説明

Si−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法及びデバイス

【課題】材料接合の際に、熱による局所的な変質や変形等の欠陥を生じさせず、かつ接合層が発光性、受光性など電気的あるいは光学的機能性を有するような、新規接合法を確立する。
【解決手段】波長190nm以上266nm未満あるいは波長266nm以上の紫外光により、Si−O−Si結合を含む化合物を光化学的に白色発光層あるいは炭素層に改質する過程において、所望の被接合材料を接触させておくことにより、非熱的に材料を接合させる。かつ、それぞれの接合層(白色発光層及び炭素層)が、電気的あるいは光学的機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の接合法に係り、とくにSi−O−Si結合を含む化合物に、所望の被接合材料を接触させ、その界面に波長190nm以上266nm未満、あるいは波長266nm以上の光を照射することにより、熱による材料の変質、変形が皆無な非熱的接合を可能としたSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法に関する。また、前記光化学接合法により接合された前記Si−O−Si結合を含む化合物と前記被接合材料との界面が発光層あるいは炭素層として機能するデバイスに関する。本発明は、光回路やマイクロ分析チップ等のマイクロ・ナノデバイス製作へ適用可能となる等、その用途は電気、電子のみならずあらゆる分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
溶接とは一般に、2つ以上の金属部品を局所的に加熱溶融させることにより冶金的に接合させることをいう。接合強度が強く、材料の形状や材質に関する制限が少ない等の多くの利点がある。従って、金属のみならず、ガラスやプラスチックにも適用されている接合方法である。しかし、熱による局所的な変質や変形等が生じる欠点があり、材料がガラスやプラスチックの場合や、さらには溶接スケールがミクロン領域と微小となる場合には、前記欠点がデバイス製作において致命的となる場合が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
材料接合の際に、熱による局所的な変質や変形等の欠陥を生じさせず、かつ接合層が発光性、受光性など電気的あるいは光学的機能性を有するような、新規接合法の確立を課題とする。
【0004】
そこで、本発明は、上記の点に鑑み、熱による材料の変質、変形が皆無な非熱的接合を可能とし、かつ接合層が機能性を有するSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法及びデバイスを提供することを目的とする。
【0005】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、被接合材料を接触させ、前記化合物と前記被接合材料との界面に波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0007】
本発明の第2の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、被接合材料を接触させ、前記化合物と前記被接合材料との界面に波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0008】
本発明の第3の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製板を例とする板状透明材料を接触させ、前記化合物と前記板状透明材料との界面に、前記板状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0009】
本発明の第4の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製角柱を例とする多角柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記多角柱状透明材料との界面に、前記多角柱状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0010】
本発明の第5の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製光ファイバーを例とする円柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記円柱状透明材料との界面に、前記円柱状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0011】
本発明の第6の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製微小球を例とする球状透明材料を接触させ、前記化合物と前記球状透明材料との界面に、前記球状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0012】
本発明の第7の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製レンズを例とするレンズ状透明材料を接触させ、前記化合物と前記レンズ状透明材料との界面に、前記レンズ状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0013】
本発明の第8の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製中空ファイバーを例とする中空透明材料を接触させ、前記化合物と前記中空透明材料との界面に、前記中空透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴としている。
【0014】
本発明の第9の態様に係るデバイスは、第1、3、4、5、6、7又は8の態様の光化学接合法により接合されたSi−O−Si結合を含む化合物と被接合材料との界面が、発光層として機能することを特徴としている。
【0015】
本発明の第10の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製板を例とする板状透明材料を接触させ、前記化合物と前記板状透明材料との界面に、前記板状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0016】
本発明の第11の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製角柱を例とする多角柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記多角柱状透明材料との界面に、前記多角柱状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0017】
本発明の第12の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製光ファイバーを例とする円柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記円柱状透明材料との界面に、前記円柱状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0018】
本発明の第13の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製微小球を例とする球状透明材料を接触させ、前記化合物と前記球状透明材料との界面に、前記球状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0019】
本発明の第14の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製レンズを例とするレンズ状透明材料を接触させ、前記化合物と前記レンズ状透明材料との界面に、前記レンズ状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0020】
本発明の第15の態様に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法は、Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製中空ファイバーを例とする中空透明材料を接触させ、前記化合物と前記中空透明材料との界面に、前記中空透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴としている。
【0021】
本発明の第16の態様に係るデバイスは、第2、10、11、12、13、14又は15の態様の光化学接合法により接合されたSi−O−Si結合を含む化合物と被接合材料との界面が、炭素層として機能することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱による局所的な変質や変形等の欠陥を材料に生じさせず、かつ接合層が発光性、受光性など電気的あるいは光学的機能性を有するような、新規光化学接合法が確立でき、発光素子や受光素子など光部品をチップ上に高度に集積化できる等、光回路製作のための必要不可欠な技術となる。また本発明は、これら光エレクトロニクスの分野にとどまらず、マイクロ分析チップやその他マイクロ・ナノデバイス製作技術等、今後接合技術を利用して発展するデバイス製作のあらゆる分野に多大に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、Si−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法及びデバイスの実施の形態を図面に従って説明する。
【0024】
図1(A)は本発明の第1の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製微小球を例とする球状透明材料2を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と球状透明材料2との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び球状透明材料2を通して波長190nm以上266nm未満の光L1を照射する。このとき、波長190nm以上266nm未満の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての球状透明材料2とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合され、接合層としてSiO(但し、X<2)が得られる。この接合層は、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層としても機能する。
【0025】
波長190nm以上266nm未満の光L1の照射には、例えばレーザー光の波長193nmのArFエキシマレーザーを用いることができ、光L1の照射は大気中で行えばよい。熱による局所的な変質や変形等の欠陥を材料に生じさせないために、光源がArFエキシマレーザーの場合、レーザー光照射部分でのエネルギー密度(フルエンス)は100mJ/cm未満が望ましい。球状透明材料2の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0026】
図1(B)は本発明の第2の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製光ファイバーを例とする円柱状透明材料5を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と円柱状透明材料5との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び円柱状透明材料5を通して波長190nm以上266nm未満の光L1を照射する。このとき、波長190nm以上266nm未満の光照射によって、固体状シリコーン1と被接合材料としての円柱状透明材料5とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合され、接合層としてSiO(但し、X<2)が得られる。この接合層は、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層としても機能する。
【0027】
円柱状透明材料5の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0028】
図1(C)は本発明の第3の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製中空ファイバーを例とする中空透明材料6を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と中空透明材料6との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び中空透明材料6を通して波長190nm以上266nm未満の光L1を照射する。このとき、波長190nm以上266nm未満の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての中空透明材料6とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合され、接合層としてSiO(但し、X<2)が得られる。この接合層は、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層としても機能する。
【0029】
中空透明材料6の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0030】
図1(D)は本発明の第4の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製板を例とする板状透明材料7を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と板状透明材料7との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び板状透明材料7を通して波長190nm以上266nm未満の光L1を照射する。このとき、波長190nm以上266nm未満の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての板状透明材料7とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合され、接合層としてSiO(但し、X<2)が得られる。この接合層は、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層としても機能する。
【0031】
板状透明材料7の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0032】
図1(E)は本発明の第5の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製角柱を例とする多角柱状透明材料8を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と多角柱状透明材料8との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び多角柱状透明材料8を通して波長190nm以上266nm未満の光L1を照射する。このとき、波長190nm以上266nm未満の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての多角柱状透明材料8とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合され、接合層としてSiO(但し、X<2)が得られる。この接合層は、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層としても機能する。
【0033】
多角柱状透明材料8の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0034】
図1(F)は本発明の第6の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製レンズを例とするレンズ状透明材料9を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1とレンズ状透明材料9との界面(接触面)に、マスク3の隙間及びレンズ状透明材料9を通して波長190nm以上266nm未満の光L1を照射する。このとき、波長190nm以上266nm未満の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としてのレンズ状透明材料9とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合され、接合層としてSiO(但し、X<2)が得られる。この接合層は、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層としても機能する。
【0035】
レンズ状透明材料9の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0036】
これらの第1乃至第6の実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0037】
(1) 波長190nm以上266nm未満の光照射により、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1と被接合材料とが光化学接合される。このとき、光L1の照射エネルギー密度を適切値に保つことで、熱による局所的な変質や変形等の欠陥を材料に生じさせずに光化学接合が可能である。
【0038】
(2) 前記光化学接合法により接合された固体状シリコーン1と被接合材料との界面に形成された接合層が、白色のフォトルミネセンスを示す白色発光層として機能するデバイスを得ることができる。
【0039】
図2(A)は本発明の第7の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長266nm以上の紫外光(波長266nm以上400nm以下の光)を透過させるシリカガラス製微小球を例とする球状透明材料2を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と球状透明材料2との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び球状透明材料2を通して波長266nm以上の紫外光L2を照射する。このとき、波長266nm以上の紫外光の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての球状透明材料2とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合される。接合層としては炭素層が得られる。この炭素層は、受光性を示し、光入射により電気を発生する。
【0040】
波長266nm以上の紫外光の光L2の照射には、例えばNd:YAGレーザーの第4高調波(波長266nm)を用いることができ、光L2の照射は大気中で行えばよい。熱による局所的な変質や変形等の欠陥を材料に生じさせないために、光源がYAGレーザーの第4高調波(波長266nm)の場合、レーザー光照射部分でのエネルギー密度(フルエンス)は200mJ/cm未満が望ましい。球状透明材料2の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0041】
図2(B)は本発明の第8の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製光ファイバーを例とする円柱状透明材料5を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と円柱状透明材料5との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び円柱状透明材料5を通して波長266nm以上の紫外光L2を照射する。このとき、波長266nm以上の紫外光の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての円柱状透明材料5とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合される。接合層としては炭素層が得られる。この炭素層は、受光性を示し、光入射により電気を発生する。
【0042】
円柱状透明材料5の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0043】
図2(C)は本発明の第9の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製中空ファイバーを例とする中空透明材料6を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と中空透明材料6との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び中空透明材料6を通して波長266nm以上の紫外光L2を照射する。このとき、波長266nm以上の紫外光の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての中空透明材料6とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合される。接合層としては炭素層が得られる。この炭素層は、受光性を示し、光入射により電気を発生する。
【0044】
中空透明材料6の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0045】
図2(D)は本発明の第10の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製板を例とする板状透明材料7を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と板状透明材料7との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び板状透明材料7を通して波長266nm以上の紫外光L2を照射する。このとき、波長266nm以上の紫外光の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての板状透明材料7とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合される。接合層としては炭素層が得られる。この炭素層は、受光性を示し、光入射により電気を発生する。
【0046】
板状透明材料7の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0047】
図2(E)は本発明の第11の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製角柱を例とする多角柱状透明材料8を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1と多角柱状透明材料8との界面(接触面)に、マスク3の隙間及び多角柱状透明材料8を通して波長266nm以上の紫外光L2を照射する。このとき、波長266nm以上の紫外光の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としての多角柱状透明材料8とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合される。接合層としては炭素層が得られる。この炭素層は、受光性を示し、光入射により電気を発生する。
【0048】
多角柱状透明材料8の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0049】
図2(F)は本発明の第12の実施の形態に用いる実験の装置概略であって、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製レンズを例とするレンズ状透明材料9を被接合材料として接触させ、固体状シリコーン1とレンズ状透明材料9との界面(接触面)に、マスク3の隙間及びレンズ状透明材料9を通して波長266nm以上の紫外光L2を照射する。このとき、波長266nm以上の紫外光の光照射により、固体状シリコーン1と被接合材料としてのレンズ状透明材料9とが両者の界面に生じた光化学接合層により光化学接合される。接合層としては炭素層が得られる。この炭素層は、受光性を示し、光入射により電気を発生する。
【0050】
レンズ状透明材料9の材料としては、シリカガラスの他に、石英、サファイア、あるいはプラスチック等がある。
【0051】
これらの第7乃至第12の実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0052】
(1) 波長266nm以上の紫外光L2の光照射により、Si−O−Si結合を含む化合物としての固体状シリコーン1と被接合材料とが光化学接合される。このとき、光L2の照射エネルギー密度を適切値に保つことで、熱による局所的な変質や変形等の欠陥を材料に生じさせずに光化学接合が可能である。
【0053】
(2) 前記光化学接合法により接合された固体状シリコーン1と被接合材料との界面に形成された接合層が、受光性を示す炭素層として機能するデバイスを得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法を実施例で詳述する。
【0055】
図1(A)の実験概略構成において、レーザー光源として、レーザー光の波長193nmのArFレーザーを用いた。レーザー光照射部分でのエネルギー密度(フルエンス)は、約10〜30mJ/cm/pulse一定とした。また、パルス繰り返し周波数は10Hz一定とした。被接合材料となる球状透明材料2にはシリカガラス製微小球(直径2.5μm)を用い、固体状シリコーン1としてシリコーンゴム(厚さ2mm)を用い、シリカガラス製微小球をシリコーンゴム上に接触させた。レーザー光照射実験は大気中で行った。
【0056】
図3は、微小球の接合率(レーザー光照射前後の微小球の残留数割合)とレーザー光照射時間との関係を示している。フルエンス20mJ/cmのとき、60秒の照射を行うと接合率は1、つまりほぼ100%の微小球が接合されることがわかった。
【0057】
図4は、フルエンス20mJ/cm、照射時間をそれぞれ10秒(上段に図示)及び300秒(下段に図示)とした場合の、エタノールでの超音波クリーニング前後((a)クリーニング前、(b)クリーニング後)の試料表面の光学顕微鏡写真である。クリーニング前においてはシリコーンゴム上の30μm角領域にシリカガラス微小球が2次元的に整列されている。図中下段に示す300秒照射後は微小球のほとんどが強く接合されていることがわかる。
【0058】
試料の赤外吸収スペクトルを測定すると、ArFレーザーで改質されたシリコーン表面は、CH基の開裂とそれに伴う化学結合状態の変化が認められ、SiO(但し、X<2)層が得られた。このような光化学的な表面改質が、微小球接合の機構に寄与しているものと考えられる。
【0059】
ArFレーザー光をより長い時間照射すると、微小球の接合は強く維持したまま、微小球下の接合層が白色のフォトルミネセンスを示すことが認められた。図5は、照射時間を30分とし、その後試料(シリコーンゴム上の30μm角領域にシリカガラス微小球が2次元的に整列されている)に別の紫外レーザー光を照射したときの写真である。図中、シリコーンゴム上に穴あき金属円板のマスクが置かれ、マスクの各穴の内側において多数の微小球とシリコーンゴムとの界面が接合層となって光っている。このように、ArFレーザーで改質された微小接合領域から、強い白色のフォトルミネセンスが確認できた。
【0060】
ArFレーザーに代えて、図2(A)のようにNd:YAGレーザーの第4高調波(波長266nm)を用いると、光化学接合層となる改質層は炭素となることがラマンスペクトル測定よりわかった(照射条件はArFレーザー光と同様にした)。そして、シリコーンゴムとシリカガラス微小球とが光化学接合されることが判明した。
【0061】
以上本発明の実施の形態及び実施例について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。以下、変形例について触れる。
【0062】
実施の形態における光L1,光L2は所望の波長、強度が得られればよく、レーザー光に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法及びデバイスの実施の形態で、波長190nm以上266nm未満の光を照射するものあって、(A)は第1の実施の形態、(B)は第2の実施の形態、(C)は第3の実施の形態、(D)は第4の実施の形態、(E)は第5の実施の形態、(F)は第6の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係るSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法及びデバイスの実施の形態で、波長266nm以上の紫外光を照射するものあって、(A)は第7の実施の形態、(B)は第8の実施の形態、(C)は第9の実施の形態、(D)は第10の実施の形態、(E)は第11の実施の形態、(F)は第12の実施の形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施例において、ArFレーザー光照射時間とシリカガラス微小球の接合率との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例において、ArFレーザー光照射後、エタノール超音波クリーニング前後の試料(シリコーンゴム上の30μm角領域にシリカガラス微小球が2次元的に整列されている)表面の光学顕微鏡写真図である。
【図5】本発明の実施例において、ArFレーザー光照射後、試料(シリコーンゴム上の30μm角領域にシリカガラス微小球が2次元的に整列されている)に別の紫外レーザ光を照射することにより、接合層が白色のフォトルミネセンスを示しているときの写真図である。
【符号の説明】
【0064】
1 固体状シリコーン
2 球状透明材料
3 マスク
5 円柱状透明材料
6 中空透明材料
7 板状透明材料
8 多角柱状透明材料
9 レンズ状透明材料
Ll 波長190nm以上266nm未満の光
L2 波長266nm以上の紫外光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−O−Si結合を含む化合物に、被接合材料を接触させ、前記化合物と前記被接合材料との界面に波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項2】
Si−O−Si結合を含む化合物に、被接合材料を接触させ、前記化合物と前記被接合材料との界面に波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項3】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製板を例とする板状透明材料を接触させ、前記化合物と前記板状透明材料との界面に、前記板状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項4】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製角柱を例とする多角柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記多角柱状透明材料との界面に、前記多角柱状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項5】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製光ファイバーを例とする円柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記円柱状透明材料との界面に、前記円柱状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項6】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製微小球を例とする球状透明材料を接触させ、前記化合物と前記球状透明材料との界面に、前記球状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項7】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製レンズを例とするレンズ状透明材料を接触させ、前記化合物と前記レンズ状透明材料との界面に、前記レンズ状透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項8】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長190nm以上266nm未満の光を透過させるシリカガラス製中空ファイバーを例とする中空透明材料を接触させ、前記化合物と前記中空透明材料との界面に、前記中空透明材料を通して波長190nm以上266nm未満の光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項9】
請求項1、3、4、5、6、7又は8記載の光化学接合法により接合されたSi−O−Si結合を含む化合物と被接合材料との界面が、発光層として機能することを特徴とするデバイス。
【請求項10】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製板を例とする板状透明材料を接触させ、前記化合物と前記板状透明材料との界面に、前記板状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項11】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製角柱を例とする多角柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記多角柱状透明材料との界面に、前記多角柱状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項12】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製光ファイバーを例とする円柱状透明材料を接触させ、前記化合物と前記円柱状透明材料との界面に、前記円柱状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項13】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製微小球を例とする球状透明材料を接触させ、前記化合物と前記球状透明材料との界面に、前記球状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項14】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製レンズを例とするレンズ状透明材料を接触させ、前記化合物と前記レンズ状透明材料との界面に、前記レンズ状透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項15】
Si−O−Si結合を含む化合物に、波長266nm以上の紫外光を透過させるシリカガラス製中空ファイバーを例とする中空透明材料を接触させ、前記化合物と前記中空透明材料との界面に、前記中空透明材料を通して波長266nm以上の紫外光を照射することを特徴とするSi−O−Si結合を含む化合物を用いた光化学接合法。
【請求項16】
請求項2、10、11、12、13、14又は15記載の光化学接合法により接合されたSi−O−Si結合を含む化合物と被接合材料との界面が、炭素層として機能することを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59029(P2010−59029A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228756(P2008−228756)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】