説明

S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩

S−〔2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル〕−2メチル−L−システインの結晶質サリチル酸1水和物塩を開示する。さらに結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの製造方法も開示する。さらに、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインのための使用方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疾病の治療において有用な新規の化合物、より特に、一酸化窒素シンターゼの誘導性イソ型から一酸化窒素の不適切な発現が関与する症状を治療するためのS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの新規の塩及びその医薬組成物を含む。
【0002】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインは、本書に採用する共有譲渡された米国特許第6,403,830号の中で記述され請求されている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
一酸化窒素(NO)は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)酵素の複数のイソ型のうちのいずれか1つにより産生される生物活性遊離ラジカルガスである。後年にNOとして同定されたものの生理学的活性は、当初、アセチルコリンによってひき起こされる血管弛緩が血管内皮の存在によって左右されることが発見された1980年代初頭に発見された。このような血管弛緩を媒介する、その後内皮由来の弛緩因子(EDRF)と呼ばれた内皮に由来する因子は、現在、NOSの1つのイソ型により血管内皮内で生成されるNOである。血管拡張剤としてのNOの活性は、100年以上にわたり知られてきた。さらに、NOは、亜硝酸アミル及び三硝酸グリセリルを含む既知のニトロ血管拡張剤に由来する活性種である。一酸化窒素は同様に可溶性グアニル酸シクラーゼ(cGMP)の内因性刺激物質であり、かくしてcGMPの産生を刺激する。NOSが、N−モノメチルアルギニン(L−NMMA)により阻害される場合、cGMP形成は完全に妨げられる。内皮依存性弛緩に加えて、NOは、食細胞の細胞毒性及び中枢神経系内での細胞間伝達を含めた数多くの生物学的作用に関与することが知られている。
【0004】
NOとしてのEDRFの同定は、酵素NOシンターゼによりアミノ酸L−アルギニンからNOを合成させる生化学経路の発見と時期が一致していた。少なくとも以下のような3つのタイプのNOシンターゼが存在する:
(i) レセプタ又は物理的刺激に応答してNOを放出する、脳内にある構成性Ca++/カルモジュリン依存性酵素;
(ii) 血管平滑筋、マクロファージ、内皮細胞、及び数多くのその他の細胞の内毒素及びサイトカインによる活性化の後に誘導される、130kDのタンパク質であるCa++非依存性酵素;及び
(iii) レセプタ又は物理的刺激に応答してNOを放出する、内皮内にある、構成性Ca++/カルモジュリン依存性酵素。
【0005】
ひとたび発現されると、誘導性一酸化窒素シンターゼ(以下「iNOS」と呼ぶ)は、長期にわたり連続的にNOを生成する。臨床研究は、NO産生及びiNOS発現が、関節リウマチ及び骨関節炎(例えばMcInnes I.B. et al., J. Exp. Med. 184:1519(1996)参照)、炎症性腸疾患(例えばLundberg J. O. N. et al., Lancet 344:1673,(1994)参照)及び喘息(例えばHamid, Q. et al., Lancet 342:1510(1993)参照)といったようなさまざまな慢性炎症性疾患において増大されること、そして、iNOSがこれらの慢性炎症性疾患に主要な病理学的因子として関与していることを示してきた。
【0006】
かくして、iNOSによるNO過剰産生の阻害は、抗炎症作用をもつ可能性が高い。しかしながら、eNOS及びnNOSからのNOの産生は正常な生理に関与していることから、炎症治療に用いられるあらゆるNOS阻害物質が、iNOS選択的であり、かくして、eNOS生成されたNOによる血圧の正常な生理学的変調及びnNOS生成されたNOによる非アドレナリン作動性、非コリン作動性ニューロン伝達が影響を受けずにとどまるようになっていることが望ましいと思われる。
【0007】
サリチル酸又は2−ヒドロキシ安息香酸は、アスピリンの活性COX−1及びCOX−2代謝産物である。アスピリン(アセチルサリチル酸)は、血小板をアセチル化する能力を有し、かくしていわゆる血液抗凝結薬であるが、サリチル酸は、血小板をアセチル化しない。
【0008】
全ての薬学化合物及び組成物について、薬物化合物の化学的及び物理的安定性は、薬剤物資の商業的開発において重要である。かかる安定性には、周囲条件での、特に水分に対する及び貯蔵条件での安定性が含まれる。市販の製品の耐用年限の間の考えられる異なる貯蔵条件を予測するためには、異なる貯蔵条件での高い安定性が必要とされる。安定した薬物は、特殊な貯蔵条件の使用ならびに頻繁な在庫交換を回避してくれる。薬物化合物は同様に、均等な粒度及び表面積をもつ薬物材料を達成するために薬物の粉砕作業を必要とすることの多い製造プロセスの間、安定していなくてはならない。不安定な材料は、往々して多形変化起こす。従って、その安定性プロフィールを増強する薬剤物資のあらゆる改質が、安定性の比較的低い物質に対し有意義な利点を提供する。
【0009】
例えば、共同譲渡された米国特許第6,403,830号の中で記述され請求されているS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインといったように、いくつかのiNOS阻害物質が記述されてきた。しかしながら、この化合物は、無定形の固体である。従って、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインといったようなiNOS阻害物質の結晶質固体形態を提供することが望ましいと思われる。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約
本発明は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの新規の結晶質塩、医薬組成物、新規の塩化合物の製造方法、医薬組成物の製造方法及び、一酸化窒素シンターゼ構成イソ型の中から一酸化窒素シンターゼの誘導性イソ型を選択的に阻害又は変調させる化合物の塩を投与することによって、このような阻害又は変調を必要としている対象の体内で一酸化窒素合成を阻害又は変調させるために前記新規塩化合物及び組成物を使用する方法、に向けられている。当該塩化合物は、有用な一酸化窒素シンターゼ阻害活性を有し、一酸化窒素の合成又は過剰合成が誘因の一部となっているような疾病又は症状の治療又は予防において有用であるものと期待されている。
【0011】
化学量論的に言うと、新規塩は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの1つの分子及びサリチル酸の1つの分子である。
【0012】
新規塩は、以下の物理的測定値のいくつか又は全てによって特徴づけされる;(燃焼分析などによる)、元素分析、融点及び融解熱(示差走査熱量測定及び熱重量分析)、屈折指数(偏光顕微鏡)、X線粉末回折パターン、水分吸着(例えばDVS水分平衡)及び振動サイン(ラマンスペクトル)。本発明のもう1つの実施形態においては、
− S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオンを得る段階;
− 適切な溶剤に対してS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオンを添加する段階;
− S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン及び溶剤に対してサリチル酸を添加する段階;及び
− S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶を沈殿させるべく逆溶剤を添加する段階、
を含む、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の製造方法が開示されている。溶剤は、水、ジメチルホルムアミド、その混合物などといった任意の適切な溶剤であり得る。逆溶剤は、アセトニトリル、メタノール又はエタノール又はその混合物といったような任意の適切な逆溶剤であり得る。
【0013】
当該新規結晶質塩は、関節炎といったような或る種の身体条件で発生する軟骨の変性が関与する疾病を治療するために使用することができる。従って、L−アルギニンからのNOの産生を阻害することに利点がある身体条件としては、関節リウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、若年性関節炎、敗血症性関節炎、脊椎関節炎、急性関節リウマチ、腸炎性関節炎、神経障害性関節炎、及び化膿性関節炎といったような関節炎状態が含まれる。さらに、NO誘発された軟骨細胞呼吸の機能低下は、関節炎、特に骨関節炎において基質の喪失及び2次的な軟骨石化を変調させる可能性がある。
【0014】
当該結晶質塩が有用であり得るその他の身体条件としては、慢性又は炎症性腸疾患、心血管虚血、糖尿病、うっ血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、片頭痛、緑内障、大動脈瘤、逆流性食道炎、下痢、過敏症腸症候群、嚢胞性線維症、気腫、喘息、気管支拡張症、痛覚過敏、脳虚血、血栓性脳梗塞、(心停止に続発する)全脳虚血、多発性硬化症及びNOにより媒介されるその他の中枢神経系障害、例えばパーキンソン病及びアルツハイマー病が含まれる。NO阻害が有用でありうるさらなる神経変性障害としては、低酸素症、低血糖症、癲癇、及び外的創傷(脊髄及び頭部損傷など)、高圧酸素誘発性痙攣及び中毒及び、痴呆例えば初老期痴呆、及びAIDS関連痴呆、シデナム舞踏病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、コルサコフ病、大脳血管障害関連痴愚、睡眠障害、統合失調症、うつ病、月経前症候群(PMS)に付随するうつ病又はその他の症候群、不安症及び敗血症ショックといったような障害における神経変性及び/又は神経壊死が含まれる。
【0015】
当該塩は、同様に、急性及び慢性の両方の身体因性(侵害性又は神経障害性)のものを含めた疼痛などの治療において、一酸化窒素が同じく一つの役割を果たすことができる場合にも使用可能である。当該化合物は、一般的なNSAID又はオピオイド鎮痛剤が従来投与されるはずのあらゆる状況において使用可能であると思われる。
【0016】
さらに、当該塩でNO産生を阻害することにより治療可能であるその他の障害としては、長期の麻薬性鎮痛薬を必要とする患者における麻薬耐性及びベンゾジアゼピンを摂取している患者におけるベンゾジアゼピン耐性、及び例えばニコチン及び摂食障害といった常習行為が含まれる。当該化合物は同様に、抗菌剤としても有用であり得る。
【0017】
L−アルギニンからのNO産生を阻害するために当該塩を使用することのできるさらなる身体条件としては、様々の作用物質により誘発された敗血性及び/又は毒素性ショックに付随する全身性低血圧;TNF、IL−1及びIL−2といったようなサイトカインを用いた療法;及び移植療法における短期免疫抑制に対するアジュバントとしての使用、が含まれる。
【0018】
当該塩は同様に、眼症状(眼内圧亢進網膜ブドウ膜炎など)、全身性エリトマトーデス(SLE)、球糸体腎炎、動脈再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、オキシダント誘発性肺損傷、癌患者におけるようなIL2療法、悪液質、移植療法におけるような免疫抑制、胃腸運動性障害、日光皮膚炎、湿疹、乾癬、歯肉炎、膵炎、感染由来の胃腸管に対する損傷、嚢胞性線維症、臓器移植療法における短期免疫抑制に対するアジュバントといった免疫系機能不全治療、陣痛誘発、腺腫様ポリープ、腫瘍成長制御、化学療法、化学的予防及び気管支炎の治療においても有用である。
【0019】
本発明は同様に、疼痛、喘息及びその他の気道障害、癌、関節炎、網膜症及び緑内障を含む眼障害、過敏性腸症候群を含む炎症関連性障害、及び一酸化窒素の過剰産生が一因となるその他の障害の治療を目的とする、薬学的に受容可能な担体、希釈剤又はビヒクルと合わせた治療上有効な量の結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物を含む薬学組成物にも向けられている。
【0020】
ヒトの治療に有用であることに加えて、この形態は、哺乳動物、ゲッ歯類などを含めたコンパニオン動物、外来動物及び家畜の獣医的処置のためにも有用である。より好ましい動物としてはウマ、イヌ及びネコが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
定義
本書に使用されている「治療する」、「治療中の」及び「治療」という語は、本書で使用されているように、予防的、苦痛緩和的治療又は修復的治療を内含している。
【0022】
「有効量」という語は、治療に導く用量を意味する。有効量は単一用量又は分割用量で、一定の期間にわたり投与可能である。
【0023】
「ACE」という語は、アセトンを意味する。
【0024】
「ACN」という語は、アセトニトリルを意味する。
【0025】
本書では、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインに適用されるような「無定形」という語は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン分子が無秩序な配置で存在し、区別可能な結晶格子又は単位格子を形成していない固体状態を意味する。X線粉末回折を受けた時点で、無定形S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインは、いかなる特徴的結晶ピークも産生しない。
【0026】
本書でS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン分子に適用されている「結晶質形態」という語は、(i)区別可能な単位格子を含み(ii)X線放射線に付した場合に回折ピークを生成する区別可能な結晶格子を形成するようにS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン分子が配置されている固体状態の形態を意味する。
【0027】
本書において使用されている「結晶化」という語は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン出発材料の調製に関する適用可能な状況に応じて結晶化及び/又は再結晶化を意味することができる。
【0028】
「DMF」という語は、N,N−ジメチルホルムアミドを意味する。
【0029】
「D/W/A」という語は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、水及びアセトニトリルの三元溶剤系を意味する。
【0030】
本書で使用されている「S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン薬剤物資」という語は、その語が使用される前後関係によって性格付けされる通りのS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン自体を意味し、未製剤のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン又は薬学組成物の1成分として存在するS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインをも意味し得る。
【0031】
「DSC」という語は、示差走査熱量測定を意味する。
【0032】
「DTA」という語は、示差熱分析を意味する。
【0033】
「SDTA」という語は、同時示差熱分析を意味する。
【0034】
「HPLC」という語は、高圧液体クロマトグラフィを意味する。
【0035】
「IR」という語は、赤外線を意味する。
【0036】
「NMR」という語は、核磁気共鳴を意味し、核磁気共鳴分光法にも適用できる。
【0037】
「ml」という語は、ミリリットルを意味する。
【0038】
「mg」という語は、ミリグラムを意味する。
【0039】
「μg」という語は、マイクログラムを意味する。
【0040】
「μl」という語は、マイクロリットルを意味する。
【0041】
本書で使用する「核生成」という語は、1つの溶液中の結晶の形成を意味する。
【0042】
本書の「純度」という語は、相反する性格付けのないかぎり、従来のHPLC検定に従ったS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの化学的純度を意味する。
【0043】
「PXRD」という語は、粉末X線回折を意味する。
【0044】
「rpm」という語は、一分あたりの回転数を意味する。
【0045】
本書で使用されている「播種」という語は、核生成を開始するか又は増強させる目的で溶液に対し結晶を付加することを意味する。
【0046】
「TGA」という語は、熱重量分析を意味する。
【0047】
「Tm」という語は、融解温度を意味する。
【0048】
「遊離両性イオン」という語は、正味電荷がゼロであるような形で正及び負の両方の電荷を担持する分子を意味している。
【0049】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、なかでも対象の体内の炎症を治療するため、又は疼痛及び頭痛の治療における鎮痛剤としてか又は発熱の治療のための解熱剤としてといったようにその他の一酸化窒素シンターゼ−媒介障害を治療するために、有用となる。例えば、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、急性関節リウマチ、腸炎性関節炎、神経障害性関節炎、乾癬性関節炎及び化膿性関節炎を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)関節炎を治療するために有用となる。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩がL−アルギニンからのNO産生を阻害する上で1つの利点を提供することになる身体条件としては、関節炎症状が含まれる。
【0050】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、さらに、喘息、気管支炎、生理痛(例えば月経困難症)、早産、腱炎、滑液包炎、皮膚関連症状例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、火傷、日光皮膚炎、皮膚炎、膵炎、肝炎及び白内障手術及び屈折矯正手術といったような眼科手術を含めた術後炎症の治療において有用となる。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群及び潰瘍性大腸炎といったような胃腸症状を治療するためにも有用となる。
【0051】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、結腸直腸癌及び乳癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮頸癌及び皮膚癌といったような癌の予防又は治療のためにも有用となる。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、リューマチ熱、I型糖尿病、重症筋無力症を含む神経筋接合部疾患、多発性硬化症を含む白質疾患、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、腎炎、過敏症、損傷後に発生する腫脹、心筋虚血などといったような疾病における炎症及び組織損傷を治療する上で有用であろう。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、同様に、緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、眼性光恐怖症といった眼科疾患及び眼組織に対する急性損傷に付随する炎症及び疼痛の治療においても有用であると思われる。当該発明力あるS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩の中で特に有利であるのは、緑内障の治療、特に一酸化窒素媒介神経損傷の場合のように、緑内障の症候が一酸化窒素の産生によってひき起こされている場合の治療である。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、同様に、ウイルス感染及び嚢胞性線維症に付随するものといったような肺の炎症の治療において有用でもあると思われる。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同じく、アルツハイマー病を含む皮質痴呆といった或る種の中枢神経系障害、及び脳梗塞、虚血及び外傷性傷害の結果としての中枢神経系の損傷の治療のためにも有用であろう。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、関節炎の治療向けといったように抗炎症剤としても有用であり、副作用がはるかに有害性の低いものであるというさらなる利点をもつ。
【0052】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、内毒素性ショック症候群、及びアテローム性動脈硬化症の治療においても有用であろう。
【0053】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、術後痛、歯痛、筋肉痛及び癌による疼痛を含む(但しこれに制限される訳ではない)疼痛の治療においても有用と思われる。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、アルツハイマー病といったような痴呆の予防にとって有用であろう。
【0054】
ヒトの治療に有用であることに加えて、この形態は、哺乳動物、ゲッ歯類などを含めたコンパニオン動物、外来動物及び家畜の獣医的処置のためにも有用である。より好ましい動物としてはウマ、イヌ及びネコが含まれる。
【0055】
当該S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、例えば、ステロイド、NSAID、COX−2選択的阻害物質、5−リポキシゲナーゼ阻害物質、LTB4アンタゴニスト及びLTA4加水分解酵素阻害物質と合わせて、その他の従来の抗炎症療法と部分的又は完全に取って代わる同時療法においても使用可能である。
【0056】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩がNO阻害を阻害する上で1つの利点を提供することになるその他の身体条件には、心血管虚血、糖尿病(I型又はII型)、うっ血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、偏頭痛、緑内障、大動脈瘤、逆流性食道炎、下痢、過敏性腸症候群、嚢胞性繊維症、気腫、喘息、気管支拡張症、痛感過敏(異痛症)、脳虚血(限局性虚血、脳血栓及び一過性全脳虚血(例えば心停止に続発するもの)の両方、多発性硬化症及びその他の、例えばパーキンソン病などNOが媒介する中枢神経系障害が含まれる。NO阻害が有用でありうるさらなる神経変性障害には、低酸素症、低血糖症、癲癇などの障害及び中枢神経系(CNS)外傷(脊髄及び頭部損傷など)、高圧酸素誘導性痙攣及び中毒、痴呆例えば初老期痴呆、及びAIDS関連痴呆、悪液質、シデナム舞踏病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、コルサコフ病、大脳血管障害関連痴愚、睡眠障害、統合失調症、うつ病、月経前症候群(PMS)に付随するうつ病又はその他の症候群、不安症及び敗血症ショックといった症例における神経変性又は神経壊死が含まれ得る。
【0057】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、急性及び慢性の両方の体形成(侵害性又は神経障害性)のものを含む疼痛の治療においても有用となる。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、一般的なNSAID又はオピオイド鎮痛薬が従来投与されるはずの神経障害性疼痛を含めたあらゆる状況において使用可能であると思われる。
【0058】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩により有利にも治療されることになるさらにその他の障害又は身体条件としては、長期の麻薬性鎮痛薬を必要とする患者における麻薬耐性及びベンゾジアゼピンを摂取している患者におけるベンゾジアゼピン耐性、及び例えばニコチン中毒、アルコール依存症及び摂食障害といったその他の常習行為の治療又は防止が含まれる。
【0059】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、例えばアヘン剤、アルコール又はタバコ中毒の禁断症状の治療又は予防といったような、薬物禁断症状の治療又は予防においても有用となる。
【0060】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は同様に、抗菌又は抗ウイルス薬と治療的に組合わされた場合に組織損傷を防止するのに有用でもあり得る。
【0061】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、同様に、様々な作用物質によって誘発された敗血性及び/又は毒素性出血性ショックに付随する全身性低血圧;TNF、IL−1及びIL−2などのサイトカインでの治療及び移植療法における短期免疫抑制に対するアジュバントとしての使用、を含めたL−アルギニンからのNO産生を阻害する上でも有用となる。
【0062】
本発明はさらに、新生物の治療及び予防のための本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩の使用にも向けられている。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩及び方法により治療可能又は予防可能な新生物としては、脳腫瘍、骨肉腫、白血病、リンパ腫、上皮細胞由来の新生物(上皮癌)例えば基底細胞癌、腺癌、消化器癌例えば口唇癌、口腔癌、食道癌、小腸癌及び胃癌、大腸癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頚癌、肺癌、乳癌及び皮膚癌、例えば扁平上皮細胞及び基底細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌及び体全体にわたり上皮細胞をもたらすその他の既知の癌が含まれる。好ましくは、治療されるべき新生物は、消化管癌、肝癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌及び皮膚癌、例えば扁平上皮細胞及び基底細胞癌の中から選択される。当該S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩及び方法は、放射線療法で発生する線維症を治療するためにも使用可能である。当該S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩及び方法は、家族性大腸線腫症(FAP)を有する者を含めた線腫性ポリープを有する対象を治療するために使用可能である。さらに、当該S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩及び方法は、FAPリスク患者においてポリープが形成するのを防ぐために使用可能である。
【0063】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩をもう1つの抗新生物薬の併用治療は、相乗効果を生み出すか又代替的には、治療上の効能を得るのに必要とされる副作用の原因となる作用物質の治療的用量を減少させることによってか又は副作用の原因となる作用物質によってひき起こされる毒性副作用の症候を直接減少させることによって化学療法に付随する毒性副作用を低減させることになる。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩は副作用を低減させるか又は効能を増強させるための放射線療法に対する付加物としてさらに有用となる。
【0064】
本発明においては、本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩と治療的に組合せ可能であるもう1つの作用物質には、酵素シクロオキシゲナーゼ−2(「COX−2」)を阻害する能力をもつあらゆる治療的作用物質が含まれる。好ましくは、このようなCOX−2阻害剤は、酵素シクロオキシゲナーゼ−1(「COX−1」)との関係において選択的にCOX−2を阻害する。かかるCOX−2阻害物質は、「COX−2選択性阻害物質」として知られている。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩と治療的に組合わせた形で有用であるCOX−2選択的阻害物質としては、セレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、ABT−963(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブトキシ)−5−〔4−(メチルスルフォニル)フェニル−3(2H)−ピリタジノン;PCT特許出願国際公開第00/24719号パンフレットに記述されているもの)、又はメロコキシカムが含まれる。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩は同様に、例えばパレコキシブなどのCOX−2選択性阻害物質のプロドラッグとの治療的組合せの形で有利に使用可能である。
【0065】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩と組合わせた形で有用となるもう1つの化学療法作用物質は、例えば、以下の非網羅的な制限的な意味のないリストから選択可能である:
【0066】
アルファ−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)、5−FU−フィブリノーゲン、アカンサス葉酸、アミノチアジアゾール、ブレキナールナトリウム、カルモフール、チバガイギーCGP−30694、シクロペンチルシトシン、リン酸シタラビンステアレート、シタラビン共役体、リリーDATHF、メレルダウDDFC、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、吉富DMDC、ドキシフルリジン、ウエルカムEHNA、メルク社EX−015、ファザラビン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、N−(2’−フラジニル)−5−フルオロウラシル、第一製薬FO−152、イソプロピルピロリジン、リリーLY−188011、リリーLY−264618、メトベンザプリム、メトトレキセート、ウエルカムMZPES、ノルスペリルジン、NCI NSC−127716、NCI NSC−264880、NCI NSC−39661、NCI NSC−612567、ワーナーランバートPALA、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、アサヒケミカルPL−AC、武田薬品工業TAC−788、チオグアニン、
【0067】
チャゾブリン、Erbamont TIF、トリメトレキセート、チロシシンキナーゼ阻害物質、チロシンタンパク質キナーゼ阻害物質、大鵬薬品UFT、ウリシチン、塩野義製薬254−S、アルドホスファミド類似体、アルトレタミン、アナキシロン、ベーリンガマンハイムBBR−2207、ベストラブシル、ブドチタン、湧永製薬CA−102、カルボプラチン、カルムスチン、キノイン−139、キノイン−153、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、アメリカンシアナミドCL−286558、サノフィCY−233、シプラテート、デグサD−19−384、住友製薬DACHP(Myr)2、ジフェニルスピロムスチン、二白金細胞増殖抑制剤、エルバ・ジスタマイシン誘導体、中外製薬DWA−2114R、ITI E09、エルムスチン、Erbamont FCE−24517、リン酸エストラムスチンナトリウム、フォテムスチン、ユニメドG−6−M、キノインGYKI−17230、ヘプスルファム、イホスファミド、イプロプラチン、ロムスチン、マホスファミド、ミトラクトール、日本化薬NK−121、NCI NSC−264395、NCI NSC−342215、オキサリプラチン、アップジョンPCNU、プレドニムスチン、プロターPTT−119、ラニムスチン、セムスチン、スミスクラインSK&F−101772、ヤクルト本社SN−22、スピロムスチン、田辺製薬TA−077、タウロムスチン、テモゾロミド、テロキシロン、テトラプラチン、トリメラモール、大鵬薬品4181−A、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アクチノプラノン、Erbamont ADR−456、アエロプリシニン誘導体、味の素(登録商標)AN−201−II、味の素(登録商標)AN−3、日本曹達アニソマイシン、アントラサイクリン、アジノマイシン−A、ビスカベリン、ブリストルマイヤーズBL−6859、ブリストルマイヤーズBMY−25067、ブリストルマイヤーズBMY−25551、ブリストルマイヤーズBMY−26605、ブリストルマイヤーズBMY−27557、ブリストルマイヤーズBMY−28438、硫酸ブレオマイシン、ブリオスタチン−l、大鵬薬品C−1027、カリケマイシン、クロモキシマイシン、ダクチノ、ダウノルビシン、協和発酵DC−102、協和発酵DC−79、協和発酵DC−88A、協和発酵DC89−A1、協和発酵DC92−B、ジトリサルビシンB、塩野義製薬DOB−41、ドクソルビシン、ドクソルビシン−フィブリノーゲン、エルサミシン−A、エピルビシン、エルブスタチン、エソルビシン、
【0068】
エスペラミシン−Al、エスペラミシン−Alb、Erbamont FCE−21954、藤沢薬品工業FK−973、フォストリエシン、藤沢薬品工業FR−900482、グリドバクチン、グレガチン−A、グリンカマイシン、ヘルビマイシン、イバルビシン、イルジン、カズサマイシン、ケサリロジン、協和発酵KM−5539、キリンビールKRN−8602、協和発酵KT−5432、協和発酵KT−5594、協和発酵KT−6149、アメリカンシアナミドLL−D49194、明治製菓ME2303、メノガリル、ミトマイシン、ミトキサントロン、スミスクラインM−TAG、ネオエナクチン、日本化薬NK−313、日本化薬NKT−01、SRIインターナショナルNSC−357704、オキサリジン、オキザウノマイシン、ペプロマイシン、ピラチン、ピラルビシン、ポロトラマイシン、ピランダマイシンA、東菱薬品工業RA−I、ラパマイシン、リゾキシン、ロドルビシン、シバノミシン、シウェンマイシン、住友薬品SM−5887、雪印SN−706、雪印SN−07、ソランギシン−A、スパルソマイシン、SSファーマソーティカルSS−21020、SSファーマソーティカルSS−7313B、SSファーマソーティカルSS−9816B、ステフィマイシンB、大鵬薬品4181−2、タリソマイシン、武田薬品TAN−868A、テルペンテシン、トラジン、トリクロザリンA、アップジョンU−73975、協和発酵UCN−10028A、藤沢薬品工業WF−3405、吉富Y−25024ゾルビシン、アルファ−カロテン、アルファ−ジフルオロメチル−アルギニン、アシトレティン、バイオテックAD−5、杏林製薬AHC−52、アルストニン、アモナフィド、アムフェチニル、アムサクリン、アンギオスタット、アンキノマイシン、アンチネオプラストンA10、アンチネオプラストンA2、アンチネオプラストンA3、アンチネオプラストンA5、アンチネオプラストンAS2−1、ヘンケルAPD、アフィジコリングリシネート、アスパラギナーゼ、アヴァロール、バッカリン、バトラシリン、ベンフルロン、ベンゾトリプト、イプセン・ボーフールBIM−23015、ビサントレン、ブリストル・マイヤーズBMY−40481、Vestarboron−10、ブロモホスファミド、ウエルカム BW−502、ウエルカム BW−773、カラセミド、塩酸カルメチゾール、
【0069】
味の素(登録商標)CDAF、クロルスルファキノクサロン、ケメックスCHX−2053、ケメックスCHX−100、ワーナー・ランバートCI−921、ワーナー・ランバートCI−937、ワーナー・ランバートCI−941、ワーナー・ランバートCI−958、クランフェヌル、クラビリデノン、ICN化合物1259、ICN 化合物4711、コントラカン、ヤクルト本社CPT−11、クリスナトール、クラデルム、サイトカラシンB、シタラビン、サイトシチン、Merz D−609、DABIS マレエート、ダカルバジン、ダテリプチニウム、ジデムニン−B、ジヘマトポルフィリンエーテル、ジヒドロレンペロン、ジナリン、ジスタマイシン、東洋ファルマーDM−341、東洋ファルマーDM−75、第一製薬DN−9693、エリプラビン、酢酸エリプチニウム、ツムラEPMTC、エルゴタミン、エトポシド、エトレチネート、フェンレチニド、藤沢薬品工業FR−57704、硝酸ガリウム、ゲンクワダフィニン、中外薬品GLA−43、グラクソGR−63178、グリフォランNMF−5N、ヘキサデシルホスホコリン、ミドリ十字HO−221、ホモハリントニン、ヒドロキシ尿素、BTG ICRF−187、イルモフォシン、イソグルタミン、イソトレチノイン、大塚製薬JI−36、Ramot K−477、大塚製薬K−76COONa、クレハ化学K−AM、MECT Corp KI−8110、アメリカンシアナミドL−623、ロイコレグリン、ロニダミン、ルンドベックLU−23−112、リリーLY−186641、NCI(US)MAP、マリシン、メレル・ダウMDL−27048、Medco MEDR−340、メルバロン、メロシアニン誘導体、メチルアニリノアクリジン、モレキュラー・ジェネティックスMGI−136、ミナクチビン、ミトナフィド、ミトキドン、モピダモール、モトレチニド、全薬工業MST−16、N−(レチノイル)アミノ酸、日清製粉N−0219 N−アシル化−デヒドロアラニン、ナファザトロム、大正製薬NCU−190、ノコダゾール誘導体、ノルモサン、NCI NSC−145813、NCI NSC−361456、NCI NSC−604782、NCI NSC−95580、オクトレオチド、
【0070】
小野薬品工業ONO−112、オキザノシン、Akzo Org−10172、パンクラチスタチン、パゼリプチン、ワーナー・ランバートPD−111707、ワーナー・ランバートPD−115934、ワーナー・ランバートPD−131141、ピエール・ファーブルPE−1001、ICRTペプチドD、ピロキサントロン、ポリヘマトポルフィリン、polypreic酸、エファモールポルフィリン、プロビマン、プロカルバジン、プログルミド、インビトロン・プロテアーゼネクシンI、東菱薬品工業RA−700、ラゾキサン、サッポロビールRBS、レシトリクチン−P、レテリプチン、レチノイン酸、ローヌ・プーランRP−49532、ローヌ・プーランRP−56976、スミスクラインSK&F−104864、住友薬品SM−108、クラレSMANCS、シーファルムSP−10094、スパトール、スピロシクロプロパン誘導体、スピロゲルマニウム、ユニメド、SSファーマソーティカルSS−554、ストリポルジノン、スティポルジオン、サントリーSUN0237、サントリーSUN2071、スーパーオキシドジスムターゼ、富山薬品工業T−506、富山薬品工業T−680、タキソール、テイジンTEI−0303、テニポシド、タリブラスチン、イーストマンコダックTJB−29、トコトリエノール、トポスチン、テイジンTT−82、協和発酵UCN−01、協和発酵UCN−1028、ウクライン、イーストマンコダックUSB−006、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビネストラミド、ビノレルビン、ビントリプトール、ビンゾリジン、ウィザノイド、山之内製薬YM−534、ウログアニリン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、イダルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、シクロホスファミド、9−アミノ−2−(S)−カンプトテチン、トポテカン、イリノテカン(カンプトサル)、エキセメスタン、デカペプチル(トリプトレリン)、又はオメガ−3脂肪酸。
【0071】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩との組合せ療法において使用可能な放射線防護剤の例としては、AD−5、アドクノン、アミフォスチン類似体、デトックス、ジメスナ、1−102、MM−159、N−アシル化−ジヒドロアラニン、TGF−ジェネテック、チプロチモド、アミフォスチン、WR−151327、FUT−187、経皮性ケトプロフェン、ナブメトン、スーパーオキシドジスムターゼ(キロン)及びスーパーオキシドディスムターゼ・エンゾンがある。
【0072】
本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩は同様に、例えば腫瘍の成長、転移、黄斑変性及びアテローム性動脈硬化症の治療又は予防においても有用なものとなる。
【0073】
さらなる1実施形態においては、本発明は同様に緑内障といったような眼の障害又は症状の治療又は予防のための治療的組合せをも提供する。例えば、当該発明力あるS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は有利にも、緑内障を患う患者の眼圧を低減させる薬物と治療的組合せの形で使用されることになる。かかる眼圧降下薬には、制限的な意味なく、ラタノプロスト、トラボプラスト、ビマトプラスト又はウノプロストールが含まれる。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩と眼圧降下薬の治療的組合せは、各々が異なるメカニズムに影響を及ぼすことによってその効果を達成すると考えられているため有用となる。
【0074】
本発明のもう1つの組合せにおいては、当該発明力あるS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、ベンゾチエピン又はベンゾチアゼピン抗高脂血症薬といったような抗高脂血症薬又はコレステロール低下薬との治療的組合せの形で使用可能である。当該発明力ある治療的組合せにおいて有用なベンゾチエピン抗高脂血症薬の例は、本書に参考として内含されている米国特許第5,994,391号の中に見い出すことができる。一部のベンゾチアゼピン坑高脂血症薬は、国際公開第93/16055号パンフレット内で記述されている。代替的には、本発明の化合物との組合せの形で有用な坑高脂血症薬又はコレステロール低下薬は、HMGCo−A還元酵素阻害物質であり得る。当該治療的組合せ内で有用なHMG Co−A還元酵素阻害物質の例としては、個別に、ベンフルオレックス、フルバスタチン、ロバスタチン、プロバスタチン、シムバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ベルバスタチン、ZD(2)−9720(PCT特許出願国際公開第97/06802号パンフレットに記述されているもの)、ZD(2)−4522(カルシウム塩についてはCAS No.147098−20−2;ナトリウム塩についてはCAS No.147098−18−8;欧州特許第521471号明細書に記述されているもの)、BMS180431(CAS No. 129829−03−4)又はNK−104(CAS No.141750−63−2号)が含まれる。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩と坑高脂血症薬又はコレステロール低下薬の治療的組合せは、例えば、血管内のアテローム硬化性病巣の形成のリスクを低減させる上で有用なものとなる。例えば、アテローム硬化性病巣は往々にして、血管内の炎症部位で発症する。坑高脂血症薬又はコレステロール低下薬が、血中の脂質レベルを低下させることによってアテローム硬化症病巣の形成の危険性を減少させることが実証されている。発明を単一の作用メカニズムに制限することなく、ある意味で、当該組合せのS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、例えば血中脂質レベルの低下と合わせて血管の炎症を低減させることによって、アテローム硬化性病巣の制御の改善を提供するべく一斉に作用することになる、と考えられている。
【0075】
本発明のもう1つの実施形態においては、当該S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、片頭痛といったような中枢神経の病状又は障害の治療のためその他の化合物又は療法と組合わせた形で使用可能である。例えば当該S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩は、カフェイン、5−HT−lB/lDアゴニスト(例えば、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、又はフロバトリプタンといったトリプタン)、ドーパミンD4アンタゴニスト(例えば、ソネピプラゾール)、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセンナトリウム、イソメテプテン、ジクロルアルフェナゾン、ブタルビタール、麦角アルカロイド(例えば、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、ブロモクリプチン、エルゴノヴィン、又はメチルエルゴノビン)、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン又はノルトリプチリン)、セロトニン作動性アンタゴニスト(例えば、メチセルギド又はシプロヘプタジン)、ベータ−アドレナリン作動性アンタゴニスト(例えば、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、ナドロール、又はメトプロロール)、又はモノアミンオキシダーゼ阻害物質(例えば、フェネルジン又はイソカルボキサジド)との治療的組合せの形で使用することができる。
【0076】
さらなる実施形態は、オピオイド化合物と本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩の治療的組合せを提供している。この組合せの中で有用なオピオイド化合物には、制限的な意味なくモルヒネ、メタドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、レボルファノール、レバロルファン、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒジドロヒドロキシコデイノン、ペンタゾシン、ヒドロコドン、オキシコドン、ナルメフェン、エトルフィン、レボルファノール、フェンタニル、スルフェタニル、DAMGO、ブトルファノール、ブプレノルフィン、ナロクソン、ナルトレキソン、CTOP、ジプレノルフィン、ベータ−フナルトレキサミン、ナロクソナジン、ナロルフィン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ナロキソン、ベンゾイルヒドラゾン、ブレマゾシン、エチルケトシクラゾシン、U50、488、U69,593、スピラドリン、ノルビタルトルフィミン、ナルトリンドール、DPDPE、[D−la2、glu4]デルトルフィン、DSLET、met−エンケファリン、leu−エンカファリン、ベータ−エンドルフィン、ジノルフィンA、ジノルフィンB、及びアルファ−ネオエンドルフィンが含まれる。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質塩とオピオイド化合物の組合せの利点は、当該発明力あるS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶質塩がオピオイド化合物の用量の削減を可能にし、かくして、オピオイド依存症といったようなオピオイド副作用のリスク又は重症度を低減させることになる、という点にある。
【0077】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリドの製造方法が、本書に参考として内含されている共同で譲渡された米国特許第6,403,830号の中で記述されている。
【0078】
簡単に言うと、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリドの合成は、以下の例1にあるように実施可能である。
【実施例】
【0079】
例1:
【化1】

S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリド
【0080】
例−1A) N−Boc−システアミン
【化2】

【0081】
3リットル入りの4口RBフラスコを20分間窒素でパージし、次に2−アミノエタンチオールヒドロクロリド(113.6g、1モル)、ジ−tert−ブチル−ジカルボネート(218.3g、1モル)及び500mLのトルエンを逐次的に充填した。混合物を氷水浴で冷却し、10分間窒素でパージした。0〜11℃で約1.5時間撹拌混合物に対し、水酸化ナトリウム(2.5N、880mL、2.2モル)を添加した。水酸化ナトリウムの添加が完了した後、冷却浴を除去し、結果として得た反応混合物を室温まで暖め、一晩大気温で撹拌した。これにより標題化合物の溶液を得た。
【0082】
例−1B)
【化3】

【0083】
氷水浴で例−1Aの生成物溶液を冷却した。約50分間にわたり8〜11℃の間の温度で勢いよく撹拌した反応混合物に対してクロロアセトン(101.8g、1.1モル)の標本を添加した。クロロアセトンの添加が完了した後、冷却浴を除去し、結果として得た反応混合物を一晩室温で撹拌させた。トルエン層を分離し、水(250mL)で洗浄し、所内真空とそれに続く高真空下で85℃でロータリエバポレータ上で濃縮させて、粗製の表題化合物(225.7g、96.7%)を得た。
【化4】

【0084】
例−1C) 〔2−[〔(4−メチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)メチル〕チオ]エチル〕カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル
【化5】

【0085】
空のフラスコ及び腐食性トラップに連結された凝縮器、熱電対、架空攪拌機を備えた3L入りの4口RBフラスコに対して、例−1B(70g、0.3モル)、無水エタノール(80mL)、シアン化ナトリウム(19.1g、0.39モル)、炭酸アンモニウム(43.3g、0.45モル)及び水(720mL)をこの順序で添加した。4番目の口は栓で閉じた。6時間、67〜68℃の間の温度で、結果として得た反応混合物を加熱した。その後、ほぼ透明な褐色溶液を室温まで冷却した。冷却時点で、固体が形成し始め、一晩室温で不均質混合物を撹拌した。次に反応混合物をpH2になるまで約1時間−2〜2℃の温度で12%の塩酸を用いて酸性化させた。低温反応混合物をさらに30分間pH2で撹拌し、その後ろ過した。フラスコを蒸留水(2×250mL)で洗い流し、各々のすすぎ水を用いて固体ケークを洗浄した。固体を再び精製水(2×250mL)で洗浄し、その後4日間空気乾燥した。乾燥固体を0.5時間200mLのトルエンで摩砕した。スラリーをろ過した。固体をトルエン(50mL)及び1:4の比のトルエン/ヘキサン(100mL)で逐次的に洗い流し、その後室温で一晩空気乾燥して83.1%の収量の融点134〜136℃の表題化合物を得た。
【化6】

122134Sについての計算上の分析:C、47.51;H、6.98;N、13.85;S、10.57。
実際値: C、47.76;H、6.88;N、13.77;S、10.75。
【0086】
例−1D) R及びS−〔2−[〔(4−メチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)メチル〕チオ]エチル〕カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル
【化7】

【0087】
例−1Cの反応生成物を、メタノールで溶出するChiralpak(登録商標)ADカラム上でそのR及びS鏡像異性体へと分離した。S異性体は、第1の溶出異性体とそれに続くそのR鏡像異性体であった。両方の異性体共、その後の変態において使用された。
【0088】
S鏡像異性体:
25℃でのMeOH中の〔α〕=+43.0(360nm)
【化8】

【0089】
122134Sについての計算上の分析(式量=303.38):C47.51、H、6.98、N13.85。実際値:C47.39、H6.62、N13.83。M+H=304。
【0090】
R鏡像異性体:
25℃でのMeOH中の〔α〕=−46.3(365nm)
【化9】

122134Sについての計算上の分析(式量=303.38);C47.51、H6.98、N13.85.実際値:C48.15、H7.04、N14.37、M+H=304。
【0091】
例−1E) S−(2−アミノエチル)−2−メチル−L−システイン
【化10】

酸加水分解方法:
蒸留凝縮器を備えた500mL入りの3口丸底フラスコに例−1DのR−異性体生成物(45.8g、150.9mmol)を投入し、撹拌しながら室温で48%の水性HBr(160mL)で分量にわけて処理した。ガス発生が停止した後、揮発性臭化t−ブチル(沸点72〜74℃)とそれに続く少量の水性HBr(約15mL)を蒸留して除去しながら、容器温度が126℃に達するまで加熱マントルで加熱した。蒸留凝縮器を還流凝縮器で置き換え、混合物を30分間還流にて加熱した。溶液を濃縮し、残渣を水(250mL)中に溶解させ、Domex(登録商標)50WX4−200イオン交換樹脂(8.5×11cm)上に投入し、水(2L)及びそれに続く希水酸化アンモニウム水(水で1000mLになるまで希釈された28〜30%の水酸化アンモニウム30mL、3L)で溶出させた。所望の生成物を含有する画分を組合せ、濃縮し、真空下で75〜80℃で2時間乾燥させて、22.1g(82%)の表題生成物、S(2−アミノエチル)−2−メチル−L−システインを白色個体として得た。陽子及びC−13NMRスペクトルは、表題生成物と一貫したものであった。Mp157℃。
【化11】

【0092】
6422S+0.1H2Oについての計算上の分析:C、40.02;H、7.95;N、15.56;S、17.81。実際値:C、39.93;H、7.98;N、15.38;S、17.70。
【0093】
塩基加水分解反応方法:
撹拌が備わったステンレス鋼製オートクレーブに対し、例−1DのR−異性体生成物24.2g(0.08モル)を添加した。窒素で器具をパージした後、128g(0.32モル)の10%苛性アルカリを添加し、溶液を生成した。オートクレーブを密封し、30時間120℃まで加熱した。室温まで冷却した後、オートクレーブを通風して、表題生成物のナトリウム塩の水溶液を142ml(151g)得た。H1NMR(HClで酸性化されD2Oで希釈された標本、400MHz): 2.90(d、1H、J=14.8Hz)、3.06(t、2H、J=6.4Hz)、3.14(d、1H、J=14.8Hz)。C13NMR(HClで酸性化されD2Oで希釈された標本、100MHz):δ172.9、60.8、39.1、39.0、30.4、22.2。MS(MS/CI−LC)M+1 179。
【0094】
DBU(218μL;1.46mmol)及び塩酸アセトイミデード(171mg;1.34mmol)を、室温(〜20℃)で25mL入りの1口丸底フラスコ内でエタノール(6mL)中に溶解させた。この溶液に対し1分量として例−1Eの表題生成物(200mg;1.12mmol)を添加した。例−1Eの表題生成物が消費されてしまうまで混合物を撹拌した(1〜2時間)。混合物を氷浴で冷やし、次に6MのHCl(830μL)で処理した。1HNMR分析は、95モル%以上の化学的収量を示した。溶剤を蒸発させ、例−1の表題生成物を逆相又はイオン交換クロマトグラフィで精製した。
【0095】
塩基加水分解反応生成物の例−1Eの表題生成物を最大20g含有する210gm溶液を、500mL入りの3口丸底フラスコ内に入れた。器具には、機械式撹拌機、Dean-Stark器具(コックを伴い20mL入り)、凝縮器及び温度制御装置が備わっていた。混合物から水(140mL)を蒸留により除去した。1−ブタノール(150mL)を容器に添加し、残留水(37mL)を共沸により蒸留させた。添加された1−ブタノール(13mL)を、容器温度が117℃に達するまで蒸留により除去した。ブタノールスラリーを室温まで冷却し、セライトのパッドを通してろ過した。塩を1−ブタノール(2×20mL)で洗浄した。DBU(21.8μL;146mmol)及び塩酸エチルアセトイミデート(17.1mg;134mmol)を500mL入りの3口丸底フラスコに入った1−ブタノール(40mL)中で室温で溶解させた。器具には、機械式撹拌機、添加用漏斗及び温度プローブが備わっていた。例−1Eの表題生成物/1−ブタノール溶液を添加用漏斗内に入れ、容器温度を25℃未満に維持しながらエチルアセトイミデート/DBU溶液にこれを添加した。出発材料が消費されるまで(2〜3時間)、混合物を撹拌した。濃HCl(94mL)及び水(100mL)の溶液を1L入りの3口丸底フラスコに入れ、0℃まで冷却した。器具には機械式撹拌機、添加用漏斗及び温度プローブが備わっていた。反応混合物を添加用漏斗内に入れた。温度を25℃未満に維持しながらHCl水溶液に反応混合物を添加した。酢酸エチル(100mL)を溶液に加え、層を分離した。水性層をもう一度酢酸エチル(100mL)で洗浄した。1HNMR分析は、95モル%以上の化学的収量を示した。例1のこの表題生成物は、逆相、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、又はその組合わせによって精製された。1HNMR(400MHz、D2O)δ 1.49(3H、s)、2.08(3H、s)、2.74(2H、m)、2.91(1H、d)、3.17(1H、d)、3.35(2H、t)。
【0096】
例2: 両性イオンの調製
本発明の1実施形態においては、アニオン交換樹脂を用いてS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリド濃縮物から余剰の酸を除去することができる。さらに、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインのモノヒドロクロロ、遊離両性イオン又はその他の分画酸誘導体を、該アニオン交換イオンを用いて調製できるということが発見された。該アニオン交換方法はその簡略さのため、一塩酸塩及び遊離両性イオンを調製する上で好まれている。0.5当量未満の酸及び低い余剰塩を伴うS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインは、代替的な塩形態の薬学的調製にとって特に有用である。
【0097】
図1は、化合物滴定曲線の概略的表現を示す。親S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン分子は、3つのイオン性基を有し、4つのイオン化状態で存在し得る。
【0098】
低いpHでは、分子は、カルボン酸、アミン及びアミジン部分がプロトン化された状態で、+2荷電遊離酸として存在する。これは、二塩酸塩についてのイオン化状態である。
【0099】
pHが上昇するにつれて、カルボン酸基は、最初に脱プロトン化される基であり、こうして、分子上の正味荷電+1が生成される。pHの増加がS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインに対する水酸化ナトリウムの添加によって生成される場合、二塩酸ナトリウム塩が形成される。その他の塩基は、その対応する塩形態を作ることになるだろう。pHの増大がアニオン交換処理による塩化物イオンの除去に起因する場合、生成物は、いかなるナトリウム又はその他の対イオンももたない一塩酸塩である。
【0100】
pHがさらに上昇するにつれて、アミン基は脱プロトン化(約pKa=8.4)を起こし、分子の中性両性イオン形態を生成する。正の電荷がなおもアミジン上に存在し、カルボキシル基の上にはなお負の電荷が存在する。これとは対照的に、かかる材料が二塩酸塩に対する水酸化ナトリウムの添加によって作られる場合、結果としての生成物は、1当量の塩化ナトリウムと混合されたモノヒドロクロロナトリウム塩である。アニオン交換樹脂アプローチにより調製される材料は、遊離両性イオンである。
【0101】
さらなるpH上昇は、アミジンイオンの脱プロトン化(pKa〜12.5)を導く。このpH範囲内の分子は、遊離塩基及び酸性塩の両方である。負に帯電した分子はアニオン交換樹脂と結合することから、遊離塩基は好ましくはアニオン交換方法によって調製されないという点に留意されたい。
【0102】
例3: 遊離両性イオンの調製
60gのアンバーライトIRA400(OH)樹脂を4.7パーセント(重量)の水酸化アンモニウム(50mlの28パーセントの水酸化アンモニウム、250mlの脱イオン水)で予備洗浄し、その後脱イオン水で大規模に洗浄した。最終的伝導率は6.1μSであった。
【0103】
142mlのHCl/水溶液中に約0.9gのS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリドを含有する標本を60℃で油になるまでロータリエバポレータ上で濃縮した。脱イオン水で60mlまで希釈したこの油に対し、撹拌しながら0.5gの洗浄済みアニオン交換樹脂のアリコートを添加した。樹脂の各アリコートを添加しながら5分後に、溶液pHを測定し、シリンジフィルタを通して標本を除去した。合計9gのアニオン交換樹脂を添加した。最終的pHは10.8であった。樹脂をろ過により除去しろ過液を60℃で回転式蒸発により油になるまで濃縮した。いかなる固体も形成しなかった。出発材料、最終ろ過液及び全ての中間標本を、HPLC及びイオンクロマトグラフィにより塩化物について検定した。
【0104】
図2は、pHを調整するためにアニオン交換樹脂を用いた水中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインについての偽似滴定曲線を示している。菱形(実線)はpHであり、正方形(鎖線)はS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン(イオンクロマトグラフィによる初期百分率)である。図3は、pHを調整するためにアニオン交換樹脂を用いた水中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインについての偽似滴定曲線を示す。菱形(実線)はpHであり、三角形(破線)は(イオンクロマトグラフィによる)塩化物である。
【0105】
これらの曲線は、反応の進行中に標本が撤去され、かつ樹脂の増分が付加される前に真の平衡が達成されなかったことから、真の滴定曲線ではない。それでも、図2及び図3のグラフは、予想される傾向を例示している。S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン溶液に樹脂が添加されるにつれて、pHは2、9及び11のpHの前後の勾配変化と共に上昇する。より緩慢に上昇するpHは、それぞれカルボン酸、アミン及びアミジン官能基のpKを表わしている。10というpHより高いと、溶液中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン濃度は減少する。この時点で、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインは負の正味電荷を獲得し、樹脂に結合しようとしている。塩化物の結果は、標本間で幾分かの変動を示すが、一般にpHの増大と共に塩化物含有量が減少するという傾向を示す。最終的塩化物含有量は、およそ0.04モル当量である。標本のHPLC検定はいかなる分解も示さなかった。
【0106】
例4: 酸当量を調整するための余剰のHClの除去
305mg/ml前後のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリド及び0.23当量の余剰のHClを含有する3.3gの標本に対し、16.7gの脱イオン水を添加した。pHは、1.04であった。14mlのこの溶液に、予め洗浄したアンバーライト400(OH)樹脂を添加し、2.5というpHを得た。アニオン交換処理は、溶液の色を明黄色から無色透明へと明るくした。樹脂をろ過によって除去し、ろ過液生成物を塩化物滴定及びHPLCによって分析した。
【0107】
出発材料及び生成物のHPLCによる定性的分析は、不純物の増加も新しいピークも全く発見しなかった。滴定による塩化物分析からの結果は、塩化物が2.18当量から1.14当量前後まで減少させられたということを示している。ここでは実証されていないが、HClの添加により所望の標的に塩化物を調整することが可能である。
【0108】
例5: 遊離両性イオンの調製
約1gのS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリドを含有する標本3.3gを20gまで希釈した。溶液に対して予め洗浄したアンバーライトIRA400(OH)樹脂のアリコートを添加し、標本を周期的にシリンジフィルタを通して引き抜いた。溶解状態の樹脂をろ過により除去し次にろ過液に新鮮な樹脂を加え続けることによって7.1及び8.8というpHで中間樹脂ろ過を実施した。これは、塩化物除去均衡を促し、生成物の吸着を最小限におさえるために行なわれた。11.2という最終pHが達成された後、樹脂をろ過によって除去した。出発材料、中間標本及び最終ろ過液を分析した。
【0109】
結果として得た標本をHPLCによって分析した。数時間以内ではpH11の生成物と出発材料のHPLCトレースの間にいかなる差異も見られなかった。しかしながら、10日前後の間、室温で貯蔵した後、高いpHの標本中では、2〜3ピーク面積%前後で幾分かの分解ピークが見られた。
【0110】
例6: 遊離両性イオンの調製
アンバーライトIRA400(Cl)樹脂を3MのHCl、水そして次に3MのNaOHで洗い流した。アリコートは、10gの樹脂あたり100mlであった。この手順を、樹脂を洗浄しOH形態を生成するために3回反復した。水での最終的すすぎを、溶出する水の伝導度が2μSとなるまで実施した。その後、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリドの50mg/ml溶液を40ml滴定するために、樹脂を使用した。濃度は、両性イオン当量として表現されている。アリコートは、滴定全体にわたって取り上げ、ろ過し、HPLCによって分析した。標本の安定性を査定するため、滴定が実施されてから1週間後に第2のHPLC分析を行なうためアリコートの副標本を取っておいた。イオン選択的電極を用いて、Cl分析のために付加的なアリコートを取った。滴定を通してpHも同様に監視した。
【0111】
例7: 遊離両性イオンの調製
この例に見られる結果は、例3に見られる結果に酷似していた。Cl含有量を測定するためにここで使用された塩化物特異的電極は、はるかにノイズの少ないデータを生成した(図4参照)。データは、Clの98%を除去する際に、最高10.85のpHが達成されるということを示している、という点に留意されたい。より多くのClを除去することができるが、これにより、樹脂に対する化合物の顕著な結合が生成された。(図5を参照のこと)。樹脂結合に起因するこの化合物の損失は、滴定の終りに向けて樹脂をろ過により除去し、少量の新鮮な樹脂を置換することによって最小限におさえることができる。この実践は、塩化物の除去の均衡を促し結合による化合物の損失のために利用可能な部位を最小限におさえる上で一助となる。
【0112】
図4は、IRA−400アニオン交換樹脂(Rohm & Haas, ペンシルバニア州フィラデルフィアから入手可能なRohm & Haas アンバーライト)での水中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線を示している。図5は、pHの増加に付随する関連結合データを示す。
【0113】
HPLC分析は、イオン対合勾配方法を用いて実施された。該方法は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインを塩基性にした場合に予想される分解生成物の存在を検出するものとして示されてきた。以下の表中に見られるように、データは、分解が即刻のものではなく、一定の日数の期間にわたり起こることを示している。
【0114】
【表1】

【0115】
HPLCの方法
ポンプA:20mMのKH2PO4、リン酸でpH=3に調整された10mMのペンタンスルホン酸。
ポンプB:アセトニトリル。
勾配:0分で0%のB、15分で26%のB、15.1分で0%のB
カラム:YMC ODS−AQ120A、5μm、2.6×150mm、
波長=205nm。
【0116】
例8: 余剰のHClの除去/モノヒドロクロロ2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの除去
これらの例では、樹脂を撹拌することによりバッチの形で塩化物除去プロセスを実行したが、アニオン交換樹脂カラム又はアニオン交換膜上でS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインジヒドロクロリド溶液を再循環させることにより、工場という設定の中で容易に実行することができる。pHが偶発的に所望の範囲を超えて上昇した場合、適量のHClを添加することによってこれを容易に調整し戻すことができる。この目的で大規模なアニオン交換プロセスを設計することは充分当該技術分野の通常の技能範囲内に入ると思われる。
【0117】
例9: S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶化
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の最初の結晶化は、250マイクロリットル(μl)のN,N−ジメチルホルムアミド中に約15mgの両性イオン及び9.5mgのサリチル酸を含有する溶液から発生した。2.5mlのTHFを攪拌しながら滴下により加えた。該溶液は、真珠光沢のある沈殿物を発達させた。偏光顕微鏡法による沈殿物の検査は、複屈折針状結晶を示した。沈殿物を5.0マイクロメートルの孔径のMillipore LSフィルター上でのろ過により収集した。21mgの固体を回収した。固体を徹底的に乾燥する試みは全く行なわれなかった。元素分析〔C、H、N〕結果は、サリチル酸と両性イオンの1対1の一水和物塩について理論に近いものであった。カールフィッシャ水分析も同様に、一水和物化学量論を示した。
【0118】
【表2】

【0119】
播種及びより安全な特徴づけのための充分な結晶質材料を得るように実験が設計された。特徴づけをより良いものにするために行なわれた実験の概略が表4に列挙されている。これらの実験の一部分は、以前のロットからの結晶質材料の播種を受けた。驚くべきことに、播種は、結晶化の誘発又は速度に対しいかなる効果ももたないように思われた。
【0120】
例10:
この例は、6.0mlの水及び14mlのDMFの中に溶解したS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン505mgを用いて調製された。撹拌しながら100mlのアセトニトリルを添加した。自然発生的結晶化がスラリーを生成した後、アセトニトリルをさらに25ml15分間にわたり加えた。2時間さらに長くスラリーを撹拌した。スラリーをBuchner漏斗内でWhatman紙上にろ過した。約22時間、所内真空下で40℃で固体を乾燥した。511mgの乾燥した固体を回収した。
【0121】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物特徴づけ
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオン各々100ミリグラムずつで出発して、例9及び10を400マイクロリットルの水及びサリチル酸1当量を含有する1.77MlのDMFから結晶化させた。例9を、THFで沈殿させ、例10を、アセトニトリルで沈殿させた。これらの固体をろ過により収集し、40℃で一晩真空乾燥した。正の延長を伴うきわめて細かい針状の複屈折ニードルを、偏光顕微鏡法により両方のロットにおいて観察した。
【0122】
その細かさのため光学顕微鏡法によりこれらの結晶を観察するためには高いNA対物レンズと充分に調整されたケーラー照明が必要とされる。ろ過により収集は応々にして非常に緩慢であった。
【0123】
【表3】

【0124】
元素分析及びカールフィッシャ水滴定は、該塩が、溶剤を保持する幾分かの傾向を伴って、1対1のサリチル酸1水和物であることを示している。陽子NMRは、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインとサリチル酸の1対1の化学量論を確認している。残留DMFは、一晩40℃で真空下で乾燥した後H−NMRによって分析されたロット中で、約0.10〜0.17モルパーセントで示された。例9、表3についてのものといった元素分析結果は、内含された溶剤の調整によって説明がつく。
【0125】
S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物は、X線粉末回折により結晶質である。例10の粉末パターンが図6に示されている。
【0126】
高温顕微鏡で125℃近くで、結晶化水の喪失の後、広範な融解が現われる。シリコン油中の標本での高温顕微鏡による見かけ上の融解は、100〜110℃で水からの標準的な蒸気泡を示さない。DSC、図7(例9)及びSDTA、図8(例10)曲線は、異なる融点を示している。これは、融解が観察されておらずむしろ水和物水中の固体の溶解が観察されていることを表わす可能性がある。DSC(図7)における160℃での遷移は分解である。
【0127】
図9を参照すると、水分平衡測定中のDMFの見かけの損失は、水分吸収実験中の全体的な質量損失に反映されている。該塩は、80%のRHで(最後には100.25%〜99.8%)で1/2%未満の水しか吸収しない非吸湿性のものである。
【0128】
結晶質塩の形の複数のロットのDVS水分吸着は、それが非吸湿性であることを示している(図10参照)。結晶質サリチル酸1水和物塩は、R.H.90%、25℃で1重量パーセント未満の水しか吸収しない。水分平衡測定は、大部分のDMFが、流れる湿潤窒素内で25℃で除去されるということを示している。
【0129】
HPLCグレードの水中での水溶解度は、マイクロ遠心分離管中で重量測定法により決定された135mg M1-1〜148mg M1-1の間と推定される。
【0130】
図12は、結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物のラマンスペクトルを示す。簡単に言うと、ラマンスペクトルは、分子又は錯体系の振動サインである。その由来は、光ビームを構成する光の粒子である光子と分子の間の非弾性衝突にある。分子と光子の間の衝突は、エネルギー交換とその結果としてのエネルギー変化ひいては光子の波長の変化を導く。かくして、ラマンスペクトルは、入射光によって照明された時点で物体分子から発出されるきわめて狭い1組のスペクトル線である。各々のスペクトル線の幅は、入射光のスペクトル幅によって強く影響され、従って、レーザーといったような密に単色の光源が使用される。各々のラマン線の波長は、ラマン線の逆波長と入射光の間の差である入射光からの波数シフトとして表現される。ラマン線の絶対波長ではなく波数シフトは、分子中の特定の原子団に特異的である。ラマンスペクトルは、その分子構造により決定される分子の振動状態を測定する。
【0131】
本発明中に同様に包含されているのは、単数又は複数の非毒性の薬学的に受容可能な担体及び/又は希釈剤及び/又はアジュバント(ここでは集合的に「担体」材料と呼ばれる)及び望ましい場合にはその他の活性成分と結びつけられた形での結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物を含む1クラスの薬学組成物である。本発明のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質形態は、好ましくはその経路に適合させられた薬学組成物の形でかつ意図された治療に有効な用量で、適切な任意の経路で投与され得る。活性なS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物及び組成物は、例えば、経口、血管内、腹腔内、皮下、筋内又は局所的に投与可能である。
【0132】
経口投与向けには、薬学組成物は、例えば錠剤、カプセル、懸濁液又は液体の形をしていてよい。該薬学組成物は好ましくは、活性成分を特定量含む投薬単位の形で作られる。かかる投薬単位の例としては錠剤又はカプセルがある。活性成分は、同様に、例えば食塩水、デキストロース又は水を適切な担体として使用することのできる1つの組成物として注射により投与することもできる。
【0133】
投与される治療上活性な化合物の量及び本発明の化合物及び/又は組成物で病的状態を治療するための投与計画は、対象の年令、体重、性別及び医療状態、疾病の重症度、投与経路及びその頻度、及び利用される特定の化合物を含めたさまざまな要因に左右され、かくして広く変動しうる。薬学組成物は、約0.1〜2000mg、好ましくは約0.5〜500mg、最も好ましくは約1〜100mgの範囲内で有効成分を含有し得る。体重1kgあたり約0.01〜100mg、好ましくは約0.5〜約20mg、最も好ましくは約0.1〜10mgの日用量が適切であり得る。日用量は、一日に1〜4回の用量で投与可能である。
【0134】
結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物は同様に経皮デバイスによっても投与可能である。好ましくは局所投与は、タンク及び多孔質膜タイプ、又は固体基質種のいずれかのパッチを用いて達成されることになる。いずれの場合も、活性作用物質は、タンク又はマイクロカプセルから膜を通り、受容体の皮膚又は粘膜と接触している活性作用物質透過性接着剤の中に連続的に送達される。活性作用物質が皮膚を通して吸収される場合、この活性作用物質の制御されかつ予め定められた流れが受容体に投与される。マイクロカプセルの場合、カプセル封入剤は同じく膜としても機能し得る。
【0135】
本発明のエマルジョンの油性相は、既知の要領で既知の成分から構成され得る。この相は単に1つの乳化剤を含み得るものの、少なくとも1つの乳化剤と脂肪又は油又は脂肪と油の両方との混合物を含んでいてもよい。好ましくは親水性乳化剤が、安定剤として作用する脂肪親和性乳化剤と共に内含される。油と脂肪の両方を内含することも好まれる。共に、安定剤を伴う又は伴わない乳化剤(単複)はいわゆる乳化ろうを作り上げ、ろうと油及び脂肪は、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化性軟こうを作り上げる。本発明の製剤中で使用するのに適した乳化剤及び乳化安定剤としては、なかでも、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセイル及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0136】
製剤のための適切な油又は脂肪の選択は、薬学エマルジョン製剤中で用いられる確率の高い大部分の油の中での活性化合物の溶解度が非常に低いことから、所望の化粧品特性を達成することに基づいている。かくして、クリームは好ましくは、チューブ又はその他の容器からの漏出を回避するべく適切なコンシステンシーを伴って脂っぽくなく汚染性のない洗い流すことのできる製品であるべきである。ジイソアジピン酸塩、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、2−エチルヘキシルパルミテート、又は有枝鎖エステルの配合物といったような、直鎖又は有枝鎖の1又は2塩基アルキルエステルを使用することができる。これらは、必要とされる特性に応じて単独で又は組合せた形で使用可能である。代替的には、白色軟膏パラフィン及び/又は液体パラフィン又はその他の鉱油といったような高融点の脂質を使用することができる。
【0137】
眼に局所投与するのに適した製剤としては、同様に、活性成分が適切な担体、特に活性成分用の水性溶剤の中に溶解又は懸濁されている点眼液も含まれる。活性成分は好ましくはこのような製剤中に、0−5〜20%、有利には0.5〜10%、特に約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0138】
治療目的では、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物は、指示された投与経路に適した単数又は複数のアジュバントと組合わされる。経口で投与される場合、化合物は、ラクトース、スクロース、でんぷん粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム及びカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアルコールと混和され、次に適切な投与のため錠剤化又はカプセル封入され得る。かかるカプセル又は錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散の形で提供されうるように、除放性製剤を含有し得る。非経口投与のための製剤は、水性又は非水性等張滅菌注射溶液又は懸濁液の形をしていてよい。これらの溶液及び懸濁液は、経口投与向けの製剤中で使用するために言及された担体又は希釈剤のうちの単数又は複数のものを有する無菌粉末又は顆粒から調製可能である。結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又はさまざまな緩衝液の中に溶解され得る。その他のアジュバント及び投与様式が、薬学技術分野において周知である。
【0139】
本発明をかく記述してきたが、これを多くのやり方で変化させることも可能である。かかる変化は、本発明の本質及び範囲から逸脱としてみなされるものではなく、当業者にとって明らかと思われるこのような修正及び均等物全てが添付のクレームの範囲内に含まれるように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、全てのイオン化状態を示すS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン滴定曲線の概略図である。
【図2】図2は、IRA−400(OH)アニオン交換樹脂を伴う水中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線のグラフ表示である。菱形はpHであり、正方形(鎖線)はS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン(初期%、イオンクロマトグラフィによる)である。
【図3】図3は、IRA−400(OH)アニオン交換樹脂を伴う水中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線のグラフ表示である。菱形はpHであり、三角形(破線)は塩化物(イオンクロマトグラフィによる)である。
【図4】図4は、IRA−400アニオン交換樹脂を伴う水中のS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線を示す。
【図5】図5は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインの両性イオンのpHの上昇に付随する関連する結合データを示している。
【図6】図6は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物のX線粉末パターンである(例10)。
【図7】図7は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の示差走査熱量計のグラフである(例10)。
【図8】図8は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の熱重量分析(TGA)及び走査示差熱分析(SDTA)のプロットである(例10)。
【図9】図9は、経時的な相対湿度対質量の変化をプロットする水分平衡のグラフである。
【図10】図10は、経時的な相対湿度対質量変化及び溶剤損失をプロットする水分平衡のグラフである。
【図11】図11は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の等温線のプロットである。
【図12】図12は、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物のラマンスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に図6に示されている通りのX線粉末パターン;実質的に図12に示されている通りのラマンスペクトル;及び実質的に表5にある通りの元素分析のうちの少なくとも1つを特徴とする、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の結晶質形態。
【請求項2】
薬学的に受容可能な担体と合わせて請求項1に記載の結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物を含む薬学組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物を有効量を対象に投与する段階を含む、治療を必要とする対象の体内で、病的高産生が一部を成す症状を治療する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の結晶質S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物を対象に対し有効量を投与する段階を含む、対象体内の一酸化窒素産生を減少させる方法。
【請求項5】
− S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオンを得る段階;
− 適切な溶剤に対してS−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオンを添加する段階;
− S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システイン及び溶剤に対してサリチル酸を添加する段階;及び
− S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物結晶を沈殿させるべく逆溶剤を添加する段階、
を含む、S−[2−〔(1−イミノエチル)アミノ〕エチル]−2−メチル−L−システインサリチル酸1水和物の製造方法。
【請求項6】
少なくとも2つの溶剤が使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2つの溶剤のうちの少なくとも1つがN,N−ジメチルホルムアミドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2つの溶剤のうちの少なくとも1つが水である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
逆溶剤がアセトニトリルである、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−519835(P2006−519835A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506305(P2006−506305)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000645
【国際公開番号】WO2004/080953
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(303050964)ファルマシア コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】