PWM制御方法及び装置、並びに、調光装置
【課題】ノイズ発生を効果的に抑制することができるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置を提供する。
【解決手段】所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部11と、PWM信号のデューティー比を設定する設定部12と、ゲート端子を有し、PWM信号がゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、PWM制御信号を発生させるトランジスタ2と、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサ5とを備えるPWM制御装置である。設定部12は、PWM信号のデューティー比のハイ期間がPWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合、または、PWM信号のデューティー比のロウ期間がPWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくし、PWM信号のオン/オフ動作を確実に実行する。
【解決手段】所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部11と、PWM信号のデューティー比を設定する設定部12と、ゲート端子を有し、PWM信号がゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、PWM制御信号を発生させるトランジスタ2と、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサ5とを備えるPWM制御装置である。設定部12は、PWM信号のデューティー比のハイ期間がPWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合、または、PWM信号のデューティー比のロウ期間がPWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくし、PWM信号のオン/オフ動作を確実に実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の電子制御ユニットに用いられるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車やトラック等の車両におけるランプの調光やモータ回転数の調節を行う手段として、PWM(Pulse Width Modulation)制御が広く知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、自動車等の車両に搭載される電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)では、PWM出力機能を有するマイクロコンピュータを内蔵し、マイクロコンピュータから出力されるPWM信号を用いてランプ調光やモータ回転数調節を制御するためのPWM制御信号を生成し、出力する。ECUは、マイクロコンピュータからのPWM信号のデューティー比(1周期に対するHighレベル期間の比)を変化させることによりPWM制御信号のデューティー比を変化させて、車両のランプ調光やモータ回転数調節を高精度に行うことができる。車両のランプ調光をPWM制御する場合であれば、図8に示すように、PWM制御信号のデューティー比を徐々に大きくすればランプを徐々に明るくすることができ、逆に、デューティー比を徐々に小さくすればランプを徐々に暗くすることができる。
【0004】
上述したように、車両のランプ調光をPWM制御する場合、PWM制御信号のデューティー比を変化させることによりランプの点灯あるいは消灯が行なわれるが、一方、ランプを所定の輝度で点灯し続けさせるためには、PWM制御信号のデューティー比を所定の値で維持させることが必要となる。ここで、図9(a)に示すように、PWM制御信号の周波数が過度に低いと、車載の室内灯等の場合、ランプ光のちらつきが乗員の目につき、乗員が視覚的にそのちらつきを認識してしまうという問題点がある。
【0005】
このため、車載の室内等のランプを調光制御する場合には、図9(b)に示すように、PWM制御信号の周波数を高くしてPWM制御信号のH‐L間の切り替えを、より多く行うことが、ランプ光のちらつきを低減する上で有効である。
【0006】
上記のようなPWM出力機能を有するECUの近くにAMラジオを設けると、PWM制御の際にECUにノイズが発生することが確認されており、その要因として、ECU内で発生する急峻な電流の増減が挙げられる。すなわち、ECU内では、マイクロコンピュータからのPWM信号がECU内の回路を流れ、ランプの調光等に用いられるPWM制御信号が生成されるが、PWM信号が持つ矩形状の形状のため、PWM制御信号の生成時には回路で発生する電流が急峻に増減してしまう。その急峻な電流の増減により、PWM制御信号の高調波成分の増大を招き、その結果、ECUの近傍に配置されたAMラジオにノイズを引き起こすことになる。
【0007】
このため、一般的には、マイクロコンピュータからのPWM信号が持つ矩形状の形状を鈍らせることにより、上記の電流の急峻な増減を緩和させて、電流の急峻な増減に起因するPWM制御信号の高調波成分の増大を抑制することが行われている。
【特許文献1】特開2000−177480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、AMラジオのアンテナ感度や設置位置、さらにはPWM制御信号に要求される周波数等によっては、上記のPWM信号の形状を鈍らせる量を大きくする必要があり、その結果、次の問題が新たに生じている。以下、具体的に説明する。図18は、従来の電子制御ユニット(ECU)の構成を示す模式図である。図18のECU100は、PWM出力機能を有しており、ランプ6の調光をPWM制御することができるものである。
【0009】
ECU100は、図18に示すように、マイクロコンピュータ1と、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)2と、抵抗3及び4と、コンデンサ5と、を備えている。マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11と、デューティー比設定部12と、を有しており、PWM信号生成部11はPWM信号を生成し、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号のデューティー比は、デューティー比設定部12により適宜設定され、その設定される値は変更可能となっている。マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号をFET2のゲート端子に出力することによりFET2のスイッチング動作を実行させる。ECU100は、FET2のスイッチング動作によりランプ6の調光をPWM制御するためのPWM制御信号を生成し、ランプ6に出力する。
【0010】
FET2は、nMOS型トランジスタで構成されており、そのドレイン端子がランプ6の一端に接続され、そのソース端子が接地されている。ランプ6の他端は、車載バッテリなど所定の電源電圧+Bに接続されており、FET2のソース端子‐ドレイン端子間に電流が流れることにより、ランプ6に電流が供給されることになる。
【0011】
FET2のゲート端子は、抵抗3を介して、マイクロコンピュータ1に接続されており、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子にPWM信号が出力される。FET2は、ゲート端子に印加されるゲート電圧が所定の閾値以上になった場合に、ソース端子‐ドレイン端子間を導通させ、それらの間に電流を流すことができる。
【0012】
具体的には、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号がHighレベルの時には、FET2は導通し、FET2のドレイン端子は接地電圧に接続されてLowレベルとなる。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はLowレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流が供給されることになる。
【0013】
一方、PWM信号がLowレベルの時には、FET2は遮断され、ドレイン電圧はHighレベルを維持している。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はHighレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流は供給されないことになる。
【0014】
したがって、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号のデューティー比を調節することにより、ランプ6に供給される電流の平均量を変化させることができ、それにより、ランプ6の調光を制御することができる。なお、FET2としては、種々のものを用いることができるが、安価でしかも比較的高い耐電圧性能を持つMOSFETが好ましい。MOSFETであれば、高いPWM周波数であっても、PWM信号のon/offに追従して、良好なPWM制御を実現することができる。
【0015】
さらに、ECU100では、FET2のゲート端子と接地電圧との間に、FET2と並列にコンデンサ5が配置されている。すなわち、コンデンサ5は、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子に至るまでの間に接続されている。以下、コンデンサ5の配置による効果について簡単に説明する。
【0016】
上述したように、マイクロコンピュータ1は、デューティー比設定部12により設定されたデューティー比を持つPWM信号をPWM信号生成部により生成し、FET2のゲート端子に出力する。PWM信号は、図2(a)に示したように、HighレベルとLowレベルとの間で周期的に変化する矩形状のパルス信号であるが、コンデンサ5の作用によって、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりにおける電圧の期間的変化が緩やかになる。すなわち、FET2のゲート電圧の変化が緩やかになり、それに伴って、FET2のソース端子‐ドレイン端子の電流の増減も緩やかになり、この電流の急峻な増減に起因するPWM制御信号の高調波成分の増大が効果的に抑制されることになる。図2(a)に、コンデンサ5を配置しない場合における、図18中のA点、すなわち、FET2のゲート端子に出力されるPWM信号の波形を、図2(b)に、コンデンサ5を配置した場合における、FET2のゲート端子に出力されるPWM信号の波形を、図3(a)に、コンデンサ5を配置しない場合における、図18中のB点、すなわち、ECU100から出力されるPWM制御信号の波形を、図3(b)に、コンデンサ5を配置した場合における、ECU100から出力されるPWM制御信号の波形を、それぞれ示しておく。
【0017】
上述したコンデンサ5の作用による、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり形状を鈍らせる量が大きすぎた場合、図10(a)及び(b)に示したように、ECU100からのPWM制御信号が完全にLowレベルまたはHighレベルに達せず、PWM制御信号の高調波成分の増大を招いてしまうことがあった。そこで、本実施の形態にかかるECU100ではさらに、以下に述べる処理を実行する。ここでは、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号の条件として、次のものを用いる。
【0018】
(1)PWM周波数 :400Hz
(2)PWM分解能 :256ステップ
(3)減光時間 :2sec
(4)PWM信号鈍り量:20μsec
なお、上記の(4)のPWM信号鈍り量は、図18のコンデンサ5の容量値及び抵抗4の抵抗値に依存し、図4(a)及び(b)に示すように定義されている。図4(a)は、PWM信号の立ち下がりの波形を示す拡大図であり、図4(b)は、PWM信号の立ち下がりの波形を示す拡大図である。
【0019】
上記のPWM信号の(1)のPWM周波数及び(2)のPWM分解能の条件の下においては、最小のHighレベル期間(または最小のLowレベル期間)t1は、次の値となる。
【0020】
t1=(1/400Hz)/256ステップ
=9.8μsec
この場合、通常、PWM制御信号を常時Highレベルである状態(デューティー比が100%)からデューティー比を徐々に低下させていく場合、その低下開始時(減光開始時)のデューティー比は上記の最小Lowレベル期間t1から開始するが、上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecの条件の下では、最小のLowレベル期間t1においては、PWM信号は完全に立ち下がることはできない。このため、図5(a)に示すように、減光開始時では、PWM制御信号が完全にLowレベルに達しないことになる。
【0021】
同様に、PWM制御信号が常時Lowレベルである状態(デューティー比が0%)になる直前時(消灯直前)におけるデューティー比では、Highレベル期間は上記の最小Highレベル期間t1とするが、上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecの条件の下では、PWM信号は完全に立ち上がることはできない。このため、図5(b)に示すように、PWM制御信号が常時Lowレベルである状態(デューティー比が0%)になる直前(消灯直前)においては、PWM制御信号が今度は完全にHighレベルに達しないことになる。したがって、いずれの場合においても、PWM制御信号は急激に変化することとなり、その高調波成分を増大させてしまう。
【0022】
このような状況は、上記の(3)の減光時間2secの条件下では、減光開始時及び消灯直前のそれぞれにおける、2sec/256ステップ=7.8msecの間において継続されることになり、この間、AMラジオにノイズが発生してしまう。この時、AMラジオの受信感度が良くない局を選局中であれば、AMラジオの聴取者にとって不快な音がスピーカーから流れてしまうことになる。
【0023】
すなわち、図10(a)に示すように、PWM制御信号が常時Highレベルである状態から、徐々にそのデューティー比を小さくしていく場合、マイクロコンピュータからのPWM信号の形状を鈍らせる量が過度に大きいとその立ち上がりや立ち下がりが遅れ、図中Cで示す箇所では、PWM制御信号が完全にLowレベルに達しない。その結果、PWM制御信号の高調波成分を増大させることになり、新たなノイズの発生を招いてしまう。また、その後、図10(b)に示すように、PWM制御信号が常時Lowレベルになる状態の直前においては(図中Dで示す箇所)、PWM制御信号が今度は完全にHighレベルに達しないので、やはりPWM制御信号の高調波成分の増大を招いてしまい、上記と同様、ノイズ発生を十分に抑制することができない。
【0024】
上記問題点に鑑み、本発明は、ノイズ発生を効果的に抑制することができるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、本発明にかかるPWM制御方法は、PWM信号のデューティー比を所定の分解能で増減させることによりPWM制御する場合におけるPWM信号のデューティー比を制御する方法であって、PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする。
【0026】
上記のPWM制御方法では、PWM信号のデューティー比におけるハイ期間がPWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてハイ期間を立ち上がり時間よりも長くし、PWM信号のデューティー比におけるロウ期間がPWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてロウ期間を立ち下がり時間よりも長くするように、PWM信号が制御される。このため、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりが確実に行われることになる。ここで、PWM信号の印加によりトランジスタをオン/オフ動作させてPWM制御信号を発生させる場合でも、トランジスタのオン/オフ動作を確実に行うことができるので、発生されるPWM制御信号の高調波成分を効果的に抑制することができる。
【0027】
また、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定するようにしてもよい。
【0028】
この場合、PWM信号の印加によりトランジスタをオン/オフ動作させてPWM制御信号を発生させる場合でも、トランジスタのオン/オフ動作をより確実に行うことができる。
【0029】
本発明に係るPWM制御装置は、所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、PWM制御信号を発生させるトランジスタと、前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の時間変化率を低下させるコンデンサとを備え、前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする。
【0030】
上記のPWM制御装置では、PWM信号のデューティー比におけるハイ期間がPWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてハイ期間を立ち上がり時間よりも長くし、PWM信号のデューティー比におけるロウ期間がPWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてロウ期間を立ち下がり時間よりも長くするように、PWM信号が制御される。このため、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりが確実に行われることになる。その結果、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作が確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定するようにしてもよい。
【0032】
この場合、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作がより確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分をより効果的に抑制することができる。
【0033】
本発明に係る調光装置は、ランプと、前記ランプにPWM制御信号を与え、前記ランプの点灯を制御するPWM制御装置とを含み、前記PWM制御装置は、所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、前記PWM制御信号を発生させるトランジスタと、前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサとを備え、前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間を前記PWM信号の立ち上がり時間よりも長くし、前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間を前記PWM信号の立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする。
【0034】
上記の調光装置では、ランプの減光開始時に、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてPWM信号のデューティー比におけるハイ期間をPWM信号の立ち上がり時間よりも長くし、ランプの消灯直前に、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてPWM信号のデューティー比におけるロウ期間をPWM信号の立ち下がり時間よりも長くするように、PWM信号が制御される。このため、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりが確実に行われることになる。その結果、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作が確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分を効果的に抑制することができる。したがって、このようなPWM制御信号をランプに与えることにより、ランプ光のちらつきを抑え、車載の室内灯等の場合であれば、乗員が視覚的にそのちらつきを認識してしまうという問題点を解消することができる。
【0035】
また、前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号をハイレベルに固定し、前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号をロウレベルに固定するようにしてもよい。
【0036】
この場合、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作がより確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ノイズ発生を効果的に抑制することができるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一部分には同一符号を付し、図面で同一の符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。図1は、本発明の実施の形態にかかる電子制御ユニット(ECU)の構成を示す模式図である。図1のECU100は、PWM出力機能を有しており、ランプ6の調光をPWM制御することができるものである。
【0039】
本実施の形態にかかるECU100は、図1に示すように、マイクロコンピュータ1と、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)2と、抵抗3及び4と、コンデンサ5と、を備えている。マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11と、デューティー比設定部12と、を有しており、PWM信号生成部11はPWM信号を生成し、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号のデューティー比は、デューティー比設定部12により適宜設定され、その設定される値は変更可能となっている。また、デューティー比設定部12には、本発明の特徴部分である、デューティー比の分解能を適宜変更可能な分解能変更部121が搭載されており、必要に応じてデューティー比の分解能を変更し、設定する。
【0040】
マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号をFET2のゲート端子に出力することによりFET2のスイッチング動作を実行させる。ECU100は、FET2のスイッチング動作によりランプ6の調光をPWM制御するためのPWM制御信号を生成し、ランプ6に出力する。
【0041】
本実施の形態において、FET2は、nMOS型トランジスタで構成されており、そのドレイン端子がランプ6の一端に接続され、そのソース端子が接地されている。ランプ6の他端は、車載バッテリなど所定の電源電圧+Bに接続されており、FET2のソース端子‐ドレイン端子間に電流が流れることにより、ランプ6に電流が供給されることになる。
【0042】
FET2のゲート端子は、抵抗3を介して、マイクロコンピュータ1に接続されており、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子にPWM信号が出力される。FET2は、ゲート端子に印加されるゲート電圧が所定の閾値以上になった場合に、ソース端子‐ドレイン端子間を導通させ、それらの間に電流を流すことができる。
【0043】
本実施の形態においては、具体的には、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号がHighレベルの時には、FET2は導通し、FET2のドレイン端子は接地電圧に接続されてLowレベルとなる。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はLowレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流が供給されることになる。
【0044】
一方、PWM信号がLowレベルの時には、FET2は遮断され、ドレイン電圧はHighレベルを維持している。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はHighレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流は供給されないことになる。
【0045】
したがって、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号のデューティー比を調節することにより、ランプ6に供給される電流の平均量を変化させることができ、それにより、ランプ6の調光を制御することができる。なお、FET2としては、種々のものを用いることができるが、安価でしかも比較的高い耐電圧性能を持つMOSFETが好ましい。MOSFETであれば、高いPWM周波数であっても、PWM信号のon/offに追従して、良好なPWM制御を実現することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態にかかるECU100では、FET2のゲート端子と接地電圧との間に、FET2と並列にコンデンサ5が配置されている。すなわち、コンデンサ5は、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子に至るまでの間に接続されている。
【0047】
次に、本実施の形態にかかるECUの動作についてさらに説明する。従来技術においては、上述したコンデンサ5の作用による、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり形状を鈍らせる量が大きすぎた場合、図10(a)及び(b)に示したように、ECU100からのPWM制御信号が完全にLowレベルまたはHighレベルに達せず、PWM制御信号の高調波成分の増大を招いてしまうことがあった。そこで、本実施の形態にかかるECU100ではさらに、以下に述べる処理を実行する。ここでも、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号の条件として、次のものを用いる。
【0048】
(1)PWM周波数 :400Hz
(2)PWM分解能 :256ステップ
(3)減光時間 :2sec
(4)PWM信号鈍り量:20μsec
図11は、上記の(2)のPWM分解能と上記の(3)の減光時間との関係を示す図である。まず、図11(a)に示すように、減光時間2secをPWM分解能256ステップで割ると、1分解能あたり7.8msecとなる。一方、上記の(1)のPWM周波数が400Hzであることから、繰り返し周期は2.5msec(1/400Hz)である。したがって、図11(b)に示すように、7.8msec/1分解能内で繰り返し周期2.5msecは3周期繰り返され、0.3msec余ることになる。
【0049】
ここで、上記の余りの処理方法としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0050】
(a)1分解能あたり7.5msecとし、減光時間を1.9sec(7.5msec×256)に変更する。
【0051】
(b)繰り返し周期を2.6msecとし、PWM周波数を385Hz(1/0.0026)に変更する。
【0052】
例えば、上記の(a)のように減光時間を変更、調整させた場合、図11(c)に示すように、繰り返し周期2.5msecをPWM分解能256ステップで割ると、1分解能あたり9.8μsecとなる。すなわち、上記のPWM信号の(1)のPWM周波数及び(2)のPWM分解能の条件の下においては、最小のHighレベル期間(または最小のLowレベル期間)t1は、次の値となる。
t1=(1/400Hz)/256ステップ
=9.8μsec
【0053】
本実施の形態では、ランプの減光開始時及び消灯直前におけるPWM信号のデューティー比を制御することにより、PWM制御信号が、減光開始時においては確実にLowレベルに達するようにし、消灯直前においては確実にHighレベルに達するようにし、そうすることにより、PWM制御信号の高調波成分の増大を抑え、ノイズ発生を効果的に抑制する。
【0054】
本実施の形態にかかるPWM制御方法においては、減光開始時のPWM信号のデューティー比のLowレベル期間を上記の最小Lowレベル期間t1よりも長くなるように設定されている。具体的には、減光開始時のLowレベル期間が上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecより長ければ良い。このようにLowレベル期間を設定することにより、減光開始時において、PWM信号は完全に立ち下げることができる。このため、減光開始時におけるPWM制御信号は完全にLowレベルに達することになる。図6は、この点を模式的に示した図である。具体的には、図6(a)に示すように、減光開始時におけるLowレベル期間LT11(最小Lowレベル期間t1)とHighレベル期間HT12のデューティー比の設定では、完全にLowレベルに達することができなかったPWM制御信号が、図6(b)に示すように、Lowレベル期間LT21(LT21>LT11)とHighレベル期間HT22(HT22<HT12)のデューティー比の設定により、完全にLowレベルに達することができるようになる。
【0055】
同様に、本実施の形態にかかるPWM制御方法においては、消灯直前のPWM信号のデューティー比のHighレベル期間を上記の最小Highレベル期間t1よりも長くなるように設定されている。具体的には、消灯直前のHighレベル期間が上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecより長ければ良い。このようにHighレベル期間を設定することにより、消灯直前において、PWM信号は完全に立ち上げることができる。このため、消灯直前におけるPWM制御信号は完全にHighレベルに達することになる。図7は、この点を模式的に示した図である。具体的には、図7(a)に示すように、消灯直前におけるHighレベル期間HT31(最小Highレベル期間t1)とLowレベル期間LT32のデューティー比の設定では、完全にHighレベルに達することができなかったPWM制御信号が、図7(b)に示すように、Highレベル期間HT41(HT41>HT31)とLowレベル期間LT42(LT42<LT32)のデューティー比の設定により、完全にHighレベルに達することができるようになる。
【0056】
次に、本実施の形態の分解能変更部121の動作について具体例を用いて説明する。ここでは、上記(b)の処理方法を採用し、繰り返し周期を2.6msecとする。また、上記の最小のHighレベル期間(または最小のLowレベル期間)t1を10μsecとする。
【0057】
図12は、分解能変更部121の停止時における、ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。また、図13は、分解能変更部121の停止時における、ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。
【0058】
図12に示すように、減光開始時の最初の2ステップでは、PWM制御信号が完全にLowレベルに立ち下がっていない。同様に、図13に示すように、消灯直前の最後の2ステップでは、PWM制御信号が完全にHighレベルに立ち上がっていない。
【0059】
図14は、分解能変更部121の動作時における、ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。また、図15は、分解能変更部121の動作時における、ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。
【0060】
図14及び15の場合では、分解能変更部121の動作により、減光開始時の最初の2ステップ及び消灯直前の最後の2ステップのそれぞれの分解能を変更し、PWM信号のLowレベル期間及びHighレベル期間を30μsecとしている。この分解能の変更により、図14に示すように、減光開始時の最初の2ステップにおいても、PWM制御信号が完全にLowレベルに立ち下がり、同様に、図15に示すように、消灯直前の最後の2ステップにおいても、PWM制御信号は完全にHighレベルに立ち上がっている。
【0061】
図16は、分解能変更部121の動作時における、ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。また、図17は、分解能変更部121の動作時における、ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。
【0062】
図16及び17の場合では、分解能変更部121の動作により、減光開始時の最初の2ステップ及び消灯直前の最後の2ステップのそれぞれの分解能を変更し、PWM信号をLowレベル及びHighレベルに固定している。この分解能の変更により、図16に示すように、減光開始時の最初の2ステップにおいて、PWM制御信号はHighレベルに固定され、同様に、図17に示すように、消灯直前の最後の2ステップにおいて、PWM制御信号はLowレベルに固定される。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、PWM制御信号の減光開始時及び消灯直前におけるPWM信号のデューティー比を制御することにより、PWM制御信号が、減光開始時においては確実にLowレベルに達するようにし、消灯直前においては確実にHighレベルに達するようにすることができる。このため、PWM制御信号の高調波成分の増大を抑え、ノイズ発生を効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施の形態においては、PWM制御信号を、常時Highレベルである状態からデューティー比を徐々に低下させ、常時Lowレベルである状態(デューティー比が0%)に至るまでにおける、PWM信号のデューティー比の制御について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。PWM制御信号を、常時Lowレベルである状態からデューティー比を徐々に上昇させ、常時Highレベルである状態に至るまでにおける、PWM信号のデューティー比の制御についても同様に適用可能である。
【0065】
今回開示した本発明の実施の形態は、例示であってこれに限定されるものではない。本発明の範囲は開示した内容ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電子制御ユニットの構成を示す模式図である。
【図2】図18のA点におけるPWM信号の波形を示す図である。
【図3】図18のB点におけるPWM制御信号の波形を示す図である。
【図4】PWM信号の鈍り量を説明する図である。
【図5】PWM信号の鈍り量と最小Lowレベル期間または最小Highレベル期間との関係を示す図である。
【図6】図18のB点におけるPWM制御信号の波形を示す図である。
【図7】図18のB点におけるPWM制御信号の波形を示す図である。
【図8】従来のPWM制御信号の波形を示す図である。
【図9】従来のPWM制御信号の波形を示す図である。
【図10】従来のPWM制御信号の波形を示す図である。
【図11】PWM分解能と減光時間との関係を示す図である。
【図12】ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図13】ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図14】ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図15】ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図16】ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図17】ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図18】従来の電子制御ユニットの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 マイクロコンピュータ
2 FET
3、4 抵抗
5 コンデンサ
6 ランプ
11 PWM信号生成部
12 デューティー比設定部
100 ECU
121 分解能変更部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の電子制御ユニットに用いられるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車やトラック等の車両におけるランプの調光やモータ回転数の調節を行う手段として、PWM(Pulse Width Modulation)制御が広く知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、自動車等の車両に搭載される電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)では、PWM出力機能を有するマイクロコンピュータを内蔵し、マイクロコンピュータから出力されるPWM信号を用いてランプ調光やモータ回転数調節を制御するためのPWM制御信号を生成し、出力する。ECUは、マイクロコンピュータからのPWM信号のデューティー比(1周期に対するHighレベル期間の比)を変化させることによりPWM制御信号のデューティー比を変化させて、車両のランプ調光やモータ回転数調節を高精度に行うことができる。車両のランプ調光をPWM制御する場合であれば、図8に示すように、PWM制御信号のデューティー比を徐々に大きくすればランプを徐々に明るくすることができ、逆に、デューティー比を徐々に小さくすればランプを徐々に暗くすることができる。
【0004】
上述したように、車両のランプ調光をPWM制御する場合、PWM制御信号のデューティー比を変化させることによりランプの点灯あるいは消灯が行なわれるが、一方、ランプを所定の輝度で点灯し続けさせるためには、PWM制御信号のデューティー比を所定の値で維持させることが必要となる。ここで、図9(a)に示すように、PWM制御信号の周波数が過度に低いと、車載の室内灯等の場合、ランプ光のちらつきが乗員の目につき、乗員が視覚的にそのちらつきを認識してしまうという問題点がある。
【0005】
このため、車載の室内等のランプを調光制御する場合には、図9(b)に示すように、PWM制御信号の周波数を高くしてPWM制御信号のH‐L間の切り替えを、より多く行うことが、ランプ光のちらつきを低減する上で有効である。
【0006】
上記のようなPWM出力機能を有するECUの近くにAMラジオを設けると、PWM制御の際にECUにノイズが発生することが確認されており、その要因として、ECU内で発生する急峻な電流の増減が挙げられる。すなわち、ECU内では、マイクロコンピュータからのPWM信号がECU内の回路を流れ、ランプの調光等に用いられるPWM制御信号が生成されるが、PWM信号が持つ矩形状の形状のため、PWM制御信号の生成時には回路で発生する電流が急峻に増減してしまう。その急峻な電流の増減により、PWM制御信号の高調波成分の増大を招き、その結果、ECUの近傍に配置されたAMラジオにノイズを引き起こすことになる。
【0007】
このため、一般的には、マイクロコンピュータからのPWM信号が持つ矩形状の形状を鈍らせることにより、上記の電流の急峻な増減を緩和させて、電流の急峻な増減に起因するPWM制御信号の高調波成分の増大を抑制することが行われている。
【特許文献1】特開2000−177480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、AMラジオのアンテナ感度や設置位置、さらにはPWM制御信号に要求される周波数等によっては、上記のPWM信号の形状を鈍らせる量を大きくする必要があり、その結果、次の問題が新たに生じている。以下、具体的に説明する。図18は、従来の電子制御ユニット(ECU)の構成を示す模式図である。図18のECU100は、PWM出力機能を有しており、ランプ6の調光をPWM制御することができるものである。
【0009】
ECU100は、図18に示すように、マイクロコンピュータ1と、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)2と、抵抗3及び4と、コンデンサ5と、を備えている。マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11と、デューティー比設定部12と、を有しており、PWM信号生成部11はPWM信号を生成し、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号のデューティー比は、デューティー比設定部12により適宜設定され、その設定される値は変更可能となっている。マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号をFET2のゲート端子に出力することによりFET2のスイッチング動作を実行させる。ECU100は、FET2のスイッチング動作によりランプ6の調光をPWM制御するためのPWM制御信号を生成し、ランプ6に出力する。
【0010】
FET2は、nMOS型トランジスタで構成されており、そのドレイン端子がランプ6の一端に接続され、そのソース端子が接地されている。ランプ6の他端は、車載バッテリなど所定の電源電圧+Bに接続されており、FET2のソース端子‐ドレイン端子間に電流が流れることにより、ランプ6に電流が供給されることになる。
【0011】
FET2のゲート端子は、抵抗3を介して、マイクロコンピュータ1に接続されており、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子にPWM信号が出力される。FET2は、ゲート端子に印加されるゲート電圧が所定の閾値以上になった場合に、ソース端子‐ドレイン端子間を導通させ、それらの間に電流を流すことができる。
【0012】
具体的には、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号がHighレベルの時には、FET2は導通し、FET2のドレイン端子は接地電圧に接続されてLowレベルとなる。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はLowレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流が供給されることになる。
【0013】
一方、PWM信号がLowレベルの時には、FET2は遮断され、ドレイン電圧はHighレベルを維持している。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はHighレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流は供給されないことになる。
【0014】
したがって、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号のデューティー比を調節することにより、ランプ6に供給される電流の平均量を変化させることができ、それにより、ランプ6の調光を制御することができる。なお、FET2としては、種々のものを用いることができるが、安価でしかも比較的高い耐電圧性能を持つMOSFETが好ましい。MOSFETであれば、高いPWM周波数であっても、PWM信号のon/offに追従して、良好なPWM制御を実現することができる。
【0015】
さらに、ECU100では、FET2のゲート端子と接地電圧との間に、FET2と並列にコンデンサ5が配置されている。すなわち、コンデンサ5は、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子に至るまでの間に接続されている。以下、コンデンサ5の配置による効果について簡単に説明する。
【0016】
上述したように、マイクロコンピュータ1は、デューティー比設定部12により設定されたデューティー比を持つPWM信号をPWM信号生成部により生成し、FET2のゲート端子に出力する。PWM信号は、図2(a)に示したように、HighレベルとLowレベルとの間で周期的に変化する矩形状のパルス信号であるが、コンデンサ5の作用によって、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりにおける電圧の期間的変化が緩やかになる。すなわち、FET2のゲート電圧の変化が緩やかになり、それに伴って、FET2のソース端子‐ドレイン端子の電流の増減も緩やかになり、この電流の急峻な増減に起因するPWM制御信号の高調波成分の増大が効果的に抑制されることになる。図2(a)に、コンデンサ5を配置しない場合における、図18中のA点、すなわち、FET2のゲート端子に出力されるPWM信号の波形を、図2(b)に、コンデンサ5を配置した場合における、FET2のゲート端子に出力されるPWM信号の波形を、図3(a)に、コンデンサ5を配置しない場合における、図18中のB点、すなわち、ECU100から出力されるPWM制御信号の波形を、図3(b)に、コンデンサ5を配置した場合における、ECU100から出力されるPWM制御信号の波形を、それぞれ示しておく。
【0017】
上述したコンデンサ5の作用による、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり形状を鈍らせる量が大きすぎた場合、図10(a)及び(b)に示したように、ECU100からのPWM制御信号が完全にLowレベルまたはHighレベルに達せず、PWM制御信号の高調波成分の増大を招いてしまうことがあった。そこで、本実施の形態にかかるECU100ではさらに、以下に述べる処理を実行する。ここでは、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号の条件として、次のものを用いる。
【0018】
(1)PWM周波数 :400Hz
(2)PWM分解能 :256ステップ
(3)減光時間 :2sec
(4)PWM信号鈍り量:20μsec
なお、上記の(4)のPWM信号鈍り量は、図18のコンデンサ5の容量値及び抵抗4の抵抗値に依存し、図4(a)及び(b)に示すように定義されている。図4(a)は、PWM信号の立ち下がりの波形を示す拡大図であり、図4(b)は、PWM信号の立ち下がりの波形を示す拡大図である。
【0019】
上記のPWM信号の(1)のPWM周波数及び(2)のPWM分解能の条件の下においては、最小のHighレベル期間(または最小のLowレベル期間)t1は、次の値となる。
【0020】
t1=(1/400Hz)/256ステップ
=9.8μsec
この場合、通常、PWM制御信号を常時Highレベルである状態(デューティー比が100%)からデューティー比を徐々に低下させていく場合、その低下開始時(減光開始時)のデューティー比は上記の最小Lowレベル期間t1から開始するが、上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecの条件の下では、最小のLowレベル期間t1においては、PWM信号は完全に立ち下がることはできない。このため、図5(a)に示すように、減光開始時では、PWM制御信号が完全にLowレベルに達しないことになる。
【0021】
同様に、PWM制御信号が常時Lowレベルである状態(デューティー比が0%)になる直前時(消灯直前)におけるデューティー比では、Highレベル期間は上記の最小Highレベル期間t1とするが、上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecの条件の下では、PWM信号は完全に立ち上がることはできない。このため、図5(b)に示すように、PWM制御信号が常時Lowレベルである状態(デューティー比が0%)になる直前(消灯直前)においては、PWM制御信号が今度は完全にHighレベルに達しないことになる。したがって、いずれの場合においても、PWM制御信号は急激に変化することとなり、その高調波成分を増大させてしまう。
【0022】
このような状況は、上記の(3)の減光時間2secの条件下では、減光開始時及び消灯直前のそれぞれにおける、2sec/256ステップ=7.8msecの間において継続されることになり、この間、AMラジオにノイズが発生してしまう。この時、AMラジオの受信感度が良くない局を選局中であれば、AMラジオの聴取者にとって不快な音がスピーカーから流れてしまうことになる。
【0023】
すなわち、図10(a)に示すように、PWM制御信号が常時Highレベルである状態から、徐々にそのデューティー比を小さくしていく場合、マイクロコンピュータからのPWM信号の形状を鈍らせる量が過度に大きいとその立ち上がりや立ち下がりが遅れ、図中Cで示す箇所では、PWM制御信号が完全にLowレベルに達しない。その結果、PWM制御信号の高調波成分を増大させることになり、新たなノイズの発生を招いてしまう。また、その後、図10(b)に示すように、PWM制御信号が常時Lowレベルになる状態の直前においては(図中Dで示す箇所)、PWM制御信号が今度は完全にHighレベルに達しないので、やはりPWM制御信号の高調波成分の増大を招いてしまい、上記と同様、ノイズ発生を十分に抑制することができない。
【0024】
上記問題点に鑑み、本発明は、ノイズ発生を効果的に抑制することができるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、本発明にかかるPWM制御方法は、PWM信号のデューティー比を所定の分解能で増減させることによりPWM制御する場合におけるPWM信号のデューティー比を制御する方法であって、PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする。
【0026】
上記のPWM制御方法では、PWM信号のデューティー比におけるハイ期間がPWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてハイ期間を立ち上がり時間よりも長くし、PWM信号のデューティー比におけるロウ期間がPWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてロウ期間を立ち下がり時間よりも長くするように、PWM信号が制御される。このため、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりが確実に行われることになる。ここで、PWM信号の印加によりトランジスタをオン/オフ動作させてPWM制御信号を発生させる場合でも、トランジスタのオン/オフ動作を確実に行うことができるので、発生されるPWM制御信号の高調波成分を効果的に抑制することができる。
【0027】
また、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定するようにしてもよい。
【0028】
この場合、PWM信号の印加によりトランジスタをオン/オフ動作させてPWM制御信号を発生させる場合でも、トランジスタのオン/オフ動作をより確実に行うことができる。
【0029】
本発明に係るPWM制御装置は、所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、PWM制御信号を発生させるトランジスタと、前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の時間変化率を低下させるコンデンサとを備え、前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする。
【0030】
上記のPWM制御装置では、PWM信号のデューティー比におけるハイ期間がPWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてハイ期間を立ち上がり時間よりも長くし、PWM信号のデューティー比におけるロウ期間がPWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてロウ期間を立ち下がり時間よりも長くするように、PWM信号が制御される。このため、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりが確実に行われることになる。その結果、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作が確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定するようにしてもよい。
【0032】
この場合、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作がより確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分をより効果的に抑制することができる。
【0033】
本発明に係る調光装置は、ランプと、前記ランプにPWM制御信号を与え、前記ランプの点灯を制御するPWM制御装置とを含み、前記PWM制御装置は、所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、前記PWM制御信号を発生させるトランジスタと、前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサとを備え、前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間を前記PWM信号の立ち上がり時間よりも長くし、前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間を前記PWM信号の立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする。
【0034】
上記の調光装置では、ランプの減光開始時に、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてPWM信号のデューティー比におけるハイ期間をPWM信号の立ち上がり時間よりも長くし、ランプの消灯直前に、PWM信号のデューティー比の分解能を大きくしてPWM信号のデューティー比におけるロウ期間をPWM信号の立ち下がり時間よりも長くするように、PWM信号が制御される。このため、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がりが確実に行われることになる。その結果、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作が確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分を効果的に抑制することができる。したがって、このようなPWM制御信号をランプに与えることにより、ランプ光のちらつきを抑え、車載の室内灯等の場合であれば、乗員が視覚的にそのちらつきを認識してしまうという問題点を解消することができる。
【0035】
また、前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号をハイレベルに固定し、前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号をロウレベルに固定するようにしてもよい。
【0036】
この場合、PWM信号が印加されるトランジスタのオン/オフ動作がより確実に行うことができるので、トランジスタのオン/オフ動作により発生されるPWM制御信号の高調波成分をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ノイズ発生を効果的に抑制することができるPWM制御方法及び装置、並びに、調光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一部分には同一符号を付し、図面で同一の符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。図1は、本発明の実施の形態にかかる電子制御ユニット(ECU)の構成を示す模式図である。図1のECU100は、PWM出力機能を有しており、ランプ6の調光をPWM制御することができるものである。
【0039】
本実施の形態にかかるECU100は、図1に示すように、マイクロコンピュータ1と、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)2と、抵抗3及び4と、コンデンサ5と、を備えている。マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11と、デューティー比設定部12と、を有しており、PWM信号生成部11はPWM信号を生成し、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号のデューティー比は、デューティー比設定部12により適宜設定され、その設定される値は変更可能となっている。また、デューティー比設定部12には、本発明の特徴部分である、デューティー比の分解能を適宜変更可能な分解能変更部121が搭載されており、必要に応じてデューティー比の分解能を変更し、設定する。
【0040】
マイクロコンピュータ1は、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号をFET2のゲート端子に出力することによりFET2のスイッチング動作を実行させる。ECU100は、FET2のスイッチング動作によりランプ6の調光をPWM制御するためのPWM制御信号を生成し、ランプ6に出力する。
【0041】
本実施の形態において、FET2は、nMOS型トランジスタで構成されており、そのドレイン端子がランプ6の一端に接続され、そのソース端子が接地されている。ランプ6の他端は、車載バッテリなど所定の電源電圧+Bに接続されており、FET2のソース端子‐ドレイン端子間に電流が流れることにより、ランプ6に電流が供給されることになる。
【0042】
FET2のゲート端子は、抵抗3を介して、マイクロコンピュータ1に接続されており、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子にPWM信号が出力される。FET2は、ゲート端子に印加されるゲート電圧が所定の閾値以上になった場合に、ソース端子‐ドレイン端子間を導通させ、それらの間に電流を流すことができる。
【0043】
本実施の形態においては、具体的には、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号がHighレベルの時には、FET2は導通し、FET2のドレイン端子は接地電圧に接続されてLowレベルとなる。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はLowレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流が供給されることになる。
【0044】
一方、PWM信号がLowレベルの時には、FET2は遮断され、ドレイン電圧はHighレベルを維持している。すなわち、ECU100からのPWM制御信号はHighレベルとなり、電源電圧からランプ6に電流は供給されないことになる。
【0045】
したがって、マイクロコンピュータ1から出力されるPWM信号のデューティー比を調節することにより、ランプ6に供給される電流の平均量を変化させることができ、それにより、ランプ6の調光を制御することができる。なお、FET2としては、種々のものを用いることができるが、安価でしかも比較的高い耐電圧性能を持つMOSFETが好ましい。MOSFETであれば、高いPWM周波数であっても、PWM信号のon/offに追従して、良好なPWM制御を実現することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態にかかるECU100では、FET2のゲート端子と接地電圧との間に、FET2と並列にコンデンサ5が配置されている。すなわち、コンデンサ5は、マイクロコンピュータ1からFET2のゲート端子に至るまでの間に接続されている。
【0047】
次に、本実施の形態にかかるECUの動作についてさらに説明する。従来技術においては、上述したコンデンサ5の作用による、PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり形状を鈍らせる量が大きすぎた場合、図10(a)及び(b)に示したように、ECU100からのPWM制御信号が完全にLowレベルまたはHighレベルに達せず、PWM制御信号の高調波成分の増大を招いてしまうことがあった。そこで、本実施の形態にかかるECU100ではさらに、以下に述べる処理を実行する。ここでも、PWM信号生成部11により生成されるPWM信号の条件として、次のものを用いる。
【0048】
(1)PWM周波数 :400Hz
(2)PWM分解能 :256ステップ
(3)減光時間 :2sec
(4)PWM信号鈍り量:20μsec
図11は、上記の(2)のPWM分解能と上記の(3)の減光時間との関係を示す図である。まず、図11(a)に示すように、減光時間2secをPWM分解能256ステップで割ると、1分解能あたり7.8msecとなる。一方、上記の(1)のPWM周波数が400Hzであることから、繰り返し周期は2.5msec(1/400Hz)である。したがって、図11(b)に示すように、7.8msec/1分解能内で繰り返し周期2.5msecは3周期繰り返され、0.3msec余ることになる。
【0049】
ここで、上記の余りの処理方法としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0050】
(a)1分解能あたり7.5msecとし、減光時間を1.9sec(7.5msec×256)に変更する。
【0051】
(b)繰り返し周期を2.6msecとし、PWM周波数を385Hz(1/0.0026)に変更する。
【0052】
例えば、上記の(a)のように減光時間を変更、調整させた場合、図11(c)に示すように、繰り返し周期2.5msecをPWM分解能256ステップで割ると、1分解能あたり9.8μsecとなる。すなわち、上記のPWM信号の(1)のPWM周波数及び(2)のPWM分解能の条件の下においては、最小のHighレベル期間(または最小のLowレベル期間)t1は、次の値となる。
t1=(1/400Hz)/256ステップ
=9.8μsec
【0053】
本実施の形態では、ランプの減光開始時及び消灯直前におけるPWM信号のデューティー比を制御することにより、PWM制御信号が、減光開始時においては確実にLowレベルに達するようにし、消灯直前においては確実にHighレベルに達するようにし、そうすることにより、PWM制御信号の高調波成分の増大を抑え、ノイズ発生を効果的に抑制する。
【0054】
本実施の形態にかかるPWM制御方法においては、減光開始時のPWM信号のデューティー比のLowレベル期間を上記の最小Lowレベル期間t1よりも長くなるように設定されている。具体的には、減光開始時のLowレベル期間が上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecより長ければ良い。このようにLowレベル期間を設定することにより、減光開始時において、PWM信号は完全に立ち下げることができる。このため、減光開始時におけるPWM制御信号は完全にLowレベルに達することになる。図6は、この点を模式的に示した図である。具体的には、図6(a)に示すように、減光開始時におけるLowレベル期間LT11(最小Lowレベル期間t1)とHighレベル期間HT12のデューティー比の設定では、完全にLowレベルに達することができなかったPWM制御信号が、図6(b)に示すように、Lowレベル期間LT21(LT21>LT11)とHighレベル期間HT22(HT22<HT12)のデューティー比の設定により、完全にLowレベルに達することができるようになる。
【0055】
同様に、本実施の形態にかかるPWM制御方法においては、消灯直前のPWM信号のデューティー比のHighレベル期間を上記の最小Highレベル期間t1よりも長くなるように設定されている。具体的には、消灯直前のHighレベル期間が上記の(4)のPWM信号鈍り量20μsecより長ければ良い。このようにHighレベル期間を設定することにより、消灯直前において、PWM信号は完全に立ち上げることができる。このため、消灯直前におけるPWM制御信号は完全にHighレベルに達することになる。図7は、この点を模式的に示した図である。具体的には、図7(a)に示すように、消灯直前におけるHighレベル期間HT31(最小Highレベル期間t1)とLowレベル期間LT32のデューティー比の設定では、完全にHighレベルに達することができなかったPWM制御信号が、図7(b)に示すように、Highレベル期間HT41(HT41>HT31)とLowレベル期間LT42(LT42<LT32)のデューティー比の設定により、完全にHighレベルに達することができるようになる。
【0056】
次に、本実施の形態の分解能変更部121の動作について具体例を用いて説明する。ここでは、上記(b)の処理方法を採用し、繰り返し周期を2.6msecとする。また、上記の最小のHighレベル期間(または最小のLowレベル期間)t1を10μsecとする。
【0057】
図12は、分解能変更部121の停止時における、ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。また、図13は、分解能変更部121の停止時における、ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。
【0058】
図12に示すように、減光開始時の最初の2ステップでは、PWM制御信号が完全にLowレベルに立ち下がっていない。同様に、図13に示すように、消灯直前の最後の2ステップでは、PWM制御信号が完全にHighレベルに立ち上がっていない。
【0059】
図14は、分解能変更部121の動作時における、ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。また、図15は、分解能変更部121の動作時における、ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。
【0060】
図14及び15の場合では、分解能変更部121の動作により、減光開始時の最初の2ステップ及び消灯直前の最後の2ステップのそれぞれの分解能を変更し、PWM信号のLowレベル期間及びHighレベル期間を30μsecとしている。この分解能の変更により、図14に示すように、減光開始時の最初の2ステップにおいても、PWM制御信号が完全にLowレベルに立ち下がり、同様に、図15に示すように、消灯直前の最後の2ステップにおいても、PWM制御信号は完全にHighレベルに立ち上がっている。
【0061】
図16は、分解能変更部121の動作時における、ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。また、図17は、分解能変更部121の動作時における、ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートであり、(a)は、そのPWM信号のタイミングチャートであり、(b)は、そのPWM制御信号のタイミングチャートである。
【0062】
図16及び17の場合では、分解能変更部121の動作により、減光開始時の最初の2ステップ及び消灯直前の最後の2ステップのそれぞれの分解能を変更し、PWM信号をLowレベル及びHighレベルに固定している。この分解能の変更により、図16に示すように、減光開始時の最初の2ステップにおいて、PWM制御信号はHighレベルに固定され、同様に、図17に示すように、消灯直前の最後の2ステップにおいて、PWM制御信号はLowレベルに固定される。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、PWM制御信号の減光開始時及び消灯直前におけるPWM信号のデューティー比を制御することにより、PWM制御信号が、減光開始時においては確実にLowレベルに達するようにし、消灯直前においては確実にHighレベルに達するようにすることができる。このため、PWM制御信号の高調波成分の増大を抑え、ノイズ発生を効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施の形態においては、PWM制御信号を、常時Highレベルである状態からデューティー比を徐々に低下させ、常時Lowレベルである状態(デューティー比が0%)に至るまでにおける、PWM信号のデューティー比の制御について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。PWM制御信号を、常時Lowレベルである状態からデューティー比を徐々に上昇させ、常時Highレベルである状態に至るまでにおける、PWM信号のデューティー比の制御についても同様に適用可能である。
【0065】
今回開示した本発明の実施の形態は、例示であってこれに限定されるものではない。本発明の範囲は開示した内容ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電子制御ユニットの構成を示す模式図である。
【図2】図18のA点におけるPWM信号の波形を示す図である。
【図3】図18のB点におけるPWM制御信号の波形を示す図である。
【図4】PWM信号の鈍り量を説明する図である。
【図5】PWM信号の鈍り量と最小Lowレベル期間または最小Highレベル期間との関係を示す図である。
【図6】図18のB点におけるPWM制御信号の波形を示す図である。
【図7】図18のB点におけるPWM制御信号の波形を示す図である。
【図8】従来のPWM制御信号の波形を示す図である。
【図9】従来のPWM制御信号の波形を示す図である。
【図10】従来のPWM制御信号の波形を示す図である。
【図11】PWM分解能と減光時間との関係を示す図である。
【図12】ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図13】ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図14】ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図15】ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図16】ランプの減光開始時のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図17】ランプの消灯直前のPWM信号及びPWM制御信号のタイミングチャートである。
【図18】従来の電子制御ユニットの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 マイクロコンピュータ
2 FET
3、4 抵抗
5 コンデンサ
6 ランプ
11 PWM信号生成部
12 デューティー比設定部
100 ECU
121 分解能変更部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM信号のデューティー比を所定の分解能で増減させることによりPWM制御する場合におけるPWM信号のデューティー比を制御する方法であって、
PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とするPWM制御方法。
【請求項2】
前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定することを特徴とする請求項1に記載のPWM制御方法。
【請求項3】
所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、
前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、
ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、PWM制御信号を発生させるトランジスタと、
前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサと
を備え、
前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とするPWM制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定することを特徴とする請求項3に記載のPWM制御装置。
【請求項5】
ランプと、
前記ランプにPWM制御信号を与え、前記ランプの点灯を制御するPWM制御装置と
を含み、
前記PWM制御装置は、
所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、
前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、
ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、前記PWM制御信号を発生させるトランジスタと、
前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサと
を備え、
前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間を前記PWM信号の立ち上がり時間よりも長くし、
前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間を前記PWM信号の立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする調光装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号をハイレベルに固定し、
前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号をロウレベルに固定することを特徴とする請求項5に記載の調光装置。
【請求項1】
PWM信号のデューティー比を所定の分解能で増減させることによりPWM制御する場合におけるPWM信号のデューティー比を制御する方法であって、
PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とするPWM制御方法。
【請求項2】
前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定することを特徴とする請求項1に記載のPWM制御方法。
【請求項3】
所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、
前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、
ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、PWM制御信号を発生させるトランジスタと、
前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサと
を備え、
前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ハイ期間を前記立ち上がり時間よりも長くし、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記ロウ期間を前記立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とするPWM制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間が前記PWM信号の立ち上がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をハイレベルに固定し、
前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間が前記PWM信号の立ち下がり時間よりも短い場合には、前記PWM信号をロウレベルに固定することを特徴とする請求項3に記載のPWM制御装置。
【請求項5】
ランプと、
前記ランプにPWM制御信号を与え、前記ランプの点灯を制御するPWM制御装置と
を含み、
前記PWM制御装置は、
所定の分解能で増減可能なデューティー比を持つPWM信号を生成する生成部と、
前記PWM信号のデューティー比を設定する設定部と、
ゲート端子を有し、前記PWM信号が前記ゲート端子に印加されることによりオン/オフ動作し、前記PWM制御信号を発生させるトランジスタと、
前記生成部から前記トランジスタの前記ゲート端子に至る経路の途中に配置され、前記PWM信号の立ち上がり及び立ち下がり時の時間変化率を低下させるコンデンサと
を備え、
前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるハイ期間を前記PWM信号の立ち上がり時間よりも長くし、
前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号のデューティー比の分解能を大きくして前記PWM信号のデューティー比におけるロウ期間を前記PWM信号の立ち下がり時間よりも長くすることを特徴とする調光装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記ランプの減光開始時に、前記PWM信号をハイレベルに固定し、
前記ランプの消灯直前に、前記PWM信号をロウレベルに固定することを特徴とする請求項5に記載の調光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−105821(P2009−105821A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277733(P2007−277733)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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