説明

GLP−1アゴニストとしての新規な化合物

本発明は、糖尿病の治療に有用な新規なペプチド模倣物(peptidomimetic)の群について述べる。これらの化合物は、下記のような一般式(I)によって定義される。
A-X1-S1-Y-S2-X2-B (I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)の新規な化合物、これらの互変異性型、これらの合成に関与する新規な中間体、これらの薬学的に許容される塩およびこれらを含有する医薬組成物に関する。
A-X1-S1-Y-S2-X2-B (I)
【0002】
特に、本発明は、新規なグルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-Like Peptide-1:GLP-1)ペプチド模倣物(peptidomimetic)に関し、このペプチド模倣物は、GLP-1受容体アゴニストとして作用し、天然GLP-1の大部分の生物活性を示す。さらに、これらのGLP-1ペプチド模倣物は、特にDPP-IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)酵素に対しては、タンパク質分解的開裂(proteolytic cleavage)に高い安定性を示し、糖尿病および関連の病態の治療または予防のために、経口、鼻内、口腔内、肺および経皮の投与経路など、侵襲および様々な非侵襲投与経路によって送達することができる。
【0003】
また、本発明は、一般式(I)の化合物、これらの互変異性型、これらの薬学的に許容される塩、これらを含有する医薬組成物、およびこれらの合成に関与する新規な中間体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0004】
GLP-1(7〜36)アミドは、プレプログルカゴン(preproglucagon)遺伝子の生成物であって、これは食物の摂取に反応して、腸管のL細胞から分泌される。GLP-1の生理学的作用は、かなりの関心が持たれている。GLP-1は、グルコース依存的方法(インスリン分泌促進作用)で、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を刺激することによって複数の作用を発揮する。また、GLP-1は、α細胞からの血漿グルカゴンの分泌を抑制することによって、循環する血漿グルカゴンの濃度を減少させる(Drucker D. J., Endocrinology, 142, 521-527, 2001)。最近、GLP-1がβ細胞増殖の刺激、食欲抑制、胃排出遅延およびインスリン感受性の刺激などの特性を示すことも明らかになっている(Nauck, Horm. Metab. Res., 47, 1253-1258, 1997)。
【0005】
アメリカドクトカゲ(Heloderma Suspectum)の毒液は、GLP-1自体と約50%の配列同一性を共有するエキセンディン4(Exendin-4:EX-4)と呼ばれる39のアミノ酸のペプチドを含み、非常に強力なGLP-1R(グルカゴン様ペプチド-1受容体)アゴニスト活性を示す(Thorens B., Diabetes, 42, 1678-1682, 1993)。実際、EX-4が天然GLP-1より非常に強力なことが発見された。これはGLP-1(静注経路で2〜5分)に比べてEX-4(静注経路で25分)が比較的長い半減期を有することによる。エキセンディン4は、C末端配列が9つ多いために、大きな親和性でGLP-1Rに結合する(Doyle M.E., Regulatory Peptides, 114, 153-158, 2003)。したがって、GLP-1Rアゴニストの上記の薬理学的特性は、GLP-1Rアゴニストを糖尿病の治療のための非常に望ましい治療薬にする。
【0006】
天然または合成GLP-1ペプチドは、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)などのタンパク質分解酵素によって急速に不活性代謝物に代謝され、したがって、このことは薬物としてのGLP-1の使用を制限している。現在、リラグルチド(liraglutide)/NN2211(ノボノルディスク;第III相試験;WO1998008871)、BIM51077(イプセン;第II相試験;WO2000034331)、CJC-1131(コンジュケム;第II相試験;WO2000069911)、ZP-10(ジーランドおよびアベンティス;第II相試験;WO2001004156)などのGLP-1およびEX-4の様々な類似体が、異なる臨床的開発段階にある(Nauck M.A., Regulatory Peptides, 115, 13-19, 2004)。しかし、これら全てのペプチドは、最近、市場で発売となったBYETTA(登録商標)(エキセンディン4、AC2933;WO2001051078)(AmylinおよびLilly)など、非経口の投与経路を通した送達を必要とする。したがって、広範な薬力学的プロフィールを有する生物活性GLP-1模倣物を開発する重大な必要性が存在する。
【0007】
GLP-1Rは、7回膜貫通型ドメインGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、膵臓β細胞の細胞膜上に存在する。GLP-1Rの効果器系は、アデニリルシクラーゼ(AC)酵素である。GLP-1アゴニストとGLP-1Rの相互作用は、ATPをcAMPに変換するACの活性化を引き起こす。細胞内cAMPレベルの増加により、ADP/ATP比が上昇し、したがって、細胞の脱分極が惹起される(KATPチャンネルの閉鎖による)。また、細胞内cAMPレベルの増加により、プロテインキナーゼ(PK-AおよびPK-C)を活性化し、活性化することで、L型Ca2+チャンネルの開口によって収縮期のCa2+濃度が上昇する。細胞内Ca2+増加は、膵臓β細胞でのインスリンのエキソサイトーシスにつながる(Fehmann, H.C., Endocr. Rev., 16, 390-410, 1995)。
【0008】
「2つのドメイン(two-domain)」モデルと呼ばれる、ペプチドリガンドとクラスBのGPCRの相互作用の一般的メカニズムが最近明らかになっている(Hoare S.R.J., Drug Discovery Today, Vol. 10 (6), 417-427, 2005)。この2つのドメインモデルにおいて、ペプチドのC末端部分は、この受容体のNドメインに結合し、N末端のリガンド領域はGPCRのJドメイン(膜貫通)領域に結合する。この相互作用は、受容体を活性化し、それによって細胞内シグナル伝達を刺激する。受容体の結合および活性化は、エキセンディンの2つの離れたドメインで発生するが、GLP-1ではこれらは密接に連結している(Eng J., J.B.C., 272 (34), 21291-21296, 1997)。
【0009】
先行技術
以前に、ブリストル-マイヤーズスクイブ(Bristol-Myers Squibb;BMS)(米国ニュージャージー州プリンストン)は、一般式Xaa1〜Xaa11(式中、Xaa1〜Xaa9は、一部の類似体を有するGLP-1ペプチドの最初の1〜9の残基を表し、Xaa2は、Alaを表すか、場合によってAibと置換され、Xaa6は、Pheを表すか、場合によってα-Me-Phe(2-F)-OHと置換され、Xaa10およびXaa11は、置換または非置換のビフェニルアラニン(Bip)誘導体の組合せを表す)を有するヒトGLP-1模倣物について報告した(WO03/033671A2、US2004/0127423A1、WO2004/094461A2、US2006/0004222A1およびWO2006/014287A1)。
【0010】
本発明は、GLP-1Rアゴニストとして作用し、天然GLP-1ペプチドの大部分の生物活性を示す、式(I)の新規なGLP-1ペプチドの模倣物(以下、ペプチド模倣物[peptidomimetics])を提供する。さらに、これらのGLP-1ペプチド模倣物は、特にDPP-IV酵素に対しては、タンパク質分解的開裂に高い安定性を示し、驚くべきことに、1型および2型糖尿病、代謝異常、肥満ならびに関連疾患の治療、緩和、予防のために適する長い半減期を有することが発見されている。
【特許文献1】WO1998008871
【特許文献2】WO2000034331
【特許文献3】WO2000069911
【特許文献4】WO2001004156
【特許文献5】WO2001051078
【特許文献6】WO03/033671A2
【特許文献7】US2004/0127423A1
【特許文献8】WO2004/094461A2
【特許文献9】US2006/0004222A1
【特許文献10】WO2006/014287A1
【非特許文献1】Drucker D. J., Endocrinology, 142, 521-527, 2001
【非特許文献2】Nauck, Horm. Metab. Res., 47, 1253-1258, 1997
【非特許文献3】Thorens B., Diabetes, 42, 1678-1682, 1993
【非特許文献4】Doyle M.E., Regulatory Peptides, 114, 153-158, 2003
【非特許文献5】Nauck M.A., Regulatory Peptides, 115, 13-19, 2004
【非特許文献6】Fehmann, H.C., Endocr. Rev., 16, 390-410, 1995
【非特許文献7】Hoare S.R.J., Drug Discovery Today, Vol. 10 (6), 417-427, 2005
【非特許文献8】Eng J., J.B.C., 272 (34), 21291-21296, 1997
【非特許文献9】G. BaranyおよびR. B. Merrifield「The peptides: Analysis, synthesis, Biology」
【非特許文献10】Volume 2-「Special methods in peptide synthesis, Part A」pp. 3-284, E. GrossおよびJ. Meienhofer編、Academic Press, New York, 1980
【非特許文献11】J. M. StewartおよびJ. D. Young「Solid-phase peptide synthesis」2nd Ed., Pierce chemical Co., Rockford, II, 1984
【非特許文献12】E. AthertonおよびR.C. Sheppard「The Fluorenylmethoxycarbonyl amino protecting group」, in 「The peptides: Analysis, synthesis, Biology」
【非特許文献13】Volume 9-「Special methods in peptide synthesis, Part C」 pp. 1-38, S. UndenfriendおよびJ. Meienhofer編、Academic Press, San Diego, 1987
【非特許文献14】Tetrahedron Letter 58, 9633-9695, 2002
【非特許文献15】Org. Letters 3(8), 1121-1124, 2001
【非特許文献16】JOC, 2005, 70, 6918-6920
【非特許文献17】D. S. Kingら、Int. J. peptide Protein res. 36, 1990, 255-266
【非特許文献18】Johannsson J., Clin. Endocrinol. Metab., 82, 727-34,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、糖尿病の治療に有用な新規なペプチド模倣物の群について述べる。これらの化合物は、下記のように一般式(I)によって定義される。本発明の化合物は、インスリン分泌の調節によって、ヒトまたは動物の体の治療に有用である。したがって、本発明の化合物は、1型および2型糖尿病、ならびに肥満の治療、緩和、調節または予防のために適している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主な目的は、一般式(I)の新規な化合物、これらの互変異性型、これらの合成に関与する新規な中間体、これらの薬学的に許容される塩、これらの薬学的に許容される溶媒和物、および糖尿病の治療、緩和、調節のために適した、これらまたはこれらの混合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0013】
一実施形態では、一般式(I)の新規な化合物、これらの互変異性型、これらの薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物およびこれらを含む医薬組成物の調製の方法を提供する。
【0014】
他の実施形態では、一般式(I)の化合物、これらの互変異性型、これらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、ならびに薬学的に許容される担体、溶媒、希釈液、賦形剤および通常これらの製造に使用される他の媒質を有するこれらの混合物を含む医薬組成物を提供する。さらに他の実施形態では、そのような治療が必要な哺乳類に、式(I)の化合物またはこれらの薬学的に許容される組成の治療上有効かつ無毒量を投与することによる、抗糖尿病薬としての本発明の新規な化合物の使用を提供する。
【0015】
使用される略語
下記の略語を実施例および本明細書の別の章で使用する。
Aib=αアミノイソ酪酸、
ACNまたはMeCN=アセトニトリル、
Bip=ビフェニルアラニン残基、
Bip(4-fluro)=4-フルオロ-ビフェニルアラニン残基、
Bip(2-Me)=2-メチルビフェニル残基、
Bip(2-Et)=2-エチルビフェニル残基、
Bip(2-CN)=2-ニトリルビフェニル残基、
Bip(2-Ipr)=2-イソプロピルビフェニル残基、
Bip(2'-Et-4'-OMe)=2-エチル-4-メトキシ-ビフェニル残基、
Bip(2-F)=2-フルロ-ビフェニル残基、
Bn=ベンジル、
Boc=tert-ブトキシカルボニル、
But=O-tert-ブチル基、
cAMP=アデノシン3',5',-サイクリック一リン酸、
DCM=ジクロロメタン、
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド、
DIPCDI=ジ-イソプロピルカルボジイミド、
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン、
4-DBF=4-ジベンゾフラン-Phe-OH残基、
4-DBT=4-ジベンゾチオフェン-Phe-OH残基、
Dihydro-Phen=2-(9,10-ジヒドロ-フェナントレニル)-Ala-OH残基、
Et=エチル、
Et2O=ジエチルエーテル、
Fmoc=フルオレニルメトキシカルボニル、
2-Flu=2-フルオレニル-Ala-OH残基、
g=グラム、
GTT=グルコース負荷試験、
GLP-1R=グルカゴン様ペプチド-1受容体、
h=時間、
HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール、
HOAT=7-Aza-ヒドロキシベンゾトリアゾール、
HBTU=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロリン酸塩、
HPLC=高速液体クロマトグラフィー、
L=リットル、
LC/MS=液体クロマトグラフィー/質量分析、
4-(2'-Me-Ph)-3-Pyr-Ala=4-(2'-メチルフェニル)-3-ピリジルアラニン残基、
Me=メチル、
Min=分、
ml=ミリリットル、
μl=マイクロリットル、
mg=ミリグラム、
mmol=ミリモル、
fmol=フェムトモル、
MS=質量分析、
1-Nap=4-(1-ナフチル)-Phe残基、
2-Nap=4-(2-ナフチル)-Phe残基、
Phen=2-(フェナントレニル)-Ala-OH残基、
Pbf=ペンタメチルベンゾフラン-5-スルホニル、
PyBOP=ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、
SPPS=固相ペプチド合成、
Sc=皮下、
TrPh=4-フェニル-ビフェニルアラニン残基、
TMS=トリメチルシリル、
TIPS=トリイソプロピルシラン、
TFA=トリフルオロ酢酸、
TBTU=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-yl)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロホウ酸塩、
Trt=トリチル基、
(α-Me)Phe(2-F)=α-メチル-2-フルオロフェニルアラニン残基、
-(N(Me))-=N-メチル化アミド結合、
「a」によって表されるD-アラニンおよびD-Bipは、「D」-ビフェニルアラニン残基を表す、
ip=腹腔内、
GLP-1ペプチドの配列=NH2-HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR-CONH2(30アミノ酸)。前記GLP-1ペプチドの30のアミノ酸を配列番号1で示す。
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR-配列番号1、
エキセンディン4の配列=NH2-HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS-CONH2(39アミノ酸)。エキセンディン4の39のアミノ酸を配列番号2で示す。
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS-配列番号2。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によれば、構造式(I)を有する合成GLP-1類似体/ペプチド模倣物が提供される、
A-X1-S1-Y-S2-X2-B (I)
[式中、Aは、-NH-R1を表し、ここでR1は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基などの直鎖または分枝の(C1〜C15)アルキル鎖から選択される基、1つ、2つまたは3つの天然アミノ酸残基を含むアミノ酸またはペプチド、(2-ヒドロキシ-フェニル)-アセチル基などのR3-CO-基、Fmoc基などのR3O-C(O)-基、式R3-SO2-のスルホニル基を表し、これらの各基が置換されることがあり(式中、R3は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基などの直鎖または分枝の(C1〜C10)アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの(C3〜C6)シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、インダニル基、フルオレニル基、ビフェニル基などから選択されるアリール基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、イミゾリル基、ベンゾフラニル基などから選択されるヘテロアリール基、ベンジル基、ナフチルメチル基などから選択されるアリールアルキル基から選択され、これらの各基は置換されることがあり);
Bは、-COOR2、-CONHR2またはCH2OR2を表し、R2は、H、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基などの直鎖または分枝の(C1〜C10)アルキル基、フェニル基、ナフチル基、インダニル基、フルオレニル基、ビフェニル基などから選択されるアリール基、アラルキル基から選択される基を表し、これらの各基は置換されることがあり、
各S1およびS2は、独立に、結合であるか、n=1〜9である「-NH-(CH2)nCOO-」基を独立に、表し;例えば、アミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノブタン酸、アミノペンタン酸、アミノヘキサン酸、アミノヘプタン酸、アミノオクタン酸、アミノノナン酸、アミノデカン酸などの誘導体など;
Yは、結合または-CO-、-(CH2)m-(m=1〜3)、「O」、「S」、-CO-NH-、-CO-NR4-を表すか、天然または非天然アミノ酸から選択される1つまたは2つまたは3つのアミノ酸を含む短鎖ペプチドを表し;R4は、H、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基などの直鎖または分枝の(C1〜C10)アルキル基、フェニル基、ナフチル基、インダニル基、フルオレニル基、ビフェニル基などから選択されるアリール基から選択される場合によって置換されていてもよい基を表し;
i)S1-Y-S2が結合を表すという条件で、
X1は、下記のアミノ酸配列から選択され、
HAEGTFTSD(配列番号3)、HAEGTFTSDV(配列番号4)、HAEGTFTSDVS(配列番号5)、HAEGTFTSDVSS(配列番号6)、HAEGTFTSDVSSY(配列番号7)、HAEGTFTSDVSSYL(配列番号8)、HAEGTFTSDVSSYLE(配列番号9)、HAEGTFTSDVSSYLEG(配列番号10)、HAEGTFTSDVSSYLEGQ(配列番号11)、HAEGTFTSDVSSYLEGQA(配列番号12)、HAEGTFTSDVSSYLEGQAA(配列番号13)、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAK(配列番号14)、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKE(配列番号15)、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEF(配列番号16)、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFI(配列番号17)、これらが1つまたは複数のこれらアミノ酸が非天然アミノ酸によって置換されることがあるというさらなる選択肢を有し、X2は、下記のアミノ酸配列
GPSSGAPPPS(配列番号18)または
KELEKLL(配列番号19)または
GPPS(配列番号20)または
VKGR(配列番号21)から選択され;
ii)およびS1-Y-S2が結合を表さないという条件で、
X1は、下記のアミノ酸配列、HA(配列番号22)、HAE(配列番号23)、HAEG(配列番号24)、HAEGT(配列番号25)、HAEGTF(配列番号26)、HAEGTFT(配列番号27)、HAEGTFTS(配列番号28)、HAEGTFTSD(配列番号29)から選択され、これらが1つまたは複数のこれらアミノ酸が非天然アミノ酸によって置換されることがあるというさらなる選択肢を有し;
X2は、
GPSSGAPPPS(配列番号18)または
KELEKLL(配列番号19)または
GPPS(配列番号20)または
VKGR(配列番号21)あるいは
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル部分を含む側鎖を有する天然または非天然アミノ酸からなる2つのアミノ酸の組合せから選択されるジペプチドから選択され、これらのアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル部分は、ベンジル基、ナフチルメチル基、ピリジルメチル基、チエニルメチル基、フリルメチル基、イミダゾリルメチル基、イソオキサゾリルメチル基、キノリルメチル基、ベンゾフラニルメチル基、ベンゾチエニルメチル基、インドリニルメチル基、インドリルメチル基、ジベンゾフラニルメチル基、ジベンゾチエニルメチル基、ベンゾジヒドロフラニルメチル基、ベンゾジヒドロチエニルメチル基、チエノピリミジルメチル基、ベンズイミダゾリルメチル基、フェナントレニルメチル基、ジヒドロフェナントレニルメチル基、フルオレニルメチル基、ジベンゾチオフェニルメチル基などから選択され、場合によって、これらの各基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などの(C1〜C6)アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキサノキシ基などの(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、フルオロ基などのハロ基、ヒドロキシ、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、イソオキサゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾジヒドロフラニル基、ベンゾジヒドロチエニル基、チエノピリミジル基、ベンズイミダゾリル基、フェナントレニル基、ジヒドロフェナントレニル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基などから選択される場合によって置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基によって置換されることがあり、但し、そのようなアリールまたはヘテロアリール置換基は、(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基またはアリール基もしくはヘテロアリール基によって場合によってさらに置換されることがあるという条件を有する]。
【0017】
好ましい実施形態では、ジペプチド配列は、Bip、Bip(2-Me)、Bip(2-Et)、Bip(2-Ipr)、Bip(2-CN)、Bip(2'-Et-4'-OMe)、Bip(4'-フルオロ)、Bip(4'-フェニル)、2-(9,10-ジヒドロ-フェナントレニル)-Ala、2-(フェナントレニル)-Ala、4-(2-ナフチル)-Phe、4-(1-ナフチル)-Phe、2-フルオレニル-Ala、4-ジベンゾフラン-Phe、4-ジベンゾチオフェン-Phe、4-(2'-メチルフェニル)-3-ピリジルアラニンから選択される1つまたは複数のアミノ酸からなることがある。「天然アミノ酸」という用語は、自然に存在する全20種のアミノ酸を示す。
【0018】
「非天然アミノ酸(unnatural amino acids)」または「非天然アミノ酸(non-natural amino acids)」という用語は、D-AlaによるL-Alaの置換もしくはD-ProによるL-Proの置換などの当該Dアミノ酸によるLアミノ酸の置換、または下記のいずれかによるLもしくはDアミノ酸、アミノアルキル酸の適切な修飾のいずれかを表す。
αメチルAla(Aib)によるAlaの置換、αメチルPheによるPheの置換、αメチルBipによる置換したBipの置換などのαアルキル化;
(C1〜C6)アルキル基もしくは(C3〜C6)シクロアルキル基から選択される基によるNアルキル化;
1-イミダゾリル-アラニン(II)もしくはデス-アミノ-Hisなどのヒスチジン類似体によるHisの置換などの側鎖の修飾、
【0019】
【化1】

【0020】
または、ピリジル基、ナフチル基、ビフェニル基によるPheのフェニル環の置換;
ハロゲン基、(C1〜C3)アルキル基、アリール基による芳香族アミノ酸側鎖の置換、より具体的には2および4-ハロPheによるPheの置換などのアミノ酸の側鎖の置換。
【0021】
そのような「非天然アミノ酸(unnatural amino acids)」または「非天然アミノ酸(non-natural amino acids)」は、下記の構造によって一般に表すことができる
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R5は、H、F、(C1〜C5)アルキルから選択され、R5を支持する炭素の立体化学的配置は、(R)または(S)のことがあり;R6は、Hまたは(C1〜C3)アルキルから選択され;各R7およびR8は、独立に、H、メチルおよびエチルなどの(C1〜C3)アルキルまたはハロゲン原子、好ましくはフッ素原子から選択され;R9は、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、イソオキサゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾジヒドロフラニル基、ベンゾジヒドロチエニル基、チエノピリミジル基、ベンズイミダゾリル基、フェナントレニル基、ジヒドロフェナントレニル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基から選択される、(C1〜C5)アルキル、アリールまたはヘテロリル部分から選択される基を表し、これらの各基は、場合によって(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基、場合によって置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基によって置換されることがあり、但し、さらに、そのようなアリールまたはヘテロアリール置換基は、場合によって(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基またはアリール基もしくはヘテロアリール基によってさらに置換されることがあるという条件を有する)。
【0024】
GLP-1ペプチド模倣物合成に使用されるFmoc保護Bip類似体のリスト
【0025】
【化3】

【0026】
適した置換基は、下記の基(radical)単独または他の基との組合せを含むが、これらに限定されるものではない。ヒドロキシル、オキソ、ハロ、チオ、ニトロ、アミノ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアラルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボン酸、ならびにエステルおよびアミドなどのその誘導体。
【0027】
本明細書のいずれかで用いられる様々な基、基および置換基について下記の段落で述べる。
【0028】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、単独または他の基との組合せのいずれかで、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、t-アミル、n-ペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシルなどの、1〜10個の炭素を含む直鎖または分枝の基を意味する。
【0029】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、単独または他の基との組合せのいずれかで、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどの、3〜7個の炭素を含む基を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「アリール」または「芳香族」という用語は、単独または他の基との組合せのいずれかで、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダン、ビフェニルなどの、1つ、2つまたは3つの環を含み、そのような環がペンダント様で共に結合しているか、融合していることがある芳香族系を意味する。
【0031】
「アリールアルキル」という用語は、上記の定義のように、ベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチルなどの、アリールに結合したアルキル基を意味する。「アリールオキシ」という用語は、上記の定義のように、フェノキシ、ナフチルオキシなどの、アルコキシ基に結合したアリール基を意味し、これらは置換されることがある。
【0032】
「アラルコキシ」という用語は、上記の定義のように、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、ナフチルメチルオキシ、フェニルプロピルオキシなどの、アリルアルキル部分を意味し、これらは置換されることがある。
【0033】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」または「複素環式芳香族化合物」という用語は、単独または他の基との組合せのいずれかで、ピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリニル、インドリル、アザインドリル、アザインドリニル、ベンゾジヒドロフラニル、ベンゾジヒドロチエニル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾロピリミドニル、アザキナゾリニル、アザキナゾリノイル、ピリドフラニル、ピリドチエニル、チエノピリミジル、チエノピリミドニル、キノリニル、ピリミジニル、ピラゾリル、キナゾリニル、キナゾロニル、ピリミドニル、ピリダジニル、トリアジニル、ベンゾキサジニル、ベンゾキサジノニル、ベンゾチアジニル、ベンゾチアジノニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、フタラジニル、ナフチルイジニル、プリニル、カルバゾリル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの、O、NまたはSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、1つ、2つまたは3つの環を含み、そのような環がペンダント様で共に結合しているか、融合していることがある、芳香族系を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「ヘテロアラルキル」という用語は、上記の定義のように、単独または他の基との組合せのいずれかで、(2-フリル)メチル、(3-フリル)メチル、(2-チエニル)メチル、(3-チエニル)メチル、(2-ピリジル)メチル、1-メチル-1-(2-プリミジル)エチルなどの、1〜6個の炭素を含む直鎖または分枝の飽和炭素鎖に結合したヘテロアリール基を意味する。「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロアラルコキシ」、「ヘテロシクロオキシ」という用語は、それぞれ、上記の定義のように、酸素原子に結合したヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「アシル」という用語は、単独または他の基との組合せのいずれかで、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソ-ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ベンゾイルなどの、1〜8個の炭素を含む基を意味し、これらは置換されることがある。
【0036】
本明細書で使用される「カルボン酸」という用語は、単独または他の基との組合せで、-COOH基を意味し、エステルおよびアミドなどのカルボン酸の誘導体を含む。本明細書で使用される「エステル」という用語は、単独または他の基との組合せで、-COO-基を意味し、エステル部分が、置換されることがあるメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニルである場合、カルボン酸誘導体を含む。
【0037】
特に明記しない限り、本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、単独または他の基の一部として、「α」炭素と呼ばれる同じ炭素と結合するアミノ基およびカルボキシル基を含むが、これに限定されるものではない。
【0038】
「α」炭素での絶対「S」配置は、一般に「L」または天然配置と呼ばれる。「α」炭素での「R」配置は、一般に「D」アミノ酸と呼ばれる。水素またはメチルなどの両方の「α置換基」が同一の場合、このアミノ酸は、GlyまたはAibであり、キラルではない。
【0039】
「受容体モジュレーター」という用語は、下流のシグナル伝達を制御する能力を変えるために、GLP-1受容体で作用する化合物を指す。受容体モジュレーターの例は、アゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、アロステリック増強物質(allosteric potentiator)などである。
【0040】
好ましくは、単離ペプチド模倣物は、3〜30merであり、そのようなペプチドは、GLP-1受容体に結合し、GLP-1受容体を活性化させる。
【0041】
本発明によれば、本明細書に記載の合成単離ペプチド模倣物は、GLP-1Rでのアゴニスト活性に優先してGLP-1ペプチドの生物活性を模倣する能力を有する。これらの合成ペプチド模倣物のGLP-1模倣物は、所望のin-vivo特性を示し、したがって、これらを経口または非経口投与のための理想的な治療の候補にする。
【0042】
本発明は、そのような化合物を単独または組合せのいずれかで使用する式(I)の化合物の医薬組成物を提供し、そのような化合物を使用する方法を提供する。特に、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を単独で、または薬学的に許容される担体を併せて含む医薬組成物を提供する。
【0043】
さらに、治療有効量の式(I)の化合物またはそれらの組合せを、治療が必要な患者である哺乳類(例えば、ヒト)に投与し、糖尿病の特にII型糖尿病(網膜症、ニューロパシー、腎症および創傷治癒遅滞などの糖尿病の合併症を含む)、ならびにインスリン抵抗性(グルコース恒常性障害)、高血糖、高インスリン血症、脂肪酸またはグリセロールの血液濃度上昇、肥満、高脂血症(高トリグリセリド血症など)、エックス症候群、アテローム性動脈硬化症および高血圧などの関連疾患を治療する、または進行もしくは発症を遅延させる方法を提供する。
ペプチド合成の当業者に周知のいくつかの合成経路を、本発明の化合物を調整するために使用することができる。全ての略号を予め定義した式(I)の化合物を、ペプチド合成の当業者に周知の従来技術または当業者によって認められたそれらについての様々な応用法と共に、下記の方法を使用して合成することができる。関連の方法は、下記の方法を含むが、これに限定されるものではない。
【0044】
本明細書に記載のそのペプチド模倣物を、G. BaranyおよびR. B. Merrifield「The peptides: Analysis, synthesis, Biology」Volume 2-「Special methods in peptide synthesis, Part A」pp. 3-284, E. GrossおよびJ. Meienhofer編、Academic Press, New York, 1980;ならびにJ. M. StewartおよびJ. D. Young「Solid-phase peptide synthesis」2nd Ed., Pierce chemical Co., Rockford, II, 1984に記載の方法などの、周知の様々な固相法の適した応用法を用いた化学合成によって生成されることができる。
【0045】
本発明のペプチド模倣物を調製するための好ましい方策は、Fmoc(9-フルオレニル-メチル-メチルオキシカルボニル)基を、αアミノ基の一時的な保護のために使用する、FmocベースのSPPSアプローチの使用に基づくものであり、本法は、アミノ酸側鎖の一時的な保護のための、酸に不安定な保護基である、例えばt-ブチルオキシカルボニル(Boc)、tert-ブチル(But)、トリチル(Trt)基と組み合わせて使用される(例えば、以下を参照のこと、E. AthertonおよびR.C. Sheppard「The Fluorenylmethoxycarbonyl amino protecting group」, in 「The peptides: Analysis, synthesis, Biology」Volume 9-「Special methods in peptide synthesis, Part C」 pp. 1-38, S. UndenfriendおよびJ. Meienhofer編、Academic Press, San Diego, 1987)。
【0046】
ペプチド模倣物の合成のためにFmoc固相ペプチド合成に用いられる、直交的に保護されたアミノ酸の例
【0047】
【化4】

【0048】
ペプチド模倣物は、ペプチドのC末端から開始する、不溶性ポリマー支持剤(樹脂)に対する段階的方法で合成することができる。一実施形態では、合成は、ペプチドのC末端アミノ酸を、アミド、エステルまたはエーテルの結合の形成を通して、樹脂に付加することによって開始される。このことにより、それぞれC末端アミド、カルボン酸またはアルコールとして得られるペプチドを最終的に遊離させることができる。
【0049】
FmocベースのSPPSにおいて、合成に用いられるC末端アミノ酸および他の全てのアミノ酸は、これらのαアミノ基および異なる形で保護されている(直交的な保護[orthogonal protection])側鎖機能性(存在するならば)を有する必要があり、これらは例えば、樹脂からのペプチドの早期の開裂または通常は酸に不安定な保護基で保護されている側鎖の保護基の脱保護なしに、20%ピペリジン溶液などの適切な塩基を用いてαアミノ保護基を合成中に選択的に取り除くことができる。
【0050】
アミノ酸のカップリングは、活性エステルとしてのカルボキシル基の活性化、および樹脂に付加されたN末端アミノ酸のブロックされていない(unblocked)αアミノ基とのその反応によって実施される。全てのカップリングおよび脱保護の後、ペプチジル-樹脂を、DMF、DCMおよびジエチルエーテルなどの多量の溶媒で洗浄した。一連のαアミノ基の脱保護およびカップリングを、所望のペプチド配列がアセンブリされるまで繰り返す。次に、通常は、副反応を制限するために適切なスカベンジャーの存在下で、ペプチドを、側鎖の機能性の脱保護と並行して、適切な開裂混合物(cleavage mixture)を用いて樹脂から開裂させる。得られたペプチドを、最後に、逆相HPLCによって精製する。
【0051】
最終のペプチドの前駆体として必要とされるペプチジル-樹脂の合成は、市販の架橋ポリスチレンポリマー樹脂(Novabiochem、カリフォルニア州サンディエゴ)を利用する。本発明での使用に望ましいのは、Fmoc-PAL-PEG-PS樹脂、4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセチル-p-メチルベンズヒドリルアミン樹脂(Fmoc-RinkアミドMBHA樹脂)、2-クロロ-トリチル-塩化物樹脂またはp-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂(HMP樹脂)であり、これらにC末端アミノ酸がすでに結合している、または結合していない場合がある。C末端アミノ酸が結合していない場合、DIPCDIとの反応によって形成されるFmoc保護アミノ酸のHOBt活性エステルによって結合させることができる。2-クロロ-トリチル樹脂の場合、最初のFmoc保護アミノ酸のカップリングは、DIPEAを用いて達成された。次のアミノ酸のアセンブリでは、ペプチジル樹脂のN末端保護を、ピペリジン溶液の10〜20%溶液を用いて、選択的に脱保護をした。全てのカップリングおよび脱保護の後、過剰なアミノ酸およびカップリング剤を、DMF、DCMおよびエーテルで洗浄することによって取り除いた。その後のアミノ酸のカップリングは、HOBtまたはHOAT(それぞれ、DIPCDI/HOBtまたはDIPCDI/HOAT製)活性エステルを用いて達成することができる。一部の困難なカップリング、特に疎水性または大きな側鎖保護(side chain protection)を有するアミノ酸でのカップリングの場合に、完全なカップリングを、DIPEAなどの添加物とHBTU、PyBOPまたはTBTUなどの効率の高いカップリング剤との併用によって達成することができる。
【0052】
FmocベースのSPPSの一般的スキーム
【0053】
【化5】

【0054】
本明細書に記載のペプチド類似体の合成は、バッチ式または連続フロー式ペプチド合成装置を用いて実施することができる。異なる位置で存在する非天然の非商業的なアミノ酸を、当技術分野で公知の1つまたは複数の方法を用いて、ペプチド鎖に結合させた。1つのアプローチでは、Fmoc保護天然アミノ酸を、適切な文献での手順を用いて、溶液中で調製した。例えば、上記のFmoc保護Bip類似体を、文献(例えば、Tetrahedron Letter 58, 9633-9695, 2002)で公知の変更スズキクロスカップリング法を用いて調製した。Fmoc保護α-メチル化アミノ酸を、Org. Letters 3(8), 1121-1124, 2001に記載の不斉ストレッカー合成法を用いて調製した。Fmoc保護N-メチル化アミノ酸を、例えば、JOC, 2005, 70, 6918-6920に記載の文献の方法を用いて調製した。次に得られた誘導体を、ペプチドの段階的な合成に使用した。あるいは、必要とされる非天然アミノ酸を、有機合成化学の手順を用いて直接樹脂上に構築し、直鎖ペプチドを構築した。
【0055】
それぞれのペプチド模倣物のペプチド-樹脂前駆体を、文献(例えば、D. S. Kingら、Int. J. peptide Protein res. 36, 1990, 255-266)に記載される、いずれかの標準の開裂手順の適切な応用法を用いて、開裂および脱保護することができる。本発明での使用に好ましい方法は、水およびスカベンジャーとしてのTIPSの存在下におけるTFA開裂混合物の使用である。一般的に、ペプチジル-樹脂を、TFA/水/TIPS中で(94:3:3;V:V:V;10ml/ペプチジル樹脂100mg)、室温で1.5〜2時間インキュベートした。次に、開裂した樹脂をろ過し、TFA溶液を、減圧下で濃縮または乾燥させる。得られた粗ペプチドを、沈殿またはEt2Oで洗浄するか、分取HPLCによる精製のためにDMFまたは50%酢酸水溶液へ直接再溶解する。
【0056】
所望の純度を有するペプチド模倣物を、分取HPLCを用いた精製によって得ることができる。粗ペプチドの溶液を、寸法250×50mmのsemi-Prepカラム(Luna10μ; C18; 100A°)に注入し、220nmでPDA検出器による流出モニタリングをしながら、15〜50ml/分の流速を用いて、水中のACNの直線勾配で溶出する(共に0.1%TFAで緩衝する)。精製したペプチド模倣物の構造は、エレクトロスプレー質量分析(Electrospray Mass Spectroscopy;ES-MS)によって確認することができる。
【0057】
分取HPLCによる精製後、調製した全ペプチドを、対イオンとしてのTFAにより、トリフルオロ酢酸塩として単離した。しかし、一部のペプチドは、適切なイオン交換樹脂床、好ましくは、陰イオン交換樹脂Dowex SBR P(Cl)または同等の塩基性陰イオン交換樹脂に通すことによって脱塩を行った。一部の例では、TAF対イオンを、希釈酢酸溶液で溶出した適切なイオン交換樹脂に通すことによって、酢酸イオンと置換した。製造の最終段階におけるペプチドの塩酸塩の調製では、選択したペプチドを、酢酸塩と共に、4MのHClで処理した。得られた溶液を、メンブランフィルター(0.2μm)に通してろ過し、その後凍結乾燥させて、白色からオフホワイト色のHCl塩を得た。当業者の範囲内である、同様な技術および/またはそのような適切な修飾に従って、本発明のペプチド模倣物の、他の適した薬学的に許容される塩を調製した。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明は、内在性ポリペプチドGLP-1Rアゴニストの活性を模倣するペプチド模倣物を作成する方法を提供する。他の好ましい実施形態では、ポリペプチド受容体アゴニストは、GLP-1である。
【0059】
本発明の新規な化合物を、周知の適切な賦形剤と組み合わせることによって、適切な薬学的に許容される組成に配合することができる。
【0060】
医薬組成物を、従来技術を使用することによって提供する。好ましくは、この組成は、活性成分、すなわち、本発明による式(I)の化合物単独または組合せのいずれかを含む、単位剤形である。
【0061】
その医薬組成物および単位剤形における活性成分(すなわち、この発明に記載の式(I)の化合物)の量は、特定の適用法、特定の化合物の効力および所望の濃度によって、広く異なり、または調整することができる。ガイダンスのために、指示される効果のために使用される時、活性成分の1日当たりの経口投与量は、約0.001から1,000mg/kg/体重の間、好ましくは約0.01から100mg/kg/体重/日の間、最も好ましくは約0.6から20mg/kg/日の範囲となる。
【実施例】
【0062】
<SPPSアプローチを用いたペプチド模倣物の一般的な調製法>
(樹脂に対するペプチド模倣物のアセンブリ)
十分な量(50〜100mg)のFmoc-PAL-PEG-PS樹脂またはFmoc-RinkアミドMBHA樹脂(処理量0.5〜0.6mmol/g)を、DMF(1〜10ml/樹脂100mg)中で2〜10分間膨張させた。次に、樹脂上のFmoc基を10〜30分間、DMF(10〜30ml/樹脂100mg)中の10〜30%ピペリジンと樹脂のインキュベーションによって除去した。脱保護された樹脂をろ過し、多量のDMF、DCMおよびエーテル(50ml×4)で洗浄した。洗浄した樹脂を、窒素雰囲気下で、新たに蒸留して得たDMF(1ml/樹脂100mg)中で5分間インキュベートした。DMF中のHOBt(1〜3eq.)およびDIPCDI(1〜2eq.)で事前に活性化した最初のFmoc保護アミノ酸(1〜3eq.)の0.5M溶液を樹脂に加え、次に樹脂を窒素雰囲気下で1〜3時間振盪した。カップリングの完了は、質的ニンヒドリン試験を用いてモニタリングした。最初のアミノ酸のカップリング後、樹脂をDMF、DCMおよびジエチルエーテル(50ml×4)で洗浄した。次のアミノ酸のカップリングでは、最初に、樹脂とカップリングされた最初のアミノ酸上のFmoc保護を、10〜20%ピペリジン溶液を用いて脱保護し、引き続き、適切なカップリング剤を使用し、また上記のように2番目のFmoc保護アミノ酸をカップリングさせた。脱保護、水洗、カップリングおよび水洗のサイクルを、所望のペプチド鎖が上記の一般的スキームのように樹脂上にアセンブリされるまで、繰り返し実施した。
【0063】
最後に、上記のように調製したFmoc保護ペプチジル-樹脂を、上記のように20%ピペリジン処理によって脱保護し、このペプチジル-樹脂をDMF、DCMおよびジエチルエーテル(50ml×4)で洗浄した。所望のペプチドを含む樹脂を、窒素圧下で10〜15分間乾燥させ、開裂/脱保護を実施した。
【0064】
(開裂および脱保護)
所望のペプチド模倣物を、下記のようなTFA開裂混合物による処理によって、これらのそれぞれのペプチジル-樹脂から開裂および脱保護させた。TFA/水/トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)の溶液(10ml/ペプチジル-樹脂100mg)をペプチジル-樹脂に加え、この混合物を時折撹拌しながら室温で放置した。樹脂をろ過し、開裂混合物で洗浄し、合わせたろ液を蒸発乾固した。得られた残基を水10mlで溶解し、水層をエーテルで3回(各20ml)抽出し、最後に、水層を凍結乾燥させた。凍結乾燥後に得られた粗ペプチドを、下記のように分取HPLCによって精製した。
【0065】
(粗ペプチド模倣物の分取HPLC精製)
分取HPLCは、島津LC-8A液体クロマトグラフで実施した。DMFまたは水で溶解した粗ペプチドの溶液を、寸法250×50mmのsemi-Prepカラム(Luna10μ;C18;100A°)に注入し、220nmでPDA検出器による流出モニタリングをしながら、15〜50ml/分の流速を用いて、水中のACNの直線勾配で溶出した(共に0.1%TFAで緩衝)。0.1%TFAで緩衝した水-CAN混合物の典型的な20%から70%の勾配を、毎分1%の勾配変化により50分間にわたり使用した。溶出した所望の生成物を、1つが10〜20mlの画分で収集し、純粋ペプチド模倣物を、それぞれのHPLC画分の凍結乾燥によって、非晶質白色粉末として得た。
【0066】
<精製したペプチド模倣物のHPLC分析>
上記のような分取HPLCによる精製後、各ペプチドを、島津LC-10AD分析HPLCシステムの分析RP-HPLCによって分析した。ペプチド模倣物の分析的HPLC分析では、Luna5μ;C18;100A°;寸法250×4.6nmのカラムを、0.1%TFAおよびACN緩衝液の直線勾配で使用し、クロマトグラムの捕捉は、PDA検出器を用いて、220nmで実施した。
【0067】
<質量分析による特性決定>
各ペプチドを、フローインジェクションまたはLC/MSモードのいずれかで、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって特徴づけした。三連四重極質量分析計(Triple quadrupole mass spectrometer)(API-3000 MDS-SCIES、カナダ)を、陽および陰イオンエレクトロスプレーモードで、全ての分析で使用した。ユニット分解能(unit resolution)で操作された、四重極の質量範囲にわたる完全なスキャンデータを得た。全ての場合で、実験的に測定した分子量は、算出されたモノアイソトピック(monoisotopic)分子量の0.5ダルトンの範囲内であった。マスクロマトグラムの定量化は、Analyst1.4.1ソフトウェアを用いて行った。
【0068】
本明細書に記載の合成法を他の一般に公知の技術およびその適切な応用法と共に利用することで、下記のGLP-1ペプチド模倣物を調製した。このリストは、様々なペプチド模倣物の群を表しており、これらは本発明に従って調製することができ、これらの化合物の明白な変型(variation)を少なくとも含むことが予期される。しかし、そのような開示は、いかなる形であれ本発明の範囲を制限すると解釈されるものではない。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【表3B】

【0072】
【表4】

【表4B】

【表4C】

【表4D】

【表4E】

【表4F】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【表6B】

【表6C】

【表6D】

【0075】
下記の化合物は、上記の一般的な方法に従って調製することができ、本発明の範囲に包含される(表7〜9)。
【0076】
【表7】

【表7B】

【表7C】

【表7D】

【表7E】

【表7F】

【表7G】

【表7H】

【表7I】

【0077】
【表8】

【表8B】

【表8C】

【表8D】

【表8E】

【表8F】

【表8G】

【表8H】

【表8I】

【表8J】

【0078】
【表9】

【0079】
上記のように調製したペプチド模倣物を、下記のcAMP細胞系アッセイを用いて、in vitroのGLP-1アゴニスト活性について試験した。GLP-1模倣ペプチド類似体は、用量反応の形でcAMP生成を刺激し、対応するEC50値は、in vitroで10〜100nMの範囲で活性を示す一部の選択したペプチド模倣物で測定した。EX-4のEC50値を、陽性対照として使用した。
【0080】
<サイクリックAMP測定>
GLP-1受容体は、Gタンパク質共役受容体である。生物学的活性型であるGLP-1(7-36)アミドは、GLP-1受容体に結合し、シグナル伝達を通してアデニル酸シクラーゼの活性化を引き起こし、細胞内cAMPレベルを上昇させる。GLP-1受容体を刺激する際のペプチド化合物のアゴニスト作用(agonism)を監視するために、アデニルシクラーゼ活性を、細胞cAMPレベルを定量することによって監視した。
【0081】
(cAMPアッセイ)
cAMP産生について、安定して形質移入されたCHO/HGLP1R細胞を、エキセンディン4を陽性対照としてDiscoverX cAMPキットを用いた準ハイスループットのプラットフォームで定量した。NCEの活性を、0.01μMの濃度で%エキセンディン4活性として測定した。陽性の化合物は、間接cAMP ELISAキット(R&Dシステム)を用いて、cAMP産生についてさらに検証した。本化合物の活性は、fmol cAMP/μgのタンパク質として表した。いくつかの代表的化合物(I〜IV)のEC50値を、図1に示す。
【0082】
(化合物のin vivoでの有効性の実証)
動物モデルにおけるいくつかの代表的化合物のin vivoのグルコース降下特性について以下に記す。本試験は、高血糖での血糖に対する本発明の化合物のin vivoでの有効性を検討するために使用した。腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を、体重25〜30gの終夜絶食させたSwissアルビノマウス(SAM)で実施した。マウスに1.5g/Kg/10mlのグルコース負荷を与え、後眼窩静脈叢(retroorbital plexus)より血液を異なる時間間隔で収集した。試験化合物(ペプチド模倣物)を、nmol/kgで投与される用量と等価である、適切なnmol/ml濃度の溶媒で溶解し、各マウスに同じ量/投与溶液重量を投与するようにした。
【0083】
血液試料を媒体/試験化合物/グルコース負荷の前(0分)、次に、15分、30分、60分および120分後に採血した。媒体/試験化合物は、グルコース負荷の15分前に腹腔内投与経路より投与した。血液試料を遠心し、得られた血清を分析のために-20℃で保存した。試験化合物を、各群6匹で基準(陽性対照)および媒体対照と共に検査した。グルコースは、血清からGOD/POD法によって測定した。2回の結果の平均値を算出した。血清中グルコース濃度の絶対値を、MSエクセルソフトウェアを用いて算出した。0分のベースラインで補正した折れ線グラフを、Graphpad prismソフトウェア(ver 3.0)を用いてプロットした。曲線下面積(AUC)およびベースライン補正曲線下面積(Base line corrected area under the curve: BCAUC)を算出し、1元配置分散分析、引き続きGraphpad prismソフトウェア(ver 3.0)を用いたダネットの事後検定(Dunnett's post test)を実施することによって解析した。
【0084】
上記の実験プロトコールを用いて、1〜50nMの範囲で、CHO-GLP-1R cAMPアッセイによって、in vitroでEC50を示すいくつかの選択した化合物のin vivoにおけるグルコース降下特性を測定した。表10において、選択した4つの代表的化合物(化合物I、II、IIIおよびIV)のin vivoにおけるグルコース降下特性(IPGTT SAMモデルでED50)を示した。
【0085】
【表10】

【0086】
本発明のいくつかの化合物を、他の動物モデル(例えば、ob/ob、db/dbおよびC57)を用いてin vivoでスクリーニングしたところ、これらはin vivoでの有効性および様々な程度の効力を示した。
【0087】
<有用性>
本発明は、本発明の化合物がGLP-1受容体に対するアゴニスト活性を有するというように、GLP-1を模倣する傾向を示す新規なGLP-1ペプチド模倣物を提供する。さらに、本発明の多くのGLPペプチド模倣物は、GLP-1天然配列に比べてタンパク質分解的開裂に対して高い安定性を示す。
【0088】
したがって、本発明の化合物は、様々な状態および障害の治療のために哺乳類、好ましくはヒトに投与することが可能であり、これらは、糖尿病(好ましくはII型、耐糖能障害、インスリン抵抗性、ならびに腎症、網膜症、ニューロパシーおよび白内障などの糖尿病合併症)、高血糖、高インスリン血症、高コレステロール血症、遊離脂肪酸またはグリセロールの血液濃度上昇、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満、創傷治癒、組織虚血、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腸疾患(壊死性腸炎、微絨毛封入体病またはセリアック病など)を治療する、または進行もしくは発症を遅らせることを含むが、これらに限定されない。また、本発明の化合物は、高密度リポタンパク質(high density lipoprotein:HDL)の血液濃度を上昇させることができる。
【0089】
さらに、Johannsson J., Clin. Endocrinol. Metab., 82, 727-34,1997で詳述されるような、総称して「エックス症候群」またはメタボリック症候群と言及される状態、疾患も、本発明の化合物を使用して治療することができる。場合によって、上記のいくつかの疾患状態の治療のために、本発明の化合物を適切なDPP-IV阻害剤と併用することができ、これらは化合物を連続して投与することによってか、適切なDDP-IV阻害剤と共に本発明の化合物を含有する製剤として併用される。
【0090】
いずれの言及した発明の化合物に対しても有害作用は観察されなかった。本発明の化合物は、使用した実験動物において、良好な血清グルコース濃度降下活性を示した。これらの化合物は、高インスリン血症、NIDDMなどの高血糖、代謝異常および肥満が原因の疾患の検査/予防のために使用される。これはそのような疾患が互いに関連しているためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その互変異性体、溶媒和物および薬学的に許容される塩を含む、式(I)の配列を有する単離ポリペプチド
A-X1-S1-Y-S2-X2-B (I)
[式中、
Aは、-NH-R1を表し、ここでR1は、水素、直鎖または分枝の(C1〜C15)アルキル鎖、1つ、2つまたは3つの天然アミノ酸残基を含むアミノ酸またはペプチド、R3-CO-基、R3O-C(O)-基、式R3-SO2-のスルホニル基から選択される基を表し、これらの各基は置換されることがあり;R3は、直鎖または分枝の(C1〜C10)アルキル基、(C3〜C6)シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基から選択され、これらの各基は置換されることがあり;
Bは、-COOR2、-CONHR2またはCH2OR2を表し、R2は、H、直鎖または分枝の(C1〜C10)アルキル基、フェニル基、ナフチル基、インダニル基、フルオレニル基、ビフェニル基から選択されるアリール基、アラルキル基から選択される基を表し、ここで前記アリール基は、前記の定義の通りであり、これらの各基は置換されることがあり;
各S1およびS2は、独立に、結合であるか、n=1〜9である「-NH-(CH2)n-COO-」基を独立に、表し;
Yは、結合または-CO-、-(CH2)m-(m=1〜3)、「O」、「Sr」、-CO-NH-、-CO-NR4-を表すか、天然または非天然アミノ酸から選択される1つまたは2つまたは3つのアミノ酸を含む短鎖ペプチドを表し;R4は、H、直鎖もしくは分枝の(C1〜C10)アルキル基、またはフェニル基、ナフチル基、インダニル基、フルオレニル基、ビフェニル基から選択されるアリール基から選択される置換されていてもよい基を表し;但し、S1-Y-S2が結合を表す場合、
X1は、下記のアミノ酸配列から選択され、
HAEGTFTSD、HAEGTFTSDV、HAEGTFTSDVS、HAEGTFTSDVSS、HAEGTFTSDVSSY、HAEGTFTSDVSSYL、HAEGTFTSDVSSYLE、HAEGTFTSDVSSYLEG、HAEGTFTSDVSSYLEGQ、HAEGTFTSDVSSYLEGQA、HAEGTFTSDVSSYLEGQAA、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAK、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKE、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEF、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFI、1つまたは複数のこれらアミノ酸が、非天然アミノ酸によって置換されることがあるというさらなる選択肢を有し、X2は、下記のアミノ酸配列から選択され、
GPSSGAPPPSまたは
KELEKLLまたは
GPPSまたは
VKGR;
そして、S1-Y-S2が結合を表さない場合、
X1は、下記のアミノ酸配列から選択され、
HA、HAE、HAEG、HAEGT、HAEGTF、HAEGTFT、HAEGTFTS、HAEGTFTSD1つまたは複数のこれらアミノ酸が非天然アミノ酸によって置換されることがあるというさらなる選択肢を有し;
X2は、以下から選択され、
GPSSGAPPPSまたは
KELEKLLまたは
GPPSまたは
VKGRあるいは
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル部分を含む側鎖を有する天然または非天然アミノ酸からなる2つのアミノ酸の組合せから選択されるジペプチド;これらのアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル部分は、ベンジル基、ナフチルメチル基、ピリジルメチル基、チエニルメチル基、フリルメチル基、イミダゾリルメチル基、イソオキサゾリルメチル基、キノリルメチル基、ベンゾフラニルメチル基、ベンゾチエニルメチル基、インドリニルメチル基、インドリルメチル基、ジベンゾフラニルメチル基、ジベンゾチエニルメチル基、ベンゾジヒドロフラニルメチル基、ベンゾジヒドロチエニルメチル基、チエノピリミジルメチル基、ベンズイミダゾイルメチル基、フェナントレニルメチル基、ジヒドロフェナントレニルメチル基、フルオレニルメチル基、ジベンゾフラニルメチル基、ジベンゾチオフェニルメチル基から選択され、ここで、これらの各基は、(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基、または置換されていてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基によって置換されることがあり、但し、さらに、そのようなアリールまたはヘテロアリール置換基は、(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基またはアリール基もしくはヘテロアリール基によってさらに置換されることがあるという条件を有する]。
【請求項2】
非天然アミノ酸が一般式(IIa)によって表される、請求項1に記載の化合物
【化1】

(式中、R5は、H、F、(C1〜C5)アルキルから選択され、R5を担持する炭素での立体化学的配置は、(R)または(S)のことがあり;R6は、Hまたは(C1〜C3)アルキルから選択され;各R7およびR8は、独立に、H、(C1〜C2)アルキルまたはハロゲン原子、好ましくはフッ素原子から選択され;R9は、(C1〜C5)アルキル部分、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、イソオキサゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾジヒドロフラニル基、ベンゾジヒドロチエニル基、チエノピリミジル基、ベンズイミダゾリル基、フェナントレニル基、ジヒドロフェナントレニル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基から選択される、アリールまたはヘテロリル部分から選択される基を表し、これらの各基は、(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基または置換されていてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基によって置換されることがあり、但し、さらに、そのようなアリールまたはヘテロアリール置換基は、(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシ基またはアリール基もしくはヘテロアリール基によってさらに置換されることがあるという条件を有する)。
【請求項3】
X2を表している前記ジペプチドが、好ましくはBip基、Bip(2-Me)基、Bip(2-Et)基、Bip(2-Ipr)基、Bip(2-CN)基、Bip(2'-Et-4'-OMe)基、Bip(4'-フルオロ)基、Bip(4'-フェニル)基、2-(9,10-ジヒドロ-フェナントレニル)-Ala基、2-(フェナントレニル)-Ala基、4-(2-ナフチル)-Phe基、4-(1-ナフチル)-Phe基、2-フルオレニル-Ala基、4-ジベンゾフラン-Phe基、4-ジベンゾチオフェン-Phe基、4-(2'-メチルフェニル)-3-ピリジルアラニン基から選択される、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項4】
前記置換基がヒドロキシル、オキソ、ハロ、チオ、ニトロ、アミノ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアラルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボン酸、ならびにエステルおよびアミドから選択されるその誘導体から選択される、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項5】
前記単離ポリペプチドが下記から選択される化合物である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【化2A】

【化2B】

【化2C】

【化2D】

【化2E】

【化2F】

【化2G】

【化2H】

【化2I】

【化2J】

【化2K】

【請求項6】
前記単離ポリペプチドが下記から選択される化合物である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【化3A】

【化3B】

【化3C】

【化3D】

【化3E】

【化3F】

【化3G】

【化3H】

【化3I】

【化3J】

【化3K】

【化3L】

【化3M】

【化3N】

【化3O】

【化3P】

【請求項7】
本明細書に記載の方法に従って調製された請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物および適切な薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
GLP-1の生物活性を模倣する、より好ましくはGLP-1Rアゴニスト活性を模倣する能力を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項9】
GLP-1Rペプチドが病態生理学的な機能を果たす疾患の治療および予防に有用な、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項10】
高脂血症、高コレステロール血症、高血糖、高インスリン血症、遊離脂肪酸またはグリセロールの血液濃度上昇、高トリグリセリド血症、創傷治癒、肥満、耐糖能障害、レプチン抵抗性、インスリン抵抗性、糖尿病合併症(例えば、腎症、網膜症、ニューロパシーおよび白内障など)によって引き起こされる疾患の予防または治療の方法であって、請求項1から7のいずれか一項に定義の式(I)の化合物の有効な無毒量を、それを必要とする患者に投与する段階を含む方法。
【請求項11】
前記疾患が2型糖尿病、耐糖能障害、脂質代謝異常、高血圧、肥満、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、冠動脈疾患、心臓血管疾患、およびインスリン抵抗性が根底の病態生理学的メカニズムである他の疾患である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に定義の式(I)の化合物、薬学的に許容される担体、希釈液、賦形剤または溶媒和物を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、請求項9から11のいずれか一項に定義のいずれかの疾患状態を治療/緩和させるための薬剤。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に定義の式(I)の化合物を適切なDPP IV阻害剤と併せてそれを必要とする患者に投与する段階を含む、請求項9から11のいずれか一項に定義の疾患状態を治療/緩和させるための薬剤。
【請求項14】
請求項9から11のいずれか一項に定義の疾患の治療に適した薬物としての、単独での、もしくは適切なDPP IV阻害剤と併せての、式(I)の化合物の使用、ならびに、請求項7から9、12および13のいずれかに記載の、それらを含む医薬組成物および薬剤の使用。

【公表番号】特表2008−540402(P2008−540402A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509578(P2008−509578)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000154
【国際公開番号】WO2007/017892
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507365927)カディラ・ヘルスケア・リミテッド (26)
【Fターム(参考)】