説明

LED駆動回路、発光装置、画像検査装置、分析装置、LED駆動回路の故障検査方法

【課題】LED駆動回路の故障箇所を容易に特定する技術を提供する。
【解決手段】本発明に係るLED駆動回路は、複数のLEDを縦横方向の格子状に接続したマトリクス状の回路構成を有し、いずれの方向に電流を流すかを切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED駆動回路、発光装置、画像検査装置、分析装置、LED駆動回路の故障検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内の液面レベルが許容範囲内に収まっているか否かを検査する技術として、下記特許文献1に記載の技術が提案されている。下記特許文献1では、検査対象物にX線を放射して画像を撮影し、その画像に基づき液面レベルを測定する。検査対象物が光を透過する場合には、X線に代えてLED(Light Emitting Diode)などの発光部材から光を照射して画像を撮影し、その画像に基づき液面レベルを測定することもできる。
【0003】
一方、複数のLEDを点灯させるLED駆動回路に関する技術として、下記特許文献2に記載のようなものがある。特許文献2では、複数のLEDと電流制限抵抗が直列に接続された直列点灯回路を複数並列に接続した回路構成を設け、その並列接続回路に直流電圧を供給することにより各LEDを点灯している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−214725号公報
【特許文献2】特開2000−67386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDを用いて液面を照らして液面レベルを検査する場合、光源面の光強度を均一にすることが好ましい。しかし、LEDは有寿命品であるため、断線故障などにより点灯することができなくなってしまう可能性がある。
【0006】
このとき、上記特許文献2のように、複数のLEDを直列接続した回路構成を用いて光源面を形成している場合、1個のLEDが断線故障するとその列のLEDが全て消灯してしまうので、いずれのLEDが断線故障したのか特定するために手間を要する。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、LED駆動回路の故障箇所を容易に特定する技術を提供するとともに、そのLED駆動回路を用いた発光装置、画像検査装置、分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るLED駆動回路は、複数のLEDを縦横方向の格子状に接続したマトリクス状の回路構成を有し、いずれの方向に電流を流すかを切り替えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るLED駆動回路によれば、縦方向に電流を流した場合と横方向に電流を流した場合の双方で光量が少ない部分が故障していることが分かるので、電流方向を切り替えるのみで故障箇所を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係るLED駆動回路100の構成図である。
【図2】LED駆動回路100の故障箇所を検出する手順を説明する図である。
【図3】実施の形態3におけるLED11の構成を示す側断面図である。
【図4】実施の形態4に係る発光装置200の構成図である。
【図5】拡散板240の機能を説明する図である。
【図6】実施の形態6に係る画像検査装置300の構成図である。
【図7】実施の形態7に係る化学分析装置500の構成図である。
【図8】分注チップ510が吸引した試料520または試薬530の液面レベル(液面高さ)Hを測定する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るLED駆動回路100の構成図である。LED駆動回路100は、LED11、FET(Field Effect Transistor)12、電流制限抵抗13を有する。
【0012】
LED11は、複数個が直列(図1の縦方向)に接続されて直列LED回路を構成する。図1では6個のLED11を直列接続した例を示した。さらにこの直列LED回路を複数並列(図1の横方向)に接続し、マトリクス状のLED回路を構成している。図1では3列並列接続した例を示した。LEDの直列接続数や並列接続数は1例であり、実際の個数は適宜定めてよい。
【0013】
FET12は、上述の直列LED回路において各LEDの前後に配置されている。直列接続されたLED11の前後のFET12が導通すると、図1の縦方向に電流が流れる。
【0014】
FET12は、各直列LED回路を並列方向(図1の横方向)に架橋するようにして、各LEDを図1の横方向に接続する位置にも別途配置されている。並列接続されたLED11の前後のFET12が導通すると、図1の横方向に電流が流れる。
【0015】
電流制限抵抗13は、図1の縦方向と横方向それぞれの入口部分に設けられており、縦方向および横方向それぞれの電流を調整する役割を有する。各電流制限抵抗13の一端には電圧+Vが印加され、もう一端は各行各列のFET12に接続されている。
【0016】
各FET12は、制御信号が印加されることによって導通する。LED駆動回路100に「H」レベルの制御信号が印加されると、上述の直列LED回路を構成するLED11の前後のFET12が導通する。直列LED回路を架橋する並列接続方向のFET12には、NOT回路14で反転された「L」レベルの制御信号が印加されるため、これらのFET12は導通しない。LED駆動回路100に「L」レベルの制御信号が印加されると、直列LED回路を架橋する並列接続方向のFET12が導通し、直列LED回路を構成するLED11の前後のFET12は導通しない。これらの動作により、縦方向に電流を流すか横方向に電流を流すかを、制御信号によって切り替えることができる。
【0017】
本実施の形態1における「縦接続スイッチ」は、直列LED回路を構成するLED11の前後のFET12が相当する。「横接続スイッチ」は、直列LED回路を並列接続方向に架橋するFET12が相当する。
【0018】
以上、本実施の形態1に係るLED駆動回路100の構成を説明した。次に、LED駆動回路100を構成するLED11の故障箇所を検出する手順を、図2および下記(故障箇所検出手順:ステップ1)〜(故障箇所検出手順:ステップ4)で説明する。
【0019】
図2は、LED駆動回路100の故障箇所を検出する手順を説明する図である。回路構成は図1と同様である。ここでは図2中のLED11aが断線故障して消灯したものと仮定する。LED11aが故障すると、図2の縦方向に電流を流しているときは列31内の全てのLED11が消灯し、横方向に電流を流しているときは行32内の全てのLED11が消灯する。
【0020】
(故障箇所検出手順:ステップ1)
LED11aが断線故障すると、列31または行32が消灯するため、LED駆動回路100全体としての光量が低下する。例えば、LED駆動回路100が光を放射する対向側にカメラ等の撮影装置をあらかじめ配置しておき、撮影画像の輝度が低下した旨を把握することにより、LED11aの消灯を検出することができる。撮影画像の輝度が低下したことは、目視確認によって検出してもよいし、コンピュータによる画像処理などによって自動的に検出してもよい。
【0021】
(故障箇所検出手順:ステップ2)
LED11aの消灯を検出した後、LED駆動回路100に「H」レベルの制御信号を印加して図2の縦方向に電流を流す。LED11aが断線故障していると、列31内のLED11が全て消灯するため、撮影画像の列31に相当する部分のみが暗くなる。これにより、列31内のいずれかのLED11が故障している旨を特定することができる。撮影画像の列31に相当する部分のみが暗くなっていることは、目視確認によって検出してもよいし、コンピュータによる画像処理などによって自動的に検出してもよい。
【0022】
(故障箇所検出手順:ステップ3)
LED駆動回路100に「L」レベルの制御信号を印加して、図2の横方向に電流を流す。LED11aが断線故障していると、行32内のLED11が全て消灯するため、撮影画像の行32に相当する部分が暗くなる。これにより、行32内のいずれかのLED11が故障している旨を特定することができる。撮影画像の行32に相当する部分のみが暗くなっていることは、目視確認によって検出してもよいし、コンピュータによる画像処理などによって自動的に検出してもよい。
【0023】
(故障箇所検出手順:ステップ4)
ステップ3とステップ4の結果を重ね合わせることにより、列31と行32が交差している箇所のLED11aが故障していることが分かる。これは、ステップ3とステップ4における撮影画像を目視比較することによって行ってもよいし、コンピュータによる画像処理などによって自動的に行ってもよい。例えば、ステップ3とステップ4における撮影画像を重ね合わせ、最も暗くなっている部分におけるLED11が故障しているものと判断することができる。
以上、本実施の形態1において、LED駆動回路100を構成するLED11の故障箇所を検出する手順を説明した。
【0024】
以上の説明では、縦横方向に通電しているときの撮影画像を重ね合わせることで故障箇所を特定することを説明したが、縦方向の故障位置と横方向の故障位置を特定できれば、その他の方法を用いて故障箇所を特定してもよい。例えば、電流制限抵抗13の両端電圧を測定してコンピュータ等の演算装置に通知し、演算装置はこの両端電圧が急激に変化したときにその行または列でLED11の故障が発生したものと判断してもよい。
【0025】
また、本実施の形態1では、電流の向きを切り替えるスイッチとしてFET12を用いたが、同等の機能を発揮することができるその他のデバイス等を用いることもできる。例えばFET以外の半導体スイッチングデバイスを用いることが考えられる。
【0026】
なお、LED11の故障を検出するための上述の各ステップは、例えばLED駆動回路100を使用していないときに実施してもよいし、光を照射する妨げにならなければLED駆動回路100の使用中に実施してもよい。
【0027】
以上のように、本実施の形態1に係るLED駆動回路100は、複数のLED11を格子状に接続してなり、制御信号を切り替えることによってFET12を縦方向または横方向に導通させ、電流の向きを縦横に切り替えることができる。これにより、電流方向を切り替えるのみで、消灯している部分が交差する箇所のLED11が故障している旨を容易に検出することができる。
【0028】
また、本実施の形態1に係るLED駆動回路100は、上述の直列LED回路を構成するLED11を縦方向に接続するFET12と、直列LED回路を横方向に架橋するように接続するFET12とを備える。これにより、同一のLED11を縦方向点灯時にも横方向点灯時にも兼用することができ、少ない個数のLED11で縦横方向に通電方向を切り替えることができる。
【0029】
<実施の形態2>
実施の形態1で説明した手法を用いてLED駆動回路100の故障箇所を特定した後、故障しているLED11を他のLED11に速やかに切り替えることが望ましい。例えば、各LED11に2つの発光素子を持たせておき、一方の発光素子が消灯したとき他方の発光素子を即座に通電させるように、各LED11を構成しておくことが考えられる。
【0030】
発光素子の切り替えは、LED11内の電気回路によって自動的に行われるようにしてもよいし、個々のLED11に対して個別に制御信号を出力して発光素子を切り替えられるようにしてもよい。
【0031】
本実施の形態2の構成を採用した場合、各LED11のコストは高くなるが、LED駆動回路100を速やかに故障状態から復帰させることができる利点がある。
【0032】
<実施の形態3>
実施の形態2では、予備の発光素子を設けておくことによって、故障したLED11を故障していない状態に速やかに復帰させることを説明した。本発明の実施の形態3では、これに代えて、またはこれと併用して、発光素子を容易に着脱することのできる構成をLED11に導入し、故障したLED11を速やかに復帰させることを説明する。LED駆動回路100の構成は、実施の形態1〜2と同様である。
【0033】
図3は、本実施の形態3におけるLED11の構成を示す側断面図である。LED11は、LED素子41、LED素子用アタッチメント44、ソケット45を有する。LED素子41として、例えばKingbright製KPK3020PWC−Aを用いることができる。
【0034】
LED素子41の側面の切欠部49に接するように、アタッチメント44のアーム42を嵌め込む。切欠部49はLED素子41の電極となっており、バネ構造のアーム42により、アノード側、カソード側からLED素子41をそれぞれ押さえて固定する。LED素子41の電極が羽構造となっている場合でも側面から押さえることが可能である。また、その場合アーム42は羽構造の上方向から押さえても構わない。
【0035】
アタッチメント44の2対のアーム42は、それぞれピン43と導通している。ソケット45には、アタッチメント44のピン43をそれぞれ基板上の直流電源配線47およびグラウンド配線48に接続するため、2本のピン46が設けられている。
【0036】
アタッチメント44を基板側ソケット45に嵌め込むと、ソケット側のピン46と導通する。ソケット45は位置決め用の凸部を有し、基板上に設けられた位置決め用穴と嵌めあうことでLEDの位置ズレを最小限とすることができる。
以上のようなアタッチメント44とソケット45により、故障したLEDを容易に着脱して交換することができる。
【0037】
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4では、LED駆動回路100を構成するLED11が故障している間の光量を補償する発光装置200の構成と動作例を説明する。
【0038】
図4は、本実施の形態4に係る発光装置200の構成図である。本実施の形態4に係る発光装置200は、LED光源210、CCDカメラ220、故障検査部230、拡散板240を備える。以下、各構成要素の機能について説明する。
【0039】
LED光源210は、実施の形態1〜3いずれかで説明したLED駆動回路100を備え、LED11が発する光をCCDカメラ220に向けて照射する。マトリクス状に配置されたLED11を用いるLED駆動回路100を採用することにより、LED光源210は、平行光線を生成する面光源として用いることができる。
【0040】
CCDカメラ220は、LED光源210が照射する光を対向側から撮影し、故障検査部230に撮影画像を出力する。撮影画像の形式は任意でよいが、故障検査部230をコンピュータ等の演算装置によって実現する場合は、コンピュータが処理し易い画像データ形式で出力することが好ましい。CCDカメラ以外の撮影装置を用いてもよい。
【0041】
故障検査部230は、CCDカメラ220が出力する撮影画像を受け取り、実施の形態1で説明した手法を用いて、LED駆動回路100の故障箇所を検出する。また、故障検査を行うに際して、LED駆動回路100の電流の向きを縦横に切り替える。故障検査部230は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアを用いて構成することもできるし、マイコンやCPU(Central Processing Unit)のような演算装置とその動作を規定するソフトウェアを用いて構成することもできる。
【0042】
拡散板240は、LED光源210とCCDカメラ220の間に配置され、LED光源210が照射する光を拡散して面内の光量を均一化する。なお、LED光源210の光源面との間の距離を可変する図示しない駆動機構を備える。拡散板240の働きについては、後述の図5で改めて説明する。
【0043】
図5は、拡散板240の機能を説明する図である。ここでは、LED光源210と拡散板240を側面から見た模式図を示した。以下、図5の各図について説明する。
【0044】
図5(a)は、LED駆動回路100が故障していない状態における光量の分布を示している。この状態では、LED光源210の中央付近の光量が最も多くなる。拡散板240は、その面内で光を拡散させ、面内の光量を均一化する。なお図5では、以降の比較のため拡散前の光量分布のみを示した。
【0045】
図5(b)は、上から2番目のLED11が故障したときの光量分布を示す。この状態では、LED光源210の上方の光量が不足しがちになる。拡散板240の働きによってある程度は光量分布が均一化されるが、完全に不均一が解消されるわけではない。
【0046】
図5(c)は、図5(b)の状態の下で拡散板240を前方に移動させ、LED光源210と拡散板240の間の距離を広げた状態を示す。この状態では、各LED11が発する光が互いに重なり合う部分が図5(b)よりも大きくなり、拡散板240の面内における光量分布の不均一がやや解消されている。この状態でさらに拡散板240の働きによって光を拡散させることにより、光量分布の不均一をさらに解消することができる。
【0047】
なお、拡散板240の位置調整は、ユーザが手動で行ってもよいし、故障検査部230がLED駆動回路100の故障を検出した時点で故障検査部230が拡散板240の位置を移動させる機構を稼動させて所定距離前方に移動させてもよい。
【0048】
また、LED駆動回路100を構成するLED11が故障している間の光量を補償する必要がない場合は、拡散板240を設けず、故障検査部230がLED駆動回路100の故障を検出するのみの構成としてもよい。以下の実施の形態でも同様である。
【0049】
あるいは、拡散板240を用いて光量を補償することに代えて、消灯したLED11の周辺のLED11の発光強度を強くし、光量不足を補償するようにしてもよい。この場合は、例えば電流制限抵抗13をデジタル可変抵抗としておき、故障検査部230の指示により電流制限抵抗13の抵抗値を下げ、LED11に流す電流値を上げて発光強度を上げるようにすればよい。以下の実施の形態でも同様である。
【0050】
以上のように、本実施の形態4では、拡散板240をLED光源210の前に設けておき、その位置を調整する。これにより、LED駆動回路100のLED11が故障してから交換されるまでの間の光量分布を、拡散板240の面内で均一化することができる。
【0051】
<実施の形態5>
実施の形態4では、LED駆動回路100を構成するLED11が故障している間の光量を補償することを説明した。一方、故障検査部230がLED駆動回路100の故障を速やかに検出するのみならず、その旨をユーザに速やかに通知してLED11の交換等を促すことが好ましい。そこで本発明の実施の形態5では、LED駆動回路100の故障箇所を通知することのできる構成と動作例を説明する。その他の構成は、実施の形態4と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0052】
<実施の形態5:構成例その1>
本構成例では、故障検査部230に、LED駆動回路100の故障箇所を画面表示する表示部を設ける。例えば、LED駆動回路100上のLED11の配置を格子状に画面表示しておき、故障したLED11を特定すると、そのLED11を点滅させる、などの手法で故障箇所をユーザに通知することができる。
【0053】
<実施の形態5:構成例その2>
本構成例では、故障検査部230をLAN(Local Area Network)などのネットワークに接続する。故障検査部230は、LED駆動回路100の故障箇所を通知する通信パケットを所定の送信先に送信する。例えば電子メール形式で送信するようにすれば、受信側で特別な受信装置などを設ける必要がないので、便宜である。電子メールの内容は、例えば故障したLED11の番号などを記載するとともに、故障を検出した日時などを併せて記載すると、ユーザにとって便宜である。
【0054】
<実施の形態5:構成例その3>
上記構成例その1と構成例その2を組み合わせて用いてもよい。
以上のように、本実施の形態5によれば、故障検査部230は、LED駆動回路100の故障箇所をユーザに通知することができるので、ユーザは故障したLED11を速やかに交換等することができる。
【0055】
<実施の形態6>
本発明の実施の形態6では、実施の形態4〜5で説明した発光装置200を用いて被検査物の画像を撮影し、画像上で被検査物を検査する画像検査装置の構成を説明する。
【0056】
図6は、本実施の形態6に係る画像検査装置300の構成図である。画像検査装置300は、アーム420によってLED光源210とCCDカメラ220の間に移動される被検査物410の画像を撮影し、検査画像として提供する装置である。画像検査装置300は、実施の形態4〜5いずれかで説明した発光装置200の構成に加え、画像処理部310を新たに備える。
【0057】
CCDカメラ220は、LED光源210によって照らされた被検査物410の画像を撮影し、故障検査部230と画像処理部310に出力する。本実施の形態6において、CCDカメラ220は、被検査物410の画像を撮影する役割と、LED駆動回路100の故障を検査するための画像を撮影する役割とを兼ねるが、それぞれの役割毎に別個の撮影装置を設けてもよい。
【0058】
故障検査部230は、LED駆動回路100の故障を検出したときは、その故障箇所を画像処理部310に通知する。
【0059】
画像処理部310は、CCDカメラ220が撮影した被検査物410の撮影画像に、拡大・縮小などの必要な画像処理を施し、検査画像として出力する。また、LED駆動回路100のLED11が故障しているときは、撮影画像のうち故障箇所に相当する部分の周辺の輝度を上げる画像処理を施して光量不足を補償し、検査画像上で被検査物410を確認しやすくする。
【0060】
画像処理部310は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアを用いて構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置とその動作を規定するソフトウェアを用いて構成することもできる。
【0061】
ユーザは、画像処理部310が出力する検査画像を目視確認することによって被検査物410を検査することもできるし、検査画像をコンピュータなどの演算装置に入力し、画像処理によって自動的に被検査物410を検査することもできる。
【0062】
なお、LED11が故障している間の画像補償処理を行う必要がない場合は、必ずしも画像処理部310を設けなくともよく、CCDカメラ220が撮影した撮影画像をそのまま検査画像として出力してもよい。以下の実施の形態でも同様である。
【0063】
以上のように、本実施の形態6によれば、LED駆動回路100が故障したときは、画像処理部310による画像上の補償処理によって光量の不足を補うことができるので、LED11の故障から交換等までの間の検査を中断することなく継続することができる。
【0064】
<実施の形態7>
本発明の実施の形態7では、実施の形態6で説明した画像検査装置300を用いて液体の液面高さを測定する化学分析装置の構成と動作例を説明する。
【0065】
図7は、本実施の形態7に係る化学分析装置500の構成図である。化学分析装置500は、試料520と試薬530を分注して混合し、ある温度で増幅して試料を光学的もしくは電気的に分析する装置である。以下、図7の各構成について説明する。
【0066】
化学分析装置500は、実施の形態6で説明した画像検査装置300と同様の構成に加え、化学分析を行うための構成を備える。また、被検査物410に代えて、後述の分注チップ510を備える。分注チップ510とアーム420は、本実施の形態7における「分注装置」に相当する。分注チップ510が吸引した液体の液面レベルは、液面測定部580によって測定される。
【0067】
分注装置の分注チップ510は、試料520と試薬530を所定量に分注して反応容器540に滴下する。分注チップ510による吸引・吐出量が正確でないと、後の分析工程における化学反応等に与える影響が大きくなり、分析結果の信頼性が低下する。そのため、分注する時に液面レベルを測定し、分注量を正確に測定する必要がある。分注量の測定については後述する。
【0068】
化学分析装置500は、試料520と試薬530を分注した後、試料520を増幅するための温度調節を行う。これは、PCR(Polymerase Chain Reaction)法のように周期的に温度変化をさせる方法と、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法やLAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法のように、一定の温度を保持する方法がある。ここでは、NASBA法を実行する場合を説明する。
【0069】
NASBA法は、1温度のみで増幅可能な恒温増幅法の一つである。本例では,この温度を41℃とし、インキュベータ550を用いて試料520を増幅する。増幅した試料520は検査部570で分析される。
【0070】
検査部570は、フォトダイオードのような受光素子を用いて試料520を分析してもよいし、試料520の電気的反応により試料520を分析しても構わない。例えば、励起光源として発光ダイオード(LED)を用い、光照射によって試料520が蛍光している状態を受光素子(フォトダイオード)により測定する光学的測定法を用いることができる。
【0071】
試料520と試薬530を加えた反応容器540に蛍光物質を加え、攪拌機構560により混合し、検査部570に反応容器540を搬送する。検査部570において、LEDを用いて反応容器540内の試料を発光させ、その試料量を蛍光信号として測定する。測定された蛍光信号は、データとして外部の画像処理装置(図示せず)に蓄積され、定量分析結果として出力される。
【0072】
以上、化学分析装置500の全体構成について説明した。次に、分注チップ510が吸引した液体の量を検査画像に基づき測定する手法を説明する。
【0073】
図8は、分注チップ510が吸引した試料520または試薬530の液面レベル(液面高さ)Hを測定する手順を説明する図である。図8を参照しながら、以下の(液面レベル測定手順:ステップ1)〜(液面レベル測定手順:ステップ5)でその手順を説明する。
【0074】
(液面レベル測定手順:ステップ1)
アーム420は、分注チップ510を移動させて試料520または試薬530を分注チップ510に吸引させる。これにより、分注チップ510は図8(a)の状態となる。
【0075】
(液面レベル測定手順:ステップ2)
アーム420は、分注チップ510をLED光源210とCCDカメラ220の間に移動させる。このとき、CCDカメラ220から見て、図8(b)に示すように分注チップ510の左右いずれか半分のみがLED光源210と重なるように、分注チップ510の位置を調整する。
【0076】
(液面レベル測定手順:ステップ3)
LED光源210より分注チップ510を照らし、CCDカメラ220は対向側から分注チップ510を撮影する。撮影画像は、液面測定部580に出力される。
【0077】
(液面レベル測定手順:ステップ4)
液面測定部580は、撮影画像のうち隣接する画素の輝度成分が急激に変化する箇所を検出することにより、分注チップ510の画像を図8(b)に示すような4つの領域に分割する境界線を検出する。具体的には、以下のような手法を適宜組み合わせて用いることができる。
【0078】
(液面レベル測定手順:ステップ4:その1)
図8(b)の分注チップ510の右上領域は、背後からLED光源210に照らされているので輝度が高い。図8(b)の分注チップ510の左上領域は、背後にLED光源210が存在しないので、輝度が低い。この輝度差により、分注チップ510の右上領域と左上領域の境界線を検出することができる。
【0079】
(液面レベル測定手順:ステップ4:その2)
図8(b)の分注チップ510の右上領域と右下領域を比べると、右下領域には試料520または試薬530が存在しているため、右上領域よりも輝度が低くなり、または色が異なる。この輝度差または色差により、分注チップ510の右上領域と右下領域の境界線を検出することができる。
【0080】
(液面レベル測定手順:ステップ4:その3)
図8(b)の分注チップ510の右下領域は、背後からLED光源210に照らされているので輝度が高い。図8(b)の分注チップ510の左下領域は、背後にLED光源210が存在しないので、輝度が低い。この輝度差により、分注チップ510の右下領域と左下領域の境界線を検出することができる。
【0081】
(液面レベル測定手順:ステップ5)
液面測定部580は、ステップ4の結果により、図8(b)に示すように、分注チップ510の画像を4つの領域に分割することができる。これにより、液面の境界線が明確になるので、液面レベルHを容易に求めることができる。液面レベルHと試料520または試薬530の量との関係は、分注チップ510の形状からあらかじめ得られるので、液面レベルHが分かれば試料520または試薬530の量も分かる。具体的には、液面レベルHと液体体積との対応関係をデータテーブルなどに記憶させておき、これを参照して液体体積を求めればよい。
【0082】
以上、本実施の形態7に係る化学分析装置500について説明した。なお、LED駆動回路100の故障検出を行うためのステップは、化学検査装置500を使用していないときに実施してもよいし、図8(b)の右半面のように分注チップ510を照射していない領域で電流方向を切り替えて故障検出を行ってもよい。後者の場合は、化学検査装置500を使用中にLED11が故障した場合でも、速やかに故障箇所を特定できるメリットがある。
【0083】
以上のように、本実施の形態7によれば、液面レベルHを検査するための画像検査装置の光源としてLED駆動回路100を用いているので、LED11が故障しても、速やかに故障箇所を特定し交換するなどの対処を取ることができ、円滑な化学検査に資する。
【0084】
また、本実施の形態7において、実施の形態4〜5で説明したように、LED11が故障した際の光量不足を補償する構成を採用すれば、LED11が故障している間でも化学検査装置500の検査工程を継続することができる。ただし、液面レベルHを高精度に測定しなければならない場合には、光量を十分に供給する観点から、故障したLED11を速やかに交換することが望ましい。
【0085】
<実施の形態8>
実施の形態7で説明した化学検査装置500の1例として、血液検査装置、DNA検査装置などが考えられる。これらの検査装置の基本構成は実施の形態7に係る化学検査装置500と同様であるため、実施の形態7と同様の構成を採用することができる。その他の液体試料を分析する装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0086】
11、11a:LED、12:FET、13:電流制限抵抗、14:NOT回路、31:列、32:行、41:LED素子、42:アーム、43:ピン、44:LED素子用アタッチメント、45:ソケット、46:ピン、47:直流電源配線、48:グラウンド配線、49:切欠部、100:LED駆動回路、200:発光装置、210:LED光源、220:CCDカメラ、230:故障検査部、240:拡散板、300:画像検査装置、310:画像処理部、410:被検査物、420:アーム、500:化学分析装置、510:分注チップ、520:試料、530:試薬、540:反応容器、550:インキュベータ、560:攪拌機構、570:検査部、580:液面測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを縦横方向の格子状に接続したLED回路と、
前記LED回路に縦方向または横方向いずれに電流を流すかを切り替えるスイッチと、
を備えたことを特徴とするLED駆動回路。
【請求項2】
前記スイッチは、
前記LED回路内で前記複数のLEDを縦方向に接続する縦接続スイッチと、
前記LED回路内で前記複数のLEDを横方向に接続する横接続スイッチと、
を有し、
前記スイッチは、
前記縦接続スイッチを導通させることによって前記LED回路に縦方向に電流を流し、
前記横接続スイッチを導通させることによって前記LED回路に横方向に電流を流す
ことを特徴とする請求項1記載のLED駆動回路。
【請求項3】
前記LEDは2以上の発光素子を有し、
発光中の前記発光素子が故障すると他の前記発光素子を発光させる
ことを特徴とする請求項1記載のLED駆動回路。
【請求項4】
前記LEDは、嵌め込み式のアタッチメントとソケットによって着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のLED駆動回路。
【請求項5】
請求項1記載のLED駆動回路と、
前記LED駆動回路の故障箇所を特定する故障検査部と、
を備え、
前記故障検査部は、
前記LED回路のうち故障が発生している縦方向の位置と横方向の位置を特定して両者を重ね合わせることにより、故障している前記LEDの箇所を特定する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記LED駆動回路が光を発しているときの画像を撮影する撮影部を備え、
前記故障検査部は、
前記LED回路に縦方向に電流が流れているときの前記画像と、前記LED回路に横方向に電流が流れているときの前記画像とを重ね合わせ、いずれの場合においても光量が低下している箇所の前記LEDが故障していると判定する
ことを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数のLEDが発する光を拡散して光量を面内で均一化する拡散板と、
前記複数のLEDが光を発する向きに沿って前記拡散板の位置を可変する機構と、
を備えたことを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項8】
前記故障検査部は、故障したと判定した前記LEDの箇所を画面表示する
ことを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項9】
前記故障検査部は、故障したと判定した前記LEDの箇所を示す通信パケットをネットワークの所定送信先に送信する
ことを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項10】
請求項5記載の発光装置と、
前記発光装置が光を発しているときの画像を撮影する撮影部と、
前記画像のうち前記故障検査部が故障したと判定した前記LEDの箇所に相当する画像領域を画像処理補正して輝度を補償する画像処理部と、
を備えたことを特徴とする画像検査装置。
【請求項11】
請求項5記載の発光装置と、
液体を吸引して分注する分注装置と、
前記分注装置が液体を吸引した状態の画像を撮影する撮影部と、
前記画像に基づき前記液体の液面高さを測定する液面測定部と、
前記液体の特性を分析する検査部と、
を備え、
前記発光装置は、
前記分注チップが液体を吸引した状態で前記分注チップに向けて発光し、
前記撮影部は、
前記発光装置が前記分注チップに向けて発光している状態で対向側から前記分注チップの画像を撮影し、
前記検査部は、その画像に基づき前記液面高さを測定する
ことを特徴とする分析装置。
【請求項12】
複数のLEDを縦横方向の格子状に接続したLED回路と、
前記LED回路に縦方向または横方向いずれに電流を流すかを切り替えるスイッチと、
を備えたLED駆動回路の故障箇所を検査する方法であって、
前記LED回路のうち故障が発生している縦方向の位置と横方向の位置を特定するステップと、
縦方向の故障位置と横方向の故障位置を重ね合わせることにより故障している前記LEDの箇所を特定するステップと、
を有することを特徴とするLED駆動回路の故障検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−100929(P2011−100929A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256196(P2009−256196)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】