説明

MEMS素子

【課題】電気特性および信頼性に優れたMEMSキャパシタを有するMEMS素子を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るMEMS素子100は、半導体基板1と、面内方向に配置された複数のエアギャップ21a(21b、21c)からなるエアギャップ群20a(20b、20c)を含むエアギャップ層2a(2b、2c)を有する、半導体基板1上の島状の絶縁層2と、絶縁層2上のエアギャップ群20a(20b、20c)の上方に形成されたMEMSキャパシタ4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のMEMS(Micro Electro Mechanical System)キャパシタを有する装置として、半導体基板上に絶縁膜を介してMEMSキャパシタが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1)。このような装置によれば、絶縁層を設けることにより、MEMSキャパシタと半導体基板との間に発生する寄生容量を低減することができる。
【0003】
さらに、特許文献1には、絶縁層中に空洞部を設けた構成も開示されている。空気は絶縁層よりも誘電率が低いため、空洞部を設けることにより寄生容量をより低減することができる。
【0004】
しかし、十分に寄生容量を低減することのできる程度の大きさの空洞部を設けると、絶縁層の機械的強度が低下し、MEMSキャパシタの信頼性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−279733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電気特性および信頼性に優れたMEMSキャパシタを有するMEMS素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板と、面内方向に配置された複数のエアギャップからなるエアギャップ群を含むエアギャップ層を有する、前記基板上の島状の絶縁層と、前記絶縁層上の前記エアギャップ群の上方に形成されたMEMSキャパシタと、を有するMEMS素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気特性および信頼性に優れたMEMSキャパシタを有するMEMS素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るMEMS素子の上面図。
【図2】図1の線分II−IIに沿ったMEMS素子の垂直断面図。
【図3】(a)、(b)は、エアギャップ群がそれぞれ四角格子(正方格子)パターンを有する場合の配置を模式的に表す上面図。
【図4】(a)〜(c)は、エアギャップ群がそれぞれ三角格子(六方格子)パターンを有する場合の配置を模式的に表す上面図。
【図5A】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図5B】(e)〜(h)は、本発明の実施の形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図5C】(i)、(j)は、本発明の実施の形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施の形態〕
(MEMS素子の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るMEMS素子100の上面図である。また、図2は、図1の線分II−IIに沿ったMEMS素子100の垂直断面図である。
【0011】
MEMS素子100は、半導体基板1と、半導体基板1上に形成された島(アイランド)状の絶縁層2と、絶縁層2の表面を覆う絶縁膜3と、絶縁層2上に形成されたMEMSキャパシタ4とを有する。
【0012】
絶縁層2は、面内方向に配置された複数のエアギャップからなるエアギャップ群を含む。図2に示される絶縁層2は、複数のエアギャップ21aからなるエアギャップ群20aを含むエアギャップ層2a、複数のエアギャップ21bからなるエアギャップ群20bを含むエアギャップ層2b、および複数のエアギャップ21cからなるエアギャップ群20cを含むエアギャップ層2cの3層からなる。なお、エアギャップ層の層数は3層に限られず、また、1層であってもよい。
【0013】
半導体基板1とMEMSキャパシタ4との間に絶縁層2を設けることにより、MEMSキャパシタ4と半導体基板1との間に発生する寄生容量を低減することができる。また、空気は絶縁層2よりも誘電率が低いため、絶縁層2中にエアギャップ群20a、20b、20cを設けることにより寄生容量をより低減することができる。
【0014】
エアギャップ群20a、20b、20cのような面内方向に独立して配置された複数のエアギャップからなるエアギャップ群を形成する場合、1つの大きなエアギャップを形成する場合よりも、絶縁層2の機械的強度の低下を抑えることができる。
【0015】
また、エアギャップ層2a、2b、2cのような多層のエアギャップ層を形成することにより、単層の縦長のエアギャップ層を形成する場合よりも機械的強度の低下をより効果的に抑えることができる。また、単層の縦長のエアギャップ層を形成する場合と比べて、アスペクト比を高めずに絶縁層2の厚さ方向の広い範囲にエアギャップを形成することができるため、エアギャップを形成するための絶縁層2のパターニングが容易になる。
【0016】
MEMSキャパシタ4は、絶縁層2のエアギャップ群20a、20b、20cの上方に形成される。なお、エアギャップ群20a、20b、20cはMEMSキャパシタ4の下方以外の領域に形成されてもよいが、寄生容量を低減するためにはMEMSキャパシタ4の下方にのみ形成されれば十分であり、また、絶縁層2の機械的強度を確保するためにはMEMSキャパシタ4の下方にのみ形成されることが好ましい。
【0017】
MEMSキャパシタ4は、下部電極としての信号線41、GNDに接続される接地線42a、42b、接地線42a、42b上にそれぞれ形成された支持部43a、43b、および支持部43a、43b上に渡された上部電極としてのブリッジ40を有する。ブリッジ40と信号線41との間に電圧を印加することによりブリッジ40が変形して、ブリッジ40と信号線41との間隔が変化し、電気容量が変化する。なお、MEMSキャパシタ4と異なる構造を有するMEMSキャパシタを用いてもよい。
【0018】
キャパシタの特性の指標の1つとして、Q値と呼ばれるパラメータが用いられる。Q値は、Q=1/(ωCR)という式で表され、値が大きいほどキャパシタの特性がよいことを示す。ここで、ωは信号線41に流れる電気信号の周波数、CはMEMSキャパシタ内の可変容量値とMEMSキャパシタと半導体基板間の寄生容量との合計、Rは信号線41の電気抵抗を表す。
【0019】
MEMSキャパシタと半導体基板間の寄生容量を低減することにより、MEMSキャパシタ内の可変容量値を低減することなくCを小さくし、それによってQ値を大きくすることができる。
【0020】
半導体基板1は、例えば、Si結晶等のSi系結晶からなる。
【0021】
絶縁層2は、SiO、SiN等の絶縁材料からなる。また、SOG(Spin-On Glass)膜を加工したものであってもよい。また、エアギャップ層2a、2b、2cの材料は同じでなくてもよい。
【0022】
絶縁膜3は、SiO、SiN等の絶縁材料からなる。
【0023】
ブリッジ40、信号線41、接地線42a、42b、および支持部43a、43bは、Al、Ni等の金属材料、あるいはAl−Cu、Al−Si−Cu等の合金材料からなる。
【0024】
図3(a)、(b)は、エアギャップ群20a、20b、20cがそれぞれ四角格子(正方格子)パターンを有する場合の配置を模式的に表す上面図である。
【0025】
図3(a)は、エアギャップ群20a、20b、20cの面内方向の位置が一致する場合の上面図であり、エアギャップ21a、21b、21cが重なる。この場合、エアギャップ21a、21b、21cの位置を結晶構造でいうところの原子位置と考えれば、エアギャップ21a、21b、21cは単純正方構造に近い構造を有する。
【0026】
図3(b)は、エアギャップ群20bとエアギャップ群20aの面内方向の位置が異なる場合の上面図である。エアギャップ群20bの四角格子パターンの格子点はエアギャップ群20aの四角格子パターンの格子間の中心の真上にある。また、エアギャップ群20cの配置とエアギャップ群20aの面内方向の位置は一致する。この場合、エアギャップ21a、21b、21cは体心正方構造に近い構造を有する。3層以上のエアギャップ層が形成される場合は、エアギャップ群20aの配置(A)とエアギャップ群20bの配置(B)が交互に繰り返される(ABABAB…)。
【0027】
図4(a)〜(c)は、エアギャップ群20a、20b、20cがそれぞれ三角格子(六方格子)パターンを有する場合の配置を模式的に表す上面図である。
【0028】
図4(a)は、エアギャップ群20a、20b、20cの面内方向の位置が一致する場合の上面図であり、エアギャップ21a、21b、21cが重なる。この場合、エアギャップ21a、21b、21cは単純六方構造に近い構造を有する。
【0029】
図4(b)は、エアギャップ群20bの配置がエアギャップ群20aの配置からずれた場合の上面図である。エアギャップ群20bの三角格子パターンの格子点はエアギャップ群20aの三角格子パターンの格子間の中心の真上にある。また、エアギャップ群20cとエアギャップ群20aの面内方向の位置は一致する。この場合、エアギャップ21a、21b、21cは六方最密構造に近い構造を有する。3層以上のエアギャップ層が形成される場合は、エアギャップ群20aの配置(A)とエアギャップ群20bの配置(B)が交互に繰り返される(ABABAB…)。
【0030】
図4(c)は、エアギャップ群20a、20b、20cの面内方向の位置が異なる場合の上面図である。エアギャップ群20bの三角格子パターンの格子点はエアギャップ群20aの三角格子パターンの格子間の中心の真上にある。またエアギャップ群20cの三角格子パターンの格子点はエアギャップ群20aの三角格子パターンの格子間の中心の真上かつエアギャップ群20bの三角格子パターンの格子間の中心の真上にある。この場合、エアギャップ21a、21b、21cは立方最密構造に近い構造を有する。なお、4層以上のエアギャップ層が形成される場合は、エアギャップ群20a、20b、20cの配置(A, B, C)が繰り返される(ABCABCABC…)。
【0031】
エアギャップ群20a、20b、20cの各々が図3、4に示されるように規則的、周期的な配置を持つ場合、絶縁層2中の領域ごとの機械的強度のばらつきが少なく、強度が極端に弱い箇所が存在しない。そのため、絶縁層2の機械的強度の低下をより効果的に抑えることができる。
【0032】
さらに、図3(b)、図4(b)、(c)に示されるように多層のエアギャップ層のエアギャップの面内方向の位置を層ごとに変えることにより、絶縁層2の機械的強度がより高まることが期待できる。
【0033】
なお、エアギャップ群20a、20b、20cの配置は、図3、4に示されるものに限られない。例えば、エアギャップ群20a、20b、20cのそれぞれのパターンは異なっていてもよい。また、エアギャップ群20a、20b、20c中の個々のエアギャップ21a、21b、21cの形状、大きさが異なっていてもよい。
【0034】
以下に、実施の形態に係るMEMS素子100の製造方法の一例を示す。
【0035】
(MEMS素子の製造)
図5A(a)〜(d)、図5B(e)〜(h)、図5C(i)、(j)は、本発明の実施の形態に係るMEMS素子100の製造工程を示す断面図である。
【0036】
まず、図5A(a)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により半導体基板1上に絶縁材料を堆積させ、厚さ数μm〜数十μmの絶縁層2を形成する。
【0037】
次に、図5A(b)に示すように、フォトリソグラフィ法とRIE法の組み合わせ等により絶縁層2をパターニングし、溝22aを形成する。
【0038】
次に、図5A(c)に示すように、エアギャップ21aを含むエアギャップ層2aを形成する。まず、CVD法等により溝22aを完全に埋めないように絶縁層2上に絶縁材料を堆積させ、絶縁層2の厚さを増す。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等により絶縁層2の上面を平坦化し、エアギャップ層2aを得る。
【0039】
次に、図5A(d)に示すように、フォトリソグラフィ法とRIE法の組み合わせ等により絶縁層2をパターニングし、溝22bを形成する。このとき、エアギャップ21aと溝22bのパターンによっては両者が連結するそれがあるため、溝22bの底の位置がエアギャップ21aの上端の位置よりも高くなるように溝22bを形成することが好ましい。
【0040】
次に、図5B(e)に示すように、エアギャップ21bを含むエアギャップ層2bを形成する。まず、CVD法等により溝22bを完全に埋めないように絶縁層2上に絶縁材料を堆積させ、絶縁層2の厚さを増す。その後、CMP等により絶縁層2の上面を平坦化し、エアギャップ層2bを得る。
【0041】
次に、図5B(f)に示すように、フォトリソグラフィ法とRIE法の組み合わせ等により絶縁層2をパターニングし、溝22cを形成する。このとき、溝22cの底の位置がエアギャップ21bの上端の位置よりも高くなるように溝22cを形成することが好ましい。
【0042】
次に、図5B(g)に示すように、エアギャップ21cを含むエアギャップ層2cを形成する。まず、CVD法等により溝22cを完全に埋めないように絶縁層2上に絶縁材料を堆積させ、絶縁層2の厚さを増す。その後、CMP等により絶縁層2の上面を平坦化し、エアギャップ層2cを得る。
【0043】
次に、図5B(h)に示すように、フォトリソグラフィ法とRIE法の組み合わせ等により絶縁層2をパターニングし、絶縁層2を島状に加工する。
【0044】
次に、図5C(i)に示すように、信号線41、接地線42a、42b、および絶縁膜3を形成する。信号線41および接地線42a、42bは、絶縁層2を覆うように形成された金属膜をパターニングすることにより形成される。
【0045】
次に、図5C(j)に示すように、支持部43a、43bおよびブリッジ40を形成する。例えば、絶縁膜3上に形成した犠牲層(図示しない)の側面および上面にそれぞれ支持部43a、43bおよびブリッジ40を形成し、その後犠牲層を除去する。
【0046】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、絶縁層2がエアギャップ群20a、20b、20cのような面内方向に独立して配置された複数のエアギャップからなるエアギャップ群を含むため、1つの大きなエアギャップを形成する場合よりも、絶縁層2の機械的強度の低下を抑えることができる。
【0047】
また、エアギャップ層2a、2b、2cのような多層のエアギャップ層を形成することにより、単層の縦長のエアギャップ層を形成する場合よりも機械的強度の低下をより効果的に抑えることができる。また、単層の縦長のエアギャップ層を形成する場合と比べて、アスペクト比を高めずに絶縁層2の厚さ方向の広い範囲にエアギャップを形成することができるため、エアギャップを形成するための絶縁層2のパターニングが容易になる。
【0048】
また、エアギャップ群20a、20b、20cの各々が規則的、周期的な配置を持つ場合、絶縁層2中の領域ごとの機械的強度のばらつきを抑え、絶縁層2全体の機械的強度の低下をより効果的に抑えることができる。
【0049】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 MEMS素子、 1 半導体基板、 2 絶縁層、 2a、2b、2c エアギャップ層、 20a、20b、20c エアギャップ群、 21a、21b、21c エアギャップ、 4 MEMSキャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
面内方向に配置された複数のエアギャップからなるエアギャップ群を含むエアギャップ層を有する、前記基板上の島状の絶縁層と、
前記絶縁層上の前記エアギャップ群の上方に形成されたMEMSキャパシタと、
を有するMEMS素子。
【請求項2】
前記絶縁層は、第1のエアギャップ群を含む第1のエアギャップ層と、前記第1のエアギャップ層上の第2のエアギャップ群を含む第2のエアギャップ層と、を有する、
請求項1に記載されたMEMS素子。
【請求項3】
前記第1および第2のエアギャップ群は、同じパターンを有し、かつ面内方向の位置が異なる、
請求項2に記載されたMEMS素子。
【請求項4】
前記第1および第2のエアギャップ群のパターンは、四角格子パターンまたは三角格子パターンである、
請求項2または3に記載されたMEMS素子。
【請求項5】
前記第2のエアギャップ群の前記パターンの格子点は、前記第1のエアギャップ群の前記パターンの格子間の中心の直上にある、
請求項4に記載されたMEMS素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2011−216820(P2011−216820A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86049(P2010−86049)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】