説明

GPSモジュール、通信端末装置及び通信システム

【課題】通信端末装置の構成を単純化して、製造工程を簡易化できるGPSモジュールを提供することを目的とする。また、該GPSモジュールを備えて、通信端末装置に固有の識別符号と該通信端末装置が現に所在する地理的位置を基地局(ホスト装置)に送信する通信端末装置を提供する。
【解決手段】GPS衛星から受信した信号に基づいて、自身が現に所在する地理的位置を算出する測位演算部16を有するGPSモジュール9において、当該GPSモジュール9に固有の識別符号を記憶するID記憶部18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSモジュール、通信端末装置及び通信システムに関する。特に、通信端末装置に組み込まれて、該通信端末装置に測位機能を付与するGPSモジュール、及び、該GPSモジュールを備えて、通信端末装置が現に所在する地理的位置に基づいて、通信システムから認証を受ける通信端末装置、並びに、該通信端末装置を該通信端末装置が現に所在する地理的位置に基づいて認証する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、人工衛星(GPS衛星)が発信する電波信号を受信機(GPS受信機)で受信して、当該受信機が現に所在する地理的位置を測定(測位)するシステムである。GPSは船舶や航空機の航法システムとしてだけではなく、例えば、いわゆるカーナビゲーション装置等、民生用途においても広く利用されている。
【0003】
また、通信端末装置とホスト装置(基地局)との間で通信を行う通信システムにおいて、通信端末装置の認証を行う場合がある。不正な通信端末装置がホスト装置にアクセスして、システムにただ乗りしたり、ホスト装置からデータを盗んだり、あるいはシステムを破壊したりすることを防ぐためである。
【0004】
通信端末装置の認証は、通信端末装置に識別符号を付与して行うことが一般的である。例えば、通信端末装置に固有の識別符号を付与するとともに、その識別符号をホスト装置に登録しておき、通信端末装置による通信システムへのアクセスに際して、通信端末装置からホスト装置に当該通信端末装置の識別符号を送信させ、その識別符号とホスト装置に事前に登録された識別符号と照合して行う。
【0005】
また、通信端末装置にGPS受信機として機能するモジュールを備えて、通信端末装置による通信システムへのアクセスに際して、当該通信端末装置の識別符号とともに、GPS受信機で測位された当該通信端末装置が現に所在する地理的位置をホスト装置に送信させ、その識別符号及び地理的位置をホスト装置に事前に登録された識別符号及び地理的位置と照合することも行われている。つまり、当該通信端末装置の識別符号が事前に登録された識別符号と同一であり、当該通信端末装置が現に所在する地理的位置が事前に登録された地理的位置と一致する場合に、当該通信端末装置によるアクセスを許可している。
【0006】
例えば、特許文献1には、電子投票システムを構成する端末装置であって、GPS衛星からの信号の受信手段を備えて、ID、パスワード及び前記受信手段で受信した端末装置の位置信号を、選挙情報センタへ通信回線を介して送信し、利用が許可された場合には投票の為の情報を選挙情報センタから受信し、入力手段から入力された投票データを選挙情報センタへ送信することを特徴とする端末装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献1に開示された電子投票システムを構成する選挙情報センタは、前記端末装置から送信されるID、パスワード及び端末装置の位置信号を受信する通信手段と、前記受信した位置信号を位置情報に変換する検出手段と、認証に使われるため予め登録されるID、パスワード及び端末装置の位置情報を記憶する認証用メモリと、端末装置からの情報と記憶されている情報とを照合して利用許可を判断する認証装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−163414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の端末装置は、GPS受信部(GPS受信機)と、IDを記憶する記憶部を別個に備えるので、端末装置を製造する際は、GPS受信部と記憶部を別個に実装し、更にその後、当該端末装置に付与されたIDを記憶部に書き込まなければならなかった。
【0010】
本発明は、以上のような背景に鑑みて成されたものであり、通信端末装置の構成を単純化し、通信端末装置の製造工程を簡易化するGPSモジュールを提供することを目的とする。また、該GPSモジュールを備えて、通信端末装置に固有の識別符号と該通信端末装置が現に所在する地理的位置を基地局(ホスト装置)に送信する通信端末装置を提供することを目的とする。また、該通信端末装置から送信された識別符号と地理的位置を使って、該通信端末装置の認証を行う通信システムを提供することを目的とする。
【0011】
なお、本願において、「GPSモジュール」とは、人工衛星(GPS衛星)が発信する電波信号を受信して、自身の地球上での位置を測定(測位)する機能を有する要素を指す。「GPSモジュール」は、それ自体が独立した装置、つまりマン−マシンインターフェイスを備えて、人間が操作入力、あるいは操作結果を人間に提示することができる装置であってもよいし、他の要素や装置に組み込まれて、当該他の要素や装置の部分を構成するものであってもよい。
【0012】
また、本願において、「通信端末装置」とは、後述する「通信システム」の構成要素であって、基地局(ホスト装置)との間で、あるいは「通信端末装置」相互間で、通信を行う要素を指す。また、「通信端末装置」によって通信される情報の種類は限定されない。つまり該情報は、例えば、音声であってもよいし、画像や映像であってもよい。あるいはその他のデータ、つまり、音声、画像、映像の何れにも変換されないデータであってもよい。また、「通信端末装置」で利用される搬送媒体は限定されない。前記媒体は無線(電波)信号であってもよいし、有線(電気)信号であってもよい。あるいは光(可視光線、赤外線、紫外線の別を問わない)や音(可聴範囲の内外を問わない)を利用するものであってもよい。
【0013】
また、本願において、「通信システム」とは、少なくとも1台の「通信端末装置」と基地局(ホスト装置)を備えるシステムであって、「通信端末装置」と基地局(ホスト装置)との間で、あるいは「通信端末装置」相互間で、通信を行うシステムを指す。また「通信システム」は狭義の通信システムには限定されない。つまり、「通信システム」は通信だけを行うシステムには限定されない。通信を利用して他の機能を果たすシステムも「通信システム」に包含される。例えば、特許文献1で開示された電子投票システムも「通信システム」の一種であるし、警備対象の場所や物に「通信端末装置」を置いて、当該場所や物に異常(火災、浸水、侵入、破壊)が発生した場合に、その旨を基地局(ホスト装置)に通報する警備システムなども「通信システム」に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るGPSモジュールは、GPS衛星から受信した信号に基づいて、自身が現に所在する地理的位置を算出する測位演算部を有するGPSモジュールにおいて、当該GPSモジュールに固有の識別符号を記憶する識別符号記憶手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る通信端末装置は、前記第1の観点に係るGPSモジュールを備えるものである。
【0016】
また、本発明の第3の観点に係る通信システムは、前記第2の観点に係る通信端末装置と基地局からなる通信システムにおいて、前記通信端末装置は、前記基地局との通信の開始に先だって、前記GPSモジュールが算出した地理的位置と前記GPSモジュールに記憶された当該GPSモジュールに固有の識別符号を前記基地局に送信するともに、前記基地局は、前記通信端末装置から受信した地理的位置及び識別符号を、前記基地局に事前に登録された地理的位置及び識別符号と比較照合して、前記受信した地理的位置及び識別符号と前記登録された地理的位置及び識別符号の差異が所定の範囲にある場合に、前記通信端末装置に対して以後の通信を許可する認証手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、GPSモジュールに識別符号記憶手段を備えるので、通信端末装置に別途、識別符号記憶手段を備える必要がなくなる。そのため、通信端末装置の構成を単純化し、製造工程を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す通信システムの概念図である。
【図2】ホスト装置の構成を示す概念図である。
【図3】通信端末装置の構成を示す概念図である。
【図4】GPSモジュールの構成を示す概念図である。
【図5】識別符号の構成を示す概念図である。
【図6】認証情報生成プログラムの概要を示すフローチャートである。
【図7】認証情報送出プログラムの概要を示すフローチャートである。
【図8】認証処理プログラムの概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す通信システムの概念図である。図1に示すように、通信システム1はホスト装置2と通信端末装置3で構成されて、ホスト装置2と通信端末装置3の間で通信を行うシステムである。また、ホスト装置2に対する不正なアクセスを防止するために、通信システム1には、通信端末装置3の識別符号と通信端末装置3が現に所在する地理的な位置を用いて通信端末装置3の認証を行う。つまり、通信端末装置3の識別符号がホスト装置2に登録されていて、しかも通信端末装置3が事前に設定された地理的位置に所在する場合にだけ、ホスト装置2と通信端末装置3の間の通信が許可される。なお、図1において、通信システム1に5台の通信端末装置3を備える例を示したが、通信端末装置3の台数は例示であって、通信システム1は5台の通信端末装置3を備えるものには限定されない。通信システム1は、ホスト装置2と少なくとも1台の通信端末装置3を備えていれば足りる。
【0021】
また、通信システム1は、例えば、通信端末装置3を警備員に携帯させて、施設や地域を警備するシステムとして利用される。このような用途において、通信システム1には次のような利点がある。すなわち、通信端末装置3の識別符号がホスト装置2に登録されていない場合に、ホスト装置2が当該通信端末装置3の通信を拒絶するので、不正な通信端末装置3による警備システムの攪乱を防止できる。また、通信端末装置3の識別符号がホスト装置2に登録されていても、事前に設定された地理的位置に当該通信端末装置3が所在していなければ、ホスト装置2が当該通信端末装置3の通信を拒絶するので、警備員の怠業や不正を抑制できる。つまり、警備員が指定された担当区域を離れているにもかかわらず、その担当区域にいるかのように装うことを防止できる。
【0022】
このような機能を実現するために、ホスト装置2は図2に示すように構成される。すなわち、ホスト装置2は、通信部4、制御部5及び記憶部6を備える。
【0023】
また、通信端末装置3は図3に示すように構成される。すなわち、通信端末装置3は、制御部7、無線部8及びGPSモジュール9を備える。また、通信端末装置3は、さらに、記憶部10、入力部11、表示部12、通信アンテナ13及びGPSアンテナ14を備える。
【0024】
制御部7は、通信端末装置3を制御するコンピュータであり、事前にインストールされたプログラムにしたがって、無線部8とGPSモジュール9を制御する。
【0025】
無線部8は、ホスト装置2との間で無線通信を行う通信装置である。つまり、無線部8は、ホスト装置2から送信された電波信号を受信して、通信端末装置3の内部で利用できる電気信号に変換し、通信端末装置3の内部の電気信号を電波信号に変換して、ホスト装置2に送信する装置である。
【0026】
GPSモジュール9は、図示しないGPS衛星から送信される電波信号を受信して、該電波信号に基づいて、通信端末装置3が所在する地理的位置を算出する装置である。なお、GPSモジュール9の詳細な構成は後述する。
【0027】
記憶部10は、例えば、制御部7で実行されるプログラム、通信端末装置3の機能を設定する制御パラメータ等を記憶する装置である。また、記憶部10は、通信端末装置3の制御に必要な情報を一時的に記憶するワーキングメモリーとしても機能する。
【0028】
入力部11は、ユーザが通信端末装置3に対して操作入力を行う装置であり、具体的には、例えば、キーボードである。入力部11に対して為された操作入力は、電気信号の形で制御部7に伝えられ、制御部7はその操作入力(電気信号)に応じた、命令(電気信号)を無線部8あるいはGPSモジュール9に送出する。
【0029】
表示部12は、制御部7から出力される情報を、例えば、画像や文字の形で、ユーザに提示するディスプレイ装置である。
【0030】
なお、通信アンテナ13は無線部8に接続されて、ホスト装置2との間で電波信号の送受信を行うアンテナである。また、GPSアンテナ14はGPSモジュール9に接続されて、GPS衛星から送信される電波信号を受信するアンテナである。
【0031】
さて、GPSモジュール9は図4に示すように構成される。すなわち、GPSモジュール9は、受信部15、測位演算部16、制御部17及びID記憶部18を備える。また、GPSモジュール9は単一のLSI(大規模集積回路)上に構成される。つまり、受信部15、測位演算部16、制御部17及びID記憶部18を構成する電子回路は単一のLSI(大規模集積回路)上に構成される。
【0032】
受信部15は、GPSアンテナ14で受信したGPS衛星の電波信号を、GPSモジュール9の内部で利用できる電気信号に変換する電子回路である。また、測位演算部16は、受信部15から出力された該電気信号に基づいて、通信端末装置3が所在する地理的位置(具体的には、緯度及び経度)を算出する電子回路である。なお、受信部15の具体的な構成、及び、測位演算部16で実行される具体的な演算処理は既に周知の技術であるので、その説明は省略する。
【0033】
制御部17は、事前にインストールされたプログラム(後述)を実行して、GPSモジュール9を制御するコンピュータである。前記プログラムは、通信端末装置3の制御部7から入力される命令によって起動され、制御部17は前記プログラムにしたがって、受信部15及び測位演算部16を動作させる。
【0034】
ID記憶部18は、GPSモジュール9に固有の識別符号を記憶する記憶装置である。なお、「固有」とはGPSモジュール9の1つずつに異なる識別符号が付与されていて、ある識別符号を付与されたGPSモジュール9は、当該GPSモジュール9以外に存在しないことを意味する。
【0035】
GPSモジュール9に付与される識別符号は、例えば、図5に示すように、GPSモジュール9の商品コード19、製造番号20及び、秘密コード21を組み合わせて構成される。商品コード19は、例えばJANコードのような、所定の管理団体によって管理される、特定のメーカの特定商品に固有のコードであり、他のメーカの商品、あるいは他の商品に、同一の商品コードが付与されることはない。製造番号はGPSモジュール9を製造するメーカによって管理される番号である。識別符号には、このような商品コード19、製造番号20の組み合わせが含まれているので、GPSモジュール9に固有である。
【0036】
秘密コード21は、GPSモジュール9の製造者が選択する任意の文字列である。商品コード19は外部に公開されたコードであり、製造番号20も推定が容易であるが、識別符号に秘密コード21を加えることによって、外部の人間(ユーザ等)による識別符号の推認を困難にすることができる。つまり「成り済まし」を更に困難にすることができる。なお、秘密コード21は、ユーザ等に対して秘匿されたコードであれば十分であるので、全てのGPSモジュール9に同一の秘密コード21を付与してもよいが、例えば、製造ロット毎、あるいは顧客(この場合、通信端末装置3の製造者)別に異なる秘密コード21を付与すれば、また「成り済まし」を更に効果的に抑制することができる。
【0037】
さて、GPSモジュール9の制御部17には、図6に示すような認証情報生成プログラムがインストールされる。認証情報生成プログラムは、GPSモジュール9(の制御部17)に通信端末装置3(の制御部7)から所定の命令が入力された場合に起動され、次のような処理を実行する。
【0038】
認証情報生成プログラムの起動前に待機状態にあった受信部15を活性化して、GPS衛星の信号を受信する(ステップS11)。
【0039】
前記信号に基づいて、測位演算部16で測位演算を実行し、つまり通信端末装置3が所在する地理的位置、具体的に言えば、通信端末装置3が所在する緯度及び経度を算出する(ステップS12)
【0040】
続いて、ID記憶部18から識別符号を読み出し(ステップS13)、識別符号と地理的位置を通信端末装置3(の制御部7)に出力し(ステップS14)、処理を終わる。
【0041】
また、通信端末装置3の制御部7には、図7に示すような認証情報送出プログラムがインストールされる。認証情報送出プログラムは、ホスト装置2から通信端末装置3に所定の命令が無線部8を介して、入力された場合に起動され、次のような処理を実行する。
【0042】
まず、制御部7はGPSモジュール9(の制御部17)に認証情報生成を命令する(ステップS21)。つまり、前述の認証情報生成プログラムの起動を命じる。
【0043】
前記認証情報生成プログラムの処理が完了して、GPSモジュール9(の制御部17)から送られた識別符号と地理的位置を制御部7が受け取ったら、無線部8を介して、それらをホスト装置2に送信して(ステップS22)、処理を終わる。
【0044】
また、ホスト装置2には、図8に示すような認証処理プログラムがインストールされる。認証処理プログラムは、通信端末装置3がホスト装置2に対して接続を要求してきた場合に起動され、次のような処理を実行する。
【0045】
まず、通信端末装置3に対して認証情報送出を命じる(ステップS31)。つまり、通信端末装置3に対して識別符号と地理的位置をホスト装置2に送信するように命じる。
【0046】
通信端末装置3にから送信された識別符号と地理的位置をホスト装置2が受信したら、前記識別符号をホスト装置2に事前に登録された識別符号と照合し(ステップS32)、両者が一致したら、つまり通信端末装置3から送信された識別符号がホスト装置2に登録されていれば(ステップS32;YES)、ステップS33に進む。両者が一致しなければ、つまり通信端末装置3から送信された識別符号がホスト装置2に登録されていなければ(ステップS32;NO)処理を終了する。そして、以後、通信端末装置3との通信を拒絶する。
【0047】
また、通信端末装置3から送信された識別符号がホスト装置2に登録されていたら(ステップS32;YES)、通信端末装置3から送信された地理的位置を、当該識別符号についてホスト装置2に事前に登録された地理的位置と照合する(ステップS33)。つまり、通信端末装置3から送信された地理的位置を、当該通信端末装置3について割当られた区域(例えば、当該通信端末装置3を携帯する警備員の警備担当区域)と照合する。両者が一致したら、つまり通信端末装置3から送信された地理的位置が当該通信端末装置3についてホスト装置2に登録された地理的位置と一致していれば(ステップS33;YES)、ステップS34に進む。両者が一致しなければ、つまり通信端末装置3から送信された地理的位置が当該通信端末装置3についてホスト装置2に登録された地理的位置と一致していなければ(ステップS33;NO)処理を終了する。そして、以後、通信端末装置3との通信を拒絶する。
【0048】
また、通信端末装置3から送信された地理的位置が当該通信端末装置3についてホスト装置2に登録された地理的位置と一致していれば(ステップS33;YES)、ホスト装置2は、通信端末装置3に以後の通信を許可して(ステップS34)、処理を終える。このように、当該通信端末装置3は、通信システム1を構成する正規の通信端末装置3であって、しかも当該通信端末装置3について割り当られた区域に所在することが認証されて、ホスト装置2との通信が可能になる(ホスト装置2に接続される)。つまり、例えば、当該通信端末装置3を携帯する警備員は、通信端末装置3の入力部11を操作して、警備担当区域の異常の有無等をホスト装置2に報告することができる。
【0049】
以上、説明したように、GPSモジュール9は、当該GPSモジュール9に固有の識別符号を記憶するID記憶部18を備えるので、GPSモジュール9を実装するだけで、通信端末装置3に当該通信端末装置3に固有の識別符号を記憶させることができる。そのため、通信端末装置3の構成を単純化して、製造工程を簡易化できる。また、通信端末装置3の識別符号と、当該通信端末装置3が現に所在する地理的位置を用いて通信端末装置3の認証を行う通信システム1を容易に構築することができる。また、ID記憶部18を含むGPSモジュール9を単一のLSIチップ上に構成すれば、通信端末装置3の構成を更に単純化して、製造工程を更に簡易化できる。
【0050】
また、識別符号の管理をGPSモジュール9の製造メーカで行うので、通信端末装置3のメーカは識別符号の管理業務から解放される。また、識別符号の書き込み後に、GPSモジュール9の製造メーカで、いわゆるライトプロテクトを行えば、ユーザ等が識別符号を改竄できなくなるので、成り済まし等の不正を抑制することができる。
【0051】
さて、上記実施形態の説明において、GPSモジュール9、通信端末装置3、及び通信システム1を例にして、本発明の具体的実施態様を示したが、これらは例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲で示された技術的思想の範囲において、自由に応用、変形あるいは改良して実施できる。
【0052】
例えば、上記実施形態の説明において、特定の施設や地域を警備するシステムに、通信システム1を適用する例を示したが、本発明の適用対象はこのような用途には限定されない。通信システム1を使って、例えば、特許文献1に開示された電子投票システムを構築することもできるし、あるいは、リース機器の管理に通信システム1を使うこともできる。つまり、通信端末装置3をリース対象の機器に取り付けて、通信端末装置3から送信された地理的位置と識別符号を基地局で、事前に登録されたデータと照合して、両者が一致する場合、言い替えれば、当該リース対象機器が契約で定められた場所に所在することが確認された場合に、当該リース対象機器の運転を許可する信号を基地局から当該通信端末装置3に送出するシステムを構築することもできる。このように、通信システム1を適用する対象は多数存在する。
【0053】
また、上記実施形態の説明において、通信端末装置3に入力部11や表示部12のようなマン−マシンインターフェイスを備える例、言い替えれば、通信端末装置3が人の手で操作される例を示した。また、このような通信端末装置3の具体例として、携帯電話、PDA、ノートPCなどが挙げられるが、本発明に係る通信端末装置はこのようなものには限定されない。通信端末装置3は、例えば、他の装置(例えば、前述のリース対象機器)と結合されて、当該他の装置の命令によって動作するものであってもよい。
【0054】
また、図2ないし図5において、ホスト装置2、通信端末装置3、及びGPSモジュール9の構成を図示したが、これらは例示であり、図2ないし図5における図示とは異なる構成でもってホスト装置2、通信端末装置3、及びGPSモジュール9を実現することができる。図2ないし図5において図示した構成は、概念的な構成であって、図示されていない構成要素をホスト装置2、通信端末装置3、及びGPSモジュール9を追加できることは言うまでもない。
【0055】
また、説明の便宜のために、図2ないし図5において、ホスト装置2、通信端末装置3、及びGPSモジュール9の構成要素をハードウェアの形で図示したが、該構成要素の一部又は全部をソフトウェアで実現されてもよい。
【0056】
図6に図示した識別符号の構成は、例示であって、本発明の技術的範囲はこのような識別符号を備えるものには限定されない。例えば、商品コード19と製造番号20は識別符号の必須の構成要素ではない。識別符号の固有性が確保されるならば、つまり、全てのGPSモジュール9に異なる識別符号が付与されるようにできるならば、商品コード19と製造番号20の組み合わせに代わる、別の体系で識別符号が構成されてもよい。また、秘密コード21は任意的な構成要素である。例えば、識別符号の推認困難性の要求が高くない場合、あるいは識別符号の固有性を確保するための構成要素(つまり、商品コード19と製造番号20の組み合わせ、あるいは、これに代わる構成要素)だけで所望の推認困難性を確保できるならば、秘密コード21を省いてもよい。
【0057】
図6ないし図8において、各種プログラムによる処理を図示したが、これらは、例示的、概念的な図示であって、各種の応用変形が可能であることは言うまでもない。例えば、認証処理プログラムにおいて、通信端末装置3から送信された識別符号がホスト装置2に登録されていない(ステップS32;NO)場合、及び、通信端末装置3から送信された位置情報が当該通信端末装置3についてホスト装置2に登録された位置情報と一致しない(ステップS33;NO)場合に、「通信許可」(ステップS34)をスキップして処理を終えている。つまり通信を禁止しているが、「通信禁止」に加えてアラーム送出を行うようにしてもよい。アラームは各種の公知の態様で行えばよい。例えば、ホスト装置2において警報ランプを点灯して行ってもよいし、警報ブザー等を奏鳴して行ってもよい。あるいは、他の装置やシステムに信号を送出して、その装置やシステムを起動するようにしてもよい。
【0058】
また、認証処理プログラムのステップS33において、通信端末装置3から送信された地理的位置と当該通信端末装置3についてホスト装置2に登録された地理的位置を照合する場合において、所定の誤差を許容するようにしても良い。つまり、通信端末装置3から送信された地理的位置が当該通信端末装置3についてホスト装置2に登録された地理的位置の差異が所定の範囲(=許容される誤差の範囲)にあれば、「両者一致」(ステップS33;YES)としてステップS34に進むようにしても良い。例えば、警備システムにおいて、警備員に指定される担当区域は、所定の拡がりを持った「面」であるので、警備員が現に所在する「点」が「面」の中にあれば、当該警備員は自身の担当区域にいると言えるからである。
【0059】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0060】
(付記1)
GPS衛星から受信した信号に基づいて、自身が現に所在する地理的位置を算出する測位演算部を有するGPSモジュールにおいて、
当該GPSモジュールに固有の識別符号を記憶する識別符号記憶手段を備える
ことを特徴とするGPSモジュール。
【0061】
(付記2)
外部からの要求に応じて、前記測位演算部で算出された地理的位置と前記識別符号記憶手段に記憶された当該GPSモジュールに固有の識別符号を外部に出力する制御部を備える
ことを特徴とする付記1に記載のGPSモジュール。
【0062】
(付記3)
少なくとも、前記測位演算部と前記識別符号記憶手段を単一のLSIチップ上に構成した
ことを特徴とする付記1に記載のGPSモジュール。
【0063】
(付記4)
付記1ないし付記3の何れか1項に記載のGPSモジュールを備える通信端末装置。
【0064】
(付記5)
付記4に記載の通信端末装置と基地局からなる通信システムにおいて、
前記通信端末装置は、前記基地局との通信の開始に先だって、前記GPSモジュールが算出した地理的位置と前記GPSモジュールに記憶された当該GPSモジュールに固有の識別符号を前記基地局に送信するともに、
前記基地局は、前記通信端末装置から受信した地理的位置及び識別符号を、前記基地局に事前に登録された地理的位置及び識別符号と比較照合して、前記受信した地理的位置及び識別符号と前記登録された地理的位置及び識別符号の差異が所定の範囲にある場合に、前記通信端末装置に対して以後の通信を許可する認証手段を備える
ことを特徴とする通信システム。
【0065】
(付記6)
前記所定の範囲は、地理的位置については所定の誤差を許容し、識別符号については完全一致を求めるものである
ことを特徴とする付記5に記載の通信システム。
【符号の説明】
【0066】
1 通信システム
2 ホスト装置
3 通信端末装置
4 通信部
5 制御部
6 記憶部
7 制御部
8 無線部
9 GPSモジュール
10 記憶部
11 入力部
12 表示部
13 通信アンテナ
14 GPSアンテナ
15 受信部
16 測位演算部
17 制御部
18 ID記憶部
19 商品コード
20 製造番号
21 秘密コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星から受信した信号に基づいて、自身が現に所在する地理的位置を算出する測位演算部を有するGPSモジュールにおいて、
当該GPSモジュールに固有の識別符号を記憶する識別符号記憶手段を備える
ことを特徴とするGPSモジュール。
【請求項2】
外部からの要求に応じて、前記測位演算部で算出された地理的位置と前記識別符号記憶手段に記憶された当該GPSモジュールに固有の識別符号を外部に出力する制御部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のGPSモジュール。
【請求項3】
少なくとも、前記測位演算部と前記識別符号記憶手段を単一のLSIチップ上に構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のGPSモジュール。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のGPSモジュールを備える通信端末装置。
【請求項5】
請求項4に記載の通信端末装置と基地局からなる通信システムにおいて、
前記通信端末装置は、前記基地局との通信の開始に先だって、前記GPSモジュールが算出した地理的位置と前記GPSモジュールに記憶された当該GPSモジュールに固有の識別符号を前記基地局に送信するともに、
前記基地局は、前記通信端末装置から受信した地理的位置及び識別符号を、前記基地局に事前に登録された地理的位置及び識別符号と比較照合して、前記受信した地理的位置及び識別符号と前記登録された地理的位置及び識別符号の差異が所定の範囲にある場合に、前記通信端末装置に対して以後の通信を許可する認証手段を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
前記所定の範囲は、地理的位置については所定の誤差を許容し、識別符号については完全一致を求めるものである
ことを特徴とする請求項5に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−159918(P2012−159918A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17685(P2011−17685)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】