説明

N−((1R,2S,5R)−5−(TERT−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−TERT−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、ケモカイン受容体活性のデュアルモジュレーター、結晶形および製造方法

本発明は、予想外のデュアルCCR−2およびCCR−5受容体活性を有する新規のアンタゴニスト:N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド:


またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。結晶形、代謝物、それを含む医薬組成物、ならびに炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患の治療におけるその使用方法が開示される。本発明はまた、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドを含む本明細書で提供される式(I)の化合物の製造方法を提供する。該工程の中間体として有用な化合物もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予想外の望ましいデュアル活性を有するN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。本発明の結晶形も提供される。それを含む医薬組成物、ならびに炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、癌および/または循環器疾患の治療におけるその使用方法もまた、本発明の目的である。本開示は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドを含む、式(I):
【化1】

(式中、R、R、R、R10、および
【化2】

は、本明細書で定義されるものと同義である)の化合物の製造方法も提供する。該方法の有用な中間体である化合物も提供される。活性化合物の代謝物、医薬組成物、およびその使用も本明細書で提供される。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、分子量6−15kDaの走化性のサイトカインであり、多くの細胞型、取分け、マクロファージ、TおよびBリンパ球、好酸球、好塩基球および好中球を誘引、活性化するために、様々な細胞により放出される(レビュー: Charo et al., New Eng. J. Med., 354:610−621 (2006); Luster, New Eng. J. Med., 338:436−445 (1998);およびRollins, Blood, 90:909−928 (1997))。アミノ酸配列の最初の2つのシステインが1個のアミノ酸で分けられている(CXC)か、隣接している(CC)かにより、ケモカインには2つの大きな種類、CXCおよびCCが存在する。CXCケモカイン、例えば、インターロイキン−8(IL−8)、好中球活性化タンパク質−2(NAP−2)およびメラノーマ増殖刺激活性タンパク質(MGSA)は主に好中球およびTリンパ球に対し化学走化的である一方、CCケモカイン、例えば、RANTES、MIP−1α、MIP−1β、単球走化性タンパク質(MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、およびMCP−5)およびエオタキシン(−1および−2)は、他の細胞型、取分け、マクロファージ、Tリンパ球、好酸球、樹状細胞、および好塩基球に対し化学走化性を有する。主要なケモカインサブファミリーに属さないケモカイン、リンホタクチン−1、リンホタクチン−2(共にCケモカインである)、およびフラクタルカイン(CXCケモカイン)も存在する。
【0003】
ケモカインは、「ケモカイン受容体」と呼ばれる、Gタンパク質共役型7回膜貫通ドメインタンパク質ファミリーに属する特異的な細胞表面の受容体に結合する(レビュー: Horuk, Trends Pharm. Sci., 15:159−165 (1994))。そのコグネイトリガンドが結合すると、ケモカイン受容体は、結合した三量体のGタンパクを介して細胞内シグナルを伝達し、多くの細胞応答、取分け、細胞内カルシウム濃度の急速な上昇、細胞形態の変化、細胞接着分子の発現の上昇、脱顆粒、および細胞遊走の促進を引き起こす。CCケモカインに結合または応答する少なくとも10種類のヒトケモカイン受容体が存在し、以下の特徴的なパターンを有する(レビュー: Zlotnik et al., Immunity, 12:121 (2000)):CCR−1(または「CKR−1」または「CC−CKR−1」)[MIP−1α、MCP−3、MCP−4、RANTES](Ben−Barruch et al., Cell, 72:415−425 (1993)、Luster, New Eng. J. Med., 338:436−445 (1998));CCR−2AおよびCCR−2B(または「CKR−2A」/」CKR−2B」または「CC−CKR−2A」/」CC−CKR−2B」)[MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MCP−5](Charo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:2752−2756 (1994)、 Luster, New Eng. J. Med., 338:436−445 (1998));CCR−3(または「CKR−3」または「CC−CKR−3」)[エオタキシン−1、エオタキシン−2、RANTES、MCP−3、MCP−4](Combadiere et al., J. Biol. Chem., 270:16491−16494 (1995)、 Luster, New Eng. J. Med., 338:436−445 (1998));CCR−4(または「CKR−4」または「CC−CKR−4」)[TARC、MDC](Power et al., J. Biol. Chem., 270:19495−19500 (1995)、 Luster, New Eng. J. Med., 338:436−445 (1998));CCR−5(または「CKR−5」または「CC−CKR−5」)[MIP−1α、RANTES、MIP−1β](Samson et al., Biochemistry, 35:3362−3367 (1996));CCR−6(または「CKR−6」または「CC−CKR−6」)[LARC](Baba et al., J. Biol. Chem., 272:14893−14898 (1997));CCR−7(または「CKR−7」または「CC−CKR−7」)[ELC](Yoshie et al., J. Leukoc. Biol., 62:634−644 (1997));CCR−8(または「CKR−8」または「CC−CKR−8」)[I−309](Napolitano et al., J. Immunol., 157:2759−2763 (1996));CCR−10(または「CKR−10」または「CC−CKR−10」)[MCP−1、MCP−3](Bonini et al., DNA Cell Biol., 16:1249−1256 (1997));CCR−11[MCP−1、MCP−2、およびMCP−4](Schweickart et al., J. Biol. Chem., 275:9550 (2000))。
【0004】
哺乳類のケモカイン受容体に加え、哺乳類サイトメガロウィルス、ヘルペスウィルスおよびポックスウイルスは、感染した細胞において、ケモカイン受容体の結合特性を有するタンパク質を発現することが示されている(レビュー: Wells et al., Curr. Opin. Biotech., 8:741−748 (1997))。RANTESおよびMCP−3などのヒトCCケモカインは、これらのウィルスがコードする受容体を介してカルシウムの急速な動員を引き起こすことが出来る。受容体の発現は、正常な免疫系監視および感染に対する応答を破壊することにより、感染を可能にすると考えられる。さらに、CXCR4、CCR−2、CCR−3、CCR−5およびCCR−8などのヒトケモカイン受容体は、例えば、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)などの微生物による哺乳類細胞の感染の共受容体として機能することが出来る。
【0005】
ケモカインおよびそれらのコグネイト受容体は、炎症性、感染性、および免疫調節性障害および疾患、例えば、喘息およびアレルギー性疾患;ならびに関節リウマチおよび多発性硬化症などの自己免疫性の病態;アテローム動脈硬化症および糖尿病などの代謝性疾患に、重要なメディエーターとして関連することが示されている(レビュー: Charo et al., New Eng. J. Med., 354:610−621 (2006); Gao, Z. et al., Chem. Rev., 103:3733 (2003); Carter, P.H., Curr. Opin. Chem. Biol., 6:510 (2002); Trivedi et al., Ann. Reports Med. Chem., 35:191 (2000); Saunders et al., Drug Disc. Today, 4:80 (1999); Premack et al., Nature Medicine, 2:1174 (1996))。例えば、ケモカイン単球走化性因子(monocyte chemoattractant)−1(MCP−1)およびその受容体CCケモカイン受容体2(CCR−2)は、炎症部位への白血球の誘引およびそれに続くこれらの細胞の活性化に重要な役割を果たす。ケモカインMCP−1がCCR−2に結合すると、急速な細胞内カルシウム濃度の上昇、細胞接着分子の発現の上昇、および白血球の遊走の促進が引き起こされる。MCP−1/CCR−2相互作用の重要性の実証は、遺伝子改変マウスを用いた実験により提供される。MCP−1 −/−マウスは、いくつかの異なる種類の免疫チャレンジ後の炎症部位への単球の動員を行うことができない(Lu, B. et al., J. Exp. Med., 187:601 (1998))。同様に、CCR−2 −/−マウスは、様々な外因性の薬剤を負荷した場合に、単球の動員またはインターフェロン−γの産生を行うことができず;さらに、CCR−2ヌルマウスの白血球はMCP−1に応答して遊走することができない(Boring, L. et al., J. Clin. Invest., 100:2552 (1997))ため、MCP−1/CCR−2相互作用の特異性が実証された。2つの別のグループが、異なる系統のCCR−2 −/−マウスを用いて同等のことを別々に報告した(Kuziel, W.A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:12053 (1997), Kurihara, T. et al., J. Exp. Med., 186:1757 (1997))。MIP−1−/−およびCCR−2 −/−動物が概して正常な健康状態にあることは、MIP−1/CCR−2相互作用の破壊が生理的な危機を招かないということにおいて、特記に値する。合わせると、これらのデータは、MIP−1/CCR−2の作用をブロックする分子は多くの炎症性障害および自己免疫性障害の治療に有用であろうという1つの結論を導く(レビュー: Feria, M. et al., Exp. Opin. Ther. Patents, 16:49 (2006); Dawson, J. et al., Exp. Opin. Ther. Targets, 7:35 (2003))。この仮説は今や、以下に記載されるように、多くの異なる動物疾患モデルにおいて実証されている。
【0006】
MIP−1が関節リウマチ患者の滑液および血液で上昇していることが知られている(Koch, A. et al., J. Clin. Invest., 90:772−779 (1992))。さらに、いくつかの研究により、関節リウマチの治療におけるMIP−1/CCR2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が証明されている。近年、MCP−1をコードするDNAワクチンが、ラットにおける慢性ポリアジュバント誘発性関節炎を回復させることが示された(Youssef, S. et al., J. Clin. Invest., 106:361 (2000))。同様に、コラーゲン誘発性関節炎のラット(Ogata, H. et al., J. Pathol., 182:106 (1997))または連鎖球菌細胞壁誘発性関節炎のラット(Schimmer, R.C. et al., J. Immunol., 160:1466 (1998))に対し、MCP−1の抗体を直接投与することにより疾患症状をコントロールすることができる。おそらく最も重要なことは、MCP−1のペプチドアンタゴニスト、MCP−1(9−76)が、関節炎のMRL−lprマウスモデルにおいて、疾患の発症を予防し、疾患症状を減弱すること(投与のタイミングに依存する)が示されたことである(Gong, J.−H. et al., J. Exp. Med., 186:131 (1997))。さらに、CCR−2の小分子アンタゴニストの投与により、関節炎のげっ歯類モデルにおいて臨床スコアが低下することも示されている(Brodmerkel, C.M. et al., J. Immunol., 175:5370 (2005); Xia, M. et al., 米国特許公開公報第2006/0069123号)。抗CCR−2抗体の投与は、投与のタイミングに依存して、マウスCIAに対し様々な効果を有していた(Bruhl, H. et al., J. Immunol., 172:890 (2004))。CCR−2 −/−マウスを用いた近年の研究により、特定の実験条件下において、CCR−2欠損によりげっ歯類の関節炎が悪化する可能性があることが示唆されている(Quinones, M.P. et al., J. Clin. Invest., 113:856 (2004); Quinones, M.P. et al., J. Mol. Med., 84:503 (2006))。
【0007】
MCP−1が動脈硬化病変においてアップレギュレートされていることが知られており、循環血中のMCP−1レベルは治療薬で治療することにより低下することが示されている(Rezaie−Majd, A. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 22:1194−1199 (2002))。いくつかの重要な研究により、アテローム動脈硬化症の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が実証された。例えば、MCP−1 −/−マウスがLDL受容体欠損マウスと交配されると、動脈における脂質沈着が83%減少することが観察された(Gu, L. et al., Mol. Cell, 2:275 (1998))。同様に、ヒトアポリポタンパク質Bをすでに過剰発現しているマウスからMCP−1を遺伝学的に除去した場合、得られるマウスではMCP−1 +/+ apoBコントロールマウスに比べて動脈硬化病変が形成されにくい(Gosling, J. et al., J. Clin. Invest., 103:773 (1999))。同じように、CCR−2 −/−マウスがアポリポタンパク質E −/−マウスと交配された場合、動脈硬化病変が著しく減少することが観察された(Boring, L. et al., Nature, 394:894 (1998); Dawson, T.C. et al., Atherosclerosis, 143:205 (1999))。最後に、アポリポタンパク質E −/−マウスにCCR−2のペプチドアンタゴニストをコードする遺伝子を投与すると、病変のサイズが減少し、粥腫の安定性が増大する(Ni, W. et al., Circulation, 103:2096−2101 (2001))。CCR−2 −/−マウスからApoE3−Leidenマウスへの骨髄移植により、早期アテローム発生が阻害されたが(Guo, J. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 23:447 (2003))、進行した病変についてはわずかな効果しか得られなかった(Guo, J. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 25:1014 (2005))。
【0008】
2型糖尿病の患者は、典型的には、この疾患の特徴の1つであるインスリン抵抗性を示す。インスリン抵抗性は、肥満、アテローム動脈硬化症、高血圧症、および脂質異常症を含む「メタボリックシンドローム」または「シンドロームX」として知られる一群の異常とも関連する(レビュー: Eckel et al., Lancet, 365:1415 (2005))。炎症が2型糖尿病および「シンドロームX」病態における疾患プロセスの悪化に関与することはよく知られている(レビュー: Chen, H., Pharmacological Research, 53:469 (2006); Neels et al., J. Clin. Invest., 116:33 (2006); Danadona et al., Am. J. Cardiol., 90:27G−33G (2002); Pickup et al., Diabetologia, 41:1241 (1998))。MCP−1は、肥満誘発性のインスリン抵抗性に関与すると認識されている。培養系において、ヒト前脂肪細胞はMCP−1を恒常的に発現する(Gerhardt, Mol. Cell. Endocrinology, 175:81 (2001))。CCR−2は脂肪細胞でも発現されており;インビトロにおいて分化した脂肪細胞にMCP−1を加えると、インスリン刺激によるグルコース取り込みおよびいくつかの脂肪生成関連遺伝子(LpL、アジプシン、GLU−4、aP2、β3−アドレナリン受容体、およびPPARγ)の発現が低下する(Sartipy, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96:6902 (1999))。2型糖尿病の患者では、非糖尿病のコントロールと比べて循環血中のMCP−1が上昇しており(Nomura, S. et al., Clin. Exp. Immunol., 121:437 (2000))、脂肪組織からのMCP−1の放出はメトホルミンまたはチアゾリジンジオン類などの抗糖尿病治療により減少させることができた(Bruun, J.M. et al., J. Clin. Endocrinol. Metab., 90:2282 (2005))。同様に、MCP−1は肥満のマウス実験モデルにおいても過剰発現しており、主に脂肪組織で産生されていた(Sartipy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:7265 (2003))。肥満マウスでは、MCP−1の発現はインスリン抵抗性の発症に先行、および並行していた(Xu, H. et al., J. Clin. Invest., 112:1821 (2003))。別の研究により、MCP−1の発現はマウス性腺周囲の脂肪組織の重量と正に相関することが示された(Weisberg et al., J. Clin. Invest., 112:1796 (2003))。これらのデータと一致して、db/db マウスにおけるインスリン抵抗性の進行は、MCP−1の遺伝的欠損またはドミナントネガティブペプチドの遺伝子誘導性の発現により回復した(Kanda, H. et al., J. Clin. Invest., 116:1494 (2006))。逆もまた証明されている:脂肪組織におけるMCP−1の過剰発現はインスリン抵抗性を促進した(Kamei, N. et al., J. Biol. Chem., 281:26602 (2006))。MCP−1の遺伝的欠損はdb/dbマウスにおいてインスリン抵抗性に対する効果を有さないという矛盾する結果も1つ見られる(Chow, F.Y. et al., Diabetologia, 50:471 (2007))。MCP−1のデータと一致して、CCR−2(MCP−1受容体)の研究から、それが肥満および肥満誘発性インスリン抵抗性に関与することが示された。高脂肪飼料を用いた飼育により、循環血中のCCR−2炎症性単球数が野生型マウス(Tsou, C.L. et al., J. Clin. Invest., 117:902 (2007))およびApoE −/−マウス(Tacke, F. et al., J. Clin. Invest., 117:185 (2007))の両方において増加した。CCR−2の遺伝的欠損により、マウス脂肪組織における活性化マクロファージ数が減少した(Lumeng, C.N. et al., Diabetes, 56:16 (2007))が、「痩せ」状態を維持すると考えられるM2脂肪組織のマクロファージのポピュレーションには影響しなかった(Lumeng, C.N. et al., J. Clin. Invest., 117:175 (2007))。CCR−2の遺伝的欠損により、食事誘発性肥満モデルにおける食事誘発性肥満が減少し、インスリン感受性が改善した(Weisberg, S.P. et al., J. Clin. Invest., 116:115 (2006); Cornelius, P. et al., PCT公報第WO 2006/013427 A2号)が、実験条件に依存する(Chen, A. et al., Obes. Res., 13:1311 (2005))。この同じモデルにおいて、小分子CCR−2アンタゴニストの投与もインスリン感受性を改善した(Weisberg, S.P. et al., J. Clin. Invest., 116:115 (2006))。
【0009】
高血圧誘導性の血管の炎症、リモデリング、および肥厚にCCR−2が重要な役割を果たすことが2つの研究により示された(Bush, E. et al., Hypertension, 36:360 (2000); Ishibashi, M. et al., Circ. Res., 94:1203 (2004))。
【0010】
MCP−1がヒト多発性硬化症においてアップレギュレートされていることが知られており、また、インターフェロンβ−1bを用いた有効な治療により末梢血単核細胞におけるMCP−1の発現が減少することが示されているため、MCP−1が疾患の進行に関与することが示唆される(Iarlori, C. et al., J. Neuroimmunol., 123:170−179 (2002))。別の研究により、多発性硬化症の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が示されており;これら全ての研究は、多発性硬化症の一般的な動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において実証された(Kennedy, K.J. et al., J. Neuroimmunol., 92:98 (1998))。さらに、2つの報告により、CCR−2 −/−マウスがEAEに抵抗性を有することが示された(Fife, B.T. et al., J. Exp. Med., 192:899 (2000); Izikson, L. et al., J. Exp. Med., 192:1075 (2000))。これに続く報告は、異なる系統のマウスにおいてCCR−2欠損の効果を評価することにより、当初のこれらの観察を拡張した(Gaupp, S. et al., Am. J. Pathol., 162:139 (2003))。特に、小分子CCR−2アンタゴニストの投与により、C57BL/6マウスにおいても疾患の進行が遅延された(Brodmerkel, C.M. et al., J. Immunol., 175:5370 (2005))。
【0011】
MCP−1は肺移植後に閉塞性細気管支炎症候群を発症する患者においてアップレギュレートされることが知られている(Reynaud−Gaubert, M. et al., J. Heart Lung Transplant., 21:721−730 (2002); Belperio, J. et al., J. Clin. Invest., 108:547−556 (2001))。閉塞性細気管支炎症候群のマウスモデルにおいて、抗MCP−1抗体の投与により気道閉塞が減弱され;同様に、CCR−2 −/−マウスの同モデルは気道閉塞に抵抗を有する(Belperio, J. et al., J. Clin. Invest., 108:547−556 (2001))。これらのデータにより、MCP−1/CCR−2のアンタゴニズムは移植後の臓器の拒絶反応の治療に有益である可能性が示唆される。加えて、MCP−1/CCR−2軸の破壊により、移植膵島の生存が延長され得ることが研究により示されている(Lee, I. et al., J. Immunol., 171:6929 (2003); Abdi, R. et al., J. Immunol., 172:767 (2004))。ラット移植片モデルでは、CCR−2およびMCP−1が移植片脈管障害を発症する移植片においてアップレギュレートされることが示された(Horiguchi, K. et al., J. Heart Lung Transplant., 21:1090 (2002))。別の研究では、抗MCP−1遺伝子療法により移植片脈管障害が減弱された(Saiura, A. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 24:1886 (2004))。1つの研究において、MCP−1のブロックにより実験的血管移植片の新生内膜肥厚形成が阻害されることが記載された(Tatewaki, H. et al., J. Vasc. Surg., 45:1236 (2007))。
【0012】
別の研究において、喘息の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用の潜在的な治癒的価値が示されている。オバルブミン負荷マウスにおいてMCP−1を中和抗体で隔離することにより、気管支過感受性および炎症が著しく減弱された(Gonzalo, J.−A. et al., J. Exp. Med., 188:157 (1998))。マンソン住血吸虫卵負荷マウスにおいて、MCP−1の抗体を投与することによりアレルギー性気道炎症の減弱が可能であると証明された(Lukacs, N.W. et al., J. Immunol., 158:4398 (1997))。これと一致して、MCP−1 −/−マウスはマンソン住血吸虫卵負荷に対し、減弱された応答を示した(Lu, B. et al., J. Exp. Med., 187:601 (1998))。
【0013】
別の研究により、腎疾患の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が示された。糸球体腎炎のマウスモデルにおいて、MCP−1の抗体を投与することにより、糸球体の半月体形成および1型コラーゲンの沈着が著しい減少が引き起こされた(Lloyd, C.M. et al., J. Exp. Med., 185:1371 (1997))。さらに、誘発性腎毒性血清腎炎のMCP−1 −/−マウスは、MCP−1 +/+のカウンターパートに比べて著しく少ない尿細管の損傷を示した(Tesch, G.H. et al., J. Clin. Invest., 103:73 (1999))。
【0014】
いくつかの研究により、全身性エリテマトーデスの治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が示された。CCR−2 −/−マウスでは、全身性エリテマトーデスのマウスモデルにおいて、そのWTのカウンターパートに比べ、生存期間が延長され、腎疾患が軽減された(Perez de Lema, G. et al., J. Am. Soc. Neph., 16:3592 (2005))。これらのデータは、ループスのげっ歯類モデルを用いた最近の研究において見出されたMCP−1の遺伝的欠損(Shimizu, S. et al., Rheumatology (Oxford), 43:1121 (2004); Tesch, G.H. et al., J. Exp. Med., 190:1813 (1999))、またはCCR−2のペプチドアンタゴニストの投与(Hasegawa, H. et al., Arthritis Rheum., 48:2555 (2003))の疾患調節活性と一致する。
【0015】
クローン病患者の小腸において、無病の回腸と比べ、CCR−2粘膜固有層リンパ球が著しく(30倍)増加していることが観察された(Connor, S.J. et al., Gut, 53:1287 (2004))。さらに注目すべきは、活性なクローン病患者において、コントロールと比べて循環血中のCCR−2/CD14/CD56単球のサブセットに拡張が見られたことである。いくつかのげっ歯類の研究により、クローン病/大腸炎の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が実証された。CCR−2 −/−マウスはデキストラン硫酸ナトリウム誘発性大腸炎の影響から保護されていた(Andres, P.G. et al., J. Immunol., 164:6303 (2000))。CCR−2、CCR−5、およびCXCR3の小分子アンタゴニスト(マウスの受容体との結合親和性は、それぞれ、24、236、および369nMである)の投与によっても、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性大腸炎から保護された(Tokuyama, H. et al., Int. Immunol., 17:1023 (2005))。最後に、MCP−1 −/−マウスは、大腸炎のハプテン誘発性モデルにおいて、大腸の損傷(肉眼および組織学的)の著しい減少を示した(Khan, W.I. et al., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 291:G803 (2006))。
【0016】
炎症性腸疾患の患者の腸上皮細胞および腸粘膜において、MCP−1の発現が上昇していることが2つの報告で記載された(Reinecker, H.C. et al., Gastroenterology, 108:40 (1995)、Grimm, M.C. et al., J. Leukoc. Biol., 59:804 (1996)).
【0017】
MCP−1遺伝子のプロモーターにおける多型が強皮症(全身性強皮症)と相関することが1つの研究に記載された(Karrer, S. et al., J. Invest. Dermatol., 124:92 (2005))。組織線維症と関連するモデルにおいて、CCR−2/MCP−1軸の阻害により、皮膚(Yamamoto, T. et al., J. Invest. Dermatol., 121:510 (2003); Ferreira, A.M. et al., J. Invest. Dermatol., 126:1900 (2006))、肺(Okuma, T. et al., J. Pathol., 204:594 (2004); Gharaee−Kermani, M. et al., Cytokine, 24:266 (2003))、腎臓(Kitagawa, K. et al., Am. J. Pathol., 165:237 (2004); Wada, T. et al., J. Am. Soc. Nephrol., 15:940 (2004))、心臓(Hayashidani, S. et al., Circulation, 108:2134 (2003))、および肝臓(Tsuruta, S. et al., Int. J. Mol. Med., 14:837 (2004))における線維症が軽減された。
【0018】
肺胞炎の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が1つの研究により示されている。IgA免疫複合体による肺損傷ラットを、ラットMCP−1(JE)に対して作製した抗体を静脈内投与して処理すると、肺胞炎の症状が部分的に軽減された(Jones, M.L. et al., J. Immunol., 149:2147 (1992))。
【0019】
いくつかの研究により、癌の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの潜在的な治癒的価値が示されている(レビュー: Craig, M.J. et al., Cancer Metastasis Rev., 25:611 (2006); Conti, I. et al., Seminars in Cancer Biology, 14:149 (2004); Giles, R. et al., Curr. Cancer Drug Targets, 6:659 (2006))。ヒト乳癌細胞が負荷された免疫不全マウスを抗MCP−1抗体で処理すると、肺微小転移の阻害および生存率の上昇が観察された(Salcedo, R. et al., Blood, 96:34−40 (2000))。CCR−2発現が前立腺癌の進行と関連することがヒト臨床腫瘍切片を用いて判明した(Lu, Y. et al., J. Cell. Biochem., 101:676 (2007))。インビトロにおいて、MCP−1発現は前立腺癌細胞の増殖および浸潤を仲介することが示されており(Lu, Y. et al., Prostate, 66:1311 (2006));さらに、前立腺癌細胞により発現されるMCP−1は、ヒト骨髄前駆細胞を骨再吸収に誘導した(Lu, Y. et al., Cancer Res., 67:3646 (2007))。
【0020】
複数の研究において、再狭窄の治療におけるMCP−1/CCR−2相互作用のアンタゴニズムの治癒的価値が記載されている。ヒトにおいて、MCP−1レベルは再狭窄のリスクと直接相関する(Cipollone, F. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 21:327 (2001))。CCR−2またはMCP−1欠損マウスでは、動脈損傷後、(野生型同腹仔と比べて)内膜面積および内膜中膜厚比の減少が見られた(Roque, M. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 22:554 (2002); Schober, A. et al., Circ. Res., 95:1125 (2004); Kim, W.J. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 310:936 (2003))。マウスにおいて、MCP−1のドミナントネガティブ阻害剤の骨格筋へのトランスフェクション(Egashira, K. et al., Circ. Res., 90:1167 (2002))によっても、動脈損傷後の内膜肥厚が軽減された。中和抗体を用いたCCR−2のブロックにより、霊長類におけるステント挿入後の新生内膜肥厚が軽減された(Horvath, C. et al., Circ. Res., 90:488 (2002))。
【0021】
2つの報告において、ラットのMCP−1の過剰発現が脳損傷を引き起こすことが記載されている(King, J.S. et al., J. Neuroimmunol., 56:127 (1994); Berman, J.W. et al., J. Immunol., 156:3017 (1996))。さらに、CCR−2 −/−(Dimitrijevic, O.B. et al., Stroke, 38:1345 (2007))およびMCP−1 −/−マウス(Hughes, P.M. et al., J. Cereb. Blood Flow Metab., 22:308 (2002))は虚血/再潅流障害から部分的に保護されることが研究により示されている。
【0022】
単球/マクロファージが神経障害性疼痛の発症に重要な役割を果たすことが知られている(Liu, T. et al., Pain, 86:25 (2000))。これと一致して、近年、炎症および神経障害性疼痛の療法の治療におけるCCR−2の潜在的役割が記載された。CCR−2 −/−マウスでは、WTカウンターパートに比べ、炎症性疼痛への応答の変化、例えば、ホルマリンの足底内注射後の疼痛行動の軽減およびCFAの足底内注射後の機械的アロディニアのわずかな軽減などが見られる(Abbadie, C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:7947 (2003))。さらに、CCR−2 −/−マウスは坐骨神経損傷後の機械的アロディニアを示さない。同様に、小分子CCR−2アンタゴニストは、経口投与後の機械的アロディアを損傷前のレベルの〜80%に軽減した(Abbadie, C. et al., PCT公報第WO 2004/110376号)。
【0023】
虚血性心筋症におけるMCP−1の重要な役割が1つの研究において記載され(Frangogiannis, N.G. et al., Circulation, 115:584 (2007))、別の研究では、MCP−1阻害後の実験的心不全の軽減が記載された(Hayashidani, S. et al., Circulation, 108:2134 (2003))。
【0024】
別の研究により、前記以外の様々な疾患においてMCP−1が過剰発現していることの証拠が提供される。これらの報告により、MCP−1アンタゴニストがかかる疾患の治療に有用である相関的証拠が提供される。別の研究により、げっ歯類の心臓の同種移植片においてMCP−1が過剰発現していることが証明され、移植後動脈硬化の病理発生におけるMCP−1の関与が示唆された(Russell, M.E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6086 (1993))。MCP−1の過剰発現は特発性肺線維症患者の肺内皮細胞においても確認されている(Antoniades, H.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5371 (1992))。同様に、MCP−1の過剰発現は乾癬患者の皮膚においても確認されており(Deleuran, M. et al., J. Dermatol. Sci., 13:228 (1996);Gillitzer, R. et al., J. Invest. Dermatol., 101:127 (1993));CCR−2細胞が優勢であるという相関する発見も報告されている(Vestergaard, C. et al., Acta Derm. Venerol., 84:353 (2004))。最後に、最近の報告により、MCP−1がHIV−1関連認知症患者の脳内および脳脊髄液において過剰発現されていることも示されている(Garzino−Demo, A., PCT公報第WO 99/46991号)。
【0025】
加えて、CCR−2の多型は少なくとも1つのサブセットの患者においてサルコイドーシスと相関することが示されている(Spagnolo, P. et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 168:1162 (2003))。
【0026】
CCR−2がいくつかのHIVのウィルス株において共受容体として関与することも記しておくべきであろう(Doranz, B.J. et al., Cell, 85:1149 (1996))。CCR−2のHIV共受容体としての使用が疾患の進行と相関することも示されている(Connor, R.I. et al., J. Exp. Med., 185:621 (1997))。これらの発見は、ある人口母集団におけるHIVの遅発性と正に相関するCCR−2の突然変異体、CCR−2−64Iの存在の最近の発見と一致する(Smith, M.W. et al., Science, 277:959 (1997))。MCP−1はこれらの疾患プロセスと関連しないが、MCP−1アンタゴニストがCCR−2との結合により、HIV感染患者におけるAIDSの進行の遅延において有益な治療効果を有する可能性はある。
【0027】
CCR−2がヒトケモカインMCP−2、MCP−3、およびMCP−4の受容体であることも記載しておくべきであろう(Luster, New Eng. J. Med., 338:436−445 (1998))。本明細書で開示される新規の式(I)の化合物はCCR−2に結合することによりMCP−1をアンタゴナイズするため、これらの式(I)の化合物は、CCR−2により仲介されるMCP−2、MCP−3、およびMCP−4の作用の有効なアンタゴニストである可能性がある。かくして、「MCP−1のアンタゴニズム」への言及が本明細書で為される場合、これは「CCR−2のケモカイン刺激のアンタゴニズム」と同義であると見做されるべきである。
【0028】
かくして、ケモカイン活性をモジュレートする化合物の、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌、および/または循環器疾患の治療における広い範囲の有用性が立証された。PCT公報第WO 2005/021500 A1号(引用により本明細書中に取り込む、また、本願の出願人に譲渡されたものである)、WO 2008/014381 A1号、WO 2008/014360 A1号、およびWO 2008/014361 A1号は、CCR−2を介してMCP−1、MCP−2、MCP−3およびMCP−4活性をモジュレートする化合物を開示する。これらの引用文献は、保護基の導入およびそれに続く除去を含む複数の段階の合成といった、これらの化合物の様々な製造方法も開示する。
【0029】
既知のケモカインモジュレーターに比べ、改善された薬理学的特性を有する新規化合物を発見することが望ましい。例えば、CCR−2単独に選択的な、CCR−5と比べてCCR−2に優勢な、CCR−2と比べてCCR−5に優勢な、または他のGタンパク質共役型受容体(即ち、5HT2A受容体)に選択的なものと比べ、等効力なデュアルCCR−2/5阻害活性を有する新規化合物を発見することが望ましい。等効力なデュアルCCR−2/5阻害活性および以下のカテゴリーの1つまたはそれ以上の効果的な特性を有する化合物の発見も望ましい:
(a)製剤学的性質(即ち、溶解性、透過性、徐放性製剤への適合性);
(b)必要な用量(例えば、低用量および/または1日単回投与);
(c)血中濃度の最高最低間特性を低減する因子(即ち、クリアランスおよび/または分布容積);
(d)受容体における活性薬物濃度を上昇させる因子(即ち、タンパク結合、分布容積);
(e)臨床的な薬剤−薬剤相互作用が起こる傾向を低減する因子(シトクロムP450酵素阻害または誘導(例えば、CYP 2D6阻害)、Dresser, G.K. et al., Clin. Pharmacokinet., 38:41−57 (2000)を参照、引用により本明細書中に取り込む);
(f)副作用の可能性を低減する因子(例えば、Gタンパク質共役型受容体以外の薬理学的選択性、潜在的な化学的反応性または代謝的反応性、CNS透過の制限、イオンチャネル選択性)。
上記の薬理学的特性の望ましい組み合わせを有する化合物の発見が特に望ましい。
【0030】
かかる化合物の新しいまたは改善された製造方法を提供することも当該分野において望ましい。これらの方法は、限定されないが、a)パイロットプラントまたは製造規模のより大きなスケールへの容易な適合;b)純度(キラル純度を含む)、安定性および/または中間体および/または最終化合物の取扱の簡便性の改善を可能にする工程段階または技法;および/またはc)工程段階の削減、により特徴付けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、予想外の等効力のデュアルCCR−2およびCCR−5受容体阻害活性を有する、新規のアンタゴニスト:N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。さらに、本発明は、等効力デュアルCCR−2/5活性および望ましい薬理学的特性の新規かつ予想外の組み合わせを提供する。本発明の結晶形および代謝物の形態も提供される。それを含む医薬組成物、および、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患の治療におけるそれの薬剤としての使用方法も本発明の目的である。本発明はまた、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドを含む式(I):
【化3】

(式中、R、R、R、R10、および
【化4】

は、本明細書で定義されるものと同義である)の化合物の製造方法も提供する。該方法の有用な中間体も本明細書で提供される。
【0032】
本開示はまた、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−エチル)ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患の治療薬の製造における使用を提供する。
【0033】
本発明はまた、活性化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの代謝物、その医薬組成物、ならびに、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患、特に糖尿病、多発性硬化症、クローン病および/またはアテローム動脈硬化症の治療における代謝物の使用方法を提供する。
【0034】
かくして、望ましい薬理学的特性の望ましい組み合わせを有するケモカイン受容体の新規モジュレーター、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグが本明細書で開示される。
【0035】
本開示は、医薬的に許容される担体、および治療上の有効量の少なくとも1つの本発明の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を提供する。
【0036】
本開示はまた、炎症性疾患、アレルギー性疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患、特に糖尿病、多発性硬化症、クローン病および/またはアテローム動脈硬化症の治療方法であって、治療上の有効量の少なくとも1つの本発明の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを治療が必要な対象に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0037】
本開示は、本発明の化合物の製造方法およびそれに有用な中間体を提供する。
【0038】
本開示は、治療における本発明の化合物の使用を提供する。
【0039】
本開示は、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患の治療薬の製造における本発明の化合物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの実験およびシミュレーションによる粉末パターンを開示する。
【0041】
【図2】は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、遊離塩基、N−1型の示差走査熱量分析を開示する。
【0042】
【図3】は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、遊離塩基、N−1型の熱重量分析を開示する。
【0043】
(発明の詳細な説明)
本発明は、予想外の等効力のデュアルCCR−2およびCCR−5受容体阻害活性を有する、新規のアンタゴニスト:N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。さらに、本発明は、望ましい薬理学的特性の新規の組み合わせを提供する。本発明の結晶形および代謝物の形態も提供される。それを含む医薬組成物、および、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患の治療におけるそれの薬剤としての使用方法も本発明の目的である。本発明はまた、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドを含む式(I):
【化5】

(式中、R、R、R、R10、および
【化6】

は、本明細書で定義されるものと同義である)の化合物の製造方法も提供する。該方法の有用な中間体も本明細書で提供される。
【0044】
N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドは、等効力のデュアルCCR−2/5受容体阻害活性を予想外に示した。
【0045】
さらに、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドは、等効力のデュアルCCR−2/5受容体阻害活性および薬理学的特性の望ましい組み合わせ、例えば、高い有効性および優れた安全基準の兆候と驚くほど高い経口バイオアベイラビリティの組み合わせを示した。
【0046】
既知のケモカイン受容体モジュレーター、例えば、PCT公報第WO 2004/071460 A1号およびWO 2005/021500 A1号(米国特許番号第7,163,937号、2007年1月16日公開、本明細書の出願人に譲渡)に開示されるものは、CCR−2またはCCR−5結合活性(有効性の指標)による評価によれば十分に有効ではなく、および/またはhERGおよびNa+イオンチャネルの研究で測定されるように、イオンチャネルの選択性で示される適切な安全性基準が欠けている。
【0047】
別の既知のケモカイン受容体モジュレーター、例えば、PCT公報第WO 2008/014381 A1号、WO 2008/014360 A1号およびWO 2008/014361 A1号で開示されるものは、CCR−2受容体活性のアンタゴニストまたはパーシャルアゴニスト/アンタゴニストとして選択的である。しかしながら、これらの既知のモジュレーターは、CCR−2およびCCR−5結合能による評価によれば、主にCCR−2活性を示すが等効力なデュアルアンタゴニストではない。
【0048】
別の既知のケモカイン受容体モジュレーター、例えば、Carter et al.(American Chemical Society、2007年8月17日)に開示されるものはデュアルCCR−2/5モジュレーターであるが、hERGおよびNa+イオンチャネルの研究で測定されるイオンチャネルの選択性で示される適切な安全性基準が欠けている。
【0049】
逆に、下記の「薬理学的特性の比較」と題したセクションで提供されるデータに示されるように、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドは、驚くべきことに、等効力のCCR−5およびCCR−2結合能を示した。さらに、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドは、驚くほど高い膜透過性を示したが、優れたイオンチャネル選択性ならびに等効力のCCR−2/5デュアル結合能を維持していた。
【0050】
かくして、本発明は、等効力のCCR−2およびCCR−5結合能を有する新規のケモカインモジュレーターを提供し、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌および/または循環器疾患の治療に有用であることが期待される薬理学的特性を改善する。
【0051】
実施態様
一実施態様において、本開示は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド:
【化7】

およびその医薬的に許容される塩に関連する。
【0052】
別の一実施態様は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの結晶形である。
【0053】
別の一実施態様は、N−1型および/またはP−1型を含む、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの結晶形である。
【0054】
別の一実施態様は、N−1型を含む、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの結晶形である。
【0055】
別の一実施態様は、該結晶形が実質的に純粋な形態のN−1またはP−1型である、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの結晶形である。
【0056】
別の一実施態様は、該結晶形が実質的に純粋な形態のN−1型である、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの結晶形である。
【0057】
別の一実施態様は、以下:
格子サイズ:
a=7.3085(6)
b=16.257(1)
c=22.688(2)
α°=90
β°=90
γ°=90
空間群 P2
分子/単位格子(Z):1
密度(g−cm−3で算出):1.194
(ここで、該結晶は約−70℃におけるものである)
と実質的に同等な単位格子パラメーターで特徴付けられるN−1型である。
【0058】
別の一実施態様は、図1と実質的に同等の粉末X線回折パターンにより特徴付けられる(または有する)N−2型である。
【0059】
別の一実施態様は、約205℃超での吸熱転移を有する図2に示されるものと実質的に同等な示差走査熱量測定サーモグラムにより特徴付けられる(または有する)N−2型である。
【0060】
別の一実施態様は、図3に示されるものと合致する熱重量測定曲線により特徴付けられる(または有する)ものである。
【0061】
別の一実施態様は、表1の単位格子パラメーター;および/または図1と実質的に同等な粉末X線回折パターンで特徴付けられるN−1型を含む、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの結晶形である。
【0062】
別の一実施態様は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物である。
【0063】
別の一実施態様は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、その医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0064】
別の一実施態様は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、その医薬的に許容される塩、および少なくとも1つのさらなる治療薬を含む医薬組成物である。
【0065】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、ケモカインまたはケモカイン受容体をモジュレートする方法である。
【0066】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、CCR−2およびCCR−5受容体活性をモジュレートする方法である。
【0067】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、CCR−2およびCCR−5受容体により仲介されるMCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MCP−5、MIP−1a、MIP−1bおよびRANTES活性をモジュレートする方法である。
【0068】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、MCP−1活性をモジュレートする方法である。
【0069】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、障害(ここで、障害は、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、脳卒中、神経障害性疼痛、虚血性心筋症、乾癬、高血圧症、強皮症、変形性関節症、動脈瘤、発熱、循環器疾患、クローン病、うっ血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植後動脈硬化、物理的または化学的に誘発された頭部外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム動脈硬化症、血管炎、不安定プラーク、関節リウマチ、再狭窄、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、動静脈シャント新生内膜肥厚、臓器移植、慢性移植腎症、および癌から選択される)の治療方法である。
【0070】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、障害(ここで、障害は、糖尿病、肥満、クローン病、乾癬、特発性肺線維症、移植後動脈硬化、物理的または化学的に誘発された頭部外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄、臓器移植、癌、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、および動静脈シャント新生内膜肥厚から選択される)の治療方法である。
【0071】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、障害(ここで、障害は、糖尿病、肥満、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、多発性硬化症、アテローム動脈硬化症、再狭窄、臓器移植、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、および動静脈シャント新生内膜肥厚から選択される)の治療方法である。
【0072】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、障害(ここで、障害は、多発性硬化症、アテローム動脈硬化症、クローン病、糖尿病、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、および動静脈シャント新生内膜肥厚から選択される)の治療方法である。
【0073】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、障害(ここで、障害は、再狭窄、臓器移植、癌、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、および動静脈シャント新生内膜肥厚から選択される)の治療方法である。
【0074】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、糖尿病の治療方法である。
【0075】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、クローン病の治療方法である。
【0076】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、多発性硬化症の治療方法である。
【0077】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、アテローム動脈硬化症の治療方法である。
【0078】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、再狭窄の治療方法である。
【0079】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、臓器移植の治療方法である。
【0080】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、癌、例えば、乳癌、肝臓癌、前立腺癌および黒色腫の治療方法である。
【0081】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、静脈新生内膜肥厚の治療方法である。
【0082】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、透析グラフト新生内膜肥厚の治療方法である。
【0083】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、動静脈シャント新生内膜肥厚の治療方法である。
【0084】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、および/または循環器疾患の治療方法である。
【0085】
別の一実施態様は、治療上の有効量のN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドおよびその医薬的に許容される塩を患者に投与することを特徴とする、少なくとも部分的にCCR−2およびCCR−5により仲介される疾患の治療方法である。
【0086】
別の一実施態様は、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、脳卒中、神経障害性疼痛、虚血性心筋症、乾癬、高血圧症、強皮症、変形性関節症、動脈瘤、発熱、循環器疾患、クローン病、うっ血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植後動脈硬化、物理的または化学的に誘発された頭部外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム動脈硬化症、血管炎、不安定プラーク、関節リウマチ、再狭窄、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、動静脈シャント新生内膜肥厚、臓器移植、慢性移植腎症、癌、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、および動静脈シャント新生内膜肥厚の治療薬の製造における、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、およびその医薬的に許容される塩の使用である。
【0087】
別の一実施態様において、本開示は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−エチル)ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド:
【化8】

およびその医薬的に許容される塩に関連する。それを含む医薬組成物、ならびに炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、癌、および/または循環器疾患の治療薬としてのその使用方法もまた、本発明の実施態様である。
【0088】
製造方法の実施態様
第1の実施態様において、本開示は、
【化9】

1)式I−ccのヒドラゾン化合物を式I−bbの化合物へ変換し;
2)式I−bbの化合物を式I−aaの化合物(式中:
は、独立して、水素、またはカルボベンジルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニル、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジル基、およびp−メトキシベンジル基から選択されるアミン保護基であり;
およびRは、独立して、水素またはC1−6アルキルであり;
21は=Oであり;
HETは、少なくとも1つの窒素ヘテロ原子を含み、適宜置換されていてもよい3から14員のヘテロ環またはヘテロアリール二環式環であり;
LGは−OR16であり、ここで、R16はC1−6アルキル、フェニル、5から7員のN、S、またはOから選択される1つまたはそれ以上の原子を有するヘテロアリール、または3から7員のシクロアルキルであり、それらの全てがハロゲン、CFまたはC1−6アルキルから選択される1から3個の基で適宜置換されていてもよい)とカップリングする
ことを特徴とする、式(I)の化合物、またはその塩の形態の製造方法を提供する。
【0089】
第2の実施態様において、本開示は、式(I)の化合物がN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドである、製造方法を提供する。
【0090】
第3の実施態様において、式I−bbの化合物が式:
【化10】

の化合物である、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0091】
第4の実施態様において、本開示は、カップリングが酸性ワークアップとそれに次ぐ塩基の添加により起こるものである、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0092】
第5の実施態様において、本開示は、酸性ワークアップにおける酸がクエン酸、酒石酸、グリコール酸、および塩酸から選択される、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0093】
第6の実施態様において、該塩基がKHPO、NaHPO、NaHCOおよびKHCOから選択される、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0094】
第7の実施態様において、本開示は、式I−ccのヒドラゾン化合物の式I−bbの化合物への変換が、式I−ccのヒドラゾン化合物と溶媒中におけるアシル化試薬、求核試薬、および/または3級アミン塩基との反応、次いで、(i)第2の3級アミン塩基の存在下におけるアルコールまたは(ii)アルコキシドを用いた捕獲によるI−bbの化合物の形成を特徴とする、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0095】
第8の実施態様において、本開示は、該アセチル化試薬が、オキシ塩化リン、オキサリルクロリド、チオニルクロリドおよびホスゲンから選択され、好ましくはオキシ塩化リンである製造方法を提供する。
【0096】
第9の実施態様において、本開示は、該3級アミン塩基が、トリエチルアミン、N−N−ジイソプロピル−N−エチルアミン、トリ−N−プロピルアミン、N−メチルモルホリンおよび1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから選択され、好ましくはN−N−ジイソプロピル−N−エチルアミンである製造方法を提供する。
【0097】
第10の実施態様において、本開示は、該求核試薬がジメチル 4−アミノピリジン、ジメチルアニリン、ピリジンおよびルチジンから選択され、好ましくはジメチル 4−アミノピリジンである製造方法を提供する。
【0098】
第11の実施態様において、本開示は、反応に用いられる求核試薬の量が2.0から4.0当量であり、好ましくは3.0当量である製造方法を提供する。
【0099】
第12の実施態様において、本開示は、アルコールまたはアルコキシドがフェノール、ペンタフルオロフェノール、メタノール、エタノール、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムフェノレートであり、好ましくはフェノールである製造方法を提供する。
【0100】
第13の実施態様において、本開示は、第2の3級アミン塩基がトリエチルアミン、N−N−ジイソプロピル−N−エチルアミン、トリ−N−プロピルアミン、N−メチルモルホリン、および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから選択され、好ましくはN−N−ジイソプロピル−N−エチルアミンである製造方法を提供する。
【0101】
第14の実施態様において、本開示は、該溶媒がアセトニトリル、ジクロロメタンおよび無溶媒のオキシ塩化リンから選択される製造方法を提供する。
【0102】
第15の実施態様において、本開示は、反応および捕獲が周囲温度から70℃の範囲の温度において行われる製造方法を提供する。
【0103】
第16の実施態様において、本開示は、式I−ccの化合物が式:
【化11】

の化合物である製造方法を提供する。
【0104】
第17の実施態様において、本開示は、式I−ccのヒドラゾン化合物が、式I−dd:
【化12】

のヒドラゾン化合物を、オルトギ酸と酸の存在下において高温で反応させて式I−ccのヒドラゾン化合物を得ることを特徴とする工程(ここで、R21は=Oであり;R22は−NH−NHであり;R23はシアノアルキルであるか;R22およびR23は一緒になって5から8員の環を形成し、ここで、該環はアミノ、アルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択される1つまたはそれ以上の置換基で適宜置換されていてもよく、N、S、またはOから独立して選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を適宜含んでいてもよい)により製造される製造方法を提供する。
【0105】
第18の実施態様において、本開示は、オルトギ酸が、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、およびオルトギ酸トリプロピルから選択され、好ましくはオルトギ酸トリメチルである製造方法を提供する。
【0106】
第19の実施態様において、本開示は、酸が、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸およびメタンスルホン酸から選択され、好ましくは酢酸である製造方法を提供する。
【0107】
第20の実施態様において、本開示は、反応が、40−90℃、好ましくは40−75℃の範囲の温度で行われる製造方法を提供する。
【0108】
第21の実施態様において、本開示は、式I−ddの化合物が、式:
【化13】

から選択される製造方法を提供する。
【0109】
第22の実施態様において、本開示は、式I−ddのヒドラゾン化合物が、R23=Oである式I−eeの化合物を式I−ff:
【化14】

のカルバジド化合物と、溶媒中、塩基の存在下において縮合させて式I−ddのヒドラゾン化合物を得ることを含む工程(ここで、R21は=Oであり、R22およびR23は上と同義である)により製造される製造方法を提供する。
【0110】
第23の実施態様において、本開示は、溶媒がエタノール、2−プロパノール、1−プロパノールおよびメタノールから選択され、好ましくはエタノールである製造方法を提供する。
【0111】
第24の実施態様において、本開示は、塩基が、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミンおよびN−N−ジイソプロピル−N−エチルアミンから選択され、好ましくは酢酸ナトリウムである製造方法を提供する。
【0112】
第25の実施態様において、本開示は、縮合が20−60℃、好ましくは25−55℃の範囲の温度において行われる製造方法を提供する。
【0113】
第26の実施態様において、本開示は、式I−ffのカルバジド化合物がセミカルバジド塩酸塩である製造方法を提供する。
【0114】
第27の実施態様において、本開示は、式I−eeの化合物がピバロイルアセトニトリルである製造方法を提供する。
【0115】
第28の実施態様において、本開示は、以下のスキーム:
【化15】

で説明される工程を特徴とする、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの製造方法を提供する。
【0116】
本発明は、本発明の精神または本質から逸脱することなく、別の特定の形態で例示することができる。故に、前述の実施態様は本発明を限定すると理解されるべきではない。本発明の任意のおよび全ての実施態様は、任意の別の実施態様(複数可)と組み合わされてさらなる実施態様を記載することができる。実施態様の各個別の要素(例えば、好ましいまたは特定の態様)は、それ自体独立した実施態様である。さらに、実施態様の任意の要素は、任意の実施態様の任意および全ての要素と組み合わされてさらなる実施態様が記載されると意図される。加えて、本発明は、本明細書に記載される本発明の異なる実施態様、実施態様の一部分、定義、記載、および実施例の組み合わせを包含する。
【0117】
定義
以下は本明細書および付属の請求項で用いられる用語の定義である。基または用語に提供される最初の定義は、特に断らない限り、本明細書および請求項を通して個々または別の基の一部として該基または該用語に適用されるものとする。
【0118】
用語「アルキル」は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。数字が記号「C」の後に添字で存在する場合、該添字は特定の基が含み得る炭素原子の数をより具体的に定義する。例えば、「C1−6アルキル」は、1から6個の炭素原子を含む直鎖および分枝鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、N−プロピル、イソプロピル、N−ブチル、t−ブチル、N−ペンチルなどを意味する。添字「0」は結合を意味する。故に、用語ヒドロキシ(C0−2)アルキルまたは(C0−2)ヒドロキシアルキルは、ヒドロキシ、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチルを含む。アルキル基は、(C1−6)アルキル、(C2−6)アルケニル、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF、O(C1−6アルキル)、OCF、C(=O)H、C(=O)(C1−6アルキル)、COH、CO(C1−6アルキル)、NHCO(C1−6アルキル)、−S(C1−6アルキル)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)、N(CH、SO(C1−6アルキル)、C(=O)(C1−4アルキレン)NH、C(=O)(C1−4アルキレン)NH(アルキル)、C(=O)(C1−4アルキレン)N(C1−4アルキル)、C3−7シクロアルキル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、ナフチル、4から7員のヘテロ環、および/または5から6員のヘテロアリール基から選択される1から3個の置換基で置換されていてもよい。置換されたアルキルがアリール、ヘテロ環、シクロアルキル、またはヘテロアリール基で置換される場合、該環系は以下と同義であり、故に、以下で定義されるように、0、1、2、または3個の置換基を有していてもよい。
【0119】
用語「アルキル」が別の基と共に用いられる場合(例えば、「アリールアルキル」)、この組み合わせは、置換されたアルキルが含むであろう少なくとも1つの置換基をより具体的に定義する。例えば、「アリールアルキル」は、少なくとも1つの置換基がベンジルなどのアリールである上と同義の置換されたアルキル基を意味する。故に、用語アリール(C0−4)アルキルは、少なくとも1つのアリール置換基を有する置換された低級アルキルを包含し、さらに、他の基に直接結合したアリール、即ちアリール(C)アルキルも包含する。
【0120】
用語「アルケニル」は、2から12個の炭素原子、および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。2から6個の炭素原子を含み、1個の二重結合を有するアルケニル基が最も好ましい。アルケニル基は、アルキル基について前述したように、置換されていてもよい。
【0121】
用語「アルキニル」は、2から12個の炭素原子、および少なくとも1つの三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。2から6個の炭素原子を含む、1個の三重結合を有するアルキニル基が最も好ましい。アルキニル基は、アルキル基について前述したように、置換されていてもよい。
【0122】
用語「アルキレン」は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から8個の炭素原子を有する二価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基、例えば、{−CH−}(ここで、nは1から12、好ましくは1から8である)を意味する。低級アルキレン基、即ち、1から2個の炭素原子を有するアルキレン基が最も好ましい。用語「アルケニレン」および「アルキニレン」は、それぞれ、上と同義の二価のアルケニル基およびアルキニル基を意味する。アルケニレン基は、アルキル基について前述したように、置換されていてもよい。
【0123】
用語「アルコキシ」は、本明細書で定義したアルキル基で置換された酸素原子を意味する。例えば、用語「アルコキシ」は−O−C1−6アルキルを含む。
【0124】
添字がアルコキシ、チオアルキルまたはアミノアルキルと付随して用いられる場合、該添字は該基がヘテロ原子に加えて含み得る炭素原子数を意味する。
【0125】
全ての基、例えば、アルコキシ、チオアルキル、およびアミノアルキルは、安定な化合物を提供するよう当業者により選択されることは明らかであろう。
【0126】
用語「カルボニル」は、二価のカルボニル基−C(=O)−を意味する。
【0127】
用語「アシル」は、有機基に結合したカルボニル基、より具体的には、有機基に結合したC(=O)R、および二価の基−C(=O)R−を意味する。基Rは、本明細書で定義されるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリール、あるいは適当な場合、対応する二価の基、例えば、アルキレンから選択することができる。
【0128】
用語「シクロアルキル」は、3から9個の炭素原子、好ましくは3から7個の炭素原子を含む完全に飽和、または一部分不飽和の炭化水素環(および、故に、「シクロアルケニル環」を含む)を意味する。用語「シクロアルキル」は、(C1−4)アルキル、(C2−4)アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、O(C1−4アルキル)、OCF、C(=O)H、C(=O)(C1−4アルキル)、COH、CO(C1−4アルキル)、NHCO(C1−4アルキル)、S(C1−4アルキル)、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、SO(C1−4アルキル)、C(=O)(C1−4アルキレン)NH、C(=O)(C1−4アルキレン)NH(アルキル)、および/またはC(=O)(C1−4アルキレン)N(C1−4アルキル)から選択される0、1、2、または3個の置換基を有する環を含む。用語「シクロアルキル」はまた、それ自身に縮合した第2の環(例えば、ベンゾ、ヘテロ環、またはヘテロアリール環)を有する環、または3から4個の炭素原子の炭素−炭素架橋を有する環を含む。
【0129】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、クロロ、ブロモ、フルオロおよびヨードを意味する。
【0130】
用語「ハロアルキル」は、1つまたはそれ以上のハロ置換基を有する置換されたアルキルを意味する。例えば、「ハロアルキル」はモノ、ビおよびトリフルオロメチルを含む。
【0131】
用語「ハロアルコキシ」は、1つまたはそれ以上のハロ置換基を有するアルコキシ基を意味する。例えば、「ハロアルコキシ」はOCFを含む。
【0132】
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄および窒素を含む。
【0133】
用語「アリール」は、フェニル、ビフェニル、フルオレニル、1−ナフチルおよび2−ナフチルを意味する。用語「アリール」は、(C1−4)アルキル、(C2−4)アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、O(C1−4アルキル)、OCF、C(=O)H、C(=O)(C1−4アルキル)、COH、CO(C1−4アルキル)、NHCO(C1−4アルキル)、S(C1−4アルキル)、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、SO(C1−4アルキル)、C(=O)(C1−4アルキレン)NH、C(=O)(C1−4アルキレン)NH(アルキル)、および/またはC(=O)(C1−4アルキレン)N(C1−4アルキル)から選択される0、1、2または3個の置換基を有する環を含む。
【0134】
用語「ヘテロ環」または「ヘテロ環の」は、1から4個のヘテロ原子を有する置換または非置換の非芳香族(一部分または完全に飽和でもよい)の3から15員の環を意味する。かかる環は3から7員の単環式基、7から11員の二環式基、および10から15員の三環式基でもよい。ヘテロ原子を含むヘテロ環基の各環は、1もしくは2個の酸素または硫黄原子および/または1から4個の窒素原子を含んでいてもよいが、ただし、各環のヘテロ原子の総数は4またはそれ未満であり、さらに、環は少なくとも1個の炭素原子を含むものとする。二環式または三環式基を形成する縮合環は、炭素原子のみを含んでいてもよく、飽和、一部分飽和、または不飽和でもよい。窒素原子および硫黄原子は適宜酸化されていてもよく、窒素原子は適宜四級化されていてもよい。ヘテロ環基はいずれの窒素または炭素原子で結合していてもよい。ヘテロ環基は、(C1−4)アルキル、(C2−4)アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、O(C1−4アルキル)、OCF、C(=O)H、C(=O)(C1−4アルキル)、COH、CO(C1−4アルキル)、NHCO(C1−4アルキル)、S(C1−4アルキル)、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、SO(C1−4アルキル)、C(=O)(C1−4アルキレン)NH、C(=O)(C1−4アルキレン)NH(アルキル)、および/またはC(=O)(C1−4アルキレン)N(C1−4アルキル)から選択される0、1、2、または3個の置換基を含んでいてもよい。ヘテロ環基の例は、アゼチジニル、ピロリジニル、オキセタニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、4−ピペリドニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソラン、キヌクリジニル、テトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニルなどである。
【0135】
用語「ヘテロアリール」は、O、S、またはNから選択される1から4個のヘテロ原子を少なくとも1つの環内に有する置換または非置換の芳香族の3から14員の環を意味する。該環は、5または6員の単環式基、9または10員の二環式基、および11から14員の三環式基でもよい。ヘテロ原子を含むヘテロアリール基の各環は、1もしくは2個の酸素または硫黄原子および/または1から4個の窒素原子を含むが、ただし、各環のヘテロ原子の総数は4またはそれ未満とする。二環式および三環式基を形成する縮合環は、炭素原子のみを含んでいてもよく、飽和、一部分飽和、または不飽和でもよい。窒素原子および硫黄原子は適宜酸化されていてもよく、窒素原子は適宜四級化されていてもよい。二環式または三環式のヘテロアリール基は、少なくとも1つの完全な芳香環を含んでいなければならないが、他の縮合環または環は芳香族でも非芳香族でもよい。ヘテロアリール基は環のいずれの窒素または炭素原子において結合していてもよい。ヘテロアリール環系は、(C1−4)アルキル、(C2−4)アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、O(C1−4アルキル)、OCF、C(=O)H、C(=O)(C1−4アルキル)、COH、CO(C1−4アルキル)、NHCO(C1−4アルキル)、S(C1−4アルキル)、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、SO(C1−4アルキル)、C(=O)(C1−4アルキレン)NH、C(=O)(C1−4アルキレン)NH(アルキル)、および/またはC(=O)(C1−4アルキレン)N(C1−4アルキル)から選択される0、1、2または3個の置換基を含んでいてもよい。
【0136】
ヘテロアリール基の例は、例えば、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジル、ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロキノリニルなどである。特定のヘテロアリール基は、例えば、6−置換キナゾリン−4−イルおよび6−トリフルオロメチル−キナゾリン−4−イルである。
【0137】
基が適宜置換されていてもよい場合、それは置換または非置換の基を含む。
【0138】
本発明の化合物は不斉中心を有していてもよい。非対称に置換された原子を含む本発明の化合物は、光学活性またはラセミ体の形態で単離することができる。例えば、ラセミ体の分割または光学活性な出発物質からの合成などによる光学活性な形態の製造方法は、当該分野で周知のものである。オレフィン、C=N二重結合などにおける多くの幾何異性体もまた本発明の化合物に存在し得、全てのかかる安定な異性体が本明細書中に包含されると理解される。本発明の化合物のシスおよびトランス異性体も提示され、異性体の混合物または別々の異性体の形態として単離され得る。具体的な立体化学または異性体の形態が特に指定されない限り、構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体の形態および全ての幾何異性体の形態が意図される。
【0139】
本発明の化合物の1個のエナンチオマーが他のエナンチオマーに比べて高い活性を示すことがある。故に、全ての立体化学が本発明の一部であると見做される。必要な場合、ラセミ物質の分離は、Young, S.D. et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2602−2605 (1995)に記載されるように、キラルカラムを用いたHPLCまたはカンフォニッククロリド(camphonic chloride)などの分割試薬を用いて行うことができる。
【0140】
本明細書で用いられる成句「医薬的に許容される」は、正常な医学的判断の範囲内において、ヒトおよび哺乳類の組織と接触する使用に過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなく、妥当なベネフィット/リスク比に見合って適切である化合物、物質、組成物、および/または投与剤形を意味する。
【0141】
本明細書で用いられるように、「医薬的に許容される塩」は、親化合物がその酸または塩基塩を形成することにより修飾された本発明の化合物の誘導体を意味する。医薬的に許容される塩の例は、例えば、限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸または有機酸の塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などである。医薬的に許容される塩は、一般的な無毒な塩または親化合物の4級アンモニウム塩、例えば、無毒な無機酸または有機酸からの塩を含む。例えば、かかる無毒な塩は、塩酸、ベンゼンスルホン酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来する塩;ならびに、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸に由来する塩である。
【0142】
本発明の医薬的に許容される塩は、酸性または塩基性部位を含む親化合物から一般的な方法を用いて合成することができる。一般的に、かかる塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基を化学量論量の適当な塩基または酸と、水もしくは有機溶媒またはそれら2つの混合物中(一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性溶媒が好ましい)中で反応させることにより調製することができる。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, p. 1418 (1985)に記載され、引用により本明細書中に取り込む。
【0143】
プロドラッグは医薬品の多くの望ましい性質(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティ、製造など)を改善することが知られているため、本発明の化合物はプロドラッグの形態で送達されてもよい。故に、本発明は、請求される化合物のプロドラッグ、それらの送達方法およびそれらを含む組成物を包含すると意図される。「プロドラッグ」は、かかるプロドラッグが哺乳類の対象に投与された際、インビボにおいて本発明の活性な親化合物を放出する、共有結合した任意の担体を含むと意図される。本発明のプロドラッグは、本発明の化合物の官能基を、所定の操作またはインビボで切断されて親化合物となるような修飾方法で修飾することにより製造される。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基が、哺乳類の対象に投与された際、切断されてそれぞれ遊離ヒドロキシル、遊離アミノ、または遊離スルフヒドリル基を形成する任意の基と結合した本発明の化合物を包含する。プロドラッグの例は、限定されないが、本発明の化合物のアルコールまたはアミン官能基の酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体である。
【0144】
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から使用可能な純度の形態への単離、および有効な治療薬への製剤化に耐え得るほど十分に強固な化合物を意味すると意図される。本発明は安定な化合物を体現すると意図される。
【0145】
「治療上の有効量」は、CCR−2およびCCR−5の阻害、または本明細書で議論される障害の治療または予防に有効な請求される化合物の単独もしくは組み合わせの量、または他の活性成分と組み合わされる本発明の化合物の量を包含すると意図される。
【0146】
本明細書で用いられるように、「治療の」または「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患状態の治療を包含し、(a)特に哺乳類が疾患状態に罹患しやすい状態にありながら罹患していると診断されていない場合に、疾患状態の発症を予防すること;(b)疾患状態を阻害する、即ち、その進行を停止させること;および/または(c)疾患状態を改善する、即ち、疾患状態の退縮を引き起こすことを含む。
【0147】
特定の結晶形を指定するために本明細書中で使用する名称、たとえば「N−1」または「P−1」は、類似または同一の物理的および化学的特徴を保有する任意の他の物質に関して限定するものとみなされるべきではなく、むしろ、これらの命名は、やはり本明細書中で提示される特徴づけ情報に従って解釈されるべき単なる識別子であると理解されるべきである。
【0148】
本発明は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基の結晶形を新規物質として、特に、医薬的に許容される形態において提供する。いくつかの好ましい実施態様において、遊離塩基の結晶形は実質的に純粋な形態である。遊離塩基の好ましい実施態様は、N−1型として実施例に開示される。さらに、遊離塩基はP−1型および/またはN−1とP−1型の混合物として存在する可能性があると考えられる。
【0149】
本明細書で用いられるように、「多形」は、結晶を形成する分子、原子、および/またはイオンが同一の化学組成を有するが、異なる空間配置を有する結晶形を意味する。
【0150】
本明細書で用いられるように、「溶媒和物」は、結晶構造に組み込まれた溶媒(複数可)分子をさらに含む、分子、原子および/またはイオンの結晶形を意味する。溶媒和物の溶媒分子は規則的配置および/または不規則配置において存在していてもよい。溶媒和物は化学量論量または非化学量論量の溶媒分子を含んでいてもよい。例えば、非化学量論量の溶媒分子を含む溶媒和物は、溶媒和物から溶媒が部分的に脱落したことによるものである。
【0151】
本発明は、本発明の化合物に存在する全てのアイソトープを含むと意図される。アイソトープは同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。例えば、限定されないが、水素のアイソトープは重水素およびトリチウムを含む。炭素のアイソトープは13Cおよび14Cを含む。一般的に、本発明のアイソトープ標識化合物は、適当なアイソトープ標識試薬を非標識試薬の代わりに用い、当業者に周知の技法または本明細書で開示されるものと類似の製造方法により製造することができる。
【0152】
本明細書で用いられるように、「アモルファス」は、分子、原子、および/またはイオンの結晶ではない固形を意味する。アモルファスな固形は明確なX線回折パターンを示さない。
【0153】
本明細書で用いられるように、「実質的に純粋」は、結晶形に関連して用いられる場合、90重量%を超える、例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98および99重量%を超える純度を有する化合物を意味し、約100重量%と同等の式(I)の化合物を含む。残りの物質は、その製造に由来する化合物の他の形態(複数可)、および/または反応不純物、および/または製造工程の不純物を含む。例えば、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基または塩の結晶形は、この時点で周知かつ当該分野で一般的に受け入れられている方法による測定において90重量%を超える純度を有する点において実質的に純粋と見做してもよく、該物質の10重量%未満の残りは、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基もしくは塩の他の形態、および/または反応不純物および/または製造における不純物を含む。
【0154】
結晶形の試料は、より多量な1つの結晶形および適宜より少量の1つまたはそれ以上の結晶形の存在を示唆する実質的に純粋な相均一性において提供され得る。試料における1つまたはそれ以上の結晶形の存在は、粉末X線回折(PXRD)または固体核磁気共鳴(SSNMR)などの技法により決定することができる。例えば、シミュレーションされたPXRDパターンに比べて実験で得たPXRDパターンに別のピークが存在することは、試料中に1つまたはそれ以上の結晶形が存在することを示している。シミュレーションPXRDは単結晶X線データから計算することができる。Smith, D.K., 「A FORTRAN Program for Calculating X−Ray Powder Diffraction Patterns,」 Lawrence Radiation Laboratory, Livermore, California, UCRL−7196 (April 1963)を参照されたい。
【0155】
好ましくは、結晶形は、シミュレーションPXRDでは存在しない他のピークに由来するものが実験で得たPXRDパターンの総ピーク面積の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満であることで示される実質的に純粋な相均一性を有する。最も好ましいものは、シミュレーションPXRDでは存在しない他のピークに由来するものが実験で得たPXRDパターンの総ピーク面積の1%未満である実質的に純粋な相均一性を有する結晶形である。
【0156】
結晶形の製造方法は当該分野で周知である。結晶形は様々な方法、例えば、適切な溶媒からの結晶化または再結晶化、融解物からの育成、別の相からの固相転移、超臨界流体からの結晶化、およびジェット噴霧により製造することができる。溶媒混合物からの結晶化または再結晶化の技法は、例えば、溶媒のエバポレート、溶媒混合物の冷却、該分子または塩の過飽和溶媒混合物の結晶種子法、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への貧溶媒(逆溶媒)添加などである。
【0157】
形態は、固定した分析温度における単一の結晶形の単位格子の測定に基づく単結晶X線回折により特徴付けおよび同定することができる。単位格子の詳細の記載は、Stout et al., Chapter 3, X−Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)で提供される。あるいは、結晶格子内の空間的相関における原子の独特の配置は、観測された分率原子座標により特徴付けすることができる。結晶構造の別の特徴付けの方法は、実験で得た、または観測した回折プロファイルを純粋な粉末物質を表すシミュレーションプロファイルと比較し(共に同一分析温度で行う)、対象の形態の測定値を一連の2θ値として特徴付ける粉末X線回折分析である。
【0158】
形態を特徴付ける別の方法、例えば、固体核磁気共鳴(SSNMR)、示差走査熱量分析および熱重量測定が用いられてもよい。これらのパラメーターも組み合わせて対象の特徴付けに用いられる。
【0159】
用語「無視できる重量減少」は、本明細書で用いられるように、TGAで示される無溶媒(非溶媒和)の結晶形の存在を意味する。
【0160】
本発明の一実施態様において、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基または塩の結晶形は、実質的に純粋な形態において提供される。この結晶形は、例えば、賦形剤、担体、別の活性な医薬成分または異なる分子構造の活性な化学エンティティの1つからなる群より選択される1つまたはそれ以上の成分を適宜含んでいてもよい医薬組成物に用いることができる。
【0161】
好ましくは、結晶形は、シミュレーションPXRDでは存在しない他のピークに由来するものが実験で得たPXRDパターンの総ピーク面積の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満であることで示される実質的に純粋な相均一性を有する。最も好ましいものは、シミュレーションPXRDでは存在しない他のピークに由来するものが実験で得たPXRDパターンの総ピーク面積の1%未満である実質的に純粋な相均一性を有する結晶形である。
【0162】
別の一実施態様において、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基または塩の結晶形を主に含む組成物が提供される。この実施態様の組成物は、組成物の重量の少なくとも90重量%の結晶形を含み得る。
【0163】
反応不純物および/または製造工程における不純物の存在は、当該分野で周知の分析技法、例えば、クロマトグラフィー、核磁気共鳴、質量分析または赤外分光法で決定されてもよい。
【0164】
結晶形は様々な方法、例えば、適切な溶媒からの結晶化または再結晶化、融解物からの育成、別の相からの固相転移、超臨界流体からの結晶化、およびジェット噴霧により製造することができる。溶媒混合物からの結晶化または再結晶化の技法は、例えば、溶媒のエバポレート、溶媒混合物の冷却、該分子または塩の過飽和溶媒混合物の結晶種子法、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への貧溶媒(逆溶媒)添加などである。ハイスループット結晶化法は多形を含む結晶形の製造に用いることができる。
【0165】
多形を含む薬物の結晶、製造方法、および薬物結晶の特徴付けはByrn, S.R. et al., Solid−State Chemistry of Drugs, 2nd Edition, SSCI, West Lafayette, Indiana (1999)で議論される。
【0166】
溶媒を用いる結晶化技法において、溶媒(複数可)の選択は、典型的には、該化合物の溶解性、結晶化法、溶媒の気化温度などの1つまたはそれ以上の因子に依存する。溶媒の組み合わせが用いられてもよく;例えば、該化合物を第1の溶媒に溶解して溶液を得、次いで、貧溶媒を加えて溶液における該化合物の溶解性を低下させ、結晶を形成させてもよい。「貧溶媒」は、該溶媒中では該化合物が低い溶解度を有するような溶媒である。結晶の製造に適した溶媒は、極性および非極性溶媒を含む。
【0167】
結晶の製造方法の1つにおいて、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基または塩を適切な溶媒に懸濁および/または撹拌してスラリーを得、それを加熱して溶解を促進する。「スラリー」は、本明細書で用いられるように、飽和した溶液であり、指定された温度において不均一な混合物を提供するようさらなる量の固形物を含んでいてもよい。この点において適切な溶媒は、例えば、本明細書で開示されるように、極性非プロトン性溶媒および極性プロトン性溶媒、ならびに2つまたはそれ以上のこれらの混合物である。
【0168】
種結晶は、結晶化を促進するために任意の結晶化混合物に加えることができる。当業者には明らかなように、種子は特定の結晶形の育成の制御手段、または結晶化産物の粒子形の分布の制御手段として用いられる。故に、例えば、Mullin, J.W. et al., 「Programmed cooling of batch crystallizers,」 Chemical Engineering Science, 26:369−377 (1971)に記載されるように、必要な種子の量の算出は、利用可能な種子のサイズおよび目的の産物の平均粒子径に依存する。一般的に、小サイズの種子はバッチにおける結晶の育成の効果的な制御に必要とされる。小サイズの種子は、大きな結晶の篩過、粉砕、もしくは微細化、また溶液の微結晶化により調製することができる。結晶の粉砕または微細化により、目的の結晶形からの結晶化度の変化(即ち、アモルファスへの変化または他の多形への変化)が引き起こされないように注意を払うべきである。
【0169】
冷却した混合物を減圧濾過し、単離した固形物を適切な溶媒(冷再結晶化溶媒など)で洗浄し、窒素パージ化で乾燥すると目的の結晶形を得ることができる。単離した固形物は、適切な分光学的技法または分析技法、例えば、SSNMR、DSC、PXRDなどで分析し、生成物の所望の結晶形の形成を確認することができる。得られた結晶形は、典型的には、単離された収量の約70重量%を超える量で産生されるが、好ましくは、最初に結晶化工程に用いたN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基または塩の重量に基づくと90重量%を超える量において得られる。生成物は、必要な場合、脱塊するためにco−millしてもよく、またはメッシュに通して篩過してもよい。
【0170】
結晶形は、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基または塩の製造方法の最終段階の反応液から直接製造してもよい。これは、例えば、化合物を結晶化することができる溶媒または溶媒の混合物を工程の最終段階に用いることにより行うことができる。あるいは、結晶形は蒸留または溶媒添加法により得ることもできる。この目的に適した溶媒は、本明細書で提示される任意の溶媒を含み、例えば、アルコールなどのプロトン性極性溶媒、およびケトンなどの非プロトン性極性溶媒である。
【0171】
一般的な指針として、反応混合物は任意の不純物、無機塩など除去するため、濾過、次いで、反応溶媒または結晶化溶媒で洗浄してもよい。得られた溶液は、過剰の溶媒または気体成分を除去するために濃縮してもよい。蒸留が用いられる場合、回収される蒸留物の最終量は、工程における因子、例えば、容器サイズ、撹拌能などに依存して異なる。一般的な指針として、反応溶液は、溶媒の置換が行われる前の体積の約1/10に蒸留されてもよい。反応物をサンプリングし、標準的な工程手法における反応の度合いおよび生成物の重量%を決定するために分析してもよい。望ましい場合、さらなる反応溶媒を加えてもよく、反応濃度を最適化するために除去してもよい。好ましくは、典型的に得られるスラリーにおいて、最終濃度は約50重量%に調整される。
【0172】
反応混合物を蒸留することなく溶媒を直接反応容器に加えることが好ましいことがある。この目的に好ましい溶媒は、溶媒交換について前述したように、最終的に結晶格子に加わるものである。最終濃度は目的の純度、収率などに依存するが、溶液中の遊離塩基の最終濃度は約4%から約7%である。反応混合物は、溶媒添加後、撹拌してもよく、同時に加熱してもよい。例えば、反応混合物を約70℃で加熱しながら約1時間撹拌してもよい。反応物は、好ましくは、濾過され、反応溶媒、添加した溶媒、またはそれらの混合物で洗浄される。結晶化を開始するため、種結晶をいずれの結晶化溶液に加えてもよい。
【0173】
本明細書中に記載される様々な形態は、当業者に周知の様々な分析技法を用いて互いに区別することができる。かかる技法は、例えば、限定されないが、粉末X船回折(PXRD)、示差走査熱量測定(DSC)および/または熱重量測定(TGA)である。あるいは、形態は、固定した分析温度における所定の結晶形の単結晶の単位格子測定に基づく単結晶X線回折を用いて特徴付けおよび区別することができる。結晶格子の詳細な記載は、Stout et al., Chapter 3, X−Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)で提供される。特に、結晶格子内の空間的相関における原子の独特の配置は、分率原子座標により特徴付けすることができる。結晶構造の別の特徴付けの方法は、実験で得た、または観測した回折プロファイルを純粋な粉末物質を表すシミュレーションプロファイルと比較し(共に同一分析温度で行う)、対象の形態の測定値を一連の2θ値として特徴付ける粉末X線回折分析である。
【0174】
形態を特徴付ける別の方法、例えば、固体核磁気共鳴(SSNMR)、示差走査熱量分析(DSC)、サーモグラフィー、および結晶形またはアモルファスの形状の肉眼的検査が用いられてもよい。これらのパラメーターも組み合わせて対象の特徴付けに用いられる。
【0175】
X線回折パターンが、用いられる測定条件に依存した測定誤差と共に得られうることは当業者には明らかであろう。特に、X線回折パターンは用いられる測定条件および結晶の形状または形態に依存して変動し得ることが一般的に知られている。さらに、相対強度は実験条件に依存して異なり、故に、正確な強度が考慮されるべきでないことも明らかである。加えて、一般的なX線回折パターンにおける回折角の測定誤差は、典型的には約0.2度2θ値またはそれ未満、好ましくは約0.1度2θ値(以下で議論されるように)であり、かかる度合いの測定誤差は上記の回折角にはつきものであると考慮されるべきである。それ故、本発明の結晶形が、本明細書で開示される図に示されるX線回折パターンと完全に同一であるX線回折パターンを示す結晶形に限定されないことは自明である。本明細書に付属する図で開示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す全ての結晶形が本発明の範囲に包含される。X線回折パターンが実質的に同一であることを確認する能力は当業者の範囲に含まれる。
【0176】
合成
スキーム1:ヒドラゾンI−ddの製造
【化16】

セミカルバジド塩酸塩といった式I−ffのカルバジドは、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールおよびメタノールといった溶媒、好ましくはエタノール中、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミンおよびN−N−ジイソプロピル−N−エチルアミンといった塩基、好ましくは酢酸ナトリウムの存在下、20−60℃、好ましくは25−55℃の範囲の温度において、ピバロイルアセトニトリルなどの式I−eeの化合物と縮合し、式I−ddのヒドラゾン化合物(ここで、R21は=Oであり;R22は−NH−NHであり;R23はシアノアルキルであるか;R22およびR23は一緒になって5から8員の環を形成してもよく、ここで、該環は、アミノ、アルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択される1つまたはそれ以上の置換基で適宜置換されていてもよく、N、S、またはOからなる群より選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を適宜含んでいてもよい)が得られる。
【0177】
スキーム2:式I−ccのヒドラゾン化合物の製造
【化17】

【化18】

といった式I−ddのヒドラゾン化合物は、例えば、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、およびオルトギ酸トリプロピルなどのオルトギ酸、好ましくはオルトギ酸トリメチルと、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸およびメタンスルホン酸などの酸、好ましくは酢酸の存在下、40−90℃といった高温、好ましくは40−75℃において反応し、式I−ccのヒドラゾン化合物(ここで、R21=Oであり、R22およびR23は上と同義である)が得られる。
【0178】
スキーム3:化合物I−ccの変換
【化19】

式I−ccのヒドラゾン化合物は、該式I−ccヒドラゾン化合物(例えば、7−tert−ブチル−3H−ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−オン)を、アシル化試薬、求核試薬(ジメチル 4−アミノピリジン(DMAP)、および/または3級アミン塩基)と、溶媒(例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、および無溶媒のオキシ塩化リン)中で反応させ、次いで、(i)第2の3級アミン塩基の存在下におけるアルコールまたは(ii)アルコキシドで捕獲して式I−bbの化合物(ここで、LGは−OR16であり、ここで、R16はC1−6アルキル、フェニル、5から7員のN、SまたはOから選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を有するヘテロアリール、または3から7員のシクロアルキルであり、それらの全ては、ハロゲン、CFまたはC1−6アルキルから選択される1から3個の基で適宜置換されていてもよい)を得ることにより、式I−bbの化合物に変換される。用いられ得るアシル化試薬の例は、オキシ塩化リン(POCl)、オキサリルクロリド、チオニルクロリドおよびホスゲンである。好ましいアシル化試薬はPOClである。トリエチルアミン、N−N−ジイソプロピル−N−エチルアミン(DIEA)、トリ−N−プロピルアミン、N−メチルモルホリンおよび1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が変換において用いられ得る3級アミン塩基の例である。好ましい3級アミン塩基はDIEAである。一般的に、反応に用いられる求核試薬の量は、2.0から4.0当量、好ましくは、3.0当量である。用いられ得るアルコールまたはアルコキシドの例は、フェノール、ペンタフルオロフェノール、メタノール、エタノール、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムフェノレートであり、フェノールが好ましいアルコールである。一般的に、反応および捕獲は周囲温度から70℃の範囲の温度において行うことができる。
【0179】
スキーム4:式(I)の化合物、またはその塩の製造
【化20】

例えば、
【化21】

などの式I−bbの化合物は、WO 2008/014381 A1の記載と同様にして製造される式I−aaの化合物とカップリングし、対応する式(I)の化合物(例えば、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド)、またはその塩が得られる(ここで、Rは、独立して、水素、またはカルボベンジルオキシ(Cbz)基、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基、ベンジル(Bn)基、およびp−メトキシベンジル(PMB)基から選択されるアミン保護基であり、好ましくは水素であり;RおよびRは、独立して、水素またはC1−6アルキルであり;R21は=Oであり;HETは、少なくとも1つの窒素原子、好ましくは総数2から4個のヘテロ原子、特に4個の窒素原子を有し、適宜置換されていてもよい3から14員のヘテロ環またはヘテロアリール二環式環であり;LGは−OR16であり、ここで、R16はC1−6アルキル、フェニル、5から7員のN、S、またはOから選択される1つまたはそれ以上の原子を有するヘテロアリール、または3から7員のシクロアルキルであり、それらの全てはハロゲン、CFまたはC1−6アルキルから選択される1から3個の基で適宜置換されていてもよい)。カップリングは当該分野で周知のカップリング方法により行われてもよく、あるいは、酸性ワークアップ、次いで、塩基を添加することにより行われてもよい。酸性ワークアップに用いられ得る酸の例は、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、および塩酸である。添加することができる塩基の例は、KHPO、NaHPO、NaHCOおよびKHCOである。
【0180】
特に、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドは以下のスキームにより製造することができる:
【化22】

【0181】
本発明の工程において、出発物質は市販のものでもよく、あるいは、当業者により製造されたものでもよい。溶媒、温度、圧、所望の基を有する出発物質、およびその他の反応条件は、当業者により適切なものとして容易に選択することができるものである。本発明の工程は、商業生産施設などにおいて、より大量の式(I)の化合物を製造するためにスケールアップすることができる。
【実施例】
【0182】
以下の実施例は発明の化合物および出発物質を例示するものであり、請求項の範囲を限定するものではない。
【0183】
必要に応じて、反応は乾燥窒素(またはアルゴン)雰囲気下において行われた。無水反応では、DRISOLV(登録商標)溶媒(EMから購入)が用いられた。他の反応では、試薬特級またはHPLC用の溶媒が用いられた。特に断らない限り、全ての市販の試薬は受け取った状態のまま使用された。
【0184】
LC/MS測定はShimadzu HPLC/Waters ZQ四重極質量分析計ハイブリッドシステムを用いて行われた。対象のピークのデータは、ポジティブモードのエレクトロスプレーイオン化を用いて報告される。NMR(核磁気共鳴)スペクトルは、通常、指定された溶媒におけるBrukerまたはJEOL 400MHzおよび600MHz装置から得られた。全ての化学シフトは、溶媒共鳴を有する内部標準としてのテトラメチルシランからのppmで報告する。1H NMRスペクトルデータは、通常、以下のように報告される:化学シフト、多重度(s=一重線、br s=ブロードな一重線、d=二重線、dd=ダブルダブレット、t=三重線、q=四重線、sep=七重線、m=多重線、app=見かけの)、カップリング定数(Hz)、および積分値。
【0185】
本明細書で用いられる標準的な略語は当業者により容易に認識されるであろう。容易に参照できるように、略語は、例えば、限定を必要としないが:Hg=水銀;sat.=飽和、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、AP=面積率、KF=カール−フィッシャー、RT=室温(特に断らない限り、RTは約22℃の温度である)、mmol=ミリモル、HRMS=高解像度質量分析、℃=摂氏、kg=キログラム、g=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、mL(またはml)=ミリリットル、hまたはhr=時間、M=モル濃度、N=規定、min=分、MHz=メガヘルツ、v/v=体積/体積比、%w/w=重量/重量パーセント、wt%=重量パーセント、nm=ナノメートル、LOD=乾燥減量である。
【0186】
「α」、「β」、「R」および「S」は当業者に周知の立体化学記号である。
【0187】
実施例1
N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド
【化23】

実施例1、ステップ1:3L丸底フラスコにセミカルバジド 塩酸塩(100.0g、0.89mol)、ピバロイルアセトニトリル(112.2g、0.89mol)およびエタノール(1L)を22−25℃で加えた。添加完了時、反応混合物を12−15℃に冷却し、無水酢酸ナトリウム(73.5g、0.89mol)を加えた。無水酢酸ナトリウムの添加は吸熱的であり、故に、温度は22−25℃に上昇した。反応混合物を22−25℃に維持し、60−90分間撹拌した。この後、反応混合物をHPLCで分析し、ヒドラゾン中間体の形成の完了が示された。
【0188】
実施例1、ステップ2:次いで、反応混合物を68−72℃に加熱し、オルトギ酸トリメチル(475.7g、4.48mol)を5−10分の間に加えた。反応混合物を40−45℃に冷却し、酢酸(53.8g、0.89mol)を15−20分の間に加えた。添加完了時、温度を70±2℃に20−25分の間に上昇させた。上記の温度になると、反応混合物を18−20時間撹拌した。この終了時に、反応混合物をHPLCで分析し、ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン形成が完了したことが示された。
【0189】
実施例1、ステップ3:実施例1、ステップ2のピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジンを50−55℃、減圧下(〜5−10mmHg)で濃縮し、残渣を得た。テトラヒドロフラン(THF、2L)およびアセトン(2L)を残渣に加え、得られた混合物を50−55℃で90分間撹拌した。この後、反応混合物をブフナー漏斗に通して濾過し、生じた塩化ナトリウム(NaCl)および酢酸ナトリウム(NaOAc)の沈殿を除去した。得られた濾液を50−55℃、減圧下(〜400−450mmHg)で濃縮乾燥し、残渣を得た。その残渣を2−メチルオルトホルメート(2−メチルTHF、450mL)にとり、得られた混合物を22−25℃で2時間撹拌した。この後、反応混合物を濾過し、2−メチルTHF(100mL)、次いでtert−ブチルメチルエーテル(MTBE、200mL)を噴霧して洗浄した。得られた生成物を45−50℃、減圧下(〜400−450mmHg)で乾燥し、7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4(3H)−オン(107.0g、62.1% w/w、HPLC純度:99.2AP(220 nm))を得た。ステップ1から3をより大きなスケールで繰り返し、キログラム量の7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4(3H)−オンを得た。
【0190】
実施例1、工程4:ガラスライニング反応容器に7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4(3H)−オン(1.0kg、5.2mol)、ジメチル 4−アミノピリジン(1.27kg、10.4mol)、アセトニトリル(10L)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.672kg、5.2mol)を加えた。得られたスラリーを周囲温度、窒素雰囲気下で透明な溶液が得られるまで15分以上撹拌した。透明な溶液をゆっくりと第2のガラスライニング反応容器(アセトニトリル(6.0L)およびオキシ塩化リン(POCl、0.822kg、5.3mol)を含む)に加えた。添加完了時、得られた混合物を35℃以下で2時間撹拌した。この後、反応物をHPLCで分析し、反応が完了していることが示された。フェノール(0.64kg、6.8mol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.87kg)を加え、得られた反応混合物を周囲温度で1時間以上撹拌した。この後、反応混合物をHPLCで分析し、反応が完了していることが示された。2−メチル−THF(20L)、次いで、水(10L)を反応混合物に加えた。有機相および水相を分離し、水相を廃棄した。有機層をクエン酸−ブライン溶液(5 wt%、10L)で洗浄し、生じた有機相および水相を分離し、水相を再度廃棄した。上記のクエン酸−ブライン溶液による洗浄をさらに2回繰り返した。クエン酸−ブライン溶液による洗浄が完了すると、リン酸カリウム塩基溶液(KHPO、7.5wt%、10L)を加えた。有機相および水相を分離し、水層を廃棄した。上記のKHPO溶液による洗浄をpH〜8になるまでさらに1回繰り返した。
【0191】
実施例1、ステップ5:N−[2−(3−アミノ−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−5−tert−ブチルアミノ−シクロヘキシル]−アセトアミド(米国特許公報第2008/0027083 A1号の記載と同様にして製造、1.05kg)を実施例1、ステップ4の塩基性有機相に加えた。添加が完了すると、反応混合物を周囲温度で16時間撹拌した。この後、反応混合物をHPLCで分析し、反応が完了していることが示された。水(20L)、次いで酢酸(HOAc、0.406kg)を反応混合物に加え、生じた有機層と水層を分離した。水層を2−メチルTHF(10L)で抽出した。有機層を合わせ、HOAc(0.406kg)を加えた。得られた混合物を水(10L)で洗浄し、生じた有機層と水層を分離した。この水層を再度2−メチル−THF(10L)で抽出した。水層を再度合わせ、ジクロロメタン(DCM、15L)を加えた。水酸化ナトリウム(NaOH、10N、1.04L)を加えてpHを〜13に調製した。添加完了時、有機層および水層を再度分離し、生成物を多く含むDCM層を確保した。水層をさらなるジクロロメタン(10L)で抽出した。DCMリッチな有機層を合わせ、水(10L)で洗浄した。得られた生成物を多く含むDCM溶液を最小限の体積に減圧濃縮した。酢酸エチル(EtOAc)を加え、残存したDCMおよび水を連続して留去し、スラリー(最終体積〜5L)を得た。MTBE(15L)を加え、得られたスラリーを1時間以上撹拌した。この後、該スラリーを濾過し、湿った濾過ケークをさらなるMTBE(5L)で洗浄した。湿ったケークを55℃でLOD≦0.5 wt%まで減圧乾燥し、実施例1のアモルファスな遊離塩基(0.9kg、収率55M%、HPLC純度:99.5 AP)を得た。
1H NMR (600.13 MHz, DMSO−d6) δ 1.04 (s, 9H), 1.34 (s, 9H), 1.58 (m, 3H), 1.64 (m, 2H), 1.81 (s, 3H), 2.05 (m, 1H), 2.12 (m, 1H), 2.36 (m, 1H), 2.93 (br s, 1H), 3.48 (m, 2H), 3.84 (m, 1H), 4.26 (br s, 1H), 4.86 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 6.39 (s, 1H), 8.07 (s, 1H), 8.94 (br s, 1H); 13C NMR (125.8 MHz, DMSO−d6) δ 21.3, 23.3, 25.9, 29.3, 30.0, 32.2, 32.6, 35.5, 43.1, 46.5, 47.7, 50.7, 51.7, 52.5, 92.3, 148.7, 148.8, 152.9, 167.3, 168.5, 171.2; HRMS calcd for C25H40N8O2 (M+1) 485.3274, found 485.3343.
実施例2
トリチウム標識 N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド
【化24】

実施例3
重水素標識 N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド
【化25】

実施例4
炭素14標識 N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド
【化26】

【0192】
実施例5
N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドのN−1結晶形
N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの遊離塩基の結晶形(その塩の形態および溶媒和物を含む)を以下の記載のように製造し、特徴付けした。
【0193】
結晶形のキャラクタライズ方法
単結晶データ
データはBruker−Nonius CAD4 serial diffractometer(Bruker AXS, Inc., アメリカ合衆国53711ウィスコンシン州、イーストシェリルパークウェイマジソン5465)を用いて収集した。単位格子パラメーターは、25高角度反射の測定用回折計のセッティングにおける最小二乗解析により得た。強度は、一定温度、θ−2θ可変走査法によるCu Kα照射(λ=1.5418オングストローム)を用いて測定し、ローレンツ因子においてのみ補正した。バックグラウンド計数は半分の走査時間における走査の極点において収集した。あるいは、単結晶データはCu Kα照射(λ=1.5418オングストローム)を用いたBruker−Nonius Kappa CCD 2000 システムにおいて収集した。測定した強度データのインデキシングおよびプロセッシングは、Collectプログラムパッケージ(Collect Data collection and processing user interface:Collect:Data collection software, R. Hooft, Nonius B.V., 1998)内のHKL2000 ソフトウェアパッケージ(Otwinowski, Z. et al. in Macromolecular Crystallography, Carter, W.C., Jr. et al., eds., Academic, NY, publ., Vol. 276, pp. 307−326 (1997))を用いて行った。あるいは、単結晶データはCu Kα照射(λ=1.5418オングストローム)を用いたBruker−AXS APEX2 CCDシステムにおいて収集した。測定した強度データのインデキシングおよびプロセッシングはAPEX2ソフトウェア/プログラムパッケージ(APEX2 Data collection and processing user interface: APEX2 User Manual, v1.27; Bruker AXS, Inc., 5465 East Cheryl Parkway Madison, WI 53711 USA)を用いて行った。
【0194】
指定される場合、結晶はデータ収集中、Oxford Cryosystem(Oxford Cryosystems Cryostream cooler:Cosier, J. et al., J. Appl. Cryst., 19:105 (1986))の冷気流で冷却した。
【0195】
構造は直接法で決定し、小さな改変を行ったSDP(SDP, Structure Determination Package, Enraf−Nonius, Bohemia NY 11716. SDPソフトウェアにおけるf’およびf’’を含む散乱因子は、International Tables for Crystallography, Kynoch Press, Birmingham, England, Vol. IV, 表2.2Aおよび2.3.1 (1974)からとった)ソフトウェアパッケージ、または結晶解析パッケージMAXUS(maXus solution and refinement software suite:Mackay, S. et al., maXus:回折データまたはSHELXTL4からの結晶構造の決定およびリファイン用のコンピュータープログラム)を用いて観測された反射に基づいてリファインした。由来する原子パラメーター(座標および温度因子)はフルマトリックス最少二乗法によりリファインした。リファインにおいて最小化した関数はΣ(|F|−|F|)である。RはΣ||F|−|F||/Σ|F|として定義され、R=[Σ(|F|−|F|)/Σ|F1/2であり、wは測定された強度の誤差に基づく適当な重み関数である。差の分布図はリファインの全ての段階において解析した。等方的な温度因子を有する理想的な位置に水素を導入したが、水素パラメーターは変化させなかった。
【0196】
X線粉末回折データ(PXRD)
PXRDデータはBruker C2 GADDSを用いて得た。照射はCu Kα(40KV、50mA)とした。試料検出距離は15cmとした。粉末試料を直径1mm以下の密閉したガラスキャピラリー内に置き;キャピラリーはデータ収集中回転させた。データは3≦2θ≦35°において収集し、試料の曝露時間は少なくとも2000秒であった。得られた2次元回折円弧を積算し、3から35°2θの範囲における0.02°2θのステップサイズの古典的な1次元のPXRDパターンを作成した。約200mgをPhilips powder x−ray diffraction(PXRD)サンプルホルダーにパックした。試料をPhilips MPD unit(45KV、40mA、CuKα)に移した。データを室温において、2から32°2−θの範囲(連続走査モード、走査速度0.03°/秒、自動発散および散乱防止スリット、受光スリット:0.2mm、サンプルスピナー:ON)で収集した。
【0197】
示差走査熱量測定(DSC)
DSC実験はTA INSTRUMENTS(登録商標)モデルQ1000または2920を用いて行った。試料(約2−6mg)をアルミニウムパン中で計量し、100分の1ミリグラムまで正確に記録し、DSCに移した。装置に窒素ガスを50mL/分でパージした。データは室温から300℃まで、10℃/分の加熱速度において収集した。プロットは下向きの吸熱ピークを有した。
【0198】
熱重量測定(TGA)
TGA実験はTA INSTRUMENTS(登録商標)モデルQ500または2950を用いて行った。試料(約10−30mg)を前もって重量を測定したプラチナのパンに入れた。試料の重量を正確に測定し、装置により1000分の1ミリグラムまで記録した。炉に窒素ガスを100mL/分でパージした。データを室温から300℃まで、10℃/分の加熱速度において収集した。
【0199】
結晶形の調製および分析
試料の単位格子データおよび他の性質を表1に示す。単位格子パラメーターは単結晶X線結晶解析から得た。単位格子の詳細はStout et al., X−Ray Structure Determination: a Practical Guide, Macmillan (1968)の第3章に見られる。
【0200】
図1は実施例5のXRPDパターンを表す。図2および3はそれぞれ、実施例5のDSCおよびTGA分析を開示する。
【0201】
結晶形の調製、XRD、DSCおよびTGAによる特徴付け
実施例5、N−1型、遊離塩基
N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド、N−1型は、酢酸エチルおよびMTBEから結晶化された。N−1型はN−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの無溶媒(水または溶媒分子を含まない)形である。N−1型は、単結晶構造データから作成されたシュミレーションパターンにマッチするXRDパターンで特徴付けられる。N−1型は、通常約205℃で出現する融解/分解の吸熱を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。N−1型は、最高約210℃における重量減少を有するTGA温度曲線で特徴付けられる。
【表1】

【0202】
表1で用いられた変数は以下で定義される:
T=結晶解析データにおける摂氏温度(RTは室温であり、約+22℃である)
V=単位格子体積
Z’=非対称単位あたりの薬剤分子数
Vm=V(単位格子)/(Z 薬剤分子/格子)
sg=空間群
dcalc=算出された結晶密度
【0203】
薬理学的特性比較
実施例1とWO2005/021500A1、WO2008/014381A1およびWO2008/014360A1に記載される化合物の薬理学的特性を比較するアッセイおよびデータを以下に示す。
【0204】
ヒト末梢血単核細胞における結合
Yoshimura et al., J. Immunol., 145:292 (1990)も参照すること。ヒトCCR−2結合アッセイは、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)において125I−ヒトMCP−1をトレーサーリガンドとして用いて確立された。hPBMCはヒトLeukoPak(Biological Specialty Inc.)からフィコール・ハイパック(Mediatech CELLGRO(登録商標))を用いる標準的なプロトコルにより単離された。単離されたhPBMCを洗浄し、1x10/mlに結合バッファー(RPMI−1640、0.1%BSA、20mM Hepes、pH 7.4)で希釈した。125I−MCP−1(NEN/Perkin Elmer)を結合バッファーで0.45nMに希釈した。化合物を結合アッセイに用いられる最終濃度の3倍の濃度に結合バッファーで希釈した。結合アッセイは96ウェルフィルタープレート(Millipore)を用いて行った。125I−MCP−1の総結合は以下のようにして評価した:総体積150μlの各反応物に5x10個の細胞、0.15nM 125I−MCP−1、および化合物(最終濃度が0から100nMの範囲になるよう)を加えた。プレートを室温で30分間インキュベートし、次いで、RPMI−1640、0.1% BSA、0.4M NaCl、20mM Hepes、pH7.4で、Vacuum Manifold Filtration(Millipore)を用いて洗浄した。洗浄後、プレートを室温で60分間風乾した。これに次いで、25μlのMicroscint 20を各ウェルに加えた。プレートを密閉し、Triluxで1分間測定した。非特異的結合は300nMの非標識MCP−1(PeproTech Inc.)の存在下で決定した。特異的な125I−MCP−1は総結合と非特異的結合の差として算出した。全ての条件はデュプリケートで試験した。IC50は、特異的結合を50%減少させることに必要な競合化合物の濃度として定義した。
【0205】
T細胞CCR−5結合アッセイに用いられた方法は、ヒト末梢T細胞をCCR−5(下記を参照)の供給源として用い、125I−MIP−1β(Amersham)をトレーサーとして用いた点を除き、hPBMC CCR−2結合アッセイに用いたものと同様である。
【0206】
末梢T細胞の単離
最近の報告により、T細胞におけるCCR−5発現は個体差がかなり大きいことが示された(Desmetz, C. et al., 「The strength of the chemotactic response to a CCR−5 binding chemokine is determined by the level of cell surface CCR−5 density」, Immunology, 119(4):551−561 (2006))。故に、T細胞においてCCR−5の発現量が高いかについて、血液ドナーを前もってスクリーニングした。まず、フィコール・ハイパックを用いた標準的なプロトコルによりhPBMCをヒト全血から単離した。次いで、抗CCR−5抗体、および抗CD4抗体または抗CD8抗体による染色後、フローサイトメトリー分析をT細胞におけるCCR−5発現の測定に用いた。>5%の末梢T細胞(CD4およびCD8)がCCR−5を発現しているこれらの血液ドナーから、再度PBMC単離用に、次いで、ヒツジ赤血球細胞(RBC)に結合するT細胞固有の能力に依存する一般的なEロゼット形成法を用いたT細胞単離用に、血液の提供を求めることとした。
【0207】
CCR−2ケモタキシス
ヒトCCR−2ケモタキシスアッセイはヒト単核球細胞株、THP−1を用いて行われた。THP−1細胞を、まず、蛍光色素Calcein−AM/フェノールレッド不含、BSA不含RPMI−1640(pH7.4)で、37℃で30分間、15分毎に緩やかに混合して標識した。標識細胞を、次いで、ケモタキシスバッファー(フェノールレッド不含RPMI−1640、0.1% BSA、pH7.4)で洗浄し、1x10/mlに再懸濁した。試験化合物を、最終アッセイ濃度が0.01nMから1μMの範囲になるよう、ケモタキシスバッファーで希釈した。リガンドMCP−1(PeproTech Inc.)をケモタキシスバッファーで20nMに希釈した。アッセイの実行では、等量の試験化合物希釈液を等量の標識THP−1細胞と混合し(混合物1)、等量の試験化合物希釈液を等量の希釈したMCP−1リガンドと混合した(混合物2)。両方の混合物を別々に37℃で10分間インキュベートし、次いで、軽く混合した。次いで、MCP−1誘発性ケモタキシスを、ケモタキシスプレート(Becton Dickinson)において、50μlの混合物1を上部チャンバーに、225μlの混合物2を底部チャンバーに入れることにより測定した。プレートに蓋をかぶせ、37℃で30分間インキュベートした。30分後、プレートをCYTOFLUOR(登録商標)で測定した。全ての条件はデュプリケートで試験した。シグナル−ノイズ比を決定するため、50μlの標識THP−1細胞単独(5x10/ウェル)を上部チャンバーに、225μlのリガンドMCP−1単独を底部チャンバーに入れた(最終濃度10nM)。段階濃度の試験化合物による阻害を、化合物不含MCP−1コントロールに対するパーセントとして算出した。IC50を、細胞ケモタキシスの50%阻害の達成に必要な試験化合物の濃度として定義する。
【0208】
CCR−5ケモタキシス
単離した末梢T細胞をCCR−5発現細胞として、MIP−1β(50nM、PeproTech Inc.)をリガンドとして用いた点を除き、前記と同様の方法を採用した。
【0209】
hERGフラックス
hERGチャネルを安定発現するHEK293細胞を、10% Sigmaウシ胎児血清、非必須アミノ酸、2mM L−グルタミンおよび500μg/ml G418を添加したダルベッコ改変イーグル培地中において、インキュベーター(37℃、5% CO)で培養した。細胞解離バッファーを細胞のフラスコからの抽出に用い、それを、次いで、384ウェルのCORNING(登録商標)ポリ−D−リジンコート黒色/透明プレートに2x10細胞/ウェル(20μl)になるよう10%血清培地を用いて入れ、細胞のコンフルーエントな単層が得られるまで37℃で15−24時間、5% COインキュベーター内でインキュベートした。
【0210】
BTC−AM色素(Molecular Probes, Eugene, OR)の2mMストックを100% DMSOで調製し、アッセイ日に10%(w/v) pluronic acid/DMSOに1:1で加えた。次いで、色素をhERG外部EPバッファー(140mM NaCl、4.0mM KCl、1.8mM CaCl、1.0mM MgCl、10mM HEPES、pH7.3および10mMグルコース;全てのバッファー成分はSigma Chemicalから購入した)で希釈した。このBTC色素混合物(30μl)を細胞に加え、最終ロード濃度2.5μMとした。細胞を21℃で45分間インキュベートした。
【0211】
試験化合物を10mM/DMSO(60μl)に希釈した。次いで、化合物を、384ウェルのカラム1−10および11−20に、1:2の比においてDMSOで段階希釈した。DMSO段階希釈プレートから2.5μlをスタンプすることにより、Velocity 11 BIOCEL(登録商標)上で、アッセイ用プレートを作成した。48μlのEPバッファーを加えることにより水性プレートを作成し、アッセイをFLIPR(登録商標)で測定する30−45分前に希釈した。色素のロード後、水性の希釈化合物を3つの複製プレートの細胞に加え(10μl)、80μMから0.156nMの範囲の10点の濃度を得た。アッセイにおける最終DMSO濃度は1%とした。アッセイ可能な水性プレートはCyBio liquid handlerで作成、希釈した。
【0212】
色素をロードした細胞を、488nm系のアルゴンレーザーで色素を励起するFLIPR(登録商標)384(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で測定した。発光は540±30nmのバンドパスフィルタでフィルターした。66mM KSOおよび1.3mM TlSO(Sigma/Aldrich)を含んだ20μl/ウェルのEPバッファーを加えてhERGチャネルを刺激して開口させた。各プレートにつき、データを12秒間に亘り、毎秒収集し、この時、Tl含有刺激バッファーを添加した。データの収集は48秒の間、毎秒進め、さらに2分間、3秒毎に継続した。
【0213】
アッセイのダイナミックレンジはブランクおよび総ウェルから求めた。「総カウント」ウェル(カラム21および22)は該プレートにおける最大のhERG活性化(試験化合物なし)と定義し、「ブランク」ウェル(カラム23および24)は100%hERG阻害と定義した。ブランクウェルは400nMのスタンダードhERG阻害剤ドフェチリド(Ficker et al., 1998)またはE−4031のいずれかを含む。各サンプルウェルにおける生データポイントは、まず、細胞/シグナル変動、ネガティブコントロール(「ブランク」)バックグラウンドで補正し、オンラインFLIPR(登録商標)ソフトウェアを用い、ポジティブコントロール(「総カウント」)でノーマライズした。hERGTlフラックスデータに関する試験化合物の濃度応答曲線をExcel Fit(ID Business Solutions Limited, Surrey, UK)でsingle−siteロジスティック方程式:

(ここで、A=最大阻害である)にフィットした。与えられた条件におけるTlフラックスの蛍光の変化の最大振幅をフィッティングすることによりデータを分析した。化合物の作用強度(IC50値)は3つの複製ウェルの平均値から求めた。
【0214】
ナトリウムチャネル、サイト2結合アッセイ
Catterall, W.A. et al. J. Biol. Chem., 256:8922 (1981)も参照すること。スタンダード結合バッファーは50mM HEPES、50mM Tris−HCl、pH7.4、130mM塩化コリン、5.4mM KCl、0.8mM MgCl、5.5mM グルコース、40μg/mL LqTを含有する。結合反応は、シナプトソーム(Wistarラット脳から調製)に5nM [H]−バトラコトキシン/スタンダード結合バッファー混合物および所望の濃度の試験化合物を加えることにより開始された。次いで、サンプルを混合し、37℃で60分間インキュベートした。反応は氷冷洗浄バッファー(50mM HEPES、50mM Tris−HCl、pH7.4、1.8mM CaCl、0.8mM MgClおよび1mg/mLウシ血清アルブミンを含む)を加えることにより停止した。該シナプトソームを直ちにガラス繊維フィルター上に収集し、洗浄バッファーで3回洗浄した。フィルター上に残存した[H]−バトラコトキシンの放射活性を液体シンチレーションスペクトロメーターでカウントした。
【0215】
パラレル人工膜透過アッセイ(Parallel Artificial Membrane Permeability Assay、PAMPA)
パラレル人工膜透過アッセイ(PAMPA)は、胃腸管(GIT)脂質と呼ばれる特別に配合したレシチン主体の脂質の組み合わせから成る。GIT脂質は、Caco−2アッセイに用いられるものと同様のサンドイッチ型のプレートアセンブリーにおける膜の形成に用いられる。GIT脂質はインビボの膜組成に酷似しており、ヒトにおいて受動吸収されることが知られているスタンダード化合物により測定されるインビボの膜の性能をよく再現する。PAMPAは発見した化合物の透過性のスクリーニングのためのインビトロモデルとして広く用いられている。化合物のPAMPA膜透過速度は透過係数(Pc)の決定に用いられるが、透過係数はインビボにおける化合物の受動透過性に関連するものである。
【0216】
特定の化合物の透過係数(Pc)を、管腔および基底膜側のpHが7.4であるpH依存的な設定において試験した。全ての実験はトリプリケートで行われた。
【0217】
試験化合物(10mMストック/100% DMSO)をpH7.4ドナーウェルバッファー(pION カタログ# 110151)で1:100に希釈し、100μMアッセイ溶液/1%DMSOを得た。ドナーウェルバッファーで希釈した化合物をWhatman UNIFILTER(登録商標)プレートに移し、濾過し、200μlをアッセイプレート(pION カタログ#110163)に分注した。4μlの脂質溶液(pION カタログ# 110169)をフィルタープレート(VWR カタログ# 13503)上にピペッティングすることによりPAMPA膜を形成した。次いで、該膜を200μlのpH7.4のアクセプターウェルバッファー(pION カタログ# 110139)で覆った。PAMPAアッセイプレート(ドナー側およびアクセプター側)を合わせ、室温で4時間インキュベートした。次いで、プレートを解体し、スペクトロメータープレート(VWR カタログ# 655801)を満たした(150μl/ウェル)。ドナー、アクセプター、リファレンス、およびブランクプレートをSPECTRAMAX(登録商標)UVプレートリーダーで測定した。データは、スペクトルを解析し、Pc値を算出するpION ソフトウェアでキャプチャーした。
【0218】
hERGパッチクランプ
ホールセルパッチクランプを用いて、クローニングしたhERGカリウムチャネルαサブユニットを安定発現するHEK293細胞におけるhERG電流を直接測定した。化合物は、pH7.4の水性バッファー中において室温で試験した。反復試験パルス(0.05Hz)を−80mVから+20mVの保持電位で2秒間適用し、試験パルス後、電圧を−65mVにステップすることにより末尾電流を誘導した。化合物の効果はピーク末尾電流の阻害を測定することにより算出した。
【0219】
ナトリウムチャネルパッチクランプ
ホールセルパッチクランプを用いて、ヒト心臓ナトリウムチャネルSCN5Aを発現するHEK293細胞における内向きナトリウム電流を直接測定した。化合物はタンパク質フリーな水性バッファー中で試験した。定常状態の阻害を決定するため、以下のプロトコルを用いてナトリウム電流を5秒毎に誘発した:細胞を電位−90mVに維持し、60ミリ秒間−20mVにステップする。試験パルスから−20mVの期間におけるピーク電流の阻害を測定することにより効果を算出した。阻害の速度依存性は1Hzおよび4Hzの刺激頻度により評価した。
【0220】
ラット単回投与時の薬物動態
オスSprague−Dawleyラット(250−300g)を薬物動態の研究に用いた。PO投与前にラットを一晩絶食させ、投与4時間後に飼料を摂食させた。血液サンプル(〜0.3mL)を頸静脈からKEDTA含有チューブに採取し、4℃(1500−2000xg)で遠心し、血漿を得た。経口バイオアベイラビリティの研究では、2群の動物(N=2−3/群)に試験化合物を頸静脈からの静脈内(IV)注入(10分間)により投与、または強制経口投与した。投与後、0.17(IVのみ)、0.25、0.5、0.75、1、2、4、6、8、および24時間後の一連の血液サンプルを得た。4℃(1500−2000xg)で遠心することにより得た血漿サンプルは、LC/MS/MSによる解析まで−20℃で保存した。
【0221】
サル単回投与時の薬物動態
様々な化合物の薬物動態を交配したオスカニクイザルにおいて調べた。PO投与前にサルを一晩絶食させ、投与4時間後に飼料を摂食させた。1−3匹の動物(3から5kg)の群に化合物を大腿静脈からのIV注入(10分間)、および強制経口投与により投与し、処理の間に1週間のウォッシュアウトを設けた。投与後、0.17(IVのみ)、0.25、0.5、0.75、1、2、4、6、8、および24時間後の一連の血液サンプル(〜0.3mL)を大腿動脈から採取し、4℃(1500−2000xg)で遠心して血漿を得た。サンプルはLC/MS/MSによる解析まで−20℃で保存した。
【0222】
薬物動態アッセイのデータ解析
薬物動態パラメーターは、血漿濃度vs時間のデータのノンコンパートメント解析(Kinetica software, Version 4.2, InnaPhase Corporation, Philadelphia, PA)により得た。ピーク濃度(Cmax)およびCmaxに要する時間は実験における観測から直接記録した。0から最後のサンプリング時間までの曲線下面積(AUC(0−T))は線形線および対数の台形加算を用いて算出した。総血漿クリアランス(CLTp)、定常状態分布容積(Vss)、見かけの半減期(T1/2)および平均滞留時間(MRT)はIV投与後に推定した。T1/2の推定は定量可能な濃度の3つのタイムポイントの最短のものを用いて行った。絶対経口バイオアベイラビリティ(F)は、経口およびIV投与後の投与量規格化AUC(dose−normalized AUC)値の比として推定した。
【0223】
CCR−2カルシウム動員
ヒトCCR−2誘発細胞内カルシウムフラックスアッセイは、ヒト単核球細胞細胞株THP−1を用いて確立した。まず、THP−1細胞をグルコースおよびHEPES緩衝PBS(pH7.4、4μM fluo−3(Molecular Probes)および1.25mM プロベネシドを含む)で再懸濁し、37℃でインキュベートすることにより、THP−1細胞にフルオロフォアをロードした。1回洗浄して過剰のfluo−3を除去した後、細胞を洗浄バッファー(フェノールレッド不含RPMIを含む)および1.25mM プロベネシドで再懸濁し、96ウェルプレートに2x10/ウェルで播種した。アルゴン−イオンレーザーで細胞を励起するFLIPR(登録商標)−1(Molecular Devices)内に該プレートを置き、試験化合物およびヒトMCP−1を蛍光の変化をモニターしながらロボット制御により加えた。0から100nMの濃度範囲の試験化合物希釈液またはバッファー単独を各ウェルに加え、遠心し、10分間インキュベートした。次いで、組み換えヒトMCP−1(PeproTech Inc.)を最終濃度10nMで加えた。蛍光シフトをモニターし、ベースからピークの可動域をコンピューターで自動的に算出した。全ての条件はデュプリケートで試験した。段階的な濃度の化合物が達成した阻害を化合物不含MCP−1コントロールに対するパーセントとして算出した。
【0224】
CCR−5カルシウム動員
MIP−1β(50nM)がリガンドであり、細胞株が内因性CCR−5をrandom activation of gene expression (RAGE) technologyによりアップレギュレートしたHT1080/CCR−5である点を除き、前述のCCR−2カルシウム動員と類似の方法が採用された。
【0225】
CCR−2 GTP−γS交換反応
35S]−GTPγSのMCP−1依存的なCCR−2への結合を、内因性CCR−2がRAGEテクノロジー(Athersys)でアップレギュレートされたHT1080ヒト細胞株から調製した膜を用いて測定した。各反応液(200μL)は20mM Na−HEPES、10mM MgCl、50mM NaCl、0.1% BSA(Sigma)、1% DMSO、および10μM GDP(pH7.4)を含んだ。MCP−1依存的な[35S]−GTPγSの結合のEC50は、MCP−1濃度を1pMから1μMまで変化させることにより決定した。反応物を室温で90分間インキュベートし、[35S]−GTPγS/Gαi複合体をMillipore MAFC 96ウェルフィルタープレートで回収した。試験化合物による[35S]−GTPγSのMCP−1依存的なCCR−2含有膜への結合は、1nM MCP−1において同一条件下で決定した。データはGraphpad Prism 4のリガンド結合ソフトウェアで解析した。
【0226】
CCR−5 GTP−γS交換反応
MIP−1α/LD78βがリガンドであり、細胞株がCCR−5/HT1080Aである点を除き、CCR−2 GTP−γS交換と同様の方法が用いられた。MIP−1α/LD78βではMIP−1βよりも大きなシグナル−ノイズ比が得られるため、MIP−1α/LD78βが用いられた。
【0227】
CCR−2 全血インテグリン(CD11b)アップレギュレーション
CCR−2依存的CD11b アップレギュレーションアッセイはヒト全血を用いて確立された。全血(100μl)を実施例1の濃度範囲において37℃で10分間プレインキュベートした。ヒト組み換えMCP−1(100nMを10μl)を各反応物に最終濃度10nMで加えた(非刺激コントロールは除く)。反応物を37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、1mlの氷冷FACS(10%FBS含有PBS)バッファーを加え、サンプルを1500rpmで5分間遠心し、50μlのFACSバッファーで再懸濁した。次いで、細胞を20μlの抗CD14−FITC/抗CD11b−PE溶液で20分間、氷上、暗所でインキュベートし、1mlの1xFACS溶解溶液(Becton Dickinson)を各反応物に加えた。サンプルを30分間、氷上、暗所でインキュベートした。固定および赤血球の溶解後、細胞を遠心し、200μlのFACS溶解溶液で再懸濁した。FACS Caliburフローサイトメーターを用いた染色から1時間以内にサンプルをフローサイトメトリーで分析した。データの獲得および解析はCellQuestProソフトウェアを用いて行った。高CD14/CD11b単球群の分析には連続的なゲーティング法が用いられた。解析用に、CD11bは平均蛍光強度(MFI)として測定された。
【0228】
CCR−5 全血CD11bアップレギュレーション
MIP−1β(50nM)がリガンドとして用いられた点を除き、前述のCCR−2 全血CD11bアップレギュレーションと同様の方法が用いられた。
【0229】
下記のデータは比較化合物(WO2008/014381A1、WO2008/014360A1およびWO2008/014361A1参照)のデータである。比較データにより、等効力のデュアルCCR−2およびCCR−5受容体阻害特性および望ましい薬理特性の予想外の組み合わせが示される。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0230】
驚くべきことに、本発明の実施例1はCCR−2またはCCR−5に対して支配的に活性であるわけではなく、そのCCR−2またはCCR−5結合活性により評価されたように、等効力なデュアルアンタゴニストであり、有益な薬理学的特性を有することが見出された。例えば、WO2008/014381およびWO2008/014360の実施例1はCCR−2に対し支配的に活性である一方、本発明の実施例1CCR−2およびCCR−5に対し等効力であることを示す表5を参照されたい。
【0231】
実用性
当業者に周知のアッセイを用い、実施例の化合物がケモカイン受容体活性のモジュレーターであることが示された。本セクションでは、かかるアッセイおよびそれらを提供する引用文献を記載する。さらなるアッセイは、上の「薬理学的特性の比較」と題したセクションに記載される。MCP−1アンタゴニズムのこれらのアッセイで活性を示すことにより、実施例の化合物はケモカインおよびそれらのコグネイト受容体が関与するヒトの疾患の治療に有用であることが期待される。これらのアッセイで活性であることの定義は、特定のアッセイで評価された際に30μMまたはそれ未満のIC50を示す化合物である。
【0232】
MCP−1誘発カルシウム流入のアンタゴニズム
(Sullivan et al., Methods Mol. Biol., 114:125−133 (1999))
実施例に記載される少なくとも1つの化合物は、本明細書中に記載されるMCP−1誘発カルシウム流入アッセイにおいてアンタゴニズム活性を有する。
【0233】
カルシウム動員は、蛍光Ca2+指示色素、Fluo−3を用いて測定された。細胞を8x10細胞/mlにおいて、リン酸緩衝生理食塩水(0.1%ウシ血清アルブミン、20mM HEPESバッファー、5mM グルコース、1%ウシ胎児血清、4μM Fluo−3 AMおよび2.5mMプロベネシドを含有する)中、37℃で60分間インキュベートした。かかるカルシウムアッセイに用いられる細胞は、例えば、Weiner et al., J. Immunol. Methods, 36:89−97 (1980)の記載のようにして単離されたヒト単球、または内因性CCR−2を発現する細胞株(THP−1およびMonoMac−6など)である。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(0.1%ウシ血清アルブミン、20mM HEPES、5mM グルコースおよび2.5mMプロベネシドを含有する)で3回洗浄した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(0.5%ウシ血清アルブミン、20mM HEPESおよび2.5mM プロベネシドを含有する)で2−4x10細胞/mlの濃度に再懸濁した。細胞を96ウェルのblack−wall microplates(100μl/ウェル)に播種し、プレートを200xgで5分間遠心した。異なる濃度の化合物をウェルに加え(50μl/ウェル)、5分後、50μl/ウェルのMCP−1を最終濃度が10nMになるよう加えた。カルシウム動員は蛍光イメージングプレートリーダーで検出した。細胞の単層をアルゴンレーザー(488nM)で励起し、細胞由来の蛍光を3分間測定した(最初の90秒は毎秒、次の90秒は10秒毎)。データは任意蛍光単位として得、最大−最小の差として決定した各ウェルにおける蛍光の変化である。化合物依存的な阻害をMCP−1単独における応答と比較して算出した。
【0234】
哺乳類ケモカイン受容体は、ヒトなどの哺乳類における免疫細胞機能に干渉するための、またはそれを促進するための標的を提供する。ケモカイン受容体の機能を阻害または促進する化合物は、治療目的の免疫細胞機能のモジュレートに特に有用である。故に、本発明は数多くの炎症性、感染性、および免疫調節性の障害および疾患、例えば、喘息およびアレルギー性疾患、病原体微生物(定義によりウィルスを含む)による感染症、ならびに関節リウマチおよびアテローム動脈硬化症といった自己免疫性の病態の予防および/または治療に有用な化合物に関連する。
【0235】
例えば、1つまたはそれ以上の哺乳類のケモカイン受容体(例えば、ヒトケモカイン受容体)の機能を阻害する本発明の化合物は、炎症性または感染性の疾患を阻害(即ち、軽減または予防)するために投与されてもよい。その結果として、白血球遊出、接着、ケモタキシス、エキソサイトーシス(例えば、酵素、ヒスタミンの)または炎症性メディエーターの放出といった1つまたはそれ以上の炎症性のプロセスが阻害される。
【0236】
同様に、1つまたはそれ以上の哺乳類のケモカイン受容体(例えば、ヒトケモカイン受容体)の機能を促進する本発明の化合物は、白血球遊出、接着、ケモタキシス、エキソサイトーシス(例えば、酵素、ヒスタミンの)または炎症性メディエーターの放出といった1つまたはそれ以上の免疫または炎症性応答を刺激(誘導または増強)するために投与されてもよく、結果として炎症性プロセスの有益な刺激が引き起こされる。例えば、好酸球は寄生虫感染に立ち向かうために動員され得る。さらに、ケモカイン受容体取り込みを介した細胞における受容体発現の減少を引き起こすに十分な化合物の送達、または細胞の誘導を間違った方向に導くような様式における化合物の送達を企図する場合、前記の炎症性疾患、アレルギー性疾患および自己免疫疾患の治療は、1つまたはそれ以上の哺乳類のケモカイン受容体の機能を促進する本発明の化合物についても企図することができる。
【0237】
ヒトなどの霊長類に加え、別の様々な動物も本発明の方法により治療することができる。例えば、哺乳類、例えば、限定されないが、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、または他のウシ、ヒツジ属、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯類またはマウスも治療され得る。しかしながら、該方法は他の種、例えば、鳥類においても実践することができる。本発明の方法で治療される対象は、ケモカイン受容体活性のモジュレーションが望ましいオス、またはメスの哺乳類である。「モジュレーション」は、本明細書で用いられるように、アンタゴニズム、アゴニズム、パーシャルアンタゴニズムおよび/またはパーシャルアゴニズムを包含すると意図される。
【0238】
Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))を用いた機能アッセイ
HT1080細胞(クローン3559.1.6)を10,000細胞/ウェル(30μL)で384ウェルプレート(black/clear bottom BIOCOAT(登録商標)PDL、Beckton Dickinson)に播種し、30μl/ウェルのFluo−4 AM 蛍光色素(1mgのFluo−4 AMを440μlのDMSOに溶解し、100μlのPluronic溶液で希釈し、さらに10mLのハンクスバッファーで希釈して調製)を添加した。細胞を37℃、5%CO中で30分間インキュベートし、アッセイバッファー(20mM HEPES、1.2mM CaCl2、5mM MgCl、2.5mMプロベネシド、0.5% BSA、1xHanks)で3回洗浄し、懸濁した。試験化合物をDMSOで段階希釈し、細胞に加える(10μl/ウェル)前にアッセイバッファーで1:10に希釈した。FLIPR(登録商標)を用い、フラックスの誘導(即ち、アゴニスト活性)を評価するためにプレートを測定した(10−70秒)。次いで、細胞にさらにアゴニスト溶液(30μl/ウェル;30μlの100μM MIP−1βを100mLのアッセイバッファーに希釈して調製;このプロトコルでは最終濃度5nMのMIP−1βがアッセイに用いられた)を添加し、プレートをFLIPR(登録商標)で1分間測定した。試験化合物のアンタゴニスト活性は、0.4%DMSO/バッファーネガティブコントロールと比較して決定した。
【0239】
インビボアッセイおよび有効性
N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミド(「実施例1」とも呼ばれる)を以下に記載されるインビボアッセイで評価した。
【0240】
hCCR−2 KIマウスを用いた48時間チオグリコレート(TG)誘発性−腹膜炎モデル
方法
hCCR−2 KIマウス(C57BL/6−SVJ129)に1mlのチオグリコレート(TG)(Hardy Diagnostics)を腹腔内注射した。各実験において、1群あたり8匹のオスのマウスが用いられた。実施例1はTG注射の1時間前に経口で投与した。用いたベヒクルは0.01N HCl/水である。TG注射から48時間後、腹腔に5ml PBS/10mM EDTA/10% BSAを注入することにより腹膜灌流を行った。
【0241】
48時間TG腹膜炎実験では、実施例1は1日2回投与された(1回目の投与はTG注射の1時間前である)。総腹膜細胞数は単離した細胞についてセルカウンターで得た。サイトスピンを行い、白血球数を求めた。細胞をWright−Giemsa Stain(Sigma−Aldrich)で3分間染色し、脱イオン水で5分間洗浄した。サンプル当たり総数200個の細胞を基に白血球百分率を算出した。薬剤濃度を求めるため、各実験の終了時に血液を後眼窩静脈叢からEDTA中に採取した。
【0242】
フローサイトメトリー分析では、腹腔浸出細胞(1x10個)をFACSバッファー(PBS/0.5% BSA)で1回洗浄し、FACSバッファーで再懸濁した。細胞をFc−ブロッキング抗体(BD Pharmingen)と共に氷上において15分間インキュベートし、次いで、以下の抗体(BD Pharmingen)を添加した:PE標識抗F4/80、FITC標識抗Ly6C、Alexa 647標識抗hCCR−2。氷上で45分後、細胞をBD CYTOFIX(登録商標)で、15分間氷上で固定し、FACSバッファーで2回洗浄し、200μlのFACSバッファーで再懸濁した。各サンプルにつき細胞イベント(40,000)を得、データをFloJoソフトウェア(TreeStar)で解析した。FSC/SSCゲートは全ての単球を含むよう設定(低SSC、高FSC)したが、顆粒球は解析から排除した。このゲートされた集団について、次いでLy6C(FITC)、F4/80(PE)発現を解析した。腹腔の単球/マクロファージ数はセルカウンターで得た総細胞数とフローサイトメトリーからF4/80細胞により同定した単球/マクロファージパーセントを掛け合わせることにより決定した。平均値の差の統計的重要性を対応のある両側t検定で解析し、0.05より小さいp値を有意であると設定した。
【0243】
結果
単球/マクロファージ浸潤阻害のEC50を求めるため、実施例1をhCCR−2 KIマウスTG腹膜炎モデルで評価した。マウスにチオグリコレートを投与し、実施例1を10、50、または160mg/kg BIDで経口投与した。TG処理から48時間後、腹膜灌流液をフローサイトメトリーによる細胞浸潤分析用に得た。
【0244】
単球/マクロファージ浸潤の用量依存的な阻害が観測された(図4)。10、50、および160mg/kgの投与量により、それぞれ25%、54%および63%の阻害が得られた。複数用量の4つの独立した実験では、達成された最大の阻害は〜70%であり、このアッセイによる単球/マクロファージ浸潤阻害の平均EC50は4.9nMと推定され、実施例1の125I−マウス MCP−1のヒトCCR−2発現細胞(hPBMC)への結合の阻害におけるインビトロのIC50(5.8±2.3nM)とよく相関する。
【0245】
hCCR−2 KIマウスの48時間チオグリコレート腹膜炎モデルにおける実施例1の受容体占有率のインビボでのレベルを調べるため、実施例1およびマウスMCP−1の血漿レベルを測定した。この推定で注意すべきことは、CCR−2およびその主リガンドであるMCP−1のみが考慮されるということである。競合的阻害剤の存在下におけるリガンドの受容体占有率はGaddumの式:

で定義される。
【0246】
実施例1はMCP−1のCCR−2への結合の競合的阻害剤であるため、マウスMCP−1/CCR−2受容体複合体および実施例1/CCR−2受容体複合体の量を、血漿中におけるマウスMCP−1およびタンパク非結合型実施例1の血清中の濃度から求めることができる。125I−ヒトMCP−1を用いた非標識競合リガンド結合実験で求めたマウスMCP−1のhCCR−2への結合におけるKdは、0.91+/−0.08nM(n=8)である。hCCR−2への結合における実施例1の平均Kiは2.0nMである。マウスMCP−1/CCR−2受容体複合体フラクションは前述の方程式を用いて求められる。実施例1/CCR−2複合体フラクションを求めるため、該式は:

と書き直される。最後に、遊離型CCR−2の量は:
[CCR−2]total = [CCR−2]free + [マウス MCP−1/CCR−2] + [実施例 1/CCR−2]
から決定される。
【0247】
表8に示されるように、48時間目における腹膜への単球/マクロファージの浸潤は、実施例1/CCR−2受容体複合体を反映する。
【表8】

【0248】
まとめると、これらの結果は、実施例1が〜4.9nMのEC50を有する単球/マクロファージ浸潤の強力なブロッカーであることを明確に示している。実施例1による単球/マクロファージ浸潤の最大阻害は、この化合物による98.5%のCCR−2占有率により達成することができる。特に、CCR−2欠損マウスにおいて単球/マクロファージの浸潤が同様に減弱(〜70−80%)されることが研究により示されている。
【0249】
ケモカイン受容体機能の阻害剤で治療することができるヒトまたは他の種における疾患または病状は、例えば、限定されないが:炎症性またはアレルギー性疾患および病状、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺臓炎、好酸球性蜂巣炎(例えば、ウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎)、好酸球性筋膜炎(例えば、シャルマン症候群)、遅発性過敏症、間質性肺炎(ILD)(例えば、特発性肺線維症、関節リウマチに伴うILD、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性強皮症、シェーグレン症候群、多発性筋炎または皮膚筋炎)といった呼吸器系のアレルギー性疾患;全身性アナフィラキシーまたは過敏性反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対するもの)、汚染されたトリプトファン摂取による好酸球増加−筋痛症候群、虫刺されアレルギー;関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年性糖尿病といった自己免疫疾患;糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;移植片拒絶(例えば、移植における)、例えば、移植片拒絶または移植片対宿主病;クローン病および潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞が仲介する乾癬を含む)、ならびに皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんま疹といった炎症性皮膚疾患;血管炎(例えば、壊死性血管炎、皮膚血管炎、および過敏性血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎;皮膚または臓器の白血球の浸潤を伴う癌である。望ましくない炎症応答が阻害されるべき別の疾患または病状、例えば、限定されないが、血管炎、不安定プラーク、静脈新生内膜肥厚 再潅流障害、透析グラフト新生内膜肥厚、動静脈シャント内膜肥厚、アテローム動脈硬化症、いくつかの血液系腫瘍、サイトカイン誘発毒性(例えば、敗血症性ショック、エンドトキシンショック)、多発性筋炎、皮膚筋炎も治療することができる。ケモカイン受容体機能の阻害剤で治療することができるヒトまたは他の種の感染性の疾患または病状は、例えば、限定されないが、HIVである。
【0250】
ケモカイン受容体機能の促進剤で治療することができるヒトまたは他の種の感染性の疾患または病状は、例えば、限定されないが、AIDSまたは他のウィルスに感染している免疫不全症の個体における、免疫抑制を引き起こすような放射線療法、化学療法、自己免疫疾患の治療もしくは薬物療法(例えば、副腎皮質ステロイド療法)を行っている個体における免疫抑制;先天的な受容体機能不全または他の要因による免疫抑制;および寄生虫症、例えば、限定されないが、蠕虫感染(線虫(回虫)感染症、鞭虫症、蟯虫症、回虫症、鉤虫症、糞線虫症、旋毛虫症、フィラリア症);吸虫(fluke)(住血吸虫症、肝吸虫症)、条虫(tape worm)(エキノコックス症、無鉤条虫症、嚢虫症);内臓の寄生虫、内臓幼虫移行症(visceral larva migraines)(例えば、トキソカラ)、好酸球性胃腸炎(例えば、アニサキス(anisaki sp.)、シュードテラノーバ(Phocanema sp.))、皮膚幼虫移行症(ブラジル鉤虫、イヌ鉤虫)といった感染性の疾患である。従って、本発明の化合物は様々な炎症性、感染性および免疫調節性の障害および疾患の予防および治療に有用である。
【0251】
さらに、ケモカイン受容体取り込みの誘導による細胞の受容体発現の減少を引き起こすに十分な化合物の送達、または細胞の遊走を間違った方向に導くような様式における化合物の送達を企図する場合、前記の炎症性、アレルギー性および自己免疫疾患の治療は、哺乳類のケモカイン受容体の1つまたはそれ以上の機能を促進剤についても企図することができる。
【0252】
別の一態様において、本発明はGタンパク質共役型受容体の特異的アゴニストまたはアンタゴニストと推定されるものの評価に用いられてもよい。本発明は、ケモカイン受容体活性をモジュレートする化合物のスクリーニングアッセイの準備および実行におけるかかる化合物の使用に関連する。さらに、本発明の化合物は、他の化合物のケモカイン受容体結合部位の確立または決定に、例えば、競合阻害により、またはその既知の活性と未知の活性を有する化合物を比較するアッセイにおけるリファレンスとして、有用である。新しいアッセイまたはプロトコルを開発する際、本発明の化合物をそれらの効能の評価に用いることができる。特に、かかる化合物は市販のキット、例えば、前述の疾患に係わる医薬品研究において用いるためのものにおいて提供することができる。本発明の化合物はまた、ケモカイン受容体の特異的なモジュレーターと推定されるものの評価に有用である。さらに、結合しない化合物の例として、または特異的な相互作用部位の決定を補助するこれらの受容体に対して活性な化合物の構造変異体として、ケモカイン受容体ではないと思われるGタンパク質共役型受容体の特異性の評価に利用することができる。
【0253】
本発明の化合物は、関節リウマチ、変形性関節症、敗血症性ショック、アテローム動脈硬化症、動脈瘤、発熱、心血管系の障害、出血性ショック、敗血症症候群、虚血後再灌流障害、マラリア、クローン病、炎症性腸疾患、マイコバクテリア感染症、髄膜炎、乾癬、うっ血性心不全、線維症性疾患、悪液質、移植片拒絶、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患、多発性硬化症、放射線障害、過酸素性肺胞障害、HIV、HIV認知症、インスリン非依存性糖尿病、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、水疱性類天疱瘡、蠕虫性寄生虫症、アレルギー性大腸炎、湿疹、結膜炎、移植、家族性好酸球増加症、好酸球性蜂巣炎、好酸球性肺炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、薬剤誘発性好酸球増加症、嚢胞性線維症、チャーグ・ストラウス症候群、リンパ腫、ホジキン病、結腸癌、フェルティー症候群、サルコイドーシス、ぶどう膜炎、アルツハイマー病、糸球体腎炎、および全身性エリテマトーデス、食道扁平上皮癌、神経障害性疼痛、および肥満から選択される障害の治療または予防に有用である。
【0254】
別の一態様において、該化合物は、関節リウマチ、変形性関節症、アテローム動脈硬化症、動脈瘤、発熱、心血管系の障害、クローン病、炎症性腸疾患、乾癬、うっ血性心不全、多発性硬化症、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患から選択される炎症性障害の治療または予防に有用である。
【0255】
別の一態様において、該化合物は、関節リウマチ、変形性関節症、アテローム動脈硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、および多発性硬化症から選択される炎症性障害の治療または予防に用いられる。
【0256】
別の一態様において、本明細書で開示される実施例は、様々な癌、例えば、限定されないが、以下:
癌、例えば、膀胱癌(進行性膀胱癌および転移性膀胱癌を含む)、乳癌、結腸癌(結腸直腸癌を含む)、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌ならびに肺腺癌を含む)、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、泌尿生殖器の癌、リンパ系の癌、直腸癌、喉頭癌、膵臓癌(膵外分泌癌を含む)、食道癌、胃癌、胆嚢癌、子宮頚癌、甲状腺癌および皮膚癌(有棘細胞癌を含む);
リンパ系の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリーセルリンパ腫、組織球性リンパ腫、およびバーキットリンパ腫;
骨髄細胞系列の造血器腫瘍、例えば、急性または慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、および前骨髄球性白血病;
中枢神経系および末梢神経系における腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、およびシュワン細胞腫;
間葉系由来の腫瘍、例えば、線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫;
他の腫瘍、例えば、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、および奇形腫、
の治療に有用であり得る。
【0257】
別の一実施態様において、癌(ここで、癌は乳癌、肝臓癌、前立腺癌および黒色腫から選択される)の治療方法が開示される。さらに、本明細書で開示される化合物は、卵巣癌および多発性骨髄腫の治療において有用であり得る。
【0258】
本発明は様々な非癌性増殖性疾患の治療方法を提供する。
【0259】
炎症性、感染性および免疫調節性の障害および疾患、例えば、喘息およびアレルギー性疾患、ならびに関節リウマチおよびアテローム動脈硬化症などの自己免疫性の病態、ならびに前述の病態を予防または治療するための組み合わせ療法は、本発明の化合物およびかかる実用性が知られている別の化合物の組み合わせで説明される。例えば、炎症の治療または予防において、本発明の化合物は、抗炎症薬または鎮痛薬、例えば、オピエートアゴニスト、リポキシゲナーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、インターロイキン阻害剤(インターロイキン−1阻害剤など)、腫瘍壊死因子阻害剤、NMDAアンタゴニスト、一酸化窒素阻害剤もしくは一酸化窒素合成阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、またはサイトカイン抑制性抗炎症薬(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド性鎮痛薬、スフェンタニル、スリンダク、インターフェロン アルファなど)と組み合わせて用いられてもよい。同様に、本発明の化合物は、鎮痛剤;カフェイン、H2−アンタゴニスト、シメチコン、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどのポテンシエーター;フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボデスオキシ−エフェドリンなどのうっ血除去薬;コデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、またはデキストラメトルファンなどの鎮咳薬;利尿薬;鎮静剤または非鎮静型ヒスタミン拮抗薬と共に投与されてもよい。同じように、本明細書で開示される化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または病態の治療/予防/抑制または改善に用いられる別の薬剤と組み合わせて用いられてもよい。かかる別の薬剤は、一般的に用いられる経路および量において、本発明の化合物と同時に、または時間差で投与されてもよい。化合物が1つまたはそれ以上の別の薬剤と同時に用いられる場合、本発明の化合物に加えてかかる別の薬剤を含む医薬組成物が用いられてもよい。故に、医薬組成物は本開示の化合物に加えて1つまたはそれ以上の別の活性成分を含むものを包含する。
【0260】
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる別の活性成分(時間差または同一の医薬組成物において投与されてもよい)は、例えば、限定されないが、(a)セレクチン、ICAMおよびVLA−4に対するもののようなインテグリンアンタゴニスト;(b)ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンなどのステロイド;(c)シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシンおよび他のFK−506型免疫抑制剤などの免疫抑制剤;(d)ブロモフェニラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジンなどの抗ヒスタミン薬(H1−ヒスタミンアンタゴニスト);(e)b2−アゴニスト(テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテラール、ビトルテロール、およびピルブテロール)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、アトロピン、臭化イプラトロピウム、ロイコトリエンアンタゴニスト(ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト、ポビルカスト、SKB−102,203)、ロイコトリエン生合成阻害剤(ジロートン、BAY−1005)などの非ステロイド性抗喘息薬;(f)プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベンキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸(fenclozic acid)、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク(oxpinac)、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム類(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカム)、サリチル酸類(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)およびピラゾロン類(アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);(g)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤;(h)ホスホジエステラーゼタイプIV(PDE−IV)阻害剤;(i)ケモカイン受容体の別のアンタゴニスト;(j)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、および他のスタチン類)、捕捉剤(コレスチラミンおよびコレスチポル)、ニコチン酸、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラートおよびベンザフィブラート)、およびプロブコールなどのコレステロール低下薬;(k)抗糖尿病薬、例えば、インスリン、スルホニル尿素、ビグアナイド(メトホルミン)、a−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)およびグリタゾン(トログリタゾンおよびピオグリタゾン);(l)インターフェロン製剤(インターフェロン アルファ−2a、インターフェロン−2B、インターフェロン アルファ−N3、インターフェロン ベータ−1a、インターフェロン ベータ−1b、インターフェロン ガンマ−1b);(m)抗ウィルス化合物、例えば、エファビレンツ、ネビラピン、インジナビル、ガンシクロビル、ラミブジン、ファムシクロビル、およびザルシタビン;(o)別の化合物、例えば、5−アミノサリチル酸およびそのプロドラッグ、代謝拮抗薬、例えばアザチオプリンおよび6−メルカプトプリン、ならびに細胞傷害性の癌化学療法剤である。本発明の化合物の第2の活性成分に対する重量比は様々であり、各成分の有効な用量に依存するであろう。
【0261】
一般的に、有効な用量の各成分が用いられるであろう。故に、例えば、化合物がNSAIDと組み合わせて用いられる場合、本発明の化合物のNSAIDに対する重量比は、通常、約1000:1から約1:1000の範囲にあるか、あるいは、約200:1から1:200の範囲にあろう。本発明の化合物および別の活性成分の組み合わせも通常は上記の範囲にあるが、各場合において、各成分の有効な用量が用いられるべきである。
【0262】
癌の治療において、化学療法薬および/または別の治療(例えば、放射線療法)を組み合わせることは有益であることが多い。第2(または第3)の薬剤は、第1の治療薬と同じまたは異なるメカニズムを有していてもよい。2つまたはそれ以上の投与される薬剤が異なる様式または細胞周期の異なる相において作用する、および/または2つまたはそれ以上の薬剤が重複する毒性または副作用を有する、および/または組み合わされるそれぞれの薬剤に患者が呈する特定の疾患状態の治療における有効性があると示されるような細胞傷害性の薬剤の組み合わせは特に有用である可能性がある。
【0263】
かくして、本明細書で開示される化合物(または本明細書中で開示される他の製剤)は、別の抗癌剤および細胞傷害性の薬剤および癌または他の増殖性疾患の治療に有用な治療と組み合わせて投与されてもよい。本発明はさらに、癌の治療薬の製造における本発明の化合物(または本明細書で開示される他の製剤)の使用を包含し、および/または本発明の化合物を他の抗癌剤または細胞傷害性の薬剤および癌の治療と組み合わせて用いる旨の指示書と本発明の化合物のパッケージを包含する。本発明はさらに、キットの形態における本発明の化合物および1つまたはそれ以上のさらなる薬剤の組み合わせ(例えば、それらがキットとして販売されるよう一緒にまたは別々にパッケージされたもの、または一緒に製剤化されるようパッケージされたもの)を包含する。
【0264】
第2(またはそれ以上)の抗癌剤は、以下の任意の1つまたはそれ以上から選択されてもよい:
アルキル化試薬(例えば、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、エチレンイミン誘導体、およびトリアゼン類);抗血管新生薬(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤);代謝拮抗薬(例えば、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、葉酸アンタゴニスト、プリンアナログ、およびピリミジンアナログ);抗生物質または抗体(例えば、モノクローナル抗体、CTLA−4抗体、アントラサイクリン類);アロマターゼ阻害剤;
細胞周期応答調節剤;酵素;ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;
ホルモン薬および抗ホルモン薬およびステロイド(例えば、合成アナログ、グルココルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン薬[例えば、SERM]、アンドロゲン/項アンドロゲン薬、プロゲスチン、プロゲステロン受容体アゴニスト、および黄体ホルモン放出[LHRH]アゴニストおよびアンタゴニスト);インスリン様成長因子(IGF)/インスリン様成長因子受容体(IGFR)系モジュレーター(例えば、IGFR1阻害剤);インテグリンシグナリング阻害剤;キナーゼ阻害剤(例えば、多標的キナーゼ阻害薬および/またはSrcキナーゼもしくはSrc/ablの阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ[CDK]阻害剤、Her全般、Her−1およびHer−2抗体、VEGF阻害剤(例えば、抗VEGF抗体)、EGFR阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質[MAP]阻害剤、MEK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PDGF阻害剤、および他のチロシンキナーゼ阻害剤もしくはセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤;
微小管破壊薬(例えば、エクチナサイジンまたはそれらのアナログおよび誘導体);微小管安定化薬(例えば、タキサン、ならびに天然のエポチロンおよびそれらの合成および半合成アナログ);
微小管結合、不安定化剤(例えば、ビンカアルカロイド);
トポイソメラーゼ阻害剤;プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;プラチナ配位錯体;シグナル伝達阻害剤;ならびに抗癌剤および細胞傷害性の薬剤として用いられる、生物応答調節剤、成長因子、および免疫調節剤などの別の薬剤。
【0265】
さらに、本発明の化合物は、前述の病状と関連する副作用への対処に特に有用であるために選択される別の治療薬と共に製剤化、または共投与することができる。例えば、本発明の化合物は、悪心、過敏症および胃刺激を予防する、制吐薬、ならびにHおよびH抗ヒスタミン薬といった薬剤と共に製剤化されてもよい。
【0266】
前述の別の治療薬は、本発明の化合物と組み合わせて用いられる場合、例えば、フィジシャンズデスクリファレンス(Physicians’ Desk Reference (PDR))で指示される量、あるいは当業者により決定される量において用いることができる。
【0267】
化合物は治療上の有効量において哺乳類に投与される。「治療上の有効量」は、本開示の化合物が単独またはさらなる治療薬との組み合わせにおいて哺乳類に投与された場合に、疾患の病状または疾患の進行の予防または回復に有効なことを意味する。
【0268】
用量および製剤
本開示の化合物は、錠剤、カプセル剤(そのそれぞれが徐放性製剤または放出遅延型製剤を含む)、丸薬、散剤、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ剤、および乳剤といった経口投与剤形で投与することができる。それらはまた、静脈内(ボーラスまたは点滴)、腹腔内、皮下、または筋肉内、製剤学分野の当業者に周知の全ての投与剤形により、投与されてもよい。それらは単体で投与されてもよいが、一般的には、投与経路および一般的な製剤学的基準により選択される医薬的担体と共に投与されるであろう。
【0269】
本発明の化合物の用量レジメンは、当然のことながら、特定の薬剤の薬物動態学的特性ならびにその投与方法および投与経路;レシピエントの種、年齢、性別、健康状態、医学的状態、および体重;症状の性質および度合い;並行する治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎機能および肝機能、ならびに目的の効果などの既知の因子に依存して異なる。医師または獣医師は、障害の進行を予防する、対抗する、または停止させることに必要な薬剤の量を決定することができる。
【0270】
一般的な指針として、各活性成分の1日当たりの経口用量は、指定された効果を得るために用いられる場合、約0.001から1000mg/kg体重/日、または約0.01から100mg/体重/日、あるいは約1.0から20mg/kg/日の範囲にあろう。静脈内投与において、用量は持続注入期間中、約1から約10mg/kg/分であろう。本発明の化合物は1日単回投与で投与されてもよく、あるいは1日当たりの総用量を1日2、3、または4回に分割して投与してもよい。一態様において、活性成分の1日当たりの経口用量は、1日単回投与または1日2回投与の分割用量において、3から600mgの間である。あるいは、活性成分は1日2回投与の10−20mgの用量において投与されてもよく、1日単回投与の40から100mgの用量において投与されてもよい。あるいは、活性成分は12.5mgの用量において1日2回投与されてもよく、75mgの用量において単回投与されてもよい。あるいは、活性成分は3、10、30、100、300、および600mgの用量において、1日単回投与または2回投与されてもよい。
【0271】
本発明の化合物は、適切な鼻腔内媒体の局所的使用による鼻腔内剤形、または経皮パッチを用いた経皮経路により投与することができる。経皮送達システムの剤形において投与される場合、用量の投与は、当然のことながら、投与レジメンを通し間欠的ではなく継続的なものとなろう。
【0272】
化合物は、典型的には、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤といった所望の剤形に応じ、一般的な製剤学的基準と一致して適切に選択される適切な医薬的希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書では、医薬的担体と総称する)との混合物において投与される。
【0273】
例えば、錠剤またはカプセル剤の剤形における経口投与では、活性薬剤成分は、経口用の無毒な医薬的に許容される不活性な単体、例えば、乳糖、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと組み合わせて投与することができ;液剤の剤形における経口投与では、経口薬剤成分は任意の経口用の無毒な医薬的に許容される不活性な担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わせて投与することができる。さらに、望ましいまたは必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色料もまた、混合物に組み込むことができる。適切な結合剤は、例えば、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータ−ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア粘液、トラガカントもしくはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどである。これらの剤形に用いられ得る滑沢剤は、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどである。崩壊剤は、例えば、限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどである。
【0274】
本発明の化合物はまた、小単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞、および多重膜小胞といったリポソーム送達システムの剤形において投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンといった様々なリン脂質から調製することができる。
【0275】
本発明の化合物はまた、可溶性ポリマーなどの標的指向化が可能な薬剤単体と組み合わせて投与されてもよい。かかるポリマーは、例えば、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンである。さらに、本発明の化合物は、放出制御の達成に有用な生物分解性のポリマー類、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸およびポリグリコール酸の共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体と組み合わせて投与されてもよい。
【0276】
投与に適した投与剤形(医薬組成物)は、投与単位当たり約1ミリグラムから約100ミリグラムの活性成分を含んでいてもよい。これらの医薬組成物において、活性成分は、一般的に、該医薬組成物の総重量の約0.5−95重量%の量において存在するであろう。
【0277】
ゼラチンカプセルは活性成分および粉末の担体、例えば、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含んでいてもよい。同様の希釈剤が圧縮錠剤の製造に用いることができる。錠剤およびカプセル剤は共に、長時間に亘り薬剤の継続的な放出を提供する徐放性製剤として製造されてもよい。圧縮錠剤は、任意の不快な味をマスクするために糖衣またはフィルムコーティングされてもよく、あるいは、胃腸管における選択的な崩壊のために腸溶性コーティングが施されてもよい。
【0278】
経口投与用の液剤の剤形は患者の服薬の向上のため、着色料および香料を含んでもよい。
【0279】
一般的に、水、適切な油脂、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、および関連する糖の溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、非経口溶液の適切な担体である。非経口投与用の溶液は、活性成分の水溶性の塩、適切な安定化剤、および必要な場合、緩衝物質を含んでいてもよい。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸は、単独または組み合わせにおいて、適切な安定化剤である。クエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムも用いられる。さらに、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチル−またはプロピルパラベン、およびクロロブタノールなどの防腐剤を含んでいてもよい。
【0280】
適切な医薬的担体は、この分野のスタンダードなテキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Companyに記載される。
【0281】
本発明の化合物の投与に有用な代表的な医薬投与剤形が以下に説明される。
【0282】
カプセル剤
標準的な2ピース硬ゼラチンカプセルに、それぞれ100ミリグラムの粉末の活性成分、150ミリグラムのラクトース、50ミリグラムのセルロース、および6ミリグラムのステアリン酸マグネシウムを充填することにより、大量の単位カプセルを製造することができる。
【0283】
軟ゼラチンカプセル
活性成分の大豆油、綿実油またはオリーブ油などの消化可能な油脂中の混合物を調製し、容積式ポンプでゼラチンに注入することにより、100ミリグラムの活性成分を含んだ軟ゼラチンカプセルを形成することができる。カプセルは洗浄、乾燥しなければならない。
【0284】
錠剤
錠剤は、投与単位が、100ミリグラムの活性成分、0.2ミリグラムの二酸化ケイ素コロイド、5ミリグラムのステアリン酸マグネシウム、275ミリグラムの結晶セルロース、11ミリグラムのデンプンおよび98.8ミリグラムのラクトースとなるよう、一般的な方法により製造することができる。服薬を改善もしくは吸収を遅延させるため、適当なコーティングを適用してもよい。
【0285】
注射剤
注射による投与に適した非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を10容量%のプロピレングリコールおよび水中で撹拌することにより調製することができる。溶液は塩化ナトリウムで等張にしなければならず、滅菌されるべきである。
【0286】
懸濁液
経口投与用の水性の懸濁液は、各5mLが、100mgの微粒子化した活性成分、200mgのナトリウムカルボキシメチルセルロース、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液、U.S.P.、および0.025mLのバニリンを含むよう調製することができる。
【0287】
本発明の化合物が別の抗凝固薬と組み合わされる場合、例えば、1日当たりの用量は、患者の体重1キログラム当たり約0.1から100ミリグラムの式(I)の化合物および約1から7.5ミリグラムの第2の抗凝固薬であってもよい。錠剤の投与剤形の場合、本発明の化合物は、投与単位当たり約5から10ミリグラム、第2の抗凝固薬は約1から5ミリグラムの量において存在していてもよい。
【0288】
2つまたはそれ以上の前記の第2の治療薬が実施例の化合物と共に投与される場合、典型的な1日当たりの投与量および投与剤形における各成分の量は、一般的に、組み合わせて投与される場合の治療薬の相加的または相乗的な効果の観点から、単独で投与される場合の通常の投与量に比べて低減されてもよい。
【0289】
特に単一投与単位として提供される場合、組み合わされた活性成分間の化学的相互作用が起こる可能性がある。このため、実施例の化合物および第2の治療薬が単一の投与単位に組み合わされる場合、それらは、活性成分が単一の投与単位に組み合わされるが、活性成分間の物理的接触は最小限に抑えられる(即ち、軽減される)ように単一投与単位に製剤化される。例えば、1つの活性成分が腸溶性コーティングされてもよい。1つの活性成分を腸溶性コーティングすることにより、組み合わされた活性成分間の物理的接触が最小限になるだけでなく、これらの成分の1つは胃で放出されずに小腸で放出されるようになり、これらの成分の1つを胃腸管内において放出制御することが可能となる。活性成分の1つは、胃腸管内を通し持続放出に作用し、組み合わされた活性成分の物理的接触を最小限にするようにも働く物質によりコーティングされてもよい。さらに、持続放出成分は、該成分の放出が小腸でのみ起こるようにさらに腸溶性コーティングされてもよい。さらなる別のアプローチは、1つの成分を持続および/または腸放出ポリマーでコーティングし、活性成分をさらに分離するため、他の成分を低粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)もしくは当業者に周知の別の物質などのポリマーでコーティングした組み合わせ産物の製剤に関連する。該ポリマーコーティングは、他の成分との相互作用に対するさらなるバリアーとして機能する。
【0290】
本発明の組み合わせ製剤における成分間の接触を最小限にするためのこれらのならびに別の方法は、単一投与剤形で投与されるか、または別々の剤形だが同時に同じ方法で投与されるかにかかわらず、本開示に触れた当業者には容易に明らかとなろう。
【0291】
さらに、本明細書で開示されるいくつかの化合物は、他の化合物の代謝物として有用であることもある。故に、一実施態様において、医薬組成物に組み込まれてもよい実質的に純粋な化合物として、あるいは、その化合物のプロドラッグの投与後に産生される代謝物として、化合物は有用であり得る。一実施態様において、本発明の化合物は、本明細書で提示される障害の治療に有用であることにより代謝物として有用となり得る。
【0292】
「実質的に純粋」は、本明細書で用いられるように、約90重量パーセントを超える純度、例えば、約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100パーセントの純度を有する化合物を包含すると意図される。
【0293】
一例として、約90重量パーセントを超える純度を有し、該物質の残りの10%未満が該化合物の他の代謝物、該化合物のプロドラッグ、および/または反応物および/または製造に由来する加工の不純物である本明細書で開示される化合物は、実質的に純粋であるとしてもよい。
【0294】
明らかに、これまでの記載から本発明において多くの改変および変法が為され得る。故に、本発明が、本明細書で具体的に記載されるものとは別に、付属の請求項の範囲内において実践され得ることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

の化合物、またはその塩。
【請求項2】
該化合物の結晶形である、請求項1の化合物。
【請求項3】
N−1型を含む、請求項2の結晶形。
【請求項4】
該N−1型が実質的に純粋な形態である、請求項3の結晶形。
【請求項5】
該N−1型が以下:
格子サイズ:
a=7.3085(6)
b=16.257(1)
c=22.688(2)
α°=90
β°=90
γ°=90
空間群 P2
分子/単位格子(Z):1
密度(g−cm−3で算出):1.194
(ここで、該結晶は約−70℃におけるものである)
と実質的に同等な単位格子パラメーターで特徴付けられる、請求項3の結晶形。
【請求項6】
図1に示されるものと実質的に一致する粉末X線回折パターンで特徴付けられる、請求項3と同義の結晶形。
【請求項7】
約205℃超での吸熱転移を有する図2に示されるものと実質的に一致する示差走査熱量測定サーモグラムで特徴付けられる、請求項3と同義の結晶形。
【請求項8】
図3に示される熱重量測定曲線で特徴付けられる、請求項3と同義の結晶形。
【請求項9】
請求項1の化合物を含む医薬組成物。
【請求項10】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項9の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの追加的な治療薬をさらに含む、請求項9の医薬組成物。
【請求項12】
治療上の有効量の請求項1の化合物を患者に投与することを特徴とする、CCR−2およびCCR−5受容体活性のモジュレート方法。
【請求項13】
治療上の有効量の請求項1の化合物を患者に投与することを特徴とする、障害(ここで、該障害は、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、脳卒中、神経障害性疼痛、虚血性心筋症、乾癬、高血圧症、強皮症、変形性関節症、動脈瘤、発熱、循環器疾患、クローン病、うっ血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植後動脈硬化、物理的または化学的に誘発された頭部外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム動脈硬化症、血管炎、不安定プラーク、関節リウマチ、再狭窄、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、動静脈シャント新生内膜肥厚、臓器移植、慢性移植腎症、癌、静脈新生内膜肥厚、透析グラフト新生内膜肥厚、および動静脈シャント新生内膜肥厚から選択される)の治療方法。
【請求項14】
【化2】

1)式I−ccのヒドラゾン化合物を式I−bbの化合物に変換し;
2)式I−bbの化合物を式I−aaの化合物(式中:
は、独立して、水素、またはカルボベンジルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニル、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジル基、およびp−メトキシベンジル基から選択されるアミン保護基であり;
およびRは、独立して、水素またはC1−6アルキルであり;
21は=Oであり;
HETは、少なくとも1つの窒素ヘテロ原子を有する、適宜置換されていてもよい3から14員のヘテロ環またはヘテロアリール二環式環であり;
LGは−OR16であり、ここで、R16はC1−6アルキル、フェニル、5から7員のN、S、またはOから選択される1つまたはそれ以上の原子を有するヘテロアリール、または3から7員のシクロアルキルであり、それらの全てがハロゲン、CFまたはC1−6アルキルから選択される1から3個の基で適宜置換されていてもよい)とカップリングする
ことを特徴とする、式(I)の化合物またはその塩の製造方法。
【請求項15】
下記のスキーム:
【化3】

に記載される工程を特徴とする、N−((1R,2S,5R)−5−(tert−ブチルアミノ)−2−((S)−3−(7−tert−ブチルピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イルアミノ)−2−オキソピロリジン−1−イル)シクロヘキシル)アセトアミドの製造方法。
【請求項16】
式:
【化4】

を有する化合物、またはその塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−507444(P2013−507444A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534282(P2012−534282)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052288
【国際公開番号】WO2011/046916
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】