの発現及び精製
十分な量のワクチン接種用組換えタンパク質を作製するために、pTrc−Bpmp−72Cを含有する選択された組換えクローンの大規模発現を行った。ヘキサ−ヒスチジン(4kDa)と融合した組換えBpmp−72Cタンパク質は、見掛け分子量34kDaの主要タンパク質を産生した(図5)。ラムダバクテリオファージゲノムライブラリーの初期スクリーニングに使用したAHPSは天然型Bpmp−72及び組換えHis6−Bpmp−72Cの双方に反応した(図5)。
【0216】
変性条件下でアフィニティクロマトグラフィーによって行ったHiS6−Bpmp−72組変え抗原の精製は成功であった。大規模精製したHis6−Bpmp−72Cの6つの複製バッチのSDS−PAGEは、組換え抗原が90%以上純粋であり、タンパク質の発現が恒常的であることを示した(図6)。この発現プロトコルを使用して2mg/Lという組換えタンパク質の収率が恒常的に得られた。透析及び凍結乾燥後、安定な組換えHis6−Bpmp−72C抗原の産生に成功した。
【実施例3】
【0217】
Brachyspira pilosicoliの組換え72kDa外膜タンパク質(Bpmp−72)のカルボキシ末端部分を使用するニワトリのワクチン接種
方法
1グループ15羽の2つのニワトリグループをB.pilosicoliの72kDaタンパク質の34kDaの組換えC−末端部分(His6−Bpmp−72C)で全身的及び経口的に免疫感作し、次いでB.pilosicoliで抗原投与して、ワクチン接種がB.pilosicoliのコロニー化を防御したか否かを判定した。第三グループの15羽のメンドリにはワクチンを接種しないで対照とした。45羽のトリ全部を一室で個別のケージに収容した。3つのグループをそれぞれ、
i)グループA:ワクチン非接種;
ii)グループB:組換えタンパク質(100μg)をアジュバントと共に筋肉内投与し、次いで3週後に1mgの溶解タンパク質を?嚢チューブで注入;
iii)グループC:組換えタンパク質(1mg)をアジュバントと共に筋肉内投与し、次いで3週後に1mgの溶解タンパク質を?嚢チューブで注入、
と命名した。二回目のワクチン接種の2週後に全部のトリにB.pilosicoliのニワトリ菌株(Csp1)を経口で抗原投与した。
【0218】
ニワトリ及び免疫感作プロトコル
34kDaの組換えBpmp−72のC−末端部分(His6−Bpmp−72C)を等量のフロインド不完全アジュバントで乳化し、グループB及びCの各15羽のメンドリの胸筋に筋肉内注射した。(ISA Brown産卵メンドリ:各トリはほぼ18週齢及び体重1.5kg)。グループBのトリの各々には、100μgのタンパク質を全容量1mlで与えた。グループCのトリの各々には、1mgのタンパク質を全容量1mlで与えた。グループAのトリにはワクチン接種しなかった。一回目のワクチン接種の3週後、グループB及びCの全部のトリに2mlのリン酸塩緩衝生理的塩類溶液に入れた1mgのタンパク質を?嚢に直接投与した。グループAのトリにはワクチン接種しなかった。経口ワクチン接種の2週後に、2mlの指数関数的対数増殖期(〜109細胞/ml)のB.pilosicoliを全部のトリの?嚢に直接与えた。抗原投与を連続3日間繰り返した。トリを個別にケージに入れた。
【0219】
一回目のワクチン接種の前、二回目のワクチン接種の直前、初日の抗原投与の前、及び、5週後に、翼静脈から採血することによって血清を採取した。血清をELSAで試験しワクチン抗原に対する抗体の存在を調べた。また、B.pilosicoliの細胞抽出物に対してウェスタンブロット分析した。全部のトリの糞便スワブを週に三回採取し、培養した。実験的感染の5週後に頚椎脱臼によってトリを死亡させた。死後、小腸及び結腸の掻取り組織を集めて、ELISA及びウェスタンブロット分析によって特異的免疫グロブリン含量を検査した。
【0220】
スピロヘーター培養物
糞便から採取したスワブを5%(v/v)繊維素除去ヒツジ血液、スペクチノマイシン(400μg/ml)、コリスチン(25μg/ml)及びバンコマイシン(25μg/ml)を含有しているTrypticase Soy寒天プレートで画線培養した。これらのプレートを好気性環境中、37℃で7日間インキュベートした。弱いベータ−溶血及び顕微鏡観察形態に基づいてスピロヘーターがB.pilosicoliであることを同定した。単離物のサブセットを継代培養し、種特異的PCRを使用してB.pilosicoliであることを確認した。
【0221】
ELISA(血清)
マイクロタイタープレート(Immulon 4HBX,Dynex)のウェルに、炭酸塩バッファ(pH9.6)中の100μlの精製His6−Bpmp−72C(1μg/ml)をコートし、4℃で一夜インキュベートした。150μlのPBS−BSA(1%w/v)によって室温で撹拌しながらプレートを1時間ブロックし、次いで150μlのPBST(0.05%v/v)で3回洗浄した。
【0222】
ニワトリ血清を100μlのPBST−BSA(0.1%w/v)で200倍に希釈し、撹拌しながら室温で2時間インキュベートした。プレートを(上述のように)洗浄した後、PBSTで80,000倍に希釈した100μlのヤギ抗ニワトリIgG(完全分子)−HRPを加えた。室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、100μlのTMB基質を加えた。室温で10分間発色させた後、50μlの1Mの硫酸を加えて停止させた。各ウェルの450nmの吸光度を読み取った。
【0223】
ELISA(粘膜)
小腸及び結腸の15cm2の切片から掻取り標本を採取した。1%(w/v)のBSA、2mMのPMSF,1mMのEDTA及び0.2%(w/v)のナトリウムアジドを含有している1mlのPBSに掻取り標本を再懸濁させた。懸濁液を十分に混合し、20,000×gで10分間遠心した。上清を除去し、PBSTで2倍に希釈し、100μlをELISAに使用した。ELISAは上述の血清ELSAと同様にして行った。
【0224】
ウェスタンブロット分析
超音波処理し清澄化したB.pilosicoli細胞懸濁液のアリコート(50mg)を7cmの分取ウェルに充填し、12.5%(w/v)SDS−PAGEゲルに電気泳動させ、ニトロセルロース膜に電気転移させた。膜をTBS−脱脂乳(5%w/v)でブロックし、マルチプローブ装置(Biorad)に取り付けた。ウェルを100μlの希釈したニワトリ血清プール(200倍)または粘膜上清(2倍)と共に室温で2時間インキュベートした。ウェルをTBST(0.1%v/v)で3回洗浄した後、100μlのヤギ抗−ニワトリIgG(完全分子)−HRP(10,000倍)と共に室温で1時間インキュベートした。装置から膜を取り外し、TBSTで3回洗浄した。10mlのDAB溶液(5mg/ml、0.0003%v/v過酸化水素、TBS)中で発色させ、十分な発色が生じた後で膜を水道の流水で洗浄した。膜を乾燥し、プレゼンテーション用に調べた。
【0225】
結果
ワクチン接種に対する血清学的応答
ニワトリの全身性血清学的(ELISA)応答を図7−9に示す。対照トリ(グループA)には循環抗体が存在せず、実験感染後に発色したものはなかった(図7)。ワクチン接種したトリの全部ではないが大抵には実験感染後の循環抗体が増加しないことが観察された(図8及び図9)。100μgのタンパク質でワクチン接種したトリ(グループB)の6羽が控え目な一次応答を示し、残りのトリはワクチンに十分な応答を示さなかった(図8)。対照的に、1mgのタンパク質でワクチン接種したトリ(グループC)の11羽が良好な一次全身性応答を示し、このグループの残りの4羽はワクチン接種に対して控え目な応答しか示さなかった。これらのトリのうち、3羽を除く全部が経口ブースト後に応答増加を示した(図9)。
【0226】
B.pilosicoli抽出物に対するワクチン接種ニワトリのウェスタンブロット分析を図10及び11に示す。グループ毎に各プール3羽から成る5つの血清プールを示す。ウェスタンブロットは、(34kDaサブユニットでワクチン接種したにもかかわらず)これらの応答が天然型72kDaタンパク質特異的であることを示す。また、グループC(1mg)がグループB(100μg)よりも強力に応答する傾向があることを示す。
ワクチン接種及び抗原投与に対するニワトリの粘膜性ELISA応答(死後にサンプル収集)を図12に示す。対照トリは感染しているにもかかわらず局部的応答を全く示さなかった。100μgのワクチン接種グループ(グループB)では1羽(27)だけが小腸及び結腸の双方で良好な局部的抗体応答を示した。このグループの別の4羽のトリ(23、24、34及び35)は結腸で控え目な局部的応答を示した。1mgのワクチンを接種したグループ(グループC)では2羽のトリ(40及び48)が小腸に良好な局部的応答を示し、6羽のトリ(36、38、40、41、43及び50)は結腸に良好な局部的応答を示した。
【0227】
高い粘膜抗体価を有しているトリから得られた粘膜抽出物のウェスタンブロット分析を図13に示す。全部のトリの局部的抗体応答は天然型72kDaに対する応答であった。これらの結果は、?嚢への経口ワクチン接種(加えてその後の実験的抗原投与)が胃腸管の深部に局部的応答を誘発できることを示す。しかしながら、経口ワクチン接種は結腸(及び小腸)で検出可能な局部的応答の誘発に恒常的に成功することはできない。
【0228】
B.pilosicoilコロニー化の防御
3つのグループのトリの糞便培養物のB.pilosicoilに関する結果をまとめて表7に示す。3つのグループの個々のトリの結果をそれぞれ表8−10に示す。継代培養した単離物の全部が、16S rRNA遺伝子をターゲットとする種特異的PCRによってB.pilosicoilであると確認された。
【0229】
【表7】
【0230】
感染後(pi)9日目までに、対照グループではコロニー化率80%に発達し、これに比べて2つのワクチン接種グループでは7%及び0%であった(表6)。その後、対照グループのコロニー化率は低下に転じたが、30日の期間で平均45%を維持した。対照的に、双方のワクチン接種グループのコロニー化率は経時的に増加する傾向を示し、最大コロニー化率はグループBで感染30日後の60%、グループCで感染25日後の40%であった。感染30日後の3つのグループのコロニー化率は同等であった。しかしながら、全期間を通じて、対照グループのコロニー化率は双方のワクチン接種グループを著しく有意に上回っていた。
【0231】
表8は、ワクチン接種しなかったニワトリの個々のB.pilosicoilの経口抗原投与後のコロニー化結果を示す。糞便スワブの培養によってコロニー化を定量した(−)記号は培養陰性を表し、(+)は培養陽性を表す。表9は、ワクチン接種した(100μg筋肉内に加えて1mg経口)ニワトリの個々のB.pilosicoilの経口抗原投与後のコロニー化結果を示す。糞便スワブの培養によってコロニー化を定量した。(−)記号は培養陰性を表し、(+)は培養陽性を表す。表10は、ワクチン接種した(1mg筋肉内に加えて1mg経口)ニワトリの個々のB.pilosicoilの経口抗原投与後のコロニー化結果を示す。糞便スワブの培養によってコロニー化を定量した。(−)記号は培養陰性を表し、(+)は培養陽性を表す。
15羽全部の対照ニワトリがコロニー化を生じ、陽性スワブが実験期間中に3〜6回、サンプリングされた。(実行できる11のうち、平均で4.53回のサンプリング)。
グループBの結果は、14羽のトリがある時点までコロニー化を示し、1〜3回のサンプリング(平均で1.87回のサンプリング)で陽性を示した。グループCでは、14羽のトリがある時点までコロニー化を示し、1〜5回の間のサンプリング(平均で1.6回のサンプリング)で陽性を示した。これらの結果は、ワクチン接種したトリの全感染度が対照トリよりも小さいこと、及び、コロニー化防御に関しては双方のワクチン接種計画が同様の結果を生じたことを強調する。
【0232】
コロニー化に関する全身または結腸の抗体応答を個々のトリで比較するとき、恒常的な図は浮かんでこない。対照グループは、感染に対する局部的または全身的な抗体をほとんど生じなかった。2日目以後にコロニー化を生じたグループBの4羽のトリ(21、24、29及び30)を考察すると、それらのトリの抗体価はもっと短期間にコロニー化を生じた同グループの他のトリよりも低い値ではなかった。コロニー化を生じなかったトリ(26)は、同グループの他のトリと同様の抗体価を有していた。対照的にグループCでは、2日目以後にコロニー化した3羽のトリ(37、46及び49)は結腸抗体応答が少なく、これらのうちで、トリ37は良好な全身性抗体応答を有していたが、トリ46及び49は有していなかった。コロニー化を生じなかったトリ(40)は、全身性抗体応答は控え目であったが結腸抗体応答は良好であった。このワクチン接種グループでは、コロニー化の少ないトリほど結腸抗体価が高い傾向が見られた。
【0233】
総合的に、この実験は、ワクチン接種プロトコルが循環中及び結腸内でBpmp−72特異的抗体の抗体価を誘発することを証明する。この場合、1mgのタンパク質による筋肉内ワクチン接種は、100μgを使用するよりも良好な応答を生じる。双方のワクチン接種プロトコルはB.pilosicoilのコロニー化を明らかに遅延させ、(特に感染9日後の対照トリの感染ピークに比べて)コロニー化の持続期間を短縮し、また、コロニー化を生じたトリの個体数も減少させた。対照トリで高いコロニー化率が維持されていれば、この違いはいっそう顕著であったかもしれない。これらの結果は、Bpmp−72が、ニワトリ並びにブタ、イヌのような他の動物種及びヒトのB.pilosicoilのコロニー化を防御する有効な手段として開発できることを示唆する強力な根拠を提供する。
【0234】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】吸収された超免疫ブタ血清(AHPS)のB.pilosicoli外膜タンパク質によるウェスタンブロット分析。レーン1,分子量マーカー;レーン2,B.pilosicoli 95/1000。72kDaタンパク質(Bpmp−72)を矢印で示す。
【図2】吸収された超免疫ブタ血清(AHPS)のB.pilosicoliの先端欠失72kDa外膜タンパク質を発現している大腸菌細胞によるウェスタンブロット分析。レーン1−分子量マーカー;レーン2−AHP1;レーン3−AHP2;レーン4−AHP3;レーン5−AHP4;レーン6−AHP5;レーン7−AHP6;レーン8−B.pilosicoli 95/1000外膜タンパク質。34kDa先端欠失タンパク質を矢印で示す。
【図3】Bpmp−72のヌクレオチド配列。
【図4】pTrcHis E.coli発現ベクターにクローニングされたBpmp−72遺伝子(図中Omp−72として示す)の種々の領域のベクター図。pTrc−Bpmp−72(A;6,081bp)、pTrc−Bpmp−72N(B;5,518bp)及びpTrc−Bpmp−72C(C;5,171bp)構築物が完全Bpmp−72、Bpmp−72のN−末端部分及びBpmp−72のC−末端部分をそれぞれ発現する。全部のベクターを同じベクター主鎖から構築し、違いは発現カセットにクローニングされたBpmp−72領域だけである。
【図5】天然型Bpmp−72(図中Omp−72として示す)及びBpmp−72の組換えC−末端部分(His6−Bpmp−72C)のウェスタンブロット分析。レーン1−分子量マーカー;レーン2−精製His6−Bpmp−72C;レーン3−B.pilosicoli95/1000由来の天然型Bpmp−72C;レーン4−B.pilosicoli Csp1由来の天然型Bpmp−72C。矢印は天然型及び組換えBpmp−72タンパク質の位置を示す。
【図6】N−NTAクロマトグラフィーを使用して精製した組換えHis6Bpmp−72の種々のバッチのSDS−PAGE分析。組換えタンパク質の全部のバッチを同じ方法で発現させ精製した。レーン1−分子量マーカー;レーン2−9−精製His6−Bpmp−72Cバッチ1−6。組換えHis6−Bpmp−72Cタンパク質を矢印で示す。
【図7】組換えHis6−Bpmp−72Cでワクチン接種しなかったニワトリのB.pilosicoli抗原投与の前及び後の全身性抗体価(ELISA)。循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用してELISAによって検出した。
【図8】組換えHis6−Bpmp−72Cでワクチン接種しB.pilosicoli抗原投与した後のニワトリの全身性抗体価(ELISA)。全部のトリに100μgのタンパク質を筋肉内投与し、次いで1mgを経口ブーストした。循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用しELISAによって検出した。
【図9】組換えHis6−Bpmp−72Cでワクチン接種しB.pilosicoli抗原投与した後のニワトリの全身性抗体価(ELISA)。全部のトリに1mgのタンパク質を筋肉内投与し、次いで1mgを経口ブーストした。循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用しELISAによって検出した。
【図10】100μgの組換えHis6−Bpmp−72Cの筋肉内投与及び 1mgのタンパク質の経口投与を順次行ってワクチン接種したニワトリからプールした血清のウェスタンブロット分析。各サンプリング時点で3羽のニワトリから血清をプールした。使用した抗原は、抗原投与に使用したB.pilosicoli菌株の全細胞抽出物であった。レーン1−実験A1のワクチン接種ニワトリ(陽性対照);レーン2−4−ニワトリ21−23;レーン5−7−ニワトリ24−26;レーン8−10−ニワトリ27−29;レーン11−13−ニワトリ30−32;レーン14−16−ニワトリ33−35。3つのサンプルの各々はワクチン接種前、抗原投与前、抗原投与後に順次採取した血清である。分子量マーカーをkDaで示す。B.pilosicoliの天然型72kDaタンパク質を矢印で示す。
【図11】1mgの組換えHis6−Bpmp−72Cの筋肉内投与及び1mgのタンパク質の経口投与を順次行ってワクチン接種したニワトリからプールした血清のウェスタンブロット分析。各サンプリング時点で3羽のニワトリから採取した血清をプールした。使用した抗原は、抗原投与に使用したB.pilosicoli菌株の全細胞抽出物であった。レーン1−実験A1のワクチン接種ニワトリ(陽性対照);レーン2−4−ニワトリ36−38;レーン5−7−ニワトリ39−41;レーン8−10−ニワトリ42−44;レーン11−13−ニワトリ45−47;レーン14−16−ニワトリ48−50。3つのサンプルの各々はワクチン接種前、抗原投与前、抗原投与後に順次採取した血清である。分子量マーカーをkDaで示す。B.pilosicoliの天然型72kDaタンパク質を矢印で示す。
【図12】組換えHis6−Bpmp−72Cをワクチン接種し次いでB.pilosicoliで抗原投与したニワトリの小腸及び結腸の粘膜性抗体価(ELISA)。トリ1−19はワクチン非接種、トリ21−35は100μgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与、トリ36−50は1mgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与した。 循環抗体は精製His6−Bpmp−72Cをコーティング抗原として使用しELISAによって検出した。
【図13】組換えHis6−Bpmp−72Cをワクチン接種し次いでB.pilosicoliを抗原投与したニワトリの粘膜抗体のウェスタンブロット分析。抗原投与に使用したB.pilosicoli菌株の全細胞抽出物を抗原として使用した。レーン1−3,小腸抗体;レーン4−17,結腸抗体:レーン1,ニワトリ27;レーン2,ニワトリ40;レーン3,ニワトリ48;レーン4−5,ニワトリ23−24;レーン6,ニワトリ27;レーン7−9,ニワトリ34−36;レーン10−13,ニワトリ38−41;レーン14−15,ニワトリ43−44;レーン16,ニワトリ48;レーン17,ニワトリ50;レーン18,実験A1のワクチン接種ニワトリ(陽性対照)。ニワトリ21−35には100μgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与した。ニワトリ36−50には1mgのタンパク質を筋肉内投与し次いで1mgのタンパク質を経口投与した。分子量マーカーはkDaで示す。B.pilosicoliの天然型72kDaタンパク質(Bpmp−72)を矢印で示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列2−配列22から成るグループから選択されたアミノ酸配列、
(ii)(i)のアミノ酸配列に少なくとも60%相同のアミノ酸配列、
(iii)(i)のアミノ酸配列に少なくとも80%一致のアミノ酸配列、または、
(iv)配列2によってコードされているポリペプチドの生物活性をもつ(i)から(iii)のいずれかのフラグメント、
からなる単離ポリペプチド。
【請求項2】
(i)請求項1に記載のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列、
(ii)配列1に示すヌクレオチド配列、
(iii)(i)または(ii)に定義した配列の縮重形に対応するヌクレオチド配列、
(iv)(i)−(iii)の配列に選択的にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、
(v)配列(i)−(iv)のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、
(vi)プライマーまたはプローブとして使用するための適当な(v)の配列のフラグメント、
からなる単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
(i)プロモーターに作動可能に連結された請求項2(i)−(iv)に記載のポリヌクレオチドを含む細胞をポリペプチド発現条件下で培養する段階と、
(ii)発現したポリペプチドを回収する段階と、
を含む請求項1に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項4】
クロマトグラフィーを使用してポリペプチドを回収する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
クロマトグラフィーがNi−キレート化カラム及び/またはゲル濾過の使用を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項2に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項8】
請求項1に記載のアミノ酸配列に特異的な抗体。
【請求項9】
更に、検出可能なラベルを含む請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
(i)請求項1に記載のポリペプチドをキャリアータンパク質にコンジュゲートする段階と、
(ii)(i)のコンジュゲートとアジユバントとを動物に投与する段階と、
(iii)生じた抗体を動物から単離する段階と、
を含む抗体の製造方法。
【請求項11】
(i)適当なハイブリダイズ条件下でサンプルを請求項2(vi)に記載のポリヌクレオチドに接触させる段階と、
(ii)前記ポリヌクレオチドとサンプル中のヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖を検出する段階と、
を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種を選択するためのサンプルのスクリーニング方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが配列24及び配列27−37から成るグループから選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)反応複合体が形成され得る条件下でサンプルを請求項8に記載の抗体に接触させる段階と、
(ii)反応複合体を検出する段階と、
を含む、請求項1に記載のポリペプチドを選択するためのサンプルのスクリーニング方法。
【請求項14】
(i)反応複合体が形成され得る条件下でサンプルを請求項1に記載のポリペプチドに接触させる段階と、
(ii)反応複合体を検出する段階と、
を含む、請求項8に記載の抗体を選択するためのサンプルのスクリーニング方法。
【請求項15】
(i)請求項2(vi)に記載のポリヌクレオチドと、
(ii)前記ポリヌクレオチドとサンプル中のヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖を検出する手段と、
を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種を選択するためのサンプルのスクリーニングキット。
【請求項16】
(i)請求項8に記載の抗体と、
(ii)抗体を含む反応複合体を検出する手段と、
を含む、請求項1に記載のポリペプチドを選択するためのサンプルのスクリーニングキット。
【請求項17】
(i)請求項1に記載のポリペプチドと、
(ii)前記ポリペプチドを含む反応複合体の検出手段と、
を含む、請求項8に記載の抗体を選択するためのサンプルのスクリーニングキット。
【請求項18】
(i)請求項2(i)−(iv)に記載のポリヌクレオチド配列を該ポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドを発現させる編成形態で含む組成物、
(ii)請求項1に記載のポリペプチド、または、
(iii)アジュバントを伴う(i)または(ii)、
から成るグループから選択された組成物を有効量で動物に投与する段階を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する動物の疾患の治療方法。
【請求項19】
請求項2(v)に記載のポリヌクレオチドを含む組成物を有効量で動物に投与する段階を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する動物の疾患の治療方法。
【請求項20】
疾患が腸スピロヘーター感染症である請求項18または19に記載の疾患治療方法。
【請求項21】
(i)請求項2(i)−(iv)に記載のポリヌクレオチド配列を該ポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドを発現させる編成形態で含む組成物、
(ii)請求項1に記載のポリペプチド、または、
(iii)アジュバントを伴う(i)または(ii)、
から成るグループから選択された組成物を免疫原性有効量で投与する段階を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患に対する動物の免疫方法。
【請求項22】
疾患が腸スピロヘーター感染症である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
動物が、ブタ、ニワトリ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、魚及びヒトから成るグループから選択される請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
担体と、(i)請求項1に記載のポリペプチド、(ii)請求項2に記載のポリヌクレオチドまたは(iii)請求項8に記載の抗体とを含む組成物。
【請求項25】
Bpmp−72をコードしているポリヌクレオチド配列の一部分に相補的な少なくとも1つのポリヌクレオチドと、適当な容器と、その使用説明書とを含むスクリーニングキット。
【請求項26】
B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患を治療または予防する医薬を製造するための請求項2に記載のポリヌクレオチドまたは請求項2に記載のポリペプチドの使用。
【請求項1】
(i)配列2−配列22から成るグループから選択されたアミノ酸配列、
(ii)(i)のアミノ酸配列に少なくとも60%相同のアミノ酸配列、
(iii)(i)のアミノ酸配列に少なくとも80%一致のアミノ酸配列、または、
(iv)配列2によってコードされているポリペプチドの生物活性をもつ(i)から(iii)のいずれかのフラグメント、
からなる単離ポリペプチド。
【請求項2】
(i)請求項1に記載のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列、
(ii)配列1に示すヌクレオチド配列、
(iii)(i)または(ii)に定義した配列の縮重形に対応するヌクレオチド配列、
(iv)(i)−(iii)の配列に選択的にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、
(v)配列(i)−(iv)のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、
(vi)プライマーまたはプローブとして使用するための適当な(v)の配列のフラグメント、
からなる単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
(i)プロモーターに作動可能に連結された請求項2(i)−(iv)に記載のポリヌクレオチドを含む細胞をポリペプチド発現条件下で培養する段階と、
(ii)発現したポリペプチドを回収する段階と、
を含む請求項1に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項4】
クロマトグラフィーを使用してポリペプチドを回収する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
クロマトグラフィーがNi−キレート化カラム及び/またはゲル濾過の使用を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項2に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項8】
請求項1に記載のアミノ酸配列に特異的な抗体。
【請求項9】
更に、検出可能なラベルを含む請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
(i)請求項1に記載のポリペプチドをキャリアータンパク質にコンジュゲートする段階と、
(ii)(i)のコンジュゲートとアジユバントとを動物に投与する段階と、
(iii)生じた抗体を動物から単離する段階と、
を含む抗体の製造方法。
【請求項11】
(i)適当なハイブリダイズ条件下でサンプルを請求項2(vi)に記載のポリヌクレオチドに接触させる段階と、
(ii)前記ポリヌクレオチドとサンプル中のヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖を検出する段階と、
を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種を選択するためのサンプルのスクリーニング方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが配列24及び配列27−37から成るグループから選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)反応複合体が形成され得る条件下でサンプルを請求項8に記載の抗体に接触させる段階と、
(ii)反応複合体を検出する段階と、
を含む、請求項1に記載のポリペプチドを選択するためのサンプルのスクリーニング方法。
【請求項14】
(i)反応複合体が形成され得る条件下でサンプルを請求項1に記載のポリペプチドに接触させる段階と、
(ii)反応複合体を検出する段階と、
を含む、請求項8に記載の抗体を選択するためのサンプルのスクリーニング方法。
【請求項15】
(i)請求項2(vi)に記載のポリヌクレオチドと、
(ii)前記ポリヌクレオチドとサンプル中のヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖を検出する手段と、
を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種を選択するためのサンプルのスクリーニングキット。
【請求項16】
(i)請求項8に記載の抗体と、
(ii)抗体を含む反応複合体を検出する手段と、
を含む、請求項1に記載のポリペプチドを選択するためのサンプルのスクリーニングキット。
【請求項17】
(i)請求項1に記載のポリペプチドと、
(ii)前記ポリペプチドを含む反応複合体の検出手段と、
を含む、請求項8に記載の抗体を選択するためのサンプルのスクリーニングキット。
【請求項18】
(i)請求項2(i)−(iv)に記載のポリヌクレオチド配列を該ポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドを発現させる編成形態で含む組成物、
(ii)請求項1に記載のポリペプチド、または、
(iii)アジュバントを伴う(i)または(ii)、
から成るグループから選択された組成物を有効量で動物に投与する段階を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する動物の疾患の治療方法。
【請求項19】
請求項2(v)に記載のポリヌクレオチドを含む組成物を有効量で動物に投与する段階を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する動物の疾患の治療方法。
【請求項20】
疾患が腸スピロヘーター感染症である請求項18または19に記載の疾患治療方法。
【請求項21】
(i)請求項2(i)−(iv)に記載のポリヌクレオチド配列を該ポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドを発現させる編成形態で含む組成物、
(ii)請求項1に記載のポリペプチド、または、
(iii)アジュバントを伴う(i)または(ii)、
から成るグループから選択された組成物を免疫原性有効量で投与する段階を含む、B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患に対する動物の免疫方法。
【請求項22】
疾患が腸スピロヘーター感染症である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
動物が、ブタ、ニワトリ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、魚及びヒトから成るグループから選択される請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
担体と、(i)請求項1に記載のポリペプチド、(ii)請求項2に記載のポリヌクレオチドまたは(iii)請求項8に記載の抗体とを含む組成物。
【請求項25】
Bpmp−72をコードしているポリヌクレオチド配列の一部分に相補的な少なくとも1つのポリヌクレオチドと、適当な容器と、その使用説明書とを含むスクリーニングキット。
【請求項26】
B.hyodysenteriae、B.intermedia、B.alvinipulli、B.aalborgi及びB.pilosicoliを非限定例とするBrachyspira種に関連する疾患を治療または予防する医薬を製造するための請求項2に記載のポリヌクレオチドまたは請求項2に記載のポリペプチドの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−534311(P2007−534311A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544177(P2006−544177)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001783
【国際公開番号】WO2005/059137
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506207705)マードツク・ユニバーシテイ (1)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001783
【国際公開番号】WO2005/059137
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506207705)マードツク・ユニバーシテイ (1)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
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