説明

ICタグ付き作業指示書利用システム

【課題】 ネットワークの繋がっていない生産設備に、印刷による作業指示書だけでは伝えられなかった情報を容易に伝達することのできるシステムを提供する。
【解決手段】 作業指示書本体1aに非接触で交信可能なICタグ2を設けた作業指示書1を用いる。作業指示書1のICタグ2に作業指示の情報を記録する作業指示書発行手段4を設ける。作業指示書1のICタグ2に書き込まれた作業指示の情報を読み出して作業指示の内容を表示する処理、および生産設備8に入力する処理を行う作業指示内容受付手段12を設ける。この手段12で読み取った作業指示書1のICタグ2に、この作業指示内容の作業を行っている間に生産設備8で発生した作業履歴情報を書き込む作業履歴書き込み手段13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業指示書にICタグを融合させて作業指示を行うICタグ付き作業指示書利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品やその他各種の製品の生産工場において、製品の型番や作業手順、型番が異なった場合の段取り、計画個数等は、文書による作業指示書で生産設備の作業者に渡すことが一般的である。生産設備の作業者は、作業指示書の文章を読み、設備の設定、調整等に反映させている。また、型番別の加工プログラムの選択入力や、設備パラメータの設定等の処理を行っている。
工場内をローカルエリアネットワークで接続した工場もあるが、工場内の個々の生産設備については、ネットワークに接続されず、単独で動作するものが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、作業指示書を作業者が読み、設備の設定、調整等に反映させる方法では、作業者の熟練度により、作業ミスや時間ロスの発生原因となる。また、型番やパラメータの設定等についても、生産計画では元々はディジタルデータとなっていたものを、人が読める文章等に印刷し、再びディジタルデータに戻すという無駄な作業を繰り返すことになっている。工場内をネットワーク化すると、このような課題は解消されるが、設備コストが高くなるうえ、ライン変更時の処置が容易でない。また、メモリカードを抜き差しする方法等によっても、 ディジタルデータをそのまま生産設備に伝えることができるが、メモリカードでは目視できる情報の表示が僅かしか行えず、作業指示に使うには見える情報が少な過ぎて使用に不便である。
【0004】
この発明の目的は、ネットワークの繋がっていない生産設備に、印刷による作業指示書だけでは伝えられなかった情報を容易に伝達することのできるICタグ付き作業指示書利用システムを提供することである。
この発明の他の目的は、生産設備で発生した履歴情報等を作業指示等を生成する場所等に伝えることのできる双方向の情報伝達ができるシステムとすることである。
この発明のさらに他の目的は、型番別等の加工プログラムやパラメータ等の設定が、作業指示書によって行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のICタグ付き作業指示書利用システムは、非接触で交信可能なICタグ(2)を有する作業指示書(1)と、この作業指示書(1)のICタグ(2)に作業指示の情報を記録する作業指示書発行手段(4)と、この作業指示書(1)のICタグ(2)に書き込まれた作業指示の情報を読み出して作業指示の内容を表示装置に表示する処理、および生産設備に入力する処理の両方またはいずれか一方を行う作業指示内容受付手段(12)とを備えたシステムである。上記生産設備(8,72)は、例えば工作機械や、これにワークを搬入,搬出する搬送装置等である。上記ICタグ(2)には、RFIDタグ等の無線ICタグを用いることができる。
【0006】
RFIDタグ等の無線ICタグは、読み書き可能なメモリと送受信回路とを備え、単体でデータを記憶でき、保持に電源が不要であることから、単に識別情報を伝える機能だけでなく、移動可能な情報媒体として機能することができる。この発明のシステムでは、作業指示書(1)と無線ICタグ(2)とを融合させたものであるため、ネットワークの繋がっていない生産設備(8,72)へ、作業指示書(1)では伝えられなかった情報を伝えることができる。また、メモリカード等の単なる記憶媒体と異なり、作業指示書(1)にICタグ(2)を設けたものを用いるため、作業者の目視可能な情報を作業指示書(1)にある程度多く記載しておくことができ、目視による判別とディジタルデータの伝達との両方が行える。さらに、非接触交信型のICタグ(2)の利点を生かし、作業指示書(1)にICタグ(2)を取付けながら、情報の読み書きが容易を容易に行うことができる。
上記の構成では、作業指示内容受付手段(12)が作業指示書(1)のICタグ(2)を読み取ることで、作業指示の内容を表示装置に表示したり、あるいは生産設備(8,72)に入力する処理を行うことができる。作業指示書(1)のICタグ(2)の情報が直接に入力される場合、作業者の手間がかからず、また転記等による入力ミスが解消される。
【0007】
この発明において、前記作業指示内容受付手段(12)で読み取った作業指示書(1)のICタグ(2)に、このICタグ(2)の作業指示内容の作業を行っている間に前記生産設備(8,72)で発生した作業履歴情報を書き込む作業履歴書き込み手段(13)と、この作業指示書(1)のICタグ(2)から前記作業履歴情報を読出す作業履歴情報読出し手段(5)とを備えたものとしても良い。
これにより、生産設備(8,72)からは、作業により発生する情報をICタグ(2)に記録することにより伝達でき、双方向のディジタル情報の伝達が行える。特に、非接触交信型のICタグ(2)の利点を生かし、情報の相互交換が効率的に行える。
【0008】
この発明において、非接触で交信可能なICタグ(2)を有しワークを搬送する容器類(18)に付される現品票(14)と、前記生産設備(8,72)でワークが加工される都度、その生産設備(8,72)を通過した情報を前記現品票(14)のICタグ(2)に設備通過履歴として書込む設備通過履歴書き込み手段(17)とを備えたシステムとしても良い。
現品票(14)は、ワークを搬送する容器類(18)と一緒に移動するため、現品票(14)にもICタグ(2)を設けておくことで、ワークの設備通過履歴を記憶させて管理することが容易に行える。
【0009】
この発明のICタグ付き作業指示書利用システムにおいて、作業指示書発行手段(4)は、生産設備(8,72)の制御装置(9)で用いるパラメータ(23)および加工プログラム(22)の両方またはいずれか一方をICタグ(2)に書き込むものであり、前記作業指示内容受付手段(12)は、前記作業指示書(1)のICタグ(2)から読み出したパラメータ(23)および加工プログラム(22)の両方またはいずれか一方を前記制御装置(9)に入力するものとしても良い。
パラメータ(23)や加工プログラム(22)が作業指示書(1)のICタグ(2)から入力されると、作業者が生産設備(8,72)の操作盤でワークの型番等に応じてパラメータ(23)や加工プログラム(22)を入力することが不要となり、また入力の誤りも解消され、生産性が向上する。
【0010】
この場合に、前記生産設備(8,72)の前記制御装置(9)は、ワークの複数の型番に共通の基本加工プログラム(22a)と、ワークの型番別に異なる型番別加工プログラム(22b)とを用いて制御を行うものであり、前記作業指示書発行手段(4)は、少なくとも前記型番別加工プログラム(22b)を前記ICタグ(2)に書き込む処理を行うものとしても良い。型番別加工プログラム(22b)は、例えばサブプログラムとする。
このように基本加工プログラム(22a)を制御装置(9)に持っておいて、型番別加工プログラム(22b)だけをICタグ(2)に記憶させることで、ICタグ(2)の限られた記憶容量を効果的に利用して、型番変更の場合の作業者の入力の手間を省くことができる。
【0011】
この発明において、前記生産設備(8,72)が、生産設備本体(75)と、この生産設備本体に交換自在に装着されるモジュラーユニット(76)とで構成されてモジュラーユニット(76)の交換により別の専用機となるものであっても良い。この場合に、前記作業指示書発行手段(4)で発行する作業指示書(1)のICタグ(2)の作業指示の情報として、前記モジュラーユニット(76)の組み替え情報を含むものとしても良い。
モジュラーユニットの交換により別の専用機となる生産設備(8,72))は、ライン構成の変更が必要な場合に、ライン上の生産設備(8,72)の全体の配置を変えることなく、モジュラーユニット(76)の交換のみで対処ライン構成の変更が容易に行える。このモジュラーユニット(76)の組み替え情報が作業指示書(1)のICタグ(2)に記録されていると、組み替えが容易にかつ迅速に行える。
【0012】
この発明のICタグ付き作業指示書(1)は、視覚的に作業指示内容を表示した作業指示書本体(1a)と、この作業指示書本体(1a)に設けられ非接触で交信可能なICタグ(2)とを備え、このICタグ(2)に、前記作業指示書本体(1a)に表示された作業指示内容に表れていない作業指示内容を記憶させたものである。
この構成のICタグ付き作業指示書(1)は、この発明の上記システム等において利用でき、その視覚的な作業指示内容とICタグ(2)に記憶されるディジタルデータとで、ネットワークに繋がっていない生産設備(8,72)の効率的な運用が行える。
【0013】
この発明のICタグ付き作業指示書利用方法は、非接触で交信可能なICタグ(2)を有する作業指示書(1)であって、前記ICタグ(2)に作業指示内容が書き込まれたものを発行する過程と、この作業指示書(1)を受け付けてICタグ(2)を読み取り、表示装置による作業指示を行う処理、および生産設備(8,72)に入力する処理の両方またはいずれか一方を行う作業指示受付過程と、この受け付けた作業指示内容に従って生産設備(8,72)で生産を行う過程と、この生産設備(8,72)で生産する過程で生じた情報である作業履歴情報を前記作業指示書(1)のICタグ(2)に書き込む過程と、この書き込まれた作業履歴情報を前記ICタグ(2)から読みだす過程とを含む方法である。この方法によると、上記のような双方向の情報伝達が行える。
【発明の効果】
【0014】
この発明のICタグ付き作業指示書利用システムは、非接触で交信可能なICタグを有する作業指示書と、この作業指示書のICタグに作業指示の情報を記録する作業指示書発行手段と、この作業指示書のICタグに書き込まれた作業指示の情報を読み出して作業指示の内容を表示装置に表示する処理、および生産設備に入力する処理の両方またはいずれか一方を行う作業指示内容受付手段とを備えたものであるため、ネットワークの繋がっていない生産設備に、印刷による作業指示書だけでは伝えられなかった情報を容易に伝達することができる。
前記作業指示内容受付手段で読み取った作業指示書のICタグに、このICタグの作業指示内容の作業を行っている間に前記生産設備で発生した作業履歴情報を書き込む作業履歴書き込み手段と、この作業指示書のICタグから前記作業履歴情報を読出す作業履歴情報読出し手段とを備える場合は、生産設備で発生した履歴情報等を作業指示等を生成する場所等に伝えることのできる双方向の情報伝達が行える。
前記作業指示書発行手段が、生産設備の制御装置で用いるパラメータおよび加工プログラムの両方またはいずれか一方をICタグに書き込むものであり、前記作業指示内容受付手段が、前記作業指示書のICタグから読み出したパラメータおよび加工プログラムの両方またはいずれか一方を前記制御装置に入力するものである場合は、型番別等の加工プログラムやパラメータ等の設定が、作業指示書によって行え、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。このICタグ付き作業指示書利用システムは、作業指示書本体1aに非接触で交信可能なICタグ2を設けたICタグ付き作業指示書1を用いるシステムである。作業指示書本体1aは、視覚的に作業指示内容を印刷等で表示したものであり、例えば従来から用いられている作業指示書と同様なもので良い。
このシステムは、作業指示書1のICタグ2に作業指示の情報を記録する作業指示書発行手段3と、生産設備8に備えられた生産設備側端末11に有する作業指示内容受付手段12とを備える。図2のように生産設備8が複数設けられる場合、各生産設備8にタグリーダ/ライタ6を有する生産設備側端末11が設けられる。
【0016】
図1において、作業指示書発行手段4は、パーソナルコンピュータ等からなる作業指示側端末3に備えられた手段である。作業指示書発行手段4は、作業指示番号、作業手順、設備パラメータ、型番別プログラム、型番、計画等等の情報をサーバ7から受け取り、これを作業指示情報としてICタグ2に書き込む。ICタグ2への書き込みは、生産設備側端末11に設けられたタグリーダ/ライタ6を介して行われる。作業指示書発行手段4は、ICタグ2への作業指示情報の書き込みと共に、作業指示書1における作業指示書本体1aに、文字,記号等により、作業指示情報の一部をプリントアウトする。
【0017】
生産設備8は、設備機械部分10と、この設備機械部分10を制御する制御装置9でなる。設備機械部分10は、旋盤,研削盤等の工作機械や、プレス機械、熱処理機、組立機等の物を生産する機械からなり、またはこの生産する機械にワークWの搬入,搬出を行う搬送装置を含むものである。制御装置9は、コンピュータ式の数値制御装置とプログラマブルコントローラ等からなる。上記生産設備側端末11は、例えばこの制御装置9の操作盤である。生産設備側端末11は、タグリーダ/ライタ6を有している。
【0018】
作業指示書発行手段4で発行された作業指示書1は、作業開始時等に生産設備側端末11の作業指示内容受付手段12で読み取られ、その読み取り内容のうち、設備パラメータおよび型番別プログラム等の情報が生産設備8の制御装置9に入力される。生産設備8はこの入力された情報に従い、動作を行う。
【0019】
作業指示内容受付手段12は、この他に、作業指示書1のICタグ2に書き込まれた作業指示の情報を読み出して作業指示の内容を端末11である操作盤の表示装置(図示せず)に表示する処理を行う。これにより、作業者は作業指示の内容を目で見て確認することができる。また、生産設備8で作業開始の前に、チャック等のワーク把持手段や工具の交換等の段取りが必要な場合は、作業指示内容受付手段12から制御装置9に情報が入力された後、段取りの完了入力等を待って動作を開始する。段取りは、作業指示書1に文字等で記述された情報によって行うようにしても、またICタグ2の読み取り情報から行うようにしても良い。
【0020】
生産設備8に搬入するワーク(図示せず)を入れた容器類18には現品票14が付けられる。現品票14は、現品票本体14aにICタグ2を設けたものであり、現品票管理端末15に設けられた現品票発行手段16により発行される。現品票発行手段16は、現品票14のICタグ2に、現品番号、型番、ロット番号、個数等の情報を書き込むと共に、これらの情報を現品票本体14aの部分にも文字,記号等でプリントアウトする。
【0021】
生産設備側端末11は、設備通過履歴書き込み手段17を有しており、作業開始時に現品票14のICタグ2の上記各情報を読み取ると同時に、設備通過情報を現品票14のICタグ2に追記する。
【0022】
生産設備8で作業が開始されると、ロット番号、生産履歴、生産個数、設備状態、設備異常履歴等の作業履歴情報を、生産設備側端末11に設けられた作業履歴書き込み手段13が作業指示書1のICタグ2に書き込む。ロット番号は、現品票14のICタグ2から読み取ったロット番号である。
【0023】
作業指示書1が示す作業が終了した時点で、作業指示書1は、作業指示側端末3に戻され、ICタグ2に記録された作業履歴情報が、作業履歴情報読出し手段5によって読み出され、サーバ7に書き込まれる。作業履歴情報読出し手段5は、作業指示側端末3に設けられている。
また、ワークを搬送する容器類18に付いた現品票14は、完成したワークの出荷時に回収されて作業指示側端末3等に設けられた回収現品票読出し手段19で読み出され、サーバ7で各生産設備8から収集した生産履歴情報と合わせて記憶され、トレーサビリティ情報として利用される。
【0024】
このように、今まではネットワークが繋がっていなければ出来なかった作業指示のディジタル転送や、ロット別のトレーサビリティが、作業指示書1に設けたICタグ2や、現品票14に設けたICタグ2の利用によって実現可能になる。また、上記ICタグ2として、幾度も読み書きできるものを用いると、使い終わったものはリサイクルでき、経済的である。
【0025】
図3は、生産設備8の制御装置9の具体的構成例を示す。制御装置9は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラからなる。制御装置9は、加工プログラム記憶手段21に記憶された加工プログラム22を演算制御部25で実行することにより、設備機械部分10を制御する。このとき、演算制御部25は、パラメータ記憶手段23に記憶された各設備パラメータ24に従って駆動力等の各種の制御を行う。
【0026】
加工プログラム22は、各種の型番のワークについて共通の制御を行う基本加工プログラム22aと、ワークの型番別に異なる型番別加工プログラム22bとでなるものとされる。型番別加工プログラム22bは、例えば基本加工プログラム22aで呼び出されるサブプログラム等からなる。
この場合に、作業指示書1のICタグ2は、加工プログラム22のうちの型番別加工プログラム22bを記憶させたものとする。また、型番別のパラメータ24bを記憶したものとされる。
【0027】
この構成の場合、生産機械側端末11の作業指示内容受付手段12は、作業指示書1のICタグ2を読み取ると、その型番別加工プログラム22bおよび型番別のパラメータ24bにより、制御装置9における加工プログラム記憶手段21およびパラメータ記憶手段23の所定の記憶領域の記憶内容を更新させる。したがって、制御装置9は、その更新された新たな型番別加工プログラム22bおよび型番別のパラメータ24bを用いて加工を行うことになる。
このように基本加工プログラム22aを制御装置9に持っておいて、型番別加工プログラム22aをICタグ2に記憶させることで、ICタグ2の限られた記憶容量を効果的に利用して、型番変更の場合の作業者の入力の手間を省くことができる。
【0028】
図4,図5と共に、上記ICタグ2につき、具体的に説明する。ICタグ2に対する情報の読み書きは、タグリーダ/ライタ6によって行われる。ICタグ2が読み出し専用のタイプのものである場合は、タグリーダ/ライタ6の代わりに、書き込み機能を有しないタグリーダを用いても良い。タグリーダ6は、ICタグ2に対向させるアンテナ6aを有しており、上記作業側端末3等の情報処理手段に接続される。
【0029】
ICタグ2は、非接触で情報の記録および読取りが可能なもの、または読み取りのみが可能なものであり、ICチップ(集積回路のチップ)31と、アンテナ32とで構成される。これらICチップ31とアンテナ32は、例えば樹脂(図示せず)で一体に包囲される。ICタグ2は種々の形式,形状,大きさのものがあり、短冊状や板状の物の他、例えば1mm未満の大きさの角状や球状の物などがある。作業指示書1に設ける場合は、例えば短冊状のものや、作業指示書本体1aに直接に印刷等で形成されたものが使用される。
【0030】
ICタグ2としては、例えばRFID(無線周波数認識:Radio Frequency Identification)技術を応用したRFIDタグが利用できる。RFID形式のICタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光などを用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いても良い。ここでは、例えば電磁誘導形式のもの、またはマイクロ波のものが用いられる。
【0031】
図5は、ICタグ2の具体的回路例を示す。このICタグ2のICチップ31は、中央処理装置(CPU)33、メモリ34、送受信回路35、および電源回路36を有しており、電源回路36はアンテナ32から電源を得るものとされている。メモリ34は、情報の記憶に電源が不要なものが用いられる。
【0032】
図6,図7は、図1の生産設備8として、モジュラーユニット形式の生産設備72を採用した例を示す。図6は、2本の生産ライン71(711 ,712 )を並設した生産ライン群を示す。各生産ライン71は、それぞれ複数の生産設備72と物流設備73とで構成される。物流設備73は、生産設備72の一部として構成されたものであっても良い。上記物流設備73として保管設備731 と搬送装置732 とが設けられている。
各生産設備72は、機械加工,塑性加工,または熱処理等によって物を生産する設備であり、例えば工作機械である。図示の例は各生産ライン711 ,712 が、それぞれ転がり軸受における内輪生産ラインおよび外輪生産ラインである。第1の生産ライン711 における生産設備721 ,722 ,724 は、それぞれ内輪溝研削盤、内輪内径研削盤、内輪溝超仕上げ機であり、第2の生産ライン712 における生産設備723 ,725 は、それぞれ外輪溝研削盤、および外輪溝超仕上げ機である。
【0033】
各生産ライン711 ,712 のライン構成要素となる生産設備72は、いずれも共通仕様の生産設備本体に対してモジュラーユニットを交換自在に組み合わせたユニット構成の専用機としてあり、これら生産設備72のモジュラーユニットを交換することにより工程の変更が可能なものとなる。この例では、研削盤となる3つの生産設備721 〜723 が互いに共通の生産設備本体75を持ち、超仕上げ機となる2つの生産設備724 ,725 が互いに共通の生産設備本体を持つものとしてある。
【0034】
図7(A)〜(D)は、互いに共通仕様の生産設備本体75を持つユニット構成専用機からなる生産設備72の具体例を示す。これら各図の生産設備721 〜723 は、それぞれ図6に示した内輪溝研削盤、内輪内径研削盤、および外輪溝研削盤に構成されたものである。図7(D)は、その生産設備本体75を示す。これらの生産設備72は、共通仕様の生産設備本体75に対してモジュラーユニット76を交換自在に組み合わせたユニット構成の専用機である。共通の生産設備本体75は、共通のベッド77と共通のユニット78とで構成される。モジュラーユニット76および共通ユニット78にはそれぞれ各種の機能のものがある。明細書,図面の参照符号は、各ユニットの個別種類の区別の必要な場合に、その個別種類を示す符号を用いている。
【0035】
図7(D)に示すように、共通のユニット78として、主軸台79、主軸スピンドル80、および直交2軸方向に進退駆動可能なスライドテーブル81を備える。スライドテーブル81は、ベッド77上に所定の軸方向(Z軸方向)に進退自在に設けたられた第1テーブル81aと、第1テーブル81a上に上記軸方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸方向)に進退自在に搭載された第2テーブル81bとの2段積み構成のものとされ、各軸方向のサーボモータ等の駆動源を備えている。ローディングユニット82は、共通のユニット78の一つとして生産設備本体75を構成するものであっても、交換自在なモジュラーユニットとして構成されたものであっても良い。ローディングユニット82を共通のユニット78とする場合は、そのローディングユニット本体を共通ユニットとし、ローダチャック82a〜82c(図7(A)〜(C))等の治具類は交換自在なものとする。
【0036】
図7(A)に示すようにユニット構成専用機の生産設備72を内輪溝研削盤721 とする場合は、共通仕様の生産設備本体75に対して、専用のモジュラーユニット76として、砥石スピンドル83Aと、旋回式のロータリドレッサ84Aと、ローディングユニット82に対する専用交換部品82aを組み付ける。図7(B)に示すようにユニット構成専用機の生産設備72を内輪内径研削盤722 とする場合は、共通仕様の生産設備本体75に対して、専用の砥石スピンドル83Bと、固定式のドレッサ84Bと、ローディングユニット82に対する専用交換部品82bと、アフターゲージ85Bとを組み付ける。図7(C)に示すようにユニット構成専用機の生産設備72を外輪溝研削盤723 とする場合は、共通仕様の生産設備本体75に対して、専用の砥石スピンドル83Cと、旋回式のロータリドレッサ84Cと、ローディングユニット82に対する専用交換部品82cと、アフターゲージ85Cとを組み付ける。
【0037】
このように、この生産ライン71におけるユニット構成専用機の生産設備72は、共通仕様の生産設備本体75に対して、専用のモジュラーユニット76を組み付けることにより製作され、専用のモジュラーユニット76を交換することによって、機能の異なる専用機となる。そのため、工程変更が容易に行える。上記の例では、内輪溝研削盤721 と、内輪内径研削盤722 と、外輪溝研削盤723 との相互の組み替えが自在に行える。このため、例えば図6に示すように第1の生産ライン711 において、内輪溝研削盤721 の後工程側に並べて内輪内径研削盤722 を配置していた構成を、内輪内径研削盤722 を2台並べたライン構成とすることもできる。
【0038】
このようなモジュラー構成の生産設備72とした場合、図1の作業指示書発行手段3で発行する作業指示書1のICタグ2の作業指示の情報として、前記モジュラーユニット76の組み替え情報を含むものとしても良い。このモジュラーユニット組み替え情報が作業指示書1のICタグ2に記録されていると、組み替えが容易にかつ迅速に行える。
図6,図7の実施形態において、その他の構成は図1ないし図5と共に説明したICタグ付き作業指示書利用システムと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかるICタグ付き作業指示書利用システムの概念構成を示すブロック図である。
【図2】その概要の説明図である。
【図3】同システムにおける制御装置の具体例のブロック図である。
【図4】ICタグとタグリーダ/ライタの関係を示す説明図である。
【図5】ICタグの内部回路例を示すブロック図である。
【図6】生産設備で構成される生産ラインの例を示す斜視図である。
【図7】同生産ラインで用いたモジュラー構成の生産設備の各種組み替え例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1…作業指示書
1a…作業指示書本体
2…ICタグ
3…作業指示側端末
4…作業指示書発行手段
5…作業履歴情報読出し手段
6…タグリーダ/ライタ
7…サーバ
8…生産設備
9…制御装置
11…生産設備側端末
12…作業指示内容受付手段
13…作業履歴書き込み手段
14…現品票
16…現品票発行手段
18…容器類
19…回収現品票読出し手段
22…加工プログラム
22a…基本加工プログラム
22b…型番別加工プログラム
72…生産設備
75…生産設備本体
76…モジュラーユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で交信可能なICタグを有する作業指示書と、この作業指示書のICタグに作業指示の情報を記録する作業指示書発行手段と、この作業指示書のICタグに書き込まれた作業指示の情報を読み出して作業指示の内容を表示装置に表示する処理、および生産設備に入力する処理の両方またはいずれか一方を行う作業指示内容受付手段とを備えたICタグ付き作業指示書利用システム。
【請求項2】
請求項1において、前記作業指示内容受付手段で読み取った作業指示書のICタグに、このICタグの作業指示内容の作業を行っている間に前記生産設備で発生した作業履歴情報を書き込む作業履歴書き込み手段と、この作業指示書のICタグから前記作業履歴情報を読出す作業履歴情報読出し手段とを備えたICタグ付き作業指示書利用システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、非接触で交信可能なICタグを有しワークを搬送する容器類に付される現品票と、前記生産設備で前記ワークが加工される都度、その生産設備を通過した情報を前記現品票のICタグに設備通過履歴として書込む設備通過履歴書き込み手段とを備えたICタグ付き作業指示書利用システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記作業指示書発行手段は、生産設備の制御装置で用いるパラメータおよび加工プログラムの両方またはいずれか一方をICタグに書き込むものであり、前記作業指示内容受付手段は、前記作業指示書のICタグから読み出したパラメータおよび加工プログラムの両方またはいずれか一方を前記制御装置に入力するものであるICタグ付き作業指示書利用システム。
【請求項5】
請求項4において、前記生産設備の前記制御装置は、ワークの複数の型番に共通の基本加工プログラムと、ワークの型番別に異なる型番別加工プログラムとを用いて制御を行うものであり、前記作業指示書発行手段は、少なくとも前記型番別加工プログラムを前記ICタグに書き込む処理を行うものとしたICタグ付き作業指示書利用システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記生産設備が、生産設備本体と、この生産設備本体に交換自在に装着されるモジュラーユニットとで構成されてモジュラーユニットの交換により別の専用機となるものであり、前記作業指示書発行手段で発行する作業指示書のICタグの作業指示の情報として、前記モジュラーユニットの組み替え情報を含むICタグ付き作業指示書利用システム。
【請求項7】
視覚的に作業指示内容を表示した作業指示書本体と、この作業指示書本体に設けられ非接触で交信可能なICタグとを備え、このICタグに、前記作業指示書本体に表示された作業指示内容に表れていない作業指示内容を記憶させたICタグ付き作業指示書。
【請求項8】
非接触で交信可能なICタグを有する作業指示書であって、前記ICタグに作業指示内容が書き込まれたものを発行する過程と、この作業指示書を受け付けてICタグを読み取り、表示装置による作業指示を行う処理、および生産設備に入力する処理の両方またはいずれか一方を行う作業指示受付過程と、この受け付けた作業指示内容に従って生産設備で生産を行う過程と、この生産設備で生産する過程で生じた情報である作業履歴情報を前記作業指示書のICタグに書き込む過程と、この書き込まれた作業履歴情報を前記ICタグから読み出す過程とを含むICタグ付き作業指示書利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−39903(P2006−39903A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218232(P2004−218232)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】