CD73のサイトカイン誘導発現によるアデノシンレベルの上昇
本発明は、個体に、有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせを投与することによって、該個体におけるアデノシンのレベルの上昇を誘導する方法に関する。また、本発明は、個体における、炎症症状などの、アデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法に関する。さらに、本発明は、個体に有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法、および内皮CD73発現のアップ−レギュレートを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体におけるアデノシンレベルの上昇を誘導するための方法、およびアデノシンレベルの上昇によって利益を得る、疾患または疾病の治療または予防に関する。本発明はまた、個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法、およびそのようなCD73アップ−レギュレーションによって利益を得る、疾患または疾病の治療または予防にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を例示するため、とりわけ、実施に関する追加詳細を提供するために本明細書で使用した、刊行物および他の材料が、参考文献にて組込まれる。
【0003】
リンパ球と内皮細胞との相互作用は、多重段階過程である。血管壁を浸潤し、標的部位に到達可能にするために、循環細胞は、非常に良く制御された接着分子の組を使用する。内皮細胞への接着の増強、およびその後の血管壁の内皮裏層を通した、組織への再循環白血球細胞の移動が、炎症に関する特徴である。さらに、高程度の前−および抗−炎症性サイトカインの放出が、炎症の部位で起こる。これらのサイトカインは、接着分子の発現の強力なレギュレーターである。
【0004】
CD73(エクト−5’−ヌクレオチダーゼ)は、エクト−酵素活性を有する、70−kDのグルコシル−ホスファチジル−イノシトール−アンカー細胞表面分子である。CD73は、血管内皮上で豊富に、およびヒトリンパ球の特定の亜集団上では低レベルで発現する。CD73は、ヌクレオチド−5’−一リン酸(AMPおよびIMP)の分解による、アデノシンおよびイノシンのようなヌクレオチドへのプリン救出経路の一部である(1)。アデノシン、つまりCD73酵素活性のプリンヌクレオシド産物は、細胞表面上の特定のレセプターに結合する。アデノシンは、多くの生理学的および病理学的事象において、役割を果たすと報告されている。現在までに、Gタンパク質共役アデノシンレセプターの4つの異なるサブタイプ、A1R、A2aR、A2bRおよびA3Rがクローン化されてきた。レセプターの多様性および様々な組織におけるその豊富な局在化によって、アデノシン−アデノシンレセプター相互作用が、種々の生理学的応答を導く。A1およびA2レセプターへの結合によって、アデノシンは、内皮へ結合している白血球を制御することによって、炎症の病理学的結果を調節し、A2およびA3レセプターへの結合によって、好中球脱顆粒の阻害を介して、抗炎症剤として働く(2)。アデノシンはまた、A3レセプターの活性化を介して、好酸球遊走を減少させもする。5’−AMPのこの促進効果は、CD73仲介であり、細胞内cAMPの増加が続く。最近、A2aレセプターに対する重要な役割が、インビボでの全身性および組織特異的炎症応答の減少において見られた。アデノシンは、心臓および中枢神経虚血の間の細胞傷害を予防する(3〜5)。低酸素症の後、エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性が、プレコンディショニングとして知られる現象によって増加する。これによって、結果として、たとえば心臓低酸素症における梗塞に対する、細胞の抵抗性の増加を導く、多量のアデノシンの放出となる。
【0005】
現在までに、内皮CD73発現および機能の調節に関しては、実際なにも知られていない。しかしながら、炎症においては、インビボで特異的に内皮CD73発現を制御する誘導物が分泌されうる。
【0006】
抗炎症および細胞保護効果を有するアデノシンが、炎症の程度および結果を制御することにおいて、重要な役割を果たすので、本研究は、CD73発現の調節、ならびにエクト−5’−ヌクレオチド仲介アデノシン産生の調節に関連する因子を同定するために設計した。
【0007】
アデノシンそれ自体は、炎症症状を患っているか、または未処置によって、組織炎症が導かれる可能性が非常に高い症状を患っている患者に投与可能である。しかしながら、アデノシンの直接投与による深刻な欠点は、インビボにおけるアデノシンの迅速な消失である。したがって、本研究は、長期間にわたる、アデノシンのレベルの上昇を達成する新規方法を提案する。
【発明の開示】
【0008】
本発明の主な目的は、個体におけるアデノシンのレベルの増加のため、および長期間にわたるアデノシンレベルの増加を維持するための方法を提供し、それによって、炎症症状、または未処理であると組織炎症が導かれ得る症状を予防または治療することである。
【0009】
本発明の他の目的は、個体における内皮CD73の発現をアップ−レギュレートするための、およびそのようなCD73アップ−レギュレーションによって利益を得る疾患または障害を予防または治療するための方法であって、アデノシンのレベルの上昇を必要としない方法を提供することである。
【0010】
このように、1つの観点によれば、本発明は、個体に、有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子、またはそれらの組み合わせのいずれかを投与することによって、該個体におけるアデノシンのレベルの上昇を誘導する方法に関する。
【0011】
他の観点によれば、本発明は、個体に有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子、またはそれらの組み合わせのいずれかを投与することによって、該個体におけるアデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療のための方法に関する。
【0012】
第三の観点によれば、本発明は、個体に、有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することによって、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法に関する。
【0013】
第四の観点によれば、本発明は、個体に、有効量のサイトカイン、または内皮CD73発現が誘導可能な他の因子を投与することによって、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療のための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、一連の可能性あるメディエーターのスクリーニング、およびIFN−α、βおよびガンマが、CD73発現の強力なアクチベーターであるという知見に基づいている。IFN−アルファが、より詳細な研究のために選択された。IFN−αは、PBL上ではなく内皮細胞上でのCD73発現の、特定の時間および用量依存インビトロアップレギュレーションを示し、よりいっそう重要なことに、インビボで、膀胱癌患者の腫瘍血管におけるCD73の発現をアップレギュレートした。IFN−α誘導後の内皮CD73のアップレギュレーションは、内皮細胞におけるバリア機能の増強を導く、5’−AMPからアデノシンを、酵素的に機能的に産生する。さらに、内皮およびリンパ球CD73の制御において、細胞型特異的差異が見られた。
【0015】
内皮およびリンパ球CD73へのIFN−αの異なる効果の結果は、さらに、CD73の発現を調節するための、細胞型間の差異を示す。これに関連し、CD73の量は、リンパ球と内皮細胞との間で明らかに変化する、と言うに足る。たった10〜15%のリンパ球がCD73を発現し、この発現レベルは、たとえば、CD73に関してすべてが陽性であるHUVECと比較して低い。CD73の量および調節における、この型の細胞特異的差違は、リンパ球の適切な挙動に関して基本的であり、そのリンパ球の役割は、存在するアデノシンを活発に脱アミノ化すること、およびリンパ系組織または炎症部位へ遊出することである。反対に、アデノシンは、そのバリア機能を維持するために、内皮細胞にとって必要である。
【0016】
結論として、本研究は、CD73がどのようにして、サイトカイン、とりわけインターフェロンによって、インビトロおよびインビボ両方でアップレギュレートされ得るかを説明する。アデノシンは、その性質において非常に抗炎症性であるので、CD73のアップレギュレーションを介した、アデノシンの内因性産生の操作が、たとえば、心臓血管梗塞および脳卒中、臓器移植に関連する再灌流傷害、および種々の組織損傷および外傷のような、有害な炎症症状を治療するための、1つの可能性のある方法である。
【0017】
定義
本明細書で使用するところの、用語「メディエーター」は、炎症の環境にて効果を有する、任意の可溶性因子を含むことを意味する。本明細書で使用するところの用語「誘導因子」はさらに、特定の分子の発現を増加させ、機能を増強する因子を意味する。
【0018】
語句「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」は、疾患または障害の完全な治癒、ならびに該疾患または障害の改善または緩和を含むことと理解されるであろう。
【0019】
用語「予防(prevention)」は、前記疾患または障害を発病する個体のリスクを防止、予防ならびに低減することを含むと理解されるであろう。本用語はまた、組織を傷害から防止するために、非常に早期の段階(たとえば手術前、脳卒中および梗塞患者における完全な診断前)で、本発明の方法にしたがって、アデノシンレベルを上昇することによる、組織の前処理を含むとも理解されるであろう。
【0020】
用語「個体(indivisual)」は、ヒトまたは動物の患者(subject)を言う。
【0021】
表現「有効量(effective amount)」は、とりわけ、動物またはヒト患者への投与に際し、望む治療的結果を成し遂げるのに充分な、本発明による薬剤の任意の量を含むことを意味する。
【0022】
語句「アデノシンのレベルの上昇(elevated level of adenosine)」は、本発明にしたがって行なわれた測定なしであろう正常組織と比べて、少なくとも2%高い、好ましくは少なくとも20%高い、もっとも好ましくは少なくとも30%高い、アデノシンレベルとして解釈されるべきである。
【0023】
語句「アデノシンレベルの上昇を必要とするか、またはそれによって利益を得る疾患または障害」は、該疾患または障害の予防または治療が、アデノシンレベルの上昇によって促進されることを意味する。
【0024】
語句「内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害」は、該疾患または障害の予防または治療が、そのようなアップ−レギュレーションによって促進されることを意味する。
【0025】
表現「炎症症状(inflammatory condition)」は、個体における組織中の任意に有害で、望まれない炎症応答を含むことを意味し、そこでは、該炎症症状は、組織外傷、心筋梗塞または脳卒中、臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害のような急性症状、またはアレルギー性症状、自己免疫疾患および炎症性疾患を含む慢性症状から生じ得る。
【0026】
組織外傷または再灌流傷害の治療は、本発明において、とりわけ、該外傷または再灌流傷害が未処理のまま残された場合に、とてもおこりやすい炎症症状の予防として理解されるべきである。
【0027】
好ましい実施態様
個体におけるアデノシンのレベルの上昇が、組換えCD73タンパク質を投与することによって、またはサイトカインもしくは内皮CD73発現を誘導することが可能な他の因子によって、または両治療の組み合わせによって誘導可能であるけれども、多くの場合、サイトカインまたは同様の能力を有する他の因子の使用が好ましい。しかしながら、重度の外傷においては、代替治療として、または追加的治療として、アデノシン産生の増加を迅速に達成するために、組換えCD73タンパク質の投与が有用であり得る。
【0028】
本発明で使用されるべき好適な薬剤には、サイトカインまたはCD73遺伝子の転写を直接的または間接的にアップ−レギュレートする他の因子が含まれる。本発明での使用のための好適なサイトカインは、典型的には、インターフェロンまたはインターロイキンであるが、他の薬剤も使用できる。サイトカインがインターフェロンである場合、インターフェロンは、アルファ−、ベータ−、ガンマ−、オメガ−または任意の他のインターフェロンであり得、前述したインターフェロンの任意のサブタイプであり得る。とりわけ、アルファ−およびベータ−インターフェロンが、本発明での使用に好適であると考えられる。
【0029】
内皮CD73発現を誘導可能な任意のインターロイキンもまた、本発明での使用のために好適である。そのようなインターロイキンの例としては、IL−4、IL−10、IL−13およびIL−20をあげることができる。
【0030】
個体のアデノシンレベルの上昇を必要とするか、または個体のアデノシンレベルの上昇から利益をえる典型的な疾患または障害は、組織外傷;心筋梗塞もしくは脳卒中の結果である再灌流傷害、組織移植または他の外科手術;癌または癌転移;または前記外傷または再灌流傷害から生じる炎症症状、またはアレルギー性症状、自己免疫疾患および炎症性疾患を含む慢性症状から生じる炎症症状である。そのような慢性症状の例は、関節炎、喘息などのアレルギー性症状、炎症性大腸炎のような炎症性状態、または皮膚、乾癬、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患、I型およびII型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、クローン病または組織移植による拒絶反応のような炎症状態をあげることができる。
【0031】
特に好ましい実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の投与は、発現の上昇によって、または組換えCD73タンパク質の直接投与によって得られるCD73レベルの上昇の結果として産出されるであろうアデノシンの供給源を保護するために、アデノシン一リン酸(AMP)の投与と組み合わされる。
【0032】
もう1つの実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の投与は、AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤の投与と組み合わされる。組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の、AMPおよびそのようなアデニル酸キナーゼ阻害剤との混合投与が、とりわけ好ましい。
【0033】
また他の好ましい実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の投与は、アデノシンの分解を防止する、アデノシンデアミナーゼ阻害剤の投与と組み合わされる。これはまたさらに、AMPの投与と組み合わせることができ、任意には、AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤の投与とも組み合わせることができる。
【0034】
アデノシンレベルを調節する代謝経路を図10に示す。
【0035】
他の好ましい実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは両方の、任意にはアデノシン一リン酸の投与との組み合わせでの投与は、外傷患者または梗塞または脳卒中患者が治療を受け次第開始する(任意に、最終診断が完全に明確になっていなくても)。この結果、アデノシンレベルを可能な限り急速に増加することができる。外科手術の場合、任意にアデノシン一リン酸の投与との組み合わせでの、組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは両方の投与は、手術の前、たとえば手術の開始12時間前に開始することが有用であり得る。また、これらの場合では、アデニル酸キナーゼ阻害剤および/またはアデノシンデアミナーゼ阻害剤を、前記薬剤に加えて投与することができる。
【0036】
治療的有効量、投与経路および剤形
そのような治療を必要とする患者に投与すべき、本発明による成分の治療的有効量は、たとえば、患者の年齢および体重、治療を必要としている正確な症状およびその重症度、および投与経路などの多数の因子に依存し得る。正確な量は、最終的には当業医療者の判断である。したがって、本発明の実施は、任意の用量、他の治療的に有効な薬剤との組み合わせ、経口、局所、吸入または非経口投与のための、医薬処方またはデリバリーシステムが関与しうる。
【0037】
本発明による薬剤の投与のための量および投与計画は、再潅流傷害、脳卒中、組織移植、外傷、癌または癌転移、または慢性炎症性疾患のような、炎症関連障害を治療する当業者によって簡単に決定することができる。
【0038】
本発明に基づいて、たとえば皮下、筋肉内、静脈内または経皮で投与された、インターフェロンのようなサイトカイン、または他の因子が、CD73のアップレギュレーションを誘導し、したがって、抗炎症性であるアデノシンの局所濃度を増加させることが予想される。これにより、非常に短い半減期を持ち、したがって治療的な使用に関して最適ではない、アデノシンの使用に関する問題が解決される。
【0039】
サイトカインまたは他の因子は、本発明によれば、好ましくは注入または注射によって投与され得る。血管内注入は、通常、注入バッグまたはボトル内に含まれる非経口溶液を用いて実施され、非経口溶液の投与速度を調整するために、種々のシステムに連結し得る。あるいは、サイトカインまたは他の因子は、本発明によれば、エアロゾルとして投与しうる。
【0040】
注入または注射のための好ましい処方には、ヒト血清アルブミンのような担体、薬学的に許容し得る塩、リン酸塩のような緩衝液および/または他の薬学的に許容し得る賦形剤が含まれ得る。たとえばサイトカインまたは他の因子のような活性成分は、たとえば1〜50×106 IU/mlの範囲の量で提供され得る。処方は、好ましくは、投与の前に、水、または注射のために好適な他の溶液の添加によって調製されるように、凍結乾燥粉末の剤形として提供され得る。
【0041】
インターフェロンのようなサイトカインまたは同様の能力を有する他の因子を、炎症を患っているか、そのリスクのある患者に投与することができる。このような種類の炎症症状は、たとえば脳卒中および心筋梗塞の間の、虚血性再潅流傷害である。また、臓器移植および外傷は、しばしば主要な炎症構成成分と関連付けられる原因である。それらの固有の性質により、様々なサイトカインが、その特異的疾患標的を有し、ベータインターフェロンは、脳卒中および心筋梗塞における虚血性再潅流傷害に対してもっとも好適なインターフェロンであり、一方、アルファ−インターフェロンは、心筋梗塞での選択薬ではない。
【0042】
組換えCD73タンパク質を投与する場合、好適な投与経路は、注入または注射であり得る。好適な一日用量は、0.1〜5.0mg/kg体重の範囲である。
【0043】
アデノシン一リン酸は、皮下、筋肉内、静脈内または経皮的に投与され得る。典型的な一日用量は、0.1〜100mg/kg体重の範囲であり得る。
【0044】
また、任意に使用されるアデニル酸キナーゼ阻害剤またはアデノシンデアミナーゼ阻害剤は、たとえば、皮下、筋肉内、静脈内または経皮的に投与され得る。典型的な一日用量は、0.1〜100mg/kg体重の範囲であり得る。
【0045】
本発明は、以下の非制限的実施例の項目で例示され得る。
【実施例】
【0046】
詳細に本発明のさらなる記述を与える、以下の実施例では、以下の材料および方法が使用された。
【0047】
細胞、抗体および試薬。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を単離し、完全培地中、ゼラチンコート細胞培養フラスコ上で培養した。健康なボランティアからのヒト末梢血リンパ球(PBL)を、Ficoll−Hypaque(Histopague-1077、ファルマシア(Pharmacia)、ウプサラ(Uppsala)、スウェーデン)を用いて単離した。PBL、U266B1細胞株、およびHEC内皮細胞株(EaHy−926と同等)を、10% FCS、4mM L−グルタミン、100U/mlペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを含む、RPMI1640培地中で培養した。抗−CD73 mAb 4G4(マウスIgG1)、抗−ICAM−1 mAb 5C3(IgG1)および陰性コントロール抗体としてニワトリT−細胞に対するmAb 3G6(マウスIgG1)を使用した。α,βメチレンアデノシン5’−二リン酸(AMPCP)およびアデノシン5’−一リン酸(5’−AMP)は、シグマ(シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州)からのものである。
【0048】
誘導および免疫蛍光染色。誘導に関する詳細を、表1に示す。各時点に対して、コントロールフラスコを誘導因子なしにインキュベートした。
【0049】
3つの異なるプロトコールを、免疫蛍光染色のために使用した。
【0050】
A)CD73の表面発現における、種々の誘導体のパネルの効果を調べるために、免疫蛍光解析を実施した。簡単に記すと、HUVECを、誘導因子のある状態、またはない状態で処理し、5mM EDTA−トリプシンで分離した。各染色あたり、5×105細胞を、ハイブリドーマ上清または精製抗体(最終濃度、10マイクログラム/ml)として、飽和濃度のmAb 3G6(陰性コントロール)、4G4(抗−CD73)、および5C3(抗−ICAM−1)と共に、4℃にて20分間インキュベートし、2回洗浄した。ついで、細胞を、4℃にて20分間、5% AB−血清を含む1:100希釈FITC−共役ヒツジ抗−マウス−IgG mAb(シグマ)と共にインキュベートした。最後に、細胞を2回洗浄し、1% パラホルムアルデヒドにて固定した。全てのインキュベーションおよび洗浄は、2% FCSおよび1mM NaN3を含む、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で実施した。ついで、蛍光を、蛍光活性化セルソーター(FACS、ベクトン−ディッキンソン(Becton-Dickinson)、サンノゼ、カリホルニア州)を用いて検出した。コントロールおよび処置細胞間の差を、
【数1】
より算出した。
B)細胞内CD73の検出のために、リンパ球を、−20℃でアセトン中、2分間のインキュベーションによって、免疫蛍光染色前に透過性とした。ついで細胞を、5% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄し、(A)で記述したように、染色し、FACSによって解析した。
C)HUVECまたはPBL上のCD73の分布を調べるために、細胞をまず、A)でのように染色し、ついで、ガラス−スライド上に、5分間、1000RPMで遠心し、ホルムアルデヒドで固定し、Fluoromount−G(サザン バイオテクノロジー アソシエイツ社(Southern Biotechnology Associates Inc.)、バーミンガム、アラバマ州)でマウントした。あるいは、HUVEC単層を、ゼラチンコートガラススライド上で増殖させ、(A)にて記述したように、飽和濃度のmAbsとともに細胞をインキュベートすることによって、CD73、ICAM−1または陰性コントロールに対して染色し、蛍光顕微鏡(Olympus BX60)で解析した。
【0051】
CD73 RNA解析。HUVECを、細胞培養フラスコ中でコンフルエントに増殖させ、PBLは、Ficoll−Hypagueを用いて誘導の前に単離した。HUVECおよびPBL両方の1×107細胞を、培養培地中、IFNアルファ 1000U/mlと共にインキュベートした。同数の細胞を、未処理のまま静置した。RNAを、製造元の取扱説明書にしたがって、UltraspecTM−II RNA単離システム(バイオテックス ラボラトリーズ社(Biotecx Laboratories, Inc.)、ヒューストン、テキサス州)を用いて単離した。1〜2μgの総RNAを、DnaseI処理した(増幅グレード(Amplification Grade)、ギブコ BRL、ライフ テクノロジーズ(Gibco BRL, Life Technologies)、ギャザースブルク(Gathersburg)、メリーランド州)。cDNAを、製造元の取扱説明書にしたがって、Superscript II 逆転写酵素(ギブコ BRL、ライフ テクノロジーズ)を用いて作製した。リアルタイムRT−PCR測定の前に、試料をRnaseH(ギブコBRL、ライフ テクノロジーズ)で処理した。GAPDHハウスキーピング遺伝子に対するプライマーおよびプローブを、内部標準として使用した。CD73プライマーおよびプローブを、プライマーエクスプレスコンピュータソフトウェア(PE バイオシステムズ(PE Biosystems)、フォスターシティー、カリホルニア州)を用いて設計した。CD73プライマー5’CTG GGA GCT TAC GAT TTT GCA3’および5’CCT CGC TGG TCT GCT CCA3’、およびCD73プローブ5’CCA ACG ACG TGC ACA GCC GG3’を使用した(メドプローブ(MedProbe)、セント ハンスハウゲン(St.Hanshaugen)、ノルウェー)。リアルタイムRT−PCR測定を、TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(アプライド バイオシステムズ(Apploied Biosystems)、ブランクブルグ(Branchburg)、ニュージャージー)およびABI PRISM 7700 Sequence Detector(アプライド バイオシステムズ)を用いて実施した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現を、標準化のための参照として使用し、コントロールとIFN−α処置細胞との間のCD73 mRNA発現の相対的増加を計算した。
【0052】
エクト−5’−ヌクレオチダーゼアッセイ。エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を、先に記述されたように(19)薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析した。簡単に記すと、標準酵素アッセイは、最終容量120μl RPMI 1640中、4〜6×104分離HUVEC(または1×105リンパ系細胞)、5mmol/L β−グリセロホスフェート、およびトレーサー[2-3H]AMP(特異的活性18.6Ci/mmol、アマシャム(Amersham))を有する指示濃度の5’−AMPを含有した。インキュベーション時間は、変換AMPの量が、最初に導入した基質の7〜10%を超過しないように、時間との反応の直線性を保証するように選択した。混合物の一部を、Alugram SIL G/UV254TLCシート(マケリー−ナジェル(Macherey-Nagel))に適用し、溶媒として、イソブタノール/イソアミルアルコール/2−エトキシエタノール/アンモニア/H20(9:6:18:9:15)で分離した。3H−標識AMPおよびその脱リン酸化ヌクレオシド誘導体を、UV光で視覚化し、Wallac−1409β−スペクトロメーターを用いて定量した。
【0053】
浸潤性アッセイ。コンフルエント単層のバリア機能を評価するために、HUVECを、トランスウェルインサートポリカーボネートフィルター(直径6.5−mm、孔径0.4−μm、コスター、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)上に播種した(50000細胞/インサート)。フィルターを、フィブロネクチンで、1〜2時間処置し、内皮細胞を播種する前に風乾した。一般的には、単層を、播種後4〜5日調べた。HUVECは、単層浸潤性の研究の前に72時間、IFN−α(100U/ml)で誘導するか、またはIFN−αなしの培養液中で増殖させた。内皮単層を通した輸送を、FITC−標識デキストラン(500μg/ml、モル重量 70000)の流束を測定することによって評価した。内皮単層を、FITC−デキストラン輸送の開始前、15分間、AMP(50μM)で前処理した。内皮細胞浸潤性におけるCD73酵素活性の役割を評価するために、FITC−デキストランの流束を、エクト−5’−ヌクレオチダーゼの特異的阻害剤、AMPCP(100μM)の存在下または非存在下で測定した。ある実験では、AMPCPを、輸送がFITC−標識化デキストランを加えることによって開始される30分前に、上または下チャンバーに添加した。インサートを、10分、20分、30分、40分および100分の時点にて、底チャンバー(Visiplate、パーキン エルマー ライフ サイエンシズ(Perkin Elmer Life Sciences))から取り出し、FITC−標識化デキストランを、励起波長および放出波長として、それぞれ485nmおよび535nmを用いて、フルオロメーター(TECAN Ultra蛍光測定器、テカン(Tecan)、オーストリア)中で、底チャンバーから直接測定した。
【0054】
統計解析。データは、個々の実験の平均値±SEMとして表す。統計学的比較は、スチューデントのT検定を用いて行ない、P値<0.05を有意とした。速度実験で得られたデータを、ミカエルス−メンテン式を用いるコンピュータ解析にかけ、KmおよびVm値を決定した(GraphPad PrismTM バージョン3.0、サンディエゴ、カリホルニア州)。
【0055】
実施例1
内皮細胞上のCD73発現のアップレギュレーション
本研究は、CD73発現またはCD73に基づくエクト−5’−ヌクレオチダーゼ酵素活性の、強力なレギュレーターを見つけるために設計した。つまり、内皮細胞を、広い範囲の、公知の種々な分子の誘導因子に暴露した(表1)。誘導因子は、たとえばインターフェロンおよびLPSである。インターフェロン(IFN−α、IFN−βおよびIFN−γ)の存在によって、20〜24時間の誘導後、>200U/mlの用量で、HUVEC上のCD73発現にて、明らかなアップレギュレーションが導かれた(図1および9)。
【0056】
本実施例は、CD73発現が、インターフェロンにて、内皮細胞上でアップレギュレートされることを示している。IFN−αは、臨床医薬品で非常に広く使用されているので、その効果をさらに詳細に評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例2
IFN−αによるアップレギュレーションの時間および用量依存性
実際、全ての活性化されていないHUVECが、FACSによって解析した場合、その表面にCD73を有する。したがって、細胞表面上のCD73分子の発現の増加を測定するために、HUVECの平均蛍光強度(MFI)を解析した。
【0059】
IFN−αアップレギュレーションの速度論をさらに研究するために、HUVECのコンフルエント単層を、指示した時間の間、異なる用量のIFN−αを用いてインキュベートした。CD73発現は、1000U/ml IFN−αでの72時間後、時間依存的にほぼ2倍(92.4±11.5%、n=9)増加した(図1a)。IFN−αへのHUVECのより長い暴露によっては、CD73発現のさらに有意な増加はおこらなかった(データは示していない)。CD73アップレギュレーションの同様のパターンが、IFN−βおよびIFN−γでの誘導後にも見られた(図9)。10〜1000U/mlの範囲の濃度では、1000U/mlにて、最も高い強度の増加が観察されたので、CD73発現のアップレギュレーションは、用量依存性でもあった(図1b)。
【0060】
免疫蛍光染色に続く蛍光顕微鏡によって、IFN−α処置が、HUVEC表面上のCD73の分布または局在化における有意な変化を誘導しないことが明らかになった。かわりに、CD73は、細胞表面上で、より強く、しかし同様に分布している(図2)。
【0061】
本実施例は、時間および用量依存様式にて、IFN−αが、内皮CD73発現を増加させることを示している。
【0062】
実施例3
CD73 RNA発現におけるIFN−αの効果
つぎに、CD73発現の増加が、CD73 RNA発現の増加によって仲介されるかどうかを測定した。1000U/ml INF−αでのHUVECの72時間インキュベーション後、CD73 RNAレベルは、GAPDHに対する平均化の後、コントロール細胞と比較して、3.4±0.5(相対的発現の平均±SEM、n=3)であった。
【0063】
これは、実施例1で観察されたCD73発現の増加が、実際、RNA発現の増加によって仲介されることを確認している。
【0064】
実施例4
アップレギュレーションの細胞型特異性
内皮およびリンパ系CD73は構造が同様であるにもかかわらず、IFN−αは、これらの2つの細胞型において、異なる効果を促進する。内皮細胞上のCD73発現が、IFN−α誘導性であることを発見した後、リンパ球上CD73もまた、同様の状態にて、同様に振る舞うかどうかを測定した。1000 U/mlのIFN−αは、PBL上のCD73発現を有意に増加はさせなかった(図4)。48時間までのより長い誘導時間でさえ、リンパ球表面上のCD73発現においては、小さな変化しか観察されなかった。新鮮に単離されたリンパ球が、培養条件内で、よく生存しないことによりCD73をアップレギュレートしない可能性を排除するために、CD73発現リンパ系細胞株U266B1もまた、IFN−αで処理した。これらもまた、誘導の48または72時間後でさえ、そのCD73発現をアップ−レギュレーションできなかった。むしろ、コントロール細胞と比較して、IFN−α処置後、48時間の時点で、減少がおこった(相対MFI 82.1±5.6%対100%、n=3)(図4)。
【0065】
細胞内CD73タンパク質レベルのアップ−レギュレーションも存在するかどうかを明らかにするために、PBLおよびHUVECを、IFN−α誘導後、免疫蛍光染色の前に、アセトンで浸潤性とした。CD73の細胞内発現のアップ−レギュレーションは、PBLでは観察されなかった。同様の結果が、解析をFACSおよび蛍光顕微鏡で実施した場合に得られた。HUVECにおいて、抗−CD73 mAbでの細胞内染色のわずかな増加が、IFN−α誘導後に見られた(データは示していない)。
【0066】
実施例5
臨床腫瘍試料におけるCD73発現
IFN−αがまた、インビボにて、CD73の発現を調節するかどうかを調査するために、表在性内皮膀胱癌由来の組織切片を、IFN−α2b処置の前後で採取し、染色し、解析した。
【0067】
表在性内皮膀胱癌を持つ12人の患者を、実際の手術前1〜3週間、手術に関して評価した。評価訪問に関して、膀胱の正常領域と、腫瘍とから、生検をとった。患者に、手術1日前に、5000万ユニットのIFN−α2b(IntronA、シェーリング−プラウ(Schering-Plough)を与え膀胱にしみこませた。膀胱切除を実施し、患者に、再建手術として、従来の尿管腸吻皮膚合術、腸形成または尿管腸吻膀胱合術を実施した。3人の患者が、手術の前にIFN−αを受けなかった。これらのうち2人は、手術1日前に、膀胱にしみこませた、100mg エピルビシン(ファーモルビシン(Pharmorubicin)、ファルマシア(Pharmacia))を受け、一人はなにも受けなかった。かれらの腫瘍を、手術前(生検)および後に解析し、コントロールとして使用した。全ての患者が西欧男性であった。患者の特徴を表2に示す。
【0068】
膀胱試料切片を、液体窒素で、急速凍結し、5μm切片に切断した。続いて、切片を、第一抗体として、抗−CD73 mAb 4G4または3G6(陰性コントロール)で染色し、ペルオキシダーゼ−共役ウサギ抗−マウスIgG(DAKO A/S、グロストラップ(Glostrup)、デンマーク)を、第二段階抗体として使用した。反応を、PBS中の3,3’−ジアミノベンジジン テトラヒドロクロライド(ポリサイエンシス社(Polysciences, Inc.)、ウォリントン(Warrington)、ペンシルベニア州)を加えることによって現像した。全てのインキュベーションは、飽和mAb濃度での20分間であり、続いて、PBSにて2回洗浄した。陽性血管/顕微鏡視野(×200)の数を計数し、染色の強度を半定量的に評価した。0〜3の組み合わせスコアを各試料に与えた。スコア0は、陽性血管がない試料であり、スコア3は、炎症扁桃腺と等しい染色の試料である。スコア1および2は、この間の染色パターンをカバーするように調整した。全ての試料を無差別に読んだ。
【0069】
【表2】
【0070】
2つの腫瘍において、悪性細胞は、CD73陽性であり、これはいくつかの上皮細胞もCD73陽性であるという事実を反映している。IFN−αは、コントロール切片における処置前後の発現レベルと比較した場合、インビボにて、コントロールおよび癌血管両方の血管内皮におけるCD73の明らかなアップ−レギュレーションを産出した(図5)。しかしながら、腫瘍内に存在する少数の正常リンパ球では、CD73アップ−レギュレーションは検出されなかった。同様に、腫瘍細胞の発現レベルは、CD73に関して陽性であった腫瘍におけるIFN−α2b処置の間、一定のままであった(図6)。IFN−αを受けず、生検および手術それ自身によって引き起こされたCD73の可能性のあるアップ−レギュレーションを制御するために使用した三人の患者は、そのCD73発現において、有意な増加を示さなかった(一人の患者は、なんの変化も示さず、2人の患者は、腫瘍組織内の内皮CD73発現にて、0.5の増加を示した)。したがって、コントロール患者の平均変化は、0.3であり、処置した患者の平均変化は1.3であった(P=0.02)。
【0071】
本実験は、あきらかに、臨床的に実現可能な量でのIFN−α投与の結果として、ヒト患者にて、CD73がアップ−レギュレートされることを示している。
【0072】
実施例6
エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性に対するIFN−αの効果
HUVEC上のCD73発現のIFN−α誘導増加が、エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性における同時誘導をともなうかどうかを決定するために、[3H]AMPの[3H]アデノシンへの変換の直接測定のための放射化学アッセイを適用した。HUVEC単層の、IFN−α(1000U/ml、48時間)による前処理によって、[3H]AMP加水分解の速度における有意な増加が引き起こされ(図7a)、一方で、IFN−αによるPBL処理の後に、酵素活性の有意な活性化は検出されなかった(図7b)。
【0073】
エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性の機序をさらに解明するために、コントロールおよびIFN−処置HUVECによる、[3H]AMP加水分解の速度論解析を実施し、これらの飽和曲線は、図7cに見ることができる。統計解析によって、酵素親和性の改変なしに(Km〜50〜60μmol/L)、IFN−αが、未処理細胞と比較して、5’−ヌクレオチダーゼの最大加水分解速度(Vmax)を増加させる(525±30対350±29nmol/106細胞/時間)ことが明らかになった。これらのデータは、INF−αが、内皮表面上の、酵素的に活性な5’−ヌクレオチダーゼ分子の数を増加させるが、反面、酵素触媒部位の構造変化を誘導はしないことを示唆している。
【0074】
興味深いことに、他のヌクレオチド[3H]ATPでの同様のアプローチの使用によっては、IFN−αでのHUVECの処理の後、ATP−加水分解活性の有意な変化を示さず(データを示していない)、これは、エクト−5’−ヌクレオチダーゼ誘導の特異性を確認している。CD73が、継続的にリンパ球から、細胞培養上清へ分泌され、酵素活性を増加させることを確かめるために、IFN−α誘導リンパ球および未処理コントロール細胞からの細胞培養培地中の、[3H]アデノシンへの[3H]AMPの変換を解析した。細胞培養培地中の酵素的活性における有意な変化は、コントロールおよびIFN−α処置間で見られなかった(データは示していない)。
【0075】
これらの実験は、インターフェロン−αが、内皮細胞におけるエクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を増加させることを示している。
【0076】
実施例7
HUVEC膜機能に対するIFN−αの効果
IFN−αアップレギュレートCD73発現およびアデノシン産出におけるCD73仲介増加がHUVEC膜機能を調節できるかどうかを調べるために、浸透性インサート壁上で増殖しているコンフルエント内皮単層を介したFITC−標識化デキストランの流束を測定した。試験したすべての時点で、FITC−デキストランの流束の減少によって示されたように、未処理HUVECと比較して、3日間IFN−α(100U/ml)で処理したHUVECの浸潤性において、有意差(P<0.05)があった(図8a)。特異的CD73酵素阻害剤、AMPCPでのHUVEC単層の前処理が、FITC−デキストランの流束の増加によって示されたように、IFN−α処置に関連した浸潤性の減少を無効にした(図8b)。
【0077】
これらの結果は、AMPの存在下で、IFN−αがHUVEC膜機能を増加させることを確認した。CD73の発現を増加させることによって、したがって、アデノシンレベル血管浸透性が減少し、組織への炎症細胞の管外遊出の減少が導かれることが、強く示唆された。
【0078】
インターフェロン類は、タンパク質およびRNAレベル両方にて、リンパ球上ではなく、内皮細胞上での、CD73の時間および用量依存的長期アップ−レギュレーションを産出する。さらに、アデノシンのCD73仲介産生が、内皮細胞上でのIFN−α処置後に増加し、結果として、これらの細胞の浸潤性が減少する。
【0079】
実施例8
多重臓器不全における、AMPおよびIFN−ベータによるラットの混合治療
モデル:多重臓器不全を、30分間、腸間膜動脈をクランピングすることによって、ラット(体重:250g)に誘導した。その後、再潅流時間は2時間であった。治療群のラットに、動脈のクランピング18〜20時間前に、10000ユニットのIFN−ベータを、皮下に注射した。実際の実験を通して、動物に、連続静脈内注入として、3ml生理食塩水内、37.5mg AMPを与えた。多重臓器不全であるが、治療を受けなかったラットをコントロールとして利用した。実験の最後に、本実験モデルにおける主要な標的器官の1つである、肺の組織を解析した。
【0080】
結果:治療なしのコントロールラットの肺は、図11(A)で見ることができるように、肺胞腔の崩壊を示し、一方、INF−ベータおよびAMPを与えたラットは、肺胞腔の明らかな崩壊を示していなかった(B)。したがって、INF−ベータおよびAMPでの治療によって、多重臓器不全の合併症から保護される。
【0081】
これらの結果すべてによって、サイトカイン、とりわけインターフェロンが、内皮−白血球微小環境において、CD73の適切なインビボレギュレーターであり、したがって、CD73−依存アデノシン産生を介して、炎症の程度を制御することにおいて、基本的な役割を有することを示唆している。
【0082】
本発明の方法は、種々の実施態様の形態で組み込まれ得、そのいくつかが本明細書で開示されていることが理解され得る。他の実施態様が存在し、本発明の精神から逸脱しないことが、当業者に対して明らかであり得る。したがって、記述した実施態様は例示であり、制限として解釈されるべきではない。
【0083】
[参考文献]
1. Thompson, L.F., Ruedi, J.M., Glass, A., Moldenhauer, G., Moller, P., Low, M.G., Klemens, M.R., Massaia, M., and Lucas, A.H. 1990. Production and characterization of monoclonal antibodies to the glycosyl phosphatidylinositol-anchored lymphocyte differentiation antigen ecto-5′-nucleotidase (CD73). Tissue Antigens 35:9-19.
2. Bouma, M.G., Jeunhomme, T.M.M.A., Boyle, D.L., Dentener, M.A., Voitenok, N.N., van den Wildenberg, F.A.J.M., and Buurman, W.A. 1997. Adenosine inhibits neutrophil degranulation in activated human whole blood: involvement of adenosine A2 and A3 receptors. J. Immunol. 158:5400-5408.
3.Olah, M.E., and Stiles, G.L. 1995. Adenosine receptor subtypes: characterization and therapeutic regulation. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 35:581-606.
4. Heurteaux, C., Lauritzen, I., Widmann, C., and Lazdunski, M. 1995. Essential role of adenosine, adenosine A1 receptors, and ATP-sensitive K+ channels in cerebral ischemic preconditioning. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4666-4670.
5. Linden, J. 2001. Molecular approach to adenosine receptors: receptor-mediated mechanisms of tissue protection. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 41:775-787.
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】INF−αによるHUVECにおけるCD73表面発現の誘導が、時間および用量量依存性であることを示しているグラフ表現である。パネル(a)では、HUVECを、1000U/ml IFN−αに指示時間暴露した。(b)HUVECを、異なる濃度のIFN−αと共に、72時間培養した。3〜9回の実験の、MFIの相対平均±SEMを示している。コントロールの発現は、各時点での、IFN−αなしでのCD73の発現である。バックグラウンド(陰性コントロール染色)を差し引いている。*P<0.05、**P<0.01。
【図2】IFN−アルファでのCD73の誘導が、その分布の変化よりむしろ発現の増加を導くことを示している顕微鏡写真である。HUVECを、培地中で増殖させるか、または72時間INF−アルファで誘導し、CD73の細胞表面発現を、CD73に対するmAb 4G4およびFITC共役抗マウスIgG抗体で検出した。(a)コントロールHUVEC上でCD73が、パンケーキ様パターンで細胞表面上で発現している。(b)IFN−α誘導の後、CD73はより強い強度となるが、表面分布は、コントロールHUVECでのものと同様である。コントロールHUVEC上(c)およびINF−α誘導後(d)の陰性コントロール抗体3G6による染色。本来の倍率、400×、スケールバー 10μm。
【図3】HUVECにおける、相対発現CD73 mRNAのグラフ表現である。HUVECは、72時間、IFN−アルファと共にまたはなしでインキュベートした。リアルタイムRT−PCR解析を、TaqManにて実施した。図は、コントロールおよびIFN−アルファ処置細胞間の、CD73 mRNAの相対発現を表している。標準化を、ハウスキーピング遺伝子GAPDHを用いて実施した。データは、二重で実施した3つの実験の平均値±SEM、*<0.05を示す。
【図4】リンパ系CD73発現の調節が、内皮細胞のそれとは異なることを示しているグラフである。U266B1細胞およびPBLを、種々の時間、1000U/ml IFN−αを含有する、または含有しない培地中で増殖させた。未処理コントロール細胞と比較した場合、指示時間IFN−αに暴露した場合、有意な差は、PBL(白棒)またはU266B1(黒棒)で見られなかった。3〜6実験/時点のMFIの相対平均±SEMを示す。
【図5】IFN処理をする前、および後での、(パネルa)健康な領域、および(パネルb)腫瘍領域由来の、尿膀胱試料の免疫組織化学染色の、半定量的解析の要約である。
【図6】膀胱癌における、CD73の発現に対するIFN−αの効果を示している顕微鏡写真を示す。(a)膀胱癌切片は、IFN−α処置前に、抗−CD73 mAb 4G4で染色した。血管は、弱く、または中程度CD73を発現している。(b)同様の腫瘍が、IFN−α処置後、抗−CD73 mAb 4G4で染色された。いくつかの血管は、中程度または多量にCD73を発現している。(c)陰性コントロール抗体3G6での染色。d−f、IFN−α処置前(d)および後(e)で、CD73を発現している腫瘍(t)の例。またこの場合、IFN−アルファは、内皮細胞上のCD73発現を増加させた。(f)陰性コントロール染色。いくつかの血管を、矢印で示している。本来の倍率、100×、スケールバー 20μm。
【図7】IFN−αが、細胞表面エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を増加させることを示す。HUVEC(a)およびPBL(b)を、1000 U/ml IFN−αなし(白棒)またはあり(黒棒)で、48時間前処理した。エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を、300μmol/L [3H]AMPを用いることでアッセイし、縦軸を、1時間あたり106細胞による、基質の脱リン酸化のnmolとして表現した(平均値±SEM、n=4〜5)。コントロール細胞と比較して*P<0.05。(c)コントロール(黒丸)およびIFN−α処理HUVEC(白丸)による[3H]AMP加水分解速度対基質濃度プロット。値は、2つの独立した実験に関する、平均値±SEMとして表している。速度論的パラメータ類(VmaxおよびKm)を、示された曲線より計算し、文字で要約した。
【図8a】HUVEC単層の浸潤性に対するIFN−αの効果を示す。HUVECを、多孔性ポリスチレン膜(0.4μmの孔径)上に撒き、コンフルエントまで増殖させた。HUVECを培地中で増殖させ、100U/ml IFN−αで、72時間処理した。AMPを加えた15分後、膜機能を、70kDa FITC−デキストランの、HUVEC単層を介した、フルオロメーターを備えた下チャンバーへの流束を測定することによって解析した。FITC−デキストラン流束は100分まで測定した。値は、平均値±SEM、n=3である。IFN−α処理細胞と比較して*P<0.05。
【図8b】HUVEC単層の浸潤性に対するIFN−αの効果を示す。コンフルエント単層を、FITC−デキストランの添加30分前に、特異的エクト−5’−ヌクレオチダーゼ阻害剤であるAMPCP(100μM)に暴露した。示したデータは、平均値±SEM、n=3である。IFN−α処理細胞と比較して*P<0.05。
【図9】IFN−βおよび−γでのインキュベーション後の、ヒト臍帯内皮細胞におけるCD73アップ−レギュレーションを描写している代表的なヒストグラムである。インキュベーションの20時間の間、IFN−βが、26から50まで、平均蛍光強度(MFI)を増加させ、一方、インキュベーションの48時間の間、IFN−γは、MFIを26から94までアップ−レギュレートした。X−軸は、ログスケールの蛍光強度であり、y−軸は細胞の総対数である。
【図10】アデノシンレベルを調節している代謝経路を示す。アデノシンの形成および分解を導く酵素反応を描写している。アデノシンの量は、1.CD73の量をアップレ−ギュレートすること/増加すること、2.さらにAMPを提供すること、3.アデニル酸キナーゼを阻害すること、および4.アデノシンデアミナーゼを阻害すること、またはこれらの組み合わせによって上昇させることができる。
【図11】IFN−ベータおよびAMP治療なし(A)またはあり(B)での、多重臓器不全のラットの肺の、ホルマリン固定パラフィン包埋切片の、ヘマトキシリン−エオシン染色を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体におけるアデノシンレベルの上昇を誘導するための方法、およびアデノシンレベルの上昇によって利益を得る、疾患または疾病の治療または予防に関する。本発明はまた、個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法、およびそのようなCD73アップ−レギュレーションによって利益を得る、疾患または疾病の治療または予防にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を例示するため、とりわけ、実施に関する追加詳細を提供するために本明細書で使用した、刊行物および他の材料が、参考文献にて組込まれる。
【0003】
リンパ球と内皮細胞との相互作用は、多重段階過程である。血管壁を浸潤し、標的部位に到達可能にするために、循環細胞は、非常に良く制御された接着分子の組を使用する。内皮細胞への接着の増強、およびその後の血管壁の内皮裏層を通した、組織への再循環白血球細胞の移動が、炎症に関する特徴である。さらに、高程度の前−および抗−炎症性サイトカインの放出が、炎症の部位で起こる。これらのサイトカインは、接着分子の発現の強力なレギュレーターである。
【0004】
CD73(エクト−5’−ヌクレオチダーゼ)は、エクト−酵素活性を有する、70−kDのグルコシル−ホスファチジル−イノシトール−アンカー細胞表面分子である。CD73は、血管内皮上で豊富に、およびヒトリンパ球の特定の亜集団上では低レベルで発現する。CD73は、ヌクレオチド−5’−一リン酸(AMPおよびIMP)の分解による、アデノシンおよびイノシンのようなヌクレオチドへのプリン救出経路の一部である(1)。アデノシン、つまりCD73酵素活性のプリンヌクレオシド産物は、細胞表面上の特定のレセプターに結合する。アデノシンは、多くの生理学的および病理学的事象において、役割を果たすと報告されている。現在までに、Gタンパク質共役アデノシンレセプターの4つの異なるサブタイプ、A1R、A2aR、A2bRおよびA3Rがクローン化されてきた。レセプターの多様性および様々な組織におけるその豊富な局在化によって、アデノシン−アデノシンレセプター相互作用が、種々の生理学的応答を導く。A1およびA2レセプターへの結合によって、アデノシンは、内皮へ結合している白血球を制御することによって、炎症の病理学的結果を調節し、A2およびA3レセプターへの結合によって、好中球脱顆粒の阻害を介して、抗炎症剤として働く(2)。アデノシンはまた、A3レセプターの活性化を介して、好酸球遊走を減少させもする。5’−AMPのこの促進効果は、CD73仲介であり、細胞内cAMPの増加が続く。最近、A2aレセプターに対する重要な役割が、インビボでの全身性および組織特異的炎症応答の減少において見られた。アデノシンは、心臓および中枢神経虚血の間の細胞傷害を予防する(3〜5)。低酸素症の後、エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性が、プレコンディショニングとして知られる現象によって増加する。これによって、結果として、たとえば心臓低酸素症における梗塞に対する、細胞の抵抗性の増加を導く、多量のアデノシンの放出となる。
【0005】
現在までに、内皮CD73発現および機能の調節に関しては、実際なにも知られていない。しかしながら、炎症においては、インビボで特異的に内皮CD73発現を制御する誘導物が分泌されうる。
【0006】
抗炎症および細胞保護効果を有するアデノシンが、炎症の程度および結果を制御することにおいて、重要な役割を果たすので、本研究は、CD73発現の調節、ならびにエクト−5’−ヌクレオチド仲介アデノシン産生の調節に関連する因子を同定するために設計した。
【0007】
アデノシンそれ自体は、炎症症状を患っているか、または未処置によって、組織炎症が導かれる可能性が非常に高い症状を患っている患者に投与可能である。しかしながら、アデノシンの直接投与による深刻な欠点は、インビボにおけるアデノシンの迅速な消失である。したがって、本研究は、長期間にわたる、アデノシンのレベルの上昇を達成する新規方法を提案する。
【発明の開示】
【0008】
本発明の主な目的は、個体におけるアデノシンのレベルの増加のため、および長期間にわたるアデノシンレベルの増加を維持するための方法を提供し、それによって、炎症症状、または未処理であると組織炎症が導かれ得る症状を予防または治療することである。
【0009】
本発明の他の目的は、個体における内皮CD73の発現をアップ−レギュレートするための、およびそのようなCD73アップ−レギュレーションによって利益を得る疾患または障害を予防または治療するための方法であって、アデノシンのレベルの上昇を必要としない方法を提供することである。
【0010】
このように、1つの観点によれば、本発明は、個体に、有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子、またはそれらの組み合わせのいずれかを投与することによって、該個体におけるアデノシンのレベルの上昇を誘導する方法に関する。
【0011】
他の観点によれば、本発明は、個体に有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子、またはそれらの組み合わせのいずれかを投与することによって、該個体におけるアデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療のための方法に関する。
【0012】
第三の観点によれば、本発明は、個体に、有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することによって、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法に関する。
【0013】
第四の観点によれば、本発明は、個体に、有効量のサイトカイン、または内皮CD73発現が誘導可能な他の因子を投与することによって、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療のための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、一連の可能性あるメディエーターのスクリーニング、およびIFN−α、βおよびガンマが、CD73発現の強力なアクチベーターであるという知見に基づいている。IFN−アルファが、より詳細な研究のために選択された。IFN−αは、PBL上ではなく内皮細胞上でのCD73発現の、特定の時間および用量依存インビトロアップレギュレーションを示し、よりいっそう重要なことに、インビボで、膀胱癌患者の腫瘍血管におけるCD73の発現をアップレギュレートした。IFN−α誘導後の内皮CD73のアップレギュレーションは、内皮細胞におけるバリア機能の増強を導く、5’−AMPからアデノシンを、酵素的に機能的に産生する。さらに、内皮およびリンパ球CD73の制御において、細胞型特異的差異が見られた。
【0015】
内皮およびリンパ球CD73へのIFN−αの異なる効果の結果は、さらに、CD73の発現を調節するための、細胞型間の差異を示す。これに関連し、CD73の量は、リンパ球と内皮細胞との間で明らかに変化する、と言うに足る。たった10〜15%のリンパ球がCD73を発現し、この発現レベルは、たとえば、CD73に関してすべてが陽性であるHUVECと比較して低い。CD73の量および調節における、この型の細胞特異的差違は、リンパ球の適切な挙動に関して基本的であり、そのリンパ球の役割は、存在するアデノシンを活発に脱アミノ化すること、およびリンパ系組織または炎症部位へ遊出することである。反対に、アデノシンは、そのバリア機能を維持するために、内皮細胞にとって必要である。
【0016】
結論として、本研究は、CD73がどのようにして、サイトカイン、とりわけインターフェロンによって、インビトロおよびインビボ両方でアップレギュレートされ得るかを説明する。アデノシンは、その性質において非常に抗炎症性であるので、CD73のアップレギュレーションを介した、アデノシンの内因性産生の操作が、たとえば、心臓血管梗塞および脳卒中、臓器移植に関連する再灌流傷害、および種々の組織損傷および外傷のような、有害な炎症症状を治療するための、1つの可能性のある方法である。
【0017】
定義
本明細書で使用するところの、用語「メディエーター」は、炎症の環境にて効果を有する、任意の可溶性因子を含むことを意味する。本明細書で使用するところの用語「誘導因子」はさらに、特定の分子の発現を増加させ、機能を増強する因子を意味する。
【0018】
語句「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」は、疾患または障害の完全な治癒、ならびに該疾患または障害の改善または緩和を含むことと理解されるであろう。
【0019】
用語「予防(prevention)」は、前記疾患または障害を発病する個体のリスクを防止、予防ならびに低減することを含むと理解されるであろう。本用語はまた、組織を傷害から防止するために、非常に早期の段階(たとえば手術前、脳卒中および梗塞患者における完全な診断前)で、本発明の方法にしたがって、アデノシンレベルを上昇することによる、組織の前処理を含むとも理解されるであろう。
【0020】
用語「個体(indivisual)」は、ヒトまたは動物の患者(subject)を言う。
【0021】
表現「有効量(effective amount)」は、とりわけ、動物またはヒト患者への投与に際し、望む治療的結果を成し遂げるのに充分な、本発明による薬剤の任意の量を含むことを意味する。
【0022】
語句「アデノシンのレベルの上昇(elevated level of adenosine)」は、本発明にしたがって行なわれた測定なしであろう正常組織と比べて、少なくとも2%高い、好ましくは少なくとも20%高い、もっとも好ましくは少なくとも30%高い、アデノシンレベルとして解釈されるべきである。
【0023】
語句「アデノシンレベルの上昇を必要とするか、またはそれによって利益を得る疾患または障害」は、該疾患または障害の予防または治療が、アデノシンレベルの上昇によって促進されることを意味する。
【0024】
語句「内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害」は、該疾患または障害の予防または治療が、そのようなアップ−レギュレーションによって促進されることを意味する。
【0025】
表現「炎症症状(inflammatory condition)」は、個体における組織中の任意に有害で、望まれない炎症応答を含むことを意味し、そこでは、該炎症症状は、組織外傷、心筋梗塞または脳卒中、臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害のような急性症状、またはアレルギー性症状、自己免疫疾患および炎症性疾患を含む慢性症状から生じ得る。
【0026】
組織外傷または再灌流傷害の治療は、本発明において、とりわけ、該外傷または再灌流傷害が未処理のまま残された場合に、とてもおこりやすい炎症症状の予防として理解されるべきである。
【0027】
好ましい実施態様
個体におけるアデノシンのレベルの上昇が、組換えCD73タンパク質を投与することによって、またはサイトカインもしくは内皮CD73発現を誘導することが可能な他の因子によって、または両治療の組み合わせによって誘導可能であるけれども、多くの場合、サイトカインまたは同様の能力を有する他の因子の使用が好ましい。しかしながら、重度の外傷においては、代替治療として、または追加的治療として、アデノシン産生の増加を迅速に達成するために、組換えCD73タンパク質の投与が有用であり得る。
【0028】
本発明で使用されるべき好適な薬剤には、サイトカインまたはCD73遺伝子の転写を直接的または間接的にアップ−レギュレートする他の因子が含まれる。本発明での使用のための好適なサイトカインは、典型的には、インターフェロンまたはインターロイキンであるが、他の薬剤も使用できる。サイトカインがインターフェロンである場合、インターフェロンは、アルファ−、ベータ−、ガンマ−、オメガ−または任意の他のインターフェロンであり得、前述したインターフェロンの任意のサブタイプであり得る。とりわけ、アルファ−およびベータ−インターフェロンが、本発明での使用に好適であると考えられる。
【0029】
内皮CD73発現を誘導可能な任意のインターロイキンもまた、本発明での使用のために好適である。そのようなインターロイキンの例としては、IL−4、IL−10、IL−13およびIL−20をあげることができる。
【0030】
個体のアデノシンレベルの上昇を必要とするか、または個体のアデノシンレベルの上昇から利益をえる典型的な疾患または障害は、組織外傷;心筋梗塞もしくは脳卒中の結果である再灌流傷害、組織移植または他の外科手術;癌または癌転移;または前記外傷または再灌流傷害から生じる炎症症状、またはアレルギー性症状、自己免疫疾患および炎症性疾患を含む慢性症状から生じる炎症症状である。そのような慢性症状の例は、関節炎、喘息などのアレルギー性症状、炎症性大腸炎のような炎症性状態、または皮膚、乾癬、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患、I型およびII型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、クローン病または組織移植による拒絶反応のような炎症状態をあげることができる。
【0031】
特に好ましい実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の投与は、発現の上昇によって、または組換えCD73タンパク質の直接投与によって得られるCD73レベルの上昇の結果として産出されるであろうアデノシンの供給源を保護するために、アデノシン一リン酸(AMP)の投与と組み合わされる。
【0032】
もう1つの実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の投与は、AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤の投与と組み合わされる。組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の、AMPおよびそのようなアデニル酸キナーゼ阻害剤との混合投与が、とりわけ好ましい。
【0033】
また他の好ましい実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカイン、または両方の投与は、アデノシンの分解を防止する、アデノシンデアミナーゼ阻害剤の投与と組み合わされる。これはまたさらに、AMPの投与と組み合わせることができ、任意には、AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤の投与とも組み合わせることができる。
【0034】
アデノシンレベルを調節する代謝経路を図10に示す。
【0035】
他の好ましい実施態様によれば、組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは両方の、任意にはアデノシン一リン酸の投与との組み合わせでの投与は、外傷患者または梗塞または脳卒中患者が治療を受け次第開始する(任意に、最終診断が完全に明確になっていなくても)。この結果、アデノシンレベルを可能な限り急速に増加することができる。外科手術の場合、任意にアデノシン一リン酸の投与との組み合わせでの、組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは両方の投与は、手術の前、たとえば手術の開始12時間前に開始することが有用であり得る。また、これらの場合では、アデニル酸キナーゼ阻害剤および/またはアデノシンデアミナーゼ阻害剤を、前記薬剤に加えて投与することができる。
【0036】
治療的有効量、投与経路および剤形
そのような治療を必要とする患者に投与すべき、本発明による成分の治療的有効量は、たとえば、患者の年齢および体重、治療を必要としている正確な症状およびその重症度、および投与経路などの多数の因子に依存し得る。正確な量は、最終的には当業医療者の判断である。したがって、本発明の実施は、任意の用量、他の治療的に有効な薬剤との組み合わせ、経口、局所、吸入または非経口投与のための、医薬処方またはデリバリーシステムが関与しうる。
【0037】
本発明による薬剤の投与のための量および投与計画は、再潅流傷害、脳卒中、組織移植、外傷、癌または癌転移、または慢性炎症性疾患のような、炎症関連障害を治療する当業者によって簡単に決定することができる。
【0038】
本発明に基づいて、たとえば皮下、筋肉内、静脈内または経皮で投与された、インターフェロンのようなサイトカイン、または他の因子が、CD73のアップレギュレーションを誘導し、したがって、抗炎症性であるアデノシンの局所濃度を増加させることが予想される。これにより、非常に短い半減期を持ち、したがって治療的な使用に関して最適ではない、アデノシンの使用に関する問題が解決される。
【0039】
サイトカインまたは他の因子は、本発明によれば、好ましくは注入または注射によって投与され得る。血管内注入は、通常、注入バッグまたはボトル内に含まれる非経口溶液を用いて実施され、非経口溶液の投与速度を調整するために、種々のシステムに連結し得る。あるいは、サイトカインまたは他の因子は、本発明によれば、エアロゾルとして投与しうる。
【0040】
注入または注射のための好ましい処方には、ヒト血清アルブミンのような担体、薬学的に許容し得る塩、リン酸塩のような緩衝液および/または他の薬学的に許容し得る賦形剤が含まれ得る。たとえばサイトカインまたは他の因子のような活性成分は、たとえば1〜50×106 IU/mlの範囲の量で提供され得る。処方は、好ましくは、投与の前に、水、または注射のために好適な他の溶液の添加によって調製されるように、凍結乾燥粉末の剤形として提供され得る。
【0041】
インターフェロンのようなサイトカインまたは同様の能力を有する他の因子を、炎症を患っているか、そのリスクのある患者に投与することができる。このような種類の炎症症状は、たとえば脳卒中および心筋梗塞の間の、虚血性再潅流傷害である。また、臓器移植および外傷は、しばしば主要な炎症構成成分と関連付けられる原因である。それらの固有の性質により、様々なサイトカインが、その特異的疾患標的を有し、ベータインターフェロンは、脳卒中および心筋梗塞における虚血性再潅流傷害に対してもっとも好適なインターフェロンであり、一方、アルファ−インターフェロンは、心筋梗塞での選択薬ではない。
【0042】
組換えCD73タンパク質を投与する場合、好適な投与経路は、注入または注射であり得る。好適な一日用量は、0.1〜5.0mg/kg体重の範囲である。
【0043】
アデノシン一リン酸は、皮下、筋肉内、静脈内または経皮的に投与され得る。典型的な一日用量は、0.1〜100mg/kg体重の範囲であり得る。
【0044】
また、任意に使用されるアデニル酸キナーゼ阻害剤またはアデノシンデアミナーゼ阻害剤は、たとえば、皮下、筋肉内、静脈内または経皮的に投与され得る。典型的な一日用量は、0.1〜100mg/kg体重の範囲であり得る。
【0045】
本発明は、以下の非制限的実施例の項目で例示され得る。
【実施例】
【0046】
詳細に本発明のさらなる記述を与える、以下の実施例では、以下の材料および方法が使用された。
【0047】
細胞、抗体および試薬。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を単離し、完全培地中、ゼラチンコート細胞培養フラスコ上で培養した。健康なボランティアからのヒト末梢血リンパ球(PBL)を、Ficoll−Hypaque(Histopague-1077、ファルマシア(Pharmacia)、ウプサラ(Uppsala)、スウェーデン)を用いて単離した。PBL、U266B1細胞株、およびHEC内皮細胞株(EaHy−926と同等)を、10% FCS、4mM L−グルタミン、100U/mlペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを含む、RPMI1640培地中で培養した。抗−CD73 mAb 4G4(マウスIgG1)、抗−ICAM−1 mAb 5C3(IgG1)および陰性コントロール抗体としてニワトリT−細胞に対するmAb 3G6(マウスIgG1)を使用した。α,βメチレンアデノシン5’−二リン酸(AMPCP)およびアデノシン5’−一リン酸(5’−AMP)は、シグマ(シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州)からのものである。
【0048】
誘導および免疫蛍光染色。誘導に関する詳細を、表1に示す。各時点に対して、コントロールフラスコを誘導因子なしにインキュベートした。
【0049】
3つの異なるプロトコールを、免疫蛍光染色のために使用した。
【0050】
A)CD73の表面発現における、種々の誘導体のパネルの効果を調べるために、免疫蛍光解析を実施した。簡単に記すと、HUVECを、誘導因子のある状態、またはない状態で処理し、5mM EDTA−トリプシンで分離した。各染色あたり、5×105細胞を、ハイブリドーマ上清または精製抗体(最終濃度、10マイクログラム/ml)として、飽和濃度のmAb 3G6(陰性コントロール)、4G4(抗−CD73)、および5C3(抗−ICAM−1)と共に、4℃にて20分間インキュベートし、2回洗浄した。ついで、細胞を、4℃にて20分間、5% AB−血清を含む1:100希釈FITC−共役ヒツジ抗−マウス−IgG mAb(シグマ)と共にインキュベートした。最後に、細胞を2回洗浄し、1% パラホルムアルデヒドにて固定した。全てのインキュベーションおよび洗浄は、2% FCSおよび1mM NaN3を含む、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で実施した。ついで、蛍光を、蛍光活性化セルソーター(FACS、ベクトン−ディッキンソン(Becton-Dickinson)、サンノゼ、カリホルニア州)を用いて検出した。コントロールおよび処置細胞間の差を、
【数1】
より算出した。
B)細胞内CD73の検出のために、リンパ球を、−20℃でアセトン中、2分間のインキュベーションによって、免疫蛍光染色前に透過性とした。ついで細胞を、5% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄し、(A)で記述したように、染色し、FACSによって解析した。
C)HUVECまたはPBL上のCD73の分布を調べるために、細胞をまず、A)でのように染色し、ついで、ガラス−スライド上に、5分間、1000RPMで遠心し、ホルムアルデヒドで固定し、Fluoromount−G(サザン バイオテクノロジー アソシエイツ社(Southern Biotechnology Associates Inc.)、バーミンガム、アラバマ州)でマウントした。あるいは、HUVEC単層を、ゼラチンコートガラススライド上で増殖させ、(A)にて記述したように、飽和濃度のmAbsとともに細胞をインキュベートすることによって、CD73、ICAM−1または陰性コントロールに対して染色し、蛍光顕微鏡(Olympus BX60)で解析した。
【0051】
CD73 RNA解析。HUVECを、細胞培養フラスコ中でコンフルエントに増殖させ、PBLは、Ficoll−Hypagueを用いて誘導の前に単離した。HUVECおよびPBL両方の1×107細胞を、培養培地中、IFNアルファ 1000U/mlと共にインキュベートした。同数の細胞を、未処理のまま静置した。RNAを、製造元の取扱説明書にしたがって、UltraspecTM−II RNA単離システム(バイオテックス ラボラトリーズ社(Biotecx Laboratories, Inc.)、ヒューストン、テキサス州)を用いて単離した。1〜2μgの総RNAを、DnaseI処理した(増幅グレード(Amplification Grade)、ギブコ BRL、ライフ テクノロジーズ(Gibco BRL, Life Technologies)、ギャザースブルク(Gathersburg)、メリーランド州)。cDNAを、製造元の取扱説明書にしたがって、Superscript II 逆転写酵素(ギブコ BRL、ライフ テクノロジーズ)を用いて作製した。リアルタイムRT−PCR測定の前に、試料をRnaseH(ギブコBRL、ライフ テクノロジーズ)で処理した。GAPDHハウスキーピング遺伝子に対するプライマーおよびプローブを、内部標準として使用した。CD73プライマーおよびプローブを、プライマーエクスプレスコンピュータソフトウェア(PE バイオシステムズ(PE Biosystems)、フォスターシティー、カリホルニア州)を用いて設計した。CD73プライマー5’CTG GGA GCT TAC GAT TTT GCA3’および5’CCT CGC TGG TCT GCT CCA3’、およびCD73プローブ5’CCA ACG ACG TGC ACA GCC GG3’を使用した(メドプローブ(MedProbe)、セント ハンスハウゲン(St.Hanshaugen)、ノルウェー)。リアルタイムRT−PCR測定を、TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(アプライド バイオシステムズ(Apploied Biosystems)、ブランクブルグ(Branchburg)、ニュージャージー)およびABI PRISM 7700 Sequence Detector(アプライド バイオシステムズ)を用いて実施した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現を、標準化のための参照として使用し、コントロールとIFN−α処置細胞との間のCD73 mRNA発現の相対的増加を計算した。
【0052】
エクト−5’−ヌクレオチダーゼアッセイ。エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を、先に記述されたように(19)薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析した。簡単に記すと、標準酵素アッセイは、最終容量120μl RPMI 1640中、4〜6×104分離HUVEC(または1×105リンパ系細胞)、5mmol/L β−グリセロホスフェート、およびトレーサー[2-3H]AMP(特異的活性18.6Ci/mmol、アマシャム(Amersham))を有する指示濃度の5’−AMPを含有した。インキュベーション時間は、変換AMPの量が、最初に導入した基質の7〜10%を超過しないように、時間との反応の直線性を保証するように選択した。混合物の一部を、Alugram SIL G/UV254TLCシート(マケリー−ナジェル(Macherey-Nagel))に適用し、溶媒として、イソブタノール/イソアミルアルコール/2−エトキシエタノール/アンモニア/H20(9:6:18:9:15)で分離した。3H−標識AMPおよびその脱リン酸化ヌクレオシド誘導体を、UV光で視覚化し、Wallac−1409β−スペクトロメーターを用いて定量した。
【0053】
浸潤性アッセイ。コンフルエント単層のバリア機能を評価するために、HUVECを、トランスウェルインサートポリカーボネートフィルター(直径6.5−mm、孔径0.4−μm、コスター、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)上に播種した(50000細胞/インサート)。フィルターを、フィブロネクチンで、1〜2時間処置し、内皮細胞を播種する前に風乾した。一般的には、単層を、播種後4〜5日調べた。HUVECは、単層浸潤性の研究の前に72時間、IFN−α(100U/ml)で誘導するか、またはIFN−αなしの培養液中で増殖させた。内皮単層を通した輸送を、FITC−標識デキストラン(500μg/ml、モル重量 70000)の流束を測定することによって評価した。内皮単層を、FITC−デキストラン輸送の開始前、15分間、AMP(50μM)で前処理した。内皮細胞浸潤性におけるCD73酵素活性の役割を評価するために、FITC−デキストランの流束を、エクト−5’−ヌクレオチダーゼの特異的阻害剤、AMPCP(100μM)の存在下または非存在下で測定した。ある実験では、AMPCPを、輸送がFITC−標識化デキストランを加えることによって開始される30分前に、上または下チャンバーに添加した。インサートを、10分、20分、30分、40分および100分の時点にて、底チャンバー(Visiplate、パーキン エルマー ライフ サイエンシズ(Perkin Elmer Life Sciences))から取り出し、FITC−標識化デキストランを、励起波長および放出波長として、それぞれ485nmおよび535nmを用いて、フルオロメーター(TECAN Ultra蛍光測定器、テカン(Tecan)、オーストリア)中で、底チャンバーから直接測定した。
【0054】
統計解析。データは、個々の実験の平均値±SEMとして表す。統計学的比較は、スチューデントのT検定を用いて行ない、P値<0.05を有意とした。速度実験で得られたデータを、ミカエルス−メンテン式を用いるコンピュータ解析にかけ、KmおよびVm値を決定した(GraphPad PrismTM バージョン3.0、サンディエゴ、カリホルニア州)。
【0055】
実施例1
内皮細胞上のCD73発現のアップレギュレーション
本研究は、CD73発現またはCD73に基づくエクト−5’−ヌクレオチダーゼ酵素活性の、強力なレギュレーターを見つけるために設計した。つまり、内皮細胞を、広い範囲の、公知の種々な分子の誘導因子に暴露した(表1)。誘導因子は、たとえばインターフェロンおよびLPSである。インターフェロン(IFN−α、IFN−βおよびIFN−γ)の存在によって、20〜24時間の誘導後、>200U/mlの用量で、HUVEC上のCD73発現にて、明らかなアップレギュレーションが導かれた(図1および9)。
【0056】
本実施例は、CD73発現が、インターフェロンにて、内皮細胞上でアップレギュレートされることを示している。IFN−αは、臨床医薬品で非常に広く使用されているので、その効果をさらに詳細に評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例2
IFN−αによるアップレギュレーションの時間および用量依存性
実際、全ての活性化されていないHUVECが、FACSによって解析した場合、その表面にCD73を有する。したがって、細胞表面上のCD73分子の発現の増加を測定するために、HUVECの平均蛍光強度(MFI)を解析した。
【0059】
IFN−αアップレギュレーションの速度論をさらに研究するために、HUVECのコンフルエント単層を、指示した時間の間、異なる用量のIFN−αを用いてインキュベートした。CD73発現は、1000U/ml IFN−αでの72時間後、時間依存的にほぼ2倍(92.4±11.5%、n=9)増加した(図1a)。IFN−αへのHUVECのより長い暴露によっては、CD73発現のさらに有意な増加はおこらなかった(データは示していない)。CD73アップレギュレーションの同様のパターンが、IFN−βおよびIFN−γでの誘導後にも見られた(図9)。10〜1000U/mlの範囲の濃度では、1000U/mlにて、最も高い強度の増加が観察されたので、CD73発現のアップレギュレーションは、用量依存性でもあった(図1b)。
【0060】
免疫蛍光染色に続く蛍光顕微鏡によって、IFN−α処置が、HUVEC表面上のCD73の分布または局在化における有意な変化を誘導しないことが明らかになった。かわりに、CD73は、細胞表面上で、より強く、しかし同様に分布している(図2)。
【0061】
本実施例は、時間および用量依存様式にて、IFN−αが、内皮CD73発現を増加させることを示している。
【0062】
実施例3
CD73 RNA発現におけるIFN−αの効果
つぎに、CD73発現の増加が、CD73 RNA発現の増加によって仲介されるかどうかを測定した。1000U/ml INF−αでのHUVECの72時間インキュベーション後、CD73 RNAレベルは、GAPDHに対する平均化の後、コントロール細胞と比較して、3.4±0.5(相対的発現の平均±SEM、n=3)であった。
【0063】
これは、実施例1で観察されたCD73発現の増加が、実際、RNA発現の増加によって仲介されることを確認している。
【0064】
実施例4
アップレギュレーションの細胞型特異性
内皮およびリンパ系CD73は構造が同様であるにもかかわらず、IFN−αは、これらの2つの細胞型において、異なる効果を促進する。内皮細胞上のCD73発現が、IFN−α誘導性であることを発見した後、リンパ球上CD73もまた、同様の状態にて、同様に振る舞うかどうかを測定した。1000 U/mlのIFN−αは、PBL上のCD73発現を有意に増加はさせなかった(図4)。48時間までのより長い誘導時間でさえ、リンパ球表面上のCD73発現においては、小さな変化しか観察されなかった。新鮮に単離されたリンパ球が、培養条件内で、よく生存しないことによりCD73をアップレギュレートしない可能性を排除するために、CD73発現リンパ系細胞株U266B1もまた、IFN−αで処理した。これらもまた、誘導の48または72時間後でさえ、そのCD73発現をアップ−レギュレーションできなかった。むしろ、コントロール細胞と比較して、IFN−α処置後、48時間の時点で、減少がおこった(相対MFI 82.1±5.6%対100%、n=3)(図4)。
【0065】
細胞内CD73タンパク質レベルのアップ−レギュレーションも存在するかどうかを明らかにするために、PBLおよびHUVECを、IFN−α誘導後、免疫蛍光染色の前に、アセトンで浸潤性とした。CD73の細胞内発現のアップ−レギュレーションは、PBLでは観察されなかった。同様の結果が、解析をFACSおよび蛍光顕微鏡で実施した場合に得られた。HUVECにおいて、抗−CD73 mAbでの細胞内染色のわずかな増加が、IFN−α誘導後に見られた(データは示していない)。
【0066】
実施例5
臨床腫瘍試料におけるCD73発現
IFN−αがまた、インビボにて、CD73の発現を調節するかどうかを調査するために、表在性内皮膀胱癌由来の組織切片を、IFN−α2b処置の前後で採取し、染色し、解析した。
【0067】
表在性内皮膀胱癌を持つ12人の患者を、実際の手術前1〜3週間、手術に関して評価した。評価訪問に関して、膀胱の正常領域と、腫瘍とから、生検をとった。患者に、手術1日前に、5000万ユニットのIFN−α2b(IntronA、シェーリング−プラウ(Schering-Plough)を与え膀胱にしみこませた。膀胱切除を実施し、患者に、再建手術として、従来の尿管腸吻皮膚合術、腸形成または尿管腸吻膀胱合術を実施した。3人の患者が、手術の前にIFN−αを受けなかった。これらのうち2人は、手術1日前に、膀胱にしみこませた、100mg エピルビシン(ファーモルビシン(Pharmorubicin)、ファルマシア(Pharmacia))を受け、一人はなにも受けなかった。かれらの腫瘍を、手術前(生検)および後に解析し、コントロールとして使用した。全ての患者が西欧男性であった。患者の特徴を表2に示す。
【0068】
膀胱試料切片を、液体窒素で、急速凍結し、5μm切片に切断した。続いて、切片を、第一抗体として、抗−CD73 mAb 4G4または3G6(陰性コントロール)で染色し、ペルオキシダーゼ−共役ウサギ抗−マウスIgG(DAKO A/S、グロストラップ(Glostrup)、デンマーク)を、第二段階抗体として使用した。反応を、PBS中の3,3’−ジアミノベンジジン テトラヒドロクロライド(ポリサイエンシス社(Polysciences, Inc.)、ウォリントン(Warrington)、ペンシルベニア州)を加えることによって現像した。全てのインキュベーションは、飽和mAb濃度での20分間であり、続いて、PBSにて2回洗浄した。陽性血管/顕微鏡視野(×200)の数を計数し、染色の強度を半定量的に評価した。0〜3の組み合わせスコアを各試料に与えた。スコア0は、陽性血管がない試料であり、スコア3は、炎症扁桃腺と等しい染色の試料である。スコア1および2は、この間の染色パターンをカバーするように調整した。全ての試料を無差別に読んだ。
【0069】
【表2】
【0070】
2つの腫瘍において、悪性細胞は、CD73陽性であり、これはいくつかの上皮細胞もCD73陽性であるという事実を反映している。IFN−αは、コントロール切片における処置前後の発現レベルと比較した場合、インビボにて、コントロールおよび癌血管両方の血管内皮におけるCD73の明らかなアップ−レギュレーションを産出した(図5)。しかしながら、腫瘍内に存在する少数の正常リンパ球では、CD73アップ−レギュレーションは検出されなかった。同様に、腫瘍細胞の発現レベルは、CD73に関して陽性であった腫瘍におけるIFN−α2b処置の間、一定のままであった(図6)。IFN−αを受けず、生検および手術それ自身によって引き起こされたCD73の可能性のあるアップ−レギュレーションを制御するために使用した三人の患者は、そのCD73発現において、有意な増加を示さなかった(一人の患者は、なんの変化も示さず、2人の患者は、腫瘍組織内の内皮CD73発現にて、0.5の増加を示した)。したがって、コントロール患者の平均変化は、0.3であり、処置した患者の平均変化は1.3であった(P=0.02)。
【0071】
本実験は、あきらかに、臨床的に実現可能な量でのIFN−α投与の結果として、ヒト患者にて、CD73がアップ−レギュレートされることを示している。
【0072】
実施例6
エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性に対するIFN−αの効果
HUVEC上のCD73発現のIFN−α誘導増加が、エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性における同時誘導をともなうかどうかを決定するために、[3H]AMPの[3H]アデノシンへの変換の直接測定のための放射化学アッセイを適用した。HUVEC単層の、IFN−α(1000U/ml、48時間)による前処理によって、[3H]AMP加水分解の速度における有意な増加が引き起こされ(図7a)、一方で、IFN−αによるPBL処理の後に、酵素活性の有意な活性化は検出されなかった(図7b)。
【0073】
エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性の機序をさらに解明するために、コントロールおよびIFN−処置HUVECによる、[3H]AMP加水分解の速度論解析を実施し、これらの飽和曲線は、図7cに見ることができる。統計解析によって、酵素親和性の改変なしに(Km〜50〜60μmol/L)、IFN−αが、未処理細胞と比較して、5’−ヌクレオチダーゼの最大加水分解速度(Vmax)を増加させる(525±30対350±29nmol/106細胞/時間)ことが明らかになった。これらのデータは、INF−αが、内皮表面上の、酵素的に活性な5’−ヌクレオチダーゼ分子の数を増加させるが、反面、酵素触媒部位の構造変化を誘導はしないことを示唆している。
【0074】
興味深いことに、他のヌクレオチド[3H]ATPでの同様のアプローチの使用によっては、IFN−αでのHUVECの処理の後、ATP−加水分解活性の有意な変化を示さず(データを示していない)、これは、エクト−5’−ヌクレオチダーゼ誘導の特異性を確認している。CD73が、継続的にリンパ球から、細胞培養上清へ分泌され、酵素活性を増加させることを確かめるために、IFN−α誘導リンパ球および未処理コントロール細胞からの細胞培養培地中の、[3H]アデノシンへの[3H]AMPの変換を解析した。細胞培養培地中の酵素的活性における有意な変化は、コントロールおよびIFN−α処置間で見られなかった(データは示していない)。
【0075】
これらの実験は、インターフェロン−αが、内皮細胞におけるエクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を増加させることを示している。
【0076】
実施例7
HUVEC膜機能に対するIFN−αの効果
IFN−αアップレギュレートCD73発現およびアデノシン産出におけるCD73仲介増加がHUVEC膜機能を調節できるかどうかを調べるために、浸透性インサート壁上で増殖しているコンフルエント内皮単層を介したFITC−標識化デキストランの流束を測定した。試験したすべての時点で、FITC−デキストランの流束の減少によって示されたように、未処理HUVECと比較して、3日間IFN−α(100U/ml)で処理したHUVECの浸潤性において、有意差(P<0.05)があった(図8a)。特異的CD73酵素阻害剤、AMPCPでのHUVEC単層の前処理が、FITC−デキストランの流束の増加によって示されたように、IFN−α処置に関連した浸潤性の減少を無効にした(図8b)。
【0077】
これらの結果は、AMPの存在下で、IFN−αがHUVEC膜機能を増加させることを確認した。CD73の発現を増加させることによって、したがって、アデノシンレベル血管浸透性が減少し、組織への炎症細胞の管外遊出の減少が導かれることが、強く示唆された。
【0078】
インターフェロン類は、タンパク質およびRNAレベル両方にて、リンパ球上ではなく、内皮細胞上での、CD73の時間および用量依存的長期アップ−レギュレーションを産出する。さらに、アデノシンのCD73仲介産生が、内皮細胞上でのIFN−α処置後に増加し、結果として、これらの細胞の浸潤性が減少する。
【0079】
実施例8
多重臓器不全における、AMPおよびIFN−ベータによるラットの混合治療
モデル:多重臓器不全を、30分間、腸間膜動脈をクランピングすることによって、ラット(体重:250g)に誘導した。その後、再潅流時間は2時間であった。治療群のラットに、動脈のクランピング18〜20時間前に、10000ユニットのIFN−ベータを、皮下に注射した。実際の実験を通して、動物に、連続静脈内注入として、3ml生理食塩水内、37.5mg AMPを与えた。多重臓器不全であるが、治療を受けなかったラットをコントロールとして利用した。実験の最後に、本実験モデルにおける主要な標的器官の1つである、肺の組織を解析した。
【0080】
結果:治療なしのコントロールラットの肺は、図11(A)で見ることができるように、肺胞腔の崩壊を示し、一方、INF−ベータおよびAMPを与えたラットは、肺胞腔の明らかな崩壊を示していなかった(B)。したがって、INF−ベータおよびAMPでの治療によって、多重臓器不全の合併症から保護される。
【0081】
これらの結果すべてによって、サイトカイン、とりわけインターフェロンが、内皮−白血球微小環境において、CD73の適切なインビボレギュレーターであり、したがって、CD73−依存アデノシン産生を介して、炎症の程度を制御することにおいて、基本的な役割を有することを示唆している。
【0082】
本発明の方法は、種々の実施態様の形態で組み込まれ得、そのいくつかが本明細書で開示されていることが理解され得る。他の実施態様が存在し、本発明の精神から逸脱しないことが、当業者に対して明らかであり得る。したがって、記述した実施態様は例示であり、制限として解釈されるべきではない。
【0083】
[参考文献]
1. Thompson, L.F., Ruedi, J.M., Glass, A., Moldenhauer, G., Moller, P., Low, M.G., Klemens, M.R., Massaia, M., and Lucas, A.H. 1990. Production and characterization of monoclonal antibodies to the glycosyl phosphatidylinositol-anchored lymphocyte differentiation antigen ecto-5′-nucleotidase (CD73). Tissue Antigens 35:9-19.
2. Bouma, M.G., Jeunhomme, T.M.M.A., Boyle, D.L., Dentener, M.A., Voitenok, N.N., van den Wildenberg, F.A.J.M., and Buurman, W.A. 1997. Adenosine inhibits neutrophil degranulation in activated human whole blood: involvement of adenosine A2 and A3 receptors. J. Immunol. 158:5400-5408.
3.Olah, M.E., and Stiles, G.L. 1995. Adenosine receptor subtypes: characterization and therapeutic regulation. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 35:581-606.
4. Heurteaux, C., Lauritzen, I., Widmann, C., and Lazdunski, M. 1995. Essential role of adenosine, adenosine A1 receptors, and ATP-sensitive K+ channels in cerebral ischemic preconditioning. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4666-4670.
5. Linden, J. 2001. Molecular approach to adenosine receptors: receptor-mediated mechanisms of tissue protection. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 41:775-787.
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】INF−αによるHUVECにおけるCD73表面発現の誘導が、時間および用量量依存性であることを示しているグラフ表現である。パネル(a)では、HUVECを、1000U/ml IFN−αに指示時間暴露した。(b)HUVECを、異なる濃度のIFN−αと共に、72時間培養した。3〜9回の実験の、MFIの相対平均±SEMを示している。コントロールの発現は、各時点での、IFN−αなしでのCD73の発現である。バックグラウンド(陰性コントロール染色)を差し引いている。*P<0.05、**P<0.01。
【図2】IFN−アルファでのCD73の誘導が、その分布の変化よりむしろ発現の増加を導くことを示している顕微鏡写真である。HUVECを、培地中で増殖させるか、または72時間INF−アルファで誘導し、CD73の細胞表面発現を、CD73に対するmAb 4G4およびFITC共役抗マウスIgG抗体で検出した。(a)コントロールHUVEC上でCD73が、パンケーキ様パターンで細胞表面上で発現している。(b)IFN−α誘導の後、CD73はより強い強度となるが、表面分布は、コントロールHUVECでのものと同様である。コントロールHUVEC上(c)およびINF−α誘導後(d)の陰性コントロール抗体3G6による染色。本来の倍率、400×、スケールバー 10μm。
【図3】HUVECにおける、相対発現CD73 mRNAのグラフ表現である。HUVECは、72時間、IFN−アルファと共にまたはなしでインキュベートした。リアルタイムRT−PCR解析を、TaqManにて実施した。図は、コントロールおよびIFN−アルファ処置細胞間の、CD73 mRNAの相対発現を表している。標準化を、ハウスキーピング遺伝子GAPDHを用いて実施した。データは、二重で実施した3つの実験の平均値±SEM、*<0.05を示す。
【図4】リンパ系CD73発現の調節が、内皮細胞のそれとは異なることを示しているグラフである。U266B1細胞およびPBLを、種々の時間、1000U/ml IFN−αを含有する、または含有しない培地中で増殖させた。未処理コントロール細胞と比較した場合、指示時間IFN−αに暴露した場合、有意な差は、PBL(白棒)またはU266B1(黒棒)で見られなかった。3〜6実験/時点のMFIの相対平均±SEMを示す。
【図5】IFN処理をする前、および後での、(パネルa)健康な領域、および(パネルb)腫瘍領域由来の、尿膀胱試料の免疫組織化学染色の、半定量的解析の要約である。
【図6】膀胱癌における、CD73の発現に対するIFN−αの効果を示している顕微鏡写真を示す。(a)膀胱癌切片は、IFN−α処置前に、抗−CD73 mAb 4G4で染色した。血管は、弱く、または中程度CD73を発現している。(b)同様の腫瘍が、IFN−α処置後、抗−CD73 mAb 4G4で染色された。いくつかの血管は、中程度または多量にCD73を発現している。(c)陰性コントロール抗体3G6での染色。d−f、IFN−α処置前(d)および後(e)で、CD73を発現している腫瘍(t)の例。またこの場合、IFN−アルファは、内皮細胞上のCD73発現を増加させた。(f)陰性コントロール染色。いくつかの血管を、矢印で示している。本来の倍率、100×、スケールバー 20μm。
【図7】IFN−αが、細胞表面エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を増加させることを示す。HUVEC(a)およびPBL(b)を、1000 U/ml IFN−αなし(白棒)またはあり(黒棒)で、48時間前処理した。エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性を、300μmol/L [3H]AMPを用いることでアッセイし、縦軸を、1時間あたり106細胞による、基質の脱リン酸化のnmolとして表現した(平均値±SEM、n=4〜5)。コントロール細胞と比較して*P<0.05。(c)コントロール(黒丸)およびIFN−α処理HUVEC(白丸)による[3H]AMP加水分解速度対基質濃度プロット。値は、2つの独立した実験に関する、平均値±SEMとして表している。速度論的パラメータ類(VmaxおよびKm)を、示された曲線より計算し、文字で要約した。
【図8a】HUVEC単層の浸潤性に対するIFN−αの効果を示す。HUVECを、多孔性ポリスチレン膜(0.4μmの孔径)上に撒き、コンフルエントまで増殖させた。HUVECを培地中で増殖させ、100U/ml IFN−αで、72時間処理した。AMPを加えた15分後、膜機能を、70kDa FITC−デキストランの、HUVEC単層を介した、フルオロメーターを備えた下チャンバーへの流束を測定することによって解析した。FITC−デキストラン流束は100分まで測定した。値は、平均値±SEM、n=3である。IFN−α処理細胞と比較して*P<0.05。
【図8b】HUVEC単層の浸潤性に対するIFN−αの効果を示す。コンフルエント単層を、FITC−デキストランの添加30分前に、特異的エクト−5’−ヌクレオチダーゼ阻害剤であるAMPCP(100μM)に暴露した。示したデータは、平均値±SEM、n=3である。IFN−α処理細胞と比較して*P<0.05。
【図9】IFN−βおよび−γでのインキュベーション後の、ヒト臍帯内皮細胞におけるCD73アップ−レギュレーションを描写している代表的なヒストグラムである。インキュベーションの20時間の間、IFN−βが、26から50まで、平均蛍光強度(MFI)を増加させ、一方、インキュベーションの48時間の間、IFN−γは、MFIを26から94までアップ−レギュレートした。X−軸は、ログスケールの蛍光強度であり、y−軸は細胞の総対数である。
【図10】アデノシンレベルを調節している代謝経路を示す。アデノシンの形成および分解を導く酵素反応を描写している。アデノシンの量は、1.CD73の量をアップレ−ギュレートすること/増加すること、2.さらにAMPを提供すること、3.アデニル酸キナーゼを阻害すること、および4.アデノシンデアミナーゼを阻害すること、またはこれらの組み合わせによって上昇させることができる。
【図11】IFN−ベータおよびAMP治療なし(A)またはあり(B)での、多重臓器不全のラットの肺の、ホルマリン固定パラフィン包埋切片の、ヘマトキシリン−エオシン染色を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に、有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせを投与することによって、該個体におけるアデノシンのレベルの上昇を誘導する方法。
【請求項2】
アデノシンのレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項3記載の方法。
【請求項5】
個体に有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせを投与することによって、該個体におけるアデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法。
【請求項6】
アデノシンのレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項5記載の方法。
【請求項7】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項7記載の方法。
【請求項9】
疾患または障害が
a)組織外傷
b)心筋梗塞または脳卒中、臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害、
c)癌または癌転移、または
d)炎症症状
である請求項5記載の方法。
【請求項10】
有効量のアデノシン一リン酸が個体に投与される請求項5記載の方法。
【請求項11】
AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤が投与される請求項5記載の方法。
【請求項12】
アデノシンの分解を防止するアデノシンデアミナーゼ阻害剤が投与される請求項5記載の方法。
【請求項13】
疾患または障害が組織外傷、心筋梗塞または脳卒中に起因する再灌流傷害、癌または癌転移、または炎症性疾患であって、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、患者が治療を受け次第開始される請求項9、10、11または12記載の方法。
【請求項14】
疾患または障害が臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害であり、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、外科手術の前に開始される請求項9、10、11または12記載の方法。
【請求項15】
個体に有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法。
【請求項16】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項15記載の方法。
【請求項17】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項16記載の方法。
【請求項18】
個体に有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することにより、該個体における内皮CD73発現のアップ−レギュレートを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法。
【請求項19】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項18記載の方法。
【請求項20】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項19記載の方法。
【請求項21】
個体におけるアデノシンレベルの上昇を誘導するために有用な医薬組成物の製造のための、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせの使用。
【請求項22】
アデノシンレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項21記載の使用。
【請求項23】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項23記載の使用。
【請求項25】
個体におけるアデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療のために有用な医薬組成物の製造のための、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせの使用。
【請求項26】
アデノシンレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項25記載の使用。
【請求項27】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項25または26記載の使用。
【請求項28】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項27記載の使用。
【請求項29】
疾患または障害が
a)組織外傷
b)心筋梗塞または脳卒中、臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害、
c)癌または癌転移、または
d)炎症症状
である請求項25記載の使用。
【請求項30】
有効量のアデノシン一リン酸が個体に投与される請求項25記載の使用。
【請求項31】
AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤が投与される請求項25記載の使用。
【請求項32】
アデノシンの分解を防止するアデノシンデアミナーゼ阻害剤が投与される請求項25記載の使用。
【請求項33】
疾患または障害が組織外傷、心筋梗塞または脳卒中に起因する再灌流傷害、癌または癌転移、または炎症性疾患であって、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、患者が治療を受け次第開始される請求項29、30、31または32記載の方法。
【請求項34】
疾患または障害が臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害であり、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、外科手術の前に開始される請求項29、30、31または32記載の方法。
【請求項35】
個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法において有用な医薬組成物の製造のための、サイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子の使用。
【請求項36】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項35記載の使用。
【請求項37】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項36記載の使用。
【請求項38】
個体における内皮CD73発現のアップ−レギュレートを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法において有用な医薬組成物の製造のための、サイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子の使用。
【請求項39】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項38記載の方法。
【請求項40】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項39記載の方法。
【請求項1】
個体に、有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせを投与することによって、該個体におけるアデノシンのレベルの上昇を誘導する方法。
【請求項2】
アデノシンのレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項3記載の方法。
【請求項5】
個体に有効量の、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせを投与することによって、該個体におけるアデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法。
【請求項6】
アデノシンのレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項5記載の方法。
【請求項7】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項7記載の方法。
【請求項9】
疾患または障害が
a)組織外傷
b)心筋梗塞または脳卒中、臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害、
c)癌または癌転移、または
d)炎症症状
である請求項5記載の方法。
【請求項10】
有効量のアデノシン一リン酸が個体に投与される請求項5記載の方法。
【請求項11】
AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤が投与される請求項5記載の方法。
【請求項12】
アデノシンの分解を防止するアデノシンデアミナーゼ阻害剤が投与される請求項5記載の方法。
【請求項13】
疾患または障害が組織外傷、心筋梗塞または脳卒中に起因する再灌流傷害、癌または癌転移、または炎症性疾患であって、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、患者が治療を受け次第開始される請求項9、10、11または12記載の方法。
【請求項14】
疾患または障害が臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害であり、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、外科手術の前に開始される請求項9、10、11または12記載の方法。
【請求項15】
個体に有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法。
【請求項16】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項15記載の方法。
【請求項17】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項16記載の方法。
【請求項18】
個体に有効量のサイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子を投与することにより、該個体における内皮CD73発現のアップ−レギュレートを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法。
【請求項19】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項18記載の方法。
【請求項20】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項19記載の方法。
【請求項21】
個体におけるアデノシンレベルの上昇を誘導するために有用な医薬組成物の製造のための、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせの使用。
【請求項22】
アデノシンレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項21記載の使用。
【請求項23】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項23記載の使用。
【請求項25】
個体におけるアデノシンレベルの上昇を必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療のために有用な医薬組成物の製造のための、i)組換えタンパク質CD73、またはii)サイトカインまたは内皮CD73発現が誘導可能である他の因子のいずれか、またはそれらの組み合わせの使用。
【請求項26】
アデノシンレベルの上昇が、個体に有効量のサイトカインを投与することにより、該個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートすることで達成される請求項25記載の使用。
【請求項27】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項25または26記載の使用。
【請求項28】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項27記載の使用。
【請求項29】
疾患または障害が
a)組織外傷
b)心筋梗塞または脳卒中、臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害、
c)癌または癌転移、または
d)炎症症状
である請求項25記載の使用。
【請求項30】
有効量のアデノシン一リン酸が個体に投与される請求項25記載の使用。
【請求項31】
AMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)へ変換するのを防止する、アデニル酸キナーゼ阻害剤が投与される請求項25記載の使用。
【請求項32】
アデノシンの分解を防止するアデノシンデアミナーゼ阻害剤が投与される請求項25記載の使用。
【請求項33】
疾患または障害が組織外傷、心筋梗塞または脳卒中に起因する再灌流傷害、癌または癌転移、または炎症性疾患であって、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、患者が治療を受け次第開始される請求項29、30、31または32記載の方法。
【請求項34】
疾患または障害が臓器移植または他の外科手術に起因する再灌流傷害であり、組換えタンパク質CD73またはサイトカインまたは他の因子またはそれらの組み合わせの投与が、外科手術の前に開始される請求項29、30、31または32記載の方法。
【請求項35】
個体における内皮CD73発現をアップ−レギュレートする方法において有用な医薬組成物の製造のための、サイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子の使用。
【請求項36】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項35記載の使用。
【請求項37】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項36記載の使用。
【請求項38】
個体における内皮CD73発現のアップ−レギュレートを必要とする、またはそれによって利益を得る疾患または障害の予防または治療方法において有用な医薬組成物の製造のための、サイトカインまたは内皮CD73発現を誘導可能な他の因子の使用。
【請求項39】
サイトカインがインターフェロンまたはインターロイキンである請求項38記載の方法。
【請求項40】
インターフェロンがインターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはそれらの任意のサブタイプである請求項39記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−522075(P2006−522075A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505622(P2006−505622)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000158
【国際公開番号】WO2004/084933
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504459559)ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000158
【国際公開番号】WO2004/084933
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504459559)ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア (9)
【Fターム(参考)】
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