説明

OA機器用ロール

【課題】接触部材に対する接触均一性が向上するとともに、接触部材に対するストレスが低減されるOA機器用ロールを提供する。
【解決手段】軸体1の外周面に弾性層2,最外層3が順に形成されたOA機器用ロールであって、最外層3の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で複数の凹部Aが分布形成されて粗面が形成されており、上記最外層3の外周面に、平面視1cm2 当たりの質量が0.25gの平板ガラスを載置し、その平板ガラスに、軸方向の長さ1cm当たり0.15Nの荷重をかけた状態において、平板ガラスに接触する部分の面積と接触しない部分の面積の面積比が3/100〜50/100の範囲に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター等のOA(オフィス・オートメーション)機器に用いられる現像ロール,帯電ロール,給紙ロール,トナー供給ロール,転写ロール等のOA機器用ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンター等のOA機器では、現像ロール,帯電ロール,給紙ロール,トナー供給ロール,転写ロール等のOA機器用ロールが用いられている。そして、これらOA機器用ロールの外周面は、電子写真プロセスの際に、そのロールの種類に応じて、例えば、トナー,感光ドラム,用紙等と接触する。このため、上記OA機器用ロールは、外周面の表面粗さ,表面硬度等の表面特性が、そのロールの性能を大きく左右する。そこで、上記OA機器用ロールは、通常、弾性を有し、外周面が粗面化されている。
【0003】
このようなOA機器用ロールとして、例えば、弾性層の外周面に、ウレタン樹脂等の硬質粒子(砂質粒子)を内部に分散させたコート層を形成することにより、コート層の外周面を粗面化した現像ロールが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−239985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、複写やプリントの高画質化が要請されており、それに伴って、OA機器用ロールの外周面の均一性(例えば、表面粗さの均一性,表面硬度の均一性,電気特性の均一性等)が求められている。
【0005】
しかしながら、硬質粒子を分散させて形成された粗面は、通常、硬質粒子の部分が凸部、硬質粒子が存在しない部分が凹部に形成された凹凸粗面になるため、硬質粒子の添加量および分散密度等の管理を厳正に行わなければ、凸部の頂部の高さがばらつき、高い頂部のところが感光ドラム等の接触部材と点接触し、その接触圧力が局部的に高くなる。しかも、硬質粒子の凝集による表面粗さの経時的変化が起こり、長期にわたって均一な表面粗さを維持することが困難になっている。
【0006】
一方、近年、OA機器の長寿命化も要請されており、それに伴って、OA機器用ロールおよびそれと接触する接触部材(トナー,感光ドラム等)の長寿命化も要請されている。そこで、OA機器用ロールが接触部材に与えるストレスを低減させることが求められている。
【0007】
しかしながら、コート層内に硬質粒子を分散させると、コート層の内側に弾性層が形成されていたとしても、その硬質粒子により、表面硬度が高くなり、トナー,感光ドラム等の接触部材にストレスを与えてしまう。このため、接触部材が劣化し易くなり、長寿命化の要請に応えられない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、接触部材に対する接触均一性が向上するとともに、接触部材に対するストレスが低減されるOA機器用ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のOA機器用ロールは、軸体と、この軸体の外周に直接または他の層を介して形成された円筒状の最外層とを有するOA機器用ロールであって、上記最外層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で複数の凹部が分布形成されて粗面が形成されており、上記最外層の外周面に、平面視1cm2 当たりの質量が0.25gの平板ガラスを載置し、その平板ガラスに、その平板ガラスの上方からOA機器用ロールの軸に向かって、軸方向の長さ1cm当たり0.15Nの荷重をかけた状態において、最外層の外周面のうち、上記平板ガラスに接触する部分の面積(S1)と、その接触部分の接触幅内において接触しない部分の面積(S2)との面積比(S1/S2)が3/100〜50/100の範囲に設定されているという構成をとる。
【0010】
本発明者らは、OA機器用ロールと接触部材との接触均一性を向上させるとともに、接触部材に対するストレスを低減させるべく、OA機器用ロールにおける最外層の外周面の粗面形成について鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、粗面形成を複数の凹部の形成により行うと、感光ドラム等の接触部材に対しては、その接触状態が、凹部と凹部との間の部分のいわば面で行われ、硬質粒子のような点接触にならないため、接触のばらつきが小さくなるとともに接触圧力が緩和される(硬質粒子の分散による粗面では、その粗面を形成する複数の凸部の頂部の高さがばらつき、高い頂部のところが上記感光ドラムの接触部材と点接触し、接触圧力が局部的に高くなる)ことを突き止めた。そして、さらに研究を重ねた結果、最外層の外周面において、凹部以外の部分の面積〔上記平板ガラスに接触する部分の面積(S1)に相当〕と凹部の面積〔最外層の外周面に上記平板ガラスを載置した際にその平板ガラスに接触しない部分の面積(S2)に相当〕の面積比(S1/S2に相当)を特定の範囲に設定すると、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明のOA機器用ロールは、円筒状の最外層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で複数の凹部が分布形成されて粗面が形成されている。そして、凹部以外の部分の面積と凹部の面積の面積比を特定の範囲に設定している。このため、本発明のOA機器用ロールと接触する感光ドラム等の接触部材に対しては、その接触状態が、凹部と凹部との間の部分のいわば面で行われ、硬質粒子のような点接触にならないため、接触のばらつきが適正に小さくなるとともに、接触圧力が適正に緩和される。しかも、粗面形成に硬質粒子を用いていないことから、最外層の表面硬度を低く維持することができ、トナー,感光ドラム等の接触部材に対するストレスを低減することができる。したがって、これら接触圧力の緩和および接触部材に対するストレスの低減から、OA機器用ロールと接触する接触部材(トナー,感光ドラム等)の寿命を延ばすことができる。さらに、粗面形成に硬質粒子を用いていないことから、硬質粒子の凝集が起こらなくなるため、表面粗さの経時的変化が起こらず、長期にわたって表面粗さを一定に維持することができる。また、上記凹部の形成は、その凹部の分布密度や凹部の大きさ等の制御が比較的簡単にできるため、OA機器用ロールの外周面における表面粗さを比較的簡単に制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のOA機器用ロールは、円筒状の最外層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で複数の凹部が分布形成されて粗面が形成されている。そして、上記最外層の外周面に、平面視1cm2 当たりの質量が0.25gの平板ガラスを載置し、その平板ガラスに、その平板ガラスの上方からOA機器用ロールの軸に向かって、軸方向の長さ1cm当たり0.15Nの荷重をかけた状態において、最外層の外周面のうち、上記平板ガラスに接触する部分の面積(S1)と、その接触部分の接触幅内において接触しない部分の面積(S2)との面積比(S1/S2)が3/100〜50/100の範囲に設定されている。このため、本発明のOA機器用ロールは、感光ドラム等の接触部材に対して、凹部と凹部との間の部分で略均一に面接触するようになり、その接触のばらつきを適正に小さくすることができるとともに、接触圧力を適正に緩和することができる。さらに、外周面の粗面形成に硬質粒子を用いていないため、最外層の表面硬度を低く維持することができ、トナー,感光ドラム等の接触部材に対するストレスを低減することができる。
【0013】
特に、各凹部の開口径が50〜500μmの範囲、各凹部の深さが3〜20μmの範囲、隣り合う凹部と凹部との間の開口縁間最短距離が1〜20μmの範囲に設定されている場合には、接触部材に対する接触のばらつきをより適正に小さくすることができるとともに、接触圧力をより適正に緩和することができる。
【0014】
また、凹部が周方向および軸方向に規則的に分布形成されている場合には、OA機器用ロールの表面粗さをより均一にすることができ、接触部材に対する接触均一性の向上および接触部材に対するストレスの低減についてより制御し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1(a),(b)は、本発明のOA機器用ロールの一実施の形態を示している。この実施の形態のOA機器用ロールは、横断面(軸に直交する面)形状が真円状であって、円柱状の軸体1と、この軸体1の外周面に形成された円筒状の弾性層2と、この弾性層2の外周面に形成された円筒状の最外層3とから構成されている。また、上記最外層3の外周面には、複数の凹部(ディンプル)Aが、相互に開口縁部が重なり合わない状態で、分布形成されており、それにより、その外周面が粗面に形成されている。この実施の形態では、凹部Aを軸方向に列状に形成して凹部列Lをつくり、この凹部列Lを周方向に全周にわたって所定の間隔で複数列分布させている。そして、上記最外層3の外周面において、凹部A以外の部分の面積と凹部Aの面積の面積比を下記の特定の範囲に設定している。
【0017】
すなわち、上記面積比は、図2(a),(b)に示すように、上記最外層3の外周面に、平面視1cm2 当たりの質量が0.25gの平板ガラスGを載置し、その平板ガラスGに、その平板ガラスGの上方からOA機器用ロールの軸に向かって、軸方向の長さ1cm当たり0.15Nの荷重をかけた状態において、最外層3の外周面のうち、上記平板ガラスGに接触する部分〔図2(a)の右下がり斜線(点線)部分:凹部A以外の部分に相当する部分〕の面積(S1)と、その接触部分の接触幅〔ニップ幅:図2(a)の2本の点線C1 の間の幅〕W1 内において接触しない部分〔図2(a)の右上がり斜線(点線)部分:凹部Aに相当する部分〕の面積(S2)との面積比(S1/S2)であり、その面積比の範囲は、3/100〜50/100の範囲に設定されている。上記各面積(S1,S2)の測定およびその測定値に基づく面積比(S1/S2)の算出は、平板ガラスGの上方から電子顕微鏡で見て、任意の10個所の位置において、各個所1mm四方の正方形内について行い、面積比(S1/S2)は、それらの平均値で表される。このように、電子顕微鏡を用いて上記各面積(S1,S2)を測定するため、その測定には、上記平板ガラスGとして、透光性を有するものが用いられる。
【0018】
より詳しく説明すると、上記各凹部Aの形状は、特に限定されるものではなく、楕円や多角形等でもよいが、形成容易性の観点から、図示するように、開口形状が略円形であり、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(例えば、半球面状)であることが好ましい。また、上記各凹部Aの大きさは、上記面積比の範囲に設定し易い観点から、各凹部Aの開口径Dが50〜500μmの範囲、各凹部Aの深さFが3〜20μmの範囲、隣り合う凹部Aの開口縁間の最短距離Eが1〜20μmの範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは、各凹部Aの開口径Dが80〜250μmの範囲、各凹部Aの深さFが5〜10μmの範囲、隣り合う凹部Aの開口縁間の最短距離Eが1〜5μmの範囲である。ここで、「各凹部Aの開口径D」は、OA機器用ロールの外周面を電子顕微鏡で見て、凹部Aの開口径Dを任意の10個所で測定し、それらの平均値で表される。また、「各凹部Aの深さF」は、OA機器用ロールを厚み方向に切断し、その断面を電子顕微鏡で見て、凹部Aの深さFを任意の10個所で測定し、それらの平均値で表される。さらに、「隣り合う凹部Aの開口縁間の最短距離E」は、帯電ロールの外周面を電子顕微鏡で見て、任意の10個所の開口縁間を測定し、それらの平均値で表される。
【0019】
また、OA機器用ロールの表面粗さを外周全面にわたって均一にする観点から、凹部Aの分布形成は、周方向および軸方向に規則的になされていることが好ましい。また、隣り合う凹部Aの開口縁間の最短距離Eも全体が略同一になるようにすることが好ましい。例えば、凹部Aの形成ピッチを周方向で一定にしたり、軸方向で一定にしたりする。
【0020】
このようなOA機器用ロールの作製は、電鋳法により作製された転写用型を用いる方法,最外層3の外周面に対してレーザエッチングを行う方法,レーザ加工等により表面に凸部を形成した転写板を熱した状態で押し当てて凹部Aを形成する方法,フォトレジスト材料を用いて光を照射することにより凹部Aを形成する方法等があげられる。
【0021】
上記OA機器用ロールの製法の一例について、より詳しく説明する。まず、上記電鋳法により作製された転写用型を用いる方法は、その転写用型として、例えば、円筒状に形成され、その内周面に、上記凹部Aに対応する形状の凸部が複数分布形成されたものが用いられる。そして、上記転写用型を用いて、上記弾性層2を成形することにより、弾性層2の外周面に、上記転写用型の凸部を転写して凹部を分布形成する。そして、脱型後、ロールコーティング法,スプレーコーティング法,ディッピング法等により、弾性層2の外周面に、上記最外層3の形成材料を塗布した後、乾燥(硬化)させ、上記最外層3を形成する。この最外層3の外周面には、上記弾性層2の外周面に形成された凹部の影響により、上記凹部Aが現れている。このようにしても、上記OA機器用ロールを作製することができる(ただし、この製法により得られたOA機器用ロールは、図1のものとは、弾性層2の外周面形状等が異なる)。
【0022】
上記転写用型は、例えば、電鋳法により作製することができる。すなわち、まず、目的とする上記弾性層2と同径のアルミニウム製円柱体を準備する。ついで、そのアルミニウム製円柱体の外周面にレーザエッチングを施し、凹部を形成する。この凹部は、弾性層2の外周面に形成する凹部と同形状に形成する。つぎに、これを原型として、めっき液に浸漬し、電解めっきを行い、上記原型の表面にニッケル等のめっき層(通常、2〜7mm)を形成する。その後、めっき液から取り出し、洗浄,乾燥等を行う。そして、アルカリ等の薬品を用いて、上記原型(外周面に凹部が形成されたアルミニウム製円柱体)を溶解する。これにより、上記めっき層からなる転写用型を得ることができる。この転写用型の内周面には、上記原型(外周面に凹部が形成されたアルミニウム製円柱体)の外周面が転写されており、上記原型の外周面に形成された凹部に対応する凸部が形成されている。このように、上記原型の外周面が転写用型の内周面に転写され、この転写用型の内周面がOA機器用ロールの弾性層2の外周面に転写されるため、転写後の弾性層2において、凹部が形成されていない外周面部分が平滑になるよう、準備するアルミニウム製円柱体は、外周面が研磨等により鏡面〔十点平均粗さ(Rz)が2μm以下〕になっていることが好ましい。
【0023】
上記レーザエッチングは、つぎのようにして行われる。すなわち、レーザ光をレンズ系により微小な点状に収束し、アルミニウム製円柱体の外周面にレーザ光密度の高い点状部分を形成することにより、微小な上記凹部を形成することができる。例えば、上記レンズ系を上記アルミニウム製円柱体の軸方向に沿って直線状に複数個配置し、上記レーザ光が点状に収束した点状部分を、アルミニウム製円柱体の外周面に、軸方向に沿って一端縁から他端縁まで直線状に複数点在させるようにすると、それら点在部分を一度に上記凹部に形成し、1列の凹部列を形成することができる。さらに、上記アルミニウム製円柱体を断続的に軸周りに回転させ、その回転に同調させて断続的にレーザ光を照射すると、上記アルミニウム製円柱体の外周面に複数の凹部列を所定間隔で分布形成することができる。この凹部の形成において、レンズ系を調節することにより、レーザ光が点状に収束した点状部分を一定ピッチになるようにし、さらに、アルミニウム製円柱体の断続的回転を一定角度になるようにすると、凹部を周方向および軸方向に規則的に分布形成させることができる。また、形成される凹部の大きさは、レーザ光の出力,照射時間等を調節することにより、設定することができる。なお、上記レーザ光としては、通常、Nd−YAGレーザまたはエキシマレーザを用いる。また、上記凹部の形成は、1個のレーザ光をアルミニウム製円柱体の軸方向に走査させ、その走査の過程でレーザ光の照射を断続させるようにしてもよい。
【0024】
また、OA機器用ロールの製法の他の例として、最外層3の外周面に対してレーザエッチングを行う方法は、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、軸体1の外周面に、必要に応じて接着剤等を塗布し、これを成形用金型の中空部に同軸的に設置し、密封した後、弾性層2の形成材料を注入して成形する。ついで、オーブン加硫等により加硫し、上記弾性層2を形成する。このとき用いる上記成形用金型としては、その型面(内周面)が研磨等により鏡面〔十点平均粗さ(Rz)が2μm以下〕になっていることが好ましい。これにより、上記弾性層2の外周面が鏡面に形成される。そして、脱型後、ロールコーティング法,スプレーコーティング法,ディッピング法等により、弾性層2の外周面に、上記最外層3の形成材料を塗布した後、乾燥(硬化)させ、上記最外層3を形成する。この最外層3の外周面は、上記弾性層2の外周面が鏡面に形成されることにより、平滑面に形成される。このようにして、ロール体を得る。
【0025】
そして、最外層3の外周面の凹部Aを上記レーザエッチング等により形成する。このレーザエッチングは、上記アルミニウム製円柱体の外周面に対して行った方法と同様にして行われる。すなわち、レーザ光をレンズ系により微小な点状に収束し、最外層3の外周面にレーザ光密度の高い点状部分を形成することにより、微小な上記凹部Aを形成することができる。例えば、上記レンズ系を上記ロール体の軸方向に沿って直線状に複数個配置し、上記レーザ光が点状に収束した点状部分を、最外層3の外周面に、軸方向に沿って一端縁から他端縁まで直線状に複数点在させるようにすると、それら点在部分を一度に上記凹部Aに形成し、1列の凹部列Lを形成することができる。さらに、上記ロール体を断続的に軸周りに回転させ、その回転に同調させて断続的にレーザ光を照射すると、上記最外層3の外周面に複数の凹部列Lを所定間隔で分布形成することができる。この凹部Aの形成において、レンズ系を調節することにより、レーザ光が点状に収束した点状部分を一定ピッチになるようにし、さらに、ロール体の断続的回転を一定角度になるようにすると、凹部Aを周方向および軸方向に規則的に分布形成させることができる。また、形成される凹部Aの大きさは、レーザ光の出力,照射時間等を調節することにより、設定することができる。上記凹部Aを形成した後、必要に応じて、最外層3の外周面を研磨する。このようにして、上記OA機器用ロールを作製することができる。なお、最外層3に対するレーザエッチングの場合、チタン粒子を添加した反射層を、加工する層(最外層3)の下層に配し、レーザを反射させて、凹部Aを形成したい層にのみ、凹部Aを設けることも可能である。
【0026】
また、上記凹部Aの形成において、凹部Aの分布密度は、レーザエッチングにおけるレンズ系の調節やロール体等の断続回転の調節等により比較的簡単に制御することができる。また、凹部Aの大きさも、レーザ光の出力,照射時間等の調節により比較的簡単に制御することができる。このように、凹部Aの形成は比較的簡単に制御することができるため、OA機器用ロールの外周面における表面粗さの制御も比較的簡単にできる。そして、その表面粗さのばらつきを小さくすることが比較的簡単にでき、感光ドラム等の接触部材に対する接触のばらつきを小さくすることができる。特に、上記レンズ系の調節やロール体の断続回転の調節等により、凹部Aを周方向および軸方向に規則的に分布形成させることも比較的簡単にでき、この場合は、OA機器用ロールの表面粗さをより均一にすることができ、接触部材に対する接触均一性の向上および接触部材に対するストレスの低減についてより制御し易くなる。
【0027】
また、OA機器用ロールの製法のさらに他の例として、最外層3の外周面の凹部Aを、その凹部Aに対応する凸部を形成した転写板を熱した状態で押し当てて形成する方法は、その熱した転写板にロール体を押し当てて転がし、転写板の凸部を最外層3の外周面に転写させる。上記転写板は、金属板にレーザ加工もしくは機械加工等により、均一な凸形状を形成することにより得ることができる。または、金属板にレーザ加工もしくは機械加工等により、均一な凹形状を形成したものを原型として電鋳法により、均一な凸形状を形成した転写板を得ることができる。なお、上記転写を、最外層3の形成材料を弾性層2の外周面に塗布した後、200℃に熱した上記転写板に押し当てることにより架橋と転写とを同時に行うこともできる。
【0028】
このようにして得られたOA機器用ロールは、最外層3の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で複数の凹部Aが分布形成されて粗面が形成されており、凹部Aが形成されていない外周面部分Bは、元の表面状態(凹部Aを形成する前の表面状態)を維持し、粗面化されていない。そして、本発明のOA機器用ロールと接触するトナー,感光ドラム等の接触部材に対しては、上記凹部Aが形成されていない外周面部分Bで接触される。さらに、凹部A以外の部分の面積と凹部Aの面積の面積比が特定の範囲に設定されている。このため、その接触は、凹部と凹部との間の部分で略均一に面接触するようになり、その接触のばらつきを適正に小さくすることができるとともに、接触圧力を適正に緩和することができる。しかも、粗面形成に硬質粒子を用いていないことから、最外層3の表面硬度を低く維持することができ、トナー,感光ドラム等の接触部材に対するストレスを低減することができる。
【0029】
さらに、最外層3の外周面の粗面形成は、複数の凹部Aを分布形成させることにより行っており、硬質粒子を用いていない。これにより、硬質粒子の凝集が起こらなくなるため、表面粗さの経時的変化が起こらず、長期にわたって表面粗さを一定に維持することができる。
【0030】
図3は、本発明のOA機器用ロールの他の実施の形態を示している。この実施の形態の帯電ロールは、周方向に隣り合う凹部列Lにおいて、一の凹部列Lの凹部Aの一部が、他の凹部列Lの凹部Aと凹部Aとの間に入り込んだ状態になっている。それ以外は上記実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。このようにすると、凹部Aを高密度に形成することができる。
【0031】
上記実施の形態以外にも、凹部Aの配置をランダムにした形態(図示せず)等でもよい。
【0032】
本発明のOA機器用ロールは、複写機,プリンター,ファクシミリ等のOA機器において、現像ロール,帯電ロール,給紙ロール,トナー供給ロール,転写ロール,除電ロール,クリーニングロール,定着ロール等に用いられる。
【0033】
そして、本発明のOA機器用ロールを構成する軸体1,弾性層2,最外層3の形成材料等については、ロールの種類に応じて適正なものが用いられる。例えば、現像ロールの場合は、つぎのようなものが用いられる。
【0034】
上記軸体1は、特に限定されるものではなく、中実でも中空でもよい。また、上記軸体1の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄,鉄にめっきを施したもの,ステンレス,アルミニウム等があげられる。そして、上記軸体1の表面には、通常、接着剤やプライマー等が塗布される。さらに、上記接着剤やプライマー等は、必要に応じて、導電化してもよい。
【0035】
上記弾性層2の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー,エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),シリコーンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR),クロロプレンゴム(CR)等があげられる。なかでも、低硬度でへたりが少ないという点から、導電性シリコーンゴムを用いることが好ましい。また、必要に応じて、シリコーンオイル,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤等を適宜に添加してもよい。そして、上記弾性層2の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5〜5mm程度に設定される。
【0036】
上記最外層3の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド系樹脂,フッ素樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,シリコーン樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記最外層3の厚みは、特に限定されないが、通常、3〜50μm程度に設定される。
【0037】
なお、場合により、弾性層2と最外層3との間には、中間層を形成してもよい。この中間層の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム:H−NBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR),ポリウレタン系エラストマー,クロロプレンゴム(CR),天然ゴム,ブタジエンゴム(BR),アクリルゴム(ACM),イソプレンゴム(IR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),ヒドリンゴム(ECO,CO),ウレタンゴム,フッ素ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、接着性およびコーティング液の安定性の点から、H−NBR,ポリウレタン系エラストマーが特に好ましい。
【0038】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0039】
下記のように、電鋳法により作製した転写用型を用いて、軸体の外周面に弾性層を成形してロール体を作製した後、最外層を形成し、現像ロールを作製した。
【0040】
〔軸体〕
外径8mm、長さ350mmの鉄製の中実円柱状の軸体を準備した。
【0041】
〔弾性層の形成材料〕
ブタジエンゴム(クラプレンLIR−300、クラレ社製)100重量部に対して、導電性カーボンブラック(デンカブラックHs−100、電気化学工業社製)12重量部、ヒドロシリル硬化剤(TSF484、東芝シリコーン社製)6.2重量部、ヒドロシリル化触媒〔白金カルボニル錯体(SIP6829.0)、アズマック社製〕0.01重量部、パラフィン系オイル(PW−150、出光興産社製)30重量部をニーダーにより混練して弾性層2の形成材料を調製した。
【0042】
〔最外層の形成材料〕
エーテル系ウレタン(ET−880、武田パーディッシュウレタン社製)100重量部に対して、導電性カーボンブラック(デンカブラックHs−100、電気化学工業社製)30重量部、イソシアネート(バーノックDB980K、大日本インキ化学工業社製)25重量部の割合で用い、ボールミルにより混練した後、MEK400重量部を加えて混合,攪拌して最外層の形成材料を調製した。
【0043】
〔転写用型の作製〕
上記実施の形態と同様にして、弾性層の外径と同径のアルミニウム製円柱体を準備し、そのアルミニウム製円柱体に、レーザエッチングを施すことにより、多数の凹部を分布形成した。このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:25A、周波数:3kHz、加工スピード:600mm/秒とした。これにより、アルミマスターロールを得、それを用いて電鋳法により転写用型を作製した。
【0044】
〔ロール体の作製〕
上記転写用型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層(厚み4mm、長さ240mm)を形成した。これにより、弾性層の外周面に、多数の凹部を分布形成した。
【0045】
〔現像ロールの作製〕
上記弾性層の外周面に、最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み5μm)を形成した。これにより、最外層の外周面に凹部が分布形成された現像ロールを得た。この凹部は、開口縁部が相互に重なり合っていず、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)とした。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。これにより、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。なお、この十点平均粗さ(Rz)の測定は、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いた(以下の表面粗さの測定も同様)。
【実施例2】
【0046】
下記のように、上記軸体,各層の形成材料等を用いて2層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面をレーザエッチングにより粗面に形成し、現像ロールを作製した。
【0047】
〔ロール体の作製〕
円筒状金型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層(厚み4mm、長さ240mm)を形成した。そして、その弾性層の外周面に、最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み25μm)を形成した。これにより、ロール体を得た。このロール体の最外層の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【0048】
〔現像ロールの作製〕
上記ロール体の外周面(最外層の外周面)に、レーザエッチングを施すことにより、複数の凹部を分布形成した。この凹部形成は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように行うとともに、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)になるように行った。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。なお、このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:25A、周波数:15kHz、加工スピード:3000mm/秒とした。これにより、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例3】
【0049】
上記実施例2と同様にして2層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面を、熱した転写板に押し当てて転がし、現像ロールを作製した。
【0050】
〔転写板の作製〕
アルミニウム製板を準備し、そのアルミニウム製板に、レーザエッチングを施すことにより、多数の凹部を分布形成した。このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:25A、周波数:3kHz、加工スピード:600mm/秒とした。これにより、アルミマスター板を得、それを用いて電鋳法により転写板を作製した。この転写板の表面には、均一な凸形状が分布形成されていた。
【0051】
〔現像ロールの作製〕
上記転写板を200℃に熱し、その表面に、上記ロール体を押し当てて転がし、転写板の凸部を最外層の外周面に転写させた。この凹部形成は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように行うとともに、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)になるように行った。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。これにより、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例4】
【0052】
上記実施例1において、レーザエッチングの加工スピードを800mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例5】
【0053】
上記実施例2において、レーザエッチングの加工スピードを3500mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
【実施例6】
【0054】
上記実施例3において、レーザエッチングの加工スピードを800mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例3と同様にした。
【実施例7】
【0055】
上記実施例1において、レーザエッチングの加工スピードを1000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例8】
【0056】
上記実施例2において、レーザエッチングの周波数を12kHz、加工スピードを4000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
【実施例9】
【0057】
上記実施例3において、レーザエッチングの加工スピードを1000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例3と同様にした。
【0058】
〔比較例1〕
上記実施例1において、レーザエッチングの周波数を2kHz、加工スピードを1200mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も100μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を60/100に設定した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0059】
〔比較例2〕
上記実施例1において、最外層の形成材料として、下記のもの(粒子入り)を用いた。そして、その最外層に対するレーザエッチングは行わなかった。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、上記実施の形態と同様にして、図4(a),(b)に示すように、平板ガラスGに接触する部分〔図4(a)の小円部分〕の面積(S1)と、その接触部分が点在する領域幅〔ニップ幅:図4(a)の2本の点線C2 の間の幅〕W2 内において接触しない部分〔図4(a)の斜線部分〕との面積(S2)を測定し、上記面積比(S1/S2)を算出した。その結果、その面積比は0.2/100であった。なお、図4において、30は最外層、31は最外層30内に分散させた粒子(下記シリカ製粒子)である。
【0060】
〔最外層の形成材料〕
上記実施例1における最外層の形成材料に、シリカ製粒子〔サイロスフェアC1510(平均粒径10μm)、冨士シリシア社製〕を混合した。このシリカ製粒子の混合割合は、上記最外層の形成材料のポリカーボネートジオール系ウレタン樹脂100重量部に対して、20重量部とした。
【0061】
〔接触のばらつき〕
このようにして得られた実施例1〜9および比較例1,2の各現像ロールについて、上記面積比を測定した際に、ガラス板に接触した部分の分布状態(面積,配置等)を電子顕微鏡で見て評価した。その結果、その分布状態がばらついていないものを○、ばらつきがあるものを×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0062】
〔画像のかぶり〕
上記実施例1〜9および比較例1,2の各現像ロールを、市販の実機(レーザーショット LBP−2510,キャノン社製)に組み込み、高温高湿(32℃,85%RH)の環境下で、べた画像と白画像とをそれぞれ8000枚画像出しを行った後、感光ドラム表面の白地部の濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。その結果、マクベス濃度が0.11未満のものはかぶり現象(上記感光ドラム表面の白地部へのトナー付着)が殆ど発生していないとして○、マクベス濃度が0.11以上0.20未満のものは少しかぶり現象が発生したとして△、マクベス濃度が0.20以上のものは明確なかぶり現象が発生したとして×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表1に示すように、実施例1〜9の現像ロールでは、接触部材に対する接触均一性が高く、比較例1,2の現像ロールよりも、トナーへのストレスが比較的小さいことがわかる。また、面積比が小さ過ぎると、そのトナーストレス低減効果が充分に得られない。
【実施例10】
【0065】
下記のように、軸体,各層の形成材料等を用いて3層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面をレーザエッチングにより粗面に形成し、帯電ロールを作製した。
【0066】
〔軸体〕
外径6mm、長さ350mmの鉄製の中実円柱状の軸体を準備した。
【0067】
〔弾性層の形成材料〕
EPDM(EPTX4010、三井化学社製)100重量部に対して、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックインターナショナル社製)8重量部、パラフィン系オイル(PW−380、出光興産社製)25重量部、酸化亜鉛3重量部、シリカ(ニップシールVN3、日本シリカ社製)20重量部、クレー(テキシークレー、バンダービルト社製)20重量部、架橋剤(硫黄)1.5重量部、架橋促進剤(ノクセラーTT、大内新興化学)0.5重量部、架橋促進剤(ノクセラーPZ、大内新興化学)1.5重量部、架橋促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学)0.5重量部の割合で配合し、ロールを用いて混練して弾性層の形成材料を調製した。
【0068】
〔中間層の形成材料〕
NBR(ニポールDN401、日本ゼオン社製)100重量部に対して、導電剤(アセチレンブラック)30重量部、ステアリン酸0.5重量部、酸化亜鉛5重量部、BZ(加硫促進剤)1重量部、CZ(加硫促進剤)2重量部、硫黄3重量部の割合で混練した後、これを有機溶剤に分散させて中間層の形成材料を調製した。
【0069】
〔最外層の形成材料〕
N−メトキシメチル化ナイロン100重量部に対して、カーボンブラック5重量部、クエン酸1重量部の割合で用い、メタノール溶液に混合攪拌して最外層の形成材料を調製した。
【0070】
〔ロール体の作製〕
軸体の外周面に接着剤を塗布した後、円筒状金型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層(厚み3mm、長さ220mm)を形成した。そして、その弾性層の外周面に、中間層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、中間層(厚み0.2μm)を形成した。ついで、その中間層の外周面に、最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み10)を形成した。これにより、ロール体を得た。このロール体の最外層の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【0071】
〔帯電ロールの作製〕
上記ロール体の外周面(最外層の外周面)に、レーザエッチングを施すことにより、複数の凹部を分布形成した。この凹部形成は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように行うとともに、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)になるように行った。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。なお、このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:24A、周波数:15kHz、加工スピード:3000mm/秒とした。これにより、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例11】
【0072】
上記実施例10と同様にして3層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面を、熱した転写板に押し当てて転がし、帯電ロールを作製した。なお、その転写板の作製およびその転写板を用いた転写方法は、実施例3と同様にして行った。これにより、凹部の開口縁部が相互に重なり合わず、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)になった。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。そして、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例12】
【0073】
上記実施例10において、レーザエッチングの加工スピードを3500mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例10と同様にした。
【実施例13】
【0074】
上記実施例11において、レーザエッチングの加工スピードを800mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例11と同様にした。
【実施例14】
【0075】
上記実施例10において、レーザエッチングの周波数を12kHz、加工スピードを4000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例10と同様にした。
【実施例15】
【0076】
上記実施例11において、レーザエッチングの加工スピードを1000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例11と同様にした。
【0077】
〔比較例3〕
上記実施例10において、レーザエッチングの周波数を2kHz、加工スピードを1200mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も100μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を60/100に設定した。それ以外は、上記実施例10と同様にした。
【0078】
〔比較例4〕
上記実施例10において、最外層の形成材料として、下記のもの(粒子入り)を用いた。そして、その最外層に対するレーザエッチングは行わなかった。それ以外は、上記実施例10と同様にした。そして、上記比較例2と同様にして、面積比(S1/S2)を算出すると、その面積比は0.1/100であった。
【0079】
〔最外層の形成材料〕
上記実施例10における最外層の形成材料に、シリカ製粒子〔サイロスフェアC1510(平均粒径10μm)、冨士シリシア社製〕を混合した。このシリカ製粒子の混合割合は、上記最外層の形成材料のN−メトキシメチル化ナイロン樹脂100重量部に対して、20重量部とした。
【0080】
〔接触のばらつき〕
このようにして得られた実施例10〜15および比較例3,4の各帯電ロールについて、上記面積比を測定した際に、ガラス板に接触した部分の分布状態(面積,配置等)を電子顕微鏡で見て評価した。その結果、その分布状態がばらついていないものを○、ばらつきがあるものを×と評価し、下記の表2に併せて表記した。
【0081】
〔感光ドラムの外径〕
上記実施例10〜15および比較例3,4の各帯電ロールを、市販の実機(レーザーショット LBP−A404E,キャノン社製)に組み込み、5%印字濃度で、2000枚の画像出しを行った。そして、2000枚の画像出しの前後で、感光ドラムの外径を測定した。その結果、減少量が2μm未満のものを○、2μm以上3μm未満のものをのものを△、3μm以上のものを×と評価し、下記の表2に併せて表記した。
【0082】
〔トナー外填剤の付着〕
上記2000枚の画像出し後、各帯電ロールの外周面におけるトナー外填剤の付着について、目視にて評価した。その結果、トナー外填剤の付着量が少なくかつ均一に付着しているものを○、トナー外填剤の付着量が比較的少なくかつ不均一に付着しているものを△、トナー外填剤の付着量が多くかつ不均一に付着しているものを×と評価し、下記の表2に併せて表記した。
【0083】
【表2】

【0084】
上記表2に示すように、実施例10〜15の帯電ロールでは、接触部材に対する接触均一性が高いことがわかる。また、実施例10〜15の帯電ロールでは、比較例4の帯電ロールよりも、感光ドラムの外径の減少量が少ないことから、感光ドラムへのストレスが比較的小さいことがわかる。また、実施例10〜15の帯電ロールは、比較例3,4の帯電ロールよりも、トナー外填剤が付着し難くかつ均一に付着することから、長寿命のものとなる。
【実施例16】
【0085】
下記のように、電鋳法により作製した転写用型を用いて、軸体の外周面に最外層を成形し、給紙ロールを作製した。なお、その転写用型の作製は、実施例1と同様にして行った。
【0086】
〔軸体〕
外径10mm、内径8mm、長さ24mmのポリアセタール(POM)製の円筒状の軸体(ハブ)を準備した。
【0087】
〔最外層の形成材料〕
EPDM100重量部に対して、酸化亜鉛5重量部、カーボンブラック40重量部、軟化剤130重量部、白色系充填剤30重量部、硫黄0.4重量部、架橋促進剤5.7重量部の割合で混練して最外層の形成材料を調製した。
【0088】
〔給紙ロールの作製〕
上記転写用型を用いて成形(150℃×30分間)することにより、軸体の外周面に最外層(厚み5mm、長さ30mm)を形成した。これにより、最外層の外周面に凹部が分布形成された給紙ロールを得た。この凹部は、開口縁部が相互に重なり合っていず、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)とした。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。これにより、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例17】
【0089】
下記のように、上記軸体,最外層の形成材料等を用いて1層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面をレーザエッチングにより粗面に形成し、給紙ロールを作製した。
【0090】
〔ロール体の作製〕
円筒状金型を用いて成形(150℃×30分間)することにより、軸体の外周面に最外層(厚み5mm、長さ30mm)を形成した。これにより、ロール体を得た。このロール体の最外層の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【0091】
〔給紙ロールの作製〕
上記ロール体の外周面(最外層の外周面)に、レーザエッチングを施すことにより、複数の凹部を分布形成した。この凹部形成は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように行うとともに、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の最短距離をいずれも5μm)になるように行った。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径250μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。なお、このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:25A、周波数:15kHz、加工スピード:3000mm/秒とした。これにより、上記実施の形態と同様にして算出される面積比(S1/S2)を3/100に設定した。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例18】
【0092】
上記実施例16において、レーザエッチングの加工スピードを800mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例16と同様にした。
【実施例19】
【0093】
上記実施例17において、レーザエッチングの加工スピードを3500mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も10μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を8/100に設定した。それ以外は、上記実施例17と同様にした。
【実施例20】
【0094】
上記実施例16において、レーザエッチングの加工スピードを1000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例16と同様にした。
【実施例21】
【0095】
上記実施例17において、レーザエッチングの周波数を12kHz、加工スピードを4000mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も50μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を50/100に設定した。それ以外は、上記実施例17と同様にした。
【0096】
〔比較例5〕
上記実施例16において、レーザエッチングの周波数を2kHz、加工スピードを1200mm/秒とし、凹部の形成ピッチ(隣り合う凹部の開口縁間の最短距離)を、周方向も軸方向も100μmにした。これにより、上記面積比(S1/S2)を60/100に設定した。それ以外は、上記実施例16と同様にした。
【0097】
〔比較例6〕
上記実施例17と同様にして1層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面を、円筒研磨機を用いて研磨加工を施すことにより、算術平均粗さ(Ra)13μm、最大高さ(Rmax)230μmの粗面に形成し、帯電ロールを作製した。それ以外は、上記実施例17と同様にした。そして、上記比較例2と同様にして、面積比(S1/S2)を算出すると、その面積比は0.5/100であった。なお、上記算術平均粗さ(Ra),最大高さ(Rmax)の測定は、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いた。
【0098】
〔接触のばらつき〕
このようにして得られた実施例16〜21および比較例5,6の各給紙ロールについて、上記面積比を測定した際に、ガラス板に接触した部分の分布状態(面積,配置等)を電子顕微鏡で見て評価した。その結果、その分布状態がばらついていないものを○、ばらつきがあるものを×と評価し、下記の表3に併せて表記した。
【0099】
〔摩擦係数〕
上記実施例16〜21および比較例5,6の各給紙ロールをフィードローラとしてFRR方式の給紙システムを持ったベンチ試験機に組み込み、20万枚の用紙を給紙した。そして、初期および20万枚給紙後(耐久試験後)の給紙ロールの摩擦係数を、図5に示す方法により求めた。すなわち、上記給紙ロール10とテフロン(登録商標)シート11とでPPC用紙12を挟持してばね荷重W(2.94N)をかけた状態で、給紙ロール10を矢印方向に周速度180mm/秒で回転させ、そのときのPPC用紙12の引っ張り力Fをロードセル13で測定した。そして、摩擦係数μ(=F/W)を算出した。その結果を下記の表3に併せて表記した。なお、図5において、14はばね荷重Wの支点である。
【0100】
【表3】

【0101】
上記表3に示すように、実施例16〜21の給紙ロールでは、接触部材に対する接触均一性が高いことがわかる。また、実施例16〜21の給紙ロールでは、比較例5,6の給紙ロールよりも、摩擦係数の減少量が少ないことから、実施例16〜21の給紙ロールは劣化し難く、長寿命のものとなっていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のOA機器用ロールの一実施の形態を示し、(a)は、その正面図およびその表面を拡大して模式的に示した説明図であり、(b)は、(a)のX−X断面図である。
【図2】上記OA機器用ロールにおける面積比(S1/S2)の測定方法を示し、(a)は、その平面図であり、(b)は、(a)のY−Y断面図である。
【図3】本発明のOA機器用ロールの他の実施の形態において、その最外層の表面を拡大して模式的に示した説明図である。
【図4】最外層内に粒子を分散させた比較例のOA機器用ロールにおける面積比(S1/S2)の測定方法を示し、(a)は、その平面図であり、(b)は、(a)のZ−Z断面図である。
【図5】給紙ロールの摩擦係数を求める方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1 軸体
2 弾性層
3 最外層
A 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周に直接または他の層を介して形成された円筒状の最外層とを有するOA機器用ロールであって、上記最外層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で複数の凹部が分布形成されて粗面が形成されており、上記最外層の外周面に、平面視1cm2 当たりの質量が0.25gの平板ガラスを載置し、その平板ガラスに、その平板ガラスの上方からOA機器用ロールの軸に向かって、軸方向の長さ1cm当たり0.15Nの荷重をかけた状態において、最外層の外周面のうち、上記平板ガラスに接触する部分の面積(S1)と、その接触部分の接触幅内において接触しない部分の面積(S2)との面積比(S1/S2)が3/100〜50/100の範囲に設定されていることを特徴とするOA機器用ロール。
【請求項2】
各凹部の開口径が50〜500μmの範囲、各凹部の深さが3〜20μmの範囲、隣り合う凹部と凹部との間の開口縁間最短距離が1〜20μmの範囲に設定されている請求項1記載のOA機器用ロール。
【請求項3】
凹部が周方向および軸方向に規則的に分布形成されている請求項1または2記載のOA機器用ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−243374(P2006−243374A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59255(P2005−59255)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】