説明

SMC成形システムおよびSMC成形品の製造方法

【課題】SMCシート成形時にSMCシートの硬さを測定しなくても成形品の不良率を低減することができるSMC成形システムを提供する。
【解決手段】長尺のSMCシート20を間欠的に所定量送り出す送りロール11とSMCシート停止時のたわみ量を検出するたわみ量検出部12とを有する搬送装置1と、送り出されたSMCシート20を切断する切断装置2と、切断されたSMCシート30を成形するプレス装置3とを備えたSMC成形システムであって、前記たわみ量検出部12で検出されたたわみ量に基づいて、前記搬送装置1の前記送りロール11による前記SMCシート20の送り出し量、前記プレス装置3の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整する制御装置4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SMC成形システムおよびSMC成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂、充填材、硬化剤などを含む樹脂組成物とガラス繊維を上下2枚の離型フィルムで挟み込み、シート状にして搬送しつつ含浸装置で押圧含浸することによってSMCシートが製造される。このSMCシートは、巻取軸に円筒状に巻き取られて収納されるか、またはつづら折れ状にコンテナに収納される。巻取軸やコンテナから引き出されたSMCシートは、搬送装置で切断装置に搬送されて所定重量(長さ)に切断される。この切断したSMCシートを下金型に積み重ねて所望の投影面積(チャージパターン)にセットし、上金型を降下して上下金型でプレスすることにより成形品が得られる。
【0003】
成形品の製造上、SMCシートの硬さを把握することが重要である。下金型にセットされるSMCシートの硬さが変わればプレス時の流動性も変わり成形不良など生産性に影響するからである。SMCシートの硬さは硬さ測定器などを用いて正確に把握することができるが、そのためにSMCシートを所定の大きさに切断して硬さ測定を行うなど作業工程が増えるので生産性が低下してしまう。そこで、SMCシートを挟持する一対の送りロールを備え、少なくとも一方のロールはSMCシートの挟持方向に移動可能であり、その移動距離を検出してSMCシートの硬さを出力する搬送装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この搬送装置では、一対の送りロールの上下ロール間を通過するSMCシートに送りロールから一定の押圧力が加わるようになっている。上側のロールがSMCシートの挟持方向に移動可能である場合、通過するSMCシートが柔らかいほど送りロールの押圧力に対抗する力が弱く上側のロールは下方向に移動するため、この移動距離からSMCシートの硬さを把握することができる。このためSMCシート成形時にSMCシートを切断してその硬さを別途硬さ測定器などで測定しなくてもSMCシートを容易に把握できるので成形までの作業時間を短縮でき成形品の生産性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−5826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、送りロールのSMCシートに対する押圧力に比べてその押圧力に対するSMCシートの対抗する力が弱い場合にはその対抗する力を押圧力に反映させて送りロールの上側のロールを移動させることができない場合がある。そうなるとSMCシートの硬さを十分に把握することができず良好な成形品を得ることが難しくなる。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、SMCシート成形時にSMCシートの硬さを測定しなくても成形品の不良率を低減することができるSMC成形システムおよびSMC成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のSMC成形システムは、長尺のSMCシートを間欠的に所定量送り出す送りロールと前記SMCシート停止時のたわみ量を検出するたわみ量検出部とを有する搬送装置と、送り出されたSMCシートを切断する切断装置と、切断されたSMCシートを成形するプレス装置とを備えたSMC成形システムであって、前記たわみ量検出部で検出されたたわみ量に基づいて、前記搬送装置の前記送りロールによる前記SMCシートの送り出し量、前記プレス装置の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整する制御装置が設けられていることを特徴とする。
【0009】
このSMC成形システムにおいては、前記搬送装置には、前記SMCシートの搬送方向に所定間隔をおいて前側受けロールと後側受けロールとが設けられ、これら前側受けロールと後側受けロールとに前記SMCシートが架け渡されて前記送りロールにより搬送され、前記たわみ量検出部は、架け渡された前記SMCシートのたわみ量を検出することが好ましい。
【0010】
また、このSMC成形システムにおいては、前記搬送装置には、前記たわみ量検出部で検出されたたわみ量に基づいて前記SMCシートの硬さを出力する出力部が設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明のSMC成形品の製造方法は、間欠的に所定量送り出される長尺のSMCシートを切断し、その切断されたSMCシートをプレス成形するSMC成形品の製造方法であって、間欠的に送り出される前記SMCシートの停止時のたわみ量を検出し、このたわみ量に基づいて、前記SMCシートの送り出し量、前記SMCシートのプレス成形時の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SMCシート成形時にSMCシートの硬さを測定しなくても成形品の不良率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態であるSMC成形システムの概略図である。
【図2】(a)、(b)は、前側受けロールと後側受けロールとに架け渡されているSMCシートを示す模式図である。
【図3】(a)、(b)は、同一のSMCシートにおけるたわみ量の変動を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態であるSMC成形システムの概略図である。
【0016】
図1に示すように、つづら折れ状にコンテナ5に折り畳まれて収納された長尺のSMCシート20は、搬送装置1によって搬送され切断装置2に送り出されるようになっている。搬送装置1から送り出されたSMCシート20は切断装置2で切断される。切断されたSMCシート30は積み重ねられ、プレス装置3の下金型31に所望の投影面積(チャージパターン)にセットされ、プレス装置3の上金型32の降下により上下金型32,31でプレスされ、成形品が得られる。搬送装置1には制御装置4が電気的に接続されており、搬送装置1の作動が制御装置4によって制御されるようになっている。
【0017】
搬送装置1は、SMCシート20を挟持する一対のロールで構成される送りロール11とSMCシート20のたわみ量を検出するたわみ量検出部12とを有する。この送りロール11は回転駆動し、ロールの回転によりSMCシート20が搬送され、送り出される。送りロール11は制御装置4によって停止と作動を交互に繰り返す間欠運転するように制御されており、送りロール11の停止時間および作動時間も制御されている。
【0018】
搬送装置1には、SMCシート20の搬送方向に所定間隔をおいて前側受けロール13と後側受けロール14とが設けられている。図1では、前側受けロール13および後側受けロール14がSMCシート20の搬送方向において送りロール11の前段に設けられているが、後段に設けられていてもよい。また、こられ前側受けロール13および後側受けロール14にも制御装置4が電気的に接続されて回転駆動しロールの回転によりSMCシート20が搬送されるように制御されていてもよい。
【0019】
コンテナ5から引き出されたSMCシート20は、これら前側受けロール13と後側受けロール14とに架け渡されるようにして送りロール11によって搬送される。送りロール11の停止時、前側受けロール13と後側受けロール14とに架け渡されたSMCシート20は、図2に示すようにたわんだ状態になる。このたわんだ状態の態様はSMCシート20の硬さによって異なる。
【0020】
図2(a)はSMCシート20が硬い場合の態様であり、SMCシート20の剛性が高く自重による変形が小さいため、たわみ量Lが小さくなっている。一方、図2(b)はSMCシート20が柔らかい場合の態様である。この態様ではSMCシート20の剛性が小さく自重による変形が大きいため、たわみ量Lが大きくなっている。
【0021】
このようにSMCシート20のたわみ量Lは、SMCシート20の硬さと密接に関係している。したがって、SMCシート20の硬さとたわみ量Lとの関係を予め把握しておけば、SMCシート20の搬送時において、送りロール11停止時のSMCシート20のたわみ量Lをたわみ量検出部12で検出することによってそのSMCシート20の硬さを容易に把握することができる。
【0022】
SMCシート20の硬さとたわみ量Lとの関係は、例えば、次の方法によってSMCシート20の硬さとたわみ量Lとの対応データを収集しこれらの対応データから容易に把握することができる。すなわち、硬さ測定器などを用いて硬さを測定した既知の硬さを有するSMCシート20についてたわみ量Lを測定する。これを硬さの異なる複数のSMCシート20について行い、SMCシート20の硬さとそれに対応するSMCシート20のたわみ量Lのデータを収集する。
【0023】
SMCシート20のたわみ量Lを検出するたわみ量検出部12は、例えば、前側受けロール13と後側受けロール14との間においてたわんだ状態のSMCシート20の最下端の位置と最上端の位置との間の距離を定量的に検出できるものであれば特に制限されない。例えば、レーザ変計などに採用されるレーザ光を照射しその反射光を計測して距離を計測するなどの非接触式のものやダイヤルゲージなどのような接触式のものなど公知のものを採用することができる。
【0024】
本実施形態では、制御装置4で間欠運転が制御される送りロール11の停止時、切断装置2でSMCシート20を切断するとともに、前側受けロール13と後側受けロール14とに架け渡された状態のSMCシート20のたわみ量Lをたわみ量検出部12によって検出する。たわみ量L検出のために作業を中断する必要がなく作業時間が有効活用されるので作業効率がよい。
【0025】
制御装置4は、例えばメモリなどを備えたマイクロコンピュータなどで構成されており、本実施形態においてはさらにプレス装置3に電気的に接続されている。
【0026】
制御装置4は、搬送装置1のたわみ量検出部12で検出されたSMCシート20のたわみ量Lに基づいて、搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量の調整、プレス装置3の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整する。プレス装置3の加熱温度および金型締切速度を調整しない場合には制御装置4はプレス装置3に電気的に接続されていなくてもよい。
【0027】
制御装置4において、上述したSMCシート20の硬さとたわみ量Lとの対応データがメモリに記憶されている。さらに、SMCシート20の硬さに応じた、搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量、プレス装置3の金型温度および金型締切速度のうちいずれかに関するデータのほか、搬送装置1やプレス装置3の作動を制御するプログラムもメモリに記憶されている。そしてメモリに記憶されたプログラムがマイクロコンピュータなどで実行され、メモリに記憶されたデータに基づいて搬送装置1の送りロール11の間欠運転、プレス装置3の加熱温度、金型締切速度などが適宜制御される。
【0028】
ここでSMCシート20の硬さに応じた搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量に関するデータとは、SMCシート20の硬さとその硬さを有するSMCシート30の最適なチャージパターンのためのSMCシート20の送り出し量との対応関係の情報を有するデータのことをいう。そしてSMCシート20の硬さとその硬さを有するSMCシート30の最適なチャージパターンのためのSMCシート20の送り出し量との対応関係は、例えば下記のような情報に基づいて得られる。
【0029】
SMCシート20が硬いとプレス装置3の金型内におけるSMCシート30の流動性が小さく、SMCシート20が柔らかいとプレス装置3の金型内におけるSMCシート30の流動性が大きいという関係にある。SMCシート20の流動性が小さいとプレス装置3にセットされるSMCシート30の流動距離が小さくなるのでSMCシート30の投影面積が大きくなるように設定される。SMCシート20の流動性が大きいとプレス装置3にセットされるSMCシート30の流動距離が大きくなるのでSMCシート30の投影面積が小さくなるように設定される。そして搬送装置1の送りロール11の回転駆動の作動時間の長短を調整してSMCシート20の送り出し量を調整し、送り出されたSMCシート20を切断装置で切断することによって所望のチャージパターンになるSMCシート30が得られる。
【0030】
SMCシート20の硬さに応じたプレス装置3の金型温度に関するデータとは、SMCシート20の硬さとその硬さを有するSMCシート30成形時のプレス装置3の最適な金型温度との対応関係の情報を有するデータのことをいう。そしてSMCシート20の硬さとその硬さを有するSMCシート30成形時のプレス装置3の最適な金型温度との対応関係は、例えば下記のような情報に基づいて得られる。
【0031】
SMCシート20の硬さとプレス装置3の金型内におけるSMCシート30の流動性との関係は上述したとおりである。SMCシート20の流動性が小さいとプレス装置3にセットされるSMCシート30の流動距離が小さくなるのでSMCシート30の流動性が大きくなるようにプレス装置3の金型温度が高めに設定される。SMCシート20の流動性が大きいとプレス装置3にセットされるSMCシート30の流動距離が大きくなるのでSMCシート30の流動性が小さくなるようにプレス装置3の金型温度が低めに設定される。金型温度が高めに設定されていればSMCシート30に加えられる熱量が増え金型内のSMCシート30の流動性が大きくなる。逆に金型温度が低めに設定されていればSMCシート30に加えられる熱量が少なくなり金型内のSMCシート30の流動性が抑制される。
【0032】
また、SMCシート20の硬さに応じたプレス装置3の金型締切速度に関するデータとは、SMCシート20の硬さとその硬さを有するSMCシート30成形時のプレス装置3の最適な金型締切速度との対応関係の情報を有するデータのことをいう。SMCシート20の硬さとその硬さを有するSMCシート30成形時のプレス装置3の最適な金型締切速度との対応関係は、例えば下記のような情報に基づいて得られる。
【0033】
SMCシート20の硬さとプレス装置3の金型内におけるSMCシート30の流動性との関係は上述したとおりである。SMCシート20の流動性が小さいとプレス装置3にセットされるSMCシート30の流動距離が小さくなるのでSMCシート30の流動性が大きくなるようにプレス装置3の金型締切速度が遅めに設定される。SMCシート20の流動性が大きいとプレス装置3にセットされるSMCシート30の流動距離が大きくなるのでSMCシート30の流動性が小さくなるようにプレス装置3の金型締切速度が速めに設定される。金型締切速度が遅めに設定されていればSMCシート30に加えられる熱量が増え金型内のSMCシート30の流動性が大きくなる。逆に金型締切速度が速めに設定されていればSMCシート30に加えられる熱量が少なくなり金型内のSMCシート30の流動性が抑制される。
【0034】
本実施形態において制御装置4では、SMCシート20の硬さとたわみ量Lとの対応データに基づいて搬送装置1のたわみ量検出部12で検出したSMCシート20のたわみ量LからSMCシート20の硬さの情報を得る。
【0035】
そしてSMCシート20の硬さに応じた搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量、プレス装置3の金型温度、金型締切速度に関するデータに基づいてSMCシート20の送り出し量、プレス装置3の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整する。
【0036】
例えば、SMCシート20が硬い場合には、プレス装置3にセットされる、投影面積が大きいSMCシート30のチャージパターンを得るために搬送装置1の送りロール11の回転駆動の作動時間を長くしてSMCシート20の送り出し量が多くなるように調整する。またはプレス装置3の金型温度を高めに調整する。またはプレス装置3の金型締切速度を遅めに調整する。これら全てを調整することもできるし、いずれか2つを選択して調整することもできる。
【0037】
送りロール11によるSMCシート20の送り出し量の調整によって切断装置2に所定の長さのSMCシート20が送り出され、所定の長さに切断され、投影面積が大きいSMCシート30を得る。これによって、SMCシート30の成形時の未充填(欠肉)不良やカスレ不良の発生を防ぐことができ、成形品の不良率を低減することができる。また、プレス装置3の金型温度を高めに調整したり、金型締切速度を遅めに調整したりして金型内でのSMCシート30の流動性を高める。これによって、SMCシート30の成形時の未充填(欠肉)不良やカスレ不良の発生を防ぐことができ、成形品の不良率を低減することができる。
【0038】
一方、SMCシート20が軟らかい場合には、プレス装置3にセットされる、投影面積が小さいSMCシート30のチャージパターンを得るために搬送装置1の送りロール11の回転駆動の作動時間を短くしてSMCシート20の送り出し量が少なくなるように調整する。またはプレス装置3の金型温度を低めに調整する。またはプレス装置3の金型締切速度を速めに調整する。これら全てを調整することもできるし、いずれか2つを選択して調整することもできる。
【0039】
送りロール11によるSMCシート20の送り出し量の調整によって切断装置2に所定の長さのSMCシート20が送り出され、所定の長さに切断され、投影面積が小さいSMCシート30を得る。これによって、成形品表面のピンホール不良の発生を防ぐことができ、成形品の不良率を低減することができる。また、プレス装置3の金型温度を低めに調整したり、金型締切速度を速めに調整したりして金型内でのSMCシート30の流動性を抑制する。これによって、成形品表面のピンホール不良の発生を防ぐことができ、成形品の不良率を低減することができる。
【0040】
搬送装置1のたわみ量検出部12によるSMCシート20のたわみ量検出において、同じコンテナ5に収納される同一のSMCシート20であっても、SMCシート20表面の凹凸、折目など他の因子によりたわみ量Lが変動する場合がある。図3(a)は、同一のSMCシートにおけるたわみ量の変動を示したグラフである。縦軸はたわみ量を示し、横軸は間欠的に送り出される同一のSMCシートの停止時のたわみ量を逐次検出したときの時間軸を示している。実線は軟らかいSMCシートのたわみ量の変動を示したグラフであり、点線は硬いSMCシートのたわみ量の変動を示したグラフである。
【0041】
このように同一のSMCシートにおいて変動の大きなたわみ量の検出結果からSMCシートの硬さの情報を得ても、より正確な情報とはいえない場合がある。そこで、図3(b)に示すようにSMCシートのたわみ量を一定回数の移動平均処理し、この結果からSMCシートの硬さの情報を得ることによってより正確な情報を得ることができる。このような処理は例えば制御装置で行うことができる。
【0042】
さらに本実施形態では、制御装置4において得られるSMCシート20の硬さの情報を、モニタやプリンタなどの出力部15に出力されるようになっていてもよい。出力部15は、搬送装置1のたわみ量検出部12に電気的に接続されている。
【0043】
例えば、出力部15がモニタで構成されていれば、SMCシート20の硬さをデジタル表示することができる。出力部15にSMCシート20の硬さの情報が出力されれば、成形担当者はSMCシート20の硬さを容易に把握することができる。そして成形担当者は経験上得た知識に基づいて、制御装置4で制御されないSMCシート20の送り出し量、プレス装置3の金型温度および金型締切速度のいずれかを調整することができる。
【0044】
このように制御装置4および成形担当者によってSMCシート20の送り出し量、プレス装置3の金型温度および金型締切速度のいずれかを調整するので、より確実に成形品の不良率を低減することができる。
【0045】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0046】
<実施例1>
図1に示すSMC成形システムにおいてSMCシートを成形し、重量21kgの浴槽を成形品として得た。
【0047】
従来は、標準的な硬さを有する単位重量6kg/m、幅1mの長尺のSMCシートを長さ500mmに切断装置で切断し、これを7枚積層した後、プレス装置の下金型にセットして加熱加圧して成形していた。成形品の不良率は30%であった。この成形に用いられた標準的な硬さを有する長尺のSMCシートのたわみ量は100mmであった。また、成形時の金型締切速度の標準的な速度は、金型が完全に閉まるまでの上金型と下金型との間隔が0−30mmの間は、1mm/秒に設定されていた。
【0048】
本実施例では、搬送装置1のたわみ量検出部12において上記の標準的な硬さを有する長尺のSMCシート20のたわみ量を検出し、これを5回移動平均処理した。平均化したたわみ量に基づいて、搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量を従来の長さ500mmよりも長い600mmの長さになるように制御装置4で調整し、これを切断装置2で切断した。この切断したSMCシート30を7枚積層し、プレス装置3の下金型31にセットして加熱加圧して成形した。その成形時、平均化したたわみ量に基づいて、さらにプレス装置3の金型締切速度を従来の1mm/秒から0.7mm/秒に制御装置で調整した。
【0049】
なお、制御装置4には、SMCシート20の硬さとたわみ量との対応データが記憶されている。さらに、SMCシート20の硬さに応じた、搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量、プレス装置3の金型温度および金型締切速度のうちいずれかに関するデータも記憶されている。
【0050】
得られた成形品の不良率は20%であり、従来よりも不良率が低減することが確認できた。
【0051】
<実施例2>
実施例1で使用したSMCシート20が収納されているコンテナとは別のコンテナに収納されているSMCシート20を用いて、実施例1と同様にして成形した。
【0052】
本実施例では、平均化したたわみ量に基づいて、搬送装置1の送りロール11によるSMCシート20の送り出し量を従来の長さ500mmよりも短い400mmの長さになるように制御装置4で調整し、これを切断装置2で切断した。この切断したSMCシート30を7枚積層し、プレス装置3の下金型31にセットして加熱加圧して成形した。その成形時、平均化したたわみ量に基づいて、さらにプレス装置3の金型締切速度を従来の1mm/秒から1.3mm/秒に制御装置4で調整した。
【0053】
得られた成形品の不良率は20%であり、従来よりも不良率が低減することが確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 搬送装置
11 送りロール
12 たわみ量検出部
13 前側受けロール
14 後側受けロール
15 出力部
2 切断装置
3 プレス装置
31 下金型
32 上金型
4 制御装置
20,30 SMCシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のSMCシートを間欠的に所定量送り出す送りロールとSMCシート停止時のたわみ量を検出するたわみ量検出部とを有する搬送装置と、送り出されたSMCシートを切断する切断装置と、切断されたSMCシートを成形するプレス装置とを備えたSMC成形システムであって、前記たわみ量検出部で検出されたたわみ量に基づいて、前記搬送装置の前記送りロールによる前記SMCシートの送り出し量、前記プレス装置の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整する制御装置が設けられていることを特徴とするSMC成形システム。
【請求項2】
前記搬送装置には、前記SMCシートの搬送方向に所定間隔をおいて前側受けロールと後側受けロールとが設けられ、これら前側受けロールと後側受けロールとに前記SMCシートが架け渡されて前記送りロールにより搬送され、前記たわみ量検出部は、架け渡された前記SMCシートのたわみ量を検出することを特徴とする請求項1に記載のSMC成形システム。
【請求項3】
前記搬送装置には、前記たわみ量検出部で検出されたたわみ量に基づいて前記SMCシートの硬さを出力する出力部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のSMC成形システム。
【請求項4】
間欠的に所定量送り出される長尺のSMCシートを切断し、その切断されたSMCシートをプレス成形するSMC成形品の製造方法であって、間欠的に送り出される前記SMCシートの停止時のたわみ量を検出し、このたわみ量に基づいて、前記SMCシートの送り出し量、前記SMCシートのプレス成形時の加熱温度および金型締切速度のうち少なくともいずれかを調整することを特徴とするSMC成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111084(P2012−111084A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260483(P2010−260483)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】