説明

PFO閉鎖デバイス

【課題】生体に生じた欠損を閉鎖するPFO閉鎖デバイスに関し、生体組織の表面のみでなく内部まで充分加熱処理され、生体組織の融着乃至接合を確実に行なうことができるPFO閉鎖デバイスを提供する。
【解決手段】カテーテル30の先端部に設けられ、卵円孔弁及び心房中隔からなる生体組織を挟持する挟圧手段1,2と、当該挟圧手段に電気エネルギを供給する電気エネルギ供給手段20とで構成され、電気エネルギ供給手段から挟圧手段Kに電気エネルギを供給されたことによる生体組織Mの加熱が低温加熱となるように、穿刺部2と挟持部材1を冷却することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に生じた欠損を閉鎖するPFO閉鎖デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、脳卒中や偏頭痛の心原性要因として卵円孔開存症(以下、PFO:Patent Foramen Ovale)が挙げられている。PFOは、胎児期の心臓における血液を左右短絡させる卵円孔が成人になっても残っている症状であり、成人の20〜30%が保有していると言われている。
【0003】
卵円孔は、心臓の二次中隔(Septum Secundum、以下、心房中隔)に生じ、通常時の心臓では、左心房の圧力が右心房側の圧力を上回るので、一次中隔(Septum Primum、以下、卵円孔弁)により閉塞されているが、緊張時(例えば、咳をしたとき、踏ん張るとき)などに右心房側の圧力が左心房側の圧力を上回ると、卵円孔弁が左心房側に開き、右心房側(静脈側)から左心房側(動脈側)に血液が流れ込むことになる。この血液中に血栓が含まれていると、血栓は、静脈側から動脈側に移ることになり、左心房→左心室→大動脈→脳へと流れ、脳卒中や偏頭痛などの要因になる。
【0004】
このような疾患に対する処置として、経皮的カテーテル手技による処置が、開心術と同じ効果が得られるならば、望ましい方法とされている。
【0005】
経皮的カテーテルを用いた閉鎖術のデバイスは、先天性の心房中隔欠損症(ASD)、PFO、心室中隔欠損症(VSD)、動脈管開存症(PDA)といった欠損を閉鎖する場合にも使用できるが、従来のデバイスは、欠損を閉鎖するディスク状の膜やアンカー部材を使用して卵円孔弁と心房中隔を挟むものであり、これらは体内に留置される。
【0006】
前記膜やアンカー部材は、体にとっては異物であり、しかも、血栓が付着しやすい。特に、左心房側のディスク状膜などに血栓が付着すると、これが流れて脳卒中の原因となる可能性があり、肉厚の薄い卵円孔弁を破損する虞もある。また、これら部材は、挟み込んだ状態で位置固定されず、位置ズレを起こす可能性もある。
【0007】
このため、最近では、下記特許文献1に記載のPFO閉鎖デバイスが提案されている。このPFO閉鎖デバイスは、器具を右心房から左心房に向けて卵円孔を挿通し、卵円孔弁を卵円孔に引き寄せて閉鎖し、電気エネルギを印加することにより組織を接合するものである。しかし、卵円孔や、卵円孔弁及び心房中隔は、大小のみでなく厚さや形状などの状態が人により異なり、場合によっては、器具の寸法なども大きく制約される。また、手技を行うにあたっても、様々な形態の卵円孔弁を卵円孔に常に確実に引き寄せることは困難となる虞がある。
【0008】
そこで、卵円孔弁と心房中隔を一対の電極により挟持し、両電極から電気エネルギを印加することにより組織を接合させるPFO閉鎖デバイスを先に提案した(下記特許文献2参照)。このPFO閉鎖デバイスは、一方が針電極からなる穿刺部、他方が穿刺部との間で卵円孔弁と心房中隔を挟持する挟持部材とする挟圧手段を使用し、穿刺部を卵円孔弁に穿刺した後、他方の電極である挟持部材との間で卵円孔弁と心房中隔を挟持し、生体組織に電気エネルギを印加し接合を行うものである。このデバイスを使用すれば、体内に異物を留置せず、構成が簡単で、手技も容易となり、確実に卵円孔弁と心房中隔を接合できる。
【0009】
電気エネルギを印加し生体組織を加熱して融着乃至接合する場合、電気エネルギを制御部において制御しつつ加熱しているが、この制御は、両電極間にある生体組織のインピーダンスを検知し、この値が所定値になれば融着乃至接合したものと判断し、手技を完了している。
【0010】
しかし、両電極による生体組織の挟持状態は、画一的なものではないため、生体組織の表面のみが焼灼され、内部は加熱処理されていない状態が生じ、生体組織の融着乃至接合が不十分なことがある。
【特許文献1】WO2004/086944 A2(要約、図10など参照)
【特許文献2】特願2006−47636(要約、図10など参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、生体組織の表面のみでなく内部まで充分加熱処理され、生体組織の融着乃至接合を確実に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明は、挟圧手段による生体組織の加熱が低温加熱となるように、穿刺部と挟持部材のいずれか一方若しくは両方を冷却する構成としたことを特徴とするのPFO閉鎖デバイス。
【0013】
上記目的を達成する本発明は、穿刺部により卵円孔弁を穿刺する一方、当該穿刺部と共働して挟持部材により前記卵円孔弁及び心房中隔からなる生体組織を挟持し、前記穿刺部と前記挟持部材に電気エネルギを印加することにより前記卵円孔弁と心房中隔とを相互に加熱融着させるPFOの治療方法であって、前記穿刺部と前記挟持部材のいずれか一方若しくは両方を冷却しつつ加熱し、前記生体組織を低温加熱することを特徴とするPFOの治療方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、卵円孔弁と心房中隔とを挟持手段により挟持した状態で当該挟持手段に電気エネルギを印加し加熱融着しているとき、前記挟持手段を冷却することにより生体組織を低温加熱するようにしたため、生体組織は全体が均一に徐々に加熱されることになる。したがって、表面のみが先に加熱されて変性することがなく、内部まで充分加熱処理され、生体組織を確実に融着乃至接合させることができる。特に、手技を行なっている間、生体組織のインピーダンス値が急激に変化しないので、生体組織の融着温度制御も容易で、より正確な制御となり、生体組織の融着力も増大し、融着もより強固なものとなるのみでなく、穿刺部や挟持部材に血栓の付着を防止できる。
【0015】
前記挟持手段を卵円孔弁に穿刺する穿刺部と、当該穿刺部と共働し前記卵円孔弁及び心房中隔を挟持する挟持部材とから構成し、両者のいずれか一方若しくは両方を冷却すれば、前記効果に加え、卵円孔弁や心房中隔の挟持が容易で、手技を行いやすいものとなる。
【0016】
前記低温加熱を行なうに当たり、穿刺部を内部に冷却水が流通する通路を有する中空針状部材としたものを使用すれば、穿刺部周辺の生体組織が変性することを抑制でき、薄肉の卵円孔弁を焼灼から保護できる。
【0017】
挟持部材を内部に冷却水が流通する通路を有する中空の舌片状部材としたものを使用すれば、幅広く挟持することができ、一度に大きな範囲を融着することができ、また、挟持部材周辺の生体組織の変性を抑制でき、長時間加熱処理しても心房中隔を焼灼から保護できる。
【0018】
前記穿刺部と前記挟持部材のいずれか一方若しくは両方を、少なくとも前記生体組織と接触しない部分を電気絶縁部材により被覆すれば、血栓の付着を防止できる。
【0019】
手元操作部と前記挟圧手段とを前記カテーテル内を挿通する操作部材によりそれぞれ独立に連結すれば、前記カテーテル全体を前後移動させることなく、手元操作部での操作のみにより挟圧手段を操作でき、穿刺や挟持する操作がより容易にかつ正確に行うことができ、いわゆる片手操作で穿刺あるいは挟持操作も別々に行うことができ、一層操作性が向上し、手技が容易になる。
【0020】
前記手元操作部のハンドル部材の一方の面側に前記穿刺部用の操作レバーを、他方の面側に前記挟持部材用の操作レバーを突出し、前記穿刺部用の操作レバーが前記穿刺部をカテーテルの先端部より突出した状態をロックするロック機構を設ければ、穿刺を終えた後、この状態を保ったまま挟持手技を行うことができ、手技が一層容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明に係るPFO閉鎖デバイスを示す概略断面図、図2は同デバイスの一例を示す要部斜視図、図3は図2の3−3線に沿う断面図、図4(A)は図2の4A−4A線に沿う断面相当図、図4(B)は図4(A)の平面図、図4(C)は図4(B)の4C−4C線に沿う断面相当図である。なお、図2では、紙面の都合上、手元操作部70のみを縮小した状態で記載している。
【0023】
まず、本実施形態のPFO閉鎖デバイスについて概説する。このデバイスは、図1、2に示すように、基端側に設けられた手元操作部70と、手元操作部70に基端が取り付けられたガイディングカテーテル31と、ガイディングカテーテル31内に設けられたカテーテル30と、カテーテル30の先端部分に設けられ、卵円孔弁M2及び心房中隔M1を挟持する挟圧手段Kと、挟圧手段Kにより挟持した部分の生体組織M(M1,M2の総称)を融着乃至接合させるエネルギを供給するエネルギ供給手段20と、挟圧手段Kによる手技を安定かつ正確に行なうための位置決め保持手段60とを有している。なお、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、挟圧手段Kあるいは卵円孔弁M2側を「先端側」と称す。
【0024】
このデバイスは、使用に当り、まず、カテーテル30の先端に設けられた挟圧手段K全体をガイディングカテーテル31内に収納した状態で、例えば、大腿静脈Jから挿入する。先端が手技を行なう心臓の部位まで到達すれば、ガイディングカテーテル31の先端より挟圧手段Kを突出し、卵円孔の欠損O(以下、単に卵円孔Oと称することもある)が生じている心臓の心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織を挟持する。この挟持状態で挟圧手段Kに電気エネルギを供給し、両組織を加熱融着し、欠損Oを閉鎖する。なお、図中、「L」は左心房、「R」は右心房を示す。
【0025】
さらに詳述する。本実施形態の挟圧手段Kは、図2に示すように、心房中隔M1の一側面に直接接触する挟持部材1と、卵円孔弁M2に穿刺する穿刺部2とから構成されている。挟持部材1と穿刺部2は、いずれも基部がカテーテル30の先端に設けられた支持具50に保持され、支持具50から突出されると、相互に対向位置となり、両者間に電気エネルギを印加することにより挟持した生体組織Mを加熱し融着する電極部材として機能する。
【0026】
挟持部材1は、生体組織M接触する舌片状部材の電極部材である本体部1aと、本体部1aに先端側が連結され基端側が支持具50に支持された一対の線材部1bとからなる。
【0027】
線材部1bは、基端側がU字状に形成され、ここに操作部材7bが接続され、操作部材7bを軸方向に進退させることによりカテーテル30の先端に設けられた支持具50から挟持部材1を出没操作できるようになっている。線材部1bは、図4(C)に示すように、折曲部1fと直状部1gを有し、直状部1gが支持具50のルーメンL3,L4に進退可能に挿通されている。したがって、操作部材7bを牽引操作すれば、折曲部1fが支持具50のルーメンL3,L4の入口部分に入り込むとき、挟持部材1を穿刺部2に対し近接離間させるように変位することができ、細いカテーテル30の先端部であっても両電極部材による生体組織の挟持を容易にかつ円滑に行うことができる。
【0028】
特に、本実施形態の挟持部材1は、図4(B)図4(C)に示すように、本体部1aの内部には、冷却水が蛇行して流通する通路T1が形成されており、線材部1bは、中空の管体により構成され、後端に冷却水が流入する入口孔E1が開設されている。冷却水は、カテーテル30内を通って送られ、入口孔E1から通路T1に導かれるが、通路T1を通った冷却水は、出口孔D1より生体内に流出される。冷却水としては、生理食塩水などが使用される。
【0029】
挟持部材1と穿刺部2との間で挟持した生体組織に電気エネルギを印加して生体組織を加熱する場合、挟持部材1を冷却水により冷却すれば、いわゆる低温加熱となり、急激な温度上昇が防止され、徐々に加熱することになる。低温加熱される生体組織は、挟持部材1が接している表面のみが先に加熱されて変性することはなく、全体が均一に徐々に加熱され、内部まで充分加熱処理されることになり、融着乃至接合が極めて確実なものとなる。しかも、低温加熱中、生体組織のインピーダンス値が急激に変化しないので、温度制御性も向上し、生体組織の融着力も強固になり、しかも、挟持部材1に血栓の付着も防止できる。特に、挟持部材1は舌片状をしているので、挟持部材周辺の生体組織Mの変性を抑制しつつ幅広く挟持でき、一度に大きな範囲を融着できる。したがって、長時間加熱処理しても心房中隔M1の表面を焼灼することはない。
【0030】
本体部1aでは、生体組織Mと接する側の反対面側を、電気絶縁部材により被覆することが好ましい。電気絶縁部材を被覆することにより、血栓の付着を極力防止することができる。ただし、電気絶縁部材を被覆する部分は、生体組織Mと接しない部分、つまり融着機能を実質的に発揮しない部分である。
【0031】
本体部1aの材質としては、SUS材であってもよいが、生体に悪影響を及ぼさないもの、例えば、金、銀、白金、タングステン、パラジウムまたはこれらを含む合金や、Ni-Ti合金、チタン合金等を使用することが好ましい。
【0032】
線材部1bの材質としては、本体部1aと同材であってもよいが、別部材であってもよい。
【0033】
穿刺部2は、全体的にU字状をした一対の針部材2a,2aにより構成され、支持具50に形成されたルーメンL1,L2内に進退可能に保持され、基端側に連結されている操作部材7cを操作することにより両針部材2aの先端部がカテーテル30の軸線に対し傾斜して支持具50より出没し得るようになっている。
【0034】
例えば、図6を参照して説明すれば、理想的な穿刺位置は、卵円孔弁M2と心房中隔M1が重合する位置(一点鎖線で示すT部分)の直下の卵円孔弁部分であるが、両針部材2aをカテーテル30の側方から出没させると、このような理想的な位置に穿刺することが可能となる。
【0035】
側方から出没は、図4(A)〜(C)に示すように、支持具50に形成された穿刺部用のルーメンL1,L2を基端側端面から先端部位の側面に向って傾斜するように形成し、両針部材2aをルーメンL1,L2によりガイドしてカテーテル30の側方に突出するようにしている。この傾斜部34の傾斜角θは、どのような値であってもよいが、一般的には10°〜30°程度が好ましいく、場合によっては90°程度にすることもできる。傾斜部34は、挟持部材1に対し離れるように傾斜しているが、図4(B)に示すように、両針部材2aが相互に拡開する末広がりとなるようにも形成している。末広がりにすれば、卵円孔弁M2をより広い範囲に穿刺し、挟持部材1との間での挟持範囲が広がることになる。
【0036】
また、場合によっては、図示はしないが、両針部材2a自体の形状を挟持部材1に対し離れる方向に円弧状に湾曲するかあるいは「く」の字状に折曲してもよい。湾曲あるいは折曲した針形状であれば、両針部材2aをカテーテル30の軸方向に移動するのみで、両針部材2aをより一層側方に突出させやすくなる。
【0037】
本実施形態の穿刺部2は、中空の円環状のものであり、U字状の後端に入口孔E2が形成され、ここから冷却水が内部の通路T2(図4(A)参照)に導入されるようになっている。なお、穿刺部2内を流通した冷却水は、先端の出口D2より生体内に流出される。
【0038】
前述した低温加熱を行なう場合、挟持部材1又は穿刺部2のいずれか一方のみに冷却水を流すようにしてもよいが、生体組織Mの変性(例えば炭化など)を完全に抑制するには、挟持部材1と穿刺部2の両者に冷却水を流すようにすることが好ましい。特に、穿刺部2に冷却水を流せば、薄肉である卵円孔弁M2を焼灼から保護できる。
【0039】
針部材2aの外径としては、カテーテル30内に組み込むために、0.1mm〜2mmのものが好ましい。材質としては、SUSが使用されるが、生体に悪影響を及ぼさないもの、例えば、金、銀、白金、タングステン、パラジウム、チタンこれらを含む合金、Ni−Ti合金等を使用することもできる。両針部材2aの間隔は、特に限定されるものではないが、ある程度の範囲で卵円孔弁M2や心房中隔M1を挟持することができる程度であればよく、本数に関しても、2本のみでなく、さらに多数であってもよい。
【0040】
挟持部材1や穿刺部2をカテーテル30から出没させる操作部材7b、7cとしては、細い線状の部材で、挟圧手段Kをカテーテル30内で進退させることができ、電気導通性があれば、どのようなものであってもよいが、例えば、ステンレス、Ni-Ti、チタンなどの中空管を使用することが好ましい。両操作部材7b、7cは、カテーテル30内を挿通し、後述の操作レバー76a、76b、接続部材21a、21b、導線d1、d2及び制御部22を介してエネルギ供給手段20と接続されている。
【0041】
本実施形態の挟圧手段Kでは、穿刺部2も挟持部材1もそれぞれ独立にカテーテル30に対し軸線方向に移動可能となっている。このように穿刺部2及び挟持部材1を操作部材7b,7cを用いてそれぞれ独立に移動可能とすれば、穿刺部2を任意の位置で穿刺でき、生体組織Mの状況に応じて手技が極めて円滑になり、しかも挟持部材1の移動乃至操作により穿刺された状態の卵円孔弁M2に対し心房中膜M1を押しつけ、肉厚方向での生体組織Mの位置決めも可能となる。
【0042】
操作部材7b、7cとしては、ワイヤーが用いられ、カテーテル30内を挿通して伸延されているが、場合によっては中空管を使用してもよい。このような中空管を使用すれば、内部に冷却水を流通し、穿刺部2や挟持部材1にそれぞれ供給することができる。
【0043】
なお、支持具50は、図4(A)に示すように、複数のルーメンL1〜L5を有しているが、これら各ルーメンL1〜L5をそれぞれカテーテルにより構成してもよい。
【0044】
前述の冷却水の供給は、後述の手元操作部70の先端に設けられたYコネクタ72を利用し、Yコネクタ72内部のカテーテル30と送液管(不図示)とを連通し、この送液管の端部にシリンジポンプなどを連結し行うことができる。
【0045】
この場合、カテーテル30の先端側は、支持具50により密閉されてるので液漏れの虞はないが、カテーテル30の基端側は、シールする必要がある。シール手段Sとしては、どのようなものであってもよいが、例えば、図3に示すように、ハンドル部材75の先端に設けられた第1連結部材71と第2連結部材90との間にメカニカルシール91を固定ねじ部材92を用いて取り付けたものを使用できる。このようなシール手段Sを使用すれば、主管63の周囲で操作部材7a,7bの摺動を可能にしつつ冷却水の漏れを防止できる。
【0046】
手元操作部70は、図1〜図3に示すように、術者が片手で把持し得るように扁平な部材により構成されたハンドル部材75を有している。ハンドル部材75の表面側(上面側)には、穿刺部2の操作部材7cの基端側が連結された操作レバー76bが突出され、ハンドル部材75の裏面側(下面側)には、挟持部材1の操作部材7bを操作する操作レバー76aが突出されている。
【0047】
操作レバー76a、76bは、ハンドル部材75に形成されたスライド溝77内でスライド可能に設けられているが、下端部には鍔部78が設けられ、倒れることなく円滑にスライド移動できるようにしている。
【0048】
操作部材7b、7cは、操作レバー76a、76bの上端部まで配線され、電気エネルギ供給手段20からの導線d1、d2の先端に設けられたソケットあるいはカプラーなどから構成されている接続部材21a、21bと各操作レバー76a、76bの上端部が着脱自在に凹凸嵌合するように構成され、この嵌合により電気エネルギ供給手段20と操作レバー76a、76bが電気的に導通状態となる。
【0049】
したがって、両操作レバー76a、76bによる穿刺と挟持という手技が完了した後、接続部材21a、21bを各操作レバー76a、76bに接続すれば、卵円孔弁M2と心房中隔M1とを融着する電気エネルギを供給することができる。つまり、電気エネルギを所望の時点で供給できるのみでなく、手技を行なう場合に導線d1、d2が邪魔になることはなく、手技を正確にかつ円滑に行うことができる。
【0050】
各操作部材7b、7cと各操作レバー76a、76bとロー付けなどにより直接接続してもよいが、本実施形態では、ハンドル部材75に形成されたスライド溝77内で摺動するようにスライド片79a,79bを設け、スライド片79a,79bの先端に各操作部材7b、7cの基端側を、スライド片79a,79bの基端に各操作レバー76a、76bの内端をロー付けしている。このようにすればデバイスの操作性が向上するのみでなく、強度的あるいは耐久性が向上することになり、好ましい。
【0051】
また、本実施形態の手元操作部70は、ハンドル部材75の先端部に、穿刺部2がカテーテル30の先端部より突出した状態をロックするロック機構80も有している。
【0052】
ロック機構80は、ハンドル部材75に形成されたスライド溝77の先端側に、針用操作レバー76bのスライド移動を規制する当り部材を設け、当り部材に針用の操作レバー76bを押圧することによりスライド移動をロックするものである。穿刺部2をカテーテル30の先端部より突出した状態でロックすれば、穿刺部2の突出状態を保持したまま、電気エネルギの供給ができ、電気エネルギの供給時に穿刺部2がズレることがなく、手技をより安定的にかつ正確に行うことができることになる。
【0053】
ロック機構80としては、針用操作レバー76bをロックできるものであれば、どのようなものであってもよいが、図3に示すように、ハンドル部材75に筒状ブロック81を固定し、筒状ブロック81内にスライド部材82を移動可能に設ければ、針用操作レバー76bの固定位置が調節でき、好ましい。
【0054】
エネルギ供給手段20は、挟圧手段Kに電気エネルギを供給するもので、公知のシステム構成のため詳述は避けるが、制御の容易性からすれば、直流電源や交流電源を問わず、電気的なものが好ましい。ただし、これのみでなく、挟圧手段Kにより挟持した卵円孔弁M2と心房中隔M1とを熱により溶融し、コラーゲンやエラスチンなどの接着因子で圧着させることが可能なエネルギを供給できるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、超音波、レーザー、マイクロ波あるいは高周波などを使用することもできる。
【0055】
また、電気エネルギ供給方式としては、右心房R側の穿刺部2あるいは挟持部材1と背部に設けられた対極板との間で通電するモノポーラ方式、右心房R側の挟持部材1と左心房L側の穿刺部2との間で通電するバイポーラ方式などを使用することができる。特に、穿刺部2と挟持部材1との間の組織のインピーダンスにより電流を制御するバイポーラ方式であれば、人により相違する卵円孔弁M2と心房中隔M1の組織の状態に応じて容易に対応することができ、安全性と手技の利便性が得られるという利点がある。
【0056】
支持具50は、図4に示すように、5つのルーメンL1〜L5が開設されており、第1及び第2のルーメンL1,L2と、第3及び第4のルーメンL3、L4には、前述のように穿刺部2と挟持部材1が挿通されているが、中央の口径が最大の第5のルーメンL5には、位置決め保持手段60が設けられている。
【0057】
位置決め保持手段60は、図2に示すように、概して、穿刺部2を卵円孔Oに対し位置決めする位置決め部61と、穿刺部2の穿刺方向に対し卵円孔弁M2を後退不能に保持する保持部62とを有し、常時はガイディングカテーテル31内に収納されているが、使用時には主操作ロッド7a及び主管63を操作することによりガイディングカテーテル31から押し出される。
【0058】
さらに詳述すれば、中央のルーメンL5には、位置決め保持手段60をカテーテル30内に引き込み回収するためと、カテーテル30の補強を目的として設けられた主管63と、主管63内で軸方向に進退自在に設けられた主操作ロッド7aが設けられている。
【0059】
主管63の先端部には、主操作ロッド7aの操作により拡開縮小作動され、主管63と中間スリーブ体64とを連結する一対の第1弾性線材66からなる位置決め部61と、主操作ロッド7aの先端部に設けられた当り部材68、先端スリーブ体65、及び、中間スリーブ体64と先端スリーブ体65とを連結する一対の第2弾性線材67を有し、当り部材68及び先端スリーブ体65により卵円孔弁M2を保持する保持部62と、からなる位置決め保持手段60が設けられている。
【0060】
位置決め部61は、主操作ロッド7aを主管63の先端より突出し、主操作ロッド7aを軸方向に進退する操作により第1弾性部材66を外方に変位させ、各第1弾性部材66が卵円孔Oの内縁を略等しい弾性力で押圧し、穿刺部2を卵円孔Oに対して調心する。つまり、両第1弾性部材66間に位置する穿刺部2を卵円孔Oの中央部に位置させる機能を発揮する。
【0061】
保持部62は、主操作ロッド7aを軸方向に進退操作することにより主操作ロッド7aの先端部を湾曲させる湾曲機構Wを有している。湾曲機構Wは、保持部62を、穿刺部2が卵円孔弁M2を穿刺する方向に対向するように湾曲させ、卵円孔弁M2を保持する機能を発揮する。ここに、湾曲機構Wは、中間スリーブ体64、先端スリーブ体65、両スリーブ体64,65を連結する第2弾性線材67、当り部材68から構成されている。
【0062】
第1弾性線材66の基端は、主管63の先端に溶着され、先端側は、中間スリーブ体64に溶着されている。一方、第2弾性線材67の基端は、中間スリーブ体64の先端に溶着され、先端側は、先端スリーブ体65に溶着されている。
【0063】
第1及び第2の弾性線材66,67の具体例としては、外径が、0.1mm〜0.5mm程度で、ステンレス鋼、ニッケル−チタン、超弾性合金(例えば、Ni−Ti合金)などの金属ワイヤーを使用することが好ましい。また、金属ワイヤーに樹脂(軟性)チューブを被覆することで組織の傷付きを防止させてもよい。
【0064】
保持部62は、基端側の第1弾性線材66が、先端側の第2弾性線材67に先んじて湾曲し、穿刺部2の位置決めを行い、続いて主操作ロッド7a自体が当り部材68及び先端スリーブ体65を伴って変形し、位置決め部61が穿刺部2を位置決めした後に卵円孔弁M2を保持する構成となっている。
【0065】
この構成としては、例えば、材質的に第2弾性線材67の方が第1弾性線材66よりも高剛性のものを使用する方法、第1弾性線材66の一部を予め屈曲変形するなどの易変形部を形成し、牽引力が作用すると易変形部の変形により第1弾性線材66が第2弾性線材67より先に湾曲させる方法なども使用できる。
【0066】
このようにすると、主操作ロッド7aを後方に牽引するのみで、基端側の第1弾性線材66が卵円孔Oの内縁に当接し、穿刺部2の位置決めを行い、さらに牽引すると、先端側の第2弾性線材67が径方向外方に向って円弧状に突出変形し、穿刺部2が穿刺し易いように卵円孔弁M2を後退不能に保持することができる。
【0067】
また、主操作ロッド7aは、主管63内で軸線を中心に360度回転可能としている。主操作ロッド7aが360度回転可能であれば、卵円孔Oの近傍まで主操作ロッド7aの先端が挿入されたとき、主操作ロッド7aを回転的に位置変位させることができ、卵円孔Oの状態が種々変形していても、その形状状態如何に拘わらずデバイスの先端を卵円孔Oに挿通させることができ、手技を容易化するのみでなく、迅速に行うことができる。
【0068】
ハンドル部材75の後端部には、2本のスライドレール86を介して主管63を進退させる主管用ハンドル部材85が設けられている。主管用ハンドル部材85には、主管63の基端側が固着されているので、主管用ハンドル部材85をハンドル部材75から離間させる方向、つまり後方に牽引すると、主管63をカテーテル30の中央のルーメンL5内に引き込むことができ、これに伴って位置決め保持手段60全体をカテーテル30内に回収できる。
【0069】
なお、主操作ロッド7aを360度回転可能とするため、主操作ロッド7aは、主管用ハンドル部材85の通孔87を挿通して伸延されている。
【0070】
主管63を構成するものとしては、変形可能な弾性材料、例えば、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、PET、ナイロン、フッ素樹脂、ポリプロピレンなどを使用することができる。
【0071】
また、主操作ロッド7aとしては、細い中空線材で、比較的剛性を有するものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、ステンレス、Ni-Ti、チタンなどの細管を使用することが好ましい。
【0072】
ハンドル部材75の先端には、造影剤などを注入することができるYコネクタ72が連結部材71を介して連結されているが、連結部材71には、カテーテル30の基端やガイディングカテーテル31の端部が保持されている。
【0073】
本実施形態のガイディングカテーテル31は、卵円孔弁M2と心房中隔M1との間の卵円孔Oに容易に向わしめることができるように、先端が円弧状に緩やかに緩やかに湾曲されている。卵円孔弁M2と心房中隔M1とは、人により相違するので、ガイディングカテーテル31の先端を湾曲させると、ガイディングカテーテル31自体を回動するのみで、卵円孔Oに向けることでき、直状の場合よりも手技の安全性と利便性が向上する。
【0074】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0075】
図5は主操作ロッドを卵円孔に挿入する断面概略図、図6は卵円孔弁を保持し穿刺部を穿刺した状態の断面概略図、図7は穿刺部と挟持部材とにより卵円孔弁及び心房中隔を挟持した断面概略図、図8(A)〜図8(D)はPFO閉鎖デバイスの先端部の操作状態を示す概略図である。なお、図8(A)〜図8(D)において、第2弾性線材66の形状及び位置は、挟持部材1や穿刺部2と略面一の状態であるが、理解を容易にするために、図示の位置を90度変位した状態で示しており、実際の変形状態とは相違する。
【0076】
まず、術者は、手元操作部70の主管用ハンドル部材85をハンドル部材75に対し後退し、ガイディングカテーテル31内に挟持部材1や穿刺部2などを収納した状態とし、この状態で、ガイドワイヤーをガイドとしてガイディングカテーテル31の先端を生体の所定位置から挿入し、大腿静脈Jを通り右心房Rまで到達させる。なお、ガイディングカテーテル31のみを生体に挿入し、後にこれをガイドにカテーテル30を挿入してもよい。
【0077】
ガイディングカテーテル31の先端が右心房Rまで到達すると、カテーテル30を押し出し、卵円孔弁M2と心房中隔M1との間の卵円孔Oに向わせる。ガイディングカテーテル31の先端は湾曲しているので、比較的容易に卵円孔Oに向わせることができる。
【0078】
次に、主操作ロッド7aを前進し、図8(A)に示すように、主操作ロッド7aの先端を先端スリーブ体65から突出し、左心房L内に挿入する。この突出状態は、当り部材68などにマーカーを設けていると、外部から視認することができるが、この突出により主操作ロッド7aの先端が左心房Lの内壁などに当ると、視認が困難な場合であっても、感覚的に主操作ロッド7aの位置を確認できる。本実施形態では、主操作ロッド7aを360度回転可能としているので、図5に示すように、主操作ロッド7aを回転させながら前進させると、卵円孔Oを容易に挿通できる。
【0079】
主操作ロッド7aの先端位置の確認後、図8(B)に示すように、主操作ロッド7a先端の当り部材68が先端スリーブ体65に当接するまで主操作ロッド7aを後退させる(後退量は図8Bの「δ1」)。そして、ハンドル部材75を操作し、第2弾性線材67、挟持部材1及び穿刺部2を卵円孔弁M2の近傍に位置させ、保持部62全体を左心房L側に挿入する。
【0080】
主操作ロッド7aをさらに後退させると(後退量は図8Cの「δ2」)、この後退させる操作力が、主操作ロッド7aにより、当り部材68、先端スリーブ体65、第2弾性線材67及び中間スリーブ体64を介して、主管63の先端に固着された第1弾性線材66に伝達され、第1弾性線材66を、図8(C)に示すように、径方向外方に向って円弧状に突出変形させる。ただし、この時点では第2弾性線材67は変形していない。
【0081】
この結果、第1弾性線材66は、卵円孔Oの口縁部分を押し広げつつ変形することになるので、第1弾性線材66の直近に設けられている穿刺部2を卵円孔Oに対して調心し、穿刺部2を卵円孔Oの中心に位置させる。
【0082】
図8(D)に示すように、さらに主操作ロッド7aを後退操作し、中間スリーブ体64の後端が主管63の先端に当接させると、第1弾性線材66はあまり変形せず、先端側の第2弾性線材67が、前記操作力により径方向外方に向って円弧状に突出変形する。この結果、図6に示すように、左心房L内において、当り部材68と先端スリーブ体65が穿刺部2に近付くので、当り部材68と先端スリーブ体65は、卵円孔弁M2の左心房側の面に当接し、これを保持する。
【0083】
この状態で、針用操作レバー76aをロック機構80に当接するまで前進し、操作部材7bを介して穿刺部2をカテーテル30の側部から突出し、針用操作レバー76aを前進させると、心房中隔M1と卵円孔弁M2の重合位置直下の理想的な位置に穿刺することができる。
【0084】
穿刺部2の位置は、針用操作レバー76aをロック機構80に当接しているので、スレる虞はなく、また一旦穿刺部2を穿刺すると、穿刺部2の位置は、卵円孔弁M2との関係では位置固定、つまり位置決めされることになる。したがって、術者は、穿刺部2の状態を考慮することなく挟持部材1による挟持に専念でき、挟持操作も容易になる。
【0085】
挟持部材用操作レバー76bを前進すると、操作部材7cを介して挟持部材1をカテーテル30の先端から突出し、操作部材7cが心房中隔M1を卵円孔弁M2に向って押圧し、心房中隔M1と卵円孔弁M2が肉厚方向、つまり操作状態で言えば前後方向の位置が固定され、図7に示すように、挟持部材1と穿刺部2の間に心房中隔M1と卵円孔弁M2が存在している状態となる。
【0086】
この段階で、主操作ロッド7aを一旦戻し、図8(B)に示すような、第1弾性線材66と第2弾性線材67を直状にした後、主管用ハンドル部材85を後退操作し、主管63を後退させ、位置決め保持手段60全体をカテーテル30のルーメンL5内に回収する。
【0087】
この回収後、挟持部材用操作レバー76bを後退操作し、操作部材7cを介して挟持部材1を後退させると、挟持部材1の折曲部1fが支持具50の端部により穿刺部2側に近づくように変形し、図7に示すように、挟持部材1と穿刺部2との間で心房中隔M1と卵円孔弁M2を強固に挟持する。
【0088】
この挟持状態で、針用操作レバー76aと挟持部材用操作レバー76bに接続部材21a、21bを凹凸嵌合すれば、制御部22により制御された所定の電流が針用操作レバー76aと挟持部材用操作レバー76bより操作部材7b,7cを介して挟持部材1と穿刺部2に流れる。
【0089】
この電気エネルギの供給により心房中隔M1と卵円孔弁M2の加熱が開始されるが、本実施形態では、この時点で、シリンジポンプなどの冷却水供給源の動作が開始され、冷却水がカテーテル30を通って給送される。冷却水は、カテーテル30の先端に達すると、支持具50に堰き止められるが、支持具50に基端側から突出している挟持部材1と穿刺部2の各入口孔E1,E2から挟持部材1と穿刺部2に流入する。挟持部材1での冷却水は、内部の通路T1を通りつつ挟持部材1自体を冷却するので、挟持部材1での温度上昇は緩やかなものとなる。穿刺部2では、直状的に流れるが、比較的細い中空針状部材であるため、穿刺部2自体が速やかに冷却され、挟持部材1と同様、温度上昇は緩やかなものとなる。
【0090】
したがって、挟持部材1と穿刺部2との間で挟持されている心房中隔M1と卵円孔弁M2は、徐々に加熱される低温加熱となる。このため、穿刺部2周辺の生体組織である卵円孔弁M2は、薄肉であってもその変性が抑制され、保護されることになる。挟持部材1は、比較的面積が大きく幅広く心房中隔M1に当接しているが、内部の蛇行通路T1により冷却性能も高いので、長時間加熱処理しても心房中隔M1も変性が抑制され、保護される。
【0091】
融着温度を維持しつつ加熱を継続すると、心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織が溶融し、コラーゲンやエラスチンなどの接着因子により相互に融着されるが、本実施形態では、大きな挟持部材1を使用しているので、融着範囲も大きく、一度に広い範囲での融着が可能となり、手技の円滑化、安全性かつ確実性が向上する。
【0092】
この手技を行なっている間、生体組織Mのインピーダンス値も急激に変化しないので、生体組織Mの融着温度制御も容易で、より正確な制御となり、生体組織Mの融着力も増大し、融着もより強固になる。加えて、挟持部材1や穿刺部2に血栓の付着を防止できる。
【0093】
電気エネルギは、血栓が発生しないように制御部22で制御されているので、挟持部材1と穿刺部2の一部が血液中に露出していても、この段階では、挟持部材1や穿刺部2に血栓が付着することはないが、挟持部材1の、生体組織と接する側の反面側を電気絶縁部材により被覆すれば、幅広い挟持部材1であっても血栓の付着防止がより一層確実なものとなる。なお、挟持部材1や穿刺部2の表面に血栓付着防止用のコーティングをしてもよい。
【0094】
融着が完了すると、通電を停止し、針用操作レバー76b及び挟持部材用操作レバー76aを後退し、ガイディングカテーテル31内に収納する。そして、ガイディングカテーテル31を生体から抜去すれば手技は完了する。なお、手技の完了後、穿刺部2の抜去により卵円孔弁M2には極めて小さな穴が残るが、後に治癒され、血栓の発生などの悪影響が生じることはない。
【0095】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。
【0096】
上述の実施形態における位置決め保持手段60は、中間スリーブ体64を有するものであるが、これのみに限定されるものではない。例えば、図9は位置決め保持手段の他の例を示す概略図であるが、(A)のように、本実施形態において設けられる中間スリーブ体64は設けずに、先端スリーブ体65と主管63の間に、第1弾性線材66および第2弾性線材67を設けてもよい。この形態においては、主操作ロッド7aを後退させると、(B)のように、第1弾性線材66が径方向外方に向って円弧状に突出変形しつつ、第2弾性線材67が円弧状に屈曲変形する。すなわち、第1弾性線材66による穿刺部2の卵円孔Oの中心への位置決めと、第2弾性線材67によって屈曲した当り部材68と先端スリーブ体65による卵円孔弁M2の保持を、主操作ロッド7aの後退による1動作で同時に行うこととなる。
【0097】
前述した実施形態では、PFOの欠損を閉鎖する治療に使用されるものについて説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、左心耳閉鎖デバイス(Left Atrial Appendage)といった通路状の欠損を閉鎖する場合や、あるいは所定の部位の生体組織を熱的に壊死させる場合にも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、PFOの欠損部を、簡単かつ安全に閉鎖可能なデバイスとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係るPFO閉鎖デバイスを示す概略断面図である。
【図2】同デバイスの一例を示す要部斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図である。
【図4】(A)は図2の4A−4A線に沿う断面相当図、(B)は(A)の平面図、(C)は(B)の4C−4C線に沿う断面相当図である。
【図5】主操作ロッドを卵円孔に挿入する断面概略図である。
【図6】卵円孔弁を保持し穿刺部を穿刺した状態の断面概略図である。
【図7】穿刺部と挟持部材とにより卵円孔弁及び心房中隔を挟持した断面概略図である。
【図8】(A)〜(D)はPFO閉鎖デバイスの操作状態を示す概略図である。
【図9】位置決め保持手段の他の例を示す概略斜視図であり、(A)は通常時の状態を、(B)は位置決め保持時の状態を示す。
【符号の説明】
【0100】
1…挟持部材、
1d…挟持面、
1c…分枝部、
2…穿刺部、
2a…針部材,
7a…主操作ロッド、
7b,7c…操作部材、
20…エネルギ供給手段、
30…カテーテル、
31…ガイディングカテーテル、
50…支持具、
70…手元操作部、
75…ハンドル部材、
76a…挟持部材用操作レバー、
76b…穿刺部用操作レバー、
80…ロック機構、
K…挟圧手段、
M…生体組織、
M1…心房中隔、
M2…卵円孔弁、
O…卵円孔、
T,T1,T2…通路、
D1、D2…出口孔、
E1、E2…入口孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルの先端部に設けられ、卵円孔弁及び心房中隔からなる生体組織を挟持する挟圧手段と、
当該挟圧手段に電気エネルギを供給する電気エネルギ供給手段と、
を有し、
前記挟圧手段の前記穿刺部と挟持部材を電極部材とし、前記卵円孔弁と心房中隔とを前記挟圧手段により挟持して前記電気エネルギ供給手段から電気エネルギを供給し前記卵円孔弁と心房中隔とを相互に接合させるPFO閉鎖デバイスであって、
前記挟圧手段による前記生体組織の加熱が低温加熱となるように、前記電気エネルギ供給時に前記挟圧手段を冷却する構成としたことを特徴とするPFO閉鎖デバイス。
【請求項2】
前記挟圧手段は、前記卵円孔弁に穿刺する穿刺部と、当該穿刺部と共働し前記卵円孔弁及び心房中隔を挟持する挟持部材とを有し、前記穿刺部と前記挟持部材のいずれか一方若しくは両方を冷却する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のPFO閉鎖デバイス。
【請求項3】
前記穿刺部は、内部に冷却水が流通する通路を有する複数本の中空針状部材により構成したことを特徴とする請求項2に記載のPFO閉鎖デバイス。
【請求項4】
前記挟持部材は、内部に冷却水が流通する通路を有する中空の舌片状部材により構成したことを特徴とする請求項2に記載のPFO閉鎖デバイス。
【請求項5】
前記穿刺部と前記挟持部材のいずれか一方若しくは両方は、少なくとも前記生体組織と接触しない部分を電気絶縁部材により被覆したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のPFO閉鎖デバイス。
【請求項6】
前記PFO閉鎖デバイスは、手元操作部を有し、当該手元操作部と前記挟持部材及び前記穿刺部とを、前記カテーテル内を挿通する操作部材によりそれぞれ独立に連結したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のPFO閉鎖デバイス。
【請求項7】
前記手元操作部は、片手で把持し得るハンドル部材を有し、当該ハンドル部材の一方の面側に前記穿刺部用の操作レバーを突出し、前記ハンドル部材の他方の面側に前記挟持部材用の操作レバーを突出すると共に、前記ハンドル部材に、前記穿刺部用の操作レバーが前記カテーテルの先端部より突出した状態をロックするロック機構を設けたことを特徴とする請求項6に記載のPFO閉鎖デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−50593(P2009−50593A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221909(P2007−221909)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】