説明

LXR核内受容体結合性化合物

本発明は、一般式(1)に記載の2−アミノ−4−オキソ−キナゾリンに関する。この化合物はLXR受容体と結合して、LXR受容体のアゴニストおよびアンタゴニストとして作用する。本発明はさらに、前記化合物が当該核内受容体と結合することを介する、疾患および/または症状の処置、および前記化合物を用いる薬物の生産に関する。特に本化合物は、高コレステロール血症、肥満症または高いリポタンパク質(LDL)レベルに関連する他の疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(1)に記載の化合物に関する。この化合物はLXR受容体と結合し、LXR受容体のアゴニストおよびアンタゴニストとして作用する。本発明はさらに、前記化合物が当該核内受容体と結合することを介する、疾患および/または症状の処置、および前記化合物を用いる薬物の生産に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多細胞生物は細胞と身体区画の間の発達した情報輸送機構に依存する。送信される情報は非常に複雑であり得、細胞の分化、増殖、または複製に関与する遺伝的プログラムの変化を導くことが可能である。シグナルまたはホルモン、は単純な分子、例えばペプチド、脂肪酸、またはコレステロール誘導体であることが多い。
【0003】
これらのシグナルの多くは、最終的には、特定の遺伝子の転写を変化させることによってその作用を生じる。種々のシグナルに対する細胞応答を媒介するタンパク質のうち、十分に研究されている群の一つは、核内受容体として既知の転写因子ファミリーである。本明細書中では以後度々、核内受容体を「NR」と称する。この群のメンバーには、ステロイドホルモン、ビタミンD、エクジソン、シスおよびトランスレチノイン酸、甲状腺ホルモン、胆汁酸、コレステロール誘導体、脂肪酸(および他のペルオキシソーム増殖因子)に関する受容体、ならびにいわゆるオーファン受容体、この群の他のメンバーと構造が類似するタンパク質であるが、対象リガンドが未知であるもの(Escriva,H. et al., リガンド結合性は核内受容体の進化過程で獲得された(Ligand binding was acquired during evolution of nuclear receptors)、PNAS, 94, 6803 - 6808, 1997)(非特許文献1)、を含む。オーファン受容体は、細胞内の未知のシグナル伝達経路を示す可能性があり、あるいはリガンドによる活性化を伴わずに機能する核内受容体である可能性がある。これらのいくつかのオーファン受容体による転写活性化は、外因性リガンドの不存在下、および/または、細胞表面に由来するシグナル伝達経路を介して生じる可能性がある(Mangelsdorf,D.J. et al.、核内受容体スーパーファミリー:10年代(The nuclear receptor superfamily: the second decade)、Cell 83, 835-839, 1995)(非特許文献2)。
【0004】
概して、NRには3つの機能ドメインが規定されている。アミノ末端ドメインは何らかの調節機能を有すると考えられている。本明細書中以後、「DBD」と称するDNA結合ドメインは、通常、2つのジンクフィンガーエレメントを含み、応答遺伝子のプロモータ内にある特定のホルモン応答性エレメントを認識する。このホルモン応答性エレメントは、本明細書中以後、「HRE」と称する。「DBD」中の特定アミノ酸残基は、DNA配列結合特異性を付与することが示されている(Schena,M.&Yamamoto, K.R.、哺乳類糖質コルチコイド受容体誘導体は酵母内の転写を増強する(Mammalian Glucocorticoid Receptor Derivatives Enhance Transcription in Yeast)、Science,241:965-967, 1988)(非特許文献3)。本明細書中以後、「LBD」と称するリガンド結合ドメインは、既知NRのカルボキシ末端領域にある。ホルモン不存在下では、すべてではないがいくつかのNRのLBDは、DBDとそのHREの相互作用を妨害するようである。ホルモンが結合すると、NRのコンフォメーション変化が生じ、これにより、この妨害が開放されると思われる(Brzozowski et al.、エストロゲン受容体に関する作用および拮抗作用の分子的基礎(Molecular basis of agonism andantagonism in the oestrogen receptor)、Nature, 389, 753 - 758, 1997;Wagner et al.、甲状腺ホルモン受容体におけるホルモンの構造上の役割(Astructural role for hormone in the thyroid hormone receptor)、Nature, 378, 690 -697. 1995)(非特許文献4及び5)。HBDを有さないNRは、構成的に転写を活性化するが、この活性化は低レベルである。
【0005】
活性化補助因子または転写活性化因子は、配列特異的転写因子および基礎転写装置間を架橋し、さらに標的細胞のクロマチン構造に影響すると提唱されている。SRC-1、ACTR、およびGrip1のようないくつかのタンパク質は、リガンドによって増強される様式でNRと相互作用する(Heery et al.、転写活性化補助因子の特徴的モチーフは核内受容体との結合を媒介する(Asignature motif in transcriptional coactivators mediates binding to nuclearreceptors)、Nature, 387,733 - 736;Heinzel et al.、N-CoR、mSin3およびヒストン脱アセチル化酵素を含有する複合体は転写抑制を媒介する(Acomplexcontaining N-CoR, mSin3 and histone deacetylase mediates transcriptional repression)、Nature387,43 - 47, 1997)。さらに、抑制性受容体相互作用タンパク質または補抑制体との物理的相互作用が証明されている(Xu et al.、核内受容体機能に関する活性化補助因子および補抑制体の複合体(Coactivator and Corepressor complexes in nuclear receptor function)、Curr Opin Genet Dev,9(2), 140 - 147, 1999)(非特許文献6〜8)。
【0006】
核内受容体調節因子、例えばステロイドホルモンは、細胞内受容体と結合し、核内受容体−リガンド複合体を形成することによって特定細胞の増殖および機能に影響する。この場合、核内受容体−ホルモン複合体は、特定遺伝子の調節領域内にあるホルモン応答性エレメント(HRE)と相互作用し、特定遺伝子の発現を変化させる。
【0007】
用語LXR(肝臓X受容体)は、この受容体のすべてのサブタイプを含む。具体的には、LXRは、LXRa(LXRアルファ、RLD-1およびNR1H3としても既知)およびLXRb(LXRベータ、NER、NER1、UR、OR-1、R1P15およびNH1H2としても既知)を含み、LXRのリガンドはLXRaまたはLXRbのリガンドを含むと理解されるであろう。LXRは原型2型核内受容体であり、これはレチノイドX受容体(以後RXR、Forman et al., Cell, 81, 687-93, 1995)(非特許文献9)を有する原型ヘテロ二量体型で標的遺伝子のプロモータ領域に結合すると遺伝子を活性化する。関連するLXRの生理的リガンドは、コレステロールの酸化誘導体、例えば22-ヒドロキシコレステロールおよび24,25(S)-エポキシコレステロールであると思われる(Lehmann, et al., Biol. Chem. 272(6), 3137-40, 1997)(非特許文献10)。LXRと結合したオキシステロールリガンドは、コレステロール代謝に関与するいくつかの遺伝子の発現を調節することがわかった(Janowski, et al., Nature, 383, 728-31, 1996)(非特許文献11)。
【0008】
LXRは肝臓のオキシステロールセンサーであると提唱される。活性化(例えばオキシステロールの結合)により、これは、胆汁酸合成に関与する重要な遺伝子、例えばCYP7A1の転写を上方制御することによって、食事性コレステロールから胆汁酸への変換に影響する。したがって、肝臓でLXRが活性化されると、コレステロール由来の胆汁酸の合成が増加し、これにより肝コレステロールのレベル低下が生じ得る。提唱されるこの肝コレステロール代謝に関するLXRの機能は、ノックアウトマウスを用いた実験によって確認された。受容体LXRaを欠くマウスは、食事性コレステロールの増加に対する正常な応答能を喪失し、CYP7A1をエンコードする遺伝子の転写を誘導しなかった。これにより、肝臓に大量のコレステロールが蓄積し、肝機能障害が生じた。(Peet, et al., Cell, 93, 693-704, 1998)(非特許文献12)。
【0009】
肝臓での重要な機能に加えて、LXRはマクロファージおよび腸粘膜細胞におけるコレステロール恒常性の調節に重要な役割を果たし、これらの細胞で、LXRはABC(=ATP結合カセット)ファミリーの膜タンパク質由来のコレステロール輸送体を上方制御する(Repa, et al., J Biol Chem. 2002 May24; 277(21): 18793-800)(非特許文献13)。これらの輸送体は、食事由来コレステロールの摂取に決定的に関与すると考えられ、その理由は、これらの遺伝子が変異すると、疾患、例えばシトステロール血症が生じることである(Berge, et al.,Science (2000);290(5497):1771-5.)(非特許文献14)。
【0010】
ABC輸送体ファミリーの他のメンバーは、蓄積マクロファージ由来のコレステロール流出を担うと思われる。このプロセスはアテローム硬化型病変の発生を予防すると考えられる。合成リガンドによってLXRを刺激すると、マクロファージ由来のコレステロール流出が増加し、アテローム硬化型プラークの蓄積が減少するかもしれない(Venkateswaran, et al., PNAS (2000) 24;97(22):12097-102;Sparrow, et al., J BiolChem(2002)277(12):10021-7;Joseph, et al., PNAS (2002);99(11):7604-9)(非特許文献15及び16)。
【0011】
しかしながら、動物実験では、肝臓のLXRを完全アゴニストで活性化すると、胆汁酸合成が増加するばかりでなく、重要な酵素、例えば脂肪酸シンターゼ(FAS)またはステアリル-CoA不飽和化酵素(SCD-1)の上方制御を介して脂肪酸およびトリグリセリド(triglygerids)の新規合成が促進されることが観察された(Schultz, et al., Genes Dev (2000) 14(22):2831-8)(非特許文献17)。
【0012】
したがって、理想的な合成LXR結合性化合物は、肝胆汁酸形成およびABC輸送体媒介性の食事由来コレステロール摂取の減少およびマクロファージ由来コレステロール流出の増加に対するアゴニスト活性を保持する性質を有するであろう。同時に前記化合物は、脂肪酸およびトリグリセリド(triclyceride)合成の増加を介して作動する高脂血症性効力を欠くであろう。
【0013】
現在まで、LXR受容体と結合し、これにより、当該核内受容体が原因であるか、あるいはこの受容体によって影響を受ける疾患または症状の処置に有用性を示す化合物はほとんど記載されていない(Collins, et al., J Med Chem. (2002) 45(10):1963-6;Schultz, et al., Genes Dev(2000)14(22):2831-8;Sparrow, et al., J Biol Chem (2002) 277(12):10021-7)(非特許文献18及び19)。
【非特許文献1】Escriva,H.et al., PNAS, 94, 6803 - 6808, 1997
【非特許文献2】Mangelsdorf,D.J.et al, Cell 83, 835-839, 1995
【非特許文献3】Schena,M.&Yamamoto, K.R., Science,241:965-967, 1988
【非特許文献4】Brzozowski et al., Nature, 389, 753 - 758, 1997
【非特許文献5】Wagner et al., Nature, 378, 690 -697. 1995
【非特許文献6】Heery et al., Nature, 387,733 - 736
【非特許文献7】Heinzel et al., Nature387,43 - 47, 1997
【非特許文献8】Xu et al., Curr Opin Genet Dev,9(2), 140 - 147, 1999
【非特許文献9】Forman et al., Cell, 81, 687-93, 1995
【非特許文献10】Lehmann,et al., Biol. Chem. 272(6), 3137-40, 1997
【非特許文献11】Janowski,et al., Nature, 383, 728-31, 1996
【非特許文献12】Peet, et al., Cell, 93, 693-704, 1998
【非特許文献13】Repa, et al., J Biol Chem. 2002 May24;277(21):18793-800
【非特許文献14】Berge, et al.,Science (2000);290(5497):1771-5.
【非特許文献15】Venkateswaran,et al., PNAS (2000) 24;97(22):12097-102
【非特許文献16】Sparrow, et al., J BiolChem(2002)277(12):10021-7;Joseph, et al., PNAS (2002);99(11):7604-9
【非特許文献17】Schultz, et al., Genes Dev (2000) 14(22):2831-8
【非特許文献18】Collins, et al., J Med Chem. (2002) 45(10):1963-6
【非特許文献19】Sparrow, et al., J Biol Chem (2002) 277(12):10021-7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって本発明の目的は、LXR受容体と結合することによってこの受容体に関するアゴニスト、アンタゴニストまたは混合アゴニスト/アンタゴニストとして作用し、これにより、当該核内受容体が原因であるか、あるいはこの受容体によって影響を受ける疾患または症状の処置に有用性を示す化合物を提供することであった。
【0015】
さらに本発明の目的は、コレステロール関連症状または疾患を処置するための薬物の製造に使用してよい化合物を提供することであった。本発明の好ましい実施態様では、本発明の目的は、血清コレステロールを低下させ、ならびに/あるいは高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、ならびに/あるいは低密度リポタンパク質(LDL)を減少させる化合物を提供することであった。また、本発明の目的は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、皮膚障害、肥満症および糖尿病を含む脂質障害の処置に使用してよい化合物を提供することでもあった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
本発明は、特に、以下に記載の一般式(1)に記載の新規LXR核内受容体タンパク質結合性化合物を提供する。この化合物はまた、当該受容体の哺乳類ホモログに対する結合物でもある。さらに、本発明の目的は、一般式(1)に記載のLXR核内受容体タンパク質結合性化合物のうち、ヒトLXR受容体またはその哺乳類ホモログに関するアゴニスト、アンタゴニストまたは混合アゴニスト/アンタゴニストとして作用する前記化合物を提供することによって解決した。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、コレステロール関連症状または疾患を処置するための薬物の製造に使用してよいLXRアゴニストを提供する。本発明の好ましい実施態様では、本発明の目的は、血清コレステロールを低下させ、ならびに/あるいは高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、ならびに/あるいは低密度リポタンパク質(LDL)を減少させる化合物を提供することであった。また、本発明の目的は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、皮膚障害、肥満症および糖尿病を含む脂質障害の処置に使用してよい化合物を提供することでもあった。
【0018】
前記部分は単に、本発明の特定の側面を概説するものであり、いかなる意味においても本発明を限定するためのものではなく、そう解釈すべきでない。本明細書中で引用するすべての特許および他の刊行物は、引用によりその開示内容全体が本明細書中に包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好ましい実施態様の詳細な記述
本発明は、以下の式(1)によって示される化合物、またはその製薬的に許容される塩または溶媒和物を提供する。本明細書中では以後、これらの化合物を「本発明に基づく化合物」としても称し、これにはその特定の好ましい実施態様が含まれるものとする。
(式(1))
【化10】

、R、Rおよび/またはRは、互いに独立して以下から選択される:H、ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C置換アルコキシ、C〜Cアシル、C〜C置換アシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニル、ここにフェニルは置換されているか、または非置換であり、その結果、例えば、ビフェニルが生じる。Rは、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルであり、Rは、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルであり、Rは、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルであり、RおよびRは、窒素と一緒になってヘテロ環または置換へテロ環またはヘテロアリール環または置換ヘテロアリール環を形成してもよい。
【0020】
本発明の化合物はまた、溶媒和物および水和物として存在し得る。したがって、これらの化合物は、例えば、水和水、または1つの、多数の、もしくはその任意のフラクションの母液溶媒分子とともに結晶化してもよい。前記化合物の溶媒和物および水和物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
記号「H」は、水素原子を表す。
【0022】
用語「C〜Cアシル」は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ベンゾイル等の基を含む。好ましいアシル基はアセチルおよびベンゾイルである。
【0023】
用語「C〜C置換アシル」は、1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの、ハロゲン基、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ基、オキソ基、保護オキソ基、シクロヘキシル基、ナフチル基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、グアニジノ基、ヘテロサイクリック環基、置換ヘテロサイクリック環基、イミダゾリル基、インドリル基、ピロリジニル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアシル基、C〜Cアシルオキシ基、ニトロ基、C〜Cアルキルエステル基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルバモイル基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、シアノ基、メチルスルホニルアミノ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基またはC〜Cアルキルスルホニル基で置換されているアシル基を表す。この置換アシル基は、同一の置換基または異なる置換基で1箇所または複数箇所、好ましくは1箇所または2箇所置換されていてもよい。
【0024】
用語「置換フェニル」は、以下からなる群から選択される1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの部分で置換されているフェニル基を示す:ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C置換アルコキシ、C〜Cアシル、C〜C置換アシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニル、ここにフェニル基は置換されているか、または非置換であり、その結果、例えば、ビフェニルが生じる。
【0025】
用語「置換フェニル」の例には、モノまたはジ(ハロ)フェニル基、例えば2、3または4−クロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,5−ジクロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2、3または4−ブロモフェニル、3,4−ジブロモフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、2、3または4−フルオロフェニル等;モノまたはジ(ヒドロキシ)フェニル基、例えば2、3または4−ヒドロキシフェニル、2,4−ジヒドロキシフェニル、その保護ヒドロキシ誘導体等;ニトロフェニル基、例えば2、3または4−ニトロフェニル;シアノフェニル基、例えば2、3または4−シアノフェニル;モノまたはジ(アルキル)フェニル基、例えば2、3または4−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2、3または4−(イソ−プロピル)フェニル、2、3または4−エチルフェニル、2、3または4−(n−プロピル)フェニル等;モノまたはジ(アルコキシル)フェニル基、例えば2,6−ジメトキシフェニル、2、3または4−メトキシフェニル、2、3または4−エトキシフェニル、2、3または4−(イソプロポキシ)フェニル、2、3または4−(t−ブトキシ)フェニル、3−エトキシ−4−メトキシフェニル等;2、3または4−トリフルオロメチルフェニル;モノまたはジカルボキシフェニルまたは(保護カルボキシ)フェニル基、例えば2、3または4−カルボキシフェニルまたは2,4−ジ(保護カルボキシ)フェニル;モノまたはジ(ヒドロキシメチル)フェニルまたは(保護ヒドロキシメチル)フェニル、例えば2、3または4−(保護ヒドロキシメチル)フェニルまたは3,4−ジ(ヒドロキシメチル)フェニル;モノまたはジ(アミノメチル)フェニルまたは(保護アミノメチル)フェニル、例えば2、3または4−(アミノメチル)フェニルまたは2,4−(保護アミノメチル)フェニル;またはモノまたはジ(N−(メチルスルホニルアミノ))フェニル、例えば2、3または4−(N−(メチルスルホニルアミノ))フェニルが含まれる。用語「置換フェニル」はまた、置換基が異なっている二置換フェニル基を表す。この二置換フェニル基は、例えば3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシ−4−ブロモフェニル、4−エチル−2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル、2−ヒドロキシ4−クロロフェニル等である。
【0026】
用語「ヘテロアリール」はヘテロサイクリック芳香族誘導体を意味する。この誘導体は、1〜4ヘテロ原子、例えば酸素、硫黄および/または窒素を有し、特に窒素を、単独で、あるいは硫黄または酸素環原子とともに有する5員または6員環系である。ヘテロアリールの例には、ピリジニル、ピリミジニル、およびピラジニル、ピリダジニル、ピロロ、フラノ、チオフェノ、オキサゾロ、イソキサゾロ、フタルイミド、チアゾロ等が含まれる。
【0027】
用語「置換ヘテロアリール」は、例えば1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの同一または異なる置換基で置換されている上記ヘテロアリールを意味し、ここに置換基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜C置換アルコキシv、C〜Cアシル基、C〜C置換アシル基、C〜Cアシルオキシ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルボキシメチル基、保護カルボキシメチル基、ヒドロキシメチル基、保護ヒドロキシメチル基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、トリフルオロメチル基、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ基またはN−(フェニルスルホニル)アミノ基であり得る。
【0028】
用語「置換ナフチル」は、以下からなる群から選択される1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの、同一環上または異なる環上の部分で置換されているナフチル基を示す:ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノまたはN−(フェニルスルホニル)アミノ。
【0029】
用語「置換ナフチル」の例には、モノまたはジ(ハロ)ナフチル基、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−クロロナフチル、2,6−ジクロロナフチル、2,5−ジクロロナフチル、3,4−ジクロロナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−ブロモナフチル、3,4−ジブロモナフチル、3−クロロ−4−フルオロナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−フルオロナフチル等;モノまたはジ(ヒドロキシ)ナフチル基、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−ヒドロキシナフチル、2,4−ジヒドロキシナフチル、その保護ヒドロキシ誘導体等;ニトロナフチル基、例えば3−または4−ニトロナフチル;シアノナフチル基、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−シアノナフチル;モノまたはジ(アルキル)ナフチル基、例えば2、3、4、5、6、7または8−メチルナフチル、1,2,4−ジメチルナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−(イソプロピル)ナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−エチルナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−(n−プロピル)ナフチル等;モノまたはジ(アルコキシ)ナフチル基、例えば2,6−ジメトキシナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−メトキシナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−エトキシナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−(イソプロポキシ)ナフチル、1、2、3、4、5、6、7または8−(t−ブトキシ)ナフチル、3−エトキシ−4−メトキシナフチル等;1、2、3、4、5、6、7または8−トリフルオロメチルナフチル;モノまたはジカルボキシナフチルまたは(保護カルボキシ)ナフチル基、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−カルボキシナフチルまたは2,4−ジ(−保護カルボキシ)ナフチル;モノまたはジ(ヒドロキシメチル)ナフチルまたは(保護ヒドロキシメチル)ナフチル、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−(保護ヒドロキシメチル)ナフチルまたは3,4−ジ(ヒドロキシメチル)ナフチル;モノまたはジ(アミノ)ナフチルまたは(保護アミノ)ナフチル、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−(アミノ)ナフチルまたは2,4−(保護アミノ)−ナフチル、モノまたはジ(アミノメチル)ナフチルまたは(保護アミノメチル)ナフチル、例えば2、3または4−(アミノメチル)ナフチルまたは2,4−(保護アミノメチル)−ナフチル;またはモノまたはジ−(N−メチルスルホニルアミノ)ナフチル、例えば1、2、3、4、5、6、7または8−(N−メチルスルホニルアミノ)ナフチルが含まれる。用語「置換ナフチル」はまた、置換基が異なっている二置換ナフチル基を表す。この二置換ナフチル基は、例えば3−メチル−4−ヒドロキシナフタ−1−イル、3−クロロ−4−ヒドロキシナフタ−2−イル、2−メトキシ−4−ブロモナフタ−1−イル、4−エチル−2−ヒドロキシナフタ−1−イル、3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタ−2−イル、2−ヒドロキシ−4−クロロナフタ−1−イル、2−メトキシ−7−ブロモナフタ−1−イル、4−エチル−5−ヒドロキシナフタ−2−イル、3−ヒドロキシ−8−ニトロナフタ−2−イル、2−ヒドロキシ−5−クロロナフタ−1−イル等である。
【0030】
用語「C〜Cアルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、tert−アミル、ヘキシル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、4−ヘプチル、2−メチル−1ヘキシル、2−メチル−2ヘキシル、2−メチル−3−ヘキシル、n−オクチル等のラジカルを表す。
【0031】
上記置換アルキル基の例には、2−オキソ−プロパ−1−イル、3−オキソ−ブタ−1−イル、シアノメチル、ニトロメチル、クロロメチル、ヒドロキシメチル、テトラヒドロピラニルオキシメチル、トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノ、メチルアミノ、アミノメチル、ジメチルアミノ、カルボキシメチル、アリルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t−ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6−ヒドロキシヘキシル、2,4−ジクロロ(n−ブチル)、2−アミノプロピル、1−クロロエチル、2−クロロエチル、1−ブロモエチル、2−クロロエチル、1−フルオロエチル、2−フルオロエチル、1−ヨードエチル、2−ヨードエチル、1−クロロプロピル、2−クロロプロピル、3−クロロプロピル、1−ブロモプロピル、2−ブロモプロピル、3−ブロモプロピル、1−フルオロプロピル、2−フルオロプロピル、3−フルオロプロピル、1−ヨードプロピル、2−ヨードプロピル、3−ヨードプロピル、2−アミノエチル、1−アミノエチル、N−ベンゾイル−2−アミノエチル、N−アセチル−2−アミノエチル、N−ベンゾイル−1−アミノエチル、N−アセチル−1−アミノエチル等が含まれる。
【0032】
用語「C〜C置換アルキル」は、1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの、ハロゲン基、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、オキソ基、保護オキソ基、C〜Cシクロアルキル基、ナフチル基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、グアニジノ基、保護グアニジノ基、ヘテロサイクリック環基、置換へテロサイクリック環基、イミダゾリル基、インドリル基、ピロリジニル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアシル基、C〜Cアシルオキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルバモイル基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、シアノ基、メチルスルホニルアミノ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基またはC〜Cアルキルスルホニル基で置換されている上記C〜Cアルキル基を表す。この置換アルキル基は、同一の置換基または異なる置換基で1箇所または複数箇所、好ましくは1箇所または2箇所置換されていてよい。
【0033】
用語「C〜C12フェニルアルキル」は、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールによって任意の位置で置換されているC〜Cアルキル基を表す。このような基の例には、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニル(n−プロピル)、4−フェニルヘキシル、3−フェニル(n−アミル)、3−フェニル(sec−ブチル)等が含まれる。好ましいC〜C12フェニルアルキル基は、ベンジル基およびフェニルエチル基である。
【0034】
用語「C〜C12置換フェニルアルキル」は、C〜Cアルキル部分が、1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの、以下から選択される基で置換されているC〜C12フェニルアルキル基:ハロゲン基、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、オキソ基、保護オキソ基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、グアニジノ基、保護グアニジノ基、ヘテロサイクリック環基、置換ヘテロサイクリック環基、C〜Cアルキル基、C〜C置換アルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜C置換アルコキシ基、C〜Cアシル基、C〜C置換アシル基、C〜Cアシルオキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルバモイル基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、N,N−(C〜Cジアルキル)カルボキサミド基、シアノ基、N−(C〜Cアルキルスルホニル)アミノ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、C〜Cアルキルスルホニル基;および/または当該フェニル基が、1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの、以下から選択される置換基で置換されていてもよいC〜C12フェニルアルキル基:ハロゲン基、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、C〜Cアルキル基、C〜C置換アルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜C置換アルコキシ基、C〜Cアシル基、C〜C置換アシル基、C〜Cアシルオキシ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルボキシメチル基、保護カルボキシメチル基、ヒドロキシメチル基、保護ヒドロキシメチル基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド基、トリフルオロメチル基、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ基、N−(フェニルスルホニル)アミノ基、環状C〜Cアルキレン基またはフェニル基、これは、生じたビフェニル基に関して、置換されているか、あるいは非置換である、を表す。この置換アルキル基またはフェニル基は、同一または異なっていてよい、1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの置換基で置換されていてよい。
【0035】
用語「C〜C12置換フェニルアルキル」の例には、2−フェニル−1−クロロエチル、2−(4−メトキシフェニル)エチル、4−(2,6−ジヒドロキシフェニル)n−ヘキシル、2−(5−シアノ−3−メトキシフェニル)n−ペンチル、3−(2,6−ジメチルフェニル)n−プロピル、4−クロロ−3−アミノベンジル、6−(4−メトキシフェニル)−3−カルボキシ(n−ヘキシル)、5−(4−アミノメチルフェニル)−3−(アミノメチル)n−ペンチル、5−フェニル−3−オキソ−n−ペンタ−1−イル等の基が含まれる。
【0036】
上に概説するように、RおよびRは窒素とともに、以下の種のヘテロ環または置換ヘテロ環を形成してよい:アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、3−メチルピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼピン、テトラヒドロイソキノリン。
【0037】
用語「ヘテロ環」または「ヘテロサイクリック環」は、1〜4ヘテロ原子、例えば酸素、硫黄および/または窒素を有し、特に窒素を、単独で、あるいは硫黄または酸素環原子とともに有する5員〜8員環を表し、これは場合により置換されている。これらの5員〜8員環は、飽和、完全不飽和または部分不飽和であってよく、完全飽和環が好ましい。好ましいヘテロサイクリック環には、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、2−アミノ−イミダゾイル、テトラヒドロフラノ、ピロロ、テトラヒドロチオフェン−イル、ヘキシルメチレンイミノおよびヘプチルメチレンイミノが含まれる。
【0038】
用語「置換ヘテロ環」または「置換ヘテロサイクリック環」は、例えば1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの同一または異なる置換基で置換されている上記ヘテロサイクリック環を意味し、ここに置換基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシ基、C〜C12置換アルコキシ基、C〜C12アシル基、C〜C12アシルオキシ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルボキシメチル基、保護カルボキシメチル基、ヒドロキシメチル基、保護ヒドロキシメチル基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜C12アルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜C12アルキル)カルボキサミド基、N,N−ジ(C〜C12アルキル)カルボキサミド基、トリフルオロメチル基、N−((C〜C12アルキル)スルホニル)アミノ基、N−(フェニルスルホニル)アミノ基、ヘテロ環基または置換ヘテロ環基であり得る。
【0039】
本明細書中で使用する用語「C〜Cアルコキシ」は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基および同様の基を表す。好ましいアルコキシはメトキシである。用語「C〜C置換アルコキシ」は、アルコキシのアルキル部分が、C〜C置換アルキルに関する様式と同一様式で置換されていてよいことを意味する。
【0040】
用語「C〜Cアミノアシル」は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ベンゾイル等の基を含む。
【0041】
用語「C〜C置換アミノアシル」は、1つまたは複数の、好ましくは1つまたは2つの、ハロゲン基、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、オキソ基、保護オキソ基、シクロヘキシル基、ナフチル基、アミノ基、保護アミノ基、(一置換)アミノ基、保護(一置換)アミノ基、(二置換)アミノ基、グアニジノ基、ヘテロサイクリック環基、置換ヘテロサイクリック環基、イミダゾリル基、インドリル基、ピロリジニル基、C〜C12アルコキシ基、C〜C12アシル基、C〜C12アシルオキシ基、ニトロ基、C〜C12アルキルエステル基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルバモイル基、カルボキサミド基、保護カルボキサミド基、N−(C〜C12アルキル)カルボキサミド基、保護N−(C〜C12アルキル)カルボキサミド基、N,N−ジ(C〜C12アルキル)カルボキサミド基、シアノ基、メチルスルホニルアミノ基、チオール基、C〜C10アルキルチオ基またはC〜C10アルキルスルホニル基で置換されているアシル基を表す。この置換アシル基は、同一の置換基または異なる置換基で1箇所または複数箇所、好ましくは1箇所または2箇所置換されていてよい。
【0042】
〜C置換アシル基の例には、4−フェニルブチロイル、3−フェニルブチロイル、3−フェニルプロパノイル、2−シクロヘキサニルアセチル、シクロヘキサンカルボニル、2−フラノイルおよび3−ジメチルアミノベンゾイルが含まれる。
【0043】
本発明は、有効量の本発明に基づく化合物を含む医薬組成物を提供する。このような化合物は、諸経路、例えば経口、皮下、筋肉内、静脈内または脳内経路によって投与することができる。好ましい投与経路は経口経路であろう。この場合、ヒト成人の処置に関する化合物の1日の用量は約0.01〜5000mg、好ましくは1〜1500mg/日である。この適切な用量を、単一投与物中で、あるいは適切な間隔、例えば1日当たり2、3、4またはそれ以上の分割量で提供する分割投与物として投与して構わない。
【0044】
本発明の化合物を含有する医薬組成物の調製では、不活性の製薬的に許容される担体を使用する。製薬的担体は、固形または液状であり得る。固形剤型の製剤には、例えば、粉末剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、および坐剤が含まれる。
【0045】
固形担体は、1つまたは複数の物質であり得、これは希釈剤、香料、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても作用し得る;これはまた、カプセル化材料でもあり得る。
【0046】
粉末剤では、担体は通常、微粉化された固形物であり、これは微粉化された活性成分と混合状態にある。錠剤では、活性化合物は必要な結合性を示す適切な割合の担体と混合し、所望の形状およびサイズに圧縮成型する。
【0047】
剤型が坐剤である医薬組成物の調製では、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリドおよびカカオバターの混合物をまず融解させ、この混合物中に、例えば攪拌によって活性成分を分散させる。融解した均質混合物を次いで、好都合なサイズの型に注ぎ、放置して冷却させ、凝固させる。
【0048】
粉末剤および錠剤は、好ましくは約5重量%〜約70重量%の範囲の活性成分を含有する。適切な担体には、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等が含まれる。
【0049】
医薬組成物には、活性化合物を担体としてのカプセル化材料とともに製剤化し、活性化合物が(他の担体とともに、あるいは他の担体を伴わずに)担体によって包含されているカプセル剤を提供することが含まれ得る。こうして、活性化合物を担体と結合させる。同様に、カシェ剤もまた含まれる。錠剤、粉末剤、カシェ剤、およびカプセル剤は経口投与に適した固形投与剤型として使用することができる。
【0050】
液状医薬組成物には、例えば、経口または非経口投与に適した溶液剤、または懸濁剤、および経口投与に適したエマルジョンが含まれる。活性成分の滅菌水溶液または、水、エタノール、またはプロピレングリコールを含む溶媒中の、活性成分の滅菌溶液は、非経口投与に適した液状組成物の例である。
【0051】
滅菌溶液剤は、活性成分を所望の溶媒系に溶解し、その後、得られた溶液をろ過膜に通してこの溶液を滅菌するか、あるいは、その代わりに、滅菌条件下で、あらかじめ滅菌された溶媒に滅菌化合物を溶解することによって調製することができる。
【0052】
本発明の一実施態様では、上記式(1)に記載の化合物、またはその製薬的に許容される塩または溶媒和物であって、R、R、R、Rが、H、ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C置換アルコキシ、C〜Cアシル、C〜C置換アシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニルであり、Rが、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルであり、RおよびRが、窒素とともに以下の式(2)に記載のヘテロ環を形成してもよい化合物を特許請求する。
式(2)
【化11】

【0053】
本発明の好ましい実施態様では、R、R、R、Rが、H、ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C置換アルコキシ、C〜Cアシル、C〜C置換アシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニルであり、Rが、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキルであり、RおよびRが、窒素と一緒になって上記式(2)に記載のヘテロ環を形成してもよい化合物、またはその製薬的に許容される塩または溶媒和物を提供する。
【0054】
LXRのアゴニストとして作用する可能性がある特定の好ましい化合物を以下の式(6)に示す。発明者らは、式(3)に記載の化合物がLXRにおいて低い有効濃度を有し、EC50が0.5μMであることを証明することができた。ここに、EC50は最大有効濃度の半分を反映する値である。この値は公知のLXRアゴニストTO901317(J.Schultz et al., Genes Dev. 14, 2831-2838, 2000)に関するEC500.015μMより高い。
式(3)(MOLNAME 3252)
【化12】

【0055】
発明者らはまた、式(4、5および6)(以下に示す)に記載の化合物がLXRヒト核内受容体に関するアゴニストとして活性を有することを発見している(詳細については図面を参照のこと)。
式(4)(MOLNAME 7459)
【化13】

式(5)(MOLNAME 6584)
【化14】

式(6))(MOLNAME 7364)
【化15】

【0056】
特に、本発明は、配列番号1に記載のLXR受容体タンパク質またはその部分(図3〜図8)またはその哺乳類ホモログと結合能を有する上記化合物に関する。特許請求している化合物は、好ましくは約25μlの総容量中、10-200ngのLXR受容体タンパク質、すなわちLXRまたはその部分、好ましくはリガンド結合ドメインを含有する融合タンパク質、これはタグと融合されている、5-100mMTris /HCl pH 6.8-8.3;60-1000 mM KCl;0-20 mM MgCl2;100-1000ng/μlBSAを含む混合物中でLXR受容体タンパク質またはその部分と結合することができる。
【0057】
本明細書中で使用する配列番号1に記載のタンパク質に関する哺乳類受容体タンパク質ホモログとは、ヒトにおいてLXRが行うタスクと実質的に同一のタスクを遂行し、かつ、アミノ酸レベルで少なくとも40%の配列同一性、好ましくはアミノ酸レベルで50%を超える配列同一性、より好ましくはアミノ酸レベルで65%を超える配列同一性、さらにより好ましくはアミノ酸レベルで75%を超える配列同一性、そして最も好ましくはアミノ酸レベルで85%を超える配列同一性を共有するタンパク質である。
【0058】
本発明は特に、哺乳類において、LXR受容体タンパク質またはLXR受容体タンパク質ホモログが媒介する疾患または症状を予防または処置するための方法であって、治療有効量の本発明に基づく化合物を投与することを含み、ここに予防または処置は、本発明に基づく化合物がLXR受容体タンパク質またはLXR受容体タンパク質ホモログと結合することを介して直接的または間接的に達成される方法、に関する。
【0059】
本明細書中、用語「媒介する」とは、LXR受容体タンパク質が作用する生理的経路が、処置または予防対象の疾患または症状に直接的または間接的に関与することを意味する。間接的に関与する場合、これは例えば、本発明に基づく化合物によってLXRの活性を調節すると、疾患または症状に関して有益な効果を有するパラメータに影響することであり得る。その一例は、LXR活性を調節すると、血清コレステロールまたは特定のリポタンパク質のレベルが減少し、したがってアテローム性動脈硬化症の予防および処置に関して有益な効果を有することである。本明細書中、症状とは、変化させることが望ましい生理的または表現型の状態である。その一例は、必ずしも医学的に有害ではないが、それにもかかわらず望ましくない表現型の症状である肥満症であろう。本発明の好ましい実施態様では、LXR受容体タンパク質媒介性の疾患または症状を予防または処置するための方法はヒトに適用される。この場合のヒトは男性であっても女性であってもよい。
【0060】
医薬組成物は通常、特定の症状または症状群の処置または予防に有効な量を投与する。ヒトにおける初期投与では、徴候、すなわち選択症状に関する徴候の臨床モニタリングを伴う。通常、組成物は、少なくとも約100μg/体重kgの活性物質量を投与する。ほとんどの場合、組成物は1つまたは複数の投与物中、1日当たり約20mg/体重kgを超えない量を投与する。ほとんどの場合、用量は1日当たり約100μg/体重kg〜約5mg/体重kgであるのが好ましい。
【0061】
特定の哺乳類への投与、特にヒトへの投与に関して、活性物質の1日当たりの用量レベルは、0.1mg/kg〜10 mg/kg、典型的には約1 mg/kgであると予想される。
【0062】
「治療有効量」とは、本発明に基づく化合物に関して、徴候を緩和する、または徴候を減少させる量、コレステロールを減少させる量、コレステロール吸収を阻害する量、タンパク質および/または炭水化物の消化を阻害する量および/または新規のコレステロール生合成を阻害する量を意味する。
【0063】
同様に、本発明は、異常コレステロール、トリグリセリド、または胆汁酸レベルまたは蓄積と相関する哺乳類の疾患を処置する方法であって、当該処置を必要としている哺乳類に治療有効量の本発明に基づく化合物を投与することを含む方法に関する。
【0064】
したがって、本発明に基づく化合物はまた、哺乳類のアテローム性動脈硬化症、胆石、脂質障害、アルツハイマー病、皮膚障害、肥満症または心血管障害、例えば冠動脈心疾患または発作を予防または処置する方法として使用可能である。
【0065】
本発明はさらに、腸のコレステロール吸収を、その阻害を必要としている哺乳類において阻害する方法であって、当該処置を必要としている哺乳類に治療有効量の本発明に基づく化合物を投与することを含む方法に関する。また、本発明を使用して、ヒトの肥満症を処置してもよい。
【0066】
肝臓X受容体アルファは、原型2型核内受容体である。これはすなわち、この受容体が、レチノイドX受容体とヘテロ二量体型で標的遺伝子のプロモータ領域に結合し、遺伝子を活性化することを意味する。関連するLXRの生理的リガンドはオキシステロールである。本発明に基づく本化合物は、高い結合効率(100nM〜1500nMの範囲のEC50として測定される結合係数)、ならびにアゴニストおよび/またはアンタゴニストの性質を有することが証明されている。したがって、これらの化合物を適用して、胆汁酸、コレステロールおよび脂肪酸恒常性に関与する遺伝子、ならびに他の下流の調節遺伝子を調節してよい。このような遺伝子の例は、脂質吸収、コレステロール生合成、コレステロール輸送または結合、胆汁酸輸送または結合、タンパク質分解、アミノ酸代謝、グルコース生合成、タンパク質翻訳、電子伝達、および肝脂肪酸代謝に関するものであるが、これらに限定されない。LXRはインビボではレチノイドX受容体とヘテロ二量体を形成して機能することが多い。公知のLXRアゴニスト、例えばTularik化合物「TO901317」(図10を参照のこと)は種々の肝臓遺伝子の調節に影響することが既知である。TO901317の調節対象であることがわかっている遺伝子は図11に見出せる。したがって、本発明はまた、哺乳類において、その発現がLXR受容体によって調節されるところの遺伝子を調節する方法であって、治療有効量の本発明に基づく化合物を当該哺乳類に投与することを含む方法に関する。
【0067】
直接および間接的にLXRが標的とする多数の遺伝子が記載されており、その発現調節はコレステロール恒常性および脂質生合成に寄与する。この点に関して、少なくともげっ歯類系統でLXRの直接標的遺伝子であることが示されたCyp7Aの直接制御は、胆汁酸の代謝増加によるコレステロール除去の重要な側面である(Lehmannet al., J Biol.Chem. 272 (6) 3137-3140; 1007)。Guptaら(Biochem. BiophysRes.Com,293; 338-343, 2002)は、LXRαによるCyp7Aの調節が、Cyp7Aの転写に関してFXRの阻害効果より優勢であることを示した。
【0068】
LXR受容体に関する直接標的遺伝子であることが示されている別の重要な転写因子はSREBP-1Cである(Repa et al., Genes and Development,14:2819-2830; 2000:Yoshikawa et al.;Mol.Cell.Biol.21 (9)2991-3000, 2001)。SREBP-1C自身は、肝臓、さらに他の哺乳類組織で、コレステロールおよび脂肪酸合成に関与する遺伝子の転写を活性化する。脂質生合成に関与するいくつかのSREBP1c標的遺伝子、例えばFASおよびSCDがまた、LXR受容体の直接標的であることが示されている(Josephet al.; J Biol Chem. 2002 Mar 29;277(13):11019-25;Liang et al., J Biol Chem.2002Mar 15;277(11):9520-8.)。
【0069】
LXRによる直接の調節対象であることが示されている別の遺伝子はLPL遺伝子である。この遺伝子は、リポタンパク質循環中のトリグリセリドを加水分解し、遊離脂肪酸を末梢組織へ放出させる段階を担う重要な酵素をコードする(Zhanget al. J Biol Chem. 2001 Nov 16; 276(46):43018-24.)。この酵素は肝臓におけるHDLコレステロールの摂取を促進し、これによりコレステロールの逆行輸送を促進すると考えられる。CETP遺伝子産物についてHDLクリアランスに関する同様の機能的関与が記載されている。この遺伝子産物は血漿から肝臓へのHDLコレステロールエステルの輸送を促進した。CETPプロモータ中ではLXR応答エレメントが発見され、LXRによってこの遺伝子が直接活性化されることが示された(LuoandTall; J Clin Invest. 2000 Feb;105(4):513-20.)。
【0070】
生体膜を介するコレステロール輸送の調節は、コレステロール恒常性を維持するために重要な機構である。多様な組織、例えばマクロファージおよび腸粘膜細胞でのこれらのプロセスに関する非常に重要な役割は、ATP結合カセット輸送体タンパク質(ABC)によって維持される。ABCA1およびABCG1はLXRの直接標的遺伝子であることが同定された(Costetet al.; J Biol Chem. 2000 Sep8;275(36):28240-5)。これらはコレステロール流出を媒介し、これにより例えばマクロファージでのアテローム生成プラークの発生を予防する(Singarajaet al. J Clin Invest. 2002 Jul;110(1):35-42)。また、主に肝細胞および腸細胞中で発現される他のABC輸送体、例えばABCG5およびABCG8はLXRアゴニストに対して直接応答し(Repaet al., J Biol Chem. 2002 May 24; 277 (21):18793-800. Kennedy et al., J BiolChem. 2001 Oct 19; 276 (42): 39438-47)、肝臓由来のステロール分泌および腸由来の食事性ステロール流出を媒介することが報告されている。
【0071】
また、リポタンパク質/脂質恒常性に重要な役割を果たすアポリポタンパク質E、C-I、C-II、およびC-IVはLXR受容体の直接標的であることが示されている(Laffitteet al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Jan 16;98(2):507-12;Mak et al.; JBiolChem.2002 May 24 [epub ahead of print])。これらのタンパク質は、カイロミクロン、VLDL、IDL、およびHDLの決定的な構成要素であり、特に高トリグリセリド血症および動脈硬化症に関連することがわかっている。
【0072】
最近、LXRα自身が、ヒト細胞型、例えばマクロファージ中の両LXR受容体によって調節されることが示された。これはLXRリガンドに応答する自己調節性増幅イベントを示唆し、これにより例えばLXR標的遺伝子、例えばABCA1に対する刺激が増強し得る(Boltenet al.; Mol Endocrinol. 2002 Mar;16(3):506-14.;Laffitte et al., Mol CellBiol.2001 Nov;21(22):7558-68;Whitney et al.; J Biol Chem. 2001 Nov23; 276(47):43509-15)。
【0073】
組織、例えば肝臓およびマクロファージにおけるLXR受容体の重要な機能に加えて、マウス表皮では、上皮分化の刺激が肝臓X受容体によって媒介されることが最近報告されている。分化マーカー遺伝子、例えばインボルクリン、ロリシンおよびプロフィラグリンはLXRリガンド処理に応じて上方制御されることが示されている(Koemueveset al.; J Invest Dermatol. 2002 Jan;118(1):25-34.)。
【0074】
最近の別の報告では、中枢神経系で、LXR受容体によってコレステロール恒常性が調節(主にABCA1、ABCG1およびSREBP-1Cが調節)されることが記載されている。これはLXRが、コレステロール均衡の調節不全を伴うことが既知であるCNS疾患、例えばアルツハイマー病およびニーマン・ピック病の処置に有益であると判明する可能性があることを示す(Whitneyet al.; Mol Endocrinol. 2002 Jun;16(6):1378-85)。
【0075】
したがって重要な一実施態様では、本発明は、今日まで未知の他のLXR標的遺伝子のうち、上記遺伝子および関連する生体プロセスおよび経路を、本発明の主題であるLXR化合物によって増強または抑制する方法に関する。
【0076】
本発明に基づく化合物を薬物として使用してよく、これにより特に哺乳類のLXR受容体タンパク質またはLXR受容体タンパク質ホモログ媒介性の疾患または症状を予防または処置するための薬物を製造してよい。この場合、予防または処置は、LXR受容体タンパク質またはLXR受容体タンパク質ホモログと本発明に基づく化合物の結合を介して直接または間接的に達成される。これらの医薬組成物は0.1%〜99.5%の本発明に基づく化合物、より具体的には0.5%〜90%の本発明に基づく化合物を製薬的に許容される担体と併せて含有する。
【0077】
本発明はまた、LXR受容体タンパク質媒介性の疾患または症状の予防または処置用薬物を製造するための、本発明に基づく化合物の使用に関し、この場合、上記哺乳類はヒトである。この薬物を使用して、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、コレステロール輸送系を調節し、コレステロール、トリグリセリド、および/または胆汁酸のレベルを調節してよい。これらの調節は、LXR受容体を活性化することによって行う。この薬物を使用して、アテローム性動脈硬化症、胆石、脂質障害、アルツハイマー病、皮膚障害、肥満症または心血管障害を処置してよい。
【0078】
さらに、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、腸のコレステロール吸収を阻害することができる薬物を製造するための、本発明に基づく化合物の使用に関する。さらに、特許請求している化合物を使用して、ヒトの肥満症を処置するため、ならびに、その発現がLXR受容体によって調節されるところの遺伝子を調節するための薬物を製造してよい(上記詳細な記載および図面を参照のこと)。
【0079】
以後、下記実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。添付の配列表および図面では:

配列番号1は、LRXアルファタンパク質のタンパク質配列を示し、このタンパク質の部分をクローニングに使用した。これは実施例に記載の通りである。

配列番号2は、LRXアルファタンパク質のmRNA配列を示す。

配列番号3は、TIF2のタンパク質配列(Acc. No: XM_011633 Ref Seq DB)を示す。

配列番号4は、TIF2タンパク質に対応する各mRNA配列を示す。

配列番号5は、LXRベータタンパク質のタンパク質配列を示し、このタンパク質の部分をクローニングに使用した。これは実施例に記載の通りである。

配列番号6は、LXRベータタンパク質のmRNA配列を示す。

配列番号7は、実施例1で使用するプライマー(a)の配列を示す。

配列番号8は、実施例1で使用するプライマー(b)の配列を示す。
【0080】
実施例
【実施例1】
【0081】
LXRと活性化補助因子の結合に影響する化合物についてのインビトロスクリーニング
スクリーニング用に、ヒトLXRアルファのLBD(hLXRアルファのアミノ酸155〜447)とGSTおよび6x Hisの融合物を構築した。この構築では、まずGatewayカセット(Invitrogen)をpAGGHLTポリリンカー(pAGGHLTPolylinker)(Pharmingen)のSma I部位内へインフレームでクローニングした。次いで、ヒト肝臓cDNA由来の特異的に増幅されたPCR断片を、得られたpACGHLT-GW内へクローニングした。このクローニングは、Gatewayクローニング(Invitrogen)に関する製造元の指示書にしたがって行い、pACGHLT-GW-hLXRアルファLBDを得た。
【0082】
増幅に使用したプライマーは以下のものであった:
プライマー(a)
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCGcttcgcaaatgccgtcag(配列番号7)、およびプライマー(b)
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCcccttctcagtctgttccactt(配列番号8)。
【0083】
すべての組換え産物の100%配列完全性をシークエンシングによって検証した。pACGHLT-GW-hLXRアルファLBDから組換えバキュロウイルス(Baculovirus)を構築した。この構築では、Pharmingenバキュロウイルス発現ベクター系を製造元の指示書にしたがって使用した。Pharmingenが推奨する通りにSF9細胞の単層培養物にこのウイルスを感染させるか、あるいは2リットル三角フラスコ中、30rpmオービタルシェーカー上で培養した1x106細胞/mlの培養物200 mlを同ウイルスストック10 mlによって感染させた。いずれの事例でも、感染3日後に細胞を回収した。すべての細胞培養は、無血清補充のグルタミン含有GibcoSF900II(Invitrogen)培地中28℃で行った。SF9細胞は有意量の内因性GSTを含有するので、GSTではなくHisアフィニティークロマトグラフィーによって精製を行った。この目的では、Pharmingenの指示書にしたがってSF9細胞から組換えHisタグ付加タンパク質を精製したが、この手順には以下の修飾を加えた:バッファーからすべての界面活性剤を除去し、細胞は5連続超音波処理パルスによって氷上で溶解した。この処理では超音波処理装置のニードルを最大出力で使用した。
【0084】
すべての溶出物を20 mM Tris/HCl pH 6.8、300 mMKCl;5 mM MgCl2;1 mM DTT;0.2 mM PMSF;10%グリセロールに対して透析した。透析した溶出物フラクションは典型的に、80%を超える純度の融合タンパク質を含有した。総タンパク質濃度は0.1-0.3mg/mlであった。
【0085】
大腸菌でのNR活性化補助因子の発現用に、N末端に6 His残基のタグを付加したヒトTif2のアミノ酸548-878由来NR相互作用ドメイン(Acc.No:XM_011633RefSeq)を発現するpDest17-hTif2BDを構築した。したがって、ヒト肝臓cDNA由来の特異的に増幅したPCR断片をpDest17(Invitrogen)内へサブクローニングした。このサブクローニングは、Gatewayクローニング(Invitrogen)に関する製造元の指示書にしたがって行った。増幅に使用したプライマーは以下のものであった:
プライマー(a)
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCGttagggtcatcgttggcttcaccおよびプライマー(b)
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCtcaaagttgccctggtcgtgggttA。
【0086】
大腸菌での発現用に、プラスミドDNAを化学的コンピテント大腸菌BL21(Invitrogen, USA)内へ形質導入し、細胞をOD600が0.4-0.7になるまで培養した後、0.5mMIPTGを加えて発現を誘導した。この誘導は製造元(Invitrogen)の指示書にしたがって行った。30℃で8時間誘導した後、5000x gで10分間遠心分離して細胞を回収した。Ni-NTAアガロース(Ni-NTAAgarose)(QIAGEN)を用いて融合タンパク質をアフィニティー精製した。この精製は、製造元の指示書にしたがって行った。組換えTif2コンストラクトを20mMTris/HClpH 7.9;60 mM KCl;5 mM MgCl2;1 mM DTT、0.2 mM PMSF;10%グリセロールに対して透析した。透析した溶出物フラクションは典型的に、80%を超える純度の融合タンパク質を含有した。総タンパク質濃度は0.1-0.3mg/mlであった。
【0087】
次いでこのTIF2断片をビオチン標識した。標識化は、ビオチンアミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma)溶液(DMSO中20mg/ml)に5-40μl/mlTif2フラクションを加えて行った。オーバーヘッド回転サンプルを室温で2時間インキュベートした。その後、G25ゲルろ過クロマトグラフィー(PharmaciaBiotech, Sweden)を用いて未包含標識を分離した。カラム由来のタンパク質含有フラクションをプールし、以下に記載のアッセイにおいて活性を検査した。
【0088】
以下の実施例に示す方法によって得られる化合物ライブラリをLXR/Tif 2相互作用に影響する物質に関してスクリーニングするために、PerkinElmerLANCEテクノロジーを適用した。この方法は、目的の結合パートナーに付加したドナーからアクセプターフルオロフォアへの結合依存性エネルギー移動に基づく。取扱いを容易にし、化合物の蛍光由来のバックグラウンドを減少させるために、LANCEテクノロジーでは、一般的フルオロフォア標識および時間分解検出を利用する(詳細な説明に関しては、HemmilaeI, Blomberg K and Hurskainen P、LANCEにおける時間分解共鳴エネルギー移動(TR-FRET)の原理(Time-resolvedresonance energy transfer (TR-FRET) principle in LANCE)、Abstract of Papers Presentedat the 3 rd Annual Conference of the Society for Biomolecular Screening, Sep., California(1997)を参照のこと)。
【0089】
スクリーニングでは、ビオチン標識Tif 2断片20-200 ngおよびGST-LXR断片10-200ngを0.5-2 nM LANCE Eu-(W1024)標識抗-GST抗体(PerkinElmer)および高度蛍光性APC標識ストレプトアビジン(PerkinElmer,AD0059)0.1-0.5μgと混合した。そしてこの混合は、総容量25μl(20mM Tris/HCl pH 6.8;300 mM KCl;5mMMgCl2;100-1000 ng/μl/BSA サンプルのDMSO含量は4%未満で維持)中、50μMのスクリーニング対象個別化合物の存在下で行った。サンプルは、FIA-プレート黒色384ウェル中結合(Greiner)にて、暗中、室温で、最低60分間インキュベートした。
【0090】
LANCEシグナルはPerkin Elmer VICTOR2V(登録商標)Multilabel Counterによって検出した。ここでは図2に列挙する検出パラメータを適用した。この結果は、665nmおよび615nmの発光間の比をプロットして可視化した。各群の組換えタンパク質に関して、最も高感度のヒット検出を提供するBSAおよび標識用試薬を含むタンパク質量を測定した。この測定は個別に、22RヒドロキシコレステロールおよびTO901317に関する用量反応曲線を解析することによって行った。
【実施例2】
【0091】
本発明に基づく化合物の製造に関する実験手順
【0092】
o-アジド安息香酸合成(2)
アントラニル酸(1、1当量、0.5-1 M)を6 M HClに懸濁した。この懸濁液は、アントラニル酸および/またはその中間体ジアゾニウム塩の溶解を促進するのに十分なAcOH(アントラニル酸に応じて0-20%)を含有するものであった。そして懸濁液を0℃に冷却した。H2Oに溶解したNaNO2(1.1当量、1.3-2.5M)をアントラニル酸溶液に加えた。この添加は、反応溶液の温度が5℃より低く維持されるような速度で行った。得られたジアゾニウム塩の均質溶液を、焼結ガラス漏斗を通してNaN3(1.1当量、0.7-1.1M)およびNaOAc(12当量)の水溶液中へゆっくりろ過した。反応混合物を活発なN2発生の休止後30-60分間攪拌/振とうした。反応混合物を濃HClでpH1に酸性化した後、混合物を0℃に冷却し、o-アジド安息香酸の完全沈殿を促した。この沈殿をろ過によって回収し、6MHCl(2回)およびH2O(2回)で洗浄した。このo-アジド安息香酸生成物(2)を減圧下(500mtorr、30℃)で乾燥した。
【0093】
ヒドロキシメチル樹脂のアシル化(4)
ヒドロキシメチル樹脂(1.0当量、1.3 mmol/g)およびo-アジド安息香酸(1、2.5当量)に、DMF(400mM o-アジド安息香酸(1)を得るまで)、CsCO3(2.0当量)およびKI(2.0当量)を加えた。反応混合物を36-48時間攪拌した後、樹脂結合o-アジド安息香酸(4)をMeOH(2回)、CH2Cl2(3回)、MeOH(3回)、DMF(3回)、MeOH(3回)およびCH2Cl2(3回)で洗浄し、そして減圧下で乾燥した。
【0094】
アザ-ウィティッヒ形成(5)
樹脂結合o-アジド安息香酸(4、1.0当量)にPPh3(THF、500mM、5.0当量)の溶液を加えた。6時間後、この樹脂を以下の手順で3回洗浄した:THF(3回)、トルエン(3回)、CH2Cl2(3回)およびヘキサン(3回)。減圧下で乾燥し、樹脂結合イミノホスホラン(5)を得た。
【0095】
カルボジイミド形成(6)
樹脂結合イミノホスホラン(5、1当量)に、ClCH2CH2Cl中に溶解したイソシアネート(9、5当量、450mM)を加えた。化合物を室温で16時間振とうし、以下の手順で3回洗浄した:THF(3回)、トルエン(3回)、CH2Cl2(3回)およびヘキサン(3回)、そして減圧下で乾燥し、カルボジイミド(6)を得た。
【0096】
グアニジン形成/環化
カルボジイミド官能化樹脂(6)に、ClCH2CH2Cl中に溶解した二級アミン(10、0.6当量、500mM)を加えた。この反応混合物を、インキュベータ中で12-72時間、50℃に加熱し、2-アミノキナゾリン(8)を得た。
【0097】
すべての最終産物をHPLCによって分析し、このHPLCでは、質量および蒸発光散乱検出器(ELSD)の検出を用いて、純度およびアイデンティティーを決定した。
【0098】
当業者であれば、上記プロトコルを利用して、本出願で特許請求している化合物に到達可能である。
【実施例3】
【0099】
本実施例では、本発明に基づく化合物(ここに示す実験はMOLSTRUCTURELN 0000007465(構造式については図9を参照のこと)を用いて行ったものである)が、HEK293細胞におけるLXR媒介性転写促進を媒介することができることを説明する。
【0100】
HEK293細胞は48ウェルプレートで培養し、これをpTRexDest30(Invitrogen)誘導体pTRexDest30-hLXRa、pTRexDest30-hRXRおよびpGL2プロモータ(Promega)誘導体pGL2プロモータ-LXRRE(各300ngのプラスミドDNA)でコトランスフェクションした。完全長ヒトLXR(アクセッション番号U68233)および完全長ヒトRXRα(アクセッション番号P19793)をpTRexDest30内へクローニングした。このクローニングでは、Gateway(登録商標)系(Invitrogen)に関する製造元のプロトコルを適用した。
【0101】
LXR応答エレメント(LXRRE)は(大文字かつ下線の)5'
CccttTGGTCActcaAGTTCAagtgatgatagaattcggatccttTGGTCActcaAGTTCAagtgA3'(配列番号5)であった。これはラットCyp7aプロモータ由来である(Laffiteet al., 2001, PNAS 98, pp 507)。0.5%DMSO(コントロール)または0.5%DMSOを増加濃度のLN0000007465とともに含有する培地(DMEM[Gibco-BRL]+10%FCS [PAA laboratories])中で16時間(5%CO2、37℃で)、細胞をインキュベートした後、その細胞抽出物からルシフェラーゼレポーター活性を3回測定した。
【0102】
LXRaによるレポーター遺伝子の用量依存性転写促進(EC50 〜3μM)が観察された(図12)。
【実施例4】
【0103】
本実施例は、記載されている化合物が、TPA処理THP-1細胞においてLXRタンパク質に関する標的遺伝子のmRNA量を増加させることができることを示す。
【0104】
10%FCS(GIBCO)および100 nM TPAを含有する修飾RPMI-1640培地(ATTC, Cat. No. 30-2001)3 ml中、THP-1(3x105細胞/ディッシュ)細胞を24ウェルディッシュに播種し、5%CO2中37℃で48時間培養した。次いで培地を除去し、10%チャコール処理FBS(Hyclone)を含有する培地で置換し、濃度2、10または25μMのLN0000006500または10μMのTularik(T0901317)と24時間インキュベートした。これは図13に一例を示す通りである。10%FCSを含有するDMEM培地(GIBCO)3ml中、HepG2(4.5x105細胞/ディッシュ)を24ウェルディッシュに播種し、5%CO2中37℃で48時間培養した。これは図14に示す通りである。
【0105】
化合物の存在下で24時間のインキュベーション後、製造元のプロトコルにしたがってQuiagen RNAeasyキット(Quiagen)を使用し、細胞から全RNAを単離した。次いでRNAを逆転写し、TaqMan解析によって解析した。この解析では、当分野に精通している者に既知のPerkin-Elmerから入手したキットおよび装置を使用した。
【0106】
コントロールであるDMSO処理に対する、化合物処理のmRNA量の褶曲差を図13および14に示す。これらは、図13および14に記載するいくつかの解析対象標的遺伝子に関する図である。
【実施例5】
【0107】
本実施例は、記載されている化合物が、各核内受容体LXRaおよびLXRbのLBDが媒介する転写の選択的増強能を有することを示す。
【0108】
CHO細胞(1x105細胞 96ウェルプレート)を以下のコンストラクトでコトランスフェクション(Lipofectamine 2000 GIBCO)した:レポーター遺伝子コンストラクトであるpFR-luc(Stratagene)およびLXRaまたはLXRbリガンド結合ドメインを含有するpCMV-AD誘導体。これらは実施例1に記載のgateway系(GIBCO)によってクローニングした。このトランスフェクトの目的は、Gal4DBD-LXRaまたはGal4DBD-LXRb融合タンパク質を発現することである。
【0109】
10%FCS含有DMEM中5%加湿CO2下37℃で細胞を16時間培養した。この培養は、0.05%DMSO賦形剤または賦形剤中0.032〜50μMLN0000006500の存在下で行った(これは図15に記載する通りである)。ルシフェラーゼ活性は、Promegaの標準ルシフェラーゼアッセイキットおよびプロトコルにしたがって細胞から調製した一定量の抽出物から測定した。
【実施例6】
【0110】
本実施例は、記載されている化合物が、TPA処理THP-1細胞において、濃度10μM、24時間で、逆行コレステロール輸送を増加させることができることを示す。
【0111】
10%FCS(GIBCO)および100 nM TPAを含有する修飾RPMI1640培地(ATTC, Cat. No. 30-2001)3ml中、THP-1(1x106細胞/ディッシュ)細胞を6ウェルディッシュに播種し、5%CO2存在下37℃で72時間培養した。次いで培地を除去し、100nMTPAおよび0.15%BSAを含有する新鮮な培地で置換した。24時間のインキュベーション後、細胞をPBS中および、0.1%DMSOのみまたは0.1%DMSOを40μg/mlApoA1(Calbiochem)もしくは40μg/mlApoA1、及び図16に記載の10μMの化合物、例えばTularik(T0901317)、LN0000006500、LN0000006662、LN0000006671、LN0000006674とともに含有する新鮮な培地1.5ml中で洗浄した。
【0112】
24時間のインキュベーション後、各ウェル中の細胞上清から総コレステロールを測定した。この測定では、酵素アッセイを使用し、コレステロール測定に関して蛍光を読み取った(AmplexRed Cholesterol Assay Kit(A-12213))。各ウェル中に存在する細胞から測定した総タンパク質含量1 mg当たりの蛍光の読み取り値を図15に例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に基づく化合物の合成を示す。これは実施例2にも記載されている。
【図2】EC50値の測定に用いたWallaceVICTOR2V(登録商標)Multilabel Counterで使用する測定パラメータを示す。
【図3】配列番号1を示す。この配列番号1は、LRXアルファタンパク質のタンパク質配列であり、その部分を使用して、実施例に記載の通りクローニングを行った。
【図4】配列番号2を示す。この配列番号2は、LRXアルファタンパク質のmRNA配列である。
【図5】配列番号3を示し、これはTIF2のタンパク質配列(Acc.No:XM_011633RefSeq DB)である。
【図6】配列番号4を示し、これはTIF2タンパク質に対応する各mRNA配列である。
【図7】配列番号5を示す。この配列番号5は、LXRベータタンパク質のタンパク質配列であり、その部分を使用して、実施例に記載の通りクローニングを行った。
【図8】配列番号6を示し、これはLXRベータタンパク質のmRNA配列である。
【図9】本発明に基づく好ましい化合物に関して、発明者らが使用する内部分子名(MOLNAME)ならびに対応するその構造を示す。この図はさらに、実験1にしたがって複数回の実験(上記参照)で確定したこれらの化合物の各EC50値(EC50AVG)、ならびにこれらの化合物の各平均効力(22-(R)-ヒドロキシコレステロールコントロールアゴニストと比較した%活性)を示す。
【図10】既知の各種LXRリガンドを示す。これらのリガンドの構造から、発明者らがこれら既知のリガンドと構造上関連しない新規化合物を同定したことが明らかである。
【図11】LXRアゴニストがLXRタンパク質に結合することによって調節されることがわかっている種々の遺伝子を示す。
【図12】LN0000007465によるルシフェラーゼレポーター遺伝子の用量依存性転写促進(EC50〜3μM)を示し、この転写促進はLXRアルファを介するものである。
【図13】THP-1細胞から単離した全RNA中の、指定遺伝子に関するmRNA含量の解析を示す。この細胞は、2、10または25μMのLN0000006500または10μMのTularik化合物(T0901317)で24時間処理したものである。
【図14】HepG2細胞由来全RNA中の、指定遺伝子に関するmRNA含量の解析を示す。この細胞は、2、10または25μMのLN0000006500または10μMのTularik化合物(T0901317)で24時間処理したものである。
【図15】LN0000006500によるCHO細胞中のpFR-lucレポーター遺伝子の用量依存性転写促進を示し、この転写促進は、LXRaまたはLXRb由来Gal4LBD融合コンストラクトを介するものである。投与化合物の濃度(μM)および細胞抽出物から測定したRLUを記載する。
【図16】培養THP-1細胞上清由来の総コレステロールの解析を示す。この細胞は、添加物なしで、あるいはApoA1およびApoA1+10μMの化合物Tularik(T0901317)または記載されているLN0000006500、LN0000006662、LN0000006671またはLN0000006672とともにインキュベートしたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で示される化合物、または製薬的に許容されるその塩または溶媒和物:
式(1)
【化1】

式中:
、R、Rおよび/またはRは、互いに独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C置換アルコキシ、C〜Cアシル、C〜C置換アシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニル、ここにフェニルは置換されているか、または非置換であり、
は、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルであり、ならびに
は、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C12アルキルフェニルまたはC〜C12置換フェニルアルキルである。
【請求項2】
およびRが窒素と一緒になって、以下の式(2)で示されるヘテロ環または置換ヘテロ環またはヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールを形成している、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項3】
、R、R、Rが、H、ハロゲン、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C置換アルコキシ、C〜Cアシル、C〜C置換アシル、C〜Cアシルオキシ、カルボキシ、保護カルボキシ、カルボキシメチル、保護カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル、アミノ、保護アミノ、(一置換)アミノ、保護(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、カルボキサミド、保護カルボキサミド、N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、保護N−(C〜Cアルキル)カルボキサミド、N,N−ジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、トリフルオロメチル、N−((C〜Cアルキル)スルホニル)アミノ、N−(フェニルスルホニル)アミノまたはフェニルであり、ならびに
がH、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキルである、
請求項2に記載の化合物、または製薬的に許容されるその塩または溶媒和物。
【請求項4】
およびRが窒素と一緒になって、以下の式(3)で示されるヘテロ環を形成している、請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項5】
以下の式(4)で示される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
式(4)
【化4】

【請求項6】
以下の式(5)で示される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
式(5)
【化5】

【請求項7】
以下の式(6)で示される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
式(6)
【化6】

【請求項8】
およびRが窒素と一緒になって、以下の式(7)で示されるヘテロ環を形成している、請求項1または4に記載の化合物。
式(7)
【化7】

【請求項9】
以下の式(8)で示される、請求項1に記載の化合物。
式(8)
【化8】

【請求項10】
以下の式(8)で示される、請求項1または4に記載の化合物。
式(8)
【化9】

【請求項11】
化合物が配列番号1に記載のNR1H3受容体タンパク質もしくはその部分またはその哺乳類ホモログと結合能を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
化合物がNR1H2受容体タンパク質もしくはその部分またはその哺乳類ホモログと結合能を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の、薬物としての使用。
【請求項14】
哺乳類において、NR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質媒介性の疾患またはNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質ホモログ媒介性の疾患または症状を予防または処置するための方法であって、治療有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含み、ここに、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物とNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質またはNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質ホモログの結合を介して、予防または処置を直接または間接的に達成する方法。
【請求項15】
哺乳類がヒトである、請求項14に記載のNR1H3受容体タンパク質および/またはNR1H2受容体タンパク質媒介性の疾患または症状を予防または処置するための方法。
【請求項16】
哺乳類のコレステロール合成および/または輸送を調節するための方法であって、治療有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物でNR1H3および/またはNR1H2受容体を活性化することを含む方法。
【請求項17】
コレステロール、トリグリセリド、または胆汁酸レベルによって影響を受ける哺乳類の疾患を処置する方法であって、当該処置を必要としている哺乳類に、治療有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項18】
哺乳類、特にヒトのアテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、脂質障害、肥満症または心血管障害を処置する方法であって、当該処置を必要としている哺乳類に、治療有効量の請求項1〜12に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項19】
ABCA1および/またはABCG1および/またはABCG5および/またはABCG8の発現を増加させる、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
コレステロール7αヒドロキシラーゼの発現および/またはコレステリルエステル輸送タンパク質の活性を増加させる、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
哺乳類において、哺乳類腸のコレステロールまたは脂肪酸吸収をその必要に応じて阻害する方法であって、当該処置を必要としている哺乳類に、治療有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項22】
哺乳類の肥満症を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項23】
哺乳類において、その発現がNR1H3および/またはNR1H2受容体によって調節されるところの遺伝子を調節する方法であって、治療有効量の請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項24】
コレステロール7αヒドロキシラーゼの発現および/またはコレステリルエステル輸送タンパク質の活性を増強する、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
哺乳類がヒトである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項26】
哺乳類において、NR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質またはNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質ホモログ媒介性の疾患または症状を予防または処置するための薬物であって、ここに、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物とNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質またはNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質ホモログの結合を介して、予防または処置を直接または間接的に達成する薬物、の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項27】
哺乳類がヒトである、請求項26に記載のNR1H3および/またはNR1H2受容体タンパク質媒介性の疾患または症状を予防または処置するための薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項28】
NR1H3および/またはNR1H2受容体を活性化することによって哺乳類のコレステロール輸送系を調節するための薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項29】
コレステロール、トリグリセリド、および/または胆汁酸のレベルを調節するための薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項30】
哺乳類のアテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、胆石、脂質障害、肥満症または心血管障害を処置するための薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項31】
哺乳類において腸のコレステロールおよび/または脂肪酸吸収を阻害することができる薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項32】
哺乳類の肥満症を処置するための薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項33】
NR1H3および/またはNR1H2受容体によってその発現が調節されるところの遺伝子を調節するための薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項34】
哺乳類において、ABCA1、ABCG1、ABCG5およびABCG8からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子を選択的に上方制御し、ならびにFASおよびSREBP-1cを含む群から選択される1つまたは複数の遺伝子を下方制御するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、2群の遺伝子の調節に関し、両群の遺伝子に関するT0901317の調節動態と比較して当該化合物がより大きな相違を示す、使用。
【請求項35】
哺乳類がヒトである、請求項28、30、31、32、および34のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−502169(P2006−502169A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535046(P2004−535046)
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007067
【国際公開番号】WO2004/024162
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(505090377)フェネックス ファーマシューティカルス アーゲー (1)
【Fターム(参考)】