説明

HHV−6またはHHV−7由来の組換えウイルスベクター、ならびにその利用

【課題】生体内での予期しないウイルスの増殖を安全かつ確実に制御し得る組換えHHV−6およびHHV−7を提供すること。
【解決手段】本発明のHHV−6由来の組換えウイルスベクターは、HHV−6ゲノムにおけるU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられている。また、本発明のHHV−7由来の組換えウイルスベクターは、HHV−7ゲノムにおけるU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組換えウイルスベクターおよびその利用に関し、より詳細には、本発明は、ヘルペスウイルス科に属するHHV−6またはHHV−7ウイルス由来の組換ウイルスベクター、ならびにその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子生物学および分子遺伝学などの研究成果の蓄積、ならびに研究に用い得る機器や手法の開発によって、生命現象に関する、より多くのかつ詳細な情報を得ることが容易になってきた。
【0003】
新たに得られた生命現象に関する情報に基づいて、医療や産業への応用を目指した研究開発が活発に行われている。例えば、遺伝子機能の解析結果に基づいて、所望の外来遺伝子を細胞や生物個体に導入するためのツールに関する研究開発がなされている。所望の外来遺伝子を細胞や生物個体に導入することによって、細胞や生物個体への有用形質導入、および細胞や生物個体における有用な遺伝子産物の産生などが可能になる。
【0004】
細胞や生物個体へ有用形質を導入する方法によって、病気に強い植物やストレス耐性植物などを得ることができる。上記有用形質導入の動物に対する利用としては、医療への応用などを挙げることができる。特に、癌、免疫疾患および糖尿病など、遺伝子の機能の欠失または変異が病因となり得る疾患を治療するための遺伝子治療用の形質導入方法は、その開発が望まれているものの1つである。
【0005】
従来の形質導入方法としては、たとえば、所望の外来遺伝子を含む配列を遊離DNAとして標的細胞または標的器官へ単に添加すること、標的細胞へDNAが取込まれるようにデザインされた特異的タンパク質と所望の外来遺伝子との複合体を標的細胞または標的器官とインキュベーションすること、リポソームまたはその他の脂質に封入された所望の外来遺伝子を標的細胞または標的器官のインキュベーションすることなどを挙げることができる。しかし、これら従来の形質導入方法は、導入効率が低い傾向があるうえに、導入された遺伝子の発現効率が低いなどの問題がある。
【0006】
現在、遺伝子治療用の形質導入方法としては、ベクターを用いて所望の外来遺伝子を標的細胞または標的器官へ導入する方法が一般的であり、この方法に用いるベクターは遺伝子治療用ベクターと呼ばれる。これまで、遺伝子治療用のベクターの候補となるのもが数多く開発されているが、導入効率、発現効率ならびに導入される細胞または器官に対する選択性などの観点から、ウイルスを利用したベクター(ウイルスベクター)が注目されている。
【0007】
ウイルスベクターは、公知のベクターの中でも、外来遺伝子をタンパク質として発現し得るように細胞へ導入することが容易なベクターである。これは、ウイルスベクターが細胞への侵入、細胞におけるタンパク質の発現、DNAの複製およびさまざまな感染の態様(増殖感染、潜伏感染、不念感染を含む)などのウイルスが本来有している機構を利用して、外来遺伝子の感染細胞への導入、およびプロモーター制御下の外来遺伝子の発現を行うためである。
【0008】
ウイルスベクターとしては、ウイルスが有する増殖に非必須な遺伝子領域を所望の外来遺伝子を用いて組み換えた組換えウイルス、および組換えウイルスベクターが挙げられる。組換えウイルスベクターは、増殖に必須な遺伝子を保持しているので、野生株と同等の宿主細胞への感染性および遺伝子を発現する機構などを有している。このため、組換えウイルスベクターは、効率的に所望の外来遺伝子を所望の細胞に導入すること、および効率的に遺伝子を発現させることができる。
【0009】
一方で、有用な組換えウイルスベクターの構築には、副作用(病原性)を抑えること、組換え可能な領域をなるべく大きく確保すること、ウイルスの細胞に対する選択性、ならびに外来遺伝子の導入効率および発現効率の向上などさまざまな点について検討する必要がある。従来の組換えウイルスベクターの課題について、ヒトに対して実際に使用された組換えウイルスベクターを例に挙げて、以下に説明する。
【0010】
レトロウイルスは、発癌性ウイルスであり、遺伝子治療に用いた時の発癌性が指摘されている。さらに、レトロウイルスベクターは、導入し得る遺伝子が小さいこと、および遺伝子を導入し得る細胞種に制限があることなどの問題点を有している。
【0011】
アデノウイルスは、ウイルスベクターとしてヒトに接種した場合、強いアレルギー反応を引き起こすことによってショック死することがある。実際、アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療によって死亡した例が報告されている。さらに、アデノウイルスベクターは、血液細胞に対する遺伝子導入の効率が低いため、使用範囲が限定されてしまう。
【0012】
アデノ随伴ウイルスは、形質導入できる遺伝子の大きさが小さい、遺伝子の発現効率が低い、およびベクターの作製が困難であるという欠点を有する。さらに、ウイルスDNAが宿主のゲノムに組み込まれてしまうので、発癌性を否定することができない。
【0013】
このように、組換えウイルスベクターに要求されるのは安全性の高さである。安全性の高い組換えウイルスベクターとして採用し得るウイルスの条件としては、病原性が低いこと、および治療法が確立されていることなどが挙げられる。病原性や治療法といった観点から、ヘルペスウイルスを用いたウイルスベクターの研究開発が行われている。
【0014】
ヘルペスウイルス科に属するウイルスの内、ヒトを自然宿主とするヘルペスウイルスとして、現在、8種類が同定されている。ヘルペスウイルスは大型のDNAウイルスであり、進化の系統樹およびゲノムの構造などに従って、α、β、γの3つの亜科に分類される。
【0015】
αヘルペスウイルスに分類されるヒト単純ヘルペスウイルス1(HSV−1)は、神経細胞において潜伏感染、再活性化を起こす神経向性のウイルスである。HSV−1は、ヒトに感染すると生涯、ウイルスゲノムが排除されることはないが、その致死性は低い。また、選択性の高い抗ヘルペス剤であるガンシクロビル(以下、GCVと称する)またはアシクロビル(以下、ACVと称する)を用いて、ウイルス増殖を抑制することができる。HSV−1は、病原性が低いこと、ウイルス増殖を制御する手段が確立されていること、および大きなゲノムを有することなどの理由から、組換えウイルスベクターへの応用を目指して研究開発が進められている。
【0016】
また、βヘルペスウイルスには、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV:ヒトヘルペスウイルス5、HHV−5)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)およびヒトヘルペスウイルス(HHV−7)が属している。このうち、HHV−6およびHHV−7は、比較的大きなゲノムを有し、病原性が低いウイルスである。さらに、T細胞やマクロファージなどの血液細胞においてよく増殖すること、マクロファージにおいて潜伏感染することなどが知られている。潜伏感染期には、宿主個体において抗体が産生されないなど、免疫反応が賦活化されないので、アレルギー反応を引き起こす可能性も低くなる。
【0017】
このような背景から、HHV−6およびHHV−7は遺伝子治療に用いるウイルスベクターとして好適に用いることができると考えられ、本発明者らはHHV−6およびHHV−7由来の組換ウイルスベクターを作製すべく、検討を重ねた。その結果、HHV−6およびHHV−7の増殖と潜伏感染のために必須ではなく、欠失しても増殖能および潜伏感染能を保持し得るゲノム領域を発見し、当該領域を組換えに用いることによって、HHV−6およびHHV−7由来の複製能および潜伏感染能を保持した組換えウイルスベクターの完成させた(特許文献1および非特許文献1を参照のこと)。
【特許文献1】WO05/021746 A1(2005年3月10日公開)
【非特許文献1】Kondo K, Nozaki H, Shimada K, Yamanishi K.,J Virol. 2003 Oct;77(19):10719−24
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、HHV−6およびHHV−7に対する有効な治療法は確立していない。このため、HHV−6またはHHV−7由来の組換えウイルスベクターを生物個体に感染させた際に、組換えウイルスが予期しないような増殖を起こした場合、ウイルスの増殖を抑制し得る確実な対応手段がない。
【0019】
HHV−6およびHHV−7に対する有効な治療法が確立していない理由としては以下の2点が挙げられる。HHV−6およびHHV−7はGCVおよびACVに対する感受性が低いので、副作用(細胞傷害性)が生じない投与量で抗ウイルス作用を得ることができない。さらに、HHV−6およびHHV−7の病原性が低いため、治療法の確立が早急に必要なウイルスとして認識されていなかった。
【0020】
GCVおよびACVは、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有しているチミジンキナーゼ(TK:thymidine kinase)によってリン酸化を受けて活性型になるプロドラッグである。活性型のGCVおよびACVは、DNAポリメラーゼを阻害すること、およびDNA鎖の伸張を止めるターミネーターとして機能することによってウイルスDNAの複製を阻害する。
【0021】
HHV−6およびHHV−7がGCVおよびACVに対して感受性が低い理由として、HHV−6およびHHV−7がTKをコードする遺伝子を有してないこと、およびTK以外にGCVおよびACVをリン酸化し得る酵素が発現しないことが挙げられる。
【0022】
一方、GCVおよびACVは、宿主細胞側のDNAポリメラーゼの阻害剤、およびDNA鎖の伸張を止めるターミネーターとしても機能し得る。つまり、GCVおよびACVは細胞傷害性を有している。TKが発現している細胞において、特に、GCVの細胞傷害性は顕著である。
【0023】
GCVおよびACVが有する細胞傷害性を利用して、腫瘍細胞を選択的に殺傷するために、腫瘍細胞にTK遺伝子を導入する研究が行われている。腫瘍細胞へのTK遺伝子の導入には、例えば、レトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターが用いられている(Takamiya Y, Short MP, Ezzeddine ZD, Moolten FL, Breakefield XO, Martuza RL., J Neurosci Res. 1992 Nov;33(3):493−503およびWills KN, Huang WM, Harris MP, Machemer T, Maneval DC, Gregory RJ.,Cancer Gene Ther. 1995 Sep;2(3):191−7を参照のこと)。腫瘍細胞を殺傷するためには、腫瘍細胞においてGCVおよびACVのリン酸化が促進されることが必要であるため、発現したTKの活性は高いほどよく、かつその発現量も多い方がよい。従来、ウイルスベクターを用いたTK遺伝子の導入は、GCVの細胞傷害性が特定の細胞において選択的に発揮されることを期待して行われることが一般的であった。
【0024】
これまで、HHV−6およびHHV−7に対して、GCVおよびACVに対する感受性を高めるためにTK遺伝子を導入するという試みはなされていない。さらに、上記のTK遺伝子を有していないウイルスにTK遺伝子を導入したウイルスベクターは、GCVの細胞傷害性を高かめることについてしか検討されていない。このため、TK遺伝子の発現によって、HHV−6およびHHV−7の増殖を効果的に抑制し得るかどうか不明であった。つまり、低濃度のGCVおよびACVの投与でHHV−6およびHHV−7の増殖を抑制し得るのか、ならびにGCVおよびACVがTKにリン酸化されることによって細胞傷害性を高めることがないのかについて不明であった。
【0025】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、生体内での予期しないウイルスの増殖を安全かつ確実に制御し得る組換えHHV−6およびHHV−7を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明のHHV−6由来の組換えウイルスベクターは、HHV−6ゲノムにおけるU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられている。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明のHHV−7由来のウイルスベクターは、HHV−7ゲノムにおけるU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられている。
【0028】
上記構成を有するHHV−6およびHHV−7由来のウイルスベクターを用いれば、抗ヘルペスウイルス剤であるGCVまたはACVを用いて2種類の該組換えウイルスベクターの生体内における増殖を抑制することができる。2種類の上記組換えウイルスベクターの増殖を抑制し得るGCVまたはACVの有効濃度は、HCMVの増殖を抑制し得るGCVの濃度、またはVZVの増殖を抑制し得るACVの濃度と比較して同等または当該濃度よりも低い。
【0029】
よって、安全かつ確実に生体内における増殖を抑制し得る組換えウイルスベクターを提供し得る。
【0030】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記チミジンキナーゼが、アルファヘルペスウイルス亜科に属するウイルスが有するキナーゼであることが好ましい。
【0031】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記チミジンキナーゼが、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが好ましい。
【0032】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記チミジンキナーゼは、配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされているポリペプチドであることが好ましい。
【0033】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記U2、U3、U4、U5、U6、U7およびU8遺伝子、ならびにU24およびU25遺伝子は、配列番号3で表されるHHV−6ゲノムのヌクレオチド番号9041〜17446ならびに36250〜37775に存在している。
【0034】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記U3、U4、U5、U6およびU7遺伝子の一部は、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドによって組み換えられていることが好ましい。
【0035】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記U2、U3、U4、U7およびU8遺伝子、ならびにU24、U24aおよびU25遺伝子は、配列番号4で表されるHHV−6ゲノムのヌクレオチド番号10558〜18483ならびに34744〜36118に存在している。
【0036】
本発明の組換えウイルスベクターにおいて、上記U3、U4およびU7遺伝子の一部は、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドによって組み換えられていることが好ましい。
【0037】
本発明に係るHHV−6由来の組換えウイルスベクターは、HHV−6ゲノムにおけるU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドによって組み換えられている。
【0038】
本発明に係るHHV−7由来の組換えウイルスベクターは、HHV−7ゲノムにおけるU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドによって組み換えられている。
【0039】
上記構成を有するHHV−6およびHHV−7由来の組換えウイルスベクターは、TK遺伝子を選択マーカーとして用いることができる。よって、上記組換えウイルスベクターは、医学および生物学研究用の遺伝子導入ベクターとして用いることができる。
【0040】
本発明に係る形質転換方法は、上記組換えウイルスベクターを用いて哺乳類の細胞を形質転換する工程を包含し、かつ該哺乳類が、ヒト、ヒト以外の霊長類、またはHHV−6もしくはHHV−7が感染可能な宿主であってもよい。
【0041】
本発明に係る形質転換方法において、上記細胞は、T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、アストロサイト、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、樹状細胞またはナチュラルキラー細胞であってもよい。
【0042】
本発明に係る形質転換細胞は、上記形質転換方法によって形質転換される。
【0043】
本発明に係る遺伝子治療方法は、上記組換えウイルスベクターを個体へ投与する工程を包含してもいてよい。
【0044】
本発明に係る遺伝子治療方法は、上記形質転換細胞を個体へ投与する工程を包含していてもよい。
【0045】
本発明に係る遺伝子治療方法は、GCVまたはACVを投与することによって個体における組換えウイルスベクターの増殖を制御する工程を、さらに包含してもよい。
【0046】
本発明に係る遺伝子治療方法は、易感染性細胞に対するヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染を予防すること、および/または癌を免疫の賦活化によって治療する方法であってもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係るHHV−6由来の組換えウイルスベクターは、上述の課題を解決するために、HHV−6ゲノムにおけるU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科のウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられている。
【0048】
また、本発明に係るHHV−7由来の組換えウイルスベクターは、HHV−7ゲノムにおけるU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科のウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられている。
【0049】
上記構成を有するHHV−6およびHHV−7由来のウイルスベクターを用いることによって、抗ヘルペスウイルス剤であるGCVまたはACVを用いて、2種類の該組換えウイルスベクターの生体における増殖を抑制し得る。2種類の上記組換えウイルスベクターの増殖を抑制し得るGCVまたはACVの有効濃度は、生体内のHCMVまたは水痘帯状疱疹ウイルスの増殖を抑制し得ることが臨床的に実証されている濃度と同等または当該濃度よりも低い。
【0050】
よって、組換えウイルスベクターの生体内における増殖を、安全かつ確実に抑制し得るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明は、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードする遺伝子を組み込むことによって、抗ヘルペスウイルス剤(GCVおよびACVなど)に対する感受性を向上させたHHV−6またはHHV−7由来の組換えウイルスベクターを提供する。本発明に係る組換えウイルスベクターを用いれば、臨床的に実証されている有効濃度のGCVおよびACVを感染細胞に作用させることによって組換えウイルスベクターの増殖を抑制することができるため、組換えウイルスベクターを用いた遺伝子治療の安全性を高めることができる。
【0052】
一つの局面において、本発明は上記組換えウイルスベクターを用いて形質転換した細胞、および細胞の形質転換方法を提供する。上記組換えウイルスベクターを所望の細胞に感染させることによって形質転換した細胞を得ることができる。上記組換えウイルスベクターを用いた形質転換は、インビボで行われても、インビトロで行われてもよい。インビボで形質転換を行う場合、遺伝子治療を施すことを所望する個体内で所望の細胞を形質転換してもよく、遺伝子治療を施すことを所望する個体とは別の個体内で所望の細胞を形質転換してよい。また、形質転換した細胞を、一度生体外に取り出してもよい。
【0053】
他の局面において、本発明は、上記組換えウイルスベクターまたは形質転換した細胞を用いた遺伝子治療方法を提供する。本発明に係る遺伝子治療方法は、組換えウイルスベクターの予期せぬ増殖を抑制するためにGCVまたはACVを治療対象へ投与する工程を包含してもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「HHV−6」とは、ヒトヘルペスウイルス6(human herpesvirus6)のvariantAおよびBを意味している。
【0055】
本明細書で使用される場合、「HHV−7」とは、ヒトヘルペスウイルス6(human herpesvirus7)を意味している。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼ」とは、プロドラッグであるヌクレオシドアナログ(GCVおよびACVなど)を1リン酸化し得るチミジンキナーゼを意図している。
【0057】
なお、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼ、およびプロドラッグであるヌクレオシドアナログを1リン酸化し得るチミジンキナーゼを、特に断りがない場合、以下において単に「TK(チミジンキナーゼ)」と称し、TKをコードするポリヌクレオチドを、特に断りがない場合、以下において単に「TK遺伝子」と称する。
【0058】
上記プロドラッグであるヌクレオシドアナログとしては、GCVおよびACVの他に、ペンシクロビル、バラシクロビルなどを挙げることができ、臨床的に安全性および有効性が実証されているものであれば本発明に採用され得る。臨床的に安全性および有効性が実証されているとは、ウイルスの増殖を抑制し、かつ副作用(宿主細胞に対する傷害性)を生じないような薬剤の好ましい濃度、投与形態および剤形が経験的に確認されていることを意味している。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」とは、ウイルスが本来有する感染増殖機構を利用して、外来性の遺伝子を所望の細胞へ導入し、所望の細胞にて該遺伝子を発現させるためのウイルスであり、ゲノムに変異が導入されたウイルスを意味している。
【0060】
ウイルスが本来有する感染増殖機構とは、細胞への侵入、遺伝子の発現、ウイルスゲノムの複製、ウイルス粒子の産生、およびウイルス粒子の細胞外への放出などである。また、細胞に感染したウイルスベクターは、感染細胞において増殖感染、潜伏感染および不念感染のいずれかの態様を示す。
【0061】
増殖感染とは、細胞への侵入後、遺伝子の発現、ウイルスゲノムの複製、ウイルス粒子の産生、およびウイルス粒子の細胞外への放出が起こる増殖性の感染であり、溶解感染とも呼ばれる。
【0062】
潜伏感染とは、細胞への侵入後、特定遺伝子の発現のみが観察され、ウイルスゲノムの複製が行われない感染態様を意味している。宿主の免疫系が異物として認識するためのウイルス粒子やウイルスタンパク質の産生が起こらないので、潜伏感染したウイルスのゲノムは排除されることはない。潜伏感染は、外部からの刺激を受けて再活性化することによって、増殖感染に移行し得る。
【0063】
不念感染とは、細胞への吸着および侵入は可能であるが、遺伝子の発現、ウイルスゲノムの複製および/またはウイルス粒子の産生を正常に行うことができない不完全なウイルス粒子による感染である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ウイルスゲノム」とは、1つのウイルス粒子にパッケージングされているウイルスDNA全体を意味しており、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子の転写を促進するプロモーター配列、パッケージングのための切断領域など、通常野生体のウイルス粒子が有している1セットの塩基配列を意味している。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ウイルスDNA」とは、単に、ウイルス由来のDNAを意味しており、その大きさ、構成、機能などを特に限定するものではない。
【0066】
本明細書で使用される場合、「組換えウイルスベクター」とは、ウイルスゲノムの一部に所望のポリヌクレオチドを組み込んだウイルスであり、該所望のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドを生体内の所望の細胞にて発現し得るウイルスを意味している。
【0067】
上記「組換え」とは、ウイルスが本来有するゲノムの一部と所望のポリヌクレオチドとを置換すること、またはウイルスが本来有するゲノムに所望のポリヌクレオチドを挿入することを意味している。また、「組み込む」とは、組換えを行うことを意味している。
【0068】
本明細書において用いる場合、「外来性の遺伝子」とは、HHV−6およびHHV−7のゲノムが本来有していない遺伝子またはポリヌクレオチドを意味している。
【0069】
本明細書において用いる場合、「遺伝子治療」とは、外来性の遺伝子を所望の細胞に導入することによって細胞が形質転換されることを利用した治療を意味しており、インビトロで細胞に遺伝子を導入することによって形質転換された細胞を作製し、当該細胞を生体内に投与する狭義の細胞治療や、個体の細胞へのウイルス感染によって産生される、ウイルス由来の産物(ウイルスタンパク質、ウイルスDNA、ウイルス粒子など)によって宿主細胞の機能が修飾(形質転換)されることを期待する狭義のウイルス治療をも包含する。
【0070】
なお、本明細書において、本発明に係る配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、HSV−1が有するTK(以下、HSV−1 TKまたは単にTKと称する)と交換可能に使用され得る、本発明に係る配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、HSV−1が有するTK 遺伝子(以下、HSV−1 TK遺伝子または単にTK遺伝子と称する)と交換可能に使用され得る。
【0071】
(I)TK遺伝子を組み込んだウイルスベクターの作製
本発明に係る、HHV−6およびHHV−7のゲノムにTK遺伝子を組み込んだウイルスベクターの作製方法について以下に説明する。
【0072】
(I−1)本発明で用いられるTK遺伝子
本発明で用いられるTK遺伝子とは、ヌクレオシドアナログをリン酸化し得る酵素であって、宿主細胞においてチミジンを1リン酸化する酵素としての機能を有するタンパク質をコードする遺伝子であればよい。すなわち、上記タンパク質とはTKである。
【0073】
本発明で用いられるTK遺伝子がコードするTKとしては、ヌクレオシドアナログをリン酸化し得るように、宿主細胞においてチミジンを1リン酸化する酵素としての機能を有していればよい。本発明に係るTKは、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するTKであり、好ましくは、アルファヘルペス亜科に属するウイルスが有するTKであり、さらに好ましくは、HSV−1が有するTKであるUL23遺伝子産物(以下、HSV−1 TKと称する)である。
【0074】
なお、HSV−1 TKは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、HSV−1 TK遺伝子は、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0075】
ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するTKとしては、例えば、単純ヘルペスウイルス2(HSV−2)が有するUL23遺伝子産物、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が有するORF36の遺伝子産物などが挙げられる。
【0076】
さらに、宿主細胞においてチミジンを1リン酸化する酵素としての機能を有するTKには以下のようなものを含む。例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、上記機能を有していれば本発明にて用いることができる。なお、上記の「配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列」における「1個または数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。
【0077】
また、上記TKとしては、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、50%以上、好ましくは60%または70%以上の相同性を有するタンパク質であって、かつ、宿主細胞においてチミジンを1リン酸化する酵素としての機能を有するタンパク質も含まれる。なお、ここで「相同性」とは、アミノ酸配列中に占める同じ配列の割合であり、この値が高いほど両者は近縁であるといえる。
【0078】
すなわち、本発明に係るTKには、以上において例示した複数のTKが有するそれぞれのアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、ならびに複数のTKが有するそれぞれのアミノ酸配列と相同性を有し、かつ宿主細胞においてチミジンを1リン酸化する酵素としての機能を有するタンパク質が含まれる。
【0079】
よって、本発明に係る組換えウイルスベクターの作製に用い得るTK遺伝子は、遺伝暗号に基づいて、上記TKのアミノ酸配列に対応するものであればよい。例えば、ヘルペスウイルス科に属するウイルスのゲノムが有するTK遺伝子であり、好ましくは、アルファヘルペス亜科に属するウイルスのゲノムが有するTK遺伝子であり、さらに好ましくは、HSV−1のゲノムが有するHSV−1 TK遺伝子である。
【0080】
アルファヘルペス亜科に属するウイルスのゲノムが有するTK遺伝子としては、例えば、HSV−2が有するUL23遺伝子、VZVのゲノムが有するORF36遺伝子などが挙げられる。
【0081】
また、本発明で用いられるTK遺伝子は、上記の例に限定されず、配列番号2に示される塩基配列と相同性を有する遺伝子であってもよい。具体的には、例えば、配列番号2に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、上記転写因子をコードする遺伝子等を挙げることができる。なお、ここでストリンジェントな条件でハイブリダイズするとは、60℃で2×SSC洗浄条件下にて結合することを意味する。
【0082】
上記ハイブリダイゼーションは、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる(ハイブリダイズしがたくなる)。
【0083】
上記TK遺伝子を取得する方法は特に限定されず、従来公知の方法により、ヘルペスウイルス科に属するウイルスから単離することができる。例えば、既知のTK遺伝子の塩基配列に基づき作製したプライマー対が用いられ得る。このプライマー対を用いて、ウイルスのcDNA又はゲノミックDNAを鋳型としてPCRを行うこと等により上記遺伝子を得ることができる。また、上記TKをコードする遺伝子は、従来公知の方法により化学合成して得ることもできる。
【0084】
ここで、HCMVはTK遺伝子を有していないが、GCVに対する感受性が高い。HCMVがGCVに対する感受性が高いのは、HCMVがUL97遺伝子を有しているからである。UL97遺伝子産物が宿主細胞のヌクレオチドキナーゼ(チミジンキナーゼなど)をリン酸化することによって、該ヌクレオチドキナーゼを活性化する。活性化した上記ヌクレオチドキナーゼが、GCVを1リン酸化することが知られている。このため、HCMVのUL97遺伝子はTK遺伝子ではないが、宿主細胞においてヌクレオシドアナログの1リン酸化を引き起こす遺伝子産物をコードする遺伝子として、本発明に係るTK遺伝子の代わりにUL97遺伝子を用いることができる。
【0085】
(I−2)TK遺伝子とウイルスゲノムとの組換え
ウイルスゲノムへTK遺伝子を組み込むための方法としては、TK遺伝子を組み込んだウイルスゲノムを有するウイルスベクター(以下、単に「組換えウイルスベクターと称する」)が感染細胞において、TKを発現し得るようTK遺伝子をウイルスゲノムに組み込む方法であれば特に限定されない。
【0086】
ウイルスゲノムへTK遺伝子を組み込むための方法としては、例えば、相同組換え法を挙げることができる。
【0087】
相同組換え法を用いたTK遺伝子とウイルスゲノムの組換えは、以下の工程:ウイルスゲノムに組み込むためのTK遺伝子を含む配列を作製する工程;作製した該TK遺伝子を含む配列を挿入したベクターを作製する工程;該ベクターを細胞に導入する工程;該ベクターを導入した細胞にウイルスを感染させる工程;および組換えウイルスを選抜する工程を包含する。
【0088】
(I−2−1)ウイルスゲノムに組み込むためのTK遺伝子を含む配列を作製する工程
ウイルスゲノムに組み込むためのTK遺伝子を含む配列は、該配列の両端にウイルスゲノムと相同性を有する配列と、TK遺伝子の発現を促進するプロモーターと、TKをコードする遺伝子とを備えていればよいが、ウイルスの選抜を行うために、抗生物質耐性遺伝子などのマーカー遺伝子と、該マーカー遺伝子の発現を促進するプロモーターとをさらに備えていることが好ましい。
【0089】
上記配列の両端に配置するウイルスゲノムと相同性を有する配列は、組換えを行うウイルスゲノムの領域を挟みこむように設定すればよい。組換えを行うウイルスゲノムの領域は、欠失または組換えによってウイルスの増殖能および潜伏感染能が低下しないような領域から選択すればよい。HHV−6のゲノムの内、組換え領域として選択し得る領域としては、例えば、増殖に非必須な遺伝子からなるU2−U8遺伝子クラスターまたはU24−U25遺伝子クラスターを挙げることができる。また、HHV−7のゲノムの内、組換え領域として選択し得る領域としては、例えば、増殖に非必須な遺伝子からなるU2−U8遺伝子クラスターまたはU24−U25遺伝子クラスターを挙げることができる。
【0090】
HHV−6のゲノムにおける、上記U2−U8遺伝子クラスターはU2、U3、U4、U5、U6、U7およびU8遺伝子の7つの遺伝子から構成される遺伝子クラスターであり、上記U24−U25遺伝子クラスターは、U24およびU25遺伝子から構成される遺伝子クラスターである。また、HHV−7のゲノムにおける、上記U2−U8遺伝子クラスターはU2、U3、U4、U7およびU8遺伝子の5つの遺伝子から構成される遺伝子クラスターであり、上記U24−U25遺伝子クラスターは、U24、U24aおよびU25遺伝子から構成される遺伝子クラスターである。なお、HHV−7のU7遺伝子は、エキソン1およびエキソン2を含んでおり、それぞれをU5およびU7と呼称することもある。
【0091】
上記配列の両端に配置するウイルスゲノムと相同性を有する配列の塩基数は、相同組換えを起こすために十分な塩基数であれば特に制限されないが、例えば、500bp、好ましくは700bp、さらに好ましくは1000bpである。
【0092】
TK遺伝子の発現を促進するプロモーターとしては、組換えウイルスベクターが感染した細胞において、TK遺伝子の発現を促進し得るプロモーターであれば特に制限されないが、ウイルス由来のプロモーターが好ましく、ヘルペスウイルス由来のプロモーターがより好ましく、HCMVの前初期遺伝子の発現を促進するCMVプロモーターが特に好ましい。
【0093】
組換えウイルスの選抜のためのマーカー遺伝子としては、相同組換えを起こしたウイルスを選抜する指標になり得るものであれば特に制限されず、選抜方法として採用した方法に応じて適宜変更すればよい。上記マーカー遺伝子としては、例えば、抗生物質耐性遺伝子、酵素反応を利用して発色させることができるLacZ遺伝子、特定の励起光によって蛍光を発する蛍光タンパク質をコードする遺伝子を採用し得る。
【0094】
上記マーカー遺伝子の発現を促進するプロモーターとしては、TK遺伝子の発現を促進するプロモーターと異なるプロモーターを採用することが好ましいが、マーカー遺伝子の発現を促進し得るプロモーターであれば特に制限されない。上記マーカー遺伝子の発現を促進するプロモーターとしては、例えば、ウイルス由来のプロモーターが好ましく、CMVプロモーターと組み合わせる場合、Simian Virus(SV40)のSV40プロモーターが好ましい。
【0095】
HHV−6およびHHV−7のゲノムにおける、組換えによって増殖能および潜伏感染能が低下しないような領域の選択、および該領域に含まれる遺伝子の詳細については、特許文献1および非特許文献1を参照のこと。
【0096】
(I−2−2)TK遺伝子を含む配列を挿入したベクターを作製する工程
上記TK遺伝子を含む配列を作製する工程において作製したTK遺伝子を含む配列を挿入するためのベクターとしては、従来公知の種々のベクターを採用し得る。例えば、プラスミド、ファージ、またはコスミド等が用いられ得、組換えを起こさせるウイルスおよびベクターを導入する細胞に応じて適宜選択され得る。例えば、pUC18およびpHSG398などのpUC系ベクターが挙げられ得る。特に、HHV−6またはHHV−7の組換えを臍帯血T細胞など免疫系細胞において行う場合、クローニングに用いることができる制限酵素部位を多く有しているLITMUS 28i(New England Biolabs社製)を用いることが好ましい。
【0097】
上記ベクターへのTK遺伝子を含む配列の挿入は、制限酵素処理とリガーゼを用いる方法など、従来公知の種々の方法を用いて行うことができる。
【0098】
(I−2−3)ベクターを細胞に導入する工程
TK遺伝子を含む配列を挿入したベクターを細胞に導入する方法としては、細胞にベクターを導入し得る方法であれば特に制限されず、従来公知の方法から、用いる細胞に応じて適宜選択すればよい。採用し得る従来公知の方法としては、エレクトロポレーション法、リポフェクトアミンなどの脂質にベクターを封入して細胞に導入する方法、ジメチルスルフォキシド(dimethylsulfoxide)を用いた細胞へのDNAの導入方法などを挙げることができる。
【0099】
(I−2−4)ベクターを導入した細胞にウイルスを感染させる工程
ベクターを導入した細胞にウイルスを感染させる方法は、ベクターを導入した細胞とウイルスとを共培養することによってウイルスを細胞に吸着させる方法であればよく、感染させる細胞に応じて従来公知の方法から適宜選択すればよい。HHV−6またはHHV−7を細胞に感染させる方法としては、免疫系の培養細胞など浮遊細胞への感染させる場合、遠心法などを採用することができる。
【0100】
(I−2−5)組換えウイルスを選抜する工程
組換えウイルスを選抜する方法は、TK遺伝子を含む配列に含まれるマーカー遺伝子に応じて適宜選択すればよい。例えば、マーカー遺伝子として抗生物質に対する耐性遺伝子を用いた場合、組換えウイルスを含むウイルスを該抗生物質存在下において増殖させればよい。本発明に用い得る抗生物質としては、ピューロマイシン(pyuromycine)、G418(ネオマイシン、neomycine)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)などを挙げることができる。さらに、マーカー遺伝子として蛍光タンパク質を発現する遺伝子を選択した場合、組換えウイルスを含むウイルスを細胞に感染させることによってプラークを形成させた後、該蛍光タンパク質に応じた励起光を照射して、蛍光を発するプラークを選抜すればよい。上記蛍光タンパク質を発現する遺伝子は、従来公知の遺伝子から選択すればよく、例えば、GFP(green fluorescence protein)、CFP(cyan fluorescence protein)やYFP(yellow fluorescence protein)などの蛍光タンパク質を発現する遺伝子を用いることができる。
【0101】
採用した組換えウイルスを選抜する方法を繰り返し行うことによって、TK遺伝子がゲノムに組み込まれた組換えウイルスのみを得ることができる。
【0102】
なお、組換えウイルスを選抜する工程の後に、選抜したウイルスのゲノムにTK遺伝子が組み込まれているかを確認する工程を含んでいてもよい。TK遺伝子がウイルスのゲノムに組み込まれているかを確認する方法としては、例えば、PCR法による確認やシークエンサーを用いた確認方法などを挙げることができる。
【0103】
以上に説明した方法を用いることによって、HHV−6およびHHV−7のゲノムにTK遺伝子を組み込んだウイルスベクター(以下において、それぞれTK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7と称する)を作製することができる。なお、上記のウイルスベクターの作製方法に対して、必要に応じて適工程を追加すること、および/または工程を変更することは、当業者であれば容易に想到し得る。
【0104】
本実施例においては、相同組換え法を用いたウイルスベクターの作製方法について説明したが、所望の遺伝子とウイルスゲノムの所望の領域との組換えを行うことができる方法であれば、本発明に係るTK組換えウイルスベクターの作製方法として採用し得る。
【0105】
(II)TK遺伝子を組み込んだウイルスベクターの有用性および利用
(I)において作製したTK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7を遺伝子治療用のベクターとして用いれば、GCVおよびACVといった臨床において実際に使用されている抗ヘルペス剤を用いて生体内におけるウイルスベクターの予期せぬ増殖を抑制することができる。後述の実施例で示すように、TK組換えHHV−6およびTK組換えHHV−7のGCVおよびACVに対する感受性は、HCMVのGCVに対する感受性、およびVZVのACVに対する感受性と比較して同等以上である。すなわち、本発明に係る組換えウイルスベクターは、安全性の高い遺伝子治療用のベクターとして用いることができる。
【0106】
TK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7を用いれば、所望の外来性のポリヌクレオチドを所望の細胞に導入することができる。
【0107】
上記外来性のポリヌクレオチドはDNAおよび/またはRNAであり得る。上記外来性のポリヌクレオチドとしては、bacterial artificial chromosome (BAC)、リボザイムおよびinterference RNAなどを挙げることができる。上記外来性のポリヌクレオチドを本発明に係るウイルスベクターに組み込む方法については、TK遺伝子とウイルスゲノムとの組換えと同様に行うことができるので、繰り返し説明しない((I)および特許文献1を参照のこと)。また、上記外来性のポリヌクレオチドとして、サイトカイン、免疫学的補助刺激分子、シグナル伝達分子、酵素または化学誘引物質をコードしているポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0108】
TK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7を用いて外来性の遺伝子を導入し得る細胞としては哺乳類を挙げることができ、哺乳類のなかでも、ヒト、ヒト以外の霊長類、およびHHV−6もしくはHHV−7が感染可能な宿主を挙げることができる。TK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7を用いて外来性の遺伝子を導入し得る細胞の種類は、血液細胞、免疫細胞、上皮細胞などであり、具体的には、T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、アストロサイト、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、樹状細胞およびナチュラルキラー細胞などである。特に、本発明に係る組換えウイルスベクターは血液細胞や免疫細胞などに対して導入効率が高い。血液細胞や免疫細胞などに対して高い導入効率を有する他のウイルスベクターは、生体内において重大な副作用を引き起こすものが多い。本発明に係る組換えウイルスベクターは、GCVまたはACVなどの抗ヘルペス剤を用いた増殖の制御が可能であるため、安全性が高く、かつ血液細胞や免疫細胞などに対する導入効率の高いウイルスベクターであるといえる。
【0109】
TK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7を用いて所望の外来性のポリヌクレオチドが導入された細胞は、組み込んだポリヌクレオチドに含まれる遺伝子などの発現によって形質転換される。すなわち、本発明に係る組換えウイルスベクターを用いて、形質転換細胞を作製することができる。また、本発明に係る組換えウイルスベクターを用いて作製した形質転換細胞を、生体内に投与することによって遺伝子治療を行うことができる。
【0110】
さらに、本発明の組換えウイルスベクターは、感染細胞においてTK遺伝子を発現することができるので、(I−2−5)において説明したマーカー遺伝子としてTK遺伝子を用いることができる。例えば、TK組換えHHV−6またはTK組換えHHV−7のゲノムの内、TK遺伝子を含む領域と所望のポリヌクレオチドとの組換えを行う。組換えウイルスを選抜するために、得られたウイルスをGCVまたはACV存在下において増殖させる。組換えが起こったウイルスは、GCVまたはACVに対する感受性が低いため、組換えが起こらなかったウイルスと比較して増殖が早い。つまり、本発明に係る組換えウイルスベクターは、組換えウイルスの選抜を容易に行うことができるベクターとして利用し得る。
【0111】
なお、外来性のポリヌクレオチドを組み込んだ組換えウイルスはGCVまたはACVに対する感受性が低いため、遺伝子治療用に用いるには安全性に問題がある。このため、TK遺伝子を選抜用のマーカー遺伝子として用いた場合、医学および生物学における研究用の遺伝子導入用ベクターして用いることが好ましい。
【0112】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0113】
また、本明細書中に記載された特許文献および非特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0114】
〔実施例1:TK発現細胞の作製〕
GCVまたはACV存在下におけるヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)および7(HHV−7)の増殖能に対するHSV−1 TKの影響を調べるために、HSV−1 TK(以下、TKと称する)を恒常的に発現する細胞を以下に示す手順によって作製した。
【0115】
HSV−1 TK遺伝子(以下、TK遺伝子と称する)を含むポリヌクレオチドをPCR法によって増幅するために表1に示すプライマーを設計した。
【0116】
【表1】

【0117】
プライマーForwardおよびプライマーReverseを用い、HSV−1の臨床分離株(MH−TK(+))のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。DNAポリメラーゼとしてKOD plus(TOYOBO)を用いた。以下の条件にてPCRを行った:変性反応94℃で2分間;変性反応94℃で30秒間、アニール反応60℃で30秒間、および伸長反応68℃で2分間を25サイクル;伸張反応68℃で1分間。Bgl IIおよびXho Iで処理することによって、PCRの増幅産物をプライマーForwardおよびプライマーReverseに含まれる制限酵素サイトで切断した。制限酵素で処理した上記増幅産物をLITMUS 28iに挿入した。LITMUS 28iに挿入した上記増幅産物をシークエンサーにかけることによって、該増幅産物に含まれる塩基配列がTK遺伝子(配列番号2)の塩基配列と一致していることを確認した。
【0118】
TK遺伝子を含むポリヌクレオチドを制限酵素BglIIおよびXhoIを用いて消化した。レトロウイルスベクターpQCXIP(CLONTECH)を、同様に制限酵素BglIIおよびXhoIを用いて消化した。TK遺伝子を含むポリヌクレオチドおよびpQCXIPの制限酵素処理断片を混合し、市販のリガーゼを用いてライゲーション反応を行った。これによって、pQCXIPへTK遺伝子を挿入した。
【0119】
TK遺伝子を挿入したpQCXIPを、リン酸カルシウム法によってレトロウイルスベクターのパッケージング細胞であるGP2(Invitorogen社)へ導入した。このGP2細胞から、TK遺伝子を挿入したpQCXIPがパッケージングされた感染性粒子を得た。
【0120】
TK遺伝子を挿入したpQCXIPがパッケージングされた感染性粒子を、MT−4細胞(HHV−6の標的細胞)とSupT1細胞(HHV−7の標的細胞)とのそれぞれに感染させた。上記感染性粒子に感染したMT−4細胞およびSupT1細胞のそれぞれを、10%ウシ胎児血清およびpuromycin (5ng/ml)を含むRPMI 1640培地を用いて培養した。TK遺伝子を挿入したpQCXIPは、puromycin耐性遺伝子を有しているので、puromycinを含む培地を用いることによって、TK遺伝子を挿入したpQCXIPがパッケージングされた感染性粒子に感染した細胞を選択的に培養することができる。これによって、TKを恒常的に発現するMT−4細胞およびSupT1細胞を得た。
【0121】
〔実施例2:TK遺伝子を有する組換えHHV−6の作製〕
HHV−6にTK遺伝子を組み込むことによって、HHV−6のGCVおよびACVに対する感受性の変化を調べるために、TK遺伝子を有する組換えHHV−6を作製した。
【0122】
TK遺伝子を有する組換えHHV−6の作製の手順について図1を参照して以下に説明する。図1はHHV−6のゲノム構造を示す模式図であり(上段)、相同組換えに用いたTK遺伝子を含む組換え配列の構造を示す模式図である(下段)。
【0123】
図1に示すように、TK遺伝子を含む組換え配列と相同組換えを起こさせるHHV−6ゲノムの遺伝子領域として、U2〜U8遺伝子領域を選択した。この選択は、上記U2〜U8遺伝子領域の欠失または組換えを行ったHHV−6の変異体が、野生体と同様の増殖能および感染の態様(潜伏感染が確立すること、および復帰感染を起こすことなど)を有しているという報告に基づいている(特許文献1および非特許文献2を参照のこと)。
【0124】
(TK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドの構築)
上記U2〜U8遺伝子領域と組換えを起こさせるためのTK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドの構造およびその構築方法について説明する。
【0125】
TK遺伝子を含む組換え配列を、TK遺伝子を含む遺伝子カセットの両端に上記U2遺伝子領域の約1kbpの断片とU8遺伝子の約1kbpの断片とを挿入することによって作製した。TK遺伝子を含む遺伝子カセットは、以下の構成:ヒトサイトメガロウイルスの主要な前初期エンハンサー−プロモーター(MIEP);MIEPの制御下にある、増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein:EGFP)(配列番号8)とTK(配列番号1)との融合タンパク質を発現する遺伝子(EGFP−TK遺伝子);SV40初期プロモーター;およびSV40初期プロモーターの制御下にあるピューロマイシン耐性遺伝子、を有する遺伝子カセットである。
【0126】
TK遺伝子を含む遺伝子カセットの内、MIEPおよびEGFP−TK遺伝子の作製にはpEGFP−C2(CLONTECH)を用いた。実施例1と同様にTK遺伝子を含むポリヌクレオチドをPCRによって増幅した後、TK遺伝子をベクターにクローニングした。TK遺伝子をクローニングしたベクターをBgl IIおよびXho Iで処理した。Bgl IIおよびSal Iで処理した、pEGFP−C1のEGFP遺伝子(配列番号7)の3’末端側にTK遺伝子を挿入した。これによって、N末端側にEGFPを、C末端側にTKをコードするEGFP−TK遺伝子のopen reading frame(ORF)を作製した。TK遺伝子の翻訳開始配列(Kozak sequence)であるAUG、およびEGFP遺伝子の終止コドンは除去されている。pEGFP−C2のヌクレオチド番号8〜1640の配列、および挿入したTK遺伝子を、MIEPおよびMIEP制御下にあるEGFP−TK遺伝子として用いた。pEGFP−C2のPstIサイトを含むマルチクローニングサイトは除去されている。
【0127】
TK遺伝子を含む遺伝子カセットのピューロマイシン−N−アセチル−転移酵素遺伝子(pac)およびSV40前初期プロモーターとして、pPUR(CLONTECH)のヌクレオチド番号−408〜1392を用いた。
【0128】
U2遺伝子は、プライマーU2 XbaI(配列番号9)とU2 AflII(配列番号10)とを用いてPCRによって増幅した。U8遺伝子は、U8 BamHI(配列番号11)とU8 EcoRI(配列番号12)とを用いてPCRによって増幅した。TK遺伝子を含む遺伝子カセットを、増幅したU2遺伝子およびU8遺伝子の間に挟みこむことによって、TK遺伝子を含む組換え配列を作製した。
【0129】
作製したTK遺伝子を含む組換え配列をマルチクローニングサイトに改変を加えたLITMUS 28iに挿入することによって、TK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドを構築した。
【0130】
(HHV−6ゲノムの組換え、およびTK遺伝子を有する組換えHHV−6の選択)
エレクトロポレーション法を用いてTK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドを、フィトヘムアグルチニン(PHA:phytohemagglutinin)で刺激した臍帯血由来のT細胞に導入した。上記プラスミドの臍帯血由来のT細胞への導入は、Nucleofector TM electroporator(Amaxa Biosystem、ドイツ)を用いて、推奨されるプロトコルに従って以下のように行った。
【0131】
PHA刺激した臍帯血由来のT細胞5×10個、上記プラスミド5μgおよびT細胞用Nucleofector(TM)溶液100μgを混和した。Nucleofector TM electroporatorを用いて、プログラムU−14の条件で混和した溶液をエレクトロポレーションした。
【0132】
6時間後、上記プラスミドを導入した細胞に、遠心法を用いて感染多重度(MOI:multiplicity of infection)0.5のHHV−6 variant B(HST株)を感染させた。感染T細胞を、10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640培地(すべての実施例において、説明の便宜上、上記組成を有する培地を単に「培地」と呼ぶ)で3日間培養した。培養後、感染細胞を凍結させることによって組換えウイルスのストックを得た。
【0133】
組換ウイルスを選択的に増やすために、以下のようにウイルスの継代を行った。PHAで刺激した臍帯血由来のT細胞に上記組換えウイルスのストックを感染させ、培地で1日間培養した。7.5μg/mlピューロマイシンをさらに含む培地で、さらに1日間培養した。ピューロマイシンをさらに含む培地を除去し、感染細胞を培地で洗浄した。洗浄した感染細胞を3日間培養した。感染細胞を凍結させることによって新たな組換えウイルスのストックを得た。
【0134】
上記ウイルスの継代を5回行うことによって、組換えウイルスの選択を行った。96穴のプレートで培養した臍帯血由来のT細胞を用いた限界希釈培養法によって、選択した組換えウイルス(TK遺伝子を有する組換えHHV−6)をクローン化した。
【0135】
PCR法を用いてクローン化した組換えウイルスのゲノムDNAにTK遺伝子を含む遺伝子カセットが挿入されていることを確認した(図示せず)。
【0136】
〔実施例3:HSV−1 TK存在下におけるHHV−6の増殖に対するGCVおよびACVの効果〕
GCVおよびACVのHSV−1 TK存在下におけるHHV−6の増殖に対する影響を比較するために、GCVまたはACV存在下において、TK組換えHHV−6を臍帯血由来のT細胞に、HHV−6野生株(HST株)を臍帯血由来のT細胞、MT−4細胞およびTK発現MT−4細胞のそれぞれに感染させ、一段増殖後の培養上清のウイルス力価を測定した。
【0137】
GCVに対するウイルスの増殖能への影響を調べるために、0、0.33、1、3.3、10および33μmol/l(μM)の濃度のGCVを含む6種類の培地を、前培養およびウイルス感染後の培養に用いた。ACVに対するウイルスの増殖能への影響を調べるために、0、1、3.3、10、33および100μMの濃度のACVを含む6種類の培地を、前培養およびウイルス感染後の培養に用いた。薬剤のそれぞれは10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地に添加しており、前培養および感染後に用いた培地中の薬剤の濃度は同一である。
【0138】
臍帯血由来のT細胞、MT−4細胞およびTK発現MT−4細胞は、ウイルスに感染させる前に、薬剤(GCVまたはACV)を含む培地を用いて前培養を行った。1×10個の細胞にMOI0.1のウイルス液を加え、遠心法を用いてウイルスを感染させた(37℃、3000rpm、30分間)。上述のようにウイルスの感染を行うことによって実質的なMOIが1以上になる。この結果、ほとんど全ての細胞がウイルスに感染した。
【0139】
ウイルスを感染させた後、RPMI 1640培地を用いて感染細胞を洗浄することによって、非感染細胞を取り除いた。前培養と同じ薬剤濃度の培地を用い、5%CO条件下で感染細胞を培養した。感染後の培養には6穴プレートを用い、1穴当たり2mlの培地を加えた。感染2日後、一段増殖後のウイルスを含む培養上清を回収した。
【0140】
TK組換えHHV−6を臍帯血由来のT細胞に、臍帯血由来のT細胞において増殖させたHST株を臍帯血由来のT細胞に、TK発現MT−4細胞において増殖させたHST株をMT−4細胞に、MT−4細胞において増殖させたHST株をMT−4細胞に、それぞれ接種した。接種から1時間、37℃で細胞にウイルスを吸着させた。10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地を用いて、5%CO条件下で36時間、感染細胞を培養した。培養には6穴プレートを用いた。培養後、HST株感染細胞のそれぞれの数を、HHV−6に特異的な抗体を用いた間接蛍光抗体法によって計測した。TK組換えHHV−6感染細胞の数を、EGFPに特異的な抗体を用いた間接蛍光抗体法によって計測した。
【0141】
図2は一段増殖後の培養上清のウイルス力価と培地中のGCVの濃度(a)およびACVの濃度(b)との関係を示したグラフである。縦軸は薬剤を添加していない状態のHST株のウイルス力価を1としたときの相対的なウイルス力価を示しており、横軸は添加した薬剤の濃度(μM)を示している。グラフの右に示すように、菱形はMT−4細胞に感染させたHST株のウイルス力価(野生株)であり、四角はTK発現MT−4細胞に感染させたHST株のウイルス力価(TK(+))であり、三角は臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−6のウイルス力価(HHV−6 TK)である。
【0142】
図2(a)に示すように、MT−4細胞に感染させたHST株に対するGCVの有効濃度(ED50:50% effective dose)は14μMであった。これに対し、臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−6に対するGCVのED50は0.3μMであった。また、TK発現MT−4細胞に感染させたHST株に対するGCVのED50は0.9μMであった。なお、臍帯血由来のT細胞に感染させたHST株のウイルス力価は、MT−4細胞に感染させたHST株のウイルス力価とほぼ同程度であった(図示せず)。
【0143】
図2(b)に示すように、MT−4細胞に感染させたHST株に対するACVのED50は48μMであった。これに対し、臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−6に対するACVのED50は8.6μMであった。また、TK発現MT−4細胞に感染させたHST株に対するACVのED50は16μMであった。
【0144】
HHV−6に対するGCVおよびACVの抗ウイルス作用は、TKが存在することよって10倍以上に向上した。TK発現MT−4細胞に感染させたHHV−6よりも、臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−6の方がGCVおよびACVに対する感受性が高かった。
【0145】
ここで、GCVはHCMV患者の治療に、また、ACVはVZV患者の治療に用いられている抗ヘルペス剤である。生体外におけるHCMVに対するGCVのED50は、4.0〜6,8μMであり、生体外におけるVZVに対するACVのED50は5〜20μMである。TK組換えHHV−6のGCVに対する感受性はHCMVより高く、また、TK組換えHHV−6のACVに対する感受性はVZV比較して同等である、または高いことが分かった。生体内におけるTK組換えHHV−6の増殖は、GCVまたはACVを用いて安全かつ確実に制御し得ると考えられる。
【0146】
以上の結果から、臨床的に安全が確認されているGCVまたはACVを用いてTK組換えHHV−6の増殖を抑制(制御)することができることが明らかになった。
【0147】
〔実施例4:TK遺伝子を有する組換えHHV−7の作製〕
HHV−7にTK遺伝子を組み込むことによって、HHV−7のGCVおよびACVに対する感受性の変化を調べるために、TK遺伝子を有する組換えHHV−7を作製した。
【0148】
TK遺伝子を有する組換えHHV−7の作製の手順について図3を参照して以下に説明する。図3はHHV−7のゲノム構造を示す模式図であり(上段)、相同組換えに用いたTK遺伝子を含む組換え配列の構造を示す模式図である(下段)。
【0149】
図3に示すように、TK遺伝子を含む組換え配列と相同組換えを起こさせるHHV−7ゲノムの遺伝子領域として、U2〜U8遺伝子領域を選択した。この選択は、上記U2〜U8遺伝子領域の欠失または組換えを行ったHHV−7の変異体が、野生体と同様の増殖能および感染の態様(潜伏感染が確立すること、および復帰感染を起こすことなど)を有しているという報告に基づいている(特許文献1および非特許文献2を参照のこと)。
【0150】
(TK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドの構築)
上記U2〜U8遺伝子領域と組換えを起こさせるためのTK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドの構造およびその構築方法について説明する。
【0151】
TK遺伝子を含む組換え配列を、TK遺伝子を含む遺伝子カセットの両端に上記U2遺伝子領域の約1kbpの断片とU8遺伝子の約1kbpの断片とを挿入することによって作製した。TK遺伝子を含む遺伝子カセットの構成は、実施例2において作製したTK遺伝子を含む遺伝子カセットと同一の構成なので、ここでは説明を省略する。
【0152】
U2遺伝子は、プライマー7U2FBam(配列番号13)と7U2RSpe(配列番号14)とを用いてPCRによって増幅した。U8遺伝子は、7U8FSal(配列番号15)と7U8RBamHI(配列番号16)とを用いてPCRによって増幅した。TK遺伝子を含む遺伝子カセットを、増幅したU2遺伝子およびU8遺伝子の間に挟みこむことによって、TK遺伝子を含む組換え配列を作製した。
【0153】
作製したTK遺伝子を含む組換え配列をプラスミドに挿入することによって、TK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドを構築した。
【0154】
(HHV−7ゲノムの組換え、およびTK遺伝子を有する組換えHHV−7の選択)
エレクトロポレーション法を用いてTK遺伝子を含む組換え配列を含むプラスミドを、フィトヘムアグルチニン(PHA:phytohemagglutinin)で刺激した臍帯血由来のT細胞に導入した。上記プラスミドの臍帯血由来のT細胞への導入は、Nucleofector TM electroporator(Amaxa Biosystem、ドイツ)を用いて、推奨されるプロトコルに従って以下のように行った。
【0155】
PHA刺激した臍帯血由来のT細胞5×10個、上記プラスミド5μgおよびT細胞用Nucleofector(TM)溶液100μgを混和した。Nucleofector TM electroporatorを用いて、プログラムU−14の条件で混和した溶液をエレクトロポレーションした。
【0156】
6時間後、上記プラスミドを導入した細胞に、遠心法を用いて感染多重度(MOI:multiplicity of infection)0.5のHHV−7(KHR株)を感染させた。感染T細胞を培地で3日間培養した。培養後、感染細胞を凍結させることによって組換えウイルスのストックを得た。
【0157】
組換ウイルスを選択的に増やすために、以下のようにウイルスの継代を行った。PHAで刺激した臍帯血由来のT細胞に上記組換えウイルスのストックを感染させ、培地で1日間培養した。7.5μg/mlピューロマイシンをさらに含む培地で、さらに1日間培養した。ピューロマイシンをさらに含む培地を除去し、感染細胞を培地で洗浄した。洗浄した感染細胞を3日間培養した。感染細胞を凍結させることによって新たな組換えウイルスのストックを得た。
【0158】
上記ウイルスの継代を5回行うことによって、組換えウイルスの選択を行った。96穴のプレートで培養した臍帯血由来のT細胞を用いた限界希釈培養法によって、選択した組換えウイルス(TK遺伝子を有する組換えHHV−7)をクローン化した。
【0159】
PCR法を用いてクローン化した組換えウイルスのゲノムDNAにTK遺伝子を含む遺伝子カセットが挿入されていることを確認した(図示せず)。
【0160】
〔実施例5:HSV−1 TK存在下におけるHHV−7の増殖に対するGCVおよびACVの効果〕
GCVおよびACVのHSV−1 TK存在下におけるHHV−7の増殖に対する影響を比較するために、GCVまたはACV存在下において、TK組換えHHV−6を臍帯血由来のT細胞に、HHV−7野生株(KHR株)を臍帯血由来のT細胞、SupT1細胞およびTK発現SupT1細胞のそれぞれに感染させ、一段増殖後の培養上清のウイルス力価を測定した。
【0161】
GCVに対するウイルスの増殖能への影響を調べるために、0、0.33、1、3.3、10および33μMの濃度のGCVを含む6種類の培地を、前培養およびウイルス感染後の培養に用いた。ACVに対するウイルスの増殖能への影響を調べるために、0、1、3.3、10、33および100μMの濃度のACVを含む6種類の培地を、前培養およびウイルス感染後の培養に用いた。薬剤のそれぞれは10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地に添加しており、前培養および感染後に用いた培地中の薬剤の濃度は同一である。
【0162】
臍帯血由来のT細胞、SupT1細胞およびTK発現SupT1細胞は、ウイルスに感染させる前に、薬剤(GCVまたはACV)を含む培地を用いて前培養を行った。1×10個の細胞にMOI0.1のウイルス液を加え、遠心法を用いてウイルスを感染させた(37℃、3000rpm、30分間)。上述のようにウイルスの感染を行うことによって実質的なMOIが1以上になる。この結果、ほとんど全ての細胞がウイルスに感染した。
【0163】
ウイルスを感染させた後、RPMI 1640培地を用いて感染細胞を洗浄することによって、非感染細胞を取り除いた。前培養と同じ薬剤濃度の培地を用い、5%CO条件下で感染細胞を培養した。感染後の培養には6穴プレートを用い、1穴当たり2mlの培地を加えた。感染2日後、一段増殖後のウイルスを含む培養上清を回収した。
【0164】
TK組換えHHV−6を臍帯血由来のT細胞に、臍帯血由来のT細胞において増殖させたKHR株を臍帯血由来のT細胞に、TK発現SupT1細胞において増殖させたKHR株をSupT1細胞に、SupT1細胞において増殖させたKHR株をSupT1細胞に、それぞれ接種した。接種から1時間、37℃で細胞にウイルスを吸着させた。10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地を用いて、5%CO条件下で36時間、感染細胞を培養した。培養には6穴プレートを用いた。培養後、KHR株感染細胞のそれぞれの数を、HHV−7に特異的な抗体を用いた間接蛍光抗体法によって計測した。TK組換えHHV−7感染細胞の数を、EGFPに特異的な抗体を用いた間接蛍光抗体法によって計測した。
【0165】
図4は一段増殖後の培養上清のウイルス力価と培地中のGCVの濃度(a)およびACVの濃度(b)との関係を示したグラフである。縦軸は薬剤を添加していない状態のKHR株のウイルス力価を1としたときの相対的なウイルス力価を示しており、横軸は添加した薬剤の濃度(μg/ml)を示している。グラフの右に示すように、菱形はSupT1細胞に感染させたKHR株のウイルス力価(野生株)であり、四角はTK発現SupT1細胞に感染させた野生株のウイルス力価(TK(+))であり、三角は臍帯血由来のT細胞SupT1細胞にTK組換えHHV−7のウイルス力価(HHV−7 TK)である。
【0166】
図4(a)に示すように、SupT1細胞に感染させたKHR株に対するGCVのED50は21μMであった。これに対し、臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−7に対するGCVのED50は0.7μMであった。また、TK発現SupT1細胞に感染させたHHV−6に対するGCVのED50は1.0μMであった。
【0167】
図4(b)に示すように、SupT1細胞に感染させたKHR株に対するACVのED50は330μMであった。これに対し、臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−7に対するACVのED50は9.5μMであった。また、TK発現SupT1細胞に感染させたHHV−6に対するACVのED50は19μMであった。
【0168】
HHV−7に対するGCVおよびACVの抗ウイルス作用は、TKが存在することよって10倍以上に向上した。TK発現SupT1細胞に感染させたHHV−7よりも、臍帯血由来のT細胞に感染させたTK組換えHHV−7の方がGCVおよびACVに対する感受性が高かった。
【0169】
TK組換えHHV−7のGCVに対する感受性はHCMVより高く、また、TK組換えHHV−7のACVに対する感受性はVZVと比較して同等であることまたは高いことが分かった。生体内におけるTK組換えHHV−7の増殖は、GCVまたはACVを用いて安全かつ確実に制御し得ると考えられる。
【0170】
以上の結果から、臨床的に安全が確認されているGCVまたはACVを用いてTK組換えHHV−7の増殖を抑制(制御)することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明によって、感染細胞においてTK遺伝子を発現するHHV−6またはHHV−7由来の組換えウイルスベクターを提供することができる。本発明は安全性の高い遺伝子治療用ベクターとして用いることができる。本発明は研究用の遺伝子導入用のベクターとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】TK組換えHHV−6の組換え領域とゲノム構造を説明する模式図である。
【図2】(a)はHHV−6野生株およびTK組換えHHV−6に対するガンシクロビルの抗ウイルス活性を示すグラフであり、(b)はHHV−6野生株およびTK組換えHHV−6に対するアシクロビルの抗ウイルス活性を示すグラフである。
【図3】TK組換えHHV−7の組換え領域とゲノム構造を説明する模式図である。
【図4】(a)はHHV−7野生株およびTK組換えHHV−7に対するガンシクロビルの抗ウイルス活性を示すグラフであり、(b)はHHV−7野生株およびTK組換えHHV−7に対するアシクロビルの抗ウイルス活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HHV−6由来の組換えウイルスベクターであって、
HHV−6ゲノムにおけるU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられていることを特徴とする組換えウイルスベクター。
【請求項2】
HHV−7由来の組換えウイルスベクターであって、
HHV−7ゲノムにおけるU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび外来性のポリヌクレオチドによって組み換えられていることを特徴とする組換えウイルスベクター。
【請求項3】
上記チミジンキナーゼが、アルファヘルペスウイルス亜科に属するウイルスが有するキナーゼであることを特徴とする請求項1または2に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項4】
上記チミジンキナーゼが、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項5】
上記チミジンキナーゼが、配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされていることを特徴とする請求項1または2に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項6】
上記U2、U3、U4、U5、U6、U7およびU8遺伝子、ならびにU24およびU25遺伝子が、配列番号3で示される塩基配列の第9041番目〜第17446番目ならびに第36250番目〜第37775番目に存在することを特徴とする請求項1に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項7】
上記U3、U4、U5、U6およびU7遺伝子の一部が、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドによって組み換えられていることを特徴とする請求項1または6に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項8】
上記U2、U3、U4、U7およびU8遺伝子、ならびにU24、U24aおよびU25遺伝子が、配列番号4で示される塩基配列の第10558番目〜第18483番目ならびに第34744番目〜第36118番目に存在することを特徴とする請求項2に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項9】
上記U3、U4およびU7遺伝子の一部が、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドによって組み換えられていることを特徴とする請求項2または8に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項10】
HHV−6由来の組換えウイルスベクターであって、
HHV−6ゲノムにおけるU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドによって組み換えられていることを特徴とする組換えウイルスベクター。
【請求項11】
HHV−7由来の組換えウイルスベクターであって、
HHV−7ゲノムにおけるU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25遺伝子の一部が、ヘルペスウイルス科に属するウイルスが有するチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドによって組み換えられていることを特徴とする組換えウイルスベクター。
【請求項12】
請求項1または2に記載の組換えウイルスベクターを用いて哺乳類の細胞を形質転換する工程を包含する細胞の形質転換方法であって、
該哺乳類が、ヒト、ヒト以外の霊長類、またはHHV−6もしくはHHV−7が感染可能な宿主であることを特徴とする細胞の形質転換方法。
【請求項13】
上記細胞が、T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、アストロサイト、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、樹状細胞またはナチュラルキラー細胞であることを特徴とする請求項12に記載の細胞の形質転換方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法によって形質転換された形質転換細胞。
【請求項15】
請求項1または2に記載の組換えウイルスベクターを個体へ投与する工程を包含することを特徴とする遺伝子治療方法。
【請求項16】
請求項14の形質転換細胞を個体へ投与する工程を包含することを特徴とする遺伝子治療方法。
【請求項17】
ガンシクロビル(GCV)またはアシクロビル(ACV)を投与することによって個体における組換えウイルスベクターの増殖を制御する工程を、さらに包含することを特徴とする請求項15または16に記載の遺伝子治療方法。
【請求項18】
易感染性細胞に対するヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染を予防すること、および/または癌を免疫の賦活化によって治療することを特徴とする請求項17に記載の遺伝子治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−113578(P2008−113578A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298208(P2006−298208)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(506056240)株式会社ウイルス医科学研究所 (6)
【Fターム(参考)】