説明

Na−ベータ−アラニネートおよびカルシウムパントテネートの合成方法

R−パントラクトンと縮合させてD−パントテネートを得るのにそのまま使用できるNa−β−アラニネートを、β−アミノ−プロピオニトリルから製造する方法であって、アルコール溶液としてNa−β−アラニネートを得る工程の改良が、β−アミノ−プロピオニトリルの加水分解を水中で行い、その後、溶媒を水からアルコールに交換し、それにより、最終のβ−アラニネート混合物に含まれる副生物の量がD−パントテネートの品質に悪影響を及ぼすことのない量となるようにすることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、β−アミノ−プロピオニトリルからNa−β−アラニネートを製造する方法に関する。
【0002】
Na−β−アラニネートは、アラニネートをL−またはDL−パントラクトンと反応させることによってそれぞれNa−またはCa−D−またはDL−パントテネートを製造する際の中間体である。
【0003】
米国特許第4,258,210号明細書には、ベータ−アミノプロピオニトリルから結晶性ナトリウムD−パントテネートを製造する方法が記載されている。その方法では、ベータ−アミノプロピオニトリルを水酸化ナトリウム水溶液により鹸化してナトリウムベータ−アラニネート溶液を生成させ、二段乾燥法により水分含量1%の乾燥ナトリウムベータ−アラニネートを得、その乾燥ナトリウムベータ−アラニネートを低級アルカノール溶媒に溶解し、L−パントラクトンと反応させて結晶性ナトリウムD−パントテネートを得る。しかしながら、ヒトが消費するのに適した純度のナトリウムD−パントテネートを得るには、さらなる結晶化が必要であることが判明している。
【0004】
従来法のナトリウムベータ−アラニネートに含まれる主な不純物は、無機イオンは別にして、ベータ−アミノプロピオニトリルの水酸化ナトリウム水溶液による鹸化の際に生じるもの、すなわち、ナトリウム塩の形態のジ−(2−カルボキシエチル)−アミン(イミノ−ジ−プロピオン酸(IDPA)とも称する)およびベータ−アラニル−ベータ−アラニン(それぞれ、IおよびII)である。アミンIはパントラクトンと反応しないが、ジペプチドIIはL−パントラクトンと反応してD(+)−N−(2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブチリル)−β−アラニル−β−アラニン(III)を生成する。
【0005】
ヒトが消費するための高純度のD−カルシウムパントテネートの需要が増加していることを考慮すれば、上記方法をさらに改良するニーズ、および、非常に経済的な、すなわち、さらなる結晶化を行う必要がなく、収率の高い高純度結晶質ナトリウムおよびカルシウムD−パントテネート合成法を開発するニーズが存在する。
【0006】
したがって、本発明は、R−パントラクトンと縮合させてD−パントテネートを得るのにそのまま使用できるNa−β−アラニネートを、β−アミノ−プロピオニトリルから製造する改良された方法であって、アルコール溶液としてNa−β−アラニネートを得る工程の改良が、
(a)アルカリ性水性媒体またはアルコール/水混合物中で、β−アミノ−プロピオニトリルを加水分解し、その後、
(b)最終のβ−アラニネート混合物に含まれる副生物の量がD−パントテネートの品質に悪影響を及ぼすことのない量となる方法で、溶媒をアルコールに交換すること
を含む方法に関する。鹸化は、水、または水と1種もしくは複数のアルコールとの混合物中で行うことができる。必要ならば、添加溶剤を使用するもしくは使用しない蒸留をそれ自体知られた方法で行うことによって、水を除去することができる。「交換」という用語は、元の1種もしくは複数の溶媒の一部または全部を除去することを含むものとする。これは、L−パントラクトンと直接反応させて高純度のナトリウムD−パントテネート(これも、また、カルシウムD−パントテネートに変換することができ、後者はヒト用食品での使用、または医薬品としての使用における仕様要求を満たす)を得ることができるナトリウムベータ−アラニネートのアルコール溶液が最終的に得られること意味する。これは、より具体的には、例えばカルシウムパントエートの含量が0.80%(w/w)未満で、かつカルシウムパント−β−アラニル−β−アラニネート(IIIのカルシウム塩)の含量が0.10%(w/w)未満であることを意味する。
【0007】
より具体的には、本発明の改良方法は、
(a)β−アミノ−プロピオニトリルを過剰の水酸化ナトリウム水溶液またはアルコール/水溶液に60〜95℃の温度で加え、必要ならばその混合物をさらに加熱し、水を除去する工程;
(b)過剰の水酸化ナトリウムをβ−アラニンにより、β−アラニンが過剰になるのを避けつつ、中和して、所望の濃度の溶液を直接得る工程;
(c)水を除去する工程、および
(d)ナトリウム−β−アラニネートをC1〜8−アルコールに溶解して、所望の濃度のナトリウム−β−アラニネートアルコール溶液を得る工程
を含む。
【0008】
β−アミノ−プロピオニトリルは、攪拌しながら、過剰の水酸化ナトリウム水溶液(例えば、約33w/w%溶液)に添加することが有利である。β−アミノ−プロピオニトリルを添加する好ましい温度範囲は、90〜95℃である。生成するアンモニアは、鉱酸水溶液により外部スクラバー中に公知の方法で吸収させることができる。
【0009】
β−アミノ−プロピオニトリルと水酸化ナトリウムの好ましいモル量は、1:1.01〜10の範囲であり、より好ましくは1:1.01〜2.0、最も好ましくは1:1.03〜1.1の範囲である。反応終了後、反応混合物をさらに加熱、例えば、還流させて、水の少なくとも一部を蒸留により除去してもよい。この操作中に内部温度は上昇するであろう。反応は、必要ならば不活性ガス雰囲気中、大気圧下、または加圧下で行ってもよい。
【0010】
残った反応混合物中の過剰な水酸化ナトリウムをβ−アラニンにより中和する。従来技術の方法では、このβ−アラニンを購入していた。しかしながら、本発明では、工程(b)の過剰な水酸化ナトリウムの中和に用いるβ−アラニンを、本方法それ自体の中で、本発明の工程(a)で得られたナトリウムβ−アラニネートの一部をイオン交換することにより得る。この副工程により、経済性の面でプロセス全体がより魅力的になる。多くの適切なイオン交換樹脂が商業的に入手でき、この目的のために使用することができる。
【0011】
適当な寸法のカラム中で、樹脂にβ−アラニネートを通液し、脱イオン水で樹脂を洗浄した後、樹脂を鉱酸水溶液で再生する。言うまでもなく、中和用のβ−アラニンは、また、当量の酸、好ましくは鉱酸水溶液を加えることにより、そのナトリウム塩から得ることができる。
【0012】
本方法の中和工程では、過剰なβ−アラニンの使用は避けるべきである。これは、当該技術分野でよく知られた方法、例えば、滴定を行うことにより達成することができる。60%のナトリウムβ−アラニネート水溶液を得ることが好ましい。
【0013】
残留する水のナトリウムβ−アラニネート溶液からの除去は、常圧または減圧下で、当該技術分野でよく知られた方法、例えば、添加溶剤を用いる共沸蒸留、すなわち米国特許第4,258,210号明細書に記載されている方法により行うことができる。この特定の二段水分除去法を使用する場合には、第1の工程において、流下薄膜型蒸発器を使用し、残留水分量が5〜15%(w/w)になるまで減圧下で蒸発させ、そして、第2の工程において、薄膜型蒸発器を使用し、残留水分量が0.5%(w/w)未満、より好ましくは0.20%(w/w)以下になるまで、さらに低い圧力下で蒸発させることが有利である。第2の蒸発工程は、窒素ストリッピングを行うことにより達成することができる。
【0014】
二段減圧水分除去法の結果として、高純度のナトリウムβ−アラニネート溶解物が得られ、これを、真空解放後、C1〜8アルカノール、好ましくはメタノールまたはエタノールに溶解して、水分含有量が0.5%以下、好ましくは0.2%(w/w)以下である、1〜40%(w/w)のナトリウムβ−アラニネートのアルカノール溶液を得る。「溶解した」および「溶解している」という用語は、それぞれ「分散した」および「分散している」を含む。
【0015】
このようにして得られた、または、得ることができるナトリウムβ−アラニネート溶液は、それ自体、本発明の一態様を示すものであるが、その後、R−パントラクトンと反応させてナトリウムパントテネートを得ることができる。それは、必要に応じて、さらにパントテン酸またはその塩、好ましくはカルシウム塩に、結晶化工程の追加を必要とせずに変換される。「溶液」および「溶解」という用語は「分散」を含む。
【0016】
それ自体知られた方法、またはそれに類似した方法で、カルシウムまたはナトリウムD−パントテネートがそれぞれ得られ、後者はカルシウムD−パントテネートへと変換することができる。
【0017】
これらの溶液から所望のカルシウムD−パントテネートを、高収率で、かつヒト用食品適用物、ヒト用ビタミン調製物または医薬製剤の調製に使用するための仕様を満たす純度で得ることができる。
【0018】
以上説明した方法、および以下の実施例で得られた/得ることができるナトリウムβ−アラニネート溶液およびカルシウムD−パントテネートは、本発明の一態様である。
【0019】
最後に、ここに記載した方法により得られるカルシウムD−パントテネートの、ヒト用食品および動物用飼料適用物、ビタミン調製物、並びに医薬製剤の製造における使用もまた、本発明の一態様である。
【0020】
そのようなヒト用食品および動物用飼料適用物、ビタミン調製物、並びに医薬製剤の製造方法は、当業者にはよく知られている。
【0021】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。特に断らない限り、全てのパーセント表示はw/w基準である。
【0022】
[実施例1]
[β−アミノプロピオニトリルからのNa−β−アラニネート]
13.34kgの脱イオン水(MW=18.02、740.29mol、2.6当量)および25.12kgのNaOH水溶液(50%)(NaOH:MW=40.00、314.00mol、1.1当量;水:MW=18.02、697.00mol、2.4当量)の混合物を63Lのステンレス鋼製反応槽中で内部温度(IT)90℃に加熱した。20.02gのベータ−アミノプロピオニトリル(APN)(MW=70.09、99.0w/w%、282.77mol、1.0当量)を、90〜95℃のITで30分かけてこの予備加熱した混合物に加えた。生成したアンモニアを、10%硫酸水溶液を充填した外部スクラバーに吸収させた。
【0023】
APN添加完了後、反応混合物を90℃のITで45分間攪拌した。その後、反応混合物を加熱還流させた。還流下、反応混合物から6.57kgの水が蒸留された。水の還流/蒸留を3.5時間行った後、HPLCにより反応混合物を分析した。
【0024】
結果:β−アラニン:52.37w/w%;IDPA:0.68w/w%;ジペプチド:0.02w/w%。
【0025】
46.45kgの反応混合物が得られた(上記分析で収率96.7%)。ITが30℃になるまで反応混合物を冷却し、分割した。40.88kg(88%)を、直接、中和工程に使用し、5.57kg(12%)を、3.55kgの脱イオン水で希釈し、ベータ−アラニンを生成するイオン交換工程に使用した。
【0026】
[実施例2]
[イオン交換によるβ−アラニン]
β−アラニン溶液を生成するため、実施例1で得られた希釈反応混合物(9.0kg)をイオン交換工程に使用した。
【0027】
分析(HPLC):β−アラニン:32.01w/w%;IDPA:0.28w/w%;ジペプチド:0.01w/w%。
【0028】
使用前に脱イオン水により洗浄した、直径5.3cmの2.5mステンレス鋼製カラムに、ローム・アンド・ハース(Rohm&Haas)製のAmberlyst 15を4.5L充填した(1.7mol/L、7.65mol)。Na−ベータ−Ala供給溶液を300g/分の流量でカラムに供給した。
【0029】
この特定の装置により、この供給溶液を用いて5サイクル実行した。各サイクル後、10%の硫酸溶液でカラムを再生し、その後、水で洗浄した。
【0030】
中和用β−アラニンを含有する5サイクル全ての主フラクションを混合したところ、9.76kgが得られた。ベータ−Alaの回収率:95.6%。
【0031】
分析:β−アラニン:28.21w/w%;IDPA:0.35w/w%;ジペプチド:0.01w/w%;ナトリウム(イオンクロマトグラフィ[IC]):438ppm。
【0032】
[実施例3]
[過剰NaOHの正確な中和]
実施例1に記載したようにして得られた38.57kgの非希釈反応溶液の過剰NaOHを、63Lのステンレス鋼製容器中で、正確に7.12kgの実施例2で得られたβ−アラニン溶液で中和した。IT<27℃で、30分かけてベータ−アラニン溶液を加えた。
【0033】
β−アラニン溶液の必要量は、少量の反応溶液のサンプルを滴定することによって求めた。2.50%のβ−アラニンによる過剰中和が最適であると考えられた。
【0034】
β−アラニン溶液を添加後、混合物をさらに15分間攪拌した。45.69kgの中和溶液が得られた。
【0035】
結果:β−アラニン:48.26w/w%;IDPA:0.67w/w%;ジペプチド:0.01w/w%。
【0036】
その結果、60.19%のNa−ベータ−Ala水溶液が得られた。混合物中のβ−アラニン過剰量は0.22%であった。
【0037】
[実施例4]
[Na−ベータ−アラニネート水溶液からの水の除去]
実施例3からのNa−ベータ−アラニネート溶液を、5.59kg/時で再循環式流下薄膜型蒸発器に供給した。流下薄膜型蒸発器は以下の条件で運転した。
圧力:175mbar。流下膜温度:150℃。流下膜最下部温度:100℃。流下膜再循環温度:120℃。再循環:20kg/時。
【0038】
混合物から1.65kg/時の水が流下膜で蒸留された。濃縮液を、直接、ジャケット付チューブ(温度:130℃)を通して薄膜型蒸発器へ供した。濃縮液は以下の組成であった(ベータ−Alaおよび副生物についてはHPLC、残りは水)。
分析:β−アラニン:66.75w/w%;IDPA:2.11w/w%;ジペプチド:0.01w/w%;水:14.61w/w%。
【0039】
濃縮液を3.90kg/時で薄膜型蒸発器へ供給した。薄膜型蒸発器を以下のパラメータで運転した。
圧力:18mbar;薄膜温度:160℃;薄膜最下部温度:150℃。
【0040】
Na−ベータ−Alaから0.55kg/時の水が薄膜型蒸発器で蒸留された。
【0041】
薄膜型蒸発器からの溶融ナトリウムベータ−アラニネートを、5.78kg/時のメタノールで満たされている63Lのステンレス鋼製溶解槽へ直接投入した。溶解槽の温度は5℃に調節し、溶融物の溶解過程で内部温度が<25℃になるようにした。
【0042】
溶解槽から9.16kg/時の乾燥Na−ベータ−Alaメタノール溶液が得られた。
【0043】
分析:β−アラニン:28.67w/w%;IDPA:1.41w/w%;ジペプチド:0.01w/w%;水:0.19w/w%。
【0044】
ベータ−アラニンについて算出した回収率は、二段乾燥プロセス全体で99.0%であった。
【0045】
この溶液を、直接、次のナトリウムパントテネート縮合反応へ供した。
【0046】
[カルパン(Calpan)の調製]
100gの乾燥Na−ベータ−Alaメタノール溶液(321.8mmol)を41.9g(321.8mmol)のR−パントラクトンと反応させ、Na−D−パントテネート溶液を得た。
【0047】
ナトリウムからカルシウムへのイオン交換を含む仕上げは、当業者に公知の方法で行った。
【0048】
カルパン(Calpan)生成物:79.64g、163.93mmol。収率:96.3%。
【0049】
[分析:]
カルシウムパントテネート:98.09w/w%
カルシウムパントエート:0.59w/w%
カルシウムパント−ベータ−Ala−ベータ−Ala:0.02w/w%
水:100w/w%までの残量
【0050】
[実施例5]
[窒素によるNa−ベータ−アラニネート水溶液からの水の除去]
この実験では、別のNa−ベータ−アラニネート水溶液を使用した。この水分除去のための出発物質は、ベータ−アラニンによる過剰中和率は3.4%であり、分析したところ、β−アラニン:46.41w/w%;IDPA:1.69w/w%;ジペプチド:0.06w/w%を含有した。
【0051】
この溶液を、5.75kg/時で再循環式流下薄膜型蒸発器に供給した。流下薄膜型蒸発器を以下の条件で運転した。
圧力:175mbar。流下膜温度:150℃。流下膜最下部温度:100℃。流下膜再循環温度:120℃。再循環:20kg/時。
【0052】
混合物から1.86kg/時の水が流下膜で蒸留された。濃縮液を、直接、ジャケット付チューブ(温度:130℃)を通して薄膜型蒸発器へ供した。濃縮液は以下の組成であった(ベータ−Alaおよび副生物についてはHPLC、残りは水)。
分析:β−アラニン:68.59w/w%;IDPA:1.94w/w%;ジペプチド:0.09w/w%;水:11.55w/w%。
【0053】
濃縮液を3.90kg/時で薄膜型蒸発器へ供給した。薄膜型蒸発器を以下の条件で運転した。
圧力:22mbar;薄膜温度:160℃;薄膜最下部温度:150℃。薄膜型蒸発器最下部における窒素供給量:30L/時。
【0054】
0.41kg/時の水が薄膜型蒸発器で蒸留除去された。薄膜型蒸発器からの溶融Na−β−アラニネートは、直接、5.85kg/時のメタノールで満たされている63Lステンレス鋼製溶解槽へ投入した。溶解槽の温度は5℃に調節し、溶融物の溶解過程でITが<25℃になるようにした。
【0055】
溶解槽から9.27kg/時の乾燥Na−β−Alaメタノール溶液が得られた。
【0056】
分析:β−アラニン:28.82w/w%;IDPA:1.28w/w%;ジペプチド:0.04w/w%;水:0.09w/w%。
【0057】
ベータ−アラニンについて算出した回収率は、二段乾燥プロセス全体で量論通りであった。
【0058】
この溶液を、直接、次のナトリウムパントテネート縮合反応へ供した。
【0059】
[カルパン(Calpan)の調製]
100gの乾燥Na−ベータ−Alaメタノール溶液(323.4mmol)を42.1g(323.4mmol)のR−パントラクトンと反応させ、Na−D−パントテネート溶液を得た。
【0060】
ナトリウムからカルシウムへのイオン交換を含む仕上げは、当業者に公知の方法で行った。
【0061】
カルパン(Calpan)生成物:76.78g、160.68mmol。収率:92.9%。
【0062】
[分析:]
カルシウムパントテネート:99.73w/w%
カルシウムパントエート:0.25w/w%
カルシウムパント−ベータ−Ala−ベータ−Ala:0.08w/w%
水:100w/w%までの残量
【0063】
[実施例6]
[過剰NaOHの過剰中和:]
β−アラニン:51.80w/w%、IDPA:不明、およびジペプチド:0.17w/w%を含有する非希釈反応溶液(実施例1と同じ方法で行った加水分解実験で得られたもの)40.88kg中の過剰NaOHを、63Lのステンレス鋼製容器中で、β−アラニン:26.91w/w%;IDPA:不明、およびジペプチド:0.03w/w%、ナトリウム(IC):380ppmを含有すると分析されたβ−アラニン溶液8.91kgにより中和した。
【0064】
ベータ−アラニン溶液をITを<27℃として120分かけて添加した。
【0065】
滴定によれば、これはベータ−アラニンの21.5%の過剰中和であった。
【0066】
β−アラニン溶液を添加した後、混合物をさらに15分間攪拌した。49.49kgの中和溶液が得られた。
【0067】
結果:β−アラニン:47.37w/w%、IDPA:0.70w/w%、ジペプチド:0.02w/w%。
【0068】
混合物中における過剰のベータ−アラニンは2.02w/w%であった。
【0069】
[実施例7]
[過剰中和されたNa−ベータ−アラニネート水溶液からの水の除去]
実施例6で得られた過剰中和のNa−ベータ−アラニネート水溶液を7.29kg/時で再循環式流下薄膜型蒸発器に供給した。流下薄膜型蒸発器を以下の条件で運転した。
圧力:175mbar。流下膜温度:150℃。流下膜最下部温度:100℃。流下膜再循環温度:120℃。再循環:20kg/時。
【0070】
混合物から2.23kg/時の水が流下薄膜型蒸発器で蒸留除去された。濃縮液を、直接、ジャケット付チューブ(温度:130℃)を通して、薄膜型蒸発器へ供した。濃縮液は以下の組成であった(ベータ−Alaおよび副生物についてはHPLC、残りは水)。
分析:β−アラニン:64.16w/w%;IDPA:0.34w/w%;ジペプチド:0.05w/w%;水:13.49w/w%。
【0071】
濃縮液を5.06kg/時で薄膜型蒸発器へ供給した。薄膜型蒸発器を以下のパラメータで運転した:
圧力:29mbar;薄膜温度:160℃;薄膜最下部温度:150℃。薄膜型蒸発器下部における窒素供給量:40L/時。
【0072】
0.57kg/時の水が薄膜型蒸発器で蒸留除去された。薄膜型蒸発器からの溶融ナトリウムベータ−アラニネートを、直接、7.39kg/時のメタノールで満たされている溶解槽へ供給した。溶解槽の温度は5℃に調節し、溶融物の溶解過程でITが<25℃になるようにした。
【0073】
溶解槽から11.69kg/時の乾燥Na−ベータ−Alaメタノール溶液が得られた。
【0074】
分析:β−アラニン:27.02w/w%;IDPA:0.29w/w%;ジペプチド:0.07w/w%;水:0.15w/w%。
【0075】
ベータ−アラニンについて算出した回収率は、二段乾燥プロセス全体で、91.5%であった。
【0076】
この溶液を、直接、次のナトリウムパントテネート縮合反応へ供した。
【0077】
[カルパン(Calpan)の調製]
100gの乾燥Na−ベータ−Alaメタノール溶液(303.3mmol)を39.5g(303.3mmol)のR−パントラクトンと反応させ、Na−D−パントテネート溶液を得た。
【0078】
ナトリウムからカルシウムへのイオン交換を含む仕上げは、当業者に公知の方法で行った。
【0079】
カルパン(Calpan)生成物:79.19g、160.06mmol。収率:94.3%。
【0080】
[分析:]
カルシウムパントテネート:96.32w/w%
カルシウムパントエート:0.14w/w%
カルシウムパント−ベータ−Ala−ベータ−Ala:0.16w/w%(実施例4および5に比べ極めて高い)
水:100w/w%までの残量
【0081】
[実施例8]
[完全には分解されていないジペプチドとの反応、1.1当量のNaOHによる中和なし]
水酸化ナトリウムペレット21.7g(540.2mmol、1.1当量)を45.1gの脱イオン水(2503.0mmol、5.1当量)に室温で溶解させた。ITが90℃になるまで溶液を加熱した。この温度で35.0gのアミノプロピオニトリル(490.5mmol、1.0当量)の添加を開始した。APNの添加は30分以内に行った。その後、IT90℃で反応混合物を10.5時間攪拌した。
【0082】
分析:β−アラニン:48.54w/w%;IDPA:0.15w/w%;ジペプチド:0.21w/w%。
【0083】
45.11gの反応混合物(全量93.5gから;246.0mmolのNa−ベータ−アラニネート)をロータリーエバポレータに供した。残留アンモニアおよび大部分の水を、浴温度60℃、700〜600mbarの減圧下で除去した。全量147.4gのn−ブタノールを3回に分けて懸濁水に加えた。各n−ブタノール添加後、n−ブタノール/水をロータリーエバポレータで共沸により除去し、68.6gのワックス状固体を得た。固体を49.5gのメタノールに溶解した。
【0084】
分析:β−アラニン:19.13w/w%;IDPA:0.05w/w%;ジペプチド:0.07w/w%;水:0.20w/w%。β−アラニン253.9mmol、収率:103.2%。
【0085】
[カルパン(Calpan)の調製]
110.5gの乾燥Na−ベータ−Alaメタノール溶液(237.4mmol)を31.2g(237.3mmol)のR−パントラクトンと反応させ、Na−D−パントテネート溶液を得た。
【0086】
ナトリウムからカルシウムへのイオン交換を含む仕上げは、当業者に公知の方法で行った。
【0087】
カルパン(Calpan)生成物:56.71g、110.00mmol。収率:83.2%。
【0088】
[分析:]
カルシウムパントテネート:92.72w/w%
カルシウムパントエート:3.06w/w%(実施例4、5、7に比べ極めて高い)
カルシウムパント−ベータ−Ala−ベータ−Ala:0.19w/w%(実施例4および5に比べ極めて高い)
水:100w/w%までの残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R−パントラクトンと縮合させてD−パントテネートを得るのにそのまま使用できるNa−β−アラニネートを、β−アミノ−プロピオニトリルから製造する方法であって、アルコール溶液としてNa−β−アラニネートを得る工程の改良が、
(a)アルカリ性水性媒体またはアルコール/水混合物中で、β−アミノ−プロピオニトリルを加水分解し、その後、
(b)最終のβ−アラニネート混合物に含まれる副生物の量がD−パントテネートの品質に悪影響を及ぼすことのない量となるように、溶媒をアルコールに交換すること
を含む方法。
【請求項2】
改良が、
(a)β−アミノ−プロピオニトリルを過剰の水酸化ナトリウム水溶液またはアルコール/水溶液に60〜95℃の温度で加え、必要ならばその混合物をさらに加熱し、水を除去する工程;
(b)過剰の水酸化ナトリウムをβ−アラニンにより、β−アラニンが過剰になるのを避けつつ、中和して、所望の濃度の溶液を直接得る工程;
(c)水を除去する工程、および
(d)ナトリウム−β−アラニネートをC1〜8−アルコールに溶解して、所望の濃度のナトリウム−β−アラニネートアルコール溶液を得る工程
を含む請求項1に記載の改良方法。
【請求項3】
工程(b)の中和に用いるβ−アラニンを、本方法それ自体の中で、工程(a)で得られたナトリウムβ−アラニネートの一部をイオン交換するか、またはそのような一部を当量の酸で酸性化することにより得ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によって得られた/得ることができるナトリウム−β−アラニネート溶液。
【請求項5】
請求項1(b)または請求項2(d)で得られたナトリウム−β−アラニネートアルコール溶液を、R−パントラクトンと反応させてナトリウム−パントテネートを得、必要に応じて、それをパントテン酸またはその塩に、結晶化工程の追加を必要とせずに変換する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって得られた/得ることができるCa−パントテネート。
【請求項7】
請求項5に記載の方法によって得られた/得ることができるCa−パントテネートの、ヒト用食品および動物用飼料適用物、ビタミン調製物および医薬製剤の製造における使用。

【公表番号】特表2010−534700(P2010−534700A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518600(P2010−518600)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059201
【国際公開番号】WO2009/016025
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】