説明

ICカード、通信端末およびICカードの製造方法

【課題】電源である電池の交換の必要性がなく長期間使用でき、また、微弱な電波の強度での情報の送受信が可能となるとともに、収納や携帯時に不具合を生じさせるほど厚さがかさばらない熱電変換装置を内蔵したICカードとその製造方法を提供する。
【解決手段】熱電変換装置11を配置した第1の基板10と、ICモジュールが配置される第2の基板とを貼り合わせてなるICカードであって、熱電変換装置11は、ICモジュールの配置位置に対応する第1の基板10上のICモジュール配置領域15の外側に、吸熱を行う高温部がICモジュール配置領域15側に位置するように配置した少なくとも1つの熱電変換素子11Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に熱電変換装置を具備したIC(Integrated Circuit)カードと、このICカードを具備する通信端末と、ICカードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来から用いられているテレフォンカードやキャッシュカード、定期券などの磁気カードに代わって、取り扱う情報量の増大や偽造防止などの要求から、IC(集積回路)チップを有するチップモジュールを内蔵したICカードが導入され、急速に普及しつつある。
【0003】
ICカードの中でも電磁波を利用して通信を行うICカードは非接触式ICカードとよばれ、この非接触式ICカードとリーダライタ装置との間で、データ・コマンドなどの情報の入出力や電力・クロック信号などの供給を、電磁波を用いて非接触状態で行うものである。従来の非接触式ICカードには、電源を内蔵していない構造形式のものと、電源を内蔵している構造形式のものとがある。いずれの構造形式の場合にも、非接触式ICカードは、ICモジュールとアンテナコイルのみで構成された電気回路が、樹脂や紙などのシートに内蔵されている。
【0004】
電源を内蔵していない非接触式ICカードの場合には、内蔵されているアンテナコイルが、本来情報伝達に用いられる電磁波により起電力を得るとともに、情報の送受信を行う。ICモジュールは、アンテナコイルによって得られた起電力により作動し、データの記憶や演算を行う。
【0005】
また、電源を内蔵している非接触式ICカードの場合には、化学反応により起電力を生じる化学電池を内蔵しており、この起電力によりICモジュールを作動させる。このため、電磁波は情報のみを伝送するだけでよいため、数十mでの伝送距離が実現できる。
【0006】
これらの形式のほかにも、発電源を内蔵している種々の非接触式ICカードが提案されている。たとえば、温度差により発電する熱電池(熱電変換装置)を内蔵し、この熱電池を電源としてICモジュールを作動させる非接触式ICカードが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この非接触式ICカードの場合には、熱電変換装置の片面にICカード表面よりも突出した放熱フィンを設けることで温度差を得る構成となっている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−132312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般に、電磁波の強度と誘導起電力の大きさは比例しているため、電源を内蔵していない非接触式ICカードのICモジュールが作動するのに必要な誘導起電力を得るためには、電磁波の強度が所定の強度以上に大きくなければならない。しかし、電磁波の強度は距離が長くなるにしたがい減衰し、弱くなることに加えて、電波法により強度の上限が定められている。このため、電源を内蔵していない非接触式ICカードは、ICモジュールを作動させるのに必要な誘導起電力を得られる電磁波の強度の範囲内での使用に限られ、伝送距離が短い範囲に限定されてしまうという問題点があった。
【0009】
また、電源を内蔵している非接触式ICカードの場合において、化学電池には寿命があるので、使用時間には制限がある。したがって、化学電池が寿命に達した場合には、電池交換という手間が発生してしまうという問題点があった。また、電池交換を行わない場合には、非接触式ICカードの短寿命化につながり、非接触式ICカードのコスト高を招くという問題点があった。
【0010】
さらに、特許文献1に記載の熱電池を有する非接触式ICカードの場合において、カードを使わない状態では、ケース、かばん、ボックス、ポケットなどに収納するのが一般的であるが、カードの一方の面に放熱フィンを有するように構成された熱電池を有する非接触式ICカードの厚みはかさばってしまい、収納や携帯時には不具合を生じるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電源である電池の交換の必要性がなく長期間使用でき、また、微弱な電波の強度での情報の送受信が可能となるとともに、収納や携帯時に不具合を生じさせるほど厚さがかさばらない熱電変換装置を内蔵したICカードとその製造方法を提供することを目的とする。また、そのICカードを備える通信端末を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、ICモジュールが配置されるICモジュール実装基板と、熱電変換装置を配置した発電装置実装基板とを貼り合わせてなるICカードであって、前記熱電変換装置は、前記ICモジュールの配置位置に対応する前記発電装置実装基板上のICモジュール配置領域の外側に、吸熱を行う高温部が前記ICモジュール配置領域側に位置するように配置した少なくとも1つの熱電変換素子を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記発電装置実装基板は、前記ICモジュール実装基板を上下から挟む2枚の基板からなることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記発電装置実装基板は、複数の熱電変換装置を積層してなることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記ICモジュール実装基板と前記発電装置実装基板のうち少なくとも一方の側端部に凹凸を設けたことを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項5にかかる発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記熱電変換装置は、複数の熱電変換素子を直列に接続してなることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の発明において、前記熱電変換素子は、前記ICモジュール配置領域のわずかに外側を囲むように配置されることを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項7にかかる発明は、請求項5に記載の発明において、前記熱電変換素子は、前記発電装置実装基板の外周部に沿って配置されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項8にかかる発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の発明において、前記ICモジュール実装基板は、前記熱電変換装置から得られる熱起電力を蓄電する蓄電手段をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の発明において、前記蓄電手段は、二次電池であることを特徴とする。
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項10にかかる発明は、所定の通信方式で通信を行う通信端末において、ICモジュールと、発電装置実装基板の熱電変換装置から得られる熱起電力を蓄電する蓄電手段と、が配置されるICモジュール実装基板と、前記ICモジュールの配置位置に対応するICモジュール配置領域の外側に、吸熱を行う高温部を配置した少なくとも1つの熱電変換素子を有する熱電変換装置を備える発電装置実装基板と、を貼り合わせてなるICカードを具備することを特徴とする。
【0022】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項11にかかる発明は、ICモジュールをICモジュール実装基板上に配置するICモジュール実装工程と、発電装置実装基板の前記ICモジュールの配置位置に対応するICモジュール配置領域の外側に、吸熱を行う高温部が前記ICモジュール配置領域側に位置するように少なくとも1つの熱電変換素子を有する熱電変換装置を形成する熱電変換装置形成工程と、前記ICモジュール実装基板と前記発電装置実装基板とを、位置合わせを行って貼り合わせる基板貼り合わせ工程と、貼り合わせた基板の側面に凹凸を設ける凹凸形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項12にかかる発明は、請求項11に記載の発明において、前記熱電変換装置形成工程では、2枚の発電装置実装基板に熱電変換装置を形成し、前記基板貼り合わせ工程では、前記ICモジュール実装基板の上下面を前記2枚の発電装置実装基板で挟んで貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0024】
また、請求項13にかかる発明は、請求項11に記載の発明において、前記熱電変換装置形成工程では、前記発電装置実装基板上に複数の熱電変換装置を積層して形成することを特徴とする。
【0025】
さらに、請求項14にかかる発明は、請求項11〜13のいずれか1つに記載の発明において、前記熱電変換装置形成工程では、複数の熱電変換素子を、前記ICモジュール配置領域のわずかに外側を囲むように配置して熱電変換装置を形成することを特徴とする。
【0026】
また、請求項15にかかる発明は、請求項11〜13のいずれか1つに記載の発明において、前記熱電変換装置形成工程では、複数の熱電変換素子を、前記発電装置実装基板の外周部に沿って配置して熱電変換装置を形成することを特徴とする。
【0027】
さらに、請求項16にかかる発明は、請求項11〜15のいずれか1つに記載の発明において、前記ICモジュール実装工程では、前記熱電変換装置から得られる熱起電力を蓄電する蓄電手段をさらに配置することを特徴とする。
【0028】
また、請求項17にかかる発明は、請求項11〜16のいずれか1つに記載の発明において、前記熱電変換装置形成工程では、前記熱電変換素子をスクリーン印刷法によって形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1にかかる発明によれば、温度差により発電する熱電変換装置を内蔵し、この内蔵された熱電変換装置を電源としてICモジュールを作動させる構造にしたので、電源である電池交換が不要となり、長期間使用することができる。また、熱電変換素子の吸熱を行う高温部をICモジュール側に配置し、放熱部を基板の側端部側に配置するように熱電変換装置を構成したので、熱電変換素子の両端に効果的に温度差を発生させることができる。その結果、放熱部でICカードの厚さがかさばることがなくなり、容易に収納したり携帯したりすることが可能なICカードを提供することができる。
【0030】
また、請求項2にかかる発明によれば、ICモジュール実装基板の上下を、熱電変換装置を有する発電装置実装基板で挟むようにしたので、熱電変換素子の数が増加し、一層大きな熱起電力を得ることができる。
【0031】
さらに、請求項3にかかる発明によれば、複数の熱電変換装置を積層させることで、ICカード全体の厚さを著しく増加させることなく熱電変換素子の数を増加させることが可能となり、一層大きな熱起電力を得ることができる。
【0032】
また、請求項4にかかる発明によれば、ICカードの側端部に設けた凹凸で、熱電変換素子の放熱部付近の表面積が増大し、効果的に放熱部を冷却することができる。その結果、熱電変換素子の両端部に温度差を生じさせることができ、発電効率を上げることができる。
【0033】
さらに、請求項5にかかる発明によれば、熱電変換素子を直列に接続させたので、熱起電力を効率よく取り出すことができる。
【0034】
また、請求項6にかかる発明によれば、ICモジュール配置領域のわずかに外側を配置される熱電変換素子の高温部は、ICモジュールの駆動中には効率よくICモジュールからの熱を吸収するので、熱電変換素子の両端の温度差が大きくなり、大きな熱起電力を得ることができる。
【0035】
さらに、請求項7にかかる発明によれば、発電装置実装基板の外周部に沿って熱電変換素子が配置されるので、発電装置実装基板に設けられる熱電変換素子の数を増やすことができ、大きな熱起電力を得ることができる。
【0036】
また、請求項8にかかる発明によれば、熱電変換装置から得られる熱起電力が蓄電手段によって蓄電され、その蓄電手段によってICカードを、安定してそして長時間使用することができる。
【0037】
さらに、請求項9にかかる発明によれば、熱電変換装置から得られる熱起電力を二次電池に充電するようにしたので、その二次電池によってICカードを、安定してそして長時間使用することができる。
【0038】
また、請求項10にかかる発明によれば、ICモジュールと蓄電手段が配置されるICモジュール実装基板と、熱電変換装置を備える発電装置実装基板と、を貼り合わせてなるICカードを通信端末に具備させたので、通信端末におけるICカードを、蓄電手段によって安定してそして長時間使用することが可能となる。
【0039】
さらに、請求項11にかかる発明によれば、ICモジュールを有するICモジュール実装基板と、熱電変換装置を有する発電装置実装基板とを貼り合わせ、その側面に凹凸を設けるようにしたので、熱電変換素子の放熱部における熱の放熱が促進され、熱電変換素子の両端で十分な温度差を生じさせることが可能で、電源である電池交換が不要なICカードを得ることができる。また、ICカードの外形切断時に基板の側面に凹凸を同時加工するようにしたので、製造コストを低減することができる。
【0040】
また、請求項12にかかる発明によれば、ICモジュール実装基板の上下を、熱電変換装置を有する発電装置実装基板で挟むようにしたので、熱電変換素子の数が増加し、一層大きな熱起電力を得ることが可能なICカードを製造することができる。
【0041】
さらに、請求項13にかかる発明によれば、複数の熱電変換装置を積層させることで、ICカード全体の厚さを著しく増加させることなく熱電変換素子の数を増加させることができる。その結果、一層大きな熱起電力を得ることができるICカードを製造することができる。
【0042】
また、請求項14にかかる発明によれば、ICモジュール配置領域のわずかに外側を配置される熱電変換素子の高温部は、ICモジュールの駆動中には効率よくICモジュールからの熱を吸収するので、熱電変換素子の両端の温度差が大きくなる。その結果、大きな熱起電力を得られるICカードを製造することができる。
【0043】
さらに、請求項15にかかる発明によれば、発電装置実装基板の外周部に沿って熱電変換素子が配置されるので、発電装置実装基板に設けられる熱電変換素子の数を増やすことができる。その結果、大きな熱起電力を得られるICカードを製造することができる。
【0044】
また、請求項16にかかる発明によれば、熱電変換装置から得られる熱起電力が蓄電手段によって蓄電され、その蓄電手段によってICモジュールを駆動することができるICカードが製造される。その結果、ICカードは、安定してそして長時間使用することができる。
【0045】
さらに、請求項17にかかる発明によれば、スクリーン印刷法では、熱電変換装置を熱電半導体粉末と結合材(接着剤または結合材)とからなる混合物として形成するので、低コストでICカードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるICカード、通信端末およびICカードの製造方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、ここでは、最初に本発明の概要を説明し、その後に各実施の形態について説明する。ただし、本発明がこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0047】
図1は、本発明にかかる非接触式ICカード(以下、単にICカードという)の側面断面図であり、図2−1〜図2−2は、ICカードを構成する基板の構成を模式的に示す斜視図であり、図3は、配線の一部を拡大した図である。このICカード1は、熱を電気に変換する熱電変換装置11を形成した第1の基板10と、電磁波を用い非接触で情報を送受信するためのアンテナコイル21とデータを記憶するためのICモジュール22を有する第2の基板20とが貼り合わされた構成を有し、熱電変換装置11を電源としてICモジュール22を作動させる構造としている。なお、第1の基板は、特許請求の範囲における発電装置実装基板に対応し、第2の基板は、同じくICモジュール実装基板に対応している。
【0048】
図2−1に示されるように、第1の基板10には、貼り合わせた際における第2の基板20のICモジュール22の配置位置に対応するICモジュール配置領域15よりも外側に、p型およびn型の熱電半導体の組合せからなる熱電変換素子11Aを少なくとも1つ形成した薄膜状の熱電変換装置11と、熱電変換装置11から電力を取り出すための電力取出用配線12と、電力取出用配線12を第2の基板20のICモジュール22につながる電極接続部23と接続するための電極接続部13と、を備える。
【0049】
図3は、第1の基板10に形成される熱電変換装置11の構造の一部(熱電変換素子11A)を示す図であり、この図に示されるように、熱電変換装置11は、p型熱電半導体111とn型熱電半導体112がほぼ平行に第1の基板10上に配置され、それらの一方の端部同士を電極11Bで接続した構成を有している。ここで、電極11Bで互いに接続した方は熱を吸収する高温部121側となり、ICモジュール配置領域15側に位置するように第1の基板10上に配置される。他方の端部にも電極11Bが接続されるが、熱電変換素子11Aを形成するp型とn型の熱電半導体111,112同士を接続するものではない。つまり、熱電変換素子11Aを1つしか有さない熱電変換装置11の場合には、p型とn型の熱電半導体111,112の他方の端部は、それぞれ電力取出用配線12と電極11Bによって接続される。また、熱電変換素子11Aを複数有する熱電変換装置11の場合には、隣接する熱電変換素子11Aの異なる導電型の熱電半導体の端部と電極11Bによって接続される。たとえば、図2−1では、第1の基板10上のICモジュール配置領域15よりもわずかに外側に、8個の熱電変換素子11Aが形成されており、p型−n型−p型−n型−・・・とp型熱電半導体111とn型熱電半導体112とが交互になるように電極11Bによって接続される。このように、熱電変換素子11Aを直列に接続して、熱起電力を効率よく取り出せる構成としている。
【0050】
熱電変換装置11の熱電変換素子11Aは、上述したようにICモジュール配置領域15の外側に配置されるが、熱電変換素子11Aの高温部121側はICモジュール22側となるように、高温部121と反対側の放熱部(隣接する熱電変換素子11A間で電極11Bによって接続される部分)122は第1の基板10の側端部側となるように配置される。
【0051】
電力取出用配線12は、熱電変換装置11の電極11Bと接続され、第2の基板20と電気的に接続する所定の位置に設置された電極接続部13まで配線される。
【0052】
図2−2に示されるように、第2の基板20には、ICモジュール22と、このICモジュール22に接続してコイル状に配置形成されるアンテナコイル21と、第1の基板10の熱電変換装置11から取り出した電力をICモジュール22に供給するための電極接続部23と、ICモジュール22と電極接続部23とを結ぶ電力取出用配線26と、を備える。
【0053】
以上のような構成を有する第1と第2の基板10,20の双方の電極接続部13,23同士を接続し、熱電変換装置11で発生する起電力の出力をICモジュール22の電源供給ラインに接続して、ICカード1が構成される。図1では、第1の基板10の熱電変換装置11が配置される面と第2の基板20のICモジュール22が配置される面とを、絶縁層14を介して貼り合わせる構成としている。
【0054】
この構成のICカード1のICモジュール22の部位を一定の高熱源に接触させて配置し、ICカードの端部を室温中に置いた環境で両者間に温度差を設けたときに熱電変換装置11(熱電変換素子11A)の両端に熱起電力が発生し、ICモジュール22を動作させることが可能となる。つまり、特許文献1に示した熱電変換装置を有するICカードと異なり、このICカード1では、熱電変換装置11(熱電変換素子11A)をその放熱部122が第1の基板10面内の側端部側に配置されるように形成して、温度差による発電を行うとともに、厚さのかさばりを抑制している。
【0055】
このように、電源である電池の交換の必要性がなく長期間使用でき、また、微弱な電波の強度での情報の送受信が可能となるとともに、収納や携帯時に不具合を生じさせるほど厚さがかさばらない熱電変換装置11を内蔵したICカード1を得ることができる。
【0056】
(第1の実施の形態)
図4は、本発明にかかるICカードの第1の実施の形態の側面断面図であり、図5は、図4のICカードの分解斜視図であり、図6は、第2の基板の側端部の構成を示す図である。このICカード1は、第1の基板10の薄膜状の熱電変換装置11が形成された面上に、第2の基板20のアンテナコイル21とICモジュール22が配置されない面を重ね合わせ、さらに第2の基板20のアンテナコイル21とICモジュール22が配置される面を覆うように保護または装飾のための樹脂シート40を重ね合わせた構成を有している。なお、第2の基板20の電極接続部にはスルーホール24が設けられ、第1の基板10の電極接続部13と接続される。また、第2の基板20の周囲の側面部には、凹凸25が設けられている。この凹凸25によって、第2の基板20の側面部の表面積が大きくなり、第1の基板10の面内に形成される熱電変換装置11の熱電変換素子11Aの放熱部122が室温に近い温度に冷却される。
【0057】
以下に、このような構成のICカード1の製造方法について説明する。はじめに、たとえば、フェノール、ポリエステル、硬質塩化ビニル、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、AS(Acrylonitrile-Styrene)、エポキシ、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、フッ素樹脂などのエンジニアリングプラスチックの単体またはこれらの複合フィルム、これにガラス繊維などの強化繊維を充填材として添加した厚さ0.01〜0.4mmの高分子材料から成る第1の基板10上にICモジュール配置領域15を囲むように薄膜状のp型熱電半導体をスクリーン印刷法により形成する。たとえば、Bi,Te,Sbなどのいずれからなるp型熱電半導体の微結晶粉末を熱硬化性樹脂などのバインダに配合したものを、スクリーン印刷により、厚み1〜500μmの範囲に制御して印刷形成する。
【0058】
その後、p型熱電半導体と同様に、第1の基板10上の所定の位置に、ICモジュール配置領域15を囲むように、またp型熱電半導体と重ならないように、n型熱電半導体をスクリーン印刷法により形成する。たとえば、Bi,Te,Sbなどのいずれからなるn型熱電半導体の微結晶粉末をp型熱電半導体の場合と同じ熱硬化性樹脂バインダに配合し、スクリーン印刷により、厚み1〜500μmの範囲に制御して印刷形成する。
【0059】
ついで、第1の基板10上に印刷されたそれぞれのp型とn型の熱電半導体を、Au(金),Ag(銀),Al(アルミニウム),Cu(銅),Cr(クロム),Ni(ニッケル)などの金属やそれらを含む金属化合物の電極11Bで配線し、接続する。図5には、8個の熱電変換素子11Aを有する熱電変換装置11が示されている。また、電力取出用配線12と電極接続部13も上記金属や金属化合物で配線する。その後、この第1の基板10を構成する高分子材料の耐熱温度以下の温度で熱処理を行い、p型とn型の熱電半導体を加熱硬化させて固着させる。
【0060】
以上において、p型とn型の熱電半導体それぞれの厚みは実用的には10〜100μmであることが好ましい。また、p型とn型の熱電半導体の微結晶粉末の配合比率は、p型とn型の熱電半導体の微結晶粉末材の特性や熱電変換装置11に要求される特性により変えることができる。さらに、熱電半導体は、上記に示した材料に限定されるものではなく、酸化物系の材料であってもよい。
【0061】
一方、図6のように側面に凹凸25が形成された第1の基板10と同様の高分子材料からなる第2の基板20上に、ICモジュール22と、ICモジュール22に電気配線したアンテナコイル21とを形成する。第2の基板20の側面に形成される凹凸25は、表面積を大きくできる凹凸であれば任意のサイズでよい。たとえば、凹凸25の幅が0.5mmで深さが0.2mmのものでもよいし、凹凸25の幅が0.1mmで深さが0.2mmのものでもよいし、凹凸25の幅が1mmで深さが0.5mmのものでもよい。
【0062】
アンテナコイル21は、CuやAg,Alなどの低抵抗金属の微粉末を、たとえば、熱硬化性樹脂のようなバインダに配合し、スクリーン印刷版により、送・受信アンテナを厚み5〜50μmの範囲に制御し、印刷形成する。このときの金属微粉末の配合比率は、重量比で30%以上99%以下の範囲とすることがよいが、低抵抗化や耐久性などの点で50%以上90%以下とするのが望ましい。その後、100℃以下で予備加熱を実施し印刷したアンテナ材を定着する。送・受信アンテナを形成する他の方法として、たとえば、0.01〜50μm膜厚のCuやAg,Alなどの低抵抗金属膜を真空蒸着やスパッタリングなどの薄膜形成装置により形成し、フォトリソグラフィ、ドライエッチング、ウエットエッチングなどによって、所望のアンテナ形状に加工して形成することでも可能である。電力取出用配線26は、Au,Ag,Al,Cu,Cr,Niなどの金属やそれらを含む金属化合物を用いて、スクリーン印刷法で、印刷・形成する。その後、所定の位置にICモジュール22を配置する。
【0063】
ついで、第1の基板10の電極接続部13に対応する第2の基板20上の位置に、スルーホール24を形成する。その後、熱電変換装置11を形成した第1の基板10の面上に、ICモジュール22が配置されない側の第2の基板20の面を重ね合わせるように、第1と第2の基板10,20の位置合わせを行って接着剤41で接合して、導電性材料をスルーホール24に埋め、第1と第2の基板10,20間で導通を取る。そして、第1の基板10と同様の高分子材料から成る樹脂シート40を、第2の基板20のICモジュール22が配置される上面に接着剤41で接合し、ICカード1が得られる。
【0064】
なお、実験の結果、ICカード端部側面に凹凸25を設けた場合の温度差すなわち熱起電力は、凹凸25がない場合に比して大きな値が得られた。また、上述した説明では、第2の基板20の側端部にのみ、凹凸25を設けているが、第1と第2の基板10,20および樹脂シート40を貼り合わせた後に、これらの全ての側端部に凹凸を設けるようにしてもよいし、第1と第2の基板10,20および樹脂シート40のうち少なくともいずれかの側端部に凹凸を設けるようにしてもよい。
【0065】
この第1の実施の形態によれば、ICモジュール22を囲むように複数個の熱電変換素子11Aを形成し、それぞれの熱電変換素子11Aを直列接続する電極11Bと、電力取出用配線12をスクリーン印刷法で印刷・形成したことで、厚みを薄くしたICカード1を得ることができる。また、熱電変換素子11Aを第1の基板10面内にスクリーン印刷法で形成するので、その形状の自由度が増し、曲率や角を有するような任意形状の熱電変換装置11を形成することができる。
【0066】
さらに、ICカード1が動作する際、ICモジュール22内で発生する熱と、第2の基板20の側端部に設けられた凹凸25での冷却効果により、熱電変換装置11の高温部121とICカード端部側の熱電変換装置11の放熱部122との間に温度差が発生し、ICカード1の厚さを増すことなく、ICモジュール22の駆動に必要な熱起電力を得ることができる。また、熱電変換装置11を、複数の熱電変換素子11Aを直列に接続して構成することで、接続した熱電変換素子11Aの数に応じて、熱起電力を増加させることが可能となる。さらに、ICモジュール22やICカード1に配置されるメモリは第1と第2の基板10,20を構成する高分子材料に比べ、一般に熱伝導の良い材料で構成されるので、ICカード1の表面に接触した利用者の体温の熱移動が容易となり、ICモジュール22とICカード1の周辺(側面部)とに温度差が発生し、熱起電力を得ることができる。
【0067】
また、ICカード1の端部に凹凸25を設けるように構成したので、外部空気との熱交換が速やかに実施され、熱電変換装置11の放熱部122側を冷却し、この凹凸25が形成された面を低温部側として機能させることが可能となる。
【0068】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明にかかるICカードの第2の実施の形態の側面断面図である。この第2の実施の形態のICカード1は、第1の実施の形態の構成において、ICモジュール22が配置される第2の基板20上に被せる樹脂シート40に代えて、ICモジュール22の配置位置に対応する配置領域を取り囲むように形成した熱電変換装置31を備えた第3の基板30を、その熱電変換装置31を有する面が、ICモジュール22が設けられる側の第2の基板20の面と重なるように位置合わせして、第2の基板20上に貼り合せる構成となっている。なお、第3の基板30は、特許請求の範囲における発電装置実装基板に対応している。
【0069】
このような構成のICカードの製造方法について以下に説明する。ただし、第1の実施の形態と同様の部分は、詳細な説明を省略する。まず、高分子材料から成る第1の基板10上にICモジュール22の配置位置周辺に沿ってスクリーン印刷法により、薄膜状のp型熱電半導体とn型熱電半導体を形成し、第1の基板10の耐熱温度以下の温度で熱処理し、固着させる。その後、それぞれの熱電半導体を直列接続する配線と、電力取出用配線12および電極接続部13をスクリーン印刷法で印刷・形成する。
【0070】
第1の基板10と同様に、高分子材料から成る第3の基板30上にICモジュール22の配置領域周辺に沿ってスクリーン印刷法により、薄膜状のp型熱電半導体とn型熱電半導体を形成し、第3の基板30の耐熱温度以下の温度で熱処理し、固着させる。その後、それぞれの熱電半導体を直列接続する配線と、電力取出用配線および電極接続部をスクリーン印刷法で形成する。そして、この表面を電気的に絶縁するために、溶媒に溶かした熱可塑性樹脂などを、熱電変換装置31と直列接続する電極接続部および電力取出用配線を除く全面に塗布して絶縁層34を形成する。
【0071】
一方、ICモジュール22とICモジュール22に電気配線したアンテナコイル21を設置した高分子材料から成る第2の基板20の、第1の基板10の電極接続部13に対応する位置に、図示しないスルーホールを形成する。第2の基板20のICモジュール22が配置される側と反対側の面に第1の基板10の熱電変換装置11が配置される側の面を重ね合わせ、位置合わせを行った後にそれぞれ接着剤41で接合する。そして、図示しないスルーホールを通して、第1の基板10の熱電変換装置11の電力取出用配線12と、第2の基板20のICモジュール22とを電気的に接合する。また、第2の基板20のICモジュール22が配置される側の面に第3の基板30の絶縁層34が形成された側の面を重ね合わせ、位置合わせを行った後に、第3の基板30の熱電変換装置31の電力取出用配線と、第2の基板20のICモジュール22とを電気的に接合して、第2と第3の基板20,30間を接着剤41で接合する。その後、外周を切断する時にICカード1の端部側面に図示しない凹凸を形成して、図7に示されるICカード1が作成される。
【0072】
この第2の実施の形態によれば、ICカードに設ける熱電変換装置11の数を増加させたので、第1の実施の形態に比してより大きな熱起電力を得ることが可能となる。
【0073】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明にかかるICカードの第3の実施の形態の側面断面図であり、図9は、図8のICカードの第1の基板の斜視図である。この第3の実施の形態では、熱電変換装置11がICモジュール配置領域15よりもわずかに外側となるように配置された第1の実施の形態に比して、図9に示されるように熱電変換装置11が第1の基板10の外周囲に沿って設けられる構成を有している。すなわち、第1の基板10には、その基板面内の外周囲に沿って、複数の熱電変換素子11Aが配置された熱電変換装置11が形成されている。この図9の例では、熱電変換装置11は、24個の熱電変換素子11Aを有している。このように、第1の基板10の外周囲に沿って熱電変換素子11Aを配置することで、第1の実施の形態に比してさらに多くの熱電変換素子11Aを形成することが可能となる。なお、その他の構成は第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略している。
【0074】
つぎに、このような構成のICカードの製造方法について説明する。まず、図9に示されるように、高分子材料から成る第1の基板10上に、この第1の基板10の外周部に沿ってスクリーン印刷法により、薄膜状のp型熱電半導体とn型熱電半導体を形成し、第1の基板10の耐熱温度以下の温度で熱処理し、固着させる。その後、それぞれの熱電半導体を直列接続する電極11Bと、電力取出用配線12および電極接続部13をスクリーン印刷法で印刷・形成する。
【0075】
一方、ICモジュール22とICモジュール22に電気配線したアンテナコイル21を設置した高分子材料から成る第2の基板20の、第1の基板10の電極接続部13に対応する位置に、スルーホール24を形成する。この第1と第2の基板10,20の位置合わせをして接合した後、導電性材料でスルーホール24を埋め、上下の基板10,20間の導通を取る。その後、高分子材料から成る樹脂シート40を、第2の基板20の上面に接合する。そして、外周を切断するときにICカード端部側面に図示しない凹凸を形成して、図8に示されるICカード1が作成される。
【0076】
この第3の実施の形態によれば、熱電変換装置11を構成する熱電変換素子11Aの数を第1の実施の形態に比して増加させることができるので、さらに大きな熱起電力を得ることができる。
【0077】
(第4の実施の形態)
図10は、本発明にかかるICカードの第4の実施の形態の側面断面図である。この第4の実施の形態のICカード1は、第1の基板10に複数の熱電変換装置11−1〜11−3を積層させた構成を有している。つまり、第1の基板10上の外周囲に沿って図9と同様のパターンの第1の熱電変換装置11−1を形成し、その上面を第1の絶縁層34−1で被覆する。第1の絶縁層34−1の上面には、図9と同様のパターンの第2の熱電変換装置11−2を形成し、その上面を第2の絶縁層34−2で被覆する。このとき、第1の熱電変換装置11−1の一方の電極接続部13−1aと第2の熱電変換装置11−2の他方の電極接続部とは、互いに熱電半導体が直列接続となるように配線される。さらに、第2の絶縁層34−2の上面には、図9と同様のパターンの第3の熱電変換装置11−3を形成し、その上面を第3の絶縁層34−3で被覆する。このときも、第2の熱電変換装置11−2の第1の熱電変換装置11−1と接続されていない方の電極接続部と、第3の熱電変換装置11−3の他方の電極接続部とは、互いに熱電半導体が直列接続となるように配線される。そして、第3の熱電変換装置11−3の第2の熱電変換装置11−2と接続されていない方の電極接続部と、第1の熱電変換装置11−1の第2の熱電変換装置11−2と接続されていない方の電極接続部13−1bとが、熱電変換装置11−1〜11−3全体の電極接続部として、第2の基板20のICモジュール22につながる電極接続部23と導電性接着剤42によって導通される。
【0078】
つぎに、このような構成のICカードの製造方法について説明する。まず、図9に示されるように、高分子材料からなる第1の基板10上に、この第1の基板10の外周部に沿ってスクリーン印刷法により、薄膜状のp型熱電半導体とn型熱電半導体を形成し、第1の基板10の耐熱温度以下の温度で熱処理し、固着させる。その後、それぞれの熱電半導体を直列接続する電極11Bと出力された電力取出用配線12および電極接続部13−1a,13−1bをスクリーン印刷法で印刷・形成し、第1の熱電変換装置11−1を形成する。ついで、第1の熱電変換装置11−1が形成された第1の基板10上にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を50μm程度の厚みで全面塗布し、第1の絶縁層34−1を形成する。ただし、このとき、電極接続部13にはマスクなどを施して塗布されない状態にする。
【0079】
ついで、この第1の絶縁層34−1上に、先ほどと同様な工程で第2の熱電変換装置11−2を形成する。この第2の熱電変換装置11−2の電極配線時に、第1の熱電変換装置11−1の一方の電極接続部13−1aと第2の熱電変換装置11−2の一方の電極接続部とを電気的に接続させる。その後、この第2の熱電変換装置11−2上にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を50μm程度の厚みで全面塗布し、第2の絶縁層34−2を形成する。このときも電力取出用配線の部分はマスクなどを施して塗布されない状態にする。
【0080】
さらに、この第2の絶縁層34−2上に、先ほどと同様な工程で第3の熱電変換装置11−3を形成する。この第3の熱電変換装置11−3の電極配線時に、第2の熱電変換装置11−2の一方の電極接続部と第3の熱電変換装置11−3の一方の電極接続部とを電気的に接続させる。これにより、第1〜第3の熱電変換装置11−1〜11−3が直列接続される。その後、第3の熱電変換装置11−3上にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を50μm程度の厚みで全面塗布し、第3の絶縁層34−3を形成する。このときも、電極接続部にはマスクなどを施して塗布されない状態にする。
【0081】
一方、ICモジュール22とICモジュール22に電気配線したアンテナコイル21を設置した高分子材料から成る第2の基板20に、上記第1の基板10上の第1の熱電変換装置11−1の一方の電極接続部13−1bと第3の熱電変換装置11−3の一方の電極接続部に対応した位置にそれぞれ電極接続部23を形成する。このようにして作製された第2の基板20は、概要で説明した図2−2に示されている。そして、この電極接続部23に導電性接着剤42を載置した後、この第1と第2の基板10,20の位置合わせを行って接合する。
【0082】
その後、この第1と第2の基板10,20を重ね合わせたICカードの表裏面に、装飾用のフィルムをラミネートし、外周を切断すると同時に、端部側面に図示しない凹凸を形成して、ICカード1が作成される。
【0083】
なお、上述した説明では、熱電変換装置11を3層積層構造としているが、これに限られる趣旨ではなく、熱電変換装置11を直列に複数積層構造とすることで、第3の実施の形態の場合に比してさらに大きな熱起電力が得られる。また、上述した説明では、図9に示されるように熱電変換装置11が第1の基板10の外周に沿って配置される場合を説明したが、第1の実施の形態の図5に示されるように、ICモジュール配置領域のわずかに外側に沿って配置される場合や両者を混合したような場合にも適用することができる。
【0084】
この第4の実施の形態によれば、熱電変換装置11の層数を増加させて、熱電変換装置11を構成する熱電変換素子の数を第3の実施の形態に比してさらに増加させるように構成したので、一層大きな熱起電力を得ることができる。また、熱電変換装置11は、基板面内に形成さるので、第1の基板10に熱電変換装置11を複数積層させたとしても、ICカード1全体の厚さが急激に増える訳ではなく、今までよりもわずかに厚くなる程度で、熱起電力を効果的に増大させることができる。
【0085】
(第5の実施の形態)
図11は、本発明にかかるICカードの第5の実施の形態の側面断面図であり、図12は、図11のICカードの第2の基板の構成を示す斜視図である。この第5の実施の形態のICカード1は、第2の基板20のICモジュール22と電極接続部23との間に、熱電変換装置11で生じた熱起電力を蓄電するリチウム二次電池などの二次電池27を設けた構成を有する。そして、第2の基板20のICモジュール22や二次電池27が設けられる側の面を、第1の基板10の熱電変換装置11が設けられる側の面上に重ねさわせた構造を有している。このような構造により、内蔵した熱電変換装置11による熱起電力を二次電池27に蓄積し、ICモジュール22は二次電池27から電力の供給を受けて動作する。なお、二次電池27は、特許請求の範囲における蓄電手段に対応している。
【0086】
つぎに、このような構成のICカードの製造方法について説明する。まず、高分子材料から成る第1の基板10に第3の実施の形態と同様な方法で、ICモジュール22を囲むように第1の基板10の外周囲に沿って熱電変換素子11Aを形成し、それぞれの熱電変換素子11Aを電極11Bにより直列接続し、出力された電力取出用配線12と電極接続部13をスクリーン印刷法で印刷・形成する。その後、第1の基板10の上面にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を1050μm程度の厚みで全面塗布し、絶縁層34を形成する。このとき、電極接続部13はマスクなどを施して塗布されない状態にする。
【0087】
一方、高分子材料から成る第2の基板20上に、ICモジュール22、このICモジュール22に電気配線したアンテナコイル21、リチウム二次電池などの二次電池27、電極接続部23および電力取出用配線26を形成する。その後、第1と第2の基板10,20の間で位置合わせを行って接着剤41で接合する。そして、外周を切断する時に、ICカード端部側面に図示しない凹凸を形成して、図11に示される断面構造を有するICカード1が作成される。
【0088】
なお、この第5の実施の形態で示したICカードを携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの通信端末に具備させるようにしてもよい。この場合、ICカードは、一つの部品として通信端末の内部に固定される構成でもよいし、通信端末に脱着可能な構成でもよい。このように、熱電変換装置11と二次電池27を有するICカード機能を搭載した通信端末によって、熱電変換装置11で生じた熱起電力を蓄電する二次電池27を用いて、通信端末を駆動することが可能となる。
【0089】
この第5の実施の形態によれば、ICカード1に二次電池27を備えたるように構成したので、熱電変換装置11による熱起電力を二次電池27の充電に利用可能となり、ICモジュール22へ安定な電力供給が可能となる。また、電池交換を行わずに長期間の利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明によるICカードの側面断面図である。
【図2−1】ICカードを構成する基板の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2−2】ICカードを構成する基板の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】配線の一部を拡大した図である。
【図4】本発明によるICカードの第1の実施の形態の側面断面図である。
【図5】図4のICカードの分解斜視図である。
【図6】第2の基板の側端部の構成を示す図である。
【図7】本発明によるICカードの第2の実施の形態の側面断面図である。
【図8】本発明によるICカードの第3の実施の形態の側面断面図である。
【図9】図8のICカードの第1の基板の斜視図である。
【図10】本発明によるICカードの第4の実施の形態の側面断面図である。
【図11】本発明によるICカードの第5の実施の形態の側面断面図である。
【図12】図11のICカードの第2の基板の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
1 ICカード
10 第1の基板
11,31 熱電変換装置
11A 熱電変換素子
11B 電極
12 電力取出用配線
13,23 電極接続部
14,34 絶縁層
15 ICモジュール配置領域
20 第2の基板
21 アンテナコイル
22 ICモジュール
24 スルーホール
25 凹凸
27 二次電池
30 第3の基板
40 樹脂シート
41 接着剤
121 高温部
122 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICモジュールが配置されるICモジュール実装基板と、熱電変換装置を配置した発電装置実装基板とを貼り合わせてなるICカードであって、
前記熱電変換装置は、前記ICモジュールの配置位置に対応する前記発電装置実装基板上のICモジュール配置領域の外側に、吸熱を行う高温部が前記ICモジュール配置領域側に位置するように配置した少なくとも1つの熱電変換素子を備えることを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記発電装置実装基板は、前記ICモジュール実装基板を上下から挟む2枚の基板からなることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記発電装置実装基板は、複数の熱電変換装置を積層してなることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項4】
前記ICモジュール実装基板と前記発電装置実装基板のうち少なくとも一方の側端部に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項5】
前記熱電変換装置は、複数の熱電変換素子を直列に接続してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項6】
前記熱電変換素子は、前記ICモジュール配置領域のわずかに外側を囲むように配置されることを特徴とする請求項5に記載のICカード。
【請求項7】
前記熱電変換素子は、前記発電装置実装基板の外周部に沿って配置されることを特徴とする請求項5に記載のICカード。
【請求項8】
前記ICモジュール実装基板は、前記熱電変換装置から得られる熱起電力を蓄電する蓄電手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項9】
前記蓄電手段は、二次電池であることを特徴とする請求項8に記載のICカード。
【請求項10】
所定の通信方式で通信を行う通信端末において、
ICモジュールと、発電装置実装基板の熱電変換装置から得られる熱起電力を蓄電する蓄電手段と、が配置されるICモジュール実装基板と、
前記ICモジュールの配置位置に対応するICモジュール配置領域の外側に、吸熱を行う高温部を配置した少なくとも1つの熱電変換素子を有する熱電変換装置を備える発電装置実装基板と、
を貼り合わせてなるICカードを具備することを特徴とする通信端末。
【請求項11】
ICモジュールをICモジュール実装基板上に配置するICモジュール実装工程と、
発電装置実装基板の前記ICモジュールの配置位置に対応するICモジュール配置領域の外側に、吸熱を行う高温部が前記ICモジュール配置領域側に位置するように少なくとも1つの熱電変換素子を有する熱電変換装置を形成する熱電変換装置形成工程と、
前記ICモジュール実装基板と前記発電装置実装基板とを、位置合わせを行って貼り合わせる基板貼り合わせ工程と、
貼り合わせた基板の側面に凹凸を設ける凹凸形成工程と、
を含むことを特徴とするICカードの製造方法。
【請求項12】
前記熱電変換装置形成工程では、2枚の発電装置実装基板に熱電変換装置を形成し、
前記基板貼り合わせ工程では、前記ICモジュール実装基板の上下面を前記2枚の発電装置実装基板で挟んで貼り合わせを行うことを特徴とする請求項11に記載のICカードの製造方法。
【請求項13】
前記熱電変換装置形成工程では、前記発電装置実装基板上に複数の熱電変換装置を積層して形成することを特徴とする請求項11に記載のICカードの製造方法。
【請求項14】
前記熱電変換装置形成工程では、複数の熱電変換素子を、前記ICモジュール配置領域のわずかに外側を囲むように配置して熱電変換装置を形成することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つに記載のICカードの製造方法。
【請求項15】
前記熱電変換装置形成工程では、複数の熱電変換素子を、前記発電装置実装基板の外周部に沿って配置して熱電変換装置を形成することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つに記載のICカードの製造方法。
【請求項16】
前記ICモジュール実装工程では、前記熱電変換装置から得られる熱起電力を蓄電する蓄電手段をさらに配置することを特徴とする請求項11〜15のいずれか1つに記載のICカードの製造方法。
【請求項17】
前記熱電変換装置形成工程では、前記熱電変換素子をスクリーン印刷法によって形成することを特徴とする請求項11〜16のいずれか1つに記載のICカードの製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−301711(P2006−301711A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118591(P2005−118591)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】