説明

EMI低減制御装置

【課題】EMI低減のためにスペクトラム拡散を行う際に、クロック周波数の推移による映像信号への影響を排除するためのFIFOメモリの容量を抑えること。
【解決手段】EMI低減のためにスペクトラム拡散を行う際に、スペクトラム拡散後のクロックは1水平期間よりも十分短い期間でスペクトラム拡散前のクロックに同期させるとともに、FIFOメモリの読み出しアドレスは書き込みアドレスよりもクロック周波数の変調量分量以上進めておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶テレビ、液晶ディスプレイ等を初めとするデジタル機器のクロック発生、特にスペクトラム拡散用クロックの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶テレビやPDPテレビ等のデジタル表示デバイス用いた映像機器などではパネル表示デバイスおよびそのインターフェースからの不要輻射を抑えるためスペクトラム拡散技術を用いてパネル表示デバイスへのクロックを変調させ、そのクロックに同期したデジタル回路全体の信号変化点を拡散させ不要輻射のピークを低減する取り組みがなされている。
【0003】
従来のスペクトラム拡散は、少なくとも1水平期間の映像信号を記憶できるFIFOメモリに1水平期間の映像信号を記憶させる一方、水平同期信号を用いてクロック信号を発生させ、クロック信号に基づいて各走査線内で拡散するようにスペクトラム拡散された画素クロック基準信号を発生させることにより、スペクトラム制御を行なっていた(例えば、特許文献1参照)。図4は、従来のEMI低減制御装置の動作を示したタイミング図である。従来のEMI低減制御装置においては、クロックにしたがって1水平期間の映像信号(水平同期信号Hsyncの1波長時間の映像信号)がFIFOメモリに書き込まれる。一方、画素クロック基準信号にしたがって、FIFOメモリに書き込まれた映像信号が読み出される。
【特許文献1】特表2004−505565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記の構成では少なくとも1水平期間のFIFOメモリが必要となり、例えばFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)に備えられたメモリなど、記憶容量の小さいメモリを用いることができず、スペクトラム拡散に用いるメモリを小型化できないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、スペクトラム拡散に用いるメモリを小型化したEMI低減制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明のEMI低減制御装置はEMI低減のためにスペクトラム拡散を行う際に、クロック周波数の推移による映像信号への影響を排除するためのFIFOメモリの容量を抑えるためスペクトラム拡散後のクロックは1水平期間よりも十分短い期間でスペクトラム拡散前のクロックに同期させるとともに、FIFOメモリの読み出しアドレスは書き込みアドレスよりもクロック周波数の変調量分量以上進めておくことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、EMI低減のためにスペクトラム拡散を行う際に、クロック周波数の推移による映像信号への影響を排除するためのFIFOメモリの容量を抑えるためスペクトラム拡散後のクロックは1水平期間よりも十分短い期間でスペクトラム拡散前のクロックに同期させるとともに、FIFOメモリの読み出しアドレスは書き込みアドレスよりもクロック周波数の変調量分量以上進めておくことでFIFOメモリの容量を抑えることができ、スペクトラム拡散に用いるメモリの小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の発明は、EMI低減のためにスペクトラム拡散を行う際に、クロック周波数の推移による映像信号への影響を排除するためのFIFOメモリの容量を抑えるためスペクトラム拡散後のクロックは1水平期間よりも十分短い期間でスペクトラム拡散前のクロックに同期させるとともに、FIFOメモリの読み出しアドレスは書き込みアドレスよりもクロック周波数の変調量分量以上進めておくことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の発明は、入力映像信号に同期したクロックを分周する第1の分周回路と、スペクトラム拡散されたあとの液晶パネルのクロックを分周しその分周比は第1の分周回路と同じ第2の分周回路と、前期2つの分周回路の出力を位相比較しクロックを発生するPLLと、前期PLLの制御電圧を変調をするために液晶パネルのクロックを基に変調パルスを発生する変調パルス発生回路と、水平同期周期よりも十分短い周期のビデオメモリと、前期ビデオメモリのリードリセットパルスはパワーオンリセットパルスであるライトリセットパルスを変調量より長い期間遅延させる遅延器とを備えたことを特徴とする。
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明のEMI低減制御装置の構成図の一例であり、図2はEMI低減制御装置の動作を示したタイミング図である。
【0011】
図1においてEMI低減制御装置は、映像信号処理LSI1及びEMI低減化回路8からなり、さらにEMI低減化回路8は、メモリ2、遅延器3、第1の分周回路4、第2の分周回路5、PLL回路6、変調パルス発生回路7で構成される。以下に具体的な動作を説明する。
【0012】
映像信号処理LSI1は、例えばコンポジット信号や輝度、色差信号をRGB信号へ変換したり、液晶パネルの解像度にあわせて表示領域の画素数を変換するスケーリング処理を行ったり、液晶パネルの特性を補正し映像信号をユーザーの好みの画質に変換する輪郭補正、ガンマ補正、ホワイトバランス調整などを行うことで、映像信号処理LSI1に入力された映像信号を入力デジタルビデオ信号に変換する。また、メモリ2はデジタルビデオ信号を記憶するメモリである。ここで、デジタルビデオ信号とは液晶パネルの画素に対応したサンプルレートのRGB信号のことであり、さらに入力デジタルビデオ信号とはメモリ2に入力されるデジタルビデオ信号のことを示す。また、映像信号処理LSI1は、入力デジタルビデオ信号のサンプルレートに同期した周波数の信号である入力クロック:CLOCKを発生する。映像信号処理LSI1の出力のうち入力デジタルビデオ信号がEMI低減化回路8のメモリ2に入力され、入力クロック:CLOCKがEMI低減化回路8の第1の分周回路4とメモリ2に入力される。入力クロック:CLOCKは第1の分周回路4で1水平期間よりも十分短い期間で分周される。例えば1水平期間の8分周や16分周、32分周、64分周などである。PLL回路6では前記第1の分周回路4の出力をリファレンスとして変調をした出力クロック:CLOCK_SSを発生させる。出力クロック:CLOCK_SSは変調パルス発生回路7にて入力クロック:CLOCKを変調させるための三角波などの変調パルスを発生させ平滑化した後、PLL回路6のクロック制御電圧に加算される。また、出力クロック:CLOCK_SSは第2の分周回路5にて第1の分周回路4と同じ分周比で分周されPLL回路6にフィードバック入力される。上記により映像信号処理LSI1から出力される入力クロック:CLOCKはスペクトラム拡散された出力クロック:CLOCK_SSに変調される。また、遅延器3はパワーオンリセット信号を遅延させることで、メモリ2からデジタルビデオ信号を読み出すタイミングを、書き込むタイミングに対して遅延させる遅延器である。ここで、パワーオンリセット信号とは、LSI等において内部回路を初期化するために必要なパルスで、一般的には電源投入時一定期間Lowレベルを保持しその後Highレベルになるパルス信号である。本実施の形態では、メモリ2に対して直接入力し遅延が発生していないパワーオンリセット信号と、遅延器3へ一旦入力することにより一定期間遅延させたパワーオンリセット信号とをメモリ2に入力して両者を比較することにより、遅延器3によるパワーオンリセット信号の遅延量をメモリ2が検知し、メモリ2は記憶されたデジタルビデオ信号を読み出すタイミングを、書き込むタイミングに対して、検知した遅延量と同期間分の遅延をさせる。
【0013】
図2はEMI低減制御装置の動作を示したタイミング図である。図2の書き込みタイミング及び読み出しタイミングに記載の1〜8はそれぞれ液晶パネルの画素に対応した各画素のデジタルデータの値を一般化して表現したものであり、以下本実施の形態ではそれぞれDATA1乃至DATA8と記載する。また、横方向は時間軸を表している。上記のように入力クロックと入力クロックを変調させた出力クロックを用いて、入力クロックに同期した入力デジタルビデオ信号を出力クロックに同期した出力デジタルビデオ信号に乗せ替える動作をメモリ2で行う。入力デジタルビデオ信号のメモリ2への書き込みは入力クロック:CLOCKのタイミングに応じて書き込まれ、メモリ2に書き込まれたデジタルビデオ信号の読み出しは出力クロック:CLOCK_SSのタイミングで読み出される。
【0014】
一方、上記入力クロック:CLOCKと出力クロック:CLOCK_SSに基づいてメモリ2に入力デジタルビデオ信号の書き込み及び出力デジタルビデオ信号の読み出しをする際に、書き込みのタイミングに対して読み出しタイミングに遅延をさせなければ、書き込みと読み出しの飛び越しを生じる場合がある。図3に遅延器3によりパワーオンリセット信号を遅延させなかった場合のメモリ2に対するデジタルビデオ信号の読み出し/書き出しのタイミングの一例を示す。図2と同様に、図3に記載の1〜8はそれぞれ図2の1〜8と同様に液晶パネルの画素に対応した各画素のデジタルデータの値を一般化して表現したものであり、また、横方向は時間軸を表している。図3によると、例えば、DATA2については書き込みのタイミングと比較して読み出しのタイミングが早くなっているため、書き込みと読み出しの飛び越しを生じる。このため、映像信号のクロックの乗せ替えができなくなる。この問題を解決するために遅延器3は、書き込みタイミングと読み出しタイミングの追い越し分だけ遅延させる。この追い越し分は、入力クロック:CLOCKと出力クロック:CLOCK_SSの変調量分量に相当する。上記の例では最大2画素分のデジタルデータの読み出しが書き込みを追い越すことになる。そのため遅延器3の遅延量は3画素分のデジタルデータ以上を確保する必要がある。上記のように遅延器3では読み出しが書き込みを追い越さないようにパワーオンセット信号を遅延することにより、書き込みと読み出しの飛び越しを防止することができ、映像信号の安定なクロックの乗せ替えが可能となる。最終的に出力クロック:CLOCK_SSによりメモリ2から読み出されたデータが出力デジタルビデオ信号として入力クロック:CLOCK_SSとともにパネル表示デバイスに出力される。
【0015】
かかる構成によると、水平同期信号を用いて発生させた入力クロック:CLOCKを用いてメモリ2に入力デジタルビデオ信号を書き込み、入力クロック:CLOCKを変調させた出力クロック:CLOCK_SSを用いてメモリ2に記憶されたデジタルビデオ信号を読み出し、読み出しのタイミングは書き込みのタイミングよりもクロック周波数の変調量分量以上遅延させておくことにより、メモリ2に記憶させおかなければならないデジタルビデオ信号のデータ量を削減することができる。よって、デジタルビデオ信号を一時的に格納しておくためのメモリの容量を削減することができるので、例えばFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)に備えられたメモリなど、記憶容量の小さいメモリを用いてもスペクトラム拡散をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明にかかるEMI低減制御装置は、FIFOメモリの容量を抑えることが可能となるものであり、液晶テレビ、液晶ディスプレイ等を初めとするデジタル機器のクロック発生、特にスペクトラム拡散用クロックの制御等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるEMI低減制御装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるEMI低減制御装置の動作を示したタイミング図
【図3】本発明の実施の形態1におけるEMI低減制御装置の読み出し/書き出しのタイミングの一例を表す図
【図4】従来のEMI低減制御装置の動作を示したタイミング図
【符号の説明】
【0018】
1 映像信号処理LSI
2 メモリ
3 遅延器
4 第1の分周回路
5 第2の分周回路
6 PLL回路
7 変調パルス発生回路
8 EMI低減化回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EMI低減のためにスペクトラム拡散を行う際に、クロック周波数の推移による映像信号への影響を排除するためのFIFOメモリの容量を抑えるためスペクトラム拡散後のクロックは1水平期間よりも十分短い期間でスペクトラム拡散前のクロックに同期させるとともに、FIFOメモリの読み出しアドレスは書き込みアドレスよりもクロック周波数の変調量分量以上進めておくことを特徴とするEMI低減制御装置。
【請求項2】
入力映像信号に同期したクロックを分周する第1の分周回路と、スペクトラム拡散されたあとの液晶パネルのクロックを分周しその分周比は第1の分周回路と同じ第2の分周回路と、前期2つの分周回路の出力を位相比較しクロックを発生するPLLと、前期PLLの制御電圧を変調をするために液晶パネルのクロックを基に変調パルスを発生する変調パルス発生回路と、水平同期周期よりも十分短い周期のビデオメモリと、前期ビデオメモリのリードリセットパルスはパワーオンリセットパルスであるライトリセットパルスを変調量より長い期間遅延させる遅延器とを備えたことを特徴とするEMI低減制御装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−225863(P2007−225863A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46544(P2006−46544)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】