説明

POSH及びPOSH−AP阻害剤としてのピリミジン誘導体

ピリミジン誘導体は、特にPOSHポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するユビキチン化阻害剤であり、ウイルス感染及び神経学的障害の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性の阻害剤、特にPOSH阻害剤である小型ピリミジン誘導体、並びに、ウイルス感染及び神経学的状態、障害又は疾患の治療のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潜在的な薬物標的の検証では、DNA、RNA又はタンパク分子が、疾患過程に関わり、したがって新たな治療薬物の開発に適した標的であるか否かを判断する。生物活性化合物を同定し特徴付ける過程である創薬は、ヒト疾患のための新たな治療の開発における重大なステップである。創薬の状況は、ゲノム革命によって劇的に変化した。DNA及びタンパク質配列は、多数の新たな薬物標的及び膨大な量の関連情報を生み出している。
【0003】
炎症及び免疫応答等、種々の病状又は主要な生物学的過程に関与する遺伝子及びタンパク質の同定は、薬物設計過程の不可欠な部分である。多くの疾患及び障害は、適切な分子標的を同定し、適切なアンタゴニストを発現させることができる場合、その状態の分子病因論に関与する1個又は複数の遺伝子の発現を減少させることによって、治療又は予防することができる。例えば、1個又は複数の細胞性癌遺伝子が活性化し、細胞周期過程の無制限の進行をもたらす癌は、適切な細胞周期制御遺伝子をアンタゴナイズすることによって治療できる。さらに、ハンチントン病等の多くのヒト遺伝子疾患、並びに、遺伝因子及びエピジェネティック因子両方の影響を受けるいくつかのプリオン状態は、その機能の完全喪失とは対照的な、ポリペプチドの不適切な活性に起因する。したがって、そのような突然変異遺伝子の異常機能をアンタゴナイズすることから、治療手段がもたらされる。加えて、HIV等の感染症は、HIVプロテアーゼ又は逆転写酵素等の特異的な必須レトロウイルスタンパク質を標的とした分子アンタゴニストによって首尾よく治療されてきた。そのような疾患及び障害を治療するための薬物療法戦略では、疾病遺伝子(複数可)のポリペプチド産物を標的とする分子アンタゴニストを頻繁に用いてきた。しかしながら、関連遺伝子又はタンパク質標的の発見は、多くの場合、困難且つ時間のかかるものである。
【0004】
特に関心の高い1つの分野は、ウイルスの生活サイクルの間にウイルスによって選出される宿主遺伝子及びタンパク質の同定である。多くのウイルス疾患の重篤性及び不治性は、多くのウイルスにおいて見られる高い突然変異率とあいまって、抗ウイルス剤の同定を世界の健康の向上にとって最優先のこととしている。ウイルスの生活サイクルに関与する遺伝子及びタンパク質は、一般に宿主細胞中における付加的な活性を有し、他の非ウイルス性の病状において役割を担い得るため、そのような遺伝子及びタンパク質は調査対象としても魅力がある。
【0005】
ウイルス成熟には、Gagタンパク質のタンパク質分解処理及び種々の宿主タンパク質の活性が関与する。エキソ/エンドサイトーシス及びユビキチン抱合のための細胞機構は、成熟に関与し得ると考えられている。特に、種々のレトロウイルス、ラブドウイルス、レンチウイルス及びフィロウイルス等、レトロイドウイルス(retroid virus)、RNAウイルス及びエンベロープウイルスの会合、成熟、出芽及びそれに続く放出には、Gagポリタンパク質が関与する。その合成後、Gagは原形質膜を標的とし、そこで発生期のウイルス粒子の出芽を誘発する。
【0006】
ウイルス会合におけるユビキチンの役割は、成熟ウイルス粒子が非抱合ユビキチン中で濃縮されることを観察したDuniganら(1988、Virology 165、310;Meyersら、1991、Virology 180、602)によって示唆された。より最近では、プロテアソーム阻害剤が、HIV−1、HIV−2並びにSIV及びRSV Gagに由来するウイルス様粒子の放出を抑制することが示された。また、阻害剤は、Gag処理及び感染粒子への成熟にも影響を及ぼす(Schubertら、2000、PNAS 97、13057;Hartyら、2000、PNAS 97、13871;Strackら、2000、PNAS 97、13063;Patnaikら、2000、PNAS 97、13069)。
【0007】
当該技術分野においては、ユビキチン介在性タンパク質分解が、真核細胞中における細胞内タンパク質の選択的な制御分解のための主要経路であることがよく知られている。細胞内における多種多様なタンパク質標的のユビキチン修飾は、遺伝子発現の制御、細胞周期の制御、細胞表面受容体の修飾、リボソームの生合成及びDNA修復等、多数の基本的細胞機能において重要なようである。ユビキチン介在系の1つの主要な機能は、細胞タンパク質の半減期を制御することである。異なるタンパク質の半減期は、数分間から数日間までの範囲となり得、細胞型、栄養及び環境条件、並びに細胞周期の段階に応じて大幅に変動し得る。
【0008】
おそらくユビキチン依存性プロテアソームの作用によって選択的分解を受けている標的タンパク質は、ユビキチンのC末端グリシル残基と基質タンパク質中の特異的なリシル残基との間におけるイソペプチド結合の形成を介して、共有結合によりユビキチンでタグ付けされる。この過程は、ユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン抱合酵素(E2)によって触媒され、一部の事例では、補助的な基質認識タンパク質(E3)を必要とする場合もある。第1のユビキチン鎖の結合に続いて、ユビキチンの付加的な分子を予め抱合した部分のリシン側鎖に結合し、分岐した多ユビキチン鎖を形成することができる。
【0009】
ユビキチンのタンパク質基質との抱合は、多段階過程である。初期のATP要求ステップでは、ユビキチンのC末端とE1酵素の内部システイン残基との間にチオエステルが形成される。その後、活性化ユビキチンは、数種のE2酵素のうちの1つの上で特異的システインへ移行することができる。最後に、これらのE2酵素は、一般にユビキチンリガーゼ酵素としても知られるE3タンパク質の援助によって、タンパク質基質にユビキチンを供与する。いくつかの事例において、基質はユビキチン抱合E2酵素によって直接認識される。ユビキチン(ub)タンパク質リガーゼ(E3)は、E1(ub−活性化酵素)及びE2(ub担体タンパク質)の存在下において、1個又は複数のユビキチン分子の基質タンパク質との共有結合(抱合)を容易にするタンパク質として機能的に定義される。タンパク質基質の不在下において、E3は、自己ユビキチン化、すなわち、E2由来の活性化ユビキチンの、E3ポリペプチド上のリシン残基受容体部位への移行であり、自己ユビキチン化と称される反応を触媒することができる。トランスユビキチン化と同様に、自己ユビキチン化は、E1、E2及び完全なE3機能モジュール、すなわちRINGフィンガー又はHECTドメインの存在に依存する(Lorick KLら、Proc Natl Acad Sci USA、1999、96、11364〜9;Kao WHら、J Virol.、2000、74、6408〜6417)。
【0010】
ユビキチン系は、細胞内輸送、細胞周期進行、アポトーシス及び多くの膜受容体の代謝回転を含む広範な細胞過程において役割を担っていることも知られている。ウイルス感染において、ユビキチン系は、会合、出芽及び放出だけでなく、ウイルス誘発性の新生物につながり得るp53等の宿主タンパク質の抑制にも関与している。HIV Vpuタンパク質は、IκB分解を制御するE3タンパク質と相互作用しており、NF−κB活性を間接的に阻害することによって感染細胞のアポトーシスを促進すると考えられている(Bourら(2001)、J Exp Med 194、1299〜311;米国特許第5,932,425号)。ユビキチン系は、モノユビキチン化及びポリユビキチン化の両方によってタンパク質機能を制御する。ポリユビキチン化は、主としてタンパク質分解に関連する。
【0011】
POSH(Plenty of SH3 domains;多数のSH3ドメイン)タンパク質は、タンパク質分解、細胞内輸送、細胞周期進行、アポトーシス及び多くの膜受容体の代謝回転を含む広範な細胞過程において役割を担っている。ウイルス感染におけるPOSH、ユビキチンリガーゼ及び「POSHタンパク質」(そのアミノ酸配列中にRINGドメイン及び少なくとも1つのSH3ドメインを本質的に含むタンパク質)の必須機能、並びに、ウイルス感染、特にHIV感染を阻害するためのPOSH阻害の使用については、2002年11月12日出願の米国特許出願第10/293,965号;WO03/095972として公開された2002年11月12日出願のPCT/US02/36366;2002年7月31日出願のPCT/US02/24589;2002年11月11日出願のWO03/078601、WO03/060067、EP1310552及びEP02257796において広く記述された。これらの出願はすべて、参照により、本明細書において完全に開示されているかの如く、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
POSH等のユビキチンリガーゼは、例えば、細胞へのウイルス侵入、ウイルスタンパク質の産生、ウイルスタンパク質の会合及び細胞からのウイルス粒子の放出等、ウイルスの生活サイクルの種々の段階のうちの1つ又は複数を含む生物学的過程に関係し得る。上記の特許出願には、いくつかのPOSHポリペプチドが、ウイルス粒子中におけるタンパク質の生成、翻訳後プロセシング、会合及び/又は放出を含むウイルス成熟に関与していることが記述されている。したがって、ウイルス感染は、POSHの活性(例えば、ユビキチンリガーゼ活性又は標的タンパク質相互作用)を阻害することによって寛解することができる。
【0013】
加えて、2004年4月5日出願の、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる出願第PCT/US2004/10582号において記述されている通り、数種のタンパク質がPOSHと相互作用し、これを使用して候補治療薬を同定することができる。これらのPOSH関連タンパク質(POSH−AP)の1つがHERPUD1であり、神経学的障害、特にアルツハイマー病に関連することが知られている。
【0014】
POSHタンパク質を結合し、POSHタンパク質活性を阻害する小分子としての化合物、より具体的には、POSHタンパク質介在性ユビキチン化を阻害する化合物を同定することが有益であろう。
【0015】
本明細書全体を通して、種々の科学刊行物及び特許又は公開特許出願が参照される。これらすべての刊行物の開示は、本発明が属する技術分野の状況をより完全に記述するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この節又は本明細書の他の任意の部分における任意の参照文献の引用又は特定を、そのような参照文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈してはならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様において、本発明は、以下に示される式Iのピリミジン誘導体である小分子を提供する。好ましい実施形態において、式Iの化合物は、本明細書において化合物1、2、3、4、5、6及び7として示される化合物である。
【0017】
一態様において、本発明は、薬剤の調製のための、一般式Iの化合物の使用に関する。好ましい実施形態において、使用される化合物は、本明細書において化合物1、2、3、4、5、6及び7として示される化合物である。
【0018】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は、ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性の阻害のために、本発明に従って使用される。
【0019】
別の態様において、本発明は、ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するための方法であって、式Iの化合物を、該ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するのに有効な量で、必要とする被験者に投与するステップを含む上記方法に関する。
【0020】
好ましい実施形態において、該ヒトポリペプチドは、RINGドメイン、より好ましくは、少なくとも1つのSH3ドメインを含有する。最も好ましい実施形態において、該ポリペプチドはヒトPOSHポリペプチドである。
【0021】
一般式Iの化合物は、POSHタンパク質介在性ユビキチン化を阻害することがわかり、本明細書においては「POSH阻害剤」と命名する。
【0022】
POSHポリペプチドは、ウイルス成熟を含むウイルスの生活サイクルの種々の段階において、及び神経学的障害においても役割を担うものとして同定されている。したがって、POSHポリペプチド活性、特にPOSHタンパク質介在性ユビキチン化の阻害は、そのような活性を消失させ、ウイルス感染の治療及び最終的にはウイルス死滅又は神経学的状態、障害若しくは疾患の治療につながることになる。
【0023】
一実施形態において、式Iの化合物を使用し、本発明に従って調製される薬剤は、ウイルス感染の治療のための薬剤である。
【0024】
別の実施形態において、薬剤は、神経学的状態、障害又は疾患の治療のための薬剤である。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、ウイルス感染、特に、HIV、エボラ、HBV、HCV及びHTLVを含む、レトロイドウイルス、RNAウイルス及びエンベロープウイルスによって引き起こされるウイルス感染に罹患している患者の治療のための方法であって、以下の一般式Iの少なくとも1種の化合物の有効量を該患者に投与するステップを含む上記方法に関する。
【0026】
別の態様において、本発明は、化合物1及び2の合成の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】HIV−1IIIBウイルスに感染したCEM−SS細胞に対する化合物1の抗ウイルス効果及び非感染CEM−SS細胞に対する化合物1の細胞毒性効果を示すグラフである。
【図2】HIV−1IIIBウイルスに感染したCEM−SS細胞に対する化合物5の抗ウイルス効果及び非感染CEM−SS細胞に対する化合物5の細胞毒性効果を示すグラフである。
【図3】HIV−2RODウイルスに感染したCEM−SS細胞に対する化合物1の抗ウイルス効果及び非感染CEM−SS細胞に対するその細胞毒性効果を示すグラフである。
【図4】HIV−2RODウイルスに感染したCEM−SS細胞に対する化合物2の抗ウイルス効果及び非感染CEM−SS細胞に対する化合物2の細胞毒性効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によれば、いくつかのピリミジン誘導体はユビキチン化阻害剤として作用し、POSHタンパク質介在性ユビキチン化を阻害できることがわかった。
【0029】
したがって、一態様によれば、本発明は、一般式Iの化合物、又はその鏡像異性体若しくは薬学的に許容される塩を提供し、
【化1】


式中、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR、−COOR、−NR、−CONR又は−NRCOR10であり、
はアリール又はヘテロアリールであり、
は、H、又は低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR、−COOR若しくは−CONRから選択される1〜3個の基を表し、
は、H、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、→O又はヘテロシクリルであり、
は、H、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR又は−NRCOR10であるか、或いはR、それが結合した窒素原子及びRが5〜6員のヘテロシクリル環を形成し、
は、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであり、
及びRは、それぞれ独立に、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びRは、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する5〜6飽和ヘテロシクリル環を形成し、該さらなるN原子は、低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルで場合によって置換されており、
は、H、低級アルキル又はフェニルであり、
10はアリール又はヘテロアリールであり、
該ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールは、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR、ニトロ、−NR−COR、−SO、−SO、−SONR及び−NRSO(ここで、R、R及びRは上記で定義された通りである)から選択される1個又は複数の基で場合によって置換されている。
【0030】
1つの好ましい実施形態において、式Iの化合物中、RはNRCOR10であり、Rは場合によって置換されているヘテロアリールであり、RはH又は1〜3個のアルキル基であり、R〜R10は上記で定義された通りである。
【0031】
さらなる可能な定義に範囲を限定することなく、本明細書において使用する場合、以下の用語は次の通りに定義される。
【0032】
「ヒドロカルビル」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個、最も好ましくは2〜3個の炭素原子の、非環式又は環式、飽和、不飽和又は芳香族のヒドロカルビル基であってよい炭化水素に由来する基を意味し、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル及びアリールを含む。
【0033】
「アルキル」、「アルケニル」又は「アルキニル」基は、それぞれ、直鎖又は分岐鎖であってよく、O、S及び/又はNから選択される1個又は複数のヘテロ原子で遮断されていてよい、且つ/或いはハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’−SOR、−SOR、−SONRR’及び−NRSOR(ここで、R及びR’は独立に、それぞれ、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びR’は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和5〜7員のヘテロシクリル環を形成し、該さらなるN原子はヒドロカルビルで場合によって置換されている)から成る群より選択される1個又は複数の基により置換されていてよい、「C〜C10アルキル」、好ましくは「C〜Cアルキル」、「C〜C10アルケニル」、好ましくは「C〜Cアルケニル」又は「C〜C10アルキニル」、好ましくは「C〜Cアルキニル」である。
【0034】
「低級アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であってよく、O、S及び/又はNから選択される1個又は複数のヘテロ原子で遮断され、且つ/或いは上記で定義された通り置換されていてよい、「C〜Cアルキル」を指す。低級アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルを含む。1つの好ましい実施形態において、低級アルキルはメチルである。
【0035】
あらゆる「C〜Cアルケニル」は、2〜4個の炭素原子及び1若しくは2個の二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の不飽和基、例えばアルカジエニル基であり、該アルケニル基は、好ましくは末端二重結合を有し、例えば、ビニル、プロプ−2−エン−1−イル、ブト−3−エン−1−イルを含む。あらゆる「C〜Cアルキニル」は、2〜4個の炭素原子及び1個又は複数の三重結合を有する直鎖又は分岐鎖の不飽和基であり、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニルを含む。すべてのアルキル、アルケニル及びアルキニル基は、上記で定義された通り置換されていてよい。
【0036】
本明細書における「カルボシクリル」という用語は、「C〜Cシクロアルキル」又は「C〜Cシクロアルケニル」、すなわち、5〜6個の完全飽和又は部分不飽和の炭素環基をそれぞれ指す「シクロアルキル」及び「シクロアルケニル」という用語を含み、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’−SOR、−SOR、−SONRR’及び−NRSOR(ここで、R及びR’は独立に、それぞれ、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR’及びR”は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和ヘテロシクリル環を形成し、該さらなるN原子はヒドロカルビルで場合によって置換されている)から成る群より選択される1個又は複数の基により置換されていてよい、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルを含む。
【0037】
「アリール」という用語は、上記で定義された通りの1個又は複数の基により置換されていてよい、フェニル、ナフチル及びアントラセニル等、単環、二環又は三環から成る、6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する「C〜C14」芳香族炭素環基を指す。
【0038】
「ヘテロシクリル」という用語は、環員の1〜3個が、O、S及び/又はNから選択されるヘテロ原子である、3〜12個、好ましくは5〜10個、より好ましくは5〜6個の環員の、飽和又は部分不飽和(非芳香族)の単環式、二環式又は三環式複素環に由来する基を意味する。非芳香族ヘテロシクリルの非限定的例は、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ、1,3−ジオキサニル等を含む。ヘテロシクリル基は、上記で定義された通りの1個又は複数の基により置換されていてよい。多環式ヘテロシクリル環が置換されている場合、置換は炭素環及び/又はヘテロシクリル環のいずれの中であってもよいことを理解されたい。
【0039】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書において使用する場合、O、S及びNから成る群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する単環式又は多環式芳香族複素環に由来する基を意味する。特定の例は、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル及びベンゾオキサゾリル、ベンゾジアゼピニル、並びにさらなる多環式芳香族複素環由来の他の基である。ヘテロアリール基は、上記で定義された通りの1個又は複数の基により置換されていてよい。多環式ヘテロアリール環が置換されている場合、置換は、炭素環及び/又はヘテロシクリル環のいずれの中であってもよいことを理解されたい。1つの好ましい実施形態において、ヘテロアリールはチエニルである。
【0040】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。好ましい実施形態において、ハロゲンはクロロである。
【0041】
基−NR又は−NRR’は、R(又はR)及びR(又はR’)がいずれも水素である場合、−NHであってよく、或いはR(又はR)がHであり及びR(又はR’)がC〜Cアルキルである場合、第二級アミノであってよく、或いはR(又はR)及びR(又はR’)がそれぞれC〜Cアルキルであるか、又はR若しくはR(それぞれR及びR’)が、それらが結合した窒素原子と一緒になって、窒素、酸素及び/又は硫黄から選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和、好ましくは5又は6員のヘテロシクリル環を形成し得る場合、第三級アミノであってよい。そのような環は、好ましくはさらなるN原子で、低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルにより置換されていてよい。そのような環の例は、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N−アルキルピペラジノ、例えばN−メチルピペラジノ、及びジアゼピノを含むがこれらに限定されない。
【0042】
(又はR)がアルキルである場合、基OR(又はOR)、SR(又はSR)、COR(又はCOR)によって形成される任意のアルコキシ、アルキルチオ又はアルカノイル基は、それぞれC〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ及びC〜Cアルカノイル基である。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ等であり、アルキルチオの例は、−O−を−S−で置き換えることを除いて同じであり、アルカノイルの例は、アセチル、プロパノイル、ブタノイル等である。すべてのアルコキシ、チオアルキル及びアルカノイル基は、上記で定義された通り置換されていてよい。1つの好ましい実施形態において、C〜Cアルコキシはメトキシである。
【0043】
好ましい実施形態によれば、本発明は、式Ia又はIbの化合物を提供し、
【化2】


式中、
Xは、O、S又はNHであり、
はH又は1〜3個の(C〜C)アルキルであり、
はH又は(C〜C)アルキルであり、
はH又は場合によって置換されている(C〜C)アルキルであり、
11〜R19は、それぞれ独立に、H、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR、ニトロ、−NR−COR、−SO、−SO、−SONR及び−NRSO(ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール若しくはヘテロシクリルであるか、又はR及びRは、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和ヘテロシクリル環を形成し、該さらなるN原子は、フェニル、ハロゲン又はヒドロキシで場合によって置換されている低級アルキルで場合によって置換されている)から選択され、式Ib中の点線は、任意選択の二重結合を表す。
【0044】
より好ましい実施形態において、XがSであり、RがH又は1〜3個のメチル基であり、RがHであり、RがH又はメチルであり、R11〜R16がHである、式Iaの化合物である。
【0045】
本発明によって提供される式Iaの1つの最も好ましい化合物は、本明細書において、化合物1、2、3及び4として特定される化合物であり、化合物1は
【化3】


であり、化合物2は
【化4】


であり、化合物3は
【化5】


であり、化合物4は
【化6】


である。
【0046】
別のより好ましい実施形態によれば、本発明は、XがSであり、RがH又は1〜3個のメチル基であり、R11〜R19がHである、式Ibの化合物を提供する。最も好ましい実施形態において、化合物は、本明細書において、化合物5、6及び7として特定され、化合物5は
【化7】


であり、化合物6は
【化8】


であり、化合物7は
【化9】


である。
【0047】
式Iの化合物の塩も本発明によって企図されており、いずれの塩も、酸添加及び/又は塩基塩と同様に、分子中に存在する任意のカルボキシ又はスルホ基及び塩基によって形成される。
【0048】
薬学的に許容される塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミン等、金属又はアミンと形成される。カチオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等である。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインである(例えば、Berge S.M.ら、「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」(1977)、J.of Pharmaceutical Science、66、1〜19を参照)。塩は、式−NRR’R”+Z’の第四級塩等、薬学的に許容される第四級塩であってもよく、ここで、R、R’及びR”は、それぞれ独立に、水素、アルキル又はベンジルであり、Zは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、O−アルキル、トルエンスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、酢酸塩又はトリフルオロ酢酸塩を含む対イオンである。
【0049】
薬学的に許容される化合物の酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等の無機酸に由来する塩、並びに、脂肪族モノ−及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の有機酸に由来する塩を含む。したがって、そのような塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩等を含む。アルギネート等のアミノ酸及びグルコン酸塩又はガラクツロン酸塩の塩も企図されている(例えば、Berge S.M.ら、「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」(1977)、J.of Pharmaceutical Science、66、1〜19を参照)。
【0050】
該塩基性化合物の酸付加塩は、従来の方式で、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させ、塩を生成することによって調製される。遊離塩基形態は、従来の方式で、塩形態を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することによって再生できる。遊離塩基形態は、極性溶媒中での溶解度等、いくつかの物理的性質がその各塩形態とは若干異なるが、それ以外の点では、塩は、本発明の目的のために、その各遊離塩基と同等である。
【0051】
該酸性化合物の塩基付加塩は、従来の方式で、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、塩を生成することによって調製される。遊離酸形態は、従来の方式で、塩形態を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって再生できる。遊離酸形態は、極性溶媒中での溶解度等、いくつかの物理的性質がその各塩形態とは若干異なるが、それ以外の点では、塩は、本発明の目的のために、その各遊離酸と同等である。
【0052】
化合物1及び2は、本発明に従って、本明細書において実施例7及び8並びにスキーム1及び2に記述されている通り、3ステップ反応手順を使用して調製した。最初の2ステップは既知であるが、第3のステップは新しいものであり、2−(2−チエニル)−4−(2−チエニルメチレン)オキサゾール−5(4H)−オン(アザラクトン、スキーム1における中間体2)を4−アミノ−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド又は氷酢酸中の4−アミノ−N−(2−ピリミジニル)−1−ベンゼンスルホンアミドと混合し、還流しながら撹拌することを伴う。
【0053】
本明細書において使用する場合、「POSH」、「POSHタンパク質(複数可)」又は「POSHポリペプチド(複数可)」という用語は同義で使用され、そのアミノ酸配列中にRINGドメイン及び少なくとも1つのSH3ドメインを含むポリペプチドを指す。一部の事例において、POSHタンパク質は、3つ又は4つのSH3ドメインを有し得る。
【0054】
「POSH介在性ユビキチン化」又は「POSHタンパク質介在性ユビキチン化」という用語は同義で使用され、POSHタンパク質の介入を必要とする任意のユビキチン化過程を指す。
【0055】
「ユビキチン化阻害剤」、「POSH阻害剤」又は「POSHタンパク質阻害剤」という用語は同義で使用され、POSHタンパク質介在性ユビキチン化を含む、本明細書において完全に開示されているかの如く、その全体が本明細書に組み込まれるPCT/US02/36366(WO03/095972)において定義されている通りのPOSH活性を阻害する、本明細書における式Iのピリミジン誘導体を指す。
【0056】
POSHポリペプチドは、ウイルス成熟を含むウイルスの生活サイクルの種々の段階において、及び神経学的障害においても役割を担っていることが知られている。したがって、本発明によって提供されるPOSH阻害剤による、POSHポリペプチド活性、特にPOSHタンパク質介在性ユビキチン化の阻害は、そのような活性を消失させることができ、ウイルス感染の治療及び最終的にはウイルス死滅又は神経学的状態、障害若しくは疾患の治療につながることになる。
【0057】
したがって、別の態様において、本発明は、薬剤の調製のためのユビキチン化阻害剤の使用に関し、該ユビキチン化阻害剤は、上記一般式Iのピリミジン誘導体である。
【0058】
好ましい実施形態において、一般式IのPOSHポリペプチド阻害剤は、POSHポリペプチド、好ましくはヒトPOSHポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害する。別の好ましい実施形態において、POSH阻害剤は、POSH自己ユビキチン化、特にヒトPOSHポリペプチドのRINGフィンガー依存性ユビキチン化を阻害する。より好ましい実施形態において、POSH阻害剤は、POSHを選択的に阻害し、SH3ドメインを有さないMdm2及びc−Cbl等の他のユビキチンE3リガーゼのフィンガー依存性ユビキチン化は阻害しない。
【0059】
好ましい実施形態において、薬剤の調製のために使用されるユビキチン化阻害剤中、RはNRCOR10であり、Rは場合によって置換されているヘテロアリールであり、RはH又は1〜3個のアルキル基である。より好ましくは、阻害剤は式Ia又はIbのものであり、最も好ましくは、使用される化合物は化合物1、2、3、4、5、6及び7である。
【0060】
最も好ましい実施形態において、本発明は、ウイルス感染、好ましくは、RNAウイルス、エンベロープウイルス又は霊長類レンチウイルス群を含むレンチウイルス等のレトロイドウイルスによって引き起こされるウイルス感染、最も好ましくは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス及びヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)から成る群より選択されるウイルスによって引き起こされる感染によって引き起こされるウイルス感染の治療用の、抗ウイルス活性を呈する薬剤の調製のための、一般式Iのユビキチン化阻害剤の使用を提供する。好ましい実施形態において、化合物は、式Iの化合物の使用の好ましい実施形態において上記で定義された通りであり、最も好ましくは、化合物1、2及び5である。
【0061】
さらに別の態様において、本発明は、ウイルス感染に罹患している患者の治療のための方法であって、上記一般式Iの少なくとも1種のピリミジン誘導体の有効量を、該患者に投与するステップを含む上記方法に関する。
【0062】
本発明によれば、POSHタンパク質阻害剤は、任意のウイルス感染の治療に有用となることが予想される。
【0063】
本明細書の教示に照らして、当業者は、本発明の方法及び組成物が、例えば、レトロイドウイルス、RNAウイルス及びエンベロープウイルス等の広範なウイルスに適用可能であることを理解するであろう。
【0064】
「エンベロープウイルス」という用語は、本明細書において使用する場合、ウイルス放出過程において細胞膜及び/又は任意のオルガネラ膜を使用する任意のウイルスを指す。
【0065】
好ましい実施形態において、本発明は、レトロイドウイルスに適用可能である。より好ましい実施形態において、本発明は、レトロウイルス(レトロウイルス科)にさらに適用可能である。別のより好ましい実施形態において、本発明は、霊長類レンチウイルス群を含むレンチウイルスに適用可能である。最も好ましい実施形態において、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)に適用可能である。
【0066】
限定を意図するものではないが、関連レトロウイルスは、カワカマスにおいてリンパ肉腫を引き起こすC型レトロウイルス、ミンクに感染するC型レトロウイルス、ヒツジに感染するヤギレンチウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ブタに感染するC型レトロウイルス、トリ白血病肉腫ウイルス(ALSV)、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫エイズウイルス、ウシ白血病ウイルス(BLV)、サル白血病ウイルス(SLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)、ヒトT細胞白血病ウイルスII型(HTLV−II)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)及びヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)を含む。
【0067】
本発明の方法及び組成物は、ssRNAマイナス鎖ウイルス及びssRNAプラス鎖ウイルスを含むRNAウイルスにさらに適用可能である。ssRNAプラス鎖ウイルスはC型肝炎ウイルス(HCV)を含む。好ましい実施形態において、本発明は、フィロウイルスを含むモノネガウイルス目に適用可能である。フィロウイルスは、エボラウイルス及びマールブルグウイルスをさらに含む。
【0068】
その他のRNAウイルスは、エンテロウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス及びA型肝炎ウイルス等のピコルナウイルス、ノーウォーク様ウイルスを含むカリチウイルス属、狂犬病ウイルスを含むラブドウイルス、アルファウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス及び風疹ウイルスを含むトガウイルス、A、B及びC型インフルエンザウイルスを含むオルトミクソウイルス、リフトバレー熱ウイルス及びハンタウイルスを含むブンヤウイルス属、エボラウイルス及びマールブルグウイルス等のフィロウイルス、並びにムンプスウイルス及び麻疹ウイルスを含むパラミクソウイルスを含む。治療できる付加的なウイルスは、ヘルペスウイルスを含む。
【0069】
本発明の好ましい実施形態に従う好ましい局面において、ウイルス感染はレトロイドウイルスによって引き起こされる。
【0070】
本発明の好ましい実施形態に従う別の好ましい局面において、ウイルス感染はRNAウイルスによって引き起こされる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態に従うさらなる好ましい局面において、ウイルス感染はエンベロープウイルスによって引き起こされる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態に従うまた別の好ましい局面において、ウイルス感染は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、特にHIV−1又はHIV−2によって引き起こされる。
【0073】
本発明の好ましい実施形態に従うまたさらなる好ましい局面において、ウイルス感染はエボラウイルスによって引き起こされる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態に従うまた別の好ましい局面において、ウイルス感染はB型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる。
【0075】
本発明の好ましい実施形態に従うまた別の好ましい局面において、ウイルス感染はC型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態に従うまた別の好ましい局面において、ウイルス感染は、HTLV1型(HTLV−1)等のヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)によって引き起こされる。
【0077】
本発明の最も好ましい実施形態において、ウイルス感染、好ましくはHIVウイルスによって引き起こされるウイルス感染の治療のために使用される化合物は、本明細書において、化合物1、2及び5として特定される化合物である。
【0078】
別の最も好ましい実施形態において、本発明は、薬学的に許容される担体と一般式Iのピリミジン誘導体とを含む、神経学的状態、障害又は疾患の治療のための医薬組成物を提供する。好ましい実施形態において、化合物は、医薬組成物の好ましい実施形態において上記で定義された通りである。
【0079】
さらに別の態様において、本発明は、神経学的状態、障害又は疾患に罹患している患者の治療のための方法であって、上記一般式Iの少なくとも1種のピリミジン誘導体の有効量を、該患者に投与するステップを含む上記方法に関する。
【0080】
本発明によれば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、脳血管疾患、うつ病又は統合失調症を含むがこれらに限定されない、任意の神経学的状態、障害又は疾患を、式Iの化合物によって治療することができる。
【0081】
本発明の好ましい実施形態に従う好ましい局面において、神経疾患はアルツハイマー病である。この局面によれば、本発明は、細胞中におけるアミロイドポリペプチド産生を阻害する方法であって、ヒトポリペプチド又はタンパク質のユビキチンリガーゼ活性を阻害する小分子作用物質を投与するステップを含み、該小分子化合物が、上記式Iのピリミジン誘導体である、上記方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、細胞中におけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の輸送を阻害する方法であって、小分子によってポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するステップを含み、該小分子化合物が、式Iのピリミジン誘導体である、上記方法を提供する。
【0082】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、1種又は複数の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用して、従来の方式で配合することができる。したがって、化合物並びにその生理学的に許容される塩及び溶媒和物は、全身及び局所又は限局投与を含む多種多様な投与経路による投与のために、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Meade Publishing Co.、Easton、ペンシルバニア州において記述されている通りの従来の方法によって配合することができる。
【0083】
全身投与には、筋肉内、静脈内、腹腔内及び皮下を含む注射が好ましい。注射のために、本発明の化合物を、溶液中、好ましくは、ハンクス液又はリンゲル液等の生理学的に適合する緩衝液中に配合することができる。加えて、化合物を固体形態で配合し、使用直前に再溶解又は懸濁してもよい。凍結乾燥形態も含まれる。
【0084】
経口投与のために、医薬組成物は、例えば、結合剤、増量剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ)、崩壊剤(例えば、バレイショデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の薬学的に許容される賦形剤とともに従来の手段によって調製された錠剤又はカプセルの形態をとり得る。錠剤は、当該技術分野において既知の方法によってコーティングすることができる。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとってもよく、又は使用前の水若しくは他の適切なビヒクルによる構築のために乾燥生成物として提示してもよい。そのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化可食性油脂)、乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アチオンド(ationd)油、油性エステル、エチルアルコール又は分画した植物油)、及び保存料(例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)等の薬学的に許容される添加物とともに従来の手段によって調製することができる。製剤は、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤を含有してもよい。
【0085】
経口投与用の製剤は、活性化合物の制御放出を行うよう、適切に配合することができる。口腔投与のために、組成物は、従来の方式で配合された錠剤又は舐剤の形態をとり得る。吸入による投与のために、本発明に従って使用するための化合物は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを使用することにより、加圧パック又はネブライザーからのエアゾールスプレー提示の形態で好都合に送達される。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計測量を送達するための弁を設けることによって決定することができる。吸入器又は注入器において使用するための、例えばゼラチンのカプセル及び薬包は、化合物とラクトース又はデンプン等の適切な粉末基剤との混合粉体を含有させて配合することができる。
【0086】
化合物を、注射、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与用に配合することができる。注射用の配合物は、保存料を添加した単位剤形、例えば、アンプル又は複数用量容器で提示してよい。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルション等の形態をとってよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化剤(formulatory agents)を含有し得る。代替として、有効成分は、使用前の適切なビヒクル、例えば無菌パイロジェンフリー水による構築のための粉末形態であってよい。
【0087】
化合物を、例えばココアバター又は他のグリセリド類等の従来の坐薬基剤を含有する、坐薬又は停留浣腸等の直腸組成物中に配合してもよい。
【0088】
前述の配合物に加えて、化合物をデボー製剤として配合してもよい。そのような長時間作用型配合物は、移植(例えば、皮下又は筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物を、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂とともに、或いは難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として配合することができる。
【0089】
全身投与は、経粘膜的又は経皮的手段によるものであってもよい。経粘膜又は経皮投与には、障壁に浸透するのに適した浸透剤が配合物中に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において概して既知であり、例えば、経粘膜投与のために胆汁塩及びフシジン酸誘導体を含む。加えて、浸透を容易にするために界面活性剤を使用してもよい。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーによるものであっても坐薬を使用するものであってもよい。局所投与のために、本発明の化合物は、当該技術分野において概して既知であるように、軟膏、塗擦剤、ゲル又はクリーム中に配合される。外傷又は炎症を治療して治癒を加速させるために、洗浄液を局所的に使用してよい。
【0090】
組成物は、必要に応じて、有効成分を含有する1種又は複数の単位剤形を収容し得るパック又はディスペンサー装置に入れて提示してよい。パックは、例えば、ブリスターパック等、金属又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサー装置には、投与の指示書が添付されている場合がある。
【0091】
POSHは、POSHポリペプチド又はPOSH−APポリペプチドのレベル及び/又は活性に影響を及ぼすことによって操作することができる広範な主要細胞機能と交わり、それらを制御する。POSH、特にヒトPOSHの多くの特徴は、PCT特許公報WO03/095971A2及びWO03/078601A2において記述されており、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
上記で参照した刊行物に記述されている通り、天然ヒトPOSHは、RINGドメイン及び4つのSH3ドメインを含有する大きなポリペプチドである。POSHはユビキチンリガーゼ(「E3」酵素とも称される)であり、RINGドメインは、例えばPOSHポリペプチド自体のユビキチン化を媒介する。POSHは、多数のタンパク質と相互作用し、多数の異なる生物学的過程に関係する。本開示において実証されているように、POSHは、細胞中の多数の異なるタンパク質に関連している。POSHは、トランスゴルジ網内に位置することが知られているタンパク質と共局在化し、POSHが分泌系におけるタンパク質の輸送に関係していることを暗示している。「分泌系」という用語は、膜区画及び関連タンパク質、並びに、翻訳部位から、液胞内の位置、分泌経路自体、リソソーム若しくはエンドソーム内の区画、又は原形質膜若しくは細胞外の位置への、タンパク質の移動に関与する他の分子を指すものとして理解すべきである。分泌系における区画の通例引用される例は、小胞体、ゴルジ体並びにシス及びトランスゴルジ網を含む。
【0093】
加えて、出願人らは、ホスホリパーゼD、HIV Gag、HIV Nef、Rapsyn及びSrcを含む多種多様なタンパク質の正常な分泌、局在化又は処理に、POSHが必要であることを実証した。これらのタンパク質の多くはミリストイル化されており、これは、ミリストイル化タンパク質の処理及び正常な局在化において、POSHが一般的役割を担っていることを示している。したがって、いくつかの態様において、POSHは、ミリストイル化タンパク質の処理及び正常な局在化において役割を担い得る。N−ミリストイル化は、ミリスチン酸塩、炭素数14の炭素飽和脂肪酸の、タンパク質のN−末端グリシンとの共有結合をもたらすアシル化過程である(Faraziら、J.Biol.Chem.、276、39501〜04(2001))。N−ミリストイル化は共翻訳的に発生し、弱く可逆的なタンパク質−膜相互作用を促進する。ミリストイル化タンパク質は、細胞質中及び膜と関連付けられている状態の両方で見られる。膜結合性はタンパク質の立体配置に依存する、すなわち、ミリストイル基の表面接触性は、リン酸化、ユビキチン化等のタンパク質修飾によって制御することができる。本出願におけるミリストイル化タンパク質の細胞内輸送の調節は、これらの修飾タンパク質の輸送及び局在化に対する効果を含む。
【0094】
「E1」はユビキチン活性化酵素である。好ましい実施形態において、E1は、ユビキチンをE2へ移行することができる。好ましい実施形態において、E1はユビキチンと高エネルギーチオールエステル結合を形成し、それによってユビキチンを「活性化する」。「E2」はユビキチン担体酵素(ユビキチン抱合酵素としても知られる)である。好ましい実施形態において、ユビキチンはE1からE2へ移行される。好ましい実施形態において、移行は、E2とユビキチンとの間に形成されるチオールエステル結合をもたらす。好ましい実施形態において、E2は、ユビキチンをPOSHポリペプチドへ移行することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、同定される本発明の作用物質は、ウイルス成熟に場合によって干渉する抗ウイルス剤であり、ここで、好ましくは、ウイルスはレトロイドウイルス、RNAウイルス及びエンベロープウイルスである。
【0096】
いくつかの好ましい実施形態において、抗ウイルス剤は、POSHのユビキチンリガーゼ(触媒)活性(例えば、POSH自己ユビキチン化又は標的タンパク質への移行)に干渉する。
【0097】
付加的ないくつかの好ましい実施形態において、抗ウイルス剤は、POSHとPOSH−AP(アダプター)ポリペプチドとの間の相互作用に干渉し、例えば、抗ウイルス剤は、POSHポリペプチドと、別のPOSHポリペプチド(POSH二量体の場合と同様に、2種の異なるPOSHポリペプチドのヘテロ二量体、ホモ多量体及びヘテロ多量体);GTPアーゼ(例えば、Rac、Rac1、Rho、Ras);E2酵素及びユビキチン、又は場合によって、カリン;クラスリン;AP−1;AP−2;HSP70;HSP90、Brca1、Bard1、Nef、PAK1、PAK2、PAKファミリー、Vav、Cdc42、PI3K(例えば、p85又はp110)、Nedd4、src(srcファミリー)、Gag、特にHIV Gag(例えば、p160)、Tsg101、VASP、RNB6、WASP、N−WASP及びSpred−2と同様のKIAA0674、並びに、いくつかの実施形態において、クラスリン被覆小胞に関連していることが知られているタンパク質、及び/又はタンパク質選別経路(protein sorting pathway)に関与するタンパク質等、POSH−APポリペプチドとの間の相互作用を妨害又は不可逆にすることができる。
【0098】
さらに付加的な実施形態において、本発明の作用物質は、POSHポリペプチドとRacタンパク質との間の相互作用を場合によって妨害する、Rac又はRas等のGTPアーゼのシグナル伝達に干渉する。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の作用物質は、POSHのユビキチンリガーゼ活性を調節し、これを使用して、ユビキチンリガーゼ活性に関連するいくつかの疾患を治療することができる。
【0100】
その他いくつかの実施形態において、本発明は、POSHポリペプチドのユビキチン関連活性を減少させる作用物質を、同定、最適化又は評価するためのアッセイを開示する。POSHポリペプチドのユビキチン関連活性は、概してE2酵素からPOSHポリペプチドへのユビキチンの移行を伴うPOSHポリペプチドの自己ユビキチン化活性と、概してPOSHポリペプチドから標的タンパク質へのユビキチンの移行を伴う標的タンパク質(例えば、HERPUD1)のユビキチン化とを含み得る。いくつかの実施形態において、POSH活性は、少なくとも部分的に、POSH RINGドメインによって媒介される。
【0101】
さらに他のいくつかの実施形態において、アッセイは、POSHポリペプチド、E2ポリペプチド及びユビキチン源(ユビキチンと予め複合体を形成したE2ポリペプチドであってよい)を含む混合物を形成することを含む。場合によって、混合物はE1ポリペプチドを含み、場合によって、混合物は、例えばHERPUD1等の標的ポリペプチドを含む。混合物の付加的な構成要素は、POSHポリペプチドのユビキチン化と一致する条件を提供するように選択してよい。POSH−ユビキチン抱合体、E2−ユビキチンチオエステル、遊離ユビキチン及び標的ポリペプチド−ユビキチン複合体等、多種多様なパラメータのうちの1つ又は複数を検出することができる。
【0102】
「検出する」という用語は、本明細書において、検出対象(例えば、POSH−ユビキチン、E2−ユビキチン等)の有無の判断、検出対象の量の定量的計測、又は、他のパラメータの検出に基づく、検出対象の有無若しくは量の数値計算を含むように使用される。「検出する」という用語は、検出対象が不在又は感度レベル未満であると判断される事態を含む。検出は、標識(例えば、蛍光標識、放射性同位元素標識及びその他後述のもの)の検出、サイズによる分解能及び同定(例えば、SDS−PAGE、質量分析)、精製及び検出、並びに、本明細書に照らして当業者に利用可能な他の方法を含み得る。例えば、放射性同位元素標識化は、シンチレーション計数、又は写真乳剤に対する暴露後の密度測定、又はホスフォイメージャー等の装置を使用することによって計測することができる。同様に、密度測定を使用して、酵素標識が使用される場合に不透明な生成物を生成する酵素標識基質との反応後、結合したユビキチンを計測することができる。好ましい実施形態において、アッセイは、POSH−ユビキチン抱合体を検出することを含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、アッセイは、POSHポリペプチド、標的ポリペプチド及びユビキチン源(ユビキチンと予め複合体を形成したPOSHポリペプチドであってよい)を含む混合物を形成することを含む。場合によって、混合物はE1及び/又はE2ポリペプチドを含み、場合によって、混合物はE2−ユビキチンチオエステルを含む。混合物の付加的な構成要素は、標的ポリペプチドのユビキチン化と一致する条件を提供するように選択してよい。POSH−ユビキチン抱合体及び標的ポリペプチド−ユビキチン抱合体等、多種多様なパラメータのうちの1つ又は複数を検出することができる。好ましい実施形態において、アッセイは、例えばユビキチン化HERPUD1を検出すること等、標的ポリペプチド−ユビキチン抱合体を検出することを含む。別の好ましい実施形態において、アッセイは、POSH−ユビキチン抱合体を検出することを含む。
【0104】
上述のアッセイは、POSHポリペプチドのユビキチン関連活性を調節する作用物質を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて使用することができる。スクリーニングアッセイは、概して、上記アッセイのうちの1つ、又はPOSHポリペプチドのユビキチン関連活性を評価するように設計されたその他任意のアッセイに、試験作用物質を添加することを伴う。スクリーニングアッセイにおいて検出されたパラメータ(複数可)を、適切な基準と比較することができる。適切な基準は、試験作用物質を省略し、前に、並行して又は後に行ったアッセイであってよい。適切な基準は、試験作用物質の不在下における先行計測の平均であってもよい。概して、スクリーニングアッセイ混合物の構成要素は、評価される全体の活性と一致する任意の順序で添加してよいが、いくつかの変形形態が好ましい場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、試験作用物質及びE3(例えば、POSHポリペプチド)をプレインキュベートした後、試験作用物質を除去し、他の構成要素を添加してアッセイを完了することが望ましい場合がある。このようにして、作用物質単独でのPOSHポリペプチドに対する効果を評価することができる。いくつかの好ましい実施形態において、抗ウイルス剤のスクリーニングアッセイでは、Lドメイン、好ましくはHIV Lドメインを含む標的ポリペプチドを用いる。
【0105】
いくつかの実施形態において、アッセイはハイスループットフォーマットで実施される。例えば、混合物の構成要素のうちの1つを固体基質に付着させてよく、他の構成要素のうちの1つ又は複数を標識化する。例えば、POSHポリペプチドを96ウェルプレート等の表面に付着させてよく、ユビキチンを溶液中に入れて標識化する。E2及びE1も溶液中に入れ、固体表面を洗浄して複合体を形成していない標識ユビキチンを除去し、結合したままのユビキチンを検出することにより、POSH−ユビキチン抱合体形成を計測することができる。他の変形形態を使用してもよい。例えば、溶液中のユビキチンの量を検出することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、ユビキチン複合体の形成は、FRET等の相互作用技術によって計測することができ、この技術においては、ユビキチンを第1の標識で標識化し、所望の複合体パートナー(例えば、POSHポリペプチド又は標的ポリペプチド)を第2の標識で標識化し、ここで、第1及び第2の標識は、両者が近接した際に相互作用して変性シグナルを生成する。FRETにおいて、第1及び第2の標識は蛍光色素分子である。FRETについては以下でさらに詳細に記述する。ポリユビキチン複合体の形成は、ポリユビキチンの形成時に相互作用する別個に標識化されたユビキチンの2つ以上のプールを混合することによって実施することができる(例えば、米国特許出願公開第2002/0042083号を参照)。ハイスループットスクリーニングは、同じく溶液中で、FRET等の相互作用アッセイを実施することによって実現できる。加えて、POSHポリペプチド又は標的ポリペプチド等、混合物中のポリペプチドが容易に精製可能である(例えば、特異抗体、又はビオチン、FLAG、ポリヒスチジン等のタグによって)場合、反応を溶液中で実施し、タグ付きポリペプチドを、そのタグ付きポリペプチドに関連するユビキチン等の任意のポリペプチドとともに、迅速に単離することができる。検出のためにSDS−PAGEによってタンパク質を分解することもできる。
【0107】
いくつかの実施形態において、ユビキチンは、直接又は間接的に標識化される。これは、一般に、連結したユビキチンの簡単且つ迅速な検出及び計測を可能にし、アッセイをハイスループットスクリーニング用途のために有用なものとしている。上述の通り、いくつかの実施形態では、1種又は複数のタグ付き又は標識タンパク質を用い得る。「タグ」は、タグ付きポリペプチドの迅速な単離を容易にする部分を含むことが意図されている。タグを使用して、ポリペプチドの、表面への結合を容易にすることができる。「標識」は、標識ポリペプチドの迅速な検出を容易にする部分を含むことが意図されている。いくつかの部分は、標識及びタグの両方として使用することができる(例えば、十分に特徴付けされた抗体によって容易に精製及び検出されるエピトープタグ)。ポリペプチドのビオチン化はよく知られており、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、カルボン酸のビオチン化のためのアミン反応剤及びチオール反応剤を含む多数のビオチン化剤が知られている(参照により本明細書に組み込まれる、Molecular Probes Catalog、Haugland、第6版、1996の第4章を参照)。ビオチン化基質は、アビジン又はストレプトアビジンを介してビオチン化された構成要素と結合することができる。同様に、多数のハプテン化試薬も既知である。
【0108】
代替的な実施形態において、POSHポリペプチド、E2又は標的ポリペプチドは、場合によってタグの援助により、ビーズと結合される。連結後、ビーズは結合していないユビキチンから分離され、結合したユビキチンを計測することができる。好ましい実施形態において、POSHポリペプチドはビーズと結合し、使用される組成物は標識ユビキチンを含む。この実施形態において、結合したユビキチンを持つビーズは、蛍光活性化細胞選別(FACS)マシンを使用して分離することができる。そのような使用のための方法は、米国特許出願第09/047,119号において記述されており、該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。その後、結合したユビキチンの量を計測することができる。
【0109】
スクリーニングアッセイにおいて、試験作用物質の効果は、例えば、反応の動態、定常状態及び/又は終点における試験作用物質の効果を評価することにより、評価できる。
【0110】
本明細書において提供される種々のアッセイ混合物の構成要素は、種々の量で組み合わせてよい。好ましい実施形態において、ユビキチン(又はE2複合体形成ユビキチン)は、反応溶液100マイクロリットル当たり5〜200ngの最終濃度で使用される。場合によって、E1は、反応溶液100マイクロリットル当たり1〜50ngの最終濃度で使用される。場合によって、E2は、反応溶液100マイクロリットル当たり10〜100ng、より好ましくは、反応溶液100マイクロリットル当たり10〜50ngの最終濃度で使用される。好ましい実施形態において、POSHポリペプチドは、反応溶液100マイクロリットル当たり1ng〜500ngの最終濃度で使用される。
【0111】
概して、アッセイ混合物は、ユビキチンリガーゼ活性及び/又はユビキチン化活性を支持するように調製される。概して、これは、50〜200mMの塩(例えば、NaCl、KCl)、5乃至9、好ましくは6乃至8のpH等、生理的条件となる。そのような条件は、試行錯誤によって最適化することができる。インキュベーションは、最適活性を容易にする任意の温度、一般に4乃至40℃で実施することができる。インキュベーション期間は、最適活性のために選択されるが、ハイスループットスクリーニングを容易にするために最適化することもできる。一般に、0.5乃至1.5時間で十分であろう。
【0112】
多種多様な他の試薬を組成物中に含んでよい。これらは、最適ユビキチン化酵素活性を容易にし、且つ/又は非特異的若しくはバックグラウンド相互作用を低減するために使用することができる、塩、溶媒、緩衝液、中性タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤等のような試薬を含む。
【0113】
プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤等、アッセイの効率を別の手法で向上させる試薬を使用してもよい。組成物は、好ましくは、アデノシン三リン酸(ATP)も含む。
【0114】
構成要素の混合物は、ユビキチンリガーゼ活性を促進する、又は候補調節物質の効果の同定を最適化する任意の順序で添加してよい。好ましい実施形態において、ユビキチンが反応緩衝液中に提供された後、ユビキチン化酵素を添加する。代替的な好ましい実施形態において、ユビキチンが反応緩衝液中に提供され、その後、候補調節物質を添加した後、ユビキチン化酵素活性を添加する。
【0115】
概して、POSHユビキチン関連活性を減少させる試験作用物質を使用して、POSH機能をインビボで阻害することができる。試験作用物質は、例えばエステル等の疎水性部分の添加により、インビボでの使用のために修飾してよい。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態は、POSHポリペプチド若しくはHERPUD1等のPOSH−AP、又は場合によって、SH3若しくはRINGドメイン等のPOSHの特定のドメインと結合する作用物質を同定するためのアッセイに関する。好ましい実施形態において、POSHポリペプチドは、hPOSHの第4のSH3ドメイン(記述されている通り、配列番号30)を含むポリペプチドである。この目的のために、標識インビトロタンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合の免疫測定等を含む幅広い種類のアッセイを使用することができる。精製タンパク質は、分子間相互作用及び試験作用物質の設計をモデル化するために使用され得る、三次元結晶構造の測定のために使用してもよい。一実施形態において、アッセイは、1個又は複数の対象POSHポリペプチドの、POSH−APとの相互作用を阻害する作用物質を検出する。別の実施形態において、アッセイは、酵素活性、他の細胞構成要素との結合、細胞区画化等、POSHポリペプチド又はPOSH複合体の内因性生物活性を調節する作用物質を検出する。
【0117】
一態様において、本発明は、POSHポリペプチド又はHERPUD1等のPOSH−APの機能に干渉する組成物の同定のための方法及び組成物を提供する。ウイルス生成におけるPOSHポリペプチドの役割を考慮すると、POSHポリペプチドと、POSH−AP、特にウイルスタンパク質を含むPOSH複合体等、相互作用するタンパク質との間のタンパク質−タンパク質相互作用の形成又は安定性を混乱させる組成物は、ウイルス感染の治療のための候補医薬品である。
【0118】
機序に拘束されることは望まないが、POSHポリペプチドは、ビリオンの放出及び他の生物学的過程において重要なタンパク質複合体の会合を促進すると仮定される。本発明の複合体は、POSHポリペプチドと、下記POSH−APのうちの1種又は複数との組合せを含み得る:POSH−AP;POSHポリペプチド(POSH二量体の場合と同様に、2種の異なるPOSHのヘテロ二量体、ホモ多量体及びヘテロ多量体);Vpu;Cbl−b;PKA;UNC84;MSTP028;HERPUD1;GOCAP1;PTPN12;EIF3S3;SAR1;GOSR2;RALA;SIAH;SMIN1;SMN2;SYNE1;TTC3;VCY2IP1;SAM68;gag−pol;GTPアーゼ;E2酵素;ユビキチン、又は場合によって、カリン;クラスリン;AP−1;AP−2;HSP70;HSP90、Brca1、Bard1、Nef、PAK1、PAK2、PAKファミリー、Vav、Cdc42、PI3K(例えば、p85又はp110)、Nedd4、src(srcファミリー)、Tsg101、VASP、RNB6、WASP、N−WASP、Gag、特にHIV Gag(例えば、p160);及びSpred−2と同様のKIAA0674、並びに、いくつかの実施形態において、クラスリン被覆小胞に関連していることが知られているタンパク質、及び/又はタンパク質選別経路に関与するタンパク質。
【0119】
POSHポリペプチドによって形成される複合体の種類は、タンパク質中に存在するドメインに依存することになる。限定を意図するものではないが、潜在的な相互作用タンパク質の例示的なドメインを以下に提供する。RINGドメインは、カリン、E2酵素、AP−1、AP−2及び/又はユビキチン化のための基質(例えば、一部の事例では、HIV p160等、Gag Lドメイン又はGag−Pol等のGagポリペプチドを含むタンパク質)と相互作用することが期待される。SH3ドメインは、Gag Lドメイン及びWO03/095971において開示されている通りの配列モチーフを有する他のタンパク質と相互作用することができ、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
抗ウイルス剤のための好ましいアッセイにおいて、試験作用物質は、POSHポリペプチドと、Racポリペプチド、特にRac1等のヒトRacポリペプチドとの複合体の形成を妨害又は阻害するためのその能力について評価される。
【0121】
多種多様なアッセイフォーマットが十分なものとなるが、当業者であれば、本開示を踏まえて、本明細書には明示的に記述されていないものも理解するであろう。タンパク質複合体の形成、酵素活性、及びさらにはPOSHポリペプチド介在性膜再組織化若しくは小胞形成活性等の条件に近似するアッセイフォーマットは、多くの異なる形態で生み出すことができ、無細胞系、例えば精製タンパク質又は細胞溶解物に基づくアッセイ、並びに完全な細胞を利用する細胞ベースのアッセイを含む。単純な結合アッセイを使用して、POSHと結合する作用物質を検出することもできる。そのような結合アッセイは、POSHポリペプチドとPOSH相互作用タンパク質との間の相互作用、又はPOSHポリペプチド若しくは複合体の基質との結合を妨害することによって作用する作用物質を同定することもできる。試験される作用物質は、例えば、細菌、酵母菌又は他の有機体によって生成(例えば、天然物)、化学的に生成(例えば、ペプチド模倣薬を含む小分子)又は組み換えによって生成することができる。好ましい実施形態において、試験作用物質は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する、例えばペプチド又はオリゴヌクレオチド以外の有機小分子である。
【0122】
化合物及び天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、一定期間中に調査される化合物の数を最大化するために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製若しくは半精製タンパク質又は溶解物によって開発し得るもの等、無細胞系中で実施される本発明のアッセイは、多くの場合、試験化合物によって媒介される分子標的中における変性の迅速な発展及び比較的簡単な検出を可能にするために作成することができる「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性及び/又はバイオアベイラビリティの効果は、インビトロ系においては概して無視することができ、アッセイは、代わりに、他のタンパク質との結合親和性の変性又は分子標的の酵素的性質の変化において明らかになり得るような、分子標的に対する薬物の効果に主として焦点を合わせている。
【0123】
本アッセイの好ましい実施形態において、再構築POSH複合体は、少なくとも半精製されたタンパク質の再構築混合物を含む。半精製とは、再構築混合物中で利用されるタンパク質が、他の細胞タンパク質又はウイルスタンパク質から予め分離されていることを意味する。例えば、細胞溶解物とは対照的に、POSH複合体形成に関与するタンパク質は、混合物中のその他すべてのタンパク質に対して少なくとも50%の純度まで混合物中に存在し、より好ましくは、90〜95%の純度で存在する。主題の方法のいくつかの実施形態において、再構築タンパク質混合物は、再構築混合物が実質的に他のタンパク質を欠いているような高度に精製されたタンパク質(細胞又はウイルス起源のもの等)を混合することによって導出され、これが、POSH複合体会合及び/又は分解を計測するための能力に干渉又はそれを変性させる。
【0124】
候補阻害剤の存在下及び不在下におけるPOSH複合体のアッセイは、反応物質を収容するのに適した任意の容器中で遂行することができる。例として、マイクロタイタープレート、試験管及びマイクロ遠心管がある。
【0125】
本発明の一実施形態において、POSH複合体の会合又は安定性に干渉するその能力に基づいて、阻害剤を検出する薬物スクリーニングアッセイを作成することができる。例示的な結合アッセイにおいて、対象とする化合物を、POSHポリペプチド及び少なくとも1種の相互作用ポリペプチドを含む混合物と接触させる。POSH複合体の検出及び定量化は、2種のポリペプチド間の相互作用を阻害する際の化合物の効能を測定するための手段を提供する。化合物の効能は、種々の濃度の試験化合物を使用して得られたデータから用量反応曲線を作成することによって評価できる。さらに、比較のためのベースラインを提供するために、対照アッセイを実施してもよい。対照アッセイにおいては、試験化合物の不在下で複合体の形成を定量化する。
【0126】
POSHポリペプチドと基質ポリペプチドとの間における複合体形成は、多種多様な技術によって検出することができ、事実上、その多くについて上述した。例えば、複合体の形成の調節は、検出可能に標識化されたタンパク質(例えば、放射性標識、蛍光標識又は酵素標識されたもの)を使用して、免疫測定又はクロマトグラフ検出によって定量化することができる。Biacore International AB(Uppsala、Sweden)から入手可能なもの等の表面プラズモン共鳴システムを使用して、タンパク質−タンパク質相互作用を検出することもできる。
【0127】
多くの場合、複合体を形成していない形態の1個のタンパク質からの複合体の分離を容易にするために、ポリペプチドのうちの1個を固定化すること、並びにアッセイの自動化を適応させることが望ましいであろう。例示的な実施形態において、タンパク質が不溶性マトリックスと結合することを可能にするドメインを添加する、融合タンパク質を提供することができる。例えば、GST−POSH融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、St.Louis、MO)又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着することができ、その後、これを、潜在的な相互作用タンパク質、例えば35S−標識ポリペプチド及び試験化合物と組み合わせ、複合体形成を促す条件下でインキュベートする。インキュベーションに続いて、ビーズを洗浄して結合していない相互作用タンパク質をすべて除去し、マトリックスビーズ結合した放射性標識を直接(例えば、シンチラント(scintillant)中にビーズを入れて)、又は複合体が解離した後、例えばマイクロタイタープレートを使用する場合は、上清中で測定する。代替として、結合していないタンパク質を洗い流した後、複合体をマトリックスから解離し、SDS−PAGEゲルによって分離し、標準的な電気泳動技術を使用して、マトリックス結合した画分中に見られる相互作用ポリペプチドのレベルをゲルから定量化することができる。
【0128】
別の実施形態において、POSHポリペプチド及び潜在的な相互作用ポリペプチドを使用して、タンパク質の互いの結合を妨害する作用物質をその後に検出するための相互作用捕捉アッセイを生み出すことができる(米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993)、Cell、72、223〜232;Maduraら(1993)、J Biol Chem、268、12046〜12054;Bartelら(1993)、Biotechniques、14、920〜924;及びIwabuchiら(1993)、Oncogene、8、1693〜1696も参照)。
【0129】
本アッセイのまたさらなる実施形態において、POSH複合体は、対象アッセイを支援するための細胞培養技術を活用して、全細胞中に生み出される。例えば、後述のように、POSH複合体は、哺乳動物及び酵母細胞を含む真核細胞培養系中で構築することができる。多くの場合、そのような細胞中において、対象のPOSHポリペプチドとともに1個又は複数のウイルスタンパク質(例えば、Gag又はEnv)を発現することが望ましいであろう。細胞を対象とするウイルスに感染させることが望ましい場合もある。完全な細胞中で対象アッセイを生み出すことの利点には、細胞内に侵入する作用物質の能力を含む、阻害剤の治療的使用が必要とし得る環境とより密接に近似した環境において機能的な阻害剤を検出する能力を含む。さらに、以下に挙げる例等、アッセイのインビボ実施形態のいくつかは、候補作用物質のハイスループット分析に適している。
【0130】
POSH複合体の構成要素は、アッセイを支援するために選択される細胞に内在し得る。代替として、構成要素の一部又はすべては、外部源に由来するものであってよい。例えば、組み換え技術(発現ベクターの使用によるもの等)、並びに融合タンパク質自体を微量注入すること又は融合タンパク質をmRNAコードすることによって、融合タンパク質を細胞内に導入してよい。
【0131】
多くの実施形態において、細胞は、インキュベーション後に候補作用物質によって操作され、POSH活性についてアッセイされる。いくつかの実施形態において、POSH活性は、ウイルス様粒子の生成によって表される。本明細書において実証されている通り、POSH活性を妨害する作用物質は、ウイルス様粒子の生成の減少を引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、POSH活性は、複合体形成、ユビキチン化及び膜融合イベント(例えば、ウイルス出芽の放出又は小胞の融合)を含むがこれらに限定されない。POSH複合体形成は、共免疫沈降タンパク質の免疫沈降及び分析又は共精製タンパク質の親和性精製及び分析によって評価することができる。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)ベースのアッセイを使用して、複合体形成を測定することもできる。互いに近接する正常な発光及び励起スペクトルを有する蛍光分子は、FRETを呈し得る。蛍光分子は、一方の分子(ドナー分子)の発光スペクトルが、他方の分子(アクセプタ分子)の励起スペクトルと重複するように選定される。ドナー分子は、ドナーの励起スペクトル内の適切な強度の光によって励起される。その後、ドナーは、吸収エネルギーを蛍光として放射する。それが生成する蛍光エネルギーを、アクセプタ分子によってクエンチする。FRETは、ドナーからの蛍光シグナルの強度の低減、その励起状態の寿命の低減及び/又はより長い波長(より低いエネルギー)特性のアクセプタにおける蛍光の再発光として現れる場合がある。蛍光タンパク質が物理的に分離すると、FRET効果は漸減又は排除される(米国特許第5,981,200号)。
【0132】
例えば、シアン蛍光タンパク質(CFP)は、約425〜450nm波長の光によって励起され、450〜500nmの範囲の光を放射する。黄色蛍光タンパク質(YFP)は、約500〜525nmの光によって励起され、525〜500nmで光を放射する。これらの2種のタンパク質を溶液中に入れると、シアン及び黄色蛍光を別個に視覚化することができる。しかしながら、これらの2種のタンパク質を互いに近接させると、蛍光特性はFRETによって変性される。CFPによって放射された青みを帯びた光は、YFPによって吸収され、黄色光として再放射される。これは、タンパク質が波長450nmの光によって刺激されると、シアン放射光が大幅に低減し、通常この波長では刺激されない黄色光が大幅に増大することを意味する。FRETは、一般に、ドナーの励起範囲内の光による刺激に対応する放射光のスペクトルを計測し、ドナー放射光とアクセプタ放射光との比率を計算することによって、監視される。ドナー:アクセプタ発光比率が高い場合、FRETは発生しておらず、2種の蛍光タンパク質は近接していない。ドナー:アクセプタ発光比率が低い場合、FRETが発生しており、2種の蛍光タンパク質は近接している。このようにして、第1及び第2のポリペプチドの間の相互作用を計測することができる。
【0133】
FRETの発生は、ドナー蛍光部分の蛍光寿命減少も引き起こす。この蛍光寿命の変化は、蛍光寿命イメージング技術(FLIM)と称される技術を使用して計測することができる(Verveerら(2000)、Science、290、1567〜1570;Squireら(1999)、J.Microsc.、193、36;Verveerら(2000)、Biophys.J.、78、2127)。FLIMデータを分析するためのグローバル分析技術が開発されている。これらのアルゴリズムは、ドナー蛍光部分が、それぞれ異なる蛍光寿命を持つ限定数の状態でのみ存在するという理解を使用する。各状態の定量マップを、ピクセル単位で生み出すことができる。
【0134】
FRETベースのアッセイを実施するために、POSHポリペプチド及び対象とする相互作用タンパク質をいずれも蛍光標識化する。適切な蛍光標識は、本明細書に照らして、当該技術分野において既知である。以下に例を提供するが、具体的に論じられていない適切な蛍光標識も当業者には利用可能である。蛍光標識化は、蛍光タンパク質、例えば、クラゲ、サンゴ及び他の腔腸動物から単離された蛍光タンパク質との融合タンパク質としてポリペプチドを発現させることによって遂行できる。例示的な蛍光タンパク質は、オワンクラゲ(Aequoria victoria)の緑色蛍光タンパク質(GFP)の多くの変異体を含む。変異体は、より明るくてもより薄暗くてもよく、又は異なる励起及び/若しくは発光スペクトルを有してもよい。いくつかの変異体は、もはや緑色には見えないように変性され、青色、シアン、黄色又は赤色に見える場合がある(それぞれ、BFP、CFP、YFP及びRFPと称される)。蛍光タンパク質は、例えば、ペプチド結合(例えば、融合タンパク質として発現)、化学的架橋及びビオチン−ストレプトアビジンカップリングを含む多種多様な共有及び非共有結合を介して、ポリペプチドと安定に結合することができる。蛍光タンパク質の例については、米国特許第5,625,048号;第5,777,079号;第6,066,476号;第6,124,128号;Prasherら(1992)、Gene、111、229〜233;Heimら(1994)、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、91、12501〜04;Wardら(1982)、Photochem.Photobiol.、35、803〜808;Levineら(1982)、Comp.Biochem.Physiol.、72B、77〜85;Tersikhら(2000)、Science、290、1585〜88を参照されたい。
【0135】
当該技術分野において既知である他の例示的な蛍光部分は、フルオレセイン、ベンゾオキサジアゾール、クマリン、エオシン、ルシファーイエロー、ピリジルオキサゾール及びローダミンの誘導体を含む。これら及び他多くの例示的な蛍光部分は、そのような部分によってポリペプチドを修飾するための方法論とともに、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(2000、Molecular Probes,Inc.)において見ることができる。蛍光部分と組み合わせた際に蛍光を発する例示的なタンパク質は、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)由来の黄色蛍光タンパク質(Baldwinら(1990)、Biochemistry、29、5509〜15)、渦鞭毛藻シンビオジニウム種(Symbiodinium sp.)由来のペリジニン−クロロフィルa結合タンパク質(Morrisら(1994)、Plant Molecular Biology、24、673、77)、並びにシネココッカス(Synechococcus)等の海洋シアノバクテリア由来のフィコビリンタンパク質、例えばフィコエリスリン及びフィコシアニン(Wilbanksら(1993)、J.Biol.Chem.、268、1226〜35)を含む。これらのタンパク質は、蛍光補助因子として、それぞれフラビン、ペリジニン−クロロフィルa及び種々のフィコビリンを必要とする。
【0136】
FRETベースのアッセイは、細胞ベースのアッセイ及び無細胞アッセイにおいて使用することができる。FRETベースのアッセイは、蛍光活性化細胞選別及びマイクロタイターアレイの蛍光スキャニングを含むハイスループットスクリーニング法に適している。
【0137】
概して、スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合(タンパク質−タンパク質結合、作用物質−タンパク質結合等であるか否かを問わず)、分子のうちの1個又は複数は標識に連結することができ、ここで、標識は、直接的又は間接的に検出可能なシグナルを提供することができる。種々の標識は、放射性同位元素、蛍光体(fluorescer)、化学発光体(chemiluminescer)、酵素、特異的結合分子、粒子、例えば磁性粒子等を含む。特異的結合分子は、ビオチン及びストレプトアビジン、ジゴキシン及び抗ジゴキシン等の対を含む。特異的結合メンバーに関して、相補的メンバーは、通常、既知の手順に従って、検出を提供する分子によって標識化することができる。
【0138】
さらなる実施形態において、本発明は、治療的介入の標的を同定するための方法を提供する。POSHと相互作用する、又はPOSH介在性過程(ウイルス成熟等)に関係するポリペプチドを使用して、候補治療薬を同定することができる。そのような標的は、例えば、抗POSH抗体による免疫沈降、ハイスループット結合データのインシリコ分析、ツーハイブリッドスクリーニング、及び本明細書に記述されている又は本開示に照らして当該技術分野において既知である他のタンパク質−タンパク質相互作用アッセイにより、POSH(POSH−AP)と関連するタンパク質を同定することによって同定できる。そのような標的と結合する、又はそのタンパク質−タンパク質相互作用を妨害する、又はその生化学的活性を阻害する作用物質を、そのようなアッセイにおいて使用してよい。
【0139】
特に、酵母ツーハイブリッドスクリーニングは、ハイブリッドタンパク質を発現するキメラ遺伝子を利用する。例証するために、第1のハイブリッド遺伝子は、「ベイト」タンパク質、例えば、潜在的な相互作用タンパク質と結合するのに十分な長さのPOSHポリペプチドを表すコード配列とインフレームで融合することができる転写活性化因子のDNA結合ドメインのコード配列を含む。第2のハイブリッドタンパク質は、「フィッシュ」タンパク質、例えば、ベイト融合タンパク質のPOSHポリペプチド部分と相互作用するのに十分な長さの潜在的な相互作用タンパク質をコードする遺伝子とインフレームで融合した転写活性化ドメインをコードする。ベイト及びフィッシュタンパク質が相互作用し得る場合、例えば、POSH複合体を形成することができる場合、これらのタンパク質は、転写活性化因子の2つのドメインに近接する。この近接は、レポーター遺伝子の転写を引き起こし、これが転写活性化因子に反応する転写制御部位に動作可能に結合しており、レポーター遺伝子の発現を検出し、これを使用してベイト及びフィッシュタンパク質の相互作用を評点することができる。
【0140】
そのようなアプローチによって同定された標的は、HERPUD1を含む。そのようなアプローチによって同定することができる他の標的は、Vpu;Cbl−b;PKA;UNC84;MSTP028;GOCAP1;PTPN12;EIF3S3;SAR1;GOSR2;RALA;SIAH;SMIN1;SMN2;SYNE1;TTC3;VCY2IP1;SAM68;Gag−Pol;GTPアーゼ(例えば、Rac、Rac1、Rho、Ras);E2酵素、カリン;クラスリン;AP−1;AP−2;HSP70;HSP90、Brca1、Bard1、Nef、PAK1、PAK2、PAKファミリー、Vav、Cdc42、PI3K(例えば、p85又はp110)、Nedd4、src(srcファミリー)、Tsg101、VASP、RNB6、WASP、N−WASP、Gag、特にHIV Gag(例えば、p160);及びSpred−2と同様のKIAA0674、並びに、いくつかの実施形態において、クラスリン被覆小胞に関連していることが知られているタンパク質、タンパク質選別経路に関与するタンパク質及びRacシグナル伝達経路に関与するタンパク質を含む。
【0141】
多種多様な他の試薬をスクリーニングアッセイに含んでよい。これらは、最適タンパク質−タンパク質結合を容易にし、且つ/又は非特異的若しくはバックグラウンド相互作用を低減するために使用される、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤等のような試薬を含む。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤等、アッセイの効率を向上させる試薬を使用してよい。構成要素の混合物は、必須結合を提供する任意の順序で添加される。インキュベーションは、任意の適切な温度、一般に4°〜40℃で実施される。インキュベーション期間は、最適活性のために選択されるが、迅速なハイスループットスクリーニングを容易にするために最適化することもできる。
【0142】
いくつかの実施形態において、試験作用物質を、POSHポリペプチドの局在化を混乱させるその能力、例えば、核及び/又はゴルジ網へのPOSH局在化を防止することについて評価することができる。
【0143】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2004年4月5日に出願された出願人の先願PCT/US2004/10582において、POSHタンパク質とHERPUD1タンパク質との間の新規関連性の発見、並びに関連の方法及び組成物が記述された。該出願において、いくつかの病状間における、POSH核酸とタンパク質、及びHERPUD1核酸とタンパク質の新規関連性も開示された。
【0144】
POSH、特にヒトPOSHと関連するタンパク質を同定することにより、本出願は、POSH−AP並びにPOSH−APに関連する細胞過程及び障害とPOSH自体との間の概念的結合を提供する。したがって、本開示のいくつかの実施形態において、HERPUD1等のPOSH−APを調節する作用物質は、現在、POSH機能及び神経学的障害等のPOSH機能に関連する障害を調節するために使用することができる。同様に、本開示のいくつかの実施形態において、POSHを調節する作用物質は、現在、HERPUD1等のPOSH−AP、HERPUD1関連神経学的障害を含むHERPUD1機能に関連する障害等、POSH−AP機能に関連する機能及び障害を調節するために使用することができる。加えて、試験作用物質を、HERPUD1に対する効果についてスクリーニングし、その後、POSH−AP機能又はPOSH−AP機能に関連する障害に対する効果についてさらに試験することができる。上記のPCT出願において、POSHポリペプチドは1種又は複数のHERPUD1ポリペプチドと相互作用することが開示された。
【0145】
「アミロイドポリペプチド」という用語は、アミロイド斑の有意な構成要素である種々のポリペプチド並びにその前駆体のいずれかを指すのに使用される。アミロイドベータA4前駆体タンパク質(「APP」)は、アルツハイマー病、ダウン症(高齢患者におけるもの)及びいくつかの遺伝性脳出血アミロイドーシスに関連するアミロイド斑の主要構成要素を形成する約40個のアミノ酸ベータアミロイドタンパク質等のより小さいタンパク質を生じさせる。APPは、19個のエクソン遺伝子:エクソン1〜13、13a及び14〜18の選択的スプライシングによって生み出されるいくつかのアイソフォームを有する(Yoshikaiら、1990)。優勢な転写産物は、APP695(エクソン1〜6、9〜18、13aを除く)、APP751(エクソン1〜7、9〜18、13aを除く)及びAPP770(エクソン1〜18、13aを除く)である。これらはすべて、単一の膜貫通ドメインを持つ多ドメインタンパク質をコードする。それらは、APP751及びAPP770が、セリンプロテアーゼ阻害剤ドメインをコードするエクソン7を含有する点で異なる。APP695は神経組織中の優勢な形態であり、一方、APP751は別の場所において優勢な変異体である。ベータアミロイドは、エクソン16及び17の一部によってコードされるタンパク質の部分に由来する。APPのアイソフォーム及びそれに由来するより小さいタンパク質のすべて、並びに、その種々の自然発生的な変形形態のいずれか、及び自然発生タンパク質の1つ若しくは複数の機能的特性を保持するか、又はAPP若しくはそれに由来するタンパク質の生成を監視するためのプロキシとして有用である任意の人工的に生成された変異体は、「アミロイドポリペプチド」という用語に含まれる。APPであるか又はそれに由来するアミロイドポリペプチドのサブセットを、特に「APPアミロイドポリペプチド」と称する場合がある。Yoshikaiら、Gene、87、257〜263、1990。
【0146】
「POSH関連タンパク質」又は「POSH−AP」は、POSHポリペプチドに干渉し、且つ/又はそれと結合することができるタンパク質を指す。概して、POSH−APは、POSHポリペプチドと直接的又は間接的に相互作用することができる。本出願の好ましいPOSH−APは、HERPUD1である。HERPUD1ポリペプチドの例は、至るところで提供されている。
【0147】
記述されているように、POSHポリペプチドは、POSH−AP HERPUD1「ホモシステイン誘導性、小胞体ストレス誘導性、ユビキチン様ドメインメンバー1」タンパク質と相互作用する。この相互作用は、本明細書において以下に記述する通り、出願人らによって、酵母ツーハイブリッドアッセイで同定された。HERPUD1はHerp又はHERPと同意語であり、これらの用語は本明細書において同義で使用される。HERPUD1は、HIV等のエンベロープウイルスの成熟に関与する。
【0148】
いくつかのHERPUD1ポリペプチドは、特に、高レベルのホモシステインに暴露されている細胞を含む血管内皮細胞におけるJNK介在性アポトーシスに関与する。いくつかのHERPUD1ポリペプチドは、小胞体ストレス応答、つまり小胞体中の変性タンパク質の存在に対する細胞応答に関与する。いくつかのHERPUD1ポリペプチドは、ステロール生合成の制御に関与する。したがって、いくつかのPOSHポリペプチドは、小胞体ストレス応答及びステロール生合成に関与する。
【0149】
他の態様において、いくつかのHERPUD1ポリペプチドは、プレセニリン介在性アミロイドベータタンパク質産生を増強する。例えば、HERPUD1ポリペプチドは、細胞中で過剰発現すると、アミロイドベータ産生のレベルを増大させ、HERPUD1ポリペプチドが、プレセニリンタンパク質、プレセニリン−1(PS−1)及びプレセニリン−2(PS−2)と相互作用することが観察された(Sai,X.ら(2002)、J.Biol.Chem.、277、12915〜12920を参照)。したがって、いくつかの態様において、POSHポリペプチドは、アミロイドベータ産生のレベルを調節することができる。加えて、POSHポリペプチドは、プレセニリン1及びプレセニリン2と相互作用することができる。したがって、いくつかのPOSHポリペプチドは、プレセニリン介在性アミロイドベータ産生を調節すると考えられている。アミロイドベータの蓄積は、アルツハイマー病の1つの特質である。したがって、これらのPOSHポリペプチドは、アルツハイマー病の病因に関与し得る。トランスゴルジ網を含む後期細胞内区画部位(late intracellular compartment site)等の部位において、いくつかの変異プレセニリン−2ポリペプチドは、42位で終端するアミロイドベータペプチド(Aβ42)の生成を上方制御する(Iwata,H.ら(2001)、J.Biol.Chem.、276、21678〜21685を参照)。したがって、POSHポリペプチドは、トランスゴルジ網を含む後期細胞内区画部位において、変異プレセニリン−2によってAβ42の生成を制御することができる。さらに、ホモシステインレベルの上昇は、アルツハイマー病及び脳血管疾患に関連する危険因子であることがわかっている。血漿ホモシステインレベルの上昇等のいくつかの危険因子は、いくつかの中枢神経系(CNS)障害の重症度を加速又は増大させ得る。血漿ホモシステインのレベルの上昇は、統合失調症に罹患している若い男性患者において見られ、このことは、ホモシステインレベルの上昇が統合失調症の態様の病態生理学に関連し得ることを示唆していた(Levine,J.ら(2002)、Am.J.Psychiatry、159、1790〜2)。疫学的及び実験的研究は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病及び脳卒中を含む神経変性状態とホモシステインレベルの増大を関連付けた(Mattson,MP及びShea,TB(2003)、Trends Neurosci、26、137〜46に掲載)。
【0150】
したがって、いくつかのPOSHポリペプチドは、神経学的障害に関与する。神経学的障害は、血漿ホモシステインのレベルの増大、アミロイドベータ生成のレベルの増大又は異常なプレセニリン活性に関連する障害を含む。神経学的障害は、アルツハイマー病、脳血管疾患及び統合失調症等のCNS障害を含む。
【0151】
いくつかのPOSHポリペプチドは、血栓塞栓性血管疾患、特に高ホモシステイン血症に関連する疾患特性等の循環器疾患に関与し得る。例えば、Kokameら、2000、J.Biol.Chem.、275、32846〜53;Zhangら、2001、Biochem Biophys Res Commun、289、718〜24を参照されたい。
【0152】
本明細書に記述されているように、POSH及びHERPUD1は、ウイルス粒子中におけるタンパク質の生成、翻訳後プロセシング、会合及び/又は放出を含むウイルス成熟に関与している。したがって、ウイルス感染は、HERPUD1又はPOSHの活性を阻害すること(例えば、ユビキチンリガーゼ活性の阻害)によって寛解することができる。好ましい実施形態において、ウイルスは、HIV、エボラ、HBV、HCV、HTLV、西ナイルウイルス(WNV)又はモロニーマウス白血病ウイルス(MMuLV)を含む、レトロイドウイルス、RNAウイルス又はエンベロープウイルスである。付加的なウイルス種については、以下でさらに詳細に記述する。いくつかの事例において、POSH機能の減少は、ウイルス粒子の放出においてPOSHを用いるウイルスに感染した細胞にとって致命的である。
【0153】
いくつかの態様において、本出願は、Rac、小型GTPアーゼ並びにPOSH関連キナーゼMLK、MKK及びJNKとのhPOSH相互作用について記述している。Rho、Rac及びCdc42は、一緒になって、アクチン細胞骨格の組織化及びMLK−MKK−JNK MAPキナーゼ経路を制御するために動作する(本明細書においては、「JNK経路」又は「Rac−JNK経路」と称される)(Xuら、2003、EMBO J.、2、252〜61)。マウスPOSH(「mPOSH」)の異所性発現は、JNK経路を活性化し、NF−κBの核局在化を引き起こす。線維芽細胞中におけるmPOSHの過剰発現は、アポトーシスを刺激する(Taponら(1998)、EMBO J.、17、1395〜404)。ショウジョウバエにおいて、POSHは、別のGTPアーゼ、Rasと相互作用するか、又はそのシグナル伝達に影響を与えることができる(Schnorrら(2001)、Genetics、159、609〜22)。JNK経路及びNF−κBは、例えば、免疫応答、炎症、細胞増殖及びアポトーシスに関与する多種多様な鍵遺伝子を制御する。例えば、NF−κBは、インターロイキン1、インターロイキン8、腫瘍壊死因子及び多くの細胞接着分子の生成を制御する。NF−κBは、細胞中におけるプロアポトーシス及び抗アポトーシスの役割の両方を有する(例えば、それぞれFAS誘発性細胞死及びTNF−アルファシグナル伝達において)。NF−κBは、阻害タンパク質IκBα及びIκBβ(「IκB」と総称される)により、部分的に負に制御される。IκBのリン酸化は、NF−κBの活性化及び核局在化を可能にする。IκBのリン酸化は、ユビキチン系によるその分解の誘因となる。
【0154】
付加的な実施形態において、POSHポリペプチドは、NF−κBの核局在化を促進する。POSHを下方制御することにより、いくつかの細胞中でアポトーシスを漸減することができ、これは、心筋梗塞、脳卒中、筋肉及び神経の変性疾患(特にアルツハイマー病)等の過剰な細胞死を特徴とする状態においても、移植前の臓器保存のためにも、概して望ましいであろう。
【0155】
さらなる実施形態において、POSHポリペプチドは、クラスリン又はコートマー含有複合体等の小胞輸送複合体、特に、核及び/又はゴルジ体に局在化する輸送複合体に関連する。
【0156】
いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO03/095971A2及びWO03/078601A2において記述されているように、POSHポリペプチドは、ユビキチン化系中においてE3酵素として機能する。したがって、POSHユビキチンリガーゼ活性の下方制御又は上方制御を使用して、タンパク質ユビキチン化によって影響される生物学的過程を操作することができる。POSHユビキチンリガーゼ活性の調節を使用して、POSH及び関連の生物学的過程に影響を及ぼすことができ、同様に、POSHの調節を使用して、POSHユビキチンリガーゼ活性及び関連過程に影響を及ぼすこともできる。下方制御又は上方制御は、転写、翻訳又は翻訳後制御を含む、POSH形成及び制御の任意の段階において実現することができる。例えば、POSH転写レベルは、POSH遺伝子配列を標的とするRNAiによって減少させることができる。別の例として、POSHユビキチンリガーゼ活性は、POSH RINGドメイン又は標的タンパク質(少なくとも部分的にPOSH活性によってユビキチン化されるタンパク質)との相互作用を媒介するPOSHのドメインと結合し、それに干渉する抗体と、POSHを接触させることによって阻害することができる。
【0157】
さらなる例として、最も好ましい実施形態において、本明細書の一般式Iの化合物、より好ましくは式Iaの化合物から成るPOSHユビキチンリガーゼ活性の小分子阻害剤が本明細書において提供される。
【0158】
別の例として、POSH活性は、POSH又はその活性部分の発現増加を引き起こすことによって増大させることができる。POSH及びPOSHユビキチンリガーゼ活性を調節するPOSH−APは、例えば、細胞へのウイルス侵入、ウイルスタンパク質の生成、ウイルスタンパク質の会合及び細胞からのウイルス粒子の放出等、ウイルスの生活サイクルの種々の段階のうちの1つ又は複数を含む生物学的過程に関係し得る。POSHは、認知症(例えば、アルツハイマー及びピック)、封入体筋炎及び筋障害、ポリグルコサン小体筋障害、及び筋萎縮性側索硬化症のいくつかの形態等、ユビキチン化タンパク質の蓄積を特徴とする疾患に関係し得る。POSHは、過剰若しくは不適切なユビキチン化及び/又はタンパク質分解を特徴とする疾患に関係し得る。
【0159】
いくつかの態様において、本出願は、神経学的障害を含むPOSH関連疾患(障害)の治療のための方法及び組成物を提供する。いくつかの態様において、本出願は、神経学的及びウイルス性障害を含むHERPUD1関連障害等のPOSH−AP関連疾患(障害)、並びに、例えば、アルツハイマー病等の多種多様な神経変性障害を含む望ましくないアポトーシスに関連する神経学的障害の治療のための方法及び組成物を提供する。
【0160】
神経学的障害の治療のための本出願の好ましい治療薬は、神経学的障害に関連するPOSHポリペプチド又はPOSH複合体の生物活性を妨害することによって機能し得る。本出願のいくつかの治療薬は、例えば、HERPUD1のPOSH介在性ユビキチン化を阻害する等、POSHポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害することにより、POSHの活性を妨害することによって機能する。
【0161】
いくつかの実施形態において、本出願は、神経学的障害を治療又は予防する方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、POSH又はHERPUD1等のPOSH−APの機能に干渉する組成物の同定のための方法及び組成物を提供し、ここで、その機能は、例えばアルツハイマー病に関連するアミロイドベータ前駆体タンパク質の処理等、神経変性障害に関連する異常なタンパク質の処理に関し得る。
【0162】
神経学的障害は、例えばアルツハイマー病等、アミロイドポリペプチドのレベル増大に関連する障害を含む。神経学的障害は、パーキンソン病、ハンチントン病、統合失調症、ピック病、ニーマンピック病、プリオン関連疾患(例えば、狂牛病)、うつ病及び統合失調症も含む。
【0163】
いくつかの態様において、本出願は、POSH又はPOSH−AP機能の干渉又は促進のいずれかを行う治療剤を同定するためのアッセイを提供する。いくつかの態様において、本出願は、POSHポリペプチドとPOSH−APポリペプチドとの間における複合体形成の干渉又は促進のいずれかを行う治療剤を同定するためのアッセイも提供する。本出願の好ましい実施形態において、本出願は、POSH又はPOSH−AP(例えば、HERPUD1)機能の干渉又は促進のいずれかを行う治療剤を同定するためのアッセイを提供する。いくつかの好ましい態様において、本出願は、POSHポリペプチドとHERPUD1ポリペプチドとの間における複合体形成の干渉又は促進のいずれかを行う治療剤を同定するためのアッセイも提供する。
【0164】
好ましい実施形態において、本出願は、神経学的障害の治療のための作用物質を提供する。いくつかの実施形態において、本出願は、POSHポリペプチドとHERPUD1ポリペプチドとの間の相互作用を妨害する作用物質を、同定、最適化又は評価するためのアッセイを提供する。
【0165】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の作用物質は、POSH及びHERPUD1を含む複合体を妨害するものである。場合によって、作用物質は、POSH自己ユビキチン化等のPOSHユビキチンリガーゼ活性を阻害することなく、POSH及びHERPUD1を含む複合体を妨害するものである。いくつかの実施形態において、本出願の作用物質は、場合によってPOSH自己ユビキチン化を阻害することなく、HERPUD1のPOSH介在性ユビキチン化を阻害するものである。
【0166】
いくつかの実施形態において、本出願の作用物質は、神経学的障害を治療又は予防するのに有用である。神経学的障害の治療又は予防は、神経学的障害の進行の阻害を含む。いくつかの実施形態において、神経学的障害の治療若しくは予防において有用な剤、又は神経学的障害の進行を阻害する作用物質は、POSHのユビキチンリガーゼ触媒活性(例えば、HERPUD1等の標的タンパク質のPOSHユビキチン化)に干渉する。
【0167】
その他の実施形態において、本明細書において開示されている作用物質は、分泌経路におけるタンパク質の処理、例えばアミロイドポリペプチドの処理等、POSH及びHERPUD1等のPOSH−AP介在性細胞過程を阻害又は促進する。
【0168】
いくつかの実施形態において、本出願の作用物質は、ウイルス成熟に場合によって干渉する抗ウイルス剤であり、ここで、好ましくは、ウイルスはエンベロープウイルス、場合によってレトロイドウイルス又はRNAウイルスである。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、POSHとPOSH−APポリペプチドとの間の相互作用に干渉し、例えば、抗ウイルス剤は、POSHポリペプチドとHERPUD1ポリペプチドとの間の相互作用を妨害することができる。
【0169】
さらに付加的な実施形態において、本出願の作用物質は、POSHポリペプチドとRacタンパク質との間の相互作用を場合によって妨害する、Rac又はRas等のGTPアーゼのシグナル伝達に干渉する。
【0170】
いくつかの実施形態において、本出願の作用物質は、分泌経路を通るタンパク質の輸送に干渉する。
【0171】
POSH介在性ユビキチン化に対するPOSH−AP(例えば、HERPUD1)の効果を評価し、且つ/又はPOSH−AP(例えば、HERPUD1)がPOSH介在性ユビキチン化の標的であるか否かを評価するためのPOSHユビキチン化アッセイに、付加的なPOSH−APを添加してもよい。
【0172】
本出願は、POSHポリペプチド及び1種又は複数の相互作用ポリペプチドを含む、再構築タンパク質製剤を開示する。
【0173】
POSH及びPOSH−AP活性を評価するための付加的なバイオアッセイは、神経学的障害に関連するタンパク質の不正処理を検出するためのアッセイを含み得る。使用することができる1つのアッセイは、神経学的障害に関連するタンパク質の存在を、その量の増加又は減少を含み、検出するためのアッセイである。例えば、RNAiの使用は、細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞又はHeLa細胞)中におけるPOSH又はHERPUD1等のPOSH−APポリペプチドの発現をノックダウンするために用いることができる。続いて、細胞培地中における、例えばアミロイドベータ等の分泌タンパク質の生成を評価し、対照細胞からの分泌タンパク質の生成と比較することができ、ここで対照細胞は、POSH又はPOSH−AP活性(例えば、HERPUD1活性)が阻害されなかった細胞であってよい。一部の事例において、標識を分泌タンパク質中に組み込み、細胞培地中における標識された分泌タンパク質の存在を検出することができる。例えば神経細胞を含むあらゆる細胞型から分泌されたタンパク質を評価することができる。
【0174】
POSH又はPOSH−AP活性のバイオアッセイは、アルツハイマー病等の神経変性障害に関連するタンパク質の不正処理を検出するためのアッセイを含み得る。神経学的障害に関連するPOSH又はPOSH−AP活性を検出するために使用することができる1つのアッセイは、アミロイドポリペプチドの存在を、その量の増加又は減少を含めて検出するためのアッセイである。1つのそのようなアッセイは、アミロイドポリペプチドの産生に対するPOSH又はPOSH−APの調節の効果を評価することを含む。例えば、RNAiの使用は、プレセニリン(例えば、プレセニリン1)等のガンマ−セクレターゼ活性に関連するタンパク質を発現し、その酵素活性がアミロイドベータペプチドを生み出すためのアミロイドベータ前駆体タンパク質(「APP」)のタンパク質分解的切断に関与する細胞(例えば、HeLa細胞)中における、POSHポリペプチド又はPOSH−AP(例えば、HERPUD1)の発現をノックダウンするために用いることができる。場合によって、例えば、ニカストリン、Aph−1及びPen−2等、ガンマ−セクレターゼに関連する他のタンパク質が発現し得る。続いて、例えば細胞培地中におけるアミロイドポリペプチドの産生を評価し、POSH又はPOSH−AP活性が調節されなかった細胞からのアミロイドポリペプチドの産生と比較することができる。いくつかの実施形態において、APPのレベルを評価し、POSH又はPOSH−AP活性が調節されなかったAPPのレベルと比較することができる。
【0175】
POSH又はPOSH−AP活性の付加的なアッセイは、インビトロガンマ−セクレターゼアッセイを含み、これを用いて、ガンマ−セクレターゼ活性に対するPOSH又はPOSH−APの調節(例えば、POSH発現のノックダウン又はRNAiによるHERPUD1発現のノックダウン)の効果を、POSH又はPOSH−AP活性が調節されなかった細胞中におけるガンマ−セクレターゼ活性と比較して、評価することができる。例えば、POSH又はPOSH−AP活性が(例えば、RNAiによって)調節された細胞中におけるガンマ−セクレターゼ活性は、タグ付き(例えば、FLAGエピトープ)APPベースの基質を持つ細胞由来の可溶化ガンマ−セクレターゼをインキュベートすること、及びその結果を免疫ブロットし、同じ方式で操作した対照細胞(POSH又はPOSH−AP活性が調節されなかった細胞)の結果と比較して、基質及び切断産物(例えば、アミロイドベータペプチド)を検出することによって監視できる。アミロイドポリペプチド産生に対するPOSHポリペプチド又はPOSH−APの活性の調節の効果は、アミロイドポリペプチドを産生することができる任意の細胞中において評価することができる。
【0176】
POSH又はHERPUD1等のPOSH−APの活性を調節する作用物質の効果を、種々の神経学的障害のマウスモデルに対する効果について評定することができる。例えば、アルツハイマー病のマウスモデルについて記述されている。例えば、「スウェーデン変異を有するAPP対立遺伝子を内包するトランスジェニック動物(Transgenic Animals Harboring APP Allele Having Swedish Mutation)」に関する米国特許第5,612,486号、「スウェーデン変異を有するAPP対立遺伝子を内包するトランスジェニックげっ歯動物(Transgenic Rodents Harboring APP Allele Having Swedish Mutation)」に関する米国特許第5,850,003号(’003号特許)及び「アルツハイマー病を診断及びモデル化するための核酸(Nucleic Acids for Diagnosing and Modeling Alzheimer’s Disease)」と題された米国特許第5,455,169号を参照されたい。アルツハイマー病のマウスモデルは、脳内においてレベルの上昇したベータアミロイドタンパク質を生成する傾向があり、試験作用物質による処理に対応するそのようなタンパク質の増加又は減少を検出することができる。一部の事例では、アルツハイマー病のマウスモデル並びに他の神経学的障害のマウスモデルの認知又は行動特性に対する試験作用物質の効果を評価することが望ましい場合もある。
【0177】
さらなる実施形態において、POSH又はPOSH−APによって制御される遺伝子を同定するために、HERPUD1活性等、より高い又はより低いレベルのPOSH又はPOSH−AP活性を有する細胞中において、転写レベルを計測することができる。そのような遺伝子のプロモーター領域(又はそのような遺伝子のより大きい部分)を、レポーター遺伝子と動作可能に結合させ、POSH又はPOSH−AP制御遺伝子発現を増強又は漸減する作用物質を検出するためのレポーター遺伝子ベースのアッセイにおいて使用することができる。転写レベルは、例えば、ノーザンブロット法、RT−PCR、マイクロアレイ等、当該技術分野において既知の任意の手法で測定することができる。POSH活性の増大は、例えば、強力なPOSH発現ベクターを導入することによって実現できる。POSH活性の減少は、例えば、RNAi、アンチセンス、リボザイム、遺伝子ノックアウト等によって実現できる。
【0178】
いくつかの実施形態において、試験作用物質は、例えばPOSH等、POSH−APの活性(機能)に対する効果を評価することにより、抗ウイルス活性を評価することができる。活性(機能)は、転写、翻訳又は翻訳後段階のうちの1つ又は複数において作用する作用物質によって影響される場合がある。例えば、POSH−APコード遺伝子を対象とするsiRNAは、POSH−APの触媒活性に干渉する小分子のように、活性を減少させる。いくつかの実施形態において、作用物質は、1種又は複数のPOSHポリペプチドの活性を阻害する。
【0179】
ここまでは本発明について一般的に記述されているが、本発明のいくつかの態様及び実施形態の例証のみを目的として含まれ、本発明を限定することは意図していない以下の実施例を参照により、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0180】
II 生物学セクション
(実施例1)
HTS TR−FRETアッセイによるPOSH阻害剤の選択
E1及びE2の存在下、RINGフィンガー依存的な形でその自己ユビキチン化を媒介する、RINGドメインを含有するPOSHの阻害剤、ユビキチンタンパク質リガーゼ(E3)としての化合物を試験するために、HTS(ハイスループットスクリーニング)均質TR−FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー転移)アッセイを行ってPOSH自己ユビキチン化を監視した。
【0181】
アッセイには、ユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン抱合酵素(E2)、POSHタンパク質の融合GST−RINGサブユニット、並びに2種の蛍光色素分子抱合検出試薬、すなわち抗GSTXL665及びユーロピウムクリプテート標識ユビキチンを用いる。この均質アッセイは、Eu3+クリプテートドナーと第2の蛍光標識(アクセプタ)であるアロフィコシアニンとの間のFRETに基づくものである。アロフィコシアニン、つまり105kDaフィコビリンタンパク質は、架橋してその安定性を確実なものとしている。XL665として知られるこの化学修飾蛍光色素分子は、Eu3+クリプテートの光物理的性質と合致する光物理的性質のセットを表示する。
【0182】
ユビキチンクリプテートによるPOSHのユビキチン化及び抗GSTタグ付きXL665の結合は、蛍光色素分子を近接させ、FRET反応を発生させる。FRET反応を発生させない化合物は、阻害剤とみなされる。
【0183】
均質時間分解蛍光共鳴エネルギー転移アッセイ(TR−FRET)によって、hPOSHの自己ユビキチン化を測定した。ユビキチンクリプテートのGSTタグ付きhPOSHとの抱合及び抗GSTタグ付きXL665の結合は、2個の蛍光色素分子を近接させ、これにより、FRET反応を発生させる。hPOSHユビキチン化活性を計測するために、GSTタグ付きhPOSH(60nM)を、反応緩衝液(40mMのHepes−NaOH、pH7.5、1mMのDTT、2mMのATP、5mMのMgCl2)中、組み換え型E1(8nM)、UbcH5c(500nM)及びユビキチンクリプテート(15nM)(CIS Bio International)とともに、37℃で30分間インキュベートした。0.5MのEDTAで反応を停止させた。その後、室温でさらに45分間インキュベーションするため、抗GST−XL665(CIS bio International)(50nM)を反応混合物に添加した。蛍光リーダー(RUBYstar、BMG Labtechnologies)中、380nmでの励起後、620nm及び665nmでの発光が得られた。その後、下記の式:
F=[(S665/S620−B665/B620)/(C665/C620−B665/B620)](ここで、S=実際の蛍光、B=cbl−bのない並行インキュベーションで得られた蛍光、C=添加化合物のない反応で得られた蛍光である)
を使用して、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET=(F))を計算することにより、hPOSH−ユビキチン−クリプテート付加体の産生を測定した。
【0184】
POSH特異的阻害剤の評定及び同定のための第1ステップにおいて、候補化合物を種々の濃度でアッセイに添加した。10μM(DMSO溶液中)の濃度のPOSH自己ユビキチン化を90%以上の阻害率で遮断した化合物を、良好な阻害剤と指定した。E1及びE2両方の存在下ではあるがPOSHの融合GST−RINGサブユニットの不在下、化合物(1μMの濃度)を再度アッセイで試験し、E1+E2ユビキチン化を70%超阻害した化合物を除去した。POSH自己ユビキチン化の良好な阻害剤として同定された化合物を、最適化に付した。
【0185】
化合物1は、このインビトロアッセイにおいて2μMのIC50を提示した。
【0186】
(実施例2)
ウイルス放出のアッセイ−化合物1はHIV−1 p24の放出を阻害する
POSH阻害剤である化合物1を、そのウイルス出芽及びGAG発現の効率、並びに処理済み及び未処理のJurkat細胞中における処理について試験した。細胞外GAG p24の濃度を、ウイルス出芽の指標として使用した。
【0187】
JURKAT細胞を化合物1(5μM)とともに1日間又は3日間のいずれかインキュベートした。翌日、細胞にプラスミドpNLenv1(2μg/ml)を形質移入した。形質移入の1日後、ウイルス様粒子(VLP)放出を下記の通り測定した。ウイルス発現細胞の培地を収集し、500×gで10分間遠心分離した。結果として生じた上清を0.45μm孔径フィルターに通し、ろ液を4℃において14,000×gで2時間遠心分離した。対応する細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、その後、下記の構成要素:50mMのHepes−NaOH(pH7.5)、150mMのNaCl、1.5mMのMgCl、0.5%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1mMのEDTA、1mMのEGTA及び1:200希釈のプロテアーゼ阻害剤カクテル(EMD Biosciences,Inc.)を含有する溶解緩衝液中、氷上での15分間のインキュベーションによって可溶化した。その後、細胞界面活性剤抽出物を4℃において14,000×gで15分間遠心分離した。VLP試料及び清澄化細胞抽出物の試料を12.5%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、その後、ニトロセルロース紙上に移し、ウサギ抗CA抗体(Seramun Diagnostica,GmbH)、二次抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合抗体及びHRP基質を用いる免疫ブロット分析に付した。その後、蛍光イメージング(Typhoon Instrument、Amersham Biosciences,Corp.)により、増強化学発光(ECL)(Amersham Biosciences,Corp.)を検出した。化合物1は、ウイルス放出アッセイにおいて48μMのIC50を提示した。
【0188】
(実施例3)
酵母ツーハイブリッドアッセイによるPOSHタンパク質−タンパク質相互作用
酵母ツーハイブリッドアッセイを使用することにより、POSH関連タンパク質を同定した。
【0189】
手順
ベイトプラスミド(GAL4−BD)を酵母株AH109(Clontech)に形質転換し、既定のトリプトファン欠損培地上で形質転換体を選択した。予め形質転換したHela cDNAプレイ(GAL4−AD)ライブラリー(Clontech)を含有する酵母株Y187を、Clontechプロトコールに従って酵母を含有するベイトと交配し、トリプトファン、ロイシン、ヒスチジン欠損で2mM3のアミノトリアゾールを含有する規定の培地に平板培養した。選択培地上で成長したコロニーをベータ−ガラクトシダーゼ活性について試験し、陽性クローンをさらに特徴付けた。cDNA挿入断片を増幅し、ベクター由来のプライマーを使用して配列決定することにより、プレイクローンを同定した。
【0190】
ベイト
プラスミドベクター:pGBK−T7(Clontech)
プラスミド名:pPL269−pGBK−T7 GAL4 POSHdR
タンパク質配列:POSHのaa53−888(RINGドメイン欠失;配列番号1)に対応
スクリーニングするライブラリー:Helaの予め形質転換したライブラリー(Clontech)
【0191】
酵母ツーハイブリッドアッセイにより、POSH−AP、HERPUD1(Hs.146393)を同定した。
【0192】
HERPUD1の核酸及びアミノ酸配列の例を以下に提供する。
【化10】

【0193】
(実施例4)
siRNAによるHERPUD1減少はHIV成熟を低減する
HeLa SS6細胞に、HERPUD1を対象とするsiRNA及びHIVプロウイルスゲノム(pNLenv−1)をコードするプラスミドを形質移入した。HIV形質移入の24時間後、培地中に分泌されたウイルス様粒子(VLP)を単離し、逆転写酵素活性を測定した。活性RTのHIV放出は、処理及び成熟ウイルスの放出の指標である。HERPUD1のレベルを低減すると、RT活性が80%阻害され、HIV成熟におけるHERPUD1の重要性を実証した。
【0194】
実験概要
細胞培養及び形質移入
HeLa SS6は、Thomas Tuschl博士(the laboratory of RNA Molecular Biology、Rockefeller University、New York、New York)によって快く提供された。10%熱非働化ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で細胞を増殖させた。形質移入のために、HeLa SS6細胞を、抗生物質なしで、10%FCSを含有するDMEM中、50%の集密度まで増殖させた。その後、リポフェクトアミン2000(Invitrogen、Paisley、UK)を使用して、関連する二本鎖siRNA(50〜100nM)(HERPUD1:5’−GGGAAGUUCUUCGGAACCUdTdT−3’(配列番号20)及び5’−dTdTCCCUUCAAGAAGCCUUGGA−5’(配列番号21)を細胞に形質移入した。最初の形質移入の次の日、完全培地中で細胞を1:3に分割し、24時間後、HIV−1NLenv1(6ウェル当たり2μg)(Schubertら、J.Virol.、72、2280〜88(1998))及び二本鎖siRNAの第2の部分を同時形質移入した。
【0195】
ウイルス放出のアッセイ
前述の通り、プロウイルスDNAによる形質移入の1日後に、ウイルス及びウイルス様粒子(VLP)放出を測定した(Adachiら、J.Virol.、59、284〜91(1986);Fukumoriら、Vpr.Microbes Infect.、2、1011〜17(2000);Lenardoら、J.Virol.、76、5082〜93(2002))。ウイルス発現細胞の培地を収集し、500×gで10分間遠心分離した。結果として生じた上清を0.45μm孔径フィルターに通し、ろ液を4℃において14,000×gで2時間遠心分離した。結果として生じた上清を除去し、ウイルスペレットをSDS−PAGE試料緩衝液中に再懸濁した。対応する細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、その後、下記の構成要素:50mMのHEPES−NaOH(pH7.5)、150mMのNaCl、1.5mMのMgCl、0.5%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1mMのEDTA、1mMのEGTA及び1:200希釈のプロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem、La Jolla、California)を含有する溶解緩衝液中、氷上での15分間のインキュベーションによって可溶化した。その後、細胞界面活性剤抽出物を4℃において14,000×gで15分間遠心分離した。VLP試料及び清澄化抽出物の試料(通常、初期試料の1:10)を12.5%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、その後、ニトロセルロース紙上に移し、ウサギ抗CA抗体を用いる免疫ブロット分析に付した。CAの検出は、二次抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合抗体を用いるインキュベーション後、増強化学発光(ECL)(Amersham Pharmacia)によって検出するか、又はCy5と抱合した二次抗ウサギ抗体(Jackson Laboratories、West Grove、Pennsylvania)を用いるインキュベーション後、蛍光イメージング(Typhoon instrument、Molecular Dynamics、Sunnyvale、CA)によって検出した。その後、Pr55及びCAを密度測定によって定量化し、続いて、前述の通り、VLP関連CAと細胞内CA及びPr55との比率を計算することにより、放出されたVLPの量を測定した(Schubertら、J.Virol.、72、2280〜88(1998))。
【0196】
上清中における逆転写酵素活性の分析
RTアッセイキット(Roche、Germany;カタログ番号1468120)を使用して、ペレット状のVLP(上記参照)中におけるRT活性を測定した。手短に述べると、VLPペレットを40μlのRTアッセイ溶解緩衝液中に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション終了時に、20μlのRTアッセイ反応混合物を各試料に添加し、37℃で終夜インキュベーションを続けた。その後、試料(60μl)をMTPストリップウェルに移行し、37℃で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で5回洗浄し、37℃での1時間のインキュベーションのためにDIG−PODを添加した。インキュベーションの終了時に、ウェルを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ABST基質溶液を添加し、発色するまでインキュベートした。405nm(基準波長492nm)において、吸光度をELISAリーダーで読み取った。結果として生じたシグナル強度はRT活性と正比例しており、個々のウェルの反応物に含まれる既知の量のRT酵素に対してプロットすることにより、RT濃度を測定した。
【0197】
(実施例5)
アミロイド前駆体タンパク質レベルはPOSHのレベルを低減した細胞中において低減される
低減したレベルのPOSH(H153)を発現するHeLa SS6細胞及びスクランブルRNAi(H187)を発現している対照細胞に、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を発現しているプラスミド及びプレセニリン1(PS1)を形質移入した。細胞を代謝標識し、抗アミロイドベータ特異抗体を用いてタンパク質抽出物を免疫沈降させ、これにより、APP、C199及びAβポリペプチドに共通のエピトープを認識した。標識タンパク質は、H187形質移入細胞(図示せず)中の抗体によって特異的に沈殿した。しかしながら、このポリペプチドはH153細胞(図示せず)中においては認識されず、APP定常状態レベルがH153中では低減しており、これらの細胞中では迅速に分解し得ることを示している。
【0198】
方法
pIRES−APP−PS1のクローニング
クローニングは2ステップで実施した。まずプレセニリン1(PS1)をヒト脳ライブラリーからpIREs(pIREs−PS1)にクローニングした。その後、2つのイメージクローン(3639599及び5582406)を増幅し、それらのPCR産物を付加的なPCR反応において混合し、完全長APP695を得て、これをさらにpIREs−PS1に連結してpIREs−APP−PS1を生み出すことにより、APP−695を得た。
【0199】
アミロイドベータ(Aβ)の形質移入、代謝標識及び免疫隔離
POSH特異的RNAi又はスクランブルRNAi(それぞれH153及びH187)を発現しているHela SS6細胞に、リポフェクトアミン2000試薬(Invitrogen、LTD)を使用してpIREs−APP−PS1(24μg)を形質移入した。形質移入の24時間後、37℃でさらに24時間、細胞を1mCiの35S−メチオニンで代謝標識した。培地を細胞から収集し、3000rpmで10分間回転させて細胞残屑をペレット化した。プロテアーゼ阻害剤及び2mMの1,10−フェナントロリンを清澄化細胞培地に添加した。細胞を溶解緩衝液(50mMのTris−HCl、pH7.8、150mMの塩化ナトリウム、1mMのEDTA、0.5%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム及びプロテアーゼ阻害剤)中に溶解した。細胞培地及び溶解物を、抗Aβ(1〜17)抗体(6E10)(Chemicon)又は非関連(NR)抗体によって免疫沈降させた。沈殿タンパク質を16%トリス−トリシンゲル上で分離した。ゲルを乾燥し、ホスフォイメージャー(Phosphoimager)(Typhoon Instrument、Amersham Biosciences,Corp.)によってバンドを検出した。
【0200】
(実施例6)
細胞保護アッセイ:化合物1、2及び5によりHIV−1及びHIV−2に感染した細胞に与えられる保護
HIV細胞保護アッセイには、CEM−SS細胞及びウイルスHIV−1IIIB、HIV−1RF又はHIV−2RODを使用した。
【0201】
手短に述べると、試験化合物の存在下、ウイルス及び細胞を混合し、6日間インキュベートした。対照ウェルがウイルス複製によって70〜95%の細胞生存の喪失を呈するように、ウイルスを予め滴定した。したがって、化合物がウイルス複製を防止した場合、抗ウイルス効果又は細胞保護が観察された。各アッセイプレートは、以下の対照:細胞対照ウェル(細胞のみ)、ウイルス対照ウェル(細胞プラスウイルス)、化合物毒性対照ウェル(細胞プラス化合物のみ)、化合物比色分析対照ウェル(化合物のみ)及び実験ウェル(化合物プラス細胞プラスウイルス)を含有していた。細胞保護及び化合物細胞毒性をMTS(CellTiter(登録商標)96試薬、Promega、Madison WI)色素還元によって評価し、IC50(ウイルス複製を50%阻害する濃度)、TC50(50%の細胞死をもたらす濃度)及び計算されたTI(治療指数TC50/IC50)が得られた。各アッセイは、陽性対照としてHIV逆転写酵素阻害剤AZTを含んでいた。
【0202】
HIV−1IIIBの感染に対する化合物1、2及び5による細胞保護について得られたIC50、TC50及びTIデータを表1に示し、化合物1の抗ウイルス活性及び化合物細胞毒性を図1に示す。化合物5は、抗HIV−1IIIB剤として、化合物1及び2と比較してはるかに有効であったことに留意されたい。
【0203】
HIV−2RODの感染に対する化合物1及び化合物2両方についての細胞保護アッセイデータを表2に示し、抗ウイルス活性及び化合物細胞毒性を図2及び3に提示する。
表1 CEM−SS細胞中のHIV−1IIIBに対する化合物1及び2による保護
【表1】


表2 CEM−SS細胞中のHIV−2RODに対する化合物1及び2による保護
【表2】

【0204】
III 化学セクション
(実施例7)
化合物1の合成
スキーム1に示されている中間体1及び2の合成から始まる化合物1の合成は、以下の通りである。
【0205】
(i)N−(チオフェン−2−カルボニル)グリシン(中間体1)の合成
水(100ml)中のグリシン(7.0g、93mmol)及び炭酸カリウム(13.8g、100mmol)の溶液に、チオフェン−2−カルボニルクロリド(7.3g、50mmol)を撹拌しながら30分間かけて添加した。結果として生じた溶液を1時間撹拌し、ジエチルエーテル(2×30ml)で洗浄し、濃HClで酸性化した。氷浴中で1時間冷却後、沈殿物をろ過除去し、氷水で洗浄し、風乾し、7.0g(76%)の酸中間体1を得た。
【0206】
(ii)2−(2−チエニル)−4−(2−チエニルメチレン)オキサゾール−5(4H)−オン(中間体2)の合成
酸中間体1(7.0g、38mmol)、チオフェン−2−カルバルデヒド(5.1g、45mmol)、酢酸ナトリウム(3.1g、38mmol)及び無水酢酸(11.6g、114mmol)の懸濁液を、撹拌しながら水蒸気浴で1時間加熱した。反応中に、混合物は橙色になり、凝固した。冷却された固体を水(50ml)とともに15分間撹拌し、結果として生じた沈殿物をろ過除去し、氷水及び若干の氷冷エタノールで洗浄し、風乾し、6.2g(63%)のアザラクトン中間体2を橙色固体として得た。
【0207】
(iii)化合物1の合成
氷酢酸(40ml)中のアザラクトン2(2.8g、11mmol)及び4−アミノ−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(2.8g、10mmol)の懸濁液を、還流しながら1時間撹拌した。固体がまず溶解され、その後、黄色沈殿物がもたらされた。冷却後、後者をろ過除去し、氷酢酸、エタノール、その後ジエチルエーテルで連続的に洗浄し、風乾し、3.7g(69%)の化合物1を淡黄色粉末として得た。
【化11】

【0208】
(実施例8)
化合物2の合成
化合物2の合成のために、まず中間体1及び2を上記実施例8に記述されている通りに合成した。化合物2の合成は、スキーム2に示されている。
【0209】
氷酢酸(7.3ml)中のアザラクトン(1)(522mg、2mmol)及び4−アミノ−N−(2−ピリミジニル)−1−ベンゼンスルホンアミド(500mg、2mmol)の懸濁液を、還流しながら1時間撹拌した。固体がまず溶解され、その後、黄色沈殿物が形成された。冷却後、後者をろ過除去し、氷酢酸、その後、エタノール及びジエチルエーテルで連続的に洗浄した後、100℃で真空乾燥し、680mg(67%)の所望の化合物2を得た。
【化12】

【0210】
(実施例9)
化合物4の合成
化合物4は、合成のステップ(iii)において、中間体2を4−アミノ−5−メチル−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(2.8g、10mmol)と反応させたことを除き、化合物1の合成と同様の方式で合成した。化合物4は、淡黄色粉末として71%収率で得られた。
【0211】
(実施例10)
化合物5の合成
スキーム3に記述されている通りの中間体3〜5の合成、続いて中間体2との反応から始まる化合物5の合成は、以下の通りである。
【0212】
(i)1−アセチルインドリン−5−スルホニルクロリド(中間体3)の合成
1−アセチルインドリン(16.1g、100mmol)を、撹拌しながら、少量ずつ30分間かけて、クロロスルホン酸(40.4g、350mmol)に添加した。結果として生じた濃厚な溶液を60℃で30分間撹拌し、冷却し、クラッシュアイス(200g)で可能な限り急速に処理した。粗スルホニルクロリド(3)をろ過除去し、氷水で徹底的に洗浄し、クロロホルム(200ml)中に溶解し、CaClで短時間乾燥し、濃縮し、エーテル−ヘキサンから結晶化し、19.5g(75%)の純中間体3を得た。
【0213】
(ii)1−アセチル−N−(4−メチルピリミジン−2−イル)インドリン−5−スルホンアミド(中間体4)の合成
3(5.2g、20mmol)、2−アミノ−4−メチルピリミジン(2.1g、19mmol)、ピリジン(1.74g、22mmol)及び1,2−ジクロロエタン(15ml)の混合物を、45〜50℃で5時間撹拌した。揮発物を真空蒸留除去し、残留物を水(20ml)中に懸濁した。粗中間体4をろ過除去し、水、その後、冷エタノールで洗浄し、3.63g(52%)の帯黄色粉末を得た。この物質をさらに精製することなく次のステップにおいて使用した。
【0214】
(iii)N−(4−メチルピリミジン−2−イル)インドリン−5−スルホンアミド(中間体5)の合成
8%NaOH(15ml)中のスルホンアミド4(3.63g、10mmol)の溶液を95〜100℃で3時間撹拌し、冷却し、ろ過した。その後、ろ液を25%HClで中和した。形成された沈殿物をろ過除去し、水及びエタノールで洗浄した。5%NaOH中に溶解し、続いて5%HClで沈殿させることにより、これをさらに精製した。沈殿物を水及びエタノールで洗浄し、80℃で風乾し、2.57g(80%)の中間体5を得た。
【0215】
(iv)化合物の合成
氷酢酸(30ml)中の、上記実施例7(ii)で得られた中間体2(1.4g、5.5mmol)及び中間体5(1.8g、5.5mmol)の懸濁液を、還流しながら1時間撹拌した。固体がまず溶解され、その後、黄色沈殿物が形成された。冷却後、後者をろ過除去し、氷酢酸、続いてエタノールで連続的に洗浄した。5%NaOH中に溶解し、続いて5%HClで沈殿させることにより、粗生成物をさらに精製し、1.48g(45%)の純化合物5(N−(4−メチルピリミジン−2−イル)−1−[3−(2−チエニル)−2−(2−チエニルカルボニルアミノ)]プロペノイル]−インドリン−5−スルホンアミド)をほぼ無色の粉末(m.p.>250℃、dec.)として得た。
【化13】

【0216】
(実施例11)
化合物7の合成
化合物7は、合成のステップ(i)において、出発材料として1−Hインドールを使用したことを除き、化合物5の合成と同様の方式で合成した。化合物7は、無色粉末として50%収率で得られた。
【0217】
スキーム1
【化14】


スキーム2
【化15】


スキーム3
【化16】


付録A
【表3−1】


【表3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物、又はその鏡像異性体若しくは薬学的に許容される塩
【化1】


[式中、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR、−COOR、−NR、−CONR又は−NRCOR10であり、
はアリール又はヘテロアリールであり、
は、H、又は低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR、−COOR若しくは−CONRから選択される1〜3個の基を表し、
は、H、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、→O又はヘテロシクリルであり、
は、H、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR又は−NRCOR10であるか、或いは、R、それが結合した窒素原子及びRが、5〜6員のヘテロシクリル環を形成し、
は、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであり、
及びRは、それぞれ独立に、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びRは、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する5〜6飽和ヘテロシクリル環を形成し、前記さらなるN原子は、低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルで場合によって置換されており、
は、H、低級アルキル又はフェニルであり、
10はアリール又はヘテロアリールであり、
前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールは、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR、ニトロ、−NR−COR、−SO、−SO、−SONR及び−NRSOから選択される1個又は複数の基で場合によって置換され、ここで、R、R及びRは上記で定義された通りである]。
【請求項2】
がNRCOR10であり、
が場合によって置換されているヘテロアリールであり、
がH又は1〜3個のアルキル基であり、
が、H、アルキル、カルボシクリル、アリール、アシル、→O又はヘテロシクリルであり、
が、H、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR又は−NRCOR10であるか、或いは、R、それが結合した窒素原子及びRが、5〜6員のヘテロシクリル環を形成し、
が、H、アルキル、アリール又はヘテロシクリルであり、
及びRが、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びRが、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和5〜6ヘテロシクリル環を形成し、前記さらなるN原子が、フェニル、ハロゲン又はヒドロキシで場合によって置換されている低級アルキルで場合によって置換されており、
が、H、アルキル又はフェニルであり、
10がアリール又はヘテロアリールであり、
前記アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールが、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR’−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’−SOR、−SOR、−SONRR’及び−NRSORから選択される1個又は複数の基で場合によって置換され、ここで、R及びR’は独立に、それぞれ、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びR’は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和ヘテロシクリル環を形成し、前記さらなるN原子はヒドロカルビルで場合によって置換されている、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ヒドロカルビルが、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール又はアラルキル基から選択される、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個、最も好ましくは2〜3個の炭素原子の、直鎖又は分岐鎖、非環式又は環式、飽和、不飽和又は芳香族のヒドロカルビル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アルキルが、O、S及び/又はNから選択される1個又は複数のヘテロ原子で場合によって遮断され、且つ/或いはハロゲン、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’−SOR、−SOR、−SONRR’及び−NRSORから成る群より選択される1個又は複数の基により置換され、ここで、R及びR’は独立に、それぞれ、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びR’は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和5〜7員のヘテロシクリル環を形成し、前記さらなるN原子はヒドロカルビルで場合によって置換されている、直鎖又は分岐鎖の1〜10個の炭素原子(C〜C10アルキル)、好ましくは低級アルキル(C〜Cアルキル)である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
前記低級アルキルが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択され、好ましくはメチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記カルボシクリルが、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’−SOR、−SOR、−SONRR’及び−NRSORから成る群より選択される1個又は複数の基で場合によって置換されている、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル及びシクロヘキセニルから選択される飽和C〜Cシクロアルキル又は部分不飽和C〜Cシクロアルケニル基であり、ここで、R及びR’は独立に、それぞれ、H、ヒドロカルビル又はヘテロシクリルであるか、或いはR及びR’は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和ヘテロシクリル環を形成し、前記さらなるN原子はヒドロカルビルで場合によって置換されている、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
前記アリールが、フェニル、ビフェニル、ナフチル又はアントラセニルから選択される、6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子の、置換又は非置換の、単環式、二環式又は三環式芳香族炭素環基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
前記ヘテロシクリルが、3〜12個、好ましくは5〜10個、より好ましくは5〜6個の環員であり、そのうちの1〜3個の原子が、O、S及び/又はNから選択されるヘテロ原子である、飽和又は部分不飽和の、場合によって置換されている単環式、二環式又は三環式複素環である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
前記ヘテロシクリルが、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ又は1,3−ジオキサニルから選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記ヘテロアリールが、O、S及び/又はNから選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する置換又は非置換の単環式又は多環式芳香族複素環である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項11】
前記ヘテロアリールが、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル及びベンゾオキサゾリル、ベンゾジアゼピニルから選択され、好ましくはチエニルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
、R及びそれらが結合したN原子から形成される、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する前記5〜6飽和ヘテロシクリル環が、付加的なN原子で、低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルにより場合によって置換されている、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノ及びジアゼピノから選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項13】
式Ia又はIbの、請求項1から12までのいずれか一項に記載の化合物
【化2】


[式中、
Xは、O、S又はNHであり、
はH又は1〜3個の(C〜C)アルキルであり、
はH又は(C〜C)アルキルであり、
はH又は場合によって置換されている(C〜C)アルキルであり、
11〜R19は、それぞれ独立に、H、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NR、−CONR、ニトロ、−NR−COR、−SO、−SO、−SONR及び−NRSOから選択され、ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール若しくはヘテロシクリルであるか、又はR及びRは、それらが結合した窒素原子と一緒になって、N、S及び/又はOから選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する飽和ヘテロシクリル環を形成し、前記さらなるN原子は、フェニル、ハロゲン又はヒドロキシで場合によって置換されている低級アルキルで場合によって置換されており、
式Ib中の点線は、任意選択の二重結合を表す]。
【請求項14】
XがSであり、RがH又は1〜3個のメチル基であり、RがHであり、RがH又はメチルであり、R11〜R16がHである、請求項13に記載の式Iaの化合物。
【請求項15】
本願において、式
【化3】


の化合物1として特定される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
本願において、式
【化4】


の化合物2として特定される、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
本願において、式
【化5】


の化合物3として特定される、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
本願において、式
【化6】


の化合物4として特定される、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
XがSであり、RがH又は1〜3個のメチル基であり、R11〜R19がHである、請求項13に記載の式Ibの化合物。
【請求項20】
本願において、式
【化7】


の化合物5として特定される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
本願において、式
【化8】


の化合物6として特定される、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
本願において、式
【化9】


の化合物7として特定される、請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
薬剤の調製のための、請求項1から22までのいずれか一項に記載の一般式Iの化合物の使用。
【請求項24】
本願において、請求項15に記載の化合物1として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
本願において、請求項16に記載の化合物2として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
本願において、請求項17に記載の化合物3として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項27】
本願において、請求項18に記載の化合物4として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
本願において、請求項20に記載の化合物5として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項29】
本願において、請求項21に記載の化合物6として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項30】
本願において、請求項22に記載の化合物7として特定される化合物の、請求項23に記載の使用。
【請求項31】
好ましくはRINGドメインを含有する、より好ましくは少なくとも1つのSH3ドメインを含有するヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性の阻害のための、請求項23から30までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記ポリペプチドがヒトPOSHポリペプチドである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
POSH関連タンパク質(POSH−AP)、好ましくはHERPUD1のユビキチン化を阻害するための、請求項23に記載の使用。
【請求項34】
前記薬剤が、ウイルス感染、好ましくは、RNAウイルス、エンベロープウイルス又は霊長類レンチウイルス群を含むレンチウイルス等のレトロイドウイルスによって引き起こされるウイルス感染の治療のための薬剤である、請求項23から33までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記ウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス及びヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)から成る群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
特に前記ウイルス感染がHIV−1又はHIV−2によって引き起こされる場合における、本願において化合物1として示される化合物の、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
特に前記ウイルス感染がHIV−1又はHIV−2によって引き起こされる場合における、本願において化合物2として示される化合物の、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
特に前記ウイルス感染がHIV−1又はHIV−2によって引き起こされる場合における、本願において化合物5として示される化合物の、請求項35に記載の使用。
【請求項39】
前記薬剤が、神経学的状態、障害又は疾患の治療のための薬剤である、請求項23から33までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記神経学的障害又は疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、脳血管疾患、うつ病又は統合失調症である、請求項38に記載の使用。
【請求項41】
特にアルツハイマー病の治療のための、本願において、化合物1、化合物2及び化合物5として示される化合物の、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するための方法であって、請求項1から22までのいずれか一項に記載の式Iの化合物を、前記ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するのに有効な量で、必要とする被験者に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項43】
前記ヒトポリペプチドがRINGドメインを含有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒトポリペプチドが少なくとも1つのSH3ドメインをさらに含有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドがヒトPOSHポリペプチドである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記被験者におけるウイルス感染の治療のための、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ウイルス感染が、RNAウイルス、エンベロープウイルス又は霊長類レンチウイルス群を含むレンチウイルス等のレトロイドウイルスによって引き起こされる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス及びヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)から成る群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
本願において、化合物1、2又は5として示される化合物から選択される化合物の抗ウイルス量の投与を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
被験者における、HIV−1によって引き起こされるウイルス感染の治療のための方法であって、本願において、化合物、化合物2又は化合物5として示される化合物から選択される化合物の抗HIV−1有効量を、前記被験者に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項51】
被験者における、HIV−2によって引き起こされるウイルス感染の治療のための方法であって、本願において、化合物1、化合物2又は化合物5として示される化合物から選択される化合物の抗HIV−2有効量を、前記被験者に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項52】
神経学的状態、障害又は疾患の治療のための、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記神経学的障害又は疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、脳血管疾患、うつ病又は統合失調症である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記神経学的障害又は疾患がアルツハイマー病である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
アルツハイマー病に罹患している被験者の治療のための方法であって、本願において、化合物1、化合物2又は化合物5として示される化合物から選択される化合物の有効量を、前記被験者に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項56】
被験者における神経学的障害を治療するための方法であって、ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害する小分子作用物質を前記被験者に投与するステップを含み、前記小分子化合物が、請求項1から22までのいずれか一項に記載の式Iの化合物である、上記方法。
【請求項57】
前記ヒトポリペプチドがRINGドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ヒトポリペプチドが少なくとも1つのSH3ドメインをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリペプチドがヒトPOSHポリペプチドである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記神経学的障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、脳血管疾患、うつ病及び統合失調症から成る群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
細胞中におけるアミロイドポリペプチド産生を阻害する方法であって、ヒトポリペプチド又はタンパク質のユビキチンリガーゼ活性を阻害する小分子作用物質を投与するステップを含み、前記小分子化合物が、請求項1から22までのいずれか一項に記載の式Iの化合物である、上記方法。
【請求項62】
ヒトポリペプチドがRINGドメインを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
ヒトポリペプチドが少なくとも1つのSH3ドメインをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ポリペプチドがヒトPOSHポリペプチドである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
細胞中におけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の輸送を阻害する方法であって、小分子によってポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害するステップを含み、前記小分子化合物が、請求項1から22までのいずれか一項に記載の式Iの化合物である、上記方法。
【請求項66】
ヒトポリペプチドがRINGドメインを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ヒトポリペプチドが少なくとも1つのSH3ドメインをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ポリペプチドがヒトPOSHポリペプチドである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
被験者におけるウイルス感染を治療する方法であって、POSH関連タンパク質(POSH−AP)を阻害する作用物質を、ウイルス感染を阻害するのに十分な量で投与するステップを含み、前記作用物質が、請求項1から22までのいずれか一項に記載の式Iの化合物である、上記方法。
【請求項70】
前記POSH−APがHERPUD1である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記作用物質がHERPUD1のユビキチン化を阻害する、請求項70に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509205(P2010−509205A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535189(P2009−535189)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001356
【国際公開番号】WO2008/056356
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509125693)プロテオロジクス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】