RFIDモジュール
【課題】許容できる共振周波数範囲を拡大することができる新規な構成を有するRFIDモジュールおよびこれを用いた携帯機器を比較的低コストで提供する。
【解決手段】共振周波数調整回路231,232は、RFIDアンテナとしてのループアンテナ220のアンテナエレメントに接続され、その共振周波数を調整する。共振周波数調整回路231,232は、それぞれ、アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサC1,C2と、コンデンサC1,C2の他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFET1,2と、FET1,2のドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗R1,R2とを有する。FET1,2のゲート端子はそれぞれ抵抗を介して接地される。
【解決手段】共振周波数調整回路231,232は、RFIDアンテナとしてのループアンテナ220のアンテナエレメントに接続され、その共振周波数を調整する。共振周波数調整回路231,232は、それぞれ、アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサC1,C2と、コンデンサC1,C2の他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFET1,2と、FET1,2のドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗R1,R2とを有する。FET1,2のゲート端子はそれぞれ抵抗を介して接地される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)技術に関し、特に、リーダライタとの間で近距離無線通信を行うRFIDモジュールおよびこれを内蔵した携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID技術は、基本的には、非接触で移動体を認識する技術であり、電磁結合、電磁誘導、電波等を利用して、通常、リーダライタとRFIDモジュールとの間で近距離無線通信を行うRFIDシステムが構成される。
【0003】
電磁誘導方式のRFIDモジュールとしては、電子マネー、定期券、社員証等の種々の用途に利用されているカード形状のものが普及している。近年、この非接触ICカード機能は携帯電話端末のような携帯機器に内蔵されたものも実用化されている。
【0004】
RFIDシステムにおいては、特に、金属が多用された携帯機器に内蔵されたものにおいては"位相反転null"という問題が知られている。
【0005】
RFIDシステムにおけるnull(ヌル)とは、通信に必要な電力を受け取るのに十分な距離(通信可能圏内)であるにもかかわらず通信が出来なくなる現象のことであり、発生要因には様々なものがある。位相反転はその要因の一つである。位相反転によるnullのことを位相反転nullと呼ぶ。
【0006】
ここで言う位相とは、振幅偏移変調方式(ASK:Amplitude Shift Keying)で変調された搬送波から包絡線が抽出された後の波形の位相のことである。この位相は、13.56MHz搬送波の位相とは異なるため、以後は混乱を避けるため"包絡線位相"と呼ぶ。
【0007】
電磁誘導方式の近距離無線通信は、搬送波を送出するリーダライタとよばれる装置(以下R/Wともいう)と、自らは搬送波を出力しないRFモジュールとが磁気結合することによって行われる。RFモジュールからR/Wへの通信では、磁気結合の状態によって包絡線位相の反転は容易に発生し得る。RFモジュールは典型的にはカード形状を有するので、以下、単にカードともいう。但し、上述したように、RFモジュールが携帯機器に内蔵される場合には、当然ながら、カード形状ではなくなる。
【0008】
包絡線位相が反転すると、ASK変調における振幅の大/小と、デジタルデータとしてのhigh/lowの関係が逆転する。特定のRFIDのプロトコルは逆転が起きても正常に通信が行える様に作られているため、包絡線位相が反転する事自体は問題にならない。しかし、包絡線位相が反転していく過程で、デジタルデータのhigh/lowに対して搬送波振幅の大小の差がゼロになってしまうポイントが存在する。このとき、R/Wはカードからのレスポンスデータを復調できないので、nullとなる。
【0009】
図1に、包絡線位相の反転と復調可/不可の状態の関係を示す。図1の上側の波形が、カードのアンテナ電流の変化に反映された、カードが送信しているデータを表す。図1の下側の波形は、R/Wのアンテナ上に現れる搬送波波形を表している。図1の左から右へと包絡線が変化していく途中で包絡線位相の反転が生じていることが分かる。この反転の際に「復調不可」の状態が生じる。
【0010】
ここで、包絡線位相が反転するメカニズムについて簡単に説明する。
【0011】
カードからR/W方向へのデータ転送は、カード側アンテナの負荷抵抗を変化させる"負荷変調方式"によって行われる。このような負荷変調方式では、カード側のRFID回路ブロック(通常、チップの形態)内に内蔵された負荷変調用FETをON/OFFすることにより、デジタルデータとしてのhigh/lowの表現を行う。(マンチェスタ符号なので、high→lowで"1"、low→highで"0"を表す。)負荷変調用FETは、以下、負荷スイッチ(負荷SW)ともいう。
【0012】
通信中のR/Wとカードとは互いに磁気的に結合しているため、負荷SWによるカードのアンテナ電流の変化は、R/Wのアンテナ上では搬送波波形の振幅変化として検出される。このため、R/WはASK変調波の復調と同様に包絡線検波によって復調を行う。
【0013】
磁気結合により、カードのアンテナ電流の変化がリーダライタのアンテナ電圧の変化に転換される様子を簡略化したモデルを説明する。図2(a)はR/Wとカードの主要な回路部を示したものである。この図では、非接触ICカードのRFIDモジュールを便宜上「カード」と称している。カード内は送信関連部分のみを示し、他の要素は図示省略してある。
【0014】
R/W内の"TNS"と"RCV"のブロックは、それぞれ送信部と受信部を示している。図2(b)は、その磁気結合しているR/Wとカードを簡略化した等価回路を示したものである。図2(b)に示したR/Wの電圧V1が、R/Wのアンテナに生じる電圧に相当する。
【0015】
図2は、磁気結合しているR/Wとカードを簡略化した等価回路を示す回路図である。この図では、V1がR/Wのアンテナに生じる電圧に相当する。
【0016】
V1を回路方程式で表すと、次式(1)の様に記述できる。
【数1】
【0017】
この式(1)から、電圧V1は電流I1によって生じる電圧aと、カード側アンテナに流れる電流I2によって生じる電圧bの加算合成であることが言える。このことにより、負荷SWのON/OFFによってI2が変化することでV1が変化するので、包絡線検波による情報の伝達が可能になる。
【0018】
また、この等価回路でのI1とI2の関係は、次の式(2)で表される。
【数2】
【0019】
これにより、I1とI2の位相差はL2,R2,C2の関係(≒カードの共振周波数)により影響を受けるということが言える。
【0020】
ここで次のような点が問題となる。すなわち、電圧波形aとbの位相差について、電圧aはL1とR1の関係による影響を受け、電圧bはL2,R2,C2の関係により影響を受ける。このため、結果として、電圧V1は互いに位相差を持った2つの正弦波を加算合成したものになる。2つの正弦波が加算合成される際に、互いの位相関係が同相であれば波形のレベルはそのまま加算される。位相関係が逆相であれば波形のレベルは減算されることになる。同相と逆相の間の中間的な状態には、波形のレベルが変化しない位相関係が存在し、これにより合成後のASKの振幅の変化が消失する。
【0021】
図3に、R/Wのアンテナに生じる電圧V1を説明するために、参考として、オシロスコープのチャンネル(ch)加算合成機能を利用した波形例を示す。これは、電圧aを想定したch1の波形と、電圧bを想定したch2の波形を合成したものを示している。図3の上側半分と下半分とは同じ波形を時間軸のレンジを変えて示したものである。上側半分が搬送波レンジ(50nsec/div)での波形を示し、下側半分がASK変調レンジ(2μsec/div)での波形を示している。また、図3の左側部分が完全な逆相の時の状態を表し、図3の右側部分が完全な同相の時の状態を表し、中央部分が両者の中間の中途半端な状態(null)を表している。
【0022】
次に、非接触ICカード機能を備えた(すなわちRFIDモジュールを内蔵した)携帯機器の共振周波数とnullが発生しやすい位置関係について説明する。
【0023】
金属を多用した携帯機器の場合に特に問題となるのが、R/Wアンテナの自己インダクタンス(L1)の変動である。電子機器の筐体や基板のベタGND(GNDプレーン)等、金属面(正確には面形状の導電体全般)に発生する渦電流によって、R/Wアンテナの自己インダクタンス(L1)を形成する磁束が打ち消される。このため、携帯機器の接近に伴ってR/Wアンテナの自己インダクタンスは大きく減少し、同時に電圧aに対する電圧bの位相関係は進み側に変動していく。
【0024】
この搬送波位相の変動量をnullが発生しない範囲に押さえ込めなかった場合は、携帯機器がR/Wへ密着する位置付近で通信が出来ない状態になる。
【0025】
図4に、参考として、ループアンテナに携帯機器を接近させたときの、L値の変動の実測例を表したグラフを示す。このグラフの横軸は携帯機器からループアンテナまでの距離(mm)を表し、縦軸はR/Wアンテナの自己インダクタンス(L1)のインダクタンス値(μH)を表している。R/Wに接近させる携帯機器によって金属体の配置や面積が異なるため、対向するR/W機器に与える影響の大きさも異なる。しかし、機器が異なっても、距離が小さいほどインダクタンス値は低下する傾向があることが分かる。
【0026】
上記の様に、R/Wにおいて携帯機器の接近時にR/Wアンテナのインダクタンスが減少することによって、特に携帯機器の共振周波数(以下f0と表記)が高い時には、電圧aに対する電圧bの位相関係はいずれも進み方向のため悪条件が重なり、nullが発生しやすくなる。
【0027】
このようなメカニズムにより、携帯機器のf0と、nullが発生しやすい通信距離との関係は、通常、図5のグラフに示すような傾向を持つ。
【0028】
図5は、携帯機器の共振周波数と通信可能領域の関係を表したグラフである。このグラフの横軸は携帯機器の共振周波数f0(MHz)を表し、縦軸は通信距離(mm)、すなわち、携帯機器からR/Wまでの距離を表している。携帯機器の共振周波数の各値についての隣接した1対のバーのうち右バーはf0が低いR/Wに対する携帯機器の通信可能な位置を示している。左バーはf0が高いR/Wに対する携帯機器の通信可能な位置を示している。図の右下領域の黒いバー部分はnullの発生した位置を示している。
【0029】
R/Wの共振周波数f0は、個々の機器ごとの個体差によるばらつきが想定されている。図5から分かるように、共振周波数f0が低いR/Wと共振周波数f0が低い携帯機器の組み合わせでの遠方の領域R1と、共振周波数f0が高いR/Wと共振周波数f0が高い携帯機器の組み合わせでの遠方の領域R2とで通信が不可となっている。これに加えて、共振周波数f0が高いR/Wと共振周波数f0が高い携帯機器の組み合わせでは、R/Wへの密着付近の領域R0で、nullが発生しやすくなっている。特にこの密着付近の領域R0でのnullの発生は、「距離が近い方が通信しやすそう」というユーザの直感に反する現象のため、使い勝手の悪化に直結する。
【0030】
よって通常、携帯機器の共振周波数f0は通信距離がスペックを満たしつつnullが出ない範囲(以降は許容範囲と呼ぶ)内に厳しく管理する必要がある。しかし、共振周波数f0には、ループアンテナや同調用コンデンサといった部品のばらつきだけで無く、ループアンテナと基板のベタGND(GNDプレーン)の位置関係等、メカ構造的なばらつきや製造工程での組み込みばらつきも影響する。このため、携帯機器の量産による共振周波数f0のばらつき範囲は、その許容範囲を上回ることが多く、ばらつき範囲を狭帯域に管理するためにはf0調整回路の多bit化やトリマコンデンサによる調整等、部品コストや製造工程でのタクトタイムを犠牲にする必要があった。
【0031】
従来、null問題に対して、カード側でnull対策を行うよりもリーダライタ機器の方で対策をとる方が比較的容易であり、リーダライタ機器内での対策については既に実用化されている。しかし一方で、未対策のリーダライタ機器も既に大量に普及してしまっており、それらとの通信においてもnullを発生させないことが望ましい。このため、カード側でのnull対策が求められている。
【0032】
カード側での従来の対策方法としては、特許文献1に記載のような技術がある。図19にこのような従来技術に係る携帯機器の概略構成を示す。この従来技術では、携帯端末内に設けたレベル検出器15によってループアンテナ11のアンテナ励起電圧のレベルを検知し、レベル検出器出力によってFET16をON/OFF制御することにより、アンテナ11と共に共振回路を構成するコンデンサ12の容量に対してコンデンサ17の容量を選択的に追加する。これにより、携帯端末がR/Wに接近した時に共振周波数を下げる制御を行っている。
【0033】
レベル検出器15の内部構成としては、一般的には、図示のような回路構成で、次の様な処理を行う。すなわち、ループアンテナ11の励起電圧を、整流部151内の整流ダイオード152によってDC電圧に変換し、コンパレータ153等を用いてこのDCレベルが増加したことを検知する。コンパレータ153の検知出力に応じてFETスイッチ16をON/OFF制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2006−238398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
上記特許文献1に記載の従来技術では、下記の様な問題点があった。
【0036】
第1に、部品点数が多くなるため、コストと実装面積の観点で携帯機器への採用が困難である。
【0037】
第2に、レベル検出器15内に整流部151が必要なため、GSM(登録商標)等、他の無線通信用の送信波がRFID用アンテナに重畳した場合に、整流部151のダイオード152にてスプリアスが発生する場合がある。
【0038】
このような背景において、本願発明者は、許容できる共振周波数範囲を拡大することができる新規な構成を有するRFIDモジュールおよびこれを用いた携帯機器を比較的低コストで提供することの必要性を認識している。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の一実施形態によるRFIDモジュールは、RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備える。前記共振周波数調整回路は、前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地される。
【0040】
RFIDモジュールがR/W機器に接近したときにRFIDアンテナに励起される電圧に基づき、所定振幅以上のAC波形が入力された際に、上記コンデンサを介してドレイン端子のDCレベルの低下が生じる。これに基づき、ドレイン−ソース間の寄生容量値が増加する。その結果、ループアンテナの共振周波数が低い側へシフトする。これにより、R/W近傍で発生するnullが回避される。
【0041】
前記共振周波数調整回路は、前記コンデンサと前記FETとの接続点に一端が接続され、他端が接地された他のコンデンサをさらに有してもよい。これにより、共振周波数特性のヒステリシス性を強化することができ、ひいては共振周波数の安定化が図れる。
【0042】
前記アンテナエレメントの一端および他端にそれぞれ設けられた第1および第2の共振周波数調整回路を備えてもよい。これにより、平衡方式のRFIDアンテナの平衡を保つことができる。
【0043】
上記RFIDモジュールにおいて、さらに、前記第1および第2の共振周波数調整回路内の各FETのゲート端子に接続された抵抗は、直列接続された第1および第2の抵抗を含み、前記第1の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第2の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第1の受動素子と、前記第2の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第1の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第2の受動素子とをさらに備えてもよい。これにより、共振周波数のシフトが生じる通信距離の閾値を調整することができる。
【0044】
前記FETのゲート端子は、前記抵抗を介して、出力をHighまたはLowに切り換えることができるIOポートに接続されてもよい。
【0045】
本発明の一実施の形態による携帯機器は、ユーザに対して表示インタフェースを提供する表示部と、ユーザに対して入力インタフェースを提供する操作部と、RFID部と、各部の制御および必要なデータ処理を行う制御部とを備える。前記RFID部は、RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備える。前記共振周波数調整回路は、前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地される。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、旧式のリーダライタ機器に対しても位相反転nullの発生を大きく抑制することが可能になる。特に、許容できる共振周波数範囲を拡大することができる新規な構成を有するRFIDモジュールおよびこれを用いた携帯機器を比較的低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】RFIDシステムにおける包絡線位相の反転と復調可/不可の状態の関係を示す図である。
【図2】磁気結合しているR/Wとカードを簡略化した等価回路を示す回路図である。
【図3】R/Wのアンテナに生じる電圧V1を説明するための、オシロスコープのチャンネル(ch)加算合成機能を利用した波形例を示す図である。
【図4】ループアンテナに携帯機器を接近させたときの、L値の変動の実測例を表したグラフである。
【図5】携帯機器の共振周波数と通信可能領域の関係を表したグラフである。
【図6】図5に示したグラフにおいて、本実施の形態による改善の適用前後を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態によるRFIDモジュールの構成例を示す図である。
【図8】FETのドレイン−ソース間電圧と、FETの各部の寄生容量の容量値の関係を示した特性の一例を示す図である。
【図9】FET容量の並列共振回路への影響について説明するための図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例を説明するための図である。
【図11】通信距離とFETのドレイン電位の関係を示すグラフである。
【図12】図6(b)と同じグラフにおいて、ヒステリシスの効果を示した図である。
【図13】ヒステリシス性を強めることができるRFIDモジュールの構成例を示す図である。
【図14】共振周波数f0のシフトが生じる閾値距離DがR/Wから遠方にある場合を説明するための図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るRFIDモジュールの構成例を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態の変形例を示す図である。
【図17】レベル検出器を用いてその検出出力に基づく容量値の切り替えを行う従来技術と第1の実施の形態における回路規模の比較するための図である。
【図18】本発明の実施の形態のいずれかに係るRFIDモジュールを内蔵した携帯機器の構成例を示す図である。
【図19】本発明の従来技術に係る携帯機器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の好適な実施の形態について、さらに他の図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、代表的な電磁誘導方式のRFIDシステムとして、FeliCa(ソニー株式会社の登録商標)を例にとって説明するが、特にこれに限るものではない。例えば、本発明はNFC(Near Field Communication)、その他任意のRFIDシステムに適用可能である。
【0049】
図5に示した様なnullの発生傾向において、もし携帯機器がR/Wへ接近した際に携帯機器の共振周波数f0を動的に低い側に自動的にシフトさせることが出来れば、携帯機器の許容できる共振周波数範囲を飛躍的に拡大することができる。
【0050】
図6(a)(b)は図5に示したグラフにおいて、本実施の形態による改善の適用前後を説明するための図である。例えば、R/Wに対して携帯機器が所定の閾値距離Dより遠い位置から閾値距離Dをまたいで近い位置へ移動する際、閾値距離D付近で携帯機器の共振周波数が低い側に移動する場合を考える。通信距離に応じた共振周波数のシフトが生じない場合(図6(a))の許容できる共振周波数範囲がΔF1であるのに対して、シフトが生じる場合(図6(b))の許容できる共振周波数範囲はΔF1より十分に大きいΔF2となる。このように許容できる共振周波数範囲が拡大することは、f0調整回路のbit数削減や、製造工程のタクトタイム削減等に寄与する。
【0051】
図7に、本発明の第1の実施の形態によるRFIDモジュールの構成例を示す。
【0052】
このRFIDモジュールは、通常、RFIDアンテナとしてのループアンテナ220を構成するアンテナエレメントと、このアンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロック240とにより構成される。ループアンテナ220のインダクタンスと並列共振をとるために、ループアンテナ220の両端のアンテナライン間に同調用コンデンサC0が設けられる。本実施の形態では、さらに、アンテナエレメントの両端に接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整部230を備える。この共振周波数調整部230は、第1の共振周波数調整回路231と第2の共振周波数調整回路232とを有する。
【0053】
RFID回路ブロック240は、ループアンテナ220の両端間に励起された電圧を受けて整流を行う整流部241、同じく励起された電圧を受けて包絡線検波を行う復調部243等を有する。このようなRFID回路ブロック240は、その構成自体は既知であり、既存のRFID用LSIで構成することができる。
【0054】
共振周波数調整部230の第1の共振周波数調整回路231は、アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサ(DCカットコンデンサ)C1と、このコンデンサC1の他端にドレイン端子(D)が接続されるとともにソース端子(S)が接地された電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)FET1と、このFET1のドレイン端子と電源(電源電圧VDD)との間に接続された比較的高抵抗値のプルアップ抵抗R1とを有する。FET1のゲート端子(G)は抵抗R3を介して接地される。
【0055】
共振周波数調整部230の第2の共振周波数調整回路232は、同様に、アンテナエレメントの他端に、一端が接続されたコンデンサ(DCカットコンデンサ)C2と、このコンデンサC2の他端にドレイン端子Dが接続されるとともにソース端子Sが接地された電界効果トランジスタFET2と、このFET2のドレイン端子と電源(電源電圧VDD)との間に接続された比較的高抵抗値のプルアップ抵抗R2とを有する。FET2のゲート端子Gは抵抗R4を介して接地される。
【0056】
第1および第2の共振周波数調整回路231と232の動作は同じなので、以下、主として、第1の共振周波数調整回路231について説明する。
【0057】
FET1はそのゲート端子Gが抵抗R3を介して接地されるので、OFF状態に設定される。このようにOFF状態に設定されたFET1のドレイン端子Dは高抵抗値の抵抗R1で電源電圧へプルアップされ、この状態で、ループアンテナ220の両端に励起された搬送波のAC成分がドレイン端子Dに与えられる。
【0058】
カード側機器すなわち携帯機器がR/Wに接近するとアンテナに励起される搬送波の振幅は大きくなり、ドレイン端子Dに掛かるAC振幅も大きくなる。ドレイン端子Dに掛かるAC波形はFET1の帰還容量(Cdg)を通じてゲート端子Dに伝わるため、FET1は完全なOFF状態から僅かにドレイン遮断電流が流れる状態に遷移する。これにより、高抵抗値のプルアップ抵抗R1でプルアップされたドレイン端子DのDC電位が低下する。
【0059】
ドレイン−ソース間容量(Cds)は、DCバイアス特性を持つ、すなわち、DCバイアスに依存して変化する。ドレイン端子DのDC電位の低下によりドレイン−ソース容量(Cds)が増加する。これに伴い、アンテナの共振周波数f0が下がる。これら一連の動作によって、R/Wに接近したときにカード側アンテナの共振周波数を下げることができる。
【0060】
なお、アンテナの平衡を保つためにアンテナエレメントの両端に対して対称形に第1および第2の共振周波数調整回路231,232を構成しているが、使用するRFID回路ブロック240が平衡方式でなければ、励起電圧の高い側一方のアンテナラインに対して単一の共振周波数調整回路を設ける構成であってもよい。
【0061】
また、FETはゲート端子内に抵抗を内蔵しているタイプのものを想定しているが、抵抗を内蔵していないFETを使用する場合は、抵抗素子を外付けしてもよい。各素子の定数の目安としては、例えば、C1,C2=5〜20pF程度、R1,R2=1MΩ程度、C0=アンテナのL値と合わせて13.56MHz付近で共振する様な値、とすることができる。
【0062】
ここで、図7のRFIDモジュールの典型的な動作について説明する。
【0063】
FET1のゲート端子はGNDに接続されているので、FET1は常にOFF状態であり、ドレイン電流はスタンバイ時にはほぼゼロとなる。このため、FET1のドレイン端子のDC電位はプルアップ先の電源電圧VDDにほぼ等しくなる。R1,R2の定数は、ゲート電位=0V時のドレイン遮断電流に対し有意な電圧降下を生じない範囲でなるべく高い抵抗値にあらかじめ設定しておく。
【0064】
携帯機器がR/Wにかざされてアンテナ端子に搬送波が励起されると、DCカットコンデンサC1を介して、FET1のドレイン端子に搬送波のAC成分が重畳される。このとき、FET1の帰還容量Cdgを介してAC成分はゲート端子D内部にも伝わるが、AC成分の振幅が十分に小さい間はFET1は完全なOFF状態を維持し、FET1のドレイン端子にはVDD電位を中心としたAC波形が現れる。
【0065】
携帯機器がR/Wに接近すると、ドレイン端子に掛かるAC波形の振幅がR/Wとの距離に応じて大きくなる。このとき、容量Cdgを介してゲート端子内部に伝わるAC波形の振幅も大きくなる。この振幅が所定のレベルに達すると僅かにドレイン電流が流れはじめ、プルアップ抵抗R1の値に応じてドレイン端子DのDC電位が低下する。プルアップ抵抗値が高いほど、ドレイン電流の変化に対してDC電位の変動が大きくなる。
【0066】
ここで、図8により、FETのドレイン−ソース間電圧と、FETの各部の寄生容量の容量値の関係を示した特性の一例を示す。図8(a)はFETのドレイン・ソース間電圧Vds(V)と、Ciss、Coss、Crssの各静電容量C(pF)との関係を示したグラフである。ここでは、図8(b)に示すように、FETは、そのドレイン端子Dとソース端子Sとゲート端子Gとの間の相互の寄生容量Cds、Cdg、Cgsを呈する。寄生容量Cds、Cdg、CgsとCiss、Coss、Crssとの関係は次のように規定されている。
Ciss=Cgs+Cdg
Coss=Cds+Cdg
Crss=Cdg
【0067】
図8(c)は、Vgs=0V、f=1MHz、Ta=25℃の条件下でのソース接地FETにおける、ドレイン・ソース間電圧Vdsの具体的な電圧値に対する、容量Ciss、Coss、Crssの容量値(pF)の具体例を示している。
【0068】
この具体例から類推されるように、一般に、ドレイン−ソース間電圧Vdsが高くなるほど、各部の容量値は減少する。容量の絶対値はFETの種類によって異なるが、電位差が大きくなると容量が下がるという関係は一般的な性質である。この性質により、ドレイン端子DのDC電位が低下したFETでは、各部の容量値が大きくなる。仮にVDDが3V程度であったとすると、ドレイン端子DのDC電位が0.5V程度まで低下した場合のCissは9.3pFから15pFへ、Cossは9.8pFから20pFへ、Crssは4.5pFから12pFへ、とそれぞれ変化(上昇)する。
【0069】
次に、図9によりFET容量の並列共振回路への影響について説明する。図9(a)は図7のRFIDモジュールの容量の接続関係を示した図であり、図9(b)はこれを並列共振回路として簡略化した図である。
【0070】
第1の実施の形態におけるFET各部の容量は、図9(a)に示すようにループアンテナ220に対しGNDを介して閉回路を形成している。このため、FET各部の容量は、C0に対して並列に挿入された複数のコンデンサとして作用し、並列共振回路の一部となっている。FET1のCds,Cdg,Cgsの合成容量(以下Cfet1と呼ぶ)およびFET2のCds,Cdg,Cgsの合成容量(以下Cfet2と呼ぶ)が増加した場合、アンテナの共振周波数f0は下記の式で表されるため、容量増加によりf0は低い側へ変化する。
アンテナの共振周波数: f0=1/2π√(Lant・Cant)
アンテナの合成容量: Cant=C0 +{C1・Cfet1/2・(C1+Cfet1)}
但し、C1=C2,Cfet1=Cfet2 とする。
FETの合成容量:Cfet1=Cfet2=Coss−Crss^2/Ciss
ここに、Crss^2はCrssの2乗を表す。
【0071】
先の例で挙げたCissの9.3pFから15pFへの変化、Cossの9.8pFから20pFへの変化、Crssの4.5pFから12pFへの変化を適用した場合、Cfet1およびCfet2は7.6pFから10.4pFへ変化し、容量値は2.8pFだけ増加する。
【0072】
このとき、仮にループアンテナのインダクタンス値が2.5μH,C0=51pF,C1=C2=22pFであると仮定すると、Cds,Cdg,Cgsの合成容量が7.6pFから10.4pFに変化したときの共振周波数f0は 13.721MHzから13.631MHzへ変化する。すなわち、f0は低い側へ90kHzシフトする。
【0073】
尚、FET1,FET2共に、ドレイン電流がある程度増加すると、ドレイン−ソース間の抵抗値の低下に伴ってドレインに現れるAC波形の振幅が低下するため、この使い方ではFETが完全なON状態に至ることは無い。
【0074】
上述した第1の実施の形態によれば、RFID機能を搭載した携帯機器において、FETのドレイン−ソース間容量(Cds)の持つDCバイアス特性を利用して、受信している搬送波レベルが高いときにだけRFIDアンテナの共振周波数を低い側へシフトさせることができる。これにより、FETの持つ特性を活用し、極めて少ない部品点数で所望の効果を得ることができる。
【0075】
上記のとおり、本実施の形態では、OFF状態に制御されたFETのドレイン端子へ13.56MHzのAC波形が印加された際に、AC波形の振幅に応じてドレイン遮断電流が僅かに増加する現象を利用する。
【0076】
本実施の形態の第1の機能は、このドレイン遮断電流の増加に伴い、ドレイン端子に接続されたプルアップ抵抗との分圧比の変化によってドレイン端子のDC電位が変化(低下)することにより、AC波形の振幅レベルを検出することである。
【0077】
本実施の形態の第2の機能は、所定振幅以上のAC波形が入力された際に生じるドレイン端子のDCレベルの低下に基づきドレイン−ソース間の寄生容量値が増加する性質を利用して、AC波形の振幅レベルを容量値に変換するACレベル−容量変換を行うことである。
【0078】
本実施の形態の第3の機能は、第2の機能に基づいて、所定以上の搬送波強度を受信した時にループアンテナの共振周波数を低い側へシフトさせることでR/W近傍で発生するNullを回避することである。
【0079】
次に、図10により第1の実施の形態の変形例を説明する。図10は、第1の実施の形態の変形例の構成を示している。この図において、図7に示した構成要素と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0080】
第1の実施の形態ではFET1,FET2のゲート端子をGNDに直接落とした。これに対して、この変形例では、ゲート端子をRFID回路ブロック240の入出力ポート(IOポート)へ接続する。このIOポートは、RFID回路ブロック240内または外部の制御部(図示せず)により、出力HighまたはLowのいずれかに切り替えて設定することができる。携帯機器の工場での出荷検査時に、IOポート出力をHighに切り替えることでループアンテナの共振周波数f0が変化するため、これを測定することによりFET1,FET2周辺の部品の実装不良等をチェックすることが出来る。チェック後、IOポート出力をLowとすることにより、基本的に工場出荷後は常時Low状態となり、電気的な動作は第1の実施の形態と変わらない。
【0081】
尚、図10ではRFID回路ブロック240のIOポートを使用しているが、他の回路ブロック(IC)のIOポートを使用することも可能である。
【0082】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0083】
FETのゲート端子内部に現れるAC波形は、そのドレイン端子に現れるAC成分がCdgとCgsによって分圧される形となっている。仮にドレインのDC電位が3Vから1Vに低下したとすると、例えば、そのFETのCdgは、4.5pFから8pFへ変化する一方、Cgs(=Ciss−Cdg)は4.8pFから4pFへ変化する。これにより、CdgとCgsの分圧比は、ゲート端子内部に伝わるAC波形がより大きくなる方向に変化する。このため、ドレイン電位の低下がさらなるドレイン電位の低下を引き起こす動作となる。その結果、ドレイン電位は1Vで安定せずに0V付近までスイッチ的に変動する。すなわち、AC波形の大きさの変化に対するドレイン電位の変化は、ヒステリシス性を持った動作となる。
【0084】
図11に、通信距離とFETのドレイン電位の関係を示す。通信距離の変化に伴うドレイン電位の変化の軌跡は往路と復路で異なる経路をとる。すなわち、共振周波数特性についてもヒステリシス性を呈する。上述したように、ドレイン電位は寄生容量に寄与し、寄生容量は最終的に共振周波数に寄与する。したがって、ヒステリシス性が不足していると、ドレイン電位の変化時に寄生容量ひいては共振周波数のばたつきが発生し、通信特性に影響を与える場合がある。
【0085】
図12は、図6(b)と同じグラフにおいて、ヒステリシスの効果を示したものである。ここでは、携帯機器の共振周波数と通信距離との関係でヒステリシス性を示している。すなわち、共振周波数のシフトが生じる通信距離が、通信距離の変化の往路と復路とで異なっている。
【0086】
ところで、ドレイン端子に現れるAC波形振幅は、アンテナ端子(a)に現れる波形がCds,Cdg,Cgsの合成容量(以下Cfetと呼ぶ)と、C1とによって分圧されたものである。このことに着目すると、ドレイン電位の低下時にC1の容量値が殆ど変化しないのに対してCfetは増加する。このため、ドレイン端子に掛かるAC波形振幅が小さくなる方向に分圧比が変化することになる。この現象は、逆に、ヒステリシス性を弱める作用となる。従って、通常は前述のヒステリシス性を強める作用と、ヒステリシスを弱める作用は同時に作用することになる。
【0087】
図7に示した構成のRFIDモジュールにおいてもヒステリシス性は期待できるが、動作の安定性の観点から、ヒステリシス性をさらに強めることができれば好ましい。ヒステリシス性を強めたい場合には、ヒステリシスを弱める作用の方を軽減させることによって調整が可能である。
【0088】
図13に、このようなヒステリシス性を強めることができるRFIDモジュールの構成例を示す。この図において、図7に示した構成要素と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0089】
図7に示した構成と異なる点は、次の点である。すなわち、共振周波数調整部230aの第1の共振周波数調整回路231a内のDCカットコンデンサC1とFET1との接続点に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサC3を設けている。同様に、第2の共振周波数調整回路232a内においても、そのDCカットコンデンサC2とFET2との接続点に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサC4を設けている。
【0090】
上述のように、ヒステリシスを強める作用がCdgとCgsの分圧比に依存しているのに対して、ヒステリシスを弱める作用はC1とCfetの分圧比に依存している。そこで、コンデンサC3を加えると、FET1のドレイン端子Dに掛かるAC波形振幅は、アンテナ端子(a)に現れる波形がC1と(Cfet+C3)で分圧されたものになる。このため、Cfetの値が変化した際の分圧比への影響は小さくなる。これにより、Cfetが増加した時のドレイン端子Dに現れるAC振幅の低下は抑えられ、CdgとCgsの分圧比による"ヒステリシスを強める効果"が優勢になる。その結果、全体としてヒステリシス性は強化される方向になる。
【0091】
なお、上述した第1の実施の形態の変形例は第2の実施の形態にも適用可能である。
【0092】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0093】
図14に示すように、上述した共振周波数f0のシフトが生じる通信距離の閾値距離DがR/Wからあまり遠方にあると、領域R3のように、共振周波数f0のシフトによって通信可能なf0範囲から逸脱してしまう可能性がある。このため、携帯機器が十分R/Wに接近してから共振周波数f0が変化するように、閾値距離D(ひいてはドレイン電位低下の閾値)を調整することが望ましい。
【0094】
図7に示した第1の実施の形態の共振周波数調整部230において、ドレイン電位低下の閾値を、よりR/Wの近傍に近づけるにはC1,C2の容量値を小さくし、ドレイン端子に伝わるAC波形振幅を小さくすればよい。しかしながら、C1,C2の容量値を小さくするとドレイン電位低下時の共振周波数f0のシフト量も小さくなるため、R/W密着付近で発生するnullの回避性能も低下してしまう。
【0095】
そこで、第3の実施の形態では、充分なf0シフト量を確保しつつ閾値をR/W近傍に調整する方策を示す。
【0096】
図15は第3の実施の形態に係るRFIDモジュールの構成例を示している。この図において、図7に示した構成要素と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0097】
本実施の形態では、ループアンテナの性質として、ループアンテナ220の両端の端子(a),端子(b)に現れる波形が、互いに逆位相であることを利用している。
【0098】
そのために、図7に示した構成と異なる点は、抵抗R5,R6、および、閾値調整用の受動素子としてのコンデンサC5,C6を追加したものである。これにより、FET1のゲート端子には、FET2のドレイン端子からコンデンサC5を介して波形を引き込み、FET2のゲート端子には、FET1のドレイン端子からコンデンサC6を介して波形を引き込んでいる。これにより、共振周波数調整部内の一方の共振周波数調整回路内においてCdgを介して伝わってくる波形に、他方の共振周波数調整回路から逆相の波形を合成する。
【0099】
より具体的には、共振周波数調整部230b内の第1の共振周波数調整回路231b内のゲート抵抗は抵抗R3と抵抗R5とを直列接続したものとする。また、共振周波数調整部230b内の第2の共振周波数調整回路232b内のゲート抵抗は抵抗R4と抵抗R6とを直列接続したものとする。
【0100】
さらに、共振周波数調整回路231b内の抵抗R3と抵抗R5の接続点と他方の共振周波数調整回路232b内のFET2のドレイン端子Dとの間に、第1の受動素子としてのコンデンサC5を接続する。同様に、共振周波数調整回路232b内の抵抗R4と抵抗R6の接続点と他方の共振周波数調整回路231b内のFET1のドレイン端子Dとの間に、第2の受動素子としてのコンデンサC6を接続する。
【0101】
共振周波数f0のシフト量を大きくとるためには、コンデンサC1,C2の容量値を上げる必要がある。しかし、そのままではドレイン端子Dから容量Cdgを経てゲート内部に伝播するAC成分が大きくなってしまい、R/Wから遠方でのf0シフトを引き起こしてしまう。そのため、これと逆位相を持つ波形をゲート端子側から注入し、ゲート内部にて互いに打ち消し合うことを意図して、コンデンサC5,C6を配置している。R5,R6は、ゲート端子のDC電位をGNDレベルに保ちつつゲート内部にAC波形を伝えるための抵抗である。
【0102】
なお、定数の目安として、C5,C6はCdgと同程度またはそれ以下、R5,R6は10kΩ〜100kΩ程度である。
【0103】
ゲート端子に抵抗が内蔵されている場合には、抵抗通過時に位相差が生じ、打消しの効果が低下するため、Cdgのインピーダンスの絶対値に対して抵抗値が同等以下であることが望ましい。
【0104】
また、第3の実施の形態においても、上記第1の実施の形態の変形例、および、第2の実施の形態の特徴を併用することが可能である。
【0105】
図16は、第3の実施の形態の変形例を示している。この図において、図15に示したと同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。図15に示した構成と異なる点は、受動素子として、コンデンサC5,C6の代わりに、抵抗R7,R8を用いたことである。
【0106】
受動素子としては、コンデンサ、抵抗、インダクタ、またはこれらの任意の組み合わせとすることが可能である。この場合、アンテナのQが低下する可能性があるが、その低下が許容範囲であれば、問題なく本発明の効果を享受できる。
【0107】
上述した本発明の代表的な実施の形態である第1の実施の形態の効果について説明する。第1の実施の形態に依れば次のような格別な効果が得られる。
【0108】
第1は部品点数削減の効果である。図17は、レベル検出器を用いてその検出出力に基づく容量値の切り替えを行う従来技術と第1の実施の形態における回路規模の比較するための図である。本実施の形態ではコンデンサ、FET、プルアップ抵抗だけで、アンテナの誘起電圧のレベル検出から容量値の切り替えまでを行う。このため、従来技術のレベル検出器で必要であった整流ダイオードやコンパレータ周辺回路を削減することができる。特に、従来技術におけるコンパレータ周辺回路は閾値設定用の抵抗や電位安定化のためのコンデンサ、ヒステリシスを持たせるための帰還抵抗、電源未投入状態でアンテナから大きな入力電圧が入った時のための保護抵抗等、多くの部品を必要とする。本実施の形態ではこれらの部品が不要となるので削減効果が大きい。
【0109】
第2に、アンテナの誘起電圧のAC成分の振幅の大きさによってレベル検出を行うため整流回路が必要無く、GSM(登録商標)等、他の無線通信用の送信波がRFID用アンテナに重畳した場合に、整流部151のダイオード152にてスプリアスが発生する懸念が減る。
【0110】
第3に、コンパレータを使用しないため、コンパレータのスタンバイ電流や、閾値設定のための抵抗分圧で消費される電流が削減できる。
【0111】
これらの効果は、基本的に、上述した他の実施の形態および変形例についても共通に得られるものである。
【0112】
上述したRFIDモジュールは、非接触ICカードの形態として具現されるだけでなく、携帯機器に組み込んで使用することも可能である。
【0113】
図18に、上記実施の形態のいずれかに係るRFIDモジュールを内蔵した携帯機器300の構成例を示す。
【0114】
携帯機器300は、制御部310、アンテナ311、通信部312、表示部313、操作部314、記憶部315、音声処理部316、スピーカ317、マイクロホン318および、RFIDモジュールを含むRFID部319を備える。制御部310は、バス320を介して各部と接続され、各部の制御および必要なデータ処理を行うプロセッサであり、MPU等のプロセッサを有する。通信部312は、アンテナを介して基地局と電波による無線通信を行う部位である。表示部313は、ユーザに対して表示インタフェースを提供する部位であり、表示画面上に情報を表示するLCD、有機EL等の表示デバイスを有する。操作部314は、ユーザに対して入力インタフェースを提供する部位であり、テンキーや各種制御キー等の入力装置を有する。記憶部315は、制御部310が実行するプログラムとしてOSおよび通信アプリケーション・プログラム等の各種アプリケーション・プログラム、および必要なデータを格納する部位であり、ROM、RAM等のメモリを含む。音声処理部316は、受話音声、動画ファイルの音声、音楽データの処理部であり、コーデック等を有し、音声を出力するスピーカ317および送話音声等を集音するマイクロホン318が接続される。
【0115】
RFID部319は、好ましくは、RFIDモジュール319bと制御部310との間のインタフェースをとるためのインタフェース部319aを備える。制御部310は、RFIDモジュール319bの能動化/不能化等の制御を行うとともに、能動化した状態で、インタフェース部319aを介して、RFIDモジュール319bとの間のデータの授受を行うことが可能である。RFIDモジュール319bは通常、データを記憶するメモリ(図示せず)を内蔵している。
【0116】
携帯機器300としては、携帯電話端末の他、PDA、ゲーム機、PC、家電装置等を含みうる。
【0117】
本発明は、また、別の実施の形態として、通信方法、特に、RFIDモジュールの通信方法を提供する。この通信方法は、次の各ステップを有する。
RFIDアンテナのアンテナエレメントの一端にコンデンサを介してソース接地FETを接続し、
そのFETのドレイン端子を所定の電源電圧にプルアップし、
前記FETのゲート端子を抵抗を介して接地し、
RFIDモジュールがR/W機器に接近したときにRFIDアンテナに励起される電圧に基づき、所定振幅以上のAC波形が入力された際に、上記コンデンサを介してドレイン端子のDCレベルを低下させ、
このDCレベルの低下に基づき、ドレイン−ソース間の寄生容量値が増加させることにより、ループアンテナの共振周波数を低い側へシフトさせる。
【0118】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。すなわち、請求項または請求項と均等の範囲内にある限り、デザイン又はその他の要素によって種々の改変、組み合わせ、他の実施形態が生じうることは、当業者にとって当然のことと理解される。
【0119】
例えば、RFモジュールを備えた携帯機器について説明したが、カード形態、その他任意の形態のRFモジュールに適用することができる。また、上記実施の形態で挙げた具体的な数値はあくまで説明のための例示であり、本発明はそれらの数値に限定されるものではない。
【0120】
上述の本発明の実施の形態では、
RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、
前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備え、
前記共振周波数調整回路は、
前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、
前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、
前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地された
RFIDモジュール、
について説明している。
【0121】
また、
前記共振周波数調整回路は、前記コンデンサと前記FETとの接続点に一端が接続され、他端が接地された他のコンデンサをさらに有する請求項1に記載のRFIDモジュール、についても説明している。
【0122】
また、
前記アンテナエレメントの一端および他端にそれぞれ設けられた第1および第2の共振周波数調整回路を備えた請求項1または2に記載のRFIDモジュール、
についても説明している。
【0123】
また、
前記第1および第2の共振周波数調整回路内の各FETのゲート端子に接続された抵抗は、直列接続された第1および第2の抵抗を含み、
前記第1の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第2の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第1の受動素子と、
前記第2の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第1の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第2の受動素子と
をさらに備えた請求項3に記載のRFIDモジュール、
についても説明している。
【0124】
また、
前記FETのゲート端子は、前記抵抗を介して、前記RFID回路ブロックのIOポートに接続され、前記IOポートはその出力をHighまたはLowに切り替えて設定される請求項1に記載のRFIDモジュール、
についても説明している。
【0125】
また、
ユーザに対して表示インタフェースを提供する表示部と、
ユーザに対して入力インタフェースを提供する操作部と、
RFID部と、
各部の制御および必要なデータ処理を行う制御部とを備え、
前記RFID部は、
RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、
前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備え、
前記共振周波数調整回路は、
前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、
前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、
前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地された
携帯機器、
についても説明している。
【符号の説明】
【0126】
151…整流部、152…ダイオード、152…整流ダイオード、153…コンパレータ、220…ループアンテナ、230,230a,230b…共振周波数調整部、231,231a,231b…共振周波数調整回路、232,232a,232b…共振周波数調整回路、240…RFID回路ブロック、241…整流部、243…復調部、300…携帯機器、310…制御部、311…アンテナ、312…通信部、313…表示部、314…操作部、315…記憶部、316…音声処理部、317…スピーカ、318…マイクロホン、319…RFID部、319a…インタフェース(I/F)部、319b…RFIDモジュール、320…バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)技術に関し、特に、リーダライタとの間で近距離無線通信を行うRFIDモジュールおよびこれを内蔵した携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID技術は、基本的には、非接触で移動体を認識する技術であり、電磁結合、電磁誘導、電波等を利用して、通常、リーダライタとRFIDモジュールとの間で近距離無線通信を行うRFIDシステムが構成される。
【0003】
電磁誘導方式のRFIDモジュールとしては、電子マネー、定期券、社員証等の種々の用途に利用されているカード形状のものが普及している。近年、この非接触ICカード機能は携帯電話端末のような携帯機器に内蔵されたものも実用化されている。
【0004】
RFIDシステムにおいては、特に、金属が多用された携帯機器に内蔵されたものにおいては"位相反転null"という問題が知られている。
【0005】
RFIDシステムにおけるnull(ヌル)とは、通信に必要な電力を受け取るのに十分な距離(通信可能圏内)であるにもかかわらず通信が出来なくなる現象のことであり、発生要因には様々なものがある。位相反転はその要因の一つである。位相反転によるnullのことを位相反転nullと呼ぶ。
【0006】
ここで言う位相とは、振幅偏移変調方式(ASK:Amplitude Shift Keying)で変調された搬送波から包絡線が抽出された後の波形の位相のことである。この位相は、13.56MHz搬送波の位相とは異なるため、以後は混乱を避けるため"包絡線位相"と呼ぶ。
【0007】
電磁誘導方式の近距離無線通信は、搬送波を送出するリーダライタとよばれる装置(以下R/Wともいう)と、自らは搬送波を出力しないRFモジュールとが磁気結合することによって行われる。RFモジュールからR/Wへの通信では、磁気結合の状態によって包絡線位相の反転は容易に発生し得る。RFモジュールは典型的にはカード形状を有するので、以下、単にカードともいう。但し、上述したように、RFモジュールが携帯機器に内蔵される場合には、当然ながら、カード形状ではなくなる。
【0008】
包絡線位相が反転すると、ASK変調における振幅の大/小と、デジタルデータとしてのhigh/lowの関係が逆転する。特定のRFIDのプロトコルは逆転が起きても正常に通信が行える様に作られているため、包絡線位相が反転する事自体は問題にならない。しかし、包絡線位相が反転していく過程で、デジタルデータのhigh/lowに対して搬送波振幅の大小の差がゼロになってしまうポイントが存在する。このとき、R/Wはカードからのレスポンスデータを復調できないので、nullとなる。
【0009】
図1に、包絡線位相の反転と復調可/不可の状態の関係を示す。図1の上側の波形が、カードのアンテナ電流の変化に反映された、カードが送信しているデータを表す。図1の下側の波形は、R/Wのアンテナ上に現れる搬送波波形を表している。図1の左から右へと包絡線が変化していく途中で包絡線位相の反転が生じていることが分かる。この反転の際に「復調不可」の状態が生じる。
【0010】
ここで、包絡線位相が反転するメカニズムについて簡単に説明する。
【0011】
カードからR/W方向へのデータ転送は、カード側アンテナの負荷抵抗を変化させる"負荷変調方式"によって行われる。このような負荷変調方式では、カード側のRFID回路ブロック(通常、チップの形態)内に内蔵された負荷変調用FETをON/OFFすることにより、デジタルデータとしてのhigh/lowの表現を行う。(マンチェスタ符号なので、high→lowで"1"、low→highで"0"を表す。)負荷変調用FETは、以下、負荷スイッチ(負荷SW)ともいう。
【0012】
通信中のR/Wとカードとは互いに磁気的に結合しているため、負荷SWによるカードのアンテナ電流の変化は、R/Wのアンテナ上では搬送波波形の振幅変化として検出される。このため、R/WはASK変調波の復調と同様に包絡線検波によって復調を行う。
【0013】
磁気結合により、カードのアンテナ電流の変化がリーダライタのアンテナ電圧の変化に転換される様子を簡略化したモデルを説明する。図2(a)はR/Wとカードの主要な回路部を示したものである。この図では、非接触ICカードのRFIDモジュールを便宜上「カード」と称している。カード内は送信関連部分のみを示し、他の要素は図示省略してある。
【0014】
R/W内の"TNS"と"RCV"のブロックは、それぞれ送信部と受信部を示している。図2(b)は、その磁気結合しているR/Wとカードを簡略化した等価回路を示したものである。図2(b)に示したR/Wの電圧V1が、R/Wのアンテナに生じる電圧に相当する。
【0015】
図2は、磁気結合しているR/Wとカードを簡略化した等価回路を示す回路図である。この図では、V1がR/Wのアンテナに生じる電圧に相当する。
【0016】
V1を回路方程式で表すと、次式(1)の様に記述できる。
【数1】
【0017】
この式(1)から、電圧V1は電流I1によって生じる電圧aと、カード側アンテナに流れる電流I2によって生じる電圧bの加算合成であることが言える。このことにより、負荷SWのON/OFFによってI2が変化することでV1が変化するので、包絡線検波による情報の伝達が可能になる。
【0018】
また、この等価回路でのI1とI2の関係は、次の式(2)で表される。
【数2】
【0019】
これにより、I1とI2の位相差はL2,R2,C2の関係(≒カードの共振周波数)により影響を受けるということが言える。
【0020】
ここで次のような点が問題となる。すなわち、電圧波形aとbの位相差について、電圧aはL1とR1の関係による影響を受け、電圧bはL2,R2,C2の関係により影響を受ける。このため、結果として、電圧V1は互いに位相差を持った2つの正弦波を加算合成したものになる。2つの正弦波が加算合成される際に、互いの位相関係が同相であれば波形のレベルはそのまま加算される。位相関係が逆相であれば波形のレベルは減算されることになる。同相と逆相の間の中間的な状態には、波形のレベルが変化しない位相関係が存在し、これにより合成後のASKの振幅の変化が消失する。
【0021】
図3に、R/Wのアンテナに生じる電圧V1を説明するために、参考として、オシロスコープのチャンネル(ch)加算合成機能を利用した波形例を示す。これは、電圧aを想定したch1の波形と、電圧bを想定したch2の波形を合成したものを示している。図3の上側半分と下半分とは同じ波形を時間軸のレンジを変えて示したものである。上側半分が搬送波レンジ(50nsec/div)での波形を示し、下側半分がASK変調レンジ(2μsec/div)での波形を示している。また、図3の左側部分が完全な逆相の時の状態を表し、図3の右側部分が完全な同相の時の状態を表し、中央部分が両者の中間の中途半端な状態(null)を表している。
【0022】
次に、非接触ICカード機能を備えた(すなわちRFIDモジュールを内蔵した)携帯機器の共振周波数とnullが発生しやすい位置関係について説明する。
【0023】
金属を多用した携帯機器の場合に特に問題となるのが、R/Wアンテナの自己インダクタンス(L1)の変動である。電子機器の筐体や基板のベタGND(GNDプレーン)等、金属面(正確には面形状の導電体全般)に発生する渦電流によって、R/Wアンテナの自己インダクタンス(L1)を形成する磁束が打ち消される。このため、携帯機器の接近に伴ってR/Wアンテナの自己インダクタンスは大きく減少し、同時に電圧aに対する電圧bの位相関係は進み側に変動していく。
【0024】
この搬送波位相の変動量をnullが発生しない範囲に押さえ込めなかった場合は、携帯機器がR/Wへ密着する位置付近で通信が出来ない状態になる。
【0025】
図4に、参考として、ループアンテナに携帯機器を接近させたときの、L値の変動の実測例を表したグラフを示す。このグラフの横軸は携帯機器からループアンテナまでの距離(mm)を表し、縦軸はR/Wアンテナの自己インダクタンス(L1)のインダクタンス値(μH)を表している。R/Wに接近させる携帯機器によって金属体の配置や面積が異なるため、対向するR/W機器に与える影響の大きさも異なる。しかし、機器が異なっても、距離が小さいほどインダクタンス値は低下する傾向があることが分かる。
【0026】
上記の様に、R/Wにおいて携帯機器の接近時にR/Wアンテナのインダクタンスが減少することによって、特に携帯機器の共振周波数(以下f0と表記)が高い時には、電圧aに対する電圧bの位相関係はいずれも進み方向のため悪条件が重なり、nullが発生しやすくなる。
【0027】
このようなメカニズムにより、携帯機器のf0と、nullが発生しやすい通信距離との関係は、通常、図5のグラフに示すような傾向を持つ。
【0028】
図5は、携帯機器の共振周波数と通信可能領域の関係を表したグラフである。このグラフの横軸は携帯機器の共振周波数f0(MHz)を表し、縦軸は通信距離(mm)、すなわち、携帯機器からR/Wまでの距離を表している。携帯機器の共振周波数の各値についての隣接した1対のバーのうち右バーはf0が低いR/Wに対する携帯機器の通信可能な位置を示している。左バーはf0が高いR/Wに対する携帯機器の通信可能な位置を示している。図の右下領域の黒いバー部分はnullの発生した位置を示している。
【0029】
R/Wの共振周波数f0は、個々の機器ごとの個体差によるばらつきが想定されている。図5から分かるように、共振周波数f0が低いR/Wと共振周波数f0が低い携帯機器の組み合わせでの遠方の領域R1と、共振周波数f0が高いR/Wと共振周波数f0が高い携帯機器の組み合わせでの遠方の領域R2とで通信が不可となっている。これに加えて、共振周波数f0が高いR/Wと共振周波数f0が高い携帯機器の組み合わせでは、R/Wへの密着付近の領域R0で、nullが発生しやすくなっている。特にこの密着付近の領域R0でのnullの発生は、「距離が近い方が通信しやすそう」というユーザの直感に反する現象のため、使い勝手の悪化に直結する。
【0030】
よって通常、携帯機器の共振周波数f0は通信距離がスペックを満たしつつnullが出ない範囲(以降は許容範囲と呼ぶ)内に厳しく管理する必要がある。しかし、共振周波数f0には、ループアンテナや同調用コンデンサといった部品のばらつきだけで無く、ループアンテナと基板のベタGND(GNDプレーン)の位置関係等、メカ構造的なばらつきや製造工程での組み込みばらつきも影響する。このため、携帯機器の量産による共振周波数f0のばらつき範囲は、その許容範囲を上回ることが多く、ばらつき範囲を狭帯域に管理するためにはf0調整回路の多bit化やトリマコンデンサによる調整等、部品コストや製造工程でのタクトタイムを犠牲にする必要があった。
【0031】
従来、null問題に対して、カード側でnull対策を行うよりもリーダライタ機器の方で対策をとる方が比較的容易であり、リーダライタ機器内での対策については既に実用化されている。しかし一方で、未対策のリーダライタ機器も既に大量に普及してしまっており、それらとの通信においてもnullを発生させないことが望ましい。このため、カード側でのnull対策が求められている。
【0032】
カード側での従来の対策方法としては、特許文献1に記載のような技術がある。図19にこのような従来技術に係る携帯機器の概略構成を示す。この従来技術では、携帯端末内に設けたレベル検出器15によってループアンテナ11のアンテナ励起電圧のレベルを検知し、レベル検出器出力によってFET16をON/OFF制御することにより、アンテナ11と共に共振回路を構成するコンデンサ12の容量に対してコンデンサ17の容量を選択的に追加する。これにより、携帯端末がR/Wに接近した時に共振周波数を下げる制御を行っている。
【0033】
レベル検出器15の内部構成としては、一般的には、図示のような回路構成で、次の様な処理を行う。すなわち、ループアンテナ11の励起電圧を、整流部151内の整流ダイオード152によってDC電圧に変換し、コンパレータ153等を用いてこのDCレベルが増加したことを検知する。コンパレータ153の検知出力に応じてFETスイッチ16をON/OFF制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2006−238398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
上記特許文献1に記載の従来技術では、下記の様な問題点があった。
【0036】
第1に、部品点数が多くなるため、コストと実装面積の観点で携帯機器への採用が困難である。
【0037】
第2に、レベル検出器15内に整流部151が必要なため、GSM(登録商標)等、他の無線通信用の送信波がRFID用アンテナに重畳した場合に、整流部151のダイオード152にてスプリアスが発生する場合がある。
【0038】
このような背景において、本願発明者は、許容できる共振周波数範囲を拡大することができる新規な構成を有するRFIDモジュールおよびこれを用いた携帯機器を比較的低コストで提供することの必要性を認識している。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の一実施形態によるRFIDモジュールは、RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備える。前記共振周波数調整回路は、前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地される。
【0040】
RFIDモジュールがR/W機器に接近したときにRFIDアンテナに励起される電圧に基づき、所定振幅以上のAC波形が入力された際に、上記コンデンサを介してドレイン端子のDCレベルの低下が生じる。これに基づき、ドレイン−ソース間の寄生容量値が増加する。その結果、ループアンテナの共振周波数が低い側へシフトする。これにより、R/W近傍で発生するnullが回避される。
【0041】
前記共振周波数調整回路は、前記コンデンサと前記FETとの接続点に一端が接続され、他端が接地された他のコンデンサをさらに有してもよい。これにより、共振周波数特性のヒステリシス性を強化することができ、ひいては共振周波数の安定化が図れる。
【0042】
前記アンテナエレメントの一端および他端にそれぞれ設けられた第1および第2の共振周波数調整回路を備えてもよい。これにより、平衡方式のRFIDアンテナの平衡を保つことができる。
【0043】
上記RFIDモジュールにおいて、さらに、前記第1および第2の共振周波数調整回路内の各FETのゲート端子に接続された抵抗は、直列接続された第1および第2の抵抗を含み、前記第1の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第2の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第1の受動素子と、前記第2の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第1の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第2の受動素子とをさらに備えてもよい。これにより、共振周波数のシフトが生じる通信距離の閾値を調整することができる。
【0044】
前記FETのゲート端子は、前記抵抗を介して、出力をHighまたはLowに切り換えることができるIOポートに接続されてもよい。
【0045】
本発明の一実施の形態による携帯機器は、ユーザに対して表示インタフェースを提供する表示部と、ユーザに対して入力インタフェースを提供する操作部と、RFID部と、各部の制御および必要なデータ処理を行う制御部とを備える。前記RFID部は、RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備える。前記共振周波数調整回路は、前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地される。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、旧式のリーダライタ機器に対しても位相反転nullの発生を大きく抑制することが可能になる。特に、許容できる共振周波数範囲を拡大することができる新規な構成を有するRFIDモジュールおよびこれを用いた携帯機器を比較的低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】RFIDシステムにおける包絡線位相の反転と復調可/不可の状態の関係を示す図である。
【図2】磁気結合しているR/Wとカードを簡略化した等価回路を示す回路図である。
【図3】R/Wのアンテナに生じる電圧V1を説明するための、オシロスコープのチャンネル(ch)加算合成機能を利用した波形例を示す図である。
【図4】ループアンテナに携帯機器を接近させたときの、L値の変動の実測例を表したグラフである。
【図5】携帯機器の共振周波数と通信可能領域の関係を表したグラフである。
【図6】図5に示したグラフにおいて、本実施の形態による改善の適用前後を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態によるRFIDモジュールの構成例を示す図である。
【図8】FETのドレイン−ソース間電圧と、FETの各部の寄生容量の容量値の関係を示した特性の一例を示す図である。
【図9】FET容量の並列共振回路への影響について説明するための図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例を説明するための図である。
【図11】通信距離とFETのドレイン電位の関係を示すグラフである。
【図12】図6(b)と同じグラフにおいて、ヒステリシスの効果を示した図である。
【図13】ヒステリシス性を強めることができるRFIDモジュールの構成例を示す図である。
【図14】共振周波数f0のシフトが生じる閾値距離DがR/Wから遠方にある場合を説明するための図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るRFIDモジュールの構成例を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態の変形例を示す図である。
【図17】レベル検出器を用いてその検出出力に基づく容量値の切り替えを行う従来技術と第1の実施の形態における回路規模の比較するための図である。
【図18】本発明の実施の形態のいずれかに係るRFIDモジュールを内蔵した携帯機器の構成例を示す図である。
【図19】本発明の従来技術に係る携帯機器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の好適な実施の形態について、さらに他の図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、代表的な電磁誘導方式のRFIDシステムとして、FeliCa(ソニー株式会社の登録商標)を例にとって説明するが、特にこれに限るものではない。例えば、本発明はNFC(Near Field Communication)、その他任意のRFIDシステムに適用可能である。
【0049】
図5に示した様なnullの発生傾向において、もし携帯機器がR/Wへ接近した際に携帯機器の共振周波数f0を動的に低い側に自動的にシフトさせることが出来れば、携帯機器の許容できる共振周波数範囲を飛躍的に拡大することができる。
【0050】
図6(a)(b)は図5に示したグラフにおいて、本実施の形態による改善の適用前後を説明するための図である。例えば、R/Wに対して携帯機器が所定の閾値距離Dより遠い位置から閾値距離Dをまたいで近い位置へ移動する際、閾値距離D付近で携帯機器の共振周波数が低い側に移動する場合を考える。通信距離に応じた共振周波数のシフトが生じない場合(図6(a))の許容できる共振周波数範囲がΔF1であるのに対して、シフトが生じる場合(図6(b))の許容できる共振周波数範囲はΔF1より十分に大きいΔF2となる。このように許容できる共振周波数範囲が拡大することは、f0調整回路のbit数削減や、製造工程のタクトタイム削減等に寄与する。
【0051】
図7に、本発明の第1の実施の形態によるRFIDモジュールの構成例を示す。
【0052】
このRFIDモジュールは、通常、RFIDアンテナとしてのループアンテナ220を構成するアンテナエレメントと、このアンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロック240とにより構成される。ループアンテナ220のインダクタンスと並列共振をとるために、ループアンテナ220の両端のアンテナライン間に同調用コンデンサC0が設けられる。本実施の形態では、さらに、アンテナエレメントの両端に接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整部230を備える。この共振周波数調整部230は、第1の共振周波数調整回路231と第2の共振周波数調整回路232とを有する。
【0053】
RFID回路ブロック240は、ループアンテナ220の両端間に励起された電圧を受けて整流を行う整流部241、同じく励起された電圧を受けて包絡線検波を行う復調部243等を有する。このようなRFID回路ブロック240は、その構成自体は既知であり、既存のRFID用LSIで構成することができる。
【0054】
共振周波数調整部230の第1の共振周波数調整回路231は、アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサ(DCカットコンデンサ)C1と、このコンデンサC1の他端にドレイン端子(D)が接続されるとともにソース端子(S)が接地された電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)FET1と、このFET1のドレイン端子と電源(電源電圧VDD)との間に接続された比較的高抵抗値のプルアップ抵抗R1とを有する。FET1のゲート端子(G)は抵抗R3を介して接地される。
【0055】
共振周波数調整部230の第2の共振周波数調整回路232は、同様に、アンテナエレメントの他端に、一端が接続されたコンデンサ(DCカットコンデンサ)C2と、このコンデンサC2の他端にドレイン端子Dが接続されるとともにソース端子Sが接地された電界効果トランジスタFET2と、このFET2のドレイン端子と電源(電源電圧VDD)との間に接続された比較的高抵抗値のプルアップ抵抗R2とを有する。FET2のゲート端子Gは抵抗R4を介して接地される。
【0056】
第1および第2の共振周波数調整回路231と232の動作は同じなので、以下、主として、第1の共振周波数調整回路231について説明する。
【0057】
FET1はそのゲート端子Gが抵抗R3を介して接地されるので、OFF状態に設定される。このようにOFF状態に設定されたFET1のドレイン端子Dは高抵抗値の抵抗R1で電源電圧へプルアップされ、この状態で、ループアンテナ220の両端に励起された搬送波のAC成分がドレイン端子Dに与えられる。
【0058】
カード側機器すなわち携帯機器がR/Wに接近するとアンテナに励起される搬送波の振幅は大きくなり、ドレイン端子Dに掛かるAC振幅も大きくなる。ドレイン端子Dに掛かるAC波形はFET1の帰還容量(Cdg)を通じてゲート端子Dに伝わるため、FET1は完全なOFF状態から僅かにドレイン遮断電流が流れる状態に遷移する。これにより、高抵抗値のプルアップ抵抗R1でプルアップされたドレイン端子DのDC電位が低下する。
【0059】
ドレイン−ソース間容量(Cds)は、DCバイアス特性を持つ、すなわち、DCバイアスに依存して変化する。ドレイン端子DのDC電位の低下によりドレイン−ソース容量(Cds)が増加する。これに伴い、アンテナの共振周波数f0が下がる。これら一連の動作によって、R/Wに接近したときにカード側アンテナの共振周波数を下げることができる。
【0060】
なお、アンテナの平衡を保つためにアンテナエレメントの両端に対して対称形に第1および第2の共振周波数調整回路231,232を構成しているが、使用するRFID回路ブロック240が平衡方式でなければ、励起電圧の高い側一方のアンテナラインに対して単一の共振周波数調整回路を設ける構成であってもよい。
【0061】
また、FETはゲート端子内に抵抗を内蔵しているタイプのものを想定しているが、抵抗を内蔵していないFETを使用する場合は、抵抗素子を外付けしてもよい。各素子の定数の目安としては、例えば、C1,C2=5〜20pF程度、R1,R2=1MΩ程度、C0=アンテナのL値と合わせて13.56MHz付近で共振する様な値、とすることができる。
【0062】
ここで、図7のRFIDモジュールの典型的な動作について説明する。
【0063】
FET1のゲート端子はGNDに接続されているので、FET1は常にOFF状態であり、ドレイン電流はスタンバイ時にはほぼゼロとなる。このため、FET1のドレイン端子のDC電位はプルアップ先の電源電圧VDDにほぼ等しくなる。R1,R2の定数は、ゲート電位=0V時のドレイン遮断電流に対し有意な電圧降下を生じない範囲でなるべく高い抵抗値にあらかじめ設定しておく。
【0064】
携帯機器がR/Wにかざされてアンテナ端子に搬送波が励起されると、DCカットコンデンサC1を介して、FET1のドレイン端子に搬送波のAC成分が重畳される。このとき、FET1の帰還容量Cdgを介してAC成分はゲート端子D内部にも伝わるが、AC成分の振幅が十分に小さい間はFET1は完全なOFF状態を維持し、FET1のドレイン端子にはVDD電位を中心としたAC波形が現れる。
【0065】
携帯機器がR/Wに接近すると、ドレイン端子に掛かるAC波形の振幅がR/Wとの距離に応じて大きくなる。このとき、容量Cdgを介してゲート端子内部に伝わるAC波形の振幅も大きくなる。この振幅が所定のレベルに達すると僅かにドレイン電流が流れはじめ、プルアップ抵抗R1の値に応じてドレイン端子DのDC電位が低下する。プルアップ抵抗値が高いほど、ドレイン電流の変化に対してDC電位の変動が大きくなる。
【0066】
ここで、図8により、FETのドレイン−ソース間電圧と、FETの各部の寄生容量の容量値の関係を示した特性の一例を示す。図8(a)はFETのドレイン・ソース間電圧Vds(V)と、Ciss、Coss、Crssの各静電容量C(pF)との関係を示したグラフである。ここでは、図8(b)に示すように、FETは、そのドレイン端子Dとソース端子Sとゲート端子Gとの間の相互の寄生容量Cds、Cdg、Cgsを呈する。寄生容量Cds、Cdg、CgsとCiss、Coss、Crssとの関係は次のように規定されている。
Ciss=Cgs+Cdg
Coss=Cds+Cdg
Crss=Cdg
【0067】
図8(c)は、Vgs=0V、f=1MHz、Ta=25℃の条件下でのソース接地FETにおける、ドレイン・ソース間電圧Vdsの具体的な電圧値に対する、容量Ciss、Coss、Crssの容量値(pF)の具体例を示している。
【0068】
この具体例から類推されるように、一般に、ドレイン−ソース間電圧Vdsが高くなるほど、各部の容量値は減少する。容量の絶対値はFETの種類によって異なるが、電位差が大きくなると容量が下がるという関係は一般的な性質である。この性質により、ドレイン端子DのDC電位が低下したFETでは、各部の容量値が大きくなる。仮にVDDが3V程度であったとすると、ドレイン端子DのDC電位が0.5V程度まで低下した場合のCissは9.3pFから15pFへ、Cossは9.8pFから20pFへ、Crssは4.5pFから12pFへ、とそれぞれ変化(上昇)する。
【0069】
次に、図9によりFET容量の並列共振回路への影響について説明する。図9(a)は図7のRFIDモジュールの容量の接続関係を示した図であり、図9(b)はこれを並列共振回路として簡略化した図である。
【0070】
第1の実施の形態におけるFET各部の容量は、図9(a)に示すようにループアンテナ220に対しGNDを介して閉回路を形成している。このため、FET各部の容量は、C0に対して並列に挿入された複数のコンデンサとして作用し、並列共振回路の一部となっている。FET1のCds,Cdg,Cgsの合成容量(以下Cfet1と呼ぶ)およびFET2のCds,Cdg,Cgsの合成容量(以下Cfet2と呼ぶ)が増加した場合、アンテナの共振周波数f0は下記の式で表されるため、容量増加によりf0は低い側へ変化する。
アンテナの共振周波数: f0=1/2π√(Lant・Cant)
アンテナの合成容量: Cant=C0 +{C1・Cfet1/2・(C1+Cfet1)}
但し、C1=C2,Cfet1=Cfet2 とする。
FETの合成容量:Cfet1=Cfet2=Coss−Crss^2/Ciss
ここに、Crss^2はCrssの2乗を表す。
【0071】
先の例で挙げたCissの9.3pFから15pFへの変化、Cossの9.8pFから20pFへの変化、Crssの4.5pFから12pFへの変化を適用した場合、Cfet1およびCfet2は7.6pFから10.4pFへ変化し、容量値は2.8pFだけ増加する。
【0072】
このとき、仮にループアンテナのインダクタンス値が2.5μH,C0=51pF,C1=C2=22pFであると仮定すると、Cds,Cdg,Cgsの合成容量が7.6pFから10.4pFに変化したときの共振周波数f0は 13.721MHzから13.631MHzへ変化する。すなわち、f0は低い側へ90kHzシフトする。
【0073】
尚、FET1,FET2共に、ドレイン電流がある程度増加すると、ドレイン−ソース間の抵抗値の低下に伴ってドレインに現れるAC波形の振幅が低下するため、この使い方ではFETが完全なON状態に至ることは無い。
【0074】
上述した第1の実施の形態によれば、RFID機能を搭載した携帯機器において、FETのドレイン−ソース間容量(Cds)の持つDCバイアス特性を利用して、受信している搬送波レベルが高いときにだけRFIDアンテナの共振周波数を低い側へシフトさせることができる。これにより、FETの持つ特性を活用し、極めて少ない部品点数で所望の効果を得ることができる。
【0075】
上記のとおり、本実施の形態では、OFF状態に制御されたFETのドレイン端子へ13.56MHzのAC波形が印加された際に、AC波形の振幅に応じてドレイン遮断電流が僅かに増加する現象を利用する。
【0076】
本実施の形態の第1の機能は、このドレイン遮断電流の増加に伴い、ドレイン端子に接続されたプルアップ抵抗との分圧比の変化によってドレイン端子のDC電位が変化(低下)することにより、AC波形の振幅レベルを検出することである。
【0077】
本実施の形態の第2の機能は、所定振幅以上のAC波形が入力された際に生じるドレイン端子のDCレベルの低下に基づきドレイン−ソース間の寄生容量値が増加する性質を利用して、AC波形の振幅レベルを容量値に変換するACレベル−容量変換を行うことである。
【0078】
本実施の形態の第3の機能は、第2の機能に基づいて、所定以上の搬送波強度を受信した時にループアンテナの共振周波数を低い側へシフトさせることでR/W近傍で発生するNullを回避することである。
【0079】
次に、図10により第1の実施の形態の変形例を説明する。図10は、第1の実施の形態の変形例の構成を示している。この図において、図7に示した構成要素と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0080】
第1の実施の形態ではFET1,FET2のゲート端子をGNDに直接落とした。これに対して、この変形例では、ゲート端子をRFID回路ブロック240の入出力ポート(IOポート)へ接続する。このIOポートは、RFID回路ブロック240内または外部の制御部(図示せず)により、出力HighまたはLowのいずれかに切り替えて設定することができる。携帯機器の工場での出荷検査時に、IOポート出力をHighに切り替えることでループアンテナの共振周波数f0が変化するため、これを測定することによりFET1,FET2周辺の部品の実装不良等をチェックすることが出来る。チェック後、IOポート出力をLowとすることにより、基本的に工場出荷後は常時Low状態となり、電気的な動作は第1の実施の形態と変わらない。
【0081】
尚、図10ではRFID回路ブロック240のIOポートを使用しているが、他の回路ブロック(IC)のIOポートを使用することも可能である。
【0082】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0083】
FETのゲート端子内部に現れるAC波形は、そのドレイン端子に現れるAC成分がCdgとCgsによって分圧される形となっている。仮にドレインのDC電位が3Vから1Vに低下したとすると、例えば、そのFETのCdgは、4.5pFから8pFへ変化する一方、Cgs(=Ciss−Cdg)は4.8pFから4pFへ変化する。これにより、CdgとCgsの分圧比は、ゲート端子内部に伝わるAC波形がより大きくなる方向に変化する。このため、ドレイン電位の低下がさらなるドレイン電位の低下を引き起こす動作となる。その結果、ドレイン電位は1Vで安定せずに0V付近までスイッチ的に変動する。すなわち、AC波形の大きさの変化に対するドレイン電位の変化は、ヒステリシス性を持った動作となる。
【0084】
図11に、通信距離とFETのドレイン電位の関係を示す。通信距離の変化に伴うドレイン電位の変化の軌跡は往路と復路で異なる経路をとる。すなわち、共振周波数特性についてもヒステリシス性を呈する。上述したように、ドレイン電位は寄生容量に寄与し、寄生容量は最終的に共振周波数に寄与する。したがって、ヒステリシス性が不足していると、ドレイン電位の変化時に寄生容量ひいては共振周波数のばたつきが発生し、通信特性に影響を与える場合がある。
【0085】
図12は、図6(b)と同じグラフにおいて、ヒステリシスの効果を示したものである。ここでは、携帯機器の共振周波数と通信距離との関係でヒステリシス性を示している。すなわち、共振周波数のシフトが生じる通信距離が、通信距離の変化の往路と復路とで異なっている。
【0086】
ところで、ドレイン端子に現れるAC波形振幅は、アンテナ端子(a)に現れる波形がCds,Cdg,Cgsの合成容量(以下Cfetと呼ぶ)と、C1とによって分圧されたものである。このことに着目すると、ドレイン電位の低下時にC1の容量値が殆ど変化しないのに対してCfetは増加する。このため、ドレイン端子に掛かるAC波形振幅が小さくなる方向に分圧比が変化することになる。この現象は、逆に、ヒステリシス性を弱める作用となる。従って、通常は前述のヒステリシス性を強める作用と、ヒステリシスを弱める作用は同時に作用することになる。
【0087】
図7に示した構成のRFIDモジュールにおいてもヒステリシス性は期待できるが、動作の安定性の観点から、ヒステリシス性をさらに強めることができれば好ましい。ヒステリシス性を強めたい場合には、ヒステリシスを弱める作用の方を軽減させることによって調整が可能である。
【0088】
図13に、このようなヒステリシス性を強めることができるRFIDモジュールの構成例を示す。この図において、図7に示した構成要素と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0089】
図7に示した構成と異なる点は、次の点である。すなわち、共振周波数調整部230aの第1の共振周波数調整回路231a内のDCカットコンデンサC1とFET1との接続点に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサC3を設けている。同様に、第2の共振周波数調整回路232a内においても、そのDCカットコンデンサC2とFET2との接続点に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサC4を設けている。
【0090】
上述のように、ヒステリシスを強める作用がCdgとCgsの分圧比に依存しているのに対して、ヒステリシスを弱める作用はC1とCfetの分圧比に依存している。そこで、コンデンサC3を加えると、FET1のドレイン端子Dに掛かるAC波形振幅は、アンテナ端子(a)に現れる波形がC1と(Cfet+C3)で分圧されたものになる。このため、Cfetの値が変化した際の分圧比への影響は小さくなる。これにより、Cfetが増加した時のドレイン端子Dに現れるAC振幅の低下は抑えられ、CdgとCgsの分圧比による"ヒステリシスを強める効果"が優勢になる。その結果、全体としてヒステリシス性は強化される方向になる。
【0091】
なお、上述した第1の実施の形態の変形例は第2の実施の形態にも適用可能である。
【0092】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0093】
図14に示すように、上述した共振周波数f0のシフトが生じる通信距離の閾値距離DがR/Wからあまり遠方にあると、領域R3のように、共振周波数f0のシフトによって通信可能なf0範囲から逸脱してしまう可能性がある。このため、携帯機器が十分R/Wに接近してから共振周波数f0が変化するように、閾値距離D(ひいてはドレイン電位低下の閾値)を調整することが望ましい。
【0094】
図7に示した第1の実施の形態の共振周波数調整部230において、ドレイン電位低下の閾値を、よりR/Wの近傍に近づけるにはC1,C2の容量値を小さくし、ドレイン端子に伝わるAC波形振幅を小さくすればよい。しかしながら、C1,C2の容量値を小さくするとドレイン電位低下時の共振周波数f0のシフト量も小さくなるため、R/W密着付近で発生するnullの回避性能も低下してしまう。
【0095】
そこで、第3の実施の形態では、充分なf0シフト量を確保しつつ閾値をR/W近傍に調整する方策を示す。
【0096】
図15は第3の実施の形態に係るRFIDモジュールの構成例を示している。この図において、図7に示した構成要素と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0097】
本実施の形態では、ループアンテナの性質として、ループアンテナ220の両端の端子(a),端子(b)に現れる波形が、互いに逆位相であることを利用している。
【0098】
そのために、図7に示した構成と異なる点は、抵抗R5,R6、および、閾値調整用の受動素子としてのコンデンサC5,C6を追加したものである。これにより、FET1のゲート端子には、FET2のドレイン端子からコンデンサC5を介して波形を引き込み、FET2のゲート端子には、FET1のドレイン端子からコンデンサC6を介して波形を引き込んでいる。これにより、共振周波数調整部内の一方の共振周波数調整回路内においてCdgを介して伝わってくる波形に、他方の共振周波数調整回路から逆相の波形を合成する。
【0099】
より具体的には、共振周波数調整部230b内の第1の共振周波数調整回路231b内のゲート抵抗は抵抗R3と抵抗R5とを直列接続したものとする。また、共振周波数調整部230b内の第2の共振周波数調整回路232b内のゲート抵抗は抵抗R4と抵抗R6とを直列接続したものとする。
【0100】
さらに、共振周波数調整回路231b内の抵抗R3と抵抗R5の接続点と他方の共振周波数調整回路232b内のFET2のドレイン端子Dとの間に、第1の受動素子としてのコンデンサC5を接続する。同様に、共振周波数調整回路232b内の抵抗R4と抵抗R6の接続点と他方の共振周波数調整回路231b内のFET1のドレイン端子Dとの間に、第2の受動素子としてのコンデンサC6を接続する。
【0101】
共振周波数f0のシフト量を大きくとるためには、コンデンサC1,C2の容量値を上げる必要がある。しかし、そのままではドレイン端子Dから容量Cdgを経てゲート内部に伝播するAC成分が大きくなってしまい、R/Wから遠方でのf0シフトを引き起こしてしまう。そのため、これと逆位相を持つ波形をゲート端子側から注入し、ゲート内部にて互いに打ち消し合うことを意図して、コンデンサC5,C6を配置している。R5,R6は、ゲート端子のDC電位をGNDレベルに保ちつつゲート内部にAC波形を伝えるための抵抗である。
【0102】
なお、定数の目安として、C5,C6はCdgと同程度またはそれ以下、R5,R6は10kΩ〜100kΩ程度である。
【0103】
ゲート端子に抵抗が内蔵されている場合には、抵抗通過時に位相差が生じ、打消しの効果が低下するため、Cdgのインピーダンスの絶対値に対して抵抗値が同等以下であることが望ましい。
【0104】
また、第3の実施の形態においても、上記第1の実施の形態の変形例、および、第2の実施の形態の特徴を併用することが可能である。
【0105】
図16は、第3の実施の形態の変形例を示している。この図において、図15に示したと同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。図15に示した構成と異なる点は、受動素子として、コンデンサC5,C6の代わりに、抵抗R7,R8を用いたことである。
【0106】
受動素子としては、コンデンサ、抵抗、インダクタ、またはこれらの任意の組み合わせとすることが可能である。この場合、アンテナのQが低下する可能性があるが、その低下が許容範囲であれば、問題なく本発明の効果を享受できる。
【0107】
上述した本発明の代表的な実施の形態である第1の実施の形態の効果について説明する。第1の実施の形態に依れば次のような格別な効果が得られる。
【0108】
第1は部品点数削減の効果である。図17は、レベル検出器を用いてその検出出力に基づく容量値の切り替えを行う従来技術と第1の実施の形態における回路規模の比較するための図である。本実施の形態ではコンデンサ、FET、プルアップ抵抗だけで、アンテナの誘起電圧のレベル検出から容量値の切り替えまでを行う。このため、従来技術のレベル検出器で必要であった整流ダイオードやコンパレータ周辺回路を削減することができる。特に、従来技術におけるコンパレータ周辺回路は閾値設定用の抵抗や電位安定化のためのコンデンサ、ヒステリシスを持たせるための帰還抵抗、電源未投入状態でアンテナから大きな入力電圧が入った時のための保護抵抗等、多くの部品を必要とする。本実施の形態ではこれらの部品が不要となるので削減効果が大きい。
【0109】
第2に、アンテナの誘起電圧のAC成分の振幅の大きさによってレベル検出を行うため整流回路が必要無く、GSM(登録商標)等、他の無線通信用の送信波がRFID用アンテナに重畳した場合に、整流部151のダイオード152にてスプリアスが発生する懸念が減る。
【0110】
第3に、コンパレータを使用しないため、コンパレータのスタンバイ電流や、閾値設定のための抵抗分圧で消費される電流が削減できる。
【0111】
これらの効果は、基本的に、上述した他の実施の形態および変形例についても共通に得られるものである。
【0112】
上述したRFIDモジュールは、非接触ICカードの形態として具現されるだけでなく、携帯機器に組み込んで使用することも可能である。
【0113】
図18に、上記実施の形態のいずれかに係るRFIDモジュールを内蔵した携帯機器300の構成例を示す。
【0114】
携帯機器300は、制御部310、アンテナ311、通信部312、表示部313、操作部314、記憶部315、音声処理部316、スピーカ317、マイクロホン318および、RFIDモジュールを含むRFID部319を備える。制御部310は、バス320を介して各部と接続され、各部の制御および必要なデータ処理を行うプロセッサであり、MPU等のプロセッサを有する。通信部312は、アンテナを介して基地局と電波による無線通信を行う部位である。表示部313は、ユーザに対して表示インタフェースを提供する部位であり、表示画面上に情報を表示するLCD、有機EL等の表示デバイスを有する。操作部314は、ユーザに対して入力インタフェースを提供する部位であり、テンキーや各種制御キー等の入力装置を有する。記憶部315は、制御部310が実行するプログラムとしてOSおよび通信アプリケーション・プログラム等の各種アプリケーション・プログラム、および必要なデータを格納する部位であり、ROM、RAM等のメモリを含む。音声処理部316は、受話音声、動画ファイルの音声、音楽データの処理部であり、コーデック等を有し、音声を出力するスピーカ317および送話音声等を集音するマイクロホン318が接続される。
【0115】
RFID部319は、好ましくは、RFIDモジュール319bと制御部310との間のインタフェースをとるためのインタフェース部319aを備える。制御部310は、RFIDモジュール319bの能動化/不能化等の制御を行うとともに、能動化した状態で、インタフェース部319aを介して、RFIDモジュール319bとの間のデータの授受を行うことが可能である。RFIDモジュール319bは通常、データを記憶するメモリ(図示せず)を内蔵している。
【0116】
携帯機器300としては、携帯電話端末の他、PDA、ゲーム機、PC、家電装置等を含みうる。
【0117】
本発明は、また、別の実施の形態として、通信方法、特に、RFIDモジュールの通信方法を提供する。この通信方法は、次の各ステップを有する。
RFIDアンテナのアンテナエレメントの一端にコンデンサを介してソース接地FETを接続し、
そのFETのドレイン端子を所定の電源電圧にプルアップし、
前記FETのゲート端子を抵抗を介して接地し、
RFIDモジュールがR/W機器に接近したときにRFIDアンテナに励起される電圧に基づき、所定振幅以上のAC波形が入力された際に、上記コンデンサを介してドレイン端子のDCレベルを低下させ、
このDCレベルの低下に基づき、ドレイン−ソース間の寄生容量値が増加させることにより、ループアンテナの共振周波数を低い側へシフトさせる。
【0118】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。すなわち、請求項または請求項と均等の範囲内にある限り、デザイン又はその他の要素によって種々の改変、組み合わせ、他の実施形態が生じうることは、当業者にとって当然のことと理解される。
【0119】
例えば、RFモジュールを備えた携帯機器について説明したが、カード形態、その他任意の形態のRFモジュールに適用することができる。また、上記実施の形態で挙げた具体的な数値はあくまで説明のための例示であり、本発明はそれらの数値に限定されるものではない。
【0120】
上述の本発明の実施の形態では、
RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、
前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備え、
前記共振周波数調整回路は、
前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、
前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、
前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地された
RFIDモジュール、
について説明している。
【0121】
また、
前記共振周波数調整回路は、前記コンデンサと前記FETとの接続点に一端が接続され、他端が接地された他のコンデンサをさらに有する請求項1に記載のRFIDモジュール、についても説明している。
【0122】
また、
前記アンテナエレメントの一端および他端にそれぞれ設けられた第1および第2の共振周波数調整回路を備えた請求項1または2に記載のRFIDモジュール、
についても説明している。
【0123】
また、
前記第1および第2の共振周波数調整回路内の各FETのゲート端子に接続された抵抗は、直列接続された第1および第2の抵抗を含み、
前記第1の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第2の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第1の受動素子と、
前記第2の共振周波数調整回路内の前記第1および第2の抵抗の接続点と前記第1の共振周波数調整回路内の前記FETのドレイン端子との間に接続された第2の受動素子と
をさらに備えた請求項3に記載のRFIDモジュール、
についても説明している。
【0124】
また、
前記FETのゲート端子は、前記抵抗を介して、前記RFID回路ブロックのIOポートに接続され、前記IOポートはその出力をHighまたはLowに切り替えて設定される請求項1に記載のRFIDモジュール、
についても説明している。
【0125】
また、
ユーザに対して表示インタフェースを提供する表示部と、
ユーザに対して入力インタフェースを提供する操作部と、
RFID部と、
各部の制御および必要なデータ処理を行う制御部とを備え、
前記RFID部は、
RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、
前記アンテナエレメントに接続され、RFIDアンテナの共振周波数を調整する共振周波数調整回路とを備え、
前記共振周波数調整回路は、
前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続されるとともにソース端子が接地されたFETと、
前記FETのドレイン端子と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを有し、
前記FETのゲート端子が抵抗を介して接地された
携帯機器、
についても説明している。
【符号の説明】
【0126】
151…整流部、152…ダイオード、152…整流ダイオード、153…コンパレータ、220…ループアンテナ、230,230a,230b…共振周波数調整部、231,231a,231b…共振周波数調整回路、232,232a,232b…共振周波数調整回路、240…RFID回路ブロック、241…整流部、243…復調部、300…携帯機器、310…制御部、311…アンテナ、312…通信部、313…表示部、314…操作部、315…記憶部、316…音声処理部、317…スピーカ、318…マイクロホン、319…RFID部、319a…インタフェース(I/F)部、319b…RFIDモジュール、320…バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、
前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続され、プルアップ抵抗がドレイン端子と電源との間に接続され、ゲート端子が抵抗を介して接地され、ソース端子が接地されたFETと、を有する第1の共振周波数調整回路と、を備える、
RFIDモジュール。
【請求項1】
RFIDアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントが接続されたRFID回路ブロックと、
前記アンテナエレメントの一端に、一端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端にドレイン端子が接続され、プルアップ抵抗がドレイン端子と電源との間に接続され、ゲート端子が抵抗を介して接地され、ソース端子が接地されたFETと、を有する第1の共振周波数調整回路と、を備える、
RFIDモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2012−198872(P2012−198872A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261776(P2011−261776)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(501431073)ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(501431073)ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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