説明

DC−DCコンバータ及び表示装置

【課題】静電気によるサージなどのノイズ電圧が印加された場合に、保護クランプ回路の損傷を生じることなく、DC−DCコンバータを構成する電荷転送トランジスタ等の劣化や破壊を防止する。
【解決手段】保護ダイオードDP1,DP2のカソードには、出力電位VPPが供給されている。保護ダイオードDP1,DP2のアノードは、それぞれ、MN1とMP1の接続点、MN2とMP2の接続点に接続されている。保護ダイオードDN1,DN2のアノードには、接地電位VSSが供給されている。保護ダイオードDN1,DN2のカソードは、それぞれ、MN1とMP1の接続点、MN2とMP2の接続点に接続されている。保護コンデンサPC1の一方の端子はMN1とMP1の接続点に接続され、その他方の端子は接地されている。保護コンデンサPC2の一方の端子はMN2とMP2の接続点に接続され、その他方の端子は接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電位を他の電位に変換するDC−DCコンバータ、及びDC−DCコンバータを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低温ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor)薄膜形成プロセスにより製造されるアクティブマトリクス型液晶表示装置において、駆動信号ICのコストを下げるため、液晶パネルのTFT基板上に、画素TFTのオン・オフを制御するための電源電位を生成する電源回路としてDC−DCコンバータが形成されていた。
【0003】
このDC−DCコンバータは、入力電位である正の電源電位VDDを2倍昇圧した2VDD、または−1倍昇圧した−VDDを生成する。このようなDC−DCコンバータを内蔵したアクティブマトリクス型液晶表示装置は特許文献1に記載されている。
【0004】
図6は、出力電位VPP=2VDDを生成するDC−DCコンバータの回路図である。
VDDの振幅(Hレベル=VDD、Lレベル=VSS=0V)を有するクロックCPCLKは、第1のフライングコンデンサC1の一方の端子に入力され、クロックCPCLKが反転された反転クロックXCPCLKが第2のフライングコンデンサC2の一方の端子に入力される。
【0005】
また、Nチャネル型の電荷転送トランジスタMN1とPチャネル型の電荷転送トランジスタMP1が直列に接続され、それらのゲートには第2のフライングコンデンサC2の他方の端子が接続されている。また、Nチャネル型の電荷転送トランジスタMN2とPチャネル型の電荷転送トランジスタMP2が直列に接続され、それらのゲートには第1のフライングコンデンサC1の他方の端子が接続されている。
【0006】
第1のフライングコンデンサC1は、外部接続端子P1,P2を介して取り付けられる外付けのコンデンサである。第2のフライングコンデンサC2は、外部接続端子P3,P4を介して取り付けられる外付けのコンデンサである。出力電位VPPと出力電流IPPの供給能力を高くするため、第1のフライングコンデンサC1、第2のフライングコンデンサC2を大容量にする必要がある。そのため、第1のフライングコンデンサC1、第2のフライングコンデンサC2はTFTプロセスで形成しないで、外付けコンデンサとしている。
【0007】
Nチャネル型の電荷転送トランジスタMN1,MN2の共通ソースには、入力電位として電源電位VDDが印加されている。トランジスタによる電位ロスを無視すれば、定常動作状態において、Pチャネル型の電荷転送トランジスタMP1,MP2の共通ドレイン(出力端子)から、出力電位VPPとして2VDDという正の電位及び出力電流IPPが出力される。出力端子には平滑コンデンサC3が接続されているが、これも外部接続端子P5を介して取り付けられる外付けのコンデンサである。
【特許文献1】特開2004−146082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、第1のフライングコンデンサC1、第2のフライングコンデンサC2を外付けコンデンサとしているため、外部接続端子P1やP3から静電気によるサージなどのノイズ電圧が印加された場合に、電荷転送トランジスタMN2,MP2,MN1,MP1に過大な電圧が印加されて、これらの電荷転送トランジスタ等の劣化や破壊が生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のDC−DCコンバータは、上述した課題に鑑みてなされたものであり、直列に接続された第1及び第2の電荷転送トランジスタと、これらの第1及び第2の電荷転送トランジスタの接続点に一方の端子が接続され、他方の端子にクロックが印加されたフライングコンデンサと、を備え、前記第1の電荷転送トランジスタに入力電位が印加され、前記第2の電荷転送トランジスタから入力電位を変換した出力電位を得るDC−DCコンバータにおいて、前記第1及び第2の電荷転送トランジスタの接続点に接続され、前記接続点にサージなどのノイズ電圧が印加されたときに、前記接続点の電位を前記出力電位にクランプする保護クランプ回路と、前記第1及び第2の電荷転送トランジスタの接続点に接続された保護コンデンサと、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のDC−DCコンバータによれば、サージなどのノイズ電圧が印加され場合、保護クランプ回路が作動して、DC−DCコンバータを構成する電荷転送トランジスタ等の劣化や破壊を防止することができる。また、本発明のDC−DCコンバータによれば、保護クランプ回路に加えて保護コンデンサを備えているので、サージ等のノイズ電圧が印加され場合に、ノイズ電圧に伴う電荷が一旦保護コンデンサに蓄えられることから、電荷が瞬間的に保護クランプ回路に流入することが防止され、保護クランプ回路の損傷を防止することができる。
【0011】
また、本発明の表示装置は、上記のDC−DCコンバータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、静電気によるサージなどのノイズ電圧が印加された場合に、保護クランプ回路の損傷を生じることなく、DC−DCコンバータを構成する電荷転送トランジスタ等の劣化や破壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態によるDC−DCコンバータの回路図を図1に示す。このDC−DCコンバータは、出力電位VPP=2VDDを生成する回路であり、低温ポリシリコンTFT薄膜形成プロセスにより液晶表示装置のガラス基板上に駆動に必要な回路機能を集積するシステム・オン・グラス(SOG)技術により、アクティブマトリクス型液晶表示装置のガラス基板上に、画素TFTのオン・オフを制御するための電源電位を生成する電源回路として形成される。
【0014】
このDC−DCコンバータには、保護ダイオードDP1,DP2,DN1,DN2が設けられている。保護ダイオードDP1,DP2のカソードには、出力電位VPPがクランプ電位として供給されている。保護ダイオードDP1,DP2のアノードは、それぞれ、MN1とMP1の接続点、MN2とMP2の接続点に接続されている。また、保護ダイオードDN1,DN2のアノードには、接地電位VSSがクランプ電位として供給されている。保護ダイオードDN1,DN2のカソードは、それぞれ、MN1とMP1の接続点、MN2とMP2の接続点に接続されている。
【0015】
また、このDC−DCコンバータには、時定数回路として、保護コンデンサPC1,PC2が設けられている。保護コンデンサPC1の一方の端子はMN1とMP1の接続点に接続され、その他方の端子は第1のフライングコンデンサC1の入力端子、即ち、外部接続端子P2に接続されている。また、保護コンデンサPC2の一方の端子はMN2とMP2の接続点に接続され、その他方の端子は第2のフライングコンデンサC2の入力端子、即ち、外部接続端子P4に接続されている。保護コンデンサPC1,PC2は、電荷転送トランジスタMN1,MP1,MN2,MP2と同じガラス基板上に薄膜形成プロセスにより形成されることが好ましい。
【0016】
外部接続端子P1、P3にサージなどによる正のノイズ電圧が印加された場合に保護ダイオードDP1,DP2がオンし、電荷転送トランジスタMN1,MP1の接続点、電荷転送トランジスタMN2,MP2の接続点の電位はVPPにクランプされ、電荷転送トランジスタMN1,MP1,MN2,MP2の劣化や破壊が防止される。
【0017】
このとき、ノイズ電圧に伴う電荷は、保護コンデンサPC1,PC2に一旦蓄えられてから、保護ダイオードDP1,DP2に流れ込むので、その電荷が瞬間的に保護ダイオードDP1,DP2に流れ込むことが防止され、保護コンデンサPC1,PC2の損傷を防止することができる。
【0018】
外部接続端子P1、P3に負のサージ電圧が印加された場合にはDN1,DN2がオンし、MN1,MP1の接続点の電位、MN2,MP2の接続点の電位はそれぞれVSSにクランプされるので、同様に、電荷転送トランジスタMN1,MP1,MN2,MP2の劣化や破壊が防止される。また、ノイズ電圧に伴う電荷は、保護コンデンサPC1,PC2に一旦蓄えられてから、保護ダイオードDN1,DN2に流れ込むので、その電荷が瞬間的に保護ダイオードDN1,DN2に流れ込むことが防止され、保護コンデンサPC1,PC2の損傷を防止することができる。
【0019】
なお、クランプ電位として、VPP、VSSを用いる理由は、DC−DCコンバータの定常動作状態において、前記接続点の電位がVPPとVSSの間で変化するからである。DC−DCコンバータのその他の構成は、図6の回路と同じである。
【0020】
保護ダイオードDP1,DN1,DP2,DN2はTFTで構成してもよいが、PINダイオードで形成することが好ましい。PINダイオードは、図2に示すように、絶縁膜1上に形成されたポリシリコン層2中にP型領域3(アノード)、不純物がドープされていないイントリンシック領域4、N型領域5(カソード)を互いに隣接して形成してなり、TFTと比べると、ゲート配線の接続が不要のため、実装面積が小さく、かつゲート容量がないため高速で動作する利点がある。
【0021】
このDC−DCコンバータの定常状態(VPP=2VDD)の動作を図3の波形図を参照して説明する。クロックCPCLKがHレベル(VDD)のとき、MN1、MP2はオフ、MN2、MP1はオンし、MN1とMP1の接続点の電位V1は2VDDに昇圧され、そのレベルがMP1を通して出力される。MN2とMP2の接続点の電位V2はVDDに充電される。
【0022】
次に、クロックCPCLKがLレベル(VSS)になると、MN1、MP2はオン、MN2、MP1はオフし、電位V2は2VDDに昇圧され、そのレベルがMP2を通して出力される。電位V1はVDDに充電される。つまり、DC−DCコンバータの左右の直列トランジスタ回路から電荷転送により2VDDという電位が交互に出力される。但し、電荷転送トランジスタによる電位ロスは無視している。
【0023】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるDC−DCコンバータの回路図を図4に示す。このDC−DCコンバータは、出力電位VBB=−VDDを生成する回路であり、低温ポリシリコンTFT薄膜形成プロセスにより液晶表示装置のガラス基板上に駆動に必要な回路機能を集積するシステム・オン・グラス(SOG)技術により、アクティブマトリクス型液晶表示装置のガラス基板上に、画素TFTのオン・オフを制御するための電源電位を生成する電源回路として形成される。
【0024】
このDC−DCコンバータは第1の実施の形態のDC−DCコンバータの回路の極性を反転したものである。即ち、電荷転送トランジスタMP1,MP2の共通ソースにVSSを印加し、電荷転送トランジスタMN1,MN2の共通ドレインから出力電位VBBが得られる。
【0025】
保護ダイオードDP1,DP2のカソードには、接地電位VSSがクランプ電位として供給されている。保護ダイオードDP1,DP2のアノードは、それぞれ、MN1とMP1の接続点、MN2とMP2の接続点に接続されている。また、保護ダイオードDN1,DN2のアノードには、出力電位VBBがクランプ電位として供給されている。保護ダイオードDN1,DN2のカソードは、それぞれ、MN1とMP1の接続点、MN2とMP2の接続点に接続されている。保護ダイオードDP1,DN1,DP2,DN2はTFTで構成してもよいが、PINダイオードで形成することが好ましい。
【0026】
また、このDC−DCコンバータには、時定数回路として、保護コンデンサPC1,PC2が設けられている。保護コンデンサPC1の一方の端子はMN1とMP1の接続点に接続され、その他方の端子は第1のフライングコンデンサC1の入力端子、即ち、外部接続端子P2に接続されている。接地されている。また、保護コンデンサPC2の一方の端子はMN2とMP2の接続点に接続され、その他方の端子は第2のフライングコンデンサC1の入力端子、即ち、外部接続端子P4に接続されている。保護コンデンサPC1,PC2は、電荷転送トランジスタMN1,MP1,MN2,MP2と同じガラス基板上に薄膜形成プロセスにより形成されることが好ましい。
【0027】
なお、クランプ電位として、VSS、VBBを用いる理由は、DC−DCコンバータの定常動作状態において、前記接続点の電位がVBBとVSSの間で変化するからである。外部接続端子P1、P3にサージなどによるノイズ電圧が印加された場合の動作については、第1の実施の形態と同様なので省略する。
【0028】
このDC−DCコンバータの定常状態(VBB=−VDD)の動作を図5の波形図を参照して説明する。クロックCPCLKがHレベル(VDD)のとき、MN1、MP2はオフ、MN2、MP1はオン、MN1とMP1の接続点の電位V3はVSSに充電され、MN2とMP2の接続点の電位V4は−VDDの電位に下がり、その電位がMN2を通して出力される。
【0029】
クロックCPCLKがLレベル(VSS)になると、MN1、MP2はオン、MN2、MP1はオフし、電位V3は−VDDに下がり、そのレベルがMN1を通して出力される。電位V4はVssに充電される。つまり、DC−DCコンバータの左右の直列トランジスタ回路から電荷転送により−VDDという電位が交互に出力される。但し、電荷転送トランジスタによる電位ロスは無視している。
【0030】
なお、第1、2の実施の形態においては、それぞれ出力電位として、2VDD、−VDDを発生するDC−DCコンバータを例として説明したが、DC−DCコンバータの段数を変更することにより、出力電位として、更に高電位、例えば、3VDDや−2VDDを得ることができる。そして、そのようなDC−DCコンバータの電荷転送トランジスタの接続点に、保護ダイオードを接続することにより、同様の効果を得ることができる。すなわち、本発明は、電荷転送トランジスタとフライングコンデンサを備えたチャージポンプ型のDC−DCコンバータに広く適用することができる。
【0031】
また、第1、2の実施の形態においては、保護クランプ回路を保護ダイオードにより構成したが、これに限らず、例えば、バリスタで構成することもできる。
【0032】
また、DC−DCコンバータは、TNモード、垂直配向モード(VAモード)、横電界を利用したIPSモード、フリンジ電界を利用したFFSモードなどの液晶表示装置に利用しても構わない。また、全透過型のみならず全反射型、反射透過兼用型の液晶表示装置に利用しても構わない。また、液晶表示装置ではなく、有機ELディスプレイ、フィールドエミッション型ディスプレイに用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】PINダイオードの構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるDC−DCコンバータの動作波形図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態によるDC−DCコンバータの回路図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるDC−DCコンバータの動作波形図である。
【図6】従来例のDC−DCコンバータの回路図である。
【符号の説明】
【0034】
1 絶縁膜 2 ポリシリコン層 3 P型領域
4 イントリンシック領域 5 N型領域
C1 第1のフライングコンデンサ
C2 第2のフライングコンデンサ
C3 平滑コンデンサ
CP1,CP2 保護コンデンサ
DP1,DP2,DN1,DN2 保護ダイオード
MN1,MN2 Nチャネル型の電荷転送トランジスタ
MP1,MP2 Pチャネル型の電荷転送トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1及び第2の電荷転送トランジスタと、これらの第1及び第2の電荷転送トランジスタの接続点に一方の端子が接続され、他方の端子にクロックが印加されたフライングコンデンサと、を備え、前記第1の電荷転送トランジスタに入力電位が印加され、前記第2の電荷転送トランジスタから入力電位を変換した出力電位を得るDC−DCコンバータにおいて、
前記第1及び第2の電荷転送トランジスタの接続点に接続され、前記接続点にサージなどのノイズ電圧が印加されたときに、前記接続点の電位を前記出力電位にクランプする保護クランプ回路と、
前記第1及び第2の電荷転送トランジスタの接続点に接続された保護コンデンサと、を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記保護コンデンサは、前記第1及び第2の電荷転送トランジスタと同じ基板上に薄膜形成プロセスにより形成され、前記フライングコンデンサは、外部接続端子を介して、前記基板外部に配置したことを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載のDC−DCコンバータを備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−167527(P2008−167527A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351908(P2006−351908)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】