説明

ICカード

【課題】 アンテナコイルが自身の線路を横断することがないようにすることにより、信頼性を向上することができるICカードを提供する。
【解決手段】 ICカード10は半導体チップ20および容量素子42を収納するカード本体30を有する。カード本体30の上面には、該カード本体の外周側面に添って設けられた外周ループアンテナ41および該外周ループアンテナ41に接続された容量素子42が形成されている。外周ループアンテナ41の内側には、送・受信回路を内蔵する半導体チップ20が配置されている。半導体チップ20の上面に、半導体チップの外部接続用電極51a、51aに接続された内周ループアンテナ51が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はICカードに関し、特に、電磁誘導を利用して外部装置との通信が可能なICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
リーダ/ライタ等の外部装置から搬送される電波を受信して、内臓する半導体チップのメモリ部に保持された情報と通信を行う集積回路(IC)を組み込んだIC(Integrated Circuit);カードが普及している。このようなカードには、交通機関や流通機構における料金の精算用として、一般に、RF-ID(Radio Frequency Identification)カード、クレジット機能付きのICカード、インテリジェントカードといわれるものや商品情報を提供するIDタグといわれるものがある。
【0003】
これらのカードには、受信する電波に共振するため、アンテナコイルと容量素子からなる共振回路が内蔵されており、電磁結合により誘起された起電力により、外部装置との情報の交換を行う。
【0004】
アンテナコイルは、平面矩形形状のカードの周側部に沿って複数回旋回した上で、半導体チップの外部接続用電極に接続した構造とされたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、アンテナコイルは、半導体チップの一方の外部接続用電極に接続された一方の端部から延出され、カードの周縁部を内側から外側に向けて複数回螺旋状に引き回された上、旋回された線路を横断して他方の端部を半導体チップの他方の電極に接続された構造が採用されている。
【0005】
ICカードは、一般的に以下のように動作する。ICカードは、内蔵したアンテナにより電磁界を利用するため、リーダ/ライタにかざすだけで、データを読み書きできる。ICカード内に埋め込まれたICチップ上のアンテナがリーダ/ライタから出ている電磁波を受信し、それをエネルギーに変換して電源を供給して、無線でデータのやりとりを行う。ICチップ(金属端子)はカードの内側に埋め込まれている。
【0006】
ICカードの電力は、リーダ/ライタから発信される電波を使って発生させる(電磁誘導方式)。まず、リーダ/ライタ側のアンテナコイルに電流を流すと、交流磁界が発生する。この磁界の中にICカードをかざすと、ICカード側のアンテナコイルに交流電圧が誘起される。この交流電圧はICカード内で直流電圧に変換され、ICチップが動作する。
【0007】
電力の供給と同時に、情報もやり取りされる。ICカード側のアンテナコイルに電流を流すと同様に磁界(反磁界)が発生し、リーダ/ライタ側のアンテナコイルに影響を与える。ICカードとリーダ/ライタ間でやり取りされる搬送波に対して、振幅、周波数、位相を変化させて信号を送る。(それぞれ、振幅偏移変調(ASK)、周波数偏移変調(FSK)、位相偏移変調(PSK))。変調波によってアンテナコイル内を流れる電圧が変化する。この変化をデジタルデータに変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−148462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した如く、特許文献1においては、アンテナコイルが、半導体チップの一対の外部接続用電極間を複数回周回されたうえ、周回された線路を横断する構造であるため、この横断する部分には絶縁膜を設けて該絶縁膜の厚さ方向に貫通するビアホールを設ける必要がある。
【0010】
このような構造は複雑であり、工程数が多くなるばかりでなく、短絡等の不具合が発生し易い。また、通常、カードは1mm以下と薄いために曲がり易いものであるが、ビアホールを設けることにより、一層曲がり易くなり且つそれにより断線やカード自体の破損が生じるなど信頼性が得られないものであった。カードの不良の最大の原因は、ICと配線との接触不良であり、外圧による僅かな変形でも断線に繋がっていた。このように、カードが折られることによりループ部が折られると、ループ内を磁束が通過できないため、通信ができなくなるという問題があった。
【0011】
そこで、この発明は、アンテナコイルが自身の線路を横断することがないようにすることにより、信頼性を向上することができるICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明に係るICカードは、カード本体と、該カード本体の上面に、該カード本体の外周側面に添って設けられた第1のアンテナと、前記第1のアンテナの内側に配置され、上面に送・受信回路および該送・受信回路に接続された外部接続用電極を有する半導体チップと、前記第1のアンテナの内側に設けられ、前記半導体チップの前記外部接続用電極に接続された第2のアンテナとを具備することを特徴とする。
請求項2に記載の発明に係るICカードは、請求項1に記載の発明において、前記第1のアンテナは、外周ループアンテナであり、前記第2のアンテナは、前記第1のアンテナの内側に配置された、内周ループアンテナであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明に係るICカードは、請求項1または2に記載の発明において、前記第1のアンテナに容量素子が接続されたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明に係るICカードは、請求項1に記載の発明において、前記半導体チップは、前記送・受信回路が形成された上面を覆う絶縁膜を有し、前記内周ループアンテナは少なくとも一部が前記絶縁膜上に設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明に係るICカードは、請求項4に記載の発明において、前記内周ループアンテナの平面サイズは、前記半導体チップの平面サイズより小さく、全体が前記半導体チップの前記絶縁膜上に設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明に係るICカードは、請求項5に記載の発明において、前記外部接続用電極は、前記絶縁膜と面一であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明に係るICカードは、請求項6に記載の発明において、前記内周ループアンテナは、前記外部接続用電極の上面に接合された端部を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明に係るICカードは、請求項7に記載の発明において、前記カード本体の上面は、前記半導体チップの前記絶縁膜との上面と面一であり、前記外周ループアンテナは、前記カード本体の前記上面上に設けられていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明に係るICカードは、請求項8に記載の発明において、前記カード本体は、ベースシートと、前記半導体チップを収納する収納部を有する中間シートとを含むことを特徴とする。
請求項10に記載の発明に係るICカードは、請求項9に記載の発明において、さらにカード本体の上面に設けられた上面シートを有することを特徴とする。
請求項11に記載の発明に係るICカードは、請求項10に記載の発明において、前記半導体チップ上に、前記内周ループアンテナを覆う上層絶縁膜が形成されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明に係るICカードは、請求項11に記載の発明において、前記カード本体は、ベースシートと、前記半導体チップを収納する収納部を有する中間シートとを含み、前記上層絶縁膜は前記中間シートの上面に形成されていることを特徴とする。
請求項13に記載の発明に係るICカードは、請求項12に記載の発明において、前記外周ループアンテナは前記上層絶縁膜上に設けられていることを特徴とする。
請求項14に記載の発明に係るICカードは、請求項4に記載の発明において、前記カード本体は、ベースシートと、前記半導体チップを収納する収納部を有する中間シートとを含み、前記内周ループアンテナは、他の一部が前記中間シートの上面に設けられていることを特徴とする。
請求項15に記載の発明に係るICカードは、請求項14に記載の発明において、前記外周ループアンテナは、前記中間シートの上面に設けられていることを特徴とする。
請求項16に記載の発明に係るICカードは、請求項14に記載の発明において、前記中間シートを覆う上面シートを有し、前記外周ループアンテナは前記上面シートに設けられていることを特徴とする。
請求項17に記載の発明に係るICカードは、請求項14に記載の発明において、前記カード本体は、別の半導体チップを収納する別の収納部を有し、前記内周ループアンテナは前記別の収納部に収納された別の半導体チップ上に配置されていることを特徴とする。
請求項18に記載の発明に係るICカードは、請求項17に記載の発明において、別の半導体チップは上面に絶縁膜が形成され、前記内周ループアンテナは前記別の半導体チップの前記絶縁膜の上面に設けられていることを特徴とする。
請求項19に記載の発明に係るICカードは、請求項17に記載の発明において、前記半導体チップと前記別の半導体チップを接続する配線を有することを特徴とする。
請求項20に記載の発明に係るICカードは、請求項14に記載の発明において、前記内周ループアンテナ上および前記中間シート上に上部絶縁層が設けられ、前記上部絶縁層上に前記外周ループアンテナが設けられていることを特徴とする。
請求項21に記載の発明に係るICカードは、請求項20に記載の発明において、前記カード本体は、別の半導体チップを収納する別の収納部を有し、前記内周ループアンテナは前記別の収納部に収納された別の半導体チップ上に配置されていることを特徴とする。
請求項22に記載の発明に係るICカードは、請求項17に記載の発明において、前記カード本体は、電源用電池を収納する収納部を有し、該収納部に前記別の半導体チップに接続された電源用電池が収納されていることを特徴とするICカード。
請求項23に記載の発明に係るICカードは、請求項22に記載の発明において、前記電源用電池は電気二重層コンデンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、半導体チップの外部接続用電極に接続された内周ループアンテナが外周ループアンテナの内周側に配置された構成とされているので、アンテナ自体の線路を横断することがなく、信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態としてのICカードの平面図。
【図2】図1に示すICカードのII-II線で切断した断面図。
【図3】図2の要部拡大断面図。
【図4】第1実施形態の変形例1としての半導体チップの断面図。
【図5】この発明の回路の構成を説明するための図。
【図6】図5の回路動作を説明するための図。
【図7】第1実施形態の変形例2としてのICカードの断面図。
【図8】第1実施形態の変形例3としてのICカードの断面図。
【図9】この発明の第2実施形態としてのICカードの平面図。
【図10】図9のX-X線で切断した断面図。
【図11】第2実施形態としてのICカードの製造方法を説明するための拡大断面図。
【図12】図11に続く工程の断面図。
【図13】図12に続く工程の断面図。
【図14】この発明の第2実施形態の変形例を示す断面図。
【図15】この発明のその他の変形例としてのICカードの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1はこの発明の第1実施形態としてのICカードの平面図を示す。ICカード(以下、本明細書においては、カードと称する)10は、平面がほぼ矩形状をなしており、該矩形状の外周側部に沿って一周する外周ループアンテナ41と、容量素子42と、半導体チップ20と、該半導体チップ20の外部接続用電極に接続された内周ループアンテナ51を内蔵する。
【0016】
外周ループアンテナ41は、角部が円弧状とされた全体がほぼ長方形状を有し、ICカード10の外周側部に沿って一周されており、限定する意味ではないが、銅またはアルミニウムで形成されている。金又は銀で形成することも可能である。外周ループアンテナ41は一対の電極部61、62を有している。
【0017】
電極部61、62間には高誘電体層63が設けられている。電極部61、62および高誘電体層63は容量素子42を構成する。外周ループアンテナ41は、角部が円弧状とされた、全体がほぼ長方形状としたが、特に、この形状に特定されるものではなく、楕円形状、円形状あるいは多角形状としてもよいものである。
【0018】
半導体チップ20は、詳細は後述するが送信回路、受信回路、制御回路、メモリ部等の集積回路部を有し、該集積回路部を外部装置に電気的に接続するための外部接続用電極を有する。
【0019】
内周ループアンテナ51は、半導体チップ20の外部接続用電極の上面に接合された一対の端部51a、51aを有し、該一対の端部51a、51aを遠回りする方向に引き出されて、半導体チップ20の外周側部に沿って、その内側にほぼ一周して形成されている。内周ループアンテナ51は、角部が円弧状とされた全体がほぼ正方形または長方形とされており、限定する意味ではないが、銅またはアルミニウムで形成されている。金又は銀で形成することも可能である。内周ループアンテナ51は、全体がほぼ正方形または長方形としたが、特に、この形状に特定されるものではなく、楕円形状、円形状あるいは多角形状としてもよいものである。
【0020】
図2は、図1のII―II線で切断した断面図であり、図3は図2の要部の詳細を説明するための拡大断面図である。
ICカード10は、カード本体30および該カード本体30の上面に接着された上面シート35を有する。カード本体30は、全体の厚さが800μm〜1mmとされ、ベースシート31および該ベースシート31に接着剤または両面接着剤付シートにより接着された中間シート32から構成される。ベースシート31および中間シート32は、それぞれ、ポリエステル、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)等の樹脂シートにより形成される。
【0021】
ベースシート31は、典型的には厚さ100μm〜250μmで、全面べた状のシート部材である。中間シート32は、300μ〜600μmの厚さで、半導体チップ20を収納する収納部33を有する。収納部33は、図3に図示される如く、平面サイズが半導体チップ20とほぼ同じか、あるいはそれよりも僅かに大きいサイズであり、ベースシート31の厚さ方向に貫通する開口部となっている。また、中間シート32には、容量素子42を形成するための開口部34が形成されており、該開口部34内には、電極部61、62および中間シート32の厚さとほぼ同じ厚さの高誘電体層63が充填されている。
【0022】
中間シート32の上面には、外周ループアンテナ41が設けられている。図示はしないが、外周ループアンテナ41の一対の電極部61、62は、中間シート32の開口部34の相対向する一対の側面にもベタ状に形成され、換言すれば、開口部34内において厚さ方向に延出されている。
【0023】
すなわち、電極部61、62は、中間シート32の厚さ方向において、高誘電体層63の厚さと同じサイズの長さを有する。上述した如く、一対の電極部61、62および高誘電体層63は、容量素子42を構成する。
【0024】
このような、外周ループアンテナ41および容量素子42が固定された中間シート32を形成する効率的な方法を例示する。
まず、べた状の樹脂シートに半導体チップ20の収納部33となる開口部および容量素子42を形成するための開口部34を設け、中間シート32を形成する。開口部の形成は、プレス法でもエッチング法でもよい。
【0025】
次に、中間シート32の上面および開口部34内に無電解めっきまたはスパッタにより下地金属膜を形成し、次に、電解めっきを行って上部金属膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、上部金属膜および下地金属膜をエッチングして、外周ループアンテナ41および一対の電極部61、62を形成する。
【0026】
この後、開口部34内に、印刷法などにより高誘電体層63を充填して容量素子42を形成すればよい。なお、この場合、開口部34内に高誘電体層63を充填する方法に換え、電極を有する通常のチップコンデンサを開口部34内に挿入する方法としてもよい。
【0027】
中間シート32の収納部33内において、半導体チップ20は、図示しない接着剤によりベースシート31に接着されて固定されている。半導体チップ20は、図3に図示される如く、シリコン等からなり、後述するが、上面側に形成された集積回路を有する半導体基板21、該半導体基板21の集積回路に接続された接続パッド22、接続パッド22の一部を除いて半導体基板21の上面を覆う保護膜23、接続パッド22上に形成された突起電極(外部接続用電極)24および突起電極(外部接続用電極)24の周囲における保護膜23上に形成された絶縁膜25を有する。
【0028】
突起電極(外部接続用電極)24は、通常の配線の厚さが10μm程度以下であるに対して、厚さ(高さ)が30μm〜80μmと厚いもので、その上面は絶縁膜25の上面と面一となっている。半導体チップ20の上面側には、内周ループアンテナ51が設けられている。すなわち、内周ループアンテナ51の一対の端部51a、51aは、半導体チップ20の突起電極(外部接続用電極)24の上面に接合された状態で、絶縁膜25の上面に固着して設けられており、全体として半導体パッケージとして一体化されている。
【0029】
半導体チップ20の上部側に内周ループアンテナ51を形成して半導体パッケージを形成する方法を例示する。まず、突起電極(外部接続用電極)24の上面を含む半導体チップ20の絶縁膜25の上面全面に無電解めっきまたはスパッタにより下地金属膜を形成し、次に、該下地金属膜をめっき流路として電解めっきを行って上部金属膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、上部金属膜および下地金属膜をエッチングして、一対の端部51a、51aを有する内周ループアンテナ51を形成する。
【0030】
図3において、半導体チップ20を収納部33内に収納して中間シート32の下面をベースシート31の上面に接着すると、中間シート32の厚さと半導体チップ20の高さが同じであるため、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51とは同一平面に位置する、換言すれば、面一となる。この場合、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51とが同一の厚さであれば、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51両者の上下面とも面一となる。しかし、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51の厚さは同一であることを要さない。両者の厚さが異なる場合でも、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51の下面は面一である。
【0031】
半導体チップ20および中間シート32の上面には上面シート35が配置される。上面シート35は、典型的には厚さ50μm〜100μmで、ポリエステルまたはポリイミドなどから全面べた状の透明シート部材であり、接着剤または両面接着剤付シートにより半導体チップ20の上面および中間シート32の上面全体に接着される。半導体チップ20および中間シート32に接着される面には、外装用の印刷が施されている。
【0032】
次に、外周ループアンテナ41および内周ループアンテナ51の機能について説明する。図5において、外周ループアンテナANToutおよび半導体チップ20に接続された内周ループアンテナANTinとは、相互に接近して配置されている。このため、外周ループアンテナANToutおよび内周ループアンテナANTinは誘導結合をする。
【0033】
図6に図示される如く、図示しないリーダ/ライタ等の外部装置のアンテナから送信されるキャリア周波数fcを有する電波は、電磁誘導によって、ICカード10のコイルLoutに誘導電流を生成する。コイルLoutに発生した誘導電流は電磁結合されたコイルLinに誘電電流を生成する。コイルLoutおよび容量Csは共振回路を構成しており、その共振周波数f0をキャリア周波数fcと一致させることにより、コイルLoutに大きな共振電流が生成される。
【0034】
半導体チップ20は、それぞれ、送信回路91、受信回路92、制御回路93およびメモリ部94を構成する集積回路を有している。コイルLinに生成された誘導電流により制御回路93が駆動され、これにより、外周ループアンテナ41が受信した電波からデータが復元されて、メモリ部94がアクセスされる。制御回路93は、メモリ部94にデータを書き込み、あるいはメモリ部94に保持されたデータを送信回路91に読み出し、変調してコイルLoutを介して、外部装置に送信する。外部装置では、送信回路から送信された半導体チップ20のメモリ部94に保持されていた情報を表示部において表示する。このようにして、外部装置とICカード10との情報の交換がなされる。
【0035】
図4は、第1実施形態の変形例1を示す。図3に図示された半導体パッケージでは、内周ループアンテナ51は半導体チップ20の上面に露出されて設けられていた。変形例1は、内周ループアンテナ51を絶縁膜の内部に埋没させた構成を示す。
すなわち、図4に図示された例では、内周ループアンテナ51の上面および絶縁膜25の上面全体に上層絶縁膜26を設けた構造とされている。この場合、上層絶縁膜26の厚さ分、突起電極(外部接続用電極)24の高さおよび絶縁膜25の厚さが小さくなっている。このような構造の半導体パッケージは、半導体チップ20と内周ループアンテナ51との接合がより強固となる。
【0036】
上述した如く、内周ループアンテナ51を有する半導体チップ20は、半導体パッケージとして形成することが望ましい。特に、効率的に得る製造方法として、半導体ウエハの状態で、半導体チップ形成領域ごとに、図3または図4に図示された内周ループアンテナ51を有する半導体チップ20を形成した後、ダイシングラインに沿ってダイシングして個々の半導体パッケージを得るようにすると、一層、生産性が向上する。
【0037】
図7は、第1実施形態の変形例2を示す。この変形例2では、カード本体30に下面シート36が加えられている。下面シート36は、上面シート35と同様に、透明な樹脂シートで形成され、ベースシート31と対向する面に外装用の印刷が施され、該印刷面がベースシート31の下面に接着されている。
【0038】
図8は、第1実施形態の変形例3を示す。図3および図4に図示した例では、外周ループアンテナ41は中間シート32の上面に設けられていた。図8においては、外周ループアンテナ41は、上面シート35の下面に設けられている。上面シート35は、接着剤または両面接着剤付シートにより中間シート32の上面に接着されるので、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51とは、面一となる。
【0039】
以上のように、従来、端部51aと外周ループアンテナ41との間に、同軸ケーブル等のコネクターを介す必要があったものを、第1実施形態のICカード10では、半導体チップ20の再配線を内周ループアンテナ51にしたことで、端部51aから外周ループアンテナ41までの結線を無くすことができる。つまり、カード本体30の外周側部の内側に沿って外周ループアンテナ41を周回し、該外周ループアンテナ41の内側に送・受信回路が内蔵された半導体チップ20を配し、該半導体チップ20の上面に、当該半導体チップ20の外周側部に沿って周回された内周ループアンテナ51を設けたので、それぞれのループアンテナがアンテナ自体の線路を横断することがなく、信頼性を向上することができる。また、外周ループアンテナ41と内周ループアンテナ51とが面一な構成とされていることにより、電磁結合により生成される起電力の効率が高く信頼性の高い動作が得られる。
【0040】
(第2実施形態)
図9はこの発明の第2実施形態としてのICカードの平面図を示し、図10は図9のX―X線で切断した断面図を示す。ICカード(以下、カードと称する)10は、平面がほぼ矩形状をなしており、該矩形状の外周側部に沿って一周する外周ループアンテナ41と、容量素子42と、第1の半導体チップ20と、第2の半導体チップ70と、第1の半導体チップ20の外部接続用電極接続された内周ループアンテナ51と、電源用電池80を内蔵する。
【0041】
外周ループアンテナ41には、第1実施形態と同様に、ループアンテナを形成する線路の中間に容量素子42が接続されている。
【0042】
第1の半導体チップ20は、第1実施形態の場合より平面サイズは小さく形成されているが、第1実施形態の場合と同様、送信回路、受信回路、制御回路、メモリ部等の集積回路部を有し、該集積回路部を外部装置に電気的に接続するための複数の突起電極(外部接続用電極)24a、24bを有する。
【0043】
第2の半導体チップ70は、図示はしないが、システム制御用の制御回路、演算部およびメモリ部を有する。第2の半導体チップ70は、配線53により第1の半導体チップ20の突起電極(外部接続用電極)24bに接続された複数の入出力用電極74aおよび複数の電源用電極74bを有する。
【0044】
内周ループアンテナ51は、第1の半導体チップ20の外部接続用電極の上面に接合された一対の端部51a、51aを有し、該一対の端部51a、51aから遠ざかる方向に引き出され、中間シート32の上面および第2の半導体チップ70の上面に引き回されてほぼ一周するように延出されている。
【0045】
このように、第2実施形態においては、内周ループアンテナ51の平面サイズを第1の半導体チップ20の平面サイズよりも大きくしているため、第1の半導体チップ20の平面サイズが小さい場合であっても、電磁誘導により発生する起電力を十分とすることができる。このことは、第1の半導体チップ20の平面サイズを検討するに際して、必要とされる内周ループアンテナ51の平面サイズを考慮することがないことを意味し、第1の半導体チップ20の平面サイズを十分に小さいものとすることが可能となり、これにより、第1の半導体チップ20を安価なものとし、ひいてはICカード10を安価にする。
【0046】
なお、第2実施形態の場合においても、内周ループアンテナ51は、全体がほぼ正方形または長方形に特定されるものではなく、楕円形状、円形状あるいは多角形状としてもよいものである。
【0047】
電源用電池80は、例えば、電気二重層コンデンサからなるもので、図示はしないが、厚さ方向の中間部に配置されたセパレータ、該セパレータの上下面に設けられた活性炭などからなる一対の分極性電極および該一対の分極性電極および前記セパレータを覆う電解液が充填されたパッケージにより構成されている。電気二重層コンデンサの詳細については、例えば、特開2000−353542号公報を参照されたい。
【0048】
電源用電池80の正・負電極の一方は、中間シート32の上面および第2の半導体チップ70の上面に設けられた配線54により第2の半導体チップ70の電源用電極74bの1つに接続されている。また、電源用電池80の正・負電極の他方は、中間シート32の下面に形成された配線56、中間シート32に形成されたビアホール57(図9参照)、および中間シート32の上面および第2の半導体チップ70の上面に設けられた配線55により第2の半導体チップ70の電源用電極74bの他の1つに接続されている。
【0049】
図11〜図13は、第2実施形態における要部およびその製造方法を説明するための拡大断面図である。
中間シート32は、第1の半導体チップ20を収納する第1の収納部33および第2の半導体チップ70を収納する第2の収納部37を有するものであり、べた状のシート部材にプレス法またはエッチング法により第1の収納部33および第2の収納部37を形成した後、接着剤または両面接着剤付シートによりベースシート31の上面に接着される(図11参照)。
【0050】
第1の半導体チップ20および第2の半導体チップ70を、それぞれ、第1の収納部33および第2の収納部37に収納し、それぞれ、その底面をベースシート31に接着する。第2の半導体チップ70は、第1の半導体チップ20と同様、シリコン等からなり、上面側に形成された集積回路を有する半導体基板71、該半導体基板71の集積回路に接続された接続パッド72、接続パッド72の一部を除いて半導体基板71の上面を覆う保護膜73、接続パッド72上に形成された複数の入出力用電極74aおよび一対の電源用電極74b、および、入出力用電極74aおよび電源用電極74bの周囲における保護膜73上に形成された絶縁膜75を有する(図12参照)。
【0051】
中間シート32の上面には、外周ループアンテナ41および内周ループアンテナ51が設けられている。内周ループアンテナ51は、第1の半導体チップ20の突起電極(外部接続用電極)24の上面に接合された一対の端部51a、51aから遠ざかる方向に引き出され、中間シート32の上面および第2の半導体チップ70の上面に引き回されている。
【0052】
また、第1の半導体チップ20の複数の突起電極(外部接続用電極)24bと第2の半導体チップ70の複数の入出力用電極74aとを接続する配線53は、それぞれ、第1の半導体チップ20の上面と第2の半導体チップ70の上面、および中間シート32の上面に形成されている。
【0053】
また、電源用電池80の正・負電極の一方と第2の半導体チップ70の電源用電極74bとを接続する配線54は、中間シート32の上面および第2の半導体チップ70の上面に設けられている。
【0054】
次に、このような、外周ループアンテナ41、内周ループアンテナ51および容量素子42を中間シート32上に形成する効率的な方法を図13を参照して説明する。但し、電源用電池80および容量素子42に関連する部分については、図10を参照されたい。
まず、べた状の樹脂シートに、第1の半導体チップ20を収納する第1の収納部33、第2の半導体チップ70を収納する第2の収納部37、電源用電池80を収納する第3の収納部59および容量素子42を形成するための開口部34を設け、中間シート32を形成する。次に、図示はしないが、ビアホール57および中間シート32の下面に配線56を形成する。ビアホール57の形成はパンチング法またはエッチング法を用いて、配線56の形成は、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
【0055】
次に、第1の収納部33、第2の収納部37および第3の収納部59に、それぞれ、第1の半導体チップ20、第2の半導体チップ70および電源用電池80を収納し、それぞれ、ベースシート31に接着する。
【0056】
中間シート32の上面全面および開口部34内に無電解めっきまたはスパッタにより下地金属膜を形成し、次に、下地金属膜をめっき流路とする電解めっきを行って上部金属膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、上部金属膜および下地金属膜をエッチングして、一対の電極部61、62を含む外周ループアンテナ41、内周ループアンテナ51、複数の配線53、一対の配線54を形成する。この後、開口部34内に、高誘電体層63を形成すればよい。
【0057】
以上のように、第2実施形態のICカード10においても、外周ループアンテナ41の内側に送・受信回路が内蔵された半導体チップ20を配し、該半導体チップ20の上面を含む中間シート32の上面に内周ループアンテナ51を設けたので、それぞれのループアンテナがアンテナ自体の線路を横断することがなく、信頼性を向上することができる。
【0058】
図14は、第2実施形態の変形例を示す。図14において、図10に図示されたカードと相違する点は、外周ループアンテナ41が、内周ループアンテナ51上に形成された上部絶縁層38上に形成されている点である。
すなわち、図14に図示されたICカード10は、配線53および内周ループアンテナ51等の上面を含む中間シート32の上面全体に上部絶縁層38が形成され、該上部絶縁層38上に外周ループアンテナ41が形成され、外周ループアンテナ41の上面を含む上部絶縁層38上全面にオーバーコート膜39が形成された構造を有する。
【0059】
本発明において、上述した以外の変形を適用することができる。例えば、図14の構成において、外周ループアンテナ41およびオーバーコート膜39を形成せず、図8に図示される如く、外周ループアンテナ41を上面シート35の下面に形成するようにしてもよい。また、図13に図示される構造において、外周ループアンテナ41、内周ループアンテナ51等の上面を含む中間シート32の上面に上部絶縁層38を形成し、該上部絶縁層38の上面に上面シート35を接着するようにしてもよい。
【0060】
半導体チップとして、図8に図示された半導体チップ20のみを有するICカード10の場合においても、内周ループアンテナ51等の上面を含む中間シート32の上面に上部絶縁層を形成する構造を採用することも可能である。
【0061】
また、第2実施形態においても、ベースシート31の下面に下面シート36を接着する構造とすることができる。また、図示はされていないが、カード本体30を1枚の板状部材とし、半導体チップ等を収納する収納部は、該板状部材の厚さの中間に底面を有する凹部として形成するようにしてもよい。
なお、この発明のその他の変形例におけるICカードの平面図を図15に示す。このように、容量素子42を有していない構造でもよい。
その他、本発明は、その趣旨の範囲において、種々、変形して適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 ICカード
20 第1の半導体チップ
24、24a、24b 突起電極(外部接続用電極)
30 カード本体
31 ベースシート
32 中間シート
33、37、39 収納部
35 上面シート
36 下面シート
38 上部絶縁層
39 オーバーコート膜
41 外周ループアンテナ
42 容量素子
51 内周ループアンテナ
51a 端部
53、54、55,56 配線
70 第2の半導体チップ
80 電源用電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード本体と、該カード本体の上面に、該カード本体の外周側面に添って設けられた第1のアンテナと、前記第1のアンテナの内側に配置され、上面に送・受信回路および該送・受信回路に接続された外部接続用電極を有する半導体チップと、前記第1のアンテナの内側に設けられ、前記半導体チップの前記外部接続用電極に接続された第2のアンテナとを具備することを特徴とするICカード。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記第1のアンテナは、外周ループアンテナであり、前記第2のアンテナは、前記第1のアンテナの内側に配置された、内周ループアンテナであることを特徴とするICカード。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発明において、前記第1のアンテナに容量素子が接続されたことを特徴とするICカード。
【請求項4】
請求項1に記載の発明において、前記半導体チップは、前記送・受信回路が形成された上面を覆う絶縁膜を有し、前記内周ループアンテナは少なくとも一部が前記絶縁膜上に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項5】
請求項4に記載の発明において、前記内周ループアンテナの平面サイズは、前記半導体チップの平面サイズより小さく、全体が前記半導体チップの前記絶縁膜上に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項6】
請求項5に記載の発明において、前記外部接続用電極は、前記絶縁膜と面一であることを特徴とするICカード。
【請求項7】
請求項6に記載の発明において、前記内周ループアンテナは、前記外部接続用電極の上面に接合された端部を有することを特徴とするICカード。
【請求項8】
請求項7に記載の発明において、前記カード本体の上面は、前記半導体チップの前記絶縁膜との上面と面一であり、前記外周ループアンテナは、前記カード本体の前記上面上に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項9】
請求項8に記載の発明において、前記カード本体は、ベースシートと、前記半導体チップを収納する収納部を有する中間シートとを含むことを特徴とするICカード。
【請求項10】
請求項9に記載の発明において、さらにカード本体の上面に設けられた上面シートを有することを特徴とするICカード。
【請求項11】
請求項5に記載の発明において、前記半導体チップ上に、前記内周ループアンテナを覆う上層絶縁膜が形成されていることを特徴とするICカード。
【請求項12】
請求項11に記載の発明において、前記カード本体は、ベースシートと、前記半導体チップを収納する収納部を有する中間シートとを含み、前記上層絶縁膜は前記中間シートの上面に形成されていることを特徴とするICカード。
【請求項13】
請求項12に記載の発明において、前記外周ループアンテナは前記上層絶縁膜上に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項14】
請求項4に記載の発明において、前記カード本体は、ベースシートと、前記半導体チップを収納する収納部を有する中間シートとを含み、前記内周ループアンテナは、他の一部が前記中間シートの上面に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項15】
請求項14に記載の発明において、前記外周ループアンテナは、前記中間シートの上面に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項16】
請求項14に記載の発明において、前記中間シートを覆う上面シートを有し、前記外周ループアンテナは前記上面シートに設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項17】
請求項14に記載の発明において、前記カード本体は、別の半導体チップを収納する別の収納部を有し、前記内周ループアンテナは前記別の収納部に収納された別の半導体チップ上に配置されていることを特徴とするICカード。
【請求項18】
請求項13に記載の発明において、別の半導体チップは上面に絶縁膜が形成され、前記内周ループアンテナは前記別の半導体チップの前記絶縁膜の上面に設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項19】
請求項17に記載の発明において、前記半導体チップと前記別の半導体チップを接続する配線を有することを特徴とするICカード。
【請求項20】
請求項14に記載の発明において、前記内周ループアンテナ上および前記中間シート上に上部絶縁層が設けられ、前記上部絶縁層上に前記外周ループアンテナが設けられていることを特徴とするICカード。
【請求項21】
請求項20に記載の発明において、前記カード本体は、別の半導体チップを収納する別の収納部を有し、前記内周ループアンテナは前記別の収納部に収納された別の半導体チップ上に配置されていることを特徴とするICカード。
【請求項22】
請求項17に記載の発明において、前記カード本体は、電源用電池を収納する収納部を有し、該収納部に前記別の半導体チップに接続された電源用電池が収納されていることを特徴とするICカード。
【請求項23】
請求項22に記載の発明において、前記電源用電池は電気二重層コンデンサであることを特徴とするICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−231763(P2010−231763A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286290(P2009−286290)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】