説明

Clostridiumdifficileを特異的に標的とする抗菌薬である、ツリシンCD

本発明は、新規バクテリオシン、それを産生し得る微生物菌株、およびそのバクテリオシンおよび菌株の使用に関連する。そのバクテリオシンは、他の細菌を含めて、Clostridium difficileおよびListeria monocytogenesに対して有効である。またさらなる局面において、本発明は、2つのペプチド、Trn−αおよびTrn−βを含むツリシンCD(thuricin CD)と呼ばれるバクテリオシンを提供し、Trn−αは約2763の分子量を有し、そしてTrn−βは約2861の分子量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭い阻害スペクトルを有するが、特にC.difficileおよびListeria monocytogenesに対して有効であるバクテリオシンを産生する菌株、およびその菌株によって産生されるバクテリオシンに関連する。
【背景技術】
【0002】
病原体における抗生物質耐性の激増(upsurge)およびMRSAおよびC.difficileのような院内感染性の感染症の増加によって、これらの疾患と戦うための新規抗菌化合物を発見する新たな緊急性が存在する。1935年に最初に記載された、C.difficileは、1970年代まで院内下痢の原因病原体として認識されなかった(Georgeら、1978;HallおよびO’Toole、1935)。しかし、Clostridium difficile関連疾患(CDAD)は、今や最もよくある院内感染性下痢であり、そしてナーシングホームおよび高齢者のためのケア施設において、胃腸炎感染および抗生物質関連下痢の主な問題である。実際、英国の健康保護局(health protection agency)は、英国において2007年の最初の6ヶ月間に32,189例のCDADを報告した−(http://www.hpa.org.uk/infections/topics_az/hai/tablesforwebsite/Cdiff_Quarterly_Nov_2007.xls)。CDADの獲得に対して素因を与える主な因子は、抗生物質治療である。1970年代において、クリンダマイシンに続くアンピシリンおよびアモキシシリンの投与が、CDADの誘発要因として関係付けられた;これらは1980年代においてはセファロスポリンに、そしてより最近ではフルオロキノロン類によって置換された(Aronssonら、1985;Bartlett、2006;Winstromら、2001)。C.difficile PCRリボタイプ027の強毒性株の問題も加わり、その発生数は米国、カナダ、およびヨーロッパにおいて増加している(Bartlett、2006)。現在バクテリオシンと呼ばれる、細菌によって産生される抗菌ペプチドは、Lactococcus lactis 亜種 lactisによるナイシンの、RogersおよびWhittierによる発見(1928)によって約80年前に最初に有名になり、それは他の乳酸菌(LAB)および他のグラム陽性菌に対して広域スペクトルの活性を実証した。LABによって産生されるバクテリオシンは、最も広く研究され、そしてそれは概して広域スペクトルの活性を有する傾向があるが、抗菌化合物は、グラム陽性細菌Bacillus(Ahernら、2003;Bizaniら、2005;Cherifら、2003;Cherifら、2001;Seibiら、2007;TeoおよびTan、2005);Clostridium(Kempermanら、2003)、グラム陰性細菌E.coli(Trautnerら、2005)、Shigella(Padillaら、2006)を含む、多くの他の細菌種によって産生される。
【0003】
様々な株のB.thuringiensisに対して以前に行われた研究が、B.thuringiensis菌株、B.cereus菌株、およびListeria monocytogenes菌株に対して殺菌特性を実証する、様々なバクテリオシンを生みだした(Ahernら、2003、Chehimiら、2007、Cherifら、2001、FavretおよびYousten、1989、Grayら、2006a、Grayら、2006b)。しかし、これらのバクテリオシンは、二成分活性(two−component activity)を示さない。
【0004】
Yudinaらによる以前の研究は、嫌気性細菌およびC.butyricum、C.acetobutylicumおよびMethanosarcina barkeriに対して抗菌作用を示すことができる、昆虫病原性の細菌B.thuringiensis(亜種 Kurstaki、galleriae、tenebriois)からの副芽胞結晶(parasporal crystal)のタンパク質(Cryタンパク質)、およびタンパク質限定分解によって得られた、そのいくつかの断片を記載している。特許文献1は、家禽のGITから単離されたB.subtilis(8.5.05に寄託)の新規菌株から単離された、抗菌熱安定性化合物を記載し、それはC.perfringens、C.difficile、Campylobacter jejuni、Camp.coli、およびS.pneumoniaeに対して有効である。特許文献2は、Bacillus(B.thuringiensisを含む)、Clostridium(C.difficileを含む)、Streptococcus、Mycobacterium、およびStaphylococcusのようなグラム陽性細菌に対して使用するための、新規抗生物質化合物の合成を記載する。特許文献3は、B.subtilis、C.difficile、E.coli、Staphylococcus等のような細菌に対する抗菌ペプチドの人工合成および組換え発現を記載する。しかし、これらのペプチドは、広い範囲のグラム陽性細菌に対して、広域スペクトルの阻害を有する。
【0005】
天然に存在するランチビオティクスであるラクチシンおよびナイシンを用いた以前の研究は、これらの細菌由来ペプチドは、バンコマイシンおよびメトロニダゾールのような、通常使用される抗生物質に匹敵する濃度で、C.difficileを殺菌するのに有効であることを示した(Bartoloniら、2004;Reaら、2007)。
【0006】
しかし、これらのランチビオティクスは、LactobacillusおよびBifidobacteriumのような、ヒトの腸の健康に有用であると考えられるものを含む、広い範囲のグラム陽性細菌に対して広域スペクトルの阻害を有する。実際、この研究室における以前の研究は、ラクチシン3147は糞便発酵におけるLactobacillusおよびBifidobacteriumのレベルに負の影響を与えることを示した(Reaら、2007)。
【0007】
従って、この研究の目的は、C.difficileを標的とする、狭いスペクトルの抗菌化合物を産生する細菌を単離することであった。この目的のために、ヒト腸における芽胞形成細菌を標的とした;これはC.difficileに対する抗菌薬の明らかな供給源ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,247,299号明細書
【特許文献2】米国特許第7,144,858号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0213430号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の目的
本発明の目的は、L.monocytogenesおよびC.difficileに対して有効であるが、ヒトまたは動物の健康に有用であると考えられる細菌に対しては有効でない薬剤を提供することである。さらなる目的は、消毒薬または防腐薬として、食料品中のプロバイオティクス成分として、または医薬品組成物として使用し得る、そのような薬剤を含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって、受託番号第41490番でthe National Collection of Industrial and Marine Bacteriaに寄託された、細菌株Bacillus thuringiensis6431、およびそれもListeria monocytogenesおよびClostridium difficileに対して有効であるがBifidobacteriumおよびLactobacillus種に有効でないバクテリオシンをコードする、実質的にそれに類似の菌株が提供される。その菌株は、2007年7月9日に寄託された。
【0011】
都合がよいことに、その菌株は胃腸管のグラム陽性細菌叢に対して有効でないバクテリオシンを産生する。
【0012】
本発明はまた、この細菌株によって産生される、Listeria monocytogenesおよびClostridium difficileに対して有効なバクテリオシンを提供する。
【0013】
またさらなる局面において、本発明は、2つのペプチド、Trn−αおよびTrn−βを含むツリシンCD(thuricin CD)と呼ばれるバクテリオシンを提供し、Trn−αは約2763の分子量を有し、そしてTrn−βは約2861の分子量を有する。そのバクテリオシンは、15分間のインキュベーション後、約85℃まで熱安定性であり、約90℃で活性が減少し、そして約100℃で活性を失う。熱安定であるによって、我々はそのバクテリオシンが熱によって容易に破壊または変質を受けないことを意味する。ツリシンCDは、Clostridium difficileおよびListeria monocytogenesを阻害する能力を有する。ツリシンCDは、pH2〜10の範囲で活性である。
【0014】
都合がよいことに、そのバクテリオシンはBifidobacteriumおよびLactobacillus種に有効でない。そのバクテリオシンは、胃腸管で見出されるグラム陽性細菌に対して有効でなくてよい。都合がよいことに、そのバクテリオシンは、Bacillus cereus、他のBacillus thuringiensis菌株、Clostridium perfringens、B.mycoides、およびB.firmus、Clostridium difficileリボタイプ027、C.tyrobutyricum、C.lithuseburense、およびC.indolisに対しても有効である。有効でないことによって、我々はそのバクテリオシンが、これらの細菌の生存能に影響を与えないことを意味する。
【0015】
そのバクテリオシンは、C.difficileに対して1mlあたりC.difficileの約5×10CFUの殺菌効果を有し得、ツリシンCDが5μMおよび200AU/mlの濃度で存在する場合、それぞれ60分以内および180分以内に殺菌することができる。
【0016】
そのバクテリオシンは、ナノ分子(nanomolecular)濃度で有効である。
【0017】
そのバクテリオシンは、プロバイオティクス菌株Lactobacillus casei 338またはBifidobacterium lactis Bb12の生存能に影響を与えないことが示された。
【0018】
そのバクテリオシンは、表2に示すような阻害スペクトルを有し得る。
【0019】
好ましくは、そのバクテリオシンは、成分ツリシンTrn−αがN末端アミノ酸配列
【0020】
【化1】

を有し、そしてツリシンCD成分Trn−βがN末端アミノ酸配列
【0021】
【化2】

を有するものである。好ましくは、そのバクテリオシンは、Trn−αおよびTrn−β成分が、リーダーペプチド配列有りまたは無しの図3に示すようなアミノ酸配列、またはそれに実質的に類似の配列を有するもの、およびバクテリオシン活性も示すものである。
【0022】
またさらなる局面において、本発明は、ツリシンCD成分Trn−αをコードする遺伝子またはTrn−βをコードする遺伝子を含む宿主細胞を提供する。その宿主細胞はまた、ツリシンCD成分Trn−αおよびTrn−βをコードする遺伝子を含み得る。好ましくは、その遺伝子は、図3に示すような核酸配列、またはそれに実質的に類似であり、そしてバクテリオシン活性もコードする配列を有する。
【0023】
「実質的に類似の」とは、遺伝コードの縮重のために、1つのアミノ酸の別のものとの置換、またはバクテリオシン活性に重要でないアミノ酸配列の領域における変化が、本明細書中で定義した特性を有するバクテリオシン分子中に依然として生じる配列を意味する。
【0024】
本発明はまた、ツリシンCD成分Trn−α、およびツリシンCD成分Trn−βを提供する。
【0025】
上記で定義したような、細菌株、宿主細胞、バクテリオシンまたはツリシンCD成分Trn−αまたはTrn−βを含む消毒薬組成物も提供される。
【0026】
本発明は、上記で定義したような、栄養細胞(vegetative cell)または菌株の芽胞または宿主細胞を含むプロバイオティク培養を提供する。その菌株または細胞を、その菌株がもはや生存可能でないように不活性化し得る。
【0027】
上記で定義したような、細菌株、宿主細胞、バクテリオシンまたはツリシンCD成分Trn−αまたはTrn−βを含む殺芽胞性組成物も提供される。
【0028】
上記で定義したような、細菌株、宿主細胞、バクテリオシンまたはツリシンCD成分Trn−αまたはTrn−βを、薬剤学的に有効な担体または賦形剤と共に含む医薬品組成物も提供される。その医薬品組成物を、注腸調製物として、結腸への標的化送達を有するカプセル封入ペプチドとして、結腸への標的送達のためのカプセル封入プロバイオティクスとして、動物または獣医学的に使用するための調製物として、またはプロバイオティクスまたは精製ペプチドとして調合し得る。
【0029】
Trn−αおよび/またはTrn−βペプチドを、食品中のL.monocytogenesのコントロールのために、食品成分として、生きた細菌の存在無しに使用し得る。本発明はまた、家禽でのC.perfringensのコントロールにおける使用を見出す。
【0030】
消毒薬、医薬品、殺芽胞剤、食品、または他の組成物を、適当な担体または賦形剤と共に調合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)B.thuringiensis DPC6431の細胞を含まない上清によるC.difficile ATCC43593の阻害、および(B)プロテイナーゼKの効果によるタンパク質性の性質の証明。
【図2】(A)P1およびTrn−βの分離を示すツリシン6431のRP−HPLCクロマトグラム;(B)Trn−αおよび(C)Trn−βの分子量を示すMALDI−TOF MSクロマトグラフ、および(D)ある濃度範囲にわたる両ペプチドの等モル濃度の効果を示す、両ペプチドのWDA。
【図3】ツリシンペプチドTrn−αおよびTrn−βをコードする遺伝子の配向。
【図4】C.difficile ATCC43493の増殖を50%阻害するために必要なツリシンCD Trn−αおよびTrn−βの濃度。
【図5】37℃における、C.difficile R027、L.monocytogenes、L.paracasei338およびB.lactis Bb12の増殖に対するツリシンCD(200AU/ml)の効果(●コントロール;○+200AU/mlのツリシン)。
【図6】(A)0時間、8時間、および16時間に加えた場合の、モデル糞便発酵におけるC.difficileリボタイプ001の増殖に対する500μg/mlのツリシンCDの効果。(B)発酵過程の間のツリシンCDの活性。(C)モデル糞便環境における0時間(黒線)および4時間発酵後の、ツリシンペプチドTrn−αおよびTrn−βのRP−HPLCによる検出。
【図7】37℃でインキュベートした、(A)模擬胃液中2時間後の、(B)模擬回腸液中5時間後の、(C)模擬結腸液中9時間後の、(D)ブタ胃液中2時間後の、および(E)ブタ回腸液中5時間後のツリシンCDの安定性。
【発明を実施するための形態】
【0032】
使用した菌株
C.difficile ATCC42639を、Well Diffusion Assay(WDA)の標的菌株として使用した。C.difficile R027 NAP1を、タイムキル研究(time kill study)におけるバクテリオシン感受性のために使用した。バクテリオシン産生培養物の阻害スペクトルを決定するために使用した標的細菌およびその供給源の完全なリストを、培地および増殖条件と共に表1に概略を示す。B.cereus NCIMB700577およびB.thuringiensis NCIMB701157を、gyrBプライマーを用いたPCR反応の陽性コントロールとして使用した。
バクテリオシン産生培養物の単離
病気のおよび健康な個人双方からの糞便サンプルを、研究室において受け取り、そして−80℃で凍結した。分析の日に、サンプルを室温で解凍し、そして等しい容量のエタノールと混合し、そして室温で約30分間置いた。サンプルを続いて、嫌気性希釈剤で連続的に希釈し、100μlをWilkens Chargrin Anaerobic Agar(WCAA)の表面に広げ、そして嫌気性チャンバー中で、37℃で5日間増殖させた。生じたコロニーを、Clostridium difficile ATCC43593の対数期培養物を1.25%で播種した約10mlのReinforced Clostridium Agar(RCA)を用いて覆った。そのプレートをさらに18時間インキュベートし、そして覆った培養物の阻害ゾーンを検査した。明らかな阻害ゾーンを示すコロニーを、滅菌メスを用いて寒天の覆いを最初に除去して、新しいWCAA上に継代培養した。約30,000コロニーをスクリーニングし、そして覆ったC.difficile菌株に対して強力な抗菌活性を示す1つのコロニーを精製し、そしてMicrobank Beads上で、−80℃で保存し、そしてDPC6431と命名し、そして産生される阻害物質をツリシンCDと命名した。
【0033】
遺伝子型の特徴付け
DPC6431の16SrDNA配列決定
Simpsonら、2003によって記載されたように、B.thuringiensis DPC6431の一晩のブロス培養物からゲノムDNAを単離し、そしてPCRによって増幅した。16SrDNA配列の比較を、菌株を特定の種に帰属させることを可能にするBLASTプログラムを用いて得た。
【0034】
gyrBプライマーを用いた種レベルまでの同定
Yamadaら(1999)によって記載されたような配列を有する、B.cereus、B.thuringiensis、およびB.anthracisのgyrB遺伝子に対する種特異的オリゴヌクレオチドプライマーを、MWGから購入した。PCR産物を、分子マーカーとして100bpラダーを用いて1.5%アガロースゲルで分析し、AlphaImager3400を用いて視覚化した。B.cereus NCIMB700577およびB.thuringiensis NCIMB 701157を、陽性コントロールとして使用した。B.anthracisが病原性の特質(pathogenic status)であるため、B.anthracisの陽性コントロールは無かった。
【0035】
細胞を含まない上清からのツリシンCDの生産
B.thuringiensis DPC6431を、BHIブロスにおいて約6時間、ストックから好気的に増殖させ、そしてBHIにおいて18時間、0.1%で新しいBHIに継代培養した。増殖後、培養物を8200gで10分間、2回遠心した。Ryanら(1996)によって記載されたように、ウェル拡散アッセイ(well diffusion assay)(WDA)を用いて活性を決定した。ある範囲の標的細菌に対する活性を、WDAによって決定した。培養物を、表1に概略を示すような様々なブロス培地および温度で一晩増殖させた。20mlの適する寒天培地に、100μlの標的細菌を播種し、そして一旦凝固したら、50μlのB.thuringiensis DPC6431の細胞を含まない上清(CFS)を寒天に作ったウェルに加えた。プレートを、表1に概略を示したような様々な標的細菌に適当な条件下でインキュベートした。阻害ゾーン(mm)を測定し、そしてゾーンの直径を測定することによって、相対的な感受性を決定した。≦9mmのサイズのゾーンを+とし、10−15mmを++とし、16−21mmを+++とし、≧22mmを++++とした。
【0036】
酵素的分解、熱およびpHに対するツリシンCDの感受性
細胞を含まない上清を、25mg/mlの濃度で、以下の酵素に対する感受性に関して試験した:ペプシン、トリプシン、ペプチダーゼ、α−キモトリプシンV111型、α−キモトリプシン11型およびプロテイナーゼK。全ての酵素を、Sigmaから購入した。細胞を含まない上清を、酵素と37℃で1時間インキュベートした。酵素処理後の活性を、C.difficile ATCC43593を標的細菌として用いて、ウェル拡散法を用いて決定した。5μlのプロテイナーゼK(6.5mg/ml)を、サンプルを含むウェルの端に適用することによって、抗菌剤のプロテイナーゼKに対する感受性も決定した。
【0037】
ある範囲のpHにおける活性を、0.5MのHClまたは1MのNaClのいずれかを用いてpHを2から9に調整することによって、CFSにおいて決定した。標的細菌に対する酸または塩基の影響を、そのpHの範囲に調整した未播種ブロス培地を用いて決定した。標的株としてC.difficile ATCC43593を用いたWDAアッセイを用いて活性を決定した。CFSを37℃から100℃の範囲の温度で15分間加熱することによって、熱感受性を決定した;コントロールを37℃でインキュベートした。標的細菌としてC.difficile ATCC43593を用いたWDAを用いて活性を決定した。
【0038】
増殖中のツリシンCD産生の決定
B.thuringiensis DPC6431を、BHIブロスにおいて2回継代培養し、そして次いで再び1%でBHIブロスに播種した;600nmにおける吸光度を測定することによって増殖をフォローした。抗菌剤産生の決定のために増殖中間隔をおいて取ったサンプルを、8200gで10分間、2回遠心し、連続希釈し、そして各希釈物の50μlを、C.difficile ATCC43593をまいた寒天プレートのウェルに播種した。活性単位をWDAによって決定した。
【0039】
ツリシンCDの精製および分子量決定
ツリシンCDの産生:Tryptone Yeast Broth(TYB)を以下のように作製した:Tryptone(Oxoid)2.5g;酵母抽出物(Oxoid)5.0g;MgSO7HO 0.25g;MnSO4HO 0.05gを、900mlの蒸留水に溶解した。121℃で15分間オートクレーブする前に、プロパン−2−オール洗浄XADビーズ(Sigma−Aldrich)を含むカラムを通すことによって、培地を清澄にした。使用前に、フィルターで滅菌したグルコースおよびβ−グリセロリン酸塩を加えて、それぞれ10gおよび19g/lの最終濃度および1lの最終容量を得た。
【0040】
Bacillus thuringiensis DPC6431を、使用前に37℃で、BHIブロスに2回継代培養した。2リットルのTYBに、0.1%の培養物を播種し、そして37℃で一晩、撹拌しながらインキュベートした。培養物を8,280gで15分間遠心した。細胞ペレットおよび上清を保持した。細胞を、1リットルのブロスあたり、200mlの70%プロパン−2−オールpH2.0に再懸濁し、そして4℃で4時間撹拌した。その培養上清をXADビーズに通し、1lの蒸留水で予洗した。カラムを500mlの30%エタノールで洗浄し、そして阻害活性を400mlの70%プロパン−2−オールpH2.0に溶出し、そして保持した(S)。70%プロパン−2−オールpH2.0に再懸濁した細胞を、8,280gで15分間遠心し、そして上清(S)を保持した;SおよびSを合わせた。回転式エバポレータ(Buchi)を用いてプロパン−2−オールを蒸発させ、そしてサンプルを、メタノールおよび水でプレ平衡化した6g(20ml)のPhenomenexC−18カラムにアプライした。そのカラムを2カラム容量の30%エタノールで洗浄し、そして阻害活性を1.5カラム容量の70%プロパン−2−オールpH2.0に溶出した。この調製物を、回転式蒸発(rotary evaporation)を用いて濃縮した後、以下のようにHPLCを用いてペプチドを分離した:約2mlのアリコートを、45%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸TFAで前に平衡化したPhenomenex(Phenomenex、Cheshire、UK)C18逆相(RP)−HPLCカラム(Primesphere 10μC18−MC30、250×10.0mm、10μm)にアプライした。そのカラムを続いて、9.9ml/分の流速で、4−40分、0.1%TFAを含む45%アセトニトリルから0.1%TFAを含む65%アセトニトリルまでの勾配で展開した。生物学的に活性な画分を、WDAにおいて、標的細菌としてC.difficileを用いて同定した。活性ペプチドを含む画分をプールし、凍結乾燥し、そして70%プロパン−2−オールpH2.0において必要な濃度で再構築し、そして使用まで−20℃で凍結した。続く希釈を、滅菌50mMリン酸塩緩衝液pH6.5で行った。
【0041】
ツリシンCDの分子量決定:Axima CFRプラスMALDI TOF質量分析機(Shimadzu Biotech、Manchester、UK)を用いて、生物学的に活性な画分に対して質量分析を行った。マトリックス溶液(−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸、10mg/mlアセトニトリル中−0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸)の0.5μlのアリコートを、標的の上に置き、そして5秒間おいてから除去した。あらゆる残留溶液を空気乾燥させ、そしてサンプル溶液をプレコーティングしたサンプルスポットに置いた;0.5μlのマトリックス溶液をその置かれたサンプルに加え、そして空気乾燥させた。続いてサンプルを陽イオン反射(positive−ion reflectron)モードで分析して、分子量を決定した。
【0042】
生物学的に活性なペプチドのアミノ酸配列の決定
生物学的に活性な画分のN末端アミノ酸決定を、Aberdeen Proteome Facility、University of Aberdeen、Aberdeen、Scotland、UKにおいて、エドマン分解によって行った。
【0043】
ツリシンCDのヌクレオチド配列の決定
2つのペプチドの部分的なアミノ酸配列に基づく縮重プライマーを、以下の配列でデザインした:
【0044】
【化3】

染色体DNAを、Qiagen QiAamp DNA Mini Kitを用いて、B.thuringenisisから抽出した。以下の条件を用いて、抽出したDNAに対してPCRを行った:94℃×5分;94℃×1分、64.5℃×1分、72℃×1分、64.5℃−69.5℃の温度勾配で25サイクル;最終的な伸長工程72℃×7分。Trn−α−F/FC/Trn−β−R/FCプライマーの組み合わせは、約220bpのPCR産物を生じた。この産物を、Qiagen Qiaquick PCR精製キットを用いて精製し、そしてInvitrogen TOPO TA Cloningキット(A)を用いてクローニングした。製造会社の説明書に従って用いて、EcoR1(NEB)による組換えプラスミドの制限分析によって、クローニングされた断片の存在を確認した。次いで組換えプラスミドDNAを、T7およびT3プライミング部位を用いて、Lark(Windmill Road Headington OX3 7BN Oxford、UK)によって商業的に配列決定した。配列の構築および分析を、Lasergeneソフトウェアパッケージ(DNASTAR、Madison、WI)のSeqBuilderおよびSeqmanプログラムを用いて行った。コンセンサス配列をさらに、http://www.ncbi.nlm.nih.govから入手可能な、Blastn、BlastpおよびtBlastxプログラムを用いて、データベース検索によって分析した。
【0045】
周囲のDNA領域を得るためのインバースPCR
縮重PCR(上記)によって単離された、2つのペプチドをコードする断片のDNA配列に基づいて、インバースPCRプライマーを以下の配列でデザインした:
【0046】
【化4】

染色体DNAを、Qiagen QiAamp DNA Mini Kitを用いて、B.thuringenisisから抽出し、そして製造会社の説明書に従って、制限酵素HindIII(NEB)で消化した。次いで、単量体分子の形成を促進することが公知の濃度において、消化したDNAを分類(relegate)した。製造会社の説明書に従って、Expand Long Template DNAポリメラーゼ(Roche)を用いて、インバースPCRを行った。これは、約4500bpの産物の増幅を引き起こした。この産物を、Qiagen Qiaquick PCR精製キットを用いて精製し、そしてInvitrogen TOPO TA Cloningキット(A)を用いてクローニングした。製造会社の説明書に従って用いて、EcoR1(NEB)による組換えプラスミドの制限分析によって、クローニングした断片の存在を確認した。次いで組換えプラスミドDNAを、T7およびT3プライミング部位およびプライマーウォーキングを用いて、Lark(Windmill Road Headington OX3 7BN Oxford、UK)によって商業的に配列決定した。配列の構築および分析を、Lasergeneソフトウェアパッケージ(DNASTAR、Madison、WI)のSeqBuilderおよびSeqmanプログラムを用いて行った。コンセンサス配列をさらに、http://www.ncbi.nlm.nih.govで入手可能な、Blastn、BlastpおよびtBlastxプログラムを用いて、データベース検索によって分析した。
【0047】
比活性の決定
96穴マイクロタイタープレートを用いて、ツリシンCDのMIC50を決定した。MIC50は、C.difficile ATCC43493の増殖の50%阻害が起こるペプチドの濃度として定義した。前に沸騰および冷却した強化クロストリジウム培地(RCM)で1:10に希釈した、150マイクロリットルの3つの一晩の同型培養物を、嫌気性チャンバー中で、96穴マイクロタイタープレートのウェルに3組で播種した。ツリシンCDTrn−αおよびTrn−βを、単独でおよび組み合わせて、様々な濃度でウェルに加え、そして滅菌50mMリン酸塩緩衝液で最終的な容量を200μlにした。コントロールウェルは、150μlの培養物および50μlの緩衝液(陽性コントロール)、または150μlの未播種ブロス培地および50μlの緩衝液(ブランク)を含んでいた。37℃で5時間の嫌気性インキュベーション後、600nmにおける吸光度を記録した。3組の測定値を平均し、そして未播種培地のOD600nm値を、各値から引いた。50%増殖阻害を、コントロール培養物の最終的なOD600nm+/−0.05の半分として決定した。50%阻害を引き起こす、Trn−βと組み合わせたTrn−αの濃度をプロットして、アイソボログラムを作成した。2つのペプチドの比活性および最適な比を、x軸およびy軸の交点で決定した。
【0048】
殺菌曲線を用いたツリシンCDの活性の実証
C.difficile R027NAP1、L.monocytogenesNCTC5348、Lb.casei338およびB.lactis Bb12に対するツリシンの効果を、Reinforced Clostridium Medium(RCM Merck)、Brain Heart Infusionブロス(Merck)、MRS(de Mann−Rogosa−Sharpe)培地(Difco)および0.05%システインを含むMRSにおいてそれぞれ決定した。3つの独立な培養物を各菌株に関して調製し、そして37℃で一晩増殖させた。3つの複製物の1ml容量の滅菌2倍強度ブロス培地を各菌株に関して調製し、そしてテスト細菌を播種して、10−10/mlの最初の細胞数を得た。ツリシンを加え、必要な濃度にして、そして滅菌蒸留水で容量を2mlにした。コントロールではバクテリオシンを加えず、容量を滅菌水で置き換えた。間隔をあけてサンプルを抜き取り、連続的に希釈し、そして菌株によって、RCA、BHI寒天、MRS寒天または0.05%システインを含むMRS寒天にまいた。37℃でインキュベートした24時間(L.monocytogenes)後または48時間(C.difficile、Lb.casei338およびB.lactis Bb12)後に、プレートを計測した。
【0049】
最小発育阻止濃度の決定
C.difficileリボタイプ001、106、および027を、−80℃のストックから取り、そして7%の繊維素を除去したウマ血液を含むFastidious Anaerobic Agar上で増殖させた。使用前に、コロニーを3つの10ml容量のRCMのそれぞれに移し、そして37℃で一晩増殖させた。次いで培養物を、10mlの新しいRCMに1%で継代培養した。3つの複製物を各菌株に関して設定した。培養物を嫌気的に37℃で6時間増殖させた。バンコマイシンおよびメトロニダゾールの溶液を水中で調製し、そしてツリシンの溶液をストック溶液から50mMのリン酸塩緩衝液pH6.5で希釈した。抗菌化合物の3組の連続2倍希釈物(100μl)を、各化合物に関してマイクロタイタープレート内に調製した。C.difficile菌株を2倍強度のRCM中で1:10に希釈し、そして100μlを各ウェルに加えた。各菌株のコントロールを、抗菌薬を加えずに設定した。そのマイクロタイタープレートを、嫌気的に37℃で16時間インキュベートし、そしてマイクロタイタープレートリーダーを用いて、インキュベーション後にプレートのODを測定した。MICを増殖の証拠が存在しない濃度として定義した。
【0050】
ツリシンCDによるC.difficileの溶解の実証
C.difficileに対するツリシンCDの溶解効果を、Reaら(2007)によって記載されたように行った。
【0051】
糞便発酵におけるツリシン安定性の決定
C.difficile接種材料の調製:C.difficile DPC6537(PCRリボタイプ001)を、−80℃のストックから取り、そしてFastidious Anaerobic Agar上に画線し、そして嫌気的に37℃でインキュベートした。実験前の夜に、約1コロニーを、前に沸騰および冷却した10mlのRCMに播種し、そして嫌気的に37℃でインキュベートした。
【0052】
糞便培地の調製:糞便増殖培地を、以下のように、FooksおよびGibson(2003)によって記載された方法を少し変更して調製した。成分を800mlにし、pHを6.8に調整した。160mlを各発酵容器に加え、そして121℃で15分間オートクレーブした。接種の前に、糞便培地を、Oを含まない窒素で約1時間噴霧した。20%の糞便スラリーを、使用の前に沸騰し、使用の直前に冷却し、そしてストマッカー(stomacher)を用いて1分より短く混合した、0.05%のシステインを含む50mMのリン酸塩緩衝液において、新しい糞便サンプルから作成した。2つの発酵槽に、35mlのスラリー調製物および2mlのC.difficileの一晩培養物を播種した。テスト容器に、1mlの100mg/mlのツリシンを、0、8および16時間インキュベーション時に加え、そしてC.difficileおよびBifidobacteria種の両方の微生物学的分析のために、両方の容器から0、4、8、12、16、20および24時間にサンプリングした。WDAおよびMALDI−TOF MSを用いたツリシン活性の分析のためにもサンプルを取った。
【0053】
ツリシンの安定性:発酵中のツリシンの安定性を、以前に記載されたように、C.difficileを播種したRCM寒天プレートを用いたWDAを用いて測定した。1mlのサンプルをまた、遠心し、そして活性化した1mlのC18SPEカラムを通し、そしてペプチドを70%のプロパン−2−オールで溶出した。個々のペプチドの存在を、この文書において前に記載されたように、RP−HPLCを用いて測定した。
微生物学的分析:C.difficileをCCEY寒天(LabM)上で、そしてBifidobacterium種を0.05%のシステインおよび50mgのムピロシン/lを含む修飾MRS寒天上で、37℃におけるインキュベーションの48時間および72時間後にそれぞれ数えた。
【0054】
これらの実験を2組行った。
【0055】
模擬の胃液およびブタ胃液におけるツリシンCDの安定性
ツリシンCDの安定性に対する、模擬の胃液、回腸液、および結腸液の影響
C.difficile64539を一晩増殖させ、そしてReinforced Clostridium Agar(RCA)に1.25%で播種した。Breumerら(1992)によって概略が述べられたように、模擬の胃液、回腸液、および結腸液を調製した。精製ツリシンCDを、70%IPA中で100mg/mlにした。70μl(1mg/mlの最終濃度)のツリシンを、7000μlのブタ胃液および回腸液に加え、そして37℃でインキュベートした。間隔をおいてサンプルを取り、そしてC.difficileを播種したプレートを用いたWDAによって活性を測定した。サンプルを、MALDI−TOF MSを用いて、Trn−αおよびTrn−βペプチドの存在に関してもアッセイした。
【0056】
ツリシンCDの安定性に対するエキソビボのブタ胃液および回腸液の影響
C.difficile64539を一晩増殖させ、そしてReinforced Clostridium Agar(RCA)に1.25%で播種した。精製ツリシンCDを、上記で記載したように調製した。7mlのブタ回腸液および胃液を、12,000rpmで15分間遠心して残屑を除去した。70μl(1mg/ml)のツリシンを、7000μlのブタ胃および回腸液に加え、そして37℃でインキュベートした。間隔をおいてサンプルを取り、そしてWDAを用いて活性を測定し、そしてMALDI−TOF MSを用いてTrn−αおよびTrn−βペプチドの存在に関してチェックした。
【0057】
結果
この研究の目的は、胃腸管内から、C.difficileに対して高い活性を有するが胃腸管の常在菌叢の最少の混乱しか引き起こさない、狭いスペクトルのバクテリオシンを産生する細菌を単離することであった。
【0058】
バクテリオシンプロデューサーの最初のスクリーニング
健康および病気の成人の両方からの、ある範囲の糞便サンプルからスクリーニングした約30,000のコロニーから、1つのコロニーが、C.difficileオーバーレイ培養の大きな阻害ゾーンを生じることを示した(図1)。このコロニーを、IBSを有する患者の糞便サンプルから単離した。このコロニーの精製およびBHIブロスにおける増殖は、C.difficileに対して活性な、強力な抗菌化合物が、発酵培地中に産生されたことを示した;活性はプロテイナーゼKによる処理で失われ、その抗菌物質はタンパク質性の性質であることを示した(図1)。この培養物を、Moorepark Food Research Centreの培養コレクションにストックし、そしてDPC6431と命名した;そのバクテリオシンをツリシンCDと命名した。
【0059】
種レベルまでのDPC6431の同定
DPC6431の16SrDNA配列決定は、B.cereus/B.thuringiensis/B.anthracisに対する、その菌株の最も高い相同性(96%)を示した。La Ducら(2004)は、B.anthracis、B.cereus、およびB.thuringiensisは全て、系統学的に非常に密接なクレイド(B.cereusグループ)にクラスター化しており、そして従って16srDNA配列決定によっては、お互いに区別できないと述べた。続いてgyrBプライマーを用いて、DPC6431をB.thuringiensisと同定した。B.cereusまたはB.thuringiensisの正確なサイズ(それぞれ365および368)に対応するPCR産物を、これらの細菌それぞれの陽性コントロールによって得た。B.cereusまたはB.anthracisのgyrBプライマーを、B.thuringiensisDPC6431由来のDNAで試験した場合には、PCR産物は得られなかった。B.anthracisが病原性の特質であるために、そのプライマーの陽性コントロールは無かった。
【0060】
DPC6431由来のバクテリオシンの特徴付け
最も高い濃度のツリシンCDが、おそらく胞子形成の開始と一致して、増殖の対数期後期および定常期の間に産生された。増殖の定常期の間、活性は安定なままであった。指数関数的増殖期の間に、pHは最初の約7.5のpHから約5.8まで低下した;定常期の間に、pHは再びその最初の値近くまで上昇した(データは示していない)。
【0061】
細胞を含まない抽出物の、25mg/mlのα−キモトリプシンおよびプロテイナーゼKとのインキュベーションは、活性の完全な喪失を引き起こした;ペプシンまたはトリプシンとのインキュベーションは、37℃で1時間のインキュベーション後、それぞれ50%または20%の活性の減少を示した。ツリシンの細胞を含まない上清は、2−10のpH範囲を通じて活性であり、そしてそれぞれの温度で15分インキュベートした後、85℃まで熱安定性であり、90℃で活性の減少があり、そして100℃で活性は失われた。
【0062】
B.thuringiensis6431の阻害スペクトル
B.thuringiensis6431の細胞を含まない上清は、WDA法を用いてある範囲のグラム陽性およびグラム陰性細菌に対して試験した場合、B.cereus、他のB.thuringiensis菌株、B.mycoidesおよびB.firmusのような、密接に関連したBacillus種を阻害する、狭い阻害スペクトルを示した;B.subtilisまたはB.coagulansに対して阻害は検出されなかった。Clostridium種では、C.difficileリボタイプ027(NCTC13366)を含む試験した全てのC.difficile分離菌は、DPC6431の培養上清に対して非常に感受性であり、大きな阻害ゾーンを示した。C.tyrobutyricum、C.lithuseburense、およびC.indolisも阻害されたが、試験した他のClostridium種は阻害されなかった(C.sporogenes)または弱く阻害されるのみであった(C.histolyticumおよびC.perfringens)。試験した他のグラム陽性病原体のうち、Listeria monocytogenesのみがツリシンCDに感受性であった。試験したlactobacillus種のうち、L.fermentumのみが、ツリシンCDによって強力に阻害され、全ての他の種は非常に弱く阻害されるのみであった(L.crispatusおよびL.johnsonii)か、または全く阻害されなかった。試験したビフィズス菌株は、ツリシン6431に対して感受性ではなかった。ツリシンCDは、試験したあらゆるグラム陰性細菌に対して活性を示さなかった。B.thuringiensis6431の完全な阻害スペクトルを、表1で概略を示す。
【0063】
【表1−1】

【0064】
【表1−2】

ブレインハートインフュージョンブロス;0.05%のシステインを含む修飾MRS;Campylobacter寒天;Reinforced Clostridium寒天;Trypticaseダイズ寒天;乳酸ナトリウム寒天;25mMのショ糖を含むTrypticaseダイズ寒天
(阻害ゾーン(mm)を測定し、そしてゾーンの直径を測定することによって、相対的な感受性を決定した。サイズ≦9mmのゾーンを+、10−15mmを++、16−21mmを+++;≧22mmを++++とした)
ツリシンCDの特徴付け
XADビーズを用いたツリシンの精製およびRP−HPLCを用いた活性成分の分離は、それぞれ2786および2883の分子量を有する、26分および34分における2つのよく分離したピークを生じた(図2A)。これらの疎水性ペプチドを、ツリシンCD Trn−α(分子量2883)およびTrn−β(分子量2786)と命名した(図2BおよびC)。活性は、細胞を含まない上清および細胞ペレットのプロパン−2−オール抽出物の両方に存在し、ツリシンは細胞壁にも結合することを示した。両方のペプチドのWDA研究は、それは二成分バクテリオシンであることを示す;Trn−αは単独で存在する場合に活性を有するが、その活性はTrn−βの存在によって増強される。低い濃度(約2.5μM)では、WDAを用いた活性に対して両方のペプチドが必要である(図2D)。
アミノ酸配列の解明
エドマン分解により、ツリシンCDTrn−αの最初の22個のアミノ酸のアミノ酸配列
【0065】
【化5】

およびツリシンCDTrn−βの22アミノ酸
【0066】
【化6】

を同定した。繰り返しの努力にも関わらず、この技術を用いてさらなる配列データを決定することは不可能であった。上記の配列をNCBIデータベース
http://www.ncbi.nlm.nih.gov
と比較した場合に、相同的な配列は同定されなかった。
【0067】
ヌクレオチド配列の最初の決定
2つのペプチドをコードする遺伝子の方向を、図3に示す。得られたPCR産物は、Trn−βペプチドのC’末端およびリボソーム結合部位およびTrn−βのプロモーター配列、および開始コドンメチオニンおよびN末端アミノ酸配列を含む。
【0068】
インバースPCR産物の配列分析
2つのペプチドの完全なヌクレオチド配列を、下記で概略を示すような、開始コドンメチオニンおよびリーダーペプチド配列と共に決定した。
【0069】
【化7−1】

両方のペプチドの完全なアミノ酸配列を決定し、そしてリーダーペプチドと共に下記に示す。リーダーペプチドは
【0070】
【化7−2】

において切断される。
【0071】
【化8】

周辺領域の配列分析は、仮定のタンパク質の前に位置する上流の推定プロモーター、続く2つのABCトランスポーターシステムおよび次いでTrn−αおよびTrn−βペプチドを明らかにする。3つの異常なタンパク質である、2つのラジカルS−アデノシルメチオニンSAMタンパク質およびC末端プロテアーゼがペプチドの下流に位置する。
【0072】
ツリシンの比活性
アイソボログラム(図3)は、個々のペプチドとして存在する場合、ツリシンTrn−βのMIC50(0.5μM)は、Trn−α(5μM)より10倍低いが、それらのペプチドを組み合わせた場合、0.025μMのTrn−αと組み合わせたときのTrn−βのMIC50は0.05μMに低下することを示し、低濃度のTrn−αを加えた場合にツリシンTrn−αを100倍より活性にし得ることを示す。これらの結果は、低濃度(<1μM)で組み合わせた場合、2:1のTrn−β:Trn−αの比で組み合わせた場合、2つのペプチドは、C.difficileに対して非常に阻害性であることを示す。
【0073】
ツリシンCDの殺菌特性を、図5で実証する;最初の実験は、殺菌曲線を用いて、C.difficileを殺菌するために必要なツリシンの濃度を決定した。200AU/mlのツリシンが、C.difficile PCRリボタイプ027の生細胞を、2時間以内に約106//mlからゼロまで減少させた。同じ濃度のツリシンが、L.monocytogenesの細胞数を1.5 log サイクル(cycle)減少させ、そして同じ時間でプロバイオティクスのLb.casei338およびB.lactis BB12の生存能に影響を与えなかった(図5)。ツリシンCDを対数的に増殖するC.difficileに加えることによって、OD600nmが徐々に減少した;このODの減少は、細胞内酵素のアセテートキナーゼの増殖培地中への放出と同時に起こった。対照的に、ツリシンを有さないコントロールサンプルにおいて、アセテートキナーゼの濃度の増加はなかった。
【0074】
ツリシンCDはまた、0、8、および16時間に加えた場合、モデル糞便環境において、C.difficileリボタイプ001に対しても有効である(図6A)。10cfuのC.difficileリボタイプ001/mlを加えた糞便発酵物は、500μgのツリシンを0、8、および16時間に加えた場合、16時間のインキュベーション後のコントロールと比較して、C.difficileが1000倍以上減少したことを示した。ツリシンCDの活性を、図6Bで示すように、発酵の過程の間にマッピングした。明らかに見られ得るように、0、8、および16時間に500μgのツリシンを加えることは、C.difficileの増殖の低下を引き起こした。ツリシンペプチドTrn−αおよびTrn−βを、モデル糞便発酵において、0時間(黒線)および4時間の発酵後に、RP−HPLCによって検出した(図6C)。ツリシンの存在は、16時間までのインキュベーションで、コントロールと比較したBifidobacteriaの数に影響を与えなかった。
【0075】
模擬の胃液(図7A)、回腸液(図7B)および結腸液(図7C)における、ツリシンペプチドTrn−αおよびTrn−βの安定性に対する研究は、ツリシンCDをそれぞれ胃液、回腸液、および結腸液において2、4、または9時間インキュベートした場合、いずれの模擬消化管環境においても、活性の低下がなかったことを実証した。さらに、エキソビボでそれぞれブタ胃液(図7D)および回腸液(図7E)においてツリシンペプチドTrn−αおよびTrn−βを2時間および5時間インキュベートすることも、活性の低下を示さないことを実証した。ツリシンの最小発育阻止濃度の決定の結果は、下記の表2に示すように、C.difficileの臨床的に重要なリボタイプは、現在治療に使用されている抗生物質バンコマイシンおよびメトロニダゾールと比較した場合、ツリシンにより感受性であることを示す。リボタイプ001および106は共通して、それぞれアイルランドおよび英国の病院におけるCDADの流行に関連しており、一方リボタイプ027は、症状の重症度の増加および罹患率の増加に関連しており、毒素産生が高まっているために、治療に対してより抵抗性である疾患を生じる。
【0076】
【表2】

考察
病院および高齢者のための施設における、世界的なC.difficileの高い発生率のために、この疾患の治療に対する根治的なアプローチを考えなければならない。二成分ランチビオティクス、ラクチシン3147は、低い濃度でC.difficileを殺菌するのに非常に有効であることが示されたが、それは広域スペクトルの抗生物質であるので、単純な糞便発酵において、C.difficileを殺菌するために必要な濃度で、LactobacillusおよびBifidobacterium集団にも影響を与えた(3log サイクル)(Reaら、2007)。
【0077】
ここで報告される研究は、この問題に取り組むために、胃腸管において、抗菌剤産生細菌の供給源を探索することに焦点を合わせた。その目的は、C.difficileに対して強力な活性を有するが、消化管の微生物叢の混乱ができるだけ少ない、狭いスペクトルのバクテリオシンプロデューサーを単離することであった。糞便サンプルから約30,000コロニーをスクリーニングした結果として、1つのコロニーが、C.difficileオーバーレイの阻害を示すことが検出された。糞便サンプルをエタノールで前処理して、芽胞形成細菌の単離を促進した。低い希釈でただ1つのサンプルからただ1つの抗菌剤産生コロニーが単離されたという事実は、単離されたB.thuringiensis菌株DPC6431が、消化管微生物叢の主な構成要素ではないことを示唆する。
【0078】
DPC6431によって産生される抗菌ペプチド、ツリシンCDの特徴付けは、その抗菌阻害スペクトル(WDAを用いた)は狭く、そしてPCRリボタイプ027を含むC.difficile分離菌に対しては非常に有効であるが、LactobacillusおよびBifidobacterium集団のような、有用な細菌叢に対してはほとんどまたは全く活性を有さないことを実証した。
【0079】
B.thuringiensisは、芽胞形成グラム陽性昆虫病原体であり、長い間生物学的害虫管理において広範囲に使用されてきた。バクテリオシンは、いくらかのB.thuringiensis菌株から以前に同定された(Ahernら、2003;Barboza−Coronaら、2007;Chechimiら、2007;Cherifら、2003;Cherifら、2001;FavretおよびYousten、1989;Grayら、2006a;Grayら、2006b;Kamounら、2005)。Ahernら、2003は、B.thuringiensisの菌株からBLIS物質を特徴付け、その菌株はツリシン439aおよびツリシン439bと命名された2つの活性ペプチドを産生した;どちらのペプチドも、抗菌活性を示したが、二成分活性は報告されなかった。文献の調査から、ツリシン6431の配列および分子量は、B.thuringiensis439によって産生されるものと最も類似している。Ahernら(2003)は、2つのペプチド439aおよび439bのアミノ酸配列は同一であるが、それらのペプチドは異なる分子量を有することを報告した。ツリシン439a/bに関して報告された配列は、2つの同定されていないアミノ酸(x)を含み、それは著者らがおそらくシステインであろうと示唆しており、従って、B.thuringiensis6431および439由来のペプチドの最初の19アミノ酸において、ちょうど2つのアミノ酸の違いがある(バリンの代わりにシステイン、およびバリンの代わりにグルタミン酸)。しかし、ツリシンCDのTrn−αは、ツリシン439ペプチドと顕著に異なる。ツリシンCDは、ある範囲のClostridium種に対して非常に活性であることが示されたが、ツリシン439に関しては、抗クロストリジウム活性は報告されなかった(Ahernら、2003)。ツリシンCDおよび439のアミノ酸配列および分子量および活性スペクトルの間の比較を下記の表3に示す。
【0080】
【表3】

ツリシンペプチドのペプチド1およびペプチド2をコードする遺伝子の核酸配列および方向を、図3に示す。NCBIデータベースの検索は、本明細書で同定された配列と相同的な配列を示さなかった。
【0081】
ツリシンCDの、MALDI−TOF MSによって(2763および2861)、およびアミノ酸配列から(2770および2864)決定された分子量間の不一致は、翻訳後修飾の結果のようである。Trn−αおよびTrn−βペプチドのDNA配列から予測される分子量、それぞれ2769Daおよび2876Daは、MS(質量分析)から得られたものと6質量単位異なる。Trn−αに関して、質量における違いは、Ser21、Thr25、およびThr28それぞれからの2つの水素原子の喪失を示し、そしてTrn−βに関してはThr21、Ala25、およびTyr28が全て予測されるよりも2質量単位軽いことを示唆する。両方のペプチドのCys残基は、同じ位置(残基5、9、および13)にあり、一方翻訳後修飾は同じ位置で起こる(残基21、25、および28)。
【0082】
ツリシンCDは、広いpH範囲で活性であり、そして中程度に熱安定性であり、95℃で15分間まで活性を保持する。MIC50研究は、単一のペプチドとして存在する場合、0.5および5μM(それぞれTrn−αおよびTrn−β)と低い濃度で、C.difficileの非常に強力な阻害剤であることを示すが、両方のペプチドが存在する場合にはMIC50は0.05μMに減少し、ツリシンは、低濃度でC.difficileに対して高度に活性な、二成分バクテリオシンであることを示す。殺菌曲線は、ツリシンCDが、低濃度でC.difficileリボタイプ027(NAP1)の細胞数の減少に非常に有効であり、そして現実には溶解性であることを実証した。この菌株は超病原性であることが示され、その発生率は世界中で上昇しており、重症度の増加、高い再発率、および顕著な死亡率を引き起こす(Kuiperら、2007)ので、C.difficile027に対するツリシンの有効性は、重要である。ツリシンのMIC値の、C.difficile感染症を治療するために現在使用されている抗生物質であるバンコマイシンおよびメトロニダゾールで得られたものとの比較は、臨床的に重要である。興味深いことに、同様の濃度のツリシンCDは、ラクチシン(Reaら、2007)の影響と対照的に、L.casei338またはB.lactisBb12の生存能に影響を与えなかったが、それは消化管内の有用な菌叢はこの抗菌薬によって混乱しないことを示す。
【0083】
疾患の治療または予防のために、微生物由来ペプチドを評価する場合、生物学的利用能の問題に取り組む必要がある。αキモトリプシンおよびペプシンおよびトリプシンによる、インビトロにおけるツリシンCDの抗菌活性の分解が示されたことは、このバクテリオシンは、カプセル封入のような保護無しでは、胃の通過を生き残れないことを示唆する。しかし、プロバイオティクスとしてこの細菌の胞子または栄養細胞を与える代替戦略を、このペプチドをGIT内に送達することを目標とする方法として調査し得る。プロバイトティク培養物は通常、LactobacillusおよびBifidobacterium種のような、GITの常在菌である菌種と関連する。しかし、通常のヒト消化管微生物叢の構成成分ではないS.boulardiiが、現在CDADの治療においてプロバイトティクとして使用されている。Bacillus種は現在、ヒトおよび動物の両方に使用するためのプロバイトティク培養物として使用されている(概説に関してはHongら、2005およびSandersら、2003を参照のこと)。胞子は厳しい環境を生存し得るので、その真の生息地に関する疑問?が生じた。それらは環境からの胞子の摂取の結果として、ヒト消化管に到達すると想定されたが、Hongら(2005)は、Bacillus種は、消化管において一時的に生存および増殖し得る、その宿主との内共生関係で存在する可能性があることを述べた。栄養細胞に対して胞子を投与する利点は、その安定性および胃の厳しい環境を通り抜ける能力である。マウスの研究において、B.subtilusの栄養細胞は胃の通過を耐えられなかったが、ほとんど全ての投与した胞子は、胃の通過を耐え、そして小腸において回収されたことが示された(Ducら、2003)。
【0084】
B.thuringiensisに基づく殺虫剤への職業的な曝露のために、B.thuringiensisを排出する温室労働者の研究において、胃腸症状は糞便サンプルにおけるB.thuringiensisの存在と関連しなかった(Jensenら、2002)。B.thuringiensis胞子および栄養細胞を与えた、ヒト細菌叢関連ラットの消化管におけるB.thuringiensisの研究は、固有の消化管細菌叢の組成に対する有害作用を検出せず、またベロ毒素アッセイによる消化管サンプルに対する細胞毒性効果を検出しなかった(Wilcksら、2006)。
【0085】
精製したタンパク質分解酵素を用いた結果および様々なGI環境における結果の間に不一致があるが、これは、使用される精製酵素の濃度が、GI環境に存在するものより非常に高いことで説明し得る。これらの結果は、ツリシンペプチドのみを指し、栄養細胞または胞子ではないことに注意すること。
【0086】
結論として、この研究は、B.thuringiensis菌株DPC6431が、強力な熱安定性二成分バクテリオシンを産生し、それはペプチド形態で、または栄養細胞または胞子型式のいずれかのプロバイオティクスとして、新規CDAD治療薬としての可能性を有することを示している。
【0087】
本発明のバクテリオシンは、いくつかの利点を有する。ツリシンCDと命名された抗菌物質が、発酵培地中に産生され(1リットルの培地は350mgのツリシンを生じた)、そして細胞を含まない上清は、Bacillus種である、PCRリボタイプ027を含むC.difficile、C.perfringensおよびListeria monocytogenesを阻害する、狭い阻害スペクトルを示した。BifidobacteriumおよびLactobacillus種は、非常に弱く阻害されたLb.fermentumおよびLb.crispatusおよびLb.johnsoniiを除いて、阻害されなかった。そのバクテリオシンは、熱安定性であり、広い範囲のpHで活性であり、そしてある範囲のタンパク質分解酵素に感受性である。それは2763(Trn−α)および2861(Trn−β)の分子量を有するペプチドを有する、二成分バクテリオシンである。ツリシンCDは、Trn−βおよびTrn−αに関してそれぞれ、両方のペプチドが単独で存在する場合、0.5μMおよび5μMのMIC50を示した。それらのペプチドが一緒に存在する場合、MIC50は、2:1の比で、25nMのTrn−αと組み合わせた50nMのTrn−βであった。ツリシンCDの殺菌効果を、タイムキル(time kill)実験によって示し、ここで1mlあたり約5×10cfuのC.difficileを、200AU/mlの濃度で180分以内に殺菌した。ツリシンCDは、ナノモル濃度で活性な二成分バクテリオシンである。
【0088】
【数1】

【0089】
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号41490の下、the National Collection of Industrial and Marine Bacteriaに寄託された、B.Thuringiensis6431、ならびに実質的にそれに類似であり、Clostridium difficileおよびListeria monocytogenesに対して有効であるバクテリオシンをもコードする、菌株。
【請求項2】
請求項1に記載の細菌の菌株によって産生された、Listeria monocytogenesおよびClostridium difficileに対して有効である、バクテリオシン。
【請求項3】
2つのペプチド、Trn−αおよびTrn−βを含むツリシンCD(thuricin CD)と呼ばれるバクテリオシンであって、Trn−αは約2763の分子量を有し、そしてTrn−βは約2861の分子量を有する、バクテリオシン。
【請求項4】
約85℃まで熱安定性である、請求項3に記載のバクテリオシン。
【請求項5】
約90℃で15分間のインキュベーション後に活性が減少し、そして約100℃で15分間のインキュベーション後に活性を失う、請求項3または4に記載のバクテリオシン。
【請求項6】
Bacillus cereus、他のBacillus thuringiensis、Clostridium difficile、Listeria monocytogenes、B.mycoides、B.firmus、C.difficileリボタイプ027、C.tyrobutyricum、C.lithuseburense、C.indolis、およびC.perfringensを阻害する能力を有する、請求項3〜5に記載のバクテリオシン。
【請求項7】
pH2〜10の範囲で活性である、請求項3〜6のいずれか一項に記載のバクテリオシン。
【請求項8】
ツリシンCDが200AU/mlの濃度で存在する場合、1mlあたりC.difficileの約5×10CFUが180分以内に死滅させられる、C.difficileに対して殺菌効果を有する、請求項2〜7のいずれか一項に記載のバクテリオシン。
【請求項9】
表2に示される阻害スペクトルを有する、請求項2〜8に記載のバクテリオシン。
【請求項10】
前記成分Trn−αが、
【化9】

のアミノ酸配列を有し、ツリシンCD成分Trn−βが、
【化10】

のアミノ酸配列を有する、請求項2〜8のいずれか一項に記載のバクテリオシン。
【請求項11】
遺伝子Trn−αをコードするツリシンCD成分または遺伝子Trn−βをコードするツリシンCD成分のうちの少なくとも一つを含む、宿主細胞。
【請求項12】
図3に示される、Trn−αと記された配列を含む、ツリシンCD成分Trn−α。
【請求項13】
図3に示される、Trn−βと記された配列を含む、ツリシンCD成分Trn−β。
【請求項14】
前記遺伝子が、図3に示される核酸配列を有するか、または該核酸配列に実質的に類似であり、そしてまたバクテリオシン活性をコードする配列を有する、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項15】
図3に示されるTrn−αまたはTrn−βと記されたアミノ酸配列、または該配列に実質的に類似であり、そしてまたバクテリオシン活性を示す配列のいずれかを有する、ツラシン(Thuracin)成分。
【請求項16】
請求項1、22、または23に記載の細菌の菌株、請求項11に記載の宿主細胞、請求項2〜10のいずれか一項に記載のバクテリオシン、または請求項12または13に記載のツリシンCD成分を含む、消毒剤組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の菌株の栄養細胞もしくは芽胞、または請求項11に記載の宿主細胞を含む、プロバイオティク培養物。
【請求項18】
請求項1、22、または23に記載の菌株、請求項11に記載の宿主細胞、請求項2〜10のいずれか一項に記載のバクテリオシン、あるいは請求項12または13に記載のツリシンCD成分を含む、殺芽胞性組成物。
【請求項19】
請求項1、22、または23に記載の細菌の菌株、請求項2〜10のいずれか一項に記載のバクテリオシン、あるいは請求項11に記載の宿主細胞、あるいは請求項12または13に記載のツリシンCD成分を、薬剤学的に許容できる担体と共に含む、医薬品組成物。
【請求項20】
注腸調製物として調合される、請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
結腸を標的にするために適合されるカプセル化ペプチドを含む、請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
ツリシンCD、またはツリシンTrn−α配列もしくはTrn−β配列を含むペプチドを産生する、細菌の菌株。
【請求項23】
ツリシンCDペプチドを産生するために設計されたプロバイオティクス消化管単離物を含む組換え菌株。
【請求項24】
家禽におけるClostridiumの阻害を含む、獣医学的使用、ヒトまたは家禽への適用のための、請求項1、22、または23に記載の菌株、請求項11に記載の宿主細胞、または請求項2〜10に記載のバクテリオシン、あるいは請求項12または13に記載のツリシンCD成分の生存培養物または死滅培養物のいずれかの調製物を含む、プロバイオティクス組成物。
【請求項25】
Clostridium spp.によって引き起こされるガス壊疽に対する創傷および皮膚感染症の治療のための、請求項1、22、または23に記載の細菌の菌株、請求項2〜10に記載のバクテリオシン、あるいは請求項11に記載の宿主細胞、あるいは請求項12または13に記載のツリシンCD成分を、担体と共に含む、局所的組成物。
【請求項26】
実施例または添付の図面を参照して本明細書中に実質的に記載される細菌細胞。
【請求項27】
実施例または添付の図面を参照して本明細書中に実質的に記載されるバクテリオシン。

【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−505126(P2011−505126A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535397(P2010−535397)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066450
【国際公開番号】WO2009/068656
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(507354312)
【出願人】(500489473)ユニバーシティ・カレッジ・コークーナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,コーク (12)
【Fターム(参考)】