説明

ERKプロテインキナーゼのインヒビターとしてのピロール化合物、それらの合成、およびそれらの中間体

本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、該化合物を含む薬学的に重要な組成物、およびその組成物を種々の疾患、状態または障害の処置に使用する方法を提供する。本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の障害、特に癌などの増殖性障害を処置するため、またはそれらの障害の重篤度を軽減するために有用である。本発明が提供する化合物はまた、生物学的現象および病理学的現象におけるキナーゼの研究、ならびにそのようなキナーゼが媒介する細胞内シグナル伝達経路の研究、そして新規キナーゼインヒビターの比較評価のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年5月14日出願の米国仮特許出願第60/571,309号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、およびその組成物を種々の障害の処置に使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
標的疾患と関連づけられる酵素および他の生体分子の構造の理解が深まることにより、近年、新規治療因子の追求が大いに促進されている。広範な研究の対象である酵素の1つの重要なクラスは、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、構造的に関連する酵素の大ファミリーを構成しており、このファミリーが細胞内における種々のシグナル伝達プロセスの制御を担っている(非特許文献1を参照)。プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能が保存されているため、1つの共通の祖先遺伝子から進化したと考えられている。ほぼ全てのキナーゼが、類似した250〜300アミノ酸の触媒ドメインを含んでいる。キナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/トレオニン、脂質など)によって、ファミリーに分類され得る。一般的にこれらのキナーゼファミリーのそれぞれと対応する配列モチーフが同定されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照)。
【0005】
一般に、プロテインキナーゼは、ヌクレオシド三リン酸からシグナリング経路に関与するタンパク質アクセプタへのホスホリル転移をもたらすことにより、細胞内シグナリングを媒介する。これらのリン酸化イベントは分子オン/オフスイッチとして作用し、標的タンパク質の生体作用を調整または調節し得る。これらのリン酸化イベントは、種々の細胞外刺激および他の刺激に応答して最終的にトリガされる。そのような刺激の例としては、環境的ストレスおよび化学的ストレスのシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線、細菌内毒素およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン1(IL−1)および腫瘍壊死因子a(TNF−a))、および成長因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および繊維芽細胞成長因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞増殖、細胞移動、細胞分化、ホルモン分泌、転写因子活性化、筋収縮、グルコース代謝、タンパク質合成制御、および細胞周期調節に関連する1つ以上の細胞性応答に作用し得る。
【0006】
多くの疾患が、プロテインキナーゼ媒介性イベントによってトリガされた異常細胞性応答と関連付けられる。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経系および神経変性疾患、癌、心血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー疾患およびホルモン関連疾患が挙げられる。したがって、医化学において、治療因子として有効なプロテインキナーゼインヒビターを見出すための実質的な取り組みがある。しかしながら、プロテインキナーゼと関連付けられる大半の状態に対して現在利用可能な処置のオプションがないことを考慮すると、これらのタンパク質標的を阻害する新規治療因子の必要性は依然として高い。
【0007】
哺乳動物細胞は、分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼファミリーのメンバーが媒介するシグナリングカスケードを活性化することによって細胞外刺激に応答する。これらのメンバーとしては、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、p38 MAPキナーゼ、およびc−Jun N末端キナーゼ(JNK)が挙げられる。MAPキナーゼ(MAPK)は、種々のシグナル(成長因子、サイトカイン、紫外線およびストレス誘発因子を含む)によって活性化される。MAPKは、セリン/トレオニンキナーゼであり、それらの活性化は、活性化ループ中のThr−X−Tyrセグメントにおいて、トレオニンおよびチロシンの二重のリン酸化によって起こる。MAPKは、転写因子を含む種々の基質をリン酸化して、次いで特定のセットの遺伝子の発現を調節することにより、刺激に対する特定の応答を媒介する。
【0008】
ERK2は、Thr183およびTyr185の両方がMAPキナーゼの上流キナーゼMEK1によってリン酸化される場合に最大活性を達成するプロテインキナーゼであって、広く分布している(非特許文献7;非特許文献8)。活性化の際、ERK2は多くの調節タンパク質(プロテインキナーゼRsk90(非特許文献9)およびMAPKAP2(非特許文献10))、および転写因子(例えば、ATF2(非特許文献11)、Elk−l(非特許文献11)、c−Fos(非特許文献12)およびc−Myc(非特許文献13))をリン酸化する。ERK2はまた、Ras/Raf依存性経路の下流標的であり(非特許文献14)、潜在的発癌性のこれらのタンパク質からシグナルをリレーする。ERK2は乳癌細胞の負の成長制御における役割を果たすことが示されており(非特許文献15)、ヒト乳癌におけるERK2の高発現(hyperexpression)が報告されている(非特許文献16)。活性ERK2もまた、エンドセリン誘発性気道平滑筋細胞の繁殖に関連づけられ、喘息におけるこのキナーゼの役割が示唆される(非特許文献17)。
【0009】
レセプターチロシンキナーゼ(例えば、EGFRおよびErbB2)の過剰発現(非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20)、およびRas GTPアーゼタンパク質における活性化突然変異(非特許文献21;非特許文献22)またはB−Raf変異体(非特許文献23;非特許文献24)が、ヒト癌の主要な誘因である。これらの遺伝子改変は、不良な臨床予後と相互に関連し、ヒト腫瘍の広範なパネルにおいてRaf−1/2/3−MEK1/2−ERK1/2シグナル伝達カスケードの活性化を引き起こす。活性ERK(すなわち、RRK1および/またはERK2)は、増殖、分化、足場非依存性細胞生残および脈管形成の制御と関連づけられる中央シグナリング分子であり、悪性腫瘍の形成および進行に重要な多数のプロセスに寄与している。これらのデータは、ERK1/2インヒビターが多面発現活性(アポトーシス促進(proapoptotic)作用、抗増殖性作用、抗転移性作用、および抗脈管形成作用を含む)を発揮し、ヒト腫瘍の非常に広範なパネルに対する治療機会を与えることを示唆している。
【0010】
ERK MAPK経路の構成的活性化が特定の癌の発癌性に関与することを示す証拠が増大している。Rasの活性化突然変異は全癌のうちの約30%に見出され、膵癌(90%)および大腸癌(50%)など、中には著しく高い突然変異率を潜在的に有する癌もある(ref)。Ras突然変異はまた、メラノーマのうちの9〜15%において同定されているが、構成的活性化を与えるB−Raf体細胞ミスセンス突然変異はそれよりも頻繁に起こり、60〜66%の悪性メラノーマに見出される。Ras、RafおよびMEKの活性化突然変異は、インビトロにおいて繊維芽細胞を発癌性に形質転換し得、RasまたはRaf突然変異は、癌抑制遺伝子(例えば、p16INK4A)の減少とともに、インビボにおいて自然発生腫瘍が発達する原因となり得る。ERK活性の増大はこれらの方法で証明されており、また、適切なヒト腫瘍について広範に報告されている。メラノーマにおける高基礎ERK活性について、B−Raf突然変異もしくはN−Raf突然変異または自己分泌増殖因子活性化の結果として生じることが多くの文献で証明されており、急速な腫瘍増殖、細胞生残の増大、およびアポトーシスに対する耐性と関連付けられている。さらに、ERK活性化は、細胞外マトリックス分解プロテアーゼおよび侵入を促進するインテグリンの両方の発現増大、ならびにE−カドヘリン接着分子のダウンレギュレーションと関連付けられる、メラノーマの高転移性の主要な推進力と考えられている。E−カドヘリン接着分子は、常態では角化細胞を媒介してメラニン細胞の増殖を制御する。現在のところ処置不可能な疾患であるメラノーマの処置にとって、ERKが有望な治療標的であることを、これらのデータ全体が示している。
【非特許文献1】Hardie,G.およびHanks,S.、The Protein Kinase Facts Book,I and II、Academic Press、San Diego,CA、1995年
【非特許文献2】Hanks,S.K.,Hunter,T.、FASEB J.、1995年、9:576−596
【非特許文献3】Knightonら、Science、1991年、253:407−414
【非特許文献4】Hilesら、Cell、1992年、70:419−429
【非特許文献5】Kunzら、Cell、1993年、73:585−596
【非特許文献6】Garcia−Bustosら、EMBO J.、1994年、13:2352−2361
【非特許文献7】Andersonら、Nature、1990年、343、651
【非特許文献8】Crewsら、Science、1992年、258、478
【非特許文献9】Bjorbaekら、J.Biol.Chem.、1995年、270、18848
【非特許文献10】Rouseら、Cell、1994年、78、1027
【非特許文献11】Raingeaudら、Mol.Cell Biol.、1996年、16、1247
【非特許文献12】Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993年、90、10952
【非特許文献13】Oliverら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、1995年、210、162
【非特許文献14】Moodieら、Science、1993年、260、1658
【非特許文献15】FreyおよびMulder、Cancer Res.、1997年、57、628
【非特許文献16】Sivaramanら、J Clin.Invest.、1997年、99、1478
【非特許文献17】Whelchelら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.1997年、16、589
【非特許文献18】Arteaga CL、Semin Oncol.、2002年、29、3−9
【非特許文献19】Eccles SA、J Mammary Gland Biol Neoplasia、2001年、6:393−406
【非特許文献20】Mendelsohn JおよびBaselga J、Oncogene、2000年、19、6550−65
【非特許文献21】Nottage MおよびSiu LL、Curr Pharm Des、2002年、8、2231−42
【非特許文献22】Adjei AA、J Natl Cancer Inst、2001年、93、1062−74
【非特許文献23】Davies H.ら、Nature、2002年、417、949−54
【非特許文献24】Broseら、Cancer Res、2002年、62、6997−7000
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な化合物がERKプロテインキナーゼのインヒビターとして有効であることが、現在見出されている。これらの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、一般式I:
【0012】
【化13】

を有し、ここで、m、R、RおよびRは以下に定義する通りである。
【0013】
これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の障害、特に癌などの増殖性障害を処置するため、またはそれらの障害の重篤度を軽減するために有用である。
【0014】
本発明が提供するこれらの化合物はまた、生物学的現象および病理学的現象におけるキナーゼの研究、ならびにそのようなキナーゼが媒介する細胞内シグナル伝達経路の研究、そして新規キナーゼインヒビターの比較評価のために有用である。
【0015】
(発明の特定の実施形態の詳細な説明)
(1.本発明の化合物の概要)
本発明は、式I:
【0016】
【化14】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
が、C1〜6脂肪族基であって、ここでRは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;
各Rが、独立してR、フルオロ、またはクロロであり;
mが、0、1、または2であり;そして
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロである
化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する。
【0017】
(2.化合物および定義)
本発明の化合物は、上記に一般的に説明した化合物を含み、本明細書において開示されるクラス、サブクラス、および種によってさらに明示される。本明細書中で使用される場合、他に示さない限り、以下の定義が適用されるべきである。本発明において化学元素は、CASバージョンの元素周期表(Handbook of Chemistry and Physics、第75版)に従って同定される。さらに、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」(Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999)、および「March‘s Advanced Organic Chemistry」の第5版(Ed.:Smith,M.B.およびMarch,J.,John Wiley & Sons,New York:2001)に記載されており、これらの内容全体が本明細書に参考として援用される。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、活性薬物を放出するために体内変換を必要とし、親薬物分子と比べて改善された物理的および/または送達特性を有する親薬物分子の誘導体についていう。プロドラッグは、親薬物分子と関連付けられる薬学および/または薬理学に基づく特性を向上させるように設計されている。プロドラッグの長所は、生理的pHにおいて非経口投与のための水溶性が親薬物と比較して高められるといったその物理的特性にあり、これにより消化管からの吸収を向上させるか、または長期保存のための薬物安定性を向上させ得る。近年、数種類の生物可逆性(bioreversible)誘導体が、プロドラッグの設計に利用するために開発されている。カルボキシル基または水酸基を含む薬物に対してプロドラッグの1種としてエステルを使用することは当該分野において公知であり、例えば、1992年にAcademic Pressから出版されたRichard Silvermanによる「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Interaction」に記載されている。
【0019】
本明細書中に記載されるように、本発明の化合物は、上記で一般的に説明されるような1つ以上の置換基で必要に応じて、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示されるように置換され得る。語句「必要に応じて置換される」は、語句「置換または非置換」と相互交換可能に使用されることが理解される。一般に、用語「置換される」は、用語「必要に応じて」がその前にあろうとなかろうと、所与の構造中の水素ラジカルと特定の置換基のラジカルとの置換についていう。他に示さない限り、必要に応じて置換される基は、その基が置換可能な各位置に1つの置換基を有し得、任意に与えられた構造中の複数の位置が、特定の基から選択された複数の置換基で置換され得る場合、それらの置換基は同じ場合も位置ごとに異なる場合もどちらもあり得る。
【0020】
本明細書によって考察される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定した化合物かまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす組み合わせである。用語「安定した」が本明細書中で使用される場合、それらの産生、検出、そして好ましくは、それらの再生、精製、および本明細書中で開示される1つ以上の目的のための使用を可能とする条件にさらされた場合に、実質的に改変されない化合物についていう。いくつかの実施形態において、安定した化合物または化学的に実現可能な化合物は、湿気または他の化学反応条件がない中で、少なくとも1週間40℃以下の温度で保たれた場合に実質的に改変されない化合物である。
【0021】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書中で使用される場合、完全に飽和しているかまたは1つ以上の不飽和の単位を含む直鎖(すなわち無枝)または分枝の置換または非置換炭化水素鎖か、あるいは完全に飽和しているかまたは1つ以上の不飽和の単位を含むが芳香族ではなく、その分子の残部へ1点で結合している単環式炭化水素(本明細書中では「炭素環」、「脂環式」または「シクロアルキル」ともいう)を意味する。特定の実施形態において、脂肪族基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含み、さらに他の実施形態において、脂肪族基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和しているかまたは1つ以上の不飽和の単位を含むが芳香族ではなく、その分子の残部へ1点で結合している単環式C〜C炭化水素についていう。適切な脂肪族基としては、これらに限定されないが、直鎖または分枝の置換または非置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらの混成物(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられる。
【0022】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合、1つの部分が1つ以上の不飽和の単位を有することを意味する。
【0023】
用語「ハロアルキル」「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」は、場合により、1つ以上のハロゲン原子と置換されたアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0024】
単独で使用される、または「アラルキル」、「アラルコキシ(aralkoxy)」、もしくは「アリールオキシアルキル」などの場合により大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、総数5〜14個の環員を有する系であって、ここでその系の少なくとも1つの環が芳香族であり、その系の各環が3〜7個の環員を含む単環系、二環系、および三環系についていう。用語「アリール」は、用語「アリール環」と相互交換可能に使用され得る。
【0025】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)基は、1つ以上の置換基を含み得る。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;R;OR;SR;1,2−メチレン−ジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで必要に応じて置換されるフェニル(Ph);Rで必要に応じて置換される−O(Ph);Rで必要に応じて置換される(CH1〜2(Ph);Rで必要に応じて置換されるCH=CH(Ph);NO;CN;N(R;NRC(O)R;NRC(O)N(R;NRCO;−NRNRC(O)R;NRNRC(O)N(R;NRNRCO;C(O)C(O)R;C(O)CHC(O)R;CO;C(O)R;C(O)N(R;OC(O)N(R;S(O);SON(R;S(O)R;NRSON(R; NRSO;C(=S)N(R;C(=NH)−N(R;または(CH0〜2NHC(O)Rから選択され、ここで各々独立して存在するRは、水素、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族、不飽和5〜6員ヘテロアリールもしくは複素環、フェニル、O(Ph)、またはCH(Ph)から選択される。あるいは上記の定義にかかわらず、同じ置換基もしくは異なる置換基上の独立して存在する2つのRは、各R基が結合している原子(または複数の原子)と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル環、ヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成する。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロC1〜4脂肪族から選択され、ここでRの該C1〜4脂肪族基は、それぞれ非置換である。
【0026】
脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族複素環は、1つ以上の置換基を含み得る。脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族複素環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙した置換基から選択され、さらに次の:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NRを含み、ここで各Rは、水素、または必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族から独立して選択される。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここでRの該C1〜4脂肪族基は、それぞれ非置換である。
【0027】
非芳香族複素環の窒素上の任意の置換基は、R、N(R、C(O)R、CO、C(O)C(O)R、C(O)CHC(O)R、SO、SON(R、C(=S)N(R、C(=NH)−N(R、またはNRSOから選択され;ここでRは、水素、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族、必要に応じて置換されるフェニル、必要に応じて置換されるO(Ph)、必要に応じて置換されるCH(Ph)、必要に応じて置換される(CH1〜2(Ph);必要に応じて置換されるCH=CH(Ph);または、酸素、窒素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する非置換5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環である。あるいは上記の定義にかかわらず、同じ置換基もしくは異なる置換基上に独立して存在する2つのRは、各R基が結合している原子(または複数の原子)と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル環、ヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成する。Rの脂肪族基またはフェニル環上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここでRの該C1〜4脂肪族基は、それぞれ非置換である。
【0028】
他に記載されない限り、本明細書中で描かれる構造は、すべての構造異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、および幾何異性体(または配座異性体))、例えば、各不斉中心についてのR配置およびS配置、(Z)二重結合異性体および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)配座異性体および(E)配座異性体をも含むことが意図される。したがって、本発明の化合物の単一の立体異性体ならびに鏡像異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体(または配座異性体)の混合物が、本発明の範囲内にある。他に記載されない限り、本発明の化合物のすべての互変異性体が、本発明の範囲内にある。さらに、他に記載されない限り、本明細書中に描かれる構造は、1つ以上の同位体濃縮原子が存在する点でのみ異なる化合物を含むことが意図される。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置換、または13C−もしくは14C−濃縮炭素による炭素の置換以外では本構造を有する化合物が、本発明の範囲内にある。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0029】
(3.例示的な化合物の説明)
一実施形態によると、本発明は、式Iの化合物であって、該化合物が式Iaまたは式Ib:
【0030】
【化15】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで、m、R、RおよびRの各基は、上記で定義した通りである。
【0031】
特定の実施形態によると、式I、式Ia、および式Ibうちの任意の式のR部分は、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。特定の実施形態において、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式のR部分は、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。他の実施形態において、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式のR部分は、−OHで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。さらに他の実施形態において、Rは非置換である。
【0032】
別の実施形態によると、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式のR部分は、イソプロピル、2−ブチル、シクロプロピル、またはエチルであって、ここで各部分は、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換される。特定の実施形態において、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式のR部分は、−OH、または−CFで必要に応じて置換される。
【0033】
本発明の別の局面は、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式の化合物であって、Rが、水素、C1〜3脂肪族、またはクロロである化合物に関する。さらに別の局面によると、本発明は、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式の化合物であって、Rが、クロロである化合物に関する。
【0034】
特定の実施形態において、mは1である。
【0035】
他の実施形態において、式I、式Ia、および式Ibのうちの任意の式のR部分は、水素、メチル、またはクロロである。
【0036】
式Iの代表的な化合物を、以下の表1に提示する。
【0037】
(表1 式Iの化合物の例)
【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

(4.本発明の化合物を提供する一般法)
一般に、当業者に公知である類似化合物の合成法および/もしくは擬似合成法、そして下記の一般スキームI、II、およびIIIならびに後に続く調製実施例によって説明されるような合成法および/もしくは擬似合成法によって、本発明の化合物を調製もしくは単離し得る。
【0040】
(スキーム1)
【0041】
【化18】

上記の一般スキームIは、本発明の化合物を調製するための一般方法を示している。工程(a)において、ピロール化合物1をヨウ素化し、エステル化することにより2を形成する。工程(b)において、必要に応じ、ピロール部分を適切なアミノ保護基を用いて−NH−で保護し、3を形成する。アミノ保護基は、当該分野において周知であり、1991年にJohn Wiley and Sonsから出版されたTheodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wutsによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に詳細に記載されており、この文献全体は、本明細書中に参考として援用される。化合物3のヨード部分を、適切なボロン酸またはボロン酸エステルによって置換する。上記に描かれるように、ビス(ピナコラート)ジボラン(bis(pinacolato)diborane)を、化合物4の形成に使用するが、他のボロン酸エステルまたはボロン酸が、この反応に敏感であり、当業者には明らかである。
【0042】
本発明の化合物が多置換ピリジン部分に関するので、反応順序を考慮し、ピリジン上の位置を活性化する方法を、位置化学を指向するために利用する。上記工程(d)において、最初の脱離基Lを、アルコール、アミンまたはチオールにより所望の通りに置換し得る。当業者には、種々のL脱離基がこの反応に敏感であることが理解される。そのような基の例としては、これらに限定されないが、ハロゲンおよび活性エーテルが挙げられる。この反応の後、工程(e)における金属触媒カップリング反応または求核置換による2番目の脱離基Lの置換が続き、化合物7を形成し得る。当業者には、種々のL脱離基がこの反応に敏感であることが理解される。そのような基の例としては、これらに限定されないが、ハロゲン、活性エーテル、ボロン酸、またはボロン酸エステルが挙げられる。
【0043】
工程(f)において、ピロール部分上の保護基を、使用されるアミノ保護基を除去するのに適した方法により除去する。どのアミノ保護基が使用されるかにより、保護基を除去するのに適した条件は、同時に鹸化するか、あるいは上記に描かれるように化合物8にカルボン酸部分を与え得る。アミノ保護基を除去するのに適した条件が、カルボン酸化合物8を与えるのに適していない場合は、別の工程を使用し得る。式Iの化合物を、工程(g)において描かれるように、結果として生じるカルボン酸を望ましいアミンとカップリングすることにより、8から調製する。当業者には、種々の条件が該カップリング反応に有用であり、望ましいアミンを用いた処理に先立ち、または望ましいアミンを用いた処理と同時に化合物8のカルボン酸部分を活性化させる工程を包含し得ることが理解される。そのような条件としては、これらに限定されないが、以下の実施例の節において詳細に記載される条件が挙げられる。
【0044】
(スキームII)
【0045】
【化19】

上記スキームIIは、本発明の化合物の調製に有用な中間体化合物6を調製する代替経路を描いている。工程(a)において、化合物9のN−オキシドを、過酸化水素を用いた処理により調製する。次いでN−オキシド化合物10を、硝酸を用いて処理することにより、ニトロ化合物11を形成する。11のL基を望ましいアミンR−NHで置換することにより12を形成し、次いで工程(d)において、L基を導入することにより、中間体6を提供する。次いで化合物6を、上記一般スキームIおよび以下の実施例に従って本発明の化合物を調製するために利用し得る。
【0046】
(スキームIII)
【0047】
【化20】

上記スキームIIIは、化合物7を6から調製するための代替方法を示している。この方法において、ピリジニル(pyridinyl)化合物6のL基を、適切なボロン酸誘導体またはボロン酸エステル誘導体により置換して13を形成し、ここでRおよびRは下記式Aの化合物について定義する通りの意味を有する。次いでこのボロン酸部分(boronate moiety)を、上記に描かれるようにピロールのL脱離基により置換して、化合物7を形成する。ここでLは、適切な脱離基である。次いで化合物7を、上記スキームIおよびスキームIIにおいて提示する方法、実施例の節において記載する方法、ならびに当業者に公知の方法によって本発明の化合物を調製するために使用する。
【0048】
当業者には、多様な本発明の化合物を、スキームI、II、およびIIIの一般法、ならびに以下に提示する合成実施例に従って調整し得ることが理解される。
【0049】
別の実施形態によると、本発明は式A:
【0050】
【化21】

の化合物またはその塩に関し、ここで:
PGは、適切なアミノ保護基であり;
は、適切なカルボン酸保護基であり;そして
およびRは、独立して水素もしくは必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族であるか、または:
およびRは、一緒になって、必要に応じて置換される5〜7員環を形成する。
【0051】
適切なアミノ保護基は当該分野において周知であり、1991年にJohn Wiley and Sonsから出版されたTheodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wutsによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に詳細に記載されているアミノ保護基を含む。特定の実施形態において、AのPG基は、アルキルまたはアリールスルホニル部分である。そのような基の例としては、メシル、トシル、ノシル(nosyl)、ブロシル(brosyl)、および2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル(「Mts」)が挙げられる。他のそのような基としては、Bn、PMB、Ms、Ts、SiR、MOM、BOM、Tr、Ac、COR、CHOCHSi(CHが挙げられる。
【0052】
適切なカルボン酸保護基は当該分野において周知であり、1999年にJohn Wiley and Sonsから出版されたTheodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wutsによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」第3版に詳細に記載されている。特定の実施形態において、AのR基は、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基または必要に応じて置換されるアリール基である。適切なR基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルが挙げられ、ここで各基は必要に応じて置換される。
【0053】
特定の実施形態において、RおよびRは、片方または両方が水素である。
【0054】
他の実施形態において、RおよびRは一緒になって、必要に応じて置換される5〜6員環を形成する。さらに他の実施形態において、RおよびRは一緒になって、4,4,5,5−テトラメチルジオキサボロラン部分を形成する。本発明により可能性が認められる他の適切なボロン酸誘導体としては、ボロン酸、B(O−C1〜10脂肪族)、およびB(O−アリール)が挙げられる。
【0055】
さらに別の実施形態によると、本発明は式B:
【0056】
【化22】

の化合物またはその塩であって、ここで:
が、C1〜6脂肪族基であって、ここでRは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロであり;そして
が、適切な脱離基である
化合物またはその塩を提供する。
【0057】
特定の実施形態において本発明は、式Bの化合物であって、上記および本明細書中に一般的にそしてクラスおよびサブクラスにおいて定義される通りである化合物を提供する。ここでRがクロロでRがイソプロピルである場合、Lはヨードではない。
【0058】
適切な脱離基は、所望の入ってくる化学部分により直ちに置換される化学部分である。したがって、特定の適切な脱離基の選択は、入ってくる式Aの化学基により直ちに置換される能力に基づく。適切な脱離基は当該分野において周知であり、例えば、John Wiley and Sons(N.Y.)から出版されたJerry Marchによる「Advanced Organic Chemistry」第5版のpp.351−357を参照されたい。そのような脱離基としては、これらに限定されないが、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ、必要に応じて置換されるアルキルスルホニル、必要に応じて置換されるアルケニルスルホニル、必要に応じて置換されるアリールスルホニル、およびジアゾニウム部分が挙げられる。適切な脱離基の例としては、クロロ、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニル(メシル)、トシル、トリフレート、ニトロ−フェニルスルホニル(ノシル)、およびブロモ−フェニルスルホニル(ブロシル)が挙げられる。特定の実施形態において、BのL部分はヨードである。
【0059】
代替的な実施形態によると、適切な脱離基は、反応媒体内の原位置に生成され得る。例えば、式Bの化合物中のLは、その式Bの化合物の前駆物質から原位置に生成され得、ここで該前駆物質は、原位置でLによって直ちに置換される基を含む。そのような置換の特定の例において、式Bの化合物の該前駆物質は、L(例えばヨード基)によって原位置で置換される基(例えば、クロロ基またはヒドロキシル基)を含む。ヨード基の供給源としては、例えば、ヨウ化ナトリウムであり得る。適切な脱離基のそのような原位置における生成は、当業者に周知であり、例えば、John Wiley and Sons(N.Y.)から出版されたJerry Marchによる「Advanced Organic Chemistry」第5版のpp.430−431を参照されたい。
【0060】
特定の実施形態によると、式BのR部分は、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。特定の実施形態において、式BのR部分は、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。他の実施形態において、式BのR部分は、−OHで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。さらに他の実施形態において、Rは非置換である。
【0061】
別の実施形態によると、式BのR部分は、イソプロピル、2−ブチル、シクロプロピル、またはエチルであって、ここで各部分は、−OH、または−CFで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。
【0062】
他の実施形態において、式BのR部分は、水素、メチル、またはクロロである。
【0063】
式Bの化合物を、式B’:
【0064】
【化23】

の化合物またはその塩であって、ここで:
が、水素、C1〜3脂肪族、フロロ、またはクロロであり;そして
およびLが、それぞれ独立して適切な脱離基である
化合物またはその塩から調製し得る。
【0065】
特定の実施形態において本発明は、式B’の化合物であって、上記および本明細書中に一般的にそしてクラスおよびサブクラスにおいて定義される通りである化合物を提供する。ここでRがクロロであってLがフロロである場合、Lはボロン酸部分ではない。
【0066】
特定の実施形態において、LがB(OR)(OR)であるB’の化合物が提供される。他の実施形態において、RおよびRは、片方または両方が水素である。他の実施形態において、RおよびRは、一緒になって、必要に応じて置換される5〜6員環を形成する。さらに他の実施形態において、RおよびRは、一緒になって、4,4,5,5−テトラメチルジオキサボロラン部分を形成する。
【0067】
上記のように、適切な脱離基は、所望の入ってくる化学部分により直ちに置換される化学基である。適切な脱離基は当該分野において周知であり、例えば、John Wiley and Sons(N.Y.)から出版されたJerry Marchによる「Advanced Organic Chemistry」第5版のpp.351−357を参照されたい。そのような脱離基としては、これらに限定されないが、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ、必要に応じて置換されるアリールスルホニル、およびジアゾニウム部分が挙げられる。適切な脱離基の例としては、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニル(メシル)、トシル、トリフレート、ニトロ−フェニルスルホニル(ノシル)、およびブロモ−フェニルスルホニル(ブロシル)が挙げられる。特定の実施形態において、B’のL部分はハロゲンである。他の実施形態において、B’のL部分は、必要に応じて置換されるアルキルスルホニル基、必要に応じて置換されるアルケニルスルホニル基、または必要に応じて置換されるアリールスルホニル基である。他の実施形態において、B’のL部分はフルオロである。
【0068】
代替的な実施形態によると、適切な脱離基は、反応媒体内の原位置で生成され得る。例えば、式B’の化合物中のLまたはL部分は、その式B’の化合物の前駆物質から原位置に生成され得、ここで該前駆物質は、原位置でLまたはLによって直ちに置換される基を含む。適切な脱離基のそのような原位置における生成は、当該分野において周知であり、例えば、John Wiley and Sons(N.Y.)から出版されたJerry Marchによる「Advanced Organic Chemistry」第5版のpp.430−431を参照されたい。
【0069】
別の実施形態によると、本発明は式B:
【0070】
【化24】

の化合物またはその塩を調製するための方法であって、式B’:
【0071】
【化25】

の化合物またはその塩を、式R−NHの化合物と反応させる工程であって、ここで該反応は適切な媒体中で行われ、そしてここで:
が、C1〜6脂肪族基であって、ここでRは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロであり;
およびLが、それぞれ独立して適切な脱離基である
工程を包含する方法を提供する。
【0072】
特定の実施形態において、前記反応を、必要に応じて適切な塩基の存在下で遂行する。当業者には、アミノ部分による脱離基の置換を達成するために、適切な塩基の存在が必要であるかまたは必要でないかが理解される。そのような適切な塩基は当該分野において周知であり、有機塩基および無機塩基を含む。
【0073】
適切な媒体は、溶媒または溶媒混合物であり、合わせた化合物と組み合わせてそれら化合物間の反応の進行を促進し得る。適切な溶媒は、1種以上の反応成分を可溶化し得るか、あるいは適切な溶媒は、1種以上の反応成分の懸濁液の攪拌を促進し得る。本発明に有用な適切な溶媒の例には、プロトン性溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、極性もしくは非極性非プロトン性溶媒、またはそれらの任意の混合物がある。そのような混合物としては、例えば、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒との混合物(ベンゼン/メタノール/水;ベンゼン/水;DME/水など)が挙げられる。
【0074】
これらの適切な溶媒および他の適切な溶媒は、当該分野において周知であり、例えば、John Wiley and Sons(N.Y.)から出版されたJerry Marchによる「Advanced Organic Chemistry」第5版を参照されたい。
【0075】
さらに別の実施形態によると、1種以上の試薬が適切な溶媒として機能する。例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基は、前記反応に利用される場合、その塩基性化試薬としての役割に加えて溶媒としても役立ち得る。
【0076】
特定の実施形態において本発明は、式B’の化合物であって、RおよびRが上記および本明細書中に一般的にそしてクラスおよびサブクラスにおいて定義される通りである化合物を提供する。
【0077】
別の局面によると、本発明は、式C:
【0078】
【化26】

の化合物またはその塩であって、ここで:
PGが適切なアミノ保護基であり;
が適切なカルボン酸保護基であり;
が、C1〜6脂肪族基であって、ここでRは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;そして
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロである
化合物またはその塩を提供する。
【0079】
上記のように、適切なアミノ保護基は当該分野において周知であり、1991年にJohn Wiley and Sonsから出版されたTheodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wutsによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に詳細に記載されるアミノ保護基を含む。特定の実施形態において、CのPG基は、アルキルまたはアリールスルホニル部分である。そのような基の例としては、メシル、トシル、ノシル、ブロシル、および2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル(「Mts」)が挙げられる。
【0080】
適切なカルボン酸保護基は、当該分野において周知であり、1991年にJohn Wiley and Sonsから出版されたTheodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wutsによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に詳細に記載されている。特定の実施形態において、CのR基は、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基、または必要に応じて置換されるアリール基である。適切なR基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルが挙げられ、ここで各基は必要に応じて置換される。
【0081】
特定の実施形態によると、式CのR部分は、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。特定の実施形態において、式CのR部分は、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。他の実施形態において、式CのR部分は、−OHで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。さらに他の実施形態において、Rは非置換である。
【0082】
別の実施形態によると、式CのR部分は、イソプロピル、2−ブチル、シクロプロピル、またはエチルであって、ここで各部分は、−OHまたは−CFで必要に応じて置換される。
【0083】
他の実施形態において、式CのR部分は、水素、メチル、またはクロロである。
【0084】
本発明のさらに別の局面は、式C:
【0085】
【化27】

の化合物またはその塩を調製するための方法であって、式A:
【0086】
【化28】

の化合物またはその塩を、式B:
【0087】
【化29】

の化合物またはその塩と反応させる工程であって、ここで該反応は、適切な媒体中で行われ、ここで:
PGが適切なアミノ保護基であり;
が適切な脱離基であり;
が適切なカルボン酸保護基であり;
およびRが独立して水素、もしくは必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基であるか、または:
およびRが、一緒になって、必要に応じて置換される5〜7員環を形成し;
がC1〜6脂肪族基であって、ここでRは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;そして
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロである
工程を包含する方法に関する。
【0088】
特定の実施形態において、前記反応は、Ni(II)、Pd(0)、またはPd(II)の存在下で行われ、ここで各触媒はリガンド(例えば、フェロセンまたはホスフィンをベースにしたリガンド)と関連付けられ得る。他の実施形態において、前記反応は、Pd(PPhの存在下で行われる。適切な媒体は、合わせた化合物と組み合わせてそれら化合物間の反応の進行を促進し得る溶媒または溶媒混合物である。適切な溶媒は、1種以上の反応成分を可溶化し得るか、あるいは適切な溶媒は、1種以上の反応成分の懸濁液の攪拌を促進し得る。本発明に有用な適切な触媒の例には、プロトン性溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、極性もしくは非極性非プロトン性溶媒、またはそれらの任意の混合物がある。そのような混合物としては、例えば、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒との混合物(ベンゼン/メタノール/水;ベンゼン/水;DME/水など)が挙げられる。
【0089】
これらの適切な溶媒および他の適切な溶媒は、当該分野において周知であり、例えば、John Wiley and Sons(N.Y.)から出版されたJerry Marchによる「Advanced Organic Chemistry」第5版を参照されたい。
【0090】
特定の実施形態において、化合物Cを形成するための化合物Aと化合物Bとの反応は、DMEと水の混合物中で行われる。
【0091】
特定の実施形態において、化合物Cを形成するための化合物Aと化合物Bとの反応は、約20℃〜150℃の範囲に及ぶ温度で行われる。他の実施形態において、化合物Cを形成するための化合物Aと化合物Bとの反応は、約100℃〜250℃の範囲に及ぶ温度でマイクロ波を照射して行われる。
【0092】
さらに他の実施形態において、化合物Cを形成するための化合物Aと化合物Bとの反応は、やや塩基性のpHで行われる。
【0093】
別の実施形態によると本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩のプロドラッグであって、ここで該プロドラッグが、式II:
【0094】
【化30】

のプロドラッグであり、ここで:
がC1〜6脂肪族基であって、ここでRは、−OR、−OR、または−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜6脂肪族であり;
各Rが、独立してR、フルオロ、またはクロロであり;
mが、0、1、または2であり;
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロであり;
各Rが、独立して水素、−C(R)O−R、またはRであるが、ただし少なくとも1つのRまたはRの基が水素ではなく;
各Rが、独立して−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)−Q−R、−C(O)−(CH−C(O)OR、−C(O)−(CH−C(O)N(R、−C(O)−(CH−CH(R)N(R、−P(O)(ORであり;
各Rが、独立して水素、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有し、必要に応じて置換される5〜8員の飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環であり;
各Rが、水素、−C(O)R、−C(O)OR、−S(O)、−OR、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有し、必要に応じて置換される5〜8員の飽和、部分的に不飽和、もしくは完全に不飽和の環であるか、あるいは;
同じ窒素原子上の2つのRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、その窒素原子に加え、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する4〜7員の飽和、部分的に不飽和、もしくは完全に不飽和の環を形成し;
各nが、0〜6であり;
Qが、必要に応じて置換されるC1〜10アルキリデン鎖であり、このQの0〜4個のメチレン単位が、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−C(O)−により独立して置換され;そして
が、水素、または−C(R)O−Rである
プロドラッグを提供する。
【0095】
特定の実施形態によると、式IIのR部分は、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。特定の実施形態において、式IIのR部分は、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。他の実施形態において、式IIのR部分は、−OHで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である。さらに他の実施形態において、Rは非置換である。
【0096】
別の実施形態によると、式IIのR部分は、イソプロピル、2−ブチル、シクロプロピル、またはエチルであり、ここで各部分は、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換される。さらに別の実施形態によると、式IIのR部分は、イソプロピル、2−ブチル、シクロプロピル、またはエチルであり、ここで各部分は、−OHまたは−CFで必要に応じて置換される。
【0097】
本発明の別の局面は、各Rが独立して水素、C1〜3脂肪族、またはクロロである式IIの化合物に関する。さらに別の局面によると、本発明は、Rがクロロであってmが1である式IIの化合物に関する。
【0098】
他の実施形態において、式IIのR部分は、水素、メチル、またはクロロである。
【0099】
特定の実施形態において、RはC(O)−Q−Rである。さらに他の実施形態は、式IIの化合物であって、ここでRがC(O)−Q−Rであり、Qが必要に応じて置換されるC1〜8アルキリデン鎖であって、ここでQの0〜4個のメチレン単位が−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−C(O)−により独立して置換され、Rが上記および本明細書中に一般的にそしてクラスおよびサブクラスにおいて定義される通りである。別の実施形態によると、Qは必要に応じて置換されるC1〜10アルキリデン鎖であって、ここでQの2〜4個のメチレン単位が−O−により独立して置換される。そのようなQの基としては、−CHOCHCHO−、−CHOCHCHOCHCHO−などが挙げられる。
【0100】
本発明のさらに別の局面において、RがC(O)−(CH−CH(R)N(Rである式IIの化合物を提供する。特定の実施形態において、nは0〜2である。他の実施形態において、Rは必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基である。そのようなR基の例としては、メチル、ベンジル、エチル、イソプロピル、t−ブチルなどが挙げられる。式IIのC(O)−(CH−CH(R)N(RのR基としては、水素、および必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基が挙げられる。そのような基の例としては、メチル、ベンジル、エチル、イソプロピル、t−ブチルなどが挙げられる。
【0101】
一局面によると、本発明は、Rが水素である式IIの化合物を提供する。
【0102】
一実施形態によると、RはL−バリンエステルである。
【0103】
本発明の特定の実施形態において、式IIのR基は、−P(O)(ORである。他の実施形態において、各Rは、独立して水素または必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基である。そのようなR基の例としては、メチル、ベンジル、エチル、イソプロピル、t−ブチルなどが挙げられる。さらに他の実施形態において、式IIのR基は−P(O)(OH)である。
【0104】
特定の実施形態において、式IIの化合物は、1つ以上の物理的または生理的特徴に関する改善を提供する。他の実施形態において、式IIの化合物は、1つ以上の物理的および生理的特徴に関する改善を与える。
【0105】
式IIの代表的な化合物を、以下の表2に示す。
【0106】
(表2)
【0107】
【化31】

そのようなプロドラッグを調整する方法は、後の実施例の節において詳細に提示する方法、および当業者に公知の方法を含む。
【0108】
(5.使用、処方および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
上記のように、本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターである化合物を提供する故、本発明の化合物は、疾患、障害および状態(これらに限定されないが、癌、自己免疫障害、神経変性障害、神経系障害、総合失調症、骨関連障害、肝疾患、および心臓障害を含む)の処置に有用である。したがって、本発明の別の局面において、薬学的に受容可能な組成物が提供され、ここでこれらの組成物は、本明細書中に記載する任意の化合物を含み、必要に応じ、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含む。特定の実施形態において、これらの化合物は、必要に応じ、1つ以上のさらなる治療因子をさらに含む。
【0109】
本発明の特定の化合物は、処置に対し自由な形態で、または適切な場合にはその薬学的に受容可能な誘導体として存在し得ることも理解される。本発明によると、薬学的に受容可能な誘導体としては、これらに限定されないが、薬学的に受容可能な塩、エステル、そのようなエステルの塩、必要としている患者への投与の際に、直接的にまたは間接的に、本明細書中に別に記載する化合物または代謝産物もしくはその残留物を提供し得る任意の他の付加物または誘導体が挙げられる。
【0110】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、不適当な毒性、刺激、アレルギー応答などがなく、ヒトおよび下等動物の組織と接触する用途に適しており、妥当な受益性/危険性比率と同程度の塩についていう。「薬学的に受容可能な塩」は、レシピアントへの投与の際に、直接的にまたは間接的に、本発明の化合物または阻害活性を有する(inhibitorily active)代謝産物もしくはその残留物を提供し得る任意の非中毒性の塩または本発明の化合物のエステルの塩を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「阻害活性を有する代謝産物もしくはその塩」は、代謝産物またはその残留物もまた、ERK2プロテインキナーゼのインヒビターであることを意味する。
【0111】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に受容可能な塩について、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19に詳細に記載しており、本明細書中に参考として援用される。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、適切な無機酸および無機塩基、ならびに適切な有機酸および有機塩基から誘導される塩が挙げられる。薬学的に受容可能な非毒性酸添加塩の例には、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸)、もしくは有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸)を用いてまたは当該分野において使用される他の方法(例えば、イオン交換)を使用することによって形成されるアミノ基の塩がある。他の薬学的に受容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン硫酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(pamoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニア塩、およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書において開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性生成物、油溶性生成物または分散可能生成物が、そのような四級化により得られ得る。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に受容可能な塩としては、適切な場合には、対イオン(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩)を使用して形成される非中毒性アンモニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0112】
上記のように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、さらに薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含み、本明細書中で使用される場合、そのような薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルには、特定の望ましい投薬形態に適するような、あらゆる溶媒、希釈液、もしくは他の液体ビヒクル、分散補助物もしくは懸濁補助物、表面活性剤、等張剤、糊稠剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などが含まれる。「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.、1980年)は、薬学的に受容可能な組成物の形成に使用される種々のキャリア、およびそれらを調整するための公知の技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的作用を生むことによるか、他には薬学的に受容可能な組成物の任意の他の成分(または複数の成分)と有害な様式で相互に作用することなどにより、任意の従来のキャリア媒体が本発明の化合物に適合しない場合を除き、その従来のキャリア媒体の使用は本発明の範囲内であることが企図される。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る物質のいくつかの例としては、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の一部のグリセリド混合物、水、塩類または電解質類(例えば、硫酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ラノリン、糖類(例えば、ラクトース、グルコース、スクロース);スターチ類(例えば、コーンスターチ、およびポテトスターチ);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース);粉末トララガント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバター、および坐剤ワックス);油(例えば、ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム);アルギン酸;パイロジェンフリー水、等張性生理食塩水、リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに他の適合性のある非中毒性潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウム)、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤、および酸化防止剤もまた、処方者の判断により、組成物中に存在し得る。
【0113】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の使用)
さらに別の局面において、必要としている被験体に、本発明の化合物、または本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物の有効量を投与する工程を含む、癌、自己免疫障害、神経変性障害、神経系障害、肝疾患、または心臓障害を処置するための方法、またはそれらの重篤度を軽減するための方法を提供する。本発明の特定の実施形態において、化合物または薬学的に受容可能な組成物の「有効量」は、癌、自己免疫障害、神経変性障害、神経系障害、総合失調症、骨関連障害、肝疾患、もしくは心臓障害から選択される疾患、状態、もしくは障害を処置するための有効量、またはそれらの重篤度を軽減するための有効量である。本発明の方法によると、これらの化合物および組成物は、癌、自己免疫障害、神経変性障害、神経系障害、総合失調症、骨関連障害、肝疾患、もしくは心臓障害を処置するのに有効な任意の投与量もしくは投与経路、またはこれらの重篤度を軽減するのに有効な任意の投与量もしくは投与経路を使用して投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および全身状態(general condition)、感染の重篤度、特定因子、その投与形態などにより、被験体間で異なり得る。本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし、かつ投薬量を均一にするための投薬量単位形態で処方される。「投薬量単位形態」という表現は、本明細書中で使用される場合、処置されるべく患者にとって適切な物理的に独立した薬剤単位についていう。しかしながら、本発明の化合物および組成物の一日の合計使用量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることが理解される。任意の特定の患者または生物体に対して特異的な有効用量レベルは、処置しようとする障害およびその障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;その患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食生活;投与時間、投与経路、および使用される特定の化合物の分泌率;処置の期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは併用して使用される薬物を含む種々の要因、ならびに医学分野において周知の同様な要因により左右される。用語「患者」は、本明細書中で使用される場合、動物を意味し、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0114】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、処置しようとする感染の重篤度により、経口的に、直腸から、非経口的に、嚢内、膣内、腹腔内から、(粉末、軟膏、または点滴などにより)局所的に、(経口噴霧または鼻内噴霧として)頬(bucally)からなどにより、ヒトおよび他の動物に対して投与され得る。特定の実施形態において、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日に被験体の体重1kg当たり約0.01mg〜約50mg、好ましくは約1mg〜約25mgレベルの投薬量を1日に1回または複数回に分けて、経口的にまたは非経口的に投与され得る。
【0115】
経口投与のための液体投薬形態としては、これらに限定されないが、薬学的に受容可能なエマルション、ミクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加え、これらの液体投薬形態は、当該分野において一般的に使用される不活性希釈液、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽(germ)油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびこれら混合物など)を含み得る。不活性希釈液に加えて、この経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などのアジュバントを含み得る。
【0116】
注射可能な調製物、例えば、滅菌の注射可能な水性懸濁液または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、公知の技術により処方され得る。この滅菌の注射可能な調製は、非中毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、1.3−ブタンジオール中の溶液として)中の、滅菌の注射可能溶液、懸濁液またはエマルションであり得る。使用し得る受容可能なビヒクルおよび溶媒としては、水、リンガー溶液、U.S.Pおよび等張性塩化ナトリム溶液が挙げられ得る。加えて、滅菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来的に使用される。このために、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油が使用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能薬物の調製に使用される。
【0117】
注射可能な処方物は、例えば細菌保持フィルター(bacterial−retaining filter)に通して濾過することにより、または使用前に、滅菌剤を滅菌水または他の滅菌注射可能媒体中に溶解するか、または分散し得る滅菌固体組成物の形態で組み込むことによって滅菌し得る。
【0118】
本発明の化合物の効果を長引かせるために、皮下注射または筋肉注射からの化合物の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶性物質または非結晶性物質の懸濁液の使用により達成し得る。次いで、この化合物の吸収速度は、溶解速度に左右され、そしてこの溶解速度は、結晶の大きさおよび結晶形態に左右され得る、あるいは、非経口的に投与される化合物形態の吸収速度の遅延は、油状のビヒクル中に化合物を溶解させるかまたは懸濁させることにより達成される。注射可能な蓄積形態は、生分解性のポリマー(例えば、ポリ乳酸−ポリグリコリド)で、化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製され得る。ポリマーに対する化合物の比率、および使用される特定のポリマーの性質により、化合物の放出速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(無水物)が挙げられる。蓄積注射の処方はまた、リポソーム、または体組織に適合するミクロエマルション中に化合物を閉じ込めることによっても調製される。
【0119】
直腸投与または膣投与のための組成物は、好ましくは坐剤であり、この座剤は、適切な無刺激の賦形剤またはキャリア(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックス)と本発明の化合物とを混合することにより調製し得、周囲温度では固体であるが、体温では液体である坐剤であり、したがって、直腸腔または膣腔において融解して活性化合物を放出する。
【0120】
経口投与のための固形投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固形投薬形態では、活性化合物を少なくとも1つの不活性な薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤または増量剤(例えば、スターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(binder)(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア)、c)保湿剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、カルボン酸カルシウム、ポテトスターチ、タピオカスターチ、アルギン酸、特定のケイ酸塩、およびカルボン酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤、(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール)、h)吸収剤(例えば、カオリン、およびベントナイト粘土)、およびi)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラルリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物))と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、この投薬形態は、緩衝剤も含み得る。
【0121】
同様な型の固形組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖、そして高分子量のポリエチレングリコールなどを賦形剤として使用する軟質充填ゼラチンカプセルおよび硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣丸、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形投薬形態は、コーティング剤および薬莢(例えば、腸溶性コーティング剤および薬剤処方技術分野において周知の他のコーティング剤)を用いて調製し得る。それらは必要に応じて不透明化剤を含み得、活性成分(または複数の活性成分)のみを放出し、好ましくは、腸管の特定部分において放出し、必要に応じて放出を遅らせる組成物であり得る。使用され得る包理組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられ得る。同様な型の固形組成物もまた、ラクトースもしくは乳糖、そして高分子量のポリエチレングリコールなどを賦形剤として使用する軟質充填ゼラチンカプセルおよび硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る
活性化合物はまた、1種以上の上記賦形剤を用いたミクロ被包性形態であり得る。錠剤、糖衣丸、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形投薬形態は、コーティング剤および薬莢(例えば、腸溶性コーティング剤、放出制御コーティング剤および薬剤処方技術分野において周知の他のコーティング剤)を用いて調製し得る。そのような固形投薬形態において、活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトース、またはスターチ)と混合され得る。そのような投薬形態はまた、通常の実施と同様に、不活性な希釈剤とは異なるさらなる物質(例えば、錠剤化潤滑剤、および他の錠剤化助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、および微結晶性セルロース)を包含し得る。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、それらの投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。これらは必要に応じ、不透明化剤を含み得、活性成分のみを放出し、好ましくは、腸管の特定部分において放出し、必要に応じて放出を遅らせる組成物であり得る。使用され得る包理組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0122】
本発明の化合物の局所的投与または経皮的投与のための投薬形態としては、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、またはパッチが挙げられる。活性成分は滅菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアおよび必要とされる任意の保存剤、または必要となり得る緩衝剤と混合される。眼に対する処方物、点耳剤、および点眼剤もまた、本発明の発明の範囲内であると企図される。さらに本発明は、身体への化合物の制御された送達を提供するといったさらなる利点がある経皮パッチの使用を企図する。そのような投薬形態は、適切な媒体中に化合物を溶解させるかまたは調製することによって作製され得る。吸収改善剤もまた、皮膚面における化合物のフラックスを増大させるために使用され得る。この速度は、速度を制御する膜を提供するか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中にその化合物を分散させることにより、制御され得る。
【0123】
上記に一般的に記載されるように、本発明の化合物はERKプロテインキナーゼのインヒビターとして有用である。一実施形態において、本発明の化合物および組成物は、ERK1および/またはERK2プロテインキナーゼの片方または両方のインヒビターである。特定の原理によって縛られることなく、これらの化合物および組成物は、ERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼの片方または両方の活性化が、疾患、状態、または障害に関連付けられる、疾患、状態、障害の処置、またはそれらの重篤度の軽減に特に有用である。ERK1および/またはERK2プロテインキナーゼの活性化が特定の疾患、状態、または障害に関連付けられる場合、この疾患、状態、または障害はまた、「ERK1またはERK2媒介性疾患」、状態、または疾患症状についてもいう。したがって、別の局面において、本発明は、ERK1およびERK2プロテインキナーゼの片方または両方の活性化が、該疾患、状態、または障害に関連付けられる疾患、状態、障害を処置する方法か、またはそれらの重篤度を軽減する方法を提供する。
【0124】
ERK1および/またはERK2プロテインキナーゼのインヒビターとして本発明で利用される化合物の活性は、インビトロ、インビボ、または細胞株中でアッセイされ得る。インビトロアッセイは、活性ERK1または活性ERK2プロテインキナーゼのリン酸化活性またはATPase活性の阻害を決定するアッセイを含む。代替インビトロアッセイは、ERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼと結合するインヒビターの能力を定量化する。インヒビター結合は、結合前にインヒビターを放射標識付けし、インヒビター/ERK1複合体またはインヒビター/ERK2複合体を単離し、結合した放射標識の量を決定することによって測定され得る。あるいは、インヒビター結合は、公知の放射性リガンドと結合したERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼとともに新規インヒビターをインキュベートする競合実験を実施することにより決定され得る。
【0125】
用語「測定可能な程度阻害する」は、本明細書中で使用される場合、前記組成物およびERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼを含むサンプルと前記組成物は含まずERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼを含む等価サンプルとの間で見られるERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼ活性の測定可能な変化を意味する。プロテインキナーゼ活性のそのような測定は、当業者に公知であり、以下本明細書において提示する方法を含む。
【0126】
別の実施形態によると、本発明は、患者においてERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該患者に本発明の化合物または該化合物を含む組成物を投与する工程を包含する方法に関する。
【0127】
用語「ERK媒介性状態」または「ERK媒介性疾患」は、本明細書中で使用される場合、ERKが役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。用語「ERK媒介性状態」または「ERK媒介性疾患」はまた、ERKインヒビターで処置することにより緩和される疾患または状態を意味する。そのような状態としては、これらに限定されないが、癌、脳卒中、糖尿病、肝肥大、心血管疾患(心肥大を含む)、アルツハイマー疾患、嚢胞性繊維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害(喘息を含む)、炎症、神経系障害、およびホルモン関連疾患が挙げられる。用語「癌」としては、これらに限定されないが、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、精巣癌、尿路性器(genitourinary tract)癌、食道癌、喉頭癌、神経グリア芽細胞腫、神経芽腫、胃癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、肺癌、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨癌、結腸癌、アデノ−マ、膵臓癌、腺癌、甲状腺癌、濾胞状癌、未分化癌腫、乳頭状癌、精上皮腫、メラノーマ、肉腫、膀胱腫、肝臓腫、胆道癌、腎臓腫、骨髄性障害、リンパ球系障害、ホジキン病、毛様細胞癌、口腔前庭および咽頭(口腔)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、咽頭癌、小腸癌、結腸−直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳および中枢神経系腫瘍、ならびに白血病が挙げられる。
【0128】
したがって、本発明の別の実施形態は、ERKが役割を果たすことが公知である1種以上の疾患を処置すること、またはそれらの重篤度を軽減することに関する。特に、本発明は、癌、脳卒中、糖尿病、肝肥大、心血管疾患(心肥大を含む)、アルツハイマー疾患、嚢胞性繊維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害(喘息を含む)、炎症、神経系障害、およびホルモン関連疾患から選択される疾患または状態を処置する方法、またはそれらから選択される疾患または状態の重篤度を軽減する方法であって、必要としている患者に対し、本発明に従う組成物を投与する工程を包含する方法に関する。
【0129】
別の実施形態によると本発明は、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、精巣癌、尿路性器癌、食道癌、喉頭癌、神経グリア芽細胞腫、神経芽腫、胃癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、肺癌、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨癌、結腸癌、アデノ−マ、膵臓癌、腺癌、甲状腺癌、濾胞状癌、未分化癌腫、乳頭状癌、精上皮腫、メラノーマ、肉腫、膀胱腫、肝臓腫、胆道癌、腎臓腫、骨髄性障害、リンパ球系障害、ホジキン病、毛様細胞癌、口腔前庭および咽頭(口腔)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、咽頭癌、小腸癌、結腸−直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳および中枢神経系腫瘍、ならびに白血病から選択される癌を処置する方法に関する。
【0130】
別の実施形態は、必要としている患者におけるメラノーマ、乳癌、結腸癌、または膵癌を処置する方法に関する。
【0131】
本発明の化合物および薬学的に受容可能な組成物は、併用療法で使用され得る、つまり化合物および薬学的に受容可能な組成物が、1種以上の他の望ましい治療または医療処置と同時に、それ(ら)に先立って、またはそれ(ら)の後に投与され得ることも理解される。併用レジメンで使用する療法(治療または処置)の特定の組み合わせは、望ましい治療および/または処置と達成されるべき所望の治療効果との適合性を考慮する。また、使用される複数の療法が、同じ障害に対して所望の効果を達成し得る(例えば、発明的化合物が、同じ障害を処置するために使用される別の薬剤と同時に投与され得る)か、またはそれらが異なる効果を達成し得る(例えば、任意の副作用の制御)ことも理解される。本明細書中で使用される場合、特定の疾患または状態を処置または予防するために標準的に投与されるさらなる治療薬は、「処置しようとする疾患または状態に適切である」として公知である。
【0132】
例えば、化学療法因子または他の抗増殖因子を、増殖性疾患および癌を処置するために本発明の化合物と合わせ得る。公知の化学療法因子の例としては、これらに限定されないが、例えば、手術、放射線療法(ほんの一部にすぎないがいくつか例を挙げると、γ放射線、中性子線放射線療法、電子線放射線療法、プロトン療法、近接照射療法、および合成放射性アイソトープ)、内分泌療法、生物学的応答修飾物質(いくつか例を挙げると、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法および寒冷療法、任意の副作用を減衰させる因子(例えば、制吐剤)、ならびに他の承認された化学療法薬物(これらに限定されないが、アルキル化薬物(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリン拮抗物質およびピリミジン拮抗物質(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル(Cytarabile)、ゲムシタビン、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタクセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン(Topotecan))、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、ならびにホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド(Leuprolide)、フルタミド、およびメゲストロール)を含む)、GleevecTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、およびシクロホスファミドを含む本発明の発明的抗癌因子と組み合わせて使用され得る他の療法または抗癌因子が挙げられる。最新の癌療法のより包括的な考察に関しては、http://www.nci.nih.gov/、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmのFDAに承認された腫瘍学薬物の一覧表、およびThe Merck Manual、第17版、1999年を参照されたく、これらの内容全体が本明細書中に参考として援用される。
【0133】
本発明のインヒビターとも合わせ得る因子の他の例としては、これらに限定されないが:アルツハイマー病のための処置(例えば、Aricept(登録商標)、およびExcelon(登録商標);パーキンソン病のための処置(例えば、L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン(entacapone)、ロピンロール(ropinrole)、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキシフェニジル(trihexephendyl)、およびアマンダジン);多発性硬化症(MS)を処置するための因子(例えば、βインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)、およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロン);喘息のための処置(例えば、アルブテロール、およびSingulair(登録商標));総合失調症を処置するための因子(例えば、ジプレキサ(zyprexa)、リスパダール(risperdal)、セロクエル(seroquel)、およびハロペリドール);抗炎症因子(例えば、コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1、RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジン);免疫調節因子および免疫抑制因子(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil)、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン);神経栄養因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャネルブロッカー、リルゾール(riluzole)、および抗パーキンソン因子);心血管疾患を処置するための因子(例えば、βブロッカー、ACEインヒビター、利尿剤、硝酸塩、カルシウムチャネブロッカー、およびスタチン(statin));肝疾患を処置するための因子(例えば、コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス因子);血管障害を処置するための因子(例えば、コルチコステロイド、抗白血病因子、および成長因子);ならびに免疫不全障害を処置するための因子(例えば、γグロブリン)が挙げられる。
【0134】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療因子の量は、通常唯一の活性因子としてその治療因子を含む組成物中で投与される量にすぎない。本開示による組成物中のさらなる治療因子の量は、通常唯一の治療活性因子としてその因子を含む組成物中に存在する量の約50%〜100%の範囲であることが好ましい。
【0135】
代替的な実施形態において、さらなる治療因子を含まない組成物を利用する本発明の方法は、前記患者にさらなる治療因子を別個に投与するさらなる工程を包含する。これらのさらなる治療因子が別個に投与される場合、それらの治療因子は本発明の組成物の投与前に、本発明の組成物の投与と逐次的に、または本発明の組成物の投与に続き、患者に投与され得る。
【0136】
本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物はまた、移植可能な医療デバイス(例えば、人工器官、人工弁、代用血管、ステント、およびカテーテル)をコーティングするための組成物中に混合され得る。したがって本発明は、別の局面において、移植可能デバイスをコーティングするための組成物を含み、この組成物は、上記で一般的にそして本明細書においてクラスおよびサブクラスで記載される通りの本発明の化合物、および該移植可能デバイスをコーティングするのに適したキャリアを含む。さらに別の局面において本発明は、上記で一般的にそして本明細書においてクラスおよびサブクラスで記載される通りの本発明の化合物、および該移植可能デバイスをコーティングするのに適したキャリアを含む組成物でコーティングされた移植可能デバイスを含む。
【0137】
血管ステントは、例えば、再狭窄(術後に血管壁が再び狭くなること)を克服するために使用されている。しかしながら、ステントまたは他の移植可能デバイスを使用している患者は、血塊形成または血小板活性化の危険性を負う。これらの好ましくない結果は、キナーゼインヒビターを含む薬学的に受容可能な組成物でデバイスを予めコーティングすることにより、予防または緩和され得る。適切なコーティング剤およびコーティングされた移植可能デバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;第5,886,026号;および第5,304,121号に記載されている。これらのコーティング剤は、代表的には生体適合性のポリマー物質(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物)である。これらのコーティング剤は、組成物において制御された放出特性を与えるために、必要に応じ、フルオロシリコン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはそれらの組み合わせから成る適切なトップコートによりさらに被覆され得る。
【0138】
本発明の別の局面は、生物学的サンプルまたは患者におけるERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼ活性を阻害することに関し、その方法は、本発明の化合物もしくは該化合物を含む組成物を患者に投与する工程、または該生物学的サンプルを本発明の化合物もしくは該化合物を含む組成物と接触させる工程を包含する。用語「生物学的サンプル」は、本明細書中で使用される場合、これらに限定されないが、細胞培養またはそれらの抽出物;哺乳動物から入手した生検された物質またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、もしくは他の体液、またはその抽出物を含む。
【0139】
生物学的サンプルにおけるERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知である種々の目的のために有用である。そのような目的の例としては、これらに限定されないが、輸血、臓器移植、生物試料保存、および生物学的アッセイが挙げられる。
【実施例】
【0140】
(合成実施例)
本明細書中で使用される場合、用語「R」は、その化合物と関連づけられる分単位で示すHPLCの保持時間についていう。他に示さない限り、報告される保持時間を得るために利用されるHPLC法は、次の通りである:
カラム:Agilent/ZORBAX SB−C18/5μm/3.0×150mm/PN 883975−302/SN USBM001410
勾配:8分間で10〜90%MeCN
流量:1.0mL/分
検出:214nmおよび254nm。
【0141】
他に示されない限り、各H NMRは、CDCl中に500MHzで得られ、これらの化合物番号は、表1に列挙する化合物番号に対応する。
【0142】
(実施例1)
化合物I−9を、次の通り調製した:
【0143】
【化32】

(2,2,2−トリクロロ−1−(4−ヨード−1H−ピロール−2−イル)エタノン):窒素雰囲気下の乾燥ジクロロメタン(400mL)中の2,2,2−トリクロロ−1−(1H−ピロール−2−イル)−エタノン50g(235mmol、1.0当量)の攪拌溶液に、ジクロロメタン(200mL)中の一塩化ヨウ素(39g、240mmol、1.02当量)溶液を滴下した。結果として生じた混合物を、室温で2時間攪拌した。この溶液を、10%炭酸カリウム、水、1.0Mチオ硫酸ナトリウム、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。この固体をヘキサン/酢酸メチルから再結晶化することにより、無色の固体(86%)として表題の化合物(68.5g、86%)を得た。MS FIA:335.8、337.8 ES−。
【0144】
(4−ヨード−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル):窒素雰囲気下の乾燥メタノール(400mL)中の2,2,2−トリクロロ−1−(4−ヨード−1H−ピロール−2−イル)エタノン(68g、201mmol、1.0当量)の攪拌溶液に、10分間かけてメタノール中のナトリウムメトキシドの溶液(4.37M、54mL、235mmol、1.2当量)を加えた。結果として生じた混合物を、室温で1時間攪拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、水とtert−ブチルメチルエーテルとの間で分配した。有機相を分離し、水、飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮することにより、無色の固体として表題の化合物(48g、96%)が得られ、これをさらに精製することなく直接使用した。
【0145】
(4−ヨード−1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル):4−ヨード−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(24.6g、98mmol、1.0当量)を、ジクロロメタン(150mL)およびトリエチルアミン(30mL、215.6mmol、2.2当量)に溶解させた。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(1.2g、9.8mmol、0.1当量)およびp−トルエンスルホニルクロリド(20.6g、107.8mmol、1.1当量)を加え、この反応混合物を室温で16時間攪拌した。この反応物を1M HClでクエンチし、有機層を、炭酸水素ナトリウム水およびブラインで洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で溶媒を除去し、その残留物をtert−ブチルメチルエーテルから結晶化することにより、淡黄色の固体(30g、75%)として表題の化合物を得た。R(分)8.259分。
【0146】
(4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル):窒素雰囲気下のDMF(200mL)中の4−ヨード−1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(20g、49.4mmol、1.0当量)およびビス(ピナコラート)ジボラン(15g、65mmol、1.3当量)の脱気溶液に、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(3.6g、4.9mmol、0.1当量)を加えた。次いでこの反応混合物を、80℃で18時間攪拌した。減圧下でDMFを除去した後、結果として生じた濃厚な油状残留物をジエチルエーテル(500mL)中に懸濁させると、直ちに固体が沈殿した。この固体を濾過により除去し、濾過液を、1M HCl、水、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。濃縮することにより、白色固体(10g、50%)として表題の化合物が得られ、これをさらに精製することなく使用した。
【0147】
【化33】


【0148】
(N,N’−2−(5−クロロ−4−ヨード−ピリジル)−イソプロピルアミン):
(方法A:(マイクロ波))
10mLマイクロ波管中で、5−クロロ−2−フルオロ−4−ヨードピリジン(1.0g、3.9mmol、1.0当量)を、DMSO(4.0mL)に溶解させ、次いでイソプロピルアミン(0.99mL、11.7mmol、3.0当量)を加えた。この管を密封し、150℃で600秒間マイクロ波を照射した。この反応を6回繰り返した。この反応混合物を合わせ、次いで、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、この溶媒をこの溶媒をエバポレートすることにより、濃厚な褐色油状体(5.6g、80%)として表題の化合物を得、さらに精製することなく直接使用した。
【0149】
【化34】


【0150】
(方法B:(熱))
5−クロロ−2−フルオロ−4−ヨードピリジン(400mg、1.55mmol、1.0当量)をエタノール(5.0mL)に溶解させ、次いで、イソプロピルアミン(0.66mL、7.8mmol、5.0当量)を加えた。結果として生じた溶液を、80℃で48時間攪拌した。次いで、この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒をエバポレートすると濃厚な褐色油状体が得られ、次いでヘキサン/酢酸エチル(99:1〜80:20)の混合物で溶離するシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィにより精製し、淡黄色の固体(96mg、21%)として表題の化合物を得た。
【0151】
(4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル):DME(4.0mL)中のN,N’−2−(5−クロロ−4−ヨード−ピリジル)−イソプロピルアミン(0.53g、1.8mmol、1.0当量)と4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(0.78g、1.8mmol、1.0当量)との溶液を、2M 炭酸ナトリウム水溶液(1.0mL)を添加し、続いてPd(PPh(0.21mg、0.18mmol、0.1当量)を添加した。マイクロ波管を密封し、この反応混合物に170℃で1800秒間マイクロ波を照射した。6回の反応による粗製物を合わせ、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を除去し、結果として生じた濃厚な油状体をシリカゲルに吸収させた。次いでこの粗製物を、ヘキサン/酢酸エチル(99:1〜70:30)の混合物を用いて溶離するシリカを用いたフラッシュクロマトグラフィにより精製し、黄色固体(3.1g、2工程にわたり61%)として表題の化合物を得た。
【0152】
【化35】

(4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル):DME(2mL)中のN,N’−2−(5−クロロ−4−ヨード−ピリジル)−イソプロピルアミン(96mg、0.32mmol、1.0当量)と4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(152mg、0.35mmol、1.1当量)との溶液に、2M 炭酸ナトリウム水溶液(0.2mL)を加え、続いてPd(PPh(37mg、0.032mmol、0.1当量)を添加した。この反応混合物を80℃で16時間攪拌した。粗製物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を除去し、結果として生じた濃厚な油状体をシリカゲルに吸収させた。次いでこの粗製物を、ヘキサン/酢酸エチル(99:1〜80:20)の混合物を用いて溶離するシリカを用いたフラッシュクロマトグラフィにより精製し、黄色固体(65mg、43%)として表題の化合物を得た。R(分)7.290。MS FIA:476.1 ES+。
【0153】
(4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボン酸):
(方法A:(マイクロ波))
THF(2.0mL)中の4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(3.1g、6.9mmol、1.0当量)の溶液を、水(3.0mL)中の水酸化リチウム水和物(710mg、17.3mmol、2.5当量)溶液に加えた。マイクロ波管を密封し、この反応混合物に150℃で1200秒間マイクロ波を照射した。粗製物を6N HCl水で酸性化した。この溶液をエバポレートすることにより、表題の化合物が得られ、これをさらに精製することなく直接使用した。R(分):3.574。FIA MS:279.9 ES+;278.2 ES−。
【0154】
(方法B:(熱))
THF(3.0mL)中の4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(0.69g、1.4mmol、1.0当量)の溶液を、水(3.0mL)中の水酸化リチウム一水和物(1.19g、29mmol、20.0当量)溶液に加えた。次いで、この混合物を8時間還流した。粗溶液を、濁るまで6N HCl水で酸性化し、有機溶媒を部分的に除去すると、生成物が沈殿した。表題の化合物を濾過により単離し、水およびジエチルエーテルで洗浄して、白色固体(0.38g、96%)を得た。
【0155】
(4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボン酸[1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]アミド):DMF(5.0mL)中の4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボン酸(1.93g、6.9mmol、1.0当量)の懸濁液に、EDCI(1.45g、7.6mmol、1.1当量)、HOBt(0.94g、6.9mmol、1.0当量)および(S)−3−クロロフェニルグリシノール(chlorophenylglycynol)(1.58g、7.6mmol、1.1当量)を加えた。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(2.7mL)を加え、結果として生じた混合物を、室温で一晩攪拌した。次いで、この混合物を水に流し入れ、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を除去し、粗製物をシリカゲルに吸収させた。精製を、ヘキサン/アセトン(80:20〜60:40)の混合物を用いて溶離するシリカを用いたフラッシュクロマトグラフィにより実施し、白色固体(1.9g、64%)として表題の化合物を得た。
【0156】
【化36】


【0157】
(実施例2)
化合物I−9を、次の代替方法:
【0158】
【化37】

によっても調製した。
【0159】
(2,5−ジクロロ−4−ニトロピリジン N−オキシド):無水酢酸(25mL)中の2−クロロ−5−クロロピリジン(10g、0.067mol)の懸濁液に、30%過酸化水素(25mL)を少量ずつ加えた。この混合物を室温で24時間攪拌し、次いで60℃で30時間加熱した。過剰となった酢酸を減圧下で除去後、その残留物を少しずつ濃硫酸(15mL)に加えた。結果として生じた溶液を、濃硫酸(15mL)と発煙硝酸(25mL)との混合物に加え、次いで、100℃で90分間加熱した。この反応混合物を氷に流し入れ、固体炭酸アンモニウムで中和し、最後に塩基性pHが得られるまでアンモニア水を加え、Aの沈殿物が形成された。この沈殿物を濾過により回収し、淡黄色の固体(3.1g)として表題の化合物を得た。R(分)3.75.MS FIAはピークを示さない。
【0160】
【化38】


【0161】
(4−ブロモ−2−クロロ−5−N−イソプロピルピリジン−2−アミン N−オキシド):2,5−ジクロロ−4−ニトロピリジン N−オキシド(400mg、1.9mmol)に、極めて遅い速度で臭化アセチル(2mL)を加えた。次いでこの反応混合物を、80℃で10分間加熱した。この溶媒を、窒素蒸気下で除去し、粗産物を高真空下で乾燥させた。この粗物質(165mg、0.62mmol)を、エタノール(2mL)に溶解させ、イソ−プロピルアミン(0.53mL)を加え、その結果として生じた混合物を80℃で2時間加熱した。次いでこの粗溶液を逆相HPLC(アセトニトリル/水/TFA 1%)により精製し、淡黄色固体(60mg、36.6%)として表題の化合物を得た。R(分)5.275.MS FIA264.8,266.9 ES+.
(4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボン酸[1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]アミド(I−9):4−ブロモ−2−クロロ−5−N−イソプロピルピリジン−2−アミン N−オキシド(25mg、0.094mmol、1.0当量)および4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(39mg、0.094mmol、1.0当量)を、ベンゼン(5mL)に溶解させ、次いで2M NaCO水(1mL)およびPd(PPh(115.6mg、0.1mmol、0.2当量)を加え、その結果として生じた懸濁液を、80℃で16時間、還流下で加熱した。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させることにより、4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノ−ピリジン−4−イル)−1−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル N−オキシド(R(分)6.859.MS FIA:492.0 ES+)が得られ、次いでこれを室温でジクロロメタン(1mL)中の2M PCl溶液で処理した。10分後、溶媒を窒素蒸気下で除去し、粗油状体をメタノール(1mL)中に溶解させ、1M NaOH水(1mL)に溶解させた。この反応混合物を16時間、還流下で加熱し、次いで粗溶液を1M HCl水を使用して酸性化し、溶媒を除去した。その結果として生じた4−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノ−ピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボン酸(R(分)3.527.MS FIA:279.4 ES+;278.2 Es−)を、EDCI(36mg、0.19mmol、2当量)、HOBt(26mg、0.19mmol、2当量)、(S)−3−クロロフェニルグリシノール HCl塩(59mg、0.28mmol、3当量)、そしてDIEA(0.12mL、0.75mmol、8当量)と一緒に、DMF(3mL)中に懸濁させた。その結果として生じた混合物を室温で16時間攪拌した。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去後、粗産物を逆相HPLC(アセトニトリル/水/TFA 1%)により精製し、白色固体(4.8mg、8.1%)として表題の化合物を得た。
【0162】
(実施例3)
化合物I−3を、次の通り調製した:
【0163】
【化39】

(2−クロロ−5−メチル−4−ニトロピリジン N−オキシド):表題の化合物を、Z.Talik,A.Puszkoによる「Roczniki Chemii Ann.Soc.Chim.Polonorum」1976年、50、2209に記載されるものと実質的に同様な様式で、次の通り調製した。無水酢酸(25mL)中の2−クロロ−5−メチルピリジン(10g、0.078mol)の懸濁液に、30%過酸化水素水(25mL)を少量ずつ加えた。この混合物を室温で24時間攪拌し、次いで60℃で30時間過熱した。過剰となった酢酸を減圧下で除去後、その残留物を少しずつ濃硫酸(15mL)に加えた。結果として生じた溶液を、濃硫酸(15mL)と発煙硝酸(25mL)との混合物に加え、次いで、100℃で90分間加熱した。この反応混合物を氷に流し入れ、固体炭酸アンモニウムで中和し、最後に塩基性pHが得られるまでアンモニア水を加え、Aの沈殿物が形成された。この沈殿物を濾過により回収し、淡黄色の固体(9.4g、0.050mol、R(分)3.272、FIA ES+ 188.9、ES−188.0)として表題の化合物を得た。
【0164】
(2−((S)−1−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−5−メチル−4−ニトロ−ピリジン N−オキシド):2−クロロ−5−メチル−4−ニトロピリジン N−オキシド(200mg、1.06mmol、1.0当量)を、エタノール(1.5mL)に溶解させた。次いで、(S)−2−アミノブタノール(284mg、3.2mmol、3.0当量)を加え、結果として生じた混合物を16時間還流した。次いで、この粗溶液を逆相HPLC(アセトニトリル/水/TFA)により精製し、褐色固体(146mg、0.61mmol、R(分)3.787;FIA ES+ 241.8、ES−は観測されない)として表題の化合物を得た。
【0165】
(酢酸2−(4−ブロモ−5−メチルピリニン(methylpyrinin)−2−イルアミノ)−ブチルエステル:2−((S)−1−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−5−メチル−4−ニトロ−ピリジン N−オキシド(146mg、0.61mmol)を、臭化アセチル(1.5mL)に溶解させた。次いで、この混合物を90℃で3時間加熱した。臭化アセチルを窒素蒸気下でエバポレートし、粗物質をジクロロメタン(2mL)中の2M PCl溶液に溶解させた。結果として生じた混合物を室温で1時間攪拌し、この反応混合物を飽和NaHCO水溶液に流し入れ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、次いで溶媒をNaSOで乾燥させ、減圧下で除去することにより、茶褐色の油状体(149mg、R(分)4.146;FIA ES+ 300.9,ES−は観測されない)として表題の化合物を得た。
【0166】
(4−[2−(S)−(1−アセトキシメチルプロピルアミノ)−5−メチルピリジン−4−イル]−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル):ベンゼン(5mL)中の酢酸2−(4−ブロモ−5−メチルピリニン−2−イルアミノ)−ブチルエステル(149mg、0.5mmol、1.0当量)と4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(215mg、0.50mmol、1.0当量)との溶液に、2M NaCO水(1mL)およびPd(PPh(115.6mg、0.1mmol、0.2当量)を加えた。16時間還流下で加熱後、この混合物を水に流し入れ、酢酸エチルで抽出した。この有機抽出物をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去することにより、表題の化合物(R(分)6.684;FIA ES+ 528.3、ES−は観測されない)が得られ、これを次の工程に進めた。
【0167】
(4−[2−(S)−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−5−メチルピリジン−4−イル]−1H−ピロール−2−カルボン酸(carboylic acid)[1−(S)−(3−クロロフェニルグリシノール(chlorophenylgylcinol)]アミド(I−3)):粗4−[2−(S)−(1−アセトキシメチルプロピルアミノ)−5−メチルピリジン−4−イル]−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステルを、メタノール(1.5mL)および1M NaOH水(2mL)に溶解させ、この混合物を、16時間還流下で加熱した。1M HCl水(2.2mL)で酸性化後、溶媒を減圧下で除去し、次いで粗製物をDMF(5mL)中に懸濁させた。EDCI(192mg、1.0mmol)、HOBt(135mg、1.0mmol)およびDIEA(0.48mL、3.0mmol)を添加後、この混合物を加えるまで室温で30分間攪拌した。次いで、(S)−3−クロロフェニルグリシノール HCl塩(312mg、1.5mmol)とこの反応混合物とを、室温で16時間攪拌した。この反応混合物を酢酸エチルに溶解させ、水で洗浄し、有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。その粗残留物を逆相HPLC(アセトニトリル/水/TFA)により精製し、無色の固体(29.3mg、0.07mmol、R(分)4.563;FIA ES+ 443.1、ES−441.5)として表題の化合物を得た。
【0168】
【化40】


【0169】
(実施例4)
(特性データ)
本発明の化合物を、上記実施例1〜3に記載したものと実質的に同様な方法、および当業者に公知の方法により調製した。これらの化合物についての特性データを、以下表3に要約する。また、これらのデータには、HPLC、MS、およびH NMRデータが含まれる。特に指定のない限り、H NMRデータは500MHzで得られ、報告される化学シフトは全て、ppmである。化合物番号は、表1、表2、および表3に列挙する化合物番号に対応する。本明細書中で使用される場合、用語「R」は、分単位で示す保持時間であって、上記のHPLC法を使用して指定の化合物について得られる。複数の方法が任意の与えられた化合物について得られる場合、本明細書に記載のとおり、1つの典型的な方法のみが提供される。解析測定値が、本明細書中で記載されるいずれの所与の化合物に対しても得られた場合には、1つの典型的な測定値のみが提供される。
【0170】
(表3 式Iの選択された化合物についての特性データ)
【0171】
【化41】

【0172】
【化42】


【0173】
(実施例5)
(プロドラッグの合成)
式IIのプロドラッグを、当業者に公知の種々の方法により、式Iのヒドロキシル化合物から調製する。これらの方法としては、これらに限定されないが、所望のカルボン酸またはリン酸塩の形成によるアシル化が挙げられる。式Iのヒドロキシル部分を望ましいアミノ酸によりアシル化する場合、このアミノ酸のアミノ部分を、本明細書において既に記載した通りの適切なアミノ保護基により必要に応じて保護し得る。
【0174】
化合物I−9のL−バリン プロドラッグの調製を、以下に詳細に記載する。
【0175】
【化43】


【0176】
(ブタン酸(2S)−(S)−2−(4−(5−クロロ−2−(イソプロピルアミノ)ピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボキサミド)−2−(3−クロロフェニル)エチル−2−アミノ−2−メチル(II−1)):ジクロロメタン(50mL)中の化合物I−9(1g、2.3mmol、1.0当量)の溶液に、DIEA(1.1mL、6.9mmol、3.0当量)およびN−BOC−L−バリン(1.2g、5.52mmol、2.4当量)を加えた。次いでPyBOP(2.9g、5.75mmol、2.5当量)をゆっくりと加え、結果として生じた混合物を室温で48時間攪拌した。次いでこの混合物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この粗固体をシリカに吸収させ、次いでヘキサン/酢酸エチル(90:10〜50:50)の混合物で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製し、白色固体(736mg)として表題の化合物を得た。Bocにより保護された化合物を得た。この中間体(761mg、1.2mmol)をジオキサン(1mL)に溶解させ、ジオキサン中の4M HCL溶液で処理した。その結果として生じた混合物を室温で16時間攪拌した。次いで溶媒を除去し、表題の化合物の2×HCl塩を白色固体(571mg)として得た。
【0177】
【化44】


【0178】
化合物I−9のリン酸プロドラッグの調製を以下に詳細に記載する。
【0179】
【化45】

(リン酸ジ−tert−ブチル 4−(5−クロロ−2−(イソプロピルアミノ)ピリジン−4−イル)−N−((S)−1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)−1H−ピロール−2−カルボキサミド):化合物I−9(1g、2.3mmol、1.0当量)およびテトラゾール(241mg、3.45mmol、1.5当量)を、窒素下で室温にてジクロロメタン(5mL)およびアセトニトリル(5mL)に溶解させた。ジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホアミダイト(phosphoamidite)(1.1mL、3.45mmol、1.5当量)を滴下し、結果として生じた混合物を16時間攪拌した。次いで、この反応混合物を氷浴で冷却し、6M tert−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液(3mL)で処理し、20分間攪拌した。この透明溶液をジクロロメタンおよび少量のメタノールで希釈し、Na、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この粗油状体をシリカゲルに吸収させ、初めにヘキサン/アセトン(90:10〜60:40)の混合物で溶離するフラッシュクロマトグラフィ、次いで逆相HPLC(アセトニトリル/水/1%TFA)により精製し、白色固体(336mg)としてジーt−ブチルエーテル中間体を得た。HPLC R:6.53分、MS FIA:625.0 ES+;623.1 ES−。
【0180】
(リン酸4−(5−クロロ−2−(イソプロピルアミノ)ピリジン−4−イル)−N−((S)−1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)−1H−ピロール−2−カルボキサミド(II−2)):リン酸t−ブチル中間体(336mg、0.54mmol)をジオキサン(5mL)で懸濁させ、ジオキサン中の4M HCl溶液を加えた。その結果として生じた混合物を、室温で1時間攪拌した。次いで溶媒を除去し、次いで遊離リン酸塩をDMSO(15mL)と、メタノール(50mL)と、水(25mL)との溶液に溶解させ、2M NaCO溶液(0.25mL)で処理した。メタノールを減圧下で除去し、水/DMSO混合物を凍結乾燥機(liophilizer)を使用して除去し、オフホワイトの固体(187mg)として表題の化合物を得た。
【0181】
【化46】


【0182】
(実施例6)
(ERK2阻害アッセイ)
化合物を、分光光度結合酵素アッセイにより、ERK2の阻害についてアッセイした(Foxら(1998)「Protein Sci」7、2249)。このアッセイでは、固定濃度の活性ERK2(10nM)を、10mM MgCl、2.5mM エノールピルビン酸二リン酸塩、200μM NADH、150μg/mL ピルビン酸キナーゼ、50μg/mL 乳酸デヒドロゲナーゼおよび200μM erktideペプチドを含む0.1M HEPES緩衝液(pH7.5)中で30℃にて10分間、DMSO(2.5%)中の化合物を種々の濃度で一緒にインキュベートした。この反応を65μM ATPの添加により開始した。340nMにおける吸収度の低下速度をモニターした。IC50をインヒビター濃度の関数として、この速度データから求めた。
【0183】
本発明の化合物が、ERK2プロテインキナーゼのインヒビターであることを見出した。特定の実施形態において、化合物は、ERK2キナーゼを<0.1μMで阻害することが見出された。他の実施形態において、化合物は、ERK2キナーゼを<0.01μMで阻害することが見出された。
【0184】
(実施例7)
(ERK1阻害アッセイ)
化合物を、分光光度結合酵素アッセイにより、ERK1の阻害についてアッセイする(Foxら(1998)「Protein Sci」7、2249)。このアッセイでは、固定濃度の活性ERK1(20nM)を、10mM MgCl、2.5mM エノールピルビン酸二リン酸塩、200μM NADH、30μg/mL ピルビン酸キナーゼ、10μg/mL 乳酸デヒドロゲナーゼおよび150μM erktideペプチドを含む0.1M HEPES緩衝液(pH7.6)中で30℃にて10分間、DMSO(2.0%)中の化合物を種々の濃度で一緒にインキュベートした。この反応を140μM ATP(20μL)の添加により開始した。340nMにおける吸収度の低下速度をモニターした。Kをインヒビター濃度の関数として、この速度データから求めた。
【0185】
本発明の実施形態を多数記載したが、本明細書に記載する基本的な実施例を、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために変更し得ることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、実施例によって示された特定の実施形態によるよりも、別添の特許請求の範囲により定義されるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって:
が、C1〜6脂肪族基であり、Rは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;
各Rが、R、フルオロ、またはクロロであり;
mが、0、1、または2であり;そして
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロである、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である、化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、Rが、−OH、−CHF、−CHF、または−CFで必要に応じて置換されるC1〜4脂肪族である、化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物であって、Rが、イソプロピル、2−ブチル、シクロプロピル、またはエチルであり、各部分が、−OH、または−CFで必要に応じて置換される、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、水素、C1〜3脂肪族、またはクロロである、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、水素、メチル、またはクロロである、化合物。
【請求項7】
以下:
【化2】

【化3】

からなる群から選択される、化合物。
【請求項8】
式II:
【化4】

の化合物またはその受容可能な塩であって:
が、C1〜6脂肪族基であり、Rは、−OR、−OR、または−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜6脂肪族であり;
各Rが、独立してR、フルオロ、またはクロロであり;
mが、0、1、または2であり;
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロであり;
各Rが、独立して水素、C(R)O−R、またはRであるが、ただし少なくとも1つのRまたはRの基が水素ではなく;
各Rが、独立して−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)−Q−R、−C(O)−(CH−C(O)OR、−C(O)−(CH−C(O)N(R、−C(O)−(CH−CH(R)N(R、−P(O)(ORであり;
各Rが、独立して水素、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有し、必要に応じて置換される5〜8員の飽和、部分的に不飽和、もしくは完全に不飽和の環であり、
各Rが、独立して水素、−C(O)R、−C(O)OR、−S(O)、−OR、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有し、必要に応じて置換される5〜8員の飽和環、部分的に不飽和の環、もしくは完全に不飽和の環であるか、あるいは;
同じ窒素原子上の2つのRが、それらに結合している窒素原子と一緒になって、該窒素原子に加え、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する4〜7員の飽和環、部分的に不飽和の環、もしくは完全に不飽和の環を形成し;
各nが、0〜6であり;
Qが、必要に応じて置換されるC1〜10アルキリデン鎖であり、Qの0〜4個のメチレン単位が、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−C(O)−により独立して置換され;そして
が、水素、または−C(R)O−Rである
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、RがC(O)−Q−Rである、化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物であって、Qが必要に応じて置換されるC1〜8アルキリデン鎖であり、該Qの0〜4個のメチレン単位が、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−C(O)−により独立して置換される、化合物。
【請求項11】
請求項10に記載の化合物であって、Qが必要に応じて置換されるC1〜8アルキリデン鎖であり、Qの2〜4個のメチレン単位が、−O−により独立して置換される、化合物。
【請求項12】
請求項8に記載の化合物であって、Rが、C(O)−(CH−CH(R)N(Rである、化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物であって:
nが、0〜2であり;
が、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基であり;そして
が、水素、または必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族基である
化合物。
【請求項14】
請求項8に記載の化合物であって、Rが、L−バリンエステルである、化合物。
【請求項15】
請求項8に記載の化合物であって、Rが、−P(O)(ORである、化合物。
【請求項16】
以下:
【化5】

からなる群から選択される、化合物。
【請求項17】
式A:
【化6】

の化合物またはその塩であって:
PGが、適切なアミノ保護基であり;
が、適切なカルボン酸保護基であり;
およびRが、独立して水素、もしくは必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族であるか、または:
およびRが、一緒になって、必要に応じて置換される5〜7員環を形成する、
化合物。
【請求項18】
式B:
【化7】

の化合物またはその塩であって:
が、C1〜6脂肪族基であり、Rは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロであり;そして
が、適切な脱離基である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項19】
式B’:
【化8】

の化合物またはその塩であって:
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロであり;そして
およびLが、それぞれ独立して適切な脱離基である、
化合物またはその塩。
【請求項20】
式C:
【化9】

の化合物またはその塩であって:
PGが、適切なアミノ保護基であり;
が、適切なカルボン酸保護基であり;
が、C1〜6脂肪族基であり、該Rは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;そして
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロである、
化合物またはその塩。
【請求項21】
式C:
【化10】

の化合物またはその塩を調製する方法であって、該方法は、式A:
【化11】

の化合物またはその塩を、式B:
【化12】

の化合物またはその塩と反応させる工程を包含し、該反応が、適切な媒体中で行われ、かつ:
PGが、適切なアミノ保護基であり;
が、適切な脱離基であり;
が、適切なカルボン酸保護基であり;
およびRが、独立して水素、もしくは必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族であるか、または:
およびRが、一緒になって、必要に応じて置換される5〜7員環を形成し、
が、C1〜6脂肪族基であって、Rは、−ORまたは−C1〜3ハロアルキルから独立して選択される最大2つまでの基で必要に応じて置換され;
各Rが、独立して水素、またはC1〜4脂肪族であり;そして
が、水素、C1〜3脂肪族、フルオロ、またはクロロである、
方法。
【請求項22】
請求項1または請求項8のいずれかに記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含む、組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の組成物であって、該組成物が、化学療法因子もしくは抗増殖因子、抗炎症因子、免疫調節因子もしくは免疫抑制因子、神経系障害を処置するための因子、心臓血管疾患を処置するための因子、破壊性骨障害を処置するための因子、肝疾患を処置するための因子、抗ウイルス性因子、血管障害を処置するための因子、糖尿病を処置するための因子、または免疫不全障害を処置するための因子から選択されるさらなる治療因子をさらに含む、組成物。
【請求項24】
生物学的サンプル中のERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法が:
a)請求項22に記載の組成物;
b)請求項1に記載の化合物;または
c)請求項8に記載の化合物
と該生物学的サンプルとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項25】
患者においてERK1プロテインキナーゼまたはERK2プロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法が:
a)請求項22に記載の組成物;
b)請求項1に記載の化合物;または
c)請求項8に記載の化合物
を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
増殖性障害、心臓障害、神経変性障害、自己免疫障害、臓器移植と関連付けられる状態、炎症性障害、免疫媒介性障害、または骨障害から選択される疾患、状態、または障害を処置するか、あるいはそれらから選択される疾患、状態、または障害の重篤度を軽減することを必要としている患者において、増殖性障害、心臓障害、神経変性障害、自己免疫障害、臓器移植と関連付けられる状態、炎症性障害、免疫媒介性障害、または骨障害から選択される疾患、状態、または障害を処置するか、あるいはそれらから選択される疾患、状態、または障害の重篤度を軽減する方法であって:
a)請求項22に記載の組成物;
b)請求項1に記載の化合物;または
c)請求項8に記載の化合物
を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記疾患、障害、または状態が、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、精巣癌、尿路性器癌、食道癌、喉頭癌、神経グリア芽細胞腫、神経芽腫、胃癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、肺癌、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨癌、結腸癌、アデノ−マ、膵臓癌、腺癌、甲状腺癌、濾胞状癌、未分化癌腫、乳頭状癌、精上皮腫、メラノーマ、肉腫、膀胱腫、肝臓腫、胆道癌、腎臓腫、骨髄性障害、リンパ球系障害、ホジキン病、毛様細胞、口腔前庭および咽頭(口腔)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、咽頭癌、小腸癌、結腸−直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳腫瘍および中枢神経系腫瘍から選択される癌、あるいは白血病である、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記疾患、障害、または状態が、メラノーマ、あるいは乳癌、結腸癌、または膵臓癌から選択される癌である、方法。
【請求項29】
請求項1に記載の化合物であって:
前記Rが、イソプロピルまたは2−ブチルであって、1つの−OHで必要に応じて置換され;
が、HまたはClであり;
mが、1であり;そして
が、Clまたはメチルである
化合物。
【請求項30】
請求項18に記載の化合物であって、Rが、イソプロピルまたは2−ブチルであり、Rが、1つの−OHで必要に応じて置換される、化合物。
【請求項31】
請求項18に記載の化合物であって、Rが、Clまたはメチルである、化合物。
【請求項32】
請求項18に記載の化合物であって、Lが、I,Br、Cl、またはボロン酸である、化合物。
【請求項33】
請求項18に記載の化合物であって、Rが、イソプロピルまたは2−ブチルであって、1つのOHで必要に応じて置換され;Rが、Clまたはメチルであり、Lが、I,Br、Cl、またはボロン酸である、化合物。

【公表番号】特表2007−537295(P2007−537295A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513432(P2007−513432)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/016902
【国際公開番号】WO2005/113541
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】