説明

EUV露光用反射型マスクおよびその製造方法

【課題】補助パターンを有するEUV露光用反射型マスクにおいて、補助パターンの欠けや基板表面からの剥離、あるいは補助パターンの倒れを防止し、マスク製作が比較的容易で高精度のパターン転写が可能となる反射型マスクおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上に形成されEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に形成され前記反射層へのエッチング損傷を防止するバッファ層と、前記バッファ層上に形成され前記EUV光を吸収する吸収体層と、を少なくとも有するEUV露光用反射型マスクであって、前記EUV露光用反射型マスクのマスクパターンが、ウェハ上に転写される主パターンと、前記主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンとからなり、前記補助パターンがバッファ層で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSIなどの高密度集積回路の製造に用いられる極端紫外光(Extreme Ultra Violet:以後、EUVと記す。)を用いてマスクパターンをウェハ上に転写するためのEUV露光用の反射型マスクおよびその製造方法に関し、特に主パターンの近傍に補助パターンを配置した反射型マスクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、現在、ArFエキシマレーザを用いた光学式の投影露光装置により、フォトマスクを用いてウェハ上にパターンを転写するフォトリソグラフィ技術が行なわれている。これらの光学式の投影露光装置による露光方法では、いずれ解像限界に達するため、電子線描画装置による直描技術やインプリントリソグラフィ技術あるいはEUV露光技術のような新しいパターン形成方法が提案されている。
【0003】
これらの新しいリソグラフィ技術の中で、EUV露光技術は、エキシマレーザよりもさらに短波長の波長13.5nm程度のEUV光を用い、マスクパターンを通常1/4程度に縮小して露光する技術で、紫外線露光の短波長化の極限と見なされており、半導体デバイス用のリソグラフィ技術として注目されている。EUV露光においては、短波長のために屈折光学系が使用できないので、反射光学系が用いられ、マスクとしては反射型マスクが提案されている。
【0004】
EUV露光用反射型マスクは、基板と、基板上に設けられた多層膜構造でEUV光を反射する反射層と、反射層上に設けられたEUV光を吸収する吸収体層とを少なくとも設け、吸収体層によりマスクパターンを形成した構造となっている。反射型マスクに入射したEUV光は、反射層では反射され、吸収体層では吸収され、反射されたEUV光によりウェハ上に縮小転写パターンが形成される。
【0005】
EUV露光技術においても、EUV露光によるパターンの転写解像性をさらに向上させるために、従来の紫外線やエキシマレーザ露光で用いられている位相シフトマスクの原理を、反射光学系を用いたEUV露光にも適用する開発が進められている。反射型位相シフトマスクとして、局所的に露光光の位相を変化させ、位相を変えた光と位相の変わっていない光との干渉を利用して解像力を向上させる提案がされている。
【0006】
フォトマスクにおいては、位相シフトマスクの一形態として、ウェハ上に転写される回路パターンなどのパターン(以後、主パターンと称する。)の近傍に、投影光学系の解像限界以下であってウェハ上には転写されないパターン(以後、補助パターンと称する。)を配置した補助パターンを有するフォトマスクが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
補助パターンを配置したフォトマスクは、例えば、孤立パターンの周囲に微細な1個以上の補助パターンを配置することにより、周期パターンと同様のパターン構成を形成し、焦点深度拡大の効果が得られる。このように、補助パターンはごく微細であって、補助パターン自体は半導体基板上に結像しないので転写されないが、主パターンの解像性を向上させる点で優れている。補助パターンはアシスト・バー(Assist Bar)あるいはScattering Barとも称される。例えば、主パターンが矩形状のライン系のパターンの場合には、補助パターンも矩形状パターンとし、その長さは、主パターンの長さや設計ルールに応じて設定され、一般に、主パターンよりも長く形成されることが多く、補助パターン線幅寸法の数倍〜数10倍程度であり、主パターンから離れて補助パターン線幅寸法の数倍程度の位置に、主パターンに平行に形成される。
【0008】
従来、EUV露光は、本質的に解像力が高いパターン形成方法であることから、マスクに補助パターンは不要であるとされていたが、さらなる解像力向上のために、22nmノードおよびそれ以降に対して補助パターンを使いたいという要求が高まっており、補助パターンを有するEUV露光用反射型マスクも提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0009】
図6および図7は、従来の補助パターンを有するEUV露光用反射型マスク60、70の断面模式図(図6(a)、図7(a))および平面図(図6(b)、図7(b))であり、図6はライン系のマスクパターンの例、図7はホール系のマスクパターンの例である。図6および図7に示すように、基板61、71上に多層反射膜62、72が形成され、主パターン65、75の近傍に、補助パターン66、76が形成されている。
【0010】
図6に示すように、ライン系の主パターン65および補助パターン66は、いずれも反射層62上に形成されたバッファ層パターン63と吸収体パターン64とから構成されている。また、図7に示すように、ホール系の主パターン75および補助パターン76は、いずれも反射層72上の吸収体層を開口したバッファ層パターン73と吸収体パターン74とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−288346号公報
【特許文献2】特開平11−305417号公報
【特許文献3】特開2009−237339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図6および図7に示され、また特許文献2、特許文献3に記載されるような従来の補助パターンを有するEUV露光用反射型マスクは、マスク製作上困難な点が生じてきた。まず、補助パターンは上述のようにそれ自身がウェハ上に結像しないことが必要であり、主パターンの寸法よりも微小な寸法でなければならない点が挙げられる。その結果、主パターン寸法の微細化に伴い、求められる補助パターンの線幅寸法はさらに微小化しており、スキャッタリングバーなどの補助パターンは一般に実パターンの半分程度のサイズとなるために、マスク製作が限界の域に近づきつつあるという問題がある。
【0013】
また、補助パターンを設けたマスクは、特に図6に示されるようなライン系の補助パターンを有するマスクの場合には、洗浄等のマスク製造工程において、あるいは露光装置で使用中に汚れたマスクを再洗浄する場合において、しばしば補助パターンの一部が欠けたり(欠け)、補助パターンが基板表面から剥がれたり(剥離)、補助パターンがその線幅方向へ倒壊したり(倒れ)する現象が発生するという問題を生じ、補助パターンの微小化に伴い、上記の現象はより頻繁に起きるようになってきた。マスクの洗浄においては、通常、純水中での洗浄時に、洗浄力を高めるために超音波を併用することが多く、補助パターンの欠け、剥離、倒れ現象はさらに著しくなる傾向にあった。この補助パターンの欠けや剥離あるいは倒壊した箇所は、補助パターンの線幅が微小ゆえに従来のマスク修正技術による修正が不可能であり、マスクは欠陥として取り扱われる。
【0014】
このように補助パターンを設けたマスクの洗浄などにおける補助パターンの欠け、剥離、倒れ現象は、マスク製造の歩留りを低下させ、マスク製造コスト上昇の一因となり、またウェハへのパターン転写に使用した時のマスク洗浄において、マスク寿命を縮めるという問題となっている。
【0015】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、補助パターンを有するEUV露光用反射型マスクにおいて、補助パターンの欠けや基板表面からの剥離、あるいは補助パターンの倒れを防止し、マスク製作が容易で高精度のパターン転写が可能となる反射型マスクおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクは、基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に形成され前記反射層へのエッチング損傷を防止するバッファ層と、前記バッファ層上に形成され前記EUV光を吸収する吸収体層とを少なくとも有し、マスクパターンを設けたEUV露光用反射型マスクであって、前記マスクパターンが、ウェハ上に転写される主パターンと、前記主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンとからなり、前記補助パターンがバッファ層で構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項2に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクは、請求項1に記載のEUV露光用反射型マスクにおいて、前記主パターンが、前記反射層上に形成された前記吸収体層と前記バッファ層とからなり、前記補助パターンが、前記反射層上に形成された前記バッファ層で構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項3に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクは、請求項2に記載のEUV露光用反射型マスクにおいて、前記主パターンが、ライン系パターンであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項4に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクは、請求項1に記載のEUV露光用反射型マスクにおいて、前記主パターンが、前記吸収体層に開口した反射層からなり、前記補助パターンが、前記吸収体層に開口した前記バッファ層で構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項5に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクは、請求項4に記載のEUV露光用反射型マスクにおいて、前記主パターンが、ホール系パターンであることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項6に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクは、請求項1から請求項5までのうちのいずれか1項に記載のEUV露光用反射型マスクにおいて、前記反射層上に前記反射層を保護するキャッピング層を有することを特徴とするものである。
【0022】
本発明の請求項7に記載の発明に係るEUV露光用反射型マスクの製造方法は、 基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に形成され前記反射層へのエッチング損傷を防止するバッファ層と、前記バッファ層上に形成され前記EUV光を吸収する吸収体層と、を少なくとも備えたEUV露光用反射型マスクブランクを準備し、前記吸収体層上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記吸収体層をドライエッチングして吸収体パターンを形成する工程を含むEUV露光用反射型マスクの製造方法であって、前記吸収体層をドライエッチングして吸収体パターンを形成するとともに前記バッファ層を露出し、前記レジストパターンを剥離する工程の後に、前記露出したバッファ層の所定領域に第2のレジストパターンを形成し、前記第2のレジストパターンおよび前記吸収体パターンをマスクとして前記バッファ層をドライエッチングし、ウェハ上に転写される主パターンと、前記主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンを形成する工程と、前記第2のレジストパターンを剥離する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のEUV露光用反射型マスクによれば、補助パターンをバッファ層で作成することで、ライン系の主パターンの補助パターンとした場合には、その高さ(厚み)が低いため、補助パターンの作成が容易となり、マスク洗浄において補助パターンの欠けや基板表面からの剥離、あるいは倒れを抑えることができる。さらにライン系の主パターンの補助パターンとした場合には、バッファ層のみなのでEUV光の吸収が吸収体層に比べて弱いことから、従来技術の補助パターンと比較してパターン幅を大きくすることができ、補助パターンの作成がさらに容易になるという効果を奏する。一方、ホール系の主パターンの補助パターンとした場合には、バッファ層面が反射面としての作用をするが、EUV光の反射が多層反射膜と比べて弱いことから、従来技術の補助パターンと比較して補助パターン開口部のパターン幅を大きくすることができ、補助パターンの作成が容易になるという効果を奏する。
【0024】
本発明のEUV露光用反射型マスクの製造方法によれば、補助パターンをバッファ層で作成することで、従来技術の補助パターンと比較してパターン幅を大きくすることができ、補助パターンの作成が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のEUV露光用反射型マスクの第1の実施形態を示す断面図および平面図である。
【図2】本発明のEUV露光用反射型マスクの第2の実施形態を示す断面図および平面図である。
【図3】主パターンがライン系の場合の本発明のEUV露光用反射型マスクの製造工程を示す断面模式図である。
【図4】主パターンがホール系の場合の本発明のEUV露光用反射型マスクの製造工程を示す断面模式図である。
【図5】本発明のEUV露光用反射型マスクおよびその製造方法に用いる反射型マスクブランクの断面図である。
【図6】従来の補助パターンを有するEUV露光用反射型マスクの断面図および平面図であり、ライン系のマスクパターンの例を示す。
【図7】従来の補助パターンを有するEUV露光用反射型マスクの断面図および平面図であり、ホール系のマスクパターンの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
(反射型マスク)
本発明のEUV露光用反射型マスクは、基板と、基板上に形成されEUV光を反射する多層の反射層と、該反射層上に形成され反射層へのエッチング損傷を防止するバッファ層と、該バッファ層上に形成されEUV光を吸収する吸収体層とを少なくとも有したマスクであって、そのマスクパターンが、ウェハ上に転写される主パターンと、その主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンとからなり、該補助パターンがバッファ層で構成されているマスクである。
【0028】
本発明において、主パターンとは、EUV露光用反射型マスク上に形成されたマスクパターンのうちで、露光によりウェハ上に転写されるパターンを意味し、例えば、回路パターン、アライメントパターン、TEGパターンなどが挙げられる。補助パターンとは、主パターンの近傍に設けられ、パターン転写において主パターンの解像性などの転写特性向上に寄与するが、投影光学系の解像限界以下であって、自身はウェハ上には転写されないパターンを意味する。
【0029】
以下、代表的な補助パターンとして、ライン系の主パターンに補助パターンを設けたマスクとホール系の主パターンに補助パターンを設けたマスクについて説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態の反射型マスクは、主パターンが、反射層上に形成された吸収体層とバッファ層とからなり、補助パターンが、反射層上に形成されたバッファ層で構成されているマスクである。
【0031】
図1は、本発明のEUV露光用反射型マスクの第1の実施形態を示す部分断面図(図1(a))および平面図(図1(b))である。図1(a)は、図1(b)のA−A線における断面図である。図1に示す反射型マスク10の例では、主パターン15はライン系の場合を示し、基板10の一方の主面側に形成された主パターン15と、主パターン15の近傍に投影光学系の解像限界以下の大きさの1対のライン状の補助パターン16とが設けられ、補助パターン16の長手方向は、主パターン15の長手方向よりも長い場合を示す。
【0032】
図1(a)に示すように、主パターン15は、多層の反射層12上にパターニングされたバッファ層(バッファ層パターン)13と吸収体層(吸収体パターン)14とからなる。補助パターン16は、多層の反射層12上にパターニングされたバッファ層(バッファ層パターン)13で構成されている。
【0033】
本発明の反射型マスク10の補助パターン16は、吸収体層を用いずにパターニングされたバッファ層13のみで構成されていることにより、補助パターンのアスペクト比(パターン厚み/パターン幅)を小さくすることができ、補助パターンの作成が容易となる。さらに、マスク洗浄において補助パターンの欠けや基板表面からの剥離、あるいは倒れを抑えることができる。さらに補助パターン16の高さ(厚み)が低く、バッファ層のみで構成されるのでEUV光の吸収が吸収体層を設けた場合に比べて弱いことから、従来技術の補助パターンと比較してパターン幅を大きくすることができ、補助パターンの作成がより容易になるという効果が得られる。
【0034】
図1では、補助パターン16として1対の場合を例示したが、もとよりそれに限定されるわけではなく、補助パターンは主パターンの両側に複数個を設けてもよく、あるいは周辺の他のパターンとの関係等で主パターンの片側に1個のみ設けてあってもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
本実施形態の反射型マスクは、主パターンが、吸収体層に開口した反射層からなり、補助パターンが、吸収体層に開口したバッファ層で構成されているマスクである。
【0036】
図2は、本発明のEUV露光用反射型マスクの第2の実施形態を示す部分断面図(図2(a))および平面図(図2(b))である。図2(a)は、図2(b)のB−B線における断面図である。図2に示す例では、主パターン25はホール系の場合を示し、吸収体層24にパターニングして正方形に開口して露出した反射層22からなる。補助パターン26は、主パターン25の近傍にライン状パターンとして平行に4箇所設けられ、吸収体層24に開口して露出したバッファ層23で構成されている。
【0037】
本発明の反射型マスク20の補助パターン26は、吸収体層24に開口したバッファ層23のみで構成されていることにより、補助パターンとする領域のバッファ層23のさらなるエッチングが不要であり、補助パターンの作成が容易となる。すなわち、補助パターン26の開口部に露出しているバッファ層23のEUV光の反射率が反射層22に比べて弱いことから、従来技術の補助パターンと比較して補助パターン幅を大きくすることができ、補助パターンの作成が容易になるという効果が得られる。
【0038】
上記の第1の実施形態および第2の実施形態のEUV露光用反射型マスクにおいては、反射層12、22上に反射層を保護するキャッピング層(不図示)を有し、該キャッピング層上にバッファ層が設けられている構成であってもよい。
【0039】
(反射型マスクの製造方法)
次に、本発明のEUV露光用反射型マスクの製造方法について、ライン系の主パターンに補助パターンを設けた場合とホール系の主パターンに補助パターンを設けた場合について説明する。
【0040】
(第1の実施形態)
図3は、本発明のEUV露光用反射型マスクの製造方法における第1の実施形態を示す工程断面模式図であり、図1に示したようなライン系の主パターンの補助パターンを設けた反射型マスクの製造工程である。
【0041】
先ず、図3(a)に示すように、基板31と、基板31の一方の主面(表面)上に形成されたEUV光を反射する反射層32と、反射層32上に形成され反射層32へのエッチング損傷を防止するバッファ層33aと、バッファ層33a上に形成されEUV光を吸収する吸収体層34aとを少なくとも有するEUV露光用反射型マスクブランクを準備し、上記の吸収体層34a上に電子線レジストを塗布し、電子線描画装置を用いて所定の設計パターンに基づいて電子線でパターン描画し、現像し、第1のレジストパターン37aを形成する。
【0042】
次に、第1のレジストパターン37aをマスクにして、吸収体層34aをドライエッチングし、次いで第1のレジストパターン37aを剥離して、図3(b)に示すように、吸収体パターン34を形成するとともに、バッファ層33aを露出する。
【0043】
次に、上記の吸収体パターン34および露出したバッファ層33aを覆って第2の電子線レジストを塗布し、電子線描画装置を用いて露出したバッファ層33aの所定領域に補助パターンを描画し、現像し、図3(c)に示すように、第2のレジストパターン37bを形成する。
【0044】
次に、上記の第2のレジストパターン37bおよび吸収体パターン34をマスクとしてバッファ層33aをドライエッチングし、次いで第2のレジストパターン37bを剥離して、図3(d)に示すように、バッファ層パターン33を形成し、ウェハ上に転写される主パターン35と、この主パターン35の近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターン36を形成し、本発明のEUV露光用反射型マスクを得る。
【0045】
(第2の実施形態)
図4は、本発明のEUV露光用反射型マスクの製造方法における第2の実施形態を示す工程断面模式図であり、図2に示したようなホール系の主パターンに補助パターンを設けた反射型マスクの製造工程である。
【0046】
先ず、図4(a)に示すように、基板41と、基板41の一方の主面(表面)上に形成されたEUV光を反射する反射層42と、反射層42上に形成され反射層42へのエッチング損傷を防止するバッファ層43aと、バッファ層43a上に形成されEUV光を吸収する吸収体層44aとを少なくとも有するEUV露光用反射型マスクブランクを準備し、上記の吸収体層44a上に電子線レジストを塗布し、電子線描画装置を用いて所定の設計パターンに基づいて電子線でパターン描画し、現像し、第1のレジストパターン47aを形成する。このとき第1のレジストパターン47aには、吸収体層44aの開口部となる主パターンと補助パターンの両方のパターンが形成されている。
【0047】
次に、第1のレジストパターン47aをマスクにして、吸収体層44aをドライエッチングし、次いで第1のレジストパターン47aを剥離して、図4(b)に示すように、吸収体パターン44を形成するとともに、バッファ層43aを露出する。上記のドライエッチングにおいて、主パターン部と補助パターン部の吸収体層44aは同時にエッチングされてバッファ層43aを露出した開口部が形成される。
【0048】
次に、上記の吸収体パターン44および露出したバッファ層43aを覆って第2の電子線レジストを塗布し、電子線描画装置を用いて露出したバッファ層43aの所定領域に補助パターンを描画し、現像し、図4(c)に示すように、第2のレジストパターン47bを形成する。
【0049】
次に、上記の第2のレジストパターン47bおよび吸収体パターン44をマスクとしてバッファ層43aをドライエッチングし、次いで第2のレジストパターン47bを剥離して、図4(d)に示すように、バッファ層パターン43を形成し、ウェハ上に転写される主パターン45と、この主パターン45の近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターン46を形成し、本発明のEUV露光用反射型マスクを得る。
【0050】
上記の反射層12、22、吸収体パターン14、24、バッファ層パターン13、23は本発明の反射型マスクを構成する薄膜層の基本であるが、図1および図2には示していないが、本発明の反射型マスクとしては、他の薄膜層を有していてもよい。例えば、反射層12、22上に反射層を保護するキャッピング層が設けられていてもよい。この場合、キャッピング層はパターニングされない。また、吸収体パターン14、24上にマスクを光学検査する時の検出感度を上げるために検査光に対して反射率の低い低反射層が形成されていてもよい。また、基板11、21の他方の主面(裏面)上に、マスクを露光装置に設置するときの静電チャック用に導電層が形成されていてもよい。
【0051】
上記の第1のレジストパターン37a、47aおよび第2のレジストパターン37b、47bを形成するレジストとしては、ネガ型およびポジ型のいずれの電子線レジストも用いることができ、同一のレジストであっても異なるレジストであってもよい。
【0052】
上記のように、本発明の反射型マスクの製造方法においては、電子線描画によるレジストパターン形成工程を2回に分けて行うが、補助パターンをバッファ層で作成することで、従来技術の補助パターンと比較してパターン幅を大きくすることができ、補助パターンの作成が容易となる。ライン系パターンでは補助パターンの倒れや欠けあるいは基板表面からの剥離を防止することができる。また、ホール系パターンではアライメント精度がライン系パターンほどには必要ないとともに、補助パターンを大きくすることができることにより、最小マスクパターンサイズへの要求を緩和することができる。
【0053】
(反射型マスクブランク)
上記の本発明のEUV露光用反射型マスクおよびその製造方法に用いる反射型マスクブランクを構成する各材料の望ましい形態について、以下に説明する。図5は、本発明に用いる反射型マスクブランクの一例を示す断面模式図であり、一部を除いて図1と同じ符号を用いている。
【0054】
(基板)
図5において、反射型マスクブランクを構成する基板11としては、パターン位置精度を高精度に保持するために低熱膨張係数を有し、高反射率および転写精度を得るために平滑性、平坦度が高く、マスク製造工程の洗浄などに用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましく、合成石英ガラス、SiO2−TiO2系の低熱膨張ガラス、β石英固溶体を析出した結晶化ガラスなどのガラス基板などを用いることができる。
【0055】
(反射層)
多層の反射層12は、EUV露光に用いられるEUV光(通常、波長13.5nm程度)を高い反射率で反射する材料が用いられ、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)からなる多層膜が多用されており、例えば、2.74nm厚のMoと4.11nm厚のSiを各40層積層した多層膜よりなる反射層が挙げられる。MoとSiからなる多層膜の場合、イオンビームスパッタ法により、まずSiターゲットを用いてSi膜を成膜し、その後、Moターゲットを用いてMo膜を成膜し、これを1周期として、30〜60周期、好ましくは40周期積層して、多層反射層が得られる。
【0056】
(キャッピング層)
図5には示されてないが、反射層12上に反射層12を保護するキャッピング層を設けてあってもよい。多層の反射層12の反射率を高めるには屈折率の大きいMoを最上層とするのが好ましいが、Moは大気で酸化され易くて反射率が低下するので、酸化防止やマスク洗浄時における保護のための保護膜として、スパッタリング法などによりSiやルテニウム(Ru)を成膜し、キャッピング層を設けることが好ましい。例えば、キャッピング層としてSiは、反射層の最上層に11nmの厚さに設けられる。
【0057】
(バッファ層)
図5に示すように、本発明においては、EUV光を吸収する吸収体層14aをドライエッチングしてパターン形成するときに、下層のキャッピング層(不図示)や反射層12にドライエッチングによる損傷を与えるのを防止するために、反射層12と吸収体層14aとの間にバッファ層13aが設けられている。バッファ層13aの材料としては、SiO2、Al23、Cr、CrNなどの薄膜が用いられる。例えば、CrN膜は、吸収体層14aに窒化タンタル(TaN)膜を用いて塩素ガスでドライエッチングする時に耐エッチング性が高い。CrN膜を形成する場合は、DCマグネトロンスパッタ法によりCrターゲットを用いてアルゴン(Ar)と窒素との混合ガス雰囲気下で、5nm〜20nm程度の範囲の膜厚で成膜するのが好ましい。
【0058】
(吸収体層)
マスクパターンを形成し、EUV光を吸収する吸収体層14aの材料としては、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、硼化タンタル(TaB)、窒化硼化タンタル(TaBN)、タンタル・ハフニウム化合物(TaHf)などのTaを主成分とする材料が、膜厚35nm〜60nm程度の範囲、より好ましくは40nm〜55nmの範囲で用いられる。ただし、上記の厚みはバッファ層13aにCrNを10nmの厚みを用いた場合の例であり、バッファ層の材質や厚みを変化させた場合は、バッファ層に合わせて吸収体層14aの厚みを調整する必要がある。例えば、バッファ層をCrN20nm厚とした場合には、吸収体層14aの厚みを約10nm程度薄くする必要がある。
【0059】
(低反射層)
図5には示されてないが、吸収体層14aの上には、マスクパターンを光学検査するとき、検査光(199nmあるいは257nm)に対して低反射とした低反射層を設けてあってもよい。低反射層の材料としては、例えば、タンタルの酸化物(TaO)、酸窒化物(TaNO)、ホウ素酸化物(TaBO)、ホウ素酸窒化物(TaBNO)などの酸素を含むタンタル化合物、酸化シリコン(SiOx)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化クロム(CrN)などが挙げられ、膜厚5nm〜30nm程度の範囲で、より好ましくは膜厚10nm〜20nm程度の範囲で用いられる。
【0060】
(導電層)
EUV露光用の反射型マスクブランクのパターン側と反対側の面(裏面)に、マスクを露光装置に設置するときの静電チャック用に導電層が設けられることが多い。本発明の場合にも基板裏面に導電層を設けることができる。導電層の材料としては、導電性を示す金属や金属窒化物などの薄膜が挙げられ、例えば、クロム(Cr)や窒化クロム(CrN)などを厚さ20nm〜150nm程度に成膜して用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
以下の手順でEUV露光用反射型マスクブランクを作製した。
光学研磨された大きさ6インチ角(厚さ0.25インチ)の合成石英基板の一主面上に、イオンビームスパッタ法により、Siターゲットを用いてSi膜を4.2nm成膜し、続いてMoターゲットを用いてMo膜を2.8nm成膜し、これを1周期として40周期積層して反射層とした後、最後にSi膜を4.2nm成膜して反射層の最終段とし、MoとSiの多層膜よりなるEUV光を反射する反射層を形成した。
次に、DCマグネトロンスパッタ法により、Arと窒素の混合ガス雰囲気下で、上記の多層の反射層上にCrターゲットを用いてCrN膜を20nmの厚さに成膜し、バッファ層とした。
【0062】
続いて、上記のCr膜のバッファ層上に、DCマグネトロンスパッタ法により、TaおよびBを含むターゲットを用いて、Arと窒素の混合ガス雰囲気下で、TaBN膜を25nmの厚さで成膜し、EUV光を吸収する吸収層とし、この吸収層上にTaBO膜を15nmの厚さで成膜し、光学検査における低反射層とし、EUV露光用の反射型マスクブランクを得た。上記の膜構成でのEUV反射率は、吸収体表面、バッファ層表面、反射層表面にて、それぞれ2.5%、13%、63%であった。
【0063】
次に、このEUV露光用マスクブランクを用い、厚み200nmのネガ型の電子線レジストを塗布し、電子線描画装置でパターン描画して、主パターンとなるゲートパターンのレジストパターンを形成した。主パターンは、マスク上で線幅80nm、長さ500nmの孤立ラインパターンとした。
【0064】
次に、レジストパターンをマスクにして、TaBO膜の低反射層をフッ素ガスによりドライエッチングし、続いてエッチングガスを換えてTaBN膜の吸収層を塩素ガスを用いてドライエッチングし、バッファ層を露出させるとともに、低反射層パターンと吸収体パターンとを形成し、次いでレジストパターンを酸素プラズマを用いて剥離した。
【0065】
次に、上記の低反射層パターンと吸収体パターンおよび露出したバッファ層を覆って厚み100nmの第2のネガ型電子線レジストを塗布し、露出したバッファ層の所定領域に補助パターンを電子線描画し、現像し、補助パターン用の第2のレジストパターンを形成した。補助パターンは、マスク上で主パターンから60nm離れた位置に、主パターンの長さ方向に平行に、主パターンに対称に片側1本で両側2本の線幅50nm、長さ600nmのパターンとした。
【0066】
次に、第2のレジストパターンおよび吸収体パターンをマスクとしてCr膜よりなるバッファ層を塩素と酸素との混合ガスによりドライエッチングし、次いで第2のレジストパターンを剥離して、バッファ層パターンを形成し、ウェハ上に転写される主パターンと、この主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンとを形成した本発明のEUV露光用反射型マスクを得た。
【0067】
本発明の反射型マスクは、補助パターンの線幅を従来よりも大きくすることができるため、マスクの製造が容易となった。また、上記のマスクパターンを有する反射型マスクを超音波で純水洗浄したが、補助パターンに欠け、剥離、倒れの発生は無く、清浄なマスク表面を有する反射型マスクが得られた。
【0068】
(実施例2)
実施例1と同じ膜構成で、バッファ層CrNの厚みを10nm、吸収層TaBN厚みを35nmに変更した反射型マスクブランクを用い、このブランク上にポジ型の電子線レジストを塗布し、電子線描画装置でパターン描画し、現像して、レジストパターンを形成した。レジストパターンは、主パターンとなるコンタクトホールパターンと、このホールパターンの周囲4箇所に形成した補助パターンである。マスク上で、主パターンは一辺が100nmの正方形とし、補助パターンは主パターンから60nm離れた位置に、主パターンの各辺に平行に矩形状の同一パターンを4箇所に設け、この補助パターンの線幅は70nm、長さは120nmとした。
【0069】
次に、レジストパターンをマスクにして、TaBO膜の低反射層をフッ素ガスによりドライエッチングし、続いてエッチングガスを換えてTaBN膜の吸収層を塩素ガスでドライエッチングし、次いでレジストパターンを剥離し、バッファ層を露出させるとともに、低反射層パターンと吸収体パターンとを形成した。
【0070】
次に、上記の低反射層パターンと吸収体パターンおよび露出した補助パターンのバッファ層を覆って第2のポジ型の電子線レジストを塗布し、所定領域を電子線描画し、現像し、第2のレジストパターンを形成した。
【0071】
次に、第2のレジストパターンおよび吸収体パターンをマスクとしてCrN膜よりなるバッファ層を塩素と酸素との混合ガスによりドライエッチングし、次いで第2のレジストパターンを剥離して、ウェハ上に転写される主パターンと、この主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンを形成し、本発明のEUV露光用反射型マスクを得た。
【0072】
本発明の反射型マスクは、実施例1と同様に、補助パターンの線幅を従来よりも大きくすることができるため、マスクの製造が容易となり、また、このマスクを超音波で純水洗浄したが、補助パターンに欠け、剥離、倒れの発生は生じなかった。
【符号の説明】
【0073】
10、20 反射型マスク
11、21 基板
12、22 反射層
13、23 バッファ層パターン(パターニングされたバッファ層)
13a バッファ層
14、24 吸収体パターン(パターニングされた吸収体層)
14a 吸収体層
15、25 主パターン
16、26 補助パターン
30、40 反射型マスク
31、41 基板
32、42 反射層
33a、43a バッファ層
33、43 バッファ層パターン
34a、44a 吸収体層
34、44 吸収体パターン
35、45 主パターン
36、46 補助パターン
37a、47a 第1のレジストパターン
37b、47b 第2のレジストパターン
50 反射型マスクブランク
60、70 反射型マスク
61、71 基板
62、72 反射層
63、73 バッファ層パターン
64、74 吸収体パターン
65、75 主パターン
66、76 補助パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に形成され前記反射層へのエッチング損傷を防止するバッファ層と、前記バッファ層上に形成され前記EUV光を吸収する吸収体層とを少なくとも有し、マスクパターンを設けたEUV露光用反射型マスクであって、
前記マスクパターンが、ウェハ上に転写される主パターンと、前記主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンとからなり、前記補助パターンがバッファ層で構成されていることを特徴とするEUV露光用反射型マスク。
【請求項2】
前記主パターンが、前記反射層上に形成された前記吸収体層と前記バッファ層とからなり、前記補助パターンが、前記反射層上に形成された前記バッファ層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のEUV露光用反射型マスク。
【請求項3】
前記主パターンが、ライン系パターンであることを特徴とする請求項2に記載のEUV露光用反射型マスク。
【請求項4】
前記主パターンが、前記吸収体層に開口した反射層からなり、前記補助パターンが、前記吸収体層に開口した前記バッファ層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のEUV露光用反射型マスク。
【請求項5】
前記主パターンが、ホール系パターンであることを特徴とする請求項4に記載のEUV露光用反射型マスク。
【請求項6】
前記反射層上に前記反射層を保護するキャッピング層を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのうちのいずれか1項に記載のEUV露光用反射型マスク。
【請求項7】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に形成され前記反射層へのエッチング損傷を防止するバッファ層と、前記バッファ層上に形成され前記EUV光を吸収する吸収体層と、を少なくとも備えたEUV露光用反射型マスクブランクを準備し、前記吸収体層上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記吸収体層をドライエッチングして吸収体パターンを形成する工程を含むEUV露光用反射型マスクの製造方法であって、
前記吸収体層をドライエッチングして吸収体パターンを形成するとともに前記バッファ層を露出し、前記レジストパターンを剥離する工程の後に、
前記露出したバッファ層の所定領域に第2のレジストパターンを形成し、前記第2のレジストパターンおよび前記吸収体パターンをマスクとして前記バッファ層をドライエッチングし、ウェハ上に転写される主パターンと、前記主パターンの近傍に設けられ投影光学系の解像限界以下の大きさの補助パターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンを剥離する工程と、
を含むことを特徴とするEUV露光用反射型マスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49243(P2012−49243A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188352(P2010−188352)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】