説明

IAPのインヒビター

【課題】悪性腫瘍を処置するための治療剤として有用な新規のIAPインヒビターを提供する。
【解決手段】下記化合物を細胞内に導入することを含む細胞にアポトーシスを誘発させる方法、及びアポトーシスシグナルに対して細胞を感受性化させる方法。化合物は次の一般式Iを有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物における治療及び/又は予防に有用な有機化合物、特に癌の処置に有用なIAPタンパク質のインヒビターに関する。
【0002】
(発明の背景)
アポトーシス又はプログラム細胞死は、無脊椎動物及び脊椎動物の成長及びホメオスタシスにおいて重要な役割を担っている遺伝的及び生化学的な調節メカニズムである。時期尚早の細胞死に至るアポトーシスにおける異常は、様々な発達障害に関連している。細胞死の欠失に帰するアポトーシスにおける欠乏症は、癌及び慢性的なウイルス感染に関連している(Thompsonら, (1995) Science 267, 1456-1462)。
アポトーシスにおいて鍵となるエフェクター分子の一つはカスパーゼ(cysteine containing aspartate specific proteases; システイン含有のアルパラギン酸特異性プロテアーゼ)である。カスパーゼはアルパラギン酸残基の後を切断する強力なプロテアーゼで、活性化されると、細胞内から重要な細胞タンパク質を消化する。カスパーゼはこのように強力なプロテアーゼであるため、このファミリーのタンパク質を厳格にコントロールするためには、時期尚早の細胞死を防止することが必要である。一般的に、カスパーゼは、活性であるためにタンパク分解プロセシングを必要とする大抵は不活性なチモーゲンとして合成される。このタンパク分解プロセシングは、カスパーゼが調節される態様の一つに過ぎない。第2のメカニズムは、カスパーゼに結合して阻害するタンパク質ファミリーを介する。
【0003】
カスパーゼを阻害する分子ファミリーは、アポトーシスのインヒビター(Inhibitors of Apoptosis(IAP))である(Deverauxら, J Clin Immunol (1999), 19:388-398)。IAPは、抗アポトーシス遺伝子のP35タンパク質の代わりをするその機能的能力により、元々はバキュロウイルスにおいて発見された(Crookら(1993) J Virology 67, 2168-2174)。IAPはショウジョウバエからヒトまでの範囲にわたる生物体において開示されている。それらの由来にかからわず、構造的には、IAPは1〜3のバキュロウイルスIAP繰り返し(BIR)ドメインを含み、そのほとんどがカルボキシル末端RINGフィンガーモチーフも有している。BIRドメインそれ自体は、亜鉛イオンを配位したシステイン及びヒスチジン残基と共に、4つのαヘリックスと3つのβ鎖を含む約70の残基の亜鉛結合ドメインである(Hindsら, (1999) Nat. Struct. Biol. 6, 648-651)。カスパーゼを阻害して、アポトーシスを阻害することによって、抗アポトーシス効果を生じると考えられているのはBIRドメインである。一例として、ヒトX染色体連鎖IAP(XIAP)は、カスパーゼ3、カスパーゼ7、及びカスパーゼ9のApaf-1-チトクロムC媒介性活性を阻害する(Deverauxら, (1998) EMBO J. 17, 2215-2223)。カスパーゼ3及び7はXIAPのBIR2ドメインにより阻害される一方、XIAPのBIR3ドメインはカスパーゼ9活性の阻害の原因である。XIAPはほとんどの成人及び胎児組織中で遍在的に発現しており(Listonら, Nature, 1996, 379(6563):349)、NCI60株化細胞パネルの多数の腫瘍細胞株で過剰発現している(Fongら, Genomics, 2000, 70:113; Tammら, Clin. Cancer Res. 2000, 6(5):1796)。腫瘍細胞におけるXIAPの過剰発現は、広い範囲のアポトーシス促進性刺激から保護し、化学療法に対する耐性を促進することが実証されている(LaCasseら, Oncogene, 1998, 17(25):3247)。これに一致して、急性骨髄性白血病を患っている患者においては、XIAPタンパク質レベルと生存率との間には強い相関関係があることが示されている(上掲のTammら)。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるXIAP発現のダウンレギュレーションにより、インビトロ及びインビボの双方において、広範囲のアポトーシス促進剤により誘発されるアポトーシスに対し多くの異なった腫瘍細胞を感受性化することがまた示されている(Sasakiら, Cancer Res., 2000, 60(20):5659; Linら, Biochem J., 2001, 353:299; Huら, Clin. Cancer Res., 2003, 9(7):2826)。また、Smac/DIABLO由来ペプチドも、種々のアポトーシス促進剤により誘発されるアポトーシスに対し、多数の異なる腫瘍細胞株を感受性化させることが実証されている(Arntら, J. Biol. Chem., 2002, 277(46):44236; Fuldaら, Nature Med., 2002, 8(8):808; Guoら, Blood,2002, 99(9):3419; Vucicら, J. Biol. Chem.,2002, 277(14):12275; Yangら, Cancer Res., 2003, 63(4):831)。
【0004】
メラノーマIAP(ML-IAP)は、ほとんどの正常な成人組織中では検出されないIAPであるが、メラノーマにおいては強くアップレギュレートされている(Vucicら, (2000) Current Bio 10:1359-1366)。タンパク質構造の決定では、ヒトXIAP、C-IAP1及びC-IAP2中に存在する対応ドメインに対し、ML-IAP BIR及びRINGフィンガードメインには有意の相同性があることが実証されている。ML-IAPのBIRドメインは、XIAP、C-IAP1及びC-IAP2のBIR2及びBIR3に対して最も多い類似点を有していると思われ、欠失分析により測定すると、アポトーシス阻害の原因であると思われる。さらに、Vucicらは、ML-IAPが、化学治療剤誘発性アポトーシスを阻害可能であることを実証した。アドリアマイシン及び4-tert-ブチルフェノール(4-TBP)等の薬剤を、ML-IAPを過剰発現しているメラノーマの細胞培養系で試験し、正常なメラノサイトコントロールと比較したところ、化学治療剤は細胞の殺傷においてあまり効果的ではなかった。ML-IAPが抗アポトーシス活性を生ずるメカニズムは、部分的にはカスパーゼ3及び9の阻害を介している。ML-IAPはカスパーゼ1、2、6又は8を効果的には阻害しなかった。
【0005】
アポトーシスは、複数の相互作用している要因を有する厳密にコントロールされた経路であるため、IAPそれ自体が調節されるという発見は珍しいことではなかった。ショウジョウバエ(fruit fly Drosophila)において、Reaper(rpr)、Head Involution Defective(hid)及びGRIMタンパク質は、IAPのショウジョウバエファミリーと物理的に相互作用し、その抗アポトーシス活性を阻害する。哺乳動物において、タンパク質SMAC/DIABLOは、IAPをブロックするように作用し、アポトーシスの進行を可能にする。正常なアポトーシス中、SMACは活性型にプロセシングされ、ミトコンドリアから細胞質中に放出され、そこでIAPに物理的に結合し、IAPのカスパーゼへの結合を阻害することが示された。IAPのこの阻害により、カスパーゼは活性なままで、アポトーシスを進行させることができる。興味深いことに、IAPインヒビター間の配列相同性は、プロセシングされた活性タンパク質のN末端に4つのアミノ酸モチーフが存在することを示している。このテトラペプチドは、BIRドメインの疎水性ポケットに結合するように思われ、カスパーゼに結合するBIRドメインを破壊する(Chaiら, (2000) Nature 406:855-862, Liuら, (2000) Nature 408:1004-1008, Wuら, (2000) Nature 408 1008-1012)。
【0006】
(本発明の概要)
本発明の一態様では、次の一般式(I):
【化1】

[上式中、
、X及びXは独立して、O又はSであり;
Yは、(CHR)、O又はSであり;ここでnは1又は2であり、RはH、ハロゲン、アルキル、アリール、アラルキル、アミノ、アリールアミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アルコキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシであり;
Aは、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、カルボキシル、アミジノ、グアニジノ、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルキル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ又はヘテロ環で置換されていてもよい1〜4のヘテロ原子を有する5員のヘテロ環であり;ここで、それぞれのアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル及びヘテロ環置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよく;
はHであり、又はRとRは共同して5−8員環を形成し;
は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環又はヘテロシクリルアルキルであり;それぞれ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はアルキルチオで置換されていてもよく;
は、H又はアルキルであり;
及びR'は独立して、H、ヒドロキシル、アミノ、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよく;
及びR'はそれぞれ独立して、H又はアルキルであり;
及びR'はそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール又はアラルキルである]
を有するIAPタンパク質の新規なインヒビター並びにその塩及び溶媒和物が提供される。
【0007】
本発明の他の態様では、式Iの化合物と、担体、希釈剤又は賦形剤を含有する組成物が提供される。
本発明の他の態様では、式Iの化合物を細胞中に導入することを含む、細胞にアポトーシスを誘発させる方法が提供される。
本発明の他の態様では、式Iの化合物を細胞に導入することを含む、アポトーシスシグナルに対して細胞を感受性化させる方法が提供される。
本発明の他の態様では、式Iの化合物とIAPタンパク質とを接触させることを含む、カスパーゼタンパク質とIAPタンパク質との結合を阻害する方法が提供される。
本発明の他の態様では、有効量の式Iの化合物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるIAPタンパク質の過剰発現を伴う病気又は症状を処置する方法が提供される。
【0008】
(好ましい実施態様の詳細な記述)
定義:
「アルキル」とは、別に特定しない限り、12までの炭素原子を有する、分枝状又は非分枝状で飽和又は不飽和(すなわちアルケニル、アルキニル)の脂肪族炭化水素基を意味する。例えば「アルキルアミノ」等、他の用語の一部として使用される場合、アルキル部分は好ましくは飽和した炭化水素鎖であるが、不飽和の炭化水素炭素鎖、例えば「アルケニルアミノ」及び「アルキニルアミノ」も含まれる。好ましいアルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、n-ヘプチル、3-ヘプチル、2-メチルヘキシル等が含まれる。「低級アルキル」「C−Cアルキル」及び「1〜4の炭素原子のアルキル」という用語は同義語であって、交換可能に使用され、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、1-ブチル、sec-ブチル又はt-ブチルを意味する。別に特定しない限り、置換アルキル基には、同一でも異なっていてもよい1(好ましくは)、2、3又は4の置換基を有していてよい。上述した置換アルキル基の例には、限定されるものではないが;シアノメチル、ニトロメチル、ヒドロキシメチル、トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、アルキルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、カルバモイルオキシメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t-ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6-ヒドロキシヘキシル、2,4-ジクロロ(n-ブチル)、2-アミノ(イソ-プロピル)、2-カルバモイルオキシエチル等が含まれる。またアルキル基は、炭素環基で置換されていてもよい。具体例には、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、及びシクロヘキシルメチル基、並びに対応する-エチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル基等が含まれる。好ましい置換アルキルは置換メチル基、例えば、「置換C-Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたメチル基である。置換メチル基の例には、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル(例えばテトラヒドロピラニルオキシメチル)、アセトキシメチル、カルバモイルオキシメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、カルボキシメチル、ブロモメチル及びヨードメチル等の基が含まれる。
【0009】
「アミジン」は、RがH又はアルキル又はアラルキルである-C(NH)-NHR基を示す。好ましいアミジンは-NH-C(NH)-NH基である。
「アミノ」とは、第1級(すなわち-NH)、第2級(すなわち-NRH)及び第3級(すなわち-NRR)アミンを示す。好ましい第2級及び第3級アミンはアルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン及びジアラルキルアミンである。特定の好ましい第2級及び第3級アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジイソプロピルアミンである。
ここで使用される場合「アミノ-保護基」とは、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、アミノ基をブロック又は保護するのに通常用いられる基の誘導体を意味する。このような保護基の例には、カルバマート類、アミド類、アルキル及びアリール基、イミン類、並びに所望するアミン基に再生するのに除去可能な、多くのN-ヘテロ原子誘導体が含まれる。好ましいアミノ保護基はBoc、Fmoc及びCbzである。これらの基のさらなる例は、T. W. Greene及びP. G. M. Wuts, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, 第2版, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, 1991, 第7章; E. Haslam,「Protective Groups in Organic Chemistry」, J. G. W. McOmie編, Plenum Press, New York, NY, 1973, 第5章, 及びT.W. Greene, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley and Sons, New York, NY, 1981に見出される。「保護されたアミノ」なる用語は、上述したアミノ保護基の一つで置換されたアミノ基を意味する。
【0010】
「アリール」とは、単独で又は他の用語の一部として使用される場合、所定の炭素原子数を有するか、又は数が指定されない場合は、14までの炭素原子を有する、縮合又は非縮合のカルボシクリック式芳香族基を意味する。好ましいアリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル(naphthacenyl)等(Lang's Handbook of Chemistry (Dean, J.A.編)13版, 表7-2[1985]参照)、最も好ましくはフェニルが含まれる。置換フェニル又は置換アリールとは、別に特定しない限り、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(好ましくはC-Cアルキル)、アルコキシ(好ましくはC-Cアルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノメチル、保護されたアミノメチル、トリフルオロメチル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、又は他の特定された基から選択される1、2、3、4又は5、好ましくは1−2、1−3又は1−4の置換基で置換されたフェニル基又はアリール基を称す。これらの置換基における及び/又はメチン(CH)及び/又はメチレン(CH)基は、ついで上述したようなものと同様の基で置換され得る。「置換フェニル」という用語の例には、限定されるものではないが、モノ-又はジ(ハロ)フェニル基、例えば2-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,5-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、4-ブロモフェニル、3,4-ジブロモフェニル、3-クロロ-4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル等;モノ-又はジ(ヒドロキシ)フェニル基、例えば4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2,4-ジヒドロキシフェニル、それらの保護されたヒドロキシ誘導体等;ニトロフェニル基、例えば3-又は4-ニトロフェニル;シアノフェニル基、例えば4-シアノフェニル;モノ-又はジ(低級アルキル)フェニル基、例えば、4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2-メチルフェニル、4-(イソ-プロピル)フェニル、4-エチルフェニル、3-(n-プロピル)フェニル等;モノ又はジ(アルコキシ)フェニル基、例えば3,4-ジメトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-エトキシフェニル、4-(イソプロポキシ)フェニル、4-(t-ブトキシ)フェニル、3-エトキシ-4-メトキシフェニル等;3-又は4-トリフルオロメチルフェニル;モノ-又はジカルボキシフェニル又は(保護されたカルボキシ)フェニル基、例えば4-カルボキシフェニル;モノ-又はジ(ヒドロキシメチル)フェニル又は(保護されたヒドロキシメチル)フェニル、例えば3-(保護されたヒドロキシメチル)フェニル又は3,4-ジ(ヒドロキシメチル)フェニル;モノ-又はジ(アミノメチル)フェニル又は(保護されたアミノメチル)フェニル、例えば2-(アミノメチル)フェニル又は2,4-(保護されたアミノメチル)フェニル;あるいはモノ-又はジ(N-(メチルスルホニルアミノ))フェニル、例えば3-(N-メチルスルホニルアミノ)フェニルが含まれる。また、「置換フェニル」という用語は、その置換基が異なっている二置換フェニル基、例えば3-メチル-4-ヒドロキシフェニル、3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシ-4-ブロモフェニル、4-エチル-2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル、2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル等、並びにその置換基が異なっている三置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノ、3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-フェニルスルホニルアミノ、及びその置換基が異なっている四置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-5-メチル-6-フェニルスルホニルアミノを表す。好ましい置換フェニル基には、2-クロロフェニル、2-アミノフェニル、2-ブロモフェニル、3-メトキシフェニル、3-エトキシ-フェニル、4-ベンジルオキシフェニル、4-メトキシフェニル、3-エトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3,4-ジエトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノフェニル基が含まれる。縮合アリール環はまた、置換アルキル基と同様の方式において、ここで特定した置換基、好ましくは1、2又は3の置換基で置換され得る。
【0011】
「カルボシクリル(Carbocyclyl)」、「カルボシクリリック(carbocyclylic)」、「炭素環(carbocycle)」及び「カルボシクロ(carbocyclo)」は、単独で及びカルボシクロアルキル基のような複合基中の一部として使用される場合には、飽和又は不飽和で芳香族又は非芳香族であってよい、3〜14の炭素原子、好ましくは3〜7の炭素原子を有する単環式、二環式、又は三環式の脂肪族環を称する。好ましい飽和したカルボシクリック基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基が含まれ、より好ましくはシクロプロピル及びシクロヘキシルであり、最も好ましくはシクロヘキシルである。好ましい不飽和炭素環は、芳香族、例えば上述したアリール基であり、最も好ましくはフェニルである。「置換カルボシクリル」、「炭素環」及び「カルボシクロ」なる用語は、「置換アルキル」基と同様の置換基により置換された基を意味する。
【0012】
ここで使用される場合「カルボキシ-保護基」とは、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、カルボン酸基をブロック又は保護するのに通常用いられるカルボン酸基のエステル誘導体の一つを意味する。そのようなカルボン酸保護基の例には、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,4,6-トリメトキシベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、3,4-メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル、2,2',4,4'-テトラメトキシベンズヒドリル、アルキル、例えばt-ブチル又はt-アミル、トリチル、4-メトキシトリチル、4,4'-ジメトキシトリチル、4,4',4"-トリメチトキシトリチル、2-フェニルプロプ-2-イル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2-トリクロロエチル、ベータ-(トリメチルシリル)エチル、ベータ-(ジ(n-ブチル)メチルシリル)エチル、p-トルエンスルホニルエチル、4-ニトロベンジルスルホニルエチル、アリル、シンナミル、1-(トリメチルシリルメチル)プロプ-1-エン-3-イル及び類似部分が含まれる。誘導体化カルボン酸が、分子の他の位置に対する引き続く反応の条件に対して安定であり、適当な時点で分子の残りの部分を破壊することなく除去できる限り、用いられるカルボキシ保護基の化学種は重要ではない。特に、カルボキシ-保護された分子を強い求核塩基、例えば水酸化リチウム又はNaOH、又はLiAlH等の高活性化金属水素化物を用いる還元条件を施さないことが重要である。(このような過酷な除去条件は、下記に検討するアミノ-保護基及びヒドロキシ-保護基を除去する際でもまた避けるべきである。)好ましいカルボン酸保護基は、アルキル(例えば、メチル、エチル、t-ブチル)、アリル、ベンジル及びp-ニトロベンジル基である。セファロスポリン、ペニシリン及びペプチド分野で使用される類似のカルボキシ保護基も、カルボキシ基置換基の保護に使用できる。これらの基のさらなる例は、T. W. Greene及びP. G. M. Wuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」, 第2版, John Wiley & Sons, Inc., New York, N.Y., 1991, 第5章;E. Haslam,「Protective Groups in Organic Chemistry」, J.G.W. McOmie編, Plenum Press, New York, N.Y., 1973, 第5章,及びT.W. Greene,「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley and Sons, New York, NY, 1981, 第5章に見出される。「保護されたカルボキシ」なる用語は、上述したカルボキシ-保護基の一つで置換されたカルボキシ基を意味する。
【0013】
「グアニジン」とは、RがH又はアルキル又はアラルキルである-NH-C(NH)-NHR基を示す。好ましいグアニジンは-NH-C(NH)-NH基である。
【0014】
ここで使用される場合「ヒドロキシ-保護基」とは、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、ヒドロキシ基をブロック又は保護するのに通常用いられるヒドロキシ基の誘導体を意味する。このような保護基の例には、テトラヒドロピラニルオキシ、ベンゾイル、アセトキシ、カルバモイルオキシ、ベンジル、及びシリルエーテル(例えば、TBS、TBDPS)基が含まれる。これらの基のさらなる例は、T.W. Greene及びP.G.M. Wuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, 1991, 第2-3章;E. Haslam, 「Protective Groups in Organic Chemistry」、J.G.W. McOmie編, Plenum Press, New York, NY, 1973, 第5章、及びT.W. Greene, 「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons, New York, NY, 1981に見出される。「保護されたヒドロキシ」なる用語は、上述したヒドロキシ-保護基の一つで置換されたヒドロキシ基を意味する。
【0015】
「ヘテロサイクリック基(heterocyclic group)」、「ヘテロサイクリック(heterocyclic)」、「ヘテロ環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」又は「ヘテロシクロ(heterocyclo)」は、単独でまたヘテロシクロアルキル基のような複合基中で一部として使用される場合には、交換可能に使用され、一般に5〜約14の環状原子の、示された原子数を有する任意の単環式、二環式又は三環式の飽和又は不飽和の芳香族(ヘテロアリール)又は非芳香族環を意味し、環状原子は炭素及び少なくとも一のヘテロ原子(窒素、硫黄又は酸素)、好ましくは1〜4のヘテロ原子である。典型的には、5員環は0〜2の二重結合を有し、6員又は7員環は0〜3の二重結合を有し、窒素又は硫黄ヘテロ原子は場合によっては酸化されていてもよく(例えばSO、SO)、任意の窒素へテロ原子は場合によっては第4級化されていてもよい。特定の非芳香族ヘテロ環には、モルホリニル(モルホリノ)、ピロリジニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、2,3-ジヒドロフラニル、2H-ピラニル、テトラヒドロピラニル、チイラニル、チエタニル、テトラヒドロチエタニル、アジリジニル、アゼチジニル、1-メチル-2-ピロリル、ピペラジニル及びピペリジニルが含まれる。「ヘテロシクロアルキル」基は、上述したようなアルキル基に共有結合した上述したようなヘテロ環基である。硫黄又は酸素原子と1〜3の窒素原子を有する好ましい5員ヘテロ環には、チアゾリル、特にチアゾル-2-イル及びチアゾル-2-イル-N-オキシド、チアジアゾリル、特に1,3,4-チアジアゾル-5-イル及び1,2,4-チアジアゾル-5-イル、オキサゾリル、好ましくはオキサゾル-2-イル、及びオキサジアゾリル、例えば1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、及び1,2,4-オキサジアゾル-5-イルが含まれる。2〜4の窒素原子を有する好ましい5員環ヘテロ環には、イミダゾリル、好ましくはイミダゾル-2-イル;トリアゾリル、好ましくは1,3,4-トリアゾル-5-イル;1,2,3-トリアゾル-5イル、1,2,4-トリアゾル-5-イル、及びテトラゾリル、好ましくは1H-テトラゾル-5-イルが含まれる。好ましいベンゾ縮合した5員ヘテロ環は、ベンズオキサゾル-2-イル、ベンズチアゾル-2-イル及びベンズイミダゾル-2-イルである。好ましい6員ヘテロ環は1〜3の窒素原子と場合によっては硫黄又は酸素原子を有し、例えばピリジル、特にピリド-2-イル、ピリド-3-イル、及びピリド-4-イル;ピリミジル、好ましくはピリミド-2-イル及びピリミド-4-イル;トリアジニル、好ましくは1,3,4-トリアジン-2-イル、及び1,3,5-トリアジン-4-イル;ピリダジニル、特にピリダジン-3-イル、及びピラジニルである。ピリジン-N-オキシド類、及びピリダジン-N-オキシド類、及びピリジル、ピリミド-2-イル、ピリミド-4-イル、ピリダジニル、及び1,3,4-トリアジン-2-イル基が、好ましい基である。置換されていてもよいヘテロ環のための置換基、及び先に検討した5員及び6員環系のさらなる例は、W. Druckheimer等の米国特許第4278793号に見出すことができる。
【0016】
「ヘテロアリール」とは、単独でまたヘテロアラルキル基等の複合基中に一部として使用される場合、指定された数の原子を有する任意の単環式、二環式又は三環式の芳香族環系を意味し、ここで少なくとも1つの環は、窒素、酸素及び硫黄の群から選択される1〜4のヘテロ原子を有する5員、6員又は7員環である(Lang's Handbook of Chemistry, 上掲)。上述した任意のヘテロアリール環がベンゼン環に縮合している任意の二環式の基も定義に含まれる。窒素又は酸素がヘテロ原子であるヘテロアリールが好ましい。次の環系:チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、チアジニル、オキサジニル、トリアジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、テトラジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル及びプリニル、並びにベンゾ-縮合誘導体、例えばベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル及びインドリルが、「ヘテロアリール」という用語で示される(置換された又は未置換の)ヘテロアリール基の例である。「ヘテロアリール」の特に好ましい基には;1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,2,4-チアジアゾル-5-イル、3-メチル-1,2,4-チアジアゾル-5-イル、1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-ヒドロキシ-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イルのナトリウム塩、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5イル、1,3-オキサゾル-2-イル、1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-(ヒドロキシメチル)-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、1,2,4-オキサジアゾル-5-イル、1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-チオール-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-(メチルチオ)-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、2-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、4-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、ピリド-2-イル-N-オキシド、6-メトキシ-2-(n-オキシド)-ピリダズ-3-イル、6-ヒドロキシピリダズ-3-イル、1-メチルピリド-2-イル、1-メチルピリド-4-イル、2-ヒドロキシピリミド-4-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-アス-トリアジン-3イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-アストリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-アス-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アストリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-メトキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2,6-ジメチル-アス-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]-ピリダジン-6-イルが含まれる。「ヘテロアリール」の他の基には:4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-アス-トリアジン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(2-ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル、及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イルが含まれる。
【0017】
「インヒビター」とは、カスパーゼタンパク質へのIAPタンパク質の結合を低減又は防止、もしくはIAPタンパク質によるアポトーシスの阻害を低減又は防止する化合物を意味する。
「製薬的に許容可能な塩」には、酸及び塩基との付加塩の双方が含まれる。「製薬的に許容可能な酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的効能と性質とを保持し、生物学的に又は他の形で所望されないものではない塩を意味するもので、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等を用いて形成され、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族(araliphatic)、ヘテロ環、カルボキシル及びスルホンクラスのものから選択され得る。
「製薬的に許容可能な塩基付加塩」には、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等から誘導されるものが含まれる。特に好ましくは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムの塩である。製薬的に許容可能な無毒の有機塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、自然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン(piperidine)、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等が含まれる。特定の好ましい無毒の有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0018】
本発明は、次の一般式I:
【化2】

[上式中、X、Y、A、R、R、R、R、R'、R、R'、R及びR'はここで記載したものである]
を有する新規の化合物を提供する。
【0019】
及びXはそれぞれ独立して、O又はSである。好ましい実施態様では、X及びXは双方ともOである。他の好ましい実施態様では、X及びXは双方ともSである。他の好ましい実施態様では、XはSであり、一方XはOである。他の好ましい実施態様では、XはOであり、一方XはSである。
Yは、(CHR)、O又はSであり;ここでnは1又は2であり、RはH、ハロゲン、アルキル、アリール、アラルキル、アミノ、アリールアミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アルコキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシである。特定の実施態様では、YはCHである。特定の実施態様では、nは1である。特定の実施態様では、nは1であり、YはCHRであり、ここでRはアラルキルオキシ、例えばベンジルオキシである。特定の実施態様では、nは1であり、YはCHRであり、ここでRはFである。特定の実施態様では、nは1であり、YはCHRであり、ここでRはアラルキルアミノ、例えばベンジルアミノである。他の特定の実施態様では、YはOである。他の特定の実施態様では、YはSである。
【0020】
環「A」は、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、カルボキシル、アミジノ、グアニジノ、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルキル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ又はヘテロ環で置換されていてもよい1〜4のヘテロ原子を有する5員のヘテロ環であり;ここで、それぞれのアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル及びヘテロ環置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよい。一実施態様では、5員のヘテロ環であるA基は、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、カルボキシル、アミジノ、グアニジノ、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル、又はヘテロ環で置換されていてもよく;ここでそれぞれのアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル及びヘテロ環置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよい。特定の実施態様では、環Aは芳香族である。特定の実施態様では、環Aは次の式IIa又はIIb:
【化3】

[上式中、QはNR、O又はSであり;Q、Q、Q、Q、Q、Q及びQは独立して、CR又はNであり;ここで、Rは、H、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、カルボキシル、アミジノ、グアニジノ、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル又はヘテロ環であり、ここで、それぞれのアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル及びヘテロ環置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよく;Rは、H、アルキル、アシル、アリール、シクロアルキル又はヘテロ環であり;ここで、それぞれのアルキル、アリール、シクロアルキル及びヘテロ環は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよく;またQはCH又はNである]
のものを有する。特定の実施態様では、環Aは式IIの基である。特定の実施態様では、環Aは、QがCRであり、Rが上述したように置換されていてもよいアリール又はヘテロアリールである、式IIの基である。特定の実施態様では、環Aは、QがCRであり、Rがフェニルである、式IIの基である。特定の実施態様では、環Aは、QがCRであり、Rがフェニルであり、QがCH又はCFである、式IIの基である。他の実施態様では、環Aは、QがCRであり、Rがピリジン-2-イルである、式IIの基である。他の実施態様では、環Aは、QがCRであり、Rがピリジン-2-イルであり、QがC-Meである、式IIの基である。
【0021】
他の実施態様では、IIa又はIIbの環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいピロール環である。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化4】

[上式中、RはH、アルキル(例えば、メチル、エチル又はプロピル)又はアシル(例えばアセチル)である]
からなる群から選択される。特定の実施態様では、RはHである。
【0022】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいフランである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化5】

からなる群から選択される。
【0023】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいチオフェンである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化6】

からなる群から選択される。
【0024】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいピラゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化7】

[上式中、RはH、アルキル(例えば、メチル、エチル又はプロピル)又はアシル(例えばアセチル)である]
からなる群から選択される。特定の実施態様では、RはHである。
【0025】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいイミダゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化8】

[上式中、RはH、アルキル(例えば、メチル、エチル又はプロピル)又はアシル(例えばアセチル)である]
からなる群から選択される。特定の実施態様では、RはHである。
【0026】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいオキサゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化9】

からなる群から選択される。
【0027】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいイソオキサゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化10】

からなる群から選択される。
【0028】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいチアゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化11】

からなる群から選択される。
【0029】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいイソチアゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化12】

からなる群から選択される。
【0030】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよい1,2,3-トリアゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化13】

[上式中、RはH、アルキル(例えば、メチル、エチル又はプロピル)又はアシル(例えばアセチル)である]
からなる群から選択される。特定の実施態様では、RはHである。
【0031】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよい1,2,4-トリアゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化14】

からなる群から選択される。
【0032】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいオキサジアゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化15】

からなる群から選択される。
【0033】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいチアジアゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化16】

からなる群から選択される。
【0034】
他の実施態様では、環Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロ環-アルキル、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、アルキルで置換されていてもよいテトラゾールである。一実施態様では、環Aはアリール又はヘテロアリール基で置換されている。特定の実施態様では、環Aは:
【化17】

からなる群から選択される。
【0035】
特定の実施態様では、環Aは次の式:
【化18】

のものである。
また特定の実施態様では、環Aは次の式:
【化19】

のものである。
【0036】
はHであるか、又はR及びRは共同して、5−8員環を形成する。特定の実施態様では、RはHである。特定の実施態様では、R及びRは共同して、6員環を形成する。特定の実施態様では、R及びRは共同して、7員環を形成する。他の特定の実施態様では、R及びRは共同して、8員環を形成する。他の特定の実施態様では、R及びRは共同して、7員環を形成し、YはSである。他の特定の実施態様では、RはHであり、YはCHである。他の特定の実施態様では、RはHであり、YはSである。他の特定の実施態様では、RはHであり、YはOである。
【0037】
は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環又はヘテロシクリルアルキルである。好ましい実施態様では、Rはアルキル又はシクロアルキルである。一実施態様では、各R基は、それぞれヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はアルキルチオで置換されていてもよい。本発明の一実施態様では、Rは、t-ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、又はフェニルある。特定の実施態様では、Rはシクロヘキシルである。他の実施態様では、Rはテトラヒドロピラン-4-イルである。他の特定の実施態様では、Rはイソプロピル(すなわちバリンアミノ酸側鎖)である。他の特定の実施態様では、Rはt-ブチルである。特定の実施態様では、Rは、それが含むアミノ酸又はアミノ酸類似体がL-立体配置になるように配向している。
【0038】
はH又はアルキルである。好ましい実施態様では、Rは、H、又はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。特定の好ましい実施態様では、RはH又はメチルである。最も好ましい実施態様では、Rはメチルである。他の特定の実施態様では、Rはt-ブチルである。好ましい実施態様では、Rは、それが含むアミノ酸又はアミノ酸類似体がL-立体配置になるように配向している。
【0039】
及びR'は独立して、H、ヒドロキシル、アミノ、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、ここで、それぞれアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよい。特定の実施態様では、R及びR'は双方ともHである。他の特定の実施態様では、Rはメチルであり、R'はHである。特定の実施態様では、R及びR'の一方はヒドロキシル(OH)であり、他方はHである。他の実施態様では、R及びR'の一方はアミノ、例えばNH、NHMe及びNHEtであり、他方はHである。特定の実施態様では、R'はHであり、RはH、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルである。特定の実施態様では、Rは、次の式:
【化20】

からなる群から選択される基である。
【0040】
及びR'はそれぞれ独立して、H又はアルキルである。好ましい実施態様では、R及びR'はH又はメチルである。特定の実施態様では、RはHであり、R'はメチルである。他の特定の実施態様では、Rはメチルであり、R'はHである。他の特定の実施態様では、R及びR'は双方ともメチルである。他の特定の実施態様では、R及びR'は双方ともHである。
【0041】
及びR'はそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール又はアラルキルである。特定の実施態様では、Rはアルキル、例えばメチルである。他の特定の実施態様では、Rはアリール、例えばフェニルである。他の特定の実施態様では、Rはアラルキル、例えばベンジルである。特定の実施態様では、R及びR'は同一、例えば双方ともメチル等のアルキルである。他の特定の実施態様では、Rはメチルであり、R'はHである。
【0042】
本発明の化合物は一又は複数の不斉炭素原子を含む。従って、化合物はジアステレオマー、エナンチオマー又はそれらの混合物として存在し得る。化合物の合成には、出発物質又は中間体として、ラセマート、ジアステレオマー又はエナンチオマーを使用することができる。ジアステレオマー化合物はクロマトグラフィー又は結晶化法により分離することができる。同様に、エナンチオマー混合物は、同技術又は当該分野で知られている他の技術を使用して分離することができる。各不斉炭素原子はR又はS配置に存在し、これらの配置の双方が本発明の範囲内である。好ましくは、本発明の化合物は、次の式I’:
【化21】

[上式中、X、Y、A、R、R、R、R、R'、R、R'、R及びR'はここで記載したものである]
の立体化学的配置を有する。
【0043】
また本発明は、上述した化合物のプロドラッグも含む。適切なプロドラッグには、生理学的条件下で親化合物を生成するために例えば加水分解されて放出される公知のアミノ-保護及びカルボキシ-保護基が含まれる。好ましいクラスのプロドラッグは、アミノ、アミジノ、アミノアルキレンアミノ、イミノアルキレンアミノ又はグアニジノ基の窒素原子が、ヒドロキシ(OH)基、アルキルカルボニル(-CO-R)基、アルコキシカルボニル(-CO-OR)、アシルオキシアルキル-アルコキシカルボニル(-CO-O-R-O-CO-R)基で、Rが一価又は二価の基であり、上述の通りであるもの、又は式-C(O)-O-CP1P2-ハロアルキルを有する基で、P1及びP2は同一か又は異なっており、H、低級アルキル、低級アルコキシ、シアノ、低級ハロアルキル又はアリールであるもので置換された化合物である。好ましくは、窒素原子は、本発明の化合物のアミジノ基の窒素原子の一つである。これらのプロドラッグ化合物は、上述した本発明の化合物と活性化アシル化合物とを反応させ、本発明の化合物中の窒素原子を活性化アシル化合物のカルボニルに結合させることで調製される。適切な活性化カルボニル化合物はカルボニル炭素に結合する良好な脱離基を有しており、アシルハロゲン化物、アシルアミン類、アシルピリジニウム塩、アシルアルコキシド、特にアシルフェノキシド、例えばp-ニトロフェノキシアシル、ジニトロフェノキシアシル、フルオロフェノキシアシル、及びジフルオロフェノキシアシルを含む。反応は一般的に発熱反応で、例えば−78から約50℃の低い温度にて不活性溶媒中で行われる。反応は通常は無機塩基、例えば炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウム、あるいは有機塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン等を含むアミンの存在下で行われる。プロドラッグの調製方法の一つは、1997年4月15日に出願された米国特許出願第08/843369号(PCT国際公開第9846576号に対応)に記載されており、その内容は出典を明示してその全体がここに援用される。
【0044】
式Iの特定の化合物には、次の式のものが含まれる:
【化22】


















【0045】
合成
本発明の化合物は、市販されている出発物質及び試薬から、標準的な有機合成技術を使用して調製される。本発明の化合物の調製に使用される合成手順は、化合物に存在している特定の置換基に依存しており、種々の保護及び脱保護が、有機合成における標準として必要とされ得ると理解される。一般的な合成スキームにおいて、本発明の化合物は、典型的なアミドカップリング手順を用い、アミノ酸残基類似体をカップリングさせることにより、典型的なペプチド化学技術を使用して調製される。スキームIにおいては、アミン-保護されたアミノ酸残基類似体がカップリングし、続いて脱保護されて、最終化合物が得られる。
【化23】

アミノ酸類似体は、任意の順序でカップリングしてよく、当該技術で常套的な固相支持体を使用して調製することができると理解される。
【0046】
本発明の化合物を調製するための中間体となるアミン置換された環Aは、商業的に入手されるか、又は標準的な有機化学技術を使用して市販試薬から調製される。例えば、フェニル-5-アミノテトラゾール等の1-アリール-5-アミノテトラゾール類は、アジ化ナトリウムと塩化第2水銀とを反応させることにより、市販のフェニルチオ尿素からスキーム2に従い調製され得る。
【化24】

【0047】
3-アリール-5-アミノ-1,2,3-トリアゾール類、例えば3-フェニル-3H-[1,2,3]トリアゾール-4-イルアミンは、J. Org. Chem, 1981, 46:856-9に記載の手順に従い調製することができ、フェニルアラニンとアミノアセトニトリルとを反応させる以下のスキーム3に例証される。
【化25】

同様に、5-アミノ-1-フェニル-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-カルボニトリルは、スキーム4に例証されるように、フェニルアミンと2-アミノ-マロンニトリルとを反応させることにより調製することができる。
【化26】

【0048】
4-アリール-5-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール類、例えば4-フェニル-フラザン-3-イルアミンは、Lakhanら(Indian Journal of Chemistry, Section B:Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry(1987), 26B(7), 690-2)に記載されている手順に従い調製することができ、ベンゾイルシアニドとヒドロキシルアミンとを反応させる以下のスキーム5に例証される。

4-アリール-3-アミノ-1,2,4-トリアゾール類、例えば4-フェニル-4H-[1,2,4]トリアゾール-3-イルアミンは、フェニルイソチオシアナートとヒドラジンカルボキシイミダミドとを反応させることによって調製することができ、スキーム6に例証されているように、ラネーニッケル触媒でチオール基が除去される5-アミノ-4-フェニル-4H-[1,2,4]トリアゾール-3-チオールが得られる。
【化27】

【0049】
4-アリール-5-アミノ-1,2,3-トリアゾール類、例えば3,5-ジフェニル-3H-[1,2,3]トリアゾール-4-イルアミンは、J. Org. Chem., 1990, 55:3351-62に記載されている手順に従い、ベンゼンアセトニトリルをアジドベンゼン(又はトリメチルシリルアジド、TMS-N)と反応させることにより、スキーム7に例証される。
【化28】

4-アリール-3-アミノピラゾール類、例えば4-フェニル-2H-ピラゾール-3-イルアミンは、欧州特許第269859号に記載された手順に従い調製することができ、ベンゼンアセトニトリルとオルトギ酸トリエチルエステルとを反応させるスキーム8に例証されており、ヒドラジンと反応させられる3-オキソ-2-フェニル-プロピオニトリルが得られる。
【化29】

【0050】
種々のヒドラジン類及びベンゼンアセトニトリルの誘導体を、スキーム9に例証されるように、置換された-4-アリール-アミノピラゾール類を調製するために使用することができる。
【化30】

【0051】
1-アリール-5-アミノピラゾール類、例えば2-フェニル-2H-ピラゾール-3-イルアミンは、フェニルヒドラジンと3-オキソ-プロピオニトリルとを反応させることによって調製することができる。種々のニトリル類を、スキーム10に例証されるように、ピラゾール環の3位に置換基を導入するために使用することができる。
【化31】

【0052】
3-アリール-4-アミノイミダゾール類、例えば3-フェニル-3H-イミダゾール-4-イルアミンは、スキーム11に例証されるように、オルトギ酸トリエチルエステル及びアミノアセトニトリルと、フェニルアミンとを反応させることにより調製され得る。イミダゾールの2位の置換は、以下のように、オルトギ酸トリエチルエステルの類似体を使用して導入することができる。
【化32】

【0053】
5-アリール-4-アミノイミダゾール類、例えば5-フェニル-3H-イミダゾール-4-イルアミンは、スキーム12に例証されるように、ホルムアミジンとアミノフェニルアセトニトリルとを反応させることにより調製され得る。イミダゾール環の2位の置換は、ホルムアミジンの類似体を使用して導入することができる。
【化33】

【0054】
4-アリール-[1,2,3]チアジアゾール-5-イルアミン類、例えば4-フェニル-[1,2,3]チアジアゾール-5-イルアミンは、スキーム13に例証される手順により調製することができる。2-ブロモ-1-フェニル-エタノンは、リチウムフタルイミドと反応し、置換生成物はヒドラジンカルボン酸エチルエステルと反応する。得られたヒドラジンカルボン酸エチルエステルは環化し、塩化チオニルと反応し、続いてヒドラジンによりフタルイミド基が除去されてチアジアゾールが形成される。
【化34】

【0055】
又はR'がH以外である本発明の化合物は、出発アミノ酸残基類似体、例えばNH-CH(R)-C(O)-OHが適切なアルデヒド又はケトンと反応し、所望するR及びR'置換基が得られる還元アミノ化による標準的な有機化学技術に従い調製され得る。スキーム14を参照。ついで、得られたR/R'置換アミノ酸中間体は、標準的なペプチドカップリング手順を使用し、次のアミノ酸中間体又は化合物の残余部分に結合させることができる。
【化35】

【0056】
特定の実施態様では、アラニンを1-メチルインドール-2-カルボキシアルデヒドと反応させ、1%のHOAc/DMFに溶解したシアノホウ化水素ナトリウムで還元すると、本発明の化合物を調製するのに使用され得るN-置換アラニン残基が得られる。スキーム15を参照。
【化36】

あるいは、R/R'置換基を導入する還元的アミノ化手順は、化合物の調製における最終工程である。
【0057】
本発明の化合物がH以外のR又はR'置換基を含む場合、それらは、所望されるアミンで離脱基を含む適切な酸中間体を置換することにより調製することができる。例えば、Br-CH(R)-C(O)-OHは、スキーム16に従い、アミンR-NH又はR-NH-R'で置換される。
【化37】

あるいは、R又はR'置換基を導入する置換反応は、スキーム17に例証されているように、化合物の調製における最終工程として実施することができる。
【化38】

【0058】
特定の実施態様では、2-ブロモプロピオン酸を、DMFに溶解した以下のアミン類と反応させ、置換が完了するまでバブリングすると、N-置換アミン残基が形成される:
【化39】

【0059】
、X及びXの任意の一又は複数が硫黄である本発明の化合物、すなわちチオアミドが導入された化合物は、確立された有機化学技術に従い調製することができる。例えば、Xが硫黄である化合物は、スキーム18に従い調製可能で、THFに溶解したFmoc保護されたアミノ酸残基類似体NH-CH(R)-COOHから出発し、−25℃まで冷却し、DIPEA、続いてイソブチルクロロホルマートを添加する。10分後、ジアミン、4-ニトロベンゼン-1,2-ジアミンを添加し、反応混合物を−25℃で2時間、ついで室温で一晩攪拌し続ける。THFを減圧吸引し、ついで、50%のEtOAc/ヘキサンを使用し、混合物をフラッシュクロマトグラフィーにかけると、生成物が生じる。Fmoc-アラニン誘導体、五硫化リン及び炭酸ナトリウムをTHFにおいて混合し、一晩攪拌する。溶液を濃縮し、80%のEtOAc/ヘキサンを使用する直接クロマトグラフィーにより、活性化チオアラニンが生じる。ついで、活性化チオアラニンと亜硝酸ナトリウムを酢酸において混合し、HOで希釈する。得られた沈殿物を濾過し、乾燥させると、生成物が生じる。DMFに双方を溶解させることにより、チオアラニンをOH-保護されたプロリンアミノ酸残基類似体にカップリングさせる。ついで、チオアミド生成物を20%のPIP/DMAを用い、15分間脱保護し、R/R'-N-CH(R)COOHアミノ酸残基類似体に結合させるために使用し、次にOH-脱保護し、アミノ置換されたA環中間体にカップリングさせる。また、Fmoc-保護されたチオアミドを、先ずアミノ置換されたA環中間体にカップリングさせ、次にFmoc脱保護し、さらにR/R'-N-CH(R)COOHアミノ酸残基類似体にカップリングさせる。
【化40】

【0060】
(有用性)
本発明の化合物は、カスパーゼへのIAPタンパク質の結合、特にカスパーゼ3及び7とのX-IAP結合相互作用を阻害する。また本化合物は、ML-IAPのSmacタンパク質への結合も阻害する。従って、本発明の化合物は、特に癌細胞において、アポトーシスシグナルに対して細胞を感受性化させ、又は細胞においてアポトーシスを誘発させるのに有用である。本発明の化合物は、IAPタンパク質が過剰発現している細胞にアポトーシスを誘発させるのに有用である。従って、本発明の化合物は、例えばBcl-2のアップレギュレーション又はBax/Bakのダウンレギュレーションにより、ML-IAPタンパク質からのSmacの放出が阻害されるように、ミトコンドリアアポトーシス経路を破壊するアポトーシスを細胞に誘発させるのに有用である。より広義には、化合物は、アポトーシスを被らなかった全ての癌のタイプの処置に使用することができる。このような癌のタイプの例には、神経芽細胞種、腸癌腫、例えば直腸癌、大腸癌、家族性大腸腺腫症癌、及び遺伝性非ポリポーシス大腸癌、食道癌、口唇癌、咽頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、腎臓癌、腎実質癌、卵巣癌、頸部癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛癌、膵癌、前立腺癌、精巣癌、乳癌、尿癌(urinary carcinoma)、黒色腫、脳腫瘍、例えば神経膠芽腫、星細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、及び末梢神経外胚葉性腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、肝細胞癌、胆嚢癌、気管支癌、小細胞肺癌、非-小細胞肺癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、及び形質細胞腫が含まれる。
【0061】
本発明の化合物は、アポトーシスシグナルに対して細胞を感受性化させるのに有用である。従って、本化合物は、放射線療法、又は細胞増殖抑制剤又は抗悪性腫瘍剤による化学療法の前、同時又は後に投与することができる。適切な細胞増殖を抑制する化学療法用化合物には、限定されるものではないが、(i)代謝拮抗剤、例えばシタラビン、フルダラビン、5-フルオロ-2'-デオキシウイリジン(uiridine)、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素又はメトトレキサート;(ii)DNA-断片化剤、例えばブレオマイシン、(iii)DNA-架橋剤、例えばクロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド又はナイトロジェンマスタード;(iv)挿入剤、例えばアドリアマイシン(ドキソルビシン)又はミトキサントロン;(v)タンパク質合成インヒビター、例えばL-アスパラギナーゼ、シクロヘキシミド、ピューロマイシン又はジフテリア毒素;(vi)トポイソメラーゼI毒素、例えばカンプトテシン又はトポテカン;(vii)トポイソメラーゼII毒素、例えばエトポシド(VP-16)又はテニポシド;(viii)微小管特異的薬剤(microtubule-directed agents)、例えばコルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン又はビンクリスチン;(ix)キナーゼインヒビター、例えばフラボピリドール(flavopiridol)、スタウロスポリン、STI571(CPG 57148B)又はUCN-01(7-ヒドロキシスタウロスポリン);(x)種々の治験薬、例えばチオプラチン(thioplatin)、PS-341、フェニルブチラート、ET-18-OCH、又はファルネシルトランスフェラーゼインヒビター(L-739749、L-744832);ポリフェノール類、例えばケルセチン、リスベラトロール、ピセタノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体;(xi)ホルモン類、例えばグルココルチコイド類又はフェンレチニド(fenretinide);(xii)ホルモンアンタゴニスト、例えばタモキシフェン、フィナステライド、又はLHRHアンタゴニストが含まれる。好ましい実施態様では、本発明の化合物は、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソール、タキソテール、及びマイトマイシンCからなる群から選択される細胞増殖抑制化合物と同時投与される。最も好ましくは、細胞増殖抑制化合物はドキソルビシンである。
【0062】
本発明で使用可能な他のクラスの活性化合物は、デスレセプターに結合することによりアポトーシスを誘発する又は感受性化可能なもの(「デスレセプターアゴニスト」)である。このようなデスレセプターのアゴニストには、デスレセプターリガンド、例えば腫瘍壊死因子a(TNF-α)、腫瘍壊死因子β(TNF-β、リンホトキシン-β)、LT-β(リンホトキシン-β)、TRAIL(Apo2L、DR4リガンド)、CD95(Fas、APO-1)リガンド、TRAMP(DR3、Apo-3)リガンド、DR6リガンド、並びに任意の該リガンドの断片及び誘導体が含まれる。好ましくは、デスレセプターリガンドはTNF-αである。より好ましくは、デスレセプターリガンドはApo2L/TRAILである。さらに、デスレセプターアゴニストは、デスレセプターに対するアゴニスト抗体、例えば抗CD95抗体、抗TRAIL-R1(DR4)抗体、抗TRAIL-R2(DR5)抗体、抗TRAIL-R3抗体、抗TRAIL-R4抗体、抗DR6抗体、抗TNF-R1抗体、及び抗TRAMP(DR3)抗体、並びに任意の該抗体の断片及び誘導体を含む。
【0063】
アポトーシスに対して細胞を感受性化させる目的のために、本発明の化合物はまた放射線療法と組合せて使用することができる。「放射線療法」なる語句は、異常増殖の処置に、電磁気又は微粒子放射線を使用することを意味する。放射線療法は、標的領域に送達される高線量放射線が腫瘍及び正常組織の双方において再生細胞の死を生じさせるという原理に基づいている。線量投与計画は、放射線吸収量(rad)、時間及び分画によって一般的に定められ、癌専門医により注意深く定められなくてはならない。患者が受ける放射線の量は種々の考慮事項に依存するが、最も重要な2つの考慮事項は、体の他の重要な構造体又は器官に対する腫瘍の位置と、腫瘍の広がり程度である。放射線療法剤の例は、限定されるものではないが、放射線療法において提供され、当該分野で知られている(Hellman, Principles of Radiation Therapy, Cancer, Principles I and Practice of Oncology, 24875 (Devitaら, 4版, vol 1, 1993)。放射線療法における近年の進歩には、3次元原体外照射、強度変調放射線療法(IMRT)、定位的放射線療法及び近接放射療法(組織内照射治療)が含まれ、後者は、インプラント「種」として、腫瘍中に直接放射線源が配される。これらの新規な処置法により、より多くの線量の放射線が腫瘍に送達せしめられ、標準的な外照射療法と比較した場合に、それらの効果が増大する理由となっている。
【0064】
β線放射性核種での電離放射線は、電離粒子(電子)の中程度の線エネルギー付与(LET)とその中距離(典型的には組織においては数ミリメートル)のために、放射線療法への応用において最も有用であると思われる。γ線は、より長い距離において低レベルの線量を送達する。α粒子は全く正反対で、非常に高いLET線量を送達するが、極度に制限された範囲を有し、よって、処置される組織の細胞と密に接触させなければならない。さらに、α放射体は一般的に重金属であり、これは、可能な化学を制限し、処置される領域からの放射性核種の漏出から過度の危険性をもたらす。処置される腫瘍に応じて、全種類の放射体が、本発明の範疇に入ると考えられる。
【0065】
さらに、本発明は非電離放射線のタイプ、例えば紫外線(UV)、高エネルギーの可視光線、マイクロ波照射(温熱治療)、赤外線(IR)及びレーザーを含む。本発明の特定の実施態様では、UV線が適用される。
【0066】
また本発明は、本発明の化合物と、治療用の不活性な担体、希釈剤又は賦形剤を含有する製薬用組成物又は医薬、並びにこのような組成物及び医薬を調製するための、本発明の化合物の使用方法も含む。典型的には、本発明の方法に使用される式Iの化合物は、周囲温度、適切なpHで、所望する純度にて、生理学的に許容可能な担体、すなわち生薬投与形態に使用される用量及び濃度でレシピエントに無毒な担体と混合することにより処方される。製剤のpHは、主として化合物の濃度及び特定の用途に依存するが、好ましくは約3〜8の範囲であってよい。適切な実施態様では、pH5の酢酸バッファー中で処方される。
ここで使用される阻害化合物は、好ましくは滅菌されている。通常、化合物は固体組成物として保管されるが、凍結乾燥された製剤又は水溶液も許容可能である。
【0067】
本発明の組成物は、良好な医療行為と一致した様式にて、処方、服用及び投与されるであろう。ここで考慮される要因には、処置される特定の疾患、処置される特定の哺乳動物、個人の患者の病状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医者に公知の他の要因が含まれる。投与される化合物の「有効量」は、このような考慮により決定され、カスパーゼとIAPとの相互作用を阻害し、アポトーシスを誘発させ、又はアポトーシスシグナルに対して悪性細胞を感受性化させるのに必要な最小量である。このような量は、正常細胞、又は全体として哺乳動物に毒性のある量以下であることが好ましい。
一般的に、一回当たりに非経口投与される本発明の化合物の当初の製薬的有効量は、約0.01〜100mg/kg、好ましくは一日当たり患者の体重に対して約0.1〜20mg/kgの範囲であり、使用される化合物の典型的な当初の範囲は、0.3〜15mg/kg/日である。経口単位用量形態、例えば錠剤及びカプセルは、好ましくは約25〜約1000mgの本発明の化合物を含有している。
【0068】
本発明の化合物は、経口、局所、経皮、非経口、皮下、腹膜内、肺内、及び鼻孔内、局部的治療が所望されている場合は病巣内部への投与を含む、任意の適切な手段により投与されてよい。非経口的注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与が含まれる。適切な経口投与形態の例は、25mg、50mg、100mg、250mg又は500mgの本発明の化合物と、約90〜30mgの無水ラクトース、約5〜40mgのクロスカルメロースナトリウム、約5〜30mgのポリビニルピロリドン(PVP)K30、及び約1〜10mgのステアリン酸マグネシウムを混合して含有する錠剤である。パウダー状成分をまず最初に混合し、次にPVPの溶液と混合する。得られた組成物を乾燥し、顆粒化し、ステアリン酸マグネシウムと混合し、一般的な装置を使用して錠剤の形態に圧密化する。エアゾール製剤は、リン酸バッファー等の適切なバッファー溶液に、例えば5〜400mgの本発明の化合物を溶解し、所望されるならば、塩類、例えば塩化ナトリウム等の緊張化剤(tonicifier)を添加することにより調製することができる。典型的には、溶液は、例えば0.2ミクロンのフィルターを使用して濾過され、不純物及び汚染物が除去される。
【実施例】
【0069】
実施例
本発明は、次の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を制限すると解釈されるものではない。ここで使用される略語は以下の通りである:
ACN:アセトニトリル;
Chg:シクロヘキシルグリシン;
DCM:ジクロロメタン;
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;
DME:1,2-ジメトキシエタン;
DMF:ジメチルホルムアミド;
DMSO:ジメチルスルホキシド;
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;
EEDQ:2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン;
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
HATU:O-(7-アゾベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート;
HOBt:N-ヒドロキシベンゾトリアゾール;
HBTU:2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスファート;
HPLC:高速液体クロマトグラフィー;
NBS:N-ブロモスクシンアミド;
TASF:トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリカート;
TEA:トリエチルアミン;
TFA:トリフルオロアセタート;
THF:テトラヒドロフラン。
【0070】
実施例1 6-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-5-オキソ-オクタヒドロ-チアゾール[3,2-a]アゼピン-3-カルボン酸エチルエステル
【化41】

乾燥DCM(30mL)に、N-(ジフェニルメチレン)グリシン-t-ブチルエステル1(3.0g、10.1mmol)、及びキラル触媒O-アリル-N-(9-アントラセニルメチル)-シンコジニウムブロミド(613mg、1.0mmol)が入った攪拌溶液に、水酸化セシウム(17g、101mmol)を添加した。反応体をドライアイスアセトン浴において−78℃まで冷却し、4-ブロモ-1-ブテンを滴下した。添加後、N下、−48℃で48時間、反応体を激しく攪拌した。エチルエーテル、続いてHOを添加した。有機相を分離し、HOで2回、ブラインで1回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。ヘキサンに0-10%のEtOAc勾配のあるSiOクロマトグラフィーにより、生成物を精製したところ、65%の収率で2が得られた。
【0071】
【化42】

乾燥MeOH(50mL)に2(1.52g、4.3mmol)が入った攪拌溶液に、NaOAc(720mg、8.6mmol)とNHOH・HCl(540mg、7.6mmol)を添加した。N下、室温で2時間攪拌した。DCMと0.1NのNaOHを添加した。水相を分離し、DCMで3回抽出し、NaSOで乾燥させ、DCMフラクションを組合せて濃縮した。0.05%のTEAとDCMに0-10%のMeOHが入ったもので、SiOクロマトグラフィーにより生成物を精製したところ、70%の収率で3が得られた。
【0072】
【化43】

乾燥DCM(20mL)に3(610mg、3.3mmol)が入った溶液に、トリエチルアミン(550μL、3.9mmol)とクロロギ酸ベンジル(550μL、3.9mmol)を添加した。反応体を室温で2時間攪拌した。溶液を濃縮し、ヘキサンに0-30%のEtOAc勾配のあるSiOクロマトグラフィーにより精製したところ、66%の収率で4が得られた。
【化44】

下、THF(20mL)に4(577mg、1.8mmol)が入った攪拌溶液に、BH・THFを添加した。1時間後、3NのNaOH(300μL、0.9mmol)とH(306μL、2.7mmol)を添加した。反応体を一晩攪拌し、続いてHOで希釈し、エチルエーテルで2回抽出し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。ヘキサンに10-45%のEtOAc勾配のあるSiOクロマトグラフィーにより、生成物を精製したところ、50%の収率で5が得られた。
【0073】
【化45】

1気圧H下、MeOH(2mL)に5(71mg、0.21mmol)が入った攪拌溶液に、10%の水酸化パラジウム・炭(30mg)を添加した。30分後、反応が終了した。反応体をセライトで濾過し、濃縮したところ、定量的収率で6が得られた。
【化46】

ACN(2mL)に6(42mg、0.21mmol)が入ったものに、DIPEA(40μL、0.23mmol)と共に、カルボエトキシフタルイミド(50mg、0.23mmol)を添加し、室温で2時間攪拌した。HO(1mL)を添加し、さらに10分攪拌した。ACNを蒸発させ、DCMと10%のクエン酸を添加した。水相を分離させ、DCMで3回抽出し、DCM部分を組合せ、NaSOで乾燥させ、濃縮したところ、95%の収率で7が得られた。
【0074】
【化47】

塩化オキサリル(561μL、6.60mmol)をDCM(35mL)に溶解させ、−78℃まで冷却し、5分間攪拌し、ついでDCM(2.5mL)にジメチルスルホキシド(870μL、12.3mmol)が入った溶液を添加した。5分攪拌した後、ジクロロメタン(20mL)に7(1.05g、3.15mmol)が入ったもの、続いてトリエチルアミン(2.37mL、17.0mmol)を添加した。反応体を室温までゆっくりと温めた。DCMとHOを添加し、水相を分離し、DCMで2回抽出した。DCM部分を組合せ、NaSOを通して濾過し、濃縮したところ、95%の収率で8が得られた。
【化48】

L-システインエチルエステルヒドロクロリド(643mg、3.5mmol)と酢酸カリウム(343mg、3.5mmol)を、攪拌したEtOH(13mL)に溶解させ、氷水浴で0℃まで冷却した。化合物8をEtOH(13mL)に溶解させ、添加した。反応体を0℃で4時間攪拌し、LCMSで、8が2つのジアステレオマー生成物に転換していることを確認した。反応体を濾過し、EtOHを蒸発させ、DCMに再溶解させ、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮したところ、定量的収率でシアステレオマー9の1:1混合物が得られた。
【0075】
【化49】

ジアステレオマーを1:1のTFA:DCM(10mL)に再溶解させ、室温で1時間攪拌した。LCMSにより、10に完全に転換したことが示された。反応体を濃縮したところ、2つのジアステレオマーで95%の収率にて10が得られた。
【化50】

THF(20mL)に10(675mg、1.67mmol)が入った攪拌溶液に、EEDQ(619mg、2.50mmol)を添加した。室温で2日間攪拌した。減圧下、THFを除去し、生成物をEtOAcに再溶解させた。有機相を0.5NのHCl、0.5%のNaHCO、HO、ブラインで洗浄した。EtOAc溶液をMgSOで乾燥させ、濃縮した。HOに10-70%のACNが入ったものによる逆相HPLCを介して生成物を精製したところ、2つのジアステレオマー11が付与され、ジアステレオマー1は20%の収率、ジアステレオマー2は18%の収率であった。
【0076】
実施例2 1-[2-シクロヘキシル-2-(2-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-アセチル]-ピロリジン-2-カルボン酸(2-フェニル-2H-ピラゾール-3-イル)-アミド
【化51】

無水ジクロロメタン(300μL)に、Boc-MeAla-Chg-Pro-OH(47.0mg、0.107mmol)とピリジン(26μL、0.32mmol)が入った溶液を、0℃まで冷却し、ジクロロメタン(54μL、2.0M、0.11mmol)に塩化オキサリルが入った溶液を、10分以上かけて滴下した。混合物を0℃で15分、ついで周囲温度で45分攪拌し、ジクロロメタン(0.5ml)に5-アミノ-1-フェニルピラゾール(15.9mg、0.100mmol;TCIアメリカ・カタログ(America catalog)# A0174)及びピリジン(15.5μl、0.191mmol)が入った溶液を添加した。得られた混合物を周囲温度で16時間攪拌し、ジクロロメタンで20mlに希釈し、0.2Nの水酸化ナトリウム水(20ml)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサンに60%の酢酸エチル、ついで100%の酢酸エチル)により精製したところ、黄色の油:m/z581(M+H)が生じた。ジクロロメタン(2mL)に5%のトリフルオロ酢酸が入ったもので油を処理し、18時間後、溶媒を真空で除去した。得られた油(29.3mg、2工程以上で57%の収率)を逆相HPLCでさらに精製したところ、生成物(TFA塩、9.6mg、15%の収率):m/z481(M+H)、503(M+Na)が生じた。
【0077】
実施例3 4-フェニル-[1,2,3]チアジアゾール-5-イルアミン
【化52】

2-ブロモアセトフェノンをDMF(3容量)に溶解させ、カリウムフタルイミド(1当量)を添加した。反応体は、当初はゆっくりと発熱し、室温で一晩攪拌した。DMFを真空で除去し、反応体をDCM(〜3容量)、続いて0.1NのNaOH(〜3容量;1:1aq/org)で希釈し、激しく攪拌し、ついで抽出した。ある固形物質を含有する有機相を真空で濃縮し、得られた固形物をジエチルエーテル中でスラリーにし、吸引濾過により収集したところ、95%の収率で白色の結晶状固形物として得られた。
【0078】
【化53】

化合物(a)、エチルカルバザート(1.5当量)及びTsOH-H,O(0、1当量)をトルエン(5容量)中で組合せ、加熱し、Dean-Starkトラップを使用して還流し、水を除去した。溶液は暗赤色に変化し、2時間でTLCにより完了した。約半分のトルエンを蒸留により除去し、溶液を室温まで冷却し、真空で濃縮した。得られた固形物をEtOH(攪拌に必要な最小量)でスラリーにし、加熱し、30分還流し、ついで氷上で冷却して、双方の異性体の沈殿を容易にした。固形物を吸引濾過により収集し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させたところ、〜90%の収率で、オフホワイト色の固形物として化合物(b)の双方の異性体が得られた。
【0079】
【化54】

氷冷された塩化チオニル(4当量、〜0.85容量)に、(b)の異性体の混合物を(発熱をコントロールするために)少しずつ滴下した。氷浴を取り除き、反応体を室温まで温め、一晩攪拌した。塩化チオニルを真空で除去し、DCM(1容量)を添加し、反応体を0.1MのNaOH(1容量;1:1aq/org)と共に攪拌した。懸濁液を抽出し、有機物を真空で濃縮し、30分間、還流EtOAc(容易に攪拌するのに必要な最小量)でスラリーにし、室温まで冷却し、吸引濾過により収集し、最小の冷EtOAcで洗浄したところ、〜80%の収率で、オフホワイト色の結晶状固形物として(c)が得られた。
【0080】
【化55】

EtOH(1容量)にヒドラジン水和物(2.4当量)が入った溶液を、EtOH(8容量)に(c)が入った還流溶液に滴下した。ほとんど即座に沈殿物が形成され、反応は〜3時間でTLCにより完了した。溶液を室温まで冷却し、フタルイミド開裂副産物を濾過して、DCMで洗浄した。結晶の形成が観察されるまで、EtOH/DCM濾液を真空で濃縮した。この懸濁液を一晩攪拌し、結晶/固形物の混合物を吸引濾過により収集し、有色の不純物が除去されるまで、冷EtOHで洗浄したところ、〜75%の収率で、オフホワイト色の結晶性固形物としてチアジアゾールアミン(d)が得られた。
【0081】
実施例4 1-[2-シクロヘキシル-2-(2-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-アセチル]-ピロリジン-2-カルボン酸(4-フェニル-[1,2,3]チアジアゾール-5-イル)-アミド
【化56】

Boc-L-Pro(2当量)、HOBt(1.9当量)、EDC-HCl(1.9当量)及びDIPEA(5当量)を、DMF(10-15容量)に溶解させた。ついで、これにチアジアゾールアミン(d)を添加した。反応体は、当初はゆっくりと発熱し、75℃まで加熱し、一晩攪拌し、室温まで冷却させ、DMFを真空で部分的に除去した。EtOAc(10-15容量)で希釈し、続いて1MのHCl(2x)、NaHCO(1x)及びブライン(1x)(1:1aq/org)で洗浄した。有機相を真空で濃縮し、得られた固形物を、30分間、還流MeCN(容易に攪拌するのに必要な最小量)でスラリーにし、室温まで冷却した。吸引濾過により、〜77%の収率で、オフホワイト色の結晶状固形物としてBoc-保護された共役生成物が得られた。Boc-保護された生成物を4MのHCl/ジオキサン(4-5当量酸)及びMeCN(ジオキサン溶液に対して1容量当量)の溶液に懸濁させ、LCMSにより、〜1時間で完全な脱保護が示されるまで、室温で攪拌した。反応混合物を真空で濃縮し、得られた固形物を、還流MeCN(容易に攪拌するのに必要な最小量)で強制的にスラリーにし、室温まで冷却し、吸引濾過により固形物を収集し、残った色素がケーキから除去されるまで、冷MeCNで洗浄したところ、ほぼ定量的収率でオフホワイト色の固形物としてHCl塩(e)が生じた。
【0082】
【化57】

HCl塩(e)をDMF(10-15容量)及びDIPEA(5当量)に溶解させた。これに、Boc-L-Chg(1.5当量)、HOBt(1.4当量)及びEDC-HCl(1.4当量)を添加した。LCMSにより、〜2時間後にカップリングが完了した。反応体をEtOAc(15容量)で希釈し、1MのHCl(2x)、NaHCO(1x)、及びブライン(1x)(1:1aq/org)で洗浄した。有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られた固形物を、EtOH/ヘキサン(20:80)(容易に攪拌するのに必要な最小量)でスラリーにし、濾過したところ、〜80%の収率で、綿毛のような白色の固形物として、Boc-保護された共役生成物が得られた。Boc-保護されたものを4MのHCl/ジオキサン(4-5当量酸)及びMeCN(ジオキサン溶液に対して0.25容量当量)の溶液に溶解させ、LCMSにより、〜1時間で完全な脱保護が示されるまで、室温で攪拌した。反応体を、トルエン(2x)(脱保護溶液と同容量)で乾固濃縮したところ、ほぼ定量的収率で白色の結晶状固形物としてHCl塩(f)が生じた。
【0083】
【化58】

HCl塩(f)をDMF(10-15容量)及びDIPEA(5当量)に溶解させた。これに、Boc-L-N-メチル-Ala(1.5当量)、HOBt(1.4当量)及びEDC-HCl(1.4当量)を添加した。LCMSにより、〜2時間後にカップリングが完了した。反応体をEtOAc(15容量)で希釈し、1MのHCl(2x)、NaHCO(1x)、及びブライン(1x)(1:1aq/org)で洗浄した。有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、〜85%の収率で、ベージュ色の泡状固形物として、Boc-保護された共役生成物が得られた。Boc-保護された共役体を4MのHCl/ジオキサン(4-5当量酸)及びMeCN(ジオキサン溶液に対して0.25容量当量)の溶液に溶解させ、LCMSにより、〜1時間で完全な脱保護が示されるまで、室温で攪拌した。反応体を、トルエン(2x)(脱保護溶液と同容量)で乾固濃縮し、得られた固形物をMTBE/EtOAc(70:30)(容易に攪拌するのに必要な最小量)でスラリーにし、濾過し、濃縮したところ、オフホワイト色のフリーフロー固形物として粗物(g)が生じた。粗HCl(g)をMeOH(最小4容量)に懸濁させ、65℃で攪拌しながら溶解させた。温めた酢酸イソプロピル(6-8容量)を2回に分けて添加し、約60℃の温度に保持し、溶液を攪拌しながら冷却した。急速に結晶化が生じ、懸濁液を数時間、室温で攪拌し、ついで、固形物を吸引濾過で収集する前に、1時間、0℃で攪拌し、MeOH/iPrOAc(1:4、2容量)で洗浄し、乾燥させたところ、(f)から〜80%の収率で、白色/オフホワイト色の結晶状固形物として、最終的に生成物が生じた。
【0084】
実施例5 2-[tert-ブトキシカルボニル-(1H-ピロール-2-イルメチル)-アミノ]-プロピオン酸
【化59】

アラニンエチルエステル(5g、32.5mmol)、ピロール-2-カルボキシアルデヒド(3.1g、32.5mmol)、シアノホウ化水素ナトリウム(2.04g、32.5mmol)及びAcOH(1%)をDMF中で混合し、一晩攪拌した。反応体をHOで急冷し、DMFを蒸発させた。混合物をEtOAcで希釈し、0.1NのNaOHで洗浄し、乾燥させ、濃縮したところ、2.5gの生成物が生じた。得られたエステル(2.5g、12.8mmol)、ジ-tert-ブチルジカルボナート(3.06g、14mmol)を、NaHCOと共にTHF、HO中で混合し、一晩攪拌した。THFを蒸発させ、混合物をEtOAcで希釈し、1NのNaOH、飽和NHCl及びブラインで洗浄した。乾燥後、混合物を濃縮したところ、3.3gのBoc-保護されたエステルが生じた。Boc-保護されたエステル(1.67g、5.6mol)、水酸化リチウム一水和物(284mg、6.77mmol)を、0℃で、THF及びHO中で混合した。THFを減圧吸引し、溶液を希HSOで酸性化させ、EtOAcで2回抽出した。有機相を組合せ、乾燥させ、蒸発させた。
【0085】
実施例6 テトラヒドロピラニルグリシン
テトラヒドロピラニルグリシンをNovaBiochem社から購入するか、又は文献:Ghosh, A. K.; Thompson, W. J.; holloway, M. K.; McKee, S. P.; Duong, T. T.; Lee, H. Y.; Munson, P. M.; Smith, A. M.; Wai, J. M; Darke, P. L.; Zugay, J. A.; Emini, E. A.; Schleife, W. A.; Huff, J. R.; Anderson, P. S. J. Med. Chem, 1993, 36, 2300-2310に従い合成した。
【0086】
実施例7 ピペリジニルグリシン
ピペリジニルグリシンを、文献:Shieh, W-C.; Xue, S.; Reel, N.; Wu, R.; Fitt, J.; Repic, O. Tetrahedron: Asymmetry, 2001, 12, 2421-2425に従い合成した。
実施例8 4,4-ジフルオロシクロヘキシルグリシン
4,4-ジフルオロシクロヘキシルグリシンを米国特許第2003/0216325号に記載の手順に従い作製した。
【0087】
実施例9 Boc(S)-2-アミノ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)酢酸
【化60】

Sheih、(Tetrahedron: Asymmetry, 2001, 12, 2421-2425)の手順に従い、ケトンa(8.4g)とEtOAc(30mL)の溶液を、N-Cbz-ホスホノグリシンメチルエステルb、TMG(4.5mL)及びEtOAc(30mL)の溶液に添加した。溶液を48時間室温で保持し、ついで1NのHCl(3x50mL)、ブライン(1x50mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をセライトに吸着させ、クロマトグラフィーで精製し、さらにEtOAc/ヘキサンからの再結晶により精製したところ、5.2gの生成物cが提供された。
【0088】
【化61】

Sheih、(Tetrahedron: Asymmetry, 2001, 12, 2421-2425)の手順に従い、エネアミド(eneamide)c(5.0g)、(S,S)-Me-BPE-Rh(I)(1.5g、Strem Chemicals, Newburyport, MA)、及びMeOH(100mL)の溶液を、70psiのH下、48時間、激しく振揺した。減圧下で溶媒を除去した。残留物をEtOAcに溶解させ、SiOを通し、さらにEtOAcを用いて濾過した。溶媒を減圧下で除去したところ、無色の固形物として、4.0gの生成物dが提供された。
【化62】

Cbz-カルバマートd、(4.0g)BocO、(2.9g)、20%のPd(OH)・C(1.0g)及びMeOH(30mL)の混合物を、H雰囲気下で6時間保持した。混合物をセライトを通し、MeOHを使用して濾過した。減圧下で溶媒を除去したところ、直接得られる、4.5gの残留物eが提供された。
【0089】
【化63】

上述からの残留物eを、HO(10mL)、AcOH(30mL)、THF(5mL)及びジクロロ酢酸(3mL)に溶解させ、室温で一晩保持した。水(5mL)を添加し、HPLC-MSでモニターしながら、加水分解が完了するまで溶液を保持した。ガスの発生が停止するまで、固体状のNaCOを注意深く添加し、混合物をNaHCO水で希釈し、10%のEtOAc/DCMで抽出した。組合せた有機相をブラインで1回洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をクロマトグラフィーで精製したところ、2.9gの生成物fが提供された。
【化64】

ケトンf(1.5g)、MeOH(50ml)の混合物を、0℃で20分間、NaBH4(290mg)で処理した。10%のクエン酸水を用い、混合物を〜pH1に酸性化させ、減圧下でMeOHを除去した。残留物を水で希釈し、20%のEtOAc/DCMで抽出した。組合せた有機相をブラインで1回洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をクロマトグラフィーで精製したところ、1.17gの生成物gと0.23gの生成物hが提供された。
【化65】

エステルg(1.17g)、LiOH・H2O(160mg)、THF(3mL)及び水(4.5mL)の混合物を、室温で一晩激しく攪拌した。混合物をブラインで希釈し、EtOAcで完全に抽出した。組合せた有機相をブラインで1回洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、酸i(525mg)が提供された。
【0090】
実施例10 化合物29
【化66】

10mlのDMFにアミンa(1.56mmol)、2-ブロモプロピオン酸(0.72g、4.68mmol)、BOP(2.1g、4.68mmol)及びDIPEA(1.6ml、9.36mmol)が入った混合物を、室温で2時間攪拌した。LCMS分析には、反応が完了したことが示された。反応体に100mlのEtOAcを添加し、有機相を飽和NaHCO、続いてブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、乾固濃縮した。50%のEtOAc/ヘキサンを使用するクロマトグラフィーにより、粗物質を精製したところ、化合物bが得られた。
化合物b(0.832g、1.5mmol)を、3mlのDMFにエタノールアミン(200μl、2.73mmol)が入ったもので処理し、完了させるために一晩攪拌した。反応混合物を逆相HPLCで精製したところ、2つのジアステレオマーc(53mg)とd(化合物29)(150mg)が得られた。
【0091】
実施例11 N-Boc-N-シクロプロピルメチル-L-アラニン
【化67】

L-アラニンメチルエステルヒドロクロリドa(5g、35.8mmol)及びシクロプロパンカルボキシアルデヒドb(2.67ml、35.8mmol)を、50mlのTHFw/1%のAcOHに懸濁させた。5mlのCHOHを添加し、作製された曇った溶液を透明に変化させた。NaCNBH(2.25g、35.8mmol)を添加し、反応混合物を一晩攪拌した。1NのNaOH水を添加することにより、反応体を急冷し、EtOAcで2回抽出し、有機相をNaSO上で乾燥させ、乾固濃縮した。粗物質を30%のEtOAc/ヘキサン(ニンヒドリンにより染色)を用いるクロマトグラフィーにより精製したところ、化合物c(1g、18%)が得られた。
化合物c(1g、6.37mmol)とジ-t-bocジカルボナート(2.1g、9.55mmol)をTHF(20ml)及びHO(20ml)で希釈し、NaHCO(1.3g、15.9mmol)を添加した。完了させるために、反応混合物を一晩攪拌した。減圧下でTHFを除去し、水相をEtOAcで3回抽出した。組合せた有機相を1NのNaOH、飽和NHCl、続いてブラインで洗浄し、乾固濃縮した。Boc-保護された化合物d(1.39g、5.40mmol)を、THF(20ml)及びHO(20ml)にLiOH.HO(1.14g、27mmol)が入ったものと共に、室温で一晩攪拌した。THFを除去し、10%のクエン酸を添加することにより、水相をpH=4に調節し、EtOAcで3回洗浄した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、濃縮した。粗物を、0%-50%のアセトニトリル/HOで溶出する逆相C-18カラムで精製したところ、白色の固形物として純粋な化合物(794mg)が得られた。
【0092】
実施例12 酸フッ化物カップリング手順
【化68】

無水ジクロロメタン(23ml)に、Boc-MeAla-Chg-Pro-OH(2.3mmol)とピリジン(6.9μmol)が入った溶液を0℃で冷却し、フッ化シアヌル(2.3mmol)を、30秒以上かけて滴下した。混合物を、0℃で15分、周囲温度で5時間攪拌し、ついで水で急冷した。混合物をジクロロメタン(全体で100ml)で3回抽出し、組合せた有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、真空で濃縮したところ、さらなる精製をすることなく直接使用される、無色透明の油としてペプチド酸フッ化物が生じた。
ジクロロメタン(2.5ml)に粗酸フッ化物(0.50mmol)とピリジン(1.5mmol)が入った溶液を、固体状アミン(0.50mmol)に添加し、得られた混合物を周囲温度又は50℃(密封容器)で攪拌した。混合物を重炭酸ナトリウム水に注ぎ、ジクロロメタン(全体で100ml)で3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗ペプチドアミドはさらなる精製をすることなく直接使用された。
【0093】
実施例13 1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミン
【化69】

1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミンは、TCIアメリカ(カタログ# A0174)から商業的に入手可能である。
実施例14 3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミン
【化70】

3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミンは、TCIアメリカ(カタログ# A1311)から商業的に入手可能である。
【0094】
実施例15 5-フェニルチアゾール-2,4-ジアミン
【化71】

5-フェニルチアゾール-2,4-ジアミンは、アクロス・オーガニクス(Acros Organics)(カタログ# 11234-0010)から商業的に入手可能である。
実施例16 5-(トリフルオロメチル)-4-フェニルチオフェン-3-アミン
【化72】

5-(トリフルオロメチル)-4-フェニルチオフェン-3-アミンは、アクロス・オーガニクス(カタログ# SEW03133DA)から商業的に入手可能である。
【0095】
実施例17 4-フェニル-1H-ピラゾール-3-アミン
【化73】

4-フェニル-1H-ピラゾール-3-アミンを、E. L. Andersonら; J. Med. Chem., 1964, 7, 259-268に記載の手順に従い調製した。
実施例18 5-メチル-4-フェニル-1H-ピラゾール-3-アミン
【化74】

5-メチル-4-フェニル-1H-ピラゾール-3-アミンを、E. L. Andersonら; J. Med. Chem., 1964, 7, 259-268に記載の手順に従い調製した。
【0096】
実施例19 3-フェニル-3H-1,2,3-トリアゾール-4-アミン
【化75】

3-フェニル-3H-1,2,3-トリアゾール-4-アミンを、K. M. Baines, T. W. Rourke, K. Vaughan; J. Org. Chem., 1981, 46, 856-859に記載の手順に従い調製した。
実施例20 4-フェニルイソオキサゾール-5-アミン
【化76】

4-フェニルイソオキサゾール-5-アミンを、H. Peeters, W. Vogt; 欧州特許第43024号に記載の手順に従い調製した。
【0097】
実施例21 3-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミン
【化77】

3-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミンを、C. Chen, K. Wilcoxen, J. R. McCarthy;Tetrahedron Lett., 1988, 39, 8229-8232に記載の手順に従い調製した。
実施例22 1-メチル-3-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミン
【化78】

1-メチル-3-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミンを、C. Chen, K. Wilcoxen, J. R. McCarthy;Tetrahedron Lett., 1988, 39, 8229-8232に記載の手順に従い調製した。
【0098】
実施例23 1-メチル-5-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミン
【化79】

1-メチル-5-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミンを、C. Chen, K. Wilcoxen, J. R. McCarthy; Tetrahedron Lett., 1988, 39, 8229-8232に記載の手順に従い調製した。
実施例24 3-メチル-4-フェニルイソオキサゾール-5-アミン
【化80】

3-メチル-4-フェニルイソオキサゾール-5-アミンを、H. Peeters, W. Vogt; 欧州特許第43024号に記載の手順に従い調製した。
【0099】
実施例25 1-フェニル-1H-テトラゾール-5-アミン
【化81】

1-フェニル-1H-テトラゾール-5-アミンを、R. A. Batey, D. A. Powell; Org. Lett., 2000, 2, 3237-3240に記載の手順に従い調製した。
実施例26 4-フェニル-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン
【化82】

4-フェニル-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミンを、R. Lakhan, O. P. Singh; Ind. J. Chem., 1987, 26B, 690-692に記載の手順に従い調製した。
【0100】
実施例27 1-アミノ-5-フェニル-1H-テトラゾール
【化83】

1-アミノ-5-フェニル-1H-テトラゾールを、T. L. Gilchrist, G. E. Gymer, C. W. Rees; J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1975, 1747-1750に記載の手順に従い調製した。
実施例28 4-アミノ-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール
【化84】

4-アミノ-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾールを、A. A. Ikizler, N. Yildirim; J. Heterocyclic Chem., 1998, 35, 377-380に記載の手順に従い調製した。
【0101】
実施例29 3-フェニルチオフェン-2-アミン
【化85】

3-フェニルチオフェン-2-アミンを、Y. Yoshikawaら; 欧州特許第737682号(米国特許第5747518号)に記載の手順に従い調製した。
実施例30 2-フェニルチオフェン-3-アミン
【化86】

2-フェニルチオフェン-3-アミンを、Y. Yoshikawaら; 欧州特許第737682号(米国特許第5747518号)に記載の手順に従い調製した。
【0102】
実施例31 4-フェニルチオフェン-3-アミン
【化87】

4-フェニルチオフェン-3-アミンを、G. Kirsch, D. Cagniant, P. Cagniant; J. Heterocyclic Chem., 1982, 19, 443-445に記載の手順に従い調製した。
実施例32 5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-チオール
【化88】

5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-チオールを、A. H. Cook, I. Heilbron, A. L. Levy; J. Chem. Soc., 1947, 1598-1609に記載の手順に従い調製した。
実施例33 2-(メチルチオ)-4-フェニルチアゾール-5-アミン
【化89】

2-(メチルチオ)-4-フェニルチアゾール-5-アミンを、A. H. Cook, I. Heilbron, A. L. Levy; J. Chem. Soc., 1947, 1598-1609に記載の手順に従い調製した。
【0103】
実施例34 5-アミノ-2-(メチルスルフィニル)-4-フェニルチアゾール
【化90】

酢酸(3.0ml)に5-アミノ-2-(メチルスルファニル)-4-フェニルチアゾール(305mg、1.37mmol)が入ったものに、周囲温度で過酸化水素水(660μl、30重量%、6.9mmol)を滴下した。4時間後、混合物はジクロロメタン(60ml)と水(60ml)の間で分配した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、純粋な5-アミノ-2-(メチルスルフィニル)-4-フェニルチアゾール(285mg、87%)が生じた。
【0104】
実施例35 5-アミノ-2-(メチルスルホニル)-4-フェニルチアゾール
【化91】

ジクロロメタン(5.0ml)に5-アミノ-2-(メチルスルファニル)-4-フェニルチアゾール(302mg、1.36mmol)が入ったものに、0℃で冷却しつつ、3-クロロ過安息香酸(638mg、77重量%、2.9mmol)を滴下した。混合物をジクロロメタン(3.0ml)で希釈し、5分後、周囲温度まで温めた。3時間後、さらなる量の3-クロロ過安息香酸(305mg、77重量%、1.4mmol)を滴下した。20時間後、混合物をチオ硫酸ナトリウム(2ml、1.0 M)で処理し、飽和した重炭酸ナトリウム水に注ぎ、ジクロロメタン(全体で100ml)にて3回抽出した。組合せた有機相を飽和した重炭酸ナトリウム水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、暗褐色の泡が得られた。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、純粋な5-アミノ-2-(メチルスルホニル)-4-フェニルチアゾール(90mg、26%)が生じた。
【0105】
実施例36 5-アミノ-2-(アミノスルホニル)-4-フェニルチアゾールと5-アミノ-4-フェニルチアゾール
【化92】

酢酸(20ml)に5-アミノ-2-メルカプト-4-フェニルチアゾール(1.01g、4.83mmol)と無水フタル酸(716mg、4.84mmol)が入ったものを、100℃で64時間加熱し、放置して冷却した。混合物を冷水(150ml)で希釈し、濾過により沈殿物を収集し、水(50ml)で洗浄し、高真空下(1.46g、90%)で乾燥させた。フタルイミドは少量のジスルフィドで汚染されているが、さらなる精製をすることなく使用される。
【化93】

0℃で、酢酸(4.5ml)と水(0.5ml)に2-メルカプト-4-フェニル-5-フタルイミド-チアゾール(203mg、600μmol)が入ったものを、N-クロロスクシンイミド(243mg、1.82mmol)を用いて一回で処理した。混合物を0℃で10分間攪拌し、1時間、周囲温度まで温め、ついでジクロロメタン(50ml)と水(50ml)の間で分配した。水相をジクロロメタン(2x25ml)で2回以上抽出し、組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、真空で濃縮したところ、精製をすることなく使用される、2-(クロロスルホニル)-4-フェニル-5-フタルイミド-チアゾール(主成分)と4-フェニル-5-フタルイミド-チアゾール(約2:1)の混合物(231mg)が生じた。
【化94】

ジクロロメタン(10ml)に塩化スルホニルと4-フェニル-5-フタルイミド-チアゾール(231mg)の粗混合物が入ったものを、周囲温度でメタノール(900μl、2.0M)中、アンモニアを滴下して処理した。10分後、混合物を真空で濃縮した。残留物をエタノール(10ml)に懸濁させ、エタノール性ヒドラジン(660μl、1.0M、660μmol)で処理し、還流して加熱した。1.5時間後、エタノール性ヒドラジンのさらなる部分を添加し(660μl、1.0M、660μmol)、15時間還流し続けた。冷却した混合物を濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、純粋な5-アミノ-2-(アミノスルホニル)-4-フェニルチアゾール(3工程で56mg、36%)、及び5-アミノ-4-フェニルチアゾール(3工程で17mg、16%)が生じた。
【0106】
実施例37 5-アミノ-2-(tert-ブチルスルファニル)-4-フェニルチアゾール
【化95】

水(1.0ml)とtert-ブタノール(82mg、1.1mmol)に5-アミノ-2-メルカプト-4-フェニルチアゾール(210mg、1.01mmol)が入った懸濁液に、約20℃まで冷却しながら濃硫酸(3.0ml)を添加した。約1.5時間後、水にtert-ブタノールのさらなる部分が入ったもの(300μl、1.0M、300μmol)を添加した。1.5時間後、混合物を過剰の重炭酸ナトリウム水に注ぎ、ジクロロメタン(全体で120ml)にて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、5-アミノ-2-(tert-ブチルスルファニル)-4-フェニルチアゾール(220mg、82%)が生じた。
【0107】
実施例38 5-アミノ-2-(tert-ブチルスルフィニル)-4-フェニルチアゾール
【化96】

酢酸(5.0ml)に5-アミノ-2-(tert-ブチルスルファニル)-4-フェニルチアゾール(102mg、385μmol)が入ったものに、周囲温度で過酸化水素水(218μl、30重量%、1.9mmol)を滴下した。5時間後、混合物はジクロロメタン(50ml)と水(50ml)の間で分配した。水相を分離し、ジクロロメタン(20ml)で抽出した。組合せた有機相を飽和した重炭酸ナトリウム水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮したところ、本質的に純粋な5-アミノ-2-(tert-ブチルスルフィニル)-4-フェニルチアゾール(110mg、収量)が生じた。
【0108】
実施例39 5-アミノ-4-フェニル-2-(トリフルオロメチルスルファニル)チアゾール
【化97】

酢酸(5.0ml)に5-アミノ-2-メルカプト-4-フェニルチアゾール(503mg、2.41mmol)が入った懸濁液を、周囲温度で14時間、ヘキサン-2,5-ジオン(290μl、2.47mmol)で処理し、ついで3時間還流して加熱した。混合物は還流時に均質になり、冷却時に沈殿が生じ、これを濾過により回収し、酢酸(3x1.0ml)で洗浄し、真空で乾燥させたところ、鮮やかな黄色の微小結晶状固形物として純粋なピロリジノ-チアゾール(624mg、90%)が生じた。
【化98】

DMF(2.0ml)にメルカプト-チアゾール(201mg、701μmol)と炭酸カリウム(291mg、2.11mmol)が入った溶液を、5分間バブリングすることにより、ヨウ化トリフルオロメチルで飽和させ、容器を密封し、50℃で30分間加熱した。冷却した混合物をヨウ化トリフルオロメチルで再度飽和させ、100℃で1.5時間加熱した。混合物をもう一度、ヨウ化トリフルオロメチルで飽和させ、100℃(全体で24時間)に戻し、放置して冷却した。混合物を水に注ぎ、酢酸エチル(全体で100ml)で3回抽出した。組合せた有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、無色の結晶状フィルムとして純粋な(トリフルオロメチルスルファニル)-チアゾール(72mg、29%)が生じた。
【化99】

エタノール(5.0ml)にチアゾール(72mg)とヒドロキシルアミン塩酸塩(71mg、1.0mmol)が入った懸濁液を、17時間還流して加熱し、酢酸(3ml)で希釈し、さらに2時間還流し、約3mlまで濃縮した。冷却した混合物をヒドロキシルアミン水(1.0ml、50重量%)で処理し、42時間還流まで戻した。混合物を水(50ml)及び飽和した重炭酸ナトリウム水(50ml)で処理し、ジクロロメタン(全体で100ml)にて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、純粋な5-アミノ-4-フェニル-2-(トリフルオロメチルスルファニル)チアゾール(12.5mg、22%)が生じた。
【0109】
実施例40 5-アミノ-4-フェニル-2-(トリフルオロメチル)チアゾール
【化100】

0℃でメタノール(50ml)にα-アミノフェニルアセトアミド(2.00g、13.3mmol)が入ったものを、30分間、トリフルオロ酢酸エチル(3.2ml、27mmol)で処理し、18時間、周囲温度まで温めた。混合物を真空で濃縮し、メタノールと共に均質にし、再度濃縮したところ、純粋なトリフルオロアセトアミド(3.27g、収量)が生じた。
【化101】

トリフルオロアセトアミド(881mg、3.58mmol)とラウェソン(Lawesson's)試薬(1.45g、3.59mmol)を、共に無水ピリジン(7.2ml)で処理し、混合物を20時間、100℃まで加熱した。冷却した混合物を飽和した重炭酸ナトリウム水に注ぎ、クロロホルム(全体で120ml)にて3回抽出した。組合せた有機相を10分の1容量の飽和した重炭酸ナトリウム水を含有する水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、真空で濃縮したところ、赤褐色の油(829mg)が生じた。粗物を水酸化ナトリウム水(25ml、1.0N)で15分間処理し、ジクロロメタン(全体で100ml)にて3回抽出した。組合せた有機相を水酸化ナトリウム水(25ml、1.0N)とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、純粋な5-アミノ-4-フェニル-2-(トリフルオロメチル)チアゾール(65mg、7.5%)が生じた。
【0110】
実施例41 3-アミノ-4-フェニル-1,2,5-チアジアゾール
【化102】

DMF(30ml)に一塩化硫黄(24.0g、178mmol)が入った溶液に、20分以上かけて、α-アミノフェニルアセトニトリルヒドロクロリド(10.0g、59.3mmol)を滴下した。40分後、混合物を20分間周囲温度まで温め、DMF(20ml)で希釈し、氷冷水に注ぐ前にさらに20時間攪拌した。混合物をエーテル(200ml)で抽出し、濾過し、エーテル(2x50ml)で2回以上抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、流動性のあるオレンジ色の油(10.1g、87%)として3-クロロ-4-フェニル-1,2,5-チアジアゾールが得られた。減圧下でこの油(9.35g)を短経路蒸留すると、通常は結晶化している無色透明の油(7.75g、83%)が生じた。
【化103】

0℃でTHF(32ml)に3-クロロ-4-フェニル-1,2,5-チアジアゾール(3.19g、16.2mmol)が入ったものを、THF(17.0ml、1.0M、17.0mmol)にリチウムビス(トリメチルシリル)アミドが入った溶液を滴下して処理した。10分後、混合物を1.5時間周囲温度まで温め、1Nの塩酸で処理し、エーテル(全体で300ml)にて3回抽出した。組合せた有機相を飽和した重炭酸ナトリウム水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。残留物をメタノール(50ml)に溶解させ、トリエチルアミン(0.5ml)を15時間、還流して加熱し、再度真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、無色の固形物として、3-アミノ-4-フェニル-1,2,5-チアジアゾール(1.96g、68%)が生じた。
【0111】
実施例42 5-アミノ-2-メチル-4-フェニルチアゾール
【化104】

0℃で、エタノール(20ml)にα-アミノフェニルアセトニトリルヒドロクロリド(3.37g、20.0mmol)とパウダー状の硫黄(641mg、20.0mmol)が入った懸濁液に、トリエチルアミン(4.18ml、30.0mmol)、ついでアセトアルデヒド(2.3ml、41mmol)を添加した。容器を密封し、1時間、60-70℃まで加熱した。冷却した混合物を濾過し、真空で濃縮し、残留物をエタノール(20ml)と塩酸(20ml、1N)で15時間処理した。混合物を炭酸ナトリウム水で処理し、酢酸エチル(全体で300ml)にて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、暗褐色の油が得られた。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、トルエンから結晶化した5-アミノ-2-メチル-4-フェニルチアゾール(1.31g、34%)が生じた。
【0112】
実施例43 5-アミノ-2-メチル-4-フェニルチアゾール
【化105】

エタノール(10ml)に、α-アミノフェニルアセトニトリルヒドロクロリド(1.69g、10.0mmol)、パウダー状の硫黄(321mg、10.0mmol)及び4-ピリジンカルボキシアルデヒド(1.91ml、20.0mmol)が入った懸濁液を、トリエチルアミン(2.09ml、15.0mmol)で処理し、混合物を50℃で80分攪拌した。冷却した混合物をエタノール(5ml)で希釈し、周囲温度で15時間、ヒドロキシルアミン水(700μl、50重量%、11mmol)で処理し、ジクロロメタン(50ml)で希釈した。飽和した重炭酸ナトリウム水を添加し、分離した水相をジクロロメタン(全体で100ml)で2回以上抽出した。組合せた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、暗褐色の油状の泡(3.23g)が得られた。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、5-アミノ-2-(4-ピリジル)-4-フェニルチアゾール(1.41g、56%)が生じた。
【0113】
実施例44 2,4-ジフェニルチアゾール-5-アミン
【化106】

2,4-ジフェニルチアゾール-5-アミンを、K. Gewald, H. Schonfelder, U. Hain; J. Prakt. Chem., 1974, 361, 299-303に記載の手順に従い調製した。
実施例45 4-フェニル-2-(ピリジン-2-イル)チアゾール-5-アミン
【化107】

4-フェニル-2-(ピリジン-2-イル)チアゾール-5-アミンを、K. Gewald, H. Schonfelder, U. Hain; J. Prakt. Chem., 1974, 361, 299-303に記載の手順に従い調製した。
実施例46 4-フェニル-2-(ピリジン-3-イル)チアゾール-5-アミン
【化108】

4-フェニル-2-(ピリジン-3-イル)チアゾール-5-アミンを、K. Gewald, H. Schonfelder, U. Hain; J. Prakt. Chem., 1974, 361, 299-303に記載の手順に従い調製した。
【0114】
実施例47 5-アミノ-2-(Fmoc-アミノ)-4-フェニルチアゾール
【化109】

DCMにα-アミノフェニルアセトニトリルヒドロクロリド(3.19g、18.9mmol)とFmoc-イソチオシアナート(5.31g、18.9mmol)が入った懸濁液を、0℃で1時間、ついで周囲温度で3時間、エチルジイソプロピルアミン(3.62ml、20.8mmol)で処理した。混合物を飽和した重炭酸ナトリウム水に注ぎ、酢酸エチルにて3回抽出した。組合せた有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、5-アミノ-2-(Fmoc-アミノ)-4-フェニルチアゾール(3.75g、48%)が生じた。
【0115】
実施例48 N-(5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-イル)アセトアミド
【化110】

N-(5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-イル)アセトアミドを、実施例47に記載したものに類似した手順に従い調製した。
実施例49 N-(5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-イル)ベンズアミド
【化111】

N-(5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-イル)ベンズアミドを、実施例47に記載したものに類似した手順に従い調製した。
【0116】
実施例50 5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-イルカルバミン酸エチル
【化112】

5-アミノ-4-フェニルチアゾール-2-イルカルバミン酸エチルを、実施例47に記載したものに類似した手順に従い調製した。
実施例51 N-(5-アミノ-4-(2-クロロフェニル)チアゾール-2-イル)アセトアミド
【化113】

N-(5-アミノ-4-(2-クロロフェニル)チアゾール-2-イル)アセトアミドを、実施例47に記載したものに類似した手順に従い調製した。
実施例52 (9H-フルオレン-9-イル)メチル-5-アミノ-4-(2-クロロフェニル)チアゾール-2-イルカルバマート
【化114】

(9H-フルオレン-9-イル)メチル-5-アミノ-4-(2-クロロフェニル)チアゾール-2-イルカルバマートを、実施例47に記載したものに類似した手順に従い調製した。
【0117】
実施例53 5-アミノ-2-(1-イミダゾリル)-4-フェニルチアゾール
【化115】

DCM(100ml)にα-アミノフェニルアセトニトリルヒドロクロリド(5.01g、29.7mmol)とチオカルボニルジイミダゾール(5.30g、29.7mmol)が入った懸濁液を、エチルジイソプロピルアミン(5.69ml、32.7mmol)で、0℃で15分間、ついで周囲温度で3時間処理した。混合物を、飽和した重炭酸ナトリウム水(50ml)と水(150ml)に注ぎ、ジクロロメタン(全体で300ml)にて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、暗褐色の油(8.18g)が得られた。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、5-アミノ-2-(1-イミダゾリル)-4-フェニルチアゾール(2.47g、34%)が生じた。
【0118】
実施例54 2,5-ジアミノ-4-フェニルチアゾールのMeAla-Chg-Proペプチドアミド
【化116】

5-アミノ-2-(Fmoc-アミノ)-4-フェニルチアゾール(250mg、605μmol)を、周囲温度で6日間、ジクロロメタン(2.0ml)に酸フッ化物(730μmol;先に記載したようにしてBoc-MeAla-Chg-Pro-OHから誘導)とピリジン(147μl、1.82mmol)が入ったもので処理した。混合物を、飽和した重炭酸ナトリウム水に注ぎ、ジクロロメタン(全体で100ml)にて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、さらなる精製をすることなく続いて使用される黄色の油(525mg)として粗ペプチドアミドが生じた。
【化117】

DMF(9.0ml)に粗ペプチドアミドが入ったものを、周囲温度で20分間、ピペリジン(1.0ml)で処理し、ついで真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、2,5-ジアミノ-4-フェニルチアゾールペプチドアミド(2工程で228mg、61%)が生じた。
【化118】

ジクロロメタン(2.0ml)に粗ペプチドアミド(48mg、78μmol)が入ったものを、周囲温度で30分間、トリフルオロ酢酸(2.0ml)で処理した。混合物を真空で濃縮しジクロロメタンと共に均質にし、再度濃縮した。残留物を調製逆相HPLC(アセトニトリル/水)で精製したところ、白色の非晶質固形物として、完全に脱保護されたペプチドアミドトリフルオロ酢酸塩(42mg、73%)が生じた。
【0119】
実施例55 2,5-ジアミノ-4-(3-クロロフェニル)チアゾールのMeAla-Chg-Proペプチドアミド
【化119】

2,5-ジアミノ-4-(3-クロロフェニル)チアゾールのMeAla-Chg-Proペプチドアミドを、実施例55に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0120】
実施例56 5-アミノ-2-(ピバロイルアミノ)-4-フェニルチアゾールのMeAla-Chg-Proアミド
【化120】

ジクロロメタン(2.0ml)にBoc-ペプチドアミノ-チアゾール(48mg、78μmol)とエチルジイソプロピルアミン(140μl、0.80mmol)が入ったものを、周囲温度で3時間、塩化ピバロイル(50μl、0.40mmol)、ついで飽和した重炭酸ナトリウム水で処理し、ジクロロメタン(全体で60ml)にて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗油を、周囲温度で20分間、ジクロロメタン(5.0ml)にトリフルオロ酢酸(5.0ml)が入ったもので処理した。混合物を真空で濃縮し、ジクロロメタンと共に均質にし、再度濃縮した。残留物を調製逆相HPLC(アセトニトリル/水)による精製のために酢酸水(50%)に溶解させたところ、白色の非晶質固形物として、純粋なペプチドアミドトリフルオロ酢酸塩(2工程で38mg、68%)が生じた。
【0121】
実施例57 5-アミノ-2-(ピバロイルアミノ)-4-フェニルチアゾールのMeAla-Chg-Proアミド
【化121】

ジクロロメタン(2.0ml)にBoc-ペプチドアミノ-チアゾール(38mg、62μmol)とエチルジイソプロピルアミン(107μl、0.61mmol)が入ったものを、周囲温度で20分間、塩化メタンスルホニル(24μl、0.31mmol)、ついで飽和した重炭酸ナトリウム水で処理し、ジクロロメタンにて3回抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。粗油を、周囲温度で20分間、ジクロロメタン(4ml)にトリフルオロ酢酸(4ml)が入ったもので処理した。混合物を真空で濃縮し、ジクロロメタンと共に均質にし、再度濃縮した。残留物を調製逆相HPLC(アセトニトリル/水)による精製のために酢酸水(50%)に溶解させ、白色の非晶質固形物として、純粋なペプチドアミドトリフルオロ酢酸塩(2工程で11mg、23%)が生じた。
【0122】
実施例57 2-(アセチルアミノ)-4-アミノ-5-フェニルチアゾール
【化122】

エタノール(10ml)にα-ブロモフェニルアセトニトリル(1.08g、5.48mmol)が入ったものを、周囲温度で4時間、N-アセチルチオ尿素(649mg、5.49mmol)で処理し、ついで3.5時間還流して加熱した。冷却した混合物を真空で濃縮し、ついでジクロロメタンと飽和した重炭酸ナトリウム水の間で分配した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、2-(アセチルアミノ)-4-アミノ-5-フェニルチアゾール(295mg、23%)が生じた。
【0123】
実施例58 2,5-ジフェニルチアゾール-4-アミン
【化123】

2,5-ジフェニルチアゾール-4-アミンを、実施例57に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
実施例59 5-フェニル-2-(ピラジン-2-イル)チアゾール-4-アミン
【化124】

5-フェニル-2-(ピラジン-2-イル)チアゾール-4-アミンを、実施例57に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0124】
実施例60 5-アミノ-1-(3'-ニトロフェニル)ピラゾール
【化125】

3-ニトロフェニルヒドラジンヒドロクロリド(7.03g、36.3mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(9.5ml、54.5mmol)、及びエタノール(60ml)を、窒素下、室温で2時間攪拌した。エトキシメチレンマロノニトリル(4.52g、36.3mmol)を添加し、その後反応体を1時間還流した。反応体を室温まで冷却した。沈殿物が粉砕するまで、減圧下で溶媒を除去した。固形物を濾過したところ、結晶化した生成物(78%の収率)が6.54g生じた。
【化126】

5-アミノ-1-(3'-ニトロフェニル)-4-シアノピラゾール(559mg、2.44mmol)とリン酸(86%、6ml)を、170℃で15時間還流した。反応体を室温まで冷却し、水酸化アンモニウムで中和した。有機物をジエチルエーテル(全体で40ml)で3回抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を除去したところ、黄色のパウダーとして5-アミノ-1-(3'-ニトロフェニル)-ピラゾール(398mg、80%の収率)が得られた。
【0125】
実施例61 1-(2-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化127】

1-(2-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
実施例62 1-(3-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化128】

1-(3-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0126】
実施例63 1-(3-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化129】

1-(3-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
実施例64 1-(3-ブロモフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化130】

1-(3-ブロモフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0127】
実施例65 1-(3-トリクロロメチルフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化131】

1-(3-トリクロロメチルフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
実施例66 1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化132】

1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0128】
実施例67 1-(3-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化133】

1-(3-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60における5-アミノ-4-シアノ-1-(3'-メトキシフェニル)ピラゾールの脱シアン化(decyanation)の後に単離した。
実施例67 1-(3-ヒドロキシフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン
【化134】

1-(3-ヒドロキシフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミンを、実施例60に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0129】
実施例68 4-アミノ-5-フェニル-1,2,3-チアジアゾール
【化135】

フェニルピルビン酸(25g、149mmol)とエチルカルバザート(16g、149mmol)を、ベンゼン(225ml)中で2時間還流し、混合物を真空で濃縮した。粗物を最小量の温めたジクロロメタンに溶解させたところ、周囲温度まで冷却した時に、濾過により単離され、さらなる精製をすることなく使用される黄色の沈殿物としてヒドラゾン(30.4g、81%)が生じた。
【化136】

ジエチルエーテル(180mL)にジアザルド(Diazald)(N-メチル-N-ニトロソ-p-トルエンスルホンアミド;18.6g、86.9mmol)が入った溶液を、水(37ml)と2-(2-エトキシエトキシ)-エタノール(37ml)に水酸化カリウム(18.2g、325mmol)が入った溶液に、65℃で45分以上かけて滴下することにより、ジアゾメタンを生成させた。このように生成されたジアゾメタンのエーテル溶液を蒸留し、メタノール(150ml)にヒドラゾン(10.9g、43.5mmol)が入った攪拌溶液に、0℃で直接添加した。蒸留物が透明になるまで、系を過度のジエチルエーテルですすぎ、混合物を酢酸(1ml)で処理し、真空で濃縮した。得られた油は、酢酸エチル(200ml)と重炭酸ナトリウム(200ml)の間で分配し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、真空で濃縮したところ、黄色の固形物としてメチルエステル(10.2g、89%)が生じた。
【化137】

ヒドラゾン-メチルエステル(10.2g、38.6mmol)を、周囲温度で24時間、塩化チオニル(25ml、343mmol)で処理し、混合物を真空で濃縮した。ヘキサンからの結晶化により、チアジアゾール-メチルエステル(4.81g、56%)が生じた。
【化138】

チアジアゾール-メチルエステル(2.79g、12.7mmol)を、周囲温度で24時間、メタノール(50ml)にてヒドラジン水和物(1.09ml、93.9mmol)で処理し、得られた白色の沈殿物を濾過により回収した。イソプロパノールからの再結晶化によりチアジアゾール-ヒドラジド(3.99g、83%)が生じた。
【化139】

水(40ml)にチアジアゾール-ヒドラジド(3.99g、18.1mmol)が入ったものと濃塩酸(1.8ml、21.9mmol)を、0℃で2時間、水(15ml)に亜硝酸ナトリウム(1.52g、21.3mmol)が入った溶液を滴下して処理した。得られた沈殿物を濾過により回収したところ、オフホワイト色の固形物としてチアジアゾール-酸アジ化物(3.95g、94%)が生じた。
【化140】

K. Masudaら; Chem. Pharm. Bull., 1981, 29, 1743-1747に記載の手順に従い、チアジアゾール-酸アジ化物(3.95g、17.1mmol)を、45分間、エタノール(40ml)中で還流し、混合物を真空で濃縮した。ベンゼンからの結晶化により、カルバミン酸エチル(3.37g、74%)が生じた。
【化141】

酢酸(3ml、30重量%)にカルバミン酸エチル(399mg、1.60mmol)と臭化水素が入ったものを、80℃で18時間、密封容器中で加熱した。冷却した混合物は酢酸エチル(15ml)と水(15ml)の間で分配し、有機相を真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、4-アミノ-5-フェニル-1,2,3-チアジアゾール(136mg、49%)が生じた。
【0130】
実施例69 4-アミノ-5-フェニルイソオキサゾール
【化142】

5-フェニル-4-イソオキサゾールカルボン酸(460mg、2.36mmol)と塩化チオニル(1.71ml、23.6mmol)を、還流にて3時間加熱し、混合物を真空で濃縮したところ、さらなる精製をすることなく使用される酸塩化物が生じた。
【化143】

アセトン(7ml)に粗酸塩化物が入ったものを、0℃で1.5時間、水(2ml)にアジ化ナトリウム(165mg、2.62mmol)が入った溶液で処理し、周囲温度まで温め、真空で濃縮した。得られた白色の固形物を水で洗浄し、真空で乾燥させ、さらなる精製をすることなく使用した。
【化144】

酸アジ化物(409mg、1.91mmol)を、メタノールにおいて、6時間還流して加熱し、混合物を真空で濃縮したところ、さらなる精製をすることなく使用される、白色の固形物としてカルバミン酸メチルが生じた。
【化145】

カルバミン酸メチル(378mg、1.73mmol)を塩酸(13ml、48重量%、115mmol)で処理し、酢酸(2ml)と共に均質にし、65℃で48時間加熱し、放置して冷却した。混合物を水酸化ナトリウム水で中和し、酢酸エチル(2x125ml)で抽出した。組合せた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、白色の固形物として4-アミノ-5-フェニルイソオキサゾール(193mg、70%)が生じた。
【0131】
実施例70 5-アルキル-2-アミノ-3-フェニルチオフェンの合成
【化146】

シアン化ベンジル(2.33ml、20mmol)を、メタノール(4ml)において、バーケイド塩基(Verkade's)(2,8,9-トリメチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン;441mg、2.0mmol)と3,3-ジメチルブチルアルデヒド(2.64ml、200mmol)で処理し、混合物を、45℃で16時間、密封容器中で加熱した。冷却した混合物を真空で濃縮したところ、さらなる精製をすることなく使用される、無色の油として不飽和ニトリルが生じた。
【化147】

エタノール(2m1)に、ニトリル(10.0mmol)、炭酸カリウム(2.34g、23.4mmol)及びパウダー状の硫黄(330mg、10.3mmol)が入ったものを、160℃で24時間、密封容器中で加熱した。冷却した混合物を水で希釈し、ジエチルエーテルにて2回抽出し、組合せた有機物を真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、5-アミノ-2-tert-ブチル-4-フェニルチアゾール(75%)が生じた。
【0132】
実施例71 5-メチル-3-フェニルチオフェン-2-アミン
【化148】

5-メチル-3-フェニルチオフェン-2-アミンを、実施例70に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
実施例72 5-イソプロピル-3-フェニルチオフェン-2-アミン
【化149】

5-イソプロピル-3-フェニルチオフェン-2-アミンを、実施例70に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0133】
実施例73 2-アミノ-5-クロロ-3-フェニルチオフェン
【化150】

THF(7ml)に2-アミノ-3-フェニル-チオフェン(12.0mmol)が入ったものを、周囲温度で60時間、ジ-tert-ブチルジカルボナート(2.97g、13.3mmol)とジイソプロピルエチルアミン(3.15ml、18.1mmol)で処理し、混合物を真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、2-(N-Boc-アミノ)-3-フェニル-チオフェン(1.98g、59%)が生じた。
【化151】

0℃で、ジクロロメタン(4ml)に2-(N-Boc-アミノ)-3-フェニル-チオフェン(89mg、0.32mmol)が入ったものに、ゆっくりとN-クロロスクシンイミド(48mg、0.36mmol)を添加し、混合物を周囲温度まで16時間温めた。混合物をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄し、有機相を真空で濃縮した。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、2-(N-Boc-アミノ)-5-クロロ-3-フェニル-チオフェン(66mg、66%)が生じた。
【化152】

2-(N-Boc-アミノ)-5-クロロ-3-フェニル-チオフェン(66mg、0.21mmol)を、周囲温度で1時間、ジクロロメタン(3ml)にトリフルオロ酢酸(1ml)が入ったもので処理した。混合物をDMF(1ml)で希釈し、さらなる揮発性物質を減圧下で除去した。得られた2-アミノ-5-クロロ-3-フェニルチオフェンのDMF溶液を、精製することなく続くカップリング工程で使用した。
【0134】
実施例74 1-メチル-4-(メチルアミノ)-3-フェニルピラゾール
【化153】

THF(10ml)と水(3ml)に、1-メチル-4-アミノ-3-フェニルピラゾール(572mg、3.30mmol)とジ-tert-ブチルジカルボナート(799mg、3.66mmol)が入ったものに、飽和した重炭酸ナトリウム水(3ml、1.2M、3.6mmol)を滴下した。混合物を周囲温度で7時間攪拌し、クエン酸水(0.5M)に注ぎ、エーテル(全体で100ml)にて3回抽出した。組合せた有機相を飽和した重炭酸ナトリウム水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、続いて精製することなく使用される褐色の油として粗カルバマート(920mg)が生じた。
【化154】

鉱物性油に水素化ナトリウムが入った懸濁液(327mg、60重量%、8.18mmol)をTHF(2x5ml)で洗浄し、0℃でTHF(3.0ml)に懸濁させた。THF(5.0ml)にピラゾール(744mg、2.72mmol)が入ったもの、15分後にヨウ化メチル(187μl、3.00mmol)をこれに滴下した。0℃でさらに30分後、混合物を周囲温度まで18時間温め、ついで飽和した塩化アンモニウム水と十分な水で処理し、固形物を溶解させた。混合物をエーテル(全体で120ml)にて3回抽出し、組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、さらなる精製をすることなく使用される、コハク油として粗N-メチルカルバマート(750mg、96%)が生じた。
【化155】

DCM(1.0ml)に粗N-メチルカルバマートが入ったものを、周囲温度で40分間、トリフルオロ酢酸(1.0ml)で処理した。混合物を真空で濃縮し、ジクロロメタンと共に均質にし、再度濃縮したところ、褐色の油として本質的に純粋な1-メチル-4-(メチルアミノ)-3-フェニルピラゾール(150mg、収量)が生じた。
【0135】
実施例75 N-メチル-4-フェニル-1,2,3-チアジアゾール-5-アミン
【化156】

N-メチル-4-フェニル-1,2,3-チアジアゾール-5-アミンを、実施例74に記載したものと同様の手順を使用して調製した。
【0136】
実施例76 1-tert-ブチル-4-アミノ-3-フェニルピラゾールと1-tert-ブチル-4-アミノ-5-フェニルピラゾール
【化157】

DMF(120ml)に2-ブロモアセトフェノン(30.0g、151mmol)が入った溶液を、周囲温度で少しずつカリウムフタルイミド(30.8g、166mmol)で処理し、ついで3.5時間、40℃まで加熱した。冷却した混合物を水(600ml)に注ぎ、クロロホルム(300ml、ついで100ml)で抽出した。組合せた有機相を水酸化ナトリウム(200ml、0.2N)、水(2x100ml)及びブライン(100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で濃縮した。得られたクリーム状の固形物をエーテル(100ml)に懸濁させ、濾過して回収し、エーテル(100ml)で洗浄し、真空で乾燥させたところ、白色の固形物として純粋な2-フタルイミド-アセトフェノン(34.3g、86%)が生じた。
【化158】

C. Chen, K. Wilcoxen, J. R. McCarthy; Tetrahedron Lett., 1988, 39, 8229-8232に記載の手順に従い、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(26.7ml、200mmol)に2-フタルイミドアセトフェノン(13.3g、50.0mmol)が入った懸濁液を、28時間還流にて加熱し、真空で濃縮した。得られたコハク油をイソプロパノール(100ml)から結晶化させ、イソプロパノール(2x5ml)で洗浄したところ、黄色の針状晶として3-(ジメチルアミノ)-1-フェニル-2-フタルイミド-2-プロペン-1-オン(13.7g、85%)が生じた。
【化159】

エタノール(94ml)と水(9.4ml)に、3-(ジメチルアミノ)-1-フェニル-2-フタルイミド-2-プロペン-1-オン(3.00g、9.38mmol)とtert-ブチルヒドラジンヒドロクロリド(1.29g、10.3mmol)の混合物が入ったものを、周囲温度で64時間攪拌し、ついで24時間、還流にて加熱した。冷却した混合物をヒドラジン(590μl、18.8mmol)で処理し、75分間還流に戻した。冷却、及び周囲温度での放置時に、沈殿物が形成された。混合物を濾過し、固形物をエタノール(5ml)と水(0.5ml)の混合物で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。残留物は、水(100ml)で希釈された飽和した重炭酸ナトリウム水(50ml)とエーテル(250ml)の間で分配し、水相をエーテル(2x50ml)で2回以上抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で濃縮したところ、薄色の固形物(1.92g)が得られた。シリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)におけるフラッシュクロマトグラフィーにより、1-tert-ブチル-4-アミノ-3-フェニルピラゾール(2工程で1.52g、75%)と1-tert-ブチル-4-アミノ-5-フェニルピラゾール(2工程で114mg、6%)が生じた。
【0137】
実施例77 1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミンと1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミン
【化160】

1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミンと1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-フェニル-1H-ピラゾール-4-アミンを、実施例76に記載の手順に従い、2,2,2-トリフルオロエチルヒドラジンから同様にして調製した。
【0138】
実施例78 IAP阻害アッセイ
以下の実験においては、110残基の11がXIAP-BIR3に見出されるものに相当し、残りがML-IAP-BIRに相当する、MLXBIR3SGとして称されるキメラBIRドメインを使用した。キメラタンパク質MLXBIR3SGは、天然BIRドメインのいずれかよりも著しく良好にカスパーゼ-9に結合して阻害することが示されているが、天然ML-IAP-BIRのものに類似した親和性を有する成熟Smac及びSmac-ベースのペプチドにも結合した。キメラBIRドメインMLXBIR3SGのカスパーゼ-9阻害度の改善度合いは、MCF7細胞に形質移入した場合に、ドキソルビシン-誘発性アポトーシスの阻害度の増加度合いと相関している。
MLXBIR3SG配列:
MGSSHHHHHHSSGLVPRGSHMLETEEEEEEGAGATLSRGPAFPGMGSEELRLASFYDWPLTAEVPPELLAAAGFFHTGHQDKVRCFFCYGGLQSWKRGDDPWTEHAKWFPGCQFLLRSKGQEYINNIHLTHSL(配列番号:1)
【0139】
TR-FRETペプチド結合アッセイ
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動競争実験を、Kolbら(Journal of Biomolecular Screening, 1996, 1(4):203)の手順に従い、Wallac Victor2 Multilabeled Counter Reader(Perkin Elmer Life and Analytical Sciences, Inc.)において実施した。300nMのhis-タグMLXBIR3GS;200nMのビオチニル化SMACペプチド(AVPI);5μg/mLの抗hisアロフィコシアニン(XL665)(CISBio International);及び200ng/mLのストレプタビジン-ユーロピウム(Perkin Elmer)を含有する試薬混合物を、試薬用バッファー(50mMのトリス[pH7.2]、120mMのNaCl、0.1%のウシグロブリン、5mMのDTT及び0.05%のオクチルグルコシド)において調製した。(または、この混合物は、それぞれ6.5nM及び25nM濃度のユーロピウムでラベルされた抗His(Perkin Elmer)及びストレプタビジン-アロフィコシアニン(Perkin Elmer)を使用して作製することもできる)。試薬混合物を室温で30分インキュベートした。インキュベート後、384-ウェルブラックFIAプレート (Greiner Bio-One, Inc.)において、アンタゴニスト化合物(出発濃度は50μM)の1:3連続希釈液に添加した。室温でのインキュベートの90分後、ユーロピウムの励起(340nm)用、及びユーロピウム(615nm)及びアロフィコシアニン(665nm)の発光波長用のフィルターを用いて、蛍光を読み取った。615nmにおけるユーロピウムの発光に対する、665nmにおけるアロフィコシアニンの発光シグナルの比率として、アンタゴニストデータを算出した(データ操作の容易にするために、これらの比率には、10000という係数をかけた)。得られた値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Kaleidographソフトウエア(Synergy Software, Reading,PA)を使用し、4-パラメータ等式にあてはめた。アンタゴニスト効能の表示はIC50値から決定した。本発明の化合物は、このアッセイで示されるように、IAP阻害活性を有していることが見出された。
【0140】
蛍光偏光ペプチド結合アッセイ
偏光実験を、Keating, S.M., Marsters, J, Beresini, M., Ladner, C., Zioncheck, K., Clark, K., Arellano, F., 及びBodary., S.(2000), Proceedings of SPIE : In Vitro Diagnostic Instrumentation (Cohn, G.E.編)pp128-137, Bellingham, WAの手順に従い、アナリストHT 96-384(Molecular Devices Corp.)で実施した。蛍光偏光親和測定のためのサンプルは、偏光用バッファー(50mMのトリス[pH7.2]、120mMのNaCl、1%のウシグロブリン、5mMのDTT及び0.05%のオクチルグルコシド)に最終濃度5μMのMLXBIR3SGから出発して、最終濃度5nMの5-カルボキシフルオレセイン-結合AVPdi-Phe-NH(AVP-diPhe-FAM)まで、1:2連続希釈液を添加することにより調製した。
【化161】

【0141】
96ウェルの黒色HE96プレート(Molecular Devices Corp)中でフルオレセインフルオロフォア(λex=485nm;λem=530nm)用の標準的なカットオフフィルターを用い、室温で10分のインキュベート時間の後、反応を読み取った。蛍光値をタンパク質濃度の関数としてプロットし、Kaleidographソフトウエア(Synergy Software, Reading, PA)を使用し、データを4-パラメータ等式にあてはめることで、IC50を得た。5nMのAVP-diPhe-FAMプローブを含有するウェルへの30nMのMLXBIR3SGの添加と、偏光用バッファー中300μM濃度で始まるアンタゴニスト化合物の1:3連続希釈により、競合実験を実施した。10分のインキュベート後、サンプルを読み取った。蛍光偏光値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Kaleidographソフトウエア(Synergy Software, Reading, PA)を使用し、データを4-パラメータ等式にあてはめることでIC50を得た。アンタゴニストに対する阻害定数(K)をIC50値から決定した。本発明の化合物は、このアッセイで示されるように、IAP阻害活性を有していることが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式I:
【化1】

[上式中、
、X及びXは独立して、O又はSであり;
Yは、(CHR)、O又はSであり;ここでnは1又は2であり、RはH、ハロゲン、アルキル、アリール、アラルキル、アミノ、アリールアミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アルコキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシであり;
Aは、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、カルボキシル、アミジノ、グアニジノ、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルキル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ又はヘテロ環で置換されていてもよい1〜4のヘテロ原子を有する5員のヘテロ環であり;ここで、それぞれのアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル及びヘテロ環置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよく;
はHであり、又はRとRは共同して5−8員環を形成し;
は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環又はヘテロシクリルアルキルであり;それぞれ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はアルキルチオで置換されていてもよく;
は、H又はアルキルであり;
及びR'は独立して、H、ヒドロキシル、アミノ、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよく;
及びR'はそれぞれ独立して、H又はアルキルであり;
及びR'はそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール又はアラルキルである]
の化合物、及びその塩及び溶媒和物。
【請求項2】
環Aが、次の式IIa又はIIb:
【化2】

[上式中、QはNR、O又はSであり;Q、Q、Q、Q、Q、Q及びQは独立して、CR又はNであり;ここで、Rは、H、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、カルボキシル、アミジノ、グアニジノ、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル又はヘテロ環であり;ここで、それぞれのアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、シクロアルキル及びヘテロ環置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよく;Rは、H、アルキル、アシル、アリール、シクロアルキル又はヘテロ環であり;ここで、それぞれのアルキル、アリール、シクロアルキル及びヘテロ環は、ヒドロキシル、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、シクロアルキル、アリール又はヘテロ環で置換されていてもよく;またQはCH又はNである]
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Aが、次のもの:
【化3】



[ここで、Rは、H、アルキル又はアシルである]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが共同して5−8員環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がアルキル又はシクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、イソプロピル、t-ブチル又はシクロヘキシルであり、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
がH又はメチルであり、R'がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
及びR'が独立して、H又はメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
及びR'が独立して、H又はメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
、X及びXのそれぞれがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
がHであり;Rが、イソプロピル、t-ブチル又はシクロヘキシルであり;Rがメチルであり;RがH又はメチルであり、R'がHであり;R及びR'がH又はメチルであり;X、X及びXがOである、請求項2に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物を細胞内に導入することを含む、細胞にアポトーシスを誘発させる方法。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物を細胞に導入することを含む、アポトーシスシグナルに対して細胞を感受性化させる方法。
【請求項17】
前記アポトーシスシグナルが、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロ-2'-デオキシウイリジン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ブレオマイシン、シスプラチン、シクロホスファミド、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ミトキサントロン、カンプトテシン、トポテカン、コルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、フィナステライド、タキソテール、及びマイトマイシンCからなる群から選択される化合物に前記細胞を接触させることにより誘発される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アポトーシスシグナルが、Apo2L/TRAILに前記細胞を接触させることにより誘発される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1の化合物にIAPタンパク質を接触させることを含む、カスパーゼタンパク質へのIAPタンパク質の結合を阻害する方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物を有効量哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるIAPの過剰発現を伴う病気又は症状を処置する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物を有効量哺乳動物に投与することを含む、癌を処置する方法。

【公開番号】特開2011−251990(P2011−251990A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−162297(P2011−162297)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2007−520411(P2007−520411)の分割
【原出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】