説明

SHIP1モジュレーター化合物

本発明は、SHIP1活性のモジュレーターとしてのペロロール類縁体およびその医薬組成物の使用を提供する。本発明化合物または医薬組成物は、炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態ならびにその他の疾患および状態の治療または予防に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖および生存および免疫細胞活性化の負のレギュレーターであるSHIP1に関する。
【背景技術】
【0002】
SH2含有イノシトール5−ホスファターゼ(SHIP1)は、イノシトール1,3,4,5−四リン酸(IP4)およびホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸(PIP3)からの5−リン酸を選択的に加水分解する。米国特許第6,238,903号は、SHIP1が、遺伝子発現、細胞の増殖、分化、活性化、および代謝を制御するシグナル伝達経路、とりわけRasおよびリン脂質シグナル伝達経路の酵素レギュレーターであることを開示している。SHIP1は、サイトカインおよび免疫レセプターのシグナル伝達において重要な役割を果たしている。SHIP1の破壊された(SHIP1-/-)マウスは、顆粒球およびマクロファージの過剰産生を特徴とする骨髄増殖性の表現型を示す。(Huber、M.ら、(1999)Prog Biophys Mol Biol 71:423)。SHIP1-/-の肥満細胞はIgEおよびSteel因子により誘発された脱顆粒を起こしやすく、一方、SHIP1-/-のB細胞はFc RIIBによる負の制御に対して耐性である。SHIP1はまた、慢性の骨髄性白血病の病因にも関与している。(Sattler、M.ら、(1999)Mol Cell Biol 19:7473)。
【0003】
SHIP1は、血液細胞においてのみ発現され、造血細胞の増殖/生存および免疫細胞活性化の重要な負のレギュレーターである。 SHIP1の特殊化した機能は、マウスおよびヒトにおいて研究されている。
【0004】
SHIP1活性の種々のアゴニストが、WO 2004/035601から既知である。アゴニストの例は、最初に海綿種から得られたセスキテルペン化合物であるペロロールである。その合成は、WO 2004/035601に記載されている。ペロロールの正確な構造は、下記のとおりであり、Meは、Meはメチル基を表し、キラル原子(C−5、8、9および10)の相対的な立体構造は示したとおりである。

ペロロール
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要約
本発明は、SHIP1調節活性の増加が、ペロロールから誘導されるSHIP1モジュレーター化合物の14位の炭素原子上に−OH部分を有することによって提供されるという発見に、一部分において基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の幾つかの態様は、式(1):

式1
[式中、R1およびR2は独立して、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2OR1'、−CHO、−CO2Hおよび−CO2R2'から選ばれ;
R3およびR4は独立して、H、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2OR3'、−CHO、−CO2Hおよび−CO2R4'から選ばれ;
R1'、R2'、R3'およびR4'は独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR1''、−N(R2'')2、NO2および−CO2H(ここで、R1''およびR2''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり;
G1は、O−(C1−C10アルキル)およびHから選ばれ;
G2は、HまたはC1−C10アルキルであり;および
G3は、H、−OH、C1−C10アルキルおよびO−(C1−C10アルキル)から選ばれる]
で示される化合物およびその塩を提供する。
【0007】
本発明の他の幾つかの態様は、R1およびR2の1つまたは両方が、メチル、エチル、−CH2OH、−CH2OR1'または−CH2OR3'から選ばれる本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0008】
本発明の他の幾つかの態様は、R1におけるR1'、R2'、R3'および/またはR4'が、メチル、エチル、プロピルまたはブチルから選ばれる本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0009】
本発明の他の幾つかの態様は、R2におけるR1'、R2'、R3'および/またはR4'が、メチル、エチル、プロピルまたはブチルから選ばれる本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0010】
本発明の他の幾つかの態様は、R1が、メチルまたはエチルである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0011】
本発明の他の幾つかの態様は、R2が、メチルまたはエチルである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0012】
本発明の他の幾つかの態様は、R1がメチルである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0013】
本発明の他の幾つかの態様は、R2がメチルである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0014】
本発明の他の幾つかの態様は、式(2):

式2
[式中、G1は、O−(C1−C10アルキル)およびHから選ばれ;
G2は、HまたはC1−C10アルキルであり;および
G3は、H、−OH、C1−C10アルキルおよびO−(C1−C10アルキル)から選ばれる]
で示される化合物およびその塩を提供する。
【0015】
本発明の他の幾つかの態様は、G1が、−O−メチルおよびHから選ばれ;G2が、Hまたはメチルであり;およびG3が、H、メチルおよびO−メチルから選ばれる本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0016】
本発明の他の幾つかの態様は、G1、G2およびG3が−O−メチルである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0017】
本発明の他の幾つかの態様は、G1、G2およびG3の少なくとも1つがHである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0018】
本発明の他の幾つかの態様は、G3がメチルである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0019】
本発明の他の幾つかの態様は、G1、G2およびG3のすべてがHである本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。
【0020】
本発明の他の幾つかの態様は、本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物および医薬的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明の他の幾つかの態様は、炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態の治療または予防のための本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物または本明細書に記載する医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明の他の幾つかの態様は、炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態の治療または予防のための本明細書に記載するいずれかの式で示される化合物を提供する。使用は、医薬の製造のためであってもよい。
【0023】
本発明の他の幾つかの態様は、予防または治療を必要とする患者に有効量の本明細書に記載する医薬組成物を投与することを含む炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態の予防または治療方法を提供する。
【0024】
本発明の他の幾つかの態様は、新生物性状態が、血液がん、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病または急性骨髄性白血病である本明細書に記載する使用または方法を提供する。
【0025】
本発明の他の幾つかの態様は、免疫疾患が、自己免疫疾患である本明細書に記載する使用または方法を提供する。
【0026】
本発明の他の幾つかの態様は、上述した化合物および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明の他の幾つかの態様は、予防または治療を必要とする患者に有効量の本明細書に記載する医薬組成物を投与することを含む免疫、造血、炎症性または新生物性疾患または状態の予防または治療方法を提供する。このような組成物は、特に効力があるかまたは有利であることが知られていない式(1)または(2)のいずれか1つの以前に知られている化合物を含んでもよい。
【0028】
本発明の他の幾つかの態様は、SHIP1活性の調節のため、およびSHIP1活性の調節のための作用剤および医薬の製造のための本明細書に記載する化合物またはその医薬的に許容しうる塩の使用を提供する。このような調節は、エクスビボ、インビトロまたはインビボであってよい。インビボ使用のための作用剤は、本発明の医薬組成物ならびにインビトロ使用に適する作用剤を含む。調節は、本明細書に記載する免疫、炎症性または新生物性状態または疾患の治療または予防のためであってもよい。
【0029】
詳細な記載
本明細書で用いる語句「アルキル」は、一般式:CnH2n+1を有する水素と炭素を含む分子を意味する。「Cx−Cyアルキル」または「Cx−Cyアルキル」は、x−y個の炭素数を有するアルキルを意味する。たとえば、「C1−C6アルキル」は、1、2、3、4、5または6個の炭素数を有するアルキルを意味する。
【0030】
すべての可能な立体異性体、エピマー、ジアステレオマーおよびエナンチオマーならびにその混合物は、「

」結合(以降、立体結合と呼ぶ)を有する1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の式によって特に包含される。立体結合は、結合の可能な配向のいずれか1つ以上が特定の具体例から特に包含または特に排除され、まとめて扱われる場合に、すべての具体例が可能な結合配向の包含および排除のすべてのこのような組み合わせを包含することを意味する。
【0031】
本明細書で用いる語句「立体混合物」は、2つ以上の異なる立体異性体の等量または不等量の混合物である。立体混合物は、立体混合物の成分として、いずれかの特定の立体異性体を0%−100%(およびその間の全ての値)含んでもよいが、ただし、少なくとも2つの異なる立体異性体が混合物に存在する。「ラセミ混合物」は、混合物中に含まれる立体異性体のそれぞれの等量を有する立体混合物である。
【0032】
本明細書で用いる語句「立体的に純粋な化合物」は、化合物のありとあらゆる分子が、同じ立体化学構造を有する、1つ以上のキラル中心を有する化合物を意味する。語句「実質的に立体的に純粋な化合物」は、立体的に純粋な化合物であるか、または少なくとも97%の分子が同じ立体化学構造を有する化合物であることを意味する。実質的に立体的に純粋な化合物は、少なくとも98%の分子が同じ立体化学構造を有する化合物であるか、または少なくとも99%の分子が同じ立体化学構造を有する化合物であってもよい。実質的に立体的に純粋な化合物は、少なくとも99.5%の分子が同じ立体化学構造を有する化合物であるか、または少なくとも99.9%の分子が同じ立体化学構造を有する化合物であってもよい。
【0033】
SHIP1調節化合物およびプロドラッグ
本発明化合物は、より優れた活性を有する、14位の炭素原子に結合している−OH部分を有するペロロール類縁体を含む。本発明の幾つかの態様において、14位の炭素原子上の−OHを、プロドラッグ部分が切断されるときに14位の炭素上の−OH部分が提供されるように切断可能なプロドラッグ部分と置き換えてもよい。本明細書に記載する分子の炭素原子の位置の番号付けは、以下の通りである。

【0034】
1つ以上の−OH部分を有する化合物は、14位の炭素原子に対してオルトである位置に第2の−OH部分を有さない。14位の炭素原子の位置により、これは、2つの−OH部分を有する化合物が、メタ配置である−OH部分を含むことを意味する。本発明の幾つかの化合物は、12位の炭素原子上で置換された第2の−OH部分を含む。
【0035】
互いにメタである2つの−OH部分を有する化合物および合計で1つの−OHまたはは言い換えれば正確に1つの−OHを有する化合物は、パラ配置を有する2つ以上の−OH部分を有する化合物に関して改良された安定性を有する。たとえば、単一のフェノールによるカテコール官能基の置換は、オルトキノンへの空気酸化の可能性を除去する。オルトキノンは、濃い色が付いており、反応性の高いマイケルアクセプターである。正確に1つの−OHを有する化合物は、空気酸化を介してオルトキノンを形成することが容易にできず、そのことによって改良された化学的安定性を提供する。さらに、オルトキノンへの酵素的酸化もまた減少する。オルトキノンは、タンパク質上の求核性官能基と反応することができ、共有結合をもたらす。したがって、インビボにおいて、投与された2つ以上の−OH部分を有する化合物の一部は、タンパク質に結合する可能性が高い。その結果として、単一の−OHのみを有する化合物は、より低い濃度で同様の活性を提供する。
【0036】
14位の炭素原子上の単一の−OH部分を有する化合物の合成は、バートン脱酸素ステップを用いてもよい。このようなステップは、合成の早期に起こりうるカップリングステップにおいて生成されたベンジルアルコールを除去するのにより効率的である。このステップは、14位の炭素原子と15位の炭素原子の両方に−OH部分を有する化合物の合成において用いられることが多い水素化分解に置き換えてもよい。
【0037】
さらに、合計で1つのOH部分を有する化合物は、そのプロドラッグバージョンを製造するときに、さらなる利点を提供することができる。SHIP調節ペロロール類縁体上のOH部分は、プロドラッグの製造においてプロドラッグ部分と置き換えることができる。SHIP調節ペロロール類縁体上に1つ以上のOH部分があるような場合には、所望の位置にプロドラッグ部分を選択的に提供することは、−OH部分の保護および脱保護(これに限定されるものではない)などの追加のステップを必要とすることが多い。全部で1つの−OH部分があるような場合には、次いで、SHIP調節ペロロール類縁体のプロドラッグ誘導体の化学的合成をより簡単に行うことができる。
【0038】
本発明の幾つかの態様は、式(1):

式1
[式中、R1およびR2は独立して、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2OR1'、−CHO、−CO2Hおよび−CO2R2'から選ばれ;
R3およびR4は独立して、H、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2OR3'、−CHO、−CO2Hおよび−CO2R4'から選ばれ;
R1'、R2'、R3'およびR4'は独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR1''、−N(R2'')2、NO2および−CO2H(ここで、R1''およびR2''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり;
G1は、O−(C1−C10アルキル)およびHから選ばれ;
G2は、HまたはC1−C10アルキルであり;および
G3は、H、−OH、C1−C10アルキルおよびO−(C1−C10アルキル)から選ばれる]
で示される化合物およびその塩を提供する。
【0039】
式(1)で示される化合物の他の幾つかの実施態様において、G1は、−O−メチルおよびHから選ばれ;G2は、Hまたはメチルであり;およびG3は、H、メチルおよびO−メチルから選ばれる。
【0040】
式(1)で示される化合物は、C−5、C−8、C−9およびC−10にキラル中心を有し、R1およびR2が異なるかどうかに応じて、C−4においてキラルである。幾つかの実施態様は、ペロロールと同じキラル中心の相対配置を有し、あるいは、そのエナンチオマー、すなわち、S、R、R、S;またはR、S、S、R(それぞれ、C−5、8、9および10において)である。幾つかの実施態様は、キラル中心においてペロロールと同じ絶対配置を有する。幾つかの実施態様は、C−5およびC−10においてペロロールと同じ相対配置ならびにC−8およびC−9において独立して可変である配置を有する。幾つかの実施態様は、C−5、C−8およびC−10においてペロロールと同じ相対配置ならびにC−9において可変である配置を有する。すべての場合において、本明細書に記載の式(1)で示される化合物の構造の例に示すように、C−4(もしキラルならば)における配置は可変であるか、または残りのキラル中心と同じ相対配置であってもよい。
【0041】
種々の実施態様において、ペロロール類縁体は、置換基R1、R2、R3およびR4に関して、より特定の限定を有してもよい。以下の限定のいずれの組み合わせも、本発明に包含される。
(a)R1およびR2の一方または両方が、メチル、エチル、−CH2OH、−CH2OR1'または−CH2OR3'に限定されてもよい;
(b)式(1)で示される化合物のR1およびR2の一方または両方において、あるいは上記(a)の限定において、R1'、R2'、R3'および/またはR4'が、メチル、エチル、プロピルまたはブチルに限定されてもよい;
(c)R1およびR2の一方または両方が、メチルまたはエチルに限定されてもよい;
(d)R1およびR2の一方または両方が、メチルに限定されてもよい。
【0042】
本発明の幾つかの実施態様は、式(2):

式2
[式中、G1は、O−(C1−C10アルキル)およびHから選ばれ;
G2は、HまたはC1−C10アルキルであり;および
G3は、H、−OH、C1−C10アルキルおよびO−(C1−C10アルキル)から選ばれる]
で示される化合物およびその塩を提供する。
【0043】
式(2)で示される化合物他の幾つかの実施態様において、G1は、−O−メチルおよびHから選ばれ;G2は、Hまたはメチルであり;およびG3は、H、メチルおよびO−メチルから選ばれる。
【0044】
式(1)および/または(2)で示される化合物の種々の実施態様において、ペロロール類縁体は、置換基G1、G2およびG3に関して、より特定の限定を有してもよい。以下の限定のいずれの組み合わせも、本発明に包含される。以下と前記(a)、(b)、(c)および/または(d)のいずれの組み合わせも、本発明に包含される。
(e)G1、G2および/またはG3の1つのみが、−O−メチルである。
(f)G1、G2および/またはG3の少なくとも1つが、Hである。
(g)G1、G2および/またはG3のすべてが、Hである。
(h)G3が、メチルである。
【0045】
上述の式(1)および/または(2)のいずれか1つに特に包含される立体異性体の非限定的例を下記表1に示す。表1の立体異性体のいずれか2つ以上の立体混合物およびラセミ混合物、実質的に立体的に純粋な化合物および立体的に純粋な化合物もまた、前述の式(1)および(2)に包含される。下記表1に用いるR1、R2、R3、R4、G1、G2およびG3は、前記の式にと同意義であるか、または上記(a)−(h)の限定のいずれかによって定義される。
【0046】

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】
本発明化合物の非限定的例を下記表1Aに示す。

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】
本明細書に記載のすべての実施態様において、−OH部分を、プロドラッグが切断されるときに−OH部分がその場所に提供されるように切断可能なプロドラッグ部分と置き換えてもよい。ホスフェートプロドラッグおよびエステル連結部分と連結する可溶化部分は、コア化合物から切断されるときにコア化合物上に−OH部分を提供することが多い。本明細書で用いるX5は、プロドラッグ部分を意味する。本発明化合物に−OH部分が記載されるすべての場合において、−OH部分は、X5部分で置換されてもよい。
【0058】
特に、表I中の下記構造は、可溶化部分の非限定的例である。以下の表において、各Rは独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR'、−NR'2、NO2、−CO2H、−CO2R'およびエポキシド)で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり;および
R'は、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR''、−NR''2、NO2および−CO2H(ここで、R''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】

【0063】

【0064】
【表4】

【0065】


幾つかの特定の実施態様において、表Iに記載の各Rは独立して、H、メチルまたはアシルから選ばれる。
【0066】
連結部分が、コアを可溶化部分に接続してもよい。連結部分は、コアからの連結部分の切断によってコアの化合物が生成されるようにインビボで切断される部分である。幾つかの実施態様において、連結部分の切断は、生理的条件下で連結部分の安定性に関連することができる。幾つかの実施態様において、連結部分は、インビボで酵素的に切断されてもよい。幾つかの実施態様において、インビボでの連結部分の切断は、連結部分がコアに結合した後に切断される、OH部分を含むコアの形成をもたらす。エステル部分を含む連結部分は、エステル連結部分がコアに結合した後に切断される、OH部分を含むコアの形成を提供することができる。連結部分は、以下の部分から選択される:−O−C(=O)−Z−、−NH−C(=O)−Z−、−CH2OC(=O)−、−C(=O)O−および−C(=O)HN−;ここで、Zは、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR'、−NR'2、NO2、−CO2H、−CO2R'およびエポキシド)で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり、個々の炭素原子は、S、O、N、NR'またはNR'2で置換されてもよい;および
ここで、各R'は独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR''、−NR''2、NO2、−CO2H、−CO2R''およびエポキシド(ここで、R''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基である。ホスフェートの場合、−O−も、適当な連結部分である。連結部分の特定の非限定的例を、下記表IIに記載する。ここで、1は、コアへの結合点を表し、2は、可溶化部分への結合点を表す。
【0067】
【表5】

【0068】
連結部分および可溶化部分は、プロドラッグ部分またはX5と呼ばれる単一の構造で記載されてもよい。プロドラッグ部分は、本発明化合物が形成されるように、コアに加えられるすべてを含む。本明細書に記載のいずれかの可溶化部分に結合する、本明細書に記載のいずれかの連結部分のいずれかの組み合わせは、プロドラッグ部分を含んでもよい。幾つかの実施態様において、プロドラッグ部分は、安定であり、コアから除去するのが困難である。幾つかの実施態様において、プロドラッグ部分は、連結部分における切断により、コアからプロドラッグ部分または可溶化部分が分離されるコアの化合物が生成されるように、インビボで切断されてもよい部分である。幾つかの実施態様において、連結部は酵素的に切断されてもよい。幾つかの実施態様において、コアからプロドラッグ部分または可溶化部分を分離するための連結部分のインビボでの切断は、プロドラッグ部分がコアに結合した後に切断される、OH部分を含むコアの形成をもたらす。エステル部分を含むプロドラッグ部分は、プロドラッグ部分がコアに結合した後に切断される、OH部分を含むコアの形成を提供することができる。プロドラッグ部分の特定の非限定的例を、下記表IIIおよびIVに記載する。下記表IIIにおいて、各Rは独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR'、−NR'2、NO2、−CO2H、−CO2R'およびエポキシド)で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり;および
ここで、R'は、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR''、−NR''2、NO2および−CO2H(ここで、R''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】

【0074】

【0075】
【表10】

【0076】
【表11】

【0077】


幾つかの特定の実施態様において、表IIIに記載の各Rは独立して、H、メチルまたはアシルから選ばれる。
【0078】

【0079】

【0080】
【表12】

【0081】
【表13】

【0082】

【0083】
X5は、(a)生理的pHにて1つ以上のイオン性実体を有する部分;多数の−OHまたはアミドなどの水素結合官能基を有する部分;モノホスフェート;ジホスフェート;トリホスフェート;単糖;オリゴ糖;多糖;オリゴペプチド;ポリペプチド;アミノ酸;αアミノ酸、ポリエーテルおよびその組み合わせから選ばれる可溶化部分;および(b)−O− ;−O−C(=O)−Z−;−NH−C(=O)−Z−;−CH2OC(=O)−;−C(=O)O−、−C(=O)HN−(ここで、Zは、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR'、−NR'2、NO2、−CO2H、−CO2R'およびエポキシド)で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり、個々の炭素原子は、S、O、N、NR'またはNR'2で置換されてもよい;および、ここで、各R'は独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR1''、−N(R2'')2、NO2および−CO2H(ここで、R1''およびR2''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基である)から選ばれる連結部分を含んでもよい
【0084】
本発明化合物は、ペロロール、ペロロール前駆体またはペロロール類縁体を製造または入手することによって、および所望の化合物を製造することによって、製造されることが多い。本発明化合物の合成に関する詳細を以下に記載する。
【0085】
化合物の合成および活性アッセイ
ペロロールは、従来技術に教示されるように、天然源から得ることができる。溶媒分画およびクロマトグラフィーを用いることができる。式(1)および/または(2)で示される異なる化合物に適用される誘導体化ステップの例を以下により詳しく示す。
【0086】
製剤中のSHIP1調節化合物の存在は、活性化マクロファージからの一酸化窒素生成;IgE誘発マスト細胞脱顆粒;LPS誘発マクロファージ活性化;TNF−α発現または活性の変化をモニターする細胞または動物ベースアッセイといったような公知の手順から容易に適合させることができる生物学的アッセイなどの種々のアッセイの使用によって決定することができる。さらに、生体における炎症活動を調節する作用薬のための標準的アッセイを用いてもよい。これらのアッセイの適合化は、SHIP1−/−およびSHIP1+/−マウスおよび骨髄由来マクロファージの利用可能性によって促進される。さらに、抗SHIP1抗体の利用可能性は、イムノアッセイ形式の使用を促進する。このようなアッセイは、本明細書に記載の全合成によって製造される化合物の活性の評価に用いることもできる。
【0087】
化合物の全合成
本発明化合物の具体例ならびに本発明化合物の具体例の中間体および前駆体を製造するための合成スキームをここに提供する。第7表は、製造される異なる本発明化合物の例などの合成の具体例における、本発明化合物、中間体および前駆体の例を提供する。第7表に示す合成方法において、示される本発明化合物およびその中間体化合物は、出発物質としてスクラレオリドを用いて都合よく製造することができる。所望のGn、Gx、Gyおよび/またはGz置換基を提供するスクラレオリドの適当な誘導体を用いることができる。Nuは、求核試薬であり、多くの場合、リチウムであり、Gn、Gx、Gyおよび/またはGzは、それぞれ炭素原子15、14、13および/または12が修飾のために意図されるとき、多くの場合、−OMeまたは−NHAcなどの活性化基である。置換基Gn、Gx、Gyおよび/またはGzが修飾を糸されない状況では、各置換基は、出発物質に見られるものと同じであるか、または適当に変更されて、最終生成物のための所望の置換基を提供する。Gn、Gx、Gyおよび/またはGzに保護基を用いることもできる。
【0088】
ペロロール類縁体の合成が、従来技術に記載されている(たとえば、国際公開公報WO 2004/035601を参照;これは、全体として参照することにより本発明に援用される)。本発明化合物の合成のより詳細な例は、実施例に記載する。
【0089】
第7表
SHIP1調節化合物およびプロドラッグの合成

【0090】
医薬組成物、用量、投与および適応
本発明に用いるための化合物は、当業者公知のいずれかの方法で医薬組成物に製剤することができる。当業者は、適切な医薬的に許容しうる塩ならびに適切な医薬的に許容しうる賦形剤、希釈剤および担体を選択することが求められる。
本発明化合物は、いずれかの医薬的に許容しうる担体中、治療的または予防的に許容しうる量で提供することができる。このような医薬製剤を製造するための当業界で公知の方法は、たとえば、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(21st edition)、ed. A. Gennaro、2005、Mack Publishing Company、Easton、PAに見出される;これは、全体として参照することにより本発明に援用される。本発明の医薬製剤は、たとえば、賦形剤、滅菌水または生理食塩水、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、または他の合成溶媒、植物油、または水素化ナフタレンを含んでもよい。
【0091】
本発明化合物は、たとえば、水に実質的に不溶性であるが、たとえば、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシドまたはクロロホルムあるいはその組み合わせなどの溶媒に自由に溶ける化合物などの疎水性化合物を含んでもよい。このような疎水性化合物を含む製剤は、たとえば、特定の条件下で両親媒性化合物によって形成されるミセルなどを用いて提供される。水性溶液において、ミセルは、その炭化水素コア中またはミセル壁内に疎水性化合物を組み込む能力を有する。疎水性化合物は、たとえば、可消化植物油などのトリグリセリド(油)に可溶化することによって提供されてもよい。油相中の可溶化疎水性化合物を、水性溶液中に分散させ、要すれば、乳化剤を用いて安定させることができる。別法として、疎水性化合物を油中で提供し、たとえば、胆汁塩がインビボ乳化剤として機能する胃腸系などにデリバリーすることができる。疎水性化合物は、エマルションのように、油および水の液体分散物であるが、ミセル様「コア」内に油相を有するより小さい粒子であるマイクロエマルションとして提供されてもよい。本発明の疎水性化合物は、たとえば、デンプンなどの炭水化物、セルロース、デキストラン、シクロデキストリン、メチルセルロース、またはヒアルロン酸、またはアルブミン、コラーゲンもしくはゼラチンなどのポリペプチドなどのポリマー担体と一緒に提供されてもよい。疎水性化合物の製剤の他の様式として、リポソーム、天然および合成リン脂質、またはたとえば、ジメチルスルホキシドまたはアルコールなどの溶媒が挙げられる。
【0092】
本発明の医薬組成物を、一定の期間にわたる活性化合物の制御放出を提供するように製剤してもよい。したがって、該製剤は、たとえば、単回投与で投与されるならば毒性であるが、制御放出では毒性レベルに達しない化合物の量などを含むことができる。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを、たとえば、化合物の放出を制御するのに用いることができる。本発明の調節化合物のための他の潜在的に有用なデリバリーシステムとして、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、植え込み可能な注入システムおよびリポソームが挙げられる。
【0093】
化合物の「治療有効量」は、本発明化合物を用いて、必要な用量および期間において、所望の治療結果を達成するために有効な量である。治療有効量は、化合物のいずれかの毒性または有害な影響より、治療的に有利な影響の方が上回る量でもある。化合物の「予防有効量」は、本発明化合物を用いて、必要な用量および期間において、所望の予防結果を達成するために有効な量を意味する。典型的に、予防有効量が、治療有効量よりも少なくなるように、予防的用量は、疾患に先立つか、または疾患の早期段階にある患者に用いる。十分であるとみなされる量は、用いる特定の化合物、投与様式、疾患の段階および重篤度、治療される個人の年齢、性別、体重および健康状態ならびに併用する治療に応じて変わる。
【0094】
本発明化合物の治療または予防有効量の範囲は、0.1nM−0.1M、0.1nM−0.05M、0.05nM−μM、0.01nM−10μM、0.1μM−1μM、0.1μM−0.6μMまたは0.3μM−0.6μMである。用量の数値は、軽減される身体状態の重篤度に応じて変わることに留意すべきである。特定の患者のために、個々の必要性および組成物を投与するか、または投与を管理する者の専門的判断力にしたがって、特定の用量処方を長期間にわたって調節することができる。本明細書に記載する用量範囲は、例示にすぎず、医師による選択される用量処方を制限するものではない。用量処方は、最適治療応答を提供するように調節される。たとえば、長期間の単回ボーラス投与を行うこともでき、数回の分割投与を行うこともでき、あるいは治療状況の危急性によって示されるように、用量を比例的に減少もしくは増加することもできる。
【0095】
一般に、本発明化合物は、実質的な毒性を引き起こすことなく用いるべきである。本発明化合物の毒性は、たとえば、細胞培養物または実験動物において試験し、治療指数、すなわち、LD50(集団の50%が死亡する用量)とLD100(集団の100%が死亡する用量)との比を決定することなどの標準的技術を用いて決定することができる。しかし、重篤な疾患状態などの、ある状況においては、過剰の組成物を投与することが必要であるかもしれない。
【0096】
従来の製薬実務を利用して、治療または予防目的に応じて患者に化合物を投与するための適当な製剤または組成物を提供することができる。投与の適当な経路として、たとえば、全身、非経口、静脈内、皮下、経皮、経粘膜、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心(脳)室内、嚢内、髄腔内、関節包内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾル、局所、外科的または経口投与などを用いることができる。したがって、経口投与には、錠剤またはカプセル剤の剤形;吸入剤には、散剤、点鼻薬またはエアロゾルの剤形;経粘膜投与には、鼻腔用スプレーまたは座薬;経皮投与には、クリーム剤、軟膏(ointments)、軟膏(salves)またはゲル、などであってよい。
【0097】
本発明のSHIP1モジュレーターおよび医薬組成物の治療有効量または予防有効量は、がん(腫瘍性疾患)、他の細胞増殖性疾患、炎症性疾患および免疫疾患の治療または予防を必要とする患者に投与することができる。腫瘍性疾患として、白血病、癌腫、肉腫、黒色腫、神経芽細胞腫、毛細血管漏出症候群および血液悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炎症性要素を有する疾患として、関節リウマチ、多発性硬化症、ギランバレー症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、乾癬、移植片対宿主病、宿主対移植片、紅斑性狼瘡、アルツハイマー病およびインスリン依存性糖尿病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。細網内皮性系列のマクロファージ関連細胞の不適切な活性化に関連する疾患として、骨粗鬆症が挙げられる。
【0098】
式(1)で示される構造式を有するペロロールおよびその他の化合物は、SHIP1アゴニスト活性を示す。SHIP1を活性化することによって、このようなアゴニストは、敗血症/敗血症性ショック、大腸炎、炎症性腸症候群およびマクロファージ増殖または活性化が関与する疾患などの炎症性疾患の治療において;骨髄性およびリンパ性白血病などの腫瘍性疾患の治療において;移植片拒絶などの免疫抑制剤として;造血障害;およびアレルギーの治療または予防といったようなマスト細胞変性に影響を及ぼすために、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】非プロドラッグ化合物である化合物100と比較した、プロドラッグ化合物である化合物103によるTNFαの相対的阻害を試験するセルベースアッセイの結果を示すグラフである。
【図2】プロドラッグである化合物106の濃度を変化させることによるマクロファージTNFα産生の阻害を試験するセルベースアッセイの結果を示すグラフである。
【図3】プロドラッグである化合物106によるマスト細胞におけるカルシウム流入の阻害を試験するセルベースアッセイの結果を示すグラフである。
【図4】プロドラッグである化合物108による野生型(WT)およびノックアウト(KO)マクロファージにおけるTNFα産生の阻害を試験するセルベースアッセイの結果を示すグラフである。
【図5】図5Aは、多発性骨髄炎(MM)細胞系における、種々の濃度の化合物100の腫瘍細胞生存を低下させる能力の結果を示すグラフである;図5Bは、多発性骨髄炎(MM)細胞系における、種々の濃度の化合物100の腫瘍細胞生存を低下させる能力の結果を示すグラフである;図5Cは、多発性骨髄炎(MM)細胞系における、種々の濃度のAQX−016Aの腫瘍細胞生存を低下させる能力の結果を示すグラフである。
【図6】図6Aは、種々の濃度の化合物100のOPM2 MM細胞系の成長を阻害する能力の結果を示すグラフである;図6Bは、種々の濃度の化合物100のMM.1S MM細胞系の成長を阻害する能力の結果を示すグラフである;図6Cは、種々の濃度のAQX−016AのMM細胞系の成長を阻害する能力の結果を示すグラフである;図6Dは、種々の濃度のAQX−016AのU266 MM細胞系の成長を阻害する能力の結果を示すグラフである;図6Eは、種々の濃度のAQX−016AのLCC6−Her2 MM細胞系の成長を阻害する能力の結果を示すグラフである。
【図7】図7Aは、化合物100、AQX−16Aおよび化合物103のインビトロでのSHIP酵素の活性化の結果を示すグラフである;図7Bは、化合物100およびAQX−16AのインビトロでのSHIP酵素の活性化の結果を示すグラフである;図7Cは、LPS刺激SHIP+/+(−/−ではない)BMmΦsからのTNFα産生を阻害する化合物100の結果を示すグラフである;図7Dは、マウスにおいてLPS誘発血漿TNFαレベルを阻害する化合物100の結果を示すグラフである。
【図8】図8Aは、37℃にて2時間10 ng/mLのLPSで刺激する30分前にAQX−016Aまたは担体で前処置されたSHIP+/+(薄色のバー)およびSHIP−/−(濃色のバー)マクロファージとELISAによるTNFα産生定量の結果を示すグラフである。SHIP+/+およびSHIP−/−細胞に対する絶対的TNFαレベルは、それぞれ、623 +/− 30および812 +/− 20 pg/mlであった。データは、平均+/ SEMとして表され、3つの独立した実験の代表である。図8Bは、IgEおよびFura−2で予めロードされ、15 μM AQX−016Aまたは担体で30分間処置されたSHIP+/+およびSHIP−/−マスト細胞の結果を示すグラフである。次いで、0(点線)または10(線)ng/mLのDNP−HSAで細胞を刺激し(→で示す)、蛍光分光分析によって経時的細胞内カルシウムレベルをモニターした。
【図9】2 mg/kgのLPSのIP注射の30分前に、20 mg/kgのAQX−016Aまたは0.4 mg/kgのデキサメタゾンを経口投与されたマウスの結果を示すグラフである。ELISAによるTNFα定量のために、2時間後に血液を採取した。各記号は、1匹のマウスを示し、データは、3つの独立した実験の代表である。
【図10】図10Aは、感作マウスにおいて、DNFB誘発好中球特異的ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を阻害する化合物100の結果を示すグラフである。化合物100処置グループ対ビヒクル処置グループに対するP値は<0.02である。すべてのデータは、3つの独立した実験の代用である。図10Bは、皮膚塗布によってハプテンDNPに感作したCD1マウスにおけるマスト細胞脱顆粒を阻害するAQX−016Aの結果を示すグラフである。
【図11】図11Aは、示された濃度のイノシトール−1,2,4,5−テトラキスホスフェート(IP4)基質におけるSHIP酵素の初期速度の結果を示すグラフである。図11Bは、30 μMのIP4における生成物PI−3,4−P2(20 μM)または化合物100(3 μM)の野生型(WT)およびC2ドメイン欠失S(ΔC2)HIP酵素を活性化する能力結果を示すグラフである。図11Cは、組換えC2ドメインを、4. μMの化合物100またはEtOHコントロールで23℃にて30分間予備インキュベートし、膜片に固定したPI−3,4−P2に結合させるタンパク質オーバーレイアッセイの結果を示すグラフである。図11Dは、0.25% BSAの存在下で銅キレート(His−Tag)YSi SPAシンチレーションビーズ上にコーティングされ、5 μCiの[3H]−化合物100とともにインキュベートされた組換えC2ドメイン(10 nM)から得られるビーズ結合放射活性の結果を示すグラフである。データは、平均+/ SEMとして表され、少なくとも3つの独立した実験の代表である。図11Eは、96ウエルプレートに分注された0.25% BSAの存在下で、野生型(WT)またはC2ドメイン欠失S(ΔC2)HIP酵素のいずれかでコーティングされ、5 μCiの[3H]−化合物100(42 Ci/mmol)とともに23℃にて暗中振とうによりインキュベートされた銅キレート(His−Tag)YSi SPAシンチレーションビーズから得られるビーズ結合放射活性の結果を示すグラフである。タンパク質コーティングビーズと相互作用する[3H]−化合物100の量をプレートシンチレーションカウンターで定量した。
【図12】図12Aは、ビヒクルコントロールにおける活性と比較し、ビヒクルコントロールにおいて観察される変化に対する活性変化%として表した、化合物100の存在下での酵素の活性の結果を示すグラフである。<25%の活性変化を、有意とみなさなかった。図12Bは、図12Aに示すように、25%以上化合物100によって影響を及ぼされた酵素の活性の結果を示すグラフである。
【図13】マウスの腫瘍サイズにおける化合物100およびビヒクルコントロールの効果の結果を示すグラフである。
【図14】マウスの長期の腫瘍体積における化合物100およびビヒクルコントロールの効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
下記の実施例および図面において、用語「化合物#」、「MN#」「AQXMN#」および「AQX−MN#」はすべて、同意義である。たとえば、「化合物100」は、「MN100」と同じであり、「AQXMN100」と同じであり、「AQX−MN100」と同じである。
【実施例1】
【0101】
化合物100の合成:
【化1】

Kuchkovaら;Synthesis、1997、1045にしたがって、ドリマン−8α,11−ジオールを調製した。
Chanら;J.Med.Chem.(2001)、44、1866にしたがって、ブロモメトキシトルエン(2)を調製した。
【0102】
アルデヒド(1)の製造
ドリマン−8α,11−ジオール(17.5g、72.8mmol)を1LのCH2Cl2に溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(50.7mL、291.2mmol)を加え、溶液を−15℃に冷却する。DMSO(250mL)中のPyr−SO3(46.3g、291.2mmol)の溶液を20分間にわたって滴下し、次いで反応物をさらに5分間冷却して撹拌する。冷反応物に1M HCl(500mL)を加え、有機層を分配する。水層を追加の200mLのCH2Cl2で洗浄する。次いで、プールした有機層を飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、10.5gのアルデヒド(1)(44.1mmol、60.1% yield)を白色半固体で得る。
【0103】
ジオールの製造(3)
ブロモメトキシトルエン(2)(3.64g、18.29mmol)をアルゴン雰囲気下、35mLの無水THFに溶解する。この溶液を−78℃に冷却し、tBμLi(21.5mL、36.6mmol)をシリンジにより滴下する。溶液を−78℃にて10分間撹拌し、次いで、室温に20分間温める。溶液を−78℃に再冷却し、6mLの無水THF中のアルデヒド(1)(1.45g、6.09mmol)の溶液をシリンジにより加える。溶液を−78℃にて2時間撹拌した後、1M HClを加えて反応を停止する。EtOAc(100mL)を加え、有機相を1M HCl、次いで、飽和NaHCO3で洗浄する。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮する。粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、ジオール(3)を得る(1.94g、88.5%収率)。
【0104】
1H NMR(CDCl3)δ0.34(td、J= 13.3、3.6 Hz、1H)、0.77(s、3H)、0.82(s、3H)、0.90(m、1H)、0.97(td、13.5、3.6 Hz、1H)、1.02(s、3H)、1.13(m、1H)。1.16(m、1H)、1.23(m、1H)1.33(m、1H)、1.40(m、1H)、1.54(s、3H)、1.56(m、1H)、1.63(m、1H)、1.84(dt、12.2、3.3Hz、1H)、2.12(d、8.1Hz、1H)、2.33(s、3H)、3.79(s、3H)、4.79(d、8.1Hz、1H)、6.61(s、1H)、6.78(s、1H)、6.85(s、1H)。
13C NMR(CDCl3)δ 15.9、18.3、19.8、21.50、21.53、26.1、33.2、33.5、38.6、40.8、41.3、44.0、55.1、55.8、62.84、62.85、76.0、110.5、113.6、120.7、139.8、149.0、159.7
HRESIMS:計算値C32H36O3Na 383.2562、実測値383.2563
【0105】
キサントゲン酸塩の製造(4)
ジオール(3)(1.94g、5.39mmol)をアルゴン雰囲気下、20mLの無水THFに溶解する。この溶液に、NaH(237mg、油中60%、5.93mmol)を加える。次いで、溶液が透明なオレンジ色になるまで、反応物を50℃に加熱する。反応物を0℃に冷却し、CS2(1mL、16.6mmol)を加える。溶液を0℃にて20分間撹拌し、次いで、さらに20分間室温に温めた後、MeI(1mL、16.6mmol)を加える。反応物を室温にて1時間撹拌し、次いで、濃縮乾固する。粗混合物をEtOAcに溶解し、3x H2Oで洗浄する。有機溶液を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮して、キサントゲン酸塩(4)およびフラグメンテーション生成物であるケトン(約4:1)の混合物を得る。生成混合物をさらに生成することなく次のステップに用いる。
【0106】
1H NMR(CDCl3)δ0.56(td、12.9、3.5Hz、1H)、0.77(s、3H)、0.80(s、3H)、0.87(dd、12.2、2.4 Hz、1H)、0.99(dt 13.6、3.8Hz、1H)、1.02(s、3H)、1.28(m、1H)、1.31(m、1H)、1.34(m、1H)、1.45(m、1H)、1.50(s、3H)、1.55(m、1H)、1.65(m、1H)、1.75(m、1H)、1.78(m、1H)、1.81(m、1H)、2.18(d、5.2 Hz 1H)、2.28(s、3H)、2.38(s、3H)、3.75(s、3H)、5.18(d、5.2Hz、1H)、6.5(s、1H)、6.7(s、1H)、6.8(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ 13.0、15.9、18.3、20.2、21.3、21.6、26.3、33.26、33.30、40.2、41.0、41.3、46.0、46.8、55.0、55.9、65.1、74.2、110.9、112.3、120.9、139.5、149.9、159.4、189.7
HRESIMS:計算値C25H38O3S2Na 473.2160、実測値473.2159
【0107】
アルコールの製造(5)
キサントゲン酸塩(4)およびケトンを50mLのトルエンに粗混合物として溶解し、アルゴン雰囲気下に置く。Bu3SnH(2.9mL、10.78mmol)を加え、溶液を加熱する。還流するときに、触媒量のVAZO(1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))(約50mg)を冷却器の頂部から加える。溶液を1時間還流し、次いで、追加のVAZOを加える(約50mg)。溶液をさらに45分間還流した後、TLC分析(20% EtOAc:ヘキサン)は、反応の完了を示す。反応物を冷却し、次いで、濃縮乾固する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、アルコール(5)(1.12g、3.23mmol、60%収率、2ステップ)を白色泡状物で得る。
【0108】
1H NMR(CDCl3)δ0.78(s、3H)、0.85(s、3H)、0.87(s、3H)、0.90(m、1H)、0.93(m、1H)、0.96(m、1H)、1.09(td、13.3、3.9Hz、1H)、1.25(s、3H)、1.31(m、1H)、1.35(m、1H)、1.39(m、1H)、1.43(m、1H)、1.54(m、1H)、1.64(m、1H)、1.70(m、1H)、1.84(dt、12.4、3.1Hz、1H)、2.27(s、3H)、2.60(dd、14.7、4.5Hz、1H)、2.70(dd、14.7、5.9Hz、1H)、3.75(s、3H)、6.49(s、1H)、6.63(s、1H)、6.68(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ 15.4、18.4、20.2、21.4、21.5、24.5、31.2、33.2、33.3、39.1、40.3、41.7、44.0、55.0、56.0、63.0、74.1、111.3、111.9、122.1、139.2、145.9、159.5
HRESIMS:計算値C23H36O2Na 367.2613、実測値367.2615
【0109】
四環化合物の製造(6)
アルコール(5)(1.12g、3,23mmol)を10 mLのCH2Cl2に溶解し、0℃に冷却する。この溶液に、SnCl4(1mL)原液を加える。次いで、オレンジ色の溶液を0℃にて1時間撹拌し、次いで、MeOHを加えて反応を停止する。反応物をEtOAcに抽出し、2x飽和NaHCOで洗浄する3。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮して、四環化合物(6)(1.05g、3.20mmol、99%収率)を得る。この化合物をさらに精製することなく用いる。
【0110】
1H NMR(CDCl3)δ0.86(s、6H)、0.98(m、1H)、1.02(s、3H)、1.06(s、3H)、1.17(td、13.5、4.2Hz、1H)、1.24(m、1H)、1.40(m、2H)、1.54(m、2H)、1.71(m、4H)、2.27(s、3H)、2.34(m、1H)、2.49(dd、14.5、6.2Hz、1H)、2.60(m、1H)、3.74(s、3H)、6.41(s、1H)、6.62(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ 15.7、17.9、18.6、19.1、19.9、20.7、28.6、32.6、32.9、36.5、37.9、38.5、39.7、42.1、54.8、56.7、64.2、107.9、113.4、117.9、132.5、143.8、157.3
HRESIMS:計算値C23H35O [M+H] 327.2688、実測値327.2685
【0111】
化合物100の製造(7)
四環化合物(6)(1.05g、3.20mmol)を15 mLのDCMに溶解する。この溶液に、BBr3(1.0M DCM溶液)(3.20mL、3.20mmol)の溶液を加える。溶液を室温にて2時間撹拌し、次いで、濃縮乾固する。褐色残渣をEtOAcに溶解し、次いで、水層のpHが中性になるまで、水で洗浄する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、化合物100(7)(931mg、2.98mmol、93%収率)を白色固体で得る。
【0112】
1H NMR(CDCl3)δ0.88(s、6H)、0.97(m、1H)、1.00(m、1H)、1.04(s、3H)、1.07(s、3H)、1.18(td、13.2、4.2Hz、1H)、1.42(m、1H)、1.43(m、1H)、1.53(m、1H)、1.58(m、1H)、1.71(m、1H)、1.73(m、1H)、1.74(m、1H)、1.75(m、1H)、2.26(s、3H)、2.35(dt、11.7、3.0Hz、1H)、2.48(dd、14.35、6.44Hz、1H)、2.59(m、1H)、6.36(d、1.9Hz、1H)、6.55(d、1.9Hz、1H)
13C NMR(CDCl3)δ16.1、18.3、18.8、19.6、20.4、21.1、29.0、33.1、33.4、37.0、39.0、40.1、42.6、47.1、57.1、64.5、109.9、115.1、133.1、144.2、144.7、153.5
HRESIMS:計算値C22H33O [M+H] 313.2531、実測値313.2526
【実施例2】
【0113】
化合物124および化合物125の合成:
【化2】

【0114】
化合物124および化合物125の製造のための実験
12の製造
ブロミド2(1.41g、7.09mmol)をアルゴン雰囲気下、30mlの無水THFに溶解し、−78℃に冷却する。tBμLi(8.3ml、1.7Mペンタン溶液、14.2mmol)を10分間にわたって加え、溶液を室温に温める。15分後、溶液を−78℃に再冷却し、さらに30分間攪拌する。次いで、冷溶液に、8mLの無水THF中のエナール11(521mg、2.36mmol)の溶液を加え、反応物を−78℃にて30分間撹拌する。次いで、1M HClを加え、反応物を室温に温める。粗生成物をEtOAcに抽出し、飽和NaHCO3で洗浄する。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮する。粗化合物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、アルコール12(451mg、1.32mmol、56%収率)を得る。
【0115】
1H NMR(CDCl3)δ0.88(s、3H)、0.91(s、3H)、1.12(s、3H)、1.17(m、1H)、1.20(m、1H)、1.27(s、3H)、1.34(td、12.9、3.5 Hz、1H)、1.41−1.75(m、6H)、2.01(m、2H)、2.31(s、3H)、3.77(s、3H)、5.33(s、1H)、6.55(s、1H)、6.75(s、1H)、6.83(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ18.9、19.1、20.4、21.5、21.7、21.8、33.3、33.4、34.8、37.1、38.9、41.5、52.5、55.1、69.6、108.4、111.7、118.5、133.3、138.9、143.4、147.6、159.6
HRESIMS:計算値C23H34O2Na 365.2457、実測値365.2458
【0116】
13および14の製造
アルコール 12(450mg、1.32mmol)をアルゴン雰囲気下、10mLのCH2Cl2に溶解し、−78℃に冷却する。SnCl4(1mL)を加え、得られる黄色溶液を15分間撹拌する。冷溶液に1M HClを加え、混合物を放置して室温まで温める。層を分離し、有機相を2xH2Oで洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、13および14(284mg、0.88mmol、67%収率)を1:1混合物で得る。
【0117】
15および16の製造
エピマー15および16の1:1混合物(84mg)を5mLの1:1 MeOH:DMFに溶解する。10% Pd/C(32mg)を加え、スラリーをH2で飽和させる。水素バルーン下で溶液を16時間撹拌した後、固体触媒を濾去し、EtOAcで洗浄する。有機相を3xH2Oで洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮して、15および16(80mg、95%収率)を1:1混合物で得る。
【0118】
化合物124および化合物125の製造
15および16の1:1混合物(80mg、0.24mmol)を0.5mLのCH2Cl2に溶解する。BBr3(2mL、1M in CH2Cl2、2.0mmol)を加え、溶液を室温にて15分間撹拌する。反応物にMeOHをゆっくりと加えて反応を停止し、粗反応混合物を減圧濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、化合物124および化合物125の1:1混合物を得る。トルエンからの冷却により混合物から化合物124を部分的に結晶化させる。
【0119】
1H NMR(CDCl3)δ0.87(s、3H)、0.89(s、3H)、1.20(m、2H)、1.25(s、3H)、1.30−1.45(m、7H)、1.62(s、3H)、1.70(m、1H)、1.85(dd、12.0、8.4Hz、1H)、2.01(m、1H)、2.33(s、3H)、2.73(dd、15.5、8.3Hz、1H)、2.78(m、1H)、4.51(s、1H)、6.39(s、1H)、6.50(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ17.9、19.7、21.5、24.1、25.8、32.5、33.1、33.5、36.1、36.2、37.9、41.9、46.4、47.5、61.9、108.4、115.8、133.9、142.4、143.3、153.2
HRESIMS:計算値C22H33O [M+H] 313.2531、実測値313.2533
【0120】
富化された残りからの化合物125をCH3CNから部分的に結晶化させる。
1H NMR(CDCl3)δ0.47(s、3H)、0.80(s、3H)、0.89(s、3H)、0.90(m、1H)、1.00(dd、11.3、4.4 Hz、1H)、1.17(m、1H)、1.18(s、3H)、1.29(m、1H)、1.40(m、2H)、1.52(m、1H)、1.62(m、1H)、1.70(m、2H)、2.33(s、3H)、2.52(dt、14.4、5.5Hz、1H)、2.62(d、16.9Hz、1H)、2.97(dd、16.9、8.0Hz、1H)、4.52(s、1H)、6.35(s、1H)、6.47(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ15.2、18.0、19.1、19.5、21.4、30.5、31.7、32.8、32.9、34.3、36.9、40.7、41.7、47.7、52.0、62.1、108.3、115.3、133.2、140.7、145.6、153.4
HRESIMS:計算値C22H33O [M+H] 313.2531、実測値313.2533
【実施例3】
【0121】
化合物105の合成:
【化3】

【0122】
化合物105の製造のための実験
化合物100(7)、(60.4mg、0.193mmol)、Nα−Boc−Nδ,Nω−ジ−Z−L−Arg−OH(157.3mg、0.290mmol)およびDMAP(〜2mg)を3mLのCH2Cl2で合わせる。DIPCを加え、溶液を室温にて撹拌2時間する。反応物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、8を白色泡状物で得る。
1H NMR(CDCl3)δ0.86(s、6H)、0.96(s、2H)、1.01(s、3H)、1.05(s、3H)、1.17(m、1H)、1.39(m、1H)、1.43(s、9H)、1.50(m、1H)、1.58(m、1H)、1.70(m、2H)、1.73(m、2H)、1.78(m、2H)、1.92(m、1H)、2.25(s、3H)、2.32(m、1H)、2.47(dd、14.6、6.1Hz、1H)、2.58(m、1H)、4.04(m、2H)、4.47(s、br、1H)、5.12(s、2H)、5.22(2H)、6.52(s、1H)、6.70(s、1H)、7.27(m、3H)、7.35(m、7H)、9.24(s、br、1H)、9.45(s、br、1H)
13C NMR(CDCl3)δ14.1、16.0、18.2、18.7、19.4、20.0、20.9、21.0、24.9、28.2(3C)、28.8、29.3、32.9、33.2、36.9、38.5、40.0、42.4、44.1、47.3、53.4、56.9、60.2、64.2、66.9、68.8、79.7、115.5、120.8、127.60、127.62、128.2、128.3(2C)、128.7(2C)、132.9、134.6、136.8、144.3、148.1、149.3、155.3、155.7、160.4、163.7、171.5
HRESIMS:計算値C49H65N4O8 [M+H] 837.4802、実測値837.4805
【0123】
化合物105の製造
化合物8を3mLの70%TFA/CH2Cl2に溶解し、1時間撹拌する。次いで、溶媒を蒸発し、得られる残渣をトルエンに再溶解し、濃縮乾固する。次いで、得られる固体を15mLのMeOHに溶解し、100mgのPd/C(10% wt)を加える。溶液をH2で飽和させ、水素バルーン下で一夜撹拌する。Pd/Cを濾去し、溶液を濃縮乾固する。得られる固体を10mLのH2Oに溶解し、50μLの1M HClを加える。5分間撹拌した後、溶液を凍結乾燥して、化合物105を白色粉末で得る。
1H NMR(CD3OD)δ0.86(s、3H)、0.87(s、3H)、1.01(m、2H)、1.05(s、3H)、1.08(s、3H)、1.19(td、13.9、4.2Hz、1H)、1.41(m、2H)、1.52(m、1H)、1.66(m、2H)、1.72(m、4H)、1.85(m、2H)、2.13(m、2H)、2.28(s、3H)、2.39(m、1H)、2.51(dd、14.6、6.1Hz、1H)、2.64(m、1H)、4.33(t、6.3Hz、1H)、6.64(s、1H)、6.83(s、1H)
13C NMR(CD3OD)δ16.7、19.1、19.3、20.5、20.6、21.5、25.7、28.7、29.8、33.9、34.0、38.2、40.0、41.3、41.6、43.7、48.7、53.7、58.3、66.0、116.5、121.9、134.5、145.8、149.2、151.3、158.8、169.4
HRESIMS:計算値C28H45N4O2 [M+H] 469.3543、実測値469.3540
【実施例4】
【0124】
化合物106の合成:
【化4】

【0125】
化合物106の製造のための実験:
化合物100(7)(41.7mg、0.133mmol)を4mLのDMFに溶解する。K2CO3(37mg、0.266mmol)を加え、溶液を10分間撹拌する。Boc−Lys(Boc)−OSu(115.3mg、0.266mmol)を加え、溶液を室温にて18時間撹拌する。反応物をEtOAcに抽出し、3 x H2Oで洗浄する。有機相を乾燥し、濾過し、濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、(23)(80.6mg、0.126mmol、95%収率)を白色泡状物で。得る
【0126】
この泡状物を2mLのCH2Cl2に溶解し、TFA(2mL)を加える。溶液を室温にて2時間撹拌し、次いで、濃縮乾固する。トルエン(3mL)を加え、溶液を再度濃縮乾固する。得られる残渣を5mLのH2Oに溶解し、100μLの1M HClを加える。次いで、水溶液を0.22μmのシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥して、化合物106−2HClを白色粉末で得る。
【0127】
1H NMR(CD3OD)δ0.82(s、3H)、0.83(s、3H)、0.96(m、2H)、1.01(s、3H)、1.04(s、3H)、1.16(td、13.5、4.5Hz、1H)、1.36(m、2H)、1.50(m、1H)、1.59(m、3H)、1.69(m、5H)、2.04(m、2H)、2.24(s、3H)、2.36(m、1H)、2.48(dd、14.7、6.2Hz、1H)、2.60(m、1H)、2.92(m、2H)、3.23(m、1H)、4.23(m、1H)、6.58(s、1H)、6.76(s、1H)
13C NMR(CD3OD)δ16.7、19.0、19.4、20.5、20.7、21.5、23.3、28.1、29.8、31.1、33.8、34.0、38.3、40.1、40.3、41.4、43.7、53.9、58.4、66.1、116.5、121.9、134.5、145.9、149.3、151.4、169.4
HRESIMS:計算値C28H45N2O2 [M+H] 441.3481、実測値441.3484
【実施例5】
【0128】
化合物108の合成:
【化5】

【0129】
化合物108の合成のための実験:
化合物100(7:12.1mg、0.039mmol)を1mLのCH2Cl2に溶解する。DMAP(〜1mg)、次いで、ブロモアセチルブロミド(5.1μL、0.059mmol)を加え、反応物を一夜撹拌する。反応物を濃縮し、次いでフラッシュクロマトグラフィーに付して、ブロミド(9)(12.9mg、0.030mmol、77%収率)を得る。
【0130】
1H NMR(CDCl3)δ0.86(s、6H)、0.97(m、1H)、1.02(s、3H)、1.07(s、3H)、1.18(td、13.5、4.5Hz、1H)、1.25(s、1H)、1.41(m、2H)、1.52(m、1H)、1.60(m、1H)、1.71(m、2H)、1.77(m、2H)、2.29(s、3H)、2.35(m、1H)、2.52(dd、14.6、6.1Hz、1H)、2.62(m、1H)、4.00(s、2H)、6.59(s、1H)、6.78(s、1H)
13C NMR(CDCl3)δ16.1、18.3、18.9、19.5、20.1、21.1、25.7、28.9、33.1、33.3、37.0、38.6、40.1、42.5、47.4 57.0、64.3、115.3、120.6、133.2、144.6、148.1、149.8、166.2
HRESIMS:計算値C24H33O279BrNa 455.1562、実測値455.1550
HRESIMS:計算値C24H33O281BrNa 457.1541、実測値457.1522
【0131】
ブロミド9(6.06 g、11 mmol)を、アセトニトリル(90mL)中のHS−PEG(35 g、MW 6000)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.7 mL)の溶液に、窒素下0℃にて30分間にわたって少しずつ加える。添加後、氷浴を除去し、混合物を放置して室温に温める。3−4時間後、2−プロパノール(1200 mL)を30分間にわたって加える。さらに1.5時間後、得られる固体をブブナー漏斗上に集め、2 X 150 mLの2−プロパノールで洗浄する。次いで、得られるケーキを0.5% iPr2NEtを含むアセトニトリル(80 mL)に、0−5℃にて溶解し、2−プロパノール(1000mL)を加えることにより沈澱させる。得られる固体を集め、2−プロパノールで洗浄し、減圧乾燥して、化合物108を得る。
【実施例6】
【0132】
化合物109の合成:
【化6】

【0133】
化合物109の合成のための実験:
一般的な手順:Steinberg、G.M.J.Org.Chem.(1950)、15、637。
特異的チロシンリン酸化;Gibson、B.Wら、J.Am.Chem.Soc.(1987)、109、5343。
【0134】
化合物100(7)(250mg、0.80mmol)をテトラゾール/MeCN溶液(18mL、8.1mmol)中でスラリー化する。溶液が透明になるまでTHFを加える(〜10mL)。この溶液に、ジベンジル N,N−ジエチルホスホルアミダイト(1.0g、85%、2.7mmol)を加え、反応物を室温にて1時間撹拌する。次いで、溶液に10mLのt−ブチルヒドロペルオキシド(70% H2O溶液)を加え、溶液をさらに30分間激しく撹拌する。反応混合物をEtOAcに抽出し、1x Na2S2O5、1x 1M HCl、次いで、飽和NaHCO3で洗浄する。有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、10を得る(280mg、0.49mmol、61%収率)。
【0135】
1H NMR(CDCl3)δ0.88(s、6H)、0.96(m、1H)、0.99(m、1H)、1.03(s、3H)、1.06(s、3H)、1.19(m、1H)、1.26(m、1H)、1.43(m、2H)、1.53(m、1H)、1.60(m、1H)、1.72(m、3H)、2.24(s、3H)、2.33(m、1H)、2.47(dd、14.6、6.3Hz、1H)、2.58(m、1H)、5.11(s、2H)、5.13(s、2H)、6.64(s、1H)、6.84(s、1H)、7.33(s、10H)
13C NMR(CDCl3)δ16.0、18.2、18.7、19.4、20.1、21.0、28.8、32.9、33.3、36.9、38.6、40.0、42.4、47.2、56.9、64.3、69.6、69.7、114.3、114.4、119.7、119.8、127.9、128.4、133.1、135.5、135.6、144.5、148.0、148.1、148.5
HRESIMS:計算値C36H46O4P [M+H] 573.3134、実測値573.3117
【0136】
化合物109の製造
化合物10(280mg、0.49mmol)をMeOH(8mL)に溶解し、10% Pd/Cを加える(30mg)。溶液をH2で飽和させ、室温にて18時間撹拌する。次いで、反応物を0.45μm膜で濾過し、濃縮乾固して、化合物109を白色粉末で得る(150mg、0.38mmol、78%収率)。
1H NMR(CD3OD)δ0.83(s、6H)、0.93(m、2H)、1.00(s、6H)、1.14(m、1H)、1.35(m、1H)、1.38(m、1H)、1.48(m、1H)、1.65(m、5H)、2.21(s、3H)、2.31(m、1H)、2.41(dd、14.5、6.0Hz、1H)、2.55(m、1H)、6.64(s、1H)、6.82(s、1H)
13C NMR(CD3OD)δ16.7、19.2、19.4、20.7、21.6、29.8、33.9、34.0、38.2、40.1、41.3、43.7、48.5、49.8、58.4、66.0、115.8、121.3、134.1、145.4、149.1、150.4
HRESIMS:計算値C22H33O4NaP 415.2014、実測値415.2028
【実施例7】
【0137】
化合物103および化合物108の合成
【化7】

Kuchkovaら;Synthesis、1997、1045にしたがって、ドリマン−8α,11−ジオールを製造する。
Chanら;J.Med.Chem.44、1866にしたがって、ブロモメトキシトルエン(2を製造する。
【0138】
アルデヒド(1)の製造
ドリマン−8α,11−ジオール(17.5g、72.8mmol)を1LのCH2Cl2に溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(50.7mL、291.2mmol)を加え、溶液を−15℃に冷却する。DMSO(250mL)中のPyr−SO3(46.3g、291.2mmol)の溶液を、20分間にわたって滴下し、次いで、反応物を冷却してさらに5分間撹拌する。冷反応物に、1M HCl(500mL)を加え、有機層を分配する。水層をさらに200mLのCH2Cl2で洗浄する。次いで、プールした有機層を飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン: EtOAc)により精製して、10.5gのアルデヒド(1)を白色半固体で得る(44.1mmol、60.1%収率)。
【0139】
ジオール(3)の製造
アルゴン雰囲気下、ブロモメトキシトルエン(2)(3.64g、18.29mmol)を35mLの無水THFに溶解する。この溶液を−78℃に冷却し、tBμLi(21.5mL、36.6mmol)をシリンジにより滴下する。次いで、溶液を−78℃にて10分間撹拌し、20分間室温に温める。溶液を−78℃に再冷却し、6mLの無水THF中のアルデヒド(1)(1.45g、6.09mmol)の溶液をシリンジにより加える。溶液を−78℃にて2時間撹拌した後、1M HClを加えて反応を停止する。EtOAc(100mL)を加え、有機相を1M HCl、次いで、飽和NaHCO3で洗浄する。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮する。粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、ジオール(3)をジアステレオマー混合物で得る(1.94g、88.5%収率)。
【0140】
キサントゲン酸塩(4)の製造
アルゴン雰囲気下、ジオール(3)(1.94g、5.39mmol)を20mLの無水THFに溶解する。この溶液に、NaH(237mg、油中60%、5.93mmol)を加える。次いで、溶液が透明なオレンジ色になるまで、反応物を50℃に加熱する。反応物を0℃に冷却し、CS2(1mL、16.6mmol)を加える。溶液を0℃にて20分間撹拌し、次いで、さらに20分間室温に温めた後、MeI(1mL、16.6mmol)を加える。反応物を室温にて1時間撹拌し、次いで、濃縮乾固する。粗混合物をEtOAcに溶解し、3xH2Oで洗浄する。有機溶液を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮して、キサントゲン酸塩(4)およびフラグメンテーション生成物、ケトン(12)の混合物(約4:1)を得る。この生成物混合物をさらに精製することなく次工程に用いる。
【0141】
アルコール(5)の製造
キサントゲン酸塩(4)およびケトン(12)を粗混合物として50mLのトルエンに溶解し、アルゴン雰囲気下に置く。Bu3SnH(2.9mL、10.78mmol)を加え、溶液を加熱する。還流するときに、触媒量のVAZO(1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))(約50mg)を冷却器の頂部から加える。溶液を1時間還流し、次いで、追加のVAZOを加える(約50mg)。溶液をさらに45分間還流した後、TLC分析(20% EtOAc:ヘキサン)は、反応の完了を示す。反応物を冷却し、次いで、濃縮乾固する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、アルコール(5)(1.12g、3.23mmol、60%収率、2ステップ)を白色泡状物で得る。
【0142】
四環化合物(6)の製造
アルコール(5)(1.12g、3,23mmol)を10 mLのCH2Cl2に溶解し、0℃に冷却する。この溶液に、SnCl4(1mL)原液を加える。次いで、オレンジ色の溶液を0℃にて1時間撹拌し、次いで、MeOHを加えて反応を停止する。反応物をEtOAcに抽出し、2x飽和NaHCOで洗浄する3。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、濃縮して、四環化合物(6)(1.05g、3.20mmol、99%収率)を得る。この化合物をさらに精製することなく用いる。
【0143】
化合物100(7)の製造
四環化合物(6)(1.05g、3.20mmol)を15 mLのDCMに溶解する。この溶液に、BBr3(1.0M DCM溶液)(3.20mL、3.20mmol)の溶液を加える。溶液を室温にて2時間撹拌し、次いで、濃縮乾固する。褐色残渣をEtOAcに溶解し、次いで、水層のpHが中性になるまで、水で洗浄する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、化合物100(7)(931mg、2.98mmol、93%収率)を白色固体で得る。
【0144】
グリシンプロドラッグ(9)の製造
化合物100(7)(36.1mg、0.116mmol)、Boc−Gly−OH(30.5mg、0.174mmol)、DMAP(〜2mg)を1mLのCH2Cl2中で合わせる。1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(27μL、0.174mmol)を加え、溶液を室温にて2時間撹拌する。次いで、反応物をフラッシュクロマトグラフィーに直接付して、白色泡状物(9)を得る。この化合物を50% TFA/ CH2Cl2に1時間溶解する。溶液を濃縮し、トルエンに再溶解し、濃縮乾固する。Et2O(15mL)を加え、均質固体として沈澱するまで化合物をトリチュレートする。混合物を遠心分離し、次いで、固体をEt2Oで洗浄して、プロドラッグ(9)をTFA塩で得る(44.5mg、0.092mmol、80%収率)。
【0145】
ペグ化プロドラッグ(化合物108)の製造
アセトニトリル中の(7)(43.0g、100mmol)の溶液に、α−ブロモ酢酸(19.46 g、140mmol)およびDMAP(610mg、5 mmol)を0℃にて加える。次いで、反応混合物を、アセトニトリル(200 mL)中のDCC(29.87 g、145 mmol)の溶液を30分間にわたって滴下して処理し、次いで、0℃にて2.5時間撹拌する。形成した白色固体を濾去し、アセトニトリル(2 X 100 mL)で洗浄する。次いで、合わせたアセトニトリル洗液にH2O(4000mL)を15分間にわたって加える。さらに15分間撹拌した後、得られる固体を集め、H2O(2 X 250ml)およびIPA(2 X 200mL)で洗浄し、次いで、減圧乾燥する。集めた白色固体(6.06 g、11 mmol)を、アセトニトリル(90mL)中のHS−PEG(35 g、MW 6000)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.7 mL)の溶液に、窒素下0℃にて30分間にわたって少しずつ加える。添加後、氷浴を除去し、混合物を放置して室温に温める。3−4時間後、2−プロパノール(1200 mL)を30分間にわたって加える。さらに1.5時間後、得られる固体をブブナー漏斗上に集め、2 X 150 mLの2−プロパノールで洗浄する。次いで、得られるケーキを0.5% iPr2NEtを含むアセトニトリル(80 mL)に、0−5℃にて溶解し、2−プロパノール(1000mL)を加えることにより沈澱させる。得られる固体を集め、2−プロパノールで洗浄し、減圧乾燥して、化合物108を得る。
【実施例8】
【0146】
化合物102、化合物103および化合物104の合成
【化8】

【実施例9】
【0147】
化合物103は、化合物100よりもTNFアルファ産生を阻害する:
化合物100と比較した化合物103によるTNFα生成の相対的阻害を決定するためのアッセイを以下のとおり行う。
J774.1マクロファージ細胞を、2X105細胞/ウエルで24ウエルプレートに播く。次の日、培地を交換し、化合物100、化合物103またはシクロデキストリン担体を所定の濃度でウエルに加えた30分後、細胞を2 ng/mLのリポ多糖(LPS)で刺激する。マクロファージのLPS活性化が、培養上清中に検出することができ、ELISAによって定量することができるTNFアルファの産生をもたらす。結果を図1にグラフで示す。
【実施例10】
【0148】
化合物106は、マクロファージTNFα産生を阻害する:
化合物106の濃度を変化させることによるマクロファージTNFαの阻害を決定するためのアッセイを以下のとおり行う。
J2Mマクロファージ細胞を、2X105細胞/ウエルで24ウエルプレートに播く。次の日、培地を交換し、化合物106またはPBS担体を所定の濃度でウエルに加えた30分後、細胞を2 ng/mLのリポ多糖(LPS)で刺激する。マクロファージのLPS活性化が、培養上清中に検出することができ、ELISAによって定量することができるTNFアルファの産生をもたらす。結果を図2にグラフで示す。
【実施例11】
【0149】
化合物106は、マスト細胞におけるカルシウム流入を阻害する:
化合物106によるマスト細胞におけるカルシウム流入の阻害を決定するためのアッセイを以下のとおり行う。
IgE受容体架橋によるマスト細胞の活性化は、該細胞へのカルシウムの流入、それに続く脱顆粒および炎症促進性メディエーターの分泌をもたらす。骨髄由来マスト細胞を蛍光カルシウムインジケーター色素Fura−2とともにロードした後、化合物106またはPBS担体で1時間処理する。次いで、IgE受容体を架橋するために、細胞を抗IgE抗体で刺激するか、または刺激しない。次いで、蛍光法により、カルシウム流入をモニターする。結果を図3にグラフで示す。
【実施例12】
【0150】
化合物108は、TNFα産生を野生型(WT)マクロファージにおいて阻害するが、ノックアウト(KO)マクロファージにおいては阻害しない:
野生型(WT)またはSHIPノックアウト(KO)マウスから単離される腹腔マクロファージを、CSF-1含有培地を入れた24ウエルプレートに播く。次の日、培地を交換し、化合物106またはPBS担体を所定の濃度でウエルに加えた60分後、細胞を2 ng/mLのリポ多糖(LPS)で刺激する。マクロファージのLPS活性化が、培養上清中に検出することができ、ELISAによって定量することができるTNFアルファの産生をもたらす。結果を図4にグラフで示す。
【実施例13】
【0151】
SHIPモジュレーターおよびそのプロドラッグのアッセイスクリーニング:
種々のことなるSHIP調節化合物およびそのプロドラッグを、種々の異なるアッセイにおいて試験する。
【0152】
アッセイ1) SHIP酵素アッセイにおけるインビトロ試験
試験化合物を適当な溶媒に溶解し、水性緩衝液(20 mM Tris HCl、pH 7.5および10 mM MgCl2)で希釈する。ウエル当たり10 ngの酵素を入れ、20 mM Tris HCl、pH 7.5および10 mM MgCl2で合計量25 μLにした96ウエルマイクロタイタープレートにてSHIP酵素アッセイを行う。試験抽出物(溶媒中で提供)またはビヒクルとともにSHIP酵素を23℃にて15分間インキュベートした後、100 μMイノシトール−1,3,4,5−テトラキスホスフェート(Echelon Biosciences Inc、ソルトレークシティ、ユタ)を加える。37℃にて20分後、マラカイトグリーン試薬の添加および650 nmにての吸光度測定によって、放出された無機ホスフェートの量を評価する。
【0153】
アッセイ2) マクロファージTNF−α産生
J774.1aマクロファージ細胞を、溶媒(たとえば、シクロデキストラン)に溶解した試験化合物10 μg/mLで処理した40分後、100ng/mLのLPSを加える。2時間および5時間後に培養上清を集め、ELISAによりTNF−α産生を測定する。
【0154】
アッセイ3) マクロファージTNF−α NOアッセイ
J774.1aマクロファージ細胞を、溶媒に溶解した試験化合物10 μg/mLで処理した40分後、LPSを加える。24時間後に培養上清を集め、グリース試薬を用いてNO濃度を測定する。
【0155】
アッセイ4) FcaRI架橋によるマスト細胞の刺激
IL−3欠乏、0.1 μg/mlの抗−DNP IgE(SPE−7、Sigma、オークビル、オンタリオ)添加BMMCに、マスト細胞を一夜プレロードする。カルシウム流を測定するために、細胞を、タイロード緩衝液中、23℃にて45分間、2 μM fura 2−アセトキシメチルエステル(Molecular Probes、ユージーン、オレゴン)とともにインキュベートする。次いで、細胞を洗浄し、試験化合物の存在下で30分間インキュベートした後、所定の濃度のDNP−ヒト血清アルブミン(DNP−HSA)で刺激する。上述の分光蛍光法により、カルシウム流入をモニターする。細胞内シグナリングの分析のために、上述の抗−DNP IgEで細胞をプレロードし、試験化合物で37℃にて30分間前処理し、20 ng/mlのDNP−HSAで5分間刺激する。次いで、全細胞溶解液を調製し、ホスホ−PKB、ホスホ−p38MAPK、ホスホ−MAPK、Grb−2(Cell Signalling、ミシサーガ、オンタリオ)およびSHIP6について、免疫ブロット分析により分析する。
【0156】
アッセイ5) マウス急性皮膚アナフィラキシーモデル
マウスの剃毛した腹部に、アセトン中の25 μLの0.5% ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)(Sigma、オークビル、オンタリオ)を2日間連続して皮膚適用することにより、6−8週齢の老CD1マウス(ブリティッシュコロンビア大学動物施設、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア)をハプテンDNPで免疫感作する。24時間後、試験物質(10 μLの1:2 DMSO:MeOHに溶解したもの)を右耳に塗り、ビヒクルコントロールを左耳に塗る。薬物適用の30分後、両方の耳にDNFBを適用して、マスト細胞脱顆粒を誘発する。6 mmのパンチを耳から取り、続いて行う好中球ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の測定のために、ドライアイスで急速冷凍する。
【0157】
アッセイ6) マウス内毒血症モデル
6−8週齢の老C57Bl6マウス(ヒト疾患コア施設のVCHRI哺乳動物モデル、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア)に試験化合物を投与した30分後に、2 mg/kgのLPS(大腸菌血清型 0111:B4、Sigma、オークビル、オンタリオ)をIP注射する。2時間後に血液を採取し、血漿TNFαをELISAにより測定する。
【0158】
アッセイ7) インビトロ多発性骨髄腫(MM)アッセイ
試験化合物で処理したMM細胞系において、SHIPアクチベーターの腫瘍細胞生存を低減化する能力を評価する。種々の濃度の試験化合物を入れた200 μLの培地中、1 x 105 細胞/mLの密度で、細胞系OPM1、OPM2、MM.1SおよびRPMI 8226を播き、第3日および第5日に、トリパンブルー排除により生存細胞数を測定する。種々の濃度の試験化合物を入れた250 μLの培地中、1 x 106 細胞/mLの密度で、細胞RPMI 8226およびU266系を播く。第4日に、各培養物の培地を、同じ濃度の試験化合物を含む新鮮な培地と交換する。第7日に、トリパンブルー排除により各培養物の生存細胞数を測定する。
【0159】
MM細胞系を、種々の濃度の試験化合物(および関連するシクロデキストランビヒクルコントロール)および実験においてポジティブコントロールとなるLY294002を加えた200 μLの培地中に懸濁する3x104個の細胞を播いた96ウエルプレート中で培養する。24−48時間培養した後、最後の8時間に、1 Ciの[3H]−チミジン(GE Healthcare、Baie D'Urfe、カナダ)を加える。細胞を採取し、Wallac マイクロベータカウンター(Perkin−Elmer;ボストン、マサチューセッツ)を用いて、液体シンチレーション計数法で、DNA関連放射能を測定する。
【0160】
アッセイ8) インビボ多発性骨髄腫(MM)アッセイ
50 μLの成長培地および50 μLのマトリゲル・ベースメント・メンブラン・マトリックス(Becton Dickenson;ベドフォード、マサチューセッツ)に懸濁した3 x 106個のフシフェラーゼ発現OPM2細胞を、マウスの2個所に接種する。マウスの上部および下部脇腹に腫瘍を皮下注射する。2週間後、試験化合物またはコントロールビヒクルを皮下オイル徐放性製剤にて、3日毎に50 mg/kgの用量で投与する。
【0161】
Xenogen IVIS 200で生物発光画像法を用いて腫瘍を測定する。マウスに、滅菌PBS中3.75 mg/mLのD−ルシフェリン200 μLの腹腔内注射を行う。次いで、イソフルオランでマウスを麻酔し、ルシフェリンの注射後15分で撮像する。Living Image(登録商標)を用いて、腫瘍サイズの定量を行う。
【0162】
種々の異なるSHIP化合物およびそのプロドラッグを上述のアッセイで試験し、結果を以下の表に量的に示す。ここで、「+」は、所望の活性についてポジティブな結果を示し、「−」は、所望の活性についてネガティブな結果を示し、「NT」は、試験していないことを示す。
【0163】
【表14】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【実施例14】
【0169】
化合物100またはAQX−016Aで処理したMM細胞系において、SHIPアクチベーターの腫瘍細胞生存を低減化する能力を評価する。種々の濃度の化合物100を入れた200 μLの培地中、1 x 105 細胞/mLの密度で、細胞系OPM1、OPM2、MM.1SおよびRPMI 8226を播き、第3日および第5日に、トリパンブルー排除により生存細胞数を測定する。種々の濃度のAQX−016Aを入れた250 μLの培地中、1 x 106 細胞/mLの密度で、細胞RPMI 8226およびU266系を播く。第4日に、各培養物の培地を、同じ濃度のAQX−016Aを含む新鮮な培地と交換する。第7日に、トリパンブルー排除により各培養物の生存細胞数を測定する。実験は、3回行う。化合物100は、AQX−016Aよりも低濃度でMM増殖を阻害する。結果を図5A、5Bおよび5Cにグラフで示す。
【実施例15】
【0170】
増殖(DNA合成)アッセイ
[3H]−チミジンの細胞への取り込みを測定することにより、増殖を測定する。MM細胞系を、種々の濃度の化合物100またはAQX−016A(および関連するシクロデキストランビヒクルコントロール)および実験においてポジティブコントロールとなるLY294002を加えた200 μLの培地中に懸濁する3x104個の細胞を播いた96ウエルプレート中で培養する。24−48時間培養した後、最後の8時間に、1 Ciの[3H]−チミジン(GE Healthcare、Baie D'Urfe、カナダ)を加える。プレートを凍結乾燥して(細胞溶解の支援でもある)、実験を終結させる。次いで、自動細胞採取機(TomTech;オレンジ、コネティカット)を用いて、ガラス繊維フィルター上に細胞を採取し、Wallac マイクロベータカウンター(Perkin−Elmer;ボストン、マサチューセッツ)を用いて、液体シンチレーション計数法で、DNA関連放射能を測定する。ウエルを3回セットし、データを平均+/−SEMとして表す。結果を図6A、6B、6Cおよび6Eにグラフで示す。
【実施例16】
【0171】
化合物の製剤化:
SHIP酵素アッセイにおけるインビトロ試験のために、AQX−016Aおよび化合物100をEtOHに溶解し、水性緩衝液(20 mM Tris HCl、pH 7.5および10 mM MgCl2)で希釈する。沈澱した薬物を除去するために30分間14 000 X gで高速遠心分離した後、280 nm(両方の化合物についてのλmax)における光学密度によって、溶液中の薬物の実際の濃度を決定する。細胞を試験するために、化合物を担体シクロデキストリン(Cyclodex Technologies、ハイ・スプリングス、フロリダ)中に6 mM(2 mg/mL)で製剤化する。動物への経口投与のために、化合物を100%クレモフォアELの(Sigma−Aldrich Canada、オークビル、オンタリオ)に150 mM(50 mg/mL)で溶解した後、リン酸緩衝生理食塩水で6 mMに希釈する。しかし、シクロデキストリン中にケージ化されるか、またはミセルのクレモフォアEL中に製剤化されたこれらの化合物は、水溶液中で非常に溶けやすく、シクロデキストリンおよびクレモフォアELの両方からの干渉のために、SHIP酵素アッセイにおいて用いることができない。
【0172】
組換えSHIP酵素およびSHIPC2ドメインの産生:
N末端His6タグ付けSHIP酵素は、pME18S−His−SHIPプラスミドでの一過性トランスフェクションにより哺乳類293T細胞において発現し、Ni−キレートビーズクロマトグラフィー(Qiagen、ミシサーガ、オンタリオ)により95%以上の均一性に精製される。組換えSHIPC2ドメイン(725〜863アミノ酸残基)は、下記のように構築されたpET28C発現ベクターで形質転換された大腸菌において発現する。Ni−キレートビーズクロマトグラフィーにより細胞溶解液から精製された組換えタンパク質は、純度95%以上である。
【0173】
インビトロSHIP酵素アッセイ:
ウエル当たり10 ngの酵素を入れ、20 mM Tris HCl、pH 7.5および10 mM MgCl2で合計量25 μLにした96ウエルマイクロタイタープレートにてSHIP酵素アッセイを行う。試験抽出物(DMSO中で提供)またはビヒクルとともにSHIP酵素を23℃にて15分間インキュベートした後、100 μMイノシトール−1,3,4,5−テトラキスホスフェート(Echelon Biosciences Inc、ソルトレークシティ、ユタ)を加える。37℃にて20分後、マラカイトグリーン試薬の添加および650 nmにての吸光度測定によって、放出された無機ホスフェートの量を評価する。SHIP2酵素を、Echelon Biosciences(ソルトレークシティ、ユタ)から購入し、インビトロ酵素アッセイにおいて等量のイノシトールホスファターゼ活性を用いる。酵素データを3回繰り返し+/− SEMの平均で表す。実験は、少なくとも3回行う(図7Aおよび7B)。
【0174】
化合物100は、低濃度でAQX−016Aと同じ生物活性がある:
AQX−016Aが、SHIP−/−細胞よりもSHIP+/+細胞において活性が実質的に高いことは、AQX−016AがSHIPを特異的に標的化することを示す。しかし、AQX−016A内のカテコール部分の存在(図7A)は、カテコールがそれらの特異的タンパク質ポケット結合相互作用に無関係な活性を提示するので、潜在的に問題がある。たとえば、カテコールは、金属に結合することができるか、または酸化されてオルトキノンになることができ、酸化還元反応を通じてタンパク質の共有修飾をもたらすことができる。AQX−016Aの非カテコールバージョンは、化合物100と命名された(Nodwell M.and Andersen RJ、投稿準備中)。AQX−016Aに類似した化合物100は、インビトロでSHIP酵素活性を増強する(図7Aおよび7B)。AQX−016Aのように、化合物100もまた、SHIP+/+マクロファージからのTNFα産生を選択的に阻害するが、SHIP−/−マクロファージからの産生は阻害しない(図7C)。阻害についてのEC50は、0.3−0.6 μMである。化合物100の経口投与もまた、マウス内毒血症モデルにおいて血漿TNFαレベルのLPS−誘発性上昇を効率的に阻害する(図7D)。
【実施例17】
【0175】
SHIP+/+およびSHIP−/−骨髄由来マクロファージおよびマスト細胞の産生:
4〜8週齢の老C57Bl6 x 129Sv混合バックグラウンドマウスおよび前述のとおり製造されたSHIP+/+およびSHIP−/−マスト細胞から、骨髄細胞を吸引する。SHIP+/+およびSHIP−/−マウスからの骨髄由来マクロファージを得、10% FCS、150 μM MTG、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)の源としての2% C127細胞馴化培地(マクロファージ培地)を補足したIMDM中に維持する。
【0176】
マクロファージのLPS刺激:
LPS−刺激TNFα産生の分析のために、前夜に、マクロファージ培地を入れた24ウエルプレートに2 x105個の細胞を播く。次の日、培地を交換し、所定の濃度でAQX−016Aまたは担体を細胞に加えた30分後に、10 ng/mLのLPSを添加する。ELISA(BD Biosciences、ミシサーガ、オンタリオ、カナダ)によるTNFα定量のために上清を集める。細胞内シグナリングの分析のために、前夜に、6 cm組織培養プレートに2 x106個の細胞を播く。次の日、M−CSFを含まないマクロファージ培地中で、37℃にて1時間細胞を培養し、次いで、AQX−016Aまたは担体で前処理した30分後に10 ng/mLのLPSを15分間にわたって加える。細胞を4℃のPBSで洗浄し、完全プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche、モントリオール、カナダ)を補足した溶解緩衝液(50 mM Hepes、2 mM EDTA、1mM NaVO4、100 mM NaF、50 mM NaPPiおよび1%NP40)に再懸濁する。溶解液を4℃にて30分間揺すり、12000 x gにて20分間遠心分離して、清澄化する。次いで、溶解液をレムリ緩衝液で1 x にし、2分間沸騰させ、7.5% SDSポリアクリルアミドゲル上にロードする。ホスホPKB(Cell Signalling、ミシサーガ、オンタリオ)、SHIPおよびアクチン(Santa Cruz、サンタクルーズ、カリフォルニア)についての免疫ブロット分析を前述のとおり行う。
【0177】
FcεRI架橋によるマスト細胞の刺激:
IL−3欠乏、0.1 μg/mlの抗−DNP IgE(SPE−7、Sigma、オークビル、オンタリオ)添加BMMCに、マスト細胞を一夜プレロードする。カルシウム流を測定するために、タイロード緩衝液中、細胞を、23℃にて45分間、2 μM fura 2−アセトキシメチルエステル(Molecular Probes、ユージーン、オレゴン)とともにインキュベートする。次いで、細胞を洗浄し、ビヒクルコントロール、LY294002またはAQX−016Aの存在下で30分間インキュベートした後、所定の濃度のDNP−ヒト血清アルブミン(DNP−HSA)で刺激する。分光蛍光法により、カルシウム流入をモニターする。細胞内シグナリングの分析のために、上述のように抗−DNP IgEで細胞をプレロードし、AQX−016Aまたは緩衝コントロールで37℃にて30分間前処理し、20 ng/mlのDNP−HSAで5分間刺激する。次いで、全細胞溶解液を調製し、ホスホ−PKB、ホスホ−p38MAPK、ホスホ−MAPK、Grb−2(Cell Signalling、ミシサーガ、オンタリオ)およびSHIP6について、免疫ブロット分析により分析する。
【0178】
AQX−016Aは、マクロファージおよびマスト細胞活性化を阻害する:
AQX−016Aの標的特異性および生物学的効率を、初代SHIP+/+ vs SHIP−/− マクロファージおよびマスト細胞におけるPI3K−調節プロセスへのAQX−016Aの効果を比較することによって評価する。LPS−誘発マクロファージおよびIgE−誘発マスト細胞活性化の両方が、SHIPによって負に調節されることがこれまでに分かっているPI3K−依存性経路の活性化を含む。マクロファージのLPS刺激は、TNFαなどの炎症促進性メディエーターのPIP3−依存性放出を伴う。SHIP+/+ vs SHIP−/− 骨髄由来マクロファージにおけるAQX−016Aの作用を審査する。細胞をAQX−016Aで30分間前処理した後、10 ng/mLのLPSで2時間刺激する。AQX−016Aは、SHIP+/+ 細胞におけるTNFα産生を3 μMにて30%まで、15 μMにて50%まで抑制することができる(図8A)。対照的に、SHIP−/−細胞では、TNFα産生は、3 μMにて13%抑制され、15 μMにて15%抑制され、非−AQX−016A処理細胞とは区別できない、比較のために、PI3KインヒビターであるLY294002は、SHIP+/+およびSHIP−/−マクロファージの両方を同程度に阻害する(15 μMにて〜40%)。マスト細胞のIgE受容体のIgE+抗原架橋を介するマスト細胞の活性化は、細胞内カルシウムレベルの上昇をもたらす。図8Bに示されるように、AQX−016Aは、SHIP+/+骨髄由来マスト細胞において、SHIP−/−骨髄由来マスト細胞よりも、実質的により大きい程度まで、IgE+抗原−誘発カルシウム流入を選択的に阻害するが、一方、LY294002は、SHIP+/+およびSHIP−/−マスト細胞の両方を同程度に阻害する。これらのデータは、SHIP−依存性様式でPI3K−依存性マクロファージおよびマスト細胞応答を阻害するAQX−016Aに一致する。
【0179】
AQX−016Aの、SHIP+/+ vs SHIP−/−細胞におけるPIP3−依存性下流シグナリングタンパク質の活性化を阻害する能力を評価する。マクロファージのLPS刺激は、PKBリン酸化をもたらす。AQX−016Aは、用量依存性様式で、SHIP+/+マクロファージにおいてLPS−刺激PKBリン酸化を優先的に阻害するが、SHIP−/−マクロファージにおいては阻害しない。同様に、AQX−016Aは、SHIP+/+マスト細胞においてPKB、p38MAPKおよびERKのリン酸化を阻害するが、SHIP−/−マスト細胞においては阻害しない。同様のタンパク質ローディングが、PKBまたはGrb2に対する抗体のいずれかによる再ブロッティングによって確認される。AQX−016Aの、SHIPを発現しない非造血性の前立腺上皮LNCaP細胞においてPKB活性化を阻害する能力も審査する。ヒト前立腺ガン細胞系LNCaPは、PTEN発現の損失によるPKBの構成的活性化を提示する。LY294002は、PKBリン酸化を効率的に抑制するが、AQX−016Aは、60 μMまでの用量において効果はない。したがって、AQX−016Aは、SHIP発現造血細胞において、PIP3−調節細胞内シグナルトランスダクションイベントを阻害するが、SHIP−欠損造血細胞または非造血細胞においては阻害しない。
【実施例18】
【0180】
内毒血症マウスモデル:
6−8週齢の老C57Bl6マウス(ヒト疾患コア施設のVCHRI哺乳動物モデル、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア)に所定用量のAQX−016A、化合物100またはデキサメタゾンを投与した30分後に、2 mg/kgのLPS(大腸菌血清型 0111:B4、Sigma、オークビル、オンタリオ)をIP注射する。2時間後に血液を採取し、血漿TNFαをELISAにより測定する。結果は、3回の独立した実験の代表である(図7Dおよび図9)。
【0181】
AQX−016Aは、インビボにおいて炎症を阻害する:
AQX−016Aの、インビボにおいて炎症反応を阻害することによって保護を提供する能力をマウスモデルにおいて評価する。内毒素ショックのマウスモデルは、細菌性LPSの腹腔内(IP)注射および2時間後の血清TNFαレベルの測定を含む。AQX−016Aまたはステロイド系薬物をマウスに経口投与した30分後に、LPSチャレンジを行う。AQX−016Aは、血清TNFαレベルを低下させ、デキサメタゾンと同程度に低下させる(図9)。
【実施例19】
【0182】
マウス急性皮膚アナフィラキシーモデル:
マウスの剃毛した腹部に、アセトン中の25 μLの0.5% ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)(Sigma、オークビル、オンタリオ)を2日間連続して皮膚適用することにより、6−8週齢の老CD1マウス(ブリティッシュコロンビア大学動物施設、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア)をハプテンDNPで免疫感作する。24時間後、試験物質(10 μLの1:2 DMSO:MeOHに溶解したもの)を右耳に塗り、ビヒクルコントロールを左耳に塗る。薬物適用の30分後、両方の耳にDNFBを適用して、マスト細胞脱顆粒を誘発する。6 mmのパンチを耳から取り、続いて行う好中球ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の測定のために、ドライアイスで急速冷凍する。化合物100の、皮膚アナフィラキシーを阻害する能力を評価する。
【0183】
アナフィラキシーまたはアレルギー応答は、予め感作したマスト細胞のアレルゲン誘発性脱顆粒によって媒介される。マウス耳浮腫/皮膚アナフィラキシーモデルは、ハプテン化剤ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)によるマウスの予備感作を含む。1週間後に、マウスの耳にDNFBを塗布することによって、アレルギー反応を誘発する。一方の耳に試験物質を局所適用し、2つの耳の得られる耳浮腫または炎症を比較することによって、潜在的抗炎症性化合物の効力を試験する。図10Aに示すように、局所適用した化合物100は、ビヒクルコントロール処理耳と比べて、アレルゲン誘発性炎症を劇的に阻害する。AQX−016Aもまた、このモデルにおいて、DNFB誘発性炎症を阻害することができる。
【0184】
AQX−016Aが、マウスの剃毛した腹部に、アセトン中の25 μLの0.5%(DNFB)を2日間連続して皮膚適用することによってハプテンDNPに感作したCD1マウスにおいてマスト細胞脱顆粒を阻害することも示す(図10B)。最初にDNFBを適用した1週間後に、20 μCiのトリチウム化したチミジン([3H]−Tdr(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー)をIP注射する。[3H]−Tdrは、好中球などの、マウスの分裂細胞を素早く標識する(30)。24時間後、試験物質(10 μLの1:2 DMSO:MeOHに溶解したもの)を右耳に塗り、ビヒクルコントロールを左耳に塗る。薬物適用の30分後、両方の耳にDNFBを適用して、マスト細胞脱顆粒を誘発する。Solvable(Perkin Elmer−Packard、ウッドブリッジ、オンタリオ)に溶解するために1時間後に直径6mmのパンチを得、記載のとおりシンチレーション計数を行うことによって、得られる炎症細胞浸潤を定量する。次いで、試験物質の、マスト細胞脱顆粒を阻害する能力を、記載のとおり、試験(右)耳 vs コントロール(左)耳における、[3H]−Tdrの比率を計算することによって定量する(30)。耳実質細胞への[3H]−Tdrの基礎取り込みをコントロールするために、マウスの1つのグループには、左耳のみにDNFBを適用し、右耳は炎症を起こさないままにする。
【実施例20】
【0185】
SHIPΔC2突然変異体および単離C2ドメインの構築:
哺乳類発現ベクターpME18Sにおいて、標準的PCRビーズ法によって、His6タグ付SHIPΔC2ドメイン欠失突然変異体(725〜863残基を欠失)を作成する。N末端His6C2ドメインの構築もまた、EcoRIおよびNdeI制限部位を用いるpET28C細菌発現ベクターに挿入されたPCRによって行う。
【0186】
タンパク質脂質オーバーレイアッセイ:
多少の変更を加え、本質的に記載のとおり、タンパク質脂質オーバーレイ(PLO)アッセイを行う。凍結乾燥したホスファチジルイノシトール−3,4−ビスホスフェート diC16(PIP2、Echelon Biosciences、ソルトレークシティ、ユタ)をメタノールおよび水の2:1.8溶液にもどす。PVDF膜(Millipore、ミシサーガ、オンタリオ)をまずメタノールで1分間湿らせ、水で3 X 5分間洗浄し、TBST緩衝液(20 mM Tris pH 7.5、0.15 M NaCl(TBS)with 0.05% Tween 20)中で、23℃にて一夜緩やかに振とうする。処理した膜を風乾し、もどした脂質の希釈液を1 μl分注してスポットを付けて、膜スポット当たり所定量のPIP2を得る。膜を完全に乾燥し、ブロッキング緩衝液(3% BSA/TBS+0.05% NaN3)で23℃にて1時間ブロックする。精製した組換えC2ドメインをブロッキング緩衝液(5 μM 最終)で希釈し、4 μMの化合物100またはEtOHコントロールで23℃にて30分間処理した後、PIP2でスポットを付けた膜とともに一夜インキュベートする。膜をTBST緩衝液で10回、23℃にて50分間にわたって洗浄し、抗−His6マウスIgG(Qiagen、ミシサーガ、オンタリオ)とともに23℃にて1時間インキュベートする。膜を上述のっとり洗浄し、Alexa Fluor 660 抗−マウス・ヤギ抗−マウスIgG(Invitrogen、バーリントン、オンタリオ)とともに23℃にて1時間インキュベートする。洗浄後、Li−Cor Odysseyスキャナー(リンカーン、ネブラスカ)により、結合したタンパク質を検出し、定量する。
【0187】
SHIPは、酵素をアロステリックに活性化する:
アロステリックエフェクターを見つけるのは困難であるので、酵素のアロステリック調節は、主に理解不十分なままである。化合物100がSHIPを活性化する分子的メカニズムを、まず、そのホスファターゼ活性の古典的な酵素動態解析を行うことによって研究する。活性測定は、10−100 μMの基質濃度で行なう。各基質濃度における初期反応速度のプロットは、もし、SHIPが、慣例のミカエリス−メンテン型動態に従うならば、双曲線プロフィールを示すことが予測される。しかし、SHIPは、その最終産物によるアロステリック活性化を示唆する、S字型の反応動態を示す(図11A)。酵素反応へのSHIP産物PI−3,4−P2の添加は、化合物100と同程度まで野生型SHIP酵素を活性化する(図11B)。
【0188】
SHIPタンパク質は、そのホスファターゼドメインのカルボキシ末端に位置するC2ドメインを含む。C2ドメインは、Ca2+を結合するように働くプロテインキナーゼCファミリーにおいて最初記述されたが、その後、C2ドメインは、脂質などの種々のリガンドに結合することが分かっている他のタンパク質において同定されている。そのC2ドメインを欠損しているSHIP(ΔC2 SHIP)を製造する。図11Bに示すように、ΔC2SHIPは、野生型SHIPと同様に活性であるが、その活性は、PI−3,4−P2または化合物100のいずれの添加によっても増強することができない。このことは、C2ドメインが、SHIP活性のアロステリック活性化に必要であるかも知れないをこと、およびC2ドメインが、PI−3,4−P2および化合物100などのそのアロステリックアクチベーターのための結合部位であるかもしれないことを示唆する。
【実施例21】
【0189】
シンチレーション近接アッセイ:
GE Healthcare(ピスカタウェイ、ニュージャージー)製のトリチウムで化合物100を、42 Ci/mmoleの比放射能に放射標識する。銅キレート(His−Tag)YSi SPAシンチレーションビーズ(GE healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー)を、0.25% BSA/TBSで1.5 mg/mLに希釈し、組換えHis6タグ付タンパク質を所定の濃度で加える:野生型(1 pM)、ΔC2SHIP酵素(1 pM)またはC2ドメイン(10 nM)。タンパク質を23℃にて1時間結合させ、250 μgのビーズを96ウエルプレートの各ウエルに分注する。5 μCiの[3H]−化合物100を各ウエルに加え、プレートを緩やかに30分間振とうし、Wallac BetaPlateプレートシンチレーションカウンターで計数することによって、ビーズ関連放射能の量を定量する。
【0190】
単離した組換えHis6タグ付C2ドメインを発現させ、タンパク質脂質オーバーレイアッセイを用いて、そのPI−3,4−P2結合能力を測定する。精製C2ドメインをPI−3,4−P2でスポット付した膜片とともにインキュベートし、抗−His6抗体を用いて、結合したタンパク質を検出する。図11Cに示すように、C2ドメインは、PI−3,4−P2に結合し、この結合は、化合物100によって阻害され、通例の結合部位でC2ドメインと相互作用する化合物100およびPI−3,4−P2の両方に一致する。SPAビーズをC2ドメインまたはコントロールタンパク質(BSA)のいずれかでコーティングするシンチレーション近接アッセイ(SPAs)を用いて、C2ドメインを直接結合する化合物100を検証した後、[3H]−化合物100とともにインキュベートする。図11Dに示すように、C2ドメインは、[3H]−化合物100と相互作用しない。補足的研究において、[3H]−化合物100は野生型SHIPに結合するが、そのC2ドメインを欠損しているSHIPには結合しない(図11E)。同時に、これらのデータは、SHIPのC2ドメインに直接結合し、酵素の活性化をもたらす化合物100に一致する。
【実施例22】
【0191】
この経路を負に調節するホスファターゼの活性化を介してPI3Kシグナリングを阻害するための新規なパラダイムが提供される。造血細胞へのその限定された発現のために、SHIPは、免疫/造血障害特に良好な標的である。KnightおよびShokatに議論されているように、細胞内に存在するホスファターゼの比活性が、キナーゼインヒビターの効力に影響を及ぼすので、SHIPアゴニストは、PI3Kインヒビターの活性を増強し、PI3Kインヒビターの造血/免疫細胞コンパートメントへの組織標的化を促進するために用いることもできる。初期の毒性研究は、AQX−016Aおよび化合物100の両方が、良好な耐容性を示し、末梢血管細胞数または骨髄前駆細胞数に有意に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0192】
化合物100は、μM以下のEC50において効力を示し(図7C)、このことは、化合物100が、KnightおよびShokatによる計算に基づく的はずれ効果の可能性が低いことを示唆する。化合物100は、他のキナーゼおよびホスファターゼと比べて最小の的はずれ効果を有する(図12Aおよび12B)。化合物プロファイリング活性は、化合物100(最終濃度2 μM)に対する、SignalChem(リッチモンド、ブリティッシュコロンビア、カナダ;www.signalchem.com)製の100タンパク質キナーゼおよびホスファターゼ標的を用いて行う。50 μMのATPの存在下、30℃にて15分間タンパク質キナーゼアッセイを行う。基質としてpNPPを用いてタンパク質ホスファターゼ活性を測定し、37℃にて15分間行う。化合物100の存在下における酵素の活性を、ビヒクルコントロールにおける活性と比較し、ビヒクルコントロールにおいて見られる活性と比べての活性の変化%として表す。<25%の活性の変化は、有意とみなさない。化合物100によって影響を及ぼされた酵素を図12Bにおいて幅広のグラフでプロットする。
【実施例23】
【0193】
MM異種移植モデル:
マウスに、50 μLの成長培地および50 μLのマトリゲルベース膜マトリックス(Becton Dickenson;ベドフォード、マサチューセッツ)に懸濁した3 x 106個のルシフェラーゼ発現OPM2細胞を、2個所接種する。マウスの上部および下部側腹部に腫瘍を皮下注射し、2週間安定させる。2週間後、化合物100またはコントロールビヒクルを皮下オイル徐放性製剤にて、3日毎に50 mg/kgの用量で投与する。
【0194】
Xenogen IVIS 200で生物発光画像法を用いて腫瘍を測定する。マウスに、滅菌PBS中3.75 mg/mLのD−ルシフェリン200 μLの腹腔内注射を行う。次いで、イソフルオランでマウスを麻酔し、ルシフェリンの注射後15分で撮像する。Living Image(登録商標)を用いて、腫瘍サイズの定量を行う。結果を図13および14にグラフで示す。
【0195】
以上、本発明を理解の明瞭を目的として説明および実施例により若干詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく変更および改変をなし得ることは当業者には明らかであろう。本明細書において言及したすべての特許、特許出願および出願公報は参照のため本明細書に引用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):

式1
[式中、R1およびR2は独立して、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2OR1'、−CHO、−CO2Hおよび−CO2R2'から選ばれ;
R3およびR4は独立して、H、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2OR3'、−CHO、−CO2Hおよび−CO2R4'から選ばれ;
R1'、R2'、R3'およびR4'は独立して、非置換または1つ以上の置換基(OH、=O、SH、F、Br、Cl、I、NH2、−NHR1''、−N(R2'')2、NO2および−CO2H(ここで、R1''およびR2''は、直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基))で置換された直線状、分枝鎖または環状の飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキル基であり;
G1は、O−(C1−C10アルキル)およびHから選ばれ;
G2は、HまたはC1−C10アルキルであり;および
G3は、H、−OH、C1−C10アルキルおよびO−(C1−C10アルキル)から選ばれる]
で示される化合物およびその塩。
【請求項2】
R1およびR2の1つまたは両方が、メチル、エチル、−CH2OH、−CH2OR1'または−CH2OR3'から選ばれる請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R1におけるR1'、R2'、R3'および/またはR4'が、メチル、エチル、プロピルまたはブチルから選ばれる請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
R2におけるR1'、R2'、R3'および/またはR4'が、メチル、エチル、プロピルまたはブチルから選ばれる請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
R1が、メチルまたはエチルである請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
R2が、メチルまたはエチルである請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
R1がメチルである請求項1〜6のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
R2がメチルである請求項1〜7のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
式(2):

式2
[式中、G1は、O−(C1−C10アルキル)およびHから選ばれ;
G2は、HまたはC1−C10アルキルであり;および
G3は、H、−OH、C1−C10アルキルおよびO−(C1−C10アルキル)から選ばれる]
で示される化合物およびその塩。
【請求項10】
G1が、−O−メチルおよびHから選ばれ;G2が、Hまたはメチルであり;およびG3が、H、メチルおよびO−メチルから選ばれる請求項1〜9のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項11】
G1、G2およびG3が−O−メチルである請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項12】
G1、G2およびG3の少なくとも1つがHである請求項1〜11のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項13】
G3がメチルである請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項14】
G1、G2およびG3のすべてがHである請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物またはその塩。
【請求項15】
構造式:

を有する化合物。
【請求項16】
構造式:

を有する化合物。
【請求項17】
構造式:

を有する化合物。
【請求項18】
構造式:

を有する化合物。
【請求項19】
構造式:

を有する化合物。
【請求項20】
構造式:

を有する化合物。
【請求項21】
構造式:

を有する化合物。
【請求項22】
構造式:

を有する化合物。
【請求項23】
構造式:

を有する化合物。
【請求項24】
構造式:

を有する化合物。
【請求項25】
構造式:

を有する化合物。
【請求項26】
構造式:

を有する化合物。
【請求項27】
構造式:

を有する化合物。
【請求項28】
構造式:

を有する化合物。
【請求項29】
構造式:

を有する化合物。
【請求項30】
構造式:

を有する化合物。
【請求項31】
構造式:

を有する化合物。
【請求項32】
構造式:

を有する化合物。
【請求項33】
構造式:

を有する化合物。
【請求項34】
構造式:

を有する化合物。
【請求項35】
構造式:

を有する化合物。
【請求項36】
構造式:

を有する化合物。
【請求項37】
構造式:

を有する化合物。
【請求項38】
構造式:

を有する化合物。
【請求項39】
構造式:

を有する化合物。
【請求項40】
構造式:

を有する化合物。
【請求項41】
構造式:

を有する化合物。
【請求項42】
構造式:

を有する化合物。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか1つに記載の化合物またはその塩および医薬的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項44】
炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態の治療または予防のための請求項1〜42のいずれか1つに記載の化合物またはその塩、または請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
新生物性状態が、血液がんである請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
新生物性状態が、多発性骨髄腫である請求項44に記載の化合物。
【請求項47】
新生物性状態が、慢性骨髄性白血病である請求項44に記載の化合物。
【請求項48】
新生物性状態が、急性骨髄性白血病である請求項44に記載の化合物。
【請求項49】
免疫疾患が、自己免疫疾患である請求項44に記載の化合物。
【請求項50】
炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態の治療または予防のための請求項1〜42のいずれか1つに記載の化合物またはその塩の使用。
【請求項51】
炎症性、新生物性、造血もしくは免疫疾患または状態の治療または予防のための医薬の製造のための請求項1〜42のいずれか1つに記載の化合物またはその塩の使用。
【請求項52】
新生物性状態が、血液がんである請求項50または51に記載の使用。
【請求項53】
新生物性状態が、多発性骨髄腫である請求項50または51に記載の使用。
【請求項54】
新生物性状態が、慢性骨髄性白血病である請求項50または51に記載の使用。
【請求項55】
新生物性状態が、急性骨髄性白血病である請求項50または51に記載の使用。
【請求項56】
免疫疾患が、自己免疫疾患である請求項50または51に記載の使用。
【請求項57】
予防または治療を必要とする患者に有効量の請求項43に記載の医薬組成物を投与することを含む免疫、造血、炎症性または新生物性疾患または状態の予防または治療方法。
【請求項58】
新生物性状態が、血液がんである請求項57に記載の方法。
【請求項59】
新生物性状態が、多発性骨髄腫である請求項57に記載の方法。
【請求項60】
新生物性状態が、慢性骨髄性白血病である請求項57に記載の方法。
【請求項61】
新生物性状態が、急性骨髄性白血病である請求項57に記載の方法。
【請求項62】
免疫疾患が、自己免疫疾患である請求項57に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−541224(P2009−541224A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515680(P2009−515680)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001105
【国際公開番号】WO2007/147251
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(300066874)ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア (24)
【Fターム(参考)】