説明

ITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末、同粉末の製造方法、ITO膜形成用焼結体スパッタリングターゲット及び同ターゲットの製造方法

【課題】ITO薄膜形成に好適な高密度化と成分の均一性に優れた焼結体を得ることができる酸化錫粉末及び該粉末を用いて焼結したITO膜形成用スパッタリングターゲットを提供するものであり、これによってITO薄膜形成時に発生するノジュール等やそれに伴う薄膜の品質の低下を抑制できるITO膜形成用酸化錫−酸化インジウムターゲットを低コストで提供する。
【解決手段】粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜1.0μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲にあることを特徴とするITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末及びITO膜形成に好適な焼結体スパッタリングターゲット並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO(インジウム−錫の複合酸化物)膜は液晶ディスプレーを中心とする表示デバイスの透明電極(膜)として広く使用されている。
このITO膜を形成する方法として、真空蒸着法やスパッタリング法など、一般に物理蒸着法と言われている手段によって行われるのが普通である。特に、操作性や皮膜の安定性からマグネトロンスパッタリング法を用いて形成することが多い。
【0003】
スパッタリング法による膜の形成は、陰極に設置したターゲットにArイオンなどの正イオンを物理的に衝突させ、その衝突エネルギーでターゲットを構成する材料を放出させて、対面している陽極側の基板にターゲット材料とほぼ同組成の膜を積層することによって行われる。
スパッタリング法による被覆法は処理時間や供給電力等を調節することによって、安定した成膜速度でオングストローム単位の薄い膜から数十μmの厚い膜まで形成できるという特徴を有している。
【0004】
ITO膜を形成する場合に特に問題となるのは、ITOターゲットのエロージョン部やその周辺にノジュールと呼ばれる突起物が発生する事である。このノジュールが発生するとスパッタレートの低下や異常放電(マイクロアーキング)を引き起こし、著しく生産性を低下させる。
また、ノジュールや異常放電に起因して、スパッタチャンバ内に粗大化した粒子(パーティクル)が浮遊するようになり、これが生成した薄膜に再付着して薄膜の欠陥(ピンホール)や突起物の原因となり、膜の品質が低下するという問題が発生する。
【0005】
ノジュールの発生を抑える対策としては、一般的にターゲットの密度を上げ、ターゲット中の空孔(ポア)を減少させることが知られている。
また、ターゲット焼結体の原料粉末となる酸化インジウムと酸化錫を微細化し、それぞれの分散性を上げることにより、ターゲット中の組成のばらつきを減少させることが効果的である。特に酸化錫の粒が粗大であると、混合した酸化インジウムに十分に固溶できず、焼結体中に酸化錫の塊として存在するため、スパッタの際にノジュールの起点となってしまう。また、それらは、焼結体中の空孔の原因となり焼結体の高密度化を阻害する要因となる。
【0006】
酸化錫粉末を微細化するためには、原料粉を機械的に粉砕する方法が最も簡便かつ低コストである。粉砕装置として一般に知られているものとしては、原料の相互衝突又はライナーに衝突させて粉砕するジェットミル、粉砕メディアを使用してメディア間若しくはライナー間との摩砕によって粉砕するビーズミル等がある。しかし、ジェットミル法では、酸化錫粉のように固く凝集性の強い原料をサブミクロン領域の粒径まで粉砕するためには、パス回数の増大など、極端な処理量の低下を招きコスト的に不利となる。
【0007】
このようなことから、ITOターゲットの焼結用粉末はメディア攪拌型の粉砕機を使用することが好ましく、原料の凝集を制御するのに容易な湿式のビーズミルが最適である。
このビーズミル粉砕機において粉砕動力又はパス回数を増すと、より微粉化するが、余り強すぎると粉砕量の制御が難しくなり、また弱すぎるとミル内のビーズとスラリーの動きが悪くなり、粉砕効率が著しく低下するため、適度な強さに制御して粉砕を行うことが要求される。
【0008】
ITOターゲットの原料粉である酸化インジウム粉については、粉砕が容易であり特に問題となることはないが、酸化錫のように固く、凝集性の強い粉は酸化インジウム粉に比べて粉砕が難しくなる。したがって、原料粉としては特に酸化錫の粉砕が問題であり、これをコントロールすることが必要となる。
酸化錫の粉砕に際しては、通常ならば粉砕動力又はパス回数を増すことによって、より細かく粉砕ができると考えられるが、粉砕動力又はパス回数を増すことによる問題以外に、ミル粉砕機内のライナーや硬質ビーズ材料等が酸化錫粉末中にコンタミ(汚染物質)として混入してしまう問題がある。
【0009】
したがって、細粒化した粉を用いて焼結することによる高密度化と細粒化に伴う焼結材料の汚染の問題は相互に矛盾する問題であり、高密度化を行うための最適な粉末が得られているとは言えないのが現状である。
以上のことから、ITO薄膜形成には、成分が均一でかつ高密度の焼結体ターゲットを得ることが必要であったが、これらの要求に満足できる最適な酸化錫粉末及び高密度の焼結体ターゲットが得られていないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の諸問題点の解決、特にITO薄膜形成に好適な高密度化と成分の均一性に優れた焼結体を得ることができる酸化錫粉末及び該粉末を用いて焼結したITO膜形成用スパッタリングターゲット並びにその製造方法を提供するものであり、これによってITO薄膜形成時に発生するノジュール等やそれに伴う薄膜の品質の低下を抑制できるITO膜形成用酸化錫−酸化インジウムターゲットを低コストで提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するための技術的な手段は、酸化錫粉末の粒径を厳密に管理するものであり、これによってITO透明導電膜等に好適なスパッタリングターゲットを得ることができるとの知見を得た。
この知見に基づき、本発明は
1)粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜1.0μmの範囲にあり、
かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲にあることを特徴とするITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末
2)粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜0.60μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が1.0μm以下の範囲にあることを特徴とするITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末
3)固形分65%以上の酸化錫粉末のスラリーを湿式ビーズミルにて粉砕することを特徴とする上記1)又は2)に記載のITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末の製造方法、を提供する。
【0012】
また、本願発明は、
4)粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜1.0μmの範囲にあり、
かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲にある酸化錫と酸化インジウム粉末を焼結したことを特徴とするITO膜形成用焼結体スパッタリングターゲット
5)粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜0.60μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が1.0μm以下の範囲にある酸化錫と酸化インジウム粉末を焼結したことを特徴とするITO膜形成用焼結体スパッタリングターゲット
6)7.12g/cm以上の密度を備えていることを特徴とする上記4)又は5)に記載のITO膜形成用スパッタリングターゲット
7)固形分65%以上の酸化錫粉末のスラリーを湿式ビーズミルにて粉砕した酸化錫粉末を用いて焼結することを特徴とする上記4)〜6)のそれぞれに記載のITO膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0013】
ITO薄膜形成に好適な高密度化と成分の均一性に優れた焼結体を得ることができるという著しい特徴を有し、これによってITOスパッタリング成膜が均一でない場合に生ずる品質の低下やノジュール等の異常突起物を抑制できるITO膜形成用酸化錫−酸化インジウムターゲットを低コストで得ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末を、粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜1.0μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲とし、好ましくは粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜0.60μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が1.0μm以下の範囲とする。
【0015】
通常(従来)の酸化錫粉末は、粒度分布から求めた積算体積頻度が50%の値=メジアン径が1.5〜2.5μm、粒度分布から求めた積算体積頻度が90%の値=90%粒径が5.0〜10.0μm程度の範囲であった。
上記酸化錫粉末は、酸化インジウム粉末と所定の割合で混合し、湿式ビーズミルにてメジアン径が0.5〜1.0μm程度まで粉砕を行っていた。しかし、混合粉中の酸化錫粉は十分に分散しておらず、一部は5〜10μm程度の粗大粒として存在していた。この様な酸化錫の粗大粒は酸化インジウムに十分に固溶できず、焼結体中の酸化錫塊又はポアの原因となるため、焼結体密度が十分に上がらず、均一かつ高密度の焼結体を得ることができなかった。
そして、このように焼結体ターゲットの成分が均一でなく、また十分な密度が得られていないために、スパッタリング成膜の際にばらつきを生じ、ITO膜の品質の低下を招くという問題があった。
【0016】
この原因を究明した結果、上記の酸化錫粉末の粒径が重要であり、原料に含まれる粗大粒が焼結体の密度を低下させていることに着目し、酸化錫粉末の粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜1.0μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲とし、好ましくは粒度分布から求めたメジアン径が0.40〜0.60μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が1.0μm以下の範囲とすることにより、高密度、かつ高品質の焼結体を得ることに成功した。
【0017】
本発明の上記粉末を使用することによって、ITOスパッタリングターゲットに好適な密度7.12g/cm以上、さらには7.13g/cm以上の高密度を備えた焼結体を得ることができる。
粉砕の際、酸化錫の粒径の調整は、原料粉の選択、粉砕動力の調整、パス回数、粉砕ビーズの径や材質の調整、酸化錫粉末スラリーの固形分の調整によって行うが、上記の条件が達成できるように適宜コントロールすることによって行うことができる。
粉砕メディアとしてジルコニアビーズを使用するが、ジルコニウムのコンタミの問題から、固形分65%以上の酸化錫粉末スラリーを使用することにより、コンタミの問題を極力抑制できる。これによって、無理のない粉砕が可能であり、優れた焼結性を持つ焼結粉末を得ることができる。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで1例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0019】
(実施例1)
粒度分布から求めたメジアン径が2.0μm、90%粒径が3.50μm、BET比表面積が4.0m/gの酸化錫粉を純水に混合し固形分65%のスラリーを作製した。なお、粒度分布測定はレーザー回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所製LA-920)、BET比表面積は連続流動式表面積計(堀場製作所製SA-6200)を使用した。この時、純水中の酸化錫粉を分散させるため、アンモニア水を添加してスラリーのpHを9.0に調整した。
【0020】
次に、作製したスラリーをビーズミルにて粉砕し、粒度分布から求めたメジアン径が1.0μm、90%粒径が2.0μm、BET比表面積が6.0m/gまで粉砕した。この時粉砕ビーズは耐磨耗性を考慮してジルコニアビーズ(YTZ)を使用した。上記により粉砕した酸化錫スラリーと、粒度分布から求めたメジアン径が2.0μm、90%粒径が3.0μm、BET比表面積が8.0m/gの酸化インジウム粉を固形分重量比率で酸化錫1:酸化インジウム9となるよう純水に混合し、固形分50%のスラリーを作製した。
【0021】
次に、作製した酸化錫、酸化インジウム混合スラリーをビーズミルにて、粉砕・混合し、粒度分布から求めたメジアン径が0.80μm、90%粒径が1.50μm、BET比表面積が10m/gまで粉砕した。
次に、この粉砕スラリーにバインダーを加え、スプレードライヤーにて造粒・乾燥した。この乾燥粉末を金型に充填した後、油圧プレスにて1000kgf/cmの圧力で成形後、さらに冷間等方静水圧プレス(CIP)にて1500kgf/cmの圧力で成形して、密度が4.0g/ccの成形体を得た。
次に、該成形体を焼結温度1550°Cで4時間、酸素雰囲気焼結した結果、得られた焼結体の密度はアルキメデス法で7.128g/cmと高密度の焼結体が得られた。但し、該成形体を焼結温度1500°Cで焼結した場合には、密度7.097g/cmにしか達しなかった。
【0022】
(実施例2)
上記の実施例1と同一の粉砕条件にて、粒度分布から求めたメジアン径が0.5μm、90%粒径が0.80μm、BET比表面積が7.0m/gまで粉砕した。
次に、粉砕した酸化錫スラリーと、粒度分布から求めたメジアン径が2.0μm、90%粒径が3.0μm、BET比表面積が8.0m/gの酸化インジウム粉とを純水に混合し、実施例1と同様の方法でメジアン径が0.80μm、90%粒径が1.50μm、BET比表面積が10m/gまで粉砕した。
【0023】
該粉砕スラリーを実施例1と同様に造粒・乾燥した。次に得られた粉末を金型に充填した後、油圧プレスにて1000kgf/cmの圧力で成形後、さらに冷間等方静水圧プレス(CIP)にて1500kgf/cmの圧力で成形して、密度が4.0g/ccの成形体を得た。
次に、該成形体を焼結温度1550°Cで4時間、酸素雰囲気焼結した結果、得られた焼結体の密度はアルキメデス法で7.129g/cmと高密度の焼結体が得られた。更に、該成形体を焼結温度1500°Cで焼結した場合にも、密度7.130g/cmの高密度の焼結体が得られた。
【0024】
(比較例1)
粒度分布から求めたメジアン径が2.0μm、90%粒径が3.50μm、BET比表面積が4.0m/gの酸化錫粉と、粒度分布から求めたメジアン径が2.0μm、90%粒径が3.0μm、BET比表面積が8.0m/gの酸化インジウム粉を実施例と同様の方法により固形分重量比率で酸化錫1:酸化インジウム9となるよう純水に混合し、固形分50%のスラリーを作製した。
【0025】
次に、実施例1と同様の方法により、粒度分布から求めたメジアン径が0.80μm、90%粒径が1.50μm、BET比表面積が10m/gまで粉砕した。
この粉砕スラリーにバインダーを加え、実施例1と同様の方法により、造粒・乾燥した。得られた粉末を金型に充填した後、油圧プレスにて1000kgf/cmの圧力で成形後、さらに冷間等方静水圧プレス(CIP)にて1500kgf/cmの圧力で成形して、密度が4.0g/ccの成形体を得た。
【0026】
次に、該成形体を焼結温度1550°Cで4時間、酸素雰囲気焼結した結果、得られた焼結体の密度はアルキメデス法で7.101g/cmにしか到達しなかった。また、焼結温度を1650°Cまで上げた場合でも、焼結体の密度7.108g/cmであった。
上記実施例1、2及び比較例1で作製した焼結体について機械加工を行い、スパッタリングターゲットを作製して、スパッタリング時のノジュール発生量(被覆率)とスパッタリング時の異常放電(マイクロアーキング)回数を測定した。
【0027】
スパッタリングの条件は以下の通りである。
ターゲットサイズ:127×508×6.35mm
スパッタガス:Ar+O
スパッタガス圧:0.5Pa
スパッタガス流量:300SCCM
スパッタガス中の酸素濃度:1Vol%
漏洩磁束密度:0.1T
投入スパッタパワー密度:0.5W/cmでスパッタ開始して成膜
速度を一定に保つように上昇させた。
スパッタ積算電力:〜160WHr/cm
【0028】
図1にノジュール発生量、図2にマイクロアーキング回数を示す。ノジュール発生量(被覆率)はターゲットのエロージョン部の画像をコンピュータで2値化し、発生したノジュールの面積をエロージョン面積で除した値として算出した。マイクロアーキングのしきい値は、検出電圧:100V以上、放出エネルギー(アーク放電が発生している時のスパッタ電圧×スパッタ電流×発生時間):10mJ以下とした。
【0029】
図1から明らかなように、比較例のターゲットは積算電力40WHr/cmから急激にノジュールが増加し、ライフエンドである積算電力160WHr/cmでは40%以上のノジュール被覆率となっているのに対し、実施例1、2のターゲットは積算電力160WHr/cmまでスパッタリングを行ってもノジュール発生量は0%であり、著しく優れていることが分かる。
【0030】
また、図2のマイクロアーキング回数においても、比較例のターゲットは積算電力80WHr/cmから急激にアーキング回数が増加するのに
対し、実施例1、2のターゲットは終始アーキング回数が少なく、安定した成膜条件が得られることが分かる。
実施例1、2で比較すると、ノジュール発生量では両者に差はみられなかったが、アーキング回数で比較すると実施例2の方が優れていることが分かる。
【0031】
(実施例3)
上記実施例1及び2で使用した酸化錫粉を製造する際のジルコニアビーズのコンタミ(不純物)量を調べた。粉砕には上記実施例で使用したビーズミルを使用し、粉砕ビーズはφ0.5mm径のZrビーズ(YTZ)を使用した。
酸化錫粉をそれぞれ固形分重量比率で25%、45%、65%となるように純水に混合した。この時、純水中の酸化錫粉を分散させるため、アンモニア水を添加しpHを8.0〜10.0に調整し、スラリーの粘度を0.1Pa・s以下に調整した。
上記各固形分のスラリーを同一粉砕条件にてパス運転を行い、それぞれの粉砕粒径と混入したZr量を調査した。その結果、図3に示すように、同一粒径で比較した場合、固形分が高いほどZrの混入量が小さくなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
高密度化と成分の均一性に優れた焼結体を得ることができるという著しい特徴を有し、これによってITOスパッタリング成膜が均一でない場合に生ずる品質の低下やノジュール等の異常突起物を抑制できるITO膜形成用酸化錫−酸化インジウムターゲットを低コストで得ることができるという優れた効果を有するので、ITO膜形成に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1、2及び比較例で作製したスパッタリングターゲットのスパッタ時における、スパッタ積算電力とノジュール被覆率を示す図である。
【図2】実施例1、2及び比較例で作製したスパッタリングターゲットのスパッタ時における、スパッタ積算電力とマイクロアーキング回数を示す図である。
【図3】実施例3で作製した酸化錫粉末スラリーの各固形分濃度におけるメジアン径とZrコンタミ量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布から求めたメジアン径が0.40(0.40を除く)〜1.0μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲にあることを特徴とするITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末。
【請求項2】
粒度分布から求めたメジアン径が0.40(0.40を除く)〜0.60μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が1.0μm以下の範囲にあることを特徴とするITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末。
【請求項3】
固形分65%以上の酸化錫粉末のスラリーを湿式ビーズミルにて粉砕することを特徴とする請求項1又は2記載のITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末の製造方法。
【請求項4】
粒度分布から求めたメジアン径が0.40(0.40を除く)〜1.0μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲にある酸化錫と酸化インジウム粉末を焼結したことを特徴とするITO膜形成用焼結体スパッタリングターゲット。
【請求項5】
粒度分布から求めたメジアン径が0.40(0.40を除く)〜0.60μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が1.0μm以下の範囲にある酸化錫と酸化インジウム粉末を焼結したことを特徴とするITO膜形成用焼結体スパッタリングターゲット。
【請求項6】
7.12g/cm以上の密度を備えていることを特徴とする請求項4又は5記載のITO膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項7】
固形分65%以上の酸化錫粉末のスラリーを湿式ビーズミルにて粉砕した酸化錫粉末を用いて焼結することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のITO膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項8】
ジルコニウムの混入量が100ppm未満であることを特徴とする請求項1、2、4項〜7のいずれかに記載のITOスパッタリングターゲット用酸化錫粉末又はITO膜形成用スパッタリングターゲット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−29706(P2009−29706A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240752(P2008−240752)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2002−571957(P2002−571957)の分割
【原出願日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】