説明

Sykキナーゼに対する活性を有する置換ピリジン

本発明は、置換ピリジン、それらの調製のための方法、ならびにマスト細胞が関連する状態の処置および/または予防におけるそれらの使用のための方法に関する。例えば、1つの実施形態では、本発明により、自己免疫疾患および/または自己免疫疾患に関連する1つ以上の症状を処置または予防する方法であって、自己免疫疾患に罹っているかまたは自己免疫疾患を発病させる恐れのある被験体にピリジン化合物を投与する工程を包含する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の引用)
本出願は、2004年10月29日出願の出願第60/623,652号についての米国特許法第119条(e)による利益を請求しており、その内容が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(2.発明の分野)
本発明は、置換ピリジン化合物、それらの化合物を含む薬学的組成物、それらの化合物を作製する中間体および合成方法、ならびにそれらの化合物および組成物を種々の状況、例えば、自己免疫疾患および/もしくは自己免疫疾患と関連する症状の処置または予防において使用する方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
(3.発明の背景)
Fcレセプター(例えば、IgEに対する高親和性レセプター(FcεRI)および/またはIgGに対する高親和性レセプター(FcγRI))の架橋は、マスト細胞、好塩基性細胞および他の免疫細胞中のシグナル伝達カスケードを活性化し、数多くの有害事象の原因である化学メディエータの放出をもたらす。例えば、そのような架橋は、I型(即時型)アナフィラキシー過敏性応答の予め形成されたメディエータ(例えば、ヒスタミン)の顆粒中の保管部位からの脱顆粒による放出をもたらす。そのような架橋はまた、炎症応答に重要な役割を果たす他のメディエータ(ロイコトリエン、プロスタグランジン、および血小板活性化因子(PAF)を含む)の合成および放出をもたらす。Fcレセプターを架橋すると合成され、放出されるさらなるメディエータとしては、サイトカインおよび一酸化窒素が挙げられる。
【0004】
Fcレセプター(例えば、FcεRIおよび/またはFcγRI)を架橋することによって活性化されるシグナル伝達カスケード(単数または複数)は、数多くの細胞タンパク質を含む。最も重要な細胞内シグナル伝達物質には、チロシンキナーゼがある。FcεRIおよび/またはFcγRIレセプターの架橋と関連するシグナル伝達経路ならびに他のシグナル伝達カスケードに関係する重要なチロシンキナーゼは、Sykキナーゼである(検討には、非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】Valent et al.、Intl.J.Hematol.、2002年、75(4):257−362
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FcεRIおよびFcγRIレセプターの架橋の結果として放出されるメディエータが、数多くの有害事象の発現の原因であるか、またはそれらの発現に重要な役割を果たすので、それらメディエータの放出の原因であるシグナル伝達カスケード(単数または複数)を阻害し得る化合物が利用可能であることは、非常に望ましい。さらに、これらおよび他のレセプターシグナル伝達カスケード(単数または複数)に対してSykキナーゼが果たす重大な役割により、Sykキナーゼを阻害し得る化合物が利用可能であることは、非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(4.発明の簡単な説明)
1つの局面において、本発明は、下記により詳細に検討されるように多様な生物活性を有する新規の置換ピリジン化合物を提供する。これらの化合物は、一般的に、以下の化学構造(I):
【0007】
【化6】

を有する置換ピリジン(その薬学的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物、およびN−オキシドを含む)を含み、ここで:
Yは、−OH、−SH、−CN−、−C(O)H、−NO、ハロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、低級アルキル、置換低級アルキル、低級へテロアルキル、置換低級へテロアルキル、低級ハロアルキル、モノハロメチル、ジハロメチル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、置換低級アルキルチオ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、メトキシ、置換メトキシ、低級へテロアルコキシ、置換低級へテロアルコキシ、低級ハロアルコキシ、モノハロメトキシ、ジハロメトキシ、トリハロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、置換低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、置換低級アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、置換アリールオキシカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニル、置換アリールアルコキシカルボニル、カルバメート、置換カルバメート、カルバモイル、置換カルバモイル、チオカルバモイル、置換チオカルバモイル、尿素、置換尿素、チオ尿素、置換チオ尿素、スルファモイル、置換スルファモイル、シクロアルキルイミド、置換シクロアルキルイミド、イソインドール−1,3−ジオン、置換イソインドール−1,3−ジオン、フタルイミド、および置換フタルイミドであり;
pは、0、1、または2であり;
qは、1および6を含む1〜6の整数であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
は、アルキル、アリール、またはプロ基であり;そして
Aは、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリール、または置換アリールである。
【0008】
1つの実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドである。
【0009】
別の実施形態において、ピリジン化合物は、
【0010】
【化7】

ではない。
【0011】
別の局面において、本発明は、ピリジン化合物のプロドラッグを提供する。そのようなプロドラッグは、それらのプロドラッグ形態で活性であり得るか、または生理学的条件もしくは他の使用条件下において活性な薬物形態へ転換されるまで不活性であり得る。本発明のプロドラッグにおいて、ピリジン化合物の1つ以上の官能基が、プロ部分(promoiety)に含まれ、このプロ部分は、典型的には、加水分解、酵素による開裂、または一部の他の開裂機序によって使用条件下で分子から開裂して、それらの官能基を生ずる。例えば、第一級アミノ基または第二級アミノ基は、アミドプロ部分に含まれ得、このアミドプロ部分は、使用条件下で開裂して、その第一級アミノ基または第二級アミノ基を生ずる。したがって、本発明のプロドラッグは、「プロ基」と呼ばれ、ピリジン化合物の1つ以上の官能基を遮蔽する特殊な種類の保護基を含み、この保護基は、使用条件下で開裂して、活性なピリジン薬物化合物を生ずる。プロ部分への包含のためにプロ基で遮蔽され得るピリジン化合物中の官能基としては、これらに限定されないが、アミン(第一級および第二級)、ヒドロキシル、スルファニル(チオール)、カルボキシル、カルボニル、フェノール、カテコール、ジオール、アルキン、ホスフェートなどが挙げられる。そのような官能基を遮蔽して、所望の条件下において開裂し得るプロ部分を生ずるのに適した種々のプロ基は、当該技術分野において公知である。これらのプロ基は全て、単独でかまたは組み合せて、本発明のプロドラッグに含まれ得る。本発明のプロドラッグに含まれ得る第一級アミン基または第二級アミン基を生ずるプロ基の具体例としては、これらに限定されないが、アミド、尿素、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスフォリル、およびスルフェニルが挙げられる。本発明のプロドラッグに含まれ得るスルファニル基を生ずるプロ部分の具体例としては、これらに限定されないが、チオエーテル、例えば、S−メチル誘導体(モノチオアセタール、ジチオアセタール、オキシチオアセタール、アミノチオアセタール)、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボネート、チオ尿素、非対称ジスルフィドなどが挙げられる。開裂して本発明のプロドラッグに含まれ得るヒドロキシル基を生ずるプロ部分の具体例としては、これらに限定されないが、スルホネート、エステルおよびカーボネートが挙げられる。本発明のプロドラッグに含まれ得るカルボキシル基を生ずるプロ部分の具体例としては、これらに限定されないが、エステル(シリルエステル、オキサミド酸エステル、およびチオエステルを含む)、アミド、およびヒドラジドが挙げられる。
【0012】
別の局面において、本発明は、1種以上の本発明の化合物および/もしくはプロドラッグ、および適切なキャリア、賦形剤または希釈剤を含む組成物を提供する。キャリア、賦形剤または希釈剤の正確な種類は、その組成物に対する所望の使用に依存し、「家畜への使用に適しているまたは受容可能である」から「ヒトへの使用に適しているまたは受容可能である」の範囲に及び得る。
【0013】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書中で記載されるように、本発明のピリジン化合物およびプロドラッグ(それらの塩、水和物、溶媒和物、およびN−オキシドを含む)を合成するのに有用な中間体であって、ここでY、p、q、XおよびAが、構造式(I)について先に既定されたとおりである、中間体を提供する。
【0014】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書中に記載されるように、本発明のピリジン化合物およびプロドラッグ(それらの塩、水和物、溶媒和物、およびN−オキシドを含む)を合成する方法であって、ここでY、p、q、XおよびAが、構造式(I)について先に既定されたとおりである、方法を提供する。
【0015】
本発明のピリジン化合物は、免疫細胞、例えば、マスト細胞、好塩基性細胞、好中性細胞および/または好酸性細胞の脱顆粒の強力なインヒビターである。したがって、さらに別の局面において、本発明は、そのような細胞の脱顆粒を調節、特に阻害する方法を提供する。この方法は、一般的に細胞を、この細胞の脱顆粒を調節または阻害するのに有効な量の本発明のピリジン化合物もしくはプロドラッグ、またはそれらの受容可能な塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよび/もしくは組成物と接触させる工程を包含する。この方法は、インビトロまたはインビボの状況において、細胞の脱顆粒によって特徴付けられる疾患、細胞の脱顆粒によって引き起こされる疾患、または細胞の脱顆粒と関連する疾患の処置もしくは予防への治療的アプローチとして実施され得る。
【0016】
いかなる作動の理論によっても縛られることを意図していないが、ピリジン化合物が、少なくとも部分的に、IgEに対する高親和性レセプター(「FcεRI」)および/またはIgGに対する高親和性レセプター(「FcγRI」)の架橋によって開始されるシグナル伝達カスケード(単数または複数)を遮断または阻害することにより、それらの脱顆粒阻害効果を発揮することを、生化学データは裏付けている。実際、ピリジン化合物は、FcεRI媒介性およびFcγRI媒介性脱顆粒の両方の強力なインヒビターである。したがって、ピリジン化合物を使用して、そのようなFcεRIおよび/またはFcγRIレセプターを発現する任意の細胞種(これらに限定されないが、マクロファージ、マスト細胞、好塩基性細胞、好中性細胞および/または好酸性細胞を含む)において、これらのFcレセプターシグナル伝達カスケードを阻害し得る。
【0017】
これらの方法はまた、そのようなFcレセプターシグナル伝達カスケード(単数または複数)を活性化する結果として生ずる下流プロセスの調節、特に阻害を可能にする。そのような下流プロセスとしては、これらに限定されないが、FcεRI媒介性および/もしくはFcγRI媒介性脱顆粒、サイトカイン産生、ならびに/または脂質メディエータ(例えば、ロイコトリエンおよびプロスタグランジン)の産生および/もしくは放出が挙げられる、この方法は、一般的に、Fcレセプターを発現する細胞(例えば、上記で検討された細胞種のうちの1つ)をFcレセプターシグナル伝達カスケードおよび/もしくはこのシグナルカスケードの活性化により引き起こされる下流プロセスを調節または阻害するのに有効な量の本発明のピリジン化合物もしくはプロドラッグ、またはそれらの受容可能な塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよび/もしくは組成物と接触させる工程を包含する。この方法は、インビトロまたはインビボの状況において、Fcレセプターシグナル伝達カスケードによって特徴付けられる疾患、Fcレセプターシグナル伝達カスケードによって引き起こされる疾患、またはFcレセプターシグナル伝達カスケードと関連する疾患(例えば、脱顆粒の際の顆粒特異的化学メディエータの放出、サイトカインの放出および/もしくは合成、ならびに/または脂質メディエータ(例えば、ロイコトリエンおよびプロスタグランジン)の放出および/もしくは合成によって引き起こされる疾患)の処置または予防への治療的アプローチとして実施され得る。
【0018】
さらに別の局面において、本発明は、Fcレセプターシグナル伝達カスケード(例えば、FcεRIおよび/またはFcγRIシグナル伝達カスケード)を活性化する結果としての化学メディエータの放出により特徴付けられる疾患、そのような化学メディエータの放出により引き起こされる疾患、またはそのような化学メディエータの放出と関連する疾患を処置および/もしくは予防する方法を提供する。これらの方法は、獣医学に関連して動物において実施し得るか、またはヒトにおいて実施し得る。これらの方法は、一般的に、動物の被験体またはヒトに対し、この疾患を処置または予防するのに有効な量の本発明のピリジン化合物もしくはプロドラッグ、またはそれらの受容可能な塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよび/もしくは組成物を投与する工程を包含する。先に検討したように、特定の免疫細胞中のFcεRIまたはFcγRIレセプターシグナル伝達カスケードの活性化は、多様な疾患の薬理学的メディエータである種々の化学物質の放出および/または合成をもたらす。これらの疾患はいずれも、本発明の方法に従って処置または予防され得る。
【0019】
例えば、マスト細胞および好塩基性細胞において、FcεRIまたはFcγRIシグナル伝達カスケードは、脱顆粒プロセスを通じて、アトピー性および/もしくはI型過敏性応答の予め形成されたメディエータ(例えば、ヒスタミン、トリプターゼなどのプロテアーゼなど)の即時(すなわち、レセプター活性化の1〜3分以内の)放出をもたらす。そのようなアトピー性またはI型過敏性応答としては、これらに限定されないが、環境および他のアレルゲン(例えば、花粉、昆虫および/または動物の毒液、食物、薬物、造影剤など)へのアナフィラキシー応答、アナフィラキシー様応答、枯草熱、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー喘息、アトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、粘膜障害、組織障害、および特定の胃腸障害が挙げられる。
【0020】
予め形成されたメディエータの脱顆粒による即時放出の後に、種々の他の化学メディエータ(とりわけ、血小板活性化因子(PAF)、プロスタグランジン、およびロイコトリエン(例えば、LTC4)を含む)の放出および/または合成、ならびにサイトカイン(例えば、TNFα、IL−4、IL−5、IL−6、IL−13など)のデノボ合成および放出が続く。これら2つのプロセスのうちの最初のプロセスは、レセプター活性化に続いて約3〜30分起こり;後のプロセスは、レセプター活性化に続いて約30分〜7時間起こる。これら「後期段階」のメディエータは、ある程度、上記したアトピー性およびI型過敏性応答の慢性症状の原因であると考えられており、加えて、炎症および炎症性疾患(例えば、骨関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、特発性炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、痙攣性結腸など)、軽度の瘢痕化(scarring)(例えば、硬皮症、線維増多(increased fibrosis)、ケロイド、手術後瘢痕、肺線維症、血管痙攣、片頭痛、再灌流傷害および心筋梗塞後)、および複合乾燥症もしくは乾燥症候群の化学メディエータである。これらの疾患は全て、本発明の方法に従って処置または予防され得る。
【0021】
本発明の方法に従って処置または予防され得るさらなる疾患としては、好塩基性細胞および/またはマスト細胞病理学と関連する疾患が挙げられる。そのような疾患の例としては、これらに限定されないが、硬皮症などの皮膚疾患、心筋梗塞後などの心疾患、肺の筋肉変化(pulmonary muscle change)もしくは改造および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、ならびに炎症性腸症候群(痙攣性結腸)などの消化管疾患が挙げられる。
【0022】
本発明のピリジン化合物はまた、チロシンキナーゼのSykキナーゼの強力なインヒビターでもある。したがって、さらに別の局面において、本発明は、Sykキナーゼ活性を調節、特に阻害する方法を提供する。この方法は、一般的に、SykキナーゼまたはSykキナーゼを含む細胞を、Sykキナーゼ活性を調節または阻害するのに有効な量の本発明のピリジン化合物もしくはプロドラッグ、またはそれらの受容可能な塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよび/もしくは組成物を接触させる工程を包含する。1つの実施形態において、Sykキナーゼは、単離もしくは組み換えのSykキナーゼである。別の実施形態において、Sykキナーゼは、内因性もしくは細胞(例えば、マスト細胞または好塩基性細胞)によって発現される組み換え型Sykキナーゼである。本方法は、インビトロまたはインビボの状況において、Sykキナーゼ活性によって特徴付けられる疾患、Sykキナーゼ活性によって引き起こされる疾患、またはSykキナーゼ活性と関連する疾患の処置もしくは予防への治療アプローチとして実施され得る。
【0023】
いかなる作動の理論によっても縛られることを意図していないが、本発明のピリジン化合物は、主にFcεRIのγ鎖ホモダイマーにより活性化されるSykキナーゼを阻害することによって、細胞脱顆粒および/または他の化学メディエータの放出を阻害すると考えられる(例えば、図2を参照)。このγ鎖ホモダイマーは、他のFcレセプター(FcγRI、FcγRIIIおよびFcαRIを含む)により共有される。これらのレセプターの全てについて、細胞内シグナル伝達は、共通のγ鎖ホモダイマーによって媒介される。これらのレセプターの結合および凝集が、Sykキナーゼなどのチロシンキナーゼの補充および活性化をもたらす。これらの共通のシグナル伝達活性の結果として、本明細書中に記載されるピリジン化合物は、このγ鎖ホモダイマーを有するFcレセプター(例えば、FcεRI、FcγRI、FcγRIIIおよびFcαRI)のシグナル伝達カスケード、ならびにこれらのレセプターにより誘発される細胞応答を調節、特に阻害するために使用し得る。
【0024】
Sykキナーゼは、他のシグナル伝達カスケードにおいて重大な役割を果たすと知られている。例えば、Sykキナーゼは、B細胞レセプター(BCR)シグナル伝達のエフェクターであり(Turner et al.,2000、Immunology Today 21:148−154)、かつ好中球中のインテグリンβ(1)、β(2)およびβ(3)のシグナル伝達の不可欠な構成成分である(Mocsai et al.,2002,Immunity 16:547−558)。本明細書中に記載されるピリジン化合物は、Sykキナーゼの強力なインヒビターであるので、Sykが役割を果たすあらゆるシグナル伝達カスケード、例えば、Fcレセプター、BCRおよびインテグリンシグナル伝達カスケード、ならびにこれらのシグナル伝達カスケードを通じて誘発される細胞応答を調節、特に阻害するために使用され得る。調節され、または阻害される特定の細胞応答は、当該技術分野において周知であるように、ある程度、特定の細胞種およびレセプターシグナル伝達カスケードに依存する。ピリジン化合物を用いて調節または阻害され得る細胞応答の非限定的な例としては、呼吸バースト、細胞癒着、細胞脱顆粒、細胞伝播(cell spreading)、細胞移動、食作用(例えば、マクロファージ中)、カルシウムイオンフラックス(例えば、マスト細胞、好塩基性細胞、好中性細胞、好酸性細胞およびB細胞中)、血小板凝集、および細胞成熟(例えば、B細胞中)が挙げられる。
【0025】
したがって、別の局面において、本発明は、Sykが役割を果たすシグナル伝達カスケードを調節、特に阻害する方法を提供する。本方法は、一般的に、Syk依存性レセプターまたはSyk依存性レセプターを発現いている細胞を、シグナル伝達カスケードを調節または阻害するのに有効な量の本発明のピリジン化合物もしくはプロドラッグ、またはそれらの受容可能な塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよび/または組成物と接触させる工程を包含する。この方法はまた、特定のSyk依存性シグナル伝達カスケードの活性化によって誘発される下流プロセスまたは細胞応答を調節、特に阻害するために使用し得る。これらの方法は、Skyが知られていないか、または役割を果たすことが後に発見される場合、任意のシグナル伝達カスケードを調節するために実施し得る。この方法は、インビトロまたはインビボの状況において、Syk依存性シグナル伝達カスケードによって特徴付けられる疾患、Syk依存性シグナル伝達カスケードによって引き起こされる疾患、またはSyk依存性シグナル伝達カスケードと関連する疾患の処置もしくは予防への治療アプローチとして実施され得る。そのような疾患の非限定的な例には、先に検討されたものが含まれる。
【0026】
細胞および動物のデータは、本発明のピリジン化合物がまた、そのような疾患の自己免疫疾患および/または症状を処置もしくは予防するために使用され得ることを確認する。一般的に、本方法は、自己免疫疾患に罹っている被験体または自己免疫疾患を発病させる恐れのある被験体に、自己免疫疾患および/もしくはその関連する症状を処置または予防するのに有効な量の本発明のピリジン化合物またはプロドラッグ、またはそれらの受容可能な塩、N−オキシド、水和物、溶媒和物もしくは組成物を投与する工程を包含する。ピリジン化合物で処置または予防され得る自己免疫疾患は、非アナフィラキシー過敏性応答(II型、III型および/またはIV型過敏性応答)と一般的に関連する疾患、および/または少なくともある程度、単核細胞におけるFcγRシグナル伝達カスケードの活性化によって媒介される疾患が挙げられる。そのような自己免疫疾患としては、これらに限定されないが、しばしば単一器官または単一細胞種の自己免疫疾患と言われることもある自己免疫疾患、およびしばしば全身自己免疫障害に関わると言われることもある自己免疫疾患が挙げられる。しばしば単一の器官または単一の細胞種の自己免疫疾患とも言われることのある疾患の非限定的な例としては:橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性精巣炎、グッドパスチャー疾患、自己免疫性血小板減少症、交感性眼炎、重症筋無力症、グレーブズ病、原発性胆汁性肝硬変、慢性進行性肝炎、潰瘍性大腸炎、および膜性糸球体症が挙げられる。しばしば全身性自己免疫障害が関与するものと言われることもある非限定的な疾患の例としては:全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群、ライター症候群、多発筋炎−皮膚筋炎、全身性硬化症、結節性多発動脈炎、多発性硬化症、および水疱性類天疱瘡が挙げられる。
【0027】
複数の実施形態が開示されるが、さらに他の本発明の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになり、本発明の例示的な実施形態を示し、かつ記載する。気付かれるように、本発明は、全て本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の明白な局面において改変し得る。したがって、図面および詳細な説明は、制限するためではなく、本質的に例示のためと見なされるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(6.詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、以下の用語は、以下の意味を有することが意図される:
「アルキル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、示される炭素原子数(すなわち、C1〜C6は、1個〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和もしくは不飽和の分枝状、直鎖状、または環状の一価炭化水素ラジカルをいい、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子から1つの水素原子の除去によってもたらされる。典型的なアルキル基としては、これらに限定されないが、メチル;エチル(例えば、エタニル(ethanyl)、エテニル、エチニル);プロピル(例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル;シクロプロプ−2−エン−1−イル、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど);ブチル(例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられる。以下に規定されるように、特定レベルの飽和が意図される場合、名称「アルカニル」、「アルケニル」および/または「アルキニル」が使用される。好ましい実施形態において、アルキル基は、(C1〜C6)アルキルである。
【0029】
「アルカニル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、親アルカンの単一の炭素原子から1つの水素原子の除去によってもたらされる飽和した分枝状、直鎖状または環状のアルキルをいう。典型的なアルカニル基としては、これらに限定されないが、メタニル;エタニル;プロパニル(例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなど);ブタニル(例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなど)などが挙げられる。好ましい実施形態において、アルカニル基は、(C1〜C6)アルカニルである。
【0030】
「アルケニル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、親アルケンの単一の炭素原子から1つの水素原子の除去によってもたらされる少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和の分枝状、直鎖状または環状のアルキルをいう。この基は、二重結合(単数または複数)について、シス型かまたはトランス型で有り得る。典型的なアルケニル基としては、これらに限定されないが、エテニル;プロペニル(例えば、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル、プロプ−2−エン−2−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル);シクロプロプ−2−エン−1−イル;ブテニル(例えば、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなど)などが挙げられる。好ましい実施形態において、アルケニル基は、(C2〜C6)アルキニルである。
【0031】
「アルキニル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、親アルキンの単一の炭素原子から1つの水素原子の除去によりもたらされる少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の分枝状、直鎖状または環状のアルキルをいう。代表的なアルキニル基としては、これらに限定されないが、エチニル;プロピニル(例えば、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチニル(例えば、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなど)などが挙げられる。好ましい実施形態において、アルキニル基は、(C2−C6)アルキニルである。
【0032】
「アルキルジイル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケンもしくはアルキンの2つの異なる炭素原子の各々からの1つの水素原子の除去により、または親アルカン、アルケンもしくはアルキンの単一の炭素原子からの2つの水素原子の除去によりもたらされ、示される数の炭素原子(すなわち、C1−C6は、1個〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和もしくは不飽和の、分枝状、直鎖状または環状の二価炭化水素基をいう。2つの一価ラジカル中心または二価ラジカル中心の各原子価が、同じ原子または異なる原子と結合を形成し得る。代表的なアルキルジイル基は、これらに限定されないが、メタンジイル;エチルジイル(例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル;プロピルジイル(例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−エン−1,2−ジイル、プロプ−2−エン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロプ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−イン−1,3−ジイルなど);ブチルジイル(例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,1−ジイル、ブト−1−エン−1,2−ジイル、ブト−1−エン1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロプ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン(methanylidene)−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、シクロブト−1−エン−1,2−ジイル、シクロブト−1−エン−1,3−ジイル、シクロブト−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルなど)などが挙げられる。特定レベルの飽和が示される場合には、名称アルカニルジイル、アルケニルジイル、および/またはアルキニルジイルが使用される。2つの原子価が、同じ炭素原子上にあることが特に意図される場合は、名称「アルキリデン」が使用される。好ましい実施形態において、アルキルジイル基は、(C1−C6)アルキルジイルである。飽和非環式アルカニルジイル基であって、ここでラジカル中心は、末端炭素にあるものもまた、好ましい(例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1,4−ジイル(ブタノ)など)(以下に規定される、アルキレノとも呼ばれる)。
【0033】
「アルキレノ」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、直鎖状の親アルカン、アルケンもしくはアルキンの2つの末端炭素原子の各々からの1つの水素原子の除去によりもたらされる2つの末端一価ラジカル中心を有する直鎖状の飽和もしくは不飽和アルキルジイル基をいう。二重結合もしくは三重結合の部位識別文字が、特定のアルキレノにおいて存在する場合、角括弧中に示される。典型的なアルキレノ基としては、これらに限定されないが、メタノ;エチレノ(ethyleno)(例えば、エタノ、エテノ、エチノ);プロピレノ(例えば、プロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロプ[1]イノなど;ブチレノ(例えば、ブタノ、ブト[1]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブト[1]イノ、ブト[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノなど)などが挙げられる。特定レベルの飽和が意図される場合、名称アルカノ、アルケノおよび/またはアルキノが使用される。好ましい実施形態において、アルキレノ基は、(C1〜C6)または(C1〜C3)アルキレノである。直鎖状の飽和アルカノ基(例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなどもまた、好ましい。
【0034】
「ヘテロアルキル」「ヘテロアルカニル」「ヘテロアルケニル」「ヘテロアルキニル」「ヘテロアルキルジイル」および「ヘテロアルキレノ」は、それら自体で、または別の置換基の一部として、1つ以上の炭素原子は、各々独立して同じかもしくは異なるヘテロ原子またはヘテロ原子基で、各々独立して置換され、それぞれ、アルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイル、およびアルキレノ基をいう。炭素原子を置換し得る典型的なヘテロ原子および/またはヘテロ原子基としては、これらに限定されないが、−O−、−S−、−S−O−、−NR’−、−PH−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−、−S(O)NR’−などが挙げられ、それらの組み合わせを含み、ここで各R’は、独立して、水素または(C1〜C6)アルキルである。
【0035】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それら自体で、または別の置換基の一部として、それぞれ環状の型の「アルキル」および「ヘテロアルキル」基をいう。ヘテロアルキル基について、ヘテロ原子は、分子の残部に結合する位置を占め得る。典型的なシクロアルキル基としては、これらに限定されないが、シクロプロピル;シクロブチル(例えば、シクロブタニルおよびシクロブテニル);シクロペンチル(例えば、シクロペンタニルおよびシクロペンテニル);シクロヘキシル(例えば、シクロヘキサニルおよびシクロヘキセニル)などが挙げられる。典型的なヘテロシクロアルキル基としては、これらに限定されないが、テトラヒドロフラニル(例えば、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イルなど)、ピペリジニル(例えば、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−2−イルなど)、モルホリニル(例えば、モルホリン−3−イル、モルホリン−4−イルなど)、ピペラジニル(例えば、ピペラジン−1−イル、ピペラジン−2−イルなど)などが挙げられる。
【0036】
「非環式ヘテロ原子架橋」は、骨格原子がもっぱらヘテロ原子および/またはヘテロ原子基である二価架橋(divalent bridge)をいう。典型的な非環式ヘテロ原子架橋としては、これらに限定されないが、−O−、−S−、−S−O−、−NR’−、−PH−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−、−S(O)NR’−などが挙げられ、これらの組み合わせを含み、ここで各R’は、独立して、水素または(C1〜C6)アルキルである。
【0037】
「親芳香族環系」は、共役π電子系を有する非飽和の環式環系もしくは多環式環系をいう。「親芳香族環系」の定義内には、具体的に、1つ以上の環が芳香族であり、1つ以上の環が、飽和もしくは不飽和の、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレンなどの縮合環系が含まれる。典型的な親芳香族環系としては、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、ならびに種々のそのハイドロ異性体(hydro isomer)が挙げられる。
【0038】
「アリール」は、それ自体で、または置換基の他の一部として、親芳香族環系の単一の炭素原子からの1個の水素原子の除去によりもたらされる、示される数の炭素原子(すなわち、C5〜C15は5〜15個の炭素原子を意味する)を有する一価芳香族炭化水素基をいう。典型的なアリール基としては、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、ならびに種々のそのハイドロ異性体が挙げられる。好ましい実施形態において、アリール基は、(C5〜C15)アリールであり、より好ましくは、(C5〜C10)である。特に好ましいアリールは、シクロペンタジエニル、フェニルおよびナフチルである。
【0039】
「アリールアリール」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、2つ以上の同一のまたは非同一の親芳香族環系が、単結合によって直接的に結合して一緒になる環系の単一の炭素原子からの1個の水素原子の除去によりもたらされる一価の炭化水素基をいい、ここでそのような直接的な環の結合数は、関与する親芳香族環系の数より少ない。特定のアリールアリール基としては、これらに限定されないが、ビフェニル、トリフェニル、フェニル−ナフチル、ビナフチル、ビフェニル−ナフチルなどが挙げられる。アリールアリール基中の炭素原子数が特定される場合、これらの数は、各親芳香族環を含む炭素原子をいう。例えば、(C5〜C15)アリールアリールは、各芳香族環が5〜15個の炭素を含むアリールアリール基(例えば、ビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、フェニルナフチルなどがある。好ましくは、アリールアリール基の各親芳香族環系は、独立して、(C5〜C15)芳香族、より好ましくは、(C5〜C10)芳香族である。また、好ましくは、全ての親芳香族環系が、同一であるアリールアリール基(例えば、ビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、トリナフチルなど)である。
【0040】
「ビアリール」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、単結合により直接的に結合して一緒になった2つの同一の親芳香族系を有するアリールアリール基をいう。典型的なビアリール基としては、これらに限定されないが、ビフェニル、ビナフチル、ビアントラシルなどが挙げられる。好ましくは、芳香族環系は、(C5〜C15)芳香族環であり、より好ましくは、(C5〜C10)芳香族環である。特に好ましいビアリール基は、ビフェニルである。
【0041】
「アリールアルキル」は、それ自体で、別の置換基の一部として、炭素原子(典型的には、末端もしくはsp炭素原子)に結合した水素原子のうちの1つが、アリール基で置換されている非環式アルキルをいう。典型的なアリールアルキル基としては、これらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエタン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。特定のアルキル部分が意図される場合、名称アリールアルカニル、アリールアルケニル、および/またはアリールアルキニルが使用される。好ましい実施形態において、アリールアルキル基は、(C6〜C21)アリールアルキルである(例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分が(C1〜C6)であり、アリール部分が(C5〜C15)である)。特に好ましい実施形態において、アリールアルキル基は、(C6〜C13)である(例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分が(C1〜C3)であり、アリール部分が(C5〜C10)である)。
【0042】
「電子求引性基」は、水素に対して−Iを有する置換基をいう。これらの置換基としては、例えば、NR3、SR、NH、−NO、−SOR、−CN−SOAr、−COOH、−F、−Cl、−Br、−I、−Oar、−COOR、−OR、−COR、−SH、−SR、−−OH、−CCR、−Arおよび−C=CRが挙げられ、ここで各Rは、個別に、水素、アルキル、またはアリールである。
【0043】
「親へテロ芳香族環系」は、1つ以上の炭素原子が、各々独立して、同じかまたは異なるヘテロ原子またはヘテロ原子基で置換された親芳香族環系をいう。炭素原子を置換すべく典型的なヘテロ原子またはヘテロ原子基としては、これらに限定されないが、N、NH、P、O、S、S(O)、S(O)、Siなどが挙げられる。「親へテロ芳香族環系」の定義内には、具体的に、環のうちの1つ以上が芳香族であり、環のうちの1つ以上が、飽和もしくは非飽和である縮合環系、例えば、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどが含まれる。また、「親へテロ原子環系」の定義には、共通の置換基を含むと認められる環、例えば、ベンゾピロンおよび1−メチル−1,2,3,4−テトラゾールなどが含まれる。「親ヘテロ芳香族環系」の定義から、特に環状ポリアルキレングリコール、例えば、環状ポリエチレングリコールに縮合したベンゼン環は除外される。典型的な親へテロ芳香族環系としては、これらに限定されないが、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサキシン(benzoxaxine)、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサゾリン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられる。
【0044】
「ヘテロアリール」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香族環系の1つの原子からの1個の水素原子の除去によりもたらされる示された数の環原子を有する(例えば、「5〜14員」は、5個〜14個の環原子を意味する)一価のヘテロ芳香族基をいう。典型的なヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジアキソール(bezodiaxole)、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサゾリン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなど、ならびに種々のそれらのハイドロ異性体から誘導される基が含まれる。好ましい実施形態において、このヘテロアリール基は、5〜14員のヘテロアリールであり、5〜10員のヘテロアリールが特に好ましい。
【0045】
「ヘテロアリール−ヘテロアリール」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、2つ以上の同一もしくは非同一の親へテロ芳香族環系が、単結合により直接的に結合して一緒になり、ここでそのような直接的な環の結合数は、関与する親へテロ芳香族環系の数未満である環系の単一の原子からの1個の水素原子の除去により誘導される一価のヘテロ芳香族基をいう。典型的なヘテロアリールヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、ビピリジル、トリピリジル、ピリジルプリニル、ビプリニルなどが挙げられる。原子数が特定される場合、その数は、各親へテロ芳香族環系を含む原子数を指す。例えば、5〜15員のヘテロアリール−ヘテロアリールは、各親へテロ芳香族環系が、5〜15個の原子を含むヘテロアリール−ヘテロアリール基(例えば、ビピリジル、トリプリジルなど)である。好ましくは、各親へテロ芳香族環系は、独立して、5〜15員のヘテロ芳香族、より好ましくは、5〜10員のヘテロ芳香族である。親へテロ芳香族環系の全てが同一であるヘテロアリール−ヘテロアリール基もまた好ましい。
【0046】
「ビヘテロアリール」は、それ自体で、別の置換基の一部として、単結合により直接的に結合して一緒になった2つの同一の親ヘテロ芳香族環系を有するヘテロアリール−ヘテロアリール基をいう。典型的なビヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、ビピリジル、ビプリニル、ビキノリニルなどが挙げられる。好ましくは、ヘテロ芳香族環系は、5〜15員のヘテロ芳香族環であり、より好ましくは、5〜10員のヘテロ芳香族環である。
【0047】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、炭素原子(典型的には、末端炭素原子もしくはsp炭素原子)と結合した水素原子のうちの1つが、ヘテロアリール基で置換されている非環式のアルキル基をいう。特定のアルキル部分が意図される場合、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル(heteroarylakenyl)および/またはヘテロアリールアルキニルの名称が使用される。好ましい実施形態において、ヘテロアリールアルキル基は、6〜21員のヘテロアリールアルキルである(例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分が(C1〜C6)アルキルであり、ヘテロアリール部分が5〜15員のヘテロアリールである)。特に好ましい実施形態において、ヘテロアリールアルキルは、6〜13員のヘテロアリールアルキルである(例えば、アルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分が(C1〜C3)アルキルであり、ヘテロアリール部分が5〜10員のヘテロアリールである。
【0048】
「ハロゲン」または「ハロ」は、それら自体で、もしくは別の置換基の一部として、特に指定のない限り、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。
【0049】
「ハロアルキル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換されているアルキル基をいう。したがって、用語「ハロアルキル」は、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなど、ペルハロアルキルまで含むことが意図される。例えば、「(C1〜C2)ハロアルキル」との表現としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、ペルフルオロエチルなどが挙げられる。
【0050】
上記で規定される基は、当該技術分野において、さらなる広く認められている置換基を作製するために一般的に使用される接頭語および/または接尾語を含み得る。例として、「アルキルオキシ」もしくは「アルコキシ」は、式−OR’’の基をいい、「アルキルアミン」は、式−NHR’’の基をいい、そして「ジアルキルアミン」は、式−NR’’R’’の基をいい、ここで各R’’は、独立して、アルキルである。別の例として、「ハロアルコキシ」もしくは「ハロアルキルオキシ」は、R’’’がハロアルキルである、式−OR’’’の基をいう。
【0051】
「保護基」は、分子中の反応性官能基に結合する場合、官能基の反応性を遮蔽、低減または予防する原子の群をいう。典型的に、保護基は、合成の進行中、所望であれば選択的に除去され得る。保護基の例は、Greene and Wuts,Protective Goups in Organic Chemistry,3rdEd.,1999,John Wiley & Sons,NY and Harrison et al.,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols.1−8,1971−1996,John Wiley & Sons,NYに見出し得る。代表的なアミノ保護基としては、これれらに限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「TES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられる。代表的なヒドロキシル保護基としては、これらに限定されないが、ヒドロキシル基がアシル化されているか、またはアルキル化されているヒドロキシル保護基(例えば、ベンジルおよびトリチルエーテル)、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSもしくはTIPPS基)およびアリルエーテルが挙げられる。
【0052】
「プロドラッグ」は、体内などでの使用の条件下において、活性なピリジン薬物を放出するために変形を必要とする活性なピリジン化合物(薬物)の誘導体をいう。プロドラッグは、しばしば、活性な薬物に転換されるまで薬理学的に不活性である(必ずしもそうとは限らない)。プロドラッグは、典型的には、ある程度は活性に必要であると考えられるピリジン薬物中の官能基をプロドラッグで遮蔽して、官能基、従って活性なピリジン薬物を放出するための特定の使用条件下で、変形(例えば、開裂)を起こすプロ部分を形成する。プロ部分の開裂は、例えば、加水分解反応により自動的に進行し得るか、または別の物質によって(例えば、酵素によって、明かりによって、酸もしくは塩基によって、または物理的もしくは環境パラメーター(例えば、温度変化)の変化により、または物理的もしくは環境パラメーター(例えば、温度変化)への曝露により)触媒もしくは誘発され得る。この物質は、例えば、プロドラッグが投与される細胞に存在する酵素などの使用条件、もしくは胃の酸性条件に内生的であり得るか、または外生的に供給され得る。
【0053】
活性なピリジン化合物中の官能基を遮蔽してプロドラッグを生成するのに適した種々のプロドラッグ、ならびに結果として生ずるプロ部分は、当該技術分野において周知である。例えば、ヒドロキシル官能基は、スルホナート、エステルまたはカーボネートプロ部分として遮蔽され得、インビボにて加水分解されて、ヒドロキシル基を提供し得る。アミノ官能基を、アミド、尿素、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスフォリルまたはスルフェニルプロ部分として遮蔽し得、インビボにおいて加水分解されて、アミノ基を提供し得る。カルボキシル基をエステル(シリルエステルおよびチオエステルを含む)、アミドまたはヒドラジドプロ部分として遮蔽し得、インビボにおいて加水分解して、カルボン酸基を提供し得る。本発明の窒素保護基および窒素プロ−ドラッグとして、低級アルキル基ならびにアミド、尿素などを挙げ得る。適切なプロ基およびそれらのそれぞれのプロ部分の他の具体的な例が、当業者に明らかとなる。
【0054】
「プロ基」は、活性なピリジン薬物中で官能基を遮蔽してプロ部分を形成するために使用される場合、薬物をプロドラッグに転換する保護基の1種である。プロ基は、典型的に、薬物の官能基に特定の使用条件下で開裂し得る結合によって結び付く。したがって、プロドラッグは、特定の使用条件下で開裂して官能基を放出するプロ部分の一部である。具体的な例として、式−NH−C(O)CHのアミドプロ部分は、プロドラッグ−C(O)CHを含む。
【0055】
「Fcレセプター」は、免疫グロブリンのFc部分(特定の定常領域を含む)と結合する細胞表面分子のファミリーのメンバーをいう。各Fcレセプターは、特定の種類の免疫グロブリンと結合する。例えば、Fcαレセプター(「FcαR」)はIgAと結合し、FcεRはIgEと結合し、FcγRはIgGと結合する。
【0056】
FcαRファミリーは、IgA/IgMの上皮輸送に関与するポリマーIgレセプター、マイコロイド(mycloid)特異的レセプターRcαRI(CD89とも呼ぶ)、Fcα/μRおよび少なくとも2つの代替IgAレセプター(最近の検討には、Monteiro & van de Winkel,2003,Annu.Rev.Immunol,advanced e−publicationを参照)含む。FcαRIは、好中性細胞、好酸球、単核細胞(moncyte)/マクロファージ、樹状細胞およびクッパー細胞上で発現される。FcαRIは、1つのα鎖および細胞質ドメイン中に活性化モチーフ(ITAM)を有し、Sykキナーゼをリン酸化するFcRγホモダイマーを含む。
【0057】
FcεRファミリーは、FcεRIおよびFcεRIIと呼ばれる2つの型(CD23としても知られている)を含む。FcεRIは、マスト細胞、好塩基性細胞および好酸性細胞上で見受けられれ、モノマーのIgEを細胞表面に留める高親和性レセプターである(約1010−1の親和性でIgEと結合する)。FcεRIは、上記で検討される1つのα鎖、1つのβ鎖、およびγ鎖ホモダイマーを保持する。FcεRIIは、単核食細胞、Bリンパ細胞、好酸性細胞および血小板上で発現される低親和性レセプターである。FcεRIIは、単一のポリペプチド鎖を含み、γ鎖ホモダイマーを含まない。
【0058】
FcγRファミリーは、FcγRI(CD64としても公知)、FcγRII(CD32としても公知)およびFcγRIII(CD16としても公知)と呼ばれる3つの型を含む。FcγRIは、マスト細胞、好塩基性細胞、単核細胞、好酸性細胞、樹状(deudritic)細胞および食細胞上で見受けられ、モノマーのIgGを細胞表面に留める高親和性レセプターである(約108−1の親和性でIgG1と結合する)。FcγRIは、1つのα鎖、およびFcαRIおよびFcεRIによって共有されるγ鎖ダイマーを含む。
【0059】
FcγRIIは、好中性細胞、単核細胞、好中性細胞、好酸性細胞、血小板およびBリンパ球上に発現される低親和性レセプターである。FcγRIIは、1つのα鎖を含み、上記で検討したγ鎖ホモダイマーを含まない。
【0060】
FcγRIIIは、NK、好酸性細胞、マクロファージ、好中性細胞およびマスト細胞上で発現される低親和性レセプターである。FcγRIIIは、1つのα鎖、およびFcαRI、FcεRIおよびFcγRIによって共有されるγホモダイマーを含む。
【0061】
当業者は、これらの種々のFcレセプターのサブユニット構造および結合特性、それらを発現している細胞種が、完全に特性付けられていないことを認める。上記の検討は、単に、これらのレセプターに関する現在の最新技術を反映しているに過ぎず(例えば、Immunobiology:The Immune System in Health & Disease,5th Edition,Janeway et al.,Eds,2001,ISBN 0−8153−3642−x,Figure 9.30,pp.371を参照)、本明細書中に記載する化合物で調節され得る種々のレセプターシグナル伝達カスケードに関して限定することを意図していない。
【0062】
「Fcレセプター媒介性脱顆粒」もしくは「Fcレセプター誘発性脱顆粒」は、Fcレセプターの架橋により開始されるFcレセプターシグナル伝達カスケードにより進行する脱顆粒をいう。
【0063】
「IgE誘発性脱顆粒」もしくは「FcεRI媒介性脱顆粒」は、FcεR1結合IgEの架橋により開始されるIgEレセプターシグナル伝達カスケードにより進行する脱顆粒をいう。架橋は、IgE特異的アレルゲンまたは他の多価結合性物質、例えば、抗IgE抗体によって誘発され得る。図2を参照して、マスト細胞および/または好塩基性細胞において、脱顆粒をもたらすFcεRIシグナル伝達カスケードは、次の二段階に分け得る:上流および下流。上流段階は、カルシウムイオン動員(図2中に「Ca2+」として図示;図3も参照)の前に起こるプロセスの全てを含む。下流段階は、カルシウムイオン動員およびその下流にある全てのプロセスを含む。FcεRI媒介性脱顆粒を阻害する化合物は、FcεRI媒介性シグナル伝達カスケードに沿うあらゆる部分において作用し得る。上流のFcεRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、カルシウムイオン動員が誘発される部分の上流にあるFcεRIシグナル伝達カスケードのその部分を阻害するように作用する。細胞ベースアッセイにおいて、上流のFcεRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、IgE特異的アレルゲンまたは結合物質(例えば、抗IgE抗体)で活性化または刺激されるマスト細胞もしくは塩基性細胞などの細胞の脱顆粒を阻害するが、FcεRIシグナル伝達経路を迂回する脱顆粒物質(例えば、カルシウムイオノフォアのイオノマイシンおよびA23187など)で活性化もしくは刺激される細胞の脱顆粒を認め得るほどには阻害しない。
【0064】
「IgG誘発性脱顆粒」もしくは「FcγRI媒介性脱顆粒」は、FcγRI結合IgGの架橋によって開始されるFcγRIシグナル伝達カスケードにより進行する脱顆粒をいう。架橋は、IgG特異的アレルゲンまたは別の多価の結合物質(例えば、抗IgGもしくはフラグメント抗体)によって誘発され得る。FcεRIシグナル伝達カスケードのように、マスト細胞および好塩基性細胞において、FcγRIシグナル伝達カスケードはまた、前述の二段階:上流および下流に分け得る脱顆粒をもたらす。FcεRI媒介性脱顆粒と同様に、上流のFcγRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、カルシウムイオン動員が誘発される部分の上流で作用する。細胞ベースアッセイにおいて、上流のFcγRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、IgG特異的アレルゲンもしくは結合物質(例えば、抗IgG抗体もしくはフラグメント)で活性化または刺激されるマスト細胞もしくは好塩基性細胞などの細胞の脱顆粒を阻害するが、FcγRIシグナル伝達経路を迂回する脱顆粒物質(例えば、カルシウムイオノフォアのイオノマイシンおよびA23187など)で活性化または刺激される細胞の脱顆粒を、認め得るほどに阻害しない。
【0065】
「イオノフォア誘発性脱顆粒」もしくは「イオノフォア媒介性脱顆粒」は、カルシウムイオノフォア、例えば、イオノマイシンまたはA23187などへの曝露により生ずるマスト細胞もしくは好塩基性細胞などの細胞の脱顆粒をいう。
【0066】
「Sykキナーゼ」は、B細胞および他の造血細胞(hematopoetic cell)中で発現される周知の72kDa非レセプター(細胞質)脾臓タンパク質のチロシンキナーゼをいう。Sykキナーゼは、リン酸化した免疫レセプターのチロシンベースの活性化モチーフ(「ITAM」)、「リンカー」ドメインおよび触媒ドメインに結合する2つの一致するSrc−ホモロジー2(SH2)ドメインをタンデム中に含む(Sykキナーゼの構造および機能の検討には、Sada et al.,2001,J.Biochem.(Tokyo)130:177−186;また、Turner et al.,2000,Immunology Today 21:148−154を参照)。Sykキナーゼは、B細胞レセプター(BCR)シグナル伝達のエフェクターとして広範に研究されている(Turner et al.,2000,上記)。Sykキナーゼはまた、免疫レセプター(例えば、Ca2+動員およびマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MARK)カスケード(例えば、図2を参照))および脱顆粒から通じる重要な経路を調節する種々のタンパク質のチロシンリン酸化にとって重大である。Sykキナーゼはまた、好中球中のインテグリンシグナル伝達経路において重大な役割を果たす(例えば、Mocsai et al.2002,Immunity 16:547−558を参照)。
【0067】
本明細書中で使用される場合、Sykキナーゼは、Sykファミリーに属すると認められるあらゆる種の動物(これらに限定されないが、ホモサピエンス、サル、ウシ、ブタ、げっ歯類などを含む)からのキナーゼを含む。具体的には、天然および合成の両方のアイソフォーム、スプライスバリアント、対立変異体(allelic variant)、変異体が含まれる。そのようなSykキナーゼのアミノ酸配列は周知であり、GENBANKから入手し得る。ヒトSykキナーゼの種々のアイソフォームをコードするmRNAの具体例は、GENBANKアクセッション番号において見出され得、これらは本明細書中に参考として援用される。
【0068】
【数1】

当業者は、他のファミリーに属するチロシンキナーゼが、Sykと三次元構造が類似している活性部位または結合ポケットを有し得ると理解する。この構造の類似性の結果として、本明細書中で「Sykミミック」と呼ぶようなキナーゼは、Sykによってリン酸化される基質のリン酸化を触媒すると予測される。したがって、そのようなSykミミック、そのようなSykミミックが役割を果たすシグナル伝達カスケード、ならびにそのようなSykミミックおよびSykミミック依存性シグナル伝達カスケードにより引き起こされる生物学的応答が、本明細書中に記載されるピリジン化合物で調節、特に阻害されることが理解される。
【0069】
「Syk依存性シグナル伝達カスケード」は、Sykキナーゼが役割を果たすシグナル伝達カスケードをいう。そのようなSyk依存性シグナル伝達カスケードの非限定的な例としては、FcαRI、FcεRI、FcγRI、FcγRIII、BCRおよびインテグリンシグナル伝達カスケードが挙げられる。
【0070】
「自己免疫疾患」は、非アナフィラキシー過敏性応答(II型、III型および/またはIV型過敏性応答)と一般的に関連する疾患をいい、これらの非アナフィラキシー過敏性応答は、内因性および/または外因性由来の1つ以上の免疫原生物質に対する被験体自身の体液性免疫応答および/または細胞媒介性免疫応答の結果として一般的に生ずる。そのような自己免疫疾患は、アナフィラキシー(I型またはIgE媒介性)過敏性応答と関連する疾患と区別される。
【0071】
(6.1 置換ピリジン化合物)
本発明の化合物は、一般的に構造式(I):
【0072】
【化8】

に従うピリジン化合物(その薬学的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含む)であり、ここで:
Yは、−OH、−SH、−CN−、−C(O)H、−NO、ハロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、低級アルキル、置換低級アルキル、低級へテロアルキル、置換低級へテロアルキル、低級ハロアルキル、モノハロメチル、ジハロメチル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、置換低級アルキルチオ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、メトキシ、置換メトキシ、低級へテロアルコキシ、置換低級へテロアルコキシ、低級ハロアルコキシ、モノハロメトキシ、ジハロメトキシ、トリハロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、置換低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、置換低級アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、置換アリールオキシカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニル、置換アリールアルキルオキシカルボニル、カルバメート、置換カルバメート、カルバモイル、置換カルバモイル、チオカルバモイル、置換チオカルバモイル、カルバメート、置換尿素、チオ尿素、置換チオ尿素、スルファモイル、置換スルファモイル、シクロアルキルイミド、置換シクロアルキルイミド、イソインドール−1,3−ジオン、置換イソインドール−1,3−ジオン、フタルイミド、および置換フタルイミドからなる群から選択され;
pは、0、1、または2であり;
qは、1および6を含む1〜6の整数であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
は、アルキル、アリール、またはプロ基であり;そして
Aは、アルキル、置換アルキル、アリール、アルコキシ、置換アルコキシ、アリール、および置換アリールからなる群から選択される。
【0073】
第1の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、−NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドである。RおよびRの各々は、個別に、アルキル、アリール、またはプロ基であり、そして、p、q、X、RおよびAは、上記に既定されるとおりである。
【0074】
第2の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドである。R、R、R、p、q、XおよびAは、上記に既定されるとおりであるが、但し、
【0075】
【化9】

は含まれない。
【0076】
第3の実施形態において、Yは、構造式:
【0077】
【化10】

に従う尿素であり、
ここで、Rii、RiiiおよびRivは、互いに独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリールおよび置換アリールから選択され、R、p、q、XおよびAは、上記に既定されるとおりである。適切な尿素は、RiiおよびRiiiが、各々水素原子であり、Rivが、アリールもしくは置換アリール、またはアルキル、例えば、メチル、エチルもしくはプロピル基である。
【0078】
第4の実施形態において、Yは、構造式:
【0079】
【化11】

に従うシクロアルキルイミドであり、
ここで、rは0〜10であり、R、p、q、XおよびAは、上記に既定されるとおりである。特定の実施形態において、rは、2または3である。
【0080】
第5の実施形態において、Yは、構造式:
【0081】
【化12】

に従うイソインドール−1,3−ジオン−2−イルであり、
ここで、4位、5位、6位または7位が、さらに独立的に置換され得、R、p、q、XおよびAは、上記に既定されるとおりである。
【0082】
第6の実施形態において、Yが−NOであり、R、p、q、XおよびAは、上記に既定されるとおりである。
【0083】
第7の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドであり、R、R、R、q、XおよびAは、上記に既定されるとおりであり、pは2である。
【0084】
第8の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドであり、R、R、R、p、XおよびAは、上記に既定されるとおりであり、qは2である。
【0085】
第9の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドであり、R、R、R、p、qおよびAは、上記に既定されるとおりであり、Xは酸素原子である。
【0086】
第10の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドであり、R、R、R、p、qおよびXは、上記に既定されるとおりであり、Aは、アルキル基もしくはアルコキシ基である(したがって尿素を形成している)。例としては、メチル基およびエチル基ならびにt−ブトキシ基が挙げられる。
【0087】
第11の実施形態において、Yは、電子求引性基、すなわち、−NO、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、または置換フタルイミドであり、R、R、R、p、qおよびXは、上記に既定されるとおりであり、そしてAは、アリール基または置換アリール基である。適切な例としては、1つ以上の位置で置換され得るフェニル環が挙げられる。フェニル環について適切な置換基は、−OH、−SH、−CN、−C(O)H、−NO、アジド、ハロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、低級アルキル、置換低級アルキル、低級ハロアルキル、モノハロメチル、ジハロメチル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、置換低級アルキルチオ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、メトキシ、置換メトキシ、低級ハロアルコキシ、モノハロメトキシ、ジハロメトキシ、トリハロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、置換低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、アリール、置換アリール、尿素、置換尿素、カルバモイル、置換カルバモイル、チオカルバモイル、置換チオカルバモイル、尿素、置換尿素、チオ尿素、置換チオ尿素、スルファモイル、および置換スルファモイルが挙げられる。
【0088】
第12の実施形態において、Yは−NOであり、pは2であり、qは2であり、XはOであり、そしてAは、一置換フェニル環である。特定の実施形態において、フェニル環上の置換基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシである。
【0089】
また、上記第1〜第12の実施形態の組合せも、具体的に記載される。
【0090】
本発明の例示的なピリジン化合物が、下記表1および表2に示される。
【0091】
当業者は、本明細書中に記載されるピリジン化合物が、プロ基で遮蔽されてプロドラッグを作製し得る官能基を含み得ることを理解する。そのようなプロドラッグは、通常、活性な薬物形態へと転換されるまで薬理学的に不活性であるが、そうである必要はない。実際、表1および表2に記載される活性なピリジン化合物の一部は、使用条件の下で加水分解し得るか、さもなければ開裂し得るプロ部分を含む。例えばエステル化合物は、一般的に、胃の酸性条件に曝される場合は酸触媒加水分解を起こして親カルボン酸を生じるか、または腸もしくは血液の塩基性条件に曝される場合は塩基触媒加水分解を起こす。したがって、経口により被験体に投与される場合、エステル部分を含むピリジン化合物は、そのエステル形態が薬理学的に活性であるかどうかに関わらず、それらの対応するカルボン酸のプロドラッグであると考えられ得る。表1および表2を参照して、本発明のピリジン化合物を含む加水分解し得る部分は、種々の「プロドラッグ」形態で、活性であり得る。
【0092】
本発明のプロドラッグにおいて、利用可能な官能部分はいずれもプロ基で遮蔽されて、プロドラッグを生じ得る。プロ部分への含有のためにプロ基で遮蔽し得るピリジン化合物中の官能基としては、これらに限定されないが、アミン(第一級および第二級)、ヒドロキシル、スルファニル(チオール)、カルボキシルなどが挙げられる。そのような官能基を遮蔽して所望の使用条件下で開裂し得るプロ部分を生ずるのに適した種々のプロ基が、当該技術分野において公知である。これらのプロ基の全てが、単独でかまたは組合せで、本発明のプロドラッグ中に含まれ得る。
【0093】
当業者は、本発明の化合物およびプロドラッグの一部、ならびに本明細書中に具体的に記載され、かつ/または本明細書中に例示される種々の化合物種が、互変異性、配座異性、幾何異性および/または光学異性の現象を示し得ることを理解する。例えば、本発明の化合物およびプロドラッグは、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含み得、その結果、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体およびジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)として存在し得る。別の例として、本発明の化合物およびプロドラッグは、数種の互変異性型(エノール型、ケト型およびそれらの混合物を含む)で存在し得る。本明細書および特許請求の範囲中の種々の化合物名、式および化合物図は、可能な互変異性型、配座異性型、光学異性型もしくは幾何異性型のうちの1つのみを表すが、本発明は、本明細書中に記載される1つ以上の効用を有する化合物またはプロドラッグの互変異性型、配座異性型、光学異性型および/もしくは幾何異性型のいずれも、ならびにこれらの種々の異なる異性型の混合物を包含することを理解すべきである。
【0094】
さらに、当業者は、代替置換基のリストが、原子価要件または他の理由により特定の基を置換するために使用され得ないメンバーを含む場合、このリストは、特定の基を置換するのに適したリストのメンバーを含むことを背景に読まれることが意図される。例えば当業者は、掲載された代替物の全てがアルキル基を置換するために使用され得るが、代替物(例えば、=O)のいくつかは、フェニル基を置換するために使用され得ないと理解する。置換基のペアの可能な組み合わせのみが意図されることを理解すべきである。
【0095】
種々の置換基の性質に従い、本発明のピリジン化合物およびプロドラッグは、塩の形態であり得る。そのような塩としては、薬学的使用(「薬学的に受容可能な塩」)に適した塩、獣医学的使用に適した塩などが挙げられる。そのような塩は、当該技術分野において周知であるような酸または塩基から誘導され得る。
【0096】
1つの実施形態において、その塩は、薬学的に受容可能な塩である。一般的に、薬学的に受容可能な塩は、実質的に親化合物の1つ以上の所望の薬理学活性を保持し、ヒトへの投与に適した塩である。薬学的に受容可能な塩は、無機酸または有機酸とともに形成された酸付加塩を含む。薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するのに適した無機酸は、限定ではなく例として、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するのに適した有機酸としては、限定ではなく例として、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、シクロアルキルスルホン酸(例えば、カンファースルホン酸)、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonic acid)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、酢酸tert−ブチル、硫酸ラウリル、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリル酸、ムコン酸などが挙げられる。
【0097】
薬学的に受容可能な塩はまた、親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオン)、アンモニウムイオンによって置換されるか、または有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)と配位結合する場合に形成される塩を含む。
【0098】
本発明のピリジン化合物ならびにその塩はまた、当該技術分野で周知であるような水和物、溶媒和物およびN−オキシドの形態でもあり得る。
【0099】
(6.2 合成方法)
本発明の化合物およびプロドラッグは、市販の出発物質および/または本明細書中に記載される合成方法により調製される出発物質を使用して、種々の合成経路により合成され得る。
【0100】
本発明の方法により調製される化合物は、下記表1および表2に含まれる。
【0101】
(6.3 Fcレセプターシグナルカスケードの阻害)
本発明の活性なピリジン化合物は、とりわけ細胞の脱顆粒をもたらすFcレセプターシグナル伝達カスケードを阻害する。具体的な例として、これらの化合物は、免疫細胞(例えば、好中性細胞、好酸性細胞、マスト細胞および/または好塩基性細胞)の脱顆粒をもたらすFcεRIおよび/またはFcγRIシグナルカスケードを阻害する。マスト細胞および塩基性細胞の両方が、アレルゲン誘発性障害(例えば、アレルギー性鼻炎および喘息を含む)において中心的な役割を果たす。図1を参照して、アレルゲン(とりわけ、花粉または寄生体であり得る)に曝露すると、アレルゲン特異的IgE抗体がIL−4(もしくはIL−13)およびIgEクラス特異的抗体合成に転換する他のメッセンジャーによって活性化されるB細胞により合成される。これらのアレルゲン特異的IgEは、高親和性FcεRIに結合する。抗原の結合の際に、FcεRI結合IgEが架橋され、IgEレセプターシグナル伝達経路が活性化され、細胞の脱顆粒および結果として生ずる化学メディエータの群(ヒスタミン、プロテアーゼ(例えば、トリプターゼおよびキマーゼを含む)、脂質メディエータ(例えば、ロイコトリエン(例えば、LTC4)、血小板活性化因子(PAF)およびプロスタグランジン(例えば、PGD2))ならびに一連のサイトカイン(TNF−α、IL−4、IL−13、IL−5、IL−6、IL−8、GMCSF、VEGFおよびTGF−βを含む)の放出および/または合成をもたらす。マスト細胞および/または好塩基性細胞からのこれらのメディエータの放出および/または合成が、アレルゲンにより誘発される初期段階および後期段階の応答を説明し、持続的な炎症状態をもたらす下流イベントに直接的に結びつく。本発明は好ましい実施形態について記載されているが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細を変更し得ることを認める。
【0102】
脱顆粒による予め形成されたメディエータの放出、ならびに他の化学メディエータの放出および/または合成をもたらすFcεRIシグナル伝達経路における分子イベントは周知であり、図2に図示される。図2を参照して、FcεRIは、IgE結合αサブユニット、βサブユニットおよび2つのγサブユニット(γホモダイマー)からなるヘテロ四量体のレセプターである。多価の結合物質(例えば、IgE特異的アレルゲンまたは抗IgE抗体もしくはフラグメントを含む)によるFcεRI結合IgEの架橋は、Src型キナーゼLynの急速な会合および活性化を誘発する。Lynは、細胞内βおよびγサブユニット上の免疫レセプターチロシンベースの活性化モチーフ(ITAMS)をリン酸化し、さらなるLynのβサブユニットへの補充およびSykキナーゼのγホモダイマーへの補充をもたらす。レセプターに会合するこれらのキナーゼは、細胞内分子および細胞間分子のリン酸化によって活性化され、経路の他の成分(例えば、Btkキナーゼ、LAT、およびホスホリパーゼCγ(PLCγ))をリン酸化する。活性化されたPLCγは、タンパク質キナーゼCの活性化およびCa2+動員(両方ともに脱顆粒に必要とされる)をもたらす経路を開始する。FcεRI架橋はまた、3つの主要なクラスのマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ、すなわち、ERK1/2、JNK1/2およびp38を活性化する。これらの経路の活性化は、前炎症メディエータ(例えば、TNFαおよびIL−6)ならびに脂質メディエータであるロイコトリエンCA(LTC4)の転写調節において重要である。
【0103】
図示されてはいないが、FcγRIシグナル伝達カスケードは、FceRIシグナル伝達カスケードといくつかの共通の要素を共有すると考えられている。重要なことには、FcεRIのように、FcγRIは、リン酸化され、Sykを補充するγホモダイマーを含み、FcεRIのように、FcγRIシグナル伝達カスケードの活性化が、とりわけ、脱顆粒をもたらす。γホモダイマーを共有し、活性なピリジン化合物によって調節され得る他のFcレセプターは、これらに限定されないが、FcαRIおよびFcRIIIを含む。
【0104】
本発明のピリジン化合物が有するFcレセプターシグナル伝達カスケードを阻害する能力は、インビボアッセイにおいて容易に決定または確認され得る。FcεRI媒介性脱顆粒の阻害を確認するのに適したアッセイが、実施例の項で提供される。1つの典型的なアッセイにおいて、FcεRI媒介性脱顆粒を起こし得る細胞(例えば、マスト細胞もしくは好塩基性細胞)は、IL−4、幹細胞因子(SCF)、IL−6およびIgEの存在下でまず育成され、FcεRIの発現を増大させ、本発明のピリジン試験化合物に曝露し、抗IgE抗体(または、代替的に、IgE特異的アレルゲン)で刺激される。インキュベーションに続き、化学メディエータ、またはFcεRIシグナル伝達カスケードを活性化する結果として放出および/もしくは合成される他の化学物質の量が、標準的な技術を使用して定量化され得、メディエータ、もしくはコントロール細胞(すなわち、刺激されるが試験化合物に曝露されない細胞)から放出される物質の量と比較される。コントロール細胞と比較されて測定されるメディエータもしくは物質の量を50%減少させる試験化合物の濃度が、試験化合物のIC50である。アッセイに用いられるマスト細胞もしくは好塩基性細胞の由来は、ある程度、化合物にとって望ましい使用に依存し、それは当業者に明らかとなる。例えば、化合物が、ヒトにおいて特定の疾患を処置または予防するために使用される場合、マスト細胞もしくは好塩基性細胞の好都合な供給源が、ヒトまたは特定の疾患に対する受容されているかまたは公知である臨床モデルを構成する他の動物である。したがって、個々の用途に応じて、マスト細胞もしくは好塩基性細胞は、多様な動物源(例えば、下等哺乳動物(例えば、マウスおよびラット)からイヌ、ヒツジ、および臨床試験に一般的に使用される他の哺乳動物、高等哺乳動物(例えば、サル、チンパンジーおよび類人猿、ヒト)の範囲に及ぶ)に由来し得る。インビトロアッセイを実施するのに適した細胞の具体例としては、これらに限定されないが、げっ歯類もしくはヒト好塩基性細胞、ラット好塩基性白血病細胞株、一次マウスマスト細胞(例えば、骨髄由来のマウスマスト細胞「BMMC」)および臍帯血から単離される一次ヒトマスト細胞(「CHMC」)または肺などの他の組織が挙げられる。これらの細胞種を単離および培養する方法は、周知であるか、実施例の項において提供される(例えば、Demo et al.,1999,Cytometry 36(4):340−348、および同時係属中の2001年11月8日出願のの出願第10/053,355号を参照されたく、これらの開示内容は参考として本明細書中に援用される)。当然、FcεRIシグナル伝達カスケードの活性により脱顆粒する他種の免疫細胞(例えば、好酸性細胞を含む)もまた使用され得る。
【0105】
当業者によって認められるように、定量化されるメディエータまたは物質は、重大ではない。唯一必要なのは、Fcレセプターシグナル伝達カスケードを阻害または活性化する結果として放出および/または合成されるメディエータもしくは物質である。例えば、図1を参照して、マスト細胞および/または好塩基性細胞中のFcεRIシグナル伝達カスケードの活性化は、多数の下流イベントをもたらす。例えば、FcεRIシグナルカスケードは、脱顆粒により種々の予め形成された化学メディエータおよび物質の即時放出(すなわち、レセプター活性化に続く1〜3分以内)をもたらす。したがって、1つの実施形態において、メディエータまたは定量化される物質が、顆粒特異的であり得る(すなわち、顆粒中に存在するが、一般的に細胞の細胞質には存在しない)。顆粒特異的メディエータもしくは定量化されて本発明のピリジン化合物の活性を決定および/または確認し得る物質の例として、これらに限定されないが、顆粒特異的酵素(例えば、ヘキソサミニダーゼおよびトリプターゼ)、および顆粒特異的化合物(例えば、ヒスタミンおよびセロトニン)が挙げられる。そのような因子を定量化するためのアッセイは周知であり、大抵、市販されている。例えば、トリプターゼおよび/またはヘキソサミニダーゼ放出は、開裂の際に蛍光を発する開裂可能な物質とともにこの細胞をインキュベートし、通常の技術を使用して生成された蛍光の量を定量化することにより定量化し得る。そのような開裂可能な蛍光原基質は市販されている。例えば、蛍光原基質Z−Gly−Pro−Arg−AMC(Z=ベンジルオキシカルボニル;AMC=7−アミノ−4−メチルクマリン;BIOMOL Research Laboratories,Inc.,Plymouth Meeting,PA 19462、カタログ番号P−142)およびZ−Ala−Lys−Arg−AMC(Enzyme Systems Products,a division of ICN Biomedicals,Inc,Livermore,CA 94550、カタログ番号AMC−246)を、放出されるトリプターゼの量を定量化するために使用し得る。蛍光原基質4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド(Sigma,St.Louis,MO、カタログ番号69585)を、放出されるヘキソサミニダーゼの量を定量化するために使用し得る。ヒスタミン放出は、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(例えば、Immunotech histamine ELISAアッセイ#IM2015(Beckman−Coulter,Inc.)を使用して定量化し得る。トリプターゼ、ヘキソサミニダーゼおよびヒスタミンの放出を定量化する具体的方法を、実施例の項で提供する。これらのアッセイはいずれも、本発明のピリジン化合物の活性を決定または確認するために使用し得る。
【0106】
再度図1を参照して、脱顆粒は、FcεRIシグナル伝達カスケードにより開始されるいくつかの応答のうちの1つに過ぎない。さらに、このシグナル伝達経路の活性化は、サイトカインおよびケモカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、TNF−α、IL−13およびMIP1−α)のデノボ合成および放出、ならびに脂質メディエータ(例えば、ロイコトリエン(例えば、LTC4)、血小板活性化因子(PAF)およびプロスタグランジンの放出をもたらす。したがって、本発明のピリジン化合物はまた、活性化細胞によって放出および/または合成される1つ以上のこれらのメディエータの量を定量化することにより、活性について評価し得る。
【0107】
上記に検討した顆粒特異的化合物と異なり、これら「後期段階」メディエータは、FcεRIシグナル伝達カスケードの活性化に続いて即時に放出されない。したがって、これらの後期段階メディエータを定量化する場合、活性化された細胞培養が、定量化されるメディエータの合成(必要であれば)および放出をもたらすのに十分な時間、確実にインキュベートされるように注意を払うべきである。一般的に、PAFおよび脂質メディエータ(例えば、ロイコトリエンC4)は、FcεRI活性化に続いて3分〜30分、放出される。サイトカインおよび他の後期段階のメディエータは、FcεRI活性化に続いて約4時間〜8時間、放出される。特異的メディエータにとって適切なインキュベーション時間は、当業者に明らかである。具体的な説明およびアッセイが、実施例の項に提供される。
【0108】
放出される特定の後期段階メディエータの量を、任意の標準的な技術を使用して定量化し得る。1つの実施形態において、その量(単数または複数)は、ELISAアッセイを使用して定量化され得る。放出されるTNFα、IL−4、IL−5、IL−6および/またはIL−13の量を定量化するのに適したELISAアッセイキットは、例えば、Biosource International,Inc.,Camarillo,CA93012(例えば、カタログ番号KHC3011、KHC0042、KHC0052、KHC0061およびKHC0132を参照)から利用可能である。細胞から放出されるロイコトリエンC4(LTC4)の量を定量化するのに適したELISAアッセイキットは、Cayman Chemical Co.,Ann Arbor,MI48108(例えば、カタログ番号520211)から利用可能である。
【0109】
典型的に、本発明の活性なピリジン化合物は、FcεRI媒介性脱顆粒および/またはメディエータの放出もしくは合成に関して、インビトロアッセイ、例えば、上記または実施例の項において記載されるインビトロアッセイのうちの1つで測定されるものとして、約20μM以下のIC50を示す。当然、当業者は、より低いIC50、例えば、約10μM、1μM、100nM、10nM、1nMまたは1nM未満を示す化合物が、特に有用であることを理解する。
【0110】
当業者はまた、上記に検討した種々のメディエータが異なる副作用を誘発し得る、またはその副作用に関連して異なる効力を示し得ることを理解する。例えば、脂質メディエータLTC4は、強力な血管収縮薬であり、血管収縮を誘発することにおいて、ヒスタミンよりも約1000倍強力である。別の例として、アトピー性またはI型過敏性応答を媒介することに加えて、サイトカインはまた、組織再造形および細胞増殖の原因ともなり得る。したがって、先に検討した化学メディエータのうちのいずれか1つの放出および/または合成を阻害する化合物は有用であるが、当業者は、複数のまたは全ての先に検討したメディエータの放出および/または合成を阻害する化合物は、そのような化合物が特定のメディエータによって誘発される複数のまたは全ての副作用を改善または完全に回避するのに有用である範囲内で特定の使用を見出すことを理解する。例えば、3種すべてのメディエータ、すなわち、顆粒特異的メディエータ、脂質メディエータおよびサイトカインメディエータの放出を阻害する化合物は、即時性のI型過敏性応答ならびにこれらI型過敏性応答と関連する慢性症状を処置または予防するのに有用である。
【0111】
一種より多くのメディエータ(例えば、顆粒特異的メディエータまたは後期段階メディエータ)の放出を阻害し得る本発明の化合物を、種々の上記インビトロアッセイ(または他の同等なインビトロアッセイ)を用いて各クラスの代表的なメディエータについてのIC50を決定することにより同定し得る。1種より多くのメディエータの放出を阻害し得る本発明の化合物は、典型的に、試験される各種のメディエータについて、約20μM未満のIC50を示す。例えば、ヒスタミン放出について1μMのIC50(IC50ヒスタミン)を示し、ロイコトリエンLTC4合成および/または放出について1nMのIC50(IC50LTC4)を示す化合物は、即時(顆粒特異的)メディエータ放出および後期段階メディエータ放出の両方を阻害する。別の具体例として、10μMのIC50トリプターゼ、1μMのIC50LTC4および1μMのIC50IL−4を示す化合物は、即時(顆粒特異的)メディエータ放出、脂質メディエータ放出およびサイトカインメディエータ放出を阻害する。上記具体例は、各クラスの1つの代表的なメディエータのIC50を利用するが、1つ以上のクラスを含む複数または全てのメディエータのIC50を入手し得ることを当業者は理解する。特定の化合物および適用についてのIC50のデータを確かめるべきであるメディエータの量(単数または複数)およびアイデンティティ(単数または複数)が、当業者に明らかとなる。
【0112】
類似したアッセイを利用して、日常どおりの修正を加え、他のFcレセプターにより開始されるシグナル伝達カスケード(例えば、FcαRI、FcγRIおよび/またはFcγRIIIシグナル伝達)の阻害を確認し得る。例えば、FcγRIシグナル伝達を阻害する能力は、FcγRIシグナル伝達カスケードが、例えば、化合物が有する細胞をIgEおよびIgE特異的アレルゲンもしくは抗体の代わりに、IgGおよびIgG特異的アレルゲンもしくは抗体とともにインキュベートすることによって活性化されること以外は上記と類似したアッセイで確認し得る。適切な細胞種、活性化物質、および定量化して他のFcレセプター(例えば、γホモダイマーを含むFcレセプター)の阻害を確認するための物質が、当業者に明らかとなる。
【0113】
1つの特に有用なクラスの化合物は、ほぼ等しいIC50を有する即時顆粒特異的メディエータおよび後期段階メディエータの放出を阻害するピリジン化合物を含む。ほぼ等しいとは、各種メディエータについてのIC50が、互いの約10倍の範囲内にあることを意味する。別の特に有用なクラスの化合物は、ほぼ等しいIC50を有する即時顆粒特異的メディエータ、脂質メディエータおよびサイトカインメディエータの放出を阻害するピリジン化合物を含む。特定の実施形態において、そのような化合物は、ほぼ等しいIC50を有する以下のメディエータの放出を阻害する:ヒスタミン、トリプターゼ、ヘキソサミニダーゼ、IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、TNFαおよびLTC4。そのような化合物は、とりわけ、アトピー性もしくは即時性のI型過敏性応答と関連する初期段階および後期段階の両方の応答を改善または完全に回避するのに特に有用である。
【0114】
理想的には、全種の所望のメディエータが有する放出を阻害する能力が、単一の化合物に存する。しかしながら、同じ結果を得る化合物の混合物もまた、特定し得る。例えば、顆粒特異的メディエータの放出を阻害する第一の化合物を、サイトカインメディエータの放出および/または合成を阻害する第二の化合物と組み合せて使用し得る。
【0115】
上記に検討したFcεRIもしくはFcγRI脱顆粒経路に加えて、マスト細胞および/または好塩基性細胞の脱顆粒が、他の物質により誘発され得る。例えば、細胞の初期のFcεRIもしくはFcγRIシグナル伝達機序を迂回するカルシウムイオノフォアのイオノマイシンは、脱顆粒をトリガするカルシウムフラックスを直接的に誘発する。再度図2を参照して、活性化されたPLCγは、とりわけ、カルシウムイオン動員およびそれに続く脱顆粒をもたらす経路を阻害する。図示されるように、このCa2+動員は、FcεRIシグナル伝達経路の後期にトリガされる。前述および図3に図示されるように、イオノマイシンは、Ca2+動員、および脱顆粒をもたらすCa2+フラックスを直接的に誘発する。この様式で脱顆粒を誘発する他のイオノフォアとしては、A23187が挙げられる。脱顆粒を誘発するイオノフォア(例えば、イオノマイシン)が有するFcεRIおよび/もしくはFcγRIシグナル伝達カスケードの初期段階を迂回する能力をカウンタースクリーン(counter screen)として使用して、上記に検討されるように、特異的に初期のFcεRIもしくはFcγRIシグナル伝達カスケードを遮断または阻害することにより脱顆粒阻害活性を発揮する本発明の活性化合物を同定し得る。そのような初期のFcεRIもしくはFcγRI媒介性脱顆粒を阻害する化合物は、脱顆粒ならびにそれに続くヒスタミン、トリプターゼおよび他の顆粒内容物の急速な放出を特異的に阻害するだけでなく、TNFα、IL−4、IL−13および脂質メディエータ(例えば、LTC4)の放出の原因となる前炎症活性化経路も阻害する。したがって、そのような初期のFcεRIおよび/もしくはRcγRI媒介性脱顆粒を特異的に阻害する化合物は、急性アトピー性もしくはI型過敏性応答を遮断または阻害するだけでなく、多数の炎症メディエータが関与する後期応答も阻害する。
【0116】
初期のFcεRIおよび/もしくはFcγRI媒介性脱顆粒を特異的に阻害する本発明の化合物は、FcεRIおよび/もしくはFcγRI媒介性脱顆粒を阻害する(例えば、顆粒特異的メディエータまたは内容物の放出について、IgEもしくはIgG結合物質で刺激される細胞を用いたインビトロアッセイで測定されるものとして、約20μM未満のIC50を有する)化合物であるが、イオノフォア誘発性脱顆粒を認め得るほどには阻害しない化合物である。1つの実施形態において、インビトロアッセイで測定されるものとして、化合物が、約20μMを超えるイオノフォア誘発性脱顆粒のIC50を示す場合、イオノフォア誘発性脱顆粒を認め得るほどには阻害しないと考えられる。当然、それよりも高いイオノフォア誘発性脱顆粒のIC50を示す活性化合物、またはイオノフォア誘発性脱顆粒を全く阻害しない活性化合物が、特に有用である。別の実施形態において、化合物が、インビトロアッセイで測定されるものとして、FcεRIおよび/もしくはFcγRI媒介性脱顆粒とイオノフォア誘発性脱顆粒とのIC50が10倍を超える違いを示す場合、これら化合物は、イオノフォア誘発性脱顆粒を認め得るほどに阻害しないと考えられる。イオノフォア誘発性脱顆粒のIC50を決定するのに適したアッセイは、細胞が抗IgE抗体もしくはIgE特異的アレルゲンの代わりに脱顆粒誘発性カルシウムイオノフォア(例えば、イオノマイシンもしくはA23187(A.G.Scientific,San Diego,CA)で刺激または活性化される修正を加えた先に記載の任意の脱顆粒アッセイを含む。本発明の特定のピリジン化合物が有するイオノフォア誘発性脱顆粒を阻害する能力を評価するのに適したアッセイが、実施例の項に提供される。
【0117】
当業者によって認められるように、FcεRI媒介性脱顆粒の高度の選択性を示す化合物は、そのような化合物が、FcεRIカスケードを選択的に標的にし、他の脱顆粒機序を妨げない範囲内で特定の使用を見出す。類似して、FcγRI媒介性脱顆粒の高度な選択性を示す化合物は、そのような化合物がFcγRIカスケードを選択的に標的にし、他の脱顆粒機序を妨げない範囲内で特定の使用を見出す。高度な選択性を示す化合物は、一般的に、イオノフォア誘発性脱顆粒よりもFcεRIもしくはFcγRI媒介性脱顆粒(例えば、イオノマイシン誘発性脱顆粒)に対して10倍以上選択的である。
【0118】
したがって、本発明のピリジン化合物の活性はまた、Sykキナーゼ活性の生化学アッセイもしくは細胞アッセイにおいて確認され得る。再度図2を参照して、マスト細胞および/または好塩基性細胞中のFcεRIシグナル伝達カスケードにおいて、Sykキナーゼは、LATおよびPLCγ1をリン酸化し、このリン酸化が、とりわけ脱顆粒をもたらす。これらの活性はいずれも、本発明のピリジン化合物の活性を確認するために使用し得る。1つの実施形態において、この活性を、単離したSykキナーゼまたはその活性フラグメントをSykキナーゼ基質(例えば、Sykによりリン酸化されると知られている合成ペプチドまたはタンパク質)の存在下でピリジン化合物と接触させ、Sykキナーゼがその基質をリン酸化したかどうか評価することにより確認する。あるいは、このアッセイを、Sykキナーゼを発現する細胞を用いて実施し得る。これらの細胞は、Sykキナーゼを内因的に発現し得る、または、これらの細胞は、組み替えSykキナーゼを発現するように操作され得る。これらの細胞はまた、必要に応じて、Sykキナーゼ基質を発現し得る。そのような確認アッセイを実施するのに適した細胞ならびに適切な細胞を操作する方法が、当業者に明らかである。ピリジン化合物の活性を確認するのに適した生化学アッセイおよび細胞アッセイの具体例を、実施例の項に提供する。
【0119】
一般的に、Sykキナーゼインヒビターである化合物は、インビトロアッセイもしくは細胞アッセイにおいて、Sykキナーゼ活性(例えば、Sykキナーゼが有する合成もしくは内因性基質をリン酸化する能力)について、約20μM以下の範囲にあるIC50を示す。当業者は、例えば、10μM、1μM、100nM、10nM、1nM、または1nMより低い範囲にあるIC50を示す化合物が、特に有用であることを理解する。
【0120】
(6.4 使用および組成物)
先に検討されたように、本発明の活性化合物は、Fcレセプターシグナル伝達カスケード、特に、とりわけ脱顆粒かもしくは他のプロセスにより細胞からの化学メディエータの放出および/または合成をもたらすγホモダイマー(例えば、FcεRIおよび/またはFcγRIシグナル伝達カスケード)を含むFcレセプター阻害する。同じく先に検討されたように、活性化合物はまた、Sykキナーゼの強力なインヒビターでもある。これらの活性の結果として、本発明の活性化合物は、種々のインビトロ、インビボおよびエクスビボの状況で使用して、Sykキナーゼ、Sykキナーゼが役割を果たすシグナル伝達カスケード、Fcレセプターシグナル伝達カスケード、およびそのようなシグナル伝達カスケードにより引き起こされる生体応答を調節または阻害し得る。例えば、1つの実施形態において、インビトロかもしくはインビボで、実質的にSykキナーゼを発現するいかなる細胞種においても、これらの化合物を使用してSykキナーゼを阻害し得る。またこれらの化合物を使用して、Sykキナーゼが役割を果たすシグナル伝達カスケードを調節すし得る。そのようなSyk依存性シグナル伝達カスケードとしては、これらに限定されないが、FcεRI、FcγRI、FcγRIII、BCRおよびインテグリンシグナル伝達カスケードが挙げられる。また、これらの化合物をインビトロもしくはインビボで使用して、そのようなSyk依存性シグナル伝達カスケードによって引き起こされる細胞応答もしくは生体応答を調節、特に阻害し得る。そのような細胞応答もしくは生体応答としては、これらに限定されないが、呼吸バースト、細胞癒着、細胞脱顆粒、細胞伝播、細胞移動、細胞凝集、食作用、サイトカイン合成および放出、細胞成熟、ならびにCa2+フラックスが挙げられる。重要なことに、これらの化合物を使用して、全面的かもしくは部分的にSykキナーゼ活性によって媒介される疾患の処置もしくは予防への治療アプローチとして、インビボでSykキナーゼを阻害し得る。これらの化合物で処置もしくは予防され得るSykキナーゼ媒介性疾患の非限定的な例には、以下により詳細に検討される疾患がある。
【0121】
別の実施形態において、これらの活性化合物を使用して、Fcレセプターシグナル伝達カスケードならびに/またはFcεRIおよび/もしくはFcγRI媒介性脱顆粒を、そのようなFcレセプターシグナル伝達カスケードもしくは脱顆粒の化学メディエータの放出もしくは合成によって特徴付けられる疾患、そのような化学メディエータの放出もしくは合成によって引き起こされる疾患および/またはそのような化学メディエータの放出もしくは合成と関連する疾患の処置または予防への治療アプローチとして調節または阻害し得る。そのような処置を、獣医学に関連して動物に、またはヒトに投与し得る。そのようなメディエータ放出、合成もしくは脱顆粒によって特徴付けられる疾患、そのようなメディエータ放出、合成もしくは脱顆粒によって引き起こされる疾患、またはそのようなメディエータ放出、合成もしくは脱顆粒と関連する疾患、したがって、それらの活性化合物で処置または予防され得る疾患としては、限定ではなく例として、アトピー性応答、アナフィラキシー過敏性応答、アレルギー性応答、アレルギー(例えば、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、および食物アレルギー)、軽度瘢痕化(例えば、硬皮症、線維増多、ケロイド、手術後瘢痕、肺線維症、血管痙攣、片頭痛、再灌流傷害、および心筋梗塞後などの瘢痕化)、組織破壊と関連する疾患(例えば、COPD、心臓気管支炎(cardiobronchitis)、および心筋梗塞後の組織破壊)、組織炎症と関連する疾患(例えば、過敏性腸症候群、痙攣性結腸、および炎症性腸疾患)、炎症、および瘢痕化が挙げられる。
【0122】
細胞および動物実験データは、本明細書中に記載されるピリジン化合物が、上記の種々の疾患に加え、自己免疫疾患ならびにそのような疾患と関連する種々の症状の処置または予防にも有用であることを裏付けている。ピリジン化合物で処置または予防され得る自己免疫疾患の種類は、一般的に、免疫抗原または内因性および/もしくは外因性由来の抗原への体液および/もしくは細胞媒介性応答の結果として生ずる組織傷害を伴う障害を含む。そのような疾患は、しばしば非アナフィラキシー(すなわち、II型、III型および/またはIV型)過敏性応答を伴う疾患とみなされる。
【0123】
先に検討されるように、I型過敏性応答は、一般的に、特異的な外因性の抗原との接触に続くマスト細胞および/もしくは好塩基性細胞からの薬理学的に活性な物質(例えば、ヒスタミン)の放出に起因する。前述のように、そのようなI型応答は、数多くの疾患(アレルギー喘息、アレルギー性鼻炎などを含む)において役割を果たす。
【0124】
II型過敏性応答(細胞傷害性、細胞溶解性補体依存性または細胞刺激性過敏性応答とも呼ばれる)は、免疫グロブリンが、細胞もしくは組織の抗原性成分と反応する場合、あるいは細胞もしくは組織と密接に連結した抗原またはハプテンと反応する場合に生ずる。一般的にII型過敏性応答と関連付けられる疾患としては、これらに限定されないが、自己免疫溶血性貧血、胎児赤芽球症、およびグッドパスチャー疾患が挙げられる。
【0125】
III型過敏性応答(毒性複合体、溶解性複合体または免疫複合体過敏性応答とも呼ばれる)は、脈管もしくは組織中の可溶性循環抗原免疫グロブリン複合体の沈殿から生じ、免疫複合体沈殿の部位における急性炎症応答を伴う。プロトタイプIII型応答疾患の非限定的な例としては、アルチュス応答、関節リウマチ、血清病、全身性エリテマトーデス、特定の種の糸球体腎炎、多発性硬化症、および水疱性類天疱瘡が挙げられる。
【0126】
IV型過敏性応答(しばしば、細胞性、細胞媒介性、遅延性またはツベルクリン型過敏性応答と呼ばれる)は、特異性抗原との接触に起因する感作Tリンパ球によって引き起こされる。IV型応答が関与するとして挙げられる疾患の非限定的な例には、接触性皮膚炎および同種移植片拒絶がある。
【0127】
上記非アナフィラキシー過敏性応答のいずれかと関連付けられる自己免疫疾患は、本発明のピリジン化合物で処置または予防され得る。特に、本方法は、しばしば単一臓器もしくは単一細胞種の自己免疫障害として特徴付けられる、以下:これらに限定されないが、橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血の自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性睾丸炎、グッドパスチャー疾患、自己免疫性血小板減少症、交感性眼炎、重症筋無力症、グレーブズ病、原発性胆汁性肝硬変、慢性進行性肝炎、潰瘍性大腸炎、および膜性糸球体症を含む自己免疫疾患、ならびにしばしば全身性自己免疫障害が関与すると特徴付けられる以下:これらに限定されないが、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ炎、シェーグレン症候群、ライター症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性硬化症、結節性多発性動脈炎、多発性硬化症、および水疱性類天疱瘡を含む自己免疫疾患を処置または予防するために使用され得る。
【0128】
当業者は、上記の自己免疫疾患の多くが、重篤な症状と関連付けられ、これらの改善は、根底にある自己免疫疾患が改善されてないかもしれない場合でさえも重大な治療上の利益を提供するということを理解する。これらの症状ならびにそれらの根底にある病態の多くは、単核細胞中のFcγRシグナル伝達カスケードを活性化する結果として生ずる。本明細書中に記載されるピリジン化合物は、単核細胞および他の細胞中のそのようなFcγRシグナル伝達の強力なインヒビターであるので、本方法は、上記の自己免疫疾患と関連する種々の悪症状の処置および/または予防における使用を見出す。
【0129】
具体例として、関節リウマチ(RA)は、典型的に、全身の標的関節の腫脹、疼痛、動きの低下、および圧痛を引き起こす。RAは、リンパ球が密集する慢性的に炎症を起こしている滑膜によって特徴付けられる。滑膜は、典型的に一細胞層の厚さであり、集まって細胞のようなものになり、樹状細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、および形質細胞の集団を含み、リンパ組織と類似した形態をとる。このプロセス、ならびに抗原免疫グロブリン複合体の形成を含む多くの免疫病理学的機序が、変形、永久的な機能の低下および/または関節もしくは関節近くにおける骨浸食を引き起こし、その結果、関節の完全性の破壊を引き起こす。本方法を使用して、RAのこれらの症状のいずれか1つ、いくつか、もしくは全てを処置または改善し得る。したがって、RAに関連して、本方法は、一般的にRAと関連付けられる症状のいずれかの軽減または改善が得られる場合に、その処置が根底にあるRAの付随的な処置および/または循環リウマチ因子(「RF」)の量の減少をもたらすかどうかに関わらず、治療上の利益(より一般的には下記に検討)を提供すると考えられる。
【0130】
別の具体例として、全身性エリテマトーデス(「SLE」)は、典型的に、発熱、関節痛(arthralgias)、関節炎、および漿膜炎(胸膜炎または心膜炎)などの症状と関連付けられる。SLEに関連して、本方法は、一般的にSLEと関連付けられるいずれかの症状の軽減または改善が得られる場合に、その処置が根底にあるSLEの付随的な処置となるかどうかに関わらず、治療上の利益を提供すると考えられる。
【0131】
別の具体例として、多発性硬化症(「MS」)は、視力を乱し;複視を刺激し;歩行および手の使用に影響する運動機能を乱し;腸失禁および膀胱失禁;痙縮;ならびに感覚障害(触覚感受性、痛覚感受性、および温覚感受性)を引き起こすことにより患者の体の自由を奪う(cripple)。MSに関連して、本方法は、一般的にMSと関連付けられる体を不自由にさせるいずれか1つ以上の影響の進行において、改善または軽減が得られる場合に、その処置が根底にあるMSの付随的な処置となるかどうかに関わらず、治療上の利益を提供すると考えられる。
【0132】
そのような疾患を処置または予防するために使用される場合、本活性化合物は、単独で、または1種以上の本活性化合物の混合物として、またはそのような疾患および/もしくはそのような疾患と関連する症状を処置するのに有用な他の物質と混合してもしくは組み合せて投与され得る。本活性化合物はまた、他の障害もしくは疾患を処置するのに有用な物質(例えば、ステロイド、膜安定化薬、5LOインヒビター、ロイコトリエンの合成インヒビターおよびレセプターインヒビター、IgEアイソタイプスイッチングもしくはIgE合成のインヒビター、IgGアイソタイプスイッチングもしくはIgG合成のインヒビター、βアゴニスト、トリプターゼインヒビター、アスピリン、COXインヒビター、メトトレキサート、抗TNF薬、retuxin、PD4インヒビター、p38インヒビター、PDE4インヒビター、および抗ヒスタミンなど)と混合してもしくは組み合せて投与され得る。本活性化合物は、本質的に、プロドラッグの形態で、または活性化合物もしくはプロドラッグを含む薬学的組成物として投与され得る。
【0133】
本発明の活性化合物(またはそのプロドラッグ)を含む薬学的組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、水簸分級、乳化、被包、封入(entrapping)、または凍結乾燥プロセスにより製造され得る。本組成物は、1種以上の生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤または助剤を使用して従来の様式で調合され得る。助剤は、本活性化合物を薬学的に使用し得る調製物へと加工するのを促進する。
【0134】
本活性化合物もしくはプロドラッグは、上記のようにそのままで薬学的組成物に調合されるか、または水和物、溶媒和物、N−オキシドもしくは薬学的に受容可能な塩の形態で調合され得る。典型的に、そのような塩は、対応する遊離酸および塩基よりも水溶液中での溶解度が大きい、対応する遊離酸および塩基よりも低い溶解度を有する塩もまた形成され得る。
【0135】
本発明の薬学的組成物は、事実上いかなる投与形式(例えば、局所、眼、経口、口腔、全身、鼻腔、注射、経皮、直腸、膣内などを含む)にも適した形態、または吸入もしくは注入による投与に適した形態をとり得る。
【0136】
局所投与については、本活性化合物(単数または複数)またはプロドラッグ(単数または複数)は、当該技術分野において周知であるような液剤、ゲル剤、軟膏、クリーム剤、懸濁剤などとして調合され得る。
【0137】
全身用調合物としては、注射(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、または腹腔内注射)による投与のために設計された調合物、ならびに経皮投与、経口腔粘膜投与、または経肺投与のために設計された調合物が挙げられる。
【0138】
有用な注射可能調製物としては、水性もしくは油性のビヒクル中の本活性化合物(単数または複数)の滅菌懸濁剤、液剤または乳剤が挙げられる。本組成物は、調合剤(例えば、懸濁剤、安定剤および/または分散剤)を含み得る。注射用の調合物は、単位投薬形態、例えば、アンプル剤、または多用量容器(multidose container)で与えられ得、添加される保存剤を含み得る。
【0139】
あるいは、この注射可能調合物は、適切なビヒクル(これらに限定されないが、発熱物質を含まない滅菌水、緩衝液、ブドウ糖溶液などを含む)を用いる使用前の再構築用の粉末形態で提供され得る。この目的のために、本活性化合物(単数または複数)を当該技術分野において公知の任意の技術、例えば、凍結乾燥により乾燥させ、使用前に再構築し得る。
【0140】
経粘膜投与については、浸透させるべくバリアに適した浸透剤を調合物に使用する。そのような浸透剤は、当該技術分野において公知である。
【0141】
経口投与については、本薬学的組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、結合剤(例えば、プレゼラチン化メイズスターチ、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、デンプンまたはグリコール酸ナトリウムスターチ);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いた従来的な手段により調製される形態(例えば、ロゼンジ、錠剤、またはカプセル剤)をとり得る。錠剤は、当該技術分野において周知の方法により、例えば、糖、フィルム、または腸溶剤皮で被覆し得る。
【0142】
経口投与用の液体調製物は、例えば、エリキシル剤、液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形態をとり得、あるいは、水もしくは他の適切なビヒクルと使用前に構成するための乾燥生成物として与えられ得る。そのような液体調製物は、薬学的に受容可能な添加剤、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、cremophoreTM、または分留(fractionated)植物油);および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を用いて、従来的な手段により調製し得る。これらの調合物はまた、適宜、緩衝塩、保存剤、矯味矯臭剤、着色剤、および甘味剤を含み得る。
【0143】
経口投与用の調製物を、周知のように適切に調合して、活性化合物もしくはプロドラッグの徐放を与え得る。
【0144】
口腔投与については、本組成物は、従来的な様式で調合された錠剤もしくはロゼンジの形態をとり得る。
【0145】
直腸および膣内投与経路については、本活性化合物(単数または複数)を、溶液(停留浣腸用)、坐薬、または従来の坐薬基剤(例えば、ココアバターまたは他のグリセリド)を含む軟膏として調合し得る。
【0146】
鼻腔投与または吸入もしくは注入による投与については、本活性化合物(単数または複数)またはプロドラッグ(単数または複数)を、加圧パックまたは適切なプロペラント(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、フルオロカーボン、二酸化炭素、または他の適切なガス)を用いたネブライザーからのエアゾールスプレーの形態で、好都合に送達し得る。加圧エアゾールの場合には、投薬単位を、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定し得る。本化合物および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはスターチ)の粉末混合物を含む、カプセル剤、および吸入器もしくは注入器中の使用のためのカートリッジ(例えば、ゼラチンから成るカプセル剤およびカートリッジ)を調合し得る。
【0147】
市販の鼻腔スプレーデバイスを用いる鼻腔投与に適した懸濁調合水の具体例は、以下の成分:活性化合物もしくはプロドラッグ(0.5〜20mg/ml);塩化ベンザルコニウム(0.1〜0.2mg/mL);ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80;0.5〜5mg/ml);カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくは微結晶性セルロース(1〜15mg/ml);フェニルエタノール(1〜4mg/ml);およびデキストロース(20〜50mg/ml)を含む。最終懸濁剤のpHを、約pH5〜pH7の範囲に、典型的には、約pH5.5のpHに調節し得る。
【0148】
吸入による化合物の投与、特に本発明の化合物のそのような投与に適した懸濁水の別の具体例は、1〜20mg/mLの化合物もしくはプロドラッグ、0.1〜1%(v/v)のポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、50mMのシトラートおよび/または0.9%の塩化ナトリウムを含む。
【0149】
眼投与については、活性化合物(単数もしくは複数)またはプロドラッグ(単数もしくは複数)を、眼への投与に適した液剤、乳剤、懸濁剤などとして調合し得る。眼へ化合物を投与するのに適した種々のビヒクルが、当業者に公知である。非限定的な具体例は、米国特許第6,261,547号;米国特許6,197,934号;米国特許第6,056,950号;米国特許第5,800,807号;米国特許第5,776,445号;米国特許第5,698,219号;米国特許第5,521,222号;米国特許第5,403,841号;米国特許第5,077,033号;米国特許第4,882,150号;および米国特許第4,738,851号に記載されている。
【0150】
長期送達については、活性化合物(単数もしくは複数)またはプロドラッグ(単数もしくは複数)を、移植または筋肉内注射による投与用のデポー調製物として調合し得る。活性成分は、適切なポリマー物質もしくは疎水性物質(例えば、受容可能な油中の乳剤として)またはイオン交換樹脂とともに、あるいは、難溶性(sparingly soluble)誘導体(例えば、難溶性塩)として調合され得る。あるいは、活性化合物(単数もしくは複数)をゆっくりと放出する経皮吸収用の吸着盤、またはパッチとして製造される経皮送達系を使用し得る。この目的のために、浸透エンハンサーを使用して、活性化合物(単数もしくは複数)の経皮浸透を促進し得る。適切な経皮パッチは、例えば、米国特許第5,407,713号;米国特許第5,352,456号;米国特許第5,332,213号;米国特許第5,336,168号;米国特許第5,290,561号;米国特許第5,254,346号;米国特許第5,164,189号;米国特許第5,163,899号;米国特許第5,088,977号;米国特許第5,087,240号;米国特許第5,008,110号;および米国特許第4,921,475号に記載されている。
【0151】
あるいは、他の薬学的送達系を使用し得る。リポソームおよび乳剤は、活性化合物(単数もしくは複数)またはプロドラッグ(単数もしくは複数)を送達するために使用し得る送達ビヒクルの周知の例である。通常は、より大きな毒性を犠牲にするが、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの特定の有機溶媒を使用し得る。
【0152】
薬学的組成物を、所望であれば、パックで、または活性化合物(単数もしくは複数)を含む1種以上の単位投薬形態を含み得るディスペンサーデバイスで与え得る。このパックは、例えば、金属箔もしくはプラスチック箔を含み得る(例えば、ブリスターパック)。このパックまたはディスペンサーデバイスには、投与についての使用説明書を添付し得る。
【0153】
(6.5 有効投薬量)
本発明の活性化合物(単数もしくは複数)またはプロドラッグ(単数もしくは複数)、あるいはそれらの組成物を、一般的には、意図される結果を得るための有効量で、例えば処置しようとする特定の疾患を処置または予防するための有効量で使用する。化合物(単数もしくは複数)を、治療上の利益を得るために治療的に、または予防上の利益を得るために予防的に投与し得る。治療上の利益は、なお根底にある障害に苦しんでいるかもしれないが、患者が、感覚または状態の改善を報告するような、処置されようとする根底にある障害の撲滅もしくは改善、および/または根底にある障害と関連する1種以上の症状の撲滅もしくは改善を意味する。例えば、アレルギーに罹っている患者への化合物の投与は、根底にあるアレルギー性応答が撲滅または改善される場合だけでなく、その患者が、アレルゲンへの曝露に続くアレルギーと関連する症状の重篤度もしくは持続期間の低減を報告する場合にも治療上の利益を提供する。別の例として、喘息に関連した治療上の利益としては、喘息発作の発症に続く呼吸の改善、または喘息の発現の頻度もしくは重篤度の低減が挙げられる。治療上の利益はまた、改善が認められるかどうかに関わらず、疾患の進行を中断または緩慢にすることを含む。
【0154】
予防的投与については、本化合物を、先に記載した疾患のうちの1つを発病させる恐れのある患者に投与し得る。例えば、患者が特定の薬物に対するアレルギーであるかどうか不明である場合、その薬物へのアレルギー性応答を回避または改善するために、その薬物投与の前に本化合物を投与し得る。あるいは、予防的投与は、根底にある障害と診断された患者における症状の発症を回避するために適用され得る。例えば、化合物を、予期されるアレルゲンへの曝露の前に、アレルギー患者に投与し得る。また、上記疾患のうちの1つとして公知の因子に繰り返し曝露される健康な個体に対し、その障害の発症を防ぐために、予防的に化合物を投与し得る。例えば、アレルギー(例えば、ラテックス)を誘発することが公知のアレルゲンに繰り返し曝露される健康な個体に対し、その個体がアレルギーを発病させることを防ぐために、化合物を投与し得る。あるいは、喘息に罹っている患者に対し、喘息発作をトリガする活動に参加する前に、喘息の発現の重篤度を軽減する、または喘息の発現を完全に回避するために、化合物を投与し得る。
【0155】
投与される化合物の量は、例えば、処置されようとする特定の適応症、投与形式、所望の利益が予防上の利益かそれとも治療上の利益であるか、処置されようとする適応症の重篤度、患者の年齢および体重、特定の活性化合物の生物学的利用能などを含む種々の要因に依存する。有効投薬量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0156】
有効な投薬量を、初めにインビトロアッセイから推定し得る。例えば、動物における使用のための初期の投薬量を、インビトロアッセイ(例えば、インビトロCHMCもしくはBMMCおよび実施例の項に記載される他のインビトロアッセイ)において測定されるものとして、特定の化合物のIC50以上である活性化合物の循環血液濃度もしくは血清濃度を達成するように調合し得る。特定の化合物の生物学的利用能を考慮して、そのような循環血液濃度もしくは血清濃度を達成するような投薬量の算出は、十分に当業者の能力の範囲内である。手引きとして、読者はFingl & Woodbury,“General Principles,”In:Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,Chapter 1,pp.1−46,latest edition,Pagamonon Pressおよびこの文献内で引用される文献を参照されたい。
【0157】
また、初期の投薬量を、インビボ(例えば、動物モデル)のデータからも推定し得る。上記の種々の疾患を処置または予防するための化合物の有効性を試験するのに有用な動物モデルは、当該技術分野において周知である。過敏性応答もしくはアレルギー性応答の適切な動物モデルは、Foster,1995,Allergy 50(21Suppl):6−9,discussion 34−38、およびTumas et al.,2001,J.Allergy Clin.Immunol.107(6):1025−1033に記載されている。アレルギー性鼻炎の適切な動物モデルは、Szelenyi et al.,2000,Arzneimittelforschung 50(11):1037−42;Kawaguchi et al.,1994、Clin.Exp.Allergy 24(3):238−244、およびSugimoto et al.,2000,Immunopharmacology 48(1):1−7に記載されている。アレルギー性結膜炎の適切な動物モデルは、Carreras et al.,1993,Br.J.Ophthalmol.77(8):509−514;Saiga et al.,1992,Ophthalmic Res.24(1):45−50;およびKunert et al.,2001,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.42(11):2483−2489に記載されている。全身性肥満細胞症の適切な動物モデルは、O‘Keefe et al.,1987,J.Vet.Intern.Med.1(2):75−80、およびBean−Knudsen et al.,1989,Vet.Pathol.26(1):90−92に記載されている。高IgE症候群の適切な動物モデルは、Claman et al.,1990,Clin.Immunol.Immunopathol.56(1):46−53に記載されている。B細胞リンパ腫の適切な動物モデルは、Hough et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13853−13858、およびHakim et al.,1996,J.Immunol.157(12):5503−5511に記載されている。アトピー性障害(例えば、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、およびアトピー性喘息)の適切な動物モデルは、Chan et al.,2001,J.Invest.Dermatol.117(4):977−983、およびSuto et al.,1999,Int.Arch.Allergy Immunol.120(Suppl 1):70−75に記載されている。当業者は、そのような情報を日常どおりに採用して、ヒト投与に適した投薬量を決定し得る。さらなる適切な動物モデルを、実施例の項に記載する。
【0158】
投薬量は、典型的には、約0.0001mg/kg/日または0.001mg/kg/日または0.01mg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲にあるが、他の因子の中でも、化合物の活性、その生物学的利用能、投与形式、および上記に検討された種々の因子に応じて、それよりも高くまたは低くてもよい。投薬量および投薬間隔は、治療効果または予防効果を維持するのに十分な化合物(単数または複数)のプラズマレベルを提供するように、個別に調節され得る。例えば、本化合物は、とりわけ、投与形式、処置されようとする特定の適応症、および処方する医師の判断に応じて、週に1回、週に数回(例えば、隔日)、1日に1回、または1日に複数回、投与し得る。局所投与もしくは選択的摂取(例えば、局所外用投与)の場合は、活性化合物(単数または複数)の有効な局所濃度を、プラズマ濃度に関連付けられなくてよい。当業者は、過度の実験なしに、有効な局所投薬量を最適化し得る。
【0159】
好ましくは、本化合物(単数または複数)は、実質的な毒性を生ずることなく、治療上または予防上の利益を提供する。本化合物(単数または複数)の毒性は、標準的な薬学的手順を用いて決定し得る。毒性効果と治療(または予防)効果との用量比率が、治療指数である。高治療指数を示す化合物(単数または複数)が好ましい。
【0160】
本発明を記載した以下の実施例を、限定ではなく例示のために提供する。
【実施例】
【0161】
(7.実施例)
(7.1 置換ピリジン化合物)
種々の置換ピリジン化合物を、本明細書中に記載される手順に基づいて調製した。そのような化合物を、表1および表2に描写する。以下の合成方法は、本出願の全体にわたり記載されるピリジン化合物の合成を代表している。
【0162】
【化13】

(3−クロロ安息香酸2−ブロモメチル(3))
室温にて、無水ジクロロメタン(10mL)中の3−クロロベンゾイルクロリド(2)(0.21g、2.8mmol)とピリジン(0.46mL、5.7mmol)との溶液に、2−ブロモエタノール(1)(0.23mL、3.1mmol)を添加(滴下)した。この反応混合物を、室温にて2時間攪拌し、1N HClでクエンチした。有機相をNaHCOの飽和水溶液、ブラインで洗浄し、次いで、無水MgSOで乾燥させた。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィにより精製して、無色の油(0.64g)として3−クロロ安息香酸2−ブロモエチル(3)を得た。
【0163】
【数2】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(5))
アセトン(1mL)中の2−メルカプト−5−ニトロピリジン(4)(46mg、0.29mmol)と、3−クロロ安息香酸2−ブロモエチル(3)(77mg、0.29mmol)と、KCO(0.160g、1.1mmol)との不均一混合物を、55℃にて5時間攪拌した。冷却した反応混合物を、Celite(登録商標)に通して濾過し、濃縮し、次いでシリカゲルクロマトグラフィにより精製して、白色個体として3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(5)を得た。
【0164】
【数3】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(6))
CCl、アセトニトリルおよび水(1:1:2、v/v;総容量:0.8mL)中の3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(5)(30mg、0.089mmol)の溶液に、NaIO(59mg、0.27mmol)およびRuCl・HO(1.8mg、0.0089mmol)を加えた。3時間後、この反応混合物を、同量の水および酢酸エチルで希釈した。有機相をNaHCOの飽和水溶液およびブラインで洗浄した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィにより精製して、白色固体として3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチルを得た。
【0165】
【数4】

【0166】
【化14】

(2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7))
アセトン(11mL)中の2−メルカプト−5−ニトロピリジン(4)(0.50g、3.2mmol)と、2−ブロモエタノール(1)(0.238mL、3.3mmol)と、KCO(2.0g、14mmol)との不均一混合物を、55℃にて1時間攪拌した。冷却した反応混合物を、Celite(登録商標)に通して濾過し、濃縮し、次いでシリカゲルクロマトグラフィにより精製して、橙色の固体(0.545g、2.72mmol)として2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)を得た。
【0167】
【数5】

(4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(8))
無水ジクロロメタン(1.5mL)中の2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と(45mg、0.22mmol)、4−クロロベンゾイルクロリド(33μL、0.26mmol)と、ピリジン(45μL、0.56mmol)との均一な混合物を、室温にて48時間攪拌した。この反応混合物を1N HClでクエンチして、有機相をNaHCOの飽和水溶液、ブラインで洗浄し、次いで、無水MgSOで乾燥させた。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィにより精製して、4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(8)を得た。LCMS:純度:90%;MS(m/e):340(M
(4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9))
2−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(6)を得るための2−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(5)の酸化と同様に、4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(8)の酸化を達成して、4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)を得た。
【0168】
【数6】

(2−[(5−ニトロピリジニル(Nitropyridiny))スルホニル]エタノール(10))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)を得るための4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(8)の酸化と同様に、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)の酸化により、2−[(5−ニトロピリジニル)スルホニル]エタノール(10)を得た。LCMS:純度:95%;MS(m/e):233(MH)。
【0169】
【化15】

(3−トリフルオロメチル安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(11))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、3−トリフルオロメチル安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(11)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と3−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0170】
【数7】

【0171】
【化16】

(2−トリフルオロメチル安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(12))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、2−トリフルオロメチル安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(12)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と2−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0172】
【数8】

【0173】
【化17】

(安息香酸2[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(13))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、安息香酸2[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(13)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)とベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0174】
【数9】

【0175】
【化18】

(2−フルオロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(14))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、2−フルオロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(14)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と2−フルオロベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0176】
【数10】

【0177】
【化19】

(3−フルオロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(15))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、3−フルオロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(15)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と3−フルオロベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0178】
【数11】

【0179】
【化20】

(4−フルオロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(16))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、4−フルオロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(16)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と4−フルオロベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0180】
【数12】

【0181】
【化21】

(酢酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(17))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、酢酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(17)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と塩化アセチルとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0182】
【数13】

【0183】
【化22】

(プロピオン酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(18))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、プロピオン酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(18)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と塩化プロピルとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0184】
【数14】

【0185】
【化23】

(3−トリフルオロメトキシ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(19))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、3−トリフルオロメトキシ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(19)を、2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタノール(7)と3−トリフルオロベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0186】
【数15】

【0187】
【化24】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−トリフルオロメチル−2−ピリジニル)−2−スルホニル]エチル(21))
4−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(9)の合成と同様に、3−クロロ安息香酸2−[(5−トリフルオロメチルピリジニル)スルホニル]エチル(21)を2−[(5−トリフルオロメチルピリジニル)チオ]エタノールと3−クロロベンゾイルクロリドとのO−アシル化、それに続く上記のような硫黄の酸化により合成した。
【0188】
【数16】

【0189】
【化25】

(1−アミノ−2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタン(38))
アセトン(10mL)中の2−メルカプト−5−ニトロピリジン(96mg、0.62mmol)と、N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ−2−ブロモエタン(0.14g、0.63mmol)と、KCO(0.42g、3.0mmol)との不均一溶液を、60℃にて15時間加熱した。冷却した反応混合物を、Celite(登録商標)に通して濾過し、濃縮し、次いで、シリカゲルクロマトグラフィにより精製して、N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ−2−(5−ニトロ−2−ピリジニルチオ)エタン(37)を得、これを室温にて30分間、ジクロロメタン(5mL)中のトリフルオロ酢酸(5mL)で処理した。この反応混合物を濃縮し、次いで、残留物をジクロロメタン中に懸濁させ、飽和NaHCOで洗浄し、続いてブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮して、黄褐色の固体として1−アミノ−2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタン(38)を得、これをさらなる精製なしに使用した。
【0190】
【数17】

(N−[(2−{5−ニトロ−2−ピリジニル}チオ)エチル]アセトアミド(39))
室温にて、N−メチルピロリジン(1.0mL)中の1−アミノ−2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタン(38)(24mg、0.12mmol)とトリエチルアミン(42μL、0.30mmol)との溶液に、塩化アセチル(10μL、0.14mmol)を加え、15時間攪拌し、次いで、ジクロロメタンで希釈し、ジクロロメタン抽出物をNaHCOの飽和水溶液およびブラインで洗浄し、次いで、無水MgSOで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィにより精製して、N−[(2−{5−ニトロ−2−ピリジニル}チオ)エチル] アセトアミド(39)を得た。
【0191】
【数18】

(N−[(2−{5−ニトロ−2−ピリジニル}スルホニル)エチル]アセトアミド(40))
スキーム1による3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(6)を合成するために用いられた手順と類似した様式で、N−[(2−{5−ニトロ−2−ピリジニル}スルホニル)エチル]アセトアミド(40)を得るためのN−[(2−{5−ニトロ−2−ピリジニル}チオ)エチル]アセトアミド(39)の酸化を達成した。LCMS:純度:90%;MS(m/e):273(M
(2−[(2−{N−tert−ブトキシカルボニルアミノ}エチル)スルホニル]−5−ニトロピリジン(41))
スキーム1による3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(6)を合成するために用いられた手順と類似した様式で、2−[(2−{N−ブトキシカルボニルアミノ}エチル)スルホニル]−5−ニトロピリジン(41)を得るためのN−tertブトキシカルボニル−アミノ−2−(5−ニトロ−2−ピリジニルチオ)エタン(37)の酸化を達成した。
【0192】
【数19】

【0193】
【化26】

(3−クロロ−N−[2−({5−ニトロ−2−ピリジニル}スルホニル)エチル]ベンズアミド(42))
N−[(2−{5−ニトロ−2−ピリジニル}スルホニル)エチル]アセトアミド(40)の調製と同様に、1−アミノ−2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エタン(38)と3−クロロベンゾイルクロリドとの反応、それに続く酸化により、3−クロロ−N−[2−({5−ニトロ−2−ピリジニル}スルホニル)エチル]ベンズアミド(42)を得た。LCMS:純度:94%;MS(m/e):371(MH)。
【0194】
【化27】

3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(6)
3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(5)[20mg、0.059mmol;スキーム2に記載される方法に従って調製;
【0195】
【数20】

と、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA)(50%、21mg、0.060mmol)との溶液を、室温にて1.25時間攪拌した。次いで、この反応混合物をジクロロメタンで希釈し、NaHCOの飽和水溶液で洗浄し、次いで、無水MgSOで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィにより精製して、3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(6)を得た。LCMS:純度:99%;MS(m/e):355(MH)。
【0196】
同様に、化合物100〜103を、出発物質(化合物2)を適切に変化させて、化合物5のために用いられる同じ方法により調製し得る。
【0197】
【化28】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−アセチルアミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(52))
トルエンもしくはメタノール中の3−クロロ安息香酸2−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)チオ]エチル(5)(0.24g、0.71mmol)と10%Pd/C(0.10g)との混合物を、1時間、水素雰囲気下(40PSI)で攪拌した。この反応混合物をCelite(登録商標)に通して濾過し、濃縮して、3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)(LCMS:純度:99%;MS(m/e):309(MH))を得、これを更なる精製なしに使用した。塩化アセチル(4.6μL、0.064mmol)を、無水ジクロロメタン(1.0mL)中の3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)(18.9mg、0.061mmol)とトリエチルアミン(18μL、0.13mmol)との室温溶液に加えた。16時間後、この反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1N HClおよびブラインで洗浄し、次いで、無水MgSOで乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィによる精製により、3−クロロ安息香酸2−[(5−アセチルアミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(52)を得た。LCMS:純度:99%;MS(m/e):351(MH)。
【0198】
(3−クロロ安息香酸2−[(5−アセチルアミノ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(53))
3−クロロ安息香酸2−[(5−アセチルアミノ−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(53)を得るための3−クロロ安息香酸2−[(5−アセチルアミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(52)の酸化をスキーム1に記載される手順と類似した様式で達成した。LCM:純度:99%;MS(m/e):383(MH)。
【0199】
【化29】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−{フェニルウレイド}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(55))
スキーム1およびスキーム5に記載されるように、3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)とイソシアン酸フェニルとの反応、それに続く酸化により、3−クロロ安息香酸2−[(5−{フェニルウレイド}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(55)を得た。LCMS:純度:96%;MS(m/e):461(MH)。
【0200】
【化30】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−{エチルウレイド}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(56))
スキーム1およびスキーム5に記載されるように、3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)とイソシアン酸エチルとの反応、それに続く酸化により、3−クロロ安息香酸2−[(5−{エチルウレイド}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(56)を得た。LCMS:純度:96%;MS(m/e):413(MH)。
【0201】
【化31】

(3−クロロ安息香酸2−[(5−{4−トリフルオロメトキシフェニルウレイド}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(57))
スキーム1およびスキーム5に記載されるように、3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)とイソシアン酸4−トリフルオロメトキシフェニルとの反応、それに続く酸化により、3−クロロ安息香酸2−[(5−{4−トリフルオロメトキシフェニルウレイド}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(57)を得た。LCMS:純度:98%;MS(m/e):545(MH)。
【0202】
【化32】

(3−クロロ安息香酸[(5−{1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(66))
3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)と無水コハク酸との反応、それに続く酸化(スキーム1に従う)により、3−クロロ安息香酸[(5−{1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(66)を得た。LCMS:純度:99%;MS(m/e):471(M)。
【0203】
(3−クロロ安息香酸[(5−{2,5−ジオキソテトラヒドロ−1H−ピロール−1−イル}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(67))
3−クロロ安息香酸2−[(5−アミノ−2−ピリジニル)チオ]エチル(51)と無水コハク酸との反応、それに続く酸化(スキーム1に従う)により、3−クロロ安息香酸[(5−{2,5−ジオキソテトラヒドロ−1H−ピロール−1−イル}−2−ピリジニル)スルホニル]エチル(67)を得た。LCMS:純度:99%;MS(m/e):423(MH)。
【0204】
(7.2 本発明のピリジン化合物はFcεRIレセプター媒介性脱顆粒を阻害する)
本発明の置換ピリジン化合物が有するIgE誘発性脱顆粒を阻害する能力を、培養ヒトマスト細胞(CHMC)および/またはマウス骨髄由来細胞(BMMC)を用いた種々の細胞アッセイで証明した。脱顆粒の阻害を、低細胞密度および高細胞密度の両方において、顆粒特異的因子であるトリプターゼ、ヒスタミンおよびヘキソサミニダーゼの放出を定量化することにより計測した。脂質メディエータの放出および/または合成の阻害を、ロイコトリエンLTC4の放出を測定することにより評価し、サイトカインの放出および/または合成の阻害を、TNF−α、IL−6およびIL−13を定量化することによりモニターした。トリプターゼおよびヘキソサミニダーゼを、それらそれぞれの実施例において記載されるように、蛍光原基質を用いて定量化した。ヒスタミン、TNFα、IL−6、IL−13およびLTC4を、以下の市販のELISAキットを用いて定量化した:ヒスタミン(Immunotech #2015,Beckman Coulter)、TNFα(Biosource #KHC3011)、IL−6(Biosource ##KMC0061)、IL−13(Biosource #KHC0132)およびLTC4(Cayman Chemical #520211)。種々のアッセイのプロトコルを、以下に提供する。
【0205】
(7.2.1 ヒトマスト細胞および好塩基性細胞の培養)
ヒトマスト細胞および好塩基性細胞を、以下に記載されるようにCD34陰性前駆細胞から培養した(開示内容が、本明細書中に参考として援用される2001年11月8日出願の同時係属中の米国出願第10/053,355号に記載される方法も参照されたい)。
【0206】
(7.2.2 STEMPRO−34完全培地の調製)
STEMPRO−34完全培地(「CM」)を調製するために、250mLのSTEMPRO−34TM無血清培地(「SFM」;GibcoBRL、カタログ番号10640)を濾過フラスコに加えた。これに13mLのSTEMPRO−34 Nutrient Supplement(「NS」;GibcoBRL、カタログ番号10641)(下記により詳細に記載されるように調製)を加えた。NS容器を約10mLのSFMですすぎ、このすすぎ液を濾過フラスコに加えた。5mLのL−グルタミン(200mM;Mediatech、カタログ番号MT25−005−CI、および5mLの100×ペニシリン/ストレプトマイシン(「pen−strep」;HyClone、カタログ番号SV30010)の添加に続き、この容量をSFMで500mLにし、この溶液を濾過した。
【0207】
CMを調製する最も変化し得る局面が、NSを解凍し、SFMに添加する前に混合する方法である。NSは、37℃の水浴で解凍し、完全に溶解するまで回転させる(swirl)(ボルテックスするのでも振り動かすのでもない)るべきである。回転させている間、少しでもまだ溶解していない脂質があるかどうか注意する。脂質が存在し、NSが見かけ上均質でない場合、NSを水浴に戻し、見かけ上均質になるまで回転プロセスを繰り返す。成分が即座に溶解することもあれば、数回の回転後に溶解することもあり、全く溶解しないこともある。数時間後にNSがまだ溶解していない場合は、それを捨て、新しいユニットを解凍する。解凍後に見かけが均質でないNSを使用すべきではない。
【0208】
(7.2.3 CD34+細胞の拡大)
比較的少数のCD34陽性(CD34+)の開始個体群(1〜5×10細胞)を、培地および下記の方法を用いて比較的多数のCD34陰性前駆細胞(約2〜4×10細胞)に拡大した。CD34+細胞(単一のドナーから)を、Allcells(Berkeley,CA)から入手した。Allcellsが典型的に提供するCD34+細胞の質および数にある程度の変動があるため、新たに納入された細胞を、15mLの円錐管に移し、使用前にCM中で10mLになるようにした。
【0209】
0日目に、細胞計数を、生(明位相(phase−bright))細胞を用いて実施し、これらの細胞を、1200rpmにて回転させてペレット化した。これらの細胞を、200ng/mLの組み換えヒト幹細胞因子(「SCF」;Peprotech、カタログ番号300−07)および20ng/mLのヒトflt−3リガンド(Peprotech、カタログ番号300−19)(「CM/SCF/flt−3培地」)を含むCMを用い、275,000細胞/mLの密度になるように再懸濁させた。約4日目または5日目に、細胞計数を実施することにより培養物の密度を調査し、その培養物を、新しいCM/SCF/flt−3培地を用い、275,000細胞/mLの密度まで希釈した。約7日目に、この培養物を滅菌管へと移し、細胞計数を実施した。これらの細胞を、1200rpmにて回転させ、新しいCM/SCF/flt−3培地を用い、275,000細胞/mLの密度まで再懸濁させた。
【0210】
このサイクルを、0日目から開始し、拡大期を通じて合計3〜5回繰り返した。
【0211】
培養物が多量であり、複数のフラスコ中に保存されており、再懸濁させなければならない場合、細胞計数を実施する前に、全てのフラスコの中身を単一の容器に入れて合わせる。これにより、確実に正確な細胞計数を達成し、個体群全体に対するある程度の処置の均一性を与える。合わせる前に各フラスコを顕微鏡下で汚染について別個に調査して、個体群全体の汚染を防ぐ。
【0212】
17日〜24日の間に、培養物は減少し始め(すなわち、総細胞数の約5〜10%が死ぬ)、以前ほど速く拡大しなくなる。次いで、培養物の完全な破壊(failure)は24時間ほどで起こり得るため、これらの細胞をこの間毎日モニターする。一旦減少が始まると、これらの細胞を計数し、850rpmにて15分間遠沈させ、CM/SCF/flt−3培地中に350,000細胞/mLの密度で再懸濁指せて、培養物からの1回または2回の更なる分裂を誘発する。これらの細胞を、培養物の破壊を回避するために毎日モニターする。
【0213】
15%より多くの細胞の死が前駆細胞培養物において明らかであり、いくらかの残骸が培養物中に存在する場合、CD34陰性前駆細胞は、容易に分化し得る。
【0214】
(7.2.4 CD34陰性前駆細胞の粘膜マスト細胞への分化)
第2フェーズを、拡大したCD34陰性前駆細胞を分化させた粘膜マスト細胞へと転換するために実施する。これらの粘膜培養ヒトマスト細胞(「CHMC」)を、臍帯血から単離したCD34+細胞から得、上記のように処理してCD34陰性前駆細胞の増殖個体群を形成する。CD43陰性前駆細胞を産生するために、培養物のための再懸濁サイクルは、培養物を425,000細胞/mLの密度で播種し、15%のさらなる培地を、細胞計数を実施することなく4日目または5日目頃に加えること以外は上記したサイクルと同じである。また、この培地のサイトカイン組成物を、SCF(200ng/mL)および組み替えヒトIL−6(200ng/mL;Peprotech、カタログ番号200−06であり、滅菌の10mM酢酸中100μg/mLへ再構成される)(「CM/SCF/IL−6倍地」)を含むように改変した。
【0215】
フェーズIおよびフェーズIIを一緒に約5週間回転させた。培養物中のいくらかの死および残骸は1〜3週間で明白となり、わずかな割合の培養物が懸濁せずに、代わりに培養容器の表面に付着する期間が2〜5週間ある。
【0216】
フェーズIにおいてのように、培養物が各サイクルの7日目に再懸濁し得る場合、全てのフラスコの中身を個体群全体の均一性を確実にするために、細胞計数を実施する前に単一の容器に合わせ入れる。各フラスコを、合わせる前に、顕微鏡下で汚染について別個に調査して、個体群全体の汚染を防ぐ。
【0217】
フラスコを合わせる場合、約75%の容量を、フラスコ中に約10mL程度を残して集合容器に移す。残りの容量を含むフラスコを、激しく水平方向に振り(rap)、付着した細胞を移動させる。完全にこれらの細胞を移動させるために、最初の振りと直角の方向に再度振った。
【0218】
このフラスコを、数分間45度の角度に傾けた後、残りの容量を計数容器に移した。これらの細胞を、フラスコ1つ当たり30mL〜50mLで(425,000細胞/mLの密度にて)播種する前に、950rpmにて15分間回転させた。
【0219】
(7.2.5 CD34陰性前駆体細胞の結合組織型マスト細胞への分化)
CD34陰性前駆体細胞の増殖個体群を、上記のように調製し、処理してトリプターゼ/キマーゼ陽性(結合組織)表現型を形成する。培地中でIL−6の代わりにIL−4を用いること以外は、粘膜マスト細胞について上記したようにこれらの方法を実施する。得られた細胞は、典型的な結合組織マスト細胞である。
【0220】
(7.2.6 CD34陰性前駆細胞の好塩基性細胞への分化)
CD34陰性前駆細胞の増殖個体群を、上記7.2.1.3の項に記載したように調製し、これを使用して、好塩基性細胞の増殖個体群を形成する。CD陰性細胞を、培地中でIL−6の代わりにIL−3を(20〜50ng/mLで)用いること以外は、粘膜マスト細胞について記載したように処理する。
【0221】
(7.2.7 CHMC低細胞密度IgE活性化:トリプターゼおよびLTC4アッセイ)
2枚の96ウェルU底プレート(Costar 3799)に、2%のMeOHおよび1%のDMSOを含むMT[137mM NaCl、2.7mM KCl、1.8mM CaCl、1.0mM MgCl、5.6mM グルコース、20mM Hepes(pH7.4)、0.1%のウシ血清アルブミン(Sigma A4503)]中で調製した65μlの化合物希釈物またはコントロールサンプルを加える。CHMC細胞をペレット化し(980rpm、10分)、予め温めたMTに再懸濁させる。65μlの細胞を各96ウェルプレートに加える。個々のCHMCドナーに対する脱顆粒活性に応じて、1000〜1500細胞/ウェルを充填する。4度の混合に続き、37℃にて1時間インキュベートする。1時間のインキュベーションの間、6×抗IgE溶液[ウサギ抗ヒトIgE(1mg/ml、Bethyl Laboratories A80−109A)をMT緩衝剤で1:167に希釈]を調製する。25μlの6×抗IgE溶液を適切なプレートに加えることにより細胞を刺激する。25μlのMTを刺激していないコントロールウェルに加える。抗IgEの添加に続いて2度混合する。37℃にて30分間インキュベートする。30分間のインキュベーションの間、20mMのトリプターゼ基質原液[(Z−Ala−Lys−Arg−AMC2TFA;Enzyme Systems Products,#AMC−246)」をトリプターゼアッセイ緩衝剤[0.1M Hepes(pH7.5)、10%w/vグリセロール、10μM ヘパリン(Sigma H−4898)0.01% NaN]で1:2000に希釈する。1000rpmにて10分間プレートを回転させて、細胞をペレット化する。上清25μlを96ウェル黒底プレートに移し、新しく希釈したトリプターゼ基質溶液100μlを各ウェルに加える。プレートを室温にて30分間インキュベートする。分光光度プレートリーダーで、355nm/460nmにてプレートの光学密度を読む。
【0222】
ロイコトリエンC4(LTC4)もまた、供給業者の指示に従い、適切に希釈した上清サンプル(サンプル測定値が標準曲線の範囲内にあるように各ドナー細胞個体群について経験的に決定される)についてELISAキットを使用して定量化する。
【0223】
(7.3 CHMC高細胞密度IgE活性化:脱顆粒(トリプターゼ、ヒスタミン)、ロイコトリエン(LTC4)、およびサイトカイン(TNFα、IL−13)アッセイ)
培養ヒトマスト細胞(CHMC)を、CM培地中で5日間、IL−4(20ng/ml)、SCF(200ng/ml)、IL−6(200ng/ml)、およびヒトIgE(Cortx Biochem製CP 1035K、世代に応じて100〜500ng/ml)を用いて感作する。感作した後、細胞を計数し、ペレット化し(1000rpm、5〜10分)、1〜2×10細胞/mlでMT緩衝剤中に再懸濁させる。細胞懸濁液100μlおよび化合物希釈物100μlを、各ウェルに加える。最終ビヒクル濃度は、0.5% DMSOである。37℃(5% CO)にて1時間インキュベートする。化合物処理の1時間後、細胞を6×抗IgEで刺激する。ウェルをこれらの細胞と混合し、プレートを37℃(5% CO)にて1時間インキュベートする。1時間のインキュベーション後、細胞をペレット化し(10分、1000RPM)、ペレットを破壊しないように注意しながら上清を1ウェル当たり200μl回収する。上清プレートを氷上に置く。7時間の工程(次を参照)の間、1:500に希釈した上清を用いてトリプターゼアッセイを実施する。0.5% DMSOおよび対応する濃度の化合物を含むCM培地240μl中に、細胞ペレットを再懸濁させる。CHMC細胞を37℃(5% CO)にてインキュベートする。インキュベーション後、細胞をペレット化(1000RPM、10分)し、1ウェル当たり225μlを回収し、ELISAを実施し得るまで−80℃に置く。ELISAを、供給業者の指示に従い、適切に希釈したサンプル(サンプル測定値が標準曲線の範囲内にあるように各ドナー細胞個体群について経験的に決定される)を用いて実施する。
【0224】
(結果)
低密度CHMCアッセイの結果を、表1および表2に提供する。表1および表2中に、報告される値は全て、IC50(μM)である。試験されたほとんどの化合物が、10μM未満のIC50を有し、多くがマイクロモルの下の値域のIC50を示した。「−」の値は、10μMの濃度で測定し得る活性がない、IC50>10μMを示す。試験されたほとんどの化合物が、10μM未満のIC50を有し、多くがマイクロモルの下の値域のIC50を示した。「+」の値は、IC50<10μMを示す。試験した化合物のBMMC値は、CHMCの結果について示された値と同じと見られる。
【0225】
(7.4 本発明のピリジン化合物は上流のIgEレセプターカスケードを選択的に阻害する)
本発明のピリジン化合物の多くが、初期のIgEレセプターシグナル伝達カスケードを遮断または阻害することにより阻害活性を発揮することを確認するために、下記のように、化合物のいくつかを、イオノマイシン誘発性脱顆粒についての細胞アッセイで試験した。
【0226】
(7.5 CHMC低細胞密度イオノマイシン活性化:トリプターゼアッセイ)
イオノマイシン誘発性マスト細胞脱顆粒についてのアッセイを、1時間のインキュベーションの間、6×イオノマイシン溶液[MeOH(原液)中の5mM イオノマイシン(Sigma I−0634)をMT緩衝剤(最終的に2μM)で1:416.7に希釈]を調製し、6×イオノマイシン溶液25μlを適切なプレートに加えることにより細胞を刺激したこと以外はCHMC低密度IgE活性化アッセイについて上記したように実施した。
【0227】
(結果)
IC50値(μM)として報告されるイオノマイシン誘発性脱顆粒アッセイの結果を、表1および表2に提供する。試験された活性化合物(すなわち、IgE誘発性脱顆粒を阻害する活性化合物)の大半が、イオノマイシン誘発性脱顆粒を阻害せず、これらの活性化合物が初期の(または上流の)IgEレセプターシグナル伝達カスケードを選択的に阻害することを確認する。表1および表2中に報告される値は全てIC50(μM)である。「−」の値は、10μMの濃度で測定し得る活性がない、IC50>10μMを示す。「+」の値は、IC50<10μMを示す。
【0228】
【表1】

【0229】
【表2】

上記の発明は、理解を容易にするために少し詳細に記載されたが、特定の変化および修正が別添の特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることは明らかである。したがって、記載された実施形態は、制限のためではなく例示のためと見なされるべきであり、本発明を本明細書中に与えられた詳細に限定すべきではないが、別添の特許請求の範囲の範囲内で修正され得、かつ等価物であり得る。
【0230】
本出願全体にわたり引用される文献および特許などの全ての参考文献が、あらゆる目的のために本出願に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】図1は、IgEのアレルゲン誘発性の産生、そしてそれに続く予め形成されたメディエータおよびマスト細胞からの他の化学メディエータの放出を例示している戯画を提供する。
【図2】図2は、マスト細胞および/または好塩基性細胞の脱顆粒をもたらすFcεR1シグナル伝達カスケードを例示する戯画を提供し;そして
【図3】図3は、上流のFcεRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物、ならびにFcεRI媒介性およびイオノマイシン誘発性脱顆粒の両方を阻害する化合物の推定される作用部分を例示する戯画を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化1】

に従う化合物であって、その薬学的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、ここで:
Yは、電子求引性基、NH、NHR、NR、カルバメート、置換カルバメート、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、シクロアルキルイミド、イソインドール−1,3−ジオン、置換イソインドール−1,3−ジオン、フタルイミド、および置換フタルイミドからなる群から選択され;
pは、0、1、または2であり;
qは、1および6を含む1〜6の整数であり;
およびRの各々は、個別に、アルキル、アリール、またはプロ基であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
は、アルキル、アリール、またはプロ基であり;そして
Aは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、置換アリール、およびアルコキシから選択され、但し、化合物
【化2】

は含まれない、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、Yが、構造式:
【化3】

に従う尿素であり、ここでRii、Riii、およびRivが、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールからなる群から選択される、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、Yが、構造式
【化4】

に従うシクロアルキルイミドであって、ここでrは、0〜10である、化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、Yが−NO−である、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、pが2である、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、qが2である、化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、Xが酸素である、化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、Aが、メチル、エチル、およびt−ブトキシからなる群から選択される、化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、Aが、フェニルまたは置換フェニルである、化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物であって、前記置換フェニルが、一置換されている、化合物。
【請求項11】
請求項10に記載の化合物であって、置換基が、−OH、−SH、−CN、−C(O)H、−NO、アジド、ハロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、低級アルキル、置換低級アルキル、低級ハロアルキル、モノハロメチル、ジハロメチル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、置換低級アルキルチオ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、メトキシ、置換メトキシ、低級ハロアルコキシ、モノハロメトキシ、ジハロメトキシ、トリハロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、置換低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、アリール、置換アリール、カルバメート、置換カルバメート、カルバモイル、置換カルバモイル、チオカルバモイル、置換チオカルバモイル、尿素、置換尿素、チオ尿素、置換チオ尿素、スルファモイル、および置換スルファモイルからなる群から選択される、化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物であって、Yが−NOであり、pが2であり、qが2であり、XがOであり、そしてAが一置換フェニルである、化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物であって、置換基が、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、低級アルキル、分枝アルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、尿素、カルバモイル、およびスルファノモイルからなる群から選択される、化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、化合物5、100、101、102、103、6、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、50、40、42、41、53、55、56、57、66、および67からなる群から選択される、化合物。
【請求項15】
薬学的に受容可能なビヒクルおよび請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項16】
自己免疫疾患および/または自己免疫疾患に関連する1つ以上の症状を処置または予防する方法であって、自己免疫疾患に罹っているかまたは自己免疫疾患を発病させる恐れのある被験体に、有効量の化学構造(I):
【化5】

に従うピリジン化合物であって、その薬学的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含む化合物を投与する工程を包含し、ここで:
Yは、−OH、−SH、−CN、−C(O)H、−NO、ハロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、低級アルキル、置換低級アルキル、低級へテロアルキル、置換低級へテロアルキル、低級ハロアルキル、モノハロメチル、ジハロメチル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、置換低級アルキルチオ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、メトキシ、置換メトキシ、低級へテロアルコキシ、置換低級へテロアルコキシ、低級ハロアルコキシ、モノハロメトキシ、ジハロメトキシ、トリハロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、置換低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、置換低級アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、置換アリールオキシカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニル、置換アリールアルキルオキシカルボニル、カルバメート、置換カルバメート、カルバモイル、置換カルバモイル、チオカルバモイル、置換チオカルバモイル、尿素、置換尿素、チオ尿素、置換チオ尿素、スルファモイル、置換スルファモイル、シクロアルキルイミド、シクロアルキルイミド、イソインドール−1,3−ジオン、置換イソインドール−1,3−ジオン、フタルイミド、および置換フタルイミドからなる群から選択され;
pは、0、1、または2であり;
qは、1および6を含む1〜6の整数であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
は、アルキル、アリール、またはプロ基であり;そして
Aは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、またはアルコキシである、
方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、Yが、−NO、−CF、−NH、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、および置換フタルイミドからなる群から選択される、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、pが2である、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、qが2である、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、Xが酸素である、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、Aが、メチルおよびエチルからなる群から選択されるアルキル基である、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、Aが、フェニルまたは置換フェニルである、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記置換フェニルが、一置換されている、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、置換基が、−OH、−SH、−CN−、−C(O)H、−NO、アジド、ハロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、低級アルキル、置換低級アルキル、低級ハロアルキル、モノハロメチル、ジハロメチル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、置換低級アルキルチオ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、メトキシ、置換メトキシ、低級ハロアルコキシ、モノハロメトキシ、ジハロメトキシ、トリハロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、置換低級ジアルキルアミノもしくはモノアルキルアミノ、アリール、置換アリール、カルバメート、置換カルバメート、カルバモイル、置換カルバモイル、チオカルバモイル、置換チオカルバモイル、尿素、置換尿素、チオ尿素、置換チオ尿素、スルファモイル、および置換スルファモイルからなる群から選択される、方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、Yが、−NO、−CF、尿素、置換尿素、シクロアルキルイミド、フタルイミド、および置換フタルイミドからなる群から選択され、pが2であり、qが2であり、XがOであり、そしてAが一置換フェニルである、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、置換基が、ハロゲン、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシからなる群から選択される、方法。
【請求項27】
請求項16に記載の方法であって、前記化合物が、化合物5、100、101、102、103、6、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、50、40、42、41、53、55、56、57、66、67、および21からなる群から選択される、方法。
【請求項28】
請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法であって、前記化合物が、該化合物、および薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物の形態で投与される、方法。
【請求項29】
請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法であって、治療上で実施される、方法。
【請求項30】
請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法であって、前記被験体が、ヒトである、方法。
【請求項31】
請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法であって、前記自己免疫疾患が、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、および喘息からなる群から選択されるアレルギーと関連する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−518967(P2008−518967A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539346(P2007−539346)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/039888
【国際公開番号】WO2006/050480
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】