説明

CATVシステム

【課題】FTTH通信システムにおける光伝送路を構成する光ファイバの本数を削減して、通信システムの導入を容易にすること。
【解決手段】このCATVシステム1Aは、クラスタセルS内に設置されてヘッドエンド2に光伝送路4を介して接続されており、ヘッドエンド2から送信された放送用データを含む光信号を分岐する光カプラ14と、光カプラ14によって分岐された光信号を増幅して再分岐する増幅部15、及び、ヘッドエンド2に光伝送路4を介して接続されており、ヘッドエンド2に対して送受信する双方向通信用データを含む光信号と加入者設備3に対して送受信する光信号とを相互に変換する変換部16を有するミニセルS内のノード装置13と、ノード装置13と複数の加入者設備3間に接続され、ノード装置13と加入者設備3との間で送受信される光信号を分岐/合成する光カプラ19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドエンドと加入者設備間を光伝送路で接続するCATVシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電話局やCATVシステムのセンター局等の中央局と加入者宅内の設備とを光ファイバで接続するFTTH(Fiber To The Home)通信システムが導入され始めている。このFTTH通信システムの方式としては、加入者宅と中央局とを光ファイバを用いて1対1で接続するSS(Single Star)方式と、中央局から延びる光ファイバを加入者宅側において光カプラを用いて複数の光ファイバに分岐することにより加入者宅と中央局とをN対1で接続するPDS(Passive Double Star)方式が知られているが、コスト面から導入が容易であるという点でPDS方式が主流になりつつある(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−101560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このPDS方式では、加入者宅側に能動的な回路素子を用いることは安定的な電源確保等の面から困難であるため、加入者宅側で受動素子である光カプラを用いて光ファイバを分岐している。ここで、光ファイバを介して伝送される光信号は伝送距離に応じたレベル変動や信号遅延により劣化してしまうため、1本の光ファイバごとの光カプラにおける分岐数には限界がある(例えば、伝送距離10kmで最大分岐数32、伝送距離20kmで最大分岐数16)。従って、中央局から加入者宅側を結ぶ伝送路上には加入者数に応じて相当数の光ファイバを布設しなければならないこととなり、通信システムの導入コストの上昇、及び導入工数の増大を招くことになる。
【0004】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、FTTH通信システムにおける光伝送路を構成する光ファイバの本数を削減して、通信システムの導入を容易にするCATVシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のCATVシステムは、光伝送路を光カプラによって分岐することによってヘッドエンドと複数の加入者設備とを接続するCATVシステムであって、複数の加入者宅をエリアに含むセル内に設置されてヘッドエンドに光伝送路を介して接続されており、ヘッドエンドから送信された放送用データを含む第1の光信号を分岐する第1の光カプラと、第1の光カプラに接続されており、第1の光カプラによって分岐された第1の光信号を増幅して再分岐する増幅部、及びヘッドエンドに光伝送路を介して接続されており、ヘッドエンドに対して送受信する双方向通信用データを含む第2の光信号と加入者設備に対して送受信する第3の光信号とを相互に変換する変換部を有するセル内の複数のノード装置と、ノード装置と複数の加入者設備間に接続され、ノード装置と加入者設備との間で送受信される第3の光信号を分岐/合成する第2の光カプラとを備える。
【0006】
このようなCATVシステムによれば、ヘッドエンドから光伝送路を介して送信された放送用データを含む第1の光信号が、セル内の第1の光カプラによって分岐され、分岐された第1の光信号は、セル内のノード装置の増幅部によって増幅及び再分岐されて加入者設備側に送信される。また、ヘッドエンドと加入者設備との間で送受信される双方向通信用データを含む光信号は、ノード装置を挟んで2つの光信号間で相互変換され、ノード装置と複数の加入者設備間において送受信される光信号は、セル内の第2の光カプラによって分岐/合成される。これにより、CATVシステムにおいてセル内に設置されるノード装置を用いて、放送用の光信号を能動的に増幅して分岐するとともに、双方向データ通信用の光信号を、光カプラによって受動的に分岐/合成された光信号と別の光信号との間で能動的に相互変換するので、伝送距離が長い場合でも光伝送路を構成する1本の光ファイバごとの加入者設備数を効果的に増加させることができる。特に、CATVシステムにおけるノード装置が光信号の増幅及び変換を行うことで電源確保の問題も容易に解決することができる。
【0007】
セル内においてヘッドエンドとノード装置との間に接続され、第2の光信号からノード装置宛の双方向通信用データを選択して第4の光信号として該ノード装置に送信するスイッチング装置をさらに備え、変換部は、スイッチング装置から送信された第4の光信号を第3の光信号に変換することが好ましい。
【0008】
この場合、ヘッドエンドとノード装置との間の距離が長い場合であっても、ヘッドエンドとスイッチング装置との間の光伝送路の光ファイバの本数を増加させることなく、ヘッドエンドに接続される加入者設備数をより確実に確保することができる。同時に、あるノード装置宛のデータのみを含む光信号を該当するノード装置に送信するので、スイッチング装置とノード装置間で効率のよいデータ通信ができる。
【0009】
また、複数のノード装置の変換部は、互いにカスケード方式で接続され、複数のノード装置のうちの1のノード装置の変換部は、他のノード装置の変換部に向けて第2の光信号を中継することも好ましい。
【0010】
かかる構成を採れば、ヘッドエンドとノード装置との間の距離が長い場合であっても、ヘッドエンドとノード装置との間の光伝送路の光ファイバの本数を増加させることなく、ヘッドエンドに接続される加入者設備数をより確実に確保することができる。また、ノード装置における中継機能によってセル内の全てのノード装置とヘッドエンドとの間で第2の光信号が送受信されるので、セル内における光ケーブルの引き回し距離がより短くされる。
【0011】
またさらに、スイッチング装置は、ヘッドエンドと2重化された第1の光伝送路及び第2の光伝送路を介して接続され、第1の光伝送路を経由して送信される第2の光信号において異常を検出した場合に、第2の光伝送路経由で第2の光信号を受信するように接続を切り替えることも好ましい。
【0012】
こうすれば、光伝送路において故障が発生した場合であってもその故障が自動検出され、スイッチング装置により光信号を送受信する光伝送路が切り替えられるので、即座にヘッドエンドと加入者設備間のデータ通信を正常状態に復旧させることができる。
【0013】
さらにまた、光伝送路は、2重化された第1及び第2の光伝送路を有し、複数のノード装置は、第1〜第N(Nは2以上の整数)のノード装置の変換部が順にカスケード方式で接続され、且つ、第1及び第Nのノード装置の変換部が、それぞれ第1の光伝送路及び第2の光伝送路に接続されており、第1〜第N−1のノード装置の変換部は、第1の光伝送路から第2の光信号を受信して、順に第Nのノード装置に向けて中継し、第2〜第Nのノード装置の変換部は、第1〜第N−1のノード装置から中継された第2の光信号の異常を検出した場合に、第2の光伝送路から第2の光信号を受信して、順に第1のノード装置に向けて中継することも好ましい。
【0014】
この場合、第1又は第2の光伝送路のいずれかにおいて故障が発生した場合であってもその故障が自動検出され、ノード装置により光信号を送受信する光伝送路が切り替えられるとともにその光信号のノード装置間の光信号の中継方向が逆方向に変更されるので、即座にヘッドエンドと加入者設備間のデータ通信を正常状態に復旧させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のCATVシステムによれば、FTTH通信システムにおける光伝送路を構成する光ファイバの本数を削減して、通信システムの導入を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るCATVシステムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にかかるCATVシステム1Aの接続構成を示す図である。CATVシステム1Aは、図示しないアンテナ等により受信される放送番組を、ケーブルテレビ事業者等の中央局内に設置されたヘッドエンド2から、加入者宅内に設置されたセットトップボックス等の加入者設備3に向けて送信する通信システムである。また、CATVシステム1Aは、インターネット網、電話網等からなる通信網Nにも接続され、通信網Nと加入者設備3との間での送受信される電話通信やインターネット通信用のパケットデータ(双方向通信用データ)を中継するデータ通信機能も有する。なお、CATVシステム1Aは、光ファイバを含んで構成される光伝送路によってヘッドエンド2から加入者設備間3までを接続するFTTH方式を採用している。以下の説明では、設備の接続関係に関しては、ヘッドエンド2側を「上流側」、加入者設備3側を「下流側」とし、光信号の送信方向に関しては、加入者設備3からヘッドエンド2側を「上り方向」、ヘッドエンド2から加入者設備3側を「下り方向」とする。
【0018】
ここで、加入者設備3は、加入者宅の位置するエリア毎に複数(例えば、200世帯)がまとまってミニセルSを形成し、そのミニセルSがさらに複数まとまってクラスタセルSを形成している。そして、ヘッドエンド2と加入者設備3間においては、クラスタセルSごとに光伝送路4が布設されている。この光伝送路4は、2本の光ファイバfa1,fa2が現用光回線として同一ルートで布設された光伝送路4aと、2本の光ファイバfb1,fb2が予備光回線として同一ルートで布設された光伝送路4bとによって構成されている。
【0019】
ヘッドエンド2は、放送番組を含む放送用データの送信機能を担う放送用光伝送装置5と、双方向通信用データの送受信機能を担う通信用光伝送装置6とを備えている。
【0020】
この放送用光伝送装置5は、放送用データを光信号に変換して出力する2つの光送信器7a,7bと、光送信器7a,7bから出力されたそれぞれの光信号を受動的に複数の光信号に分岐する2つの光カプラ8a,8bとにより構成される。放送用光伝送装置5の光カプラ8aは、光ファイバfa1に接続され、分岐した光信号を光ファイバfa1を介して下流側に送信し、光カプラ8bは、光ファイバfb1に接続され、分岐した光信号を光ファイバfb1を介して下流側に送信する。このように、放送用光伝送装置5は、放送用データを含む光信号を、クラスタセルS毎に分岐させて、2重化された2本の光ファイバfa1,fb1を介して下流側に送信する。
【0021】
通信用光伝送装置6は、2つのメディアコンバータ9a,9bより構成される。このメディアコンバータ9aは、通信網N及び光ファイバfa2に接続され、メディアコンバータ9bは、通信網N及び光ファイバfb2に接続されている。メディアコンバータ9a,9bは、通信網Nから受信した複数の加入者設備3宛の通信用データを含む電気信号を、LAN通信方式に従った光信号に変換して、その光信号を光ファイバfa2,fb2を介して下流側に送信する。この所定の通信方式としては、例えば、CSMA/CD方式等のLAN通信方式が用いられる。また、メディアコンバータ9a,9bは、複数の加入者設備3から通信網N側に向けて送信された通信用データを含む光信号を、光ファイバfa2,fb2を介して受信し、その光信号を通信網N側に適合する電気信号に逆変換する。このように、通信用光伝送装置6は、双方向通信用データを含む光信号を、クラスタセルSとの間で2重化された2本の光ファイバfa2,fb2を介して送受信する。
【0022】
光伝送路4の光ファイバfa1,fb1の下流側の端部には、クラスタセルS内に設置された光スイッチ11が接続され、光伝送路4の光ファイバfa2,fb2の下流側の端部には、クラスタセルS内に設置されたLANスイッチ(スイッチング装置)12が接続されている。
【0023】
光スイッチ11は、光ファイバfa1,fb1を介してヘッドエンド2の光カプラ8a,8bに接続され、光ファイバfa1,fb1を介して送信された2つの光信号を、選択的に切り替えて下流側に送信する機能を有する。この光スイッチ11は、通常状態では光ファイバfa1からの光信号を下流側に出力する。一方、光スイッチ11は、ヘッドエンド2からの2つの光信号の光入力レベルをモニタし、光ファイバfa1からの光信号の光入力レベルが低下した場合に、光ファイバfb1からの光信号を下流側に出力するように切り替える。
【0024】
LANスイッチ12は、光ファイバfa2,fb2を介してヘッドエンド2のメディアコンバータ9a,9bに接続され、メディアコンバータ9a,9bとミニセルSとの間で送受信される光信号を分配/合成する能動的なスイッチングハブ装置である。このLANスイッチ12は、ミニセルSごとに設けられた複数のノード装置(詳細は、後述する。)13と、クラスタセルS内に布設された複数の光ファイバfを介して接続されている。そして、LANスイッチ12は、複数のノード装置13からの上り方向通信用データを含む光信号を受信し、これらの光信号に含まれる上り方向通信用データを合成して光信号を再生成してメディアコンバータ9a,9b側に送信する。さらに、LANスイッチ12は、メディアコンバータ9a,9bからの下り方向通信用データを含む光信号を受信し、これらの下り方向通信用データを、送信先アドレスを参照することによってミニセルS毎に分配する。LANスイッチ12は、分配した下り方向通信用データを含む光信号をミニセルS毎に再生成し、それらの光信号を該当するノード装置13に向けて送信する。具体的には、ノード装置13が送信先として指定されている下り方向通信用データが、そのノード装置13に対して選択されるように分配される。ここで、LANスイッチ12とノード装置13間においては、LANスイッチ12とメディアコンバータ9a,9bとの間と同じLAN通信方式が用いられる。
【0025】
また、LANスイッチ12は、光ファイバfa2を経由してメディアコンバータ9aとの間で送受信される光信号におけるネットワーク障害を検出する機能を有し、その光信号の異常を検出した場合に、光ファイバfb2を経由してメディアコンバータ9bとの間で光信号を送受信するように、ヘッドエンド2との接続を切り替える機能も有する。このような切り替え機能を実現するプロトコルとしては、例えば、リンクアグリゲーションが用いられる。
【0026】
光カプラ14は、クラスタセルS内において2重化された光伝送路4に対応して設置された受動的な光素子である。この光カプラ14は、光ファイバfを介して光スイッチ11と接続され、光スイッチ11から下流側に送信された放送用データを含む光信号を、複数のノード装置13に向けて分岐する。ここで、光カプラ14は、クラスタセルS内に布設された複数の光ファイバfを介して、ミニセルSごとに設けられた複数のノード装置13と接続され、分岐された光信号は、これらの光ファイバfを介してノード装置13に送信される。
【0027】
ノード装置13は、放送用データを含む光信号の増幅機能を担う増幅部15と、双方向通信用データを含む光信号の通信方式の変換機能を担う変換部16とを備える。増幅部15は、光カプラ14の出力に光ファイバfを介して接続され、光カプラ14から送信された光信号のレベルを増幅するとともに、増幅した光信号を再度分岐して加入者設備3に向けて送信する。増幅部15を構成する増幅器としては、例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)が用いられる。増幅部15から送信された光信号は、ノード装置13と加入者設備3との間に設けられた光ファイバ及びその光ファイバを分岐するための光カプラを経由して、ノード装置13の配下の複数の加入者設備3に同時に送信されることになる。
【0028】
ノード装置13の変換部16は、LANスイッチ17と2つのOLT(Optical Line Terminal:加入者線終端装置)18a,18bとから構成されている。LANスイッチ17は、LANスイッチ12から光ファイバfを経由して送信される光信号から下り方向通信用データを復調して、その下り方向通信用データを2つのOLT18a,18bに対して分配して出力する。具体的には、OLT18a,18bの配下の加入者設備3が送信先として指定されている下り方向通信用データが、そのOLT18a,18bに対して分配して出力される。また、LANスイッチ17は、OLT18a,18bから送信される上り方向通信用データを合成した後に光信号に変調して、その光信号を光ファイバfを経由してLANスイッチ12に送信する。
【0029】
ノード装置13のOLT18a,18bは、ミニセルS内に位置する複数の加入者設備3に対応するための設備であり、OLT18a,18bと加入者設備3との間で送受信される光信号における各加入者設備3への帯域割当の制御等のデータ通信制御を行う。また、このOLT18a,18bは、LAN通信方式によってノード装置13とヘッドエンド2との間で送受信される光信号と、ノード装置13と加入者設備3との間で送受信される光信号との間で、通信方式を相互に変換する。なお、ノード装置13と加入者設備3との間では、光アクセス回線用の通信方式であるPON(Passive Optical Network)方式が用いられており、OLT18a,18bは、能動的に光信号を分配/合成するLAN通信方式と、受動的に光信号を分岐/合成するPON方式との間で通信方式の変換を行う。
【0030】
このOLT18a,18bと加入者設備3との間には、ツリー状をなす光ファイバの節点において光カプラ19が接続されている。この光カプラ19は、OLT18a,18bから送信された下り方向通信用データを含む光信号を加入者設備3に向けて分岐するとともに、加入者設備3から送信される上り方向通信用データを含む光信号を合成してOLT18a,18bに向けて送信する。
【0031】
以上説明したCATVシステム1Aによれば、ヘッドエンド2から2重化された光伝送路4を介して送信された放送用データを含む光信号が、クラスタセルS内の光カプラ14によって分岐され、分岐された光信号は、ミニセルS内のノード装置13の増幅部15によって増幅された後に再分岐されて加入者設備3側に送信される。また、ヘッドエンド2と加入者装置3との間で送受信される双方向通信用データを含む光信号は、ノード装置13を挟んで上流側のLAN通信方式の光信号と下流側のPON方式の光信号との間で相互に変換される。さらに、ノード装置13と加入者設備3との間で送受信される光信号は、ミニセルS内に設置された光カプラ19によって分岐/合成される。これにより、CATVシステム1AのミニセルS内に設置されるノード装置13を用いて、放送用の光信号を能動的に増幅して分岐するとともに、双方向データ通信用の光信号を、光カプラによって受動的に分岐/合成するPON方式の光信号と、能動的にスイッチングするLAN通信方式の光信号との間で相互に変換するので、伝送距離が長い場合でも光伝送路を構成する1本の光ファイバごとの加入者設備数を効果的に増加させることができる。
【0032】
具体的には、ヘッドエンドと加入者設備との間をPON方式で接続した場合は、伝送距離10km以下の場合は1本の光ケーブルあたりの最大分岐数は32であり、1000世帯を含むセルを収容しようとした場合に64芯の光ケーブルが必要になる。同様に、伝送距離20km以下の場合は1本の光ケーブルあたりの最大分岐数は16であり、1000世帯を含むセルを収容しようとした場合に126芯の光ケーブルが必要になる。これに対して、CATVシステム1Aによれば、ヘッドエンドとクラスタセル間の2系統の光伝送路を含めて4芯の光ファイバにより1200世帯程度を含む1つのクラスタセルを収容することが可能になる。
【0033】
また、従来のHFC型(Hybrid Fiber/Coaxial system)のCATVシステムにおいては、セル内に設置されるノード装置が光ケーブルと同軸ケーブルとの間で能動的に信号を変換する方式を採っている。従って、CATVシステム1Aの構成を採用してHFC型からFTTH方式にシステムを置換する際において、電源確保及び設備設置スペースの確保の問題も容易に解決することができる。さらに、システムの置換の際における光ファイバの新規の布設数を最小限にすることができる。
【0034】
また、LANスイッチ12を経由してヘッドエンド2とノード装置13とを接続することにより、ヘッドエンド2とノード装置13との間の距離が長い場合であっても、光伝送路4の光ファイバの本数を増加させることなく、ヘッドエンド2に接続される加入者設備数をより確実に確保することができる。同時に、あるノード装置13宛のデータのみを含む光信号を該当するノード装置13に選択的に送信するので、LANスイッチ12とノード装置13間で効率のよいデータ通信ができる。
【0035】
また、LANスイッチ12により、光伝送路4において故障が発生した場合であってもその故障が自動検出され光信号を送受信する光伝送路4a,4bが切り替えられるので、即座にヘッドエンド2と加入者設備3間のデータ通信を正常状態に復旧させることができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態にかかるCATVシステム1Bの接続構成を示す図である。CATVシステム1Bは、ミニセルS内に設置されるノード装置33a,33b,33c,33dが2重化された光伝送路4a,4bの切り替え機能を有する点が第1実施形態と異なる。
【0037】
同図に示すように、クラスタセルS内には光伝送路4aの光ファイバfa1の下流側端部に接続された光カプラ34aと、光伝送路4bの光ファイバfb1の下流側端部に接続された光カプラ34bとが設けられている。これらの光カプラ34a,34bは、それぞれ、ヘッドエンド2から光伝送路4a,4bを介して送信された放送用データを含む光信号を、クラスタセルS内に布設された複数の光ファイバf,fに向けて分岐する。
【0038】
ノード装置33aは、増幅部15の上流側に接続された光スイッチ35をさらに内蔵している。この光スイッチ35は、2本の光ファイバf,fの下流側端部に接続され、通常状態では光ファイバfからの光信号を下流側の増幅部15に出力する。一方、光スイッチ35は、光ファイバ光ファイバfからの光入力レベルをモニタする機能を有し、光ファイバfからの光信号の光入力レベルが低下した場合に、光ファイバfからの光信号を下流側の増幅部15に出力するように切り替える。同様に、ノード装置33b,33c,33dも光スイッチ35が内蔵されている。この光スイッチ35により、光伝送路4にネットワーク障害が発生したり、光カプラ34a,34bが故障した場合でも、加入者設備3における放送用データの受信を、即座に正常状態に復旧させることができる。
【0039】
また、ノード装置33a,33b,33c,33dの4つのLANスイッチ37は、光伝送路4aの光ファイバfa2の下流側端部と光伝送路4bの光ファイバfb2の下流側端部との間で順にカスケード方式で接続されている。すなわち、ノード装置33aのLANスイッチ37には光ファイバfa2の下流側端部が接続され、ノード装置33aのLANスイッチ37、ノード装置33bのLANスイッチ37、ノード装置33cのLANスイッチ37、及びノード装置33dのLANスイッチ37が、この順で直列に接続され、ノード装置33dのLANスイッチ37には光ファイバfb2の下流側端部がさらに接続されている。それぞれのLANスイッチ37は、光伝送路4a側から送信された下り方向通信用データを含む光信号を受信し、その通信用データを2つのOLT18a,18bに対して分配して出力すると同時に、その光信号を後段側のノード装置に向けて順に中継する。ここでは、光伝送路4a側に接続されたノード装置を「前段側」のノード装置、光伝送路4b側に接続されたノード装置を「後段側」のノード装置と言うものとする。
【0040】
また、それぞれのLANスイッチ37は、OLT18a,18bから送信される上り方向通信用データを合成した後に、その通信用データを含む光信号を前段側(光ファイバfa2側)の光出力ポートに出力する。さらに、LANスイッチ37は、後段側のノード装置から受信された上り方向通信用データを含む光信号を前段側のノード装置に向けて順に中継する機能も有する。
【0041】
また、LANスイッチ37は、光伝送路4aにおいて異常を検出した場合は、双方向通信データを含む光信号を送受信するルートを光伝送路4aから光伝送路4bに切り替える機能も有する。具体的には、それぞれのLANスイッチ37は、光伝送路4a経由で送受信される光信号において異常を検出した場合には、以下のように動作する。すなわち、LANスイッチ37は、後段側(光伝送路4b側)から送信された下り方向通信用データを含む光信号を受信するように光入力ポートを切り替えると同時に、その光信号を前段側のノード装置に向けて順に中継する。さらに、それぞれのLANスイッチ37は、OLT18a,18bから送信される上り方向通信用データを合成した後に、その通信用データを含む光信号を後段側(光ファイバfb2側)の光出力ポートに出力するように切り替える。さらに、LANスイッチ37は、前段側のノード装置から受信された上り方向通信用データを含む光信号を後段側のノード装置に向けて順に中継するように切り替える。このとき、光信号における異常は、光信号に含んでやりとりされる制御情報に基づいて検出することができる。
【0042】
以上説明したCATVシステム1Bによれば、ヘッドエンド2とノード装置33a,33b,33c,33dとの間の距離が長い場合であっても、ヘッドエンド2とノード装置33a,33b,33c,33dとの間の光伝送路の光ファイバの本数を増加させることなく、ヘッドエンド2に接続される加入者設備数をより確実に確保することができる。また、ノード装置における中継機能によってクラスタセルS内の全てのノード装置とヘッドエンドとの間で第2の光信号が送受信されるので、クラスタセルS内における光ケーブルの引き回し距離がより短くされる。
【0043】
また、光伝送路4a,4bのいずれかにおいて故障が発生した場合であってもその故障が自動検出され、ノード装置33a,33b,33c,33dにより光信号を送受信する光伝送路4が切り替えられるとともにその光信号のノード装置33a,33b,33c,33d間の光信号の中継方向が逆方向に変更されるので、即座にヘッドエンド2と加入者設備3間のデータ通信を正常状態に復旧させることができる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態における光ファイバの本数、光カプラによる分岐数、又はノード装置、光カプラ等の各装置の台数は一例であり、様々な数値に変更することが可能である。
【0045】
また、2重化された4芯の光ケーブルを含む光伝送路には限定されず、放送データ用及び通信データ用として2芯の光ケーブルのみを含む光伝送路であってもよい。また、放送用データを含む光信号と通信用データを含む光信号とは、1芯の光ファイバ上に波長分割多重(WDM)により多重化されて送受信されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるCATVシステムの接続構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかるCATVシステムの接続構成を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
…クラスタセル、S…ミニセル、1A,1B…CATVシステム、2…ヘッドエンド、3…加入者設備、4,4a,4b…光伝送路、12…LANスイッチ(スイッチング装置)、13,33a,33b,33c,33d…ノード装置、14,19,34a,34b…光カプラ、15…増幅部、16…変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路を光カプラによって分岐することによってヘッドエンドと複数の加入者設備とを接続するCATVシステムであって、
複数の加入者宅をエリアに含むセル内に設置されて前記ヘッドエンドに前記光伝送路を介して接続されており、前記ヘッドエンドから送信された放送用データを含む第1の光信号を分岐する第1の光カプラと、
前記第1の光カプラに接続されており、前記第1の光カプラによって分岐された第1の光信号を増幅して再分岐する増幅部、及び前記ヘッドエンドに前記光伝送路を介して接続されており、前記ヘッドエンドに対して送受信する双方向通信用データを含む第2の光信号と前記加入者設備に対して送受信する第3の光信号とを相互に変換する変換部を有する前記セル内の複数のノード装置と、
前記ノード装置と前記複数の加入者設備間に接続され、前記ノード装置と前記加入者設備との間で送受信される前記第3の光信号を分岐/合成する第2の光カプラと、
を備えることを特徴とするCATVシステム。
【請求項2】
前記セル内において前記ヘッドエンドと前記ノード装置との間に接続され、前記第2の光信号から前記ノード装置宛の前記双方向通信用データを選択して第4の光信号として該ノード装置に送信するスイッチング装置をさらに備え、
前記変換部は、前記スイッチング装置から送信された前記第4の光信号を前記第3の光信号に変換する、
ことを特徴とする請求項1記載のCATVシステム。
【請求項3】
前記複数のノード装置の前記変換部は、互いにカスケード方式で接続され、前記複数のノード装置のうちの1のノード装置の前記変換部は、他のノード装置の前記変換部に向けて前記第2の光信号を中継する、
ことを特徴とする請求項1記載のCATVシステム。
【請求項4】
前記スイッチング装置は、前記ヘッドエンドと2重化された第1の光伝送路及び第2の光伝送路を介して接続され、前記第1の光伝送路を経由して送信される第2の光信号において異常を検出した場合に、第2の光伝送路経由で前記第2の光信号を受信するように接続を切り替える、
ことを特徴とする請求項2記載のCATVシステム。
【請求項5】
前記光伝送路は、2重化された第1及び第2の光伝送路を有し、
前記複数のノード装置は、第1〜第N(Nは2以上の整数)のノード装置の前記変換部が順にカスケード方式で接続され、且つ、前記第1及び第Nのノード装置の前記変換部が、それぞれ前記第1の光伝送路及び前記第2の光伝送路に接続されており、
前記第1〜第N−1のノード装置の前記変換部は、前記第1の光伝送路から前記第2の光信号を受信して、順に前記第Nのノード装置に向けて中継し、
前記第2〜第Nのノード装置の前記変換部は、前記第1〜第N−1のノード装置から中継された第2の光信号において異常を検出した場合に、前記第2の光伝送路から前記第2の光信号を受信して、順に前記第1のノード装置に向けて中継する、
ことを特徴とする請求項3記載のCATVシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−311877(P2008−311877A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156724(P2007−156724)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(500241273)株式会社ブロードネットマックス (10)
【Fターム(参考)】