説明

JAK阻害薬としての3−[4−(7H−ピロロ[2,3−D]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタン−またはヘプタン−ニトリル

本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル、または3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、ならびにその組成物および使用方法に関し、これは、例えば、炎症および自己免疫疾患、皮膚疾患、癌、および他の疾患を含む、JAK関連疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月22日に出願された米国特許仮出願第61/180,582号の優先権の利益を主張し、当該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、ならびにその組成物および使用方法に関し、これは、例えば、炎症性および自己免疫性疾患、皮膚疾患、癌、および他の疾患を含む、JAK関連疾患の治療において有用である。
【背景技術】
【0003】
タンパク質キナーゼ(PK)は、特に、細胞成長、生存、分化、器官形成、形態形成、新血管形成、組織修復、および再生を含む、種々の生物学的過程を調節する。タンパク質キナーゼは、癌を含む、多くのヒトの疾患において、特別な役割も果たす。サイトカイン、低分子量ポリペプチド、または糖タンパク質は、敗血症に対する宿主炎症応答に関与する多数の経路を規制する。サイトカインは、細胞分化、増殖、および活性に影響し、宿主が病原体に対して適切に反応するのを可能にするように、炎症促進性および抗炎症性応答の両方を調節することができる。広範囲のサイトカインのシグナル伝達は、ヤヌスキナーゼファミリー(JAK)のタンパク質チロシンキナーゼ、および転写のシグナル伝達物質および活性因子(STAT)を伴う。4つの既知の哺乳動物JAKが存在する。JAK1(ヤヌスキナーゼ−1)、JAK2、JAK3(ヤヌスキナーゼ、白血球、JAKL、およびL−JAKとしても知られる)、およびTYK2(タンパク質−チロシンキナーゼ2)。
【0004】
サイトカイン刺激による免疫および炎症応答は、疾患の発症原因となり、重症複合免疫不全(SCID)等の病因は免疫系の抑制から生じ、一方高活性または不適切な免疫/炎症応答は、自己免疫疾患(例えば、喘息、全身性紅斑性狼、甲状腺炎、心筋炎)、ならびに強皮症および変形性関節等の病気に寄与する(非特許文献1)。
【0005】
JAKの発現不全は、多数の疾患状態と関連付られる。例えば、Jak1−/−マウスは、誕生時に小さく、授乳できず、周産期に死亡する(非特許文献2)。Jak2−/−マウス胎児は貧血であり、根治的赤血球生成に起因して、交尾後約12.5日で死亡する。
【0006】
JAK/STAT経路、および特に4つのJAK全ては、喘息応答、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、および下気道の他の関連炎症性疾患の発症原因において役割を果たすと考えられる。JAKを通してシグナル伝達する複数のサイトカインは、古典的にアレルギー反応の有無にかかわらず、鼻および鼻腔(例えば、鼻炎および鼻腔炎)をもたらすもの等の上気道の炎症性疾患/状態に関係している。JAK/STAT経路は、眼の炎症性疾患/状態および慢性アレルギー反応においても実装されている。
【0007】
癌におけるJAK/STATの活性は、サイトカイン刺激(例えば、IL−6またはGM−CSF)、あるいはSOCS(サプレッサまたはサイトカインシグナル伝達)またはPIAS(活性化STATのタンパク質阻害剤)等のJAKシグナル伝達の内因サプレッサの減少によって起こり得る(非特許文献3)。STATシグナル伝達の活性化、ならびにJAKの他の下流経路(例えば、Akt)は、多数の癌種において、不良な予後と関連付られている(非特許文献4)。JAK/STATを通してシグナル伝達する、高レベルの循環サイトカインは、悪液質および/または慢性疲労において因果的役割を果たす。そのようにして、JAK阻害は、潜在的な抗腫瘍活性を超える理由で、癌患者にとって有益であり得る。
【0008】
JAK2チロシンキナーゼは、骨髄増殖性疾患、例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血(ET)、骨髄化生を伴う骨髄線維症(MMM)の患者に対して有益であり得る(非特許文献5)。JAK2V617Fキナーゼの阻害は、血液細胞の増殖を減少させ、PV、ET、およびMMMの患者において、薬理学的阻害の潜在的な標的としてのJAK2を示唆する。
【0009】
JAKの阻害は、乾癬および皮膚感作等の皮膚免疫疾患を患う患者に役立ち得る。乾癬の維持は、種々のケモカインおよび成長因子(JCI,113:1664−1675)に加えて、多数の炎症性サイトカインに依存すると考えられ、それらの多くはJAKを通してシグナル伝達する(非特許文献6)。
【0010】
したがって、ヤヌスキナーゼまたは関連キナーゼの阻害剤が広く求められる。例えば、ピロロピリジンおよびピロロピリミジンを含む、あるJAK阻害剤は、2006年12月12日に出願された特許文献1において報告される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第11/637,545号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ortmann,R.A.,T.Cheng,et al.(2000)Arthritis Res 2(1):16−32
【非特許文献2】Rodig,S.J.,M.A.Meraz et al.(1998)Cell 93(3):373−83
【非特許文献3】Boudny,V.,and Kovarik,J.,Neoplasm. 49:349−355,2002
【非特許文献4】Bowman,T.,et al. Oncogene 19:2474−2488,2000
【非特許文献5】Levin,et al.,Cancer Cell,vol.7,2005:387−397
【非特許文献6】Adv Pharmacol.2000;47:113−74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、JAK等のキナーゼを阻害する新規または改善された薬剤は、免疫および炎症経路の増強または抑制を目的とする、新規かつより効果的な薬剤(例えば、臓器移植のための免疫抑制剤)、ならびに自己免疫疾患、高活性炎症反応を伴う疾患(例えば、湿疹)、アレルギー、癌(例えば、前立腺、白血病、多発性骨髄腫)、および他の治療薬によってもたらされるいくつかの免疫反応(例えば、皮膚発疹または接触皮膚炎、あるいは下痢)の予防および治療のための薬剤を開発するために絶えず必要とされる。本発明の化合物、ならびに本明細書に記載されるそれらの組成物および使用方法は、これらのニーズおよびそれらの対極に向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特に、JAK阻害剤3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
本発明は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0016】
本発明は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物をさらに提供する。
【0017】
本発明は、治療有効量の3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を、患者に投与することによって、種々のJAK関連疾患および本明細書において指定される疾患のいずれかを治療する方法をさらに提供する。
【0018】
本発明は、治療において使用するための3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0019】
本発明は、治療において使用するための医薬品の生成のために、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩を使用することをさらに提供する。
【0020】
本発明は、所または経皮投与のための組成物をさらに提供し、組成物は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。
【0021】
本発明は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩を局所的に投与することによって、患者において、自己免疫疾患、癌、骨髄増殖性疾患、炎症性疾患、ウイルス性疾患、および皮膚疾患を治療する方法をさらに提供する。
【0022】
本発明は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩または3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩を調製するためのプロセスをさらに提供する。
【0023】
本発明は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルまたは3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル、またはその薬学的に許容される塩の調製において有用である、中間物質、それらを調製するためのプロセス、およびそれらを含有する組成物をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、特に、JAK阻害剤3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル(式I)
【化1】

またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0025】
本発明は、特に、JAK阻害剤3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル(式II)
【化2】

II
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0026】
本明細書に記載する化合物は、非対称であり得る(例えば、1つ以上の立体中心を有する)。他に指定のない限り、R/S鏡像異性体の両方が意図される。本発明の化合物は、光学活性形態またはラセミ形態であることができる。光学活性形態を光学不活性開始物質からどのように調製するかに関する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、ラセミ混合物の分解または立体選択的剛性による。一部の実施形態において、式IまたはIIの化合物は、任意で実質的にS鏡像異性体から単離される、R鏡像異性体である。一部の実施形態において、式IまたはIIの化合物は、任意で実質的にR鏡像異性体から単離される、S鏡像異性体である。
【0027】
化合物のラセミ混合物の分解は、当該技術分野において既知の多数の方法のいずれかによって実行することができる。例示的方法は、光学活性の塩形成有機酸である、キラル分解酸を使用する、分別再結晶を含む。分別再結晶に適切な分解剤は、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸のDおよびL形態等の光学活性酸、またはβカンファースルホン酸等の種々の光学活性カンファースルホン酸である。
【0028】
ラセミ混合物の分解は、光学活性分解剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を充填したカラム上の溶出によって実行することもできる。適切な溶媒組成物は、当業者によって決定することができる。
【0029】
本明細書で使用される「化合物」という用語は、他に指定のない限り、描写される構造の全ての立体異性体およびアイソトープを含む。
【0030】
全ての化合物、およびその薬学的に許容される塩は、水および溶媒(例えば、水和物および溶媒和物)等の他の物質と一緒に見出され得るか、または単離することができる。
【0031】
一部の実施形態において、本発明の化合物、またはその塩は、実質的に単離される。「実質的に単離される」とは、化合物が、それが形成または検出された環境から少なくとも部分的または実質的に分離されることを意味する。部分的分離は、例えば、本発明の化合物中に豊富にある組成物を含むことができる。実質的分離は、本発明の化合物、またはその塩の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%を含有する、組成物を含むことができる。化合物およびそれらの塩を単離するための方法は、当該技術分野においてルーチンである。
【0032】
「薬学的に許容される」というフレーズは、本明細書において、正しい医療判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するために適切であり、妥当な利益/リスク比に比例する、それらの化合物、物質、組成物、および/または用量形態を示すように用いられる。
【0033】
本明細書で使用される「周囲温度」および「室温」という表現は、当該技術分野において理解され、一般に、例えば約20℃〜30℃の温度である、反応が実行される部屋の温度に近い反応温度等の温度を示す。
【0034】
本発明の化合物は、実施例部分において以下に記載される合成手順に従って調製することができる。別の態様において、本発明は、式IIIの化合物のリン酸塩を調製するためのプロセスを提供し、
【化3】

III
式中、Rは、Hまたはメチルであり、式IIIの化合物をリン酸と組み合わせることを含む。一部の実施形態において、組み合わせることは、有機溶媒(例えば、アルコール)の存在下、約20℃を超える(例えば、約40℃を超える、約60℃を超える、約80℃を超える、または約100℃を超える)温度で行われる。一部の実施形態において、組み合わせることは、約60℃で行うことができる。一部の実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノールであり得る。一部の実施形態において、アルコールは、イソプロパノールである。
【0035】
一部の実施形態において、本発明は、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩を調製するためのプロセスを提供し、任意で有機溶媒(例えば、アルコール)の存在下、約20℃を超える(例えば、約40℃を超える、約60℃を超える、約80℃を超える、または約100℃を超える)温度で、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルをリン酸と組み合わせることを含む。一部の実施形態において、組み合わせることは、約60℃で行うことができる。一部の実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノールであり得る。
【0036】
一部の実施形態において、本発明は、任意で有機溶媒(例えば、アルコール)の存在下、約20℃を超える(例えば、約40℃を超える、約60℃を超える、約80℃を超える、または約100℃を超える)温度で、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩を調製するためのプロセスを提供し、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルをリン酸と組み合わせることを含む。一部の実施形態において、組み合わせることは、約60℃で行うことができる。一部の実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノールであり得る。
【0037】
本発明は、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩も含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の誘導体を示し、親化合物は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって修飾される。薬学的に許容される塩の例には、これらに限定されないが、アミン等の塩基性残基の鉱物または有機酸塩、カルボキシル酸等の酸性残基のアルカリまたは有機塩が含まれる。本発明の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性無機または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学方法によって、塩基性または酸性部分を含有する、親化合物から合成することができる。概して、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、有機溶媒または2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができ、一般に、非水性培地様エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノール)またはアセトニトリル(ACN)が好適である。適切な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418およびJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)において見ることができ、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
方法
本発明の化合物は、1つ以上のヤヌスキナーゼ(JAK)の活性を調整することができる。用語「調整する」は、JAKファミリーのキナーゼの1つ以上のメンバーの活性を増加または減少させる能力を示すことを意味する。したがって、本発明の化合物は、本明細書に記載される化合物または組成物のいずれか1つ以上とJAKを接触させることによって、JAKを調整する方法において使用することができる。一部の実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上のJAKの阻害剤として作用することができる。さらなる実施形態において、本発明の化合物は、調整量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することによって、受容体の調整を必要とする個人において、JAKの活性を調整するために使用することができる。
【0039】
本発明の別の態様は、治療有効量または用量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される組成物を、そのような治療を必要とする個人に投与することによって、個人(例えば、患者)において、JAK関連疾患または障害を治療する方法に関する。JAK関連疾患は、過剰発現および/または異常な活性レベルを含む、JAKの発現または活性に直接または間接的に関係している任意の疾患、障害、または状態を含むことができる。JAK関連疾患は、JAK活性を調整することによって、防止、改善、または治癒され得る、任意の疾患、障害、または状態を含むこともできる。
【0040】
JAK関連疾患の例には、例えば、臓器移植の拒絶反応(例えば、同種移植の拒絶反応および移植片対宿主拒絶反応)を含む、免疫系が関与する疾患を含む。
【0041】
JAK関連疾患のさらなる例には、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、I型糖尿病、ループス、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、自己免疫甲状腺疾患等の自己免疫疾患が含まれる。一部の実施形態において、自己免疫疾患は、尋常性天疱瘡(PV)または水疱性類天疱瘡(BP)等の自己免疫水疱性皮膚疾患である。
【0042】
JAK関連疾患のさらなる例には、喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、および鼻炎等のアレルギー状態が含まれる。JAK関連疾患のさらなる例には、エプスタインバーウイルス(EBV)、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV1、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、およびヒトパピローマウイルス(HPV)等のウイルス疾患が含まれる。
【0043】
JAK関連疾患または状態のさらなる例には、乾癬(例えば、尋常性乾癬)、アトピー性皮膚炎、皮疹、皮膚刺激、皮膚感作(例えば、接触皮膚炎またはアレルギー性接触皮膚炎)等の皮膚疾患が含まれる。例えば、いくつかの薬剤を含むある物質は、局所的に適用されると、皮膚感作をもたらし得る。一部の実施形態において、本発明の少なくとも1つのJAK阻害剤を、望ましくない感作をもたらす薬剤と共投与または連続投与することは、そのような望ましくない感作または皮膚炎を治療することにおいて役立つことができる。一部の実施形態において、皮膚疾患は、本発明の少なくとも1つのJAK阻害剤の局所投与によって治療される。
【0044】
さらなる実施形態において、JAK関連疾患は、固形腫瘍(例えば、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膠芽細胞腫、カポシ肉腫、キャッスルマン病、黒色腫等)、血液癌(例えば、リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)等の白血病、または多発性骨髄腫)および皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)および皮膚B細胞リンパ腫等の皮膚癌を特徴とするものを含む、癌である。例示的CTCLには、セザリー症候群および菌状息肉腫が含まれる。
【0045】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるJAK阻害剤、ならびに米国特許出願番号第11/637,545号に報告されるもの等のJAK阻害剤を使用して、炎症関連癌を治療することができる。一部の実施形態において、癌は、炎症性腸疾患と関連付られる。一部の実施形態において、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎である。一部の実施形態において、炎症性腸疾患は、クローン病である。一部の実施形態において、炎症関連癌は、大腸炎関連癌である。一部の実施形態において、炎症関連癌は、大腸癌または結腸直腸癌である。一部の実施形態において、癌は、胃癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、腺癌、小腸癌、または直腸癌である。
【0046】
JAK関連疾患は、疑似キナーゼドメイン(例えば、JAK2V617F)において少なくとも1つの変異を有するもの等の変異JAK2の発現を特徴とするものをさらに含むことができる。
【0047】
JAK関連疾患は、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血(ET)、骨髄化生を伴う骨髄線維症(MMM)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、好酸球増加症候群(HES)、全身性肥満細胞症(SMCD)等の骨髄増殖性疾患(MPD)をさらに含むことができる。一部の実施形態において、骨髄増殖性疾患は、原発性骨髄線維症(PMF)またはポスト真性赤血球増加症/本態性血小板血骨髄線維症(ポストPV/ET MF)である。
【0048】
本発明は、本発明の化合物を含有する、局所製剤の投与によって、乾癬または他の皮膚疾患を治療する方法をさらに提供する。
【0049】
本発明は、本発明の化合物の投与によって、他の薬剤の皮膚副作用を治療する方法をさらに提供する。例えば、多数の薬剤は、座瘡様の発疹または関連皮膚炎として出現し得る、望ましくないアレルギー反応をもたらす。そのような望ましくない副作用を有する、例示的薬剤には、ゲフィチニブ、セツキシマブ、エルロチニブ等の抗癌薬が含まれる。本発明の化合物は、望ましくない皮膚副作用を有する薬剤と組み合わせて(例えば、同時または連続して)、全身的または局所的に投与することができる(例えば、皮膚炎の付近に局部集中させることができる)。一部の実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の他の薬剤と一緒に局所的に投与することができ、他の薬剤は、本発明の化合物の非存在下で局所的に適用されると、接触皮膚炎、アレルギー性接触感作、または類似する皮膚疾患をもたらす。したがって、本発明の組成物は、本発明の化合物、および皮膚炎、皮膚疾患、または関連副作用をもたらし得る、さらなる薬剤を含有する局所製剤を含む。
【0050】
さらなるJAK関連疾患には、炎症および炎症性疾患が含まれる。例示的炎症疾患には、眼の炎症性疾患(例えば、虹彩炎、ブドウ膜炎、強膜炎、結膜炎、または関連疾患)、気道の炎症性疾患(例えば、鼻炎または副鼻腔炎等の鼻および副鼻腔を含む上気道、あるいは気管支炎、慢性閉塞性肺疾患等を含む下気道)、心筋炎等の炎症性ミオパシー、および他の炎症性疾患が含まれる。
【0051】
本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらに虚血再かん流傷害、あるいは脳卒中または心停止等の炎症性虚血事象に関連する疾患または状態を治療するために使用することができる。本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらに癌に起因するか、または癌と関連付られる拒食症、悪液質、または疲労を治療するために使用することができる。本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらに再狭窄、強皮炎、または線維症を治療するために使用することができる。本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらに例えば、糖尿病性網膜症、癌、または神経変性等の低酸素症または星細胞増殖症と関連付られる状態を治療するために使用することができる。例えば、Dudley,A.C.et al.Biochem.J.2005,390(Pt2):427−36およびSriram,K.et al.J.Biol.Chem.2004,279(19):19936−47.Epub2004 Mar 2を参照されたい。本明細書に記載されるJAK阻害剤は、アルツハイマー病の治療に使用することができる。
【0052】
本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらに全身性炎症反応症候群(SIRS)および敗血性ショック等の他の炎症性疾患を治療するために使用することができる。
【0053】
本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらに痛風、および例えば、良性前立腺肥大または良性前立腺過形成等に起因する、前立腺のサイズの増大を治療するために使用することができる。
【0054】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるJAK阻害剤は、さらにドライアイ障害を治療するために使用することができる。本明細書で使用される「ドライアイ障害」は、ドライアイワークショップ(DEWS)の最近の公式報告において要約される、疾患状態を包含することが意図され、ドライアイを「不快感、視覚障害、および眼球表面に対する潜在的な傷害を伴う涙液層の不安定性という症状をもたらす、涙および眼球表面の多因子病。涙液層の浸透圧の増加および眼球表面の炎症を伴う。」と定義した。Lemp,″The Definition and Classification of Dry Eye Disease:Report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye Workshop″,The Ocular Surface,5(2),75−92 April 2007。一部の実施形態において、ドライアイ障害は、涙液欠乏ドライアイ(ADDE)または蒸発ドライアイ障害、あるいはそれらの適切な組み合わせから選択される。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、結膜炎、ブドウ膜炎(慢性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎、網膜炎、毛様体炎、強膜炎、上強膜炎、または虹彩炎を処置し、角膜移植、LASIK(レーザー支援原位置角膜曲率形成術)、レーザー屈折矯正角膜切除術、またはLASEK(レーザー支援上皮下角膜曲率形成術)に関連する炎症または痛みを処置し、角膜移植、LASIK、レーザー屈折矯正角膜切除術、またはLASEKに関連する視力の低下を抑制し、あるいは、それを必要とする患者における移植拒絶反応を抑制する方法であって、治療有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0056】
追加として、本発明の化合物、ならびに米国特許出願第11/637,545号において報告されるもの等の他のJAK阻害剤は、インフルエンザおよびSARS等のウイルス感染と関連付られる呼吸器疾患または不全を治療するために使用することができる。
【0057】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるような治療の方法の1つにおいて使用するための本発明の化合物または塩を提供する。さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるような治療の方法の1つにおいて使用するための薬剤調製のために、本発明の化合物または塩の使用を提供する。
【0058】
本明細書で使用される「接触させる」という用語は、管内系または生体内系において、表示される部分を一緒にすることを示す。例えば、JAKを本発明の化合物と「接触させる」ことは、本発明の化合物を、JAKを有するヒト等の個人または患者に投与すること、ならびに例えば、本発明の化合物を、JAKを含有する細胞または精製調製物を含有する試料に導入することを含む。
【0059】
本明細書で使用される「個人」または「患者」という用語は、同義的に使用され、任意の動物を示し、哺乳類、好ましくは、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類、および最も好ましくはヒトを含む。
【0060】
本明細書で使用される「治療有効量」というフレーズは、研究者、獣医、医師、または他の臨床家によって、組織、系、動物、個体、またはヒトにおいて求められている、生物または医薬応答を引き起こす、活性化合物または薬剤の量を示す。
【0061】
本明細書において使用される「治療する」または「治療」という用語は、(1)疾患を予防することであって、例えば、疾患、状態、または障害にかかる素因があり得るが、まだ疾患の病状または症状を経験または露呈していない個人において、疾患、状態、または障害を防止することと、(2)疾患を抑制することであって、例えば、疾患、状態、または障害の病状または症状を経験または露呈している個人において、疾患、状態、または障害を抑制すること(すなわち、病状および/または症状のさらなる進展を止めること)と、(3)疾患を改善することであって、例えば、疾患の重篤度を低下させる等、疾患、状態、または障害の病状または症状を経験または露呈している個人において、疾患、状態、障害を改善すること(すなわち、病状および/または症状を反転させること)の1つ以上を示す。
【0062】
複合療法
1つ以上の追加の薬剤、例えば、化学療法薬、抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤、ならびにBcr−Abl、Flt−3、RAFおよびFAKキナーゼ阻害剤、例えば、国際公開第WO2006/056399号に記載されるもの、または他の薬剤を、JAK関連疾患、障害、または状態の治療のために、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。1つ以上の追加の薬剤は、同時または連続して患者に投与することができる。
【0063】
例示的な化学療法薬には、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、サリドマイド、レブリミド、およびメルファラン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、エトポシド、カルムスチン等のDNA損傷剤が含まれる。
【0064】
例示的なステロイドには、デキサメタゾンまたはプレドニゾン等のコルチコステロイドが含まれる。
【0065】
例示的Bcr−Abl阻害剤には、米国特許第5,521,184号、国際公開第WO04/005281号、欧州特許第EP2005/009967号、欧州特許第EP2005/010408号、および米国特許第60/578,491号に開示される族および種の、化合物、およびその薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0066】
例示的である適切なFlt−3阻害剤には、国際公開第WO03/037347号、国際公開第WO03/099771号、および国際公開第WO04/046120号に開示されるような、化合物、およびその薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0067】
例示的である適切なRAF阻害剤には、国際公開第WO00/09495号および国際公開第WO05/028444号に開示されるような、化合物、およびその薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0068】
例示的である適切なFAK阻害剤には、国際公開第WO04/080980号、国際公開第WO04/056786号、国際公開第WO03/024967号、国際公開第WO01/064655号、国際公開第WO00/053595号、および国際公開第WO01/014402号に開示されるような、化合物、およびその薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0069】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、特にイマチニブまたは他のキナーゼ阻害剤に耐性のある患者を治療するために、イマチニブを含む1つ以上の他のキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0070】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、多発性骨髄腫等の癌の治療において、化学療法薬と組み合わせて使用することができ、その毒性作用を増悪させることなく、化学療法薬単独に対する応答と比較して、治療応答を向上させ得る。多発性骨髄腫の治療において使用される追加の薬剤の例には、例えば、これらに限定されないが、メルファラン、メルファランプラスプレドニゾン[MP]、ドキソルビシン、デキサメタゾン、およびベルケイド(ボルテゾミブ)を含むことができる。多発性骨髄腫の治療において使用されるさらなる追加の薬剤には、Bcr−Abl、Flt−3、RAF、およびFAKキナーゼ阻害剤が含まれる。追加または相乗効果は、本発明のJAK阻害剤を追加の薬剤と組み合わせることの望ましい結果である。さらに、デキサメタゾン等の薬剤に対する多発性骨髄腫細胞の耐性は、本発明のJAK阻害剤による治療時に反転し得る。薬剤は、単回または連続剤形の本化合物と組み合わせることができるか、または薬剤は、個別の剤形として同時または連続して投与することができる。
【0071】
一部の実施形態において、デキサメタゾン等のコルチコステロイドは、本発明の化合物と組み合わせて患者に投与され、デキサメタゾンは、連続的とは反対に、断続的に投与される。
【0072】
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の化合物と他の治療薬との組み合わせは、骨髄移植または幹細胞移植前、移植中、および/または移植後に患者に投与することができる。
【0073】
薬学的製剤および剤形
医薬品として用いる場合、本発明の化合物は、薬学的組成物の形態で投与されることができる。これらの組成物は、薬学的技術分野で周知である方式で調製されることができ、局所的処置または全身的処置が所望されるか否かに応じて、および処置範囲に応じて、多種多様の経路によって投与されることができる。投与は、局所的(経皮、表皮、眼、ならびに経鼻送達、膣内送達、および直腸送達を含む粘膜を含む)、肺(例えば、噴霧器を含む粉末またはエアロゾルの吸入または吹送;気管内または鼻腔内)、経口、または非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、または注射もしくは点滴;または頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内の投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形式であることができるか、または、例えば、連続注入ポンプによるものであってもよい。局所投与のための薬学的組成物および製剤には、経皮貼布、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐薬、噴霧、液体、および粉末が含まれ得る。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤、およびその同等物が、必要または望ましくてもよい。コーティングされたコンドーム、グローブ等も有用であり得る。
【0074】
本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物も活性成分として含む。一部の実施形態において、組成物は、局所投与に適切である。本発明の組成物を形成する場合、活性成分は、通常、賦形剤と混合され、賦形剤で希釈されるか、または、カプセル、子袋、紙、または他の容器等の担体内に包含される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、それは、活性成分の媒体、担体、または培地として作用する固体、半固体、または液体材料であり得る。したがって、組成物は、錠剤、ピル、粉末、トローチ、子袋、カシェット、エリキシル、懸濁液、乳液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体として)、例えば、最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、座薬、滅菌注射液、および滅菌包装粉末の形態であり得る。
【0075】
製剤を調製する場合、活性化合物を粉砕して、他の成分と組み合わせる前に、適切な粒子サイズを提供することができる。活性化合物が実質的に不溶性である場合、200メッシュ未満の粒子サイズに製粉することができる。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒径を製粉によって調節し、製剤において実質的に均等な分布を提供することができる(例えば、約40メッシュ)。
【0076】
本発明の化合物は、錠剤製剤および他の製剤型に適切な粒径を得るように、湿式粉砕等の既知の粉砕手順を使用して粉砕されてもよい。本発明の化合物の微粉化した(ナノ粒子化した)調製物は、当該技術分野において既知のプロセスによって調製されることができる。例えば、国際特許第WO2002/000196号を参照されたい。
【0077】
適切な賦形剤の一部の例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルギニン酸、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。製剤は、追加として、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油等の潤滑剤、加湿剤、乳化剤および懸濁剤、メチル−安息香酸およびプロピルヒドロキシ−安息香酸等の保存剤、甘味剤、および香味剤を含むことができる。本発明の組成物は、当該技術分野において知られる手順を用いることによって患者に投与された後、活性成分の迅速、持続的、または遅延放出を提供するように製剤化され得る。
【0078】
組成物は、単位剤形で製剤化することができ、各用量は、約5〜約100mg(1g)、より一般的には、約100〜約500mgの活性成分を含有する。「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の哺乳類に対する単一用量として適切な物理的に個別の単位を示し、各単位は、適切な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性材料を含有する。
【0079】
活性化合物は、広い用量範囲に渡って有効であり得、一般に、薬学的に有効な量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、通常、治療される状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個別の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重篤度等を含む、関連状況に従って、医師によって判断されることを理解されたい。
【0080】
錠剤等の固形組成物を調製するために、主要な活性成分を薬学的賦形剤と混合して、本発明の化合物の均質混合物を含有する、固体のプレフォーミュレーション組成物を形成する。これらのプレフォーミュレーション組成物を均質と呼ぶ場合、活性成分は、通常、組成物を、均等な有効単位剤形、例えば、錠剤、ピル、およびカプセルに容易に分割できるように、組成物全体に均等に分散される。この固体のプレフォーミュレーションは、次いで、例えば、約0.1〜約1000mgの本発明の活性成分を含有する、上述の種類の単位剤形に分割される。
【0081】
本発明の錠剤またはピルは、持続性作用の利点を得る剤形を提供するように、コーティングするか、または他の方法で構成することができる。例えば、錠剤またはピルは、内部用量および外部用量成分を含むことができ、後者は、前者を封入する形態である。2つの構成要素は、胃での分解に耐え、内部成分が無傷で十二指腸に届くか、または放出を遅延させるように機能する、腸溶性層によって分離することができる。多様な材料をそのような腸溶性層またはコーティングに使用することができ、そのような材料は、多数のポリマー酸およびポリマー酸と、セラック、セチルアルコール、および酢酸セルロース等の材料の混合物を含む。
【0082】
本発明の化合物および組成物が、経口または注射による投与のために組み込まれ得る液体剤形には、水溶液、適切に風味付けられたシロップ、水性または油性懸濁液、および菜種油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油等の食用油で風味付けられた乳液、ならびにエリキシル、および同様の薬学的媒体が挙げられる。
【0083】
吸入または吹送のための組成物は、薬学的に許容される水性または有機溶媒、またはそれらの混合中の溶液および懸濁液、ならびに粉末を含む。液体または固体の組成物は、適切な薬学的に許容される賦形剤を、上述されるように含有し得る。一部の実施形態において、組成物は、局所または全身効果を得るために、経口または鼻呼吸によって投与される。組成物は、不活性ガスを使用することによって噴霧することができる。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接吸入され得るか、または噴霧装置をフェイスマスク、ステント、または間欠陽圧呼吸器に取り付けることができる。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、経口または鼻腔的に、製剤を適切な方法で送達する装置から投与することができる。
【0084】
局所製剤は、1つ以上の従来の担体を含有することができる。一部の実施形態において、軟膏は、水および、例えば、液体パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、白色ワセリン等から選択される、1つ以上の疎水性担体を含有することができる。クリームの担体組成物はグリセロール、および例えば、モノステアリン酸グリセリン、PEG−モノステアリン酸グリセリン、およびセチルステアリルアルコール等の1つ以上の他の成分と組み合わせて、水をベースとすることができる。ゲルは、例えば、グリセロール、ヒドロキシエチルセルロース等の他の成分と適切に組み合わせて、イソプロピルアルコールおよび水を使用して製剤化することができる。一部の実施形態において、局所製剤は、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.25重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、または少なくとも約5重量%の本発明の化合物を含有する。局所製剤は、例えば、乾癬または他の皮膚状態等の選択適応症を治療するための指示と任意に関連付られる、例えば、100gのチューブ内に適切に充填されることができる。
【0085】
本発明は、治療有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む、局所皮膚適応のための薬学的製剤をさらに提供する。
【0086】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、
水中油型乳剤、および
治療有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩と、を含む。
【0087】
一部の実施形態において、乳剤は、水、油成分、および乳剤成分を含む。
【0088】
本明細書で使用される「乳剤成分」という用語は、一態様では、懸濁液中の要素または粒子を液体媒体内に維持する物質、または物質の混合物を示す。一部の実施形態において、乳剤成分は、水と組み合わされると、油層が乳剤を形成するのを可能にする。一部の実施形態において、乳剤成分は、1つ以上の非イオン性界面活性剤を示す。
【0089】
一部の実施形態において、油成分は、製剤の約10重量%〜約40重量%の量で存在する。
【0090】
一部の実施形態において、油成分は、ワセリン、脂肪アルコール、鉱物油、トリグリセリド、およびシリコーン油から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0091】
一部の実施形態において、油成分は、白色ワセリン、セチルアルコール、ステアリールアルコール、軽鉱物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびジメチコーンから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0092】
一部の実施形態において、油成分は、密封剤成分を含む。
【0093】
一部の実施形態において、密封剤成分は、製剤の約2重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0094】
本明細書で使用される「密封剤成分」という用語は、角質層からの水分の蒸発を防止することによって、経表皮水分喪失(TEWL)を減少させる、密封フィルムを皮膚上に形成する、疎水性物質または疎水性物質の混合物を示す。
【0095】
一部の実施形態において、密封剤成分は、脂肪酸(例えば、ラノリン酸)、脂肪アルコール(例えば、ラノリンアルコール)、炭化水素油およびろう(例えば、ワセリン)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール)、シリコーン(例えば、ジメチコーン)、ステロール(例えば、コレステロール)、植物または動物性脂肪(例えば、ココアバター)、植物ろう(例えば、カルナウバろう)、およびろうエステル(例えば、蜜ろう)から選択される、1つ以上の物質を含む。
【0096】
一部の実施形態において、密封剤成分は、ラノリン酸、脂肪アルコール、ラノリンアルコール、ワセリン、プロピレングリコール、ジメチコーン、コレステロール、ココアバター、カルナウバろう、および蜜ろうから選択される、1つ以上の物質を含む。
【0097】
一部の実施形態において、密封剤成分は、ワセリンを含む。
【0098】
一部の実施形態において、密封剤成分は、白色ワセリンを含む。
【0099】
一部の実施形態において、油成分は、硬化剤成分を含む。
【0100】
一部の実施形態において、硬化剤成分は、製剤の約2重量%〜約8重量%の量で存在する。
【0101】
本明細書で使用される「硬化剤成分」という用語は、製剤の粘度および/または濃度を増加させるか、または製剤のレオロジーを向上させる、物質または物質の混合物を示す。
【0102】
一部の実施形態において、硬化剤成分は、脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0103】
一部の実施形態において、硬化剤成分は、C12〜20脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0104】
一部の実施形態において、硬化剤成分は、C16〜18脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0105】
一部の実施形態において、硬化剤成分は、セチルアルコールおよびステアリールアルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0106】
一部の実施形態において、油成分は、皮膚軟化成分を含む。
【0107】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、製剤の約5重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0108】
本明細書で使用される「皮膚軟化成分」という用語は、皮膚を軟化または消炎するか、または刺激された内面を消炎する、薬剤を示す。
【0109】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、鉱物油およびトリグリセリドから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0110】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、軽鉱物油および中鎖脂肪酸トリグリセリドから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0111】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、軽鉱物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびジメチコーンから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0112】
一部の実施形態において、水は、製剤の約35重量%〜約65重量%の量で存在する。
【0113】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、製剤の約1重量%〜約9重量%の量で存在する。
【0114】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、グリセリル脂肪エステルおよびソルビタン脂肪エステルから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0115】
一部の実施形態において、皮膚軟化成分は、ステアリン酸グリセリルおよびポリソルベート20から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0116】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、安定剤成分をさらに含む。
【0117】
一部の実施形態において、安定剤成分は、製剤の約0.05重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0118】
本明細書で使用される「安定剤成分」という用語は、薬学的製剤の安定性および/または製剤中の成分の適合性を向上させる、物質または物質の混合物を示す。一部の実施形態において、安定剤成分は、乳剤の凝集を防止し、水中油型乳剤中の滴を安定させる。
【0119】
一部の実施形態において、安定剤成分は、多糖類から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0120】
一部の実施形態において、安定剤成分は、キサンタンガムを含む。
【0121】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、溶媒成分をさらに含む。
【0122】
一部の実施形態において、溶媒成分は、製剤の約10重量%〜約35重量%の量で存在する。
【0123】
本明細書で使用される「溶媒成分」という用語は、本発明の化合物または他の物質を製剤中に溶解することができる、液体物質または液体物質の混合物である。一部の実施形態において、溶媒成分は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、適度な溶解性を有する、液体物質または液体物質の混合物である。
【0124】
一部の実施形態において、溶媒成分は、アルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0125】
一部の実施形態において、溶媒成分は、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0126】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、遊離塩基ベースで、製剤の約0.5重量%〜約2.0重量%の量で存在する。
【0127】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、遊離塩基ベースで、製剤の約0.5重量%の量で存在する。
【0128】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、遊離塩基ベースで、製剤の約1重量%の量で存在する。
【0129】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、遊離塩基ベースで、製剤の約1.5重量%の量で存在する。
【0130】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、遊離塩基ベースで、製剤の約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、および2.0重量%から選択される量で存在する。
【0131】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、水、油成分、乳剤成分、溶媒成分、安定剤成分、および遊離塩基ベースで、製剤の約0.5重量%〜約2.0重量%の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0132】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、
製剤の約35重量%〜約65重量%の水と、
製剤の約10重量%〜約40重量%の油成分と、
製剤の約1重量%〜約9重量%の乳剤成分と、
製剤の約10重量%〜約35重量%の溶媒成分と、
製剤の約0.05重量%〜約5重量%の安定剤成分と、
遊離塩基ベースで、製剤の約0.5重量%〜約2.0量%の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0133】
一部の実施形態において、
油成分は、ワセリン、脂肪アルコール、トリグリセリド、およびジメチコーンから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳剤成分は、グリセリル脂肪エステルおよびソルビタン脂肪エステルから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
溶媒成分は、アルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定剤成分は、多糖類から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0134】
一部の実施形態において、
油成分は、白色ワセリン、セチルアルコール、ステアリルアルコール、軽鉱物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびジメチコーンから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳剤成分は、ステアリン酸グリセリルおよびポリソルベート20から独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
溶媒成分は、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定剤成分は、キサンタンガムを含む。
【0135】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、
製剤の約35重量%〜約65重量%の水と、
製剤の約2重量%〜約15重量%の密封剤成分と、
製剤の約2重量%〜約8重量%の硬化剤成分と、
製剤の約5重量%〜約15重量%の皮膚軟化成分と、
製剤の約1重量%〜約9重量%の乳剤成分と、
製剤の約0.05重量%〜約5重量%の安定剤成分と、
製剤の約10重量%〜約35重量%の溶媒成分と、
遊離塩基ベースで、約0.5重量%〜約2.0重量%の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0136】
一部の実施形態において、
密封剤成分は、ワセリンを含み、
硬化剤成分は、1つ以上の脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳剤成分は、鉱物油およびトリグリセリドから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳剤成分は、グリセリル脂肪エステルおよびソルビタン脂肪エステルから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定剤成分は、多糖類から独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
溶媒成分は、アルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0137】
一部の実施形態において、
密封剤成分は、白色ワセリンを含み、
硬化剤成分は、セチルアルコールおよびステアリルアルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳剤成分は、軽鉱物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびジメチコーンから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳剤成分は、ステアリン酸グリセリルおよびポリソルベート20から独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定剤成分は、キサンタンガムを含み、
溶媒成分は、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0138】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、抗菌性保存剤成分をさらに含む。
【0139】
一部の実施形態において、抗菌性保存剤成分は、製剤の約0.05重量%〜約3重量%の量で存在する。
【0140】
本明細書で使用されるフレーズ「抗菌性保存剤成分」という用語は、製剤中の微生物増殖を阻害する、物質または物質の混合物である。
【0141】
一部の実施形態において、抗菌性保存剤成分は、アルキルパラベンおよびフェノキシエタノールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0142】
一部の実施形態において、抗菌性保存剤成分は、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびフェノキシエタノールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0143】
一部の実施形態において、薬学的製剤は、キレート剤成分をさらに含む。
【0144】
本明細書で使用される「キレート剤成分」というフレーズは、金属イオンで強力に結合する能力を有する、化合物または化合物の混合物を示す。
【0145】
一部の実施形態において、キレート剤成分は、エデト酸2ナトリウムを含む。
【0146】
本明細書で使用される「製剤の重量%」は、重量/重量ベースで、製剤中の成分の濃度%を意味する。例えば、1%w/wの成分A=[(成分Aの質量)/(製剤の総質量)]x100。
【0147】
本明細書で使用される、本発明の化合物の「遊離塩基ベースで製剤の重量%」またはその薬学的に許容される塩は、%w/wが、総製剤中の本発明の化合物の遊離塩基の重量に基づいて計算されることを意味する。
【0148】
一部の実施形態において、成分は、正確に特定される範囲内である(例えば、用語「約」は存在しない)。一部の実施形態において、「約」は、値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0149】
理解されるように、本明細書に記載される薬学的製剤の一部の成分は、複数の機能を有することができる。例えば、指定される物質は、乳化剤成分および安定剤成分の両方として作用し得る。一部のそのような例において、指定される物質の機能は、その特性が複数の機能性を可能にし得るとしても、単一であると見なすことができる。一部の実施形態において、製剤の各成分は、異なる物質または物質の混合物を含む。
【0150】
本明細書で使用される「成分」という用語は、1つの物質または物質の混合物を意味し得る。
【0151】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、飽和または不飽和である、脂肪族酸を示す。一部の実施形態において、脂肪酸は、異なる脂肪酸の混合物である。一部の実施形態において、脂肪酸は、平均約8個〜30個の炭素を有する。一部の実施形態において、脂肪酸は、平均で約12〜20個、14〜20個、または16〜18個の炭素を有する。適切な脂肪酸には、これらに限定されないが、セチル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、カプリン酸、カプリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ケトステアリン酸、イソステアリン酸、セスキオレイン酸、セスキ−9−オクタデカン酸、セスキイソオクタデカン酸、ベヘン酸、およびアラキドン酸、またはそれらの混合物が含まれる。
【0152】
本明細書で使用される「脂肪アルコール」という用語は、飽和または不飽和である脂肪族アルコールを示す。一部の実施形態において、脂肪アルコールは、異なる脂肪アルコールの混合物である。一部の実施形態において、脂肪アルコールは、平均約12〜約20個、約14〜約20個、または約16〜約18個の炭素を有する。適切な脂肪アルコールには、これらに限定されないが、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、セチルアルコール、カプリルアルコール、カプリリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキドンアルコール、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラキルアルコール、キミルアルコール、およびリノレイルアルコール、またはそれらの混合物が含まれる。
【0153】
本明細書で使用される「ポリアルキレングリコール」という用語は、単独または他の用語と組み合わせて用いられて、オキシアルキレンモノマー単位を含有するポリマー、または異なるオキシアルキレンモノマー単位のコポリマーを示し、アルキレン基は、2〜6個、2〜4個、または2〜3個の炭素原子を有する。本明細書で使用される「オキシアルキレン」という用語は、単独または他の用語と組み合わせて用いられて、一群の式−O−アルキレン−を示す。一部の実施形態において、ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。
【0154】
本明細書で使用される「ソルビタン脂肪エステル」という用語は、ソルビタンまたはソルビトールに由来する生成物、および脂肪酸、ならびに任意にポリ(エチレングリコール)単位を含み、ソルビタンエステルおよびポリエトキシ化ソルビタンエステルを含む。一部の実施形態において、ソルビタン脂肪エステルは、ポリエトキシ化ソルビタンエステルである。
【0155】
本明細書で使用される「ソルビタンエステル」という用語は、ソルビトールおよび少なくとも1つの脂肪酸に由来する、化合物または化合物の混合物を示す。ソルビタンエステルを派生させるために有用な脂肪酸には、これらに限定されないが、本明細書に記載されるものが含まれる。適切なソルビタンエステルには、これらに限定されないが、Span(登録商標)シリーズ(Uniqemaから入手可能)が含まれ、Span20(ソルビタンモノラウレート)、40(ソルビタンモノパルミテート)、60(ソルビタンモノステアレート)、65(ソルビタントリステアレート)、80(ソルビタンモノオレエート)、および85(ソルビタントリオレエート)が含まれる。他の適切なソルビタンエステルには、R.C.Rowe and P.J.Shesky,Handbook of pharmaceutical excipients,(2006),5th ed.に列挙されるものが含まれ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
本明細書で使用される「ポリエトキシ化ソルビタンエステル」という用語は、ソルビタンエステルのエトキシ化に由来する、化合物またはその混合物を示す。化合物のポリオキシエチレン部分は、脂肪エステルとソルビタン部分との間にあり得る。本明細書で使用される「ソルビタンエステル」という用語は、ソルビトールおよび少なくとも1つの脂肪酸のエステル化に由来する、化合物または化合物の混合物を示す。ポリエトキシ化ソルビタンエステルを派生させるために有用な脂肪酸には、これらに限定されないが、本明細書に記載されるものが含まれる。一部の実施形態において、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約2〜約200個のオキシエチレン単位を有する。一部の実施形態において、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約2〜約100個のオキシエチレン単位を有する。一部の実施形態において、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約4〜約80個のオキシエチレン単位を有する。一部の実施形態において、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約4〜約40個のオキシエチレン単位を有する。一部の実施形態において、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約4〜約20個のオキシエチレン単位を有する。適切なポリエトキシ化ソルビタンエステルには、これらに限定されないが、Tween(登録商標)シリーズ(Uniqemaから入手可能)が含まれ、これは、Tween 20(POE(20)ソルビタンモノラウレート)、21(POE(4)ソルビタンモノラウレート)、40(POE(20)ソルビタンモノパルミテート)、60(POE(20)ソルビタンモノステアレート)、60K(POE(20)ソルビタンモノステアレート)、61(POE(4)ソルビタンモノステアレート)、65(POE(20)ソルビタントリステアレート)、80(POE(20)ソルビタンモノオレエート)、80K(POE(20)ソルビタンモノオレエート)、81(POE(5)ソルビタンモノオレエート)、および85(POE(20)ソルビタントリオレエート)が含まれる。本明細書で使用される「POE」という省略形は、ポリオキシエチレンを示す。POE省略形に続く数字は、化合物中のオキシエチレン繰り返し単位の数を示す。他の適切なポリエトキシ化ソルビタンエステルには、R.C.Rowe and P.J.Shesky,Handbook of pharmaceutical excipients,(2006),5th ed.に列挙されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが含まれ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態において、ポリエトキシ化ソルビタンエステルは、ポリソルベートである。一部の実施形態において、ポリエトキシ化ソルビタンエステルは、ポリソルベート20である。
【0157】
本明細書で使用される「グリセリル脂肪エステル」という用語は、脂肪酸のモノ、ジ、またはトリグリセリドを示す。グリセリル脂肪エステルは、スルホン酸基またはその薬学的に許容される塩と任意に置換されてもよい。脂肪酸のグリセリドを派生させるために適切な脂肪酸には、これらに限定されないが、本明細書に記載されるものが含まれる。一部の実施形態において、グリセリル脂肪エステルは、12〜18個の炭素原子を有する、脂肪酸のモノグリセリドである。一部の実施形態において、グリセリル脂肪エステルは、グリセリルステアレートである。
【0158】
本明細書で使用される「トリグリセリド」という用語は、脂肪酸のトリグリセリドを示す。一部の実施形態において、トリグリセリドは、中鎖脂肪酸トリグリセリドである。
【0159】
本明細書で使用される「アルキレングリコール」という用語は、一群の式−O−アルキレンを示し、ここでアルキレン基は、2〜6個、2〜4個、または2〜3個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキレングリコールは、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)である。
【0160】
本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、式−O−CH−CH−のエチレングリコールモノマー単位を含有するポリマーを示す。適切なポリエチレングリコールは、ポリマー分子の各末端に遊離ヒドロキシル基を有し得るか、または例えば、メチル基等の低級アルキルでエーテル化された1つ以上のヒドロキシル基を有し得る。エステル化可能なカルボキシ基を有する、ポリエチレングリコールの誘導体も適切である。本発明において有用なポリエチレングリコールは、任意の鎖長または分子量であり得、分岐を含むことができる。一部の実施形態において、平均分子量は、約200〜約9000である。一部の実施形態において、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約200〜約5000である。一部の実施形態において、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約200〜約900である。一部の実施形態において、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約400である。適切なポリエチレングリコールには、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール−200、ポリエチレングリコール−300、ポリエチレングリコール−400、ポリエチレングリコール−600、およびポリエチレングリコール−900が含まれる。名称において、横線に続く数字は、ポリマーの平均分子量を示す。
【0161】
水中油型クリーム製剤は、高低せん断混合ブレードを有するオーバーヘッドミキサーを使用して、合成することができる。例えば、一部の実施形態において、製剤は、以下の手順によって合成することができる。
1. 抗菌性保存剤相は、抗菌性保存剤成分の少なくとも一部分を溶媒成分の一部分と混合することによって調製することができる。
2. 次いで、安定剤成分を溶媒成分の一部分と混合することによって、安定剤相を調製する。
3. 次いで、皮膚軟化成分、密封剤成分、および硬化剤成分を混合することによって、油相を調製する。油相を70〜80℃に加熱し、溶解して均一な混合物を形成する。
4. 次いで、精製水、溶媒成分の残り、およびキレート化剤成分を混合することによって、水相を調製する。相を70〜80℃に加熱する。
5. ステップ4の水相、ステップ1の抗菌性保存剤相、および本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を組み合わせて、混合物を形成する。
6. 次いで、ステップ2から得た安定剤相を、ステップ5から得た混合物に添加する。
7. 次いで、ステップ3から得た油相を、ステップ6から得た混合物との高せん断混合下で組み合わせ、乳剤を形成する。
8. 最後に、追加の抗菌性保存剤成分を、次いでステップ7から得た乳剤に添加してもよい。混合を継続し、次いで生成物を低せん断混合下で冷却する。
【0162】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防または治療等の投与の目的、患者の状態、投与の方法等によって異なる。治療適用において、組成物は、疾患の症状およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に停止するのに十分な量で、疾患を既に患っている患者に投与することができる。有効な用量は、治療される疾患の状態、ならびに疾患の重篤度、患者の年齢、体重および全身状態等の因子に基づく担当医師の判断に依存する。
【0163】
患者に投与される組成物は、上述される薬学的組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌することができるか、または滅菌ろ過してもよい。水溶液をそのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥することができ、凍結乾燥した製剤は、投与する前に滅菌した水性担体と組み合わされる。化合物調製のpHは、通常、3〜11、より好ましくは5〜9、および最も好ましくは7〜8の間である。前述の賦形剤、担体、または安定剤の特定の使用は、薬学的な塩の形成をもたらすことを理解されたい。
【0164】
本発明の化合物の治療用量は、例えば、治療が行われる特定の用途、化合物の投与方法、患者の健康および状態、ならびに処方する医師の判断に従って異なり得る。薬学的組成物中の本発明の化合物の比率または濃度は、用量、化学特性(例えば、疎水性)、および投与経路を含む、多数の因子に応じて異なり得る。例えば、本発明の化合物は、非経口投与のために、約0.1〜約10w/v%の化合物を含有する、生理学的緩衝水溶液において提供することができる。一部の典型的な用量範囲は、1日当たり体重の約1μg/kg〜約1g/kgである。一部の実施形態において、用量範囲は、1日当たり体重の約0.01mg/kg〜約100mg/kgである。用量は、疾患または障害の種類および進行の程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択される化合物の相対生物学的有用性、賦形剤の剤形、およびその投与経路等の変数に依存する可能性が高い。有効な用量は、管内または動物モデル試験システムに由来する、用量応答曲線から推定することができる。
【0165】
本発明の組成物は、化学療法薬、ステロイド、抗炎症化合物、または免疫抑制剤等の1つ以上の追加の薬剤をさらに含むことができ、その例は上記に列挙される。
【0166】
標識化合物および分析方法
本発明の別の態様は、撮像技術だけでなく、管内および生体内の両方の分析においても有用である、ヒトを含む組織試料中のJAKを位置特定および定量するため、および標識化合物の阻害結合によって、JAKリガンドを識別するための、本発明の標識化合物(放射性標識、蛍光標識等)に関する。したがって、本発明は、そのような標識化合物を含有する、JAK分析を含む。本発明は、本発明のアイソトープ的に標識される化合物をさらに含む。「アイソトープ的」または「放射性標識」化合物は、本発明の化合物であり、1つ以上の原子が、通常自然界で見られる(すなわち、自然発生する)原子の質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって代用または置換される。本発明の化合物に組み込まれ得る適切な放射性核種には、これらに限定されないが、H(ジュウトリウムのDとしても表記される)、H(トリチウムのTとしても表記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、および131Iが挙げられる。即時放射性標識化合物に組み込まれる放射性核種は、放射性標識化合物の特定の適用に依存する。例えば、管内JAK標識および競合分析の場合、H、14C、82Br、125I、131I、または35Sを組み込む化合物が一般的に最も有用である。放射性撮像適用の場合、11C、18F、125I、123I、124I、131I、75Br、76Br、または77Brが一般に最も有用である。
【0167】
「放射性標識」または「標識化合物」は、少なくとも1つの放射性核種を組み込んだ化合物であることが理解される。一部の実施形態において、放射性核種は、H、14C、125I、35S、および82Brからなる群から選択される。
【0168】
本発明は、放射性アイソトープを本発明の化合物に組み込むための合成方法をさらに含むことができる。放射性アイソトープを有機化合物に組み込むための合成方法は、当該技術分野においてよく知られ、当業者であれば、本発明の化合物に適用可能な方法を容易に認識するであろう。
【0169】
本発明の放射性標識化合物をスクリーニング分析に使用して、化合物を識別/評価することができる。例えば、新規に合成または識別される標識化合物(すなわち、被験化合物)は、標識の追跡を通して、JAKと接触する場合のその濃度変動を監視することによって、JAKを結合する能力を評価することができる。例えば、(標識された)被験化合物は、JAKを結合することが知られている別の化合物(すなわち、標準化合物)の結合を減少させる能力を評価することができる。したがって、JAKを結合するために、標準化合物に競合する被験化合物の能力は、その結合親和性と直接相関する。反対に、いくつかの他のスクリーニング分析において、標準化合物は標識され、被験化合物は標識されない。したがって、標準化合物と被験化合物との間の競合を評価するために、標識された標準化合物の濃度が監視され、したがって、被験化合の相対結合親和性が確認される。
【0170】
キット
本発明は、例えば、IDO関連疾患または障害、肥満、糖尿病、および本明細書で参照される他の疾患の治療または予防において有用な製剤キットも含み、治療有効量の本発明の化合物を含む薬学的組成物を含有する、1つ以上の容器を含む。当業者には容易に理解されるように、そのようなキットは、必要に応じて、種々の従来の薬学的キットのコンポーネント、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体の入った容器、追加の容器等の1つ以上をさらに含むことができる。投与される成分の量、投与のためのガイドライン、および/または成分を混合するためのガイドラインを示す指示は、挿入物またはラベルのいずれかとして、キットに含めることもできる。
【0171】
本発明について、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例証的な目的で提供され、本発明を任意の方式に限定するように意図されない。当業者であれば、様々な重要でないパラメータを変更または修正しても、本質的に同一の結果が得られることを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0172】
実施例1.3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩
【化4】

【0173】
ステップ1:オクタ−2−エンニトリル
【化5】

テトラヒドロフラン(165mL、0.165mol)中の1.0Mのカリウムtert−ブトキシドの溶液に、0℃で、テトラヒドロフラン(100mL)中のジエチルシアノメチルホスホン酸塩(27mL、0.17mol)の溶液を滴下添加した。反応液を室温にし、次いで、30分間攪拌した後、再度0℃に冷却した。反応混合液に、テトラヒドロフラン(150mL)中のヘキサナル(18mL、0.15mol)の溶液を添加した。反応液を一晩攪拌し、室温になるまで放置した。反応液は、水で反応停止させ、酢酸エチルで抽出した(EtOAc)。組み合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濃縮して、シリカゲル上で精製して(ヘキサン中の0〜15% EtOAcで溶出して)、シスおよびトランス異性体の混合物として、所望の生成物(〜17g、92%)をもたらした。C14N(M+H)に対し計算されるMS:m/z=124.113、検出値:124.3。
【0174】
ステップ2:3−[4−(7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル
【化6】

アセトニトリル(120mL、2.3mol)中の4−(1H−ピラゾール−4−イル)−7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(米国特許出願公開第2007/0135461号または国際特許第PCT/US2006/047369号(第WO2007/070514号として公開)の実施例65に記載されるように、実質的に調製される、12g、0.038mol)、オクタ−2−エンニトリル(6.0g、0.049mol)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、4.6mL、0.030mol)の混合液を、室温で一晩攪拌した。真空で濃縮した後、得られる残渣をシリカゲル上で精製して(ヘキサン中の0〜40% EtOAcで溶出して)、所望の生成物をもたらした(15g、89.89%)。鏡像異性体(第1のピーク保持時間11.02分、第2のピーク保持時間14.10分)を、ChiralCel OD−Hカラム(30x250mm、5μM)上で分離し、15%エタノールおよび85%ヘキサンの移動相により25mL/粉で溶出する。C2335OSi(M+H)に対し計算されるMS:m/z=439.264、検出値:439.4。H NMR(300MHz,CDCl)δ8.91(1H,s)、8.38(1H,s)、8.37(1H,s)、7.46(1H,d,J=3.8Hz)、6.86(1H,d,J=3.8Hz)、5.73(2H,s)、4.59(1H,m)、3.60(2H,t,J=8.3Hz)、3.06(2H,td,J=16.8および7.5Hz)、2.21(1H,m)、2.01(1H,m)、1.40〜1.21(6H,m)、0.98(2H,t,J=8.3Hz)、0.91(3H,t,J=6.3Hz)、0.00(9H,s)ppm。
【0175】
ステップ3:3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル
【化7】

アセトニトリル(200.0mL、3.829mol)および水(16.0mL、0.888mol、〜8%アセトニトリル/水)中の3−[4−(7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル(13g、0.030mol)(ステップ2のキラル分離からのピーク2)の溶液に、テトラフルオロホウ酸リチウム(28.4g、0.297mol)を添加した。反応液を100℃で一晩かん流させた。混合液を冷却し、水(17mL、0.12mol)中の7.2Mの水酸化アンモニウムを、いくつかの部分に分けて、5分の時間をかけて室温で添加し、2時間攪拌しながらpHを9〜10に調整した。固体をろ過によって除去し、調製LCMS(XBridge C18カラム、0.15% NHOHを含有するアセトニトリル/水の勾配で溶出する)による精製のために、ろ液をアセトニトリル、水、およびMeOHで希釈して、所望の生成物をもたらした(5.9g、64%)。C1721(M+H)に対し計算されるMS:m/z=309.183、検出値:309.3. H NMR(300MHz,DMSO−D)δ12.10(1H,s)、8.78(1H,s)、8.66(1H,s)、8.36(1H,s)、7.58(1H,m)、6.97(1H,m)、4.71(1H,m)、3.18(1H,m)、3.16(1H,br s)、1.93(1H,m)、1.81(1H,m)、1.19(5H,m)、0.97(1H,m)、0.78(3H,t,J=6.3Hz)ppm。
【0176】
ステップ4.3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩
イソプロピルアルコール(80mL、1mol)中の3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル(ステップ3から、4.50g、0.0146mol)の溶液に、イソプロパノール(5.0mL)中のリン酸(1.43g、0.0146mol)の混合物を添加しながら、溶液を60℃で保持した。リン酸塩が沈殿した。加熱を継続したが、溶解をもたらさなかった。室温に冷却した後、リン酸塩をろ過し、空気乾燥させた後、いくらかのジエチルエーテルで洗浄して、空気乾燥させた。塩基C1721(M+H)に対し計算されるMS:m/z=309.183、検出値:309.3.H NMR(400MHz、DMSO−d)δ12.10(1H,s)、8.79(1H,s)、8.66(1H,s)、8.36(1H,s)、7.58(1H,d,J=3.6Hz)、6.97(1H,d,J=3.6Hz)、4.71(1H,m)、3.17(2H,m)、1.94(1H,m)、1.81(1H,m)、1.18(5H,m)、0.97(1H,m)、0.78(3H,t,J=6.8Hz)。生成物は、逆相HPLCカラム上の3回の異なる実行によって、99.9%の純度となり、キラルHPLCカラム上の6回の異なる実行によって、99.7%の鏡像体過剰率を有することが確認された。
【0177】
実施例2.3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩
【化8】

【0178】
ステップ1.ヘプタ−2−エンニトリル
【化9】

テトラヒドロフラン(49.3mL、49.3mmol)中の1.00Mのカリウムtert−ブトキシドの溶液に、0℃で、テトラヒドロフラン(63mL)中のシアノメチルホスホン酸ジエチルの溶液(8.37mL、51.7mmol)を滴下添加した。反応液を室温にし、次いで、再度0℃に冷却した。反応混合液に、テトラヒドロフラン(12.6mL)中のペンタナルの溶液(5.0mL、47mmol)を滴下添加した。反応液を室温になるまで放置し、一晩攪拌した。水で反応停止させた後、混合液をエーテルで抽出した。組み合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥させて、蒸発乾燥させた。粗混合物を次のステップで直接使用した。C12N(M+H)に対して計算されるLCMS:m/z=110.1、検出値:110.3。
【0179】
ステップ2.3−[4−(7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル
【化10】

アセトニトリル(58mL)中の4−(1H−ピラゾール−4−イル)−7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(6.1g、19mmol)の溶液に、粗ヘプタ−2−エンニトリル(2.6g、23mmol)、続いて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(3.49mL、23.4mmol)を添加した。得られる混合液を、週末にかけて室温で攪拌し、次いで蒸発乾燥させた。残渣をシリカゲル上で精製し、ヘキサン中の0〜50%の酢酸エチルで溶出して、所望の生成物をもたらした(6.90g、84%)。C2233OSi(M+H)に対して計算されるLCMS:m/z=425.2、検出値:425.4。ラセミ混合物をOD−Hカラム(3x25cm、5μM)上に適用し、15%エタノールおよび85%ヘキサン混合液により流量28mL/分で溶出して、2つの所望の鏡像異性体をもたらした。第1のピーク保持時間9.46分、第2のピーク(3.45g)保持時間12.35分。
【0180】
ステップ3.3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル
【化11】

攪拌棒、コンデンサ、および窒素入口を備える500mLの丸底フラスコに、アセトニトリル(58mL)、水(5.0mL)、3−[4−(7−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル(ステップ2のキラル分離からの第2のピーク、3.50g、8.24mmol)、およびテトラフルオロホウ酸リチウム(7.88g、82.4mmol)を充填した。混合液を温めて、一晩かん流させた。反応混合液に、水(4.3mL、31mmol)中の7.2Mの水酸化アンモニウムを、いくつかの部分に分けて、5分の時間をかけて室温で充填し、pHを9〜10に調整する。得られる反応混合液を、室温で2時間攪拌した。固体をろ過によって除去し、ろ液をRP−HPLC上で精製して(XBridgeカラム C18、30x100mm 5μM、注入量5mLおよび流量60mL/分、水およびアセトニトリルおよび0.15% NHOHの勾配)、所望の生成物をもたらした(1.79g、74%)。C1619(M+H)に対して計算されるLCMS:m/z=295.2、検出値:295.2。
【0181】
ステップ4.3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルホスホン酸塩
イソプロピルアルコール(8.0mL)中の3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリル(0.363g、1.23mmol)の溶液に、1.0mLのイソプロピルアルコール中のリン酸(0.133g、1.36mmol)を60℃で添加した。混合液は、60℃で1時間加熱し、次いで室温に冷却した。沈殿物をろ過し、空気乾燥させて、エチルエーテルで洗浄し、次いでさらに空気乾燥させて、所望のリン酸塩(418mg、86.5%)をもたらした。H NMR(DMSO−d、400MHz)δ12.10(1H,s)、8.78(1H,s)、8.66(1H,s)、8.36(1H,s)、7.58(1H,m)、6.97(1H,m)、4.71(1H,m)、3.18(1H,m)、3.17(1H,m)、1.93(1H,m)、1.82(1H,m)、1.21(3H,m)、0.95(1H,m)、0.78(3H,t,J=7.2Hz)ppm。
【0182】
実施例A:管内JAKキナーゼ分析
本発明の化合物は、Park et al.,Analytical Biochemistry 1999,269,94〜104に記載される、以下の管内分析に従って、JAK標的の阻害活性について試験した。N末端Hisタグを有するヒトJAK1(a.a.837〜1142)、JAK2(a.a.828〜1132)、およびJAK3(a.a.781〜1124)の触媒ドメインは、昆虫細胞中のバキュロウイルスを使用して発現させ、精製した。JAKl、JAK2またはJAK3の触媒活性をビオチン化ペプチドのリン酸化を測定することによって分析した。リン酸化されたペプチドをホモジニアス時間分解蛍光法(HTRF)によって検出した。IC50を、100mM NaCl、5mM DTT、および0.1mg/ml(0.01%)BSAを含む50mM トリス(pH7.8)緩衝剤中に酵素、ATP、および500nMペプチドを含有する反応中で各キナーゼについて測定した。反応中のATP濃度は、Jak1について90μM、Jak2について30μM、Jak3について3μMであった。反応を室温で1時間実行し、次いで20μLのアッセイ緩衝剤(Perkin Elmer,Boston,MA)中の45mM EDTA、300nM SA−APC、6nM Eu−Py20を用いて停止させた。ユーロピウム標識抗体に対する結合を、40分間行い、HTRFシグナルをFusionプレートリーダー(Perkin Elmer,Boston,MA)で測定した。
【0183】
本発明の化合物は、強力なJAK阻害剤であることが分かった。実施例1の場合、キラル分離ステップのピーク2に由来する鏡像異性体は、JAK2に対して10nM未満のIC50を有することが分かった。同一の鏡像異性体のリン酸塩形態は、同様に活性であった。また実施例1の場合、キラル分離ステップのピーク1に由来する鏡像異性体は、JAK2に対して10nM未満のIC50を有することも分かったが、他の鏡像異性体ほど強力でなかった。
【0184】
【表1】

【0185】
実施例B:細胞分析
成長のためにサイトカインおよびしたがってJAK/STATシグナル変換に依存する癌細胞株(例えば、INA−6)は、RPMI1640、10% FBS、および1ng/mLの適切なサイトカイン中、ウェル当たり6000個の細胞(96ウェルプレート形式)をプレートに載置する。化合物を、DMSO/培地(最終濃度0.2%DMSO)中の細胞に添加し、72時間、37度、5% COで培養した。細胞生存性に対する化合物の効果は、CellTiter−Glo蛍光細胞生存性分析(Promega)に続いて、TopCount(Perkin Elmer(マサチューセッツ州ボストン))定量を使用して評価する。化合物の潜在的なオフターゲット効果は、同一の分析計測値を有する非JAK駆動細胞株を使用して、平行して測定する。全ての実験は、通常、二重で行う。
【0186】
上記細胞株を使用して、JAKキナーゼまたはSTATタンパク質、Akt、Shp2、またはErk等の潜在的な下流物質のリン酸化反応に対する化合物の効果を試験する。これらの実験は、一晩のサイトカイン飢餓に続いて、化合物による短時間の前培養(2時間以下)および約1時間以下のサイトカイン刺激の後に行う。次いで、タンパク質を細胞から抽出し、ウェスタンブロット法またはリン酸化タンパク質と総タンパク質とを区別することができる抗体を使用するELISAを含む、当業者によく知られる技法によって分析する。これらの実験は、正常または癌細胞を利用して、腫瘍細胞の生存生物学または炎症性疾患の伝達物質に対する化合物の活性を調査する。例えば、後者に関して、IL−6、IL−12、IL−23、またはIFN等のサイトカインを使用して、JAKの活性化を刺激し、STATタンパク質のリン酸化、および転写プロファイル(アレイまたはqPCR技法によって評価される)、またはIL−17等のタンパク質の生成および/または分泌をもたらす。化合物がこれらのサイトカイン媒介作用を阻害する能力は、当該技術分野において教育を受けた者に一般的な技法を使用して測定する。
【0187】
本発明の化合物は、変異JAK、例えば、骨髄性増殖疾患において見られるJAK2V617F変異に対するそれらの能力および活性を評価するように設計される細胞モデルにおいて試験することができる。これらの実験は、多くの場合、野生型または変異JAKキナーゼが異所的に発現する、血液系統(例えば、BaF/3)のサイトカイン依存性細胞を利用する(James,C.,et al. Nature 434:1144〜1148;Staerk,J.,et al. JBC 280:41893〜41899)。評価項目には、細胞生存、増殖、およびリン酸化JAK、STAT、Akt、またはErkタンパク質に対する化合物の効果が含まれる。
【0188】
本発明の化合物は、T細胞増殖を阻害するその活性について評価することができる。そのような分析は、第2のサイトカイン(すなわち、JAK)駆動増殖分析、および免疫活性の免疫抑制または阻害の単純化分析であると考えられる。以下は、そのような実験をどのように行うかについての簡単な概要である。末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll Hypaque分離方法を使用して、ヒトの全血試料から調製し、T細胞(画分2000)を、洗浄によってPBMCから得る。新鮮に単離されたヒトT細胞を、培養培地中(10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシが補充されるRPMI 1640)、2x10細胞/mlの密度で、37度で最長2日間維持する。IL−2刺激性細胞増殖分析の場合、最初にT細胞を、最終濃度10μg/mLのフィトヘムアグルチニン(PHA)で、72時間処置する。PBSで一度洗浄した後、ウェル当たり6000個の細胞を96ウェルプレートに載置し、100U/mLのヒトIL−2(ProSpec−Tany TechnoGene(イスラエル、レホボト))の存在下、培養培地中、異なる濃度の化合物で処置する。プレートを37℃で72時間培養し、CellTiter−Glo蛍光試薬を使用し、製造者(Promega(ウィスコンシン州マディソン))が提案するプロトコルに従って、増殖指数を評価する。
【0189】
実施例C:生体内抗腫瘍の有効性
本発明の化合物は、免疫低下したマウスのヒト腫瘍異種移植モデルにおいて評価することができる。例えば、INA−6形質細胞腫細胞株の腫瘍形成変異型を使用して、SCIDマウスに皮下的に接種することができる(Burger,R.,et al. Hematol J.2:42−53,2001)。担癌動物を、次いで薬物治療群またはビヒクル処置群にランダム化し、異なる用量の化合物を、経口、腹腔内を含む、任意の数の通常経路、または埋め込みポンプを使用する連続注入によって投与することができる。腫瘍成長は、キャリパーを使用して、長い期間をかけて追跡することができる。さらに、腫瘍試料は、上述されるような分析の場合(実施例B)、治療の開始後の任意の時点で採取し、JAK活性および下流シグナル経路に対する化合物の効果を評価することができる。さらに、化合物の選択性は、K562腫瘍モデル等の他の知られているキナーゼ(例えば、Bcr−Abl)によって駆動される、異種移植腫瘍モデルを使用して評価することができる。
【0190】
実施例D:マウス皮膚接触遅延型過敏性反応試験
本明細書の化合物を、T細胞駆動マウス遅延型過敏症試験モデルにおいてその(JAK標的を阻害する)効力について試験することもできる。マウス皮膚接触遅延型過敏症(DTH)応答を、臨床接触性皮膚炎および他の皮膚のT−リンパ球媒介性免疫障害、例えば、乾癬の有効モデルと見なす(Immunol Today.1998 Jan;19(1):37−44)。1998 Jan:19(1):37−44)。マウスDTHは、乾癬の複数の特徴を有し、例えば、免疫浸潤物、炎症性サイトカインの随伴上昇、およびケラチノサイト過剰増殖が含まれる。さらに、臨床において乾癬の治療に有用な多種の薬剤は、マウスにおけるDTH応答の有効な阻害剤でもある(Agents Actions. 1993 Jan:38(1−2):116−21)。
【0191】
0および1日目に、Balb/cマウスを剪毛した腹部への抗原2,4,ジニトロ−フルオロベンゼン(DNFB)の局所塗布により感作させる。5日目に、技術者用マイクロメーターを使用して耳の厚さを測定する。この測定を記録し、ベースラインとして用いる。次いで、動物の両耳をDNFB合計20μL(10μLを内側耳介、10μLを外側耳介)0.2%濃度の局所塗布によって攻撃する。攻撃の24〜72時間後、耳を再び測定する。被験化合物による処理は、感作および攻撃相(−1〜7日目)に渡って、または攻撃相の前およびその間に渡って(4日目〜7日目の通常午後)施した。被験化合物での(異なる濃度での)処理は、全身的または局所的投与される(耳に対する処置の局所塗布)。被験化合物の有効性は、無処置の状態と比較しての耳の膨潤の低下によって示される。化合物が、20%以上の低下をもたらす場合、有効であると見なされる。いくつかの実験では、マウスは攻撃を与えられたが感作されない(ネガティブコントロール)。
【0192】
被験化合物の(JAK−STAT経路の活性化を阻害する)阻害効果は、免疫組織化学分析により確認されることができる。JAK−STAT経路の活性化は、機能的な転写因子の形成および転位置をもたらす。さらに、免疫細胞の流入およびケラチノサイトの増殖の上昇は、耳における特有の発現プロファイル変化をもたらすはずであり、それを調査して定量化することができる。ホルマリン固定されパラフィン包埋された耳切片(DTHモデルにおいて攻撃相の後に収集)をリン酸化STAT3(クローン58E12、Cell Signaling Technologies)と特異的に相互作用する抗体を使用する免疫組織化学分析に供する。マウスの耳を、被験化合物、ビヒクル、またはデキサメタゾン(乾癬についての臨床的に有効な処置)で処置するか、または比較のためにDTHモデルにおいて全く処置をしない。被験化合物およびデキサメタゾンは、定性的および定量的に類似の転写変化をもたらし得、被験化合物とデキサメタゾンとはともに浸潤細胞の数を減らすことができる。被験化合物の全身投与および局所投与の両方が、阻害効果、すなわち、浸潤細胞の数の低下および転写変化の阻害をもたらすことができる。
【0193】
実施例E:生体内抗炎症活性
本明細書の化合物は、単回または複合炎症応答を再現するよう設計した齧歯動物または非齧歯動物モデルにおいて評価されることができる。例えば、関節炎の齧歯動物モデルは、予防的または治療的に投薬された化合物の治療有効性の評価に使用することができる。これらのモデルには、マウスまたはラットコラーゲン誘導性関節炎、ラットアジュバント−誘導性関節炎、およびコラーゲン抗体−誘導性関節炎が含まれるが、これらに限定されない。また、多発性硬化症、I型糖尿病、網膜ブドウ膜炎、甲状腺炎、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、気道感作(喘息)、狼瘡、または大腸炎を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患も、本明細書の化合物の治療有効性の評価に使用することができる。これらのモデルは、研究コミュニティにおいて十分に確立され、当業者によく知られている(Current Protocols in Immunology,Vol 3.,Coligan,J.E.et al,Wiley Press.;Methods in Molecular Biology:Vol.225,Inflammation Protocols.,Winyard,P.G.and Willoughby,D.A.,Humana Press,2003.)。
【0194】
実施例F:ドライアイ、ブドウ膜炎、および結膜炎の処置のための動物モデル
薬剤は、ウサギコンカナバリンA(ConA)涙腺モデル、スコポラミンマウスモデル(皮下または経皮)、ボツリヌスマウス涙腺モデル、または眼球腺機能障害をもたらす多数の自然齧歯動物自己免疫モデル(例えば、NOD−SCID、MRL/lpr、またはNZB/NZW)(Barabino et al.,Experimental Eye Research 2004,79,613−621およびSchrader et al.,Developmental Opthalmology,Karger 2008,41,298−312)のうちのいずれかを含むがこれらに限定されない、当業者に既知であるドライアイの1つ以上の前臨床モデルにおいて評価され得る。これらのモデルにおける評価項目には、眼球腺および目(角膜等)の組織病理と、恐らくは、涙液産生を測定する典型的なシルマー試験またはその修正版(Barabinoら)とが含まれ得る。活性は、測定可能な病気が存在する前または存在した後に開始し得る複数の投与経路(例えば、全身的または局所的)を介して投薬することによって、査定され得る。
【0195】
薬剤は、当業者に既知であるブドウ膜炎の1つ以上の前臨床モデルにおいて評価され得る。これらは、実験的自己免疫ブドウ膜炎(EAU)およびエンドトキシン誘導性ブドウ膜炎(EIU)のモデルを含むが、これらに限定されない。EAU実験は、ウサギ、ラット、またはマウスにおいて実行され得、受動免疫化または能動免疫化を伴い得る。例えば、多数の網膜抗原のうちのいずれかを使用して、動物を関連する免疫原に感作し得、その後、動物に同一の抗原で目を攻撃し得る。EIUモデルは、より急性であり、致死未満量のリポ多糖類の局所投与または全身投与を伴う。EIUモデルおよびEAUモデルの両方の評価項目には、とりわけ、眼底検査、組織病理が含まれ得る。これらのモデルは、Smithらによって総説されている(Immunology and Cell Biology 1998,76,497−512)。活性は、測定可能な病気が存在する前または存在した後に開始し得る複数の投与経路(例えば、全身的または局所的)を介して投薬することによって、査定される。また、上記に列挙されたいくつかのモデルは、強膜炎/上強膜炎、脈絡膜炎、毛様体炎、または虹彩炎も発症し得るため、これらの病気の治療処置に関する化合物の潜在活性を調査する際に有用である。
【0196】
薬剤は、当業者に既知である結膜炎の1つ以上の前臨床モデルにおいて評価されてもよい。これらは、モルモット、ラット、またはマウスを利用する、齧歯動物モデルを含むが、これらに限定されない。モルモットモデルには、受動免疫化もしくは能動免疫化および/またはオボアルブミンもしくはブタクサ等の抗原による免疫感染プロトコルを利用するモデルが含まれる(Groneberg,D.A.,et al.,Allergy 2003,58,1101−1113において総説されている)。ラットモデルおよびマウスモデルは、モルモットにおけるモデルと一般設計において類似する(これも、Gronebergによって総説されている)。活性は、測定可能な病気が存在する前または存在した後に開始し得る複数の投与経路(例えば、全身的または局所的)を介して投薬することによって、査定され得る。このような研究の評価項目には、例えば、結膜等の眼組織の組織学的分析、免疫学的分析、生化学的分析、または分子分析が含まれ得る。
【0197】
本発明の種々の修正は、本明細書に説明する修正に加え、当業者であれば前述の説明から明白である。また、このような修正も、添付の請求項の範囲内にあると意図される。本出願において引用された全ての特許、特許出願、および公報を含む各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリル、および
3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルから選択される、化合物、
または、その薬学的に許容される塩。
【請求項2】
3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
(3R)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
(3S)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
(3R)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
(3S)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
(3R)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
(3S)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
(3R)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
(3S)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項15】
局所投与に適切である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
経皮投与に適切である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、またはゲルの形態である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
患者において、疾患を治療する方法であって、前記疾患は、JAK活性と関連し、前記方法は、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項19】
患者において、自己免疫疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記自己免疫疾患は、皮膚疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、I型糖尿病、ループス、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、または自己免疫性甲状腺疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記自己免疫疾患は、水疱性皮膚疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記水疱性皮膚疾患は、尋常性天疱瘡(PV)または水疱性類天疱瘡(BP)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記自己免疫疾患は、皮膚疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎または乾癬である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記皮膚疾患は、皮膚感作、皮膚炎、皮膚発疹、接触皮膚炎、またはアレルギー性接触皮膚炎である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
患者において、癌を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記癌は、固形腫瘍である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記癌は、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌、カポシ肉腫、キャッスルマン病、または膵臓癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記癌は、リンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記癌は、皮膚T細胞性リンパ腫または皮膚B細胞性リンパ腫である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
患者において、骨髄増殖性疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記骨髄増殖性疾患は、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、好酸球増加症候群(HES)、特発性骨髄線維症(IMF)、または全身性肥満細胞症(SMCD)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
患者において、炎症性疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記炎症性疾患は、虹彩炎、ブドウ膜炎、強膜炎、結膜炎、気道の炎症性疾患、炎症性筋疾患、または心筋炎である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
患者において、ウイルス性疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記ウイルス性疾患は、エプスタインバーウイルス(EBV)、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV 1、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、またはヒトパピローマウイルス(HPV)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
患者において、臓器移植の拒絶反応を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項39】
患者において、虚血再かん流を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項40】
患者において、食欲不振または悪液質を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項41】
患者において、疲労を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項42】
患者において、同種移植の拒絶反応または移植片対宿主拒絶反応を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項43】
患者において、関節リウマチを治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項44】
患者において、乾癬を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項45】
患者において、皮膚炎を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項46】
患者において、虹彩炎を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項47】
患者において、ブドウ膜炎を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項48】
患者において、強膜炎を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項49】
患者において、結膜炎を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜4および8〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩、あるいは請求項5〜7および11〜13のいずれか1項に記載の塩を、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項50】
式IIIの化合物のリン酸塩を調製するためのプロセスであって、
【化1】

III
式中、Rは、Hまたはメチルであり、式IIIの化合物をリン酸と組み合わせることを含む、プロセス。
【請求項51】
前記プロセスは、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]オクタンニトリルリン酸塩を調製するプロセスである、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記プロセスは、3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ヘプタンニトリルリン酸塩を調製するプロセスである、請求項50に記載のプロセス。
【請求項53】
前記組み合わせることは、有機溶媒の存在下で行われる、請求項50〜52のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項54】
前記有機溶媒は、アルコールである、請求項53に記載のプロセス。
【請求項55】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびブタノールから成る群より選択される、請求項54に記載のプロセス。
【請求項56】
前記組み合わせることは、約20℃を超える温度で行われる、請求項50〜52のいずれかに記載のプロセス。
【請求項57】
前記組み合わせることは、約60℃の温度で行われる、請求項50〜52のいずれかに記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−527481(P2012−527481A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512056(P2012−512056)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035728
【国際公開番号】WO2010/135621
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(505193450)インサイト・コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
【Fターム(参考)】