説明

PLAベースポリマーの混合物の立体特異的なリサイクル方法

本発明はポリ乳酸(PLA)ポリマー混合物を立体特異的に化学的にリサイクルして、そのモノマーまたはその誘導体のうちの1種を再形成するための方法に関する。後者は伝統的なラクタート市場で使用できるし、またはPLAの合成のための原料として再使用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明はPLAベースポリマーの混合物の立体特異的化学的リサイクル方法であって、そのモノマーまたはその誘導体のうちの1種を再形成するための方法に関する。後者はラクタートの伝統的な市場の一部を形成できるし、またはPLAの合成のための原料として再度役立つことができる。
【0002】
現在、その使用が環境に対して適合性のあるバイオポリマーの発達を促進するために、これらの製品の廃品の管理の存立可能性を証明することが重要である。本発明の目的は、ポリ乳酸(PLA)の場合のこの問題に、それ自体を既に存在しているものからその立体特異性により区別する今までにない解決策を提案することによって対応することにある。
【0003】
従来技術
廃プラスチック材料の管理は市場でのプラスチックの存立可能性において非常に重要な要素である(たとえば、PVCは有効なリサイクルシステムがないプラスチックボトル市場から撤退させられた)。再生可能でない起源からの(石油化学由来の)プラスチックと同様に、その廃品経路はより多いにもかかわらず、バイオポリマーはこの廃品管理が問題である場合に技術的課題に直面する。便利品市場で生じる非常に大きな体積について話す場合、特にである。これがこの問題を対処することが重要である理由である。
【0004】
現在、使用済みの廃棄物を管理することを可能にする種々の方法たとえば投機、焼却、コンポスト化、または機械的リサイクルが既に知られている。
【0005】
これらの種々の廃棄技術は理想的でない。なぜなら、プラスチック材料は基礎的な成分(モノマー)としてリサイクルされず、それゆえに直接および永続的に使用されるからである。何を差し置いても、これらの方法はPLAのために実行可能であるが、それは材料の流れがPLAのみから構成されている場合のみである。これは、他のポリマーがPLAを汚染している場合、上述の種々の技術が難しくなるからである。たとえば、PETで汚染されている場合、後者はコンポストで分解しない。PVCで汚染されている場合、焼却は可能であるが有害な排出物のせいで高価なフィルタの使用を必要とする。機械的リサイクルについては、それがポリマーの混合物から構成されている場合、得られる製品は完全に品質が落とされる。
【0006】
化学的リサイクルは理想的なリサイクル方法としてしばしば挙げられる。それはポリマーを化学的プロセスたとえば:熱的または触媒的炭化水素分解、モノマーを再度与える熱分解などによって変性させることにある。PETのための化学的リサイクルシステムが知られており、これは解糖とも呼ばれるジオールによるその解重合にある。分子鎖が切断され、得られた生成物はテレフタル酸およびエチレングリコールである。しかしながら、この解重合中のいくつかの分解メカニズムは材料の不可逆的な構造変化をもたらし、この変化は連続的な変性中の問題点の一因でありうる。
【0007】
また、PLAの化学的リサイクルのためのシステムはモノマー、乳酸またはその誘導体のうちの1種を回収するように構想されていることもある。たとえばいくつかの特許が、ヒドロキシ酸またはそのエステルの生成を伴うPLAなどのポリヒドロキシ酸の加水分解(Brake L.D., Subramanian N.S., U.S. Patent 5,229,528、 1993;Galactic, BE Patent 56,491, 2009)または溶媒分解(Brake L.D., U.S. Patent 5,264,614, 1993; Brake L.D., U.S. Patent 5,264,617, 1993; Galactic, BE Patent 56,493, 2009)を特許請求の範囲に記載している。PLAの熱崩壊(たとえば熱分解)も知られており、これは付加−脱離による環化機構によってラクチドの生成をもたらす(F.D. Kopinke, M. Remmler, K. Mackenzie, M. Moeder, O. Wachsen, Polymer Degradation and Stability, 53, 329-342, 1996)。しかしながら、これらの方法はモノマー収率が低い。加えて、これらの種々の技術はしばしば高温および/または高圧で行われ、得られる乳酸の化学的および光学的な劣化をもたらす。
【0008】
乳酸の2つの光学活性形態:L−乳酸(L−LA)およびD−乳酸(D−LA)が存在することは周知されている。その結果として、ラクチド、乳酸の環状ダイマーは、2つのD−乳酸分子:D−ラクチドからなるか、2つのL−乳酸分子:L−ラクチドからなるか、または1つのL−乳酸分子および1つのD−乳酸分子:メソラクチドからなるかに応じて、3つのジアステレオ異性体形態をとりうる。メソラクチドは約50℃の融点を特徴とし、一方L−およびD−ラクチド異性体の融点は97℃である。
【0009】
これらの全ての方法に共通する問題は、立体特異性がないことにある。これは、それらが、第1にPLA製造プロセスの全体によっておよび第2に種々の化学的リサイクルプロセスによって生じうるDエナンチオマーを排除することを可能にしないからである。これは、DエナンチオマーがL−タイプのPLA(市場に主に存在している形態)で作業する際に生じることを意味する。同様に、タイプDのPLAで作業する際にはLエナンチオマーの形成があるであろう。
【0010】
乳酸またはその誘導体に関する望まれないエナンチオマーのこの進行性富化は、新たなPLAの製造の収率およびコストに大きな影響を与えるであろう。
【0011】
それゆえに、単純で、効率的であり品質の低下を起こさない、PLAを立体特異的にリサイクルする方法であって、そのモノマーまたはその誘導体のうちの1種を再形成する方法が必要とされている。後者は伝統的なラクタート市場に参入できるし、またはPLAの合成のための原料として再度役立つことができる。
【0012】
単純化の目的のために、本発明をL−タイプのPLA(タイプLの大部分の構成成分)から始める本文章の残りに示すが、タイプDのPLA(タイプDの大部分の構成成分)で始める場合も同様に適切でありうることは分かっている。
【0013】
発明の簡単な説明
本発明の主題は、乳酸もしくはその誘導体に加水分解できる、またはPLAもしくはPLAコポリマーを合成するためのモノマーまたはコポリマーとして使用できる、PLA、ラクチドまたはこれらの誘導体のうちの1種を必然的に含有するポリマーの混合物の化学的立体特異的リサイクル方法である。
【0014】
PLAを含有するポリマーの混合物を化学的立体特異的にリサイクルするこの方法は、
a.ポリマーの混合物をPLA部分を溶解させることができる乳酸エステル中で溶液にすることと;
b.前の工程に由来するPLA部分のエステル交換による解重合であって、この解重合に由来するオリゴエステルの混合物が400〜5000amuの数平均分子量に達したら停止される解重合と
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、工程aとbとの間に、乳酸エステルと、一方では溶解したPLAおよび他方では不溶性のポリマーの混合物とを分離する工程が存在していてもよい。
【0016】
本発明のもう1つの実施形態は、工程bのオリゴエステルの混合物に、ラクチドに富んだ気相およびオリゴエステルに富んだ液相の製造を伴う触媒環化工程を施すことにある。
【0017】
本発明のもう1つの実施形態は、ポリマーの混合物を、懸濁液にする前に、0.005〜1.4t/m3の重量/体積比が得られるまで粉砕するおよび/または凝集させることにある。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態は、環化工程を始める前に、残留乳酸エステルをオリゴエステルから分離することにある。
【0019】
発明のもう1つの目的は、より単純でより経済的なPLAの製造方法を提案することである。これは、乳酸またはその誘導体から出発し、乳酸およびラクチドの両方の製造に関して徹底的な精製が行われる従来の方法とは異なり、本発明の範囲内では、精製はラクチドの製造に関して1回行われるからである。
【0020】
本発明のもう1つの主題は、化学的リサイクルによって処理されたPLAの流れの、新たなPLAを製造することを意図した異性体精製である。これは、PLAを製造する全体的な方法および、こちらはずっと少ないが、上で説明したオリゴエステルを形成する反応が、PLAの所定のラセミ化を引き起こし、これがタイプLのPLA(市場に主に存在する形態)で作業する際のタイプDのエナンチオマーの出現を意味するからである。本発明の範囲内でのラクチドの立体特異的精製によって、我々は、現存のリサイクル方法とは異なり、望まれないエナンチオマーの低減を達成する。
【0021】
発明の詳細な説明
発明の方法は、ポリマーの混合物をPLA部分を溶解させることができる乳酸エステル中で懸濁液にする工程と、続けての第1に乳酸エステル、PLAおよび他の溶解した不純物と、第2に不溶性の他のポリマーおよび不純物の混合物とを分離することとを含む。次に、このようにして得られたPLAを含有する溶液にエステル交換による触媒解重合反応を施して、オリゴエステルを形成する。その後、エステル交換による解重合反応を定められたときに停止し、残留乳酸エステルを分離する。
【0022】
次に、このようにして得られたオリゴエステルに環化反応を起こさせてラクチドを製造し、これを最終的に立体特異的に精製して、メソラクチド含量が0.1%〜40%である精製ラクチドの部分を得る。
【0023】
本発明の範囲内において、この化学的リサイクル中に使用する原料は、製造ユニットにおける規格外製品、変性ユニットにおける製品のスクラップおよび廃品に由来するしうる。PLAを含有するポリマーの混合物の粉砕は種々の技術、たとえば剪断による、衝撃による、乾燥状態での、または湿った状態での粉砕によって行うことができる。この工程の目的は材料の比表面積を増やして、0.05〜1.4t/m3の重量/体積比を得ることであり、この比は、取扱い工程を容易にしかつ後段の溶解工程を促進して、この方法をより容易に産業規模で行えるようにする。本発明の範囲内では、1回以上の粉砕工程を考えることができ、その回数は出発製品に依存するが、これらの作業コストおよび目的とする最終造粒にも依存する。特に水またはたとえばソーダ、カリもしくは洗剤溶液などの他の溶液での洗浄を行うことによって、PLAを含有するポリマーの混合物のこれらの流れを前処理または後処理することも可能である。他の処理、たとえば手動選別または自動分離(たとえば磁気)を考えることができるが、これら全ては、最終製品の品質を損ないうるまたはその精製を複雑にしうるあらゆる廃棄物を排除することを目的とする。処理されるPLAを含有するポリマー混合物廃棄物が溶液にすることを開始するのに好適な表面積を有するならば、本発明の方法から逸れることなしにこの粉砕工程を省略することができることも明らかである。
【0024】
同時に、またはこの粉砕工程に続いて、行う場合には、材料を凝集して取扱いおよび物流の工程を改善するための、緻密化または凝集の工程を考えることができる。
【0025】
次に、粉砕されたまたは粉砕されていない、および圧縮されたまたは圧縮されていないPLAを含有するポリマーの混合物を、エステル交換による解重合の工程の前に乳酸エステル中で溶液にする。たとえば乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ヘキシルなど、およびより一般的にはアルキル基が1〜12個の炭素原子を有する乳酸アルキルエステルがエステルの例である。
【0026】
PLAを含有するポリマーの混合物の形態(重量/体積比)が許すのであれば、先立つ粉砕なしに、溶液にすることを行なうこともできる。これは、粉砕工程の後であってもこのタイプの流れの処理に関する問題の1つが処理される種々の材料の比質量の差であるからである。この溶液にすることはかなり迅速であり、数分のうちに行うことができる。
【0027】
この溶解は、後段の工程の前にまたはそれと同時でもよく、PLAの融点までの範囲にあるいろいろな温度で行うことができる。本出願企業は、溶液にするこの工程中にPLAに存在する水を排除することができたことも分かっている。これは、本発明の方法で推奨される乳酸エステルの沸点を考慮に入れると、溶液にすることを100℃を超える温度および大気圧で行うことができ、水を凝縮により容易に排除できるからである。
【0028】
PLAの流れが異種ポリマー(PET、PE、PVC、PP、PCまたは任意の他の通常のポリマー)によって汚染されている場合、熱いことが必要ならば、後者を例えばろ過により排除することが考えられる。これは、乳酸エステルが必要とされる処理時間で上述のポリマーを溶液にすることを可能にしないからである。この分離は後段の工程の前または後に行われうる。
【0029】
出願人企業は、0.5〜3のPLA/乳酸エステル重量比でのPLAの部分的な解重合が、80°〜180℃、好ましくは110°〜160℃およびより好ましくは120°と乳酸エステルの沸点との間の温度での、負圧または大気圧と10barとの間にある圧力またはそれより高い圧力下での、エステル交換による解重合によって行うことができたことを分かっている。PLAのエステル交換による解重合のこの工程は、PLAのエステル結合とアルコール機能との反応によってオリゴエステルを製造することを可能にする。驚くべきことに、出願人企業はこのアルコール機能は添加するアルコールに由来するしてもよいしまたは溶液にする間に使用した乳酸エステルに由来するものでもよいことが分かった。本発明の範囲内では、上述した乳酸エステルの他に、以下のものを使用できる:1〜12個の炭素原子を含有するアルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘキサノールなど。エステル交換触媒の使用は反応の平衡をオリゴエステルの形成へ動かすために必要であり、この触媒は、固体でもよいしまたは液体でもよく、ルイス酸タイプたとえば錫オクトアート、錫ラクタート、アンチモンオクトアート、亜鉛オクトアート、PTSA(パラ−トルエンスルフォン酸)などでもよいし、または好ましくはグアニジン族の塩基性のもの、たとえばTBD(トリアザビシクロデセン)およびその誘導体でもよい。
【0030】
本発明の特定の実施形態は、乳酸エステル中で溶液にすることであり、この間にPLA中に存在しうる水分を蒸発により排除する。このようにして、乳酸の放出およびこの分子によって触媒されるオリゴマー形成はそれにより避けられる。同様に、エステル交換反応による解重合を塩基性触媒の存在下で行う場合、媒体中に水が存在しないことは、この工程およびこの方法の次の工程中での酸性度に関連する如何なる問題も避ける。
【0031】
第1に高粘稠製製品の移動に関連する問題と第2に解重合工程の終わりに得られる製品中の過剰な残留酸度(水が存在している場合)とを避ける量である必要な分子量、400〜5000amu(PS較正したGPCによって測定する)、好ましくは400〜3000amuに達したら、エステル交換反応による解重合を停止する。この反応は、オリゴエステルの分子量の制御を維持することを可能にするアルコール機能(乳酸エステルまたはアルコールからくる)を排除することによって停止することができる。この背景において、アルコールまたは乳酸エステルの迅速な抜き取りを可能にする任意の技術、たとえば薄膜技術が好ましいであろう。また、解重合は触媒の無効化によっても停止することができ、これは時間因子にあまり依存しないことを可能にする。もう1つの可能性は、残留乳酸エステルの排除のより低速の処理たとえばバッチ蒸留中に反応が少しだけ継続することを知っている上での反応の早期停止にある。本発明の好ましい選択肢のうちの1つはアルコールまたはエステルを排除することにあるが、これはそれを媒体中に保持し、環化工程へと直接通す可能性を排除しない。
【0032】
形成したら、オリゴエステルは、特にエステル交換触媒が失活されていない場合、直接処理することが好ましい。この工程は、ラクチドに富んだ気相を製造するためのオリゴエステルの触媒的および熱的環化にあり、好ましくは乳酸が除去される。触媒の使用は、熱分解温度を下げ、それにより、合成したラクチドの化学的および光学的劣化を防ぐのに重要である。この触媒は、固体または液体であろうし、ルイス酸タイプたとえば錫オクトアート、錫ラクタート、アンチモンオクトアート、亜鉛オクトアート、PTSA(パラトルエンスルフォン酸)などであろうし、または好ましくはグアニジン族の塩基性のもの、たとえばTBD(トリアザビシクロデセン)およびその誘導体であろう。理想的には、エステル交換工程による解重合で使用するそれと同一であろう。
【0033】
リアクタは、好ましくは、大きな交換表面および抜き出し体積を与えながら、混合物を可能な限り短い時間(0から30分まで、好ましくは0から15分まで)にわたって反応温度に保持するように選択する。作業温度は、反応を開始させるのに十分であるが、ラクチドの分解またはラセミ化を避けるために高すぎないものであろう:この温度は180°〜280℃であろう。最適な温度は出発のオリゴエステル(分子量が400から5000amuまでの範囲にある)の性質、および触媒の性質およびシステムの圧力に依存するであろう。作業温度でのラクチドの化学的な不安定性を考慮するとおよび反応の平衡をラクチドの形成に移動させるために、それを反応媒体から可能な限り迅速に抜き出すことが重要である。この背景において、反応媒体を気体流の下および/または減圧下に維持することが好ましい。第2の選択肢は反応温度を下げることを可能にもするので好ましいであろう。
【0034】
上に示した種々の制約にしたがうと、本発明の範囲を限定することなしに、薄膜式エバポレータの使用が特に望ましいようである。これは、このタイプの器具から、高分子量のオリゴエステルからなる液体残留物が底部で抜き出されるからである。頂部では、ラクチドに富んだ気相が直接抜き出され、正確に決められた温度に固定されたコンデンサで選択的に凝縮する。これは、この温度が、第1に揮発性化合物たとえば水、エステルおよびアルコールが気相に残る(一方、ラクチドおよび重い化合物は凝縮する)ような、および他方では低過ぎずラクチドの結晶化を妨げるような温度であるからである。収集する生成物(精製していないラクチド)の性質および純度に応じて、この温度は70°〜125℃であろう。より低い温度で作業して、それによりラクチドを結晶化させることも可能であるが、これはスクレープドサーフェイスタイプのコンデンサの使用を必要とする。
【0035】
出発材料がオリゴエステルからなることを考慮に入れると、この選択的凝縮から生じる粗製物質は経時的により安定であろう。なぜなら、それは、乳酸から出発して生じるであろう粗製材料よりも反応性が低いからである。加えて、この粗製材料は粘性がより低く、所定の精製技術の有効性を高めるであろう。
【0036】
この方法の次の工程は粗製材料の精製にあり、これは最終的なラクチド中のメソ−ラクチド含量を制御することを可能にし、この含量はプロセス全体においてDエナンチオマーの富化を制御しそれによりこれを防ぐことを可能にする、0.1%〜40%、好ましくは0.1%〜20%でなければならない。
【0037】
本発明の範囲では、種々のタイプの精製たとえば、メソラクチドはLラクチドのそれとかなり異なる融点を有するので、層(Sulzerタイプ)または懸濁液(NIROタイプ)のいずれかの溶融媒体中での結晶化、理論段の数および還流レベルに作用することによってメソ−ラクチド含量の制御を行う蒸留、溶媒結晶化、水溶液抽出(メソ−ラクチドはL−ラクチドよりも加水分解に敏感である)、または溶媒でのもの(メソ−ラクチドの安定性および結晶化温度はL−ラクチドと比較すると異なる)などを考えることができる。上述の条件を満足する任意の他の技術も本発明の範囲内で有効である。
【0038】
このようにして得られるラクチドは、それが意図されるであろう用途の分野に従って制御される高い純度および可変性を有するであろう。
【0039】
これは、それがPLAのホモまたはコポリマーの合成に意図されている場合、その残留酸性度および残留含水量はたとえば非常に低く、すなわち、それぞれ残留酸含有量については10meg/kg未満であり、残留含水量に関しては100ppm未満またはさらには50ppm未満であるからである。メソ−ラクチド含量に関しては、ポリマーに必要な特徴(より結晶性または不定形)に応じて可変であろう。
【0040】
一方、産業タイプの用途の中で反応中間体として使用することまたは加水分解して乳酸もしくはその誘導体のうちの1種にすることをそれが意図されている場合、酸度、残留水またはさらにはメソ−ラクチド含有量はあまり重要ではないであろう。
【0041】
発明の他の詳細および特徴は、以下に非限定的な例を示すことによって、その実施形態のいくつかの考えられる形態としての説明から明らかになる。
【0042】
例1
1.00kgのPLA(99.5%のL(+))を666gの乳酸エチル中で溶液にする。溶液にすることは2リットルのフラスコにおいて大気圧および140℃の温度で攪拌しながら行う。全てのPLAが溶液になったら、1gのTBDを添加する。エステル交換反応による解重合を120℃の温度で還流下で24時間続ける。数平均分子量は1800amu(GPCによって測定した)である。次に乳酸エチルを薄膜上で排除する(130℃、100ミリバール)。次に、1088gの98.9%のL(+)のオリゴエステルを回収する。
【0043】
次に、環化反応を、2%の錫オクトアートをオリゴエステルの混合物に添加して、250℃および10〜20ミリバールの圧力で行う。
【0044】
生じた蒸気(不純なラクチド−粗製物質)を凝縮させ、得られた粗製物質を溶融結晶化によって精製する。
【0045】
得られた未精製ラクチド(768g)を、直立ステンレス鋼管からなる晶析装置に導入する。この管のダブルジャケットに温度自動制御加熱ユニットによって熱交換流体を供給し、晶析、汗かきおよび再溶融段階を制御する。この未精製物質を102℃で溶融させる。次に、晶析が壁で進行的な温度の低下により開始される。未精製物質の一部が壁に晶出し、一方で中心部分は大部分の不純物を含む液相(排液)を含有する。温度が60℃に達したら、この液相を重力および窒素ブローイングによって抜き出す。また、結晶は不純物の膜で被覆されているが、これは汗かき工程で排除され、管の表面を非常に進行的に加熱して、この結晶のより低い純度の表面を溶融させる。最後に、生成物をその融点にしてそれを液化させそれを重力によって回収する。
【0046】
3つの連続的な晶出段階を行った。最終生成物の特性を表1に示す。
【表1】

【0047】
例2
1.00kgのPLA(95.3%のL(+))を666gの乳酸エチル中で溶液にする。溶液にすることは2リットルのフラスコにおいて大気圧および140℃の温度で攪拌しながら行った。全てのPLAが溶液になったら、319gの無水エタノールおよび1gの錫オクタートを添加する。エステル交換反応による解重合を120℃の温度でおよび加圧下で動作しうるリアクタにおいて30時間続ける。次に、乳酸エチルおよびエタノールを薄膜上で排除する(130℃、100ミリバール)。このようにして、93.2%のL(+)のオリゴエステルを回収する。
【0048】
次に、環化反応を、2%の錫オクトアートをオリゴエステル混合物に添加して、250℃および10〜20ミリバールの圧力で行う。
【0049】
生じた蒸気(不純なラクチド−粗製物質)を凝縮させ、得られた粗製物質の一部を溶媒抽出によって精製する。
【0050】
得られた未精製ラクチド(100g)を85℃で加熱し、100gのIPE(イソプロピルエーテル)と攪拌しながら均質になるまで混合する。次に、懸濁液を−18℃まで進行的に冷却する。次に、結晶をろ過してIPEで洗浄する。この抽出作業は2回および続いては3回繰り返し、最後に、得られたラクチドを回転式エバポレータにおいて減圧下で乾燥させた。
【0051】
最終生成物の特性を表2に示す。
【表2】

【0052】
例3
例1で製造した少量(10g)のラクチドを窒素掃気しながら試験管に導入する。この生成物を溶融させた(100℃)あと、6mgの錫オクトアートを添加した(4500の生成物/触媒のモル比に従うように)。溶液が均質になったら、温度が180℃に自動的に制御される油浴にそれを浸漬させる。合成の1時間後、ポリマーを回収した。このポリマーをGPCにより35℃のクロロホルム中で分析する:重量による計測したその分子量分布は98000(PS較正を行ったMw)である。
【0053】
例4
例1で製造したラクチドから、100gをフラスコに導入する。90%の濃乳酸を得るために、38.8gの脱イオン水を添加する。次に溶液を100℃で3時間加熱する。
【0054】
最終的な乳酸の特性を表3に示す。
【表3】

【0055】
例5
800gのPLA(95.5%のL(+))を533gの乳酸エチル中で溶液にする。溶液にすることは加圧下で作業することを可能にする2リットルのリアクタにおいて140℃の温度で攪拌しながら行った(この作業は大気圧で行った)。全てのPLAが溶液になったときに、51gのエタノールおよび0.8gのTBDを添加する。エステル交換反応による解重合を140℃の温度で24時間続ける。数平均分子量は1800amuである(GPCによって測定)。次に、乳酸エチルおよびエタノールを薄膜上で排除する(140℃、100ミリバール)。次に、95.2%のL(+)の1060gのオリゴエステルを回収する。
【0056】
例1で説明したそれと同一の手順に従い、3回の晶出段階の終わりに、以下の表4に特性を示す生成物が得られた。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸PLAを含有するポリマーの混合物を化学的立体特異的にリサイクルする方法であって:
a.前記ポリマーの混合物をPLA部分を溶解させることができる乳酸エステル中で溶液にすることと;
b.前の工程に由来するPLA部分のエステル交換による解重合であって、この解重合に由来するオリゴエステル混合物が400〜5000amuの数平均分子量に達したら停止される解重合と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程aとbとの間に、前記乳酸エステルと、一方では溶解したPLAおよび他方では不溶性のポリマーの混合物とを分離する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程bからの前記オリゴエステルの混合物に、ラクチドに富んだ気相およびオリゴエステルに富んだ液相の製造を伴う触媒環化工程を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ラクチドに富んだ気相を未精製ラクチドの形態で選択的に凝集させて、揮発性成分を除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
未精製ラクチドに立体特異的精製を施して、メソラクチド含量が0.1重量%〜40重量%である精製ラクチド部分にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶液にする工程aを0.5〜3のPLA/乳酸エステル重量比で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
粉砕し凝集させたポリマーの混合物は、前記乳酸エステル中で溶液にする前に、0.005〜1.4t/m3の重量/体積比を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
エステル交換反応による前記解重合に関与するアルコール機能は溶液にするために使用された前記乳酸エステルに由来することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
エステル交換反応による前記解重合に関与するアルコール機能は添加されたアルコールに由来することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記解重合反応を触媒の存在下でのエステル交換によって行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
エステル交換反応による前記解重合をアルコール機能の排除によって停止することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
エステル交換反応による前記解重合を触媒の無効化によって停止することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
環化工程の開始前に、残留乳酸エステルを前記オリゴエステルから分離することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
エステル交換による前記解重合の触媒は好ましくは環化触媒と同じであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
未精製乳酸エステルを、層状の溶融媒体中での晶析、懸濁液の状態の溶融媒体中での晶析、溶媒中での晶析、蒸留および水抽出より選択される立体特異的方法によって精製することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−504634(P2013−504634A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528287(P2012−528287)
【出願日】平成22年7月19日(2010.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060426
【国際公開番号】WO2011/029648
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511241192)ガラクティック・エス.エー. (4)
【氏名又は名称原語表記】GALACTIC S.A.
【住所又は居所原語表記】Place d’Escanaffles, 23, BE−7760 Escanaffles, BELGIUM
【Fターム(参考)】