説明

IHコンロ装置およびIHコンロ用グリル調理器具

【課題】グリル庫を備えていないIHコンロ装置で焼き魚調理を行う場合、フライパンなどで焼き魚調理をすると、煙が台所に拡散して台所全体が魚臭くなる。
【解決手段】調理エリアの奥側に開口する開口部を上記天板に形成し、この開口部に連なるダクト状の通路を天板の下部に設け、この通路の出口を天板の奥側端部に形成した排気部に連通させ、通路内に、開口部側から順次、加熱調理によって生じた煙を焼く加熱部と、脱臭用の触媒と、開口部側から排気部側に送風する送風ファンとを配置したIHコンロ装置と、被調理物を収納する器具本体と、この器具本体に上方からセットされる蓋体とから構成され、上記調理エリアに載置された状態で、開放状態の開口部の上方に出口が対向する排煙通路を、上記器具本体と連通するように設けた調理器具を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により生じる誘導電流で調理器具を加熱するIHコンロ装置およびそのIHコンロ装置でグリル調理をするためのグリル調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のIHコンロ装置では、上面に天板が設けられており、この天板上に鍋などの調理器具を載置し、調理器具内に誘導電流を発生させて調理器具自体を加熱することにより調理器具内の被調理物を加熱調理する。一方、焼き魚調理のように被調理物である魚を天火で加熱するグリル庫が天板の下方に設けられている(例えば、特許文献1参照)。このグリル庫には内部の天井部分に加熱用のヒータが設けられており、前面に設けられたグリル庫の扉と一体になって出し入れ自在の焼き網が収納されており、この焼き網をグリル庫から引き出して被調理物を焼き網上に載置し、その状態で焼き網と共に被調理物をグリル庫内に収納する。すると、焼き網に連結されているグリル扉がグリル庫の前方開口部を閉鎖する。
【0003】
上記ヒータで被調理物を加熱すると油煙が被調理物から発生するが、これはグリル庫の後部に連通するダクトから外部に排出される。天板の奥側端部に排気部が設けられており、このダクトは排気部の下方に延びている。なお、ダクト内には油煙を燃やすための別途のヒータおよび脱臭用の触媒が設けられている場合がある。このヒータによって油煙が燃やされ、臭いは触媒によって脱臭されるので、排気部から排出されるのはほぼ無臭の透明な熱気だけとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−13898号公報(図1,段落0029)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記グリル庫は主に魚を焼くことを目的として設けられており、その他の食材を調理することは希である。そのため、天板上に鍋などを載置して行う煮炊き調理と比較してグリル庫の使用頻度は低い。また、排気部から排出される油煙は上記のごとくヒータで燃やされるが、グリル庫の内壁には油煙が付着し、1度でも魚を焼くとグリル庫の内壁に油煙が付着して生臭い臭いがする。これを嫌う場合には焼き魚調理をする度にグリル庫内を清掃する必要がある。
【0006】
一方、グリル庫の縦寸法は被調理物とヒータとの距離を確保する必要から、それほど縮めることができず、そのためIHコンロ装置の上下方向の厚みが厚くなりデザイン性を損なうことになる。そのため、グリル庫を備えていないIHコンロ装置が望まれる。
【0007】
ところが、グリル庫が設けられていなければフライパンのような、天板上に載置して調理を行う調理器具で焼き魚調理をしなければならないが、それでは調理器具から多量の油煙が台所中に拡散して台所の壁面を汚してしまうという不具合が生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、グリル庫を使わずに焼き魚調理を行っても油煙が拡散しないIHコンロ装置およびIHコンロ装置用グリル調理器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によるIHコンロ装置は、調理器具を載置する天板を備え、この天板上に設定された調理エリアに載置された調理器具を加熱して調理を行うIHコンロ装置において、上記調理エリアの奥側に開口する開口部を上記天板に形成し、この開口部に連なるダクト状の通路を天板の下部に設け、この通路の出口を天板の奥側端部に形成した排気部に連通させ、通路内に、開口部側から順次、加熱調理によって生じた煙を焼く加熱部と、脱臭用の触媒と、開口部側から排気部側に送風する送風ファンとを配置したことを特徴とする。
【0010】
天板上の調理器具から発生した煙は開口部から吸い込まれ、通路内の加熱部と触媒とを順次通過させることにより無煙で無臭の気体として排気部から排出される。
【0011】
なお、上記開口部に、開口部を開閉する開閉扉であって、開口部を開放した状態で手前側から開口部を調理器具が覆うことを阻害しないものを設けることが望ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するために本発明によるIHコンロ用グリル調理器具は、請求項1または請求項2に記載のIHコンロ装置に用いられるグリル調理器具であって、被調理物を収納する器具本体と、この器具本体に上方からセットされる蓋体とから構成され、上記調理エリアに載置された状態で、開放状態の開口部の上方に出口が対向する排煙通路を、上記器具本体と連通するように設けたことを特徴とする。
【0013】
器具本体内の被調理物から発生した煙は蓋体によって拡散が防止されるが、さらに排気通路を通って上記開口部に吸引されるようにした。
【0014】
なお、上記蓋体には器具本体内の被調理物を目視し得る透明な窓部が設けられ、器具本体と蓋体とのいずれか一方に、上記IHコンロ装置が発生する電磁波によって発電する発電コイルと、この発電コイルによって発電された電力で器具本体内の被調理物を照明する発光部とを設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明は、IHコンロ用グリル調理器具を天板上に乗せて焼き魚調理を行うので、IHコンロ装置にグリル庫を設ける必要が無く、そのためIHコンロ装置の上下寸法を薄くすることができる。また、グリル調理器具内で煙が発生してもIHコンロ装置内に吸引して消煙し、かつ消臭して排気するので台所の壁や空気が汚れない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のIHコンロ装置の一実施の形態の構成を示す図
【図2】本発明のグリル調理器具の形状を示す図
【図3】グリル調理器具の器具本体を示す平面図
【図4】グリル調理器具の使用状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、1は本発明によるIHコンロ装置である。このIHコンロ装置1は木製のカウンタトップCTに形成された長方形の穴に上方からはめ込まれてカウンタトップCTに固定されている。そして、カウンタトップCT上に少し突出して天板11が設けられている。この天板11はガラス製であり、左右に各々調理エリア12が設けられている。この調理エリア12の下方には後述する電磁コイルが設置されている。この電磁コイルは交番磁界を発生させるもので、調理エリア12に鉄などの金属材料からなる調理器具を載置すると、交番磁界によって調理器具自体に渦電流が連続して誘導され、その渦電流によって調理器具自体が発熱する。なお、調理エリア13には天板11の下方に電気ヒータが設置されており、その電気ヒータが発する赤外線によって調理エリア13に載置された調理器具を加熱するものである。
【0018】
これら調理エリア12,13での加熱量はIHコンロ装置1の前面に設けられた操作パネル15の操作スイッチによって調節される。図では操作パネル15は格納されており操作スイッチは露出していない状態であるが、操作パネル15の上端部分を押すと操作パネル15が手前に開いて操作ボタンが露出するように構成されている。左右の操作パネル15には各々焼き魚モードを選択する操作スイッチが設けられており、その焼き魚モードの操作スイッチを押し操作すると、開閉扉2が後方に揺動して開くように構成されている。
【0019】
図2に示す3は、その焼き魚モードで使用されるグリル調理器具であり、鉄製の本体31とアルミ製の蓋体32とから構成されている。蓋体32の長手方向一端には排煙通路部33が形成され、天井部には透明なガラス製の覗き窓5が形成されている。一方、本体31の長手方向一端には1対の位置決め部34が形成されており、図3に示すように、蓋体32を本体31に取り付けると、位置決め部34が排煙通路部33に嵌って排煙通路部33の位置決めをすると共に、位置決め部34に挟まれた部分と排煙通路部33とで筒形状を完成させて煙が漏れないようにして排煙通路部33がダクトとして機能するようにした。
【0020】
上述のように焼き魚モードを選択した状態でグリル調理器具3を調理エリア12に載置すると、図4に示すように、排煙通路部32と位置決め部34とでダクト状になった部分の下部開口が、開閉扉2が開放された状態の開口部41に臨むようにした。
【0021】
天板11の下方には、この開口部41に連なるダクト状の通路4が設けられている。この通路4の入り口は開口部41に連結されており、出口は排気部14に連結されている。通路4内には開口部41側から順次加熱部であるヒータ42と、脱臭用の触媒43と、送風ファン44とが設けられている。上記焼き魚モードを選択する操作スイッチを押すと開閉扉2が開くと共に、ヒータ42に通電されヒータ42が赤熱し、さらに送風ファン44が作動するように構成されている。
【0022】
グリル調理機器3内で発生した煙や臭いはファン44によって排気通路部32を通って吸い出され、通路4内に流れ込む。すると赤熱したヒータ42によって煙が焼かれると共に通路4内の空気が加熱される。高温の空気と共に燃え残った煙や臭いが触媒43に到達すると、この触媒43によって煙や臭いが分解されて、無色無臭の空気となって排気部14から排出される。
【0023】
ところで、蓋体32の内側には2次コイル5が取り付けられており、電磁コイル16が発生させる交番磁界によってこの2次コイル5に誘導電流が発生する。その誘導された電力を安定回路51で適宜の電圧に調節してLED52を発光させるようにした。このLED52は本体31内の被調理物を照らすもので、覗き窓35から被調理物をのぞく際に被調理物がLED52の光に照らされて目視しやすくなるようにした。この2次コイル5は蓋体32ではなく本体31に設けてもよい。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 IHコンロ装置
3 (IHコンロ装置用)グリル調理器具
42 ヒータ
43 触媒
44 送風ファン
5 2次コイル
52 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具を載置する天板を備え、この天板上に設定された調理エリアに載置された調理器具を加熱して調理を行うIHコンロ装置において、上記調理エリアの奥側に開口する開口部を上記天板に形成し、この開口部に連なるダクト状の通路を天板の下部に設け、この通路の出口を天板の奥側端部に形成した排気部に連通させ、通路内に、開口部側から順次、加熱調理によって生じた煙を焼く加熱部と、脱臭用の触媒と、開口部側から排気部側に送風する送風ファンとを配置したことを特徴とするIHコンロ装置。
【請求項2】
上記開口部に、開口部を開閉する開閉扉であって、開口部を開放した状態で手前側から開口部を調理器具が覆うことを阻害しないものを設けたことを特徴とする請求項1に記載のIHコンロ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のIHコンロ装置に用いられるグリル調理器具であって、被調理物を収納する器具本体と、この器具本体に上方からセットされる蓋体とから構成され、上記調理エリアに載置された状態で、開放状態の開口部の上方に出口が対向する排煙通路を、上記器具本体と連通するように設けたことを特徴とするIHコンロ用グリル調理器具。
【請求項4】
上記蓋体には器具本体内の被調理物を目視し得る透明な窓部が設けられ、器具本体と蓋体とのいずれか一方に、上記IHコンロ装置が発生する電磁波によって発電する発電コイルと、この発電コイルによって発電された電力で器具本体内の被調理物を照明する発光部とを設けたことを特徴とする請求項3に記載のIHコンロ用グリル調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−209080(P2012−209080A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72916(P2011−72916)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】