説明

OLEDデバイスの電極と光学材料のパターニング

複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイを製造する方法は、複数のOLEDデバイスを、共通の光透過性電極を共有するようにして基板の上に設けるステップと;その共通の光透過性電極の上にパターニングされた導電層構造を形成し、1つ以上のOLEDデバイスの発光領域の位置に揃えてウエルを区画するステップと;光学材料を1つ以上のウエルに供給するステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画素を有する有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイに関するものであり、より詳細には、ディスプレイに含まれる透明な連続電極の導電性を向上させるとともに光学材料用の構造を提供するための補助電極を含むディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまなサイズのフラット-パネル・ディスプレイ(例えば有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ)が、コンピュータや通信の多くの用途で使用するのに提案されている。OLEDは、最も簡単な形態では、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これらの電極に挟まれていて電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とを備えている。OLEDディスプレイは、透明な基板を通じて光を出すように構成すること(一般にボトム・エミッション型ディスプレイと呼ばれる)、またはディスプレイの上部にある透明な上部電極を通じて光を出すように構成することができる(一般にトップ・エミッション型ディスプレイと呼ばれる)。
【0003】
フル・カラーOLEDディスプレイも従来技術で知られている。典型的なフル・カラーOLEDディスプレイは、異なる3色(赤、緑、青)の画素から構成される。このような構成はRGB設計として知られている。RGB設計の一例が、アメリカ合衆国特許第6,281,634号に記載されている。フル・カラーOLEDディスプレイを製造する際の難しい主な問題の1つは、有機発光材料のパターニングである。現在は、製造時に正確なシャドウ・マスク技術を利用するのが最も一般的である。OLED材量をシャドウ・マスクを通じて堆積させると中程度のサイズ(例えば300mm×400mm)ではうまくいくが、より大きな基板や、トップ・エミッション型OLEDで実現されているように画素密度が非常に大きい場合には難しくなる。1つの問題は、このように大きくて薄くて脆いシャドウ・マスクの取り扱い(製造、整列など)である。別の問題は、OLEDを堆積させるのに用いるシャドウ・マスクとその下にある基板の間の熱膨張係数の不一致である。その結果として、マスクと基板上の堆積させるべき領域が揃わなくなる。
【0004】
シャドウ・マスクの問題を解決するため、カラー・フィルタを備える白色発光OLEDを用いることが提案された。各画素は、カラー・フィルタ・アレイ(CFA)の一部としてのカラー・フィルタ素子とカップルし、画素化されたマルチカラー・ディスプレイを実現する。白色発光有機EL層は一般にすべての画素に共通するように形成され、見る人が認識する最終的な色は、画素の対応するカラー・フィルタ素子によって決まる。したがってマルチカラー・ディスプレイまたはフル-カラーRGBディスプレイを製造する際に有機EL層をまったくパターニングする必要がない。白色CFAトップ・エミッション型ディスプレイの一例が、アメリカ合衆国特許第6,392,340号に示してある。
【0005】
白色OLEDとCFA技術を利用することは、大型のトップ・エミッション型アクティブOLEDにおいて特に有用である。ボトム・エミッション型アクティブ・マトリックス式デバイスでは、OLED画素を不透明な回路素子の間に設けねばならないため、画素のサイズ(アパーチャ)が限定される。アモルファスSiをベースとしたいくつかの設計では、ボトム・エミッション型にすることが非常に難しい。トップ・エミッション型OLEDでは、TFT回路をOLEDの下に設けることができる。すると画素のアパーチャを大きくするとともに、画素密度を大きくすることが可能になる。しかし上述のように、高密度の画素をパターニングするためにシャドウ・マスクを用いることは、製造野許容誤差が十分にならないために禁止される。
【0006】
さらに、CFAをトップ・エミッション型の設計に導入することは、新しい困難な課題である。CFAは独立した基板上に設けることができるが、OLEDの設計に適合するように製造し、OLEDに正確に揃え、OLED基板に接合する必要がある。OLEDデバイスは典型的な形状であるため、ギャップがOLEDとCFAの間に生じる可能性がある。このギャップは、望ましくない光学的効果や効率の低下をもたらす場合がある。
【0007】
トップ・エミッション型OLEDデバイスの別の困難な課題は、透過性上部電極が、一般に、多くの画素または全画素に共通する電極として設けられることである。残念なことにたいていの有効な透過性電極材料(例えばITOやそれ以外の金属酸化物)は、特に大きな基板に関し基板を横断する導電率が十分な大きさでない。この問題を解決する1つの方法は、導電率の大きな補助電極またはバスを導入することである。バスの設計は多数提案されてきた(例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2004/0253756号、第2002/0011783号、第2002/0158835号)が、こうした設計は、製造プロセスをより複雑にする。
【0008】
OLEDデバイスには一般に、OLEDのさまざまな層、基板、カバーに捕獲された光の損失という問題があるため、OLEDデバイスの効率が低下する。光はOLEDの内部にある層からあらゆる方向に出ていくため、その光の一部はデバイスから直接外に出ていくのに対し、一部はデバイスの中に向かい、吸収される場合と、反射されて外に出ていく場合がある。光の一部は横方向に進んで捕獲され、デバイスに含まれるさまざまな層によって吸収される。OLEDデバイスから発生した光は、上部の透明な電極(例えばITO)を通って外に出ることができるが、実際には発生した光の約20%しかこのようなデバイスから外に出ていかないと推定されている。残りの光はいろいろな層の間での内部反射によって捕獲され、最終的に吸収される。
【0009】
散乱法によってOLEDデバイスから出る光の効率が増大することが知られている。Chou(国際公開番号WO 02/37580 A1)とLiuら(アメリカ合衆国特許出願公開第2001/0026124 A1号)は、体積散乱層または表面散乱層を用いて光の取り出しを改善することを教示している。散乱層は、有機層の隣に、またはガラス基板の外面上に設けられ、これらの層と一致した屈折率を持つ。OLEDデバイスの内部において臨界角よりも大きな角度で発生した光は散乱層の中に侵入し(臨界角より小さいと捕獲されるであろう)、散乱されてデバイスの外に出ることができる。したがってOLEDデバイスの効率は向上する。しかし捕獲された光は、カバー、基板、有機層の中を通って水平方向にかなりの距離伝播した後、散乱されてデバイスの外に出ることができる。そのため画素化された用途(例えばディスプレイ)におけるデバイスのシャープさが低下する。散乱法では光吸収材料層の中を光を複数回通過させるため、光は吸収されて熱に変換される可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがってOLEDディスプレイにおいて光学材料(例えばカラー・フィルタや光散乱材料)と補助電極を用いるより効果的な方法が必要とされている。
【0011】
したがって本発明の1つの目的は、固有の光学材料(例えばカラー・フィルタや光散乱材料)を備えていて、光透過性電極を横断する導電率が優れたOLEDディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイを製造する方法であって、
(a)複数のOLEDデバイスを、共通の光透過性電極を共有するようにして基板の上に設けるステップと;
(b)その共通の光透過性電極の上にパターニングされた導電層構造を形成し、1つ以上のOLEDデバイスの発光領域の位置に揃えてウエルを区画するステップと;
(c)光学材料を1つ以上のウエルに供給するステップを含む方法によって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、パターニングされた光学材料と、導電率が向上した光透過性上部電極の両方を備えるトップ-エミッション型OLEDを製造する簡単な方法が提供される。
【0014】
本発明の別の特徴により、コントラストが改善されているため明るい周囲条件下での使いやすさが改善されたトップ-エミッション型OLEDを製造する簡単な方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の特徴により、発光効率が改善されているため全体効率が向上したトップ-エミッション型OLEDを製造する簡単な方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
デバイスの特徴的なサイズ(例えば層の厚さ)は1μm未満の範囲になることがしばしばあるため、図面は、正確なサイズではなく図面が見やすくなるようなスケールにしてある。
【0017】
“OLEDディスプレイ”、“有機発光ディスプレイ”という用語は、従来技術におけるように、画素として有機発光ダイオードを備えるディスプレイ装置の意味で用いる。カラーOLEDディスプレイは、少なくとも1つの色の光を発生させる。“マルチカラー”という用語は、異なる領域で異なる色相の光を発生させることのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。この用語は特に、いろいろな色の画像を表示することのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。領域は互いに連続している必要はない。“フル・カラー”という用語は、可視スペクトルのいくつかの領域で光を発生させることができるため、色相の多数の組み合わせで画像を表示できるマルチカラー・ディスプレイ・パネルを記述するのに一般に用いる。赤、緑、青は三原色を構成し、その三原色を適切に混合することによって他のあらゆる色が作り出される。しかし本発明では、フル-カラーに異なる追加のカラー画素が含まれていてもよい。“色相”という用語は、可視スペクトルに含まれていて、色の違いを目で識別できる異なる色相を持つ発光の強度プロファイルを意味する。“画素”という用語は、従来技術で使用されているように、一般に、ディスプレイ・パネルの1つの領域であって、他の領域とは独立に刺激して光を出させることのできる領域を指すのに用いる。しかしフル-カラー・システムでは、色の異なるいくつかの画素を合わせて用いて広い範囲の色を作り出すことが知られており、見る人は、そのようなグループを単一の画素と呼ぶことができる。例えば3色RGBフル-カラー・ディスプレイでは、一群の画素は、一般に、三原色の画素、すなわち色域を規定する画素である赤、緑、青(RGB)を含んでいる。本発明では、“OLEDデバイス”という用語を画素を指すのにも用いる。
【0018】
ここで図1を参照すると、本発明の方法で製造した複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイの一実施態様を上から見た図を示してある。OLEDディスプレイ10は、複数のOLEDデバイス30を備えている。それぞれのOLEDデバイス30は、OLEDディスプレイ10の1つの画素、すなわち個別にアドレスすることが可能な発光ユニットである。OLEDディスプレイ10は、パターニングされた導電層構造20も備えている。その性質については、あとで明確になろう。パターニングされた導電層構造20はグリッドとしてパターニングされ、OLEDディスプレイ10のOLEDデバイス間の領域、すなわち非発光領域を覆っており、OLEDデバイス30の発光領域は覆っていない。他の配置、例えばデルタ・パターンも利用できる。パターニングされた導電層構造20は、図1に示してあるように、OLEDデバイス30に正確に揃えてもよいし、それほど正確には揃えなくてもよい。それほど正確ではない揃え方に合わせるため、パターニングされた導電層構造20を隣り合ったOLEDデバイス30に挟まれたギャップより広くすることもできる。
【0019】
ここで図2を参照すると、図1のOLEDディスプレイを切断線40に沿って切断した断面図が示してある。OLEDディスプレイ10が基板100の上に形成されていて、複数のOLEDデバイス(例えば30a、30b、30c、30d)を備えている。一連の底部電極110が、基板100の上に、OLEDディスプレイ10のOLEDデバイスを区画するパターンで形成されている。OLEDデバイスは、さまざまな色の画素(例えば赤色発光画素、緑色発光画素、青色発光画素)にすることができる。いくつかの実施態様には、白色発光画素も含めることができる。OLEDディスプレイ10のOLEDデバイスは、共通の光透過性電極150を有する。このような配置は一般にアクティブ-マトリックス・ディスプレイに見られ、各OLEDデバイスに割り当てられた1つの電極に個別にアドレスできる一方で、第2の電極が、多くのOLEDデバイスまたはすべてのOLEDデバイスによって共有される。各画素は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いて独立に制御される。このようなTFTは、アモルファス・シリコン、低温多結晶シリコン、単結晶シリコン、他の無機半導体、有機半導体材料のいずれかを用いて構成することができる。底部電極110はアノードとして構成されることが最も一般的であり、上部電極である共通の光透過性電極150は、カソードとして構成されることが最も一般的である。しかし本発明がこの構成に限定されることはない。
【0020】
OLEDディスプレイ10は、底部電極110と、共通の光透過性電極150との間に発光層130を有する。OLEDディスプレイ10は、場合によっては他の層も備えることができる。それは、正孔輸送層120、電子輸送層140のほか、正孔注入層、電子注入層や、従来技術で知られている他の層である。
【0021】
パターニングされた導電層構造20は共通の光透過性電極150の上に形成され、共通の光透過性電極150よりも導電性がよい。パターニングされた導電層構造20は、共通の光透過性電極150と接触するパターニングされた少なくとも1つの導電層160を備えている。そのパターニングされた導電層160の上にはパターニングされた絶縁層170がさらに配置されていることが好ましい。パターニングされた導電層160には電流が流れるため、ディスプレイを横断する共通の光透過性電極150の面抵抗率が低下し、抵抗による発熱と電圧低下が少なくなる。パターニングされた導電層160は、優れた導体としての金属にすることができ、例えば、アルミニウム、銅、マグネシウム、モリブデン、銀、チタン、金、タングステン、ニッケル、クロムなどと、これらの合金が挙げられる。パターニングされた導電層160は、異なる2種類の金属からなるか、金属と半導体、または金属と導電性ポリマーからなる二層構造を含むことができる。
【0022】
パターニングされた絶縁層170は、有機物、無機物、無機/有機複合体のいずれかにすることができる。パターニングされた絶縁層170は、パターニングが可能なほぼすべての有機ポリマーを含むことができ、例えばシアノアクリレート、ポリイミド、メタクリレート、ニトロセルロースなどが挙げられる。フォトレジスト・ポリマー材料が特に有用である。パターニングされた絶縁層170のための無機材料の例として、絶縁性金属酸化物(ゾル-ゲル溶液から形成されたもの、蒸着によって形成されたもの)などがある。パターニングされた絶縁層170は、例えば有害な材料からのガス放出、パターニングされた導電層の浸食、処理ステップを通じたOLEDの汚染によってOLEDの性能が低下しないように選択せねばならない。
【0023】
パターニングされた導電層構造20はウエル180を区画する。ウエルは、OLEDデバイスの発光領域と揃った位置、すなわち底部電極110と揃った位置にある。ウエル180は材料収容機能を持つことができ、光学材料190を1つ以上のウエルに供給することができる。光学材料190としては、例えばカラー・フィルタを形成するための着色剤、色変換材料、光散乱材料、小型レンズなどが挙げられる。カラー・フィルタは、所定の周波数の光を(例えば光吸収性の染料または顔料によって)吸収するが、他の周波数の光は透過させることによってスペクトルを変化させる(フィルタする)材料である。色変換材料は、1つの周波数の光を吸収して別の周波数の光を発生させる。光散乱材料は、その光散乱材料に入射する大半の光の方向を変える。小型レンズは、その小型レンズを通過する光に焦点を結ばせる。2種類以上の光学材料を1つ以上のウエルに供給することができる。光学材料190が着色剤または色変換材料である場合には、異なるウエル180に異なる着色剤または色変換材料を堆積させてカラー・フィルタ・アレイまたは色変換材料アレイにする。例えばいくつかのウエルには赤色着色剤を供給し(例えばOLEDデバイス30a)、いくつかのウエルには緑色着色剤を供給し(例えばOLEDデバイス30b)、いくつかのウエルには青色着色剤を供給し(例えばOLEDデバイス30c)、白色光を発生させる発光層130を用いてフル-カラーOLEDディスプレイを構成することができる。この場合には、ウエル180が十分高く、着色剤が溢れたりウエル180間を拡散したりしないことが好ましい。例えば高さが0.5ミクロンのウエルは、他の保護用材料がウエル180を覆う厚いカバーを形成していないのであれば、1種類の光学材料を収容するのに適切であろう。保護層がウエル180の上に形成されている場合、または1つ以上の堆積ステップにおいて複数の光学材料が1つ以上のウエル180に供給される場合には、より深い(例えば5ミクロン以上の)ウエルにすると有用であろう。あるいは比較的大きな体積の光学材料が必要な場合には、比較的深いウエルが有用である。比較的深いウエルは、周囲とのコントラストを改善するのにも役立つ。本発明を利用し、赤色発光画素と、緑色発光画素と、青色発光画素と、白色発光画素を備えるRGBWディスプレイが構成される。これは、上に説明した共通の白色発光層を用いて構成できるが、この場合には、白色画素に光学材料190が必ずしも付随していなくてもよい(例えばOLEDデバイス30d)。しかし必要な場合には、白色画素は、例えば白の色相をトリミングするために光学材料を備えることができる。RGBWディスプレイは、アメリカ合衆国特許出願公開第2004/0113875 A1号に開示されている。
【0024】
光学材料190は、ウエル180の中に多数の方法で堆積させることができる。例えばカラー・フィルタや色変換媒体を提供するためにパターニングが必要な場合には、光学材料をインク・ジェット堆積によってウエル180の中に供給できるが、他の手段(例えばパターニングされたレーザー転写やスクリーン印刷)も利用可能である。インク・ジェット堆積によるカラー・フィルタ・アレイの形成は、例えばアメリカ合衆国特許第6,909,477号、第6,874,883号、アメリカ合衆国特許出願公開第2005/0100660 A1号、第2002/0128351 A1号に記載されている。すべてのウエル180が同じ光学材料で満たされているときのようにパターニングが必要ない場合には、カーテン・コーティング、スピン・コーティング、ドロップ・コーティング、スプレー・コーティングや、他の関連した方法を利用できる。例えば光散乱材料はこのようにして堆積させることができ、するとそのような材料の大半がウエル180の中に流れ込む。しかしすべてのウエル180に同じ光学材料190が含まれている場合でさえ、インク・ジェットやそれ以外の方法もやはり有用である。
【0025】
パターニングされた導電層構造20は、場合によっては、OLEDディスプレイ10のコントラストを大きくするために光を吸収するブラック・マトリックスとして機能することができる。OLEDディスプレイの明るさおよび/または寿命を増大させることができる。ディスプレイのシャープさも向上させることができる。なぜなら、外に出た望ましくない光(外に出なければ、ディスプレイ装置のいろいろな層の内部で反射されたであろう)を光吸収材料で吸収することができるからである。一実施態様では、光吸収材料は、パターニングされた導電層160(例えばブラック・シルバー化合物)を形成する。銀は熱伝導率と導電率が大きな材料であり、従来技術で知られている電気化学的な方法(例えば酸化、還元が可能である)によって光吸収性にすることができる。パターニングされた光吸収性導電層160を堆積させてパターニングする操作は、従来のフォトレジスト法を利用してなされる。従来技術では、銀化合物(例えばマグネシウム-銀化合物)が電極の候補として提案されている。他の適切な材料として、アルミニウム、銅、マグネシウム、チタンや、これらの合金がある。
【0026】
特に有用な一実施態様では、パターニングされた導電層160は、ドナーからレーザー転写によって望むパターンに堆積された金属ナノ粒子を含むことができる。この方法では、パターニングされた導電層160からなる比較的厚い層を形成することができる。例えば粒径が2〜4nmの金属ナノ粒子を調製し、ドナー・シートの表面に一様にコーティングし、乾燥させる。乾燥した金属ナノ粒子層の厚さは非常に薄くすることができ、2μm程度である。ドナー・シートは、共通の光透過性電極150の隣に(好ましくは接触させて)配置することができる。パターニングされた照射(好ましくはレーザー照射)により、IR染料が照射線を吸収して熱を発生させ、金属ナノ粒子をアニールする。ドナー・シートを取り去ると、アニールされた金属ナノ粒子が光透過性電極150の表面に残る。
【0027】
別の一実施態様では、光吸収材料が、パターニングされた絶縁層170の一部となることができる。光吸収材料は、金属酸化物、金属硫化物、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、光吸収性ポリマー、吸収性染料をドープされたポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。光吸収材料は黒色であることが好ましく、反射防止コーティングをさらに含むことができる。
【0028】
好ましい一実施態様では、導電層は、上部の透過性電極の上に例えば蒸着またはスパッタリングによって一様に堆積される。次に、パターニングされた絶縁層170が導電層の上に設けられ、エッチング用マスクとして使用されて導電層160がパターニングされ、パターニングされた絶縁層は除去されない。ポリマーのエッチング用マスクは一般に除去されるが、本発明では、パターニングされた絶縁層170を残すことがいくつかの理由で有利である。
【0029】
第1に、パターニングされた絶縁層170が残っていると製造ステップ数が減る。
【0030】
第2に、導電層160しか光学材料のためのウエルとして使用できないが、そのような導電層を十分な厚さまでパターニングすることは難しくて時間を要する可能性がある(上記の金属ナノ粒子を用いた方法によってこれらの欠点のいくつかを解決できる可能性があることに注意されたい)。個々の用途に応じ、光学材料には1〜数μmの厚さが必要とされるであろう。すると導電性材料を堆積させたりエッチングしたりするのに長時間かかる可能性がある。さらに、厚い金属層は大きな応力を発生させることがあるため、デバイスが故障する可能性がある(例えばOLEDの1つ以上の層の剥離)。逆に、パターニングされた絶縁層170を1〜数μmの厚さにすることは、特にそれがポリマーである場合には容易である。しかもそのようなポリマー層は、一般に、同等な厚さの金属よりも応力が小さい。したがって絶縁層170は導電層160よりも厚いことが一般に好ましい。
【0031】
第3に、パターニングされた導電層160とパターニングされた絶縁層170の両方を用いることで、それぞれの表面張力特性を選択してより容易に光学材料を堆積させることが可能になる。例えば光学材料を親水性溶媒から堆積させる場合には、パターニングされた絶縁層170の表面張力を選択または変更して疎水性にすることで、溶媒が撥かれるようにする。こうすると堆積される光学材料の形状に影響が及ぶ可能性がある。例えば小型レンズをこのようにして形成することができる。
【0032】
パターニングされた絶縁層170がエッチング用マスクとして機能し、構造の一部として残る場合には、パターニングされた絶縁層170を提供するいくつかの方法がある。好ましい1つの方法では、照射によって誘導される熱転写(例えばドナーからのレーザー転写)によってポリマーを転写することで、パターニングされた絶縁層170が提供される。
【0033】
レーザー転写パターニングを利用する場合には、パターニングされた絶縁層170は、ポリマー結合剤、アモルファス有機固体、熱に対して不安定な物質、ガスを発生させる物質を含むことや、場合によっては光吸収材料を含むことが可能である。さらに、絶縁層は、ブラック・マトリックスを形成するための染料または顔料を含むことができる。
【0034】
絶縁層170をレーザー転写する際に有用なポリマー結合剤と有機固体は、熱に対して不安定な物質、またはガスを発生させる物質であることが好ましい。それは例えば、ポリシアノアクリレート、ニトロセルロース、無水マレイン酸のコポリマーや、Weidnerに付与されたアメリカ合衆国特許第6,190,827号とWeidnerらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,165,671号、ならびにその中で引用されている参考文献にレーザー・ドナー要素中の推進層の成分として開示されている材料である。絶縁層170は、この層を物理的に完全な状態にするのに必要な他のポリマーや有機固体も含むことができる。
【0035】
絶縁層170の光吸収材料としては、染料(例えば、DeBoerに付与されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,973,572号とTuttに付与されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第5,578,416号の中に列挙されている染料)または顔料(例えばカーボン・ブラック)が可能である。主な判断基準は、絶縁層170の光吸収材料が、所定の波長において、材料をドナーから基板に転写するのに十分な強度でレーザー光を吸収することである。この転写の効率は、レーザーのフルエンス、スポットのサイズ、ビームの重なりや、他の因子に依存することがよく知られている。
【0036】
絶縁層170のアモルファス有機固体は、上記のアメリカ合衆国特許第6,165,671号に記載されているモノマー樹脂(例えば全体または一部が水素化されたロジン・エステルや、同様のロジン・エステル)にすることができる。市販されている材料としては、水素化されたウッド・ロジンのグリセロール・エステル(例えばステイベライト・エステル10(ハーキュリーズ社))、水素化されたロジンのグリセロール・エステル(例えばフォラル85(ハーキュリーズ社))、修飾されたロジンのペンタエリトリトール・エステル(例えばペンタリン344(ハーキュリーズ社))などがある。層170のアモルファス有機固体は、染料ドナー・レーザー転写シートの結合剤要素として、Neumannに付与されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第5,891,602号に記載されているガラス状固体モノマーも含むことができる。層170のアモルファス有機固体は、分子量が約4000未満のオリゴマー樹脂(例えばトーン260というポリエステル)でもよい。
【0037】
絶縁層170は、すでに例示した材料に加え、コーティング助剤として必要で表面の特性を変えるのに用いられる表面活性剤、硬化剤、接着促進剤などを含むことができる。これらの材料は、製造したデバイスを物理的に完全な状態にするためと、そのデバイスを処理するのに必要とされる。上述のように、染料と顔料を絶縁層170に添加してブラック・マトリックスを形成することもできる。
【0038】
転写は、接着転写によって、より好ましくはアブレーション転写によって実現できる。“アブレーション転写”という用語は、ドナー媒体から熱によって誘導される転写を広く意味し、ドナー媒体の1成分の少なくとも一部がガス状態に変換される。ガス状態に変換される材料としては、レジスト(ポリマー)材料そのもの、またはドナーの他の何らかの材料成分で、ガスになることによってアブレーション転写の推進剤として機能するものが可能である。いずれの場合にも膨張してガス形態になることによって推進力が生じ、アブレーション転写における転写メカニズムとして機能する。アブレーション転写の広い分類には、レジスト・ドナー材料の一部または全部が加熱されて固体から蒸気に変換される昇華転写が含まれる。アブレーション転写には、ドナー材料の少なくとも一部が実際にはガス状態に変換されず、ドナーの加熱されたある成分が蒸気の形態に変換されることによってそのガス化しない材料がうまく断片化されて推進力を受ける断片化転写または粒子転写も含まれる。アブレーション転写では、ドナー・レジスト材料がドナーの表面とレシーバである基板の間のギャップを横断して進む。アブレーション転写の気化メカニズムとガス流メカニズムが、この方法を、密に接触させること(すなわちギャップがない)と、レジスト材料を何らかの形で融解させてドナーからレシーバへと移動させることとに依存する従来のアブレーション転写と違うものにしている。逆に、このアブレーション転写法は、ドナーとレシーバ表面の間のギャップを必要とする。堆積させる熱レジスト材料、またはドナーに含まれていて推進剤として機能する他の何らかの材料を加熱して昇華状態またはアブレーション状態にすることで、ドナーの少なくとも一部の成分を部分的に、または完全に気化させる。レーザーまたは他のエネルギー源によって適切に加熱されることで、得られる蒸気および/または除去された固体は、部分的に、または完全に気化した形態で、ドナーからレシーバの表面までギャップを横断して移動する。
【0039】
パターニングされた絶縁層170が残されてレジストとして機能する有用な別の一実施態様では、アブレーション除去によって一様な絶縁層をパターニングすることができる。この場合には、絶縁層は、感光性アブレーション除去可能材料を含んでおり、導電層の上に一様にコーティングされる。このようなコーティングは、スピン・コーティング、カーテン・コーティング、スプレー・コーティング、または適切な他の方法で実現することができる。次に、絶縁層は、パターニングされた照射(例えばレーザー)によってパターニングされ、照射された領域の材料が除去される。その後、導電層はエッチングによってパターニングすることができる。アブレーション除去可能な感光性コーティングにはさまざまな成分が含まれる。その成分は、光が当たったときに基板からアブレーション除去可能な感光性コーティングを除去できるように選択せねばならない。例えば一実施態様では、アブレーション除去可能な感光性コーティングは、結合剤と赤外線吸収化合物を含んでいる。別の一実施態様では、アブレーション除去可能な感光性コーティングは、結合剤と、赤外線吸収化合物と、撥水材料として機能するポリマー・フルオロカーボンを含んでいる。さらに別の一実施態様では、アブレーション除去可能な感光性コーティングは、結合剤と、赤外線吸収化合物と、紫外線吸収化合物を含んでいる。さらに別の一実施態様では、アブレーション除去可能な感光性コーティングは、結合剤と、赤外線吸収化合物と、湿潤剤を含んでいる。他の実施態様を適切な成分を用いて形成することもできる。ヒドロキシ基を多く含む結合剤(例えばポリ(ビニルアルコール))が特に有用である。
【0040】
ここで図3を参照すると、本発明の方法で製造した複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイの別の一実施態様を上から見た図を示してある。OLEDディスプレイ50は、複数のOLEDデバイス30を備えている。それぞれのOLEDデバイス30は、OLEDディスプレイ50の1つの画素、すなわち個別にアドレスすることが可能な発光ユニットである。OLEDディスプレイ50は、パターニングされた導電層構造25も備えている。これは、図1のパターニングされた導電層構造20と同様のものである。しかしこの場合には、パターニングされた導電層構造25は一連の列としてパターニングされてOLEDディスプレイ50のOLEDデバイス間の領域、すなわち非発光領域を覆っていて、OLEDデバイス30は覆っておらず、OLEDデバイス行とOLEDデバイス行に挟まれたOLEDデバイス間の領域(例えばOLEDデバイス間の領域70)も覆っていない。この配置により、OLEDディスプレイ50上の複数のOLEDデバイスと揃ったウエル(例えばウエル60)が区画される。連続したウエル60は異なる色にすることができる(例えば赤、緑、青の列の繰り返し)。あるいはディスプレイを複数の行からなるレイアウトにすることもできる。
【0041】
ここで図4を参照すると、本発明に従ってOLEDディスプレイを製造する方法の一実施態様のブロック・ダイヤグラムが示してある。この図4とともに図2も参照する。プロセスの開始時に(ステップ200)、複数のOLEDデバイス(例えば30a、30bなど)を備えるOLEDディスプレイ10を用意する(ステップ210)。これは、少なくとも1つの基板100と、底部電極110と、発光層130と、共通の光透過性電極150を備える複数のOLEDデバイスを意味する。このようなOLEDディスプレイを製造する方法は従来技術でよく知られている。次に、上に説明したような導電層を共通の光透過性電極150の表面全体に形成する(ステップ220)。このような層は、例えば蒸着またはスパッタリングによって形成することができる。次に、上に説明したような絶縁層を導電層の表面全体に形成する(ステップ230)。この絶縁層は、溶媒(例えばメタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル)にポリマーを溶かした溶液を蒸発させてコーティングすることによって堆積させることができる。この時点でOLEDディスプレイ10は、パターニングされていない導電層構造を共通の光透過性電極150の上に備えている。
【0042】
次に、一様な絶縁層をパターニングし(ステップ240)、導電層の上にパターニングされた絶縁層をが載った状態にする。これは、絶縁層の性質に応じていくつかの方法で実現できる。絶縁層が感光性である場合には(例えばフォトレジスト)、マスクを通じてあるパターンに光を照射することでコーティングのいろいろな部分を重合させることができる。材料のうちで照射を受ける部分は硬化するため、残部を洗い流す。あるいはOLEDデバイスの発光領域の非感光性絶縁層(例えばシアノアクリレート)またはニトロセルロース層をあるパターンのレーザー・アブレーションを利用して(例えば絶縁層が吸収する波長の赤外レーザーによって)除去することができる。このステップでは、一様な絶縁層がパターニングされてパターニングされた絶縁層170が提供されることにより、OLEDデバイスの発光領域の上にある導電層が露出してウエル180の一部が形成される。
【0043】
次に、一様な導電層をパターニングする。そのとき、OLEDデバイスの発光領域の上にある導電層(導電層のそのような領域は上記のステップで露出している)を除去する(ステップ250)。すなわちパターニングされた絶縁層をエッチング用マスクとして用いて導電層をパターニングし、パターニングされた導電層を形成する。これは、導電層の性質と、下にある共通の光透過性電極150の性質に応じ、いくつかの方法で実現できる。よく知られた光透過性電極はインジウムスズ-酸化物(ITO)を含んでいる。導電層は、化学的エッチングによってパターニングすることができる。例えば銀導電層は、硝酸第二鉄溶液を用いた処理によって除去できる。あるいは導電層は、例えばその導電層がアルミニウムである場合には、プラズマ・エッチングによってパターニングすることもできる。アルミニウムの塩素プラズマ・エッチングがよく知られている。塩素プラズマは、塩素化化合物(例えばCCl4、CHCl3、BCl3のほか、塩素ガスさえ可能)の放電処理によって発生させることができる。このステップにより、一様な導電層がパターニングされた導電層160にされ、パターニングされた導電層構造20とウエル180の形成プロセスが完了する。
【0044】
次に、光学材料190を1つ以上のウエルの中に供給する(ステップ260)。例えば光学材料190としては、1種類のカラー・フィルタ材料、または一連のカラー・フィルタ材料が可能である。そのカラー・フィルタ材料がインクジェット堆積によって異なるウエルの中に堆積されてカラー・フィルタ・アレイが提供される。インクジェット堆積によってカラー・フィルタ・アレイを形成する方法は、例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2005/0100660 A1号、アメリカ合衆国特許第6,909,477 B1号、第6,874,883 B1号、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0128351 A1号に記載されている。
【0045】
あるいは上に説明したように、光学材料として、1種類の色変換材料または一連の色変換材料、光散乱材料、小型レンズ材料や、これらの組み合わせが可能である。光学材料190をウエル180の中に供給した後、このプロセスを終了する(ステップ270)か、さらにプロセスを続けて(図示せず)熱によるアニーリング、障壁層の付着、カバーの設置などを行なうことができる。
【0046】
ここで図5を参照すると、本発明に従ってOLEDディスプレイを製造する方法の別の一実施態様のブロック・ダイヤグラムが示してある。この手続きは、最初は図4と同様であり、複数のOLEDデバイスが基板の上に設けられる(ステップ210)。パターニングされた導電層160が、例えばシャドウマスクを通じた蒸着によって、または譲受人に譲渡された上記のアメリカ合衆国特許出願に記載されている導電性材料のレーザー熱転写によって、共通の光透過性電極150の上に形成される(ステップ225)。あるいは導電層のパターニングは、よく知られているフォトリソグラフィ法によって実現することもできる。次に、パターニングされた絶縁層170を、パターニングされた導電層160の上に設ける(ステップ235)。パターニングは、ドナー・シートから絶縁材料をパターニングされた状態で熱転写することによって実現できる。そのためには、例えば絶縁材料をドナー基板シートの上にコーティングし、そのドナー基板シートをOLED基板と接触させるかOLED基板の近くに配置し、ドナーをレーザーで選択的に加熱して絶縁材料をOLED基板に転写する。別の一実施態様では、パターニングされた絶縁層170として厚い膜が可能であり、それをスクリーン印刷法を利用して堆積させることができる。あるいはパターニングされた絶縁層170は、パターニングされた導電層160を堆積させるのにも用いたシャドウマスクを通じて堆積させることもできる。次に、光学材料190を、パターニングされた導電層構造20(すなわちパターニングされた導電層160とパターニングされた絶縁層170)によって形成されたウエル180の中に上記のようにして供給し(ステップ270)、このプロセスを終了する(ステップ270)か、上記のようにさらにプロセスを続ける。
【0047】
上記の方法を組み合わせて利用することができる。例えば導電層を図4におけるように一様な層として設けた後、絶縁層を図5におけるように例えばレーザー転写によってパターニングされた層にする。次に、導電層を図4におけるようにエッチング法でパターニングすることで、パターニングされた導電層構造20とウエル180を提供することができる。
【0048】
本発明の一実施態様では、光学材料は、ウエルの中で発光層を形成してOLEDからの発光効率を向上させる粒子を含むことができる。ここで図6を参照すると、散乱層を備える本発明のOLEDディスプレイ300の一実施態様が示してある。OLEDディスプレイ300は、パターニングされた導電層構造の別の一実施態様も提示しており、ここではパターニングされた導電層160とパターニングされた絶縁層170がテーパー状になって先細のウエルを形成している。ウエル内の光学材料は光散乱材料310である。光散乱材料310は、体積散乱層または表面散乱層を含むことができる。いくつかの実施態様では、光散乱材料310は、少なくとも2つの異なる屈折率を持つ成分を含むことができる。光散乱材料310は、例えば屈折率がより小さなマトリックスと、屈折率がより大きな散乱要素とを含むことができる。あるいはマトリックスがより大きな屈折率を持ち、散乱要素がより小さな屈折率を持つこともできる。例えばマトリックスは、二酸化ケイ素、または屈折率が約1.5である架橋した樹脂、または屈折率がはるかに大きい窒化ケイ素を含むことができる。光散乱材料310の厚さが発生する光の波長の1/10よりも大きい場合には、光散乱材料の少なくとも1つの成分の屈折率は、その光散乱材料が接触している層(ここでは共通の光透過性電極150)の屈折率とほぼ等しいかそれ以上であることが望ましい。これは、電極に捕獲されるすべての光が光散乱材料の方向変更効果を受けられるようにするためである。光散乱材料310の厚さが発生する光の波長の1/10よりも小さい場合には、散乱層に含まれる材料の屈折率に関するこのような条件は不要である。一実施態様では、屈折率がより小さなマトリックスは、共通の光透過性電極150と一致した屈折率を持つ。
【0049】
別の一実施態様では、光散乱材料310は、別の層の上に堆積された粒子を含むことができる(例えば二酸化チタンの粒子を共通の光透過性電極150の上にコーティングして光を散乱させる)。このような粒子は、可視光の散乱を最適にするため、直径が少なくとも100nmであることが好ましい。光散乱材料は、一般に、有機層と電極の内部での全反射をなくすため、共通の光透過性電極150に隣接するか、共通の光透過性電極150と接触している。本発明の一実施態様によれば、有機層と電極が合わさり、発生した光の一部のための導波路を形成する。なぜなら有機層の屈折率は透明な電極の屈折率よりも小さく、底部電極は反射性だからである。光散乱材料は有機層と透明な電極層の内部における光の全反射をなくし、光の一部の方向を変更させて層の外に出す。
【0050】
光散乱材料310は、有機材料(例えばポリマーまたは導電性ポリマー)または無機材料を含むことができる。有機材料としては、例えば、ポリチオフェン、PEDOT、PET、PENのうちの1つ以上が可能である。無機材料としては、例えば、SiOx(x>1)、SiNx(x>1)、Si3N4、TiO2、MgO、ZnO、Al2O3、SnO2、In2O3、MgF2、CaF2のうちの1つ以上が可能である。散乱層310は、例えば、屈折率が2.5〜3の二酸化チタンをドープされた屈折率が1.6〜1.8の酸化ケイ素と窒化ケイ素を含むことができる。1.4〜1.6の範囲の屈折率を持っていて、屈折率がより大きな材料からなる屈折性要素の分散液を含むポリマー材料を使用することができる。例えばランダムな位置にある二酸化チタンの球をポリマー材料のマトリックスの中で使用できる。あるいはインジウム-スズ-酸化物、酸化ケイ素、窒化ケイ素を用いたより構造化された配置を利用することもできる。屈折性要素の形状は、円筒形、長方形、球形が可能だが、これらの形状に限定されないことが理解されよう。光散乱材料の成分間の屈折率の差は、例えば0.3〜3が可能であり、一般に差は大きいことが望ましい。光散乱材料の厚さ、あるいは散乱層の内部または表面にある突起のサイズは、例えば0.03〜50μmである。光散乱材料の内部で回折効果が生じるのを避けることが一般に好ましい。このような効果は、例えばランダムに突起を配置することによって、または屈折性要素のサイズまたは分布が、デバイスの発光領域から出る光の色の波長と同じにならないようにすることによって回避できる。
【0051】
散乱層に含まれるサイズの異なる粒子は、波長が異なると異なる光学的効果を示す可能性のあることが知られている。したがって本発明のさらに別の一実施態様では、サイズ分布が異なる粒子を異なるウエルの中に堆積させ、異なる色の画素とする。別のさまざまな実施態様では、粒子および/またはマトリックス材料そのものが着色されていて、単一の層内でカラー・フィルタを形成する。例えば樹脂またはポリマーは、着色剤(例えば染料や顔料)を含むことができる。顔料粒子は、散乱材料としても機能する。
【0052】
別の一実施態様では、光学材料が1つ以上の層にされ、そのさまざまな層の中でさまざまな光学的効果を提供する。例えば散乱層をウエル内で透明な電極の上に形成し、別のカラー・フィルタ層を散乱層の上に形成することができる。あるいはカラー・フィルタ層を散乱層の下に配置することもできる。これらの層は、層を堆積させるための同じ装置または異なる装置を用いて別々の堆積ステップにおいて形成することができる。
【0053】
他の光学効果が望ましい場合があり、そうした光学効果を光学材料で利用することができる。例えば光学層としてのポリマー・マトリックスの中でカーボン・ブラックを用いて中性フィルタを形成することができる。別の一実施態様では、光学材料からなる別々の層が異なる屈折率を持つことができ、それらが合わさることで、構成的光学効果と非構成的光学効果を利用して光フィルタを形成する。
【0054】
OLEDディスプレイ300は、そのディスプレイの上に光透過性カバー320を備えていて、光散乱材料310と光透過性カバー320の間にギャップ330が形成される。ディスプレイ装置のシャープさは、光散乱材料を用いると、屈折率が小さな層を光散乱材料と光透過性基板またはカバー(例えばカバー320)の間に設けるのでなければ低下する可能性がある。本発明の一実施態様では、屈折率が小さいそのような層は、ウエル内の光学材料の上方かつウエルの頂部よりも下にスペース(例えばギャップ330)を設けることによって提供できる。このような実施態様では、光学材料とウエルの頂部の間のギャップ330は、空気または不活性ガスで満たされるか、屈折率が、透明な基板100、光透過性カバー320、共通の透過性電極150のいずれかよりも小さく、しかもOLEDの発光層に含まれるどの有機材料よりも小さい材料で満たされる。光学材料とカバーの間のこのようなギャップは、少なくとも0.5μmであることが好ましく、1μmよりも大きいことがより好ましく、5μmよりも大きいことがそれ以上に好ましい。
【0055】
例えばパターニングされた電極に導電性金属を用いる場合、ウエルに反射性縁部を設けることで、発生する光がそれぞれの発光領域の縁部に向かうのを助けることができる。薄い金属層を蒸着することによって反射性コーティングを付着させることができる。あるいはウエルを不透明または光吸収性にすることができる。光吸収材料として、例えば従来技術で知られているカラー・フィルタ材料を用いることができる。ウエルの側部は反射性であるのに対し、頂部は黒色または光吸収性にすることができる。光吸収性の表面またはコーティングはOLEDデバイスに入射する周囲光を吸収するため、デバイスのコントラストが向上するであろう。ウエルでOLEDの面よりも上に出る部分の好ましい高さは1μm以上である。接着剤を用いて封止用の光透過性カバー320をウエルに固定し、機械的強度を大きくすることができる。
【0056】
本発明による別の一実施態様では、環境から保護する層(図示せず)を透明な電極の上方の位置で光学材料の下または上に配置することができる。例えばアルミニウム酸化物を透明な電極の上かつ光学材料の下に堆積させることができる。
【0057】
本発明のOLEDディスプレイの構造に関する有用ないくつかの特徴を以下に説明する。
【0058】
基板
【0059】
本発明のOLEDディスプレイは、支持用基板100の上に形成されて、カソードまたはアノードが基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板は、単純な構造にすること、または多数の層を有する複雑な構造にすることができる(例えば、エレクトロニクス素子(TFT素子など)、平坦化層、ワイヤ接続層などを有するガラス支持体)。基板と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノードであることが一般的であるが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、基板は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、絶縁層を有する金属、回路板材料などがある。もちろん、このような構成のデバイスでは、光透過性のある上部電極を設ける必要がある。
【0060】
アノード
【0061】
共通の光透過性電極150がアノードである場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。共通の透明なアノード用として本発明で用いられる一般的な材料は、インジウム-スズ-酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛-酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム-酸化物、ニッケル-タングステン-酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光をカソード電極だけを通して見るような用途では(底部電極110がアノードである場合)、アノードの透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、光透過性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0062】
正孔注入層(HIL)
【0063】
正孔注入層をアノードと正孔輸送層120の間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,127,004号、第6,208,075号、第6,208,077号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))や、無機酸化物(例えばバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。アメリカ合衆国特許第6,720,573号に記載されているヘキサアザトリフェニレン誘導体も有用なHIL材料である。
【0064】
HILで用いるのに適した材料の別のクラスとして、p型をドープされた有機材料がある。p型をドープされた有機材料は、一般に、正孔輸送材料(例えば、電子受容ドーパントをドープされた芳香族アミン(下記のもの参照))を含んでいる。そのようなドーパントとして、例えば、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)や、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)の他の誘導体、無機酸化剤(亜問えばヨウ素、FeCl3、FeF3、SbCl5、他のいくつかの金属塩化物、他のいくつかの金属フッ化物)などが挙げられる。p型をドープする濃度は、0.01〜20体積%の範囲が好ましい。この層のさらに別の材料は、例えばアメリカ合衆国特許第5,093,698号、第6,423,429号、第6,597,012号に記載されている。
【0065】
正孔輸送層(HTL)
【0066】
正孔輸送層120は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0067】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。正孔輸送材料は、単一の芳香族第三級アミン化合物、または芳香族第三級アミンの混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0068】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されているいくつかの正孔注入材料も有用な正孔輸送材料である。さらに、ポリマー正孔輸送材料も使用できる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0069】
発光層(LEL)
【0070】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の1つ以上の発光層(LEL)130は、蛍光材料またはリン光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。ゲスト発光材料は、発光ドーパントと呼ばれることがしばしばある。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。発光材料は、通常は強い蛍光染料およびリン光化合物(例えば、WO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0071】
ホスト材料と発光材料は、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))にすることができる。ポリマーの場合、小分子発光材料をポリマーからなるホストに分子として分散させたり、発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加したりすることができる。
【0072】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。ホストから発光材料にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホストから発光材料にエネルギーが移動できるよう、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高いことも重要である。
【0073】
有用であることが知られているホストおよび発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、第6,661,023号、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0127427 A1号、第2003/0198829 A1号、第2003/0203234 A1号、第2003/0224202 A1号、第2004/0001969 A1号に開示されているものなどがある。
【0074】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、それと同様の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成する。有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0075】
有用なホスト材料の別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、第6,713,192号、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0048687号、第2003/0072966号、WO 2004/018587に記載されているようなアントラセン誘導体がある。いくつか例示すると、9,10-ジ-ナフチルアントラセンと9-ナフチル-10-フェニルアントラセンの誘導体がある。ホスト材料の有用な別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。
【0076】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。発光層は、デバイスの膜の形態、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、2種類以上のホスト材料を含むことができる。電子輸送材料と正孔輸送材料の混合物も有用なホストとして知られている。さらに、上記のホスト材料と正孔輸送材料または電子輸送材料との混合物も適切なホストになりうる。
【0077】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、カルボスチリル化合物などがある。ジスチリルベンゼンの誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたものである(非公式にはジスチリルアミンとして知られる)。
【0078】
リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわち“三重項発光体”も含まれる)に適したホスト材料は、三重項エキシトンの輸送がホスト材料からリン光材料へと効率的になされるものを選択すべきである。この輸送が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいことが非常に望ましい。しかしホストのバンドギャップは、OLEDを駆動する電圧の許容できない上昇を引き起こすほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0117662号に記載されている。適切なホストとしては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホストの例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-N,N'-ジカルバゾールビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)と、これらの誘導体である。
【0079】
本発明の発光層で使用できる有用なリン光材料の例が記載されているのは、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0017361 A1号、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、アメリカ合衆国特許第6,458,475 B1号、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,573,651 B2号、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0197511 A1号、WO 02/074015 A2、アメリカ合衆国特許第6,451,455 B1号、アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0072964 A1号、第2003/0068528 A1号、アメリカ合衆国特許第6,413,656 B1号、第6,515,298 B2号、第6,451,415 B1号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0124381 A1号、第2003/0059646 A1号、第2003/0054198 A1号、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、第1 238 981 A2号、第1 244 155 A2号、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0100906 A1号、2003/0068526 A1号、第2003/0068535 A1号、日本国特開2003/073387A、2003/073388A、アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0141809 A1号、第2003/0040627 A1号、日本国特開2003/059667A、2003/073665A、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0121638 A1などである。
【0080】
電子輸送層(ETL)
【0081】
本発明の有機EL素子の電子輸送層140を形成する際に用いるとよい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物(例えばオキシンそのもの(一般に8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレート)である。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高性能を示し、容易に薄膜の形態に製造することができる。オキシノイド化合物の例はすでに列挙した。
【0082】
電子輸送層で用いるのに適した他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体と、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジン、フェナントロリン誘導体、いくつかのシロール誘導体も有用な電子輸送材料である。
【0083】
電子注入層(EIL)
【0084】
駆動電圧を低下させるため、n型をドープされた有機材料を用いて電子注入層(EIL)をカソードの隣に配置することができる。EILは、ETLとカソードの間に配置すること、またはETLの機能も果たすことができる。n型をドープされた有機材料は、一般に、有機電子輸送材料(上記のもの)と電子供与ドーパント(例えば仕事関数が小さな金属(4.0eV未満))を含んでいる。例えばアメリカ合衆国特許第5,458,977号、第6,013,384号、第6,509,109号、第6,639,357号を参照のこと。EILで用いるとよい特に有用な電子輸送材料としては、金属キレート化オキシノイド化合物(例えばAlqやフェナントロリン誘導体)が挙げられる。他の有用な材料としては、ブタジエン誘導体、トリアジン、ベンズアゾール誘導体、シロール誘導体などがある。2種類以上のホストを組み合わせて適切な電荷注入特性と安定特性を得るとよい場合がある。
【0085】
金属をドープされた有機層のための適切な金属は、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばバリウム、マグネシウム)、ランタニド族からの金属(例えばランタン、ネオジミウム、ルテチウム)、ならびにこれらの組み合わせである。金属をドープされた有機層に含まれる仕事関数が小さな金属の濃度は、0.1〜30体積%の範囲である。金属をドープされた有機層に含まれる仕事関数が小さな金属の濃度は、0.2〜10体積%の範囲であることが好ましい。仕事関数が小さな金属は、有機電子輸送材料とのモル比が約1:1となるように供給することが好ましい。
【0086】
カソード
【0087】
カソードが底部電極110を含んでいて、アノードだけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソードは、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、有機層(例えばETL)に接する薄い電子注入層(EIL)を備えていて、その上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号などに開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0088】
カソードが共通の光透過性電極150であり、カソードを通して発光を見る場合、カソードはできるだけ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。電極に用いられる最も一般的な材料はインジウム-スズ-酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛-酸化物(IZO)、薄い金属層(例えばAl、Mg、Agで、厚さは5nm〜20nmが好ましい)である。このような金属は、使用する場合には、一般に、導電性酸化物(例えばITOやIZO)からなるより厚い層でコーティングされることになろう。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1 076 368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー・アブレーション、選択的化学蒸着などがある。
【0089】
他の一般的な有機層とデバイスの構造
【0090】
発光層130と電子輸送層140を場合によっては単一の層にまとめて発光と電子輸送の両方の機能をサポートできる場合がある。従来技術では、発光ドーパントを正孔輸送層に添加してホストとして機能させうることも知られている。多数のドーパントを1つ以上の層に添加し、例えば青色発光材料と黄色発光材料、またはシアン色発光材料と赤色発光材料、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせて白色発光OLEDを作ることができる。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,132号、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0186214号、第2002/0025419号、第2004/0009367号、アメリカ合衆国特許第6,627,333号に記載されている。
【0091】
従来技術で知られている追加の層(エキシトン阻止層、電子阻止層、正孔阻止層など)を本発明のデバイスで用いることができる。正孔阻止層は、アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0015859号、WO 00/70655 A2、WO 01/93642 A1、アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0068528号、第2003/0175553 A1号に記載されているように、一般にリン光発光体デバイスの効率を向上させるのに用いられる。
【0092】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第6,337,492号、アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0170491号、アメリカ合衆国特許第6,717,358号に記載されているように、いわゆるタンデム式デバイス構造で用いることができる。このようなタンデム式デバイスは多数のエレクトロルミネッセンス・ユニットをアノードとカソードの間に備えていて、通常は、電荷の生成とエレクトロルミネッセンス・ユニットへの注入を促進するためにこれらユニットの間に接続層が設けられている。
【0093】
有機層の堆積
【0094】
上記の有機材料は、気相法(例えば昇華)を通じてうまく堆積するが、流体から堆積させることもできる(溶媒から堆積させ、結合剤を用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が有用だが、他の方法(例えばスパッタリング、ドナー・シートからの熱転写)も利用できる。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0095】
封止
【0096】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で密封される。OLEDデバイスを不活性な環境の中で密封するとき、有機接着剤、金属ハンダ、低融点ガラスを用いて保護カバーを取り付ける。本発明では、保護カバーは、ガラス、ポリマー膜、複合材料や、十分に光を透過させる他の材料で作ることができる。一般に、ゲッターまたは乾燥剤も密封された空間の中に供給される。有用なゲッターまたは乾燥剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩などがある。封止と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、アルミニウム酸化物、パラレン、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封止法として知られている。好ましい一実施態様では、従来技術で知られているように、アルミニウム酸化物が原子層堆積によって堆積される。このような障壁層は、パターニングされた導電層構造20を形成した後、かつ光学材料190をウエルの中に供給する前に設けることができる。すなわち障壁層は、例えば共通の光透過性電極150とパターニングされた導電層構造20の上に形成される。その代わりに、またはそれに加えて、障壁層は、光学材料とパターニングされた導電層構造の上に設けること、すなわち光学材料を堆積させた後に設けることができる。障壁層を堆積させる前に、導電層構造または光学材料に捕獲されたあらゆる溶媒または水分が例えば熱処理によって確実に除去されているようにすることが望ましい。
【0097】
光学的最適化
【0098】
本発明のOLEDデバイスでは、特性の向上を望むのであれば、公知のさまざまな光学的効果を1つ以上のウエルに堆積させた光学材料と組み合わせて利用することが可能である。例示すると、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、色変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングを、カバーの上に、またはカバーの一部として設けることができる。
【0099】
OLEDデバイスはマイクロキャビティ構造を持つことができる。有用な一実施態様では、一方の金属電極は実質的に不透明かつ反射性であり、他方の電極は反射性かつ半透明である。反射性電極は、Au、Ag、Mg、Ca、またはこれらの合金の中から選択することが好ましい。反射性金属電極が2つ存在しているため、デバイスはマイクロキャビティ構造を持つ。この構造内で強い光学的干渉が起こって共鳴状態になる。共鳴波長に近い発光は増大され、共鳴波長から遠い発光は抑制される。有機層の厚さを選択することにより、または光学的に透明なスペーサを電極間に配置することにより、光路長を調節することができる。例えば本発明のOLEDデバイスは、反射性アノードと有機EL媒体の間にITOからなるスペーサ層を配置し、半透明なカソードを有機EL媒体の上に載せることができる。
【0100】
本発明は、逆転したOLED構造、すなわちカソードが基板上にあり、アノードがデバイスの上部にある構造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の方法で製造した複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイの一実施態様を上から見た図である。
【図2】上記のOLEDディスプレイの断面図である。
【図3】本発明の方法で製造した複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイの別の一実施態様を上から見た図である。
【図4】本発明に従ってOLEDディスプレイを製造する方法の一実施態様のブロック・ダイヤグラムである。
【図5】本発明に従ってOLEDディスプレイを製造する方法の別の一実施態様のブロック・ダイヤグラムである。
【図6】本発明の方法で製造した複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイの一実施態様の断面図である。
【符号の説明】
【0102】
10 OLEDディスプレイ
20 パターニングされた導電層構造
25 パターニングされた導電層構造
30 OLEDデバイス
30a OLEDデバイス
30b OLEDデバイス
30c OLEDデバイス
30d OLEDデバイス
40 切断線
50 OLEDディスプレイ
60 ウエル
70 OLEDデバイス間の領域
100 基板
110 底部電極
120 正孔輸送層
130 発光層
140 電子輸送層
150 共通の光透過性電極
160 パターニングされた導電層
170 パターニングされた絶縁層
180 ウエル
190 光学材料
200 ブロック
210 ブロック
220 ブロック
225 ブロック
230 ブロック
235 ブロック
240 ブロック
250 ブロック
260 ブロック
270 ブロック
300 OLEDディスプレイ
310 光散乱材料
320 光透過性カバー
330 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のOLEDデバイスを備えるOLEDディスプレイを製造する方法であって、
(a)複数のOLEDデバイスを、共通の光透過性電極を共有するようにして基板の上に設けるステップと;
(b)その共通の光透過性電極の上にパターニングされた導電層構造を形成し、1つ以上のOLEDデバイスの発光領域の位置に揃えてウエルを区画するステップと;
(c)光学材料を1つ以上のウエルに供給するステップを含む方法。
【請求項2】
上記パターニングされた導電層構造が、上記共通の光透過性電極と接触するパターニングされた導電層と、そのパターニングされた導電層の上に配置されたパターニングされた絶縁層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記パターニングされた導電層構造が、
(i)上記共通の光透過性電極の上に導電層を堆積させるステップと;
(ii)その導電層の上にパターニングされた絶縁層を設けるステップと;
(iii)そのパターニングされた絶縁層をエッチング用マスクとして利用して上記導電層をパターニングし、上記パターニングされた導電層を形成するステップによって形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記パターニングされた絶縁層が、ポリマー層を一様にコーティングした後にレーザー・アブレーションを利用してそのポリマー層をパターニングすることによって得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記パターニングされた絶縁層が、ドナー・シートからポリマーをパターニングされた熱転写によって得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
上記導電層を、化学的エッチングまたはプラズマ・エッチングによってパターニングする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
上記光学材料をインクジェット堆積によって1つ以上のウエルに供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記光学材料が、カラー・フィルタ材料、色変換材料、光散乱材料、小型レンズのいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
異なるカラー・フィルタ材料をインクジェット堆積によって異なるウエルに堆積させてカラー・フィルタ・アレイにする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記光学材料が上記ウエルを満たしておらず、そのウエルが、光学材料が1つのウエルから別のウエルへと拡散するのを妨げる障壁として機能する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記パターニングされた導電層構造がブラック・マトリックスとして機能する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記パターニングされた導電層構造を形成した後、かつ光学材料を上記1つ以上のウエルの中に供給する前に、1つ以上の障壁層を設ける、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(d)1つ以上の障壁層を上記光学材料と上記パターニングされた導電層構造の上に設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
光透過性カバーを上記ディスプレイの上に設ける、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記光学材料が光散乱材料を含んでおり、光透過性カバーを上記ディスプレイの上に設けるが、その光散乱材料とカバーの間には少なくとも0.5μmのギャップが存在していて、このギャップに、空気または不活性ガスを満たすか、屈折率が上記光透過性カバーよりも小さく、しかもOLEDの発光層に含まれるどの有機材料よりも小さい材料を満たす、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
上記ウエルが0.5μmよりも深い、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記ウエルが5μmよりも深い、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記OLEDディスプレイが、赤色発光画素と、緑色発光画素と、青色発光画素とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記OLEDディスプレイが白色発光画素をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)に、ドナー・シートから金属ナノ粒子をレーザー転写して上記パターニングされた導電層構造を形成する操作が含まれる、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−510696(P2009−510696A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533540(P2008−533540)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/037558
【国際公開番号】WO2007/041116
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】