説明

IOターミナル

【課題】 ネジの締め作業をしたことを確実かつ簡単に確認できること
【解決手段】 IOターミナルに実装する端子部22は、ガイド枠23に沿って昇降する移動枠体25を備える。移動枠体は、コイルスプリング31により上方に付勢されるとともに、移動枠体の下方にはスイッチ29が設置される。ネジ締め作業を行うに際し、ドライバ等の工具を固定ネジに突き当てて下方に押し込むと、図(b)のように移動枠体が下降移動してパッド28がスイッチに接触し、スイッチが閉じる。この状態のままネジ締めをし(c)、工具を固定ネジから離反させると、移動枠体は上昇して図(d)の基準位置に復帰し、スイッチの接点も開く。1回のネジ締め作業に伴い、スイッチが“閉”→“開”するので、それをうけてLEDを点灯/消灯させる。LEDの状態を見るとこで、ネジ締め作業を行ったか否かがわかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、FAのフィールドネットワークに接続されるIOターミナルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)におけるネットワークシステムは、生産設備内の入力機器及び出力機器の制御を司る1または複数のPLC(Programmable Logic Controller)と、そのPLCにより動作が制御される機器とが、制御系のネットワークに接続される。それらPLCと機器は、その制御系のネットワークを介してサイクリックに通信を行なうことで、INデータ及びOUTデータ(以下I/Oデータという)の送受を行ない、生産設備を制御する。
【0003】
より具体的には、PLCのCPUユニットにおける制御は、INデータである入力機器のON信号またはOFF信号を入力し、入力したON/OFF情報をユーザプログラムによって論理演算し、演算結果であるOUTデータを出力機器へ出力する。その出力が出力機器に対する動作指示となって出力機器が動作することにより、生産設備を制御する。
【0004】
上記の入力機器や出力機器は、PLCを構成するI/Oユニットに直接接続される場合と、ネットワークを介して接続される場合がある。そのネットワークを介して接続する形態として、たとえば、マスタ−スレーブ通信により行うことができる。この場合、PLCを構成するマスタユニット(マスタ)とIOターミナル(リモートI/O,リモートI/Oターミナル,ターミナル装置,リモート装置などとも称される)等のスレーブとをフィールドネットワークに接続し、そのフィールドネットワークを介してマスタとスレーブとの間で通信を可能とする。
【0005】
係るIOターミナル等のスレーブには、外部I/O機器を接続するための端子台を備えている。この端子台に、通信線や電力線等の電線の端部を着脱自在に装着する。この端子台に装着する電線の端部は、一般に丸型端子が用いられる。この丸型端子は、リング状の平板金具の外周の一部を外側に突出させた突辺部を備えた形状となり、この突辺部にケーブル・リード線の一端を半田やカシメ(圧着)などにより固定している。この丸型端子は、端子台に対してネジを用いて固定する。
【0006】
この端子台に固定した丸型端子が外れないようにするため、ネジをしっかりと締め付けて固定する必要がある。このネジの締め付け処理は、通常、二度締めと呼ばれる方法で、一度軽く締めたあと、トルク管理ができるドライバを用いて一定トルクで締めなおすことが行われる。この際、一度目の締めの作業後、ネジの頭などにマーキングをし、二度目の締めはそのマークを確認後行うような管理が行われる。
【0007】
このマーキングは、たとえば、ネジ締めを行った作業員が、油性ペンなどを用いてネジの頭を塗る方法がある。また、特許文献1に示すように、所定の塗料を塗布したワッシャを用意し、丸型端子の上に係るワッシャをおいた状態でネジを締め付けることで、ワッシャの塗料が剥がれることで、締め付けが行われたことを確認するものもある。
【特許文献1】特開2000−230530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、作業員が油性ペンでネジの頭に印をつける方法では、作業員は、ドライバで締めてから、油性ペンに持ち替えてマーキングをする手間があり、煩雑となる。また、油性ペンでチェックする際に、締め付けたネジと異なるネジにチェックしてしまうおそれもある。また、特許文献1のワッシャを用いることで、一度目の締めの作業を行ったものについて、確実にマーキングをする(塗料がはがれる)ことは可能となるが、特殊なワッシャを用意する必要があるという煩雑さがある。
【0009】
さらに、二度締めの完了を確認するために、二度目に締めた後も何かしらのマーキングをしたいという要求があるが、特許文献1のワッシャでは、ネジを締め付けたことがわかるものの、その締め付け回数を特定することはできず、二度締めを行った否かの確認をすることはできない。また、油性ペンを用いたマーキングは、たとえば、二度締めを行った後に、1度目のマーキングと異なる形態でマーキングをすることができれば、二度締めが完了したか否かの確認を行うことができる。異なる形態としては、たとえば1回目と2回目で使用する油性ペンの色を変えたり、塗りかた(線を引く方向を変える/二度目は頭を塗りつぶす等)を変えたりすることが考えられる。しかし、本発明が対象とするFAシステムを構成するスレーブ(IOターミナル)を考慮すると、端子台に固定するためのネジは小さく、ネジの頭の面積も小さく、異なる形態でマーキングできたとしてもそれを認識するのが困難となる。さらに、この二度目の締めの後にマーキングを行う場合も、油性ペンを用いる以上、上述した一度目の締めを行った後のマーキングの場合と同様の問題を有する。
【0010】
また、外部I/O機器の交換等により、一旦ネジを外した後、再度、同一の端子台にネジを用いて丸型端子(取り外したものと同じものの場合もあれば、別のものの場合もある)を締め付けて固定することがある。この場合に、取り外したネジの頭或いはワッシャには、先に行ったマーキングが施されているので、今回、同じネジ(ワッシャ)を用いるとマーキングによる確認が行えないという問題がある。
【0011】
さらに、FAの現場では、設備の振動によりネジが緩むため、定期的に増し締め作業が行われる。このとき最初に取り付けた際にすでにマーキングがされているので、この増し締め作業でのマーキングによる確認はできないという問題がある。
【0012】
この発明は、ネジの締め作業をしたことを確実かつ簡単に確認できるIOターミナルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するため、本発明に係るIOターミナルは、(1)フィールドネットワークに接続されるIOターミナルであって、そのIOターミナルのケースの表面には、固定ネジにより電線の端部を固定する複数の端子部と、その端子部における前記固定ネジの締め付け作業の状態を報知する報知部と、を備える。そして端子部は、ケース表面から奥側に向かって往復移動可能に設けられた台座と、その台座をケースの表面側に付勢する付勢手段と、を備え、前記固定ネジを前記台座に締め付けることで、固定ネジと台座との間で電線の端部を挟み込んで固定するように構成し、台座が奥側に移動した際に報知部の報知内容を変更する制御手段を備えるようにした。
【0014】
付勢手段は、実施形態ではコイルスプリング31により実現されているが、板バネその他各種のバネ機構などの弾性部材により実現することができる。また、移動ストロークがある程度確保できれば、ゴム等の弾性体(弾性部材)を用いることもできるし、エンダンパ・ショックアブソーバーのようなものでもよい。また、実施形態では、台座(移動枠体25)が奥側に移動(下降移動)したときにコイルスプリング31が圧縮され、弾性復元力により不勢力を発揮するようにしたが、係る奥側の移動に伴いコイルスプリングその他のバネや弾性部材が伸びるように弾性変形するように構成することもできる。
【0015】
報知部は、実施形態ではLEDにより実現されているが、LED以外のランプその他の発光体でも良いし、液晶パネルや有機ELパネル等の表示手段でも良いし、さらには、表示板(色や文字で報知内容を示す)のようなメカ的なものでもよい。LED等の発光体の場合、点灯/消灯(或いは、発光色の変更)といった簡単な処理で報知内容の変更を知らせることができる。また、液晶パネル等を用いた場合、複数の端子部についての作業の状態を一括して表示することができる。また、固定ネジと台座との間で電線の端部を“挟み込む”とは、両者の間で直接挟み込むことはもちろんのこと、間にワッシャなどの部材・部品を介在させることも含む。
【0016】
固定ネジに対して締め付け作業をする場合、作業員は、ドライバ等の工具を固定ネジに押し当てて押し込む操作を行うので、係る操作に伴い台座が奥側に移動する。そこで、係る移動に伴い、報知部手段における報知内容を変更するように制御することで、報知内容を見た人は、上記の締め付け作業が行われたか否かを確認することができる。そして、報知部の報知内容の変更は、ネジ締め作業に起因して行われるので、従来のように、作業員がドライバ等の工具から油性ペン等の筆記具に持ち替えてチェックする必要はなく、作業性が向上すると共にチェックミス(チェックし忘れ,間違った場所へチェック等)がないので、ネジ締め作業が行われたか否かの確認を確実に行える。
【0017】
(2)台座の往復移動に伴い接点が開閉するスイッチを設け、制御手段は、スイッチの接点の状態の変化に基づいて報知内容を変更するものとするとよい。スイッチは、接触式,非接触式のいずれでも良い。スイッチの接点の変化により台座の移動を検知し、報知内容を変更するようにすると、簡単な構成で実現できる。また、通常、IOターミナルは、フィールドネットワークに接続された状態では、外部I/O機器の接続の有無/当該外部I/O機器への通電の有無にかかわらずネットワーク電源等で電力供給がなされているので、スイッチの開閉を検知し、報知部へ報知するための電源も確保できる。
【0018】
(3)制御手段は、台座の1回目の移動に伴う報知内容と、2回目の移動に伴う報知内容を異ならせるようにするとよい。実施形態では、1回目の報知内容はLEDの点灯であり、2回目の報知内容はLEDの消灯である。このように、2回目の報知内容が1回目の報知内容の直前の態様と同じにしても良いし、たとえば、2回目の報知内容はLEDの点滅としたり、1回目と2回目で色を変えるなど、1回目のネジ締めを行う前の報知部の報知内容と2回目の報知内容を異ならせても良い。このようにすると、2度締め作業が確実に行われることが確認できる。つまり、1回目の軽いネジ締め作業では、上記の1回目に対応する報知内容がされていることを確認することで、ネジ締めを行う対象となる全ての端子部に対して当該1回目のネジ締め作業が行われたことが確認できる。換言すると、2回目のネジ締めを行う前に、対象となる全ての報知部の報知内容が係る1回目の報知内容になっていることを確認した後で、2回目のネジ締め作業を行う。そして、2回目のネジ締め作業を行った後は、報知部が上記の2回目に対応する報知内容となっていることを確認することで、ネジ締めを行う対象となる全ての端子部に対して二度締め処理が行われたことが確認できる。
【0019】
(4)制御手段は、報知内容を変更後一定時間経過した場合にはその報知内容を元の状態に復帰する機能を備えるとよい。係る機能を設けることで、自動的に元の状態に戻るので、作業員は、報知内容を元に戻すための作業が不要となる。もちろん、実施形態で説明したように、消去スイッチ16aのように元の状態復帰させるスイッチ等を設け、手動により復帰させるようにしても良い。この機能は、特に、保全時に行う増し締め作業を行った場合の確認を行った場合、その後自動的に元の状態に戻るので、作業員は、増し締め処理と、確認処理を次々と行うことができるので好ましい。
【0020】
(5)報知部は、LED等の発光体であり、報知内容の変更は、前記発光体の点灯と消灯の切り替えとするとよい。このようにすると、簡単な構成で実現することができると共に、作業員は容易に作業状態を確認できる。
【0021】
(6)スイッチの接点の開閉履歴を記憶部に保存する機能を設けるとなお良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、作業員がネジ締め作業とは別にマーキング等を行うことなく、ネジの締め作業にともない報知部の報知内容が変更されるので、作業状況を確実かつ簡単に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明に係るIOターミナルの好適な一実施形態を説明する。図1は、本発明が適用されるFAのネットワークシステムの一例を示している。図1に示すように、PLC1並びにIOターミナル10が、フィールドネットワーク2に接続される。PLC1には、ツール装置を構成するパソコン3が接続される。
【0024】
PLC1は、ビルディングブロックタイプであり、図では、CPUユニット1aと、マスタユニット1bの1つのユニットを示しているが、その他にも電源ユニットやI/Oユニット等の各種のユニットが連結される。パソコン3は、CPUユニット1aに接続される。
【0025】
IOターミナル10は、マスタ−スレーブ通信を行う際のスレーブとなり、1または複数の外部I/O機器4が接続される。図2に示すように、IOターミナル10は、演算部となるネットワーク通信部11と、MPU12と、記憶部13と、入出力部14と、表示部となるLED15と、スイッチ部16と、を備える。また、このIOターミナル10への電源は、フィールドネットワーク2を介して供給されるネットワーク電源が利用される。なお、IOターミナル10に接続される外部I/O機器4への電源供給は、上記のネットワーク電源とは別系統でIOターミナル10に供給される電源(たとえば、DC+24V)を利用する。
【0026】
ネットワーク通信部11は、ネットワーク2に接続され、マスタユニット1bとの間でマスタ−スレーブ間通信をし、I/Oデータの送受を行なったり、所定のコマンドの受信並びにそれに基づくレスポンスの送信を行なったりする。演算部12は、ネットワーク通信部11を介して取得したメッセージを受けて、所定の処理を実行し、レポンスを生成・返信したり、接続されたI/O機器に対する制御命令等を発したりする。記憶部13は、演算部11が処理を実行する際に使用するワークメモリ(RAM)や、各種の設定データ等を記憶する手段(不揮発性メモリ)となる。
【0027】
入出力部14は、入力機器や出力機器等の外部I/O機器4と接続する端子台および入出力回路を備える。端子台は、1または複数のI/O器を電気・機械的に接続するためのもので、後述するようにネジにより固定する構造をとっている。入出力回路は、演算部12と外部I/O機器4との間でI/Oデータの送受を行う。
【0028】
LED15は、本発明との関係でいうと、ネジ締めが行われたか否かを示すネジ締め確認のLED(報知手段)である。通常のスレーブに設けられているように、スレーブの状態(運転中/異常)を示すためのLEDもある。これらネジ締め確認用のLEDと、スレーブの状態を示すLEDは、それぞれ別々に設置しても良いし、同時に利用することはないので共通化(兼用)しても良い。
【0029】
スイッチ部16は、本発明との関係でいうと、ネジ締めが行われたこと、より具体的には、ドライバ等の工具を用いてネジを押しながら締め付け処理をしたことを検知するためのネジ締め確認用のスイッチである。また、通常のスレーブに設置されるノードアドレスや各種の条件(ステータス)設定用のスイッチもある。
【0030】
図3は、スレーブを構成するIOターミナル10の外観(平面図)を示している。同図に示すように、IOターミナル10は、その表面にネットワークに接続するための通信コネクタ部20,端子台21,LED15等を配置している。通信コネクタ部20は、ネットワーク通信部11の一部を構成するともいえる。つまり、通信コネクタ部20は、実際にフィールドネットワーク2を構成する通信ケーブルに電気・機械的に接続を図るもので、IOターミナル10のケース内部に設置された通信用の電気回路基板に接続され、係る電気回路基板とともにネットワーク通信部11を構成する。
【0031】
また、端子台21は、複数の端子部22を備えている。それら複数の端子部22に、外部I/O機器が接続される。つまり、外部I/O機器は、通信線や電力線等の電線を備えているので、その電線の先端に取り付けた丸型金具(端子)を、所定の端子部22にネジにて固定する。
【0032】
各端子部22は、いずれかのLED15に対応付けられており、端子部22についてのネジ締め作業の状態にあわせてLED15が点灯したり消灯したりする。なお、かかる点灯/消灯の機能(作用)については後述する。さらに、図示した例では、I/Oの点数が16点用のIOターミナルであり、端子部22は、1列が9個を2列配置しているので、LEDも2×9の合計18個配置している。この18個の端子のうち、2個(たとえば左端)は、DC+24VのIO電源のための電源VとグランドGに使用する。このように端子部22とLED15のマトリクス配列を同じにすることで、個々のLED15は、どの端子部22に対するネジ締め作業の状態を示すものかが理解できる。さらに、電源V,グランドG用の端子部22についても、ネジ締めにより電線を固定するため、係るネジ締め作業の状態を、LED15にて示すようにしている。
【0033】
なお、本実施形態では、通常動作時におけるスレーブの状態を示すLED(上列の左端)や、ネットワークの状態を示すLED(下列の左端)も、上記のネジ締め作業の確認用のLEDと兼用するようにしたため、端子部の数とLEDの数が等しくなっているが、スレーブの状態を示すLEDを別途設ける場合には、LEDの数は端子部の数よりももちろん多くなる。
【0034】
図4(a)は、上記の端子部22の一つの構造を示している。図4(a)に示すように、IOターミナル10のケースの天面10aに、矩形状のガイド枠23を設ける。このガイド枠23は、上下が開口しているとともに、上方内周面に、突起24を設けている。さらに、このガイド枠23の内部に、昇降移動可能に移動枠体25を挿入配置する。移動枠体25は、天板25aと、底板25bと、それら両板25a,25bを連結する側壁25cと、を適宜に組み合わせて構成される。側壁25cは、対向する2辺に設けてもよいし、三方あるいは四方に配置してもよい。さらに、底板25bの下面外側付近には、係止突起25dが設けられている。
【0035】
そして、移動枠体25の天板25aの中央には、上下に貫通する貫通孔が形成され、その貫通孔の内面に雌ネジが形成されている。この貫通孔の雌ネジに嵌め合うように固定ネジ26が取り付けられる。固定ネジ26の軸部26b(周囲に雄ネジが切られている)に、外部I/O機器4に接続された電線の先端の丸型金具6を装着した状態で固定ネジ26を締め付けると、その固定ネジ26の頭26aと移動枠体25の天板25aとの間で、丸型金具6が締め付けられて固定される。つまり、この移動枠体25は、固定ネジ26の台座を構成する。
【0036】
さらに移動枠体25の天板25aの下面中央には、上下貫通する円筒状の筒部27が連結され、その筒部27は移動枠体25の内部空間内に設置される。筒部27は、天板25aの中央に設けた貫通孔と同心円状に配置するとともに、この筒部27の径は貫通孔の内径よりも大きくしている。これにより、固定ネジ26の軸部26bは、筒部27内に位置する。また、図4(b)に示すように、筒部27の下端には、スイッチ29を押圧するパッド28が取り付けられる。このパッド28は、たとえば、ゴム等のある程度の弾力性を有する材質から構成し、スイッチ29を必要以上に押し潰すことがないようにするとよい。そして、底板25bは、その中央部位が大きく開口された開口部を設けている。この開口部の寸法は、少なくとも筒部27の外径よりも大きくし、パッド28が底板25bの下方外側に突出するようにしている。また、その開口部の形状は、筒部27に対応して円形としてもよいし、矩形状その他の任意の形状としてもよい。
【0037】
スイッチ29は、IOターミナル10のケース内部に設けられた取付板30の上に、パッド28と正対するように設置される。このスイッチ29は、接触式の押しボタンスイッチであり、移動枠体25の下降移動とともに下降するパッド28により接触し下方に付勢されることでスイッチの接点が閉じるようになっている。このスイッチ29の接点の開閉状態は、MPU12に送られる。MPU12は、後述するように、この接点の開閉状態に基づき、LED15の点灯を制御し、ネジ締め作業の状態を報知する。また、このスイッチ29が、上述したスイッチ部19を構成する。
【0038】
さらに、筒部27の外周にはコイルスプリング31が装着される。このコイルスプリング31は、その両端が、移動枠体25の天板25aの下面と、取付板30の上面とに接触するように配置される。これにより、移動枠体25が下降移動すると、天板25aによりコイルスプリング31が下方に付勢されて圧縮変形(弾性変形)し、コイルスプリング31の弾性復元力により移動枠体25を上方へ付勢する。よって、移動枠体25の下方への付勢力が解除されると、コイルスプリング31の弾性復元力により、移動枠体25が上昇移動する。なお、移動枠体25の上方には、ガイド枠23の内周面に設けた突起24が位置しているので、それ以上の移動が抑止され、移動枠体25がガイド枠23から上方に離脱するのが阻止される。
【0039】
次に、ネジの締め付け作業を説明しつつ、端子部22の作用並びにMPU12の機能を説明する。まず、図5(a)に示すように、ネジ締めする前は、コイルスプリング31の弾性復元力と、移動枠体25の自重とがバランスがとれた位置(基準位置)で移動枠体25が保持される。このとき、パッド28は、スイッチ29から離反している。よって、スイッチ29の接点は開いている。
【0040】
次に、固定ネジ26を締め付けるに際し、まず、ドライバ等の工具を固定ネジ26の頭26aに突き当てるとともに下方に押しながら回して固定ネジ26を回転させる。すると、まず下方に押すことで、移動枠体25は、コイルスプリング31を圧縮しながらガイド枠23内を下降移動し、図5(b)に示すように、移動枠体25の係止突起25dが取付板30の上面に接触してそれ以上の下降が阻止される。この状態では、パッド28がスイッチ29に接触するとともに、下方に付勢し、スイッチ29の接点が閉じるようになっている。なお、係止突起25dを設けたのは、パッド28を介してスイッチ29の接点を必要以上の強さで押圧しないようにするためである。また、コイルスプリング31は、筒部27の外周に配置されているので、移動枠体25の下降移動にともない圧縮変形するに際し、横に曲がったりすることなく、軸方向にスムーズに圧縮変形する。
【0041】
この状態で、ドライバ等の工具を所定方向に回すことで、固定ネジ26が締め付けられ、その頭26と移動枠体25(天板25a)との間隔が狭くなる(図5(c)参照)。これにより、図示省略するが、固定ネジ26の頭26aと移動枠体25との間で、丸型金具等の外部I/O機器4につなぐ電線の先端が所定の圧力で挟まれて固定される。
【0042】
そして、固定ネジ26(頭26a)から工具を離反させると、下方への付勢力がなくなるので、コイルスプリング31の弾性復元力により、移動枠体25が上方へ付勢され、上昇移動する。よって、図5(d)に示すように、移動枠体25は当初の基準位置に復帰し、パッド28がスイッチ29から離反するので、スイッチ29の接点が開く。
【0043】
このように、固定ネジ26に対するネジ締め作業を1回行うと、スイッチ29の接点が“開”→“閉”→“開”と変化するので、このスイッチの接点の状態の変化をMPU12が認識し、LED15の点灯を制御する。具体的には、以下の通りである。
【0044】
MPU12は、スイッチが一回押されると対応するLED15を点灯し、次にスイッチが押されると当該LEDを消灯するように制御する。一回押されたとは、スイッチ29の接点が“開”→“閉”というように閉じたとき、あるいは“開”→“閉”→“開”というようにいったん閉じた後で開いたときなど、あらかじめ決めた条件を充足したときを契機として判断することができる。さらに、OFFディレイタイマを設け、LED15が点灯した後で一定時間経過した場合には消灯する機能を設けてもよい。このオフディレイタイマでオフディレイする時間は、あらかじめ不揮発性メモリ等の記憶部13に格納し、MPU12は必要に応じて呼び出す。この記憶部13への格納は、ツール装置を構成するパソコン3を用い、PLC1経由でネットワークを利用して設定することができる。また、スイッチ部16に、かかる時間を設定するためのスイッチを設け、係るスイッチを操作することで設定することもできる。
【0045】
このようにすることで、ネジの二度締め作業についての確認を以下のようにして行うことができる。まず、一度目で固定ネジ26を軽く締める処理を行う。すると、スイッチが1回押されるので、処理した端子部22に対応するLED15が点灯する。従って、一度目のネジ締め工程が終わったならば、作業者は、端子部22に対応する全てのLED15が点灯していることを確認する。このとき、消灯しているLEDが存在する場合、その消灯しているLEDに対応する端子部22に対するネジ締め処理が行われていないことを意味するので、該当する端子部に対して1度目の軽くネジを締める処理を行う。このようにして、全ての端子部に対して確実に1度目のネジ締めを行うことが確認できる(図6(a)参照)。
【0046】
二度目の所定のトルクでしっかりと固定ネジを締める処理を行うに先立ち、全てのLEDが点灯していることを確認する。そして二度目の固定ネジを締める処理を行った場合、点灯状態のLEDは消灯する。よって、LEDが消灯していれば、そのLEDに対応する端子部については二度締め処理が完了したことを意味する。従って、全てのLEDが消灯したことを確認することで、全ての端子部に対する二度締め処理が完了したことがわかる(図6(b)参照)。
【0047】
これらの一度目並びに二度目のネジ締め処理に伴い、自動的にLEDが点灯/消灯するので、従来のように、作業者がドライバその他の工具でネジを締めたあとで油性ペン等に持ち替えてマーク等を行う必要がなく、作業性が向上するばかりでなく、端子部ごとにしかも、処理した端子に対応するLEDが点灯/消灯するのでチェックミスも生じない。よって、作業中・作業完了の確認(目視)が確実かつ簡単にでき、作業のし忘れが防止できる。また、二度締め処理が完了したならば、図6(b)に示すように、LED15が消灯するので、そのまま処理が終了できる。
【0048】
なお、オフディレイタイマにより一定時間経過したならば自動的にLEDが消えるようにしたが、二度締めが行われていない場合に全てのLEDが消灯してしまうことがないようにするため、たとえば、IOターミナル10に対して現在二度締めを行うような設置時(立ち上げ時)にあるのか、係る設置が完了し後述する増し締めを行うような通常の動作状態にあるのかを設定できるようにし、設置時の場合にはオフディレイタイマを動作させずに、二度締めをしない限りLEDを点灯し続けるようにしても良い。係る設置時/通常の動作時の切り替えは、たとえば、IOターミナルに状態設定用の切り替えスイッチを設け、その切り替えスイッチを操作することで知らせるようにしても良いし、ネットワーク経由でツール装置(パソコン3)等から通知するようにしても良い。
【0049】
一方、一旦設置した後でも、使用等に伴いネジが緩むことがある。そこで保全(定期点検)処理として、各固定ネジに対して増し締めを行う。この場合、上述した設置時における一度目のネジ締め作業と同様に、端子部22ごとに固定ネジを締め付ける増し締めの処理を行うと、その処理に伴い端子部22の移動枠体25が下降・上昇してスイッチ19の接点の状態が“開”→“閉”→“開”と変化する。よって、増し締め処理は各端子部22に対して1回ずつ行うことから、全ての端子部に対して増し締め処理が完了すると、図7(a)に示すように、端子部22に対応する全てのLED15が点灯する。よって、消灯しているLED15があれば、それに対応する端子部に対して増し締め処理を行えばよい。そして、作業者は、全てのLEDが点灯していることを確認することで、そのIOターミナル10に対する増し締め処理が完了したことを簡単に確認できる。
【0050】
そして、本実施形態では、一旦点灯したLED15もオフディレイタイマにより、一定時間経過したならば消灯する(図7(b)参照)。よって、増し締め処理並びにその確認作業を行った作業者は、処理したIOターミナル10に対してはそのまま放置し、次のIOターミナルに対する増し締め処理に移行することができる。また、図7(c)に示すように、IOターミナル10に消灯スイッチ16aを設け、消灯スイッチ16aを押下等することで手動により消灯するようにてもよい。この場合、消灯スイッチ16aはドライバ等の増し締めを行う際に使用する工具で押せるものとすると、作業が簡単に行えるので好ましい。たとえば、IOターミナル10のケースの表面より凹んだ位置に設置し、ドライバをその凹んだ部位に挿入して押下することで消灯するように構成できる。このように凹んだ位置に設置することで、作業中に誤って消灯スイッチ16aを押してしまう誤動作を防止できる。さらに、誤動作防止のためには、消灯スイッチ16aが長押しされた場合にLEDを消灯するようにすると良い。
【0051】
図8,図9は、本発明の第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態の端子部22は、移動枠体25の下側に設けるパッド28の設置位置を異ならせている。つまり、第1の実施形態では筒部27の下方に設けたが、本実施形態ではパッド28を移動枠体25の底板25bの下面外側に設けた係止突起25dの下面に貼り付けている。そして、取付板30上に設置するスイッチ29は、上記のパッド28に対向する位置にしている。これにより、パッド28とスイッチ29は、共にコイルスプリング31の外側に位置することになる。また、係止突起25dのパッド28を取り付ける部位の厚さは、他の部位の厚さよりも薄くし、パッド28の下面の位置が、パッド28の未接続の係止突起25dの下面位置よりも若干上方に位置するようにしている。
【0052】
本実施形態では、図9に示すように、図9(a)に示すように、ネジ締めする前は、コイルスプリング31の弾性復元力と、移動枠体25の自重とがバランスがとれた上方位置(基準位置)で移動枠体25が保持されるので、パッド28は、スイッチ29から離反している。よって、スイッチ29の接点は、開いている。この状態から、固定ネジ26を締め付けるためにドライバ等の工具にて固定ネジ26を下方に向けて付勢するので、移動枠体25が下降移動する。すると、図9(b)に示すように、係止突起25dが取付板30に接触した状態で下降移動が抑止され、このとき、パッド28がスイッチ29を接触すると共に下方に付勢し、スイッチ29の接点が閉じる。
【0053】
この状態のまま固定ネジ26を締め付け(図9(c))、その後、固定ネジ26から工具を離反させると、コイルスプリング31の弾性復元力で移動枠体25が上昇移動し、図9(d)に示すように、移動枠体25は当初の基準位置に復帰する。よって、パッド28がスイッチ29から離反して、スイッチ29の接点が開く。これにより、1回のネジ締め操作により、スイッチ29の接点が1回ON/OFFするので、それに基づいて、MPU12は、LED15の点灯を制御する。なお、具体的なMPU12におけるLEDの点灯の制御や、それに基づく二度締め処理/増し締め処理の確認作業等は、第1の実施形態と同様である。なお、その他の構成並びに作用効果は、第1の実施形態と同様であるので、対応する部材に同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図10,図11は、本発明の第3の実施形態の要部を示している。本実施形態では、上述した各実施形態と相違して、コイルスプリング31の上端を移動枠体25の底板25bの下面に接触させるようにしている。これに伴い、底板25bは、上述した各実施形態と相違して、開口部は設けていない。また、底板25bの下面中央にパッド28を取り付けている。そして、第1の実施形態と同様に、取付板30の上面に設けたスイッチ29と、上記のパッド28とは、コイルスプリング31の内側に配置している。
【0055】
また、図11と図8と比較すると明らかなように、この実施形態においても、固定ネジ26に対するネジ締め作業を1回行うと、移動枠体25が下降・上昇移動し、それに伴いスイッチ29の接点が“開”→“閉”→“開”と変化するので、このスイッチの接点の状態の変化をMPU12が認識し、LED15の点灯を制御することができる。
【0056】
なお、その他の構成並びに作用効果は、上述した第1実施形態と同様であるので、対応する部材に同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、具体的な図示は省略するが、本実施形態のように、コイルスプリング31を移動枠体25の底板25bに接触する構造において、第2実施形態のようにスイッチ29を外側に配置する構成を採ってももちろん良い。
【0057】
さらに上述した各実施形態のように、移動枠体25の移動ストロークをある程度大きくとることができる場合には、スイッチ29は、実施形態のように接触指摘のものに限ることはなく、近接センサ等を用いた非接触タイプのスイッチを用いることもできる。
【0058】
さらに、ネジ締め処理の状態を示す報知部として、上述した各実施形態では、LEDを用い、点灯/消灯で状態を報知するようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、異なる色が発光するランプを用い、色が変わるようにしてもよいし、このように電気的なものではなく、移動枠体25の下降・上昇移動に連動し、機械的な機構により外部に露出する表示板を変える(色,表示内容等)ようにしてもよい。
【0059】
さらには、MPU12が、スイッチ29のON/OFFの遷移の履歴から、ネジ締め作業が行われたことを認識し、それを記憶部13に記憶しておき、ツールで確認することができるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るIOターミナルが実装されるネットワークシステムの一例を示す図である。
【図2】本発明に係るIOターミナルの好適な一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るIOターミナルの好適な一実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明に係るIOターミナルの第1実施形態の端子部を示す図である。
【図5】第1実施形態の作用を説明する図である。
【図6】第1実施形態の作用を説明する図である。
【図7】第1実施形態の作用を説明する図である。
【図8】本発明に係るIOターミナルの第2実施形態の端子部を示す図である。
【図9】第2実施形態の作用を説明する図である。
【図10】本発明に係るIOターミナルの第3実施形態の端子部を示す図である。
【図11】第3実施形態の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
10 IOターミナル
12 MPU(制御手段)
15 LED(報知部)
25 移動枠体(台座)
26 固定ネジ
29 スイッチ
31 コイルスプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドネットワークに接続されるIOターミナルであって、
そのIOターミナルのケースの表面には、固定ネジにより電線の端部を固定する複数の端子部と、その端子部における前記固定ネジの締め付け作業の状態を報知する報知部と、を備え、
前記端子部は、前記ケース表面から奥側に向かって往復移動可能に設けられた台座と、その台座を前記ケースの表面側に付勢する付勢手段と、を備え、前記固定ネジを前記台座に締め付けることで、前記固定ネジと前記台座との間で前記電線の端部を挟み込んで固定するように構成し、
前記台座が前記奥側に移動した際に前記報知部の報知内容を変更する制御手段を備えた
ことを特徴とするIOターミナル。
【請求項2】
前記台座の往復移動に伴い接点が開閉するスイッチを設け、
前記制御手段は、前記スイッチの接点の状態の変化に基づいて前記報知内容を変更するものであることを特徴とする請求項1に記載のIOターミナル。
【請求項3】
前記制御手段は、前記台座の1回目の移動に伴う報知内容と、2回目の移動に伴う報知内容を異ならせるようにするものであることを特徴とする請求項1または2に記載のIOターミナル。
【請求項4】
前記制御手段は、報知内容を変更後一定時間経過した場合にはその報知内容を元の状態に復帰する機能を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のIOターミナル。
【請求項5】
前記報知部は、LED等の発光体であり、報知内容の変更は、前記発光体の点灯と消灯の切り替えであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のIOターミナル。
【請求項6】
前記スイッチの接点の開閉履歴を記憶部に保存することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のIOターミナル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−67559(P2010−67559A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234834(P2008−234834)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】