説明

NCプログラムの解析編集装置、方法、プログラム、および記憶媒体

【課題】編集作業を容易にする。
【解決手段】本装置を、NCプログラム21を編集画面71に編集可能に表示するNCプログラム編集手段41と、概要情報を抽出し概要情報画面72に表示する概要情報編集手段43と、切削加工情報を抽出する切削加工情報抽出手段45と、CADデータ23から形状情報を抽出する形状情報抽出手段47と、切削加工情報、または形状情報の少なくとも一つの情報に基づき、工具軌跡データ層51、穴明図データ層52、またはワーク図データ層53を生成するとともに、描画画面73に重ね合わせ可能に描画表示する図形描画手段49と、切削加工情報をリスト画面74に表示する切削加工情報表示手段55と、表示領域をそれぞれ連動表示させる連動表示手段57と、ミル加工または穴明加工について解析し、対応する画面に表示させる切削加工解析手段59と、を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC工作機械を動作制御するためのNCプログラムの解析編集装置、解析編集方法、解析編集プログラム、およびその記憶媒体に関し、特にNCプログラムと加工図面のCADデータとに基づくNCプログラムの切削工具に関する加工解析に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、切削や穴明け等の加工対象物は、NCプログラムの実行手順に沿って、旋盤、切削装置やマシニングセンタ等によって加工手順が実行されている。
特許文献1には、加工機械のオペレータのトライアル加工を軽減し、正しいNCプログラムを容易に作成でき、加工精度を向上することができる工具軌跡データ描画機能を有するNC装置およびその描画方法が開示されている。
特許文献2には、NC加工におけるNCプログラム解析方法および装置、特に数値制御情報を用いて、各種の加工制御を行うNC加工において、実加工に用いられるNCプログラムから各種の加工情報或いは加工条件を抽出し、これを汎用情報として、当該数値制御される工作機械あるいは他の数値制御工作機械に発展的に、利用可能な情報として、記憶することのできる改良されたNCプログラム解析方法および装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−59717号公報
【特許文献2】特許第3694323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、ワーク図の描画や加工情報リストが表示されないので、習熟したオペレータしか扱えない点で問題があった。
【0005】
また、特許文献2の技術では、別機械において試作品を用意して現場とは別の機械で事前のテストカット、シミュレーションが可能な量産品に場合には有効であるが、一品物や少量生産で特に大型部品(例えば、工作機械のベッドや工機部品)の場合、試作品イコール製品というケースが多く、実加工機械(現場)において、不良品とならないように慎重にトライアル加工でチェックする場合には適さない。また、テストカット、シミュレーション専用の機械および人員が必要で、実施にコストがかかる点で問題があった。
【0006】
そこで、本発明では上記課題を鑑み、類似ワークのNCプログラム作成において、既存のNCプログラムを使用することで、従来に比べ安価で効率よくNCプログラムを作成でき、トライアル加工を効率化できるNCプログラムの解析編集装置、解析編集方法、解析編集プログラム、および記憶媒体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るNCプログラムの解析編集装置は、表示部に、ワークの加工図面に従いNC工作機械を数値制御させるための所定のデータワードからなるNCプログラムを記憶部から読み出して文字表示するとともに、前記記憶部から読み出した前記加工図面のCADデータからワークの加工形状を描画表示して、前記NCプログラムを解析および編集するNCプログラムの解析編集装置であって、前記NCプログラムの前記データワードを含むブロック行を前記表示部の表示画面上に設定した第1表示領域に編集可能に表示するNCプログラム編集手段と、前記NCプログラムから前記データワードに基づき、前記NCプログラムの概要を示す概要情報を抽出し、前記概要情報を前記表示画面上に設定した第2表示領域に編集可能に表示する概要情報編集手段と、前記NCプログラムから前記データワードに基づき、切削工具によるミル加工および穴明加工に関するミル情報および穴明情報を切削加工情報として抽出する切削加工情報抽出手段と、前記CADデータからそのデータ構造に基づき、ワークの加工形状に関する形状情報を抽出する形状情報抽出手段と、前記切削加工情報または形状情報の少なくとも一つの情報に基づき、前記切削工具の工具軌跡を切削工具の種類毎に階層状に示す工具軌跡データ層を生成し、前記切削工具による穴明状態を切削工具の種類毎に階層状に示す穴明図データ層を生成し、またはワークの加工形状を所定単位毎に階層状に示すワーク図データ層を生成するとともに、生成した前記工具軌跡データ層、穴明図データ層、またはワーク図データ層の少なくとも一つのデータ層を、前記表示画面上に規定した第3表示領域に重ね合わせて描画表示する図形描画手段と、前記切削加工情報を、前記表示画面上に設定した第4表示領域に表示する切削加工情報表示手段と、前記第2表示領域上で選択された前記概要情報に応じて、その抽出元として特定される前記NCプログラムの先頭ブロックを第1表示領域に、前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層を第3表示領域に、または、前記切削加工情報を第4表示領域に、それぞれ連動表示する連動表示手段と、前記第3表示領域上で前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層から選択された少なくとも1つの描画要素に関する諸元を、切削加工情報または形状情報から解析し、その諸元を、所定の前記表示画面上に設定した第5表示領域に表示する切削加工解析手段と、を備えて構成される。
【0008】
請求項2の発明に係るNCプログラムの解析編集装置は、前記切削加工解析手段が、前記第4表示領域上で選択した切削加工情報を解析し、前記工具軌跡データ層または前記穴明図データ層のうち、その切削加工情報に対応する1つのデータ層を特定して、識別可能に第3表示領域に描画表示するように構成される。
【0009】
請求項3の発明に係るNCプログラムの解析編集装置は、前記概要情報編集手段が、前記概要情報として、少なくともプログラム番号、コメント文、またはワーク座標を抽出して表示し、前記切削加工情報抽出手段が、前記ミル情報として、少なくとも切削工具の種類、工具径、主軸の位置座標、または切削深さを抽出するとともに、前記穴明情報として、少なくとも切削工具の種類、穴径、または穴の位置座標を抽出し、前記形状情報抽出手段が、前記形状情報として、少なくとも描画要素の属性、または描画要素の始点終点を抽出し、前記連動表示手段は、前記第2表示領域で選択された概要情報が、前記コメント文の場合、当該コメント文に含まれる加工内容に対応して、第1表示領域にNCプログラムの対応処理単位における所定の先頭ブロックを表示し、前記ワーク座標の場合、前記第3表示領域に前記ワーク座標におけるワーク図データ層および工具軌跡データ層を描画表示し、第1表示領域にNCプログラムの所定の先頭ブロックを表示し、前記第4表示領域に前記ワーク座標における切削工具の切削深さを表示するように構成される。
【0010】
請求項4の発明に係るNCプログラムの解析編集方法は、コンピュータにおいて、表示部に、ワークの加工図面に従いNC工作機械を数値制御させるための所定のデータワードからなるNCプログラムを記憶部から読み出して文字表示するとともに、前記記憶部から読み出した前記加工図面のCADデータからワークの加工形状を描画表示して、前記NCプログラムを解析および編集するNCプログラムの解析編集方法であって、前記NCプログラムの前記データワードを含むブロック行を前記表示部の表示画面上に設定した第1表示領域に編集可能に表示するNCプログラム編集処理と、前記NCプログラムから前記データワードに基づき、前記NCプログラムの概要を示す概要情報を抽出し、前記概要情報を前記表示画面上に設定した第2表示領域に編集可能に表示する概要情報編集処理と、前記NCプログラムから前記データワードに基づき、切削工具によるミル加工および穴明加工に関するミル情報および穴明情報を切削加工情報として抽出する切削加工情報抽出処理と、前記CADデータからそのデータ構造に基づき、ワークの加工形状に関する形状情報を抽出する形状情報抽出処理と、前記切削加工情報または形状情報の少なくとも一つの情報に基づき、前記切削工具の工具軌跡を切削工具の種類毎に階層状に示す工具軌跡データ層を生成し、前記切削工具による穴明状態を切削工具の種類毎に階層状に示す穴明図データ層を生成し、またはワークの加工形状を所定単位毎に階層状に示すワーク図データ層を生成するとともに、生成した前記工具軌跡データ層、穴明図データ層、またはワーク図データ層の少なくとも一つのデータ層を、前記表示画面上に規定した第3表示領域に重ね合わせて描画表示する図形描画処理と、前記切削加工情報を、前記表示画面上に設定した第4表示領域に表示する切削加工情報表示処理と、前記第2表示領域上で選択された前記概要情報に応じて、その抽出元として特定される前記NCプログラムの先頭ブロックを第1表示領域に、前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層を第3表示領域に、または、前記切削加工情報を第4表示領域に、それぞれ連動表示する連動表示処理と、前記第3表示領域上で前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層から選択された少なくとも1つの描画要素に関する諸元を、切削加工情報または形状情報から解析し、その諸元を、所定の前記表示画面上に設定した第5表示領域に表示するか、または、前記第4表示領域上で選択した切削加工情報を解析し、前記工具軌跡データ層または前記穴明図データ層のうち、その切削加工情報に対応する1つのデータ層を特定して、識別可能に第3表示領域に描画表示する切削加工解析処理と、を行うように構成される。
【0011】
請求項5の発明に係るNCプログラムの解析編集装置は、前記切削加工解析手段が、前記第4表示領域上で選択した切削加工情報を解析し、前記工具軌跡データ層または前記穴明図データ層のうち、その切削加工情報に対応する1つのデータ層を特定して、識別可能に第3表示領域に描画表示するように構成される。
【0012】
請求項6の発明に係るNCプログラムの解析編集装置は、前記概要情報編集手段が、前記概要情報として、少なくともプログラム番号、コメント文、またはワーク座標を抽出して表示し、前記切削加工情報抽出手段が、前記ミル情報として、少なくとも切削工具の種類、工具径、主軸の位置座標、または切削深さを抽出するとともに、前記穴明情報として、少なくとも切削工具の種類、穴径、または穴の位置座標を抽出し、前記形状情報抽出手段が、前記形状情報として、少なくとも描画要素の属性、または描画要素の始点終点を抽出し、前記連動表示手段は、前記第2表示領域で選択された概要情報が、前記コメント文の場合、当該コメント文に含まれる加工内容に対応して、第1表示領域にNCプログラムの対応処理単位における所定の先頭ブロックを表示し、前記ワーク座標の場合、前記第3表示領域に前記ワーク座標におけるワーク図データ層および工具軌跡データ層を描画表示し、第1表示領域にNCプログラムの所定の先頭ブロックを表示し、前記第4表示領域に前記ワーク座標における切削工具の切削深さを表示するように構成される。
【0013】
請求項7の発明に係るNCプログラムの解析編集プログラムは、請求項4乃至6のいずれかに記載のNCプログラムの解析編集方法を前記コンピュータに実現させるように構成される。
【0014】
請求項8の発明に係る記憶媒体は、請求項7に記載のNCプログラムの解析編集プログラムを記憶してコンピュータで読取り可能とするように構成される。
【0015】
ここで、NCプログラムのフォーマットは、日本工業規格「JISB6315−1」および「JISB6315−2」に準拠するものとする。NCプログラムは、マシニングセンタやその他NC旋盤装置等のNC工作機械を制御する制御装置へ送られる一連の指令から成るブロックのまとまりであり、一つのブロックは、次式(1)、(2)によって構成される。式(1)のように、ブロックは、いくつかの[データワード]と、ブロックの終わりを示す[;]で構成される。各[データワード]は、NC工作機械の制御装置へ送られる指令機能毎に割り当てられたコマンドであり、式(2)のように、英字のアドレスといくつかの数字との組み合わせから構成される。
ブロック=([シーケンス番号ワード])[データワード][;]・・・式(1)
[データワード」=[a][b][c][d][e][f][g]・・・式(2)
[a]:準備機能ワード
[b]:ディメンジョンワード
[c]:補間ワードまたはねじ切りリードワード
[d]:送り機能ワード
[e]:主軸機能ワード
[f]:工具機能ワード
[g]:補助機能ワード
【0016】
また、描画要素の諸元は、描画要素が一つの場合、その座標(始点、終点)、基準線に対する角度、および長さを含むものとする。また描画要素が二つの場合、その間の距離、取代、段差情報を含むものとする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、2、4、5、7、8の発明によれば、工具軌跡と穴明図とワーク図とを重ね合わせて描画表示できるので、切削加工内容を容易かつ迅速に把握できる。例えば、従来ワークと類似する新規ワークのNCプログラムを作成する場合、従来ワークのNCプログラムと新規ワークのCADデータ、または従来ワークのNCプログラムと新規ワークのNCプログラムとを用いて、工具軌跡、穴明加工について相違箇所の確認が容易かつ迅速にできる。よって、間違いの少ないNCプログラムが作成できるので、初品トライアル加工時間が短縮でき、操作者の負荷を軽減できる。
特に、切削加工解析手段によって、データ層の選択した描画要素の諸元を、描画画面上で求めて寸法確認等でき、いちいち紙図面等の寸法表記を確認する手間を省くことができ、また読み取り間違い等を少なくできる。
【0018】
請求項3、6の発明によれば、上記効果に加えて、第1〜第4表示領域にそれぞれ関連付けた表示内容を連動表示させたので、NCプログラムの改良・改善を行う際に、変更箇所をそれぞれの画面に反映させることができ、NCプログラムの作成初心者でも分かり易い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るNCプログラムの解析編集装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るNCプログラムの解析編集装置の機能ブロック図である。
【図3】編集画面に表示されたNCプログラムの表示状態を示すプログラムリスト図である。
【図4】概要表示画面に表示された概要情報の表示状態を示す表示説明図である。
【図5】描画画面に描画表示されたデータ層の表示状態を示す表示説明図である。
【図6】リスト画面に表示された切削深さの表示状態を示す表示説明図である。
【図7】(a)はミル加工解析手段の解析処理手順を、(b)は加工深さ解析処理手順を、(c)は第3の描画要素解析処理手順を、それぞれ示すフローチャートである。
【図8】第1の描画要素解析処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【図9】第2の描画要素解析処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【図10】加工深さ解析処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【図11】取代解析処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【図12】(a)は穴明加工解析手段による穴明検索処理手順を、(b)は加工内容確認処理手順を、それぞれ示すフローチャートである。
【図13】プログラムリスト作成処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【図14】穴明加工リスト解析処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【図15】穴明加工リスト解析処理の画面遷移図である。
【図16】段差量設定処理の画面遷移図である。
【図17】加工内容一覧表示処理の画面遷移図である。
【図18】穴明加工内容確認処理の画面遷移図である。
【図19】相違箇所解析処理の画面遷移図である。
【図20】段差情報解析処理の解析結果リストを示す表示説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るNCプログラムの解析編集装置、解析編集方法、解析編集プログラム、および記憶媒体の実施の形態の一例を適宜図面に基づいて説明する。
図1は、本NCプログラムの解析編集プログラム(以下、本プログラムとする)19が導入されたパーソナルコンピュータ(以下、PCとする)5を用いてなるNCプログラムの解析編集装置(以下、本装置とする)1のハードウェア構成を示すブロック図であり、図2は、本装置1の機能ブロック図である。
【0021】
図1の本装置1は、NC工作機械である例えばマシニングセンタ(以下、M/Cとする)4と、本プログラム19が導入されたPC5とを、LAN等の通信手段を介して相互通信可能に接続して構成されている。PC5は、ワークの加工図面に従いM/C4を動作制御させるための一連の指令がJIS規格のプログラムフォーマットで定義された所定のデータワードからなる複数のブロックで規定されるNCプログラム21、および、加工図面のCADデータ23を読み書き可能に記憶する記憶部9と、表示画面上にNCプログラム21を文字表示するとともにCADデータ23を用いて加工図面を描画表示する表示部11と、表示画面上に表示させた文字をPC5の操作者が編集操作するための編集操作部13と、M/C4に対して所定データを送受信可能に接続するための通信I/F部15と、NCプログラム21およびCADデータ23を解析してNCプログラム21を編集するように本プログラム19のコマンドに従い各部5〜11を動作制御する編集制御部17と、を備えて構成されている。
【0022】
ここで、記憶部9はハードディスクあるいはリムーバブルディスク等で構成され、表示部11はLCD(液晶ディスプレイ)あるいはCRT(ブラウン管)で構成されている。また編集操作部13はキーボードやポインティングデバイス(マウスやトラックボール等)で構成され、通信I/F部15はLANコントローラで構成され、編集制御部17は本プログラム19のコマンドを実行するCPUと実行作業用のRAMの組合せで構成される。記憶部9には、ドライブ装置25を介してCD−ROM等の記憶媒体27から読み出された本プログラム19、M/C4で実行可能なNCプログラム21、およびNCプログラム21を解析および編集する際に基準となる加工図面のCADデータ23が格納されている。
【0023】
本装置1は、本プログラム19と上記PC5との協働によって実現され、図2に示すように、NCプログラム21のデータワードを含むブロック行を表示部11の表示画面上に設定した第1表示領域に編集可能に表示するNCプログラム編集手段41と、NCプログラム21からデータワードに基づき、NCプログラム21の概要を示す概要情報を抽出し、その概要情報を表示画面上に設定した第2表示領域に編集可能に表示する概要情報編集手段43と、NCプログラム21からデータワードに基づき、切削工具によるミル加工および穴明加工に関するミル情報および穴明情報を切削加工情報として抽出する切削加工情報抽出手段45と、CADデータ23からそのデータ構造に基づき、ワークの加工形状に関する形状情報を抽出する形状情報抽出手段47と、切削加工情報または形状情報の少なくとも一つの情報に基づき、切削工具の工具軌跡を切削工具の種類毎に階層状に示す工具軌跡データ層51を生成し、切削工具による穴明状態を切削工具の種類毎に階層状に示す穴明図データ層52を生成し、またはワークの加工形状を所定単位毎に階層状に示すワーク図データ層53を生成するとともに、生成した工具軌跡データ層51、穴明図データ層52、またはワーク図データ層53を、表示画面上に規定した第3表示領域に重ね合わせて描画表示する図形描画手段49と、切削加工情報を、表示画面上に設定した第4表示領域に表示する切削加工情報表示手段55と、第2表示領域上で選択された概要情報に応じて、その抽出元として特定されるNCプログラム21の先頭ブロックを第1表示領域に、工具軌跡データ層51、穴明図データ層52もしくはワーク図データ層53を第3表示領域に、または、切削加工情報を第4表示領域に、それぞれ連動表示させる連動表示手段57と、第3表示領域上で工具軌跡データ層、穴明図データ層もしくはワーク図データ層から選択された少なくとも1つの描画要素に関する諸元を、切削加工情報または形状情報を解析して求め、求めた諸元を表示画面上に設定した第5表示領域に表示する切削加工解析手段59と、を備えて構成されている。
【0024】
NCプログラム編集手段41は、いわゆるテキストエディタの機能を備えており、図2で示す第1表示領域をNCプログラム編集画面(以下、編集画面)71として、編集画面71に記憶部9から読み出したNCプログラム21を所定のリスト形式でテキスト表示し、操作者が操作する編集操作部13によって、選択したブロックを文字編集処理可能に構成されている。
【0025】
図3は、本手段41によって、編集画面71にNCプログラム21を表示した状態を示すプログラムリスト図である。この編集画面71の表示枠内には、NCプログラム21が、所定行数、所定文字サイズの各ブロック毎に改行されたリスト形式でテキスト表示されている。また破線で示すブロック行は編集操作部13で選択された状態を示すものとする(以下、同様)。
【0026】
概要情報編集手段43は、予め設定した概要情報として「プログラム番号」、「コメント文」、および「ワーク座標」をNCプログラム21から抽出し、図2で示す第2表示領域を概要表示画面72として、概要表示画面72に所定のリスト形式でテキスト表示処理するように構成されている。
【0027】
図4は、本手段43によって、概要表示画面72にこれらの抽出した概要情報を表示した状態を示す表示説明図である。この概要表示画面72の表示枠内には、概要情報が、所定行数、所定文字サイズのリスト形式でテキスト表示されている。本手段43による概要情報の抽出は、各ブロックのデータワードに、識別符号として使用可能な固有の文字または文字列が含まれているか否かを判断して検索する公知の検索技術を用いて行われる。例えば、「プログラム番号」については英文字「O(オー)」1文字と数字「1234」4文字からなる文字列が、「ワーク座標」については「G54」〜「G59」のいずれかの準備機能ワードが、「コメント文」については、ブロック内の「(」で始まり「)」で終了するその間の内容をコメント文として判断されている。
【0028】
切削加工情報抽出手段45は、NCプログラム21の準備機能ワード、工具機能ワードおよびディメンジョンワードから、前述の手段43と同様に公知の検索技術を用いて、ミル情報として「切削工具の種類」、「工具径」、「主軸の位置座標」、または「切削深さ」を抽出するとともに、穴明情報として「切削工具の種類」、「穴径」、「穴の位置座標」、および「穴明加工内容」を抽出処理するように構成されている。
【0029】
本手段45によるミル情報の抽出は、例えば「切削工具の種類」については「コメント文」中の「工具の種類」に相当する英文字列が、「工具径」については「コメント文」中の「工具径」に相当する数字が、「主軸の位置座標」については、ミル加工に関する準備機能ワード(Gコード)と組みとなる位置座標に相当する数字が、「切削工具の切削深さ」については英文字「Z」と数字「切削深さを示す数値」が、各ブロックのデータワードに識別符号としてそれぞれ含まれている場合に、抽出対象となる情報として判断されて行われる。
【0030】
本手段45による穴明情報の抽出は、同様に、例えば「穴径」については「コメント文」中の「穴径」に相当する数字が、「穴の位置座標」については、穴明加工に関する準備機能ワードと組み合わされる位置座標に相当する数字が、「穴明加工内容」については、固定サイクル、切削条件、使用工具を特定するため識別符号が、各ブロックのデータワードにそれぞれ含まれている場合に抽出対象となる情報として判断されて行われる。
【0031】
形状情報抽出手段47は、前述の手段43と同様に公知の検索技術を用いて、形状情報として「描画要素の属性」、または「描画要素の始点終点」を抽出処理するように構成されている。
【0032】
本手段47による形状情報の抽出は、例えばCADデータがDXF形式の場合には、例えば「描画要素の属性」については、線種、線太さ、レイヤ等に関連するコマンドを予め調べ、そのコマンドの文字列が、「描画要素の始点終点」については「描画要素の属性」に組み合わされる「始点座標および終点座標」の文字列が、それぞれ含まれている場合に抽出対象となる情報として判断されて行われる。
【0033】
図形描画手段49は、一つのワーク座標における一つの切削工具毎について、手段45で抽出した「主軸の位置座標」を直線または曲線の線分の描画要素で結んで描画し、その描画要素を一つの層状の工具軌跡データとしてデータ化するように、公知の作図技術を用いて構成されている。そして、本手段49は、それぞれの「ワーク座標」において、工具軌跡データを重ね合わせて階層状に表示可能に構成された工具軌跡データ層51を生成処理するように構成されている。
【0034】
また、本手段49は、同様に、手段45で抽出した「穴の位置座標」に穴を示す円形状の描画要素を配置し、その描画要素を一つの層状の穴明図データとしてデータ化するように構成されている。そして、本手段49は、それぞれの「ワーク座標」において、穴明図データを重ね合わせて階層状に表示可能に構成された穴明図データ層52を生成処理するように構成されている。
【0035】
また、本手段49は、同様に、手段47で抽出した「描画要素の始点終点」座標を、対応する「描画要素の属性」に従う線種、線太さの描画要素で結び、加工工程毎に一つの層状のワーク図データとしてデータ化する様に構成されている。そして、本手段49は、それぞれの「ワーク座標」において、ワーク図データを重ね合わせて階層状に表示可能に構成されたワーク図データ層53を生成処理するように構成されている。
【0036】
そして、本手段49は、生成した工具軌跡データ層51、穴明図データ層52およびワーク図データ層53をそれぞれのワーク座標において重ね合わせ、図2で示す第3表示領域を描画画面73として、描画画面73に所定の描画形式で描画表示処理するように構成されている。
【0037】
図5は、本手段49によって、描画画面73にこれらの生成したデータ層51〜53を描画表示した状態を示す表示説明図である。同(a)は、2種類の切削工具の工具軌跡データを重ね合わせてなる工具軌跡データ層51を描画表示したものであり、また同(b)は、2種類の穴明加工の穴明図データを重ね合わせてなる穴明図データ層52を描画表示し、また(c)は、複数の加工工程毎のワーク図を重ね合わせてなるワーク図データ層53を描画表示したものである。ここでは、3つのワーク座標01〜03に設定したワーク図を表示させている。また同(d)は、これらのデータ層51〜53を重ね合わせて描画画面73に描画表示させた状態を示すものである。この描画画面73では、データ層51〜53が、それぞれ同一スケールで同一基準点を一致させる描画形式により描画表示されている。
【0038】
また本手段49は、描画画面73において、編集操作手段13によるドラッグ操作によって、描画表示したデータ層51〜53を画面上の所定の位置へ移動可能に構成されている。また、同操作で囲んだ描画部分を拡大縮小表示可能に構成されている。また、NCプログラム21の1ブロック毎の描画および1ブロック毎の戻し描画表示、または特定の工具軌跡のみの部分的な描画表示が可能である。
【0039】
切削加工情報表示手段55は、前述の手段45によって抽出された「切削工具の切削深さ」を、図2で示す第4表示領域をリスト画面74として、リスト画面74に所定のリスト形式で表示処理するように構成されている。
図6は、本手段55によって、抽出した「切削工具の切削深さ」をリスト画面74にテキスト表示した状態を示す表示説明図である。このリスト画面74の表示枠内には、「切削工具の切削深さ」が、所定行数、所定文字サイズのリスト形式でテキスト表示されている。
【0040】
連動表示手段57は、概要表示画面72に表示された概要情報の内、「ワーク座標」の一つが選択された場合、その抽出元として特定されるNCプログラム21の対応処理単位における先頭ブロックを編集画面71に、その「ワーク座標」に対応する工具軌跡データ層51とワーク図データ層53を描画画面73に、そして、「切削加工情報」の内その「ワーク座標」で処理される「切削工具の切削深さ」をリスト画面74、にそれぞれ連動表示処理するよう構成されている。
【0041】
切削加工解析手段59は、NCプログラム21をミル加工に関して解析するミル加工解析手段61と、穴明加工に関して解析する穴明加工解析手段63とから構成されている。
【0042】
ミル加工解析手段61は、切削加工情報抽出手段45と形状情報抽出手段47により抽出された「ミル情報」と「形状情報」を用いて、以下の解析処理「1−1」〜「1−5」を実行可能に構成されている。本手段61は、解析対象となるブロックを固有のデータワード等の文字列を含むか否かで特定する検索技術、および、いわゆるCADソフトが備える描画技術に相当する公知の技術を用いて実現される。
【0043】
図7(a)は本手段61による解析処理手順S1を示し、同(b)は加工深さ解析処理による解析手順S2を示し、同(c)は第3の描画要素解析処理による解析手順S3を、それぞれ示すフローチャートである。
【0044】
本手段61は、概要表示画面72に概要情報をリスト表示させた状態で、所望のワーク座標を1つ選択する(S1−1、2)。選択したワーク座標のワーク図データ層53を描画画面73に表示する(S1−3)。また選択したワーク座標において、抽出したミル情報および形状情報を用いてミル加工解析を行う(S1−4、5)。そしてミル情報および形状情報を用いて工具軌跡データ層51を生成し、描画画面73に表示する(S1−6、7)。
【0045】
「1−1」(第1の描画要素解析処理)
描画画面73に表示した工具軌跡データ層51の描画要素のうち、操作者が編集操作部13で選択した1つの描画要素に関する諸元として、その座標(始点、終点)、基準線に対する角度、および長さを求める。諸元は、描画要素に対応して手段45で抽出したミル情報を解析して求められる。座標は、「切削工具の種類」毎に関連付けた2点の「主軸の位置座標」を始点および終点として求められる。また角度および長さは、その2点の座標から演算により求められる。図8の解析結果リスト75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する。
【0046】
「1−2」(第2の描画要素解析処理)
描画画面73に表示したワーク図データ層53の描画要素のうち、編集操作部13で選択した1つの描画要素に関する諸元として、その座標(始点、終点)、基準線に対する角度、および長さを求める。諸元は、描画要素に対応して手段47で抽出した形状情報を解析して求められる。座標は、「描画要素の属性」毎に関連付けた2点「描画要素の始点終点」の座標から求められる。また角度および長さは、その2点の座標から演算により求められる。図8の解析結果リスト75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する。
【0047】
「1−3」(第3の描画要素解析処理)
描画画面73に表示した工具軌跡データ層51またはワーク図データ層53の描画要素のうち、編集操作部13で選択した2つの描画要素に関する諸元として、それらの間の距離を求める(図7、S3−1、2)。諸元は、ミル情報および形状情報を解析して求められる。距離は、それぞれの描画要素の2点の座標から演算により求められる。図9の解析結果リスト75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する(図7、S3−3)。
【0048】
「1−4」(加工深さ解析処理)
概要表示画面72に表示したワーク座標のうち、編集選択部13で選択した1つのワーク座標におけるミル情報を解析して、図10のように、リスト画面74上にその切削工具の切削深さリストを表示する(図7、S1−8)。切削深さリストは、ワーク座標上のミル加工に対応するミル情報「切削深さ」をすべて列挙したものである。またそれぞれの「切削深さ」は「切削工具の種類」に関連付けられている。さらに、その切削深さリストから選択した一つの切削深さで加工を行っている切削工具を特定し、その切削工具の工具軌跡のみを、他の工具軌跡と識別可能に、例えばピンク色に変更して描画表示する(S2−1、2)。
【0049】
「1−5」(取代解析処理)
描画画面73に表示したワーク図データ層53の描画要素のうち、編集操作部13で選択した描画要素について、仕上げに要する取り代に関してミル情報と形状情報を解析して、図11の取り代リスト75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する。また、その取り代リストから選択した1つの取り代に対応する工具軌跡を、他の工具軌跡と識別可能に、例えば水色に変更して描画表示する。
【0050】
穴明加工解析手段63は、切削加工情報抽出手段45と形状情報抽出手段47によって抽出された「穴明情報」と「形状情報」を用いて、以下の解析処理「2−1」〜「2−6」を実行可能に構成されている。本手段63は、解析対象となるブロックを固有のデータワード等の文字列を含むか否かで特定する検索技術、および、いわゆるCADソフトが備える描画技術に相当する公知の技術を用いて実現される。
【0051】
図12(a)は本手段63による穴明検索処理手順S4を示し、同(b)は加工内容確認処理による解析手順S5を、それぞれ示すフローチャートである。
【0052】
「2−1」(穴明検索処理)
「2−1−1」(プログラムリスト作成処理)
描画画面73に表示したワーク座標で実行されるNCプログラム21のプログラム番号をすべて抽出し、図13のプログラム番号リスト75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する(図12、S4−1)。
「2−1−2」(穴明加工リスト解析処理)
プログラム番号リストから、1つのプログラム番号を選択して(図12、S4−2)、選択したNCプログラムで実行されるすべての穴明加工に関して切削工具の種類毎に解析し(図12、S4−3)、その解析結果を穴明工具別の穴明加工リストとして左右に分割したリスト画面74の左側画面に、図14のように表示する(図12、S4−5)。同時に、穴明加工リストに対応する穴明図データ層52を、他の穴明図データ層と識別可能に、例えば青色に変更して描画表示する(図12、S4−4)。穴明加工リストから選択した1つの穴明工具に対応する穴明図データ層のみを、例えば青色から赤色に変更して描画表示する(図12、S5−1、2)。
「2−1−3」(穴明加工リスト解析処理)
また、左側画面に表示した図14の穴明加工リストから1つの穴明工具行を選択した状態で右クリック等することにより、図15のように、「穴位置表示」または「加工内容表示」の機能選択メニュー77をクリック位置付近にポップアップ表示する。リスト画面74の右側画面には、この機能選択メニュー77から「穴位置表示」を選択した場合、穴明加工リストで選択した穴明工具によって穴明加工されるすべての穴明位置の座標を表示する一方、「加工内容表示」を選択した場合、選択した穴明工具に関する穴明位置とともに他の穴明加工情報として、コメント文の記述内容、主軸機能、および工具送り機能を少なくとも含む加工内容リストを表示する。図15(a)、(b)は、リスト画面74において、左側画面に穴明加工リストを表示して、右側画面を「穴明位置表示」または「加工内容表示」に切り替え表示した画面遷移図である(図12、S5−3)。
【0053】
「2−2」(段差量設定処理)
右側画面の加工内容リストから1つの加工内容行を選択した状態で右クリック等をすることにより、図16(a)のように、「段差量設定」の機能選択メニュー77をクリック位置付近にポップアップ表示する。この画面遷移図では、ワーク原点が加工上面で、ワーク原点より27mm下がった位置のM6のタップ加工を行う穴明加工に関して、段差量設定機能の実行により、固定サイクルのZ,Rの値を段差分追加した値に修正表示(図16(c))する。図15は、この段差量設定機能を実行する際の画面遷移図である。段差量は、機能選択メニュー77で段差量設定をクリックした際にポップアップ表示される枠75の入力欄に入力する(図16(b))。
【0054】
「2−3」(穴明検索の加工内容一覧表示処理)
左側画面に表示した穴明加工リストから1つの穴明工具行を選択した状態で右クリック等することにより、図17(a)のように、「一覧」の機能選択メニュー77をクリック位置付近にポップアップ表示する。「一覧」を選択することによって、穴明加工に関する穴明加工一覧表75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する。図17(b)は穴明加工一覧表75の表示例を示す表示説明図である。穴明加工一覧表75には、ワーク座標毎のすべての穴位置座標、そして加工内容として、固定サイクル、切削条件、使用工具が表記される。
【0055】
「2−4」(穴明加工内容確認処理)
描画画面73に表示した穴明図データ層52の描画要素のうち、編集操作部13で選択した1つの描画要素を解析して、図18(a)のように、その穴位置と穴位置で行われる穴明加工内容を表示した穴明加工内容リスト75を表示部11の所定位置にポップアップ表示する。穴明加工内容リスト75から1つの穴明加工内容行を選択した場合、選択した1つの穴明加工内容に対応して、(b)のようにNCプログラム21に記述された穴位置座標行、または、(c)のように穴位置座標を含む固定サイクル行を、編集画面71の中央行に表示する。
【0056】
「2−5」(相違箇所解析処理)
左側画面に表示した穴明加工リストから1つの穴明工具行を選択した状態で右クリック等することにより、図19のように、「CAD図とのデータ確認」の機能選択メニュー77をクリック位置付近にポップアップ表示する。「CAD図とのデータ確認」の機能選択メニューを選択することによって、穴明図データ層52とワーク図データ層53との穴明位置の相違に関して解析し、穴位置座標が相違する描画要素を、穴明位置座標が一致する他の描画要素と識別可能に、例えば赤色に変更して描画表示する。
【0057】
「2−6」(段差情報解析処理)
段差情報解析処理では、製品図を予め登録しておき、選択した複数のワーク座標のワーク図を、描画画面73と同一領域に設定した段差情報画面に一時的に表示する。その段差情報画面では、同一または異なるワーク座標について、解析して、2つの描画要素の間の距離を求める。図20のように、測定結果をポップアップ表示する。1つのワーク座標における加工面のXYについては描画画面73で測定できるが、Zについては測定はできない。その時にこの段差情報解析処理を行う。なお、本処理は、第3の描画要素解析処理と同様に行われる。
【0058】
上記構成の本装置、本プログラム、及び本記憶媒体によれば、工具軌跡にワーク図を重ね合わせて描画できるので、切削加工内容を容易かつ迅速に把握できる。例えば、従来ワークと類似する新規ワークのNCプログラムを作成する場合、従来ワークのNCプログラムと新規ワークのCADデータ、または従来ワークのNCプログラムと新規ワークのNCプログラムとを用いて、工具軌跡、穴明加工について相違箇所の確認が容易かつ迅速にできる。よって、間違いの少ないNCプログラムが作成できるので、初品トライアル加工時間が短縮でき、操作者の負荷を軽減できる。
【0059】
各画面71〜74にそれぞれ関連付けた表示内容を連動表示させたので、NCプログラムの改良・改善を行う際に、変更箇所をそれぞれの画面に反映させることができ、NCプログラムの作成初心者でも分かり易い。それぞれの画面の連動表示形式をカスタマイズすれば、操作者にとってより使い易いNCプログラム開発環境を整えることができる。
【0060】
また、工具軌跡を、NCプログラムの1ブロック毎に順逆両方向、あるいは部分的に描画できるので、加工スタート位置や加工順序の確認が容易で、複雑な加工であっても理解し易い。
【0061】
ワーク図、工具軌跡、穴明図の選択した描画要素の諸元を、描画画面73上で求めて寸法確認等できるので、いちいち紙図面等の寸法表記を確認する手間を省くことができ、また読み取り間違い等を少なくできる。
【0062】
また、解析結果を所定の画面71〜74に自動的に連動表示するので、M/Cの操作者がNCプログラムの変更箇所を事前にチェックして入力間違いを防止でき、たとえ操作者が初心者であっても、NCプログラムの完成度を向上できる。
【0063】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、下記のように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)NCプログラム、および加工図面のCADデータは、記憶部に予め格納するに限らず、NCプログラムのDBやCADデータのDB等の外部装置から通信I/Fを介して利用可能である。
(2)概要情報抽出手段は、これら「プログラム番号」、「コメント文」、および「ワーク座標」に限らず、切削情報も同様に、他のデータワードで特定される情報を抽出するように構成しても良い。
(3)連動表示手段は、第1〜第4表示領域の縦横サイズを相互に連動させて変更可能とするように構成しても良い。
(4)第1〜第4表示領域は、画面上の任意の位置に変更して設定しても良い。
(5)概要表示画面に表示する概要情報は、サブプログラム等、表示内容の詳細程度を変更して表示するように設定しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1・・NCプログラムの解析編集装置、4・・NC工作機械(マシニングセンタM/C)、5・・PC、9・・記憶部、11・・表示部、13・・編集操作部、15・・通信I/F部、17・・編集制御部、19・・NCプログラムの解析編集プログラム、21・・NCプログラム、23・・CADデータ、27・・記憶媒体、41・・NCプログラム編集手段、43・・概要情報編集手段、45・・切削加工情報抽出手段、47・・形状情報抽出手段、49・・図形描画手段、51・・工具軌跡データ層、52・・穴明図データ層、53・・ワーク図データ層、55・・切削加工情報表示手段、57・・連動表示手段、59・・切削加工解析手段、61・・ミル加工解析手段、63・・穴明加工解析手段、71・・第1表示領域(編集画面)、72・・第2表示領域(概要表示画面)、73・・第3表示領域(描画画面)、74・・第4表示領域(リスト画面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に、ワークの加工図面に従いNC工作機械を数値制御させるための所定のデータワードからなるNCプログラムを記憶部から読み出して文字表示するとともに、前記記憶部から読み出した前記加工図面のCADデータからワークの加工形状を描画表示して、前記NCプログラムを解析および編集するNCプログラムの解析編集装置であって、
前記NCプログラムの前記データワードを含むブロック行を前記表示部の表示画面上に設定した第1表示領域に編集可能に表示するNCプログラム編集手段と、
前記NCプログラムから前記データワードに基づき、前記NCプログラムの概要を示す概要情報を抽出し、前記概要情報を前記表示画面上に設定した第2表示領域に編集可能に表示する概要情報編集手段と、
前記NCプログラムから前記データワードに基づき、切削工具によるミル加工および穴明加工に関するミル情報および穴明情報を切削加工情報として抽出する切削加工情報抽出手段と、
前記CADデータからそのデータ構造に基づき、ワークの加工形状に関する形状情報を抽出する形状情報抽出手段と、
前記切削加工情報または形状情報の少なくとも一つの情報に基づき、前記切削工具の工具軌跡を切削工具の種類毎に階層状に示す工具軌跡データ層を生成し、前記切削工具による穴明状態を切削工具の種類毎に階層状に示す穴明図データ層を生成し、またはワークの加工形状を所定単位毎に階層状に示すワーク図データ層を生成するとともに、生成した前記工具軌跡データ層、穴明図データ層、またはワーク図データ層の少なくとも一つのデータ層を、前記表示画面上に規定した第3表示領域に重ね合わせて描画表示する図形描画手段と、
前記切削加工情報を、前記表示画面上に設定した第4表示領域に表示する切削加工情報表示手段と、
前記第2表示領域上で選択された前記概要情報に応じて、その抽出元として特定される前記NCプログラムの先頭ブロックを第1表示領域に、前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層を第3表示領域に、または、前記切削加工情報を第4表示領域に、それぞれ連動表示する連動表示手段と、
前記第3表示領域上で前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層から選択された少なくとも1つの描画要素に関する諸元を、切削加工情報または形状情報を解析して求め、求めた諸元を前記表示画面上に設定した第5表示領域に表示する切削加工解析手段と、
を備えてなる、
ことを特徴とするNCプログラムの解析編集装置。
【請求項2】
前記切削加工解析手段は、
前記第4表示領域上で選択した切削加工情報を解析し、前記工具軌跡データ層または前記穴明図データ層のうち、その切削加工情報に対応する1つのデータ層を特定して、識別可能に第3表示領域に描画表示する、
請求項1に記載のNCプログラムの解析編集装置。
【請求項3】
前記概要情報編集手段は、
前記概要情報として、少なくともプログラム番号、コメント文、またはワーク座標を抽出して表示し、
前記切削加工情報抽出手段は、
前記ミル情報として、少なくとも切削工具の種類、工具径、主軸の位置座標、または切削深さを抽出するとともに、前記穴明情報として、少なくとも切削工具の種類、穴径、または穴の位置座標を抽出し、
前記形状情報抽出手段は、
前記形状情報として、少なくとも描画要素の属性、または描画要素の始点終点を抽出し、
前記連動表示手段は、
前記第2表示領域で選択された概要情報が、
前記コメント文の場合、
当該コメント文に含まれる加工内容に対応して、第1表示領域にNCプログラムの対応処理単位における所定の先頭ブロックを表示し、
前記ワーク座標の場合、
前記第3表示領域に前記ワーク座標におけるワーク図データ層および工具軌跡データ層を描画表示し、第1表示領域にNCプログラムの所定の先頭ブロックを表示し、前記第4表示領域に前記ワーク座標における切削工具の切削深さを表示する、
請求項1または2に記載のNCプログラムの解析編集装置。
【請求項4】
コンピュータにおいて、表示部に、ワークの加工図面に従いNC工作機械を数値制御させるための所定のデータワードからなるNCプログラムを記憶部から読み出して文字表示するとともに、前記記憶部から読み出した前記加工図面のCADデータからワークの加工形状を描画表示して、前記NCプログラムを解析および編集するNCプログラムの解析編集方法であって、
前記NCプログラムの前記データワードを含むブロック行を前記表示部の表示画面上に設定した第1表示領域に編集可能に表示するNCプログラム編集処理と、
前記NCプログラムから前記データワードに基づき、前記NCプログラムの概要を示す概要情報を抽出し、前記概要情報を前記表示画面上に設定した第2表示領域に編集可能に表示する概要情報編集処理と、
前記NCプログラムから前記データワードに基づき、切削工具によるミル加工および穴明加工に関するミル情報および穴明情報を切削加工情報として抽出する切削加工情報抽出処理と、
前記CADデータからそのデータ構造に基づき、ワークの加工形状に関する形状情報を抽出する形状情報抽出処理と、
前記切削加工情報または形状情報の少なくとも一つの情報に基づき、前記切削工具の工具軌跡を切削工具の種類毎に階層状に示す工具軌跡データ層を生成し、前記切削工具による穴明状態を切削工具の種類毎に階層状に示す穴明図データ層を生成し、またはワークの加工形状を所定単位毎に階層状に示すワーク図データ層を生成するとともに、生成した前記工具軌跡データ層、穴明図データ層、またはワーク図データ層の少なくとも一つのデータ層を、前記表示画面上に規定した第3表示領域に重ね合わせて描画表示する図形描画処理と、
前記切削加工情報を、前記表示画面上に設定した第4表示領域に表示する切削加工情報表示処理と、
前記第2表示領域上で選択された前記概要情報に応じて、その抽出元として特定される前記NCプログラムの先頭ブロックを第1表示領域に、前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層を第3表示領域に、または、前記切削加工情報を第4表示領域に、それぞれ連動表示する連動表示処理と、
前記第3表示領域上で前記工具軌跡データ層、前記穴明図データ層もしくは前記ワーク図データ層から選択された少なくとも1つの描画要素に関する諸元を、切削加工情報または形状情報を解析して求め、求めた諸元を前記表示画面上に設定した第5表示領域に表示する切削加工解析処理と、
を行う、
ことを特徴とするNCプログラムの解析編集方法。
【請求項5】
前記切削加工解析処理は、
前記第4表示領域上で選択した切削加工情報を解析し、前記工具軌跡データ層または前記穴明図データ層のうち、その切削加工情報に対応する1つのデータ層を特定して、識別可能に第3表示領域に描画表示する、
請求項4に記載のNCプログラムの解析編集方法。
【請求項6】
前記概要情報編集処理は、
前記概要情報として、少なくともプログラム番号、コメント文、またはワーク座標を抽出して表示し、
前記切削加工情報抽出処理は、
前記ミル情報として、少なくとも切削工具の種類、工具径、主軸の位置座標、または切削深さを抽出するとともに、前記穴明情報として、少なくとも切削工具の種類、穴径、または穴の位置座標を抽出し、
前記形状情報抽出処理は、
前記形状情報として、少なくとも描画要素の属性、または描画要素の始点終点を抽出し、
前記連動表示処理は、
前記第2表示領域で選択された概要情報が、
前記コメント文の場合、
当該コメント文に含まれる加工内容に対応して、第1表示領域にNCプログラムの対応処理単位における所定の先頭ブロックを表示し、
前記ワーク座標の場合、
前記第3表示領域に前記ワーク座標におけるワーク図データ層および工具軌跡データ層を描画表示し、第1表示領域にNCプログラムの所定の先頭ブロックを表示し、前記第4表示領域に前記ワーク座標における切削工具の切削深さを表示する、
請求項4または5に記載のNCプログラムの解析編集方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載のNCプログラムの解析編集方法を前記コンピュータに実現させる、
ことを特徴とするNCプログラムの解析編集プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のNCプログラムの解析編集プログラムを記憶してコンピュータで読取り可能とする、
ことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−22666(P2011−22666A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164967(P2009−164967)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】