説明

CCDイメージセンサ

【課題】結晶欠陥の発生を少なくし、かつ電荷の転送効率を向上できるようにしたCCDイメージセンサを提供する。
【解決手段】Nウェルに絶縁膜20を介して電荷転送用の電極30、40が多数配列されたCCDイメージセンサであって、電極30はP型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32とが電荷転送方向に向けて順に配置された構造となっており、電極40はP型ポリシリコン41とN型ポリシリコン42とが電荷転送方向に向けて順に配置された構造となっている。このような構成であれば、半導体基板表面へイオン注入を行う事無く、電極30、40直下のNウェル12に、P型ポリシリコンとN型ポリシリコンとの仕事関数差に起因したポテンシャル勾配が生じさせることが出来、このポテンシャル勾配が電荷転送方向と一致するため、電荷転送効率を向上させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDイメージセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。即ち、この特許文献1は、半導体基板の表面にMOS構造の電極が多数配列した構造を有する電荷転送装置に関するものであり、電位障壁部の電極直下の半導体基板に不純物濃度が異なる2種類以上の不純物領域を有するものである。このような構成であれば、電位障壁部の半導体基板に不純物濃度差に起因したポテンシャル勾配が生じるので、上記ポテンシャル勾配を利用して電荷の転送効率(即ち、転送速度)を向上させることができる。
【特許文献1】特開平3−283629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、半導体基板に上記のような不純物領域を形成する場合、通常、イオン注入技術を用いてその基板表面付近に不純物を注入することとなる。ここで、イオン注入技術では、その不純物の注入時に半導体基板表面に結晶欠陥が生じてしまうという問題がある。半導体基板表面に結晶欠陥が残存すると、結晶欠陥を介して発生した電荷が被転送電荷に加算され、つまり信号成分にノイズ成分が加算されてしまい、電荷転送特性が劣化してしまうおそれがある。
【0004】
また、イオン注入により結晶欠陥が生じても、その後に半導体基板を十分高い温度で長時間加熱してやれば結晶欠陥を消滅させることは可能である。しかしながら、現在、精力的に研究開発がなされている微細プロセスにおいては、加熱温度を低くすると共に、加熱時間を短くする傾向にある。つまり、十分高い温度で長時間加熱することは、微細プロセスにおける基本コンセプト「不純物拡散を抑制する」から外れるため、設計の自由度が低くなりがちである。そのため、十分高い温度で長時間加熱したくても設計上の観点からその処理を実行することが許されず、時として完全なる結晶性回復をあきらめなければならないこともありうる。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、結晶欠陥の発生を少なくし、かつ電荷の転送効率を向上できるようにしたCCDイメージセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕 上記課題を解決するために、発明1のCCDイメージセンサは、半導体基板の表面に絶縁膜を介して電荷転送用の電極が多数配列されたCCDイメージセンサであって、前記電極の前記絶縁膜と接する部分は、仕事関数が異なる複数種類の導電層が電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている、ことを特徴とするものである。ここで、本発明の「仕事関数が異なる複数種類の導電層」としては、例えば、導電型がP型またはN型の半導体層、金属層等が挙げられる。
【0006】
発明1のCCDイメージセンサによれば、電極直下の半導体基板表面には仕事関数差に起因してポテンシャル勾配が生じ、このポテンシャル勾配によって被転送電荷は電極直下の電荷転送方向の側へ引き寄せられる。また、このようなポテンシャル勾配は電極に対する電圧印加の有無に関わり無く維持される。従って、電荷の転送効率を高めることができる。
従来の技術と比べて、半導体基板に不純物をイオン注入しなくてもポテンシャル勾配が形成されるので、ポテンシャル勾配の形成を目的としたイオン注入工程は必ずしも必要とされない。このため、半導体基板における結晶欠陥の発生を少なくすることができる。
【0007】
〔発明2〕 発明2のCCDイメージセンサは、第1導電型の半導体基板表面に絶縁膜を介して電荷転送用の電極が多数配列されたCCDイメージセンサであって、前記電極の前記絶縁膜と接する部分は、第2導電型の第1半導体層と第1導電型の第2半導体層とが電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている、ことを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、電極直下の半導体基板表面に第1半導体層と第2半導体層との仕事関数差に起因してポテンシャル勾配が生じ、このポテンシャル勾配によって被転送電荷は第1半導体層直下から第2半導体層の直下へ引き寄せられる。また、このポテンシャル勾配によって被転送電荷が引き寄せられる方向は電荷転送方向と一致し、さらに、このポテンシャル勾配は電極に対する電圧印加の有無に関わり無く維持される。従って、電荷の転送効率を高めることができる。
従来の技術と比べて、半導体基板に不純物をイオン注入しなくてもポテンシャル勾配が形成されるので、ポテンシャル勾配の形成を目的としたイオン注入工程は必ずしも必要とされない。このため、半導体基板における結晶欠陥の発生を少なくすることができる。
【0009】
〔発明3〕 発明3のCCDイメージセンサは、N型の半導体基板表面に絶縁膜を介して電荷転送用の電極が多数配列されたCCDイメージセンサであって、前記電極の前記絶縁膜と接する部分は、P型ポリシリコンとN型ポリシリコンとが電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている、ことを特徴とするものである。
ここで、P型ポリシリコンの仕事関数(WF:Work function)は約5.25eVであり、N型ポリシリコンの仕事関数(WF)は約4.17eVである。
【0010】
発明3のCCDイメージセンサによれば、電極直下の半導体基板表面にP型ポリシリコンとN型ポリシリコンとの仕事関数差に起因してポテンシャル勾配が生じ、P型ポリシリコン直下の電子e−はN型ポリシリコンの直下へ引き寄せられる。また、このポテンシャル勾配によって電子e−が引き寄せられる方向は電荷転送方向と一致し、さらに、このポテンシャル勾配は電極に電圧が印加されているときもそうでないときも維持される。従って、電荷の転送効率を高めることができる。
従来の技術と比べて、半導体基板に不純物をイオン注入しなくてもポテンシャル勾配が形成されるので、ポテンシャル勾配の形成を目的としたイオン注入工程は必ずしも必要とされない。このため、半導体基板における結晶欠陥の発生を少なくすることができる。
【0011】
〔発明4〕 発明4のCCDイメージセンサは、発明3のCCDイメージセンサにおいて、前記電極直下の前記半導体基板表面に前記電荷の転送方向に沿って一定間隔で設けられた複数のP型不純物層、をさらに備えたことを特徴とするものである。
このような構成であれば、P型不純物層は電位障壁として機能し、P型不純物層直下のチャネル領域のポテンシャルは低くなるので、隣接する領域との間でポテンシャル勾配を形成したり、あるいは、ポテンシャル勾配をより急峻にしたりすることができる。
【0012】
なお、イオン注入技術を用いてP型不純物層を形成する場合は、半導体基板に結晶欠陥が発生してしまうおそれがある。しかし、発明4のCCDイメージセンサでは、P型不純物層の直上に電極の一部をなすP型ポリシリコンが配置され、このP型ポリシリコンもP型不純物層と同じようにポテンシャル勾配の形成に寄与する。従って、従来の技術(例えば、P型不純物層上の電極が全てN型ポリシリコンからなる場合)と比べて、同じ電荷転送効率を求めるのであれば、P型不純物層を低濃度化することができ、P型不純物層を形成する際のドーズ量を少なくすることができるので、結晶欠陥の発生を少なくすることが可能である。
【0013】
〔発明5〕発明5のCCDイメージセンサは、発明3または発明4のCCDイメージセンサにおいて前記P型ポリシリコンは、P型不純物の濃度が高いP+ポリシリコンと、P型不純物の濃度が低いP−ポリシリコンとを含み、前記N型ポリシリコンは、N型不純物の濃度が高いN+ポリシリコンと、N型不純物の濃度が低いN−ポリシリコンとを含み、前記電極のうちの前記絶縁膜と接する部分は、前記電荷の転送方向に向けて、前記P+ポリシリコンと、前記P−ポリシリコンと、前記N−ポリシリコンと、前記N+ポリシリコンとが順に配置された構造となっている、ことを特徴とするものである。
このような構成であれば、P+ポリシリコンの直下からN+ポリシリコンの直下にかけてポテンシャル勾配が段階的に形成されるので、例えば、P+ポリシリコンの直下に存在する電子e−をN+ポリシリコンの直下へスムーズに誘導することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CCDイメージセンサにおいて、結晶欠陥の発生を少なくし、かつ電荷の転送効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(1)第1実施形態
図1(A)〜(C)は、第1実施形態に係るCCDイメージセンサ100の電荷転送領域(即ち、シフトレジスタ)の構成例を示す断面図と、この断面図に対応するポテンシャル図である。また、図2は、電圧信号φ1、φ2のタイミングの一例を示す図である。図1(B)は図2の時刻t1におけるポテンシャルを示し、図1(C)は図2の時刻t2におけるポテンシャルを示している。
【0016】
図1(A)に示すように、このCCDイメージセンサ100は、P型のシリコン基板11と、このシリコン基板11に形成されたN型のウェル(即ち、Nウェル)12と、このNウェル12の上に形成された絶縁膜20と、絶縁膜20上に形成された電荷転送用の複数の電極30および40と、を含んだ構成となっている。図1(A)に示すように、このCCDイメージセンサ100では、断面視での構造(即ち、断面構造)が異なる2種類の電極30、40が電荷転送方向に沿って交互に配列しており、例えば、電極30には電圧信号φ1が、もう一方の電極40には電圧信号φ2が入力されるようになっている。
【0017】
φ1、φ2という2相の信号で電荷を転送するタイプのCCDは2相駆動CCDとも呼ばれている。図1(A)〜(C)に示すように、CCDイメージセンサ100では、電極30、40にそれぞれ異なる電圧信号φ1、φ2を与えることにより、電極30、40直下のNウェル12にそれぞれ深さの異なるポテンシャル井戸を作り出し、これを利用して電荷(この例では、電子e−)を保持するようになっている。また、図2に示すように、各電極30、40に印加する電圧信号φ1、φ2のオン(ON)、オフ(OFF)を一定間隔で入れ替えることにより、電極30(または、電極40)直下のNウェル12に保持されている電荷を、電荷転送方向の側に隣接する電極40(または電極30)の直下へ転送するようになっている。
【0018】
ところで、このCCDイメージセンサ100では、電極30はP型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32とで構成されており、P型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32とが電荷転送方向に向けて順に配置された構造となっている。つまり、電荷転送領域の上流側にP型ポリシリコン31が、その下流側にN型ポリシリコン32がそれぞれ配置され構造となっている。また、同様に、電極40もP型ポリシリコン41とN型ポリシリコン42とで構成されており、P型ポリシリコン41とN型ポリシリコン42とが電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている。
【0019】
ここで、P型ポリシリコンの仕事関数(WF:Work function)は約5.25eVであり、N型ポリシリコンの仕事関数(WF)は約4.17eVである。図3に示すように、P型ポリシリコン直下の半導体基板表面のポテンシャルはN型ポリシリコン直下の半導体基板表面のポテンシャルよりも低く、PN接合部の直下を中心にポテンシャル勾配が形成される。そして、このポテンシャル勾配によって、電子e−はP型ポリシリコンの直下からN型ポリシリコンの直下へと引き寄せられる。
【0020】
図1(A)〜(C)に戻って、CCDイメージセンサ100では、電極30直下のNウェル12表面にP型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32との仕事関数差に起因してポテンシャル勾配が生じ、P型ポリシリコン31直下の電子e−はN型ポリシリコン32の直下へ引き寄せられる。また同様に、電極40直下のNウェル12表面にもP型ポリシリコン41とN型ポリシリコン42との仕事関数差に起因してポテンシャル勾配が生じ、P型ポリシリコン41直下の電子e−はN型ポリシリコン42の直下へ引き寄せられる。そして、このようなポテンシャル勾配によって電子e−が引き寄せられる方向は、電極30、40の両方において、それぞれ電荷転送方向と一致している。
【0021】
さらに、図1(B)および(C)に示すように、このようなポテンシャル勾配(即ち、P型ポリシリコン直下のポテンシャルがN型ポリシリコン直下のポテンシャルよりも低い状態)はφ1、φ2のオンオフに関係なく維持されるので、電荷転送方向への電子e−の転送を、上記のポテンシャル勾配で後押しすることができる。
【0022】
次に、図1(A)に示したCCDイメージセンサ100の製造方法について説明する。
図4(A)〜図5(C)は、CCDイメージセンサ100の製造方法を示す工程図である。
図4(A)に示すように、まず始めに、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入技術を用いてP型のシリコン基板11にN型不純物を部分的に導入し、Nウェル12を形成する。次に、Nウェル12上に絶縁膜20を形成する。この絶縁膜20は、例えばSiO膜、Si膜、SiON膜またはhigh−k膜である。絶縁膜20としてSiO膜を形成する場合には、例えばシリコン基板11を熱酸化することでSiO膜を形成する。
【0023】
次に、図4(B)に示すように、絶縁膜20上に例えばノンドープのポリシリコン膜21を形成する。このポリシリコン膜21の形成は例えばCVDで行う。そして、N型ポリシリコンが形成される領域の上方を開口し、それ以外の領域の上方を覆うレジストパターン22をポリシリコン膜21上に形成し、このレジストパターン22をマスクにポリシリコン膜21にN型不純物をイオン注入する。これにより、図4(B)に示すように、ポリシリコン膜21にN型ポリシリコン42を形成する。N型ポリシリコン42を形成した後は、レジストパターン22を例えばアッシングして除去する。
【0024】
次に、図4(C)に示すように、P型ポリシリコンが形成される領域の上方を開口し、それ以外の領域の上方を覆うレジストパターン23をポリシリコン膜21上に形成し、このレジストパターン23をマスクにポリシリコン膜21にP型不純物をイオン注入する。これにより、図4(C)に示すように、ポリシリコン膜21にP型ポリシリコン41を形成する。P型ポリシリコン41を形成した後は、レジストパターン23を例えばアッシングして除去する。
【0025】
次に、図5(A)に示すように、電極40が形成される領域の上方を覆い、それ以外の領域の上方を露出させるレジストパターン24をポリシリコン膜21上に形成し、このレジストパターン24をマスクにポリシリコン膜21を例えばドライエッチングする。これにより、図5(A)に示すように、P型ポリシリコン41とN型ポリシリコン42とからなる電極40を絶縁膜20上に形成する。電極40を形成した後は、レジストパターン24を例えばアッシングして除去する。
【0026】
次に、電極40下から露出しているシリコン基板11の表面と、電極40表面とに絶縁膜25を形成する。この絶縁膜25は例えばSiO膜であり、その形成は例えばシリコン基板11を熱酸化することで行う。そして、図5(B)に示すように、シリコン基板11の上方全面に例えばノンドープのポリシリコン膜26を形成する。このポリシリコン膜26の形成は例えばCVDで行う。
【0027】
次に、フォトリソグラフィ技術とイオン注入技術とを用いてポリシリコン膜26にN型不純物を部分的に導入し、図5(C)に示すように、ポリシリコン膜26にN型ポリシリコン32を形成する。続いて、フォトリソグラフィ技術とイオン注入技術とを用いてポリシリコン膜26にP型不純物を部分的に導入し、図5(C)に示すように、ポリシリコン膜26にP型ポリシリコン31を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いてポリシリコン膜26をパターニングする。これにより、図1(A)に示したP型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32とからなる電極30を形成する。
【0028】
このように、本発明の第1実施形態によれば、電極30、40直下のNウェル12表面にP型ポリシリコンとN型ポリシリコンとの仕事関数差に起因してポテンシャル勾配がそれぞれ生じる。そして、このポテンシャル勾配によって、P型ポリシリコン直下の電子e−はN型ポリシリコンの直下に引き寄せられ、この電子e−が引き寄せられる方向は電荷転送方向と一致し、さらに、このポテンシャル勾配はφ1、φ2のオンオフに関係なく(即ち、電極30、40に対する電圧印加の有無に関係なく)維持されるので、電荷の転送効率を高めることができる。
【0029】
従来の技術と比べて、シリコン基板11に不純物をイオン注入しなくてもポテンシャル勾配が形成されるので、ポテンシャル勾配の形成を目的としたイオン注入工程は必ずしも必要とされない。このため、シリコン基板11における結晶欠陥の発生を少なくすることができる。
この第1実施形態では、Nウェル12が本発明の「半導体基板(の)表面」に対応し、P型ポリシリコン31、41およびN型ポリシリコン32、42が本発明の「仕事関数が異なる複数種類の導電層」に対応している。また、P型ポリシリコン31、41が本発明の「第2導電型の第1半導体層」に対応し、N型ポリシリコン32、42が本発明の「第1導電型の第2半導体層」に対応している。
【0030】
(2)第2実施形態
図6(A)〜(C)は、第2実施形態に係るCCDイメージセンサ200の電荷転送領域(即ち、シフトレジスタ)の構成例を示す断面図と、この断面図に対応するポテンシャル図である。図6(B)は図2の時刻t1におけるポテンシャルを示し、図6(C)は図2の時刻t2におけるポテンシャルを示している。なお、図6(A)において、図1(A)と同一の構成を有する部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図6(A)に示すように、このCCDイメージセンサ200は、P型のシリコン基板11と、このシリコン基板11に形成されたNウェル12と、このNウェル12の上に形成された絶縁膜20と、絶縁膜20上に形成された電荷転送用の複数の電極30、140と、を含んだ構成となっている。図1(A)に示すように、このCCDイメージセンサ200では、断面構造が異なる2種類の電極30、140が電荷転送方向に沿って交互に配列している。
【0032】
ここで、電極140はN型ポリシリコンのみで構成されている。また、電荷転送方向に沿って配列している電極30に対して、例えば、その並び順に整数の番号を付与した場合、番号が奇数の電極には電圧信号φ1が、番号が偶数の電極には電圧信号φ2がそれぞれ印加されるようになっている。即ち、電荷転送方向に沿って配列している電極30に対して、一つおきに電圧信号φ1が印加されるようになっており、残りの電極30に電圧信号φ2が印加されるようになっている。また、電圧信号φ1が印加される電極30の下流側で隣接する電極140には電圧信号φ1が印加され、電圧信号φ2が印加される電極30の下流側で隣接する電極140には電圧信号φ2が印加されるようになっている。さらに、電極30直下のNウェル12にはP型不純物層150が形成されている。
【0033】
このような構成であっても、電極30直下のNウェル12にP型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32との仕事関数差に起因してポテンシャル勾配が生じ、P型ポリシリコン31直下の電子e−はN型ポリシリコン32の直下に引き寄せられる。そして、この電子e−が引き寄せられる方向は電荷転送方向と一致し、さらに、このポテンシャル勾配は電極に対する電圧印加の有無に関わり無く維持されるので、電荷の転送効率を高めることができる。
【0034】
また、P型不純物層150は電位障壁として機能し、P型不純物層150直下のNウェル12のポテンシャルを低くすることができる。このため、同一導電型で、且つ同一信号φ1(またはφ2)が印加される隣接したN型ポリシリコン32と電極140間の直下にも、ポテンシャル勾配が形成されるので、N型ポリシリコン32の直下から電極140直下への電子e−の転送を、このP型不純物層150起因のポテンシャル勾配で後押しすることができる。
【0035】
次に、上記のCCDイメージセンサ200の製造方法について説明する。
図7(A)〜図8(C)は、CCDイメージセンサ200の製造方法を示す工程図である。
図7(A)に示すように、まず始めに、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入技術を用いてP型のシリコン基板11にN型不純物を部分的に導入し、Nウェル12を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入技術を用いてNウェル12にP型不純物を部分的に導入し、P型不純物層150を形成する。そして、P型不純物層150が形成されたNウェル12上に絶縁膜20を形成する。続いて、絶縁膜20上に例えば導電型がN型のポリシリコン膜を形成する。このポリシリコン膜に対するN型不純物の導入は、成膜時にin−suteで行ってもよいし、ノンドープのポリシリコン膜を形成した後でN型不純物をイオン注入することで行っても良い。
【0036】
次に、図7(B)に示すように、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いてN型のポリシリコン膜をパターニングして、電極140を形成する。そして、電極140下から露出しているシリコン基板11の表面と、電極140の表面とに絶縁膜を形成する。この絶縁膜は例えばSiO膜であり、その形成は例えばシリコン基板11を熱酸化することで行う。
【0037】
次に、図7(C)に示すように、絶縁膜125形成後のシリコン基板11の上方全面に例えばノンドープのポリシリコン膜126を形成する。このポリシリコン膜126の形成は例えばCVDで行う。そして、図8(A)に示すように、N型ポリシリコンが形成される領域の上方を開口し、それ以外の領域の上方を覆うレジストパターン127をポリシリコン膜126上に形成し、このレジストパターン127をマスクにポリシリコン膜126にN型不純物をイオン注入する。これにより、ポリシリコン膜126にN型ポリシリコン32を形成する。N型ポリシリコン32を形成した後は、レジストパターン127を例えばアッシングして除去する。
【0038】
次に、図8(B)に示すように、P型ポリシリコンが形成される領域の上方を開口し、それ以外の領域の上方を覆うレジストパターン128をポリシリコン膜126上に形成し、このレジストパターン128をマスクにポリシリコン膜126にP型不純物をイオン注入する。これにより、ポリシリコン膜126にP型ポリシリコン31を形成する。P型ポリシリコン31を形成した後は、レジストパターン126を例えばアッシングして除去する。その後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いてポリシリコン膜をパターニングする。これにより、図6(A)に示したP型ポリシリコン31とN型ポリシリコン32とからなる電極30を形成する。
【0039】
このように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、電極30の直下にポテンシャル勾配が生じるので電荷の転送効率を高めることができる。また、P型不純物層150は電位障壁として機能し、P型不純物層150の電荷転送方向下流にある隣接Nウェル12のポテンシャルは高くなるので、隣接する領域との間でポテンシャル勾配を形成したり、あるいは、(電極140のN型不純物濃度が、N型ポリシリコン32のN型不純物濃度よりも高い場合は)ポテンシャル勾配をより急峻にしたりすることができる。
【0040】
なお、イオン注入技術を用いてP型不純物層150を形成する場合は、シリコン基板11に結晶欠陥が発生してしまうおそれがある。しかし、このCCDイメージセンサ200では、P型不純物層150の直上にP型ポリシリコン31が配置され、このP型ポリシリコン31もP型不純物層150と同じようにポテンシャル勾配の形成に寄与する。
【0041】
従って、従来の技術(例えば、P型不純物層150上の電極が全てN型ポリシリコンからなる場合)と比べて、同じ電荷転送効率を求めるのであれば、P型不純物層150を低濃度化することができ、P型不純物層150を形成する際のドーズ量を少なくすることができるので、結晶欠陥の発生を少なくすることが可能である。
この第2実施形態では、P型ポリシリコン31およびN型ポリシリコン32が本発明の「仕事関数が異なる複数種類の導電層」に対応している。また、P型ポリシリコン31が本発明の「第2導電型の第1半導体層」に対応し、N型ポリシリコン32が本発明の「第1導電型の第2半導体層」に対応している。
【0042】
(3)第3実施形態
図9(A)〜(D)は、電極30の複数の構成例を示す図である。各図の左側は電極30を立体的に示した図であり、各図の右側は電荷転送方向に沿ったA−A´で電極30を切断したときの模式図である。
上記の第1実施形態では、図9(A)に示すように、電極30がP型ポリシリコンとN型ポリシリコンとで構成されており、電荷転送領域の上流側にP型ポリシリコンが、電荷転送領域の下流側にN型ポリシリコンがそれぞれ配置されている場合について説明した。しかしながら、電極30の構成はこれに限られることはなく、例えば図9(B)〜(D)のような構成でも良い。
【0043】
即ち、図9(B)では、電極30がP+ポリシリコンと、P−ポリシリコンと、N−ポリシリコンと、N+ポリシリコンとで構成されており、これらの層が電荷転送方向に向けて仕事関数が大から小となる順に配置された構造となっている。ここで、P+ポリシリコンはP−ポリシリコンよりもP型不純物の濃度が高くて仕事関数が大きい。また、N+ポリシリコンはN−ポリシリコンよりもN型不純物の濃度が高くて仕事関数が小さい。
【0044】
このような構成であれば、P+ポリシリコンの直下とP−ポリシリコンの直下との間、P−ポリシリコンの直下とN−ポリシリコンの直下との間、N−ポリシリコンの直下とN+ポリシリコンの直下との間に、電子e−を電荷転送方向へ引き寄せるようなポテンシャル勾配がそれぞれ形成される。つまり、P+ポリシリコンの直下からN+ポリシリコンの直下にかけてポテンシャル勾配が段階的に形成されるので、例えば、P+ポリシリコンの直下に存在する電子e−をN+ポリシリコンの直下へスムーズに誘導することができる。これにより、CCDイメージセンサの転送効率を高めることができる。
【0045】
図9(C)では、電極30がP型ポリシリコンとN型ポリシリコンとで構成されており、P型ポリシリコンが電荷転送領域の上流側に配置され、N型ポリシリコンが電荷転送領域の下流側に配置されている。また、この例では、図9(C)に示すように、P型ポリシリコンの上方はN型ポリシリコンで覆われている。このような構成であっても、P型ポリシリコンの直下から、N型ポリシリコンの絶縁膜と接触している界面の直下にかけて、電子e−を電荷転送方向へ引き寄せるようなポテンシャル勾配が形成されるので、CCDイメージセンサの転送効率を高めることができる。
【0046】
図9(D)では、電極30がP型ポリシリコンと、N型ポリシリコンとで構成されており、P型ポリシリコンが電荷転送領域の上流側に配置され、N型ポリシリコンが電荷転送領域の下流側に配置されている。また、N型ポリシリコンは平面視で電荷転送領域の上流側に開口したコの字型となっており、この開口部にP型ポリシリコンが嵌め込まれている。このような構成であっても、P型ポリシリコンの直下からN型ポリシリコンの直下にかけて、電子を電荷転送方向へ引き寄せるようなポテンシャル勾配が形成されるので、CCDイメージセンサの転送効率を高めることができる。
【0047】
なお、図9(D)に示す例においては、P型ポリシリコンが電荷転送領域を完全に横断していることが望ましい。その理由は、P型ポリシリコンが電荷転送領域を完全に横断していない場合は、その横断していない部分において、ポテンシャル勾配が部分的に形成されないおそれがあり、その結果、転送効率の向上効果が損なわれてしまうおそれがあるからである。
この第3実施形態では、図9(A)〜(D)を参照しながら電極30の構成例を説明したが、このような構成例は電極30だけでなく、もう一方の電極40にも適用可能である。
【0048】
(4)第4実施形態
上記の第1〜第3実施形態では、電極30、40をP型ポリシリコンと、N型ポリシリコンとで構成することについて説明した。これは、N型ポリシリコンの仕事関数(WF:Work function)が約4.17eVであり、P型ポリシリコンの仕事関数(WF)が約5.25eVであり、この2つの仕事関数差がシリコン基板表面にポテンシャル勾配を発生させるからである。
【0049】
しかしながら、本発明では、電極30、40を構成するP型ポリシリコンの代替材料として、N型ポリシリコンよりもWF値が大きな導電材を用いることも可能である。その場合には、代替材料とN型ポリシリコンとの仕事関数差に起因して、半導体基板の表面にポテンシャル勾配が生じることとなる。なお、P型シリコンの代替材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0050】
銀(WF=4.31eV)、銅(WF=4.52eV)、金(WF=4.70eV)、ニッケル(WF=4.74eV)、パラジウム(WF=5.00eV)、プラチナ(WF=5.30eV)、モリブデン(WF=4.53eV)、タングステン(WF=4.63eV)、ケイ化モリブデン(WF=4.80eV)、ケイ化タングステン(WF=4.80eV)。
【0051】
次に、上記のような代替材料を用いて電極を製造する方法について説明する。
図10(A)〜(E)は、代替材料を用いた電極300の製造方法を示す工程図である。図10(A)に示すように、まず始めに、半導体基板201上に絶縁層203を形成し、その上にN型ポリシリコン205を形成する。ここで、半導体基板201とは例えばシリコン基板である。また、ポリシリコンに対するN型不純物の添加は例えばin−situで行う。次に、図10(B)に示すように、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、代替材料が形成される領域のN型ポリシリコン205だけを取り除き、絶縁層203を底面とする開口部207を形成する。
【0052】
次に、図10(C)に示すように、P型ポリシリコンの代替材料210を半導体基板201の上方全面に形成して開口部207を埋め込む。この代替材料210の形成は、例えばCVDやスパッタリング技術で行う。次に、代替材料210にエッチバックまたはCMP処理を施して、代替材料210をその厚さ分だけ削り取り、図10(D)に示すように、開口部207のみに代替材料210を残存させる。その後、図10(E)に示すように、電極が形成される領域の上方を覆い、それ以外の領域の上方を露出するレジストパターン211を半導体基板201上に形成する。そして、このレジストパターン211をマスクにN型ポリシリコン205をエッチングする。これにより、代替材料210とN型ポリシリコン205とからなる電極300を完成させる。
この第4実施形態では、代替材料210とN型ポリシリコン205とが本発明の「仕事関数が異なる複数種類の層」に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】CCDイメージセンサ100の構成例を示す断面図とポテンシャル図。
【図2】電圧信号φ1、φ2のタイミングの一例を示す図。
【図3】P型ポリシリコンの直下からN型ポリシリコンの直下にかけてのポテンシャル勾配を示す図。
【図4】CCDイメージセンサ100の製造方法を示す工程図(その1)。
【図5】CCDイメージセンサ100の製造方法を示す工程図(その2)。
【図6】CCDイメージセンサ200の構成例を示す断面図とポテンシャル図。
【図7】CCDイメージセンサ200の製造方法を示す工程図(その1)。
【図8】CCDイメージセンサ200の製造方法を示す工程図(その2)。
【図9】電極30の複数の構成例を示す図。
【図10】代替材料を用いた電極300の製造方法を示す工程図。
【符号の説明】
【0054】
11 シリコン基板
12 Nウェル
20、25、125 絶縁膜
21、26、126 ポリシリコン膜
22、23、24、126、127、128 レジストパターン
30、40、140、300 電極
31、41 P型ポリシリコン
32、42 N型ポリシリコン
100、200 イメージセンサ
150 P型不純物層
201 半導体基板
203 絶縁層
205 N型ポリシリコン
207 開口部
210 代替材料
211 レジストパターン
φ1、φ2 電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に絶縁膜を介して電荷転送用の電極が多数配列されたCCDイメージセンサであって、
前記電極の前記絶縁膜と接する部分は、仕事関数が異なる複数種類の導電層が電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている、ことを特徴とするCCDイメージセンサ。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板表面に絶縁膜を介して電荷転送用の電極が多数配列されたCCDイメージセンサであって、
前記電極の前記絶縁膜と接する部分は、第2導電型の第1半導体層と第1導電型の第2半導体層とが電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている、ことを特徴とするCCDイメージセンサ。
【請求項3】
N型の半導体基板表面に絶縁膜を介して電荷転送用の電極が多数配列されたCCDイメージセンサであって、
前記電極の前記絶縁膜と接する部分は、P型ポリシリコンとN型ポリシリコンとが電荷の転送方向に向けて順に配置された構造となっている、ことを特徴とするCCDイメージセンサ。
【請求項4】
前記電極直下の前記半導体基板表面に前記電荷の転送方向に沿って一定間隔で設けられた複数のP型不純物層、をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のCCDイメージセンサ。
【請求項5】
前記P型ポリシリコンは、P型不純物の濃度が高いP+ポリシリコンと、P型不純物の濃度が低いP−ポリシリコンとを含み、
前記N型ポリシリコンは、N型不純物の濃度が高いN+ポリシリコンと、N型不純物の濃度が低いN−ポリシリコンとを含み、
前記電極のうちの前記絶縁膜と接する部分は、前記電荷の転送方向に向けて、前記P+ポリシリコンと、前記P−ポリシリコンと、前記N−ポリシリコンと、前記N+ポリシリコンとが順に配置された構造となっている、ことを特徴とする請求項3または4に記載のCCDイメージセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−78490(P2008−78490A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257659(P2006−257659)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】