説明

RFタグリーダ及び方法

【課題】RFタグリーダにおいて、管理対象体に同行するRFタグと適切に通信を行うこと。
【解決手段】RFタグリーダは、第1のエリアをカバーする指向性を有するメインアンテナと、第1のエリアより狭い第2のエリアをカバーする指向性を有するサブアンテナと、メインアンテナ及びサブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段とを有する。切替制御手段は、1以上の管理対象体と共に移動する無線通信手段から、サブアンテナを介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナを前記サブアンテナから前記メインアンテナに切り替える。そして、メインアンテナを介して、管理対象体に同伴するRFタグとの通信が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグ及びRFタグリーダ間の無線通信に関連し、特にパッシブ型のRFタグ用のリーダ及びリーダで使用される方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFタグを利用するシステムが注目されており、このシステムはRFタグ及びRFタグリーダ(又はリーダ/ライタ装置)を含む。リーダ/ライタ装置は、RFタグからの情報を読み取る又はそこへ情報を書き込むことができる。リーダ/ライタ装置は質問器(interrogator)とも呼ばれる。RFタグは、無線タグ、RFID、RFIDタグ、ICタグ、電子タグ等と言及される。
【0003】
RFタグには一般に能動型(アクティブ型)と受動型(パッシブ型)がある。アクティブ型のRFタグは、自ら電力を用意することができ、RFタグリーダ側の装置構成を簡単にすることができる。後者は、自ら電力を用意することはできず、外部からエネルギーを受けることによって、ID情報の送信等の動作が行なわれる。パッシブ型は、RFタグを安価にする等の観点から好ましく、将来的に特に有望である。
【0004】
使用する信号の周波数帯域の観点からは、電磁結合方式と電磁波方式とがある。前者は数キロヘルツ程度の周波数帯域や、13.56MHz程度の周波数帯域等を使用する。後者は、UHF帯(例えば950MHz)や、2.45GHzのような高い周波数帯域を使用する。通信可能な距離を増やす等の観点からは高い周波数の信号を使用することが望ましい。
【0005】
RFタグを利用するシステムでは、RFタグを通じて何らかの識別情報(ID)や製品番号等のようなデータが読み書きされ、製品や荷物の管理等が行われる。
【0006】
図1はRFタグの付された荷物12をRFタグリーダ11と共に管理する様子を模式的に示す。個々の荷物にはA,B,...,Jで示されるRFタグが付され、これらが不図示の台車に乗せられ、地点(P),(Q),(R)を通るように移動させられる。移動は、人により又は機械的になされてもよい。リーダライタは(Q)の地点でそれら全てのRFタグと通信し、RFタグ中の情報を抽出する。(Q)の地点では、リーダライタ(RFタグリーダ)から所定のレベル以上の電波が放射され、そのエリア(読取エリア)13に在圏するRFタグは電波を整流して電力を確保し、各自の記憶情報をリーダライタへ無線送信する。図中、読取エリアは破線の楕円で示されている。(Q)地点でRFタグとRFタグリーダとの通信が完了すると、それらの荷物は(R)の地点に移動し、以下同様な手順が続く。このようにして荷物に付されたRFタグ中の情報が自動的にリーダライタで抽出され、適切な管理業務が行われる。
【0007】
ところで、リーダライタから放射された電波の空間的な強度分布は、実環境では必ずしも遠方ほど弱いとは限らない。屋内又は壁の形状や材質その他の要因に起因して、電波は様々に反射するかもしれないからである。このため所定の「読取エリア」以外でもRFタグが情報を送信することの可能な地域が出現するかもしれない。
【0008】
図2は、そのような「意図されない読取エリア」14が本来の読取エリア13とは別に(あたかもホットスポットであるかのように)に出現している様子を示す。本来の読取エリアは、システム設計で想定されている領域であり、図1と同様に(Q)の位置での大きな楕円で示されている。意図されていない読取エリアは、システム設計では想定されていない領域であり、(P)の位置の小さな楕円で示されている。これら2つの楕円の中で、RFタグは無線送信可能である。
【0009】
図2に示されているように、(P)の場所(意図されない読取領域14)で、RFタグB,C,Dは通信可能になり、各自の情報をリーダライタに報告する。他のRFタグは図示の状況では通信できない。以後これらの荷物は(Q)の位置に動かされ、RFタグ及びリーダライタは本来の通信を行おうとする。この場合に、RFタグB,C,Dは既に各自の情報を報告済みである。仮に(P)から(Q)へ荷物が動かされる間、RFタグB,C,Dに電力が供給されたならば、それらは自分が報告済みであることを記憶でき、(Q)の場所に着いても重複的に記憶情報を送信しないであろう。しかしながら、(P)から(Q)へ荷物が動かされる間に、リーダライタからの電波はタグB,C,Dに充分に供給されないので、RFタグB,C,Dは(P)地点で報告したことを忘れ、(Q)地点で改めて記憶情報をリーダライタに報告してしまう。RFタグの通信可能な領域が大小の楕円で示されるならば、それ以外の領域ではRFタグは通信できず、RFタグの情報の報告が重複的になされてしまう。その結果、RFタグB,C,Dに関する情報処理(RFタグ及びリーダライタでの処理)が重複的に行われ、処理時間及び処理労力が余分に費やされてしまうおそれがある。これは管理対象物の管理業務を速やかに進める観点からは有利なことではない。
【0010】
また、図2で(P)から(Q)へ荷物が動かされる間に、仮にRFタグB,C,D各自が(Q)地点でリーダライタに重複的に報告をしなかったとしても問題は残る。(P)地点で生じた「意図されない読取エリア」は、荷物全てを検査する程度に充分に大きくはない(図では小さな楕円で示されている)。従って、(P)地点で一部の荷物に関する情報がリーダライタに報告され、その後(Q)地点で残りの荷物に関する情報がリーダライタに報告されることになる。結局、全部の荷物についての情報が揃うのは(Q)地点での通信終了後であり、(P)地点から(Q)地点に至るまで処理時間が長引いてしまう。従ってRFタグ情報全てを一度に揃えることができず、この点も、管理対象物の管理業務を速やかに進める観点から有利なことではない。
【0011】
特許文献1では、搬送波に使用されている周波数の電波が弱まるような環境では、RFタグとの通信が行われにくくなり、データ通信速度が低下してしまうことに鑑み、そのような環境では搬送波の周波数を高くしてデータ通信速度の向上を図ることが記載されている。しかしながら通信状況に応じて搬送波周波数を変えたとしても、意図されない読取エリアが出現してしまう問題には十分に対処できない。また、搬送波を変えるにはそれを実現するための工夫がリーダライタだけでなくRFタグにも必要になり、実現化が困難になるおそれがある。
【特許文献1】特開2005−209002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、管理対象体に同行するRFタグと適切に通信を行うためのRFタグリーダ及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、第1のエリアをカバーする指向性を有するメインアンテナと、前記第1のエリアより狭い第2のエリアをカバーする指向性を有するサブアンテナと、前記メインアンテナ及び前記サブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段とを有するRFタグリーダが使用される。切替制御手段は、1以上の管理対象体と共に移動する無線通信手段から、前記サブアンテナを介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナを前記サブアンテナから前記メインアンテナに切り替える。そして、前記メインアンテナを介して、前記管理対象体に同伴するRFタグとの通信が行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、RFタグリーダにおいて、管理対象体に同行するRFタグと適切に通信を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一形態によれば、メインアンテナより狭いエリアをカバーするサブアンテナがRFタグリーダに設けられる。例えば荷物である管理対象体と共に移動する無線通信手段から、サブアンテナを介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナはサブアンテナからメインアンテナに切り替えられる。その後にメインアンテナを介して、管理対象体に同伴するRFタグとの通信が行われる。
【0016】
狭いエリアをカバーするサブアンテナは、意図されない読取エリアを生じさせない(又は生じさせたとしても無視できる)ので、サブアンテナを用いることで荷物の位置検出を正確に行うことができる。その結果、荷物が本来の読取エリアに来たことをトリガとしてメインアンテナによる通信を始めることができる。従って荷物が本来の読取エリアに来る前にメインアンテナがRFタグと不適切に通信することを効果的に抑制でき、荷物の管理業務の円滑化を図ることができる。
【0017】
また、サブアンテナ及び切替のための要素はRFタグリーダに用意されればよく、RFタグその他のシステム内の要素は何ら変更されなくてよい。これは実際のシステムに本発明を簡易に導入できる点で好ましい。
【0018】
サブアンテナのアンテナ利得はメインアンテナのアンテナ利得より低いことが好ましい。一例として、メインアンテナは平面パッチアンテナで構成され、サブアンテナがダイポールアンテナで構成されてもよい。これはRFタグリーダの小型化及び低コスト化の観点から好ましい。
【0019】
サブアンテナは、アンテナ利得を下げるための減衰器を含んでもよい。これは、指向性の比較的鋭い低利得アンテナを簡易に実現する観点から好ましい。
【0020】
メインアンテナもサブアンテナもアンテナ利得を調整する手段をそれぞれ備えていてもよい。これはアンテナ利得を除いてメインアンテナ及びサブアンテナを同等に取り扱うことができ、設計の自由度を大きく確保できる等の点で好ましい。
【0021】
サブアンテナを介してRFタグリーダと通信する無線通信手段は、荷物各々に同伴するRFタグのいずれかでもよいし、荷物各々に同伴するどのRFタグとも異なるRFタグでもよい。前者の場合、RFタグの付いた荷物の何れかを位置検出(荷物が読取エリアに来たことの検出)に利用できるので、RFタグリーダ以外の要素を変更せずに本発明を導入する観点から好ましい。後者の場合、無線通信手段は、荷物を搬送又は運搬するための搬送手段に取り付けられてもよい。これは、荷物の積み方によらず、荷物の位置検出を確実に行う観点から好ましい。前者の場合、荷物全てのRFタグからの情報を集めるには、サブアンテナによる位置検出期間に加えて以後のメインアンテナによる通信終了までの期間を要する。後者の場合、メインアンテナによる通信期間だけで荷物全てのRFタグから情報を集めることができる。従って短期間に多くのRFタグから情報を収集し、荷物管理に関する情報処理を促す観点からは後者の方が好ましい。
【0022】
メインアンテナとサブアンテナで異なる偏波特性の電波が使用されてもよい。これも、荷物の積み方によらず、荷物の位置検出を確実に行う観点から好ましい。偏波特性の異なる電波として、偏向面が異なる直線偏波が利用されてもよいし、旋回方向の異なる円偏波が使用されてもよい。
【0023】
サブアンテナは複数のアンテナ素子を含むアレーアンテナで構成されてもよい。これは、サブアンテナの指向性を様々に調整できる点で好ましい。単に利得を下げるだけでは、指向性パターンは相似形になるかもしれないが、アレーアンテナの場合は相似形でない指向性を実現でき、例えば、メインアンテナの指向方向と異なる指向方向のサブアンテナを実現できる。これは、荷物用のRFタグと台車のRFタグの方向がかなり異なっているような場合に特に有利である。
【0024】
説明の便宜上、本発明が幾つかの実施例に分けて説明されるが、各実施例の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の実施例が必要に応じて使用されてよい。
【実施例1】
【0025】
図3は本発明の一実施例によるRFタグリーダがRFタグと通信を行う様子を示す。本実施例では、リーダライタ(RFタグリーダ)30は、第1のエリア13をカバーする指向性を有するメインアンテナ31と、第1のエリア13より狭い第2のエリア33をカバーする指向性を有するサブアンテナ32と、メインアンテナ及びサブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段を有する。本実施例では、第2のエリア33は第1のエリア13と重複している。
【0026】
1以上の荷物(管理対象体)12と共に移動する無線通信手段(第1実施例では、「A」で示されるRFタグ11)から、サブアンテナ32を介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナが、サブアンテナ32からメインアンテナ31に切り替えられる。以後メインアンテナ31を介して、荷物に同伴する多数のRFタグ11との通信が行われる。サブアンテナ32を介して応答信号が得られなかったならば、メインアンテナによる通信は行われない。従って、荷物の全部又は一部が、意図されない読取エリア14に入ったとしても、RFタグリーダ30は直ちには通信を行わず、その通信は、サブアンテナ32による応答信号の検出まで待機させられる。これにより、RFタグの情報が重複的に読み取られる問題を少なくとも軽減できる。
【0027】
図4は、リーダライタ30の部分的な機能ブロック図である。図4には、メインアンテナ31、サブアンテナ32、スイッチ41、サーキュレータ42、受信器43、復調器44、信号処理回路45、制御回路46、変調器47及び送信器48が描かれている。
【0028】
メインアンテナ31は、第1のエリア13をカバーする指向性を有する。
【0029】
サブアンテナ32、第1のエリア13より狭い第2のエリア33をカバーする指向性を有する。一例として、第2のエリア33は第1のエリア13の1/4の面積を網羅してもよい。
【0030】
スイッチ41は、制御回路からの指示に応じて、メインアンテナ及びサブアンテナを選択的に切り替える。
【0031】
サーキュレータ42は送信信号及び受信信号を適切に分離する。
【0032】
受信器43は受信信号の電力、帯域及び位相等を適切に調整し、ベースバンドで処理しやすい信号に変換する。
【0033】
復調器44は受信信号をデータ復調する。
【0034】
信号処理回路45は制御回路46の制御の下で様々な信号処理を行う。
【0035】
制御回路46はリーダライタ中の各要素の動作を制御する。特に、制御回路46は図5に示される手順に従って通信に使用するアンテナを切り替えるための制御信号をスイッチ41に与える。
【0036】
変調器47は送信信号をデータ変調する。
【0037】
送信器48は送信信号の電力、帯域及び位相等を適切に調整し、無線送信しやすい信号に変換する。
【0038】
図5は本発明の一実施例によるリーダライタで(特に、制御回路46で)使用される方法を示す。ステップS1では、リーダライタ30は通信にサブアンテナ32が使用されるようスイッチ41を設定している。リーダライタ30は、サブアンテナ32を介して電波を第2のエリア33に放射している。この電波は、RFタグがそれを受信すると電力に変換可能なものである。
【0039】
ステップS2では、RFタグからの応答信号が受信されたか否かが確認される。より具体的には、図3に示されるような状況になり、第2のエリア33に「A」で示されるRFタグ11が入って来ると、そのRFタグは受信した電波を整流し、それを電力に変換し、RFタグに記憶済みの製品情報その他の情報をリーダライタに応答信号として送信する。ステップS2で応答信号が得られると、フローはステップS3に進むが、得られなければフローはそれが得られるまで待機する。
【0040】
ステップS3では、第2のエリア33中のRFタグからの応答信号が受信され、必要に応じてそれが処理及び記憶される。そして、制御回路46は通信用のアンテナをサブアンテナ32からメインアンテナ31に切り替えるよう制御信号をスイッチ41に与える。
【0041】
ステップS4では、メインアンテナ31及びRFタグの通信が行われる。即ち、メインアンテナ31から電波が放出され、その電波を受けたRFタグB〜Jが各自の情報をリーダライタ30に応答信号として送信する。RFタグAは自身の情報を報告済みであり、アンテナの切替の前後で適切に電力が供給されているので、重複して情報を送信せずに済む。リーダライタ30は多数のRFタグ各々から適切な情報を順に取得するため、適切な如何なる通信プロトコルが利用されてもよい。
【0042】
ステップS5では、RFタグとの通信完了後に、制御回路46は通信用のアンテナをメインアンテナ31からサブアンテナ32に切り替えるよう制御信号をスイッチ41に与える。RFタグとの通信完了後、RFタグの付された荷物は別の地点(R)に動かされる。以後、フローはステップS1に戻り、サブアンテナにより信号の受信状況が監視される。以下、後続の別の荷物(RFタグ)に関して説明済みの手順が反復される。
【0043】
上述したように、サブアンテナ32は、メインアンテナ31よりも狭いエリアをカバーする指向性を有する。図示の例では、1つの荷物をカバーできる程度の広がりを有するように指向性が設定されているが、用途や環境に応じて指向性は様々に調整されてよい。いずれにせよ、荷物が読取エリア13に来たことを検出後にメインアンテナ31を使用するようにし、意図されないエリア14中のRFタグと通信せずに済むようにできればよいからである。即ち、サブアンテナのカバーするエリアが広すぎると、サブアンテナに関する「意図されないエリア」が発生してしまうので、サブアンテナのカバーするエリアはそのような「意図されないエリア」が生じない程度に狭くあるべきである。
【0044】
一例として、サブアンテナのアンテナ利得は、メインアンテナのアンテナ利得より低くてよい。例えば、図6に示されるように、高利得のメインアンテナは平面パッチアンテナで構成され、サブアンテナが低利得のダイポールアンテナで構成されてもよい。これは、小型化及び低コスト化を図る観点から好ましい。
【0045】
或いは、図7に示されるように、サブアンテナ31は、アンテナ利得を下げるための減衰器71を含んでもよい。一般に低利得アンテナは指向性が広いので、特定の狭い地域に指向性を絞ることが困難かもしれない。そのような場合には、図7に示されるように、指向性の鋭いアンテナに減衰器71を設けることで、指向性の比較的鋭い低利得アンテナを実現することができる。この場合において、明示的には図示していないが、メインアンテナ31にもサブアンテナ32にもアンテナ利得を調整する手段をそれぞれに用意してもよい。そのようにすると、2つのアンテナに関してメイン及びサブの区別はもっぱらアンテナ利得を調整することで実行可能になり、リーダライタの設計の自由度を大きく確保できる。或る低度の期間リーダライタが使用された後に、アンテナ利得を逆転させることでメインとサブの役割を入れ替え、2つのアンテナが同等に使用されるようにしてもよい。
【実施例2】
【0046】
サブアンテナ32は、メインアンテナ31よりも狭いエリア33をカバーする指向性を有するように形成される。従って荷物が読取エリア13に到着したことを正確に検出するには、その狭いエリア33内にRFタグが確実に入って来なければならない。従って図3に示されるような荷物の積み上げには充分に配慮を要する。積み方によっては「A」のRFタグが位置検出用のエリア33に入らなくなるかもしれないからである。本発明の第2実施例はこのような懸念に対処するものである。
【0047】
図8は本発明の第2実施例によるRFタグリーダがRFタグと通信を行う様子を示す。1以上の荷物(管理対象体)12と共に移動する無線通信手段から、サブアンテナ32を介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナが、サブアンテナ32からメインアンテナ31に切り替えられる。以後メインアンテナ32を介して、荷物に同伴する多数のRFタグ11との通信が説明済みの手法と同様にして行われる。本実施例では、無線通信手段は、「K」で示されるRFタグ11である。この無線通信手段は、1以上の荷物各々に同伴するどのRFタグとも異なるRFタグである。サブアンテナ32を介して通信を行う無線通信手段は、これらの荷物を搬送するための台車(搬送手段)81に取り付けられている。従って荷物がどのように積まれていたとしても、その積み方は荷物が読取エリア13に来たことの検出(位置検出)には影響しない。但し、本来の読取エリア13で荷物のRFタグが適切に読み取れるように荷物が積まれていることは必要である。
【0048】
図9は、メインアンテナ31とサブアンテナ32で異なる偏波特性の電波が使用される例を示す。図示の例では、偏波特性の異なる電波として、偏向面の異なる直線偏波が使用される。荷物に付されたRFタグは水平偏波を、台車に付されたRFタグは垂直偏波を用いてリーダライタと通信が行われる。このため、リーダライタのメインアンテナは水平偏波用のアンテナであり、サブアンテナは垂直偏波用のアンテナである。メインアンテナが垂直偏波を利用し、サブアンテナが水平偏波を利用してもよい。メインアンテナ及びサブアンテナで偏波特性の異なる電波が利用されるので、台車と荷物を確実に分離することができる。
【0049】
図10は、メインアンテナ31とサブアンテナ32で異なる偏波特性の電波が使用される別の例を示す。図示の例では、偏波特性の異なる電波として、旋回方向の異なる円偏波が使用される。荷物に付されたRFタグは右旋偏波を、台車に付されたRFタグは左旋偏波を用いてリーダライタと通信が行われる。このため、リーダライタのメインアンテナは右旋偏波用のアンテナであり、サブアンテナは左旋偏波用のアンテナである。メインアンテナが左旋偏波を利用し、サブアンテナが右旋偏波を利用してもよい。メインアンテナ及びサブアンテナで偏波特性の異なる電波が利用されるので、台車と荷物を確実に分離することができる。円偏波を使用することは、荷物の搭載方向や台車の向きが多少揃っていなかったとしても、RFタグとの通信を確実に行う等の観点から好ましい。
【実施例3】
【0050】
図11は、アレーアンテナでサブアンテナを構成した例を示す。本実施例では、サブアンテナ32は、位相振幅分配回路321とそれに接続された複数のアンテナ素子322を含む。各アンテナ素子322を通じて伝送される信号の位相を位相振幅分配回路321で適切に調整することによっても、メインアンテナ31よりも狭いエリア33をカバーする指向性を実現することができる。
【0051】
図12は図11のようにアレーアンテナで構成されたサブアンテナ及びメインアンテナの水平面内指向性のシミュレーション結果を示す。シミュレーションでは、メインアンテナを1つ、サブアンテナを半波長間隔で上下左右に合計4素子配置し、入力電力を1/4とした場合が計算された。図示されているように、メインアンテナより低利得で鋭い指向性をサブアンテナに持たせることができる。
【実施例4】
【0052】
図7では減衰器71を用いて読取範囲が調整され、図11では位相振幅分配回路321を用いて読取範囲が調整された。利得や位相を調整することで読取範囲を変える観点からは、RFタグリーダに用意されるアンテナは、第1乃至第3実施例のように必ずしも2種類以上必要なわけではない。それらは同時には使用されないからである。指向性や利得を変えることのできるアンテナが1つ用意され、最初はサブアンテナとしての指向性を実現しながら使用され、荷物の位置検出が行われ、その検出後に指向性や利得が変えられ、メインアンテナとして使用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
RFタグを利用する本発明は、上記のような荷物の管理だけでなく、適切な様々な用途に使用されてよい。例えばRFタグにチケットやポイントのような何らかの価値を示す情報が読み書きされてもよい。単なる製品管理だけでなく、次世代交通システム用の電子チケットや交通乗車券、更には電子マネー等を含む様々な用途も考えられる。
【0054】
以下、本発明により教示される手段を例示的に列挙する。
【0055】
(付記1)
第1のエリアをカバーする指向性を有するメインアンテナと、
前記第1のエリアより狭い第2のエリアをカバーする指向性を有するサブアンテナと、
前記メインアンテナ及び前記サブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段と、
を有し、前記切替制御手段は、1以上の管理対象体と共に移動する無線通信手段から、前記サブアンテナを介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナを前記サブアンテナから前記メインアンテナに切り替え、
前記メインアンテナを介して、前記管理対象体に同伴するRFタグとの通信が行われる
ことを特徴とするRFタグリーダ。
【0056】
(付記2)
前記サブアンテナのアンテナ利得は、前記メインアンテナのアンテナ利得より低い
ことを特徴とする付記1記載のRFタグリーダ。
【0057】
(付記3)
前記メインアンテナは平面パッチアンテナで構成され、前記サブアンテナがダイポールアンテナで構成される
ことを特徴とする付記2記載のRFタグリーダ。
【0058】
(付記4)
前記サブアンテナは、アンテナ利得を下げるための減衰器を含む
ことを特徴とする付記2記載のRFタグリーダ。
【0059】
(付記5)
前記メインアンテナも前記サブアンテナもアンテナ利得を調整する手段をそれぞれ有する
ことを特徴とする付記2記載のRFタグリーダ。
【0060】
(付記6)
前記無線通信手段は、1以上の管理対象体各々に同伴するRFタグのいずれかである
ことを特徴とする付記1記載のRFタグリーダ。
【0061】
(付記7)
前記無線通信手段は、1以上の管理対象体各々に同伴するどのRFタグとも異なるRFタグである
ことを特徴とする付記1記載のRFタグリーダ。
【0062】
(付記8)
前記無線通信手段は、1以上の管理対象体を搬送するための搬送手段に取り付けられている
ことを特徴とする付記7記載のRFタグリーダ。
【0063】
(付記9)
前記メインアンテナと前記サブアンテナで異なる偏波特性の電波が使用される
ことを特徴とする付記7記載のRFタグリーダ。
【0064】
(付記10)
前記偏波特性の異なる電波として、偏向面の異なる直線偏波が使用される
ことを特徴とする付記9記載のRFタグリーダ。
【0065】
(付記11)
前記偏波特性の異なる電波として、旋回方向の異なる円偏波が使用される
ことを特徴とする付記9記載のRFタグリーダ。
【0066】
(付記12)
前記サブアンテナが、複数のアンテナ素子を含むアレーアンテナで構成される
ことを特徴とする付記1記載のRFタグリーダ。
【0067】
(付記13)
第1のエリアをカバーする指向性を有するメインアンテナと、
前記第1のエリアより狭い第2のエリアをカバーする指向性を有するサブアンテナと、
前記メインアンテナ及び前記サブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段と、
を有するRFタグリーダで使用される方法であって、
1以上の管理対象体と共に移動する無線通信手段から、前記サブアンテナを介して応答信号を受信し、
通信用のアンテナを前記サブアンテナから前記メインアンテナに切り替え、
前記メインアンテナを介して、前記管理対象体に同伴するRFタグと通信を行う
ことを特徴とするRFタグリーダで使用される方法。
【0068】
(付記14)
前記管理対象体に同伴するRFタグとの通信完了後に、通信用のアンテナを前記メインアンテナから前記サブアンテナに戻す
ことを特徴とする付記13記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】荷物に付されたRFタグと通信を行う様子を示す図である。
【図2】意図されない読取エリアが出現している様子を示す図である。
【図3】本発明の一実施例によるリーダライタを含むシステムを示す図である。
【図4】リーダライタの部分的な機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施例によるリーダライタで使用されるフローチャートを示す。
【図6】本発明の一実施例によるリーダライタを含むシステムを示す図である。
【図7】サブアンテナに低利得アンテナが使用される様子を示す図である。
【図8】本発明の一実施例によるRFタグリーダを含むシステムを示す図である。
【図9】直線偏波を利用するシステムを示す図である。
【図10】円偏波を利用するシステムを示す図である。
【図11】サブアンテナにアレーアンテナを利用するシステムを示す図である。
【図12】アレーアンテナで構成されたサブアンテナ及びメインアンテナの水平面内指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
11 RFタグ
12 荷物
13 読取エリア
14 意図されない読取エリア
30 RFタグリーダ
31 メインアンテナ
32 サブアンテナ
33 検出用の読取エリア
41 スイッチ
42 サーキュレータ
43 受信器
44 復調器
45 信号処理回路
46 制御回路
47 変調器
48 送信器
71 減衰器
81 台車
321 位相振幅分配回路
322 アンテナ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエリアをカバーする指向性を有するメインアンテナと、
前記第1のエリアより狭い第2のエリアをカバーする指向性を有するサブアンテナと、
前記メインアンテナ及び前記サブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段と、
を有し、前記切替制御手段は、1以上の管理対象体と共に移動する無線通信手段から、前記サブアンテナを介して応答信号が受信されると、通信用のアンテナを前記サブアンテナから前記メインアンテナに切り替え、
前記メインアンテナを介して、前記管理対象体に同伴するRFタグとの通信が行われる
ことを特徴とするRFタグリーダ。
【請求項2】
前記サブアンテナのアンテナ利得は、前記メインアンテナのアンテナ利得より低い
ことを特徴とする請求項1記載のRFタグリーダ。
【請求項3】
前記メインアンテナも前記サブアンテナもアンテナ利得を調整する手段をそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項2記載のRFタグリーダ。
【請求項4】
前記無線通信手段は、1以上の管理対象体各々に同伴するRFタグのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載のRFタグリーダ。
【請求項5】
前記無線通信手段は、1以上の管理対象体各々に同伴するどのRFタグとも異なるRFタグである
ことを特徴とする請求項1記載のRFタグリーダ。
【請求項6】
前記無線通信手段は、1以上の管理対象体を搬送するための搬送手段に取り付けられている
ことを特徴とする請求項5記載のRFタグリーダ。
【請求項7】
前記メインアンテナと前記サブアンテナで異なる偏波特性の電波が使用される
ことを特徴とする請求項6記載のRFタグリーダ。
【請求項8】
前記サブアンテナが、複数のアンテナ素子を含むアレーアンテナで構成される
ことを特徴とする請求項1記載のRFタグリーダ。
【請求項9】
第1のエリアをカバーする指向性を有するメインアンテナと、
前記第1のエリアより狭い第2のエリアをカバーする指向性を有するサブアンテナと、
前記メインアンテナ及び前記サブアンテナを選択的に切り替える切替制御手段と、
を有するRFタグリーダで使用される方法であって、
1以上の管理対象体と共に移動する無線通信手段から、前記サブアンテナを介して応答信号を受信し、
通信用のアンテナを前記サブアンテナから前記メインアンテナに切り替え、
前記メインアンテナを介して、前記管理対象体に同伴するRFタグと通信を行う
ことを特徴とするRFタグリーダで使用される方法。
【請求項10】
前記管理対象体に同伴するRFタグとの通信完了後に、通信用のアンテナを前記メインアンテナから前記サブアンテナに戻す
ことを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−72226(P2008−72226A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247105(P2006−247105)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】