説明

MOS抵抗制御装置、MOS減衰器、無線送信機

【課題】MOS減衰器としての可変特性を所望に合わせ込んでそのばらつきを吸収することが可能なMOS抵抗制御装置、これを用いる無線送信機を提供すること。
【解決手段】ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、該MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の制御電流源と、第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端がMOSトランジスタのドレインと第1の制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端がMOSトランジスタのゲートに接続されたオペアンプと、該オペアンプの第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、該インピーダンス素子に一端の側から電流を入力する基準電流源と、インピーダンス素子に一端の側からさらに電流を入力する第2の制御電流源と、MOSトランジスタのドレインに電流を入力する第3の制御電流源とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタのソースドレイン間抵抗の制御を行うMOS抵抗制御装置およびこれを利用したMOS減衰器、並びにこのMOS減衰器を用いた無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子回路において、抵抗素子としてMOSトランジスタの線形領域を利用することは広く行われている。線形領域におけるMOSトランジスタのドレインソース間抵抗Rmosは、Rmos≒1/{β(Vgs−Vth)}で近似できる。ここでβは、β=(μn・Cox)・(W/L)であり、μnは電子移動度、CoxはMOSトランジスタのゲート容量、Lはゲート長、Wはゲート幅である。また、Vgsはゲートソース間電圧、Vthはしきい値電圧である。上記の式より、線形領域を利用したMOS抵抗は、ゲート電圧を可変することで、値を可変できる。
【0003】
MOS抵抗の値を制御する回路の例として例えば下記特許文献1に開示のものがある。この回路はオペアンプによる帰還回路を使用する。概略的には、目的のMOS抵抗を実現するゲート電圧を、ソースドレイン間電圧のオペアンプへのフィードバックにより得ている。発生させたゲートへの供給電圧をほかのMOSトランジスタのゲートに供給することで供給先のMOSトランジスタが所望のMOS抵抗に制御される。
【0004】
また、MOS抵抗を利用した応用回路として、下記非特許文献1に開示の可変減衰器がある。概略的には、対地の抵抗および通過の抵抗としてMOS抵抗を用い、対地のMOSトランジスタのゲート電圧を可変することで可変減衰器とする。対地の抵抗のみを変化させると減衰器として特性インピーダンスが所定値からはずれる(=非整合状態になる)ので、通過のMOSトランジスタのゲートには、特性インピーダンスが所定値を保つようにすべく所定電圧を加える。この所定電圧を得るため、信号を通過させる可変減衰器と同様な構成を有する模擬回路(レプリカ)およびオペアンプによるフィードバック構成を備えている。
【0005】
また、MOS抵抗を利用した可変減衰器として下記特許文献2に開示のものもある。この可変減衰器では、上記のものとは逆に、通過の抵抗となるMOSトランジスタのゲート電圧を外部から可変することで可変減衰器とする。対地のMOSトランジスタのゲートには、減衰器として所定の特性インピーダンスが保たれるように所定電圧が加えられる。この所定電圧は、上記の可変減衰器と同様に、模擬回路とオペアンプによるフィードバック構成とを有する回路で生成され、対地のMOSトランジスタのゲートに供給される。
【0006】
一般に、外部から減衰量を制御する可変減衰器は、制御入力に対する減衰値の変化特性(すなわち、制御入力を横軸に取り、対応する減衰値を縦軸に取った場合のグラフ形状)ができるだけばらつかずに意図どおりになるのが好ましい。このようなばらつきは、回路を構成している素子の製造段階の特性ばらつきによって不可避的に生じる。これを改善することについて非特許文献1、特許文献2に開示、示唆はない。
【特許文献1】特開平10−200334号公報
【特許文献2】米国特許第4975604号明細書
【非特許文献1】Hakan Dogan, Robert G.Meyer and Ali M.Niknejad BWRC, UC Berkeley, “A DC-10GHz Linear-in-dB Attenuator in 0.13um CMOS Technology”, IEEE 2004 CUSTOM INTEGRATED CIRCUITS CONFERENCE pp609-612
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、MOSトランジスタのソースドレイン間抵抗の制御を行うMOS抵抗制御装置およびこれを利用したMOS減衰器、並びにこのMOS減衰器を用いた無線送信機において、MOS減衰器としての可変特性を所望に合わせ込んでそのばらつきを吸収することが可能なMOS抵抗制御装置およびこれを利用したMOS減衰器、並びにこのMOS減衰器を用いた無線送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様であるMOS抵抗制御装置は、ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、前記MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の制御電流源と、第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端が前記MOSトランジスタの前記ドレインと前記第1の制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端が前記MOSトランジスタのゲートに接続されたオペアンプと、前記オペアンプの前記第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、前記インピーダンス素子に前記一端の側から電流を入力する基準電流源と、前記インピーダンス素子に前記一端の側からさらに電流を入力する第2の制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインに電流を入力する第3の制御電流源とを具備することを特徴とする。
【0009】
すなわち、第2の制御電流源および第3の制御電流源を設けることにより、第1の制御電流源の出力電流に対するMOS抵抗の可変特性を所望に変化させることを意図する。第2の制御電流源は、インピーダンス素子にその一端の側から電流を、基準電流源とともに入力する機能を有している。第3の制御電流源は、MOSトランジスタのドレインに電流を、第1の制御電流源とともに入力する機能を有している。
【0010】
オペアンプの第1、第2の入力端間はイマジナリショートとなるので、第2の制御電流源の出力電流を増すと、インピーダンス素子の一端側の電圧が高くなりMOSトランジスタのドレイン電圧が増す(すなわちMOSトランジスタの抵抗が大きくなる)。また、第3の制御電流源の出力電流が増すと、MOSトランジスタがその分の電流を増加して流すようにその抵抗が小さくなる。このように第2、第3の制御電流源により、MOSトランジスタの抵抗についてその値を両方向に変化させることができる。これにより、オペアンプの出力電圧に、MOS減衰器に対してその可変特性を所望に合わせ込んでそのばらつきを吸収するような制御電圧を生成することが可能である。
【0011】
また、本発明の別の態様であるMOS減衰器は、ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、前記MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の電圧制御電流源と、第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端が前記MOSトランジスタの前記ドレインと前記第1の電圧制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端が前記MOSトランジスタのゲートに接続された第1のオペアンプと、前記第1のオペアンプの前記第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、前記インピーダンス素子に前記一端の側から電流を入力する基準電流源と、前記インピーダンス素子に前記一端の側からさらに電流を入力する第2の電圧制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインに電流を入力する第3の電圧制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインにさらに電流を入力する、前記第1の電圧制御電流源が有するトランスコンダクタンスの係数倍のトランスコンダクタンスを有する第4の電圧制御電流源と、入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに、該入力端と該出力端との間の特性インピーダンスを所定に設定する制御電圧が供給された第1の減衰器と、前記第1の減衰器の前記入力端と第3の基準電位との間に挿入・接続された、前記特性インピーダンスに相当するインピーダンスの第1の抵抗器と、前記第1の減衰器の前記出力端と第4の基準電位との間に挿入・接続された第2の抵抗器と、前記第1の減衰器の前記出力端の電圧を所定電圧との比較にて増幅し前記第1の減衰器のための前記制御電圧を生成する第2のオペアンプと、入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧が供給された第2の減衰器とを具備することを特徴とする。
【0012】
このMOS減衰器は、MOS抵抗制御装置としての機能を含んでいる。その機能により生成されたMOS抵抗の制御電圧が、信号通過用である第2の減衰器における対地のMOSトランジスタのMOS抵抗の値を制御する。したがって、MOS減衰器としての可変特性を所望に合わせ込んでそのばらつきを吸収することが達成される。
【0013】
また、本発明のさらに別の態様である無線送信機は、2相のベースバンド信号を生成するベースバンド信号処理部と、前記2相のベースバンド信号で互いに直交する2つのキャリア信号を直交変調し被変調信号を生成する直交変調器と、(以下、MOS減衰器:)ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、前記MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の電圧制御電流源と、第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端が前記MOSトランジスタの前記ドレインと前記第1の電圧制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端が前記MOSトランジスタのゲートに接続された第1のオペアンプと、前記第1のオペアンプの前記第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、前記インピーダンス素子に前記一端の側から電流を入力する基準電流源と、前記インピーダンス素子に前記一端の側からさらに電流を入力する第2の電圧制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインに電流を入力する第3の電圧制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインにさらに電流を入力する、前記第1の電圧制御電流源が有するトランスコンダクタンスの係数倍のトランスコンダクタンスを有する第4の電圧制御電流源と、入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに、該入力端と該出力端との間の特性インピーダンスを所定に設定する制御電圧が供給された第1の減衰器と、前記第1の減衰器の前記入力端と第3の基準電位との間に挿入・接続された、前記特性インピーダンスに相当するインピーダンスの第1の抵抗器と、前記第1の減衰器の前記出力端と第4の基準電位との間に挿入・接続された第2の抵抗器と、前記第1の減衰器の前記出力端の電圧を所定電圧との比較にて増幅し前記第1の減衰器のための前記制御電圧を生成する第2のオペアンプと、入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧が供給された第2の減衰器とを備え、前記第2の減衰器の前記入力端に前記被変調信号が入力され、該第2の減衰器の前記出力端に減衰被変調信号を発生するMOS減衰器(以上、MOS減衰器)と、前記減衰被変調信号を電力増幅して電力増幅信号を生成する電力増幅器と、前記電力増幅信号を電波放射するアンテナとを具備し、前記ベースバンド信号処理部が、前記MOS減衰器の中の前記第1、第2、第3、第4の電圧制御電流源への制御電圧をさらに生成することを特徴とする。
【0014】
この無線送信機は、上記のMOS減衰器を利用した送信機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、MOSトランジスタのソースドレイン間抵抗の制御を行うMOS抵抗制御装置およびこれを利用したMOS減衰器、並びにこのMOS減衰器を用いた無線送信機において、MOS減衰器としての可変特性を所望に合わせ込んでそのばらつきを吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下では実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るMOS抵抗制御装置の構成を示している。同図に示すように、このMOS抵抗制御装置10は、MOSトランジスタ11、オペアンプ12、抵抗器13(インピーダンス素子)、基準電流源14、電圧制御電流源15、17、18を有する。オペアンプ12の出力は、このMOS抵抗制御装置10の出力端子16に出力Voutとしても供給される。
【0017】
MOSトランジスタ(nチャネルMOSトランジスタ)11は、ソースがグラウンド(第1の基準電位)に接続され、また、MOSトランジスタ11のチャネルが形成される半導体領域(基板、ボディ)は、図面に記号化して表わされているように、グラウンドの電位にされている。さらに、ドレインが電圧制御電流源15の一端に接続され、ゲートにはオペアンプ12の出力電圧が供給される。
【0018】
オペアンプ12は、2つの入力端と1つの出力端を有し、反転入力として基準電流源14(Iref)の出力電流が一端に流し込まれる抵抗器13(Rref)のその一端の電圧が供給される。非反転入力としてMOSトランジスタ11のドレインと電圧制御電流源15との接続ノードに発生する電圧が供給される。出力端はMOSトランジスタ11のゲートに接続される。電圧制御電流源15は、MOSトランジスタ11のドレインと電源電圧(第2の基準電位)との間に挿入、接続され、電流IcntをMOSトランジスタ11に流し込む。
【0019】
電圧制御電流源17、18がない構成では、電圧制御電流源15が出力する電流IcntのみによりMOSトランジスタ11のソースドレイン間抵抗Rmosが制御される。これは、オペアンプ12の入力端間がイマジナリショートなのでMOSトランジスタ11のドレイン電圧は不変(=Rref・Iref)であり、電流Icntが変化するとMOSトランジスタ11のソースドレイン間抵抗Rmosが変化して対応するためである。すなわち、Rmos=Rref・Iref/Icntである。
【0020】
この特性は、横軸にIcntをとり縦軸にRmosをとって描くと、図2における曲線1のようになる。このようなIcntからRmosへの入出力特性は、このMOS抵抗制御装置10を構成する各構成要素の特性ばらつきにより変動する。なお、MOSトランジスタ11にRmosを発生させているそのゲート電圧は、出力端子16を介してほかのMOSトランジスタのゲートに供給され、供給先のMOSトランジスタをその所望のMOS抵抗Rmosに制御することができる。
【0021】
このMOS抵抗制御装置10では、IcntからRmosへの入出力特性をある程度所望に合わせ込み可能にするため、基準電圧源14に並列に電圧制御電流源17(Igmcp1)を、電圧制御電流源15に並列に電圧制御電流源18(Igmcp2)をそれぞれ設けている。このようなIgmcp1、Igmcp2の作用は、式の上から容易に分かる。すなわち、Rmos=Rref・(Iref+Igmcp1)/(Icnt+Igmcp2)になるので、Igmcp1をゼロから増やしていくと、図2における曲線1は、曲線2a、2b、…のように縦方向に伸張していく。また、Igmcp2をゼロから増やしていくと、図2における曲線1は、曲線3a、3b、…のように左方向に平行移動していく。
【0022】
したがって、IcntからRmosへの入出力特性を、最初の曲線1の位置を中心にある程度両方向に変化させることができる。これにより、入出力特性が当初ばらついた場合にもこれを吸収することができる。ここで、Igmcp1、Igmcp2がIcntからRmosへの入出力特性に及ぼす作用は同じではないので、Igmcp1、Igmcp2を独立に増加できるようにすれば、合わせ込みの範囲をより増すことができる。さらには、Igmcp1、Igmcp2がある程度の値のときを典型時とし、これらを減少させるようにも可能に構成すれば、さらに合わせ込みの自由度が増す。
【0023】
なお、電圧制御電流源15、17、18は、それぞれ、電流制御電流源でもよい。さらには、電圧や電流のようなアナログ量により制御される制御電流源とするほかに、ディジタル量により制御される制御電流源としてもよい。
【0024】
(第2の実施の形態)
次に、別の実施形態について図3を参照して説明する。図3は、別の実施形態に係るMOS抵抗制御装置の構成を示している。図3においてすでに説明した図中に登場のものと同一のものには同一符号を付している。その部分の説明は省略する。
【0025】
この実施形態のMOS抵抗制御装置30は、電圧制御電流源15に並列に設けられる制御電流源を、電圧制御電流源18(Igmcp2)に代えて電圧制御電流源31(K・Icnt)にしたものである。すなわち、電圧制御電流源31は、電圧制御電流源15の出力電流Icntに連動してこの係数倍(K倍)の出力電流を発生するものである。
【0026】
この場合には、Rmos=Rref・(Iref+Igmcp1)/{(1+K)Icnt}になるので、Igmcp1をゼロから増やしていくと、図4における曲線1は、曲線2a、2b、…のように縦方向に伸張していく(これは図2での場合と同じである)。また、Kをゼロから増やしていくと、図4における曲線1は、曲線4a、4b、…のように左方向に伸張していく。
【0027】
したがって、この場合にも、IcntからRmosへの入出力特性を、最初の曲線1の位置を中心にある程度両方向に変化させることができる。これにより、入出力特性が当初ばらついた場合にもこれを吸収することができる。ここで、Igmcp1、KがIcntからRmosへの入出力特性に及ぼす作用は同じではないので、Igmcp1、Kを独立に増加できるようにすれば、合わせ込みの範囲をより増すことができる。さらには、Igmcp1、Kがある程度の値のときを典型時とし、これらを減少させるようにも可能に構成すれば、さらに合わせ込みの自由度が増す。
【0028】
(第3の実施の形態)
次に、さらに別の実施形態について図5を参照して説明する。図5は、さらに別の実施形態に係るMOS抵抗制御装置の構成を示している。図5においてすでに説明した図中に登場のものと同一のものには同一符号を付している。その部分の説明は省略する。
【0029】
この実施形態のMOS抵抗制御装置50は、電圧制御電流源15に並列に設けられる制御電流源として、電圧制御電流源18(Igmcp2)に加え、電圧制御電流源31(K・Icnt)をも設けている。すなわち、図1に示した実施形態と図3に示した実施形態とを組み合わせたものと言える。効果としても、図1に示したものと図3に示したものとを併せもったものとなる。
【0030】
この場合には、Rmos=Rref・(Iref+Igmcp1)/{(1+K)Icnt+Igmcp2}になる。Igmcp1、Igmcp2、KがそれぞれIcntからRmosへの入出力特性に及ぼす作用はすでに説明したとおりである。特に、Igmcp2とKとが上記入出力特性に及ぼす作用は、移動方向は同じでも平行移動(図2の曲線3a、3b)と伸張(図4の曲線4a、4b)の違いがあり、特性の合わせ込みの自由度が上記の図1、図3に示した場合よりさらに増す。
【0031】
(第4の実施の形態)
次に、一実施形態に係るMOS減衰器を図6を参照して説明する。図6は、一実施形態に係るMOS減衰器の構成を示している。図6において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一のものには同一符号を付している。その部分の説明は省略する。
【0032】
このMOS減衰器60は、図5に示したMOS抵抗制御装置50を利用する。すなわち、電圧制御電流源15の出力電流Icntを変化することで減衰量を可変できる。MOS抵抗制御装置50を除く部分として、レプリカとしての、MOSトランジスタによる減衰器61と、信号通過用の(実際の)、MOSトランジスタによる減衰器63とを有する。
【0033】
レプリカの減衰器61には、その入力側とグラウンド(第3の基準電位)との間に信号源のインピーダンスに相当の抵抗R0が挿入・接続され、出力側と電源電圧(第4の基準電位)との間に終端抵抗に相当の抵抗R1(この値は、抵抗R0と同じでなくてもよい)が挿入・接続される。レプリカの減衰器61の内部は、対地のMOSトランジスタT1、T2、T3と通過のMOSトランジスタT4、T5とが設けられる。対地のMOSトランジスタT1、T2、T3の各ゲートには、MOS抵抗制御装置50の出力電圧が供給される。通過のMOSトランジスタT4、T5の各ゲートには、レプリカの減衰器61の特性インピーダンスを所定に設定するための電圧としてオペアンプ62の出力が導かれている。
【0034】
信号通過用の減衰器63は、レプリカの減衰器61の構成とほぼ同様に構成されている(MOSトランジスタT6、T7、T8、T9、T10)。信号通過用の減衰器63のMOSトランジスタT6、T7、T8、T9、T10の各ゲートに挿入された抵抗R4、R5、R6、R7、R8は、減衰器63を通過する高周波信号の影響が減衰器63の外に現われにくいようにするためである。対地のMOSトランジスタT6、T7、T8の各ゲートにMOS抵抗制御装置50の出力電圧が供給されるべく接続を有する点、および通過のMOSトランジスタT9、T10の各ゲートにオペアンプ62の出力が導かれている点も同じである。
【0035】
レプリカの減衰器61の出力側は抵抗R1に接続されるとともにオペアンプ62の非反転の入力端にも導かれる。オペアンプ62の反転の入力端には抵抗R2と抵抗R3とによる分圧電圧が導かれる。このような構成によれば、オペアンプ62の両入力端がイマジナリショートなので、R1=R2としたとき、レプリカの減衰器61の出力側からその内部を見込む抵抗がR3に等しくなるように、オペアンプ62によるフィードバックがMOSトランジスタT4、T5の両ゲートにかかる。したがって、R3、R0を設定すべき特性インピーダンスに相当の値とすれば、レプリカの減衰器61の特性インピーダンスは所定に設定されることになる。これにより、信号通過用の減衰器63の特性インピーダンスも所定に設定される。
【0036】
なお、R2、R3の接続は単純な分圧回路なので、消費電流削減のためそれぞれ値を同じ係数倍してもよい。この場合は当然ながらR1=R2ではなくなり、R3は上記特性インピーダンスと同じではなくなる。
【0037】
図6に示すMOS減衰器60では、レプリカの減衰器61および信号通過用の減衰器63それぞれの対地のMOSトランジスタT1、T2、T3、T6、T7、T8のゲート電圧として、上記説明のMOS抵抗制御装置50の出力電圧が供給されている。したがって、対地のMOSトランジスタT1、T2、T3、T6、T7、T8には、電圧制御電流源15の出力電流Icntに基づくMOSトランジスタ11のMOS抵抗Rmosに相当した抵抗が発生する。好ましくは、MOSトランジスタT1、T2、T3、T6、T7、T8は、MOSトランジスタ11とのペア性が向上するようにそれぞれこれと近接したレイアウトにするのがよい。
【0038】
なお、レプリカの減衰器61における対地のMOSトランジスタT2、および信号通過用の減衰器63における対地のMOSトランジスタT7は、2つのπ型構成の共通部分として設けられたMOS抵抗である。よって、MOSトランジスタT1(T6)、T3(T8)に比べてサイズ(ゲート幅)を2倍にし、そのMOS抵抗を半分にする(電流密度として等しくする)設計がより実際的な設計である。
【0039】
さて、上記を前提に、信号通過用の減衰器63におけるRFinからRFoutへの信号の減衰量A(真値)は、よく知られているように、A={(Rshunt−Z0)/(Rshunt−Z0)}である。ここで、Rshuntは対地のMOSトランジスタT6、T8のMOS抵抗に等しく(=トランジスタT7のMOS抵抗からみると2倍)、Z0は特性インピーダンスである。デシベル表示では、A(dB)=20log{(Rmos−Z0)/(Rmos−Z0)}であり、図5において説明したRmos=Rref・(Iref+Igmcp1)/{(1+K)Icnt+Igmcp2}を代入すると、このMOS減衰器60は、電圧制御電流源15の出力電流Icntを入力とし、減衰器63の減衰量を出力とする可変減衰器となっている。
【0040】
上記の式からIcnt対減衰量(dB)の特性は、図7中に示す直線71のようになる。直線71は、厳密には直線ではないが、Icntの実際的に限られた範囲においては直線とみなすことができる。ここで、Igmcp1をゼロから増加すると直線71は、その傾きが直線72a、73b、…のようにより急峻になり、Kをゼロから増加すると、逆に、その傾きが直線74a、74b、…のようにより緩やかになる。さらに、Igmcp2をゼロから増加すると直線71は、直線73a、73bのように、その位置が上方向に平行移動する(つまりy切片が増加する)。
【0041】
すなわち、このMOS減衰器60では、初期の特性である直線71が設計意図からずれている場合、Igmcp1、K、Igmcp2を制御することよって、Icnt対減衰量(dB)の特性を所望に合わせ込むことができる。これにより、Icnt対減衰量の特性が当初ばらついた場合にもこれを吸収することができる。
【0042】
(第5の実施の形態)
次に、Igmcp1、K、Igmcp2を制御するための構成を備えたMOS減衰器について図8を参照して説明する。図8は、図6に示したMOS減衰器60における可変減衰特性の合わせ込みを実現する構成例を示している。図8においてすでに説明した図中に登場のものと同一のものには同一符号を付している。その部分の説明は省略する。
【0043】
図8に示すように、このMOS減衰器は、MOS減衰器60のほかに、検波器81、82、差分検出器83、補正制御信号発生回路84、ベースバンドLSI(ベースバンド信号処理部)85を有する。ベースバンドLSI85を有しているのは、このMOS減衰器を無線送信機に用いることを前提としているためである。ベースバンドLSI85は、少なくとも、送信すべき信号の変調前の処理を担当している。これに加えベースバンドLSI85は、Icntを制御する制御信号をMOS減衰器60に対して出力し、その制御信号の情報は、図示するように、ベースバンドLSI85から補正制御信号発生回路84にももたらされる。
【0044】
検波器81は、MOS減衰器60のRFin(入力)の信号を検波してその検波出力を差分検出器83にその一方の側の入力として供給する。検波器82は、MOS減衰器60のRFout(出力)の信号を検波してその検波出力を差分検出器83にその他方の側の入力として供給する。検波器81、82は、例えば、ダイオードを使用したピークディテクト回路として実現できる。差分検出器83は、検波器81からの信号と検波器82からの信号との差分を求める。これはすなわち、MOS減衰器60における減衰量の検出である。以上のように、検波器81、82、差分検出器83は、MOS減衰器60における減衰量の検出部として機能する。
【0045】
以上のような差分の算出は、ベースバンドLSI85からのIcntの制御信号を変えて最低2回行われる。これにより、MOS減衰器60におけるIcnt対減衰量の特性直線が求められる。より具体的には、図9を参照すると分かりやすい。図9は、図8に示した構成での可変減衰特性の合わせ込みを説明している。まず、ベースバンドLSI85からIcntをc1に設定して、差分検出器83で差分たる減衰量g1が求められると、図9のグラフ上でプロット点91aが得られる。次に、Icntを変えてこれをc2に設定して差分たる減衰量g2が求められると、プロット点91bが得られる。これにより、特性直線は、これらのプロット点を通る直線91として求められる。
【0046】
直線91が意図する(所望の)傾きであるかないかは、c1、c2に対応してあらかじめあるべき傾きの情報を補正制御信号発生回路84が有していれば、補正制御信号発生回路84で判断ができる。c1、c2については、ベースバンドLSI85からその情報が得られる。さらに補正制御信号発生回路84は、直線91が意図する傾きでない場合に、Igmcp1または/およびKを加減する信号を補正制御信号の一部として発生する。これは、すでに説明した事項を参考に、傾きが足りなければ増す方向に、大きければより緩やかになる方向に信号を出力する。これにより、このMOS減衰器は減衰特性の傾きがより好ましい方向に変化する。
【0047】
以上の減衰特性の傾き変更は、数回繰り返して行うようにしてもよい。または、なるべく少ない回数で済むように、初期に得られた傾きに対して好ましいIgmcp1または/およびKの変化量についての情報をあらかじめ補正制御信号発生回路84に保持させておくようにしてもよい。減衰特性の傾き変更により例えば直線92のような減衰特性が得られる。
【0048】
次に、差分検出器83における差分の算出を、ベースバンドLSI85からIcntをc3に設定して行う。より具体的には、図9を参照すると、ベースバンドLSI85からIcntをc3に設定して、差分検出器83で差分たる減衰量g3が求められると、図9のグラフ上でプロット点92aが得られる。
【0049】
直線92が意図する(所望の)上下方向位置であるかないかは、c3に対応してあらかじめあるべき減衰量の情報g4を補正制御信号発生回路84が有していれば、補正制御信号発生回路84で判断ができる。c3については、ベースバンドLSI85からその情報が得られる。そこで、補正制御信号発生回路84は、直線92が所望の上下方向位置でない場合に、Igmcp2を増加する信号を補正制御信号の別の一部として発生する。これにより、このMOS減衰器は減衰特性の上下方向位置もがより好ましい方向に変化する。
【0050】
以上の減衰特性の上下方向位置変更は、数回繰り返して行うようにしてもよい。または、なるべく少ない回数で済むように、初期に得られた減衰量g3に対して好ましいIgmcp2についての情報をあらかじめ補正制御信号発生回路84に保持させておくようにしてもよい。減衰特性の上下方向位置変更により例えば直線90のような所望の減衰特性が得られる。
【0051】
以上説明のように、補正制御信号発生回路84は、Igmcp1、K、Igmcp2の制御用信号を生成する信号生成部として機能する。以上の説明では、Igmcp2を増加させることで減衰特性の上下方向位置を上方向にのみ移動させる前提で説明をしたが、初期状態でIgmcp2をある程度流すように設定をしておけば、その状態からは上下いずれの方向にも減衰特性の位置を変更することができる。すなわち、以上により、減衰特性の傾きが所望より大きい場合および小さい場合、並びに、減衰特性の上下方向位置が所望よりどちらの方向にずれている場合でも、MOS減衰器としての可変特性を設計意図の特性に合わせ込んでばらつきを吸収することができる。
【0052】
なお、MOS減衰器60の入力側のレベルがあらかじめ分かっている場合(例えば一定である場合)には、検波器81を削除して検波器82からの信号を差分検出器83に導くのみで、実質的に、MOS減衰器60での減衰量を検出できる。
【0053】
(具体例1)
次に、図10は、図8に示した構成のより具体的な例(一例)を示している。図10においてすでに説明した図中に登場のものと同一のものには同一符号を付している。その部分の説明は省略する。この実施形態は、差分検出器83の内部構成として、スイッチ83a、アナログディジタル変換器83b、83c、減算器83dを有し、補正制御信号発生回路84の内部構成として、レジスタ84a、減算器84b、ロジック回路84c、ディジタルアナログ変換器84dを有している。またベースバンドLSI85Aから電圧制御電流源15への制御信号は、当初ディジタルで出力されこれをアナログにするためディジタルアナログ変換器101を有している。
【0054】
差分検出器83および補正制御信号発生回路84は、全体としてディジタルで処理を行う。このため、検波器81からの検波出力はアナログディジタル変換器83cでディジタル信号に変換される。また、検波器82からの検波出力はスイッチ83aを介してアナログディジタル変換器83bでディジタル信号に変換される。ディジタル化された2つの検波出力からその差分が減算器83dで求められ、すでに説明したように、これらが減衰量g1、g2、g3(図9を参照)としてレジスタ84aにディジタル値で保持され得る。
【0055】
レジスタ84aに保持されたディジタル値の減衰量g1、g2は減算器84bで差分が求められる。これにより減衰特性の傾きが求められると、ロジック回路84cでは直線91(図9を参照)が意図する傾きになるように、Igmcp1または/およびKを加減するディジタル信号を補正制御信号の一部として発生する。このディジタルの補正制御信号はディジタルアナログ変換器84dでアナログ信号に変換され、電圧制御電流源17または/および電圧制御電流源31に供給される。
【0056】
また、レジスタ84aに保持されたディジタル値の減衰量g3はロジック回路84cに供給され、ロジック回路84cでは直線92(図9を参照)が所望の上下方向位置になるようにIgmcp2を加減するディジタル信号を補正制御信号の別の一部として発生する。このディジタルの補正制御信号はディジタルアナログ変換器84dでアナログ信号に変換され、電圧制御電流源18に供給される。
【0057】
以上説明のように、ロジック回路84cは、減算器84bでのディジタル値の差分に対応してあらかじめ定められたディジタル値を出力するディジタル出力変換部として機能し、かつ、ディジタル値の減衰量g3に対応してあらかじめ定められたディジタル値を出力するディジタル出力変換部として機能する。
【0058】
図10に示す構成は、差分検出器83および補正制御信号発生回路84がディジタル化されており、検出誤差、補正誤差などをアナログ処理の場合に比べて非常に小さく抑えることができる。また、アナログディジタル変換器83b、83cなどは、これらの回路が、特殊な場合のみ(すなわちMOS減衰器60の特性合わせ込み時のみ)必要なものなので、別の回路で使用されているものを兼用化して回路規模を小さくすることができる。また、CMOSプロセスによる素子ですべて構成することが可能であり、集積化する場合に容易にワンチップ化でき、それによって応用機器の小型化を図ることができる。さらには、差分検出器83および補正制御信号発生回路84をベースバンドLSI85Aの中に含めてしまうこともできる。
【0059】
(具体例2)
次に、図11は、図8に示した構成のより具体的な例(別の例)を示している。図11においてすでに説明した図中に登場のものと同一のものには同一符号を付している。その部分の説明は省略する。この実施形態は、差分検出器83を変形させた差分検出器83Aとして、スイッチ83a、アナログディジタル変換器83b、83c、減算器83dに加え、ディジタル減衰器83e、83fを有している。また、補正制御信号発生回路84を変形させた補正制御信号発生回路84Aとして、レジスタ84aA、減算器84b、ロジック回路84cA、ディジタルアナログ変換器84dを有している。また、ベースバンドLSI85Bからディジタル減衰器83e、83fに減衰量の制御信号が供給されている。
【0060】
この構成での動作は、レジスタ84aAに保持されたディジタル値の減衰量g1、g2を用いて、Igmcp1または/およびKを加減するディジタル信号が補正制御信号の一部としてロジック回路84cAによって発生されるところまでは図10での説明と同じである。この場合には、ディジタル減衰器83e、83fは、減衰器として機能させない(すなわち信号がそのまま通過する)ようにベースバンドLSI85Bから制御がなされる。
【0061】
次に、この構成例では、減算器83dの出力に減衰量g3(図9を参照)を直接得る代わりに、所望の減衰量に相当して、アナログディジタル変換器83cと減算器83cとの間にあるディジタル減衰器83fの減衰量を制御し、減算器83cの出力には、ゼロを中心とするディジタル値を得る。ゼロを中心とするディジタル値なので、現状の減衰特性の上下方向位置が合わせ込みの位置の上にあるのか下にあるのかが分かる。したがって、ロジック回路84cAでの動作は、ゼロを中心とするディジタル値に対応してあらかじめ定められたディジタル値を出力する動作になる。これは、図10中に示したロジック回路84cより機能負担が小さく、より回路規模を小さくできる。なお、ディジタル減衰器83eは、ディジタル減衰器83fを設けたことによるダミーであり通常は制御する必要はない。
【0062】
この例での減衰特性の上下方向位置変更は、上記の「ゼロを中心とするディジタル値」が所定値より小さくなるまで数回繰り返して行うようにしてもよい。または、なるべく少ない回数で済むように、初期に得られたディジタル値に対する好ましいIgmcp2についての情報をあらかじめロジック回路84cAに保持させておくようにしてもよい。
【0063】
(第6の実施の形態)
次に、以上説明のMOS減衰器を携帯電話機などの無線送信機、無線受信機に応用する場合について図12を参照して説明する。図12は、図6に示したMOS減衰器を用いた送受信機の構成例(一例)を示している。すでに説明の図中に登場の構成要素と同一のものには同一符号を付してある。この例では、送受の切り替えを時分割で行うTDD(time division duplex)方式を示すが、実施形態としてこれに限られるものではなく例えばFDD(frequency division duplex)方式でもよい。
【0064】
図12に示すように、この兼用機は、ベースバンド信号処理部121、LPF122、123、直交変調器124、MOS減衰器60、ドライバ125、BPF126、電力増幅器127、送受信スイッチ128、アンテナ129、バンドパスフィルタ130、低雑音増幅器131、バンドパスフィルタ132、直交復調器133、LPF134、135、キャリブレーション用スイッチ141を有する。ベースバンド信号処理部121は、少なくとも、LPF122、123に入力させるアナログ信号を出力するディジタルアナログ変換器121a、121bと、LPF134、135からのアナログ信号をディジタル化するアナログディジタル変換器121c、121dと、MOS減衰器60における減衰量に相当の量の検出部として機能する検出部121eと、Igmcp1、K、Igmcp2の制御用信号を生成する補正制御信号生成部121fとを有する。
【0065】
この兼用機の通常時の動作を各構成要素の機能とともに説明する。まず、送信時であるが、ベースバンド信号処理部121ではベースバンドにおける送信信号の生成のため各処理がなされる。その処理の最後であるディジタルアナログ変換器121a、121bにより信号がアナログ化され、このアナログ化されたベースバンド信号はLPF122、123で所定の帯域制限がされる。これで得られたベースバンド信号は、直交変調器124に導かれて直交するキャリアを変調する。変調と同時にそれらは合成され、被変調信号となってMOS減衰器60に供給される。
【0066】
MOS減衰器60は、被変調信号を所定に減衰させる。所定に減衰された被変調信号は、ドライバ125でBPF126を駆動すべく増幅され、さらにBPFを介して電力増幅器127に導かれる。電力増幅器127では、被変調信号に対してアンテナ129から電波放射するための電力増幅がなされる。電力増幅された被変調信号は、送受信スイッチ128が送受のうちの送側に切り替えられた状態においてアンテナ129に供給される。アンテナ129に供給された被変調信号は電波として放射される。
【0067】
次に、受信時であるが、電波として空中に放射された信号はアンテナ129により捉えられ、RF信号として送受信スイッチ128が受側に切り替えられた状態においてバンドパスフィルタ130に導かれる。バンドパスフィルタ130では不要周波数成分の除去がされ、その出力が低雑音増幅器131で低雑音特性の下、増幅される。低雑音増幅されたRF信号はバンドパスフィルタ132に導かれて不要周波数成分の除去がされ、その出力たるRF信号が直交復調器133に入力される。
【0068】
直交復調器133では、入力されたRF信号を、2相のローカルキャリア波形を用い直交する2つの軸で復調する。復調で得られた信号は、LPF134、135で不要周波数成分が除去され、さらに、ベースバンド信号処理部121に導かれ、その初段のアナログディジタル変換器121c、121dによりディジタル化された後、所定のベースバンド処理がなされる。
【0069】
以上の通常時の動作のほか、この兼用機は、MOS減衰器60を所望の減衰特性に設定する動作をキャリブレーションとして行う。このため、ベースバンド信号処理部121に、検出部121eおよび補正制御信号生成部121fが設けられ、さらに、送信側のドライバ125の出力を受信側のBPF132に導くためのキャリブレーション用スイッチ141が設けられている。このスイッチ141は、通常時にはオフ(開いた状態)にされ、キャリブレーション時にオン(閉じた状態)にされる。スイッチ141のオン状態では、ドライバ125の出力がBPF132に入力される。なお、キャリブレーション時は受信していないので、低雑音増幅器131からの信号はない。
【0070】
以上のような構成を前提として、MOS減衰器60の減衰特性が所望に補正されることにより、ベースバンド信号処理部121からのMOS減衰器60に対する制御特性がほぼばらつきのないものになる。より具体的には以下である。
【0071】
検出部121eは、機能として、図8において説明した実施形態の差分検出器83に相当しており、補正制御信号生成部121fは、同実施形態の補正制御信号発生回路84に相当している。ただし、図8に示した実施形態のようにMOS減衰器60の入力端および出力端の信号を直接拾う代わりに、MOS減衰器60の入力端の信号レベル検知に相当しては、ディジタルアナログ変換器121a、121bに入力されている信号からこれを推定し、MOS減衰器60の出力端の信号レベル検知に相当しては、MOS減衰器60からドライバ125、スイッチ141、BPF132、直交復調器133、LPF134、135を介してベースバンド信号処理部121に戻ってきた信号からこれを推定するようにしている。
【0072】
このようなキャリブレーションをするための構成は、ベースバンド信号処理部121の内部構成を除けばスイッチ141を設けるだけの変更で実現がされ、すでにある回路の改変が最低限で済む利点がある。なお、当然ながら、回路の改変をあまり厭わなければ、キャリブレーション動作のため、例えば、ドライバ125の出力(=電力増幅器127の入力側の信号)をベースバンド信号処理部121にフィードバックする経路を専用に設けてもよい。
【0073】
(第7の実施の形態)
次に、MOS減衰器を無線送信機、無線受信機に応用する別の場合について図13を参照して説明する。図13は、図6に示したMOS減衰器を用いた送受信機の構成例(別の例)を示している。すでに説明の図中に登場の構成要素と同一のものには同一符号を付してある。その説明は省略する。この例も、送受の切り替えを時分割で行うTDD(time division duplex)方式を示すが、実施形態としてこれに限られるものではなく例えばFDD(frequency division duplex)方式でもよい。
【0074】
この構成例では、電力増幅器127に代えて可変増幅機能を有する電力増幅器127Aを用い、さらに、電力増幅器127Aの出力側に方向性結合器151を設けたことが図12に示した場合と異なる。なお、キャリブレーション用スイッチ141はないが、上記例での説明と同様機能のキャリブレーションは、方向性結合器151を利用してMOS減衰器60の出力端に相当の信号を検出することで行なうことができる。
【0075】
電力増幅器127Aに可変増幅機能を持たせ、その出力側に方向性結合器151を設ける構成自体は、FDD方式の場合、W−CDMAなどの場合に行なわれている送信電力制御のための構成例として公知である。つまり、このような送信電力制御は、電力増幅器127Aの出力側に設けられた方向性結合器151により送信電力の分波を受けその情報をベースバンド信号処理部121Aに供給し、この情報によりベースバンド信号処理部121Aが電力増幅器127Aの増幅率を所望に制御する。
【0076】
この例では、送信電力制御のためのこの構成を、MOS減衰器60のキャリブレーション動作のためにも利用する。すなわち、キャリブレーション時には、MOS減衰器60の出力端の信号レベル検知に相当しては、方向性結合器151で検出される信号からこれを推定する。なお、MOS減衰器60の入力端の信号に相当しては、ディジタルアナログ変換器121a、121bに入力されている信号からこれを推定するが、これは図12における例と同じである。
【0077】
以上説明の図12、図13の無線送受信機では、MOS減衰器60を直交変調器124の出力側であってドライバ125の入力側に配置している。しかし、MOS減衰器60は、この位置でなくても、送信側の処理経路のどこか別の位置に挿入、配置するようにしてもよい。また、受信側の処理経路のどこかにも挿入、配置するようにして、信号の減衰特性(利得制御特性)のばらつきが抑制された受信処理構成にすることもできる。
【0078】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】一実施形態に係るMOS抵抗制御装置の構成を示す回路図。
【図2】図1に示したMOS抵抗制御装置でのMOS抵抗の制御特性の変化を示すグラフ。
【図3】別の実施形態に係るMOS抵抗制御装置の構成を示す回路図。
【図4】図3に示したMOS抵抗制御装置でのMOS抵抗の制御特性の変化を示すグラフ。
【図5】さらに別の実施形態に係るMOS抵抗制御装置の構成を示す回路図。
【図6】一実施形態に係るMOS減衰器の構成を示す回路図。
【図7】図6に示したMOS減衰器における可変減衰特性の変化を説明するグラフ。
【図8】図6に示したMOS減衰器における可変減衰特性の合わせ込みを実現する構成例を示すブロック図。
【図9】図8に示した構成での可変減衰特性の合わせ込みを説明するグラフ。
【図10】図8に示した構成のより具体例(一例)を示すブロック図。
【図11】図8に示した構成のより具体例(別の例)を示すブロック図。
【図12】図6に示したMOS減衰器を用いた送受信機の構成例(一例)を示すブロック図。
【図13】図6に示したMOS減衰器を用いた送受信機の構成例(別の例)を示すブロック図。
【符号の説明】
【0080】
10…MOS抵抗制御装置、11…nチャネルMOSトランジスタ、12…オペアンプ、13…抵抗器(インピーダンス素子)、14…基準電流源、15…電圧制御電流源、16…出力端子、17…電圧制御電流源、18…電圧制御電流源、30…MOS抵抗制御装置、31…電圧制御電流源、50…MOS抵抗制御装置、60…MOS減衰器、61…MOSトランジスタによる減衰器(レプリカ)、62…オペアンプ、63…MOSトランジスタによる減衰器(信号通過用)、81…検波器、82…検波器、83、83A…差分検出器、83a…スイッチ、83b、83c…アナログディジタル変換器、83d…減算器、83e…ディジタル減衰器、83f…ディジタル減衰器、84…補正制御信号発生回路、84a、84aA…レジスタ、84b…減算器、84c、84cA…ロジック回路(信号生成部)、84d…ディジタルアナログ変換器、85、85A、85B…ベースバンドLSI(ベースバンド信号処理部)、101…ディジタルアナログ変換器、121…ベースバンド信号処理部、121a、121b…ディジタルアナログ変換器、121c、121d…アナログディジタル変換器、121e…検出部、121f…補正制御信号生成部、122、123…LPF、124…直交変調器、125…ドライバ、126…BPF、127、127A…電力増幅器、128…送受信スイッチ、129…アンテナ、130…BPF、131…低雑音増幅器、132…BPF、133…直交復調器、134、135…LPF、141…キャリブレーション用スイッチ、151…方向性結合器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の制御電流源と、
第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端が前記MOSトランジスタの前記ドレインと前記第1の制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端が前記MOSトランジスタのゲートに接続されたオペアンプと、
前記オペアンプの前記第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、
前記インピーダンス素子に前記一端の側から電流を入力する基準電流源と、
前記インピーダンス素子に前記一端の側からさらに電流を入力する第2の制御電流源と、
前記MOSトランジスタの前記ドレインに電流を入力する第3の制御電流源と
を具備することを特徴とするMOS抵抗制御装置。
【請求項2】
前記第1、第3の制御電流源が、ともに電圧制御電流源であり、
前記第3の制御電流源のトランスコンダクタンスが、前記第1の制御電流源のトランスコンダクタンスの係数倍であること
を特徴とする請求項1記載のMOS抵抗制御装置。
【請求項3】
前記MOSトランジスタの前記ドレインに入力される前記電流に加えて該ドレインに電流を入力する第4の制御電流源をさらに具備することを特徴とする請求項2記載のMOS抵抗制御装置。
【請求項4】
ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の電圧制御電流源と、
第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端が前記MOSトランジスタの前記ドレインと前記第1の電圧制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端が前記MOSトランジスタのゲートに接続された第1のオペアンプと、
前記第1のオペアンプの前記第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、
前記インピーダンス素子に前記一端の側から電流を入力する基準電流源と、
前記インピーダンス素子に前記一端の側からさらに電流を入力する第2の電圧制御電流源と、
前記MOSトランジスタの前記ドレインに電流を入力する第3の電圧制御電流源と、
前記MOSトランジスタの前記ドレインにさらに電流を入力する、前記第1の電圧制御電流源が有するトランスコンダクタンスの係数倍のトランスコンダクタンスを有する第4の電圧制御電流源と、
入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに、該入力端と該出力端との間の特性インピーダンスを所定に設定する制御電圧が供給された第1の減衰器と、
前記第1の減衰器の前記入力端と第3の基準電位との間に挿入・接続された、前記特性インピーダンスに相当するインピーダンスの第1の抵抗器と、
前記第1の減衰器の前記出力端と第4の基準電位との間に挿入・接続された第2の抵抗器と、
前記第1の減衰器の前記出力端の電圧を所定電圧との比較にて増幅し前記第1の減衰器のための前記制御電圧を生成する第2のオペアンプと、
入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧が供給された第2の減衰器と
を具備することを特徴とするMOS減衰器。
【請求項5】
前記第1の電圧制御電流源に第1の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量を第1の減衰量として検出する第1の検出部と、
前記第1の電圧制御電流源に前記第1の制御電圧とは異なる第2の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量を第2の減衰量として検出する第2の検出部と、
前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分が、前記第1、第2の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第2の電圧制御電流源および/または前記第4の電圧制御電流源への制御電圧を第1の補正制御信号として生成する第1の信号生成部と、
前記第1の電圧制御電流源に第3の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量を第3の減衰量として検出する第3の検出部と、
前記第3の減衰量が、前記第3の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第3の電圧制御電流源への制御電圧を第2の補正制御信号として生成する第2の信号生成部と
をさらに具備することを特徴とする請求項4記載のMOS減衰器。
【請求項6】
前記第1の検出部が、前記第2の減衰器の前記入力端の信号を検波して第1の検波出力を生成する第1の検波器と、前記第1の検波出力をアナログディジタル変換して第1のディジタル化検波出力を生成する第1のアナログディジタル変換器と、前記第2の減衰器の前記出力端の信号を検波して第2の検波出力を生成する第2の検波器と、前記第2の検波出力をアナログディジタル変換して第2のディジタル化検波出力を生成する第2のアナログディジタル変換器と、前記第1のディジタル化検波出力と前記第2のディジタル化検波出力との差分を求める減算器とを有し、
前記第2、第3の検出部が、それぞれ、前記第1の検出部の前記第1、第2の検波器、前記第1、第2のアナログディジタル変換器、および前記減算器を前記第1の検出部と共有していること
を特徴とする請求項5記載のMOS減衰器。
【請求項7】
前記第1の信号生成部が、前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分を第1のディジタル値として生成する第2の減算器と、前記第1のディジタル値に対応してあらかじめ定められた第2のディジタル値を出力するように構成された第1のディジタル出力変換部と、前記第2のディジタル値をディジタルアナログ変換し得られたアナログ信号を前記第1の補正制御信号とする第1のディジタルアナログ変換器とを有し、
前記第2の信号生成部が、前記第3の減衰量に対応してあらかじめ定められた第3のディジタル値を出力するように構成された第2のディジタル出力変換部と、前記第3のディジタル値をディジタルアナログ変換し得られたアナログ信号を前記第2の補正制御信号とする第2のディジタルアナログ変換器とを有すること
を特徴とする請求項6記載のMOS減衰器。
【請求項8】
前記第1の電圧制御電流源に第1の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量を第1の減衰量として検出する第1の検出部と、
前記第1の電圧制御電流源に前記第1の制御電圧とは異なる第2の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量を第2の減衰量として検出する第2の検出部と、
前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分が、前記第1、第2の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第2の電圧制御電流源および/または前記第4の電圧制御電流源への制御電圧を第1の補正制御信号として生成する第1の信号生成部と、
前記第1の電圧制御電流源に第3の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量を第3の減衰量として該第3の減衰量と、前記第3の制御電圧に対応してあらかじめ定められている値との差分値を検出する第3の検出部と、
前記差分値が所定値より小さな値になるような前記第3の電圧制御電流源への制御電圧を第2の補正制御信号として生成する第2の信号生成部と
をさらに具備することを特徴とする請求項4記載のMOS減衰器。
【請求項9】
前記第1の検出部が、前記第2の減衰器の前記入力端の信号を検波して第1の検波出力を生成する第1の検波器と、前記第1の検波出力をアナログディジタル変換して第1のディジタル化検波出力を生成する第1のアナログディジタル変換器と、前記第2の減衰器の前記出力端の信号を検波して第2の検波出力を生成する第2の検波器と、前記第2の検波出力をアナログディジタル変換して第2のディジタル化検波出力を生成する第2のアナログディジタル変換器と、前記第1のディジタル化検波出力と前記第2のディジタル化検波出力との差分を求める第1の減算器とを有し、
前記第2の検出部が、前記第1の検出部の前記第1、第2の検波器、前記第1、第2のアナログディジタル変換器、および前記第1の減算器を前記第1の検出部と共有し、
前記第3の検出部が、前記第2の減衰器の前記入力端の信号を検波して第3の検波出力を生成する第3の検波器と、前記第3の検波出力をアナログディジタル変換して第3のディジタル化検波出力を生成する第3のアナログディジタル変換器と、前記第3のディジタル化検波出力から減衰検波出力を、前記第3の減衰量の値に対応してあらかじめ定められた減衰指令信号に基づいて生成するディジタル減衰器と、前記第2の減衰器の前記出力端の信号を検波して第4の検波出力を生成する第4の検波器と、前記第4の検波出力をアナログディジタル変換して第4のディジタル化検波出力を生成する第4のアナログディジタル変換器と、前記減衰検波出力と前記第4のディジタル化検波出力との差分を求める第2の減算器とを有し、
前記第1の信号生成部が、前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分を第1のディジタル値として生成する第3の減算器と、前記第1のディジタル値に対応してあらかじめ定められた第2のディジタル値を出力するように構成された第1のディジタル出力変換部と、前記第2のディジタル値をディジタルアナログ変換し得られたアナログ信号を前記第1の補正制御電圧とする第1のディジタルアナログ変換器とを有し、
前記第2の信号生成部が、前記差分値に対応してあらかじめ定められた第3のディジタル値を出力するように構成された第2のディジタル出力変換部と、前記第3のディジタル値をディジタルアナログ変換し得られたアナログ信号を前記第2の補正制御信号とする第2のディジタルアナログ変換器とを有すること
を特徴とする請求項8記載のMOS減衰器。
【請求項10】
2相のベースバンド信号を生成するベースバンド信号処理部と、
前記2相のベースバンド信号で互いに直交する2つのキャリア信号を直交変調し被変調信号を生成する直交変調器と、
ソースが第1の基準電位に接続されたMOSトランジスタと、前記MOSトランジスタのドレインと第2の基準電位との間に挿入・接続された第1の電圧制御電流源と、第1、第2の入力端、および出力端を有し、該第1の入力端が前記MOSトランジスタの前記ドレインと前記第1の電圧制御電流源との接続ノードに接続され、該出力端が前記MOSトランジスタのゲートに接続された第1のオペアンプと、前記第1のオペアンプの前記第2の入力端に一端が接続されたインピーダンス素子と、前記インピーダンス素子に前記一端の側から電流を入力する基準電流源と、前記インピーダンス素子に前記一端の側からさらに電流を入力する第2の電圧制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインに電流を入力する第3の電圧制御電流源と、前記MOSトランジスタの前記ドレインにさらに電流を入力する、前記第1の電圧制御電流源が有するトランスコンダクタンスの係数倍のトランスコンダクタンスを有する第4の電圧制御電流源と、入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに、該入力端と該出力端との間の特性インピーダンスを所定に設定する制御電圧が供給された第1の減衰器と、前記第1の減衰器の前記入力端と第3の基準電位との間に挿入・接続された、前記特性インピーダンスに相当するインピーダンスの第1の抵抗器と、前記第1の減衰器の前記出力端と第4の基準電位との間に挿入・接続された第2の抵抗器と、前記第1の減衰器の前記出力端の電圧を所定電圧との比較にて増幅し前記第1の減衰器のための前記制御電圧を生成する第2のオペアンプと、入力端と出力端とを有し、かつ、該入力端から該出力端への間に複数の対地のMOSトランジスタと1以上の通過のMOSトランジスタとを有し、該複数の対地のMOSトランジスタのゲートそれぞれに前記第1のオペアンプの前記出力端が接続され、該1以上の通過のMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧が供給された第2の減衰器とを備え、前記第2の減衰器の前記入力端に前記被変調信号が入力され、該第2の減衰器の前記出力端に減衰被変調信号を発生するMOS減衰器と、
前記減衰被変調信号を電力増幅して電力増幅信号を生成する電力増幅器と、
前記電力増幅信号を電波放射するアンテナとを具備し、
前記ベースバンド信号処理部が、前記MOS減衰器の中の前記第1、第2、第3、第4の電圧制御電流源への制御電圧をさらに生成すること
を特徴とする無線送信機。
【請求項11】
前記ベースバンド信号処理部が、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に第1の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第1の減衰量として検出する第1の検出部と、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に前記第1の制御電圧とは異なる第2の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第2の減衰量として検出する第2の検出部と、前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分が、前記第1、第2の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第2の電圧制御電流源および/または前記第4の電圧制御電流源への制御電圧を第1の補正制御信号として生成する第1の信号生成部と、前記第1の電圧制御電流源に第3の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第3の減衰量として検出する第3の検出部と、前記第3の減衰量が、前記第3の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第3の電圧制御電流源への制御電圧を第2の補正制御信号として生成する第2の信号生成部とをさらに備え、
前記ベースバンド処理部が、前記第2の減衰器の前記出力端の側の信号のレベルを検知するため、前記第2の減衰器の前記出力端の側の信号であって前記電力増幅器の入力の側の信号を由来とする信号の供給を受けること
を特徴とする請求項10記載の無線送信機。
【請求項12】
前記ベースバンド信号処理部が、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に第1の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第1の減衰量として検出する第1の検出部と、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に前記第1の制御電圧とは異なる第2の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第2の減衰量として検出する第2の検出部と、前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分が、前記第1、第2の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第2の電圧制御電流源および/または前記第4の電圧制御電流源への制御電圧を第1の補正制御信号として生成する第1の信号生成部と、前記第1の電圧制御電流源に第3の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第3の減衰量として該第3の減衰量と、前記第3の制御電圧に対応してあらかじめ定められている値との差分値を検出する第3の検出部と、前記差分値が所定値より小さな値になるような前記第3の電圧制御電流源への制御電圧を第2の補正制御信号として生成する第2の信号生成部とをさらに備え、
前記ベースバンド処理部が、前記第2の減衰器の前記出力端の側の信号のレベルを検知するため、前記第2の減衰器の前記出力端の側の信号であって前記電力増幅器の入力の側の信号を由来とする信号の供給を受けること
を特徴とする請求項10記載の無線送信機。
【請求項13】
前記ベースバンド信号処理部が、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に第1の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第1の減衰量として検出する第1の検出部と、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に前記第1の制御電圧とは異なる第2の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第2の減衰量として検出する第2の検出部と、前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分が、前記第1、第2の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第2の電圧制御電流源および/または前記第4の電圧制御電流源への制御電圧を第1の補正制御信号として生成する第1の信号生成部と、前記第1の電圧制御電流源に第3の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第3の減衰量として検出する第3の検出部と、前記第3の減衰量が、前記第3の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第3の電圧制御電流源への制御電圧を第2の補正制御信号として生成する第2の信号生成部とをさらに備え、
前記ベースバンド信号処理部が、前記第2の減衰器の前記出力端の側の信号のレベルを検知するため、前記電力増幅器の出力の側の信号を由来とする信号の供給を受けること
を特徴とする請求項10記載の無線送信機。
【請求項14】
前記ベースバンド信号処理部が、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に第1の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第1の減衰量として検出する第1の検出部と、前記MOS減衰器における前記第1の電圧制御電流源に前記第1の制御電圧とは異なる第2の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第2の減衰量として検出する第2の検出部と、前記第1の減衰量と前記第2の減衰量との差分が、前記第1、第2の制御電圧に対応してあらかじめ定められた値になるような前記第2の電圧制御電流源および/または前記第4の電圧制御電流源への制御電圧を第1の補正制御信号として生成する第1の信号生成部と、前記第1の電圧制御電流源に第3の制御電圧を与えたときの前記第2の減衰器における該第2の減衰器の前記入力端から前記出力端への信号減衰量に相当する減衰量を第3の減衰量として該第3の減衰量と、前記第3の制御電圧に対応してあらかじめ定められている値との差分値を検出する第3の検出部と、前記差分値が所定値より小さな値になるような前記第3の電圧制御電流源への制御電圧を第2の補正制御信号として生成する第2の信号生成部とをさらに備え、
前記ベースバンド信号処理部が、前記第2の減衰器の前記出力端の側の信号のレベルを検知するため、前記電力増幅器の出力の側の信号を由来とする信号の供給を受けること
を特徴とする請求項10記載の無線送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−312075(P2008−312075A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159634(P2007−159634)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】