MEMSチップの製造方法および製造装置
【課題】可動状態に形成した可動部に、破損を抑制した状態で様々な処理が行えるようにする。
【解決手段】デバイスウエハ101とマスクウエハ103とを位置合わせして貼り合わせた後、MEMS素子102に対してマスクウエハ103の開口部104を介した選択的なドライ処理を行う。例えば、MEMS素子102の可動部(不図示)に対し、物理的気相堆積または化学的気相堆積などのドライ処理により金属などの膜を選択的に形成する。一例として、MEMS素子102に対して選択的に金からなる金属膜を形成する。
【解決手段】デバイスウエハ101とマスクウエハ103とを位置合わせして貼り合わせた後、MEMS素子102に対してマスクウエハ103の開口部104を介した選択的なドライ処理を行う。例えば、MEMS素子102の可動部(不図示)に対し、物理的気相堆積または化学的気相堆積などのドライ処理により金属などの膜を選択的に形成する。一例として、MEMS素子102に対して選択的に金からなる金属膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
加速度センサやマイクロミラーなどの可動部を備えたMEMS(Microel ectro mechanical systems)などのMEMSチップの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークの分野で用いられるマイクロミラーや微細な加速度センサなど、シリコンなどの半導体基板上やガラスなどの絶縁体基板上などに、微細な構造を作製するMEMS技術が開発されている。このようなMEMSのチップの製造では、よく知られたLSIチップの製造技術が利用されている(非特許文献1参照)。
【0003】
MEMSチップの製造について一例を示す。まず、図7Aの断面図に示すように、シリコンからなるウエハ701に、複数の素子702を形成する。素子702は、例えば、図7Bの平面図に示すように、枠部721の内側に一対の連結部722で連結する可動部723を備える。可動部723は、例えば、ミラーであり、一対の連結部722を通る回動軸で回動可能とされている。
【0004】
このような複数の素子702を形成した後、図7Cの断面図に示すように、素子702の領域に開口部731を備えるレジストパターン703を、ウエハ701の上に形成する。レジストパターン703は、レジストを塗布してレジスト膜を形成し、このレジスト膜を公知のフォトリソグラフィー技術によりパターニングすることで形成すればよい。
【0005】
次に、レジストパターン703をマスクとした状態で、図7Dに示すように、ウエハ701の全域に金属薄膜704を形成する。例えば、スパッタ法により、金属薄膜704を形成する。
【0006】
この後、レジスト剥離液を用いてレジストパターン703を除去し、レジストパターン703とともにレジストパターン703の上に形成されている金属薄膜704をリフトオフすることで、図7Eに示すように、素子702に形成されている可動部(不図示)の上に、選択的に金属薄膜705を形成する。金属薄膜705が形成された可動部は、ミラーとして機能させることができる。最後に、例えば、回転するブレード706により切削することでチップ分割し、素子702を備える複数のチップ707を得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Bifano, et al. ,"Large-scale metal MEMS mirror arrays with integrated electronics", Proceedings of SPIE, Vol.4755, pp.467-476, 2002.
【非特許文献2】宮口 敏 他、「有機EL フルカラーディスプレイの開発」、PIONEER R&D、Vol.11、No.1、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した製造方法では、形成した可動部が破損しやすいという問題がある。上述した製造方法では、可動部に金属薄膜などの薄膜を形成するときに、よく知られたフォトリソグラフィー技術やリフトオフ法を用いており、レジストが塗布され、また、液体を用いたウエット処理が成されることになる。このような処理では、可動状態となっている微細な可動部は破損しやすい。
【0009】
例えば、レジストの塗布では、レジストの溶液を滴下し、回転塗布法により滴下したレジスト溶液をウエハ全域に展開させて塗布膜を形成している。このとき、滴下して展開しているウエハ上のレジスト溶液によるせん断応力により、可動部が破損する。また、レジストパターン形成時の現像処理、リフトオフにおける剥離処理などのウエット処理では、液体を除去するための乾燥時に、可動部に隣接する微細な間隙に存在する液体の毛細管力により、可動部が変形しまたスティッキングするなどの問題が発生する。このように、可動状態に形成した可動部に薄膜を形成し、また、可動部の一部をエッチング除去するなどの処理を行う場合、可動部が破損しやすいという問題がある。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、可動状態に形成した可動部に、破損を抑制した状態で様々な処理が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るMEMSチップの製造方法は、可動部を有する複数のMEMS素子をデバイスウエハの上に形成する第1工程と、MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハを形成する第2工程と、デバイスウエハに接着層を介してマスクウエハを貼り合わせる第3工程と、開口部を介してMEMS素子にドライ処理を行う第4工程と、デバイスウエハを切断してMEMS素子を備えるチップに分割する第5工程とを備える。
【0012】
上記MEMSチップの製造方法において、第5工程は、デバイスウエハよりマスクウエハを剥がした後で行えばよい。ここで、接着層は、一方の面の接着力が接着力低下処理により低下する材料から構成し、接着力低下処理により接着層の一方の面の接着力を低下させることで、デバイスウエハよりマスクウエハを剥がすようにすればよい。なお、接着力低下処理は、加熱,紫外線照射,および電圧印加の中より選択された処理であればよい。また、第5工程は、デバイスウエハとマスクウエハとが貼り合わされている状態で行うようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係るMEMSチップの製造装置は、可動部を有する複数のMEMS素子が形成されたデバイスウエハを保持する第1ステージと、MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハをデバイスウエハに対向して保持する第2ステージと、第1ステージに対して第2ステージをデバイスウエハの平面内で相対的に移動させる第1ステージ駆動手段と、第1ステージおよび第2ステージをデバイスウエハの平面の法線方向に相対的に移動させる第2ステージ駆動手段と、第1ステージに保持されたデバイスウエハおよび第2ステージに保持されたマスクウエハの相対的な位置関係を観察する観察手段とを少なくとも備える。
【0014】
上記MEMSチップの製造装置において、デバイスウエハとマスクウエハとを接着する接着層の接着力を低下させる接着力低下手段を備えるようにしてもよい。接着力低下手段は、加熱機構,紫外線照射機構,および電圧印加機構の中より選択されたものであればよい。
【0015】
上記MEMSチップの製造装置において、第1ステージのデバイスウエハを保持する面に形成された凹部を備えるようにしてもよい。また、第1ステージに形成された開口部を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、デバイスウエハに接着層を介してマスクウエハを貼り合わせ、開口部を介してMEMS素子にドライ処理を行い、この後、デバイスウエハを切断してMEMS素子を備えるチップに分割するようにしたので、可動状態に形成した可動部に、破損を抑制した状態で様々な処理が行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1H】図1Hは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1I】図1Iは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1J】図1Jは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3D】図3Dは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3E】図3Eは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3F】図3Fは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3G】図3Gは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3H】図3Hは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3I】図3Iは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3J】図3Jは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3K】図3Kは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態3における他のMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における他のMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図6C】図6Cは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面である。
【図6D】図6Dは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7A】図7Aは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7B】図7Bは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図7C】図7Cは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7D】図7Dは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7E】図7Eは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7F】図7Fは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1A〜図1Jを用いて説明する。図1A〜図1Jは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の各工程における状態を模式的に示す平面図および断面図である。まず、図1Aの平面図および図1Bの断面図に示すように、デバイスウエハ101の上(表面)に、複数のMEMS素子102を形成する。MEMS素子102は、可動部(不図示)を備える。例えば、可動部は、一対の連結部(不図示)で枠部(不図示)に連結して回動可能とされている。また例えば、可動部は、一端が支持部に固定した片持ち梁であり、他端が変位可能とされている。
【0020】
また、図1Cの平面図および図1Dの断面図に示すように、複数の開口部104を備えるマスクウエハ103を形成する。マスクウエハ103は、例えば、外形(外径)がデバイスウエハ101と同じに形成されている。また、開口部104は、MEMS素子102の薄膜形成領域に対応して形成されている。開口部104は、平面視円形,矩形など、所望とする薄膜形成形状とすればよい。加えて、マスクウエハ103は、この周縁部に固定された接着層105が形成されている。接着層105は、複数のMEMS素子102が形成されている領域の外側に配置されていればよい。接着層105は、例えば、シート状の粘着材(接着剤)から構成され、特定の処理(接着力低下処理)により接着面の接着力が低下して剥離可能な特性を備えていればよい。
【0021】
接着層105は、接着力低下処理により一方の面の接着力が低減する剥離特性を有していればよい。片面が上述した剥離特性を有し、もう一方の面が粘着特性のみを有してもよい。または、両面が異なる剥離粘着特性を有してもよい。例えば、接着層105は、一方の面が感圧粘着材から構成され、他方の面が熱剥離粘着材から構成されていればよい。熱剥離粘着材は、マイクロカプセル状の発泡材が含まれており、接着力低下処理として加熱することで、発泡材が発泡し、粘着材による接触面積が低減して粘着力(接着力)が低減する。
【0022】
以上のように接着層105を備えるマスクウエハ103を用意したら、デバイスウエハ101のMEMS素子102形成面の周縁部に、マスクウエハ103の接着層105の接着面を貼り付ける。言い換えると、デバイスウエハ101に接着層105を介してマスクウエハ103を貼り合わせる。この貼り付けは、次に示すようにして行えばよい。
【0023】
まず、図1Eに示すように、デバイスウエハ101の裏面を接着剥離装置(MEMSチップの製造装置)の第1ステージ111に装着し、また、マスクウエハ103の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。接着剥離装置は、例えば石英などの透明な部材から構成された第1ステージ111と、ヒータなどの加熱機構を内蔵した第2ステージ112とを備える。第1ステージ111は、ウエハ吸着機構111aを備え、第2ステージ112もウエハ吸着機構112aを備える。ウエハ吸着機構111aおよびウエハ吸着機構112aは、例えば、よく知られたバキュームチャックである。
【0024】
ウエハ吸着機構111aは、デバイスウエハ101の周縁部を第1ステージ111に吸着させ、第1ステージ111にデバイスウエハ101を固定(保持)する。同様に、ウエハ吸着機構112aは、マスクウエハ103の周縁部を第2ステージ112に吸着させ、第2ステージ112にマスクウエハ103を固定(保持)する。また、各々固定されたデバイスウエハ101およびマスクウエハ103は、MEMS素子102の形成面および接着層105の固定面が対向して配置される。また、第1ステージ111は、デバイスウエハ101を保持する面に形成された凹部121を備える。凹部121は、MEMS素子102が形成されている領域に対応して形成されている。
【0025】
また、接着剥離装置は、第2ステージ112を、マスクウエハ103が固定されている平面方向(XY方向)に移動させ、また、この平面内で回転させるXYθ駆動部(第1ステージ駆動手段)114を備える。XYθ駆動部114は、第1ステージ111に対して第2ステージ112をデバイスウエハ101の平面内で相対的に移動させる。また、接着剥離装置は、XYθ駆動部114とともに第2ステージ112を、第1ステージ111の方向(Z方向)に移動させるZ駆動部(第2ステージ駆動手段)115を備える。Z駆動部115は、 第1ステージ111および第2ステージ112をデバイスウエハ101の平面の法線方向に相対的に移動させる。
【0026】
加えて、接着剥離装置は、第1ステージ111に保持されたデバイスウエハ101、および第2ステージ112に保持されたマスクウエハ103の相対的な位置関係を観察する光学顕微鏡(観察手段)113を備える。光学顕微鏡113は、第1ステージ111を透過してデバイスウエハ101およびマスクウエハ103を観察する。
【0027】
上述した接着剥離装置を用い、光学顕微鏡113による観察と、XYθ駆動部114を動作させることによるマスクウエハ103のXYθ方向の移動とにより、デバイスウエハ101に対するマスクウエハ103の相対的な位置合わせを行う。
【0028】
例えば、光学顕微鏡113を用い、デバイスウエハ101に形成されている位置合わせ用貫通パターン(不図示)を通し、マスクウエハ103上に形成されている位置合わせパターンの位置を探す。位置合わせパターンの探索は、XYθ駆動部114を動作させて第2ステージ112をXY方向に移動させ、また、θ方向に回転させることで行う。この探索で、位置合わせ用貫通パターンを通して対応する位置合わせパターンが観察できる状態とする。次いで、第2ステージ112をXYθ方向に微動・微回転させ、位置合わせ用貫通パターンの領域内で所定の位置に位置合わせパターンが観察される状態とする。これで、位置合わせがされた状態となる。なお、よく知られているように、ウエハ上で異なる箇所に設けられた2組の位置合わせ貫通パターおよび位置合わせパターンを用いれば、θ方向の位置合わせが容易にかつより正確に行える。
【0029】
以上のように、デバイスウエハ101に対してマスクウエハ103が位置合わせされたら、Z駆動部115を動作させ、第2ステージ112を第1ステージ111の方向に移動させ、図1Fに示すように、接着層105の接着面をデバイスウエハ101の表面の周縁部に当接させて接着させる。この後、第1ステージ111のウエハ吸着機構111aおよび第2ステージ112のウエハ吸着機構112aの動作を停止させ、デバイスウエハ101およびマスクウエハ103を接着剥離装置より搬出する。この結果、図1Gに示すように、デバイスウエハ101が接着層105を介してマスクウエハ103に固定された状態が得られる。
【0030】
なお、可動部を有するMEMS素子102が形成されているデバイスウエハ101とマスクウエハ103の位置合わせ精度は、可動部の寸法に適合させて数μm程度であることが重要となる。上述したように位置合わせを行った後でウエハ同士を接着すれば、これ以降の膜形成などの製造工程でも位置合わせ精度が維持される状態となる。これに対し、ウエハ同士を接着しない場合は、位置合わせをした後の膜形成工程などにおけるハンドリング中に、デバイスウエハとマスクウエハの間で位置ずれを引き起こす可能性がある。従って、接着によって、位置合わせ精度、すなわち、所望とする箇所への成膜の選択性が向上する。
【0031】
以上のようにデバイスウエハ101とマスクウエハ103とを位置合わせして貼り合わせた後、MEMS素子102に対してマスクウエハ103の開口部104を介した選択的なドライ処理を行う。例えば、MEMS素子102の可動部(不図示)に対し、物理的気相堆積または化学的気相堆積などのドライ処理により金属などの膜を選択的に形成する。また、MEMS素子102の一部を、例えばプラズマを用いて選択的にドライエッチングを行う。本実施例では、一例として、MEMS素子102に対して選択的に金からなる金属膜を形成する。
【0032】
この場合、図1Hに示すように、蒸着装置を用いてマスクウエハ103の側より金などの金属膜106および金属膜107を形成する。デバイスウエハ101においては、MEMS素子102以外の領域が、マスクウエハ103により覆われており、MEMS素子102は開口部104により開放状態とされているので、MEMS素子102に選択的に金属膜107が形成される。
【0033】
なお、膜の形成ではなく、MEMS素子102のエッチング加工の場合、蒸着装置を用いてマスクウエハ103の側より、開口部104を介してエッチングガスのプラズマを作用させればよい。このようなドライエッチングにより、MEMS素子102の領域が選択的にエッチングされるようになる。
【0034】
次に、貼り合わされているデバイスウエハ101とマスクウエハ103とを離間させる。まず、デバイスウエハ101の裏面を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、マスクウエハ103の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111の側に移動させ、第1ステージ111と第2ステージ112との間隔を適宜に調整させることで、貼り合わされているデバイスウエハ101およびマスクウエハ103を、第1ステージ111および第2ステージ112に装着させる。また、デバイスウエハ101は、ウエハ吸着機構111aを動作させることで、第1ステージ111に吸着させる。同様に、マスクウエハ103は、ウエハ吸着機構112aを動作させることで、第2ステージ112に吸着させる。
【0035】
以上のように各ウエハを各ステージに吸着(保持)させた状態で、第2ステージ112が内蔵している加熱機構を動作させ、第2ステージ112を100℃程度に加熱し、マスクウエハ103を介して接着層105を加熱し、接着層105の粘着力を低下させる。引き続いて、Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111より離間させる。これらのことにより、図1Iに示すように、デバイスウエハ101よりマスクウエハ103が剥離されるようになる。従って、本実施の形態では、加熱機構が接着力低下手段となる。この後、デバイスウエハ101およびマスクウエハ103を接着剥離装置より搬出する。なお、剥離したマスクウエハ103は、再利用することができる。図1Iでは、マスクウエハ103の側に接着層105が残存した状態に示しているが、接着力を低下させた接着層105は、マスクウエハ103より除去すればよい。
【0036】
ところで、接着層105の感圧粘着材の面をマスクウエハ103に接着させておくことで、上述したように加熱することで、接着層105をデバイスウエハ101より離間させることができる。これに対し、熱剥離粘着材の面をマスクウエハ103に接着させた場合、上述した加熱により剥離では、接着層105はマスクウエハ103より離間し、デバイスウエハ101に残ることになる。しかしながら、デバイスウエハ101の接着層105が配置されている領域は、チップ分割によりチップとなる部分より離間されるので、問題とならない。
【0037】
以上のように薄膜形成などの処理が行われたデバイスウエハ101をレーザ照射によりダイシングし、図1Jに示すように、チップ分割して複数のチップ101aを形成する。各チップ101aは、各々、金属膜107が形成されたMEMS素子102を備えている。
【0038】
上述した本実施の形態によれば、可動状態に形成した可動部に金属膜を形成するなどの処理を、よく知られたフォトリソグラフィー技術やリフトオフ法などによるウエット処理を用いることなく行い、チップに分割することができるようになる。
【0039】
また、ステンシルマスクを用いたシャドウマスク法によって、真空成膜で材料を微細パターニングする例が非特許文献2に開示されている。この場合、単にシャドウマスクを基板に密着させるとすでに成膜した領域がシャドウマスクによって傷つけられるため、基板上に隔壁を設けて膜選択成膜の際の突き合わせ部材として利用するという方法が用いられている。これに対し、本実施の形態によれば、接着層を介してデバイスウエハとマスクウエハとが離間しているので、上述したような問題が発生しない。
【0040】
また、レーザダイシングによれば、ブレードダイシングとは異なり、冷却液や切削液を供給するなどの液処理が必要とならないため、液処理による問題が発生しない。
【0041】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図2A〜図2Cを用いて説明する。図2A〜図2Cは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の各工程における状態を模式的に示す断面図である。
【0042】
本実施の形態では、デバイスウエハ101よりマスクウエハ103を離間させる前に、デバイスウエハ101をチップ分割する。まず、前述した実施の形態1と同様に、デバイスウエハ101とマスクウエハ103とを位置合わせして接着層105により貼り合わせる。次いで、やはり前述した実施の形態1と同様に、金属膜106および金属膜107を形成する(図2A)。
【0043】
本実施の形態では、上述したようにデバイスウエハ101にマスクウエハ103が貼り合わされている状態で、図2Bに示すように、デバイスウエハ101に欠刻201を形成する。欠刻201は、例えば、レーザダイシングのレーザ照射により形成することができる。欠刻201は、例えば、デバイスウエハ101を貫通して形成すればよい。なお、欠刻201は、いわゆる断裁線に沿って形成すればよい。
【0044】
以上のように欠刻201を形成することで、各々のMEMS素子102の領域がデバイスウエハ101より分離された状態となる。この状態より、各々のMEMS素子102の領域をピックアップすれば、図2Cに示すように、分割された複数のチップ101aが得られる。各チップ101aには、各々、金属膜107が形成されたMEMS素子102を備えている。上述したように、デバイスウエハ101のみを分割するようにすれば、マスクウエハ103は再利用することができる。
【0045】
[実施の形態3]
次に、本実施の形態3について図3A〜図3Kを用いて説明する。図3A〜図3Kは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の各工程における状態を模式的に示す断面図である。
【0046】
まず、図3Aの断面図に示すように、デバイスウエハ301の上(表面)に、複数のMEMS素子302を形成する。本実施の形態では、MEMS素子302がデバイスウエハ301の表面に形成された凹部内に形成されている。凹部は、MEMS素子302毎に形成されている。また、MEMS素子302は、可動部(不図示)を備える。例えば、可動部は、一対の連結部(不図示)で枠部(不図示)に連結して回動可能とされている。また例えば、可動部は、一端が支持部に固定した片持ち梁であり、他端が変位可能とされている。
【0047】
また、図3Bの断面図に示すように、複数の開口部304を備える第1マスクウエハ303を形成する。第1マスクウエハ303は、例えば、外形(外径)がデバイスウエハ301と同じに形成されている。また、開口部304は、MEMS素子302の薄膜形成領域に対応して形成されている。加えて、第1マスクウエハ303は、この周縁部に固定された接着層305が形成されている。接着層305は、前述した実施の形態と同様である。
【0048】
以上のように接着層305を備える第1マスクウエハ303を用意したら、デバイスウエハ301のMEMS素子302が形成されていない裏面の周縁部に、第1マスクウエハ303の接着層305の接着面を貼り付ける。この貼り付けは、前述した実施の形態で用いた接着剥離装置を用い、次に示すようにして行えばよい。
【0049】
まず、図3Cに示すように、デバイスウエハ301の表面(MEMS素子302の形成面)を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、第1マスクウエハ303の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。ウエハ吸着機構111aにより、デバイスウエハ301の周縁部を第1ステージ111に吸着させて固定する。同様に、ウエハ吸着機構112aにより、第1マスクウエハ303の周縁部を第2ステージ112に吸着させて固定する。また、各々固定されたデバイスウエハ301および第1マスクウエハ303は、裏面および接着層305の固定面を対向させて配置する。
【0050】
次に、前述した実施の形態1と同様に、光学顕微鏡113による観察と、XYθ駆動部114を動作させることによる第1マスクウエハ303のXYθ方向の移動とにより、デバイスウエハ301に対する第1マスクウエハ303の相対的な位置合わせを行う。ここでは、MEMS素子302が形成されている箇所に開口部304の位置が対応するように、デバイスウエハ301に対する第1マスクウエハ303の相対的な位置を合わせる。
【0051】
次に、Z駆動部115を動作させ、第2ステージ112を第1ステージ111の方向に移動させ、接着層305の接着面をデバイスウエハ301の裏面の周縁部に当接させて接着させる。この後、第1ステージ111のウエハ吸着機構111aおよび第2ステージ112のウエハ吸着機構112aの動作を停止させ、デバイスウエハ301および第1マスクウエハ303を接着剥離装置より搬出する。この結果、図3Dに示すように、第1マスクウエハ303が、接着層305を介してデバイスウエハ301の裏面に固定された状態が得られる。
【0052】
次に、図3Eに示すように、複数の凸部307および複数の開口部308を備える第2マスクウエハ306を形成する。マスクウエハ306には、デバイスウエハ301のMEMS素子302が形成されている凹部に対応して凸部307が形成されている。例えば、凹部に嵌合するように凸部307が形成されている。また、開口部308は、凸部307毎に形成され、また、MEMS素子302の薄膜形成領域に対応して形成されている。加えて、第2マスクウエハ306も、この周縁部に固定された接着層309が形成されている。接着層309は、接着層305と同様である。
【0053】
次に、デバイスウエハ301のMEMS素子302が形成されている表面の周縁部に、第2マスクウエハ306の接着層309の接着面を貼り付ける。この貼り付けは、上述した第1マスクウエハ303の貼り付けと同様にして行えばよい。
【0054】
図3Fに示すように、まず、デバイスウエハ301に貼り合わされている第1マスクウエハ303の裏面を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、第2マスクウエハ306の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。ウエハ吸着機構111aにより、第1マスクウエハ303の裏面の周縁部を第1ステージ111に吸着させて固定する。同様に、ウエハ吸着機構112aにより、第2マスクウエハ306の周縁部を第2ステージ112に吸着させて固定する。また、デバイスウエハ301および第2マスクウエハ306は、MEMS素子302の形成面および接着層309の固定面を対向させて配置する。
【0055】
次に、前述した第1マスクウエハ303の貼り合わせと同様に、光学顕微鏡113による観察と、XYθ駆動部114を動作させることによる第2マスクウエハ306のXYθ方向の移動とにより、デバイスウエハ301に対する第2マスクウエハ306の相対的な位置合わせを行う。
【0056】
次に、Z駆動部115を動作させ、第2ステージ112を第1ステージ111の方向に移動させ、接着層309の接着面をデバイスウエハ301の表面の周縁部に当接させて接着させる。このように、位置合わせをしてから貼り合わせを行うので、縁の部分が衝突して破損するなどのことがなく、第2マスクウエハ306の凸部307が、デバイスウエハ301の凹部に嵌合した状態に貼り合わせることができる。
【0057】
この後、第1ステージ111のウエハ吸着機構111aおよび第2ステージ112のウエハ吸着機構112aの動作を停止させ、第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306が接着固定されたデバイスウエハ301を接着剥離装置より搬出する。
【0058】
この結果、図3Gに示すように、MEMS素子302が形成されているデバイスウエハ301の凹部に凸部307が嵌合し、第2マスクウエハ306が、接着層309を介してデバイスウエハ301の表面に固定された状態が得られる。ここで、第2マスクウエハ306では、凸部307を設けて開口部308を形成しているので、開口部308のデバイスウエハ301側の開口端を、MEMS素子302により近づけて配置させることができる。
【0059】
以上のようにデバイスウエハ301に対し、第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306を各々位置合わせして貼り合わせた後、MEMS素子302に対し、開口部304および開口部308を介した選択的な処理を行う。例えば、第1マスクウエハ303の側より、MEMS素子302の裏面側となるデバイスウエハ301の裏面に、物理的気相堆積または化学的気相堆積による金属などの膜を選択的に形成する。また、MEMS素子302形成部のデバイスウエハ301裏面の一部を、例えばプラズマを用いて選択的にエッチング処理する。同様に、第2マスクウエハ306の側より、MEMS素子302の可動部(不図示)に対し、物理的気相堆積または化学的気相堆積による金属などの膜を選択的に形成する。また、MEMS素子302の一部を、例えばプラズマを用いて選択的にエッチング処理する。本実施例では、一例として、MEMS素子302に対して金からなる金属膜を選択的に形成する。
【0060】
この場合、図3Hに示すように、蒸着装置を用いて第1マスクウエハ303の側および第2マスクウエハ306の側より、金などの金属膜310および金属膜311を形成する。デバイスウエハ301の裏面においては、MEMS素子302が形成されている領域以外の領域が、第1マスクウエハ303により覆われており、MEMS素子302が形成されている領域は、開口部304により開放状態とされているので、この領域に選択的に金属膜310が形成される。また、デバイスウエハ301の表面においては、MEMS素子302の可動部以外の領域が、第2マスクウエハ306により覆われており、可動部は、開口部308により開放状態とされているので、可動部に選択的に金属膜311が形成される。また、凸部307により、開口端をMEMS素子302により近づけるようにしているので、回り込みによる他の領域への不要な金属膜の形成が、抑制された状態となっている。
【0061】
なお、膜の形成ではなく、MEMS素子302のエッチング加工の場合、蒸着装置を用いてエッチングガスのプラズマを作用させればよい。このようなドライエッチングにより、MEMS素子302の領域が選択的にエッチングされるようになる。
【0062】
次に、貼り合わされているデバイスウエハ301と第2マスクウエハ306とを離間させる。まず、第1マスクウエハ303の裏面を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、第2マスクウエハ306の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111の側に移動させ、第1ステージ111と第2ステージ112との間隔を適宜に調整させることで、貼り合わされている第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306を、第1ステージ111および第2ステージ112に装着させる。また、第1マスクウエハ303は、ウエハ吸着機構111aを動作させることで、第1ステージ111に吸着させる。同様に、第2マスクウエハ306は、ウエハ吸着機構112aを動作させることで、第2ステージ112に吸着させる。
【0063】
以上のように各ウエハを各ステージに吸着させた状態で、第2ステージ112が内蔵している加熱機構を動作させ、第2ステージ112を100℃程度に加熱し、第2マスクウエハ306を介して接着層309を加熱し、接着層309の粘着力を低下させる。引き続いて、Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111より離間させる。ここで、第2ステージ112をデバイスウエハ301の平面の法線方向に移動させれば、デバイスウエハ301の凹部に嵌合している凸部307を、縁の部分が衝突して破損するなどのことがなく、凹部より離間させることができる。これらのことにより、図3Iに示すように、デバイスウエハ301より第2マスクウエハ306が剥離されるようになる。
【0064】
次に、上述同様にすることで、デバイスウエハ301より第1マスクウエハ303を離間させる。この結果、図3Jに示すように、MEMS素子302の上に金属膜311が形成され、MEMS素子302形成領域の裏面に金属膜310が形成されたデバイスウエハ301が得られる。ここで、第1マスクウエハ303を剥がすときには、第2ステージ112が内蔵している加熱機構を動作させ、第2ステージ112を120℃程度に加熱し、第1マスクウエハ303を介して接着層305を加熱し、接着層305の粘着力を低下させる。
【0065】
例えば、接着層309は、100℃の加熱で粘着力が低下し、接着層305は、100℃の加熱では粘着力が低下せず、120℃に加熱することで粘着力が低下するようにしておけばよい。このようにすることで、上述したように、加熱温度100℃の条件で第2マスクウエハ306を剥がすときには、接着層305の粘着力は低下させず、デバイスウエハ301に対して第1マスクウエハ303が接着固定された状態が維持され、第2マスクウエハ306をデバイスウエハ301より剥がすことができる。
【0066】
次に、デバイスウエハ301をレーザ照射によりダイシングし、図3Kに示すように、チップ分割して複数のチップ301aを形成する。各チップ301aには、各々、金属膜311が形成されたMEMS素子302を備え、裏面の一部に金属膜310が形成されている。
【0067】
上述した本実施の形態によれば、可動状態に形成した可動部に金属膜を形成するなどの処理を、よく知られたフォトリソグラフィー技術やリフトオフ法などによるウエット処理を用いることなく行い、チップに分割することができるようになる。
【0068】
なお、デバイスウエハ301より各マスクウエハを離間させる前に、デバイスウエハ301をチップ分割してもよい。まず、前述した実施の形態3と同様に、デバイスウエハ301に、位置合わせをした後で、第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306を貼り合わせる。次いで、やはり前述した実施の形態3と同様に、金属膜310および金属膜311を形成する。
【0069】
この後、図4に示すように、第1マスクウエハ303およびデバイスウエハ301に欠刻401を形成する。欠刻401は、例えば、レーザダイシングのレーザ照射により形成することができる。欠刻401は、例えば、第1マスクウエハ303およびデバイスウエハ301を貫通して形成すればよい。
【0070】
以上のように欠刻401を形成することで、各々のMEMS素子302の領域がデバイスウエハ301より分離された状態となる。この状態より、各々のMEMS素子302の領域をピックアップすれば、図3Kに示すように、分割された複数のチップ301aが得られる。なお、上述したようにレーザダイシングをする場合、欠刻401を形成しようとする箇所には、金属膜310が除去しておく。これは、金属膜310が形成されている領域は、レーザが反射されて欠刻401を形成することができないためである。
【0071】
また、接着層は、接着力低下処理として紫外線を照射することで粘着力が低下する材料(紫外線剥離型フィルムなど)を用いてもよい。この場合、マスクウエハは、ガラスなどの紫外線を透過する材料から構成するとよい。紫外線剥離型フィルムは、紫外線硬化樹脂から構成されており、紫外線による化学反応で樹脂が硬化収縮して界面でのせん断力を発生させ粘着力を低減させる。この場合、紫外線照射を行う機構が、接着力低下手段となる。
【0072】
また、接着層は、通電剥離樹脂から構成してもよい。通電剥離樹脂は、接着力低下処理として電圧を印加することで粘着力が低下する材料である。通電剥離材としては、例えば、「EIC Laboratories」製のエレクトリリースがある。この材料は、50Vの電圧を1分間印加すれば、粘着力が低下して剥離可能となる。この場合、マスクウエハが金属や半導体などの導電性材料から構成し、デバイスウエハが半導体から構成されていればよい。また、第1ステージ111および第2ステージ112に、電圧印加可能な電極が備えられていればよい。デバイスウエハの側がプラス、マスクウエハの側がマイナスとなるように電圧を印加することで、デバイスウエハより接着層を剥離することができる。この場合、上述したように電圧を印加する機構が、接着力低下手段となる。
【0073】
例えば、図5に示すように、金属からなる第1ステージ511および金属からなる第2ステージ512から接着剥離装置を構成し、第1ステージ511および第2ステージ512の間に電圧印加が可能な構成とすればよい。なお、第1ステージ511は、ウエハ吸着機構511aを備え、第2ステージ512もウエハ吸着機構512aを備える。また、図5に例示する接着剥離装置では、吸着したデバイスウエハ101のMEMS素子102形成領域が観察できるように、第1ステージ511に開口部511bが形成されている。
【0074】
また、紫外線硬化樹脂を用いる場合は、第2ステージに紫外線ランプを組み込めばよい。また、2つ以上のマスクウエハを接合して剥離する場合には、上記の熱剥離粘着材、通電剥離材、紫外線硬化樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、上述では、接着層をマスクウエハに形成したが、これに限るものではなく、デバイスウエハに形成してもよく、また、両者に形成してもよい。
【0075】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について、図6A〜図6Dを用いて説明する。図6Aは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法を説明するための平面図であり、図6B〜図6Dは断面図である。
【0076】
本実施の形態では、図6Aに示すように、デバイスウエハ101に、予め断裁領域601を形成しておく。例えば、図6Bに示すように、断面視矩形の溝からなる断裁領域601aを形成してもよく、また、図6Cに示すように、断面視V字形状の断裁領域601bを形成してもよい。これらは、ドライエッチング,ウエットエッチングやブレードダイシングなどにより形成できる。
【0077】
このように断裁領域601を形成しておき、レーザダイシングによるチップ分割の時には、レーザを断裁領域601の底部に照射して断裁を行う。このようにすることで、レーザダイシング時の断裁対象部が薄くなり、チッピングなどの発生を抑制して安定してチップ分割をすることができるようになる。
【0078】
また、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)基板を用い、埋め込み絶縁層を犠牲層としてSOI層を加工することで、SOI層に可動部を形成するMEMS素子がある。このような場合、図6Dに示すように、SOI基板610の埋め込み絶縁層611より深い箇所まで断裁領域601cを形成しておくことで、断裁領域601cに酸化シリコンなどの絶縁層が存在しない状態とすることができる。酸化シリコンなどの絶縁層は、レーザダイシングによる切断が容易でないため、上述したように除去しておくことで、チップ分割がより容易となる。
【0079】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの組み合わせおよび変形が実施可能であることは明白である。例えば、位置合わせは、光学顕微鏡による観察像をイメージセンサーで撮像し、撮像した画像をよく知られたパターンマッチングなどの技術により処理し、この処理結果によりXYθ駆動部の動作を制御することで行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
101…デバイスウエハ、101a…チップ、102…MEMS素子、103…マスクウエハ、104…開口部、105…接着層、106,107…金属膜、111…第1ステージ、112…第2ステージ、111a,112a…ウエハ吸着機構、113…光学顕微鏡、114…XYθ駆動部、115…Z駆動部。
【技術分野】
【0001】
加速度センサやマイクロミラーなどの可動部を備えたMEMS(Microel ectro mechanical systems)などのMEMSチップの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークの分野で用いられるマイクロミラーや微細な加速度センサなど、シリコンなどの半導体基板上やガラスなどの絶縁体基板上などに、微細な構造を作製するMEMS技術が開発されている。このようなMEMSのチップの製造では、よく知られたLSIチップの製造技術が利用されている(非特許文献1参照)。
【0003】
MEMSチップの製造について一例を示す。まず、図7Aの断面図に示すように、シリコンからなるウエハ701に、複数の素子702を形成する。素子702は、例えば、図7Bの平面図に示すように、枠部721の内側に一対の連結部722で連結する可動部723を備える。可動部723は、例えば、ミラーであり、一対の連結部722を通る回動軸で回動可能とされている。
【0004】
このような複数の素子702を形成した後、図7Cの断面図に示すように、素子702の領域に開口部731を備えるレジストパターン703を、ウエハ701の上に形成する。レジストパターン703は、レジストを塗布してレジスト膜を形成し、このレジスト膜を公知のフォトリソグラフィー技術によりパターニングすることで形成すればよい。
【0005】
次に、レジストパターン703をマスクとした状態で、図7Dに示すように、ウエハ701の全域に金属薄膜704を形成する。例えば、スパッタ法により、金属薄膜704を形成する。
【0006】
この後、レジスト剥離液を用いてレジストパターン703を除去し、レジストパターン703とともにレジストパターン703の上に形成されている金属薄膜704をリフトオフすることで、図7Eに示すように、素子702に形成されている可動部(不図示)の上に、選択的に金属薄膜705を形成する。金属薄膜705が形成された可動部は、ミラーとして機能させることができる。最後に、例えば、回転するブレード706により切削することでチップ分割し、素子702を備える複数のチップ707を得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Bifano, et al. ,"Large-scale metal MEMS mirror arrays with integrated electronics", Proceedings of SPIE, Vol.4755, pp.467-476, 2002.
【非特許文献2】宮口 敏 他、「有機EL フルカラーディスプレイの開発」、PIONEER R&D、Vol.11、No.1、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した製造方法では、形成した可動部が破損しやすいという問題がある。上述した製造方法では、可動部に金属薄膜などの薄膜を形成するときに、よく知られたフォトリソグラフィー技術やリフトオフ法を用いており、レジストが塗布され、また、液体を用いたウエット処理が成されることになる。このような処理では、可動状態となっている微細な可動部は破損しやすい。
【0009】
例えば、レジストの塗布では、レジストの溶液を滴下し、回転塗布法により滴下したレジスト溶液をウエハ全域に展開させて塗布膜を形成している。このとき、滴下して展開しているウエハ上のレジスト溶液によるせん断応力により、可動部が破損する。また、レジストパターン形成時の現像処理、リフトオフにおける剥離処理などのウエット処理では、液体を除去するための乾燥時に、可動部に隣接する微細な間隙に存在する液体の毛細管力により、可動部が変形しまたスティッキングするなどの問題が発生する。このように、可動状態に形成した可動部に薄膜を形成し、また、可動部の一部をエッチング除去するなどの処理を行う場合、可動部が破損しやすいという問題がある。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、可動状態に形成した可動部に、破損を抑制した状態で様々な処理が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るMEMSチップの製造方法は、可動部を有する複数のMEMS素子をデバイスウエハの上に形成する第1工程と、MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハを形成する第2工程と、デバイスウエハに接着層を介してマスクウエハを貼り合わせる第3工程と、開口部を介してMEMS素子にドライ処理を行う第4工程と、デバイスウエハを切断してMEMS素子を備えるチップに分割する第5工程とを備える。
【0012】
上記MEMSチップの製造方法において、第5工程は、デバイスウエハよりマスクウエハを剥がした後で行えばよい。ここで、接着層は、一方の面の接着力が接着力低下処理により低下する材料から構成し、接着力低下処理により接着層の一方の面の接着力を低下させることで、デバイスウエハよりマスクウエハを剥がすようにすればよい。なお、接着力低下処理は、加熱,紫外線照射,および電圧印加の中より選択された処理であればよい。また、第5工程は、デバイスウエハとマスクウエハとが貼り合わされている状態で行うようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係るMEMSチップの製造装置は、可動部を有する複数のMEMS素子が形成されたデバイスウエハを保持する第1ステージと、MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハをデバイスウエハに対向して保持する第2ステージと、第1ステージに対して第2ステージをデバイスウエハの平面内で相対的に移動させる第1ステージ駆動手段と、第1ステージおよび第2ステージをデバイスウエハの平面の法線方向に相対的に移動させる第2ステージ駆動手段と、第1ステージに保持されたデバイスウエハおよび第2ステージに保持されたマスクウエハの相対的な位置関係を観察する観察手段とを少なくとも備える。
【0014】
上記MEMSチップの製造装置において、デバイスウエハとマスクウエハとを接着する接着層の接着力を低下させる接着力低下手段を備えるようにしてもよい。接着力低下手段は、加熱機構,紫外線照射機構,および電圧印加機構の中より選択されたものであればよい。
【0015】
上記MEMSチップの製造装置において、第1ステージのデバイスウエハを保持する面に形成された凹部を備えるようにしてもよい。また、第1ステージに形成された開口部を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、デバイスウエハに接着層を介してマスクウエハを貼り合わせ、開口部を介してMEMS素子にドライ処理を行い、この後、デバイスウエハを切断してMEMS素子を備えるチップに分割するようにしたので、可動状態に形成した可動部に、破損を抑制した状態で様々な処理が行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1H】図1Hは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1I】図1Iは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図1J】図1Jは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3D】図3Dは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3E】図3Eは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3F】図3Fは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3G】図3Gは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3H】図3Hは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3I】図3Iは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3J】図3Jは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図3K】図3Kは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態3における他のMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における他のMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図6C】図6Cは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面である。
【図6D】図6Dは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7A】図7Aは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7B】図7Bは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す平面図である。
【図7C】図7Cは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7D】図7Dは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7E】図7Eは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【図7F】図7Fは、MEMSチップの製造方法の途中工程における状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1A〜図1Jを用いて説明する。図1A〜図1Jは、本発明の実施の形態1におけるMEMSチップの製造方法の各工程における状態を模式的に示す平面図および断面図である。まず、図1Aの平面図および図1Bの断面図に示すように、デバイスウエハ101の上(表面)に、複数のMEMS素子102を形成する。MEMS素子102は、可動部(不図示)を備える。例えば、可動部は、一対の連結部(不図示)で枠部(不図示)に連結して回動可能とされている。また例えば、可動部は、一端が支持部に固定した片持ち梁であり、他端が変位可能とされている。
【0020】
また、図1Cの平面図および図1Dの断面図に示すように、複数の開口部104を備えるマスクウエハ103を形成する。マスクウエハ103は、例えば、外形(外径)がデバイスウエハ101と同じに形成されている。また、開口部104は、MEMS素子102の薄膜形成領域に対応して形成されている。開口部104は、平面視円形,矩形など、所望とする薄膜形成形状とすればよい。加えて、マスクウエハ103は、この周縁部に固定された接着層105が形成されている。接着層105は、複数のMEMS素子102が形成されている領域の外側に配置されていればよい。接着層105は、例えば、シート状の粘着材(接着剤)から構成され、特定の処理(接着力低下処理)により接着面の接着力が低下して剥離可能な特性を備えていればよい。
【0021】
接着層105は、接着力低下処理により一方の面の接着力が低減する剥離特性を有していればよい。片面が上述した剥離特性を有し、もう一方の面が粘着特性のみを有してもよい。または、両面が異なる剥離粘着特性を有してもよい。例えば、接着層105は、一方の面が感圧粘着材から構成され、他方の面が熱剥離粘着材から構成されていればよい。熱剥離粘着材は、マイクロカプセル状の発泡材が含まれており、接着力低下処理として加熱することで、発泡材が発泡し、粘着材による接触面積が低減して粘着力(接着力)が低減する。
【0022】
以上のように接着層105を備えるマスクウエハ103を用意したら、デバイスウエハ101のMEMS素子102形成面の周縁部に、マスクウエハ103の接着層105の接着面を貼り付ける。言い換えると、デバイスウエハ101に接着層105を介してマスクウエハ103を貼り合わせる。この貼り付けは、次に示すようにして行えばよい。
【0023】
まず、図1Eに示すように、デバイスウエハ101の裏面を接着剥離装置(MEMSチップの製造装置)の第1ステージ111に装着し、また、マスクウエハ103の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。接着剥離装置は、例えば石英などの透明な部材から構成された第1ステージ111と、ヒータなどの加熱機構を内蔵した第2ステージ112とを備える。第1ステージ111は、ウエハ吸着機構111aを備え、第2ステージ112もウエハ吸着機構112aを備える。ウエハ吸着機構111aおよびウエハ吸着機構112aは、例えば、よく知られたバキュームチャックである。
【0024】
ウエハ吸着機構111aは、デバイスウエハ101の周縁部を第1ステージ111に吸着させ、第1ステージ111にデバイスウエハ101を固定(保持)する。同様に、ウエハ吸着機構112aは、マスクウエハ103の周縁部を第2ステージ112に吸着させ、第2ステージ112にマスクウエハ103を固定(保持)する。また、各々固定されたデバイスウエハ101およびマスクウエハ103は、MEMS素子102の形成面および接着層105の固定面が対向して配置される。また、第1ステージ111は、デバイスウエハ101を保持する面に形成された凹部121を備える。凹部121は、MEMS素子102が形成されている領域に対応して形成されている。
【0025】
また、接着剥離装置は、第2ステージ112を、マスクウエハ103が固定されている平面方向(XY方向)に移動させ、また、この平面内で回転させるXYθ駆動部(第1ステージ駆動手段)114を備える。XYθ駆動部114は、第1ステージ111に対して第2ステージ112をデバイスウエハ101の平面内で相対的に移動させる。また、接着剥離装置は、XYθ駆動部114とともに第2ステージ112を、第1ステージ111の方向(Z方向)に移動させるZ駆動部(第2ステージ駆動手段)115を備える。Z駆動部115は、 第1ステージ111および第2ステージ112をデバイスウエハ101の平面の法線方向に相対的に移動させる。
【0026】
加えて、接着剥離装置は、第1ステージ111に保持されたデバイスウエハ101、および第2ステージ112に保持されたマスクウエハ103の相対的な位置関係を観察する光学顕微鏡(観察手段)113を備える。光学顕微鏡113は、第1ステージ111を透過してデバイスウエハ101およびマスクウエハ103を観察する。
【0027】
上述した接着剥離装置を用い、光学顕微鏡113による観察と、XYθ駆動部114を動作させることによるマスクウエハ103のXYθ方向の移動とにより、デバイスウエハ101に対するマスクウエハ103の相対的な位置合わせを行う。
【0028】
例えば、光学顕微鏡113を用い、デバイスウエハ101に形成されている位置合わせ用貫通パターン(不図示)を通し、マスクウエハ103上に形成されている位置合わせパターンの位置を探す。位置合わせパターンの探索は、XYθ駆動部114を動作させて第2ステージ112をXY方向に移動させ、また、θ方向に回転させることで行う。この探索で、位置合わせ用貫通パターンを通して対応する位置合わせパターンが観察できる状態とする。次いで、第2ステージ112をXYθ方向に微動・微回転させ、位置合わせ用貫通パターンの領域内で所定の位置に位置合わせパターンが観察される状態とする。これで、位置合わせがされた状態となる。なお、よく知られているように、ウエハ上で異なる箇所に設けられた2組の位置合わせ貫通パターおよび位置合わせパターンを用いれば、θ方向の位置合わせが容易にかつより正確に行える。
【0029】
以上のように、デバイスウエハ101に対してマスクウエハ103が位置合わせされたら、Z駆動部115を動作させ、第2ステージ112を第1ステージ111の方向に移動させ、図1Fに示すように、接着層105の接着面をデバイスウエハ101の表面の周縁部に当接させて接着させる。この後、第1ステージ111のウエハ吸着機構111aおよび第2ステージ112のウエハ吸着機構112aの動作を停止させ、デバイスウエハ101およびマスクウエハ103を接着剥離装置より搬出する。この結果、図1Gに示すように、デバイスウエハ101が接着層105を介してマスクウエハ103に固定された状態が得られる。
【0030】
なお、可動部を有するMEMS素子102が形成されているデバイスウエハ101とマスクウエハ103の位置合わせ精度は、可動部の寸法に適合させて数μm程度であることが重要となる。上述したように位置合わせを行った後でウエハ同士を接着すれば、これ以降の膜形成などの製造工程でも位置合わせ精度が維持される状態となる。これに対し、ウエハ同士を接着しない場合は、位置合わせをした後の膜形成工程などにおけるハンドリング中に、デバイスウエハとマスクウエハの間で位置ずれを引き起こす可能性がある。従って、接着によって、位置合わせ精度、すなわち、所望とする箇所への成膜の選択性が向上する。
【0031】
以上のようにデバイスウエハ101とマスクウエハ103とを位置合わせして貼り合わせた後、MEMS素子102に対してマスクウエハ103の開口部104を介した選択的なドライ処理を行う。例えば、MEMS素子102の可動部(不図示)に対し、物理的気相堆積または化学的気相堆積などのドライ処理により金属などの膜を選択的に形成する。また、MEMS素子102の一部を、例えばプラズマを用いて選択的にドライエッチングを行う。本実施例では、一例として、MEMS素子102に対して選択的に金からなる金属膜を形成する。
【0032】
この場合、図1Hに示すように、蒸着装置を用いてマスクウエハ103の側より金などの金属膜106および金属膜107を形成する。デバイスウエハ101においては、MEMS素子102以外の領域が、マスクウエハ103により覆われており、MEMS素子102は開口部104により開放状態とされているので、MEMS素子102に選択的に金属膜107が形成される。
【0033】
なお、膜の形成ではなく、MEMS素子102のエッチング加工の場合、蒸着装置を用いてマスクウエハ103の側より、開口部104を介してエッチングガスのプラズマを作用させればよい。このようなドライエッチングにより、MEMS素子102の領域が選択的にエッチングされるようになる。
【0034】
次に、貼り合わされているデバイスウエハ101とマスクウエハ103とを離間させる。まず、デバイスウエハ101の裏面を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、マスクウエハ103の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111の側に移動させ、第1ステージ111と第2ステージ112との間隔を適宜に調整させることで、貼り合わされているデバイスウエハ101およびマスクウエハ103を、第1ステージ111および第2ステージ112に装着させる。また、デバイスウエハ101は、ウエハ吸着機構111aを動作させることで、第1ステージ111に吸着させる。同様に、マスクウエハ103は、ウエハ吸着機構112aを動作させることで、第2ステージ112に吸着させる。
【0035】
以上のように各ウエハを各ステージに吸着(保持)させた状態で、第2ステージ112が内蔵している加熱機構を動作させ、第2ステージ112を100℃程度に加熱し、マスクウエハ103を介して接着層105を加熱し、接着層105の粘着力を低下させる。引き続いて、Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111より離間させる。これらのことにより、図1Iに示すように、デバイスウエハ101よりマスクウエハ103が剥離されるようになる。従って、本実施の形態では、加熱機構が接着力低下手段となる。この後、デバイスウエハ101およびマスクウエハ103を接着剥離装置より搬出する。なお、剥離したマスクウエハ103は、再利用することができる。図1Iでは、マスクウエハ103の側に接着層105が残存した状態に示しているが、接着力を低下させた接着層105は、マスクウエハ103より除去すればよい。
【0036】
ところで、接着層105の感圧粘着材の面をマスクウエハ103に接着させておくことで、上述したように加熱することで、接着層105をデバイスウエハ101より離間させることができる。これに対し、熱剥離粘着材の面をマスクウエハ103に接着させた場合、上述した加熱により剥離では、接着層105はマスクウエハ103より離間し、デバイスウエハ101に残ることになる。しかしながら、デバイスウエハ101の接着層105が配置されている領域は、チップ分割によりチップとなる部分より離間されるので、問題とならない。
【0037】
以上のように薄膜形成などの処理が行われたデバイスウエハ101をレーザ照射によりダイシングし、図1Jに示すように、チップ分割して複数のチップ101aを形成する。各チップ101aは、各々、金属膜107が形成されたMEMS素子102を備えている。
【0038】
上述した本実施の形態によれば、可動状態に形成した可動部に金属膜を形成するなどの処理を、よく知られたフォトリソグラフィー技術やリフトオフ法などによるウエット処理を用いることなく行い、チップに分割することができるようになる。
【0039】
また、ステンシルマスクを用いたシャドウマスク法によって、真空成膜で材料を微細パターニングする例が非特許文献2に開示されている。この場合、単にシャドウマスクを基板に密着させるとすでに成膜した領域がシャドウマスクによって傷つけられるため、基板上に隔壁を設けて膜選択成膜の際の突き合わせ部材として利用するという方法が用いられている。これに対し、本実施の形態によれば、接着層を介してデバイスウエハとマスクウエハとが離間しているので、上述したような問題が発生しない。
【0040】
また、レーザダイシングによれば、ブレードダイシングとは異なり、冷却液や切削液を供給するなどの液処理が必要とならないため、液処理による問題が発生しない。
【0041】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図2A〜図2Cを用いて説明する。図2A〜図2Cは、本発明の実施の形態2におけるMEMSチップの製造方法の各工程における状態を模式的に示す断面図である。
【0042】
本実施の形態では、デバイスウエハ101よりマスクウエハ103を離間させる前に、デバイスウエハ101をチップ分割する。まず、前述した実施の形態1と同様に、デバイスウエハ101とマスクウエハ103とを位置合わせして接着層105により貼り合わせる。次いで、やはり前述した実施の形態1と同様に、金属膜106および金属膜107を形成する(図2A)。
【0043】
本実施の形態では、上述したようにデバイスウエハ101にマスクウエハ103が貼り合わされている状態で、図2Bに示すように、デバイスウエハ101に欠刻201を形成する。欠刻201は、例えば、レーザダイシングのレーザ照射により形成することができる。欠刻201は、例えば、デバイスウエハ101を貫通して形成すればよい。なお、欠刻201は、いわゆる断裁線に沿って形成すればよい。
【0044】
以上のように欠刻201を形成することで、各々のMEMS素子102の領域がデバイスウエハ101より分離された状態となる。この状態より、各々のMEMS素子102の領域をピックアップすれば、図2Cに示すように、分割された複数のチップ101aが得られる。各チップ101aには、各々、金属膜107が形成されたMEMS素子102を備えている。上述したように、デバイスウエハ101のみを分割するようにすれば、マスクウエハ103は再利用することができる。
【0045】
[実施の形態3]
次に、本実施の形態3について図3A〜図3Kを用いて説明する。図3A〜図3Kは、本発明の実施の形態3におけるMEMSチップの製造方法の各工程における状態を模式的に示す断面図である。
【0046】
まず、図3Aの断面図に示すように、デバイスウエハ301の上(表面)に、複数のMEMS素子302を形成する。本実施の形態では、MEMS素子302がデバイスウエハ301の表面に形成された凹部内に形成されている。凹部は、MEMS素子302毎に形成されている。また、MEMS素子302は、可動部(不図示)を備える。例えば、可動部は、一対の連結部(不図示)で枠部(不図示)に連結して回動可能とされている。また例えば、可動部は、一端が支持部に固定した片持ち梁であり、他端が変位可能とされている。
【0047】
また、図3Bの断面図に示すように、複数の開口部304を備える第1マスクウエハ303を形成する。第1マスクウエハ303は、例えば、外形(外径)がデバイスウエハ301と同じに形成されている。また、開口部304は、MEMS素子302の薄膜形成領域に対応して形成されている。加えて、第1マスクウエハ303は、この周縁部に固定された接着層305が形成されている。接着層305は、前述した実施の形態と同様である。
【0048】
以上のように接着層305を備える第1マスクウエハ303を用意したら、デバイスウエハ301のMEMS素子302が形成されていない裏面の周縁部に、第1マスクウエハ303の接着層305の接着面を貼り付ける。この貼り付けは、前述した実施の形態で用いた接着剥離装置を用い、次に示すようにして行えばよい。
【0049】
まず、図3Cに示すように、デバイスウエハ301の表面(MEMS素子302の形成面)を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、第1マスクウエハ303の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。ウエハ吸着機構111aにより、デバイスウエハ301の周縁部を第1ステージ111に吸着させて固定する。同様に、ウエハ吸着機構112aにより、第1マスクウエハ303の周縁部を第2ステージ112に吸着させて固定する。また、各々固定されたデバイスウエハ301および第1マスクウエハ303は、裏面および接着層305の固定面を対向させて配置する。
【0050】
次に、前述した実施の形態1と同様に、光学顕微鏡113による観察と、XYθ駆動部114を動作させることによる第1マスクウエハ303のXYθ方向の移動とにより、デバイスウエハ301に対する第1マスクウエハ303の相対的な位置合わせを行う。ここでは、MEMS素子302が形成されている箇所に開口部304の位置が対応するように、デバイスウエハ301に対する第1マスクウエハ303の相対的な位置を合わせる。
【0051】
次に、Z駆動部115を動作させ、第2ステージ112を第1ステージ111の方向に移動させ、接着層305の接着面をデバイスウエハ301の裏面の周縁部に当接させて接着させる。この後、第1ステージ111のウエハ吸着機構111aおよび第2ステージ112のウエハ吸着機構112aの動作を停止させ、デバイスウエハ301および第1マスクウエハ303を接着剥離装置より搬出する。この結果、図3Dに示すように、第1マスクウエハ303が、接着層305を介してデバイスウエハ301の裏面に固定された状態が得られる。
【0052】
次に、図3Eに示すように、複数の凸部307および複数の開口部308を備える第2マスクウエハ306を形成する。マスクウエハ306には、デバイスウエハ301のMEMS素子302が形成されている凹部に対応して凸部307が形成されている。例えば、凹部に嵌合するように凸部307が形成されている。また、開口部308は、凸部307毎に形成され、また、MEMS素子302の薄膜形成領域に対応して形成されている。加えて、第2マスクウエハ306も、この周縁部に固定された接着層309が形成されている。接着層309は、接着層305と同様である。
【0053】
次に、デバイスウエハ301のMEMS素子302が形成されている表面の周縁部に、第2マスクウエハ306の接着層309の接着面を貼り付ける。この貼り付けは、上述した第1マスクウエハ303の貼り付けと同様にして行えばよい。
【0054】
図3Fに示すように、まず、デバイスウエハ301に貼り合わされている第1マスクウエハ303の裏面を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、第2マスクウエハ306の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。ウエハ吸着機構111aにより、第1マスクウエハ303の裏面の周縁部を第1ステージ111に吸着させて固定する。同様に、ウエハ吸着機構112aにより、第2マスクウエハ306の周縁部を第2ステージ112に吸着させて固定する。また、デバイスウエハ301および第2マスクウエハ306は、MEMS素子302の形成面および接着層309の固定面を対向させて配置する。
【0055】
次に、前述した第1マスクウエハ303の貼り合わせと同様に、光学顕微鏡113による観察と、XYθ駆動部114を動作させることによる第2マスクウエハ306のXYθ方向の移動とにより、デバイスウエハ301に対する第2マスクウエハ306の相対的な位置合わせを行う。
【0056】
次に、Z駆動部115を動作させ、第2ステージ112を第1ステージ111の方向に移動させ、接着層309の接着面をデバイスウエハ301の表面の周縁部に当接させて接着させる。このように、位置合わせをしてから貼り合わせを行うので、縁の部分が衝突して破損するなどのことがなく、第2マスクウエハ306の凸部307が、デバイスウエハ301の凹部に嵌合した状態に貼り合わせることができる。
【0057】
この後、第1ステージ111のウエハ吸着機構111aおよび第2ステージ112のウエハ吸着機構112aの動作を停止させ、第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306が接着固定されたデバイスウエハ301を接着剥離装置より搬出する。
【0058】
この結果、図3Gに示すように、MEMS素子302が形成されているデバイスウエハ301の凹部に凸部307が嵌合し、第2マスクウエハ306が、接着層309を介してデバイスウエハ301の表面に固定された状態が得られる。ここで、第2マスクウエハ306では、凸部307を設けて開口部308を形成しているので、開口部308のデバイスウエハ301側の開口端を、MEMS素子302により近づけて配置させることができる。
【0059】
以上のようにデバイスウエハ301に対し、第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306を各々位置合わせして貼り合わせた後、MEMS素子302に対し、開口部304および開口部308を介した選択的な処理を行う。例えば、第1マスクウエハ303の側より、MEMS素子302の裏面側となるデバイスウエハ301の裏面に、物理的気相堆積または化学的気相堆積による金属などの膜を選択的に形成する。また、MEMS素子302形成部のデバイスウエハ301裏面の一部を、例えばプラズマを用いて選択的にエッチング処理する。同様に、第2マスクウエハ306の側より、MEMS素子302の可動部(不図示)に対し、物理的気相堆積または化学的気相堆積による金属などの膜を選択的に形成する。また、MEMS素子302の一部を、例えばプラズマを用いて選択的にエッチング処理する。本実施例では、一例として、MEMS素子302に対して金からなる金属膜を選択的に形成する。
【0060】
この場合、図3Hに示すように、蒸着装置を用いて第1マスクウエハ303の側および第2マスクウエハ306の側より、金などの金属膜310および金属膜311を形成する。デバイスウエハ301の裏面においては、MEMS素子302が形成されている領域以外の領域が、第1マスクウエハ303により覆われており、MEMS素子302が形成されている領域は、開口部304により開放状態とされているので、この領域に選択的に金属膜310が形成される。また、デバイスウエハ301の表面においては、MEMS素子302の可動部以外の領域が、第2マスクウエハ306により覆われており、可動部は、開口部308により開放状態とされているので、可動部に選択的に金属膜311が形成される。また、凸部307により、開口端をMEMS素子302により近づけるようにしているので、回り込みによる他の領域への不要な金属膜の形成が、抑制された状態となっている。
【0061】
なお、膜の形成ではなく、MEMS素子302のエッチング加工の場合、蒸着装置を用いてエッチングガスのプラズマを作用させればよい。このようなドライエッチングにより、MEMS素子302の領域が選択的にエッチングされるようになる。
【0062】
次に、貼り合わされているデバイスウエハ301と第2マスクウエハ306とを離間させる。まず、第1マスクウエハ303の裏面を接着剥離装置の第1ステージ111に装着し、また、第2マスクウエハ306の裏面を接着剥離装置の第2ステージ112に装着する。Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111の側に移動させ、第1ステージ111と第2ステージ112との間隔を適宜に調整させることで、貼り合わされている第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306を、第1ステージ111および第2ステージ112に装着させる。また、第1マスクウエハ303は、ウエハ吸着機構111aを動作させることで、第1ステージ111に吸着させる。同様に、第2マスクウエハ306は、ウエハ吸着機構112aを動作させることで、第2ステージ112に吸着させる。
【0063】
以上のように各ウエハを各ステージに吸着させた状態で、第2ステージ112が内蔵している加熱機構を動作させ、第2ステージ112を100℃程度に加熱し、第2マスクウエハ306を介して接着層309を加熱し、接着層309の粘着力を低下させる。引き続いて、Z駆動部115を動作させて第2ステージ112を第1ステージ111より離間させる。ここで、第2ステージ112をデバイスウエハ301の平面の法線方向に移動させれば、デバイスウエハ301の凹部に嵌合している凸部307を、縁の部分が衝突して破損するなどのことがなく、凹部より離間させることができる。これらのことにより、図3Iに示すように、デバイスウエハ301より第2マスクウエハ306が剥離されるようになる。
【0064】
次に、上述同様にすることで、デバイスウエハ301より第1マスクウエハ303を離間させる。この結果、図3Jに示すように、MEMS素子302の上に金属膜311が形成され、MEMS素子302形成領域の裏面に金属膜310が形成されたデバイスウエハ301が得られる。ここで、第1マスクウエハ303を剥がすときには、第2ステージ112が内蔵している加熱機構を動作させ、第2ステージ112を120℃程度に加熱し、第1マスクウエハ303を介して接着層305を加熱し、接着層305の粘着力を低下させる。
【0065】
例えば、接着層309は、100℃の加熱で粘着力が低下し、接着層305は、100℃の加熱では粘着力が低下せず、120℃に加熱することで粘着力が低下するようにしておけばよい。このようにすることで、上述したように、加熱温度100℃の条件で第2マスクウエハ306を剥がすときには、接着層305の粘着力は低下させず、デバイスウエハ301に対して第1マスクウエハ303が接着固定された状態が維持され、第2マスクウエハ306をデバイスウエハ301より剥がすことができる。
【0066】
次に、デバイスウエハ301をレーザ照射によりダイシングし、図3Kに示すように、チップ分割して複数のチップ301aを形成する。各チップ301aには、各々、金属膜311が形成されたMEMS素子302を備え、裏面の一部に金属膜310が形成されている。
【0067】
上述した本実施の形態によれば、可動状態に形成した可動部に金属膜を形成するなどの処理を、よく知られたフォトリソグラフィー技術やリフトオフ法などによるウエット処理を用いることなく行い、チップに分割することができるようになる。
【0068】
なお、デバイスウエハ301より各マスクウエハを離間させる前に、デバイスウエハ301をチップ分割してもよい。まず、前述した実施の形態3と同様に、デバイスウエハ301に、位置合わせをした後で、第1マスクウエハ303および第2マスクウエハ306を貼り合わせる。次いで、やはり前述した実施の形態3と同様に、金属膜310および金属膜311を形成する。
【0069】
この後、図4に示すように、第1マスクウエハ303およびデバイスウエハ301に欠刻401を形成する。欠刻401は、例えば、レーザダイシングのレーザ照射により形成することができる。欠刻401は、例えば、第1マスクウエハ303およびデバイスウエハ301を貫通して形成すればよい。
【0070】
以上のように欠刻401を形成することで、各々のMEMS素子302の領域がデバイスウエハ301より分離された状態となる。この状態より、各々のMEMS素子302の領域をピックアップすれば、図3Kに示すように、分割された複数のチップ301aが得られる。なお、上述したようにレーザダイシングをする場合、欠刻401を形成しようとする箇所には、金属膜310が除去しておく。これは、金属膜310が形成されている領域は、レーザが反射されて欠刻401を形成することができないためである。
【0071】
また、接着層は、接着力低下処理として紫外線を照射することで粘着力が低下する材料(紫外線剥離型フィルムなど)を用いてもよい。この場合、マスクウエハは、ガラスなどの紫外線を透過する材料から構成するとよい。紫外線剥離型フィルムは、紫外線硬化樹脂から構成されており、紫外線による化学反応で樹脂が硬化収縮して界面でのせん断力を発生させ粘着力を低減させる。この場合、紫外線照射を行う機構が、接着力低下手段となる。
【0072】
また、接着層は、通電剥離樹脂から構成してもよい。通電剥離樹脂は、接着力低下処理として電圧を印加することで粘着力が低下する材料である。通電剥離材としては、例えば、「EIC Laboratories」製のエレクトリリースがある。この材料は、50Vの電圧を1分間印加すれば、粘着力が低下して剥離可能となる。この場合、マスクウエハが金属や半導体などの導電性材料から構成し、デバイスウエハが半導体から構成されていればよい。また、第1ステージ111および第2ステージ112に、電圧印加可能な電極が備えられていればよい。デバイスウエハの側がプラス、マスクウエハの側がマイナスとなるように電圧を印加することで、デバイスウエハより接着層を剥離することができる。この場合、上述したように電圧を印加する機構が、接着力低下手段となる。
【0073】
例えば、図5に示すように、金属からなる第1ステージ511および金属からなる第2ステージ512から接着剥離装置を構成し、第1ステージ511および第2ステージ512の間に電圧印加が可能な構成とすればよい。なお、第1ステージ511は、ウエハ吸着機構511aを備え、第2ステージ512もウエハ吸着機構512aを備える。また、図5に例示する接着剥離装置では、吸着したデバイスウエハ101のMEMS素子102形成領域が観察できるように、第1ステージ511に開口部511bが形成されている。
【0074】
また、紫外線硬化樹脂を用いる場合は、第2ステージに紫外線ランプを組み込めばよい。また、2つ以上のマスクウエハを接合して剥離する場合には、上記の熱剥離粘着材、通電剥離材、紫外線硬化樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、上述では、接着層をマスクウエハに形成したが、これに限るものではなく、デバイスウエハに形成してもよく、また、両者に形成してもよい。
【0075】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について、図6A〜図6Dを用いて説明する。図6Aは、本発明の実施の形態4におけるMEMSチップの製造方法を説明するための平面図であり、図6B〜図6Dは断面図である。
【0076】
本実施の形態では、図6Aに示すように、デバイスウエハ101に、予め断裁領域601を形成しておく。例えば、図6Bに示すように、断面視矩形の溝からなる断裁領域601aを形成してもよく、また、図6Cに示すように、断面視V字形状の断裁領域601bを形成してもよい。これらは、ドライエッチング,ウエットエッチングやブレードダイシングなどにより形成できる。
【0077】
このように断裁領域601を形成しておき、レーザダイシングによるチップ分割の時には、レーザを断裁領域601の底部に照射して断裁を行う。このようにすることで、レーザダイシング時の断裁対象部が薄くなり、チッピングなどの発生を抑制して安定してチップ分割をすることができるようになる。
【0078】
また、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)基板を用い、埋め込み絶縁層を犠牲層としてSOI層を加工することで、SOI層に可動部を形成するMEMS素子がある。このような場合、図6Dに示すように、SOI基板610の埋め込み絶縁層611より深い箇所まで断裁領域601cを形成しておくことで、断裁領域601cに酸化シリコンなどの絶縁層が存在しない状態とすることができる。酸化シリコンなどの絶縁層は、レーザダイシングによる切断が容易でないため、上述したように除去しておくことで、チップ分割がより容易となる。
【0079】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの組み合わせおよび変形が実施可能であることは明白である。例えば、位置合わせは、光学顕微鏡による観察像をイメージセンサーで撮像し、撮像した画像をよく知られたパターンマッチングなどの技術により処理し、この処理結果によりXYθ駆動部の動作を制御することで行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
101…デバイスウエハ、101a…チップ、102…MEMS素子、103…マスクウエハ、104…開口部、105…接着層、106,107…金属膜、111…第1ステージ、112…第2ステージ、111a,112a…ウエハ吸着機構、113…光学顕微鏡、114…XYθ駆動部、115…Z駆動部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を有する複数のMEMS素子をデバイスウエハの上に形成する第1工程と、
前記MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハを形成する第2工程と、
前記デバイスウエハに接着層を介して前記マスクウエハを貼り合わせる第3工程と、
前記開口部を介して前記MEMS素子にドライ処理を行う第4工程と、
前記デバイスウエハを切断して前記MEMS素子を備えるチップに分割する第5工程と
を備えることを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のMEMSチップの製造方法において、
前記第5工程は、前記デバイスウエハと前記マスクウエハとが貼り合わされている状態で行うことを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のMEMSチップの製造方法において、
前記第5工程は、前記デバイスウエハより前記マスクウエハを剥がした後で行うことを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のMEMSチップの製造方法において、
前記接着層は、一方の面の接着力が接着力低下処理により低下する材料から構成し、
前記接着力低下処理により前記接着層の一方の面の接着力を低下させることで、前記デバイスウエハより前記マスクウエハを剥がす処理を行う
ことを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のMEMSチップの製造方法において、
前記接着力低下処理は、加熱,紫外線照射,および電圧印加の中より選択された処理であることを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項6】
可動部を有する複数のMEMS素子が形成されたデバイスウエハを保持する第1ステージと、
前記MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハを前記デバイスウエハに対向して保持する第2ステージと、
前記第1ステージに対して前記第2ステージを前記デバイスウエハの平面内で相対的に移動させる第1ステージ駆動手段と、
前記第1ステージおよび前記第2ステージを前記デバイスウエハの平面の法線方向に相対的に移動させる第2ステージ駆動手段と、
前記第1ステージに保持された前記デバイスウエハおよび前記第2ステージに保持された前記マスクウエハの相対的な位置関係を観察する観察手段と
を少なくとも備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項7】
請求項6記載のMEMSチップの製造装置において、
前記デバイスウエハと前記マスクウエハとを接着する接着層の接着力を低下させる接着力低下手段を備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項8】
請求項7記載のMEMSチップの製造装置において、
前記接着力低下手段は、加熱機構,紫外線照射機構,および電圧印加機構の中より選択されたものであることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のMEMSチップの製造装置において、
前記第1ステージの前記デバイスウエハを保持する面に形成された凹部を備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のMEMSチップの製造装置において、
前記第1ステージに形成された開口部を備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項1】
可動部を有する複数のMEMS素子をデバイスウエハの上に形成する第1工程と、
前記MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハを形成する第2工程と、
前記デバイスウエハに接着層を介して前記マスクウエハを貼り合わせる第3工程と、
前記開口部を介して前記MEMS素子にドライ処理を行う第4工程と、
前記デバイスウエハを切断して前記MEMS素子を備えるチップに分割する第5工程と
を備えることを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のMEMSチップの製造方法において、
前記第5工程は、前記デバイスウエハと前記マスクウエハとが貼り合わされている状態で行うことを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のMEMSチップの製造方法において、
前記第5工程は、前記デバイスウエハより前記マスクウエハを剥がした後で行うことを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のMEMSチップの製造方法において、
前記接着層は、一方の面の接着力が接着力低下処理により低下する材料から構成し、
前記接着力低下処理により前記接着層の一方の面の接着力を低下させることで、前記デバイスウエハより前記マスクウエハを剥がす処理を行う
ことを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のMEMSチップの製造方法において、
前記接着力低下処理は、加熱,紫外線照射,および電圧印加の中より選択された処理であることを特徴とするMEMSチップの製造方法。
【請求項6】
可動部を有する複数のMEMS素子が形成されたデバイスウエハを保持する第1ステージと、
前記MEMS素子の形成位置に対応する複数の開口部を備えるマスクウエハを前記デバイスウエハに対向して保持する第2ステージと、
前記第1ステージに対して前記第2ステージを前記デバイスウエハの平面内で相対的に移動させる第1ステージ駆動手段と、
前記第1ステージおよび前記第2ステージを前記デバイスウエハの平面の法線方向に相対的に移動させる第2ステージ駆動手段と、
前記第1ステージに保持された前記デバイスウエハおよび前記第2ステージに保持された前記マスクウエハの相対的な位置関係を観察する観察手段と
を少なくとも備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項7】
請求項6記載のMEMSチップの製造装置において、
前記デバイスウエハと前記マスクウエハとを接着する接着層の接着力を低下させる接着力低下手段を備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項8】
請求項7記載のMEMSチップの製造装置において、
前記接着力低下手段は、加熱機構,紫外線照射機構,および電圧印加機構の中より選択されたものであることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のMEMSチップの製造装置において、
前記第1ステージの前記デバイスウエハを保持する面に形成された凹部を備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のMEMSチップの製造装置において、
前記第1ステージに形成された開口部を備えることを特徴とするMEMSチップの製造装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【公開番号】特開2011−240455(P2011−240455A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116157(P2010−116157)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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