説明

IP電話ネットワークシステム、VoIP交換機およびVoIP電話制御端末、並びに、迂回通話方法

【課題】 固定電話に匹敵するシステムとしての高い信頼性と通話品質を有するIP電話を実現する。
【解決手段】 VoIP交換機10は、所定の時間ごとにVoIP電話制御端末20から送信される通話障害検査情報が受信されなかった場合を通話障害と判定し、障害と判定されたVoIP電話制御端末20に対し通話の接続要求があったときには、その通話を、公衆交換電話網50を介してVoIP電話制御端末20へ転送するようにした。また、VoIP電話制御端末20は、VoIP通話パケット優先転送制御部26を備え、IP通話に係る情報パケットにその優先転送を指示する情報を付すとともに、そのパケットをパソコン等から送信されるパケットに優先して転送するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VoIP(Voice over Internet Protocol)技術を用いたIP(Internet Protocol)電話を実現するためのIP電話ネットワークシステム、VoIP交換機およびVoIP電話制御端末、並びに、迂回通話方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロードバンドIPネットワークの広がりに伴い、IP電話が急速に普及し始めている。IP電話は、当初、インターネット電話と呼ばれ、音声データのパケット化送信の遅延時間などのために、通話品質は良好というものではなかった。その後、インターネット電話のうち、その通話路となる部分のIPネットワークとして公衆インターネット網から切り離した専用のIPネットワークを利用するものを、特に、IP電話と呼ぶようになった。そして、その専用のIPネットワークは、通常、100Mbps以上の高速通信が可能な光ファイバを用いて構成されるため、パケット化送信の遅延時間などが大幅に低減される。このような高速の光ファイバのネットワークを用いることにより、IP電話の通話品質は、格段に向上した。
【0003】
一方において、IP電話は、実用化されたばかりであり、その使用の実績は、従来の固定電話に比べてあまりにも少ない。それゆえ、現状では、IP電話は、利用者の高い信頼を獲得するには到っていない。実際、IP電話が専用のIPネットワークに接続されるといっても、そのIPネットワークには種々のサーバやパソコンが接続され、その間では種々のデータの送受信が行われる。このようなサーバやパソコン間のデータの送受信は、IP電話の通話品質にとって負の要因として作用する。また、このようなIP電話のネットワークでは、どのような障害が起きるかの実績データもまだ整備されていない。
【0004】
そこで、従来からIP電話の信頼性や通話品質を向上させるための種々の技術開発がなされてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には、IP電話を発信するとき、IP電話の通話路となるIPネットワークが非常に混雑しているために、所定の通話品質を確保できないときには、PBX(Private Branch eXchange)からIPネットワークへ発信されることになっている通話を、従来の公衆交換電話網へ迂回させる通話制御の例が示されている。また、特許文献2には、通話中にそのIPネットワークにおいて障害が生じたときには、その通話を切断することなく、その通話を公衆交換電話網へ迂回させる方法やゲートウエイ装置等の例が示されている。すなわち、特許文献1および特許文献2においては、IPネットワークを含めたIP電話に障害が生じたときには、従来の公衆交換電話網を用いた固定電話によってその障害をバックアップしようとするものである。
【0006】
また、非特許文献1および非特許文献2には、IPネットワークの中を送受信されるIPパケットの送信制御の標準化に関するDiffserv(Differentiated Service)技術について記載されている。Diffserv技術によれば、IPパケットのヘッダ部のTOS(Type of Service)フィールドに、そのIPパケットの信頼性等の属性を付すことができるようにされている。それによれば、ルータより下位レベルのネットワークスイッチにおいて、TOSフィールドの値によりIPパケットの優先送受信制御を行うことができる。そこで、例えば、IP電話に係る音声情報のIPパケットのTOSフィールドに優先度の高い値を付すようにすれば、音声情報のIPパケットは、優先的に送受信される。そのため、IPネットワークが混雑しても音声情報のIPパケットの送信遅延は小さくて済み、通話品質低下への影響を抑制することができる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−308345号公報(段落0012〜段落0038、図1、図2)
【特許文献2】特開2003−329027号公報(段落0022〜段落0098、図1〜図16)
【非特許文献1】K. Nichols, 他3名, "Definition of the Differentiated Services Field (DS Field) in the IPv4 and IPv6 Headers", Dec. 1998, [On line], [平成16年5月26日検索], インターネット<http://www.ietf.org/rfc/rfc2474.txt>
【非特許文献2】S. Blake, 他5名, "An Architecture for Differentiated Services", Dec. 1998, [On line], [平成16年5月26日検索], インターネット<http://www.ietf.org/ rfc/rfc2475.txt>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、IPネットワークに障害が生じたときに利用者が被る不利益は,通話を発信するときよりも通話を着信するときのほうが大きい。発信時には、利用者は、発信操作をするだけで、交換機からの応答がない等のことが分かり、少なくとも発信できないことを知ることができる。そのときには利用者は、すぐに、例えば、従来の固定電話を使って発信することができる。一方、IPネットワークに障害があるために通話が着信できない場合には、利用者は何の情報も得られないので、いつまでたってもその障害を知ることができない。そのため、重要な顧客からの通話を失するような事態も生じ得る。
【0009】
しかしながら、特許文献1の例において迂回の対象とされる通話は、発信される通話である。また、特許文献2の例においては、通話中にIPネットワークの障害が生じたとき、その通話だけが迂回の対象とされている。従って、いずれの例も、IPネットワークに障害があるために通話が着信できない場合に、そのIPネットワークの障害を検知し、その通話を迂回させるようなものにはなっていない。すなわち、従来技術においては、利用者にとって不利益が大きい通話の着信障害を検知し、その障害を迂回して着信させる手段または方法は、未だ、提示されていない。
【0010】
また、IP電話において通話品質の低下を抑制する技術については、非特許文献1および非特許文献2に示されたDiffserv技術においてIPパケットの優先送信制御の概念が示されただけであり、具体的な実現方法が示されたわけではない。
【0011】
前記の従来技術の問題点に鑑み、本発明の課題は、固定電話に匹敵するシステムとしての高い信頼性と通話品質を有するIP電話を提供することにある。そして、本発明のより具体的な課題は、通話が着信するときにIPネットワークの障害を検知し、そのときIPネットワークに障害が検知された場合には、その通話を公衆交換電話網へ迂回させるようにしたIP電話ネットワークシステム、VoIP交換機およびVoIP電話制御端末、並びに、迂回通話方法を提供するとともに、通話に係る音声情報の優先送信制御を可能にしたVoIP電話制御端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明においては、IP電話ネットワークシステムを、IPネットワークと、そのIPネットワークおよびボタン電話機に接続され、そのボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、IPネットワークを介してIP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えた構成とした。そして、VoIP電話制御端末は、所定の時間ごとに、VoIP交換機に対し、VoIP交換機と当該VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害の有無を検知させるための通話障害検査情報を送信する通話障害検査情報送信手段を備えた構成とした。また、VoIP交換機は、VoIP電話制御端末から送信される通話障害検査情報に基づき、当該VoIP交換機とVoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害を検知し、その検知結果に基づき、IP通話回線の通話障害有無を示す通話障害フラグを設定する通話障害検知手段と、その通話障害検知手段により設定された通話障害フラグ、および、IP通話回線に通話障害があったときにそのIP通話回線への通話を転送するための転送先の公衆交換電話網の電話番号を、そのIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けて記憶する障害情報記憶手段と、当該VoIP交換機に対し通話の交換処理要求があったとき、障害情報記憶手段を参照して、交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する通話障害フラグを読み出し、読み出された通話障害フラグにより接続予定のIP通話回線に通話障害があるか否かを判定する通話障害判定手段と、通話障害判定手段により前記接続予定のIP通話回線に通話障害があると判定されたとき、障害情報記憶手段を参照して、交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する公衆交換電話網の電話番号を読み出し、読み出された公衆交換電話網の電話番号をもつ公衆交換電話回線へ交換処理要求のあった通話を転送する通話転送手段とを備えた構成とした。
【0013】
以上のようにIP電話ネットワークシステムを構成したことにより、VoIP交換機は、VoIP電話制御端末の通話障害検査情報送信手段が所定の時間ごとに送信する通話障害検査情報を、通話障害検知手段によって監視し、所定の時間内に所定の通話障害検査情報を受信しなかったとき、VoIP交換機と当該VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線に通話障害があったことを検知することができる。また、通話障害が検知されたIP通話回線の情報は、通話障害フラグとしてそのIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けて障害情報記憶手段に記憶される。そこで、通話の交換処理要求があったときには、VoIP交換機は、障害情報記憶手段を参照することにより、接続予定のIP通話回線に通話障害があるか否かを知ることができる。そのとき、接続予定のIP通話回線に通話障害があった場合には、VoIP交換機は、再度、障害情報記憶手段を参照して、そのIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けられた公衆交換電話網の電話番号を読み出し、読み出された公衆交換電話網の電話番号をもつ公衆交換電話回線へ交換処理要求のあった通話を転送する。以上のようにして、障害のあったIP通話回線を迂回させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のIP電話ネットワークシステムにおいて、VoIP電話制御端末が、さらに、公衆交換電話網に接続するための公衆交換電話網接続手段を備えた構成とした。そして、VoIP交換機における障害情報記憶手段は、VoIP電話制御端末に接続されたIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応させた転送先の公衆交換電話網の電話番号として、当該VoIP電話制御端末の公衆交換電話網接続手段に接続された公衆交換電話回線に割り当てられた電話番号であるようにした。
【0015】
このようにIP電話ネットワークシステムを構成したことにより、VoIP電話制御端末に接続されたIP通話回線に通話障害があった場合に通話転送手段によって通話が転送される公衆交換電話網の接続先は、そのVoIP電話制御端末自身の公衆交換電話網接続手段になる。従って、IP通話回線に通話障害があった場合の着信通話は、公衆交換電話網に迂回され、その公衆交換電話網接続手段に着信する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明のIP電話ネットワークシステムを、迂回通話方法の発明として主張するものであり、請求項1と同様の作用効果を有する。また、請求項4および請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明のIP電話ネットワークシステムのうち、それを構成するVoIP交換機を独立させ、VoIP交換機の発明として主張するものである。また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明のIP電話ネットワークシステムのうち、それを構成するVoIP電話制御端末を独立させ、VoIP電話制御端末の発明として主張するものである。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明のVoIP電話制御端末が、さらに、当該VoIP電話制御端末から発信する情報に対するVoIP交換機からの応答情報に基づき、VoIP交換機と当該IP電話制御端末とをつなぐIP通話回線における通話障害を検知する発信通話障害検知手段を備える構成とした。このようにVoIP電話制御端末を構成したことにより、VoIP電話制御端末から通話を発信するときに、検知することができるようになる。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7の発明に記載のVoIP電話制御端末が、さらに、ボタン電話機と公衆交換電話網とを接続した公衆交換電話網接続手段を備えた構成とした。このようにVoIP電話制御端末を構成したことにより、そのVoIP電話制御端末に接続されたIP通話回線における通話障害が発信通話障害検知手段により検知されたときには、公衆交換電話網接続手段によって公衆交換電話網を介した迂回通話が可能となる。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明のVoIP電話制御端末において、発信通話障害検知手段により通話障害が検出された場合には、ボタン電話機から発信される通話を、前記公衆交換電話網接続手段を介して前記公衆交換電話網へ迂回接続するようにした。このようにVoIP電話制御端末を構成したことにより、そのVoIP電話制御端末に接続されたIP通話回線に通話障害があった場合にも、ボタン電話機から発信される通話は、公衆交換電話網接続手段を介し、公衆交換電話網に向けて発信可能となる。
【0020】
さらに、請求項10に記載の発明では、IPネットワークと、ボタン電話機、パソコンおよびIPネットワークに接続され、ボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、前記IPネットワーク介してそのIP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えたIP電話ネットワークシステムにおいて、VoIP電話制御端末が、ボタン電話機とIPネットワークとの間にあって、電話の通話に係る音声信号および制御信号のプロトコルの変換および制御を行うVoIP回線制御手段と、パソコンに接続され、そのパソコンとIPネットワークとの間にあって転送される情報のルーティング制御を行うルーティング制御手段と、IPネットワークとVoIP回線制御手段またはルーティング制御手段との間にあって、VoIP回線制御手段から入力される情報に優先転送制御を行うことを示す優先転送指示情報を付加するとともに、VoIP回線制御手段から入力される情報を前記ルーティング制御手段から入力される情報に優先させて前記IPネットワークへ出力するVoIP通話情報優先出力手段とを備える構成とした。
【0021】
請求項10の発明では、VoIP電話制御端末がVoIP通話情報優先出力手段を備える構成としたので、VoIP回線制御手段によって入力される情報、つまり、IP電話の音声信号や制御信号の情報を、前記ルーティング制御手段によって入力される情報、つまり、パソコン等から送信される情報に優先させてIPネットワークへ出力させることができる。そのため、パソコン等から送信される情報などによりIPネットワークが混雑しても、IP電話の音声情報に係る送信遅延の増加を抑制することができ、所定の通話品質を確保することができる。
【0022】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のVoIP電話制御端末において、VoIP通話情報優先出力手段は、VoIP回線制御手段に接続されるか、ルーティング制御手段に接続されるかがあらかじめ設定された複数の接続端子を備え、VoIP回線制御手段に接続されることが設定された接続端子から入力された情報を、ルーティング制御手段に接続されることが設定された接続端子から入力された情報に優先させてIPネットワークへ出力するように構成した。
【0023】
また、請求項12に記載の発明は、請求項10または請求項11に記載のVoIP電話制御端末において、VoIP通話情報優先出力手段は、VoIP回線制御手段に接続されるか、ルーティング制御手段に接続されるかがあらかじめ設定された複数の接続端子を備え、VoIP回線制御手段に接続されることが設定された接続端子については、その接続端子から入力される情報に優先転送指示情報を付加する優先転送指示情報付加手段を設ける構成とした。
【0024】
これら請求項11または請求項12に記載の発明においては、VoIP通話情報優先出力手段は、入力された情報ではなく、情報が入力された接続端子の種類に基づいて優先転送制御を行っている。従って、VoIP通話情報優先出力手段は、入力された情報の内容を参照または判定することなく、入力された接続端子の種類に基づくだけで情報の優先転送制御を行うことができる。そのため、VoIP通話情報優先出力手段および優先転送指示情報付加手段を実現するためのハードウエア規模(回路規模)が小さくて済むので、本発明は、VoIP電話制御端末の製造コスト低減に寄与することができる。
【0025】
また、請求項13に記載の発明は、請求項10〜請求項12のいずれかの一項に記載のVoIP電話制御端末において、VoIP回線制御手段が同時に処理する電話回線数が32回線以下であるものとした。すなわち、VoIP回線制御手段が同時に処理する電話回線数を32回線以下に制限することによって、IPネットワークがIP電話の通話に係る情報送信のために過度に混雑(輻輳)するのを回避し、その混雑のために生じる音声情報の送信遅延に伴う通話品質の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1〜6に記載の発明によれば、VoIP交換機は、通話を接続先へ着信させようとするときに、VoIP交換機とVoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線における障害の有無を検出できるようになり、そのため、その通話を公衆交換電話網へ迂回させて、VoIP電話制御端末に着信させることができるようになる。
また、請求項7〜9の発明によれば、VoIP電話制御端末は、通話を発信しようとするときに、VoIP電話制御端末とVoIP交換機とをつなぐIP通話回線における障害の有無を検出できるようになり、そのため、その通話を公衆交換電話網へ迂回させて発信することができるようになる。
さらに、請求項10〜13の発明によれば、IPネットワークの輻輳を回避し、または、音声情報パケットを優先転送することができるので、IP電話の通話品質の低下を抑制し、所定の通話品質を確保することができるようになる。
【0027】
以上、本発明によれば、IPネットワークに障害があっても、発信および着信ともに支障なく公衆交換電話網へ迂回させた通話が可能となる。また、音声情報パケットの優先転送により所定の通話品質を確保することができる。よって、固定電話並の高信頼性と通話品質を備えたIP電話を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図5を用いて詳しく説明する。
【0029】
図1は、第1の実施形態におけるIP電話ネットワークシステムの構成の例を示した図である。図1において、第1の実施形態におけるIP電話ネットワークシステムは、VoIP交換機10と、VoIP電話制御端末20と、ボタン電話機30と、IPネットワーク40とを備える。そして、その外側に公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)50が存在し、VoIP交換機10がその公衆交換電話網50と接続している。
【0030】
本実施形態においては、IPネットワーク40は、公衆のインターネットから切り離されたネットワークであり、光ファイバケーブルを用いた高速の光IPネットワークであるとする。そして、IPネットワーク40には、通常、一つのVoIP交換機10と多数のVoIP電話制御端末20が接続される。このような構成のもとに、以下、VoIP電話制御端末20およびVoIP交換機10について、さらに詳しく説明する。
【0031】
<VoIP電話制御端末20>
VoIP電話制御端末20は、VoIP回線制御部21、ボタン電話制御部22、通話障害検査情報送信部23、発信通話障害検知部24、PSTN接続部25および図示しないその他のブロックにより構成され、主たる機能として、PBXの機能とプロトコル変換処理機能とを備えている。ここで、通話障害検査情報送信部23は、請求項でいう通話障害検査情報送信手段であり、以下同様に、発信通話障害検知部24は、発信通話障害検知手段であり、PSTN接続部25は、公衆交換電話網接続手段である。
【0032】
ボタン電話制御部22は、このうちPBXの機能を実行するブロックである。ボタン電話制御部22には、例えば60回線の内線電話回線と、例えば6回線の外線電話回線の収容部が設けられ、その内線電話回線側にはボタン電話機30が接続され、外線電話回線側にはVoIP回線制御部21から出力される外線電話回線に相当する信号線が接続される。そして、ボタン電話制御部22は、内線電話回線同士、または、内線電話回線と外線電話回線との間の回線交換処理を行う。
【0033】
一方、VoIP回線制御部21は、プロトコルの変換処理を行うブロックである。VoIP回線制御部21には、ボタン電話制御部22から出力される外線電話回線に相当する信号線が接続されるとともに、図示しないメディアコンバータ(光信号と電気信号との変換を行う装置)を介してIPネットワーク40の光ファイバケーブルと接続される。このとき、ボタン電話制御部22とVoIP回線制御部21とをつなぐ外線電話回線に相当する信号の仕様は、従来のアナログ信号に基づくものであり、一方、IPネットワーク40における情報の伝送は、H.323、SIP(Session Initiation Protocol)、その他のIPプロトコルに従って行われる。
【0034】
そこで、VoIP回線制御部21は、ボタン電話制御部22に接続される外線電話回線に相当する信号とIPネットワーク40に接続される信号線との間における信号およびプロトコルの変換を実行する。すなわち、VoIP回線制御部21は、ボタン電話機30から発せられるアナログのダイヤル信号や音声信号を、ボタン電話制御部22を介して受信し、ディジタル信号に変換するとともに、所定のプロトコルに基づきパケット化する。そして、パケット化されたダイヤル信号のデータや音声信号のデータをIPネットワーク40へ送出する。また、VoIP回線制御部21は、IPネットワーク40から所定のプロトコルに従って入力されるパケット化されたダイヤル信号のデータや音声信号のデータをもとのアナログ信号に戻し、回線の信号としてボタン電話制御部22へ供給する。
【0035】
また、VoIP回線制御部21は、例えば6本の外線電話回線の通話を同時に制御することができる。その6本の外線電話回線の信号は、時間多重化(TDM:Time Division Multiplexing)され、1本の光ファイバケーブルによってIPネットワーク40と接続される。そこで、VoIP回線制御部21は、時間多重化処理も行う。
【0036】
VoIP電話制御端末20において、通話障害検査情報送信部23、発信通話障害検知部24およびPSTN接続部25は、IP通話回線の障害を検知するとともに、障害時の迂回通話路を形成する機能を実行するが、その詳細については後記する。なお、IP通話回線とは、VoIP交換機10と利用者のIP電話とをつなぐ電話回線をいう。ただし、本実施形態においては、VoIP電話制御端末20がPBXの機能を有しているので、IP通話回線は、VoIP交換機10からVoIP電話制御端末20までをつなぐ回線とする。
【0037】
<VoIP交換機10>
図1において、VoIP交換機10は、VoIP回線交換部12、IPネットワークインターフェース部13、PSTNインターフェース部11、通話障害検知部14、通話障害判定部15、通話転送部16、障害情報記憶部17および図示しないその他のブロックから構成される。ここで、通話障害検知部14は、請求項でいう通話障害検知手段であり、以下同様に、通話障害判定部15は、通話障害判定手段、通話転送部16は、通話転送手段、障害情報記憶部17は、障害情報記憶手段である。
【0038】
VoIP交換機10は、IPネットワーク40および公衆交換電話網50につながれ、IPネットワーク40につながる各VoIP電話制御端末20に割り当てられたIP通話回線相互間の通話の交換処理を行うとともに、IPネットワーク40につながる各VoIP電話制御端末20に割り当てられたIP通話回線と公衆交換電話網50につながる従来の固定電話の電話回線との間の通話の交換処理を行う。
【0039】
VoIP交換機10において、IPネットワークインターフェース部13は、VoIP電話制御端末20との間で所定のプロトコルに従いパケット化されたダイヤル信号のデータや音声信号のデータを受信し、VoIP回線交換部12に対して、通話の交換を要求する。VoIP回線交換部12は、通話の交換要求を受けると、ダイヤル信号の情報に基づき通話相手先のIPアドレスまたは公衆交換電話網50における電話番号を求める。そして、IPネットワークインターフェース部13またはPSTNインターフェース部11に対し、通話相手先のIPアドレスまたはダイヤル信号のデータを付して当該通話を通話相手先へ接続するように指示する。
【0040】
IPネットワークインターフェース部13は、通話の接続の指示を受けると、添付された通話相手先のIPアドレスに基づき、所定のプロトコルに従ってIPネットワーク40において通話先への通話経路を確立させ、音声データパケットの送受信等を制御する。また、同様に通話の接続の指示を受けると、PSTNインターフェース部11は、公衆交換電話網50における図示しない中継交換機に対してダイヤル信号の情報を送付し、通話の交換処理を要求する。そして、中継交換機からの公衆交換電話網50における経路確立の応答がされた場合には、中継交換機との間で通話データの送受信を行う。
【0041】
VoIP交換機10において、通話障害検知部14、通話障害判定部15、通話転送部16および障害情報記憶部17は、IP通話回線の障害を検知するとともに、障害時の迂回通話路を形成する機能を実行するが、その詳細については後記する。
【0042】
<通話着信時の通話障害迂回方法>
次に、図1に加え、図2〜図4を用いて、通話着信時の通話障害を迂回する方法について説明する。ここで、図2は、通話着信時に通話を迂回させるために、あらかじめ通話障害を検知しておく手順を示した図である。また、図3は、通話着信時に通話を迂回させるために、あらかじめ通話障害を検知した結果を記憶しておく障害記憶情報記憶部の構成を示した図である。また、図4は、あらかじめ通話障害を検知した結果に基づき、通話障害を迂回する手順を示した図である。
【0043】
図2において、VoIP交換機10は、初期処理として、まず、IP通話回線の時に通話を転送する転送先の公衆交換電話網50の電話番号を障害情報記憶部17に記憶する(ステップS10)。すなわち、図3に示すように、IP通話回線の電話番号それぞれに対応させて、公衆交換電話網50の電話番号が記憶される。この場合、VoIP電話制御端末20に複数のIP通話回線が接続されている場合には、そのすべてに公衆交換電話網50の同じ電話番号を対応付けておいてもよい。
【0044】
なお、障害情報記憶部17に記憶する公衆交換電話網50の電話番号は、例えば、利用者が所定のシーケンスでボタン電話機30からVoIP電話制御端末20へ入力し、VoIP電話制御端末20がその入力された電話番号を所定のプロトコルに従ってVoIP交換機10に送付するようにしておけばよい。
【0045】
ステップS10の処理が終わると、VoIP交換機10は、VoIP交換機10からVoIP電話制御端末20に到るIP通話回線の通話障害検知を開始する。その通話障害を検知するために、VoIP交換機10は、所定時間ごとにVoIP電話制御端末20から通話障害検査情報の送信を受ける。そして、VoIP交換機10は、所定時間以内にその通話障害検査情報を受信しなかった場合には、VoIP交換機10とVoIP電話制御端末20との間のIP通話回線またはVoIP電話制御端末20自身に障害があったものと判断する。
【0046】
なお、VoIP電話制御端末20が送信する通話障害検査情報は、VoIP電話制御端末20が通話障害検査のために送信したことを示す情報であればどのような情報であってもよいが、ここでは、通話障害検査情報は、その通話障害検査情報が有効である期限を示した有効期限の情報を含むものとする。従って、この場合には、VoIP交換機10は、有効期限の情報を含んだ通話障害検査情報を受信して、その有効期限内に次の新たな有効期限の情報を含んだ通話障害検査情報を受信しなかった場合には、IP通話回線に障害があったものと判断する。
【0047】
ステップS20とステップS21の手順は、VoIP電話制御端末20が所定時間ごとに通話障害検査情報を送信する手順を示したものである。VoIP電話制御端末20は、通話障害検査情報送信部23において、有効期限の情報を生成し、その有効期限の情報を通話障害検査情報に埋め込む。そして、VoIP交換機10に対して通話障害検査情報を送信する(ステップ20)。その後、その有効期限を越えない所定の時間が経過するのを待ち(ステップS21でNo)、その所定の時間が経過すると(ステップS21でYes)、再度、ステップS20とステップS21とを繰り返して行う。
【0048】
一方、ステップS11〜ステップS15の手順は、VoIP交換機10が通話障害を検知しておくための手順を示したものである。まず、VoIP交換機10の通話障害検知部14は、前に送られてきた通話障害検査情報に含まれていた有効期限が経過したか否かを判定する(ステップS11)。その判定の結果、有効期限をまだ経過していなかった場合には(ステップS11でNo)、有効期限を延長するための新たな通話障害検査情報を受信したか否かを判定する(ステップS12)。その判定の結果、新たな通話障害検査情報を受信していた場合には(ステップS12でYes)、通話障害フラグをリセットし(ステップS13)、その通話障害フラグを障害情報記憶部17に記憶する(ステップS15)。そして、ステップS11へ戻って、ステップS11以下の処理を繰り返し実行する。また、ステップS12における判定の結果、新たな通話障害検査情報を受信していなかった場合には(ステップS12でNo)、そのままステップS11へ戻って、ステップS11以下の処理を繰り返し実行する。
【0049】
一方、ステップS11の有効期限の判定において、有効期限をすでに経過していた場合には(ステップS11でYes)、通話障害フラグをセットし(ステップS14)、その通話障害フラグを障害情報記憶部17に記憶する(ステップS15)。そして、ステップS11へ戻って、ステップS11以下の処理を繰り返し実行する。
なお、ステップ15においては、障害情報記憶部17には、通話障害フラグがリセットされている場合には、“0”を記憶し、通話障害フラグがセットされている場合には、“1”を記憶する。
【0050】
以上の手順は、VoIP交換機10と各VoIP電話制御端末20とを接続するIP通話回線すべてについて実行される。それによって、所定時間ごとにVoIP交換機10と各VoIP電話制御端末20とを接続するIP通話回線すべてについて通話障害の有無の判定が行われたことになり、その結果がIP通話回線の電話番号に対応させた通話障害フラグとして障害情報記憶部17に記憶されたことになる。
【0051】
次に、図1および図4により、VoIP交換機10が通話を接続しようとしたIP通話回線に通話障害があったときに、その通話を迂回させる手順について説明する。
【0052】
VoIP回線交換部12は、IPネットワークインターフェース部13またはPSTNインターフェース部11を介して通話の交換処理要求を受けると、交換処理要求に添付されたダイヤル信号の情報に基づき、その交換処理要求で接続予定のIP通話回線の電話番号を抽出する(ステップS30)。そして、通話障害判定部15は、その抽出された接続予定のIP通話回線の電話番号に基づき、障害情報記憶部17を参照し、そのIP通話回線の電話番号に対応付けられた通話障害フラグを読み出す(ステップS31)。さらに、通話障害判定部15は、読み出した通話障害フラグの値により、通話障害の有無を判定する(ステップS32)。
【0053】
ステップS32における判定の結果、通話障害があると判定された場合には(ステップS32でYes)、通話障害判定部15は、再度、障害情報記憶部17を参照し、当該交換処理対象のIP通話回線の電話番号に対応付けられた公衆交換電話網の電話番号を読み出す(ステップS33)。すると、通話転送部16は、交換処理対象の通話を、通話障害判定部15によって読み出された公衆交換電話網の電話番号の公衆交換電話回線へ転送する(ステップS34)。一方、ステップS32における判定の結果、通話障害がないと判定された場合には(ステップS32でNo)、通常の交換処理が行われる(ステップS35)。すなわち、通話は、当初に接続予定とされたIP通話回線に接続される。
【0054】
以上、図2および図4に示した手順を実行することによって、VoIP交換機10は、交換対象の通話を接続しようとしているIP通話回線に通話障害があるか否かを検知することができ、通話障害があった場合には、その通話を公衆交換電話網50の公衆交換電話回線へ転送することができる。
【0055】
ここで、転送先の公衆交換電話回線は、通話障害とされたIP通話回線がつながったVoIP電話制御端末20に設けられたPSTN接続部25に接続されるようにする。これを実現するには、図3の障害情報記憶部17において、IP通話回線の電話番号に対応する転送先の公衆交換電話網の電話番号として、PSTN接続部25に接続された公衆交換電話回線の電話番号を記憶するようにすればよい。そして、さらに、PSTN接続部25に独立した固定電話機(図示せず)を接続しておくとよい。あるいは、PSTN接続部25をボタン電話制御部22の外線相当の信号に接続する。このようにしておけば、利用者は、自分のVoIP電話制御端末20につながるIP通話回線に障害があっても、そのIP通話回線に着信することになっている通話は、公衆交換電話網50を介して、PSTN接続部25に接続された公衆交換電話回線に着信するので、独立の固定電話機またはボタン電話機30によって通話することができる。
【0056】
<通話発信時の通話障害迂回方法>
図5は、ボタン電話機30から通話を発信した場合に通話障害があったとき、通話障害を迂回する手順を示した図である。この場合には、通話を発信したときに、VoIP交換機10から応答があるか否かによりIP通話回線の通話障害の有無を判定する。
【0057】
まず、VoIP電話制御端末20(図1参照)は、VoIP交換機10に対し、ボタン電話機30から発信されるダイヤル信号等の接続要求情報を所定のプロトコルに従って送信する(ステップS51)。そして、発信通話障害検知部24は、その送信に対する応答があるか否かを判定する(ステップS52)。その結果、VoIP交換機10から何らかの応答があった場合には(ステップS52でYes)、通常のIP通話回線の接続処理をVoIP交換機10に対し要求する(ステップS57)。
【0058】
一方、ステップS52において、VoIP交換機10から応答がなかった場合には(ステップS52でNo)、ボタン電話制御部22の外線相当の出力回線を、PSTN接続部25へ接続する(ステップS53)。なお、このとき、PSTN接続部25へは、公衆交換電話網50からの公衆交換電話回線が少なくとも1本接続されておくものとする。そして、ボタン電話制御部22は、再度、同じ電話番号で接続要求を発信する(ステップS54)。すると、この場合には、通話の回線がPSTN接続部25へ強制接続されているので、発信される接続要求は、公衆交換電話網50側に発信される。従って、接続要求が受け入れられると、公衆交換電話網50経由で通話が行われる(ステップS55)。そして、通話が完了すると、ボタン電話制御部22の外線相当の出力回線は、元に戻され、VoIP回線制御部21へ接続される(ステップS56)。
【0059】
以上の手順により、ボタン電話機30から通話が発信されたとき、VoIP電話制御端末20は、発信しようとしたIP通話回線の通話障害を検知することができ、また、通話障害が検知された場合には、利用者に余分な負担をかけることなく、発信する通話を公衆交換電話網50へ迂回させることができる。
【0060】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について図6〜図9を用いて詳しく説明する。
【0061】
図6は、第2の実施形態におけるIP電話ネットワークシステムの構成の例を示した図である。図6において、第2の実施形態におけるIP電話ネットワークシステムは、VoIP交換機10と、VoIP電話制御端末20aと、ボタン電話機30と、パソコン60と、IPネットワーク40とを備える。そして、その外側に公衆交換電話網50が存在し、VoIP交換機10がその公衆交換電話網50と接続している。
【0062】
なお、ここで、本実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、IPネットワーク40は、公衆のインターネットから切り離されたネットワークであり、光ファイバケーブルを用いた高速の光IPネットワークであるとする。そして、図6を含む図6以降の図において、図1と同じ符号を付した構成要素は、同じものを指し示しているものとし、その構成要素の説明を省略する。
【0063】
また、図6において、パソコン60は、必ずしもパソコンである必要はなく、種々のシステムを管理するサーバであっても、そのサーバの端末装置であってもよく、要は、IP電話以外のインターネットに接続される情報機器であればよい。
【0064】
<VoIP電話制御端末20a>
図6において、VoIP電話制御端末20aは、VoIP回線制御部21a、ボタン電話制御部22、VoIP通話パケット優先転送制御部26、ルータ27および図示しないその他のブロックにより構成される。すなわち、本実施形態におけるVoIP電話制御端末20aは、第1の実施形態におけるVoIP電話制御端末20(図1参照)にVoIP通話パケット優先転送制御部26およびルータ27が追加された構成となっている。なお、VoIP通話パケット優先転送制御部26は、請求項でいうVoIP通話情報優先出力手段に相当し、ルータ27は、請求項でいうルーティング制御手段に相当する。
【0065】
なお、本実施形態においては、VoIP電話制御端末20aは、第1の実施形態(図1参照)におけるVoIP電話制御端末20が含んでいる通話障害検査情報送信部23、発信通話障害検知部24およびPSTN接続部25を含まない構成としているが、それらを含む構成としても構わない。
【0066】
図6において、ルータ27は、通常、複数のパソコン60およびIPネットワーク40に接続され、複数のパソコン60とIPネットワーク40における情報転送制御およびその情報転送に係るルーティング制御を行う。本実施形態においては、ルータ27は、IPネットワーク40に直接接続されるのではなく、VoIP通話パケット優先転送制御部26を介して接続される。また、VoIP通話パケット優先転送制御部26は、IPネットワーク40、VoIP回線制御部21aおよびルータ27に接続され、IPネットワーク40とVoIP回線制御部21aまたはルータ27との間のIPパケットの転送制御を行う。その転送制御において、VoIP通話パケット優先転送制御部26は、VoIP回線制御部21aから送信されるIPパケットをルータ27から送信されるパケットよりも優先してIPネットワーク40へ転送する。
【0067】
<VoIP通話パケット優先転送制御部26>
次に、図7を用いてVoIP通話パケット優先転送制御部26の構成および機能についてさらに詳しく説明する。ここで、図7は、VoIP電話制御端末におけるVoIP通話パケット優先転送制御部の構成を示した図である。図7において、VoIP通話パケット優先転送制御部26は、VoIP通話パケット優先出力部261と、出力パケットキュー262と、優先転送指示情報付加部263と、VoIP通話回線接続ポート264と、インターネット回線接続ポート265とを含んで構成される。
【0068】
なお、優先転送指示情報付加部263は、請求項でいう優先転送指示情報付加手段に相当する。また、図7においては、説明の都合上、VoIP通話パケットの優先転送制御に関係しないブロック、すなわち、IPネットワーク40側からVoIP回線制御部21aおよびルータ27側へ入力されるIPパケットの転送制御に係るブロックの記載を省略している。
【0069】
図7において、VoIP通話回線接続ポート264は、VoIP回線制御部21aから出力される信号を受け取る端子であり、この端子を介してIP電話の通話に係る音声情報や制御情報のIPパケットが転送される。また、インターネット回線接続ポート265は、ルータ27からの出力信号が接続され、この端子を介してパソコン60で取り扱われる種々の情報のIPパケットが転送される。
【0070】
次に、優先転送指示情報付加部263は、VoIP回線制御部21aからVoIP通話回線接続ポート264を介して転送されてくるIPパケットに最高の優先度の優先転送指示情報を付加する。ここで、優先転送指示情報は、次に説明するように、IPパケットのヘッダ部のTOS(Type of Service)フィールドに設定される。
【0071】
図8は、IPv4(Internet Protocol Version 4)のヘッダ部の先頭部分を示した図である。IPv4のヘッダ部の先頭部分81は、4ビットのバージョン情報(version)、4ビットのヘッダ長情報(header length)に続いて8ビットのTOSフィールド82が確保されている。TOSフィールド82には、もともと、IPパケットの属性を表わす情報が収容され、その先頭3ビットのb1,b2,b3は、特に、precedenceと呼ばれ、IPパケットの重要度または優先度を表わす情報を収容する取り決めがなされていた。しかしながら、従来においては、TOSフィールドは、その使用方法や運用方法は、定義があいまい、または、閉じたシステムだけで使用することを仮定したため、現実に利用されることは少なかった。
【0072】
そこで、本実施形態においては、TOSフィールド82の先頭3ビットのb1,b2,b3(すなわち、precedence)を優先転送指示情報83として利用する。そして、優先転送指示情報83は、優先度を表わす3ビットの情報、つまり、0〜7までの数値であるとする。この場合、数値が大きいものほど優先度が高いものとし、数値7(2進数で“111”)が最高の優先度であるとする。
そして、これらの取り決めは、本実施形態のIP電話ネットワークシステム全体で使用される共通の取り決めであるとする。
【0073】
次に、図7に戻って、VoIP通話パケット優先転送制御部26についての説明を続ける。
優先転送指示情報付加部263は、図8に示した優先転送指示情報83の定義に従い、VoIP回線制御部21aからVoIP通話回線接続ポート264を介して転送されてきたIPパケットのTOSフィールドの先頭3ビットb1,b2,b3に2進数“111”を設定する。
【0074】
一方、インターネット回線接続ポート265側には、優先転送指示情報付加部263が設けられていないので、パソコン60からインターネット回線接続ポート265を介して転送されてくるIPパケットには、TOSフィールドに対する情報の設定操作等は行われない。従って、この場合には、TOSフィールドの値は、パソコン60において最初に設定された値がそのまま保存される。
【0075】
以上のようにして、VoIP回線制御部21aからVoIP通話回線接続ポート264を介して転送されてきたIPパケットには、優先転送指示情報83として2進数“111”が設定され、パソコン60からインターネット回線接続ポート265を介して転送されてきたIPパケットにおいては、優先転送指示情報83は、パソコン60において設定されたそのまま値のとなる。
【0076】
次に、VoIP回線制御部21aからVoIP通話回線接続ポート264を介して転送されてきたIPパケット、および、パソコン60からインターネット回線接続ポート265を介して転送されてきたIPパケットは、それぞれの出力パケットキュー262へ格納される。ここで、出力パケットキュー262のそれぞれは、通常、FIFO(First in First out)方式のメモリによって構成される。
【0077】
VoIP通話パケット優先出力部261は、出力すべきIPパケットが出力パケットキュー262のいずれかに格納されると、直ちに、それを読み出して、IPネットワーク40へ出力する。しかし、複数の出力パケットキュー262に同時にIPパケットが格納されたり、プロトコル通信の処理遅れなどにより出力パケットキュー262からの読み出しが遅れたりすると、出力すべきIPパケットが複数の出力パケットキュー262に滞留することになる。この場合には、VoIP通話パケット優先出力部261は、各出力パケットキュー262に付された所定の優先順位に従って、滞留しているIPパケットを読み出し、IPネットワーク40へ出力する。
【0078】
本実施形態においては、VoIP通話回線接続ポート264に接続された出力パケットキュー262の読み出し優先順位を、インターネット回線接続ポート265に接続された出力パケットキュー262の読み出し順位よりも高く設定する。この場合、優先順位は、IPパケットに付された優先転送指示情報83に基づき設定されるのではなく、出力パケットキュー262が接続されている入力側の接続ポートが、VoIP通話回線接続ポート264か、インターネット回線接続ポート265かによって設定される。このようにすることにより、IPパケットに付された優先転送指示情報83を読み出してその優先度を判定する必要がないので、その分、VoIP通話パケット優先出力部261の構成が簡単化される。
【0079】
以上のように、VoIP通話パケット優先出力部261は、VoIP通話回線接続ポート264に接続された出力パケットキュー262に滞留したIPパケットを、インターネット回線接続ポート265に接続された出力パケットキュー262に滞留したIPパケットよりも優先して読み出し、IPネットワーク40へ出力する。すなわち、VoIP通話パケット優先転送制御部26は、優先転送指示情報83によりVoIP通話回線接続ポート264を介して入力されるIPパケットに優先転送指示情報83を最高の優先度に設定するとともに、VoIP通話パケット優先出力部261により、VoIP通話回線接続ポート264を介して入力されたIPパケットを、インターネット回線接続ポート265を介して入力されたIPパケットよりも優先出力する制御を行っている。
【0080】
なお、本実施形態を示した図7においては、VoIP通話パケット優先転送制御部26は、インターネット回線接続ポート265を1つしか備えていないが、複数のインターネット回線接続ポート265を備える構成であっても構わない。
【0081】
また、同一レベルの優先度が設定された複数の出力パケットキュー262に出力すべきIPパケットが滞留した場合には、例えば、公知のFIFO方式やラウンドロビン方式などによって選択された出力パケットキュー262からIPパケットを読み出すようにすればよい。
【0082】
また、本実施形態においては、パソコン60は、IPパケットのTOSフィールドの優先転送指示情報83に優先度を付すことを想定していないが、パソコン60が送信する情報の種類に応じて0〜7までの優先度が付されていてもよい。ただし、その優先度が7であっても、VoIP通話パケット優先出力部261は、その情報に基づく優先制御を行っていないので、VoIP通話パケット優先出力部261においては、特に、優先されて出力されることはない。
【0083】
以上のように、本実施形態においては、VoIP回線制御部21aから転送されてくるIP電話の通話に係るIPパケットを、パソコン60から転送されてくる各種情報のIPパケットに優先して転送する。そのため、パソコン60から転送されてくるIPパケットの量が多くなった場合にでも、IP電話の通話に係るIPパケットの送信が遅延することはなく、IPパケットの送信遅延に伴う通話品質の低下を防止することができる。
【0084】
本実施形態においては、通話品質の低下を防止するためにもう1つの対策を実施している。その対策とは、図6において、VoIP回線制御部21aが同時処理可能なIP通話回線数を最大32に制限することである。すなわち、1つのVoIP回線制御部21aにおいては、通話に係るIPパケットを同時に発生させる発生源の数は、32以下に押さえられる。
【0085】
図9は、VoIP回線制御部が同時処理可能なIP通話回線数の最大値を32とした根拠を説明するための図である。図9は、図6と同じIP電話ネットワークシステムの構成を示した図であるが、図9では、図6で図示が省略されたアクセスポイントノード45が示されている。そのアクセスポイントノード45は、複数のVoIP電話制御端末20aとアクセス回線と呼ばれる光ファイバケーブルによって接続されるとともに、同様の光ファイバケーブルによってIPネットワーク40に接続されている。
【0086】
本実施形態においては、アクセスポイントノード45は、設計値として100台のVoIP電話制御端末20aに接続されるものとする。すなわち、アクセスポイントノード45は、100本のアクセス回線の光ファイバケーブルを1本の光ファイバにまとめてIPネットワーク40に接続される形となる。そこで、ここでは、1つのアクセスポイントノード45に接続されたアクセス回線の数をNとすれば、1/Nを回線集線率と呼ぶことにする。従って、本実施形態では、回線集線率は、1/100である。
【0087】
ここで、本実施形態におけるアクセス回線のアクセス回線帯域は、100Mbpsであり、1つのIP通話回線が使用する使用帯域は、85kbpsである。従って、1つの光ファイバケーブルの回線容量は、1176(=100Mbps/85kbps)回線である。一方、アクセスポイントノード45がIPネットワーク40に接続される光ファイバケーブルの回線帯域は、アクセス回線と同じ100Mbpsであるので、回線集線率が1/100の場合、1台のVoIP電話制御端末20aのアクセス回線に割り当てられる回線容量は、11.76回線になる。
【0088】
ところで、通話回線は、その100%が通話に占有されるわけではない。一般に、通話回線が通話(呼)により占有される割合は、呼集中率と呼ばれる。この呼集中率が37%を超えると、その回線に対して新しい呼が形成できない、つまり、電話がかかりにくくなる等の障害が増加することが知られている。逆にいえば、呼集中率が37%になるまでは、その回線を使用することができることを意味する。
【0089】
そこで、1台のVoIP電話制御端末20aのアクセス回線に割り当てられる回線容量が11.76回線であり、呼集中率が37%である場合には、そのアクセス回線の回線容量は、実質的に31.8回線(=11.76/0.37)になる。従って、1台のVoIP電話制御端末20aが同時に処理可能なIP通話回線の最大数を32と定めることができる。
【0090】
従って、1台のVoIP電話制御端末20aが同時に処理可能なIP通話回線の最大数を32の場合には、100台のVoIP電話制御端末20aすべてが32回線の通話を同時に処理しても、アクセスポイントノード45とIPネットワーク40とを接続するファイバケーブルにおいて、通話に係るIPパケットが溢れることはない。そのため、通話に係るIPパケットの送信遅延が、新たに生じることはなく、所定の通話品質を確保することができる。
【0091】
なお、以上の実施形態において説明した数値を記号で次のように一般化することができる。すなわち、VoIP電話制御端末20aにおける同時に処理可能なIP通話回線の最大数をM、アクセスポイントノード45とIPネットワーク40とを接続する通信回線の通話容量をC、アクセスポイントノード45における回線集線率をp、呼集中率をsとすれば、Mは、M=C×p/sの式で与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるIP電話ネットワークシステムの構成の例を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態において、通話着信時に通話を迂回させるために、あらかじめ通話障害を検知しておく手順を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態において、通話着信時に通話を迂回させるために、あらかじめ通話障害を検知した結果を記憶しておく障害記憶情報記憶部の構成を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において、あらかじめ通話障害を検知した結果に基づき、通話障害を迂回する手順を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において、ボタン電話から通話を発信した場合に通話障害があったとき、通話障害を迂回する手順を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるIP電話ネットワークシステムの構成の例を示した図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるVoIP電話制御端末のVoIP通話パケット優先転送制御部の構成を示した図である。
【図8】IPv4のヘッダ部の先頭部分を示した図である。
【図9】本発明の第2の実施形態において、VoIP回線制御部が同時処理可能なIP通話回線数の最大値を32とした根拠を説明するための図である。
【符号の説明】
【0093】
10 VoIP交換機
11 PSTNインターフェース部
12 VoIP回線交換部
13 IPネットワークインターフェース部
14 通話障害検知部
15 通話障害判定部
16 通話転送部
17 障害情報記憶部
20,20a VoIP電話制御端末
21,21a VoIP回線制御部
22 ボタン電話制御部
23 通話障害検査情報送信部
24 発信通話障害検知部
25 PSTN接続部
30 ボタン電話機
40 IPネットワーク
45 アクセスポイントノード
50 公衆交換電話網
60 パソコン
82 TOSフィールド
83 優先転送指示情報
261 VoIP通話パケット優先出力部
262 出力パケットキュー
263 優先転送指示情報付加部
264 VoIP通話回線接続ポート
265 インターネット回線接続ポート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークと、前記IPネットワークおよびボタン電話機に接続され、前記ボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、前記IPネットワークを介して前記IP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えたIP電話ネットワークシステムにおいて、
前記VoIP電話制御端末が
所定の時間ごとに、前記VoIP交換機に対し、前記VoIP交換機と当該VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害の有無を検知させるための通話障害検査情報を送信する通話障害検査情報送信手段
を備え、
前記VoIP交換機が
前記VoIP電話制御端末から送信される通話障害検査情報に基づき、当該VoIP交換機と前記VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害を検知し、その検知結果に基づき、前記IP通話回線の通話障害有無を示す通話障害フラグを設定する通話障害検知手段と、
前記通話障害検知手段により設定された前記通話障害フラグ、および、前記IP通話回線に通話障害があったときに前記IP通話回線への通話を転送するための転送先の公衆交換電話網の電話番号を、前記IP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けて記憶する障害情報記憶手段と、
当該VoIP交換機に対し通話の交換処理要求があったとき、前記障害情報記憶手段を参照して、前記交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する通話障害フラグを読み出し、読み出された通話障害フラグにより前記接続予定のIP通話回線に通話障害があるか否かを判定する通話障害判定手段と、
前記通話障害判定手段により前記接続予定のIP通話回線に通話障害があると判定されたとき、前記障害情報記憶手段を参照して、前記交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する公衆交換電話網の電話番号を読み出し、読み出された公衆交換電話網の電話番号をもつ公衆交換電話回線へ前記交換処理要求のあった通話を転送する通話転送手段と
を備えたことを特徴とするIP電話ネットワークシステム。
【請求項2】
前記VoIP電話制御端末は、さらに、公衆交換電話網に接続された公衆交換電話網接続手段を備え、
前記VoIP交換機における前記障害情報記憶手段が前記VoIP電話制御端末に接続されたIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応して記憶する前記転送先の公衆交換電話網の電話番号は、当該VoIP電話制御端末の前記公衆交換電話網接続手段に接続された公衆交換電話回線に割り当てられた電話番号であること
を特徴とする請求項1に記載のIP電話ネットワークシステム。
【請求項3】
IPネットワークと、前記IPネットワークおよびボタン電話機に接続され、前記ボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、前記IPネットワークを介して前記IP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えたIP電話ネットワークシステムにおいて実行される迂回通話方法であって、
前記VoIP電話制御端末が、
所定の時間ごとに、前記VoIP交換機に対し、前記VoIP交換機と当該VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害の有無を検知させるための通話障害検査情報を送信するステップ
を実行し、
前記VoIP交換機が、
当該VoIP交換機から前記VoIP電話制御端末に到るIP通話回線ごとに、前記IP通話回線に通話障害があったときに前記IP通話回線への通話を転送するための転送先の公衆交換電話網の電話番号を、前記IP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けて、前記VoIP交換機に設けられた障害情報記憶手段に記憶するステップと、
前記VoIP電話制御端末から送信される通話障害検査情報に基づき、当該VoIP交換機と前記VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害を検知し、その検知結果に基づき、前記IP通話回線の通話障害有無を示す通話障害フラグを設定するステップと、
前記通話障害検知手段により設定された前記通話障害フラグを、前記IP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けて前記障害情報記憶手段に記憶するステップと、
当該VoIP交換機に対し通話の交換処理要求があったとき、前記障害情報記憶手段を参照して、前記交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する通話障害フラグを読み出し、読み出された通話障害フラグにより前記接続予定のIP通話回線に通話障害があるか否かを判定するステップと、
前記通話障害判定手段により前記接続予定のIP通話回線に通話障害があると判定されたとき、前記障害情報記憶手段を参照して、前記交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する公衆交換電話網の電話番号を読み出し、読み出された公衆交換電話網の電話番号をもつ公衆交換電話回線へ前記交換処理要求のあった通話を転送するステップと
を実行することを特徴とする迂回通話方法。
【請求項4】
IPネットワークと、前記IPネットワークおよびボタン電話機に接続され、前記ボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、前記IPネットワークを介して前記IP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えたIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP交換機であって、
前記VoIP電話制御端末から送信される通話障害検査情報に基づき、当該VoIP交換機と前記VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害を検知し、その検知結果に基づき、前記IP通話回線の通話障害有無を示す通話障害フラグを設定する通話障害検知手段と、
前記通話障害検知手段により設定された前記通話障害フラグ、および、前記IP通話回線に通話障害があったときに前記IP通話回線への通話を転送するための転送先の公衆交換電話網の電話番号を、前記IP通話回線に割り当てられた電話番号に対応付けて記憶する障害情報記憶手段と、
当該VoIP交換機に対し通話の交換処理要求があったとき、前記障害情報記憶手段を参照して、前記交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する通話障害フラグを読み出し、読み出された通話障害フラグにより前記接続予定のIP通話回線に通話障害があるか否かを判定する通話障害判定手段と、
前記通話障害判定手段により前記接続予定のIP通話回線に通話障害があると判定されたとき、前記障害情報記憶手段を参照して、前記交換処理要求における接続予定のIP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する公衆交換電話網の電話番号を読み出し、読み出された公衆交換電話網の電話番号をもつ公衆交換電話回線へ前記交換処理要求のあった通話を転送する通話転送手段と
を備えたことを特徴とするIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP交換機。
【請求項5】
前記通話障害検知手段は、前記VoIP電話制御端末から送信される通話障害検査情報に含まれる有効期限情報を受信し、
前記有効期限情報が示す有効期限内に次の有効期限情報を含んだ通話障害検査情報を受信しなかった場合には、当該VoIP交換機と前記VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線に通話障害があると判断して、前記通話障害フラグ情報記憶手段における前記IP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する前記通話障害フラグに「通話障害あり」を示す情報を設定し、
前記有効期限情報が示す有効期限内に次の有効期限情報を含んだ通話障害検査情報を受信した場合には、当該VoIP交換機と前記VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線に通話障害がないと判断して、前記通話障害フラグ情報記憶手段における前記IP通話回線に割り当てられた電話番号に対応する前記通話障害フラグに「通話障害なし」を示す情報を設定すること
を特徴とする請求項4に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP交換機。
【請求項6】
IPネットワークと、前記IPネットワークおよびボタン電話機に接続され、前記ボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、前記IPネットワークを介して前記IP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えたIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末であって、
所定の時間ごとに、前記VoIP交換機に対し、前記VoIP交換機と当該VoIP電話制御端末とをつなぐIP通話回線の通話障害の有無を検知させるための通話障害検査情報を送信する通話障害検査情報送信手段を
備えたことを特徴とするIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項7】
当該VoIP電話制御端末から発信する情報に対する前記VoIP交換機からの応答情報に基づき、前記VoIP交換機と当該IP電話制御端末とをつなぐIP通話回線における通話障害を検知する発信通話障害検知手段
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項8】
前記ボタン電話機と前記公衆交換電話網とを接続した公衆交換電話網接続手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項9】
前記発信通話障害検知手段により通話障害が検出された場合には、前記ボタン電話機から発信される通話を、前記公衆交換電話網接続手段を介して前記公衆交換電話網へ迂回接続することを特徴とする請求項8に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項10】
IPネットワークと、前記IPネットワーク、ボタン電話機およびパソコンに接続され、前記ボタン電話機を制御するVoIP電話制御端末と、前記IPネットワークを介して前記IP電話制御端末に接続されるとともに公衆交換電話網に接続され、通話の交換処理を行うVoIP交換機とを備えたIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末であって、
前記ボタン電話機と前記IPネットワークとの間にあって、電話の通話に係る音声信号および制御信号のプロトコルの変換および制御を行うVoIP回線制御手段と、
前記パソコンに接続され、前記パソコンと前記IPネットワークとの間にあって転送される情報のルーティング制御を行うルーティング制御手段と、
前記IPネットワークと前記VoIP回線制御手段または前記ルーティング制御手段との間にあって、前記VoIP回線制御手段から入力される情報に優先転送制御を行うことを示す優先転送指示情報を付加するとともに、前記VoIP回線制御手段から入力される情報を前記ルーティング制御手段から入力される情報に優先させて前記IPネットワークへ出力するVoIP通話情報優先出力手段と
を備えたことを特徴とするIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項11】
請求項10に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末において、前記VoIP通話情報優先出力手段は、
前記VoIP回線制御手段に接続されるか、前記ルーティング制御手段に接続されるかがあらかじめ設定された複数の接続端子を備え、
前記VoIP回線制御手段に接続されることが設定された接続端子から入力された情報を、前記ルーティング制御手段に接続されることが設定された接続端子から入力された情報に優先させて前記IPネットワークへ出力すること
を特徴とするIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末において、前記VoIP通話情報優先出力手段は、
前記VoIP回線制御手段に接続されるか、前記ルーティング制御手段に接続されるかがあらかじめ設定された複数の接続端子を備え、
前記VoIP回線制御手段に接続されることが設定された接続端子については、その接続端子から入力される情報に前記優先転送指示情報を付加する優先転送指示情報付加手段を設けること
を特徴とするIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。
【請求項13】
請求項10ないし請求項12のいずれかの一項に記載のIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末において、
前記VoIP回線制御手段が同時に処理するIP通話回線数は、32回線以下であること
を特徴とするIP電話ネットワークシステムにおけるVoIP電話制御端末。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−14071(P2006−14071A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190092(P2004−190092)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(503041568)株式会社フォーバルテレコム (3)
【出願人】(501429335)株式会社 メディア (1)
【Fターム(参考)】