説明

IGF−1R阻害剤としてのテトラヒドロイソキノリンおよびテトラヒドロベンゾアゼピン誘導体

式(I)で表される化合物(式中、R、R、Rは明細書に記載した通りであり、U、V、WはそれぞれCR’、CR’、CR’(R’、R’、R’は明細書に記載した通りである。)またはNであってもよい)が合成された。これらの化合物はIGF−1受容体の発現または作用を抑制または阻害することが見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン様成長因子−1受容体(IGF−1R)の発現または作用を抑制または阻害することができる新規化合物に関する。また、本発明は、IGF−1Rの制御されていない発現が観察される、癌やその他の異常細胞の増殖および代謝性および血管増殖疾患を防止および/または治療するために、IGF−1Rの発現または作用を抑制または阻害するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インスリン様成長因子受容体(IGF−1R)はヒトに存在する58の膜貫通型(trans−membrane)チロシンキナーゼ受容体の1つである(「レビュー:1型インスリン様成長因子受容体(総説:「タイプ1インスリン様成長因子受容体の構造および機能(Structure and function of the Type 1 insulin−like growth factor receptor)」,T.E.Adamsら,Cell.Mol.Life Sci.57 (2000)1050−1093頁)。IGF−1受容体が欠乏した細胞に関する遺伝的知見および研究によって、IGF−1受容体は最適な成長に必要であるが、成長の絶対条件ではないことが証明されている(Basergaら,Biochim.Biophys.Acta 1332(1997)105−126頁)。IGF−1受容体の発現は、アポトーシス(細胞死)から細胞を保護し、インビトロおよびインビボにおける形質転換表現型の確立および維持のための要件であるように思われる(Basergaら,Biochim.Biophys.Acta 1332(1997)105−126頁)。いくつかのインビトロおよびインビボの研究は、IGF−1受容体の発現または作用を阻害することにより、形質転換表現型が逆になり、腫瘍細胞の成長が阻害されることを証明している。これらの研究で使用される方法としては、抗体の中和(Kalebicら,Cancer Res.54(1994)5531−5534頁)、アンチセンス(antisense)オリゴヌクレオチド(Resnicoffら,Cancer Res.54(1994)2218−2222頁)、優性陰性受容体(D’Ambrosioら,Cancer Res.56(1996)4013−4020頁)、三重らせん形成オリゴヌクレオチド(Rinninslandら,Proc.Natl.Acad.Sci.94(1997)5854−5859頁)、アンチセンスmRNA(Nakamuraら,Cancer Res.60(2000)760−765頁)、および二本鎖RNAを使用したRNA干渉(V.M.Macaulayら,WO−A−03/100059)が挙げられる。
【0003】
表皮細胞内でのIGF−1受容体の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、乾癬病斑で表皮超増殖を逆転させることが分かっている(CJ.Wraightら,Nat.Biotechnol.18(2000)521−526頁)。
【0004】
また、IGF−1受容体の抑制は、糖尿病性網膜症(L.K.Shawverら,DDT 2(1997)50−63頁)およびアテローム性動脈硬化および再狭窄(A.Bayes−Genisら,Circ.Res.86(2000)125−130頁)などの疾患に対して有益な効果を有する可能性がある。
【0005】
IGF−1受容体系は、増殖がIGF−1受容体の発現または過剰発現によるものである疾患の予防および/または治療における魅力的なターゲットと見なされている(L.Longら,Cancer Research 55(1995)1006−1009頁、R.Baserga,TIBTECH 14(1996)150−152頁、R.Basergaら,Endocrine 7(1997年8月)99−102頁、V.M.Macaulayら,Annals of Oncogene 20(2001)4029−4040頁)。
【0006】
チルホスチン(tyrphostin)と呼ばれる一連の物質が、IGF−1受容体の発現を抑制または阻害するとされている(M.Parrizasら,Endocrinology 138(1997)1427−1433頁、G.Blumら,Biochemistry 39(2000)15705−15712頁、G.Blumら,J.Biol.Chem.278(2003)40442−40454頁)。チルホスチンの欠点は、チルホスチンが細胞系において活性が低く、インシュリン受容体と交差反応することである。
【0007】
高濃度のタモキシフェン(tamoxifen)は、IGF−1Rβサブユニットのチロシンリン酸化を抑制または阻害する能力を有し、下流への信号伝達を遮断することが分かっている(L.Kanter−Lewensohnら,Mol.Cell.Endocrinology 165(2000)131−137頁)。
【0008】
米国特許第6337338 B1号では、多くのヘテロアリール−アリールウレア物質がIGF−1受容体のアンタゴニストとして記載されている。MCF−7およびMCF−10細胞系に関する細胞増殖阻害研究では、これらの物質は低い活性を示している。
【0009】
国際特許公開第WO02/102804 Al号では、ポドフィロトキシン、デオキシポドフィロトキシン、ピクロポドフィリン、デオキシピクロポドフィリンがIGF−1受容体の選択的かつ効率的な阻害剤であることが示されている。デオキシピクロポドフィリンは、リンパ球性白血病細胞L1210を接種されたマウスの死亡を遅らせることに関して、デオキシポドフィロトキシンよりも優れていることが示されている(A.Akahoriら,Chem.Pharm.Bull.20(1972)1150−1155頁)。しかしながら、作用メカニズムについては提案されていない。
【0010】
国際特許公開第WO02/102805 Al号では、アセチルポドフィロトキシン、エピポドフィロトキシン、ポドフィロトキソン、および4’−デメチルポドフィロトキシンがIGF−1Rリン酸化反応の潜在的な阻害剤であることが示されている。
【0011】
国際特許公開第WO03/048133 Alでは、多くのピリミジン誘導体がIGF−1受容体の修飾物質として記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、改良されたIGF−1R抑制活性を有する化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、下記式(1)で表される化合物およびその製剤学的に許容されうる塩(下記を参照)によって達成される。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、Rは水素原子、Me、Et、CHO、CN、OH、OMe、COR、COOR、CONHR、またはCSNHR(Rは(C−C)アルキルを示す。)を示し、
は水素原子、(C−C)アルキル、OH、(C−C)アルコキシ、OCF、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示し、
はMe、(C−C)アルコキシ、OCF、SMe、またはSEtを示し、nは1または2であり、
’およびR’はそれぞれ独立して、OH、Me、Et、OMe、OCF、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示し、
UはNまたはCR’(R’は水素原子、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示す。)を示し、
VはNまたはCR’(R’は水素原子、(C−C)アルコキシ、(C−C)アルキル、OH、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示す。)を示し、
WはNまたはCR’(R’は水素原子、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示す。)を示す。
【0016】
化合物(I)の好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。式(I)の化合物の最も好ましい例は請求項13の化合物である。
【0017】
本発明のさらなる目的は、薬剤、特にIGF−1受容体の発現または作用の抑制または阻害が有益であると考えられる疾患の予防または治療のための薬剤としての化合物(I)の使用と、化合物(I)を含む医薬組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
式(I)の化合物は、テトラヒドロイソキノリン部位(n=1)またはテトラヒドロベンゾアゼピン部位(n=2)を含む。
【0019】
式(I)において、Rは好ましくはMe、OH、CN、CHO、COR、またはCOORである。Rの特に好ましい例としては、Me(メチル)、(CHO(ホルミル)、COMe(アセチル)、CN(シアノ)が挙げられる。
【0020】
は好ましくは水素原子、Me、OMe、またはハロゲンであり、Rは好ましくはOMeかOEtである。特に好ましくは、Rは水素原子またはOMeであり、RはOMeである。RおよびRの最も好ましい置換基パターンは、R=水素原子、R=OMeである。
【0021】
式(I)において、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン部位または2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン部位の1位の置換基は、フェニル置換基(U=CR’;V=CR’;W=CR’)4−ピリジル置換基(U=CR’;V=N;W=CR’)、2−ピリジル置換基(V=CR’;U=N,W=CR’またはU=CR’,W=N)、2−ピリミジル置換基(U,W=N;V=CR’)、4−ピリミジル置換基(V=N;U=CR’,W=NまたはU=N,W=CR’)またはトリアジニル置換基(U,V,W=N)であってもよい。
【0022】
1位の置換基の好ましい置換パターンでは、R’およびR’はそれぞれ独立して、クロロ、ブロモ、Me、またはOMeである。別の好ましい実施形態では、R’およびR’は同一である。別の好ましい実施形態では、R’およびR’はともに、クロロ、ブロモ、Me、またはOMeである。別の好ましい実施形態では、R’はクロロまたはブロモであり、R’はOMeである。最も好ましくは、R’およびR’はともにクロロまたはブロモである。1位の置換基がフェニルである場合、R’およびR’は好ましくは水素原子である。R’は好ましくは水素原子、クロロ、ブロモ、Me、またはOMeである。1位の置換基としてのフェニルの最も好ましい3つの置換パターンは、a)R’,R’,R’=OMe;b)R’=クロロ、R’,R’=OMe;c)R’=水素原子、R’,R’=ともに、クロロまたはブロモである。フェニルの自由回転のため、b)におけるR’およびR’の定義は互いに置き換えることができる。
【0023】
式(I)の置換基の定義において使用する(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシにおけるアルキル残基は、分岐状、非分枝状または環状であってもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよい。アルキル残基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、エテニル、プロペ−2−ニル、プロペ−3−ニル、ブテ−1−ニル、ブテ−2−ニル、ブテ−3−ニル、またはプロパルギルである。好ましくは、アルキル残基はメチル、エチル、またはイソプロピルであり、特に好ましくはメチルである。
【0024】
(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシにおけるアルキル残基は、非分枝状、分岐状、または環状であってもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよい。非分枝状アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、およびn−へキシルが挙げられる。分枝状アルキルの例としては、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、(1,1−ジ−エチル)メチル、(1−プロピル−1−メチル)メチル、(1−イソプロピル−1−メチル)メチル、(1,1−ジメチル−1−エチル)メチル、(1−t−ブチル)メチル、(1−プロピル−1−エチル)メチル、(1−イソプロピル−1−エチル)メチル、(1、1−ジエチル−1−メチル)メチル、および(1−t−ブチル−1−メチル)メチルが挙げられる。環状アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、または(2−または3−メチル)シクロペンチルが挙げられる。不飽和アルキルの例としては、エテニル、プロペ−2−ニル、ブテ−1−ニル、ブテ−2−ニル、ブテ−3−ニル、ペンテ−1−ニル、ペンテ−2−ニル、ペンテ−3−ニル、ペンテ−4−ニル、ペンタ−1,3−ジエニル、ペンタ−1,4−ジエニル、ペンタ−2,4−ジエニル、またはプロパルギルが挙げられる。
【0025】
本願においては、「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロまたはブロモを意味する。
【0026】
本願においては、「IGF−1受容体」という用語は、アミノ酸配列が知られているヒトのIGF−1受容体を含むが(例えば、T.E.Adamsら,Cellular and Molecular Life Sciences 2000,57,1050−1093頁)、通常の哺乳動物のIGF−1Rなどの他のIGF−1Rも含む。
【0027】
式(I)の化合物の製剤学的に許容されうる塩は、製剤学的に許容されうる酸による酸付加塩であり、Rが水素原子、Me、またはEtであり、および/またはU、V、Wの少なくとも1つが窒素である場合に可能である。製剤学的に許容されうる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、硝酸、リン酸、またはコハク酸が挙げられる。
【0028】
本発明の化合物(I)は、スキーム1aおよび1bを参照して以下に説明する方法を使用することによって製造することができる。好ましくは、本発明の化合物(I)は、3,4−ジヒドロイソキノリン(n=1)または4,5−ジヒドロ−3H−2−ベンゾアゼピン(n=2)であるイミン(II)を経由して合成される。次に、イミン(II)を還元によって本発明の二級アミノ化合物(I)(R=水素原子)に変換させることができる。還元剤としては、メタノール中の水素化ホウ素ナトリウムまたはDIBAL、B、LiAlHなどのその他の還元剤を触媒として使用することができ、あるいはキラルであってもよい触媒を使用する触媒水素化はイミンを還元するために好適であるが、化合物(I、R=水素原子)の他の部分に影響を及ぼすことがないことが好ましい。
【0029】
がMeまたはEtであり、1位の置換基がフェニルである化合物(I)は、対応するハロゲン化アルキルRX(Xはブロモ、ヨード、メシラート、トシラート、またはトリフラートなどの脱離基である。)によってイミン(II)をアルキル化して中間体イミニウム塩(III)を形成することによって製造することができる(スキーム1a)。このアルキル化は、室温から還流温度において、アセトン、DMF、CHCN、DMSO、または1,2−ジメトキシエタンなどの非プロトン性溶媒中で好ましくは行われる。次に、イミニウム塩(III)をイミン(II)の還元と同様の条件で還元し、R=MeまたはEtである本発明の化合物(I)を形成する。
【0030】
がMeまたはEtであり、1位の置換基がフェニル以外である(すなわち、U、V、Wの少なくとも1つが窒素である。)化合物(I)は、Rが水素原子である化合物(I)をXCOOEtまたはXCOMe(Xはクロロなどの脱離基である(XCOMeにおいて、Xはアセトキシであってもよい。)。)によってアシル化してRがCOOEtである化合物(I)を合成し、LiAlHまたはBを用いて、RがMeまたはEtである化合物(I)に還元することによって製造することができる(スキーム1b)。
【0031】
がメチルである全ての化合物(I)の場合、標準的なエシュヴァイラー・クラーク(Eschweiler−Clarke)反応を使用して、対応するRが水素原子である二級アミノ化合物(I)からこれらの誘導体を直接形成することができる(スキーム1aまたは1b)。
【0032】
がCOR、COORまたはシアノである全ての化合物(I)は、Rが水素原子である二級アミノ化合物(I)から、NEtまたはピリジンなどの適切な補助塩基および4−ジメチルアミノピリジンなどの触媒を任意に使用して、適当なハロゲン化アシルRCOX(特にR=Meの場合、無水酢酸を使用することもできる。)、ハロギ酸エステルROCOX、またはハロゲン化シアンXCN(X=クロロまたはブロモ)によるアシル化によって製造することができる(スキーム1aまたは1b)。反応温度は室温から溶媒の沸点であってもよく、溶媒は、THFや1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、CHCN、N−メチルピロリドン、またはCHClであってもよい。ハロゲン化シアンを使用する場合には、生成されたハロゲン化水素を中和するために無水炭酸カリウムを使用することができる。アセチル化(R=COMe)は、N−アセチル誘導体の単離を容易にするために、純粋な無水酢酸内で、すなわち、溶媒または触媒を使用せずに行うことが好ましい。
【0033】
がホルミルである全ての化合物(I)は、Rが水素原子である二級アミノ化合物(I)からトルエン還流下でギ酸を使用して製造することができる(スキーム1aおよび1b)。
【0034】
がCONHRまたはCSNHRである全ての化合物(I)は、Rが水素原子である二級アミノ化合物(I)から、標準的な条件下で、室温でエーテル、DMFまたはアセトニトリルなどの不活性溶媒内で、イソシアネートOCNRまたはイソチオシアネートSCNHRと反応させることによって製造することができる(スキーム1aおよび1b)。
【0035】
イミン(II)は、例えば、標準的なショッテン−バウマン(Schotten−Baumann)条件下で、適当に置換された塩化アシル(X)を用いて、適当に置換されたフェネチルアミン(VIII)または3−フェニルプロピルアミン(IX)(スキーム2)をアシル化してアミド(IV)を得ることにより製造することができる。アミド(IV)は、脱水条件下で、塩化亜鉛、POCl(Bischler−Napieralski型)、またはP(Pictet−Gams型)などの脱水剤を使用してイミン(II)に環化させてもよい。
【0036】
アミン(VIII)または(IX)は、適当に置換されたべンズアルデヒド(V)から公知の方法で製造することができる。(V)、(VI)、(VIII)のシーケンスについては、例えばKohnoら,Bull.Chem.Soc.Jpn.,1990,63(4),1252−1254頁を参照する。場合によっては、フェネチルアミン(VIII)は、3−メトキシフェニルエチルアミンのように市販されており、とりわけ実施例31−38で使用した(下記を参照)。シーケンス(V)−(VII)は対応する4−メトキシ誘導体に適用される手順にしたがって容易に達成される(DiBiase,S.A.ら,J.Org.Chem.44(1979)4640−4649頁)。その後、化合物(VII)を触媒水素化によってアミン(IX)に還元する。スキーム2の適当に置換されたべンズアルデヒド(V)は市販されているかあるいは公知である。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
好ましい化合物(I)を合成するために使用することができる公知のベンズアルデヒド(V)の例は以下の通りである。
【0041】
【化6】

【0042】
2−(C−C)アルキル−3−(C−C)アルコキシベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルキル、R=(C−C)アルコキシ)および2−(C−C)アルキル−3−トリフルオロメトキシ−ベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルキル、R=OCF)は、2−(C−C)アルキル−3−ヒドロキシベンズアルデヒドから、対応する臭化(C−C)アルキルおよびヨウ化トリフルオロメチルを用いてウィリアムソンエーテル化によってそれぞれ製造することができる。
【0043】
2−(C−C)アルコキシ−3−(C−C)アルコキシベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルコキシ、R=(C−C)アルコキシ)および2−(C−C)アルコキシ−3−トリフルオロメトキシベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルコキシ、R=OCF)は、2−(C−C)アルコキシ−3−ヒドロキシベンズアルデヒドから、対応する臭化(C−C)アルキルおよびヨウ化トリフルオロメチルを用いてウィリアムソンエーテル化によってそれぞれ製造することができる。または、これらの化合物はいずれも、3−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドから、エーテル化、脱ベンジル化、3−ヒドロキシ基のエーテル化によって得ることができる。
【0044】
2−(C−C)アルキル−3−メチルチオベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルキル、R=SMe)および2−(C−C)アルキル−3−エチルチオベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルキル、R=SEt)は、2−(C−C)アルキル−3−ブロモベンズアルデヒドジエチルアセタールから、そのグリニャール試薬を硫化ジメチルまたは硫化ジエチルと反応させることによってそれぞれ得られる(同様の反応については、M.Euerbyら,Synthetic Communications 11(1981),849−851頁を参照)。
【0045】
2−(C−C)アルコキシ−3−メチルチオベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルコキシ、R=SMe)および2−(C−C)アルコキシ−3−エチルチオベンズアルデヒド(すなわち、R=(C−C)アルコキシ、R=SEt)は、2−(C−C)アルコキシ−3−ブロモベンズアルデヒドから、そのグリニャール試薬を硫化ジメチルまたは硫化ジエチルと反応させることによってそれぞれ得られる(同様の反応については、M.Euerbyら,Synthetic Communications 11(1981),849−851頁を参照)。これらの出発物質は、2−ヒドロキシ−3−(メチルチオ)ベンズアルデヒドまたは2−ヒドロキシ−3−(エチルチオ)ベンズアルデヒドのエーテル化によって得ることもできる(A.Makotoら,Bull.Chem.Soc.Jpn.51(1978)2435−2436頁)。
【0046】
U=CR’、V=CR’、W=CR’である場合には、アミド(IV)の合成のための適当に置換された塩化アシル(X)は塩化ベンゾイルであり、公知であるか、あるいは、標準的な条件下で塩化チオニルまたは塩化オキサリルを使用して対応する安息香酸から合成する。好ましい化合物(I)を合成するために使用することができる公知の塩化ベンゾイル(X)および安息香酸の例は以下の通りである。
【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
適当に置換された安息香酸は公知であるか、あるいは、当業者に公知の標準的な手順で合成することができる。当業者には明らかであるように、本発明のプロセスにおいては、開始試薬または中間化合物中の水酸基などの所定の官能基は、保護基によって保護しなければならない場合がある。したがって、化合物(I)の製造は、1または複数の保護基の付加および除去を含むことができる。官能基の保護および脱保護は、「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」,J.W.F.McOmie編,Plenum Press(1973)および「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」,第2版,T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Wiley−Interscience(1991)に記載されている。
【0050】
本発明における芳香族水酸基の好適な保護基は、例えばべンジル基またはイソプロピル基である。ベンジル基およびイソプロピル基の除去は、触媒水素化(触媒Pd/炭素)およびBClによる処理によってそれぞれ容易に行うことができる。
【0051】
U=CR’、V=N、W=CR’である適当に置換された塩化アシル(X)は、適当に置換されたイソニコチン酸から塩化チオニルを使用して標準的な条件下で合成される。U=N、V=CR’、W=CR’である適当に置換された塩化アシル(X)は、2−カルボン酸置換ピリジンから標準的な条件下で合成される。U=N、V=CR’、W=CR’またはU=CR’、V=CR’、W=Nである適当に置換された塩化アシル(X)は、適当な2−カルボン酸置換ピリジンから標準的な条件下で合成される。U=CR’、V,W=Nである適当に置換された塩化アシル(X)は、適当な4−カルボン酸置換ピリミジンから標準的な条件下で合成される。U,W=N、V=CR’である適当に置換された塩化アシル(X)は、適当に置換された2−カルボン酸置換ピリミジンから標準的な条件下で合成される。U,V,W=Nである適当に置換された塩化アシル(X)は、適当な2−カルボン酸置換トリアジンから標準的な条件下で合成される。
【0052】
窒素含有酸塩化物(X)の製造のための好適な出発物質の例としては、以下の公知の化合物が挙げられる。
【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
アミド、エチルエステル、およびアルデヒドの対応するカルボン酸誘導体への変換は当業者によく知られた反応である。
【0056】
本発明の化合物はキラル中心を含み、異なる鏡像異性体として存在することができる。特に好ましい化合物(I)は鏡像異性的に純粋だが、本発明の範囲は、両方の鏡像異性体それ自体およびあらゆる比率の鏡像異性体混合物(ラセミ混合物)も含むことを意図するものである。
【0057】
本発明の化合物(I)は、キラル酸による付加塩の結晶化によって鏡像異性的に純粋な形態で得ることができ(例えば、D.L.Minorら,J.Med.Chem.37(1994)4317−4328頁;米国特許第4349472号を参照)、あるいは、市販のキラル相を使用して分離用HPLCによって単離することもできる。本発明の生成物の純粋な鏡像異性体を得るための他の方法としては、不斉合成の使用(M.J.Munchhofら,J.Org.Chem.60(1995)7086−7087頁、R.P.Polniaszekら,Tetrahedron Letters 28(1987)4511−4514頁)、中間体イミン(II)またはイミニウム塩(III)の非対称遷移型触媒水素化(N.Uematsuら,J.Am.Chem.Soc.118(1996)4916−4917頁、G.Meuzelaarら,Eur.J.Org.Chem.1999,2315−2321頁)、あるいは当業者に公知のキラルジアステレオマー誘導体の分割が挙げられる。
【0058】
式(I)の化合物およびその製剤学的に許容されうる塩は、当業者にとってIGF−1受容体の阻害が有益であると考えられる疾患を予防または治療するために、製薬学的に許容しうる助剤、希釈剤または担体と組み合わせた医薬組成物として投与することができる。また、本発明は、上記に定義されたように、上述した式(I)の化合物またはその製剤学的に許容されうる塩を、製薬学的に許容しうる助剤、希釈剤または担体とともに含む医薬組成物を提供する。適当な賦形剤、希釈剤、および助剤に関しては、これらについて記載している標準的な文献、例えば、「総合医薬品化学(Comprehensive Medicinal Chemistry)」Pergamon Press,1990,第5巻の第25.2章および「Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete」,H.P.Fiedler,Editio Cantor,2002(ドイツ語)を参照するものとする。
【0059】
本発明の実施例の化合物(I)は、8μg/mlから150ピコg/mlの範囲のインタクト細胞系(intact cell system)におけるIC50活性を有する。活性が大きく異なるため、本発明の医薬組成物は0.001−50重量%の化合物(I)を含むことが好ましい。
【0060】
化合物(I)の1日当たりの投与量は、治療対象者、投与経路、治療対象の疾患の重症度と種類によって変更する必要がある。したがって、最適な投与量は、対象となる患者を治療している医師が決定することができる。
【0061】
本発明の医薬組成物は、局所投与する場合には、クリーム、ゲル、溶液、軟膏剤、懸濁液、プラスターなどとして製剤化することができ、吸入投与の場合には、エアロゾルまたは乾燥粉末などとして製剤化することができ、経口投与の場合には、錠剤、カプセル、ゲル、シロップ、懸濁液、溶液、粉体、粒剤などとして製剤化することができ、直腸または腟内投与の場合には、坐剤などとして製剤化することができ、注射剤(静脈内、皮下、筋肉内、血管内、点滴を含む)の場合には、無菌液、懸濁液、エマルションなどとして製剤化することができる。
【0062】
本発明の化合物は、構造的に密接に関係するインシュリン受容体を阻害することなく、ヒトIGF−1受容体の発現または作用を抑制または阻害することが分かった。本発明の化合物は、悪性細胞のアポトーシスを促進し、分裂周期の前期において細胞をブロックすることにより細胞分裂を妨げることが分かった。化合物(I)は、癌などの細胞増殖疾患、アテローム性動脈硬化、再狭窄、乾癬などの炎症性疾患、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患、移植拒絶反応を含むIGF−1Rの非制御発現による疾患の予防および/または治療に有用である。IGF−1Rが非制御発現あるいは過剰発現し、かつ、本発明の化合物(I)によって予防および/または治療することができる癌の例としては、これらに限定されるものではないが、乳癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、脳癌、すい臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫瘍、リンパ腫、白血病が挙げられる。「生物学的データ」の段落では、本発明の化合物(I)およびIGF−1受容体の存在に対する癌細胞の感受性を評価する技術について記載している。
【0063】
また、化合物(I)は、細胞増殖疾患に対して光照射および/または1または複数の化学療法薬、例えばアクチノマイシン、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、Crisantaspase、シクロフォスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキザロプラチン(Oxaliplati)、ペントスタチン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、タキソール、テモゾロマイド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオサルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンまたはビノレルビンなどの従来の治療法と組み合わせて使用することができる。
【0064】
化学療法薬を式(I)の化合物と組み合わせて使用する場合には、同時投与のためにこれらの2つの薬剤の組み合わせを含む薬剤として使用してもよく、あるいは、それぞれ薬剤を含む別々の剤形として使用してもよく、後者の場合には、各剤形は例えば連続的に使用してもよい。すなわち、化合物(I)を含む剤形を投与した後に、化学療法薬を含む剤形を投与してもよく、あるいは、化学療法薬を含む剤形を投与した後に、化合物(I)を含む剤形を投与してもよい。2つの別々の剤形を使用する実施形態は、キットとして製造され、提供することができる。
【0065】
化合物(I)およびその製剤学的に許容されうる塩は、治療用薬としての使用に加えて、新しい治療用薬剤の研究の一部として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット、マウスなどの実験動物における細胞周期活性阻害剤の作用を評価するためのインビトロおよびインビボの試験の開発および標準化における薬理学ツールとして有用である。
【実施例】
【0066】
実施例に記載した生成物は、十分なプロトン核磁気共鳴スペクトルおよび/または質量スペクトルデータを有している。融点は補正していない。実施例に記載された物質は、左旋性鏡像体を示す(−)でマークされていない場合はラセミ化合物である。
【0067】
[実施例1−30:ラセミ化合物(I)の合成]
実施例1−30では、以下の一般的な合成方法を使用した。
【0068】
1.アミドの製造(スキーム2、IV):
適当なアミン(VIIIまたはIX、0.1モル)を水酸化ナトリウム(200ml、2M)およびジクロロメタン(200ml)の水溶液に添加した。ジクロロメタン(200ml)に溶解させた適当な塩化アシル(X、0.1モル)を、激しく撹拌したアミンを含む混合物に室温で30分間かけて添加した。添加後、混合物をさらに60分間撹拌した。ジクロロメタン相を分離し、塩酸(200ml、2M)で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、濃縮乾固した。得られたアミド(IV)は、さらに精製することなく、イミンを製造するための出発物質として好適に使用することができる。結晶状態で得られたアミドはメタノールで再結晶することができた。
【0069】
2.イミンの製造(スキーム2、II):
適当なアミド(IV、0.05−0.1モル)、トルエン(200ml)、およびオキシ塩化リン(80ml)の混合物を1.5−24時間還流した。反応が進行した後、薄相クロマトグラフィー(TLC)(シリカゲル/酢酸エチルまたはメタノール)を行った。反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチル(500ml)および水酸化ナトリウム水溶液(400ml、2M)で分離した。生成したイミン(II)を、塩酸(3×200ml、2M)を用いた有機相の抽出によって水相に移し、アルカリ性(pH11−12)にし、ジクロロメタンで抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固してイミンを得た。必要に応じて、ジエチルエーテルまたはエタノールからの結晶化、あるいは、エタノールからの対応する塩酸塩の結晶化によって、イミン(II)の大部分を精製することができた。
【0070】
3.イミンの還元による二級アミノ化合物(I)の製造(スキーム1aおよび1b):
適当なイミン(II、0.01−0.05モル)のメタノール溶液(200ml)を、出発物質が残らなくなるまで、過剰の水素化ホウ素ナトリウムによって室温で乾燥させ、た。混合物を濃縮乾固し、水酸化ナトリウム水溶液(300ml、2M)およびジクロロメタン(400ml)で分離した。有機相を分離・乾燥させ、濃縮乾固して純粋な二級アミンを得た。アミノ化合物(I、R=水素原子)をジエチルエーテルまたはエタノールから結晶化し、あるいは、対応する塩酸塩をエタノールまたはエタノール/ジエチルエーテルから結晶化した。
【0071】
4.N−アルキル化合物の製造(スキーム1a、IIIおよびI;R=MeまたはEt):
適当なイミン(II、0.005−0.01モル)をアセトン(25−50ml)に溶解させ、選択されたハロゲン化アルキルMeXまたはEtX(1.2当量)を添加した。この混合物を、ハロゲン化アルキルの性質に応じて室温または還流温度で1−24時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られたイミニウム塩(III)を濾過・乾燥させ、た。得られたイミニウム塩を、イミンを還元するために上記3で説明したように処理した。化合物(I)(R=MeまたはEt)をジエチルエーテルまたはエタノールから結晶化し、あるいは、対応する塩酸塩をエタノールまたはエタノール/ジエチルエーテルから結晶化した。
【0072】
また、エシュヴァイラー・クラーク反応によってN−メチル化合物(I)が得られた。二級アミノ化合物(I、R=水素原子、0.005−0.01モル)、1,2−ジメトキシエタン(10ml)、ホルムアルデヒド(37%水溶液、5ml)、およびギ酸(5ml)の混合物を80℃で5時間加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、N−メチル化合物(I)を二級アミノ化合物(I)について上記3で説明したように単離した。
【0073】
5.N−アセチル化合物の製造(スキーム1b、I;R=COMe):
適当な二級アミノ化合物(I、0.005−0.01モル)を室温で24時間無水酢酸(150ml)で処理した。混合物を濃縮乾固し、N−アセチル化合物(I)をメタノールから結晶化させた(実施例6,8,51の生成物はゴム状物として得、実施例43,44,47の生成物は非晶質固体として単離した)。
【0074】
6.N−ホルミル化合物の製造(I、スキーム1aおよび1b):
適当な二級アミノ化合物(I、0.005−0.01モル)、ギ酸(10当量)、およびトルエン(100ml)の混合物をディーン−スタークトラップを使用して18時間還流下で加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、残渣を酢酸エチルに溶解させた。有機相を2M塩酸で洗浄し、乾燥させ、濃縮乾固してN−ホルミル化合物(I)を得た。
【0075】
7.N−アシル化合物の製造(I、スキーム1aおよび1b):
適当な二級アミノ化合物(I、0.005−0.01モル)、ピリジン(25ml)、および塩化アシルRCOCl(1.2当量)の混合物を80℃で2時間加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび2M水酸化ナトリウムで分離した。有機相を2M塩酸で洗浄し、乾燥させ、濃縮乾固して、N−アシル化合物(I)を得た。
【0076】
8.N−カルボン酸エステル化合物の製造(I、スキーム1aおよび1b):
適当な二級アミノ化合物(I、0.005−0.01モル)、無水炭酸カリウム(5当量)、アセトン(100ml)、およびクロロホルメートROCOCl(2当量)の混合物を24時間還流した。反応混合物を濃縮乾固し、残渣を塩酸(100ml、2M)およびジクロロメタン(300ml)で分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固して、N−カルボン酸エステル化合物(I)を得た。
【0077】
9.N−カルボン酸アミド化合物IおよびN−カルボチオ酸アミド化合物の製造(I、スキーム1aおよび1b):
適当な二級アミノ化合物(I、0.005−0.01モル)をアセトニトリル(25ml)に溶解させ、イソシアネートOCNRまたはイソチオシアネートSCNR(2当量)によって室温で24時間処理した。混合物を濃縮乾固し、残渣をメタノールで結晶化して、標記化合物(I)を得た。
【0078】
10.N−シアノ化合物の製造(I、スキーム1aおよび1b):
適当な二級アミノ化合物(I、0.005−0.01モル)、1,2−ジメトキシエタン(10ml)、乾燥炭酸ナトリウム(5当量)、ブロモシアンなどのハロゲン化シアン(2当量)の混合物を50℃で3時間加熱した。反応混合物をジクロロメタン(200ml)および2M塩酸(100ml)で分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固してN−シアノ酸化合物(I)を得た。N−シアノ酸化合物(I)はメタノールで結晶化させた。
【0079】
上述した合成工程1−10を適当に使用することにより、以下の表1に示すラセミ化合物(I)を製造した。表に示す融点は補正していない。
【0080】
【表1】

【0081】
[実施例33−40:鏡像異性的に純粋な化合物(I)の合成]
実施例33:(−)−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−シアノ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン
1.3−メトキシフェニルエチルアミン(25.0g)を水酸化ナトリウム(200ml、2M)およびジクロロメタン(200ml)の水溶液に添加した。ジクロロメタン(200ml)に溶解させた塩化3,4,5−トリメトキシべンゾイル(38.1g)を、激しく撹拌したアミンを含む混合物に室温で30分間かけて添加した。添加後、混合物をさらに60分間撹拌した。ジクロロメタン相を分離し、塩酸(200ml、2M)で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、濃縮乾固した。得られたアミド(57.2g)は、さらに精製することなく、対応するイミンを製造するための出発物質として好適に使用することができる。メタノールからの結晶化によって分析サンプルを得、115−117℃の融点(m.p.)を有する白色固体を得た。
【0082】
2.工程1で得られたアミド(52.0g)、トルエン(350ml)、およびオキシ塩化リン(140ml)の混合物を還流下で1.5時間加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチル(500ml)および水酸化ナトリウム水溶液(400ml、2M)で分離した。生成したイミンを、塩酸(3×300ml、2M)を用いた有機相の抽出によって水相に移し、アルカリ性(pH11−12)にし、ジクロロメタンで抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固してイミン(48.2g)を得た。メタノールからの結晶化によって分析サンプルを得、141−143℃の融点(m.p.)を有する白色固体を得た。
【0083】
3.工程2で得られたイミン(69.3g)をメタノール(500ml)および1,2−ジメトキシエタン(300ml)の混合物に溶解させ、出発物質が残らなくなるまで水素化ホウ素ナトリウムによって室温で処理した(TLC:シリカゲル/メタノール)。混合物を濃縮乾固し、水酸化ナトリウム水溶液(500ml、2M)およびジクロロメタン(500ml)で分離した。有機相を分離・乾燥させ、濃縮乾固して二級アミン(67.8g)を得た。酢酸エチルからの結晶化によって分析サンプルを得、118−120℃の融点(m.p.)を有する白色固体を得た。
【0084】
4.工程3で得られた二級アミン(48.3g)を熱したエタノール(600ml)に溶解させ、熱したエタノール(200ml)に溶解させたアセチル−D−ロイシン(25.0g)に該溶液を添加した。混合物を室温で24時間放置し、その後濾過した。得られた結晶をエタノール(200ml)で洗浄し、乾燥させ、て白色固体(60.0g、10.9%ee)を得た。エタノール(1400ml)からの2回目の結晶化(59.7g)によって白色固体(39.2g、37.9%ee)を得た。エタノール(1150ml)からの3回目の結晶化(39.0g)によって白色固体(26.0g、77.2%ee)を得た。エタノール(900ml)からの4回目の結晶化(25.7g)によって白色固体(21.6g、99.9%ee)を得た。最後の結晶化によって得られた生成物を、ジクロロメタン(400ml)および水酸化ナトリウム水溶液(400ml、2M)で分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固して(−)鏡像異性体(13.9g)を得た。エタノールからの結晶化によって純粋な(−)鏡像異性体(12.4g、100.0%ee)を得た。メタノールから結晶化させた対応する塩酸塩を特性分析のために使用した。融点(m.p.):270−275℃(dec)、[α]20−46.8°(c=0.051、DMF)。
【0085】
5.工程4で得られた純粋な鏡像異性体(0.50g)、1,2−ジメトキシエタン(20ml)、乾燥炭酸ナトリウム(0.30g)、およびブロモシアン(0.35g)の混合物を50℃で3時間加熱した。反応混合物をジクロロメタン(200ml)および塩酸(100ml、2M)で分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固した。残渣をメタノールから結晶化させ、標記化合物を白色固体(0.36g)として得た。融点(m.p.):132−134℃、[α]20−93.2°(c=1.0、CHCl)。
【0086】
[実施例34:(−)−1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン]
1.3−メトキシフェニルエチルアミン(18.1g)を水酸化ナトリウム(200ml、2M)およびジクロロメタン(200ml、2M)の水溶液に添加した。ジクロロメタン(200ml)に溶解させた塩化3,5−ジクロロベンゾイル(25.0g)を、激しく撹拌したアミンを含む混合物に室温で30分間かけて添加した。添加後、混合物をさらに60分間撹拌した。ジクロロメタン相を分離し、塩酸(200ml、2M)で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、濃縮乾固した。得られたアミド(40.6g)は、さらに精製することなく、対応するイミンを製造するための出発物質として好適に使用することができる。メタノールからの結晶化によって分析サンプルを得、111−113℃の融点(m.p.)を有する白色固体を得た。
【0087】
2.工程1で得られたアミド(35.8g)、トルエン(200ml)、およびオキシ塩化リン(80ml)の混合物を還流下で6時間加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチル(500ml)および水酸化ナトリウム水溶液(400ml、2M)で分離した。酢酸エチル相を乾燥させ、濃縮乾固した。残渣をメタノールから結晶化させ、111−113℃の融点(m.p.)を有するイミン(24.0g)を得た。
【0088】
3.工程2で得られたイミン(18.2g)を1.05当量の酢酸を含むメタノール(300ml)に溶解させ、、出発物質が残らなくなるまで水素化シアノホウ素ナトリウムによって室温で処理した(TLC:シリカゲル/酢酸エチル)。混合物を濃縮乾固し、水酸化ナトリウム水溶液(300ml、2M)およびジクロロメタン(400ml)で分離した。有機相を分離・乾燥させ、濃縮乾固して二級アミン(17.7g)を得た。エタノールからの結晶化によって分析サンプルを得た。融点(m.p.):122−124℃。
【0089】
4.工程3で得られた二級アミン(46.0g)を熱したエタノール(800ml)に溶解させ、熱したエタノール(650ml)に溶解させたN−アセチル−D−ロイシン(25.84g)に該溶液を添加した。混合物を室温で一昼夜放置し、その後濾過した。得られた結晶をエタノール(150ml)で洗浄し、ジクロロメタン(500ml)および水酸化ナトリウム水溶液(400ml、2M)で分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固して左旋性鏡像異性体(6.9g、99.3%ee)を得た。エタノールからの結晶化によって純粋な(−)−鏡像異性体(5.2g)を得た。融点(m.p.):94−95℃、[α]20−24.8°(c=1.5、CHCl)。
【0090】
5.工程4で得られた(−)−鏡像異性体(1.6g)を室温で24時間無水酢酸(100ml)で処理した。混合物を濃縮乾固し、残渣をジクロロメタン(200ml)と塩酸(2M、100ml)で分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固して標記化合物を白色無定形固体として得た。[α]20−154.9°(c=1.52、CHCl)。
【0091】
[実施例35:(−)−1−(2,6−ジクロロ−4−ピリジル)−2−ホルミル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン]
1.2,6−ジクロロイソニコチン酸(26.1g)、塩化チオニル(140ml)、および1,2−ジメトキシエタン(70ml)の混合物を6時間還流した。過剰の塩化チオニルおよび溶媒を蒸発させ、酸塩化物を得た。
【0092】
3−メトキシフェニルエチルアミン(20.6g)を水酸化ナトリウム(300ml、2M)の水溶液およびジクロロメタン(400ml)に添加した。1,2−ジメトキシエタン(50ml)に溶解させた上記酸塩化物を、激しく撹拌したアミンを含む混合物に室温で30分間かけて添加した。添加後、混合物をさらに60分間撹拌した。ジクロロメタン相を分離し、乾燥させ、濃縮乾固した。得られたアミドをメタノールから結晶化させ、105−108℃の融点(m.p.)を有する白色固体(31.6g)を得た。
【0093】
2.工程1で得られたアミド(38.0g)、トルエン(300ml)、およびオキシ塩化リン(80ml)の混合物を還流下で5時間加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチル(500ml)および水酸化ナトリウム水溶液(400ml、2M)で分離した。生成したイミンを、塩酸(5×300ml、2M)を用いた有機相の抽出によって水相に移し、アルカリ性(pH11−12)にし、ジクロロメタンで抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固して粗イミン(27.3g)を得た。メタノールからの結晶化によってイミン(22.8g)を得た。アセトンからの再結晶によって分析サンプルを得、130−133℃の融点(m.p.)を有する白色固体を得た。
【0094】
3.塩化ベンゼンルテニウム(II)二量体(19mg)、(−)−(1S,2S)−N−(ナフタレン−1−スルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(31mg)(G.J.Meuzelaarら,Eur.J.Org.Chem.(1999)2315−2321頁)、トリエチルアミン(0.5ml)、およびアセトニトリルの混合物を、窒素雰囲気下において80℃で1時間撹拌下で加熱した。室温に冷却後、アセトニトリル(10ml)に溶解させた工程2で得られたイミン(4.0g)と、ギ酸とトリエチルアミンの共沸混合物(10ml、5:2)とを、触媒を含む混合物に添加した。20時間の反応後、同量の触媒および共沸混合物を反応混合物に添加した。合計反応時間が47時間となった後、反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(250ml、1M)および酢酸エチルで分離した。有機相を乾燥させ、濃縮乾固した。溶離剤として酢酸エチルを使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40−63μM、6×21cm)で残渣を精製した。二級アミンを含むフラクションを濃縮乾固した。メタノール中の塩化水素(1.25M、15ml)による処理によって、得られたアミンを塩酸塩に変換させた。メタノールからの結晶化により、アミン塩酸塩(0.72g、99.8%ee)を得た。融点(m.p.):221−260℃(dec)、[α]20−28.9°(c=0.72、DMF)。
【0095】
4.工程3で得られた遊離アミン(0.60g)、ギ酸(2ml)、およびトルエン(100ml)の混合物をディーン−スタークトラップを使用して18時間還流下で加熱した。反応混合物を濃縮乾固し、残渣を酢酸エチル(200ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液(100ml、2M)で洗浄し、乾燥させ、濃縮乾固してホルミル誘導体を固体として得た。メタノールからの結晶化によって、標記化合物を白色固体(0.52g、100.0%ee)として得た。融点(m.p.):156−158℃、[α]20−213.1°(c=1.05、CHCl)。
【0096】
[実施例36−40:さらに5種類の鏡像異性的に純粋な化合物(I)の合成]
鏡像異性的に純粋な化合物34,36,37は、上述した通常の合成工程4−10を使用して、実施例32の工程4に記載された鏡像異性的に純粋な二級アミンから合成した。化合物38は、通常の合成工程6を使用して、実施例31の工程4に記載された鏡像異性的に純粋な二級アミンから合成した。化合物35は、実施例33の工程3による非対称遷移型水素化によって1−(3,5−ジメトキシフェニル)−6−メトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリンを還元し、得られた二級アミンの塩酸塩をエタノールから結晶化することによって合成された。鏡像異性的に純粋な二級アミンは、一般的な合成手順である工程6を適用することによってホルミル誘導体に変換された。化合物34−38の特性を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
[生物学的データ]
(ヒト癌細胞系Jurkat MCF−7およびSK−MEL28に対する細胞増殖阻害研究)
MCF−7およびSK−MEL28細胞(−5000細胞/100μl)を96ウェルプレートに移し、37℃で48時間、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む10%胎児ウシ血清(Gibco)を補充したRPMI培地(Gibco)内で試験化合物を使用または使用せずに成長させた。細胞密度(−50000細胞/100μl)を変更し、培養時間を24時間に制限したことを除き、同一の手順をJurkat細胞に対して行った。培養時間の最後に、JurkatおよびSK−MEL28細胞系の細胞増殖阻害を、メチレンブルー試験により、CellTiter96(Promega)およびMCF−7を使用して測定した。実施例の化合物は、上記試験において、少なくとも1つの細胞系で8μg/mlから150ピコg/mlの範囲のIC50活性を有することが分かった。
【0099】
(アポトーシスによる細胞死)
JurkatおよびSK−MEL28細胞を、実施例3で得られた化合物(I)を使用して3,6,24,48時間培養し、アポトーシス細胞の割合をAnnexin V 染色によって測定した。結果を以下の表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表に示す数字はAnnexin−V陽性細胞の割合を示す。
【0102】
表3の結果から、実施例3の化合物が、SuperFasLよりも遅い速度で試験細胞系のアポトーシスを引き起こすことが明らかである。
【0103】
(細胞分裂との相互作用)
SK−Mel−28細胞を賦形剤(vehicle)、実施例3の化合物(I)、およびノコダゾールを使用して4時間培養し、分裂指数を測定した(CL.Riederら,Current Biology 10(2000)1067−1070頁の記載に実質的にしたがった。)。結果を以下の表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
試験物質は、有糸分裂の前期において細胞をブロックする。
【0106】
(SK−MEL−28内のIGF−1Rとインシュリン受容体(IR)のリン酸化の阻害)
IGF−1R:化合物(I)による処理を行わない場合のアッセイ(M.Rubiniら,Exp.Cell Res.230(1997)284−292頁に実質的にしたがう)
SK−MEL−28細胞(密度:60000/cm;10mlのRPMI 1640を含む直径100mmの皿)を37℃で24時間飢餓処理(starved)し、37℃で5分間IGF−1(200ng、Sigma)で処理した。未処理の細胞をコントロールとして使用した。IGF−1R特異抗体(alfa−IR3、Oncogene Science)を使用して細胞の溶解・免疫沈降反応を行った。免疫沈着物はポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離し、ニトロセルロース膜(Amersham Bioscience)に移した。免疫沈着IGF−1受容体は、IGF−1Rのα−サブユニットに対する抗体(N−20:sc−712、Santa Cruz Biotech)を使用してニトロセルロース膜上に配置させた。IGF−1受容体のチロシンリン酸化は、抗ホスホチロシン抗体(4G10,英国Upstate Biotechnology Ltd.)を使用したニトロセルロース膜のインキュベーションによって検出された。ウサギ抗IGF−1Rポリクローナル抗体およびマウス抗ホスホチロシンモノクローナル抗体を検出するために、HRPに結合させた抗ウサギIgG抗体および抗マウスIgG抗体とともに膜をインキュベートし、増幅化学発光(enhanced chemiluminescence;ECL)検出装置(Pierce)を使用して視覚化させた。
【0107】
(IGF−1R:化合物(I)による処理を行った場合の分析)
飢餓処理したSK−MEL−28細胞(密度:60000/cm;10mlのRPMI 1640を含む直径100mmの皿)を10μgの化合物31で2時間処理した。2時間の処理後、37℃で5分間にわたって細胞を200ngのIGF−1で刺激し、上述したように処理した。
【0108】
【表5】

【0109】
(IR:化合物(I)による処理を行った場合と行わない場合のアッセイ)
SK−MEL−28細胞(密度:60000/cm)を10%ウシ胎児血清(FBS)を補充した10mlのRPMI 1640を含む直径100mmの皿内で24時間処理した。24時間後、新鮮な10%FBSを補充した培地を1μg/mlの化合物33とともに、または化合物33を使用せずに添加した。該皿を37℃で2時間培養した後、2μlの抗IRモノクローナル抗体(18−44、ABCAM)および20μlのアガロース複合タンパク質Gを使用して細胞の溶解・免疫沈降反応を行った。40℃で4時間にわたって抗体−抗原複合体を形成させ、4℃で1分間5000rpmで遠心分離を行うことにより該複合体を回収した。免疫沈着複合体を8%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動法によって分離し、ニトロセルロース膜(Amersham Bioscience)上にエレクトロブロッテイングした。免疫沈降反応の効率は、インシュリン受容体のβサブユニットに対するポリクローナル抗体(C−19、Santa Cruz Biotech)を使用して決定された。インシュリン受容体のチロシンリン酸化は、抗ホスホチロシン抗体(4G10,英国Upstate Biotechnology Ltd.)を用いたニトロセルロース膜の培養によって検出された。ウサギ抗IRポリクローナル抗体およびマウス抗ホスホチロシンモノクローナル抗体を検出するために、HRPと結合させたウサギ抗IgG抗体およびマウス抗IgG抗体を使用して膜をインキュベートし、増幅化学発光(enhanced chemiluminescence;ECL)検出装置(Pierce)を使用して視覚化した。
【0110】
インシュリン受容体のリン酸化における差は、未処理の細胞と1μg/mlの化合物33で処理した細胞との間で全く検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物およびその製剤学的に許容されうる塩。
【化1】

式中、Rは水素原子、Me、Et、CHO、CN、OH、OMe、COR、COOR、CONHR、またはCSNHR(Rは(C−C)アルキルを示す。)を示し、
は水素原子、(C−C)アルキル、OH、(C−C)アルコキシ、OCF、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示し、
はMe、(C−C)アルコキシ、OCF、SMe、またはSEtを示し、nは1または2であり、
’およびR’はそれぞれ独立してOH、Me、Et、OMe、OCF、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示し、
UはNまたはCR’(R’は水素原子、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示す。)を示し、
VはNまたはCR’(R’は水素原子、(C−C)アルコキシ、(C−C)アルキル、OH、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示す。)を示し、
WはNまたはCR’(R’は水素原子、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、トリフルオロメチル、またはハロゲンを示す。)を示す。
【請求項2】
請求項1において、
がMe、OH、CN、CHO、COR、またはCOORを示す化合物。
【請求項3】
請求項1において、
がMe、CN、CHO、またはCOMeを示す化合物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
が水素原子、Me、OMe、またはハロゲンを示す化合物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
がOMeまたはOEtを示す化合物。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
が水素原子またはOMe(好ましくは水素原子)を示し、RがOMeを示す化合物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
’およびR’がそれぞれ独立してクロロ、ブロモ、MeまたはOMeを示す化合物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
’およびR’が同一であるか、または、R’がクロロまたはブロモを示し、R’がOMeを示す化合物。
【請求項9】
請求項7において、
’およびR’がともに、クロロまたはブロモを示す化合物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
UおよびVがCHを示し、VがCR’を示す化合物。
【請求項11】
請求項10において、
’が水素原子、クロロ、ブロモ、Me、またはOMeを示す化合物。
【請求項12】
請求項10において、
’、R’、R’がOMeを示すか、または、
’がクロロを示し、R’およびR’がOMeを示すか、あるいは、
’が水素原子を示し、R’およびR’がともにクロロまたはブロモを示す化合物。
【請求項13】
請求項1において、
1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−ホルミル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−シアノ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−ホルミル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−シアノ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−シアノ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−ホルミル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−シアノ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−シアノ−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−ホルミル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−アセチル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−シアノ−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−ホルミル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−アセチル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−シアノ−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−アセチル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−シアノ−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−ホルミル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−アセチル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−シアノ−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−アセチル−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−シアノ−6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−ホルミル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−アセチル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−シアノ−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−ホルミル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−アセチル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジブロモフェニル)−2−シアノ−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−アセチル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−シアノ−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−ホルミル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−アセチル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2−シアノ−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−アセチル−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−(3−クロロ−4,5−ジメトキシフェニル)−2−シアノ−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、またはそれらの製剤学的に許容されうる塩である化合物。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかにおいて、
(R)−または(S)−鏡像異性体である化合物。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかにおいて、
薬剤として使用される化合物。
【請求項16】
IGF−1受容体の発現または作用の抑制または阻害が有益である疾患の予防または治療のための薬剤の製造のための、請求項1ないし14のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項17】
請求項16において、
前記疾患が、癌などの細胞増殖疾患、アテローム性動脈硬化、再狭窄、乾癬などの炎症性疾患、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患、および移植拒絶反応から選択される使用。
【請求項18】
IGF−1受容体の発現または作用の抑制または阻害が有益である疾患を、それらの治療または予防を必要とする患者について予防または治療するための方法であって、前記IGF−1受容体の発現または作用を抑制または阻害するために有効な量の請求項1ないし14のいずれかに記載の化合物(I)を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記疾患が、癌などの細胞増殖疾患、アテローム性動脈硬化、再狭窄、乾癬などの炎症性疾患、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患、および移植拒絶反応から選択される方法。
【請求項20】
請求項1ないし14のいずれかに記載の化合物(I)またはその製剤学的に許容されうる塩と、製薬学的に許容しうる助剤、希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項21】
IGF−1受容体の発現または作用の抑制または阻害が有益である疾患の治療において同時、別々または連続して投与するための組み合わせとして、請求項1ないし14のいずれかに記載の化合物(I)またはその製剤学的に許容されうる塩と、化学療法薬とを含む、物品。
【請求項22】
実験動物における細胞周期活性阻害剤の作用を評価するためのインビトロおよびインビボの試験系の開発および標準化における薬理学ツールとしての、請求項1ないし14のいずれかに記載の化合物(I)またはその製剤学的に許容されうる塩の使用。

【公表番号】特表2007−528877(P2007−528877A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502162(P2007−502162)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000147
【国際公開番号】WO2005/087743
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506306802)
【氏名又は名称原語表記】ANALYTECON S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue du Pr・Jorat 30, CH−2108 Couvet Switzerland
【Fターム(参考)】