説明

CD99アンタゴニストを用いる慢性関節リウマチの処置

本発明は、慢性関節リウマチおよびその症状を処置する新規な方法ならびに慢性関節リウマチおよびその臨床症状の処置において有用な薬物を同定およびスクリーニングする新規な方法を含む。ヒトリウマチ関節のコンピュータモデルの標的化操作は、一部の癌に対する効果を有することが既知である接着分子、CD99の活性が慢性関節リウマチの病態生理学に著しい影響を有するという驚くべき結果を提供した。CD99の活性の阻害は、慢性関節リウマチの症状を軽減することが予想される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(I.緒言)
(A.関連出願)
本出願は、2003年9月11日に提出され、本明細書中に参考として援用される米国特許仮出願番号60/502,345の利益を請求する。
【0002】
(B.発明の分野)
本発明は、慢性関節リウマチを処置する新規な方法および慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(C.発明の背景)
100を超える種類の関節炎があり、そのうち慢性関節リウマチは最も痛く壊滅的な種類である。関節の一般的な疾患である慢性関節リウマチは、200万人を超えるアメリカ人に影響を及ぼしている自己免疫疾患であり、男性よりも女性の間で発生率が著しく高い。慢性関節リウマチでは、関節を裏打ちする膜または組織(滑膜)が炎症(滑膜炎)を起こすようになる。時間と共に炎症は関節組織を破壊して、身体障害を引き起こす。慢性関節リウマチは体の複数の臓器に影響を及ぼしうるため、慢性関節リウマチは全身病と呼ばれ、時にはリウマチ様疾患と呼ばれる。リウマチ様疾患の発症は通常は中年においてであるが、その20代または30代に頻繁に発生する。
【0004】
リウマチ様疾患に関連する疼痛および全身(全身性)症状は、身体に障害を引き起こすことがある。時間と共に慢性関節リウマチは関節破壊を生じて、変形および日常活動の困難につながる。慢性関節リウマチを患った人々が、疼痛および進行性身体障害によって引き起こされるある程度の鬱病に苦しむことは珍しいことではない。ある研究は、慢性関節リウマチを患った人々の4分の1がその診断の6〜7年後に働くことができず、半分が20年後に働くことができないということを報告している(O’Dell JR(2001).Rheumatoid arthritis:The clinical picture.In WJ Koopman,ed.,Arthritis and Allied Conditions:A Textbook of Rheumatology,14th ed.,vol.1,chap.58,pp.1153−1186.Philadelphia:Lippincott Williams and Wilkins)。慢性関節リウマチなどの筋骨格状態は、逸失賃金および生産などの間接出費として、米国経済に毎年650億円近くを費やさせている。
【0005】
滑膜炎症、軟骨の急速な破壊および罹患関節における骨の侵食が慢性関節リウマチ(RA)の特徴である。近年の証明により、骨格組織の破壊および炎症がリウマチ関節における重複しているが同一でない生物プロセスによって調節されることと、これらの2つの局面に対する治療効果が相関する必要がないこととが示されている。関節における生物プロセスの複雑さのために、数学およびコンピュータモデルの使用は、種々の組織対応物、細胞タイプ、メディエータ、関節疾患および健全なホメオスタシスに関与する他の因子間の相互作用をよりよく理解するのに役立つ。複数の研究者が、慢性関節リウマチの生物プロセスではなくむしろ、関節の機械的環境の簡単なモデルを構築して、結果を軟骨および骨の疾患および発育のパターンと比較した(Wynarsky & Greenwald,J.Biomech.,16:241−251,1983;Pollatschek & Nahir,J.Theor.Biol.,143:497−505,1990;Beaupre et al.,J.Rehabil.Res.Dev.,37:145−151,2000;Shi et al.,Acta Med.Okayama,17:646−653,1999)。コンピュータで扱うことができる関節疾患の数学モデルは、滑膜を含む複数のコンパートメントを含み、これらのコンパートメントの相互作用は、2002年12月5日に公開された国際公開番号WO02/097706および2003年4月24日に2003−0078759として公開された米国特許出願番号10/154,123に述べられている。どちらの公報も参考としてその全体が援用される。
【0006】
慢性関節リウマチは、現在、制御できるが治癒できない慢性疾患である。処置の目標は、症状の軽減および疾患を悪化させないことである。慢性関節リウマチの大半の処置の目標は、疼痛を軽減し、炎症を減少させ、関節損傷の進行を遅延または停止させて、人が機能する能力を改善することである。処置への現在の手法は、ライフスタイルの変化、薬剤、外科手術、ならびに日常的監視およびケアを含む。慢性関節リウマチの処置に使用される薬剤は、疾患の進行に影響を与える方法に基づいて2つの群:(1)症状緩和薬および(2)疾患改変薬に分類できる。
【0007】
症状、例えば、疼痛、硬直、および腫脹を軽減するための薬剤が使用される。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、およびナプロキセン)は、疼痛を制御するために使用され、炎症を減少させるのに役立つ。これらの抗炎症薬は、疾患を制御せず、または疾患が悪化するのを停止しない。コルチコステロイド、例えば、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾロン(メドロール)は、疼痛を制御して、炎症を減少させるために使用する。それらは疾患を制御して、疾患が悪化するのを停止させる;しかしながら、コルチコステロイドを長期に亘る唯一の療法として使用することは、最良の処置とは見なされない。コルチコステロイドは、最大6ヶ月かかりうる抗リウマチ薬がその全有効性に達するときまで、関節炎症の拡大を制御するために使用されることが多い。非処方薬剤(例えば、アセトアミノフェン)および局所用薬剤(例えば、カプサイシン)は疼痛を制御するために使用されるが、通常、関節腫脹または疾患の悪化に影響を及ぼさない。
【0008】
疾患改変抗リウマチ薬(DMARD)は、慢性関節リウマチの進行を制御し、関節破壊および身体障害の防止を試みるために使用される。これらの抗リウマチ薬は、他の抗リウマチ薬と、または他の薬剤、例えば、非ステロイド性抗炎症薬と組合せて投与されることが多い。慢性関節リウマチに一般に処方される疾患改変抗リウマチ薬としては、抗マラリア薬剤、例えば、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)またはクロロキン(アラレン)、メトトレキサート、例えば、リウマトレックス、スルファサラジン(アザルフィジン)、レフルノミド(アラバ)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、およびアナキンラ(キネレット)が挙げられる。慢性関節リウマチにはあまり一般的に処方されないDMARDは、アザチオプリン(イムラン)、ペニシラミン(例えば、キュプリミンまたはデペン)、金塩(例えば、リドーラまたはAurolate)、ミノサイクリン(例えば、ダイナシンまたはミノシン)、シクロスポリン(例えば、ネオーラルまたはサンディミュン)、およびシクロホスファミド(例えば、シトキサンまたはネオサル)を含む。これらの抗リウマチ薬は、作用するまで最大6ヶ月かかることがある。多くは重篤な副作用を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ慢性関節リウマチの処置のための新しい、治療的に有効な薬物への要求はもちろんのこと、そのような薬物を同定する新しい方法への要求も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(D.発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、慢性関節リウマチを有する患者にCD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供する。CD99活性のアンタゴニストは、タンパク質、核酸または小分子インヒビターでありうる。「小分子」は本明細書では、1000ダルトン未満の分子量を有する分子として定義される。好ましいタンパク質アンタゴニストは、モノクローナル抗体である。好ましい核酸アンタゴニストは、CD99をコード化する遺伝子、mic2のアンチセンスインヒビターを含む。好ましい実施形態において、患者は、メトトレキサート耐性患者、TNF−α遮断軟骨不応答者(CNR)、TNF−α遮断過形成不応答者(HNR)、またはTNF−α遮断二重不応答者(DNR)である。
【0011】
本発明の別の局面は、異常に上昇した滑膜細胞密度に関連する状態を有する患者にCD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、関節内の滑膜細胞の密度を低下させる方法を提供する。
【0012】
本発明は、異常に高い割合の軟骨破壊に関連する状態を有する患者にCD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、関節内の軟骨破壊を減少させる方法も提供する。
【0013】
本発明の局面は、滑膜組織中のIL−6の異常に高い濃度に関連する状態を有する患者にCD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、滑膜組織中のIL−6濃度を低下させる方法を提供する。
【0014】
本発明の別の局面は、異常に高い割合の骨びらんに関連する状態を有する患者にCD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与することを含む、関節内の骨びらんを低減する方法を提供する。
【0015】
別の局面において、本発明は、炎症性疾患を有する患者にCD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、炎症性疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供する。好ましい実施形態において、炎症性疾患は、糖尿病、動脈硬化症(artheriosclerosis)、炎症性大動脈瘤、再狭窄、虚血/再潅流傷害、糸球体腎炎、再狭窄、再潅流傷害、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、ライター症候群、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、股関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、骨盤腹膜炎、多発性硬化症、糖尿病、骨髄炎、癒着性関節包炎、少数関節炎、変形性関節炎、関節周囲炎、多発性関節炎、乾癬、スティル病、滑膜炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、骨粗鬆症、および炎症性皮膚疾患からなる群より選択される。さらに好ましくは、炎症性疾患は、関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎(psoratic arthritis)、股関節炎、骨関節炎、または多発性関節炎である。最も好ましくは、炎症性疾患は慢性関節リウマチである。
【0016】
本発明のなお別の局面は、化合物をCD99活性のアンタゴニストとして同定する方法であって:(a)該化合物の存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量を、該化合物の非存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量と比較する工程と;(b)該化合物の存在下で移動する白血球の量が、該化合物の非存在下で移動する白血球の量より少ないときに、該化合物をCD99活性のアンタゴニストとして同定する工程と;を含む方法を提供する。好ましい実施形態において、内皮細胞は、場合によりインターロイキン−1の腫瘍壊死因子によって刺激された、培養ヒト臍静脈内皮細胞である。別の好ましい実施形態において、内皮細胞の少なくとも1つの層は内皮細胞の単層である。本発明の別の局面は、CD99活性のアンタゴニストを同定する工程と、同定されたアンタゴニストをヒトが消費するために配合する工程とを含む、慢性関節リウマチの処置で使用する薬物を製造する方法を含む。好ましい実施形態において、白血球は単球またはT細胞のどちらかである。
【0017】
本発明の局面は、炎症性疾患の処置に有用な化合物を同定する方法であって:(a)該化合物の存在下でのCD99活性の量を該化合物の非存在下でのCD99活性の量と比較する工程と;(b)該化合物の存在下でのCD99活性の量が、該化合物の非存在下でのCD99活性の量より少ないときに、該化合物を炎症性疾患の処置に有用であるとして同定する工程と;を含む方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定する方法であって:(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を、該化合物の非存在下でのT細胞の第2の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量と比較する工程と;(b)該化合物の存在下で産生されたT細胞サイトカインの量が、該化合物の非存在下で産生されたT細胞サイトカインの量より少ないときに、慢性関節リウマチの処置に有用であるとして同定する工程と;を含む方法を提供する。本発明の1つの実施形態において、T細胞サイトカインはTh1サイトカインである。好ましくは、測定されたTh1サイトカインはTNF−αまたはIFNγである。本発明の別の実施形態は、CD99活性のアンタゴニストを同定する工程と、同定されたアンタゴニストをヒトが消費するために調剤する工程とを含む、慢性関節リウマチの処置に使用する薬物を製造する方法を含む。
【0019】
本発明の別の局面は、慢性関節リウマチの処置に有用な薬物を同定する方法であって:(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団から増殖したT細胞の数を、該化合物の非存在下でT細胞の第2の集団から増殖したT細胞の数と比較する工程であって、非ブロッキング抗CD99抗体による刺激および化合物への曝露前には第1の集団および第2の集団におけるT細胞の数が同じである、工程と;(b)該化合物の存在下で発現したT細胞の数が、該化合物の非存在下で増殖したT細胞の数よりも少ないときに、該化合物をCD99活性のアンタゴニストとして同定する工程と;を含む方法を提供する。本発明の別の実施形態は、CD活性のアンタゴニストを同定する工程と、同定されたアンタゴニストをヒトが消費するために配合する工程とを含む、慢性関節リウマチの処置に使用する薬物を製造する方法を含む。
【0020】
本発明のなお別の局面は、慢性関節リウマチの処置に使用する化合物の集合をスクリーニングする方法であって:(a)該集合の化合物の存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量を、該化合物の非存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量と比較する工程と;(b)該化合物の存在下で移動する白血球の量が、該化合物の非存在下で移動する白血球の量よりも少ないときに、該化合物をCD99活性のアンタゴニストとして選択する工程と;を含む方法を提供する。好ましくは、これらの工程は集合の各化合物について反復され、集合の少なくとも1つの化合物がCD99活性のアンタゴニストとして選択される。
【0021】
本発明のなお別の局面は、慢性関節リウマチの処置に使用する化合物の集合をスクリーニングする方法であって、(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団によって産生されたTh1サイトカインの量を、該化合物の非存在下でT細胞の第2の集団によって産生されたTh1サイトカインの量と比較する工程と;(b)該化合物の存在下で産生されたTh1サイトカインの量が、該化合物の非存在下で産生されたTh1サイトカインの量よりも少ないときに、該化合物をCD99活性のアンタゴニストとして同定する工程と;を含む方法を提供する。好ましくは測定されたTh1サイトカインは、TNF−αおよびIFNγである。
【0022】
本発明の局面は、炎症性疾患の処置に有用な化合物を同定する方法であって:(a)該化合物の存在下でのCD99活性の量を該化合物の非存在下でのCD99活性の量を比較する工程と;(b)該化合物の存在下でのCD99活性の量が、該化合物の非存在下でのCD99活性の量よりも少ないときに、該化合物を炎症性疾患の処置に有用であるとして同定する工程と;を含む方法を提供する。
【0023】
(II.図面の簡単な説明)
本発明のある実施形態の性質および目的をさらに理解するために、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照すべきである。
【0024】
(III.詳細な説明)
(A.概要)
一般に本発明は、炎症性疾患、例えば、慢性関節リウマチを処置する新規な方法、および炎症性疾患およびその臨床症状の処置に有用な薬物を同定およびスクリーニングする新規な方法を含むとして見ることができる。ヒトリウマチ関節のコンピュータモデルの使用を通して、本発明者らは、一部の癌に対して効果を有することが既知である接着分子、CD99の活性が慢性関節リウマチの病態生理学に著しい影響を有することを発見した。CD99の活性の阻害は、炎症性疾患、例えば、慢性関節リウマチの症状を軽減することが予測される。
【0025】
(B.定義)
「滑膜組織におけるIL−6の異常に高い濃度」という用語は、本明細書で使用するように、正常な非罹患関節で見られるレベルより、標準偏差の少なくとも3倍高い罹患関節の滑膜組織におけるIL−6のレベルを指す。
【0026】
「異常に高い割合の骨びらん」という用語は、本明細書で使用するように、標準X線撮影方法によって決定される骨の少なくとも1つの寸法の検出可能な減少を指す。
【0027】
「異常に高い割合の軟骨破壊」という用語は、本明細書で使用するように、標準X線撮影方法によって決定される、検出可能な関節空間の狭窄を指す。非罹患関節では、狭窄は検知できない。
【0028】
「異常に上昇した滑膜細胞密度」という用語は、本明細書で使用するように、関節の滑膜組織が、正常な、すなわち非罹患関節の滑膜組織に見られる滑膜細胞の数の少なくとも10倍である多数の滑膜細胞を含有する状態を指す。
【0029】
「投与する工程」は、当業者に既知の医薬組成物を投与する標準方法のいずれかを意味する。例としては、静脈内、筋肉内または腹腔内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「CD99活性のアンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用するように、慢性関節リウマチに関連することが示されたCD99の4つ生物活性:(1)単球補充、(2)T細胞増殖、(3)T細胞活性化および(4)T細胞補充のいずれか1つを阻害する特性を指す。阻害は、拮抗性であるために、阻害は100%有効である必要はない。
【0031】
「薬物」という用語は、既知または未知の生物機構によって生体系に影響を及ぼしうる、治療的に使用されるまたは使用されない、いずれかの程度の複雑さの化合物を指す。薬物の例は、研究または治療上の興味がある代表的な小分子;天然に存在する因子(例えば、エンドクリン、パラクリン、またはオートクライン因子)、抗体、あるいはいずれかの種類の細胞レセプターと相互作用する因子;細胞内因子(例えば、細胞内シグナル伝達経路の要素;他の天然源から単離された因子);農薬;除草剤;および殺虫剤を含む。薬物は、遺伝子療法で使用される薬剤、例えば、DNAおよびRNAも含む。また抗体、ウィルス、細菌、ならびに細菌およびウィルスによって産生された生物活性剤(例えば、毒素)も薬物と見なすことができる。薬物に対する応答は、例えば、RNAの1つ以上の種の転写または分解における薬物媒介変化、1つ以上のポリペプチドの翻訳または翻訳後処理の割合または程度における薬物媒介変化、1つ以上のタンパク質の分解の割合または程度における薬物媒介変化、1つ以上のタンパク質の作用または活性の薬物媒介阻害または刺激などの結果でありうる。ある例において、薬物は、タンパク質と相互作用することによってその効果を働かせることができる。ある用途では、薬物は例えば、1つ以上の薬物を含む組成物または1つ以上の薬物および1つ以上の賦形剤を含む組成物を含むこともできる。
【0032】
「炎症性疾患」は、以下のいずれか1つ:炎症性応答のトリガ;炎症性カスケードのいずれかのメンバーのアップレギュレーション;炎症性カスケードのいずれかのメンバーのダウンレギュレーションを特徴とする、さまざまな疾患および障害のクラスを指す。炎症性疾患は、糖尿病、動脈硬化症(artheriosclerosis)、炎症性大動脈瘤、再狭窄、虚血/再潅流傷害、糸球体腎炎、再狭窄、再潅流傷害、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、ライター症候群、乾癬性関節炎(psoratic arthritis)、強直性脊椎炎、股関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、骨盤腹膜炎、多発性硬化症、糖尿病、骨髄炎、癒着性関節包炎、少数関節炎、変形性関節炎、関節周囲炎、多発性関節炎、乾癬、スティル病、滑膜炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、骨粗鬆症、および炎症性皮膚疾患を含む。単数形の用語「炎症性疾患」は、炎症性疾患のクラスから選択されるいずれかの1つ以上の疾患を含み、疾患状態の成分が炎症性疾患のクラスから選択される疾患を含み、そしていずれかの複合および複雑な疾患状態を含む。
【0033】
「関節」という用語は、本明細書で使用するように、滑膜組織、滑膜液、関節軟骨、骨組織、ならびにその細胞および細胞外構成物、そしてそれらが含有する溶解性メディエータを含む。
【0034】
「メトトレキサート不応答者」という用語は、メトトレキサート処置に効果的に応答しない、またはメトトレキサートに最初は応答するが、時間が経つにつれて不応となる慢性関節リウマチ患者を指す。
【0035】
「TNF−α遮断軟骨不応答者」という用語は、TNF−α遮断に応答して、低下した滑膜過形成を示すが、軟骨破壊の最小限の低下を示す、低い初期TNF−α活性を有する慢性関節リウマチ患者を指す。
【0036】
「TNF−α遮断過形成不応答者」という用語は、TNF−α遮断に応答して、軟骨破壊の改善を生じるが、滑膜過形成のわずかな低下を生じる、異常に高いまたは耐性レベルのTNF−α活性を有する慢性関節リウマチ患者を指す。
【0037】
「TNF−α遮断二重不応答者」という用語は、TNF−α遮断に応答して、滑膜過形成および軟骨破壊の両方で低い応答を示す、無視できる初期TNF−α活性を有する慢性関節リウマチ患者を指す。
【0038】
「患者」という用語は、いずれかの温血動物、好ましくはヒトを指す。慢性関節リウマチを有する患者は、慢性関節リウマチと診断された患者、慢性関節リウマチに関連する症状の1つ以上を示す患者、あるいは慢性関節リウマチを発症するリスクに向かって進行している、またはリスクに瀕している患者を含むことができる。
【0039】
本発明の薬物の「治療有効量」は本明細書で使用するように、リウマチ関節における滑膜細胞の増加またはリウマチ関節での軟骨破壊率の低下または滑膜組織でのIL−6濃度の低下または骨びらん率の低下を示し、それにより慢性関節リウマチに関連する疼痛および炎症の後退および緩和を引き起こす、化合物の量を意味するものである。
【0040】
(C.慢性関節リウマチ関節のインシリコモデル化)
本発明は、関節炎関節のインシリコモデルから得た結果を利用する。モデルは、慢性関節リウマチに罹患したヒト関節の生物学的状態に関連する動的過程の数学的表現を提供する。コンピュータモデルに含まれる主なコンパートメントは、この原型的な慢性関節リウマチ関節の軟骨−パンヌス接合部における滑膜組織および軟骨を表現する。現在のモデルは、以下を含む、軟骨代謝、組織炎症および組織過形成に関与する過程に関連する種々の生物学的変数を考慮する:
・補充、活性化、増殖、アポトーシスおよびその調節を含むマクロファージ個体群動態
・補充、抗原依存性および抗原独立性活性化、増殖、アポトーシスおよびその調節を含むT細胞個体群動態
・組織での流入、増殖およびアポトーシスならびにその調節を含む線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)個体群動態
・増殖およびアポトーシスを含む軟骨細胞個体群動態
・表現された異なるT細胞型による(マクロファージ、FLS、T細胞、軟骨細胞)成長因子、サイトカイン、ケモカイン、タンパク質分解酵素およびマトリクスタンパク質を含む、種々のタンパク質の合成および調節
・滑膜組織と軟骨との間でのメディエーターの内皮細胞拡散による接着分子の発現
・サイトカインまたはプロテアーゼおよびその天然インヒビターとの間の相互作用、抗原提示
・細胞メディエーター(抗TNF−α剤(例えば、エタネルセプトおよびインフリキシマブ)およびIL−1 RAアンタゴニスト(例えば、アナキンラ))への治療薬剤の結合。
このモデルは、滑膜組織密度および血管体積もモニターする。さらに、数学モデルは治療薬剤(例えば、メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、溶解性TNF−αレセプター、TNF−α抗体およびインターロイキン−1レセプターアンタゴニスト)の効果を考慮できる。
【0041】
インシリコモデル化は、システムの制御原理を再現するために関連する生物学的−ゲノム、プロテオミクスおよび生理学的−データをコンピュータベースのプラットフォームに統合する手法である。定義された疾患状態の初期条件のセットを考えると、これらのコンピュータモデルは、システムの将来の生物学的挙動、バイオシミュレーションと呼ばれる過程をシミュレートできる。
【0042】
(1.慢性関節リウマチモデル化のトップダウン手法)
本発明のコンピュータモデルは、慢性関節リウマチを示す挙動の一般的なセットを定義することによって開始した「トップダウン」手法を使用して構築した。これらの挙動は、次にシステムへの制約として使用され、内在する詳細の次のレベルを定義するために、ネスト化されたサブシステムのセットが開発される。例えば、慢性関節リウマチにおける軟骨破壊の挙動を考えると、その挙動を含む特定の機構が次にそれぞれモデル化され、サブシステムのセットを生じ、それ自体は分解され、細部にわたってモデル化される。したがってこれらのサブシステムの制御および状況は、システムの動態を全体として特徴付ける挙動によってすでに定義されている。分解過程は、慢性関節リウマチの既知の生物学的挙動を反復するのに十分な詳細が存在するまで、トップダウンからより多くの生物学的モデル化を継続する。
【0043】
トップダウン手法を使用するときに、(1)基本生物学を説明する、(2)システム全体の生理的機能または挙動を説明する、という2つの具体的な目的を支持するために、公開データおよび独占データが識別および収集される。システム全体の生理的機能または挙動を説明するデータは、モデル開発の早期に選択される。これらのデータは、モデルシステムの広範囲に亘る挙動、例えば、慢性関節リウマチ患者の測定値(挙動)としての軟骨破壊を表す。これらのデータは、十分に確立された臨床試験に基づくヒトインビボデータである。基本生物学を説明するデータは、選択した挙動をシミュレートするのに必要なサブシステムを十分にモデル化するために選択される。これらのデータは、内在する生物学の知識を提供する、ヒトまたは動物(ヒトが好ましいが、必ずしも利用可能ではない場合)のインビボデータ、インビトロデータまたはエクスビボデータでありうる。
【0044】
このモデル化手法は、サブシステムレベルで生物学を操作して、シミュレートされた挙動をシステムレベルで観察することによって、研究者に「仮定...」シナリオを提示および迅速に開発させる。この手法を通じて、研究者は、一般に受入れられているが、なお証明されていない仮説との不一致を発見し、科学者が利用可能なおびただしい量のインビトロデータおよびインビボデータからの重要な知識ギャップを識別することができる。不一致および知識ギャップが識別されるときに、モデルを使用すると、より焦点の合った、よりよく設計された具体的なデータ収集作業に注力することができ、それらはさらに予測的で効率的に利用されるデータを生じる。
【0045】
トップダウン手法は、ヒト関節における慢性関節リウマチのモデルを開発するのに使用された。同様のモデルは、2003年4月24日に2003−0078759として公開された、同時係属U.S.patent application 10/154,123で述べられている。現在のモデルでは、4つの重要な臨床結果:滑膜細胞密度、軟骨破壊率、滑膜組織中のIL−6のレベルおよび骨びらん率に特に興味がある。慢性関節リウマチは、末梢血中の炎症誘発性サイトカイン、特にIL−6のレベル上昇を伴う全身性炎症性疾患である:C応答性タンパク質(CRP)は、血漿中で日常的に測定される炎症の一般的なマーカーであり、複数の研究が慢性関節リウマチ患者でのIL−6濃度とCRP濃度の相関を示している。したがって関節中または血漿中のどちらかのIL−6濃度は、炎症の良好なマーカーとなる。
【0046】
(2.感受性解析)
疾患の内在する生物学の明示的な表現は、特定の臨床結果、例えば、軟骨破壊または滑膜細胞密度に対して最も影響のあるサブシステムを識別するために、単独でのまたは組合された各サブシステムの調節を可能にする。表現型開始および進行または慢性関節リウマチに最大の影響を持つこれらのサブシステムのモデル化およびデータ収集作業に集中することによって、この手法は、システムの複雑さをさらに明確に表現して、慢性関節リウマチの病態生理学に内在する原因因子を識別するのに役立つ。インシリコで各システムを調節する(例えば、1つの細胞種または細胞間メディエーターをノックアウトする、あるいは1つの特定の生物プロセスを遮断する)ことによって、慢性関節リウマチを促進する生物学的現象をよりよく理解し、それゆえ最良の、最も関連する標的を識別するために、疾患病態生理学全体へのその寄与を評価することができる。
【0047】
慢性関節リウマチの場合、疾患状態は、例えば、疾患状態を引き起こす、疾患状態に影響を及ぼす、または疾患状態によって改変される1つ以上の生物プロセスを示すことのできる酵素活性、生成物形成動態および細胞機能に関連するアウトプットとして表現できる。通例、コンピュータモデルのアウトプットは、生物学的構成要素のレベルまたは活性あるいは疾患状態の他のいずれかの挙動を示す値のセットを含む。これらのアウトプットに基づいて、1つ以上の生物プロセスを重要な生物プロセスと呼ぶことができる。
【0048】
コンピュータモデルは、1つ以上の生物プロセスへの改変を表すために実行できる。特に生物プロセスへの改変は、生物プロセスと慢性関節リウマチとの間の関連度(例えば、相関度)を識別するためにコンピュータモデルにて表現できる。例えば、生物プロセスへの改変は、生物プロセスが慢性関節リウマチを発症させる、慢性関節リウマチに影響を及ぼす、または慢性関節リウマチによって改変される程度を識別するために、コンピュータモデルにて表現できる。生物プロセスは、慢性関節リウマチに関連する症状、例えば、滑膜組織での滑膜細胞密度、軟骨破壊およびIL−6レベルの上昇を生じさせるこの生物プロセスへの改変が観察された場合に、慢性関節リウマチを引き起こすとして識別できる。ある例において、生物プロセスへの改変は、他の生物プロセスと慢性関節リウマチとの間の関連度を識別するために、コンピュータモデルにて表現できる。
【0049】
いくつかの例において、生物プロセスのセットを識別することは、感受性解析を含むことができる。感受性解析は、疾患状態に関連する生物プロセスの優先順位決定を含むことができる。感受性解析は、この優先順位決定の頑強さを判定するために、コンピュータモデルの種々の構成を用いて実施できる。いくつかの例において、感受性解析は、疾患状態との関連度に基づいた生物プロセスの順位序列を含むことができる。感受性解析によって、ユーザは疾患状態の状況における生物プロセスの重要性を決定できる。非常に重要な生物プロセスの例は、疾患状態の重篤度を上昇させる生物プロセスである。それゆえこの生物プロセスの阻害は、疾患状態の重篤度を低下させることができる。生物プロセスの重要性は、その生物プロセスと疾患状態との間の関連の存在だけでなく、疾患状態の重篤度において変更を達成するために生物プロセスを改変しなければならない程度にも依存しうる。順位序列において、疾患状態においてより重要な役割を果たす生物プロセスは通例、より高い順位を得る。順位序列は、疾患状態においてより重要な役割を果たす生物プロセスがより低い順位を得るような逆の方法でも実施できる。通例、生物プロセスのセットは、疾患状態においてより重要な役割を果たすとして識別される生物プロセスを含む。
【0050】
慢性関節リウマチの感受性解析の処理の間に、これらに限定されるわけではないが、単球補充、T細胞補充、細胞アポトーシス、およびサイトカイン産生などの生物プロセスの活性は、コンピュータモデルで一度に1つずつ調節される(増加または減少する)。次にバイオシミュレーションが実施され、刺激または阻害の異なるレベルでの1つの生物プロセスの調節の結果が、これらに限定されるわけではないが、軟骨破壊、滑膜細胞密度およびIL−6レベルなどの臨床結果を測定することによって評価される。この解析の結果は、臨床結果に著しい影響を有する生物プロセスを識別した。
【0051】
本発明において、感受性解析は、疾患病態生理学に著しい影響を有する慢性関節リウマチの生物学の4つの分野:(1)マクロファージアポトーシス、(2)インターフェロン−ガンマ産生、(3)Th1細胞活性化ならびに(4)T細胞および単球補充を識別した。
【0052】
(3.標的の同定)
上述のモデルによって予測されたCD99活性阻害の効果に基づいて、CD99遮断は慢性関節リウマチの効果的な療法であることが予測される。
【0053】
単球補充、およびT細胞増殖、活性化および補充に対するCD99の効果は定量され、慢性関節リウマチのコンピュータモデルにおいて明示的に表現された。これらの各生物プロセスに対するCD99活性の寄与が明確に特徴付けされていないため、CD99活性の寄与を特徴付けるために一連の効果を定義した(表1)。「より低い最大効果」の値は、他のタンパク質との考えられる重複を考慮して記録された最も低い効果を表し、「より高い最大効果」は各生物プロセスに対するCD99活性の最大の考えられる効果であり、「最も有望な最大効果」は、生体内環境および重複を考慮した、各生物プロセスにおけるCD99活性の現実的な寄与の概算である。
【0054】
(表1.関節モデルに対するCD99活性の効果)
【0055】
【表1】

次に、慢性関節リウマチに対するCD99活性の効果のシミュレーションを、関連する生物プロセスすべてにおいて、いっせいに、または一度に1つの生物プロセスで、または複数の生物プロセスを組合せてCD99を遮断することによって実施した。シミュレーションの結果は、6ヶ月間のCD99活性の遮断が軟骨破壊を15〜60%、滑膜細胞過形成を40〜70%、滑膜組織中のIL−6レベルを16〜60%低下させることによって、慢性関節リウマチの臨床結果を改善することを示した。図3は、滑膜細胞密度に対するCD99活性の効果を示す。図4は、軟骨破壊に対するCD99活性の効果を示す。図5は、滑膜組織中のIL−6レベルに対するCD99活性の効果を示す。
【0056】
メトトレキサートは、慢性関節リウマチには一般的な処置である。メトトレキサート処置は、滑膜細胞密度をおおよそ30%低下させ、軟骨破壊率をおおよそ15%低下させ、滑膜組織におけるIL−6の濃度を93%低下させることが既知である。100%有効性では、コンピュータモデルはCD99拮抗作用がメトトレキサートよりも大きな改善を誘発することを予測する。モデルは、CD99活性の阻害の70%のみを引き起こす化合物が、滑膜細胞密度の低下においてメトトレキサートよりも優れており、軟骨破壊率に対してはおおよそ同じかまたは優れた効果を有することを予測している。
【0057】
一度の1つの生物プロセスにおけるCD99遮断のシミュレーションは、臨床結果に対するCD99遮断の影響を引き起こす主な生物プロセスが単球補充に対する効果であることを示した。コンピュータモデルは、単球補充に対するCD99遮断の効果が観察された臨床改善の90%超の原因であることを明らかにしている。図6は、IFNγの単球血管外遊走(単球補充)、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞産生に対するCD99遮断の相対的効果を与える。
【0058】
ある慢性関節リウマチ患者は、メトトレキサート処置(初期不応答者)に効果的に応答しないが、メトトレキサートに最初は応答した他の患者は、時間が経つにつれて不応となる(漸進的不応答者)。メトトレキサート耐性患者でのCD99活性遮断のシミュレーションは、非耐性患者とは異なる応答パターンを明らかにする。図7は、メトトレキサート耐性患者におけるIFNγの単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞産生に対するCD99遮断の相対的効果を示している。メトトレキサート耐性患者では、T細胞補充でのCD99活性は、非耐性慢性関節リウマチ患者と比較して、慢性関節リウマチの症状を引き起こすのに実質的により大きな役割を果たしている(図6を参照)。シミュレーションの結果は、メトトレキサート耐性患者における6ヶ月間のCD99活性の遮断は、軟骨破壊を12〜45%減少させ、滑膜細胞過形成を25〜50%減少させることによって、慢性関節リウマチ臨床結果を改善できることを示した。図8は、メトトレキサート耐性患者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。図9は、メトトレキサート耐性患者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【0059】
TNF−α中和療法は、慢性関節リウマチ患者の処置においてますます重要になっている。しかしながらすべての慢性関節リウマチ患者のほぼ3分の1が、TNF−α中和療法に対する臨床的に著しい応答を達成できない。TNF−α遮断不応答者の3つの潜在的なクラスが上述のモデルで定義された。滑膜過形成および軟骨破壊は、TNF−αが異なる範囲内で変化するときに異なって影響を受け、現在のモデル内での3つの不応答者クラスの識別をもたらす。特に低い初期TNF−α活性の患者は、TNF−α遮断に応答して滑膜過形成が低下、しかし軟骨破壊の最低限の減少を示すが(軟骨不応答者、すなわちCNR)、無視できる初期TNF−α活性患者は、滑膜過形成および軟骨破壊の療法で不十分な応答を示す(二重不応答者、すなわちDNR)。あるいはTNF−α活性の異常に高いかまたは耐性レベルの患者におけるTNF−αの不十分な中和は、軟骨破壊の改善を生じるが、過形成においては不十分な応答を生じる(過形成不応答者、すなわちHNR)。機械的に、低レベルのTNF−αの患者では、疾患は、代わりのマクロファージ活性化経路(例えば、CD40結合)の活性上昇、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10)の活性低下、および破壊促進サイトカイン(例えば、IL−lb)の活性上昇によって永続される。無応答患者も、IL−1Raなどの他の療法に変化した応答を示した(データは示さず)。
【0060】
TNF−α遮断CNR患者におけるCD99活性遮断のシミュレーションは、非耐性患者においてと同様の応答パターンを明らかにする。図10Aおよび10Bは、TNF−α遮断CNR患者におけるIFNγの単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞産生に対するCD99遮断の相対的効果を示す。シミュレーションの結果は、TNF−α遮断CNR患者での6ヶ月間のCD99活性の完全な遮断が軟骨破壊を11〜35%減少させ、滑膜細胞過形成を35〜61%減少させることによって、慢性関節リウマチ臨床結果を改善することを示した。図11は、TNF−α遮断CNR患者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。図12は、TNF−α遮断CNR患者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【0061】
TNF−α遮断HNR患者におけるCD99活性遮断のシミュレーションは、非耐性患者においてと同様の応答パターンを明らかにする。図13Aおよび13Bは、TNF−α遮断HNR患者におけるIFNγの単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞産生に対するCD99遮断の相対的効果を示す。シミュレーションの結果は、TNF−α遮断HNR患者での6ヶ月間のCD99活性の完全な遮断が軟骨破壊を11〜27%減少させ、滑膜細胞過形成を29〜51%減少させることによって、慢性関節リウマチ臨床結果を改善することを示した。図14は、TNF−α遮断HNR患者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。図15は、TNF−α遮断HNR患者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【0062】
TNF−α遮断DNR患者におけるCD99活性遮断のシミュレーションは、非耐性患者においてと同様の応答パターンを明らかにする。図16Aおよび16Bは、TNF−α−遮断DNR患者におけるIFNγの単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞産生に対するCD99遮断の相対的効果を示す。シミュレーションの結果は、TNF−α遮断HNR患者での6ヶ月間のCD99活性の完全な遮断が軟骨破壊を6〜38%減少させ、滑膜細胞過形成を9〜47%減少させることによって、慢性関節リウマチ臨床結果を改善することを示した。図17は、TNF−α遮断DNR患者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。図18は、TNF−α遮断DNR患者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【0063】
慢性関節リウマチのインシリコモデルの利用は、CD99活性の拮抗作用が慢性関節リウマチに罹患している患者にとって有望な治療方法であるという、驚くべき結果を与えた。
【0064】
(D.CD99)
CD99(MIC2またはE2抗原とも呼ばれる)は、mic2遺伝子によってコード化された32kD細胞表面(膜貫通)糖タンパク質である。mic2遺伝子は、一度の細胞膜に及ぶ16.7kDのI型膜貫通タンパク質を予測する。コンセンサスN結合グリコシル化部位はないが、O結合グリコシル化の複数の部位があり、32kDのCD99の見かけの分子量の14kDを説明している。CD99は、既知のタンパク質ファミリのメンバーではない。CD99は、たいていは単球、末梢T細胞(RO+のみ)、B細胞、および胸腺細胞で発現される接着分子である。
【0065】
CD99は、種々の癌、例えば、ユーイング肉腫(Scotlandi,2000)、ホジキンおよびリード・シュテルンベルグB細胞(Kim,Blood 2000)ならびに乳癌(Lee,2002)において効果を有することが証明されている。CD99の機能は、T細胞で最も良好に特徴付けられており、そこではヒツジ血液細胞ロゼット形成の現象のためのCD2への別のリガンドであることが見出された。さらに胸腺細胞およびT細胞へのCD99の結合は、あるインビトロシステムにおいて同時刺激機能を果たすことが示されている。CD99の活性は、慢性関節リウマチに関連しているとして文献に述べられていない。
【0066】
その機能はなお研究中であるが、ホモタイプ結合によって媒介されるCD99の一部の重要な効果は、慢性関節リウマチの状況に関連しうる。CD99は、CD99が接着分子として作用する内皮細胞を通じて細胞補充を引き起こすイベントのカスケードにおける工程である、漏出、すなわち経内皮移動で重要な役割を果たすことが示されている。単球漏出は、CD99活性に強く依存する。一般に漏出は、内皮細胞が例えば、TNF−α、IL−1または他の炎症誘発性メディエータによって活性化されたときに起こる。経内皮移動はまた、内皮細胞の直接活性化の非存在下でも、白血球接着の結果として、内皮細胞に亘って通常は低いレベルで内因的に発生する。それゆえ移動は、炎症性病巣にて生体内で起こる。CD99は、単球の補充にも関与する(Schenkel,2002)。
【0067】
CD99は、VCAM−1のアップレギュレーションを介したT細胞血管接着で間接的な役割も果たす。CD99はT細胞シグナル伝達(Waclavicek 1998,Wingott 1999,Bernard 2000)、T細胞の補充(Bernard,2000)、T細胞のサイトカイン産生および活性化(Waclavicek 1998,Wingott 2000)および胸腺細胞のアポトーシス(Petterson)にも関係してきた。
【0068】
多数のマウスおよびラットモノクローナル抗体がCD99の種々のエピトープに対して開発されてきたが、CD99の遮断では3つのみが試験されている。これらはHec2(Schenkel 2003)、O662(Bernard 1995,1997)、およびD44(Bernard−Boumsell)である。これらの抗体はそれぞれ、経内皮移動をある程度まで阻害する。本発明に使用できる他の抗CD99抗体としては:Hec2、D44、O662、MEM−131、TU12、HO36−1.1、HIT4、O13、N−16、C−20、B−N24、HI142、HI175、FMC29、HI147、HI170、L129およびAd20が挙げられるが、これらに限定されない。アンチセンスRNAインヒビターも、CD99の活性に拮抗することが証明されている(Kim,et al.,Blood 92:4287−4295(1998))。EBウィルス潜在タンパク質1(LMP−1)は、表面CD99発現のダウンレギュレーション、それゆえ活性を直接引き起こすことも示されている(Kim et al.,Blood 95:294−300(2000))。
【0069】
(E.CD99アンタゴニストおよび抗リウマチ薬を同定する方法)
(1.単球補充)
CD99活性のアンタゴニストを同定する1つの好ましいアッセイは、代表的な血管外移動アッセイの改変である。単球は、内因性(内皮によって作成された)または外因性化学誘引物質の下部ウェル上の多孔性支持体で増殖する内皮層上に浮遊している。アッセイ終了時に下部チャンバに達した単球は、移動したとしてカウントされる。CD99の活性を阻害する化合物は、内皮層で移動する細胞の数は減少するであろう。
【0070】
1つの好ましいアッセイにおいて、内皮細胞は、フィブロネクチンを重ねた水和I型コラーゲンゲル上で培養される。培地の成分は多孔性ゲル中に浸透する。あるいは内皮細胞は、下部チャンバ上に吊るされた多孔性フィルタの上面で培養される。培地は、上部および下部チャンバに配置されて、単層の先端面および基底面に達する。単球は上部チャンバに添加される。「移動した」とカウントするためには、単球は(1)内皮細胞の上端面に付着し、(2)細胞内接合点まで移動して、(3)内皮細胞間で漏出し、(4)内皮細胞から分離して、基底薄層に浸透し、(5)フィルタまたはゲルを通過して、(6)フィルタまたはゲルから分離して、下部チャンバに入る必要がある。
【0071】
健常またはリウマチドナーの末梢血から新たに単離された単球または好中球は、試験化合物の存在下または非存在下でコンフルエント内皮単層上に37℃にて静置する。アッセイは、これに限定されるわけではないが、場合によりヒト血清アルブミンを添加した完全培地、培地199、またはRPMI1640を含む種々の培地で実施される。十分な経内皮移動時間、一般に1時間後、単層をEGTAなどのキレート化剤で洗浄して、上端面になお結合している単球または好中球を除去する。コラーゲンゲルを基材として使用する場合、次に単層を、2価カチオンを含むリン酸緩衝生理食塩水ですすいで、グルタルアルデヒド中で一晩固定する。固定はコラーゲンゲルを強化するので、ゲルが操作しやすくなる。単層は好ましくはWright−Giemsaを用いて染色し、好ましくはノマルスキー顕微鏡下で直接観察するためにスライドに載せる。ノマルスキー顕微鏡を使用すると、焦点面によって、単層の上端面に付着した単球または好中球を移動したものから識別することができる。血管外移動の定量化できる基準は、単層の下で移動した、単層に関連するこれらの単球または好中球のパーセンテージである。したがって血管外移動の測定は、単層への接着度とは独立している。
【0072】
単球または好中球の移動は、内皮のサイトカイン刺激の存在下または非存在下で決定できる。内皮細胞の活性化は、刺激メディエータとの接触から生じうる。本発明の目的では、内皮細胞の活性化は好ましくは、腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキン−1(IL−1)などのサイトカインとの接触から生じる。
【0073】
「内皮細胞」という用語は、当該分野での普通の意味を有する。内皮細胞は、体全体で特に血管組織(静脈、動脈、および毛細血管)の管腔に見られる内皮を構成する。関節炎では、白血球が循環血から関節に移動して、そこで炎症に関与する。
(2.T細胞補充)
同様の血管外移動アッセイを、健常およびリウマチドナーの末梢血から新たに単離したTリンパ球に利用できる。単離後、精製Tリンパ球は、試験化合物の存在下または非存在下でコンフルエント内皮単層上に37℃にて静置する。アッセイは、これに限定されるわけではないが、場合によりヒト血清アルブミンを添加した完全培地、培地199、またはRPMI1640を含む種々の培地で実施される。十分な経内皮移動時間、一般に1時間の後、単層をEGTAなどのキレート化剤で洗浄して、上端面になお結合しているT細胞を除去する。コラーゲンゲルを基材として使用する場合、次に単層を、2価カチオンを含むリン酸緩衝生理食塩水ですすいで、グルタルアルデヒド中で一晩固定する。固定はコラーゲンゲルを強化するので、ゲルが操作しやすくなる。単層は好ましくはWright−Giemsaを用いて染色し、好ましくはノマルスキー顕微鏡下で直接観察するためにスライドに載せる。ノマルスキー顕微鏡を使用すると、焦点面によって、単層の上端面に付着したT細胞を移動したものから識別することができる。血管外移動の定量化できる基準は、単層の下で移動した、単層に関連するこれらのT細胞のパーセンテージである。
【0074】
T細胞の移動は、内皮のサイトカイン刺激の存在下または非存在下で決定できる。内皮細胞の活性化は、刺激メディエータとの接触から生じうる。本発明の目的では、内皮細胞の活性化は好ましくは、腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキン−1(IL−1)などのサイトカインとの接触から生じる。
【0075】
(3.インビトロT細胞増殖)
CD99活性のアンタゴニストを評価する好ましい方法は、活性化がT細胞の増殖によって定義されるT細胞活性化アッセイの使用による。T細胞は、健常な対象または慢性関節リウマチ患者に由来する。好ましくはTh1細胞が得られるが、しかしながらいずれのT細胞個体群が使用される。
【0076】
T細胞の増殖は、CD99の正常な結合および他の生理活動を遮断することなく、T細胞上のCD99を活性化する抗CD99抗体によってT細胞を刺激することにより誘発される。12E7および3B2/TA8は、CD99を遮断せずに活性化することが既知である。場合により、T細胞の刺激を増強するために、抗CD3抗体、例えば、OKT3に抗CD99抗体を添加することができる。さらに、PMAまたはイノマイシンなどの化学刺激薬も場合により使用できる。T細胞が刺激された後、細胞にトリチウム化チミジン[メチル−3H]TdR(Amersham)などのDNA標識を適用する。あるいは細胞の数を直接カウントすることができる。細胞を12〜24時間インキュベートして、回収し、放射能カウントする。放射能の量は、生T細胞の数に相関している。
【0077】
次にT細胞増殖の阻害は、T細胞を12〜24時間に亘って刺激抗体(例えば、12E7および3B2/TA8)およびCD99活性のアンタゴニスト(抗体または他の分子)の両方でインキュベートすることによって評価できる。精製T細胞の残存増殖は、上述したアッセイを使用して評価できる。
【0078】
(4.T細胞活性化)
CD99活性のアンタゴニストを評価する別の方法は、T細胞活性化アッセイの使用による。T細胞活性化は、CD99の正常な結合および他の生理活動を遮断することなく、T細胞上のCD99を活性化する抗CD99抗体によるT細胞の刺激後に、サイトカインの産生を測定することによって評価できる。CD99を遮断せずに活性化することが既知である。場合により、T細胞の刺激を増強するために、抗CD3抗体、例えば、OKT3に抗CD99抗体を添加することができる。さらに、PMAまたはイノマイシンなどの化学刺激薬も場合により使用できる。次に培養物上澄みを回収して、これに限定されるわけではないが、サンドイッチELISAなどの方法を使用してサイトカイン濃度を測定した。
【0079】
T細胞活性化の阻害(サイトカイン放出によって測定できるように)は、T細胞を刺激抗体(例えば、12E7および3B2/TA8)およびCD99活性のアンタゴニスト(抗体または他の分子)の両方でインキュベートすることによって評価できる。精製T細胞の残存サイトカイン産生は、上述したアッセイを使用して評価できる。
【0080】
「T細胞」という用語は、当該分野での普通の意味を有する。T細胞は、胸腺から由来して、胸腺処理を受けているため、いわゆるリンパ球のクラスである。これらの細胞は主に、細胞媒介免疫応答の制御およびB細胞発生の制御に関与する。T細胞は、リンフォカインホルモンを分泌することによって免疫系を調整する。
【0081】
(F.処置の方法)
別の局面において、本発明は、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を、炎症性疾患を有する患者に投与する工程を含む、慢性関節リウマチなどの炎症性疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供する。本発明は、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を、慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程を含む、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を軽減する方法も提供する。CD99活性のアンタゴニストは、タンパク質、核酸または小分子インヒビターでありうる。好ましいタンパク質アンタゴニストは、抗体、さらに好ましくはモノクローナル抗体である。好ましい核酸アンタゴニストは、CD99をコード化する遺伝子である、mic2のアンチセンスインヒビターを含む。本発明は、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を投与することによって、滑膜細胞密度を低下させる方法、軟骨破壊を低下させる方法および滑膜組織中のIL−6濃度を低下させる方法も含む。
【0082】
本発明で有用な化合物は、医学的に許容される投与経路によって、例えば、経口的に、非経口的に(例えば、筋肉内に、静脈内に、皮下に、腹腔内に)、経皮的に、直腸に、吸入などによって、患者に治療的有効用量で投与される。採用される投薬量範囲は、投与経路および処置される患者の年齢、体重および状態によって変わるであろう。
【0083】
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、化合物の発現が可能な組換え細胞、レセプター媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,1987,J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照)、レトロウィルスまたは他のベクターの一部として核酸の作成などの、種々の送達系が既知であり、本発明の組成物を投与するために使用できる。導入の方法は、これに限定されるわけではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経鼻、硬膜外、および経口経路を含む。組成物は、いずれかの好都合な経路によって、例えば、輸液またはボーラス注入によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通じた吸収によって投与されるか、生物活性剤と共に投与される。投与は全身的でも局所的でもよい。さらに、本発明の組成物を脳室内および髄腔内注入を含む、いずれかの適切な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい;脳室内注入は例えば、Ommayaリザーバーなどのリザーバーに取付けられた脳室内カテーテルによって促進される。吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を用いた製剤の使用により、肺投与も利用できる。
【0084】
(G.医薬組成物)
(1.抗体)
本発明の抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、二重特異性、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、sFvs断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリによって産生された断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびにCD99およびCD99を発現する細胞に免疫特異的に結合する上のいずれかのエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。「抗体」という用語は本明細書で使用するように、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性部分、すなわちCD99および/またはCD99を発現する細胞に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれの種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)、クラス、またはサブクラスでもよい。
【0085】
本発明の方法で使用されるポリクローナル抗体は、免疫された動物の血清に由来する抗体分子の不均一な集団である。当該分野で周知の種々の手順がCD99に対するポリクローナル抗体の産生に使用される。例えば、ポリクローナル抗体の産生では、これに限定されるわけではないがウサギ、マウス、ラットなどを含む種々の宿主動物は、CD99またはその誘導体を用いた注射によって免疫できる。種々のアジュバントは、宿主種によって免疫応答を上昇させるために使用され、これらとしては、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、表面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(bacille Calmette−Guerin)およびコリネバクテリウム・パルヴムが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなアジュバントも当該分野で周知である。
【0086】
本発明の方法で使用されるモノクローナル抗体は、特定の抗原(例えば、CD99)への抗体の均一な集団である。本発明の目的では「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ細胞によって産生された抗体である。例えば、Bリンパ球を産生する抗体と不死化Bリンパ球細胞系との融合による、モノクローナル抗体−合成ハイブリドーマ細胞を作成する方法は、当業者に周知である。好ましくは、モノクローナル抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、または最も好ましくはヒトモノクローナル抗体である。
【0087】
CD99に対するモノクローナル抗体(mAb)は、培養物中の連続細胞系による抗体分子の産生を規定する、当該分野で既知のいずれかの技法によって作成できる。これらとしては、KohlerおよびMilsteinによって最初に述べられたハイブリドーマ技法(1975,Nature 256,495−497)、さらに最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al.,1983,Immunology Today 4:72)、およびEBVハイブリドーマ技法(Cole et al.,1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgAおよびIgD、ならびにそのサブクラスを含むいずれかの免疫グロブリンの抗体でもよい。本発明で有用なmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養される。
【0088】
本発明の方法で使用されるモノクローナル抗体としては、ヒトモノクローナル抗体またはキメラヒト−マウス(または他の種)モノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトモノクローナル抗体は、当該分野で既知の多くの技法のいずれかによって産生される(例えば、Teng et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80,7308−7312;Kozbor et al.,1983,Immunology Today 4,72−79;およびOlsson et al.,1982,Meth.Enzymol.92,3−16)。
【0089】
本発明は、CD99および/またはCD99を発現する細胞に免疫特異的に結合する抗体の機能的に活性な断片、誘導体または類似物質の使用を提供する。「機能的に活性な」は、断片、誘導体または類似物質の由来する抗体が認識されるように、断片、誘導体または類似物質が同じ抗原を認識する抗−抗−イディオタイプ抗体を誘発できることを意味する。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、枠組みおよび特異的に抗原を認識するCDR配列に対してC末端であるCDR配列の欠失によって向上される。抗原に結合するCDR配列を判定するためには、当該分野で既知のいずれかの結合アッセイ方法(例えば、BIAcoreアッセイ)によって、CDR配列を含有する合成ペプチドを抗原との結合アッセイに使用できる。
【0090】
本発明の他の実施形態は、本発明の抗体の断片としては、例えば、抗体分子のペプシン消化によって産生できる可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有するF(ab’)断片、ならびにF(ab’)断片のジスルフィドブリッジを還元することによって産生できるFab断片が挙げられるがこれらに限定されない。本発明は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖ダイマー、またはその最小断片、例えば、Fvsまたは単鎖抗体(SCA)(例えば、米国特許第4,946,778号;Bird,1988,Science 242:423−42;Huston et al.,1988, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;およびWard et al.,1989,Nature 334:544−54に述べられている)あるいは本発明の抗体と同じ特異性を持つ他のいずれかの分子も提供する。
【0091】
さらに、標準的な組換えDNA技法を使用して作製できる、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含む組換え抗体、例えば、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、本発明の範囲内である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種から由来する分子、例えば、マウスモノクローナルに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である(例えば、参考としてその全体が本明細書に援用される、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号;およびBoss et al.,米国特許第4,816,397号を参照)。ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からの枠組み領域を有する、非ヒト種からの抗体分子である(例えば、参考としてその全体が本明細書に援用される、Queen,米国特許第,585,089号)。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該分野で既知の組換えDNA技法によって、例えば、それぞれ参考としてその全体が本明細書に援用される、国際公開番号WO87/02671;欧州特許出願184,187;欧州特許出願171,496;E欧州特許出願173,494;国際公開番号WO 86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願125,023;Better et al.,1988,Science 240:1041−1043;Liu et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu et al.,1987,J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura et al.,1987,Cane.Res.47:999−1005;Wood et al.,1985,Nature 314:446−449;およびShaw et al.,1988,J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;Morrison,1985,Science 229:1202−1207;Oi et al.,1986,Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jones et al.,1986,Nature 321:552−525;Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534;およびBeidler et al.,1988,J.Immunol.141:4053−4060に述べられている方法を使用して産生できる。
【0092】
完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療処置に特に好ましい。そのような抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用して産生できる。トランスジェニックマウスは、選択した抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全部または一部を用いて通常の方法で免疫される。抗原に向けられたモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスに宿されたヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞分化の間に転位して、次にクラススイッチングおよび体細胞変異を受ける。それゆえそのような技法を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を産生することができる。ヒト抗体を産生するこの技法の概要については、Lonberg and Huszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するこの技法およびそのような抗体を産生するプロトコルの詳細な議論については、例えば、それぞれ参考としてその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;および米国特許第5,545,806号を参照。さらにAbgenix,Inc.(フレモント、カリフォルニア州)およびGenpharm(サンノゼ、カリフォルニア)などの企業は、上述した技術と同様の技術を使用して、選択した抗原に対するヒト抗原の提供に従事することができる。
【0093】
選択したエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導された選択」と呼ばれる技法を使用して産生できる。この手法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers et al.(1994)Bio/technology 12:899−903)。
【0094】
(2.製剤)
本発明の局面は、温血動物の慢性関節リウマチを処置するのに有用な薬物を製造する方法を提供する。薬物は、経口、局所、経皮、経直腸、吸入、非経口(静脈内、筋肉内、または腹腔内)投与などに適した組成物を提供するために、既知の処方技法に従って調製される。本発明の組成物を調製するための詳細な指針は、Easton,PA 18040のMack Publishing Co.によって出版されたRemington’s Pharmaceutical.Sciencesの18thまたは19th Editionを参照することによって見出される。適切な部分は、参考として本明細書に援用される。
【0095】
単位用量または複数回用量様式が考慮され、それぞれある臨床状況において利点を提供する。単位用量は、慢性関節リウマチを処置する状況において所望の効果を生じるように計算されたCD99活性のアンタゴニストの規定量を含有する。複数回用量様式は、所望の結果を達成するために複数の1回用量、または分別用量が必要なときに、特に有用である。これらの投薬様式のどちらも、特定の化合物の独自の特徴、達成される特定の治療効果および癌の処置のための特定の化合物を調製する当該分野に固有の制限によって規定される、またはそれらに直接依存する仕様を有する。
【0096】
単位用量は、対象において慢性関節リウマチを処置するのに十分な治療有効量を含有し、化合物を約1.0〜1000mg、例えば、約50〜500mg含有する。
【0097】
好ましい実施形態において、本発明の薬物は、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として、日常的な手順に従って処方される。通例、静脈内投与用の医薬組成物は、滅菌等張水性緩衝液による溶液である。必要な場合に医薬組成物は、可溶化剤および注射部位の疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含む。一般に成分は、活性剤の量を表示したアンプルまたはサシェなどの密封容器内の例えば、凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、個別に、または共に混合されて単位投薬様式で供給される。組成物が輸液によって投与される場合、滅菌製薬グレードの水または生理食塩水を含有する輸液ボトルを用いて分配できる。組成物を注射によって投与する場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルは、成分が投与前に混合されるように提供することができる。
【0098】
本発明の薬物は、中性または塩の形状として製剤できる。製薬的に許容される塩は、アニオンを用いて形成された塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩、およびカチオンを用いて形成された塩、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩を含む。
【0099】
化合物は好ましくは、摂取錠剤、口腔錠、カプセル剤、カプレット剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、トローチ剤、ウェファ剤、菱形錠などどの適切な製剤で経口投与される。一般に最も容易な製剤は、錠剤またはカプセル剤である(個別にまたは集合的に「経口投薬単位」と呼ばれる)。適切な製剤は、化合物の特徴を適切な組成物を配合するために利用可能な賦形剤に適合させることができる標準配合技法に従って調製される。
【0100】
その形式は、化合物を迅速に送達するか、または持続放出性調製物である。化合物は、硬カプセルまたは軟カプセルに封入されるか、錠剤に圧縮されるか、または飲料、食品またはそうでなければ食餌に包含される。最終組成物および調製物のパーセンテージはもちろん変化して、好都合には最終形、例えば、錠剤の重量の1〜90%の範囲である。そのように治療的に有用な組成物の量は、適切な投薬量が得られるようになっている。本発明による好ましい組成物は、経口投薬単位形が5〜1000mgの重さの投薬単位中で約5.0〜約50重量%(%w)を含有するように調製される。
【0101】
経口投薬単位の適切な製剤は:バインダー、例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン;甘味剤、例えば、ラクトースまたはスクロース;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、アルギン酸など;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;または着香料、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油なども含有する。種々の他の物質がコーティングとして、またはそうでなければ経口投薬単位の物理形を改良するために存在する。経口投薬単位は、シェラック、糖またはその両方でコーティングされる。シロップ剤またはエリキシル剤は、化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料および着香料を含有する。利用できるいずれの物質も、製薬的に許容され、実質的に非毒性でなければならない。有用な賦形剤の種類の詳細は、”Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”の第19版、Mack Printing Company, Easton,PAに見出される。特に。より完全な議論については91−93章を参照。
【0102】
本発明の薬物は、非経口的に、例えば、静脈内に、筋肉内に、静脈内に、皮下的に、または腹腔内に投与できる。担体または賦形剤または賦形剤混合物は、溶媒、あるいは例えば、種々の極性または非極性溶媒、その適切な混合物、または油を含有する分散媒体でありうる。本明細書で使用するように、「担体」または「賦形剤」は製薬的に許容される担体または賦形剤を意味し、ありとあらゆる溶媒、分散剤または媒体、コーティング、抗菌剤、等張/低張/高張剤、吸収改良剤などを含む。そのような物質および薬剤の製薬活性物質への使用は、当該分野で周知である。従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物での使用が考慮される。さらに他のまたは補助活性成分も最終組成物に含むことができる。
【0103】
化合物の液剤は、希釈剤、例えば、水、エタノール、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、種々の油および/またはその混合物、および当業者に既知のその他で調製できる。
【0104】
注射用途に適切な製薬形は、滅菌液剤、分散剤、乳剤、および滅菌粉剤を含む。最終形は、製造および貯蔵条件下で安定でなければならない。その上、最終製薬形は、汚染に対して防御されなければならず、したがって細菌または真菌などの微生物の増殖を阻害できなければならない。単回静脈内または腹腔内用量を投与できる。あるいは、通例1〜8日間続く、低速の長期輸液または複数回の短期1日輸液を利用できる。別の日数または複数日ごとの投薬も利用できる。
【0105】
滅菌注射用液剤は、必要な量の化合物を1つ以上の適切な溶媒に含有させて、必要ならば上に挙げた、または当業者に既知である他の成分をそれに添加することによって調製される。滅菌注射用液剤は、必要な量の化合物を必要に応じた種々の他の成分と共に適切な溶媒に含有させることによって調製される。濾過などの滅菌手順が次に続く。通例、分散剤は、分散媒体および上で示した必要な他の成分も含む滅菌ビヒクルに化合物を含有させることによって作成される。滅菌粉剤の場合、好ましい方法は真空乾燥または凍結乾燥を含み、それに必要な成分が添加される。
【0106】
いずれの場合でも、上記の最終形は滅菌する必要があり、中空針などの注射器をただちに通過できる必要もある。適正な粘度は、溶媒または賦形剤の適正な選択によって実現および維持される。その上、レクチンなどの分子または粒子コーティングの使用、分散剤中の粒径の適正な選択、または界面活性剤特性を備えた物質の使用が利用される。
【0107】
微生物の増殖の防止または阻害は、1つ以上の抗菌剤、例えば、クロロブタノール、アスコルビン酸、パラベン、テルメロサール(thermerosal)などの添加によって実現される。張性を変化させる薬剤、例えば、糖または塩を含むことも好ましい。
【0108】
特定の実施形態において、本発明の組成物を処置の必要な部分に局所的に投与することが望ましい;これは例えば、これに限定されるわけではないが、外科処置中の局所輸液、外科処置後の例えば、創傷被覆材と併せた局所塗布によって、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、またはシラスティック膜などの膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン状材料のインプラントによって、実施できる。
【0109】
別の実施形態において、組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達できる(Langer,1990,Science 249:1527−1533;Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez−Berestein,ibid.,pp.317−327を参照;一般に同書を参照)。
【0110】
なお別の実施形態において、組成物は制御放出、または持続放出系で送達できる。1つの実施形態において、ポンプが使用される(Langer,supra;Sefton, 1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照)。別の実施形態において、ポリマー材料を制御放出系に使用できる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,J.,1983,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照;Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105も参照)。なお別の実施形態において、制御放出系を治療標的(例えば、脳、腎臓、胃、膵臓、および肺)に近接して配置し、それゆえ全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138(1984))。
【0111】
他の制御放出系は、Langerによる総説に述べられている(1990,Science 249:1527−1533)。
【0112】
本発明の薬物がタンパク質をコードする核酸である特定の実施形態において、そのコードされたタンパク質の発現を促進するために、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを作製して、それが細胞内となるように投与することによって、例えば、レトロウィルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号を参照)、または直接注入によって、または微粒子銃(例えば、遺伝子ガン;Biolistic,Dupont)の使用によって、あるいは脂質または細胞表面レセプターあるいは形質移入剤を用いたコーティングによって、あるいは核に入ることが既知であるホメオボックス様ペプチドへの結合へそれを投与することなどによって(例えば、Joliot et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868を参照)核酸を生体内に投与できる。あるいは核酸は相同組換えによって、細胞内に導入され、発現のために宿主細胞DNA内に含むことができる。
【実施例】
【0113】
(IV.実施例)
以下の実施例は、当業者への指針として提供される。実施例は単に本発明の実施形態を理解および実施するのに有用な具体的方法を提供するので、実施例は、本発明を制限するものと見なすべきではない。
【0114】
(A.実施例1単球/T細胞補充)
(細胞)
ヒトPBLは、健常ドナーまたは慢性関節リウマチ患者のクエン酸塩抗凝固処理全血から、デキストラン沈降およびFicoll−Hypaque上での密度分離によって単離する。この単核細胞を洗浄して、上述したようにナイロンウール上およびプラスチック付着によってさらに精製する(Carr 1996)。得られたPBL(>90%CD3Tリンパ球)は、使用前にLPS−無RPMI/10%FCS中で15〜18時間培養する。メモリーおよび未変性CD3Tリンパ球サブセット(それぞれCD45ROおよびCD45RA)は、製造者の説明書に従って磁気細胞分離(MACS,Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach、ドイツ)を使用して、ネガティブセレクションによって単離する。HUVECは、臍帯静脈(jaffe 1973)から単離して、10%FCS、8%プールヒト血清、50μg/ml内皮細胞成長因子(Sigma−Aldrich)、10U/mlブタ腸ヘパリン(Sigma−Aldrich)、および抗生物質を含有するM199中で一次培養物として確立する。実験は、96ウェル培養プレート内で水和I型コラーゲンゲル上に培養された継代2の細胞に対して実施する(Muller 1989)。ある実験では、TNF−αまたはIL−1β(それぞれ10ng/mlおよび10U/ml最終濃度)あるいは健常ドナーまたは慢性関節リウマチ患者からの希釈滑膜液を最後の4〜24時間に亘って培地に添加する。
【0115】
(抗体)
American Type Culture Collection(メリーランド州、ロックビル)からのCD18(IB4)、CD14(3C10)およびMHCクラスII(9.3C9)に対する抗体をネガティブコントロールとして使用する。抗CD31は経内皮移動遮断からのポジティブコントロールとして使用する。抗CD3(OKT−3)および抗CD28(leu28)mAbはT細胞活性化アッセイで使用する。
【0116】
内皮細胞の層を通じた単球またはT細胞の移動を測定する。このアッセイの詳細は、Muller et al.,J Exp Med 176:819−828(1992)およびMuller et al.,J Exp Med 178:449−460(1993)に記載されている。経内皮移動は、Liao et al.,J Exp Med 182:1337−1343(1995)およびMuller et al.,J Exp Med 178:449−460(1993)で記載されているようにノマルスキー顕微鏡によって定量する。白血球は、健常ボランティアまたは慢性関節リウマチ患者の末梢血から単離して、抗CD99mAb、12E7を用いて以前にインキュベートした水和コラーゲンゲル上で培養したHUVECのコンフルエント単層に添加する。インキュベーション(別途報告しない場合は1時間)の後、非接着性細胞を洗浄することによって除去し、残りの接着性血管外移動細胞は、pH7.4の0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中の2.5%グルタルアルデヒド中での一晩のインキュベーションによって、内皮単層上の所定の位置に固定する。複数の高倍率視野を顕微鏡下で観察して評価する。血管外移動データは、内皮の下にある単層に残った全細胞のパーセンテージとして表される。ある実験において、抗CD99または対照mAbを白血球、内皮細胞または両方でアッセイの前に30分間インキュベートして、次に血管外移動開始前に広範囲に亘る洗浄で除去する。ある実験において、標準血管外移動時間の完了時に、ブロッキングmAbを洗い流し、その培養物を同じまたは別のmAbのブロッキング濃度を含有する、または含有しない完全培地内に入れて、インキュベータに戻す。
【0117】
経内皮移動もパラフィン包埋した単層の断面上で定量する。これらの試験片は、サンプル単層を折り曲げて慎重に除去して、コラーゲンゲル側を外に向けて内皮表面を互いに合せて配置することによって作成する。このことは包埋プロセス中の細胞の機械的移動を回避する。ワックスでの置換の後、試験片を二等分して、試験片の切断が4つの単層サンプルの断片を生成するようにする(2つの単層それぞれの2つの異なる部分)。定量を3つのレベルのそのような試験片に対して、試験片の異なる部分がサンプリングされて同じ細胞が2回カウントされないように、少なくとも50μm離して実施する。
【0118】
(B.実施例2:T細胞増殖および活性化T細胞増殖アッセイ)
健常ボランティアまたは慢性関節リウマチ患者に由来する高度に精製されたPB T細胞の増殖アッセイ(5x10細胞/ウェル)は、96ウェルU底組織培養プレートで最終体積200μlとして3通り実施する。増殖は、GAM−IgG(10μg/ml;Sigma)によって架橋された抗CD3mAb+抗CD99または対照mAb(5μg/ml)によって、およびPMA(Sigma;最終濃度、10−7M)またはイオノマイシン(Sigma;最終濃度、1μM)によって誘発される。固定化CD3 mAbを用いた増殖実験では、96ウェル平底プレート(Costar)は、PBSで希釈した0.125〜1.0μg/ml精製OKT3 mAb 100μlを用いて4℃にて一晩コーティングする。プレートをPBSで2回洗浄して、次にアッセイに使用する。PMA(Sigma)、イオノマイシン(Sigma)、そしてmAbを10%FCS、2mM L−グルタミン、10U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640で希釈する。GAM−IgGおよび細胞は、10%プールヒト血清を添加したRPMI 1640で再懸濁させる。
【0119】
5%CO2を含む37℃の加湿大気中での72時間のインキュベーション後、細胞に[メチル−3H]TdR(Amersham)1μCi/ウェルを適用する。18時間後、この細胞溶解液をガラス繊維フィルター上に回収して、マイクロプレートシンチレーションカウンターで放射能を決定する。
【0120】
(細胞内サイトカインの決定)
PHA/IL−2依存性芽球を産生するために、PBMC(1x10/ウェル)は96ウェルU底培養プレート(Costar)において、PHA(Sigma;最終濃度、1μg/ml)の存在下で抗生物質を添加した、10%FCS(Life Technologies)を加えたRPMI 1640中で7日間培養する。次に5〜7日ごとに、IL−2 10U/mlおよび自己照射(3000rad、137Cs源)PBMCをフィーダー細胞(芽細胞/フィーダー細胞の比=1:1)として添加する。細胞は第1の実験を実施する前に少なくとも1ヶ月間培養する。
【0121】
96ウェル平底組織培養プレート(Costar)を、GAM−IgG(Sigma;10μg/ml)およびCD3 mAb OKT3(20ng/ml)の最適下限濃度で4℃にて一晩コーティングする。PBSで2回洗浄した後、T細胞系またはクローン(1−2x105/ウェル)を最適濃度(5μg/ml)のCD99mAb、CD28 mAb Leu28またはアイソタイプ対照mAbを用いて予備コーティングしたプレート内でインキュベートする。アッセイは、抗生物質および2μg/ml(最終濃度)ブレフェルディンA(Sigma)を添加した、5%プールヒト血清を含有するRPMI 1640培地中で、総体積200μl/ウェルにて準備する。5%CO大気中で37℃での18時間のインキュベーションの後、細胞を回収して、細胞内サイトカインの存在について解析した。染色では、細胞懸濁物50μl(1−2x10細胞に相当)を1%パラホルムアルデヒド100μlの添加により、室温にて30分間固定する。次に細胞をPBS/1%BSA 4mlで1回洗浄し、PBS/1%BSA 50μl中に再懸濁させ、PERM溶液(BD Pharmingen)100μlの添加によって透過処理し、指示された直接結合抗サイトカインmAbとともに30分間、室温にてインキュベートした。最後に、細胞を2回洗浄し、PBS中で再懸濁させて、フローサイトメトリーによって解析した。
【0122】
分泌サイトカインの定量的測定では、1x10個のT細胞を抗CD99または対照mAbsによる抗CD3コーティングプレート上で37℃/5%COにて72時間インキュベートする。次に培養上澄みを回収し、サンドイッチELISAアッセイを、製造者のプロトコル(R & D Systems Inc.,ミネアポリス、ミネソタ州)を使用して、IL−4、IL−10、TNF−αおよびIFN−γの産生を測定するために実施する。対照実験:T細胞の刺激およびインターフェロンガンマ産生の測定。
【0123】
上の明細書で触れたすべての刊行物および特許は、参考として本明細書に援用される。本発明の上述の方法およびシステムの種々の改良および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかになるであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、本発明は、特許請求したように、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことを理解する必要がある。実際に、当業者に明らかである本発明を実施するための上述した様式の種々の改良は、以下の特許請求の範囲内に含まれると企図される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、特にT細胞レセプター刺激、T細胞アポトーシス率、単球補充率、インターフェロンガンマ産生および単球/マクロファージ活性化インデックスを含む多数の生物プロセスの撹乱に対する滑膜細胞密度の感受性を示す。
【図2】図2は、特にT細胞レセプター刺激、T細胞アポトーシス率、単球補充率、インターフェロンガンマ産生および単球/マクロファージ活性化インデックスを含む多数の生物プロセスの撹乱に対する軟骨破壊率の感受性を示す。
【図3】図3は、滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。
【図4】図4は、軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【図5】図5は、滑膜組織中のIL−6に対するCD99遮断の効果を示す。
【図6】図6は、個々の重要な生物プロセスに対するCD99遮断の効果を示す。
【図7】図7は、単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対するメトトレキサート耐性患者におけるCD99遮断の相対効果を示す。
【図8】図8は、メトトレキサート耐性患者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。
【図9】図9は、メトトレキサート耐性患者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【図10A】図10Aは、各過程それぞれについて調査した単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対する、TNF−α軟骨不応答者において最も起こりそうなCD99遮断の効果を示す。
【図10B】図10Bは、1回に1つの過程を遮断することによって調査した、単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対する、TNF−α軟骨不応答者におけるCD99遮断の相対的効果を示す。
【図11】図11は、TNF−α軟骨不応答者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。
【図12】図12は、TNF−α軟骨不応答者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【図13A】図13Aは、各過程それぞれについて調査した単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対する、TNF−α過形成不応答者において最も可能性のあるCD99遮断の効果を示す。
【図13B】図13Bは、1回に1つの過程を遮断することによって調査した、単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対する、TNF−α過形成不応答者におけるCD99遮断の相対的効果を示す。
【図14】図14は、TNF−α過形成不応答者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。
【図15】図15は、TNF−α過形成不応答者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。
【図16A】図16Aは、各過程それぞれについて調査した単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対する、TNF−α二重不応答者において最も可能性のあるCD99遮断の効果を示す。
【図16B】1回に1つの過程を遮断することによって調査した、単球血管外遊走、T細胞補充、T細胞増殖およびT細胞IFNγ産生に対する、TNF−α二重不応答者におけるCD99遮断の相対的効果を示す。
【図17】図17は、TNF−α二重不応答者における滑膜細胞密度に対するCD99遮断の効果を示す。
【図18】図18は、TNF−α二重不応答者における軟骨破壊に対するCD99遮断の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を軽減させる方法であって、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を、慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記CD99活性のアンタゴニストがタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質が抗CD99抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44、O662、MEM−131、TU12、HO36−1.1、HIT4、O13、N−16、C−20、B−N24、12E7、3B2/TA8、HI142、HI175、FMC29、HI147、HI170、L129およびAd20からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44およびO662からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記CD99活性のアンタゴニストが核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸がアンチセンスインヒビターである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アンチセンスインヒビターが逆方向に転写されたmic2遺伝子の一部分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CD99活性のアンタゴニストが小分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、メトトレキサート耐性患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、TNF−α遮断軟骨不応答者である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、TNF−α遮断過形成不応答者である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、TNF−α遮断二重不応答者である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
関節内の滑膜細胞の密度を低下させる方法であって、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を異常に上昇した滑膜細胞密度に関連する状態を有する患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
前記CD99活性のアンタゴニストがタンパク質である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質が抗CD99抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44、O662、MEM−131、TU12、HO36−1.1、HIT4、O13、N−16、C−20、B−N24、12E7、3B2/TA8、HI142、HI175、FMC29、HI147、HI170、L129およびAd20からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44およびO662からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記CD99活性のアンタゴニストが核酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸がアンチセンスインヒビターである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アンチセンスインヒビターが逆方向に転写されたmic2遺伝子の一部分を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記CD99活性のアンタゴニストが小分子である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
関節における該軟骨破壊を減少させる方法であって、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を異常に高い割合の軟骨破壊に関連する状態を有する患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記CD99活性のアンタゴニストがタンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質が抗CD99抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44、O662、MEM−131、TU12、HO36−1.1、HIT4、O13、N−16、C−20、B−N24、12E7、3B2/TA8、HI142、HI175、FMC29、HI147、HI170、L129およびAd20からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44およびO662からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記CD99活性のアンタゴニストが核酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記核酸がアンチセンスインヒビターである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アンチセンスインヒビターが逆方向に転写されたmic2遺伝子の一部分を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記CD99活性のアンタゴニストが小分子である、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
滑膜組織中のIL−6濃度を低下させる方法であって、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を滑膜組織中のIL−6の異常に高い濃度に関連する状態を有する患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項36】
前記CD99活性のアンタゴニストがタンパク質である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記タンパク質が抗CD99抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44、O662、MEM−131、TU12、HO36−1.1、HIT4、O13、N−16、C−20、B−N24、12E7、3B2/TA8、HI142、HI175、FMC29、HI147、HI170、L129およびAd20からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44およびO662からなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記CD99活性のアンタゴニストが核酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸がアンチセンスインヒビターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記アンチセンスインヒビターが逆方向に転写されたmic2遺伝子の一部分を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記CD99活性のアンタゴニストが小分子である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
関節内の骨びらんを減少させる方法であって、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を異常に高い割合の骨びらんに関連する状態を有する患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項46】
前記CD99活性のアンタゴニストがタンパク質である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記タンパク質が抗CD99抗体である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗CD99モノクローナル抗体が、Hec2、D44、O662、MEM−131、TU12、HO36−1.1、HIT4、O13、N−16、C−20、B−N24、12E7、3B2/TA8、HI142、HI175、FMC29、HI147、HI170、L129、およびAd20からなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗CD99モノクローナル抗体がHec2、D44およびO662からなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記CD99活性のアンタゴニストが核酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記核酸がアンチセンスインヒビターである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記アンチセンスインヒビターが逆方向に転写されたmic2遺伝子の一部分を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記CD99活性のアンタゴニストが小分子である、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
炎症性疾患の少なくとも1つの症状を軽減させる方法であって、CD99活性のアンタゴニストの治療有効量を、炎症性疾患を有する患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項56】
前記炎症性疾患が、糖尿病、動脈硬化症、炎症性大動脈瘤、再狭窄、虚血/再潅流傷害、糸球体腎炎、再狭窄、再潅流傷害、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、ライター症候群、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、股関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、骨盤腹膜炎、多発性硬化症、糖尿病、骨髄炎、癒着性関節包炎、少数関節炎、変形性関節炎、関節周囲炎、多発性関節炎、乾癬、スティル病、滑膜炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、骨粗鬆症および炎症性皮膚疾患からなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記炎症性疾患が、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、股関節炎、骨関節炎、および多発性関節炎からなる群より選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記CD99活性のアンタゴニストがタンパク質である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記タンパク質が抗CD99抗体である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記CD99活性のアンタゴニストが核酸である、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記核酸がアンチセンスインヒビターである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記CD99活性のアンタゴニストが小分子である、請求項55に記載の方法。
【請求項64】
慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定する方法であって:
(a)該化合物の存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量を、該化合物の非存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下で移動する白血球の量が、該化合物の非存在下で移動する白血球の量より少ないときに、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用であるとして同定する工程
を包含する、方法。
【請求項65】
前記内皮細胞が培養されたヒト臍静脈内皮細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記内皮細胞が腫瘍壊死因子またはインターロイキン−1によって刺激される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
内皮細胞の少なくとも1つの層が内皮細胞の単層である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記白血球が単球である、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記白血球がT細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
慢性関節リウマチの処置に使用する薬物を製造する方法であって:
(a)化合物を:
(i)該化合物の存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量を、該化合物の非存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量と比較する工程;および
(ii)該化合物の存在下で移動する白血球の量が該化合物の非存在下で移動する白血球の量より少ないときに、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用であるとして同定する工程;
によって、CD99活性のアンタゴニストとして同定する工程;および
(b)該化合物をヒトが消費するために配合する工程
を包含する、方法。
【請求項71】
慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定するための方法であって:
(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第1の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を、該化合物の非存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第2の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下で産生されたT細胞サイトカインの量が、該化合物の非存在下で産生されたT細胞サイトカインの量よりも少ないときに、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定する工程
を包含する、方法。
【請求項72】
前記非ブロッキング抗CD99抗体が、12E7または3B2/TA8である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記T細胞サイトカインがTh1サイトカインである、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記Th1サイトカインがTNF−αまたはIFNγである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記T細胞がTh1 T細胞である、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
慢性関節リウマチの処置に使用する薬物を製造する方法であって:
(a)化合物を:
(i)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第1の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を、該化合物の非存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第2の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を比較する工程;および
(ii)該化合物の存在下で産生されたT細胞サイトカインの量が、該化合物の非存在下で産生されたT細胞サイトカインの量よりも少ないときに、該化合物をCD99活性のアンタゴニストとして同定する工程;
によって、CD99活性のアンタゴニストとして同定する工程;および
(b)該化合物をヒトが消費するために配合する工程
を包含する、方法。
【請求項77】
慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定する方法であって:
(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団から発現したT細胞の数を、該化合物の非存在下でT細胞の第2の集団から発現したT細胞の数と比較する工程であって、該非ブロッキング抗CD99抗体による刺激および該化合物への曝露前は該第1の集団および第2の集団におけるT細胞の数が同じである、工程;ならびに
(b)該化合物の存在下で発現したT細胞の数が、該化合物の非存在下で発現したT細胞の数よりも少ないときに、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用であるとして同定する工程
を包含する、方法。
【請求項78】
前記T細胞がTh1 T細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
慢性関節リウマチの処置に使用する薬物を製造する方法であって:
(a)化合物を:
(i)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団から増殖したT細胞の数を、該化合物の非存在下でT細胞の第2の集団から増殖したT細胞の数と比較する工程であって、非ブロッキング抗CD99抗体による刺激および該化合物への曝露前は該第1の集団および第2の集団におけるT細胞の数が同じである、工程;および
(ii)該化合物の存在下で増殖したT細胞の数が、該化合物の非存在下で増殖したT細胞の数よりも少ないときに、該化合物をCD99活性のアンタゴニストとして同定する工程;
によって、CD99活性のアンタゴニストとして同定する工程;ならびに
(b)該化合物をヒトが消費するために配合する工程
を包含する、方法。
【請求項80】
慢性関節リウマチの処置に使用する化合物の集合をスクリーニングする方法であって:
(a)該集合の化合物の存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量を、該化合物の非存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下で移動する白血球の量が、該化合物の非存在下で移動する白血球の量よりも少ないときに、慢性関節リウマチの処置に有用として化合物を選択する工程
を包含する、方法。
【請求項81】
前記集合の各化合物について工程(a)および(b)を反復する工程をさらに包含し、該集合の少なくとも1つの化合物が、慢性関節リウマチの処置に有用であるとして選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記内皮細胞がヒト臍静脈内皮細胞である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記内皮細胞が、腫瘍壊死因子またはインターロイキン−1によって刺激される、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
内皮細胞の少なくとも1つの層が内皮細胞の単層である、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
前記白血球がT細胞である、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
前記白血球が単球である、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
CD99拮抗特性に関して化合物の集合をスクリーニングする方法であって:
(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第1の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を、該化合物の非存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第2の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下で産生されたT細胞サイトカインの量が、該化合物の非存在下で産生されたT細胞サイトカインの量よりも少ないときに、化合物をCD99活性のアンタゴニストとして選択する工程
を包含する、方法。
【請求項88】
前記集合の各化合物について工程(a)および(b)を反復する工程をさらに包含し、該集合の少なくとも1つの化合物が、CD99活性のアンタゴニストとして選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記T細胞がTh1細胞である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記非ブロッキング抗CD99抗体が、12E7または3B2/TA8である、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記T細胞サイトカインがTh1サイトカインである、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記Th1サイトカインが、TNF−αまたはIFNγである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
慢性関節リウマチの処置に使用する化合物の集合をスクリーニングする方法であって:
(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第1の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を、該化合物の非存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第2の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下で産生されたT細胞サイトカインの量が、該化合物の非存在下で産生されたT細胞サイトカインの量よりも少ないときに、慢性関節リウマチの処置で有用であるとして選択する工程
を包含する、方法。
【請求項94】
前記集合の各化合物について工程(a)および(b)を反復する工程をさらに包含し、該集合の少なくとも1つの化合物が、慢性関節リウマチの処置に有用であるとして選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記T細胞がTh1細胞である、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記非ブロッキング抗CD99抗体が、12E7または3B2/TA8である、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
前記T細胞サイトカインがTh1サイトカインである、請求項93に記載の方法。
【請求項98】
前記Th1サイトカインが、TNF−αまたはIFNγである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
慢性関節リウマチの処置に使用する化合物の集合をスクリーニングする方法であって:
(a)該化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団から増殖したT細胞の数を、該化合物の非存在下でT細胞の第2の集団から増殖したT細胞の数と比較する工程であって、該非ブロッキング抗CD99抗体による刺激および該化合物への曝露前は該第1の集団および第2の集団におけるT細胞の数が同じである、工程;ならびに
(b)該化合物の存在下で増殖したT細胞の数が、該化合物の非存在下で増殖したT細胞の数よりも少ないときに、慢性関節リウマチの処置に使用するための化合物を選択する工程
を包含する、方法。
【請求項100】
前記集合の各化合物について工程(a)および(b)を反復する工程をさらに包含し、該集合の少なくとも1つの化合物が、慢性関節リウマチの処置に有用であるとして選択される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記T細胞がTh1細胞である、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
炎症性疾患の処置に有用な化合物を同定する方法であって:
(a)該化合物の存在下でのCD99活性の量を、該化合物の非存在下でのCD99活性の量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下でのCD99活性の量が該化合物の非存在下でのCD99活性の量より少ないときに、該化合物を炎症性疾患の処置に有用であるとして同定する工程
を包含する、方法。
【請求項103】
前記CD99活性の量が、前記集合の化合物の存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量を、該化合物の非存在下で内皮細胞の少なくとも1つの層を通じて移動する白血球の量と比較することによって測定される、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記CD99活性の量が、前記化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第1の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量を、該化合物の非存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって活性化されたT細胞の第2の集団によって産生されたT細胞サイトカインの量と比較することによって測定される、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記CD99活性の量が、前記化合物の存在下で非ブロッキング抗CD99抗体によって刺激されたT細胞の第1の集団から増殖したT細胞の数を、該化合物の非存在下でT細胞の第2の集団から増殖したT細胞の数と比較することによって測定され、該非ブロッキング抗CD99抗体による刺激および化合物への曝露前は該第1の集団および第2の集団におけるT細胞の数が同じである、請求項102に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−505141(P2007−505141A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526358(P2006−526358)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/029769
【国際公開番号】WO2005/025618
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500200535)エンテロス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】